JP2004170757A - 液晶プロジェクタ装置用偏光板及びその製造方法 - Google Patents

液晶プロジェクタ装置用偏光板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】偏光板の一部を構成するサファイア基板上に耐熱性の良好な広帯域反射防止膜を形成した液晶プロジェクタ装置用偏光板の製造方法を提供する。
【解決手段】光をレンズ光学系、偏光板20を介して液晶パネルに照射し、前記液晶パネルから反射した反射光を出射する構成の液晶プロジェクタ装置における、偏光板20の一部を構成するサファイア基板27の表面上に、波長430nmから波長680nmの光帯域に亘って、反射率が0.4%以下となる反射防止膜30を、真空蒸着により多層の酸化物薄膜により積層形成する液晶プロジェクタ装置用偏光板の製造方法であって、10mPaから20mPaの真空度に保持したサファイア基板27の表面上に60秒から600秒の間、酸素イオンを照射し、引き続き前記酸素イオンを照射しながら、前記サファイア基板27の表面上に前記多層薄膜を真空蒸着により積層して、反射防止膜30を形成する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶プロジェクタ装置用偏光板及びその製造方法に係り、特に、偏光板の一部を構成するサファイア基板上に、強い光が照射された高温下においても、微細な剥離の発生しない多重酸化膜からなる反射防止膜を好適に形成した液晶プロジェクタ用偏光板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、画像表示装置の一つとして、液晶プロジェクタ装置が使用されている。近年は、液晶パネルの高精細化・光源の高輝度化により、表示画像の向上が図られている。
この液晶プロジェクタ装置は、例えば、図6に示すように構成されている。
【0003】
図6は、単板式液晶プロジェクタ装置を示す構成図である。
光源1は、メタルハライドランプ・キセノンランプ等の高輝度ランプ光源である。この光源1から投射された光は、球面反射鏡2により反射され、赤外線や紫外線等をカットするフィルタ3を透過して、不要な赤外線・紫外線が除去される。その後、インテグレータレンズ4、集光レンズ5を透過して集光された後、入射側の偏光板6を通過して、液晶パネル8に入射する。液晶パネル8に入射した光は液晶により変調されて、液晶パネル8より出射する。液晶パネル8から出射した光は、出射側の偏光板7を透過後、投影レンズ9により拡大投影されて、前方のスクリーン(図示しない)等に画像として映し出させる。
【0004】
この構造は、カラーフィルタを備えた液晶パネル1枚を用いた単板式の透過型のものである。この単板式に加え、RGB3原色の光源分解光に対応して、3枚の液晶パネルを組み込んだ3板式も一般的に知られている。
また、この透過型に対して、反射型液晶パネルにおいて光を反射させて変調して取り出す、反射型の液晶プロジェクタ装置も一般に知られている。
【0005】
これらの液晶プロジェクタ装置の場合、液晶画像形成部に偏光板6、7を用いているが、光源1からの光は、これらの偏光板6,7で大幅に吸収される。
これに対して、一層の高精細化・高輝度化が求められるため、光源1として、ますます高出力のランプが選択されるようになっている。
このため、偏光板での光の吸収による発熱が増大し、その発熱の放熱が重大な問題となり、その冷却対策が種々おこなわれている。その一つとして、偏光板の一部を構成する基板として、熱伝導性の良好なサファイア基板を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−206507号公報(第4−5頁、第3−4図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、偏光板の基板として、サファイア基板を使用する場合には、透過する光の効率を上げるために、反射防止膜をその表面に形成する。可視光全帯域の反射防止膜としては、一般に高屈折率膜、中屈折率膜及び低屈折率膜を組み合わせた多層膜を用いる。
【0008】
例えば、サファイア基板の場合、基板表面がC軸に平行であると、屈折率nは1.78となるので、例えば、波長430nmから680nmの全帯域で反射率0.4%以下の反射防止膜を形成するためには、以下の表1に示すような、構成の6層の多層膜を成膜形成することが必要である。
ここでは、サファイア基板上に、順次形成したジルコニア(ZrO)、アルミナ(Al)、ジルコニア、アルミナ、ジルコニア及びフッ化マグネシウム(MgF)からなる6層膜を示してある。
