JP2004171862A - 有機el装置の製造装置、有機el装置の製造方法、有機el装置、並びに電子機器 - Google Patents

有機el装置の製造装置、有機el装置の製造方法、有機el装置、並びに電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】有機EL装置の製造過程に起因する粉塵や、基体が製造装置内に持ち込む粉塵等によるピンホール等の欠陥発生を抑制すると共に、発光特性が優れ、長寿命化が達成された有機EL装置の製造装置及びの製造方法、有機EL装置、並びに電子機器を提供すること。
【解決手段】処理室84、85内に基体2を配置し、基体2上に有機EL素子又は電極層を形成することにより有機EL装置を製造するための製造装置であって、処理室内の粉塵を捕集する集塵部50を備えることを特徴とする。
【選択図】 図8

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機EL装置の製造装置、有機EL装置の製造方法、有機EL装置、並びに電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称する)を発光素子とする有機EL装置は、高輝度で自発光であること、直流低電圧駆動が可能であること、応答が高速であること、固体有機膜による発光であること等から表示性能に優れており、また、表示装置の薄型化、軽量化、低消費電力化、大型化が可能であるため、次世代の表示装置として期待されている。
このような有機EL装置は、基体上に複数の回路素子、透明電極、正孔注入層、発光層、電子注入層及び金属電極等が積層形成され、これらを封止基体と基体との間に挟んで封止した構成となっており、正孔と電子とが、蛍光能を有する有機EL層内で再結合し、励起状態から失活する際に発光する現象を利用している。
【0003】
また、このような有機EL装置の製造装置においては、基体に対して上記の複数の層膜及び電極を形成するための複数の処理装置と、基体を搬送する搬送装置とを備えた構成となっている。このように構成された有機EL装置の製造装置においては、各処理装置が基体に所定の処理を施すと共に、基体を搬送することによって、有機EL装置を製造するようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−277256号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような製造装置による有機EL装置の製造過程においては、製造過程に起因して発生する粉塵や、基体が製造装置内に持ち込む粉塵等が、基体に付着してしまい、有機EL装置に様々な欠陥が生じてしまうという問題があった。例えば、発光層上に粉塵が残留した状態で、蒸着法によって陰極を形成すると、粉塵が陰極と発光層との間に残留し、陰極にピンホールが発生してしまうという問題がある。このようなピンホール欠陥の発生によって、水分や酸素が有機EL装置の内部へ侵入し、ダークスポット等の生成を招いてしまうだけでなく、良好な発光特性が得られず、また、有機EL装置の長寿命化が図れないという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、有機EL装置の製造過程に起因する粉塵や、基体が製造装置内に持ち込む粉塵等によるピンホール等の欠陥発生を抑制すると共に、発光特性が優れ、長寿命化が達成された有機EL装置の製造装置及びの製造方法、有機EL装置、並びに電子機器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用した。
即ち、本発明は、有機EL装置を製造するための製造装置であって、処理室内に基体を配置し、基体上に有機EL素子又は電極層を形成することにより有機EL装置を製造するための製造装置であって、処理室内の粉塵を捕集する集塵部を備えることを特徴とするものである。
本発明によれば、集塵部が製造装置内の粉塵を捕集するので、基体に対する粉塵の付着を防止することができる。従って、この粉塵の付着に起因するピンホール等の欠陥の発生を抑制することができると共に、有機EL装置への水分や酸素の侵入によるダークスポットの生成を抑制することができる。即ち、発光特性が優れ、長寿命化が達成された有機EL装置を製造することができる。
【0008】
また、本発明は、先に記載の有機EL装置の製造装置であり、集塵部は、基体に対向する位置に配置されることを特徴とするものである。
本発明によれば、集塵部が製造装置内の基体に対して粉塵を捕集するので、より効率的に粉塵の捕集を行うことができる。ここで、有機EL装置が形成される基体面に対向する位置に集塵部を配置することが好ましい。
【0009】
また、本発明は、有機EL装置を製造するための製造装置であって、複数の処理室と、複数の処理室の間で基体を搬送する搬送室とを備え、複数の処理室と搬送室とのうち少なくとも一方に、粉塵を捕集する集塵部が配置されることを特徴とするものである。
本発明によれば、複数の処理室が基体に対して所定の処理を施し、搬送室が基体を搬送する、一連の有機EL装置の製造過程において、集塵部によって粉塵が捕集されるので、より効率的に粉塵の捕集を行うことができる。ここで、基体の近傍に集塵部を配置することが好ましい。
【0010】
また、本発明は、先に記載の有機EL装置の製造装置であり、複数の処理室又は搬送室は摺動部を有し、集塵部は摺動部に隣接して配置されることを特徴とするものである。
ここで摺動部とは、例えば、複数の処理室における基体接触式位置決め機構やゲートバルブの開閉機構、液体吐出装置における吐出ヘッドの移動機構、搬送室におけるロボットアームの駆動機構等が挙げられるが、これらに限定せずに、発塵源となり得る摺動部を意味するものである。
本発明によれば、摺動部に隣接して配置された集塵部が、摺動部で発生した粉塵を捕集するので、より効率的に粉塵の捕集を行うことができる。
【0011】
また、本発明は、先に記載の有機EL装置の製造装置であり、複数の処理室のうち、少なくとも一つの処理室は、基体上に液体材料を吐出する液体材料吐出手段を備え、集塵部は処理室の処理空間内で基体の上方に配置されることを特徴とするものである。
ここで、有機EL装置は、正孔注入層、有機EL層、電子注入層等が積層形成された機能層を備えた構成となっている。
本発明によれば、液体吐出手段によって機能層が形成されるので、液体吐出による材料の無駄が少なく、所望の位置に所望の量の材料を的確に配置することができると共に、製造工程の簡素化を図ることができる。
また、有機EL装置が形成される基体面側が上方を向いた状態で液体吐出が行われ、基体の上方に配置された集塵部が基体に対して粉塵を捕集するので、より効率的に粉塵の捕集を行うことができる。
【0012】
また、本発明は、有機EL装置を製造するための製造装置であって、有機EL装置を構成する正孔注入層、有機EL層、電子注入層及び電極のうち、少なくとも1層を基体上に形成するための蒸着装置を備え、蒸着装置の処理空間内で基体の下方に、粉塵を捕集する集塵部が配置されることを特徴とするものである。
ここで、蒸着装置においては、基体に対して全面に形成する、いわゆるベタと呼ばれる蒸着法、又は基体に所定のパターンを形成するマスク蒸着法が行われる。マスク蒸着法とは、複数のスリットを有したマスクを介して基体に所定の材料を蒸着するものであり、所定のパターニングを行うものである。
本発明によれば、有機EL装置が形成される基体面側が下方を向いた状態で蒸着が行われ、基体の下方に配置された集塵部が基体に対して粉塵を捕集するので、より効率的に粉塵の捕集を行うことができる。
また、上記の蒸着装置を用いて正孔注入層、有機EL層、電子注入層及び電極のうち、少なくとも1層を基体上に形成するので、好適な層膜及び電極を形成することができる。例えば、基体全面に対して陰極を形成した場合には、熱による機能層へのダメージを防止できる。また、例えば、低分子系有機EL材料からなる発光層を形成する際に、マスク蒸着法を用いることによってフォトリソグラフィ等によるパターニングが不要になり、容易にパターニングを行うことができる。
【0013】
また、本発明は、先に記載の有機EL装置の製造装置であり、集塵部は、集塵原理が異なる複数の集塵手段が複合していることを特徴とするものである。
本発明によれば、種種の特性が異なる粉塵が混在している混合粉塵を捕集する場合に、集塵原理が異なる複数の集塵手段を用いることによって、混合粉塵のうち一特性の粉塵のみを偏って捕集することがなく、混合粉塵を満遍なく捕集することができる。また、複数の集塵部によって粉塵を捕集するので、一つの集塵部の場合よりも集塵効率を向上させることができる。
ここで、種種の特性とは、粒径、重量、帯電性等である。
【0014】
また、本発明は、先に記載の有機EL装置の製造装置であり、集塵部は、気体の対流と共に流れる粉塵を集塵膜を介して捕集する気体対流式集塵手段と、帯電された粉塵を集塵電極を介して捕集する電気式集塵手段とが複合していることを特徴とするものである。
本発明によれば、重量が比較的少ない粉塵と、帯電性が比較的高い粉塵とが混在している混合粉塵に対して、気体対流式集塵手段と電気式集塵部手段とが複合された集塵部は、両特性の粉塵を満遍なく捕集することができる。
【0015】
次に、本発明は、有機EL装置を製造するための製造方法であって、基体上に有機EL素子又は電極層を形成することにより有機EL装置を製造するための製造方法であって、複数の処理工程と、基体を搬送する搬送工程と、基体が配置される空間内の粉塵を捕集する集塵工程と、を備えることを特徴とするものである。
本発明によれば、集塵工程によって製造装置内の粉塵が捕集されるので、基体に対する粉塵の付着を防止することができる。従って、この粉塵の付着に起因するピンホール等の欠陥の発生を抑制することができると共に、有機EL装置への水分や酸素の侵入によるダークスポットの生成を抑制することができる。即ち、発光特性が優れ、長寿命化が達成された有機EL装置を製造することができる。
【0016】
また、本発明は、先に記載の有機EL装置の製造方法であり、複数の処理工程と搬送工程とのうち少なくとも一方の工程の前後に集塵工程を行うことを特徴とするものである。
本発明によれば、基体が次の処理工程又は搬送工程に移る前、もしくは次の処理工程又は搬送工程に移った後に、粉塵が捕集されるので、基体に対する粉塵の付着を未然に防止することができる。
【0017】
また、本発明は、先に記載の有機EL装置の製造方法であり、複数の処理工程と搬送工程とのうち少なくとも一方の工程と同時に集塵工程を行うことを特徴とするものである。
本発明によれば、複数の処理工程及び搬送工程と同時に、粉塵が捕集されるので、基体に対する粉塵の付着を常に防止することができる。
【0018】
次に、本発明は、先に記載の製造装置によって製造された有機EL装置を特徴とするものである。
本発明によれば、粉塵の付着に起因するピンホール等の欠陥の発生が抑制されると共に、機能層への水分や酸素の侵入によるダークスポットの生成が抑制され、即ち、発光特性が優れ、長寿命化が達成された有機EL装置を提供することができる。
【0019】
次に、本発明は、先に記載の有機EL装置を表示手段として備える電子機器を特徴とするものである。