【0009】
【表1】
Figure 2004170757
【0010】
一般に、これら酸化物薄膜の成膜には、膜付着力、光学特性及び安定性(信頼性)を確保するために、基板を温度約250℃±50℃に保持した、5mPa程度の真空中での電子ビーム(以下、単にEBともいう)蒸着法が用いられる。
これには、図4に示す電子ビーム蒸着装置が用いられる。
【0011】
図4は、一般的な電子ビーム蒸着装置を示す構成図である。
同図に示すように、電子ビーム蒸着装置50においては、真空槽54内は、真空ポンプ55により所定の真空度の真空に排気される。所定の真空度で、電子銃56より電子ビーム61が蒸発源57に放射される。電子ビーム61の照射により、蒸発源57が加熱されて、そこに配置された蒸着材料が蒸発し、蒸気流65となって放射される。この蒸気流65が、基板ホルダ52に保持・加熱された基板53の表面上に到達堆積して、薄膜が形成される。
蒸発源57は蒸着材料の種類だけ用意されており、順次、蒸着材料が蒸発されて、多層膜からなる反射防止膜を形成することができる。
【0012】
しかしながら、この電子ビーム蒸着法で成膜した反射防止膜の形成されたサファイア基板を、液晶プロジェクタ装置用の光学部品として用いることができるように、高温耐久性を調べるため、例えば、−20℃と+60℃の繰り返しヒートショック試験(高温耐久性の加速試験である。)を行うと、数μmオーダーの極微小な膜剥離(以下、マイクロ剥離という)がサファイア基板と反射防止膜間に発生することが分かった。さらに、このマイクロ剥離のあるサファイア基板を用いて液晶プロジェクタ装置の光学部品例えば偏光板を構成すると、コントラスの低下など画像劣化の問題を生じることが分かった。
ここで、マイクロ剥離は、幅が数百nm、長さ数μm〜数十μmに亘っており、光学顕微鏡で観察すると、灰色に見える。
【0013】
これに対して、薄膜付着についてさらに信頼性を高める(薄膜付着力を増加させる)ための薄膜の形成方法としては、一般に、所謂、イオンアシスト蒸着(以下、単にIADともいう)法が知られている。
図5は、一般的なイオンガン付電子ビーム蒸着装置を示す構成図である。
同図に示すように、周知のイオンガン付電子ビーム蒸着装置50Aは、電子ビーム蒸着装置50にイオンガン58を追加したものであり、イオンガン58はそこに導入される例えばアルゴンガス(Ar)をイオン化し、イオン化したアルゴン(アルゴンイオン:Ar)を電界により加速して、イオン流66とし、これを蒸着時に基板53に照射できるようになっている。なお、以下、イオン流66を基板53に照射することを、単にイオンアシストともいう
【0014】
このIAD法を用いて、サファイア基板上に反射防止膜を形成し、その基板に上述のヒートショック試験をおこなったところ、マイクロ剥離の数が減少することが認められる。しかしながら、改善効果は見られるものの、これを皆無にできないという問題がある。
【0015】
そこで、本発明は上記問題を解決し、液晶プロジェクタ装置用偏光板及びその製造方法において、偏光板の一部を構成するサファイア基板上に高温においても膜剥離を生じない耐熱性の良好な広帯域反射防止膜を形成した液晶プロジェクタ装置用偏光板及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段として、第1の発明は、光源からの光をレンズ光学系、偏光板を介して液晶パネルに照射し、前記液晶パネルから反射した反射光を出射する構成の液晶プロジェクタ装置における、前記偏光板20の一部を構成するサファイア基板27の表面上に、波長430nmから波長680nmの光帯域に亘って、反射率が0.4%以下となる反射防止膜30を、真空蒸着により多層の酸化物薄膜により積層形成する液晶プロジェクタ装置用偏光板の製造方法であって、
10mPaから20mPaの真空度に保持した前記サファイア基板27の表面上に60秒から600秒の間、酸素イオンを照射し、引き続き前記酸素イオンを照射しながら、前記サファイア基板の表面上に前記多層薄膜を真空蒸着により積層して、前記反射防止膜30を形成することを特徴とする液晶プロジェクタ装置用偏光板の製造方法である。
また、第2の発明は、第1の発明に記載の液晶プロジェクタ装置用偏光板の製造方法によって製造された液晶プロジェクタ装置用偏光板20であって、
多層の酸化物薄膜を積層してなる反射防止膜30が一方の面上に形成されたサファイア基板27と、前記サファイア基板27の他方の面上に形成された接着層25と、前記接着層25上に形成された偏光膜24と、を有することを特徴とする液晶プロジェクタ装置用偏光板である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき、好ましい実施例により、図面を参照して説明する。なお、参照符号については、従来例の構成と同一の構成には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0018】
本発明の液晶プロジェクタ装置用偏光板の製造方法は、光源からの光をレンズ光学系、偏光板を介して液晶パネルに照射し、前記液晶パネルから反射した反射光を出射する構成の液晶プロジェクタ装置における、前記偏光板の一部を構成するサファイア基板の表面上に、波長430nmから波長680nmの光帯域に亘って、反射率が0.4%以下となる反射防止膜を、真空蒸着により多層の酸化物薄膜により積層形成する液晶プロジェクタ装置用偏光板の製造方法であって、10mPaから20mPaの真空度に保持した前記サファイア基板の表面上に60秒から600秒の間、酸素イオンを照射し、引き続き前記酸素イオンを照射しながら、前記サファイア基板の表面上に前記多層薄膜を真空蒸着により積層して、前記反射防止膜を形成するものである。
また、本発明の液晶プロジェクタ装置用偏光板は、上述した本発明の液晶プロジェクタ装置用偏光板の製造方法によって製造された液晶プロジェクタ装置用偏光板であって、多層の酸化物薄膜を積層してなる反射防止膜が一方の面上に形成されたサファイア基板と、前記サファイア基板の他方の面上に形成された接着層と、前記接着層上に形成された偏光膜と、を有するものである。
【0019】
<実施例>
まず、本発明の液晶プロジェクタ装置用偏光板について説明する。
図1は、本発明の液晶プロジェクタ装置用偏光板の実施例を示す構成図である。
同図に示すように、液晶プロジェクタ装置に用いられる偏光板20においては、透明な白板ガラスからなる基板22の一方の面上に接着剤23を介して偏光膜24が接着固定されている。基板22の他方の面上には反射防止膜21が形成されている。偏光膜24上には、接着層25を介してサファイア基板27が接着固定されている。サファイア基板27の接着層25側に接する面上には、反射防止膜26が形成されており、サファイア基板27の空気と接する面上には、反射防止膜30が形成されている。
サファイア基板27は、ガラス等に比較して熱伝導性が良好で、高い放熱性を有する。
【0020】
ここで、反射防止膜21は、基板22と空気の間の反射を防止し、通常は多層膜で構成されている。一方、サファイア基板27上に形成する反射防止膜26、27のうち、空気と接する側の反射防止膜30は、サファイアの屈折率が大きい(n=1.78)ので、多層膜より構成される。接着剤23、25の屈折率nは1.5程度であり、接着剤26と接する側の反射防止膜26は、単層膜で構成できる。
なお、反射防止膜30の形成されたサファイア基板27を反射防止膜付サファイア基板40とする。
【0021】
以下、実施例1乃至2、及び比較例1乃至4の反射防止膜付サファイア基板40を製作し、ヒートショック試験を行い評価した結果を説明する。
【0022】
(実施例1)
図2は、本発明の液晶プロジェクタ装置用偏光板の実施例における反射防止膜付サファイア基板を示す構成図である。
同図に示すように、本実施例1の液晶プロジェクタ装置用偏光板20における反射防止膜付サファイア基板40は、サファイア基板27上に反射防止膜30を構成したものである。
反射防止膜30は、サファイア基板27に接する側より、ジルコニア膜31、アルミナ膜32、ジルコニア膜33、アルミナ膜34、ジルコニア膜35、フッ化マグネシウム膜36を順次積層したものから構成される。
【0023】
本実施例1における上記各薄膜の形成には、図3に示すイオンガン付電子ビーム蒸着装置を使用した。
図3は、本発明に係るイオンガン付電子ビーム蒸着装置を示す構成図である。
同図に示すように、イオンガン付電子ビーム蒸着装置50Bは、上述したイオンガン付電子ビーム蒸着装置50Aにおいて、導入ガス67をArとしたのに代えて、導入ガス59を酸素(O)又は酸素とアルゴンの混合ガス(O+Ar)とした以外は、イオンガン付電子ビーム蒸着装置50Aと同様の構成である。従って、イオンガン付電子ビーム蒸着装置50Bにおいては、イオンガン58によって生成するイオン流62は、酸素イオンO2−、又は酸素イオンO2−とアルゴンイオンAの混合したものとなる。
【0024】
用いたサファイア基板27のサイズは、縦30mm、横35mm、厚さ0.5mmである。両面とも鏡面研磨されており、表面の平坦度は干渉縞2本以内である。サファイア基板表面がC軸に平行であり、屈折率nは1.78である。