従って、本発明の電子機器としては、例えば、携帯電話機、移動体情報端末、時計、ワープロ、パソコンなどの情報処理室などを例示することができる。このように電子機器の表示部に、本発明の有機EL装置を採用することによって、発光特性が優れ、長寿命の表示部を備えた電子機器となる。
これらの電子機器を製造するには、有機EL装置を携帯電話、携帯型情報処理室、腕時計型電子機器等の各種電子機器の表示部に組み込むことにより製造される。
【0020】
【発明の実施の形態】
<第1実施形態>
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態について説明する。
【0021】
(有機EL装置の製造装置)
図1から図9は、本発明の有機EL装置の製造装置を示す図である。
図1は、有機EL装置の製造装置の概略構成を示す構成図である。有機EL装置の製造装置20は、機能層形成装置21、対向電極(陰極)形成装置22、及び封止装置23を備えて構成されている。
【0022】
図2は、機能層形成装置21の構成を示す構成図である。機能層形成装置21は、有機EL装置の機能層を形成する際の前処理を行うプラズマ処理装置25、機能層の一部である正孔注入/輸送層を形成する正孔注入/輸送層形成装置26、及び同じく機能層の一部である発光層を形成する発光層形成装置27を備えて構成されている。また、機能層形成装置21において、搬送系(搬送室)は略直線状に連続的に配置されており、複数の処理装置はその搬送系の両側に分けて配置されている。
プラズマ処理装置25は、予備加熱処理室(処理室)51、第1プラズマ処理室(処理室)52、第2プラズマ処理室(処理室)53、冷却処理室(処理室)54及び基板投入部(搬送室)48を備えている。予備加熱処理室51と冷却処理室54とは同一箇所で多段に配置されている。また、予備加熱処理室51/冷却処理室54、第1プラズマ処理室52、及び第2プラズマ処理室53は、振り分け装置(搬送室)30を中心として放射状に配置されている。
【0023】
図3は、プラズマ処理装置25のうち、第1及び第2プラズマ処理室52、53の要部を示す図である。プラズマ処理室52、53は、基板(基体)2が載置される試料ステージ56と、プラズマを生成するプラズマ放電電極57と、試料ステージ56を図示矢印方向に向けて所定の搬送速度で搬送ためのガイドレール59と、プラズマ処理室内の粉塵を捕集する集塵部50とによって構成されている。また、試料ステージ56には加熱ヒータが内蔵されており、基板2を加熱するようになっている。
【0024】
図2に戻り、正孔注入/輸送層形成装置26は、液体吐出法を用いて正孔注入/輸送層の形成材料を含む組成物を基板2上に形成する液体吐出処理室(液体材料吐出手段)70と、予備加熱処理室(処理室)71と、加熱処理室(処理室)72と、冷却処理室(処理室)73とを備えた構成となっている。加熱処理室72と冷却処理室73とは同一箇所で多段に配置されている。また、進行方向に向かって振り分け装置(搬送室)31、32の一方の側(ここでは右側)に液体吐出処理室70が配置され、他方の側(ここでは左側)に、予備加熱処理室71、及び加熱処理室72/冷却処理室73が配置されている。
また、発光層形成装置27は、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色に対応して、発光層の形成材料を含む組成物を基板2上に形成する液体吐出処理室(液体材料吐出手段)75、76、77と、加熱処理室(処理室)78、79、80と、冷却処理室(処理室)81、82、83と、進行方向に向かって設けられた振り分け装置(搬送室)34、35、36とを備えた構成となっている。
【0025】
図4、図5は、正孔注入/輸送層形成装置26及び発光層形成装置27のうち、液体吐出法が行われる液体吐出処理室70、75、76、77の要部を示す図である。
液体吐出処理室70、75、76、77は、図4に示す液体吐出ヘッドHが保持された支持部材1111と、液体吐出ヘッドHをx(主走査方向)及びy(副走査方向)方向に移動させるガイドレール1113及び1116と、基板2が載置されるステージ1115と、液体吐出処理室内の粉塵を捕集する集塵部50とを備えた構成となっている。
また、液体吐出ヘッドHは図中θ軸方向に回転するようになっており、液体吐出ヘッドH1を主走査方向に対して所定の角度に設定することができる。このように、液体吐出ヘッドを走査方向に対して傾けて配置することにより、ノズルピッチを画素ピッチに対応させることができ、また、傾き角度調整することにより、どのような画素ピッチに対しても対応させることができる。
また、集塵部50が配置される位置は、基板2の上方が好ましく、更に、ガイドレール1113及び1116と指示部材1111との摺動部に隣接した位置が好ましい。
【0026】
また、図2に戻り、正孔注入/輸送層形成装置26及び発光層形成装置27においては、多関節型の搬送アームを備える複数の振り分け装置30、31、…36が互いに間隔を空けて直線状に配置された構成となっており、その複数の振り分け装置30、31、…36の間に、基板2の受け渡しを行う受け渡し装置(搬送室)40、41、…46が配置されている。つまり、複数の振り分け装置30、31、…36と、複数の受け渡し装置40、41、…46とがほぼ交互に直列に接続されている。
【0027】
図6は、振り分け装置30、31、…36、及び受け渡し装置40、41、…46を含む搬送系の構成例を概略的に示した図であって、図6(a)は平面図、図6(b)は側面図である。振り分け装置30、31、…36は、水平方向、垂直方向、及び垂直軸周りの回転方向に移動自在な他関節型のロボットアーム(搬送アーム37A)と、搬送アーム37Aの摺動部に隣接した位置に粉塵を捕集する集塵部50とを有しており、搬送アーム37Aには、基板2を保持するための複数の吸着孔38が設けられている。吸着孔38は不図示の真空ポンプに接続されており、圧力差を利用して基板2を吸着保持するようになっている。
また、受け渡し装置40、41、…46は、基板2を支持するための複数のピン47と、ピン47に隣接した位置に集塵部50を配置した構成となっている。ピン47の高さは、複数のピン47上に基板2を搭載した際に基板2の下に搬送アーム37Aを挿入できる空間が形成される高さになっている。
【0028】
なお、搬送系の構成として上記した構成に限定されない。上記例では、搬送アームが垂直方向に移動することにより複数のピンに対して基板2の受け渡しや受け取りを行う構成となっているが、複数のピンを上下に移動させる機構を設け、複数のピンの上下移動により基板2の受け渡しや受け取りを行う構成としてもよい。更に、基板2の位置を整える整列機構を設けてもよい。また、本発明の搬送系は、多関節型の搬送アームを備えることにより、搬送系の両側の装置に基板2を容易に振り分けることができるという利点を有するが、これに限らず、ローラコンベアを備えるもの等、他の形態の搬送手段を用いてもよい。
また、整列機構等の基板接触を行う機構を設ける場合には、これに隣接する位置に集塵部50を配置することが好ましい。
【0029】
図7は、対向電極形成装置22、及び封止装置23を示している。
図7において、対向電極形成装置22は、第1蒸着処理室(蒸着装置)84、第2蒸着処理室(蒸着装置)85、及び基板搬出入用の搬送系(搬送室)を備えている。対向電極の形成にあたっては、第1蒸着処理室84、第2蒸着処理室85のうちの少なくとも一方が選択的に使用される。搬送系は、受け渡し装置(搬送室)60、61と、基板反転装置(搬送室)62と、振り分け装置(搬送室)63とから構成されている。
【0030】
図8は、対向電極形成装置22のうち、第1及び第2蒸着処理室84、85の構成を模式的に示した図である。
蒸着処理室84、85は、処理室内を真空状態に制御する真空制御部186と、蒸着処理用の基板2を保持する基板保持部187と、材料を加熱する蒸着源188と、蒸着処理室84、85内の粉塵を捕集する集塵部50とによって構成されている。蒸着時には真空制御部186によって室内が真空圧に制御されるようになっている。
また、基板保持部187は、基板2の縁部を支持する部材を含み、この部材には、蒸着用のパターンに対応する開口が設けられている。基板2は、蒸着源188の上方でかつ処理対象面を下向きにした状態に配置され、集塵部50は、基板2に対して下方の位置に配置されている。
【0031】
図9は、対向電極形成装置22における搬送系の構成例を基板反転装置62を主体に示している。
図9において、基板反転装置62は、水平方向、垂直方向、水平軸周りの回転方向、及び垂直軸周りの回転方向に移動自在な多関節型のロボットアーム(搬送アーム37C)と、搬送アーム37Cの摺動部に隣接した位置に粉塵を捕集する集塵部50とを有しており、搬送アーム37Cには、基板2を保持するための複数の吸着孔38が設けられている。吸着孔38は不図示の真空ポンプに接続されており、圧力差を利用して基板を吸着保持するようになっている。
【0032】
図7に戻り、封止装置23は、接着用の封止樹脂を塗布する封止樹脂塗布処理室(処理室)86、基板と封止基板とを貼り合わせる、貼り合わせ処理室(処理室)87、及び基板搬出入用の搬送系(搬送室)を備えた構成となっている。搬送系は、受け渡し装置(搬送室)64、65、及び振り分け装置(搬送室)66からなる。
この封止装置23においても、装置内に集塵部50が配置されており、また、受け渡し装置64、65の摺動部に隣接する位置に集塵部50が配置されている。
【0033】
また、上記のように有機EL装置の製造装置20内に設けられた集塵部50は、処理装置内の粉塵を効率的に捕集できる位置に配置されており、主として基板2に対向する位置に配置されることが好ましく、また、上記の処理装置及び搬送装置における摺動部に隣接する位置に配置されることが好ましい。
集塵部50の形態としては、気体の対流と共に流れる粉塵をヘパフィルタ(集塵膜)等を介して捕集する気体対流式集塵装置(気体対流式集塵手段)、帯電された粉塵を集塵電極(荷電電極)等を介して捕集する電気式集塵装置(電気式集塵手段)等を採用することが好ましい。また、複数の集塵装置(集塵手段)を一つの処理室内に配置してもよく、気体対流式集塵装置及び電気式集塵装置等の集塵原理の異なる集塵装置を複合的に配置してもよい。
集塵原理の異なる集塵装置を複合的に配置することによって、種種の特性が異なる粉塵が混在している混合粉塵を捕集する場合に、混合粉塵のうち一特性の粉塵のみを偏って捕集することがなく、混合粉塵を満遍なく捕集することができる。また、複数の集塵装置によって粉塵を捕集するので、一つの集塵装置の場合よりも集塵効率を向上させることができる。
なお、図2から図9に示すように、各処理室及び各搬送室内に配置された集塵部50は、各処理室及び各搬送室内における具体的な位置を示すものではなく、その具体的な位置は本発明の意図を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0034】
(有機EL装置の製造方法)
次に上記の有機EL装置の製造装置20による有機EL装置の製造方法について説明する。
まず、プラズマ処理装置25において、処理対象の基板2が基板投入部48を介して投入され、振り分け装置30に受け渡される。振り分け装置30は、予備加熱処理室51、第1プラズマ処理室52、第2プラズマ処理室53、及び冷却処理室54に順次基板2を搬入する。ここで、第1プラズマ処理室52、第2プラズマ処理室53においては、図3に示す集塵部50がプラズマ処理室内の粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
【0035】
更に、振り分け装置30は、プラズマ処理が施された基板2を各処理室から搬出し、基板2は振り分け装置30、及び受け渡し装置40を介して正孔注入/輸送層形成装置26に送られる。
基板2の受け渡しにあたっては、まず、図6に示す第1の搬送アーム37Aが移動して複数のピン47の上方に基板2を搬送し、その後、搬送アーム37Aが下降して基板2を複数のピン47上に搭載する。第1の搬送アーム37Aは、基板2の搭載が完了すると、複数のピン47から離れる。次に、第2の搬送アーム37Bが基板2の下に移動し、その後上昇して複数のピン47から基板2を受け取る。ここで、集塵部50が摺動部で発生する粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
【0036】
振り分け装置31は、受け渡し装置40から基板2を受け取ると、液体吐出処理室70、及び予備加熱処理室71に順次基板2を搬入する。
ここで、液体吐出処理室70においては、図5に示す集塵部50が液体吐出処理の際に発生する粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
更に、液体吐出処理及び予備加熱処理後の基板2を各処理室から搬出し、受け渡し装置41に受け渡す。振り分け装置32は、受け渡し装置41から基板2を受け取ると、基板2を加熱処理室72/冷却処理室73に搬入し、処理後の基板2を搬出する。正孔注入/輸送層形成装置26で処理された基板2は、振り分け装置32、及び受け渡し装置42、43を介して発光層形成装置27に送られる。ここで、図6に示す集塵部50が摺動部で発生する粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
【0037】
ここで、受け渡し装置42は、複数の基板2を一時的に保持するバッファ部を有している。バッファ部に保持された基板2は不図示の搬送装置により随時取り出され、受け渡し装置43に受け渡される。受け渡し装置43も同様に、複数の基板2を一時的に保持するバッファ部を有しており、バッファ部に保持された基板2は振り分け装置34によって随時取り出される。本例では、受け渡し装置42においてカセットに基板2を収納し、そのカセットを受け渡し装置43に搬送する。
【0038】
発光層形成装置27においては、振り分け装置34が受け渡し装置43から基板2を受け取ると、液体吐出処理室75、加熱処理室78/冷却処理室81に順次基板2を搬入する。
ここで、液体吐出処理室75においては、図5に示す集塵部50が液体吐出処理の際に発生する粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
更に、液体吐出処理、加熱処理及び冷却処理後の基板2を各処理室から搬出し、受け渡し装置44に受け渡す。同様に、振り分け装置35、振り分け装置36においても各処理室に対して基板2の搬出入を順次行う。発光層形成装置27で処理された基板2は、振り分け装置36、及び受け渡し装置46を介して対向電極形成装置22に送られる。
ここで、基板2の受け渡しの際に、図6に示す集塵部50が摺動部で発生する粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
また、液体吐出処理室76、77においても、上記と同様に液体吐出処理の際に発生する粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
【0039】
なお、上記機能層形成装置21では、進行方向に向かって搬送系の右側に液体吐出処理室70、75、76、77がまとめて配置され、同左側に、加熱装置及び冷却処理装置78〜83がまとめて配置されている。そのため、複数の処理装置の間で熱や振動等の相互影響が生じても、機能的に同列なもの同士であることから、その影響による不都合が生じにくい。しかも、熱源を有する加熱処理室78、79、80と、液体吐出処理室70、75、76、77とが搬送系21の両側に分けて配置されているので、加熱処理室の熱の影響が液体吐出処理室に及びにくい。そのため、熱による塗布材料の粘度変化や、塗布機構の熱変化が起こりにくく、品質の向上を図りやすいという利点を有する。
【0040】
続いて、対向電極形成装置22においては、まず、発光層形成装置27から搬送された基板2が受け渡し装置60に受け渡される(図9(a))。基板反転装置62は、受け渡し装置60から基板2を受け取ると、基板2の上下を反転させ、基板2の処理対象面(素子面)を下に向ける(図9(b))。この反転時、基板2は、吸着孔38に真空吸着され、搬送アーム37Cからの落下が防止される。次に、基板反転装置62は、上下反転させた基板2を受け渡し装置61に受け渡す(図9(c))。振り分け装置63は、受け渡し装置61から基板2を受け取ると、上下反転状態のまま、先の図7に示した第1蒸着処理室84、及び第2蒸着処理室85のいずれかに基板2を搬入する。
ここで、受け渡し装置60、61、基板反転装置62、振り分け装置63は、集塵部50を備えており、集塵部50が摺動部で発生する粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
なお、基板反転装置62の構成は、上述したものに限定されず様々な形態が適用可能である。また、基板反転装置62に代えて、振り分け装置63に反転機構を設けてもよい。
【0041】
図8に示す蒸着処理室84、85においては、真空制御部186が処理室内を真空状態に制御し、基板保持部187が基板2を保持した状態で、蒸着源188が蒸着材料を加熱し、基板2に蒸着材料が蒸着される。
この際に、蒸着処理室84、85は、集塵部50を備えているので、蒸着の際に粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
【0042】
図7に戻り、振り分け装置63は、上下反転状態のまま、第1蒸着処理室84、及び第2蒸着処理室85のいずれかに基板2を搬入するとともに、処理後の基板2を各処理室から搬出し、受け渡し装置61に受け渡す。
受け渡し装置61に受け渡された蒸着処理後の基板2は、上下反転状態のままである。基板反転装置62は、先の搬入手順と逆の手順で基板2を上下反転させながら、基板2の搬出動作を行う。すなわち、基板反転装置62は、受け渡し装置61から基板2を受け取ると、基板2の上下を反転させ、基板2の処理対象面(素子面)を上に向ける。そして、その基板2を受け渡し装置60に受け渡す。受け渡し装置60に受け渡された基板2は、封止装置23に送られる。
【0043】
封止装置23においては、振り分け装置66が受け渡し装置64から基板2を受け取ると、封止樹脂塗布処理室86、及び貼り合わせ処理室87に順次基板2を搬入するとともに、処理後の基板2を各処理室から搬出し、受け渡し装置65に受け渡す。
ここで、封止樹脂塗布処理室86、及び貼り合わせ処理室87は、集塵部50を備えているので、蒸着の際に粉塵を捕集し、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。また、受け渡し装置64、65、及び振り分け装置66においては、集塵部50が粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
【0044】
このように、本例の製造装置20では、対向電極形成装置22と封止装置23との間で基板2の上下を反転させる基板反転装置62を備え、この基板反転装置62により、対向電極(陰極)を蒸着する空間に基板2を搬出入する動作に伴って基板2の上下を反転させる。これにより、封止装置23において基板2を上向きにした処理が行われ、様々な封止材が使用できるなど、前述した様々な利点が得られる。
【0045】
なお、集塵部50による集塵工程は、上記複数の処理工程及び搬送工程の前後、もしくは同時に行われる。各工程の前後に集塵工程を行った場合には、基板2に対する粉塵の付着を未然に防止することができる。また、各工程と同時に集塵工程を行った場合には、基板2に対する粉塵の付着を常に防止することができる。
【0046】
また、上記製造装置20においては、処理対象となる基板2が配される空間を、水、酸素が排除された雰囲気とする事が好ましい。例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。これにより、基板2上に形成される層の酸化等の劣化が防止される。
【0047】
上述したように、有機EL装置の製造装置20によれば、集塵部50が製造装置20内の粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。従って、この粉塵の付着に起因するピンホール等の欠陥の発生を抑制することができると共に、有機EL装置への水分や酸素の侵入によるダークスポットの生成を抑制することができる。即ち、発光特性が優れ、長寿命化が達成された有機EL装置を製造することができる。
【0048】
(有機EL装置)
図10は、本発明の電気光学装置を有機EL装置を用いたアクティブマトリクス型の表示装置に適用した有機EL装置の実施の形態例であり、上述の製造装置20を用いて製造される有機EL装置を発光素子として備えるものである。また、この有機EL装置1は、薄膜トランジスタを用いたアクティブ型の駆動方式を採用している。
【0049】
有機EL装置1は、基板2の上に、回路素子としての薄膜トランジスタを含む回路素子部14、発光層を含む機能層110、陰極12、及び封止部3等を順次積層した構造からなる。
【0050】
基板2としては、本例ではガラス基板が用いられる。本発明における基板としては、ガラス基板の他に、シリコン基板、石英基板、セラミックス基板、金属基板、プラスチック基板、プラスチックフィルム基板等、電気光学装置や回路基板に用いられる公知の様々な基板が適用される。
基板2上には、発光領域としての複数の画素領域Aがマトリクス状に配列されており、カラー表示を行う場合、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応する画素領域Aが所定の配列で並ぶ。
各画素領域Aには、画素電極111が配置され、その近傍には信号線132、電源線133、走査線131及び図示しない他の画素電極用の走査線等が配置されている。画素領域Aの平面形状は、図に示す矩形の他に、円形、長円形など任意の形状が適用される。
【0051】
また、封止部3は、水や酸素の侵入を防いで陰極12あるいは機能層110の酸化を防止するものであり、基板2に塗布される封止樹脂、及び基板2に貼り合わされる封止基板3b(封止缶)等を含む。封止樹脂の材料としては、例えば、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等が用いられ、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂が好ましく用いられる。封止樹脂は、基板2の周縁に環状に塗布されており、例えば、マイクロディスペンサ等により塗布される。封止基板3bは、ガラスや金属等からなり、基板2と封止基板3bとは封止樹脂を介して張り合わされる。
【0052】
図11は、上記有機EL装置1の回路構造を示している。
図11において、基板2上には、複数の走査線131と、走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線132と、信号線132に並列に延びる複数の電源線133とが配線されている。また、走査線131及び信号線132の各交点ごとに上記画素領域Aが形成されている。
信号線132には、例えば、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを含むデータ側駆動回路103が接続されている。また、走査線131には、シフトレジスタ及びレベルシフタを含む走査側駆動回路104が接続されている。
【0053】
画素領域Aには、走査線131を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の第1の薄膜トランジスタ123と、この薄膜トランジスタ123を介して信号線132から供給される画像信号を保持する保持容量135と、保持容量135によって保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動用の第2の薄膜トランジスタ124と、この薄膜トランジスタ124を介して電源線133に電気的に接続したときに電源線133から駆動電流が流れ込む画素電極111(陽極)と、画素電極111と対向電極12(陰極)との間に挟み込まれる機能層110とが設けられている。機能層110は、発光層としての有機EL層を含む。
【0054】
画素領域Aでは、走査線131が駆動されて第1の薄膜トランジスタ123がオンとなると、そのときの信号線132の電位が保持容量135に保持され、この保持容量135の状態に応じて、第2の薄膜トランジスタ124の導通状態が決まる。また、第2の薄膜トランジスタ124のチャネルを介して電源線133から画素電極111に電流が流れ、更に機能層110を通じて対向電極12(陰極)に電流が流れる。そして、このときの電流量に応じて、機能層110が発光する。
【0055】
図12は、有機EL装置1における表示領域の断面構造を拡大した図である。この図12には3つの画素領域Aが図示されている。有機EL装置1は、基板2上に、TFTなどの回路等が形成された回路素子部14、機能層110が形成された発光素子部11及び陰極12が順次積層されて構成されている。
有機EL装置1においては、機能層110から基板2側に発した光が、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるとともに、機能層110から基板2の反対側に発した光が陰極12により反射されて、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるようになっている。
なお、陰極12として、透明な材料を用いることにより陰極側から発光する光を出射させることができる。透明な材料としては、ITO、Pt、Ir、Ni、もしくはPdを用いる事ができる。膜厚としては75nmほどの膜厚にする事が好ましく、この膜厚よりも薄くした方がより好ましい。
【0056】
回路素子部14には、基板2上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。なお、半導体膜141には、ソース領域141a及びドレイン領域141bが高濃度Pイオン打ち込みにより形成されている。なお、Pが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。
更に回路素子部14には、下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して、半導体膜141のソース、ドレイン領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145、146が形成されている。そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極111が所定の形状にパターニングされて形成され、一方のコンタクトホール145がこの画素電極111に接続されている。
また、もう一方のコンタクトホール146が電源線133に接続されている。
このようにして、回路素子部14には、各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。なお、回路素子部14には、前述した保持容量135及びスイッチング用の薄膜トランジスタ124も形成されているが、図12ではこれらの図示を省略している。
【0057】
発光素子部11は、複数の画素電極111…上の各々に積層された機能層110と、各画素電極111及び機能層110の間に備えられて各機能層110を区画するバンク部112とを主体として構成されている。機能層110上には陰極12が配置されている。発光素子である有機EL装置は、画素電極111、陰極12、及び機能層110等を含んで構成される。
ここで、画素電極111は、例えばITOにより形成されてなり、平面視略矩形にパターニングされて形成されている。この画素電極111の厚さは、50〜200nmの範囲が好ましく、特に150nm程度がよい。この各画素電極111…の間にバンク部112が備えられている。
【0058】
バンク部112は、図12に示すように、基板2側に位置する無機物バンク層112a(第1バンク層)と基板2から離れて位置する有機物バンク層112b(第2バンク層)とが積層されて構成されている。
【0059】
無機物バンク層、有機物バンク層(112a、112b)は、画素電極111の周縁部上に乗上げるように形成されている。平面的には、画素電極111の周囲と無機物バンク層112aとが平面的に重なるように配置された構造となっている。また、有機物バンク層112bも同様であり、画素電極111の一部と平面的に重なるように配置されている。また無機物バンク層112aは、有機物バンク層112bよりも画素電極111の中央側に更に形成されている。このようにして、無機物バンク層112aの各第1積層部112eが画素電極111の内側に形成されることにより、画素電極111の形成位置に対応する下部開口部112cが設けられている。
また、有機物バンク層112bには、上部開口部112dが形成されている。この上部開口部112dは、画素電極111の形成位置及び下部開口部112cに対応するように設けられている。上部開口部112dは、図12に示すように、下部開口部112cより広く、画素電極111より狭く形成されている。また、上部開口部112dの上部の位置と、画素電極111の端部とがほぼ同じ位置になるように形成される場合もある。この場合は、図12に示すように、有機物バンク層112bの上部開口部112dの断面が傾斜する形状となる。
そしてバンク部112には、下部開口部112c及び上部開口部112dが連通することにより、無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bを貫通する開口部112gが形成されている。
【0060】
また、無機物バンク層112aは、例えば、SiO2、TiO2等の無機材料からなることが好ましい。この無機物バンク層112aの膜厚は、50〜200nmの範囲が好ましく、特に150nmがよい。膜厚が50nm未満では、無機物バンク層112aが後述する正孔注入/輸送層より薄くなり、正孔注入/輸送層の平坦性を確保できなくなるので好ましくない。また膜厚が200nmを越えると、下部開口部112cによる段差が大きくなって、正孔注入/輸送層上に積層する後述の発光層の平坦性を確保できなくなるので好ましくない。
【0061】
更に、有機物バンク層112bは、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性のあるレジストから形成されている。この有機物バンク層112bの厚さは、0.1〜3.5μmの範囲が好ましく、特に2μm程度がよい。厚さが0.1μm未満では、後述する正孔注入/輸送層及び発光層の合計厚より有機物バンク層112bが薄くなり、発光層が上部開口部112dから溢れるおそれがあるので好ましくない。また、厚さが3.5μmを越えると、上部開口部112dによる段差が大きくなり、有機物バンク層112b上に形成する陰極12のステップガバレッジを確保できなくなるので好ましくない。また、有機物バンク層112bの厚さを2μm以上にすれば、駆動用の薄膜トランジスタ123との絶縁を高めることができる点でより好ましい。
【0062】
また、バンク部112には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域が形成されている。
親液性を示す領域は、無機物バンク層112aの第1積層部112e及び画素電極111の電極面111aであり、これらの領域は、酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理されている。また、撥液性を示す領域は、上部開口部112dの壁面及び有機物バンク層112bの上面112fであり、これらの領域は、4フッ化メタン、テトラフルオロメタン、もしくは四フッ化炭素を処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)されている。
【0063】
図12に示すように、機能層110は、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された発光層110bとから構成されている。なお、発光層110bに隣接してその他の機能を有する他の機能層を更に形成しても良い。例えば、電子輸送層を形成する事も可能である。
正孔注入/輸送層110aは、正孔を発光層110bに注入する機能を有するとともに、正孔を正孔注入/輸送層110a内部において輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを画素電極111と発光層110bの間に設けることにより、発光層110bの発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層110bでは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子が発光層で再結合し、発光が得られる。
【0064】
正孔注入/輸送層110aは、下部開口部112c内に位置して画素電極面111a上に形成される平坦部110a1と、上部開口部112d内に位置して無機物バンク層の第1積層部112e上に形成される周縁部110a2から構成されている。また、正孔注入/輸送層110aは、構造によっては、画素電極111上であって、且つ無機物バンク層112aの間(下部開口部112c)にのみ形成されている(前述に記載した平坦部にのみ形成される形態もある)。
この平坦部110a1は、その厚さが一定で例えば50〜70nmの範囲に形成される。
周縁部110a2が形成される場合においては、周縁部110a2は、第1積層部112e上に位置するとともに上部開口部112dの壁面、即ち有機物バンク層112bに密着している。また、周縁部110a2の厚さは、電極面111aに近い側で薄く、電極面111aから離れる方向に沿って増大し、下部開口部112cの壁面近くで最も厚くなっている。
周縁部110a2が上記の様な形状を示す理由としては、正孔注入/輸送層110aが、正孔注入/輸送層形成材料及び極性溶媒を含む第1組成物を開口部112内に吐出してから極性溶媒を除去して形成されたものであり、極性溶媒の揮発が主に無機物バンク層の第1積層部112e上で起こり、正孔注入/輸送層形成材料がこの第1積層部112e上に集中的に濃縮・析出されたためである。
【0065】
また発光層110bは、正孔注入/輸送層110aの平坦部110a1及び周縁部110a2上に渡って形成されており、平坦部112a1上での厚さが50〜80nmの範囲とされている。
発光層110bは、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2、及び青色(B)に発光する青色発光層110b3、の3種類を有し、各発光層110b1〜110b3がストライプ配置されている。
【0066】
上記したように、有機EL装置1は有機EL装置の製造装置20によって製造されるので、有機EL装置1内部への粉塵の混入を防止され、この粉塵の付着に起因するピンホール等の欠陥の発生を抑制することができると共に、有機EL装置1への水分や酸素の侵入によるダークスポットの生成を抑制することができる。即ち、発光特性が優れ、長寿命化が達成された有機EL装置となる。
【0067】
また、正孔注入/輸送層110aの周縁部110a2が上部開口部112dの壁面(有機物バンク層112b)に密着しているので、発光層110bが有機物バンク層112bに直接に接することがない。従って、有機物バンク層112bに不純物として含まれる水が発光層110b側に移行するのを、周縁部110a2によって阻止することができ、水による発光層110bの酸化を防止できる。
また、無機物バンク層の第1積層部112e上に不均一な厚さの周縁部110a2が形成されるため、周縁部110a2が第1積層部112eによって画素電極111から絶縁された状態となり、周縁部110a2から発光層110bに正孔が注入されることがない。これにより、画素電極111からの電流が平坦部112a1のみに流れ、正孔を平坦部112a1から発光層110bに均一に輸送させることができ、発光層110bの中央部分のみを発光させることができるとともに、発光層110bにおける発光量を一定にすることができる。
また、無機物バンク層112aが有機物バンク層112bよりも画素電極111の中央側に更に延出されているので、この無機物バンク層112aによって画素電極111と平坦部110a1との接合部分の形状をトリミングすることができ、各発光層110b間の発光強度のばらつきを抑えることができる。
また、画素電極111の電極面111a及び無機物バンク層の第1積層部112eが親液性を示すので、機能層110が画素電極111及び無機物バンク層112aに均一に密着し、無機物バンク112a上で機能層110が極端に薄くならず、画素電極111と陰極12との短絡を防止できる。
また、有機物バンク層112bの上面112f及び上部開口部112d壁面が撥液性を示すので、機能層110と有機物バンク層112bとの密着性が低くなり、機能層110が開口部112gから溢れて形成されることがない。
【0068】
なお、正孔注入/輸送層形成材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いることができる。
また、発光層110bの材料としては、例えば、ポリフルオレン誘導体か、その他に(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、またはこれらの高分子系発光層材料にペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。
【0069】
陰極12は、発光素子部11の全面に形成されており、画素電極111と対になって機能層110に電流を流す役割を果たす。この陰極12は、例えば、カルシウム層とアルミニウム層とが積層されて構成されている。このとき、発光層に近い側の陰極には仕事関数が低いものを設けることが好ましく、特にこの形態においては発光層110bに直接に接して発光層110bに電子を注入する役割を果たす。また、フッ化リチウムは発光層の材料によっては効率よく発光させるために、発光層110bと陰極12との間にLiFを形成する場合もある。
なお、赤色及び緑色の発光層110b1、1110b2にはフッ化リチウムに限らず、他の材料を用いても良い。従ってこの場合は青色(B)発光層110b3のみにフッ化リチウムからなる層を形成し、他の赤色及び緑色の発光層110b1、110b2にはフッ化リチウム以外のものを積層しても良い。また、赤色及び緑色の発光層110b1、110b2上にはフッ化リチウムを形成せず、カルシウムのみを形成しても良い。
なお、フッ化リチウムの厚さは、例えば2〜5nmの範囲が好ましく、特に2nm程度がよい。またカルシウムの厚さは、例えば2〜50nmの範囲が好ましい。
また、陰極12を形成するアルミニウムは、発光層110bから発した光を基板2側に反射させるもので、Al膜の他、Ag膜、AlとAgの積層膜等からなることが好ましい。また、その厚さは、例えば100〜1000nmの範囲が好ましく、特に200nm程度がよい。
更にアルミニウム上にSiO、SiO2、SiN等からなる酸化防止用の保護層を設けても良い。
【0070】
(有機EL装置の製造方法の詳細説明)
次に、先の図1に示した有機EL装置の製造装置20を用いた有機EL装置1を製造する方法について、図10〜図21を参照して詳しく説明する。
本例の有機EL装置の製造方法は、(1)プラズマ処理工程、(2)正孔注入/輸送層形成工程、(3)発光層形成工程、(4)対向電極(陰極)形成工程、及び(7)封止工程を含む。なお、製造方法はこれに限られるものではなく必要に応じてその他の工程が除かれる場合、また追加される場合もある。
また、製造装置20には、回路素子としての薄膜トランジスタが形成された基板2上に画素電極111、及びバンク部112が形成されたものが投入される。
【0071】
(1)プラズマ処理工程
プラズマ処理工程では、画素電極111の表面を活性化すること、更にバンク部112の表面を表面処理する事を目的として行われる。特に活性化工程では、画素電極111(ITO)上の洗浄、更に仕事関数の調整を主な目的として行っている。更に、画素電極111の表面の親液化処理、バンク部112表面の撥液化処理を行う。
【0072】
プラズマ処理工程は、(1)−1予備加熱工程、(1)−2活性化処理工程(親液性にする親液化工程)、(1)−3撥液化処理工程、及び(1)−4冷却工程とに大別される。なお、このような工程に限られるものではなく、必要に応じて工程を削減、更なる工程追加も行われる。
【0073】
まず、図2に示すプラズマ処理装置25を用いた概略の工程を説明する。
予備加熱工程は、図2に示す予備加熱処理室51において行われる。そしてこの処理室51により、バンク部形成工程から搬送された基板2を所定の温度に加熱する。
予備加熱工程の後、親液化工程及び撥液化処理工程を行う。すなわち、基板は第1、第2プラズマ処理室52、53に順次搬送され、それぞれの処理室52、53においてバンク部112にプラズマ処理を行い親液化する。この親液化処理後に撥液化処理を行う。撥液化処理の後に基板を冷却処理室に搬送し、冷却処理室54おいて基板を室温まで冷却する。この冷却工程後、搬送装置により次の工程である正孔注入/輸送層形成工程に基板を搬送する。
【0074】
以下に、それぞれの工程について詳細に説明する。
(1)−1予備加熱工程
予備加熱工程は予備加熱処理室51により行う。この処理室51において、バンク部112を含む基板2を所定の温度まで加熱する。
基板2の加熱方法は、例えば処理室51内にて基板2を載せるステージにヒータを取り付け、このヒータで当該ステージごと基板2を加熱する手段がとられている。なお、これ以外の方法を採用することも可能である。
予備加熱処理室51において、例えば70℃〜80℃の範囲に基板2を加熱する。この温度は次工程であるプラズマ処理における処理温度であり、次の工程に合わせて基板2を事前に加熱し、基板2の温度ばらつきを解消することを目的としている。
仮に予備加熱工程を加えなければ、基板2は室温から上記のような温度に加熱されることになり、工程開始から工程終了までのプラズマ処理工程中において温度が常に変動しながら処理される事になる。したがって、基板温度が変化しながらプラズマ処理を行うことは、特性の不均一につながる可能性がある。したがって、処理条件を一定に保ち、均一な特性を得るために予備加熱を行うのである。
【0075】
そこで、プラズマ処理工程においては、第1、第2プラズマ処理装置52、53内の試料ステージ上に基板2を載置した状態で親液化工程または撥液化工程を行う場合に、予備加熱温度を、親液化工程または撥液化工程を連続して行う試料ステージ56の温度にほぼ一致させることが好ましい。
そこで、第1、第2プラズマ処理装置52、53内の試料ステージが上昇する温度、例えば70〜80℃まで予め基板2を予備加熱することにより、多数の基板にプラズマ処理を連続的に行った場合でも、処理開始直後と処理終了直前でのプラズマ処理条件をほぼ一定にすることができる。これにより、基板2の表面処理条件を同一にし、バンク部112の組成物に対する濡れ性を均一化することができ、一定の品質を有する表示装置を製造することができる。
また、基板2を予め予備加熱しておくことにより、後のプラズマ処理における処理時間を短縮することができる。
また、更に集塵部50が予備加熱処理室51内の粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
【0076】
(1)−2活性化処理
つぎに第1プラズマ処理室52では、活性化処理が行われる。活性化処理には、画素電極111における仕事関数の調整、制御、画素電極表面の洗浄、画素電極表面の親液化処理が含まれる。
親液化処理として、大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。図3は第1プラズマ処理を模式的に示した図である。図3に示すように、バンク部112を含む基板2は加熱ヒータ内臓の試料ステージ56上に載置され、基板2の上側にはギャップ間隔0.5〜2mm程度の距離をおいてプラズマ放電電極57が基板2に対向して配置されている。基板2は、試料ステージ56によって加熱されつつ、試料ステージ56は図示矢印方向に向けて所定の搬送速度で搬送され、その間に基板2に対してプラズマ状態の酸素が照射される。
O2プラズマ処理の条件は、例えば、プラズマパワー100〜800kW、酸素ガス流量50〜100ml/min、基板搬送速度0.5〜10mm/sec、基板温度70〜90℃の条件で行われる。なお、試料ステージ56による加熱は、主として予備加熱された基板2の保温のために行われる。
【0077】
このO2プラズマ処理により、図13に示すように、画素電極111の電極面111a、無機物バンク層112aの第1積層部112e及び有機物バンク層112bの上部開口部112dの壁面ならびに上面112fが親液処理される。この親液処理により、これらの各面に水酸基が導入されて親液性が付与される。図14では、親液処理された部分を一点鎖線で示している。
ここで、集塵部50が第1プラズマ処理室52内の粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
なお、このO2プラズマ処理は、親液性を付与するのみならず、上述の通り画素電極であるITO上の洗浄、仕事関数の調整も兼ねている。
【0078】
(1)−3撥液処理工程
つぎに、第2プラズマ処理室53では、撥液化工程として、大気雰囲気中でテトラフルオロメタンを処理ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行う。第2プラズマ処理室53の内部構造は図3に示した第1プラズマ処理室52の内部構造と同じである。即ち、基板2は、試料ステージによって加熱されつつ、試料ステージごと所定の搬送速度で搬送され、その間に基板2に対してプラズマ状態のテトラフルオロメタン(四フッ化炭素)が照射される。
CF4プラズマ処理の条件は、例えば、プラズマパワー100〜800kW、4フッ化メタンガス流量50〜100ml/min、基板搬送速度0.5〜10mm/sec、基板温度70〜90℃の条件で行われる。なお、加熱ステージによる加熱は、第1プラズマ処理室52の場合と同様に、主として予備加熱された基板2の保温のために行われる。
ここで、集塵部50が第2プラズマ処理室53内の粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
なお、処理ガスは、テトラフルオロメタン(四フッ化炭素)に限らず、他のフルオロカーボン系のガスを用いることができる。
【0079】
CF4プラズマ処理により、図14に示すように、上部開口部112d壁面及び有機物バンク層の上面112fが撥液処理される。この撥液処理により、これらの各面にフッ素基が導入されて撥液性が付与される。図14では、撥液性を示す領域を二点鎖線で示している。有機物バンク層112bを構成するアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の有機物はプラズマ状態のフルオロカーボンが照射することで容易に撥液化させることができる。また、O2プラズマにより前処理した方がフッ素化されやすい、という特徴を有しており、本実施形態には特に有効である。
なお、画素電極111の電極面111a及び無機物バンク層112aの第1積層部112eもこのCF4プラズマ処理の影響を多少受けるが、濡れ性に影響を与える事は少ない。図14では、親液性を示す領域を一点鎖線で示している。
【0080】
(1)−4冷却工程
次に冷却工程として、冷却処理室54を用い、プラズマ処理のために加熱された基板2を管理温度まで冷却する。これは、この以降の工程である液体吐出工程の管理温度まで冷却するために行う工程である。
この冷却処理室54は、基板2を配置するためのプレートを有し、そのプレートは基板2を冷却するように水冷装置が内蔵された構造となっている。
また、プラズマ処理後の基板2を室温、または所定の温度(例えば液体吐出工程を行う管理温度)まで冷却することにより、次の正孔注入/輸送層形成工程において、基板2の温度が一定となり、基板2の温度変化が無い均一な温度で次工程を行うことができる。したがって、このような冷却工程を加えることにより、液体吐出法等の吐出手段により吐出された材料を均一に形成できる。
例えば、正孔注入/輸送層を形成するための材料を含む第1組成物を吐出させる際に、第1組成物を一定の容積で連続して吐出させることができ、正孔注入/輸送層を均一に形成することができる。
ここで、集塵部50が冷却処理室54内の粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
【0081】
上記のプラズマ処理工程では、材質が異なる有機物バンク層112b及び無機物バンク層112aに対して、O2プラズマ処理とCF4プラズマ処理とを順次行うことにより、バンク部112に親液性の領域と撥液性の領域を容易に設けることができる。
また、上記プラズマ装置は、大気圧下の装置でなくとも、真空下のプラズマ装置を用いても良い。
【0082】
(2)正孔注入/輸送層形成工程
次に正孔注入/輸送層形成工程では、先の図2に示した正孔注入/輸送層形成装置26を用いて電極(ここでは画素電極111)上に正孔注入/輸送層を形成する。
正孔注入/輸送層形成工程では、液体吐出法を用いることにより、正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物(組成物)を電極面111a上に吐出する。その後に乾燥処理及び熱処理を行い、画素電極111上及び無機物バンク層112a上に正孔注入/輸送層110aを形成する。なお、正孔注入/輸送層110aが形成された無機物バンク層112aをここでは第1積層部112eという。
この正孔注入/輸送層形成工程を含めこれ以降の工程は、水、酸素の無い雰囲気とする事が好ましい。例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0083】
なお、正孔注入/輸送層110aは第1積層部112e上に形成されないこともある。すなわち、画素電極111上にのみ正孔注入/輸送層が形成される形態もある。
【0084】
液体吐出法による層の形成方法は以下の通りである。
図15に示すように、液体吐出ヘッドH1に形成された複数のノズルから正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物を吐出する。ここでは液体吐出ヘッドを走査することにより各画素毎に組成物を充填しているが、基板2を走査することによっても可能である。更に、液体吐出ヘッドと基板2とを相対的に移動させることによっても組成物を充填させることができる。なお、これ以降の液体吐出ヘッドを用いて行う工程では上記の点は同様である。
【0085】
液体吐出ヘッドによる吐出は以下の通りである。すなわち、液体吐出ヘッドH1に形成されてなる吐出ノズルH2を電極面111aに対向して配置し、ノズルH2から第1組成物を吐出する。画素電極111の周囲には下部開口部112cを区画するバンク部112が形成されており、この下部開口部112c内に位置する画素電極面111aに液体吐出ヘッドH1を対向させ、この液体吐出ヘッドH1と基板2とを相対移動させながら、吐出ノズルH2から1滴当たりの液量が制御された第1組成物滴110cを電極面111a上に吐出する。
【0086】
ここで用いる第1組成物としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物を、極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
より具体的な第1組成物の組成としては、PEDOT/PSS混合物(PEDOT/PSS=1:20):12.52重量%、PSS:1.44重量%、IPA:10重量%、NMP:27.48重量%、DMI:50重量%のものを例示できる。なお、第1組成物の粘度は2〜20Ps程度が好ましく、特に4〜15cPs程度が良い。
上記の第1組成物を用いることにより、吐出ノズルH2に詰まりが生じることがなく安定吐出できる。
なお、正孔注入/輸送層形成材料は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各発光層110b1〜110b3に対して同じ材料を用いても良く、各発光層毎に変えても良い。
【0087】
図15に示すように、吐出された第1組成物滴110cは、親液処理された電極面111a及び第1積層部112e上に広がり、下部、上部開口部112c、112d内に充填される。仮に、第1組成物滴110cが所定の吐出位置からはずれて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが第1組成物滴110cで濡れることがなく、はじかれた第1組成物滴110cが下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0088】
電極面111a上に吐出する第1組成物量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする正孔注入/輸送層の厚さ、第1組成物中の正孔注入/輸送層形成材料の濃度等により決定される。
また、第1組成物滴110cは1回のみならず、数回に分けて同一の電極面111a上に吐出しても良い。この場合、各回における第1組成物の量は同一でも良く、各回毎に第1組成物を変えても良い。更に電極面111aの同一箇所のみならず、各回毎に電極面111a内の異なる箇所に第1組成物を吐出しても良い。
【0089】
液体吐出ヘッドの構造については、図4のようなヘッドHを用いる事ができる。更に、基板と液体吐出ヘッドの配置に関しては図5のように配置することが好ましい。図5中、符号H7は前記の液体吐出ヘッドH1を支持する支持基板であり、この支持基板H7上に複数の液体吐出ヘッドH1が備えられている。
液体吐出ヘッドH1のインク吐出面(基板との対向面)には、ヘッドの長さ方向に沿って列状に、且つヘッドの幅方向に間隔をあけて2列で吐出ノズルが複数(例えば、1列180ノズル、合計360ノズル)設けられている。また、この液体吐出ヘッドH1は、吐出ノズルを基板側に向けるとともに、X軸(またはY軸)に対して所定角度傾いた状態で略X軸方向に沿って列状に、且つY方向に所定間隔をあけて2列に配列された状態で平面視略矩形状の支持板20に複数(図5では1列6個、合計12個)位置決めされて支持されている。
また図5に示す液体吐出装置において、符号1115は基板2を載置するステージであり、符号1116はステージ1115を図中x軸方向(主走査方向)に案内するガイドレールである。またヘッドHは、支持部材1111を介してガイドレール1113により図中y軸方向(副主走査方向)に移動できるようになっており、更にヘッドHは図中θ軸方向に回転できるようになっており、液体吐出ヘッドH1を主走査方向に対して所定の角度に傾けることができるようになっている。このように、液体吐出ヘッドを走査方向に対して傾けて配置することにより、ノズルピッチを画素ピッチに対応させることができる。また、傾き角度調整することにより、どのような画素ピッチに対しても対応させることができる。
【0090】
また、図5に示す基板2は、マザー基板に複数のチップを配置した構造となっている。即ち、1チップの領域が1つの表示装置に相当する。ここでは、3つの表示領域2aが形成されているが、これに限られるものではない。例えば、基板2上の左側の表示領域2aに対して組成物を塗布する場合は、ガイドレール1113を介してヘッドHを図中左側に移動させるとともに、ガイドレール1116を介して基板2を図中上側に移動させ、基板2を走査させながら塗布を行う。次に、ヘッドHを図中右側に移動させて基板の中央の表示領域2aに対して組成物を塗布する。右端にある表示領域2aに対しても前記と同様である。
なお、図4に示すヘッドH及び図5に示す液体吐出装置は、正孔注入/輸送層形成工程のみならず、発光層形成工程にも用いるとよい。
【0091】
次に、図16に示すような乾燥工程を行う。乾燥工程を行う事により、吐出後の第1組成物を乾燥処理し、第1組成物に含まれる極性溶媒を蒸発させ、正孔注入/輸送層110aを形成する。
乾燥処理を行うと、第1組成物滴110cに含まれる極性溶媒の蒸発が、主に無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bに近いところで起き、極性溶媒の蒸発に併せて正孔注入/輸送層形成材料が濃縮されて析出する。
これにより図17に示すように、第1積層部112e上に、正孔注入/輸送層形成材料からなる周縁部110a2が形成される。この周縁部110a2は、上部開口部112dの壁面(有機物バンク層112b)に密着しており、その厚さが電極面111aに近い側では薄く、電極面111aから離れた側、即ち有機物バンク層112bに近い側で厚くなっている。
【0092】
また、これと同時に、乾燥処理によって電極面111a上でも極性溶媒の蒸発が起き、これにより電極面111a上に正孔注入/輸送層形成材料からなる平坦部110a1が形成される。電極面111a上では極性溶媒の蒸発速度がほぼ均一であるため、正孔注入/輸送層の形成材料が電極面111a上で均一に濃縮され、これにより均一な厚さの平坦部110a1が形成される。
このようにして、周縁部110a2及び平坦部110a1からなる正孔注入/輸送層110aが形成される。
なお、周縁部110a2には形成されず、電極面111a上のみに正孔注入/輸送層が形成される形態であっても構わない。
【0093】
上記の乾燥処理は、例えば窒素雰囲気中、室温で圧力を例えば133.3Pa(1Torr)程度にして行う。圧力が低すぎると第1組成物滴110cが突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、極性溶媒の蒸発速度が高まり、平坦な膜を形成する事ができない。
乾燥処理後は、窒素中、好ましくは真空中で200℃で10分程度加熱する熱処理を行うことで、正孔注入/輸送層110a内に残存する極性溶媒や水を除去することが好ましい。
【0094】
上記の正孔注入/輸送層形成工程では、吐出された第1組成物滴110cが、下部、上部開口部112c、112d内に満たされる一方で、撥液処理された有機物バンク層112bで第1組成物がはじかれて下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。これにより、吐出した第1組成物滴110cを必ず下部、上部開口部112c、112d内に充填することができ、電極面111a上に正孔注入/輸送層110aを形成することができる。
ここで、集塵部50が液体吐出処理室70及び予備加熱処理室71内の粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
【0095】
(3)発光層形成工程
次に発光層形成工程は、発光層形成材料吐出工程、および乾燥工程、とからなり、先の図2に示した発光層形成装置27を用いて行われる。
【0096】
発光層形成工程として、液体吐出法により、発光層形成材料を含む第2組成物を正孔注入/輸送層110a上に吐出した後に乾燥処理して、正孔注入/輸送層110a上に発光層110bを形成する。
【0097】
図18に、液体吐出法を示す。図18に示すように、液体吐出ヘッドH5と基板2とを相対的に移動し、液体吐出ヘッドに形成された吐出ノズルH6から各色(たとえばここでは青色(B))発光層形成材料を含有する第2組成物が吐出される。
吐出の際には、下部、上部開口部112c、112d内に位置する正孔注入/輸送層110aに吐出ノズルを対向させ、液体吐出ヘッドH5と基板2とを相対移動させながら、第2組成物が吐出される。吐出ノズルH6から吐出される液量は1滴当たりの液量が制御されている。このように液量が制御された液(第2組成物滴110e)が吐出ノズルから吐出され、この第2組成物滴110eを正孔注入/輸送層110a上に吐出する。
【0098】
発光層形成材料としては、ポリフルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープして用いる事ができる。例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープすることにより用いることができる。
【0099】
非極性溶媒としては、正孔注入/輸送層110aに対して不溶なものが好ましく、例えば、シクロへキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等を用いることができる。
このような非極性溶媒を発光層110bの第2組成物に用いることにより、正孔注入/輸送層110aを再溶解させることなく第2組成物を塗布できる。
【0100】
図18に示すように、吐出された第2組成物110eは、正孔注入/輸送層110a上に広がって下部、上部開口部112c、112d内に満たされる。その一方で、撥液処理された上面112fでは第1組成物滴110eが所定の吐出位置からはずれて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが第2組成物滴110eで濡れることがなく、第2組成物滴110eが下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0101】
各正孔注入/輸送層110a上に吐出する第2組成物量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする発光層110bの厚さ、第2組成物中の発光層材料の濃度等により決定される。
また、第2組成物110eは1回のみならず、数回に分けて同一の正孔注入/輸送層110a上に吐出しても良い。この場合、各回における第2組成物の量は同一でも良く、各回毎に第2組成物の液量を変えても良い。更に正孔注入/輸送層110aの同一箇所のみならず、各回毎に正孔注入/輸送層110a内の異なる箇所に第2組成物を吐出配置しても良い。
【0102】
次に、第2の組成物を所定の位置に吐出し終わった後、吐出後の第2組成物滴110eを乾燥処理することにより発光層110b3が形成される。すなわち、乾燥により第2組成物に含まれる非極性溶媒が蒸発し、図19に示すような青色(B)発光層110b3が形成される。なお、図19においては青に発光する発光層が1つのみ図示されているが、図10やその他の図より明らかなように本来は発光素子がマトリックス状に形成されたものであり、図示しない多数の発光層(青色に対応)が形成されている。
【0103】
続けて、図20に示すように、前述した青色(B)発光層110b3の場合と同様の工程を用い、赤色(R)発光層110b1を形成し、最後に緑色(G)発光層110b2を形成する。
なお、発光層110bの形成順序は、前述の順序に限られるものではなく、どのような順番で形成しても良い。例えば、発光層形成材料に応じて形成する順番を決める事も可能である。
【0104】
また、発光層の第2組成物の乾燥条件は、青色110b3の場合、例えば、窒素雰囲気中、室温で圧力を133.3Pa(1Torr)程度として5〜10分行う条件とする。圧力が低すぎると第2組成物が突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、非極性溶媒の蒸発速度が高まり、発光層形成材料が上部開口部112d壁面に多く付着してしまうので好ましくない。
また緑色発光層110b2、および赤色発光層110b1の場合、発光層形成材料の成分数が多いために素早く乾燥させることが好ましく、例えば、40℃で窒素の吹き付けを5〜10分行う条件とするのがよい。
その他の乾燥の手段としては、遠赤外線照射法、高温窒素ガス吹付法等を例示できる。
このようにして、画素電極111上に正孔注入/輸送層110a及び発光層110bが形成される。
ここで、集塵部50が液体吐出処理室75、76、77、加熱処理室78、79、80、及び冷却処理室81、82、83内の粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
【0105】
(4)対向電極(陰極)形成工程
次に対向電極形成工程では、図21に示すように、発光層110b及び有機物バンク層112bの全面に陰極12(対向電極)を形成する。
陰極12は複数の材料を積層して形成しても良い。例えば、発光層に近い側には仕事関数が小さい材料を形成することが好ましく、例えばCa、Ba等を用いることが可能であり、また材料によっては下層にLiF等を薄く形成した方が良い場合もある。また、上部側(封止側)には下部側よりも仕事関数が高い材料、例えばAlを用いる事もできる。
フッ化リチウムは、発光層110b上のみに形成しても良く、更に所定の色に対応して形成する事ができる。例えば、青色(B)発光層110b3上のみに形成しても良い。この場合、他の赤色(R)発光層及び緑色(G)発光層110b1、110b2には、カルシウムからなる上部陰極層が接することとなる。
これらの陰極12は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等を用いて形成することが可能であるが、熱による発光層110bの損傷を防止する上で、本例では蒸着法を用いる。すなわち、先の図7に示した第1蒸着処理室84、及び第2蒸着処理室85に基板2を下向きに配置し、材料を加熱して蒸発させることにより、陰極12を形成する。このとき、第1蒸着処理室84と第2蒸着処理室85とで、異なる材料を用い、双方の処理室に基板を順次搬入して蒸着を行うことで積層膜を形成できる。
また、陰極12の上部には、Al膜、Ag膜等を用いることが好ましい。また、その厚さは、例えば100〜1000nmの範囲が好ましく、特に200〜500nm程度がよい。
また、陰極12上に、酸化防止のためにSiO2、SiN等の保護層を設けても良い。
ここで、集塵部50が、第1蒸着処理室84、第2蒸着処理室85内の粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。従って、この粉塵の付着に起因するピンホール等の欠陥の発生を抑制することができると共に、有機EL装置への水分や酸素の侵入によるダークスポットの生成を抑制することができる。即ち、発光特性が優れ、長寿命化が達成された有機EL装置を製造することができる。
【0106】
(5)封止工程
最後に封止工程は、先の図7に示した封止装置23を用いて、発光素子が形成された基板2と封止基板3bとを封止材(封止樹脂など)を介して封止する。
本例では、先の図7に示した封止樹脂塗布処理室86を用いて、熱硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂からなる封止樹脂を基板2の周縁部に塗布し、貼り合わせ処理室87を用いて、封止樹脂上に封止基板3bを配置する。この工程により先の図2に示した構成の封止部が形成される。
ここで、集塵部50が、封止樹脂塗布処理室86及び貼り合わせ処理室87内の粉塵を捕集するので、基板2に対する粉塵の付着を防止することができる。
封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、陰極12にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が陰極12に侵入して陰極12が酸化されるおそれがあるので好ましくない。
【0107】
以上のプロセスにより、有機EL装置が完成する。
この後、基板2の配線に陰極12を接続するとともに、基板2上あるいは外部に設けられる駆動IC(駆動回路)に回路素子部14(図10参照)の配線を接続することにより、本例の有機EL装置1が完成する。
【0108】
<第2実施形態>
図22は、本発明の第2実施形態の有機EL装置の製造装置を示す図である。図22は、蒸着により発光層を形成するための蒸着装置であり、図1に示した発光層形成装置27に代わって有機EL装置の製造装置20に設けられたものである。本実施形態の蒸着装置を除く他の構成要素は、第1実施形態と同一構成であり、同一符号を付している。
本実施形態においては、第1実施形態と異なる部分について説明し、その他の同一部分は説明を省略する。第1実施形態と本実施形態との相違点について概略説明すると、第1実施形態の発光層形成工程は、発光層形成材料として高分子系発光層材料を用いており、液体吐出法により当該高分子系発光層材料を吐出し、発光層を形成するものであった。これに対し、本実施形態の発光層形成工程は、発光層形成材料として低分子系発光層材料を用いており、マスク蒸着によって当該低分子系発光層材料を基板に所定のパターンを形成するものである。以下に詳細について説明する。
【0109】
図22に示すように、蒸着装置200は、真空制御部186と、蒸着源230と、集塵部50と、所定間隔のスリットを複数有したマスク210と、基板2を保持する保持機構210と、発光層のパターンのピッチ幅に応じて保持機構210の位置を合わせる位置合わせ機構220とによって構成されている。また、蒸着源230は、蒸着する発光層の各発光色(RGB)毎に応じて、蒸着源230R、蒸着源230G、蒸着源230Bの選択的に蒸着装置200内に設置されるようになっており、各蒸着源はそれぞれ各色の低分子系発光層材料を有している。
【0110】
また、低分子系発光層材料としては、アントラセンやピレン、そして8−ヒドロキシキノリンアルミニウムの他には、例えば、ビススチリルアントラセン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体等が採用される。また、発光層に添加するドーパントとしては、ルブレン、キナクリドン誘導体、フェノキサゾン誘導体、DCM、DCJ、ペリノン、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ジアザインダセン誘導体などが採用される。
【0111】
次に、このように構成された蒸着装置200を用いた発光層の形成方法について、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の順に発光層を形成する場合を説明する。まず、蒸着源230Rを蒸着装置200内に配置し、これを加熱することにより、赤色発光層材料は気化し、マスク210を介して基板2に付着する。この際に、マスク210は所定間隔のスリットを有しているので、スリットの形状に応じて、赤色発光層材料が基板2にパターニングされる。
【0112】
次に、蒸着源230Rに代わって蒸着源230Gを蒸着装置200内に配置すると共に、位置合わせ機構220が保持機構210をマスク210のスリット幅だけ移動する。更に、蒸着源230Gを加熱することによって、緑色発光層材料は気化し、所定のパターンで基板2に付着する。
以下、同様に、蒸着源230Bを蒸着装置200内に配置し、位置合わせ機構220によって保持機構210をマスク210のスリット幅だけ移動する。更に、蒸着源230Bが有する緑色発光層材料を気化させて、基板2に付着することによって、青色発光層材料がパターニングされる。
このように一連の発光層材料のパターニングによって、基板2にRGBの発光層が等間隔に形成される。
更に、蒸着装置200は、集塵部50を備えているので、蒸着装置200における一連の動作によって生じる粉塵、及び基板2が蒸着装置200内に持ち込む粉塵等は、集塵部50によって捕集される。
【0113】
上述したように、本実施形態によれば、マスク蒸着によって低分子系有機発光層を基板に所定のパターンを形成することができる。また、集塵部50が粉塵を捕集するので、基体に対する粉塵の付着を防止することができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、集塵部50の位置は、第1実施形態で説明したように基板2に対向する位置に配置されることが好ましい。また、図22における集塵部50の位置は具体的な位置を示すものではなく、その具体的な位置は本発明の意図を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0114】
(電子機器)
図23(a)〜(c)は、本発明の電子機器の実施の形態例を示している。
本例の電子機器は、上述した有機EL表示装置等の本発明の電気光学装置を表示手段として備えている。
図23(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図23(a)において、符号600は携帯電話本体を示し、符号601は前記の表示装置を用いた表示部を示している。
図23(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図23(b)において、符号700は情報処理装置、符号701はキーボードなどの入力部、符号703は情報処理装置本体、符号702は前記の表示装置を用いた表示部を示している。
図23(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図23(c)において、符号800は時計本体を示し、符号801は前記の表示装置を用いた表示部を示している。
図23(a)〜(c)に示すそれぞれの電子機器は、本発明の電気光学装置を表示手段として備えているので、発光特性が優れ、長寿命の表示部を備えた電子機器となる。
【0115】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機EL装置の製造装置を模式的に示す図。
【図2】機能層形成装置の構成を模式的に示す図。
【図3】第1及び第2プラズマ処理室の要部を示す図。
【図4】液体吐出ヘッドを示す平面図。
【図5】液体吐出装置を示す平面図。
【図6】振り分け装置及び受け渡し装置を含む搬送系の構成を示す図。
【図7】対向電極形成装置、及び封止装置を示す図。
【図8】蒸着処理室の構成例を模式的に示す図。
【図9】対向電極形成装置における搬送系の構成例を示す図。
【図10】有機EL表示装置の構成を模式的に示す図。
【図11】有機EL表示装置の回路の一例を示す回路図。
【図12】有機EL表示装置の表示領域の断面構造を拡大した図。
【図13】有機EL装置の製造方法を説明する工程図。
【図14】有機EL装置の製造方法を説明する工程図。
【図15】有機EL装置の製造方法を説明する工程図。
【図16】有機EL装置の製造方法を説明する工程図。
【図17】有機EL装置の製造方法を説明する工程図。
【図18】有機EL装置の製造方法を説明する工程図。
【図19】有機EL装置の製造方法を説明する工程図。
【図20】有機EL装置の製造方法を説明する工程図。
【図21】有機EL装置の製造方法を説明する工程図。
【図22】第2実施形態の蒸着装置を示す図。
【図23】本発明の電子機器の実施の形態例を示す図。
【符号の説明】
1 有機EL装置、2 基板(基体)、12 陰極(対向電極、電極)、20 製造装置、50 集塵部、51 予備加熱処理室(処理室)、52 第1プラズマ処理室(処理室)、53 第2プラズマ処理室(処理室)、54 冷却処理室(処理室)、71 予備加熱処理室(処理室)、72、78、79、80 加熱処理室(処理室)、73、81、82、83 冷却処理室(処理室)、70、75、76、77 液体吐出処理室(液体材料吐出手段)、30、31、32、34、35、36、63、66 振り分け装置(搬送室)、48 基板投入部(搬送室)、40、41、42、43、44、45、46、60、61、64、65受け渡し装置(搬送室)、62 基板反転装置(搬送室)、84 第1蒸着処理室(蒸着装置)、85 第2蒸着処理室(蒸着装置)、86 封止樹脂塗布処理室(処理室)、87 貼り合わせ処理室(処理室)、200 蒸着装置

Claims (13)

  1. 処理室内に基体を配置し、前記基体上に有機EL素子又は電極層を形成することにより有機EL装置を製造するための製造装置であって、
    前記処理室内の粉塵を捕集する集塵部を備えることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
  2. 前記集塵部は、前記基体に対向する位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置の製造装置。
  3. 複数の処理室と、前記複数の処理室の間で基体を搬送する搬送室とを備え、
    前記複数の処理室と前記搬送室とのうち少なくとも一方に、粉塵を捕集する集塵部が配置されることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
  4. 前記複数の処理室又は前記搬送室は摺動部を有し、前記集塵部は、前記摺動部に隣接して配置されることを特徴とする請求項3に記載の有機EL装置の製造装置。
  5. 前記複数の処理室のうち、少なくとも一つの処理室は、前記基体上に液体材料を吐出する液体材料吐出手段を備え、
    前記集塵部は、前記処理室の処理空間内で前記基体の上方に配置されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の有機EL装置の製造装置。
  6. 有機EL装置を構成する正孔注入層、有機EL層、電子注入層及び電極のうち、少なくとも1層を基体上に形成するための蒸着装置を備え、
    前記蒸着装置の処理空間内で前記基体の下方に、粉塵を捕集する集塵部が配置されることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
  7. 前記集塵部は、集塵原理が異なる複数の集塵手段が複合していることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれかに記載の有機EL装置の製造装置。
  8. 前記集塵部は、気体の対流と共に流れる粉塵を集塵膜を介して捕集する気体対流式集塵手段と、帯電された粉塵を集塵電極を介して捕集する電気式集塵手段とが複合していることを特徴とする請求項7に記載の有機EL装置の製造装置。
  9. 基体上に有機EL素子又は電極層を形成することにより有機EL装置を製造するための製造方法であって、
    複数の処理工程と、前記基体を搬送する搬送工程と、
    前記基体が配置される空間内の粉塵を捕集する集塵工程と、
    を備えることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
  10. 前記複数の処理工程と前記搬送工程とのうち少なくとも一方の工程の前後に前記集塵工程を行うことを特徴とする請求項9に記載の有機EL装置の製造方法。
  11. 前記複数の処理工程と前記搬送工程とのうち少なくとも一方の工程と同時に前記集塵工程を行うことを特徴とする請求項9に記載の有機EL装置の製造方法。
  12. 請求項1から請求項8のうちいずれかに記載の製造装置によって製造されたことを特徴とする有機EL装置。
  13. 請求項12に記載の有機EL装置を表示手段として備えることを特徴とする電子機器。
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