サファイア基板27上に形成する反射防止膜30が可視光全帯域、例えば波長430nmから波長680nmの帯域に亘って、反射率0.4%以下となるように、反射防止膜30を構成する各薄膜を構成してある。
【0025】
これには、中心波長を500nmとすると、ジルコニア膜31は光学膜厚ndが0.107、アルミナ膜32は光学膜厚ndが0.927、ジルコニア膜33は光学膜厚ndが0.168、アルミナ膜34は光学膜厚ndが0.830、ジルコニア膜35は光学膜厚ndが2.167、及びフッ化マグネシウム膜36は光学膜厚ndが1.038となるように各薄膜を形成する。ここで、ジルコニア(ZrO)膜31,33,35の屈折率nは2.03であり、アルミナ(Al)膜32,34の屈折率nは1.63であり、フッ化マグネシウム(MgF)膜の屈折率nは1.38である。これらは、上述の表1に示したとおりである。
【0026】
サファイア基板27を有機溶剤で洗浄し、乾燥した後、イオンガン付電子ビーム蒸着装置50Bの真空槽54内の基板ホルダ52の所定位置に取り付け、真空槽54を真空ポンプ55で排気する。基板温度を図示しない加熱装置により、250°C±50°Cに保持する。真空槽54の真空度が5mPa以下になるまで排気する。
その後、導入ガス59として酸素ガスを導入する。導入ガス圧は10乃至20mPa(真空槽54の真空度を示す。)である。
この状態で、イオンガン58に所定電圧を印加し、O2−のイオン流62を発生させ、60秒間サファイア基板27に照射した。すなわち、EB蒸着前にイオンアシストを行った。
【0027】
その後、O2−のイオン流62を照射しながら、すなわちイオンアシストしながら電子ビーム蒸着により、サファイア基板27上に各膜31乃至36を上述した表1の構成の通りに形成し、反射防止膜30を作製し、反射防止膜付サファイア基板40を得る。各膜の電子ビーム蒸着時、イオン銃のアノード加速電圧はDC100V、出力電流DC12A、パワー1.1kWである。ここでは、イオンアシストは、全EB蒸着中行った。
【0028】
このようにして得られた本実施例1の液晶プロジェクタ装置用偏光板における反射防止膜付サファイア基板40に繰り返しヒートショック試験を行い、マイクロ剥離の有無を調べた。上述のようにマイクロ剥離は、幅が数百nm、長さ数μm〜数十μmに亘っており、光学顕微鏡で観察すると、灰色のスジとして観察される。
繰り返しヒートショック試験とは、大気中で60°Cに保持したオーブン中に20分保持した後、−20°Cに保持した冷凍庫中に20分保持する。次に、再び、オーブンに入れて60°Cに20分保持し、次に−20°Cに20分保持する。このサイクルを10回繰り返す。ここで、オーブンから冷凍庫への移動及びその逆の移動は5秒以内に行う。これは、高温加速試験である。
【0029】
繰り返しヒートショック試験の後、倍率200倍の光学顕微鏡で観察した結果、マイクロ剥離の発生は、全くなかった。
実施例1の蒸着条件、繰り返しヒートショック試験の結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
Figure 2004170757
【0031】
なお、EB蒸着前のイオンアシスト時間については、60秒から1800秒の間で、マイクロ剥離が発生しないことが確かめられた。30秒では、十分な効果が得られない。生産性を考慮すると、EB蒸着前のイオンアシスト時間は60秒から600秒が好ましい。
また、蒸着前及び蒸着中イオンアシストにおいては、導入ガスとしては、酸素100%から、酸素20%+アルゴン80%の間の混合ガスを用いると、マイクロ剥離が発生しない。このときの真空槽内の真空度は10〜20mPaが良好である。真空度が10mPaより小さくなると、イオンガンのプラズマ放電が不安定になり、20mPaより大きくなると、EB蒸着における蒸着レートが低下し、形成される各薄膜の光学特性の制御が困難になる。
【0032】
(実施例2)
実施例2の液晶プロジェクタ装置用偏光板における反射防止膜付サファイア基板を作製した。実施例2における反射防止膜付サファイア基板は実施例1におけるサファイア基板において、全ての酸化膜薄膜のEB蒸着時にイオンアシストを行って、各酸化膜薄膜を作製したのに代えて、サファイア基板に接するジルコニア膜31の作製時にイオンアシストし、他の薄膜の作製時にはイオンアシストしなかった以外は、実施例1における反射防止膜付サファイア基板と同様に作製した。
【0033】
実施例2における反射防止膜付サファイア基板に、実施例1と同様に繰り返しヒートショック試験を行い、マイクロ剥離の有無を調べた。マイクロ剥離の発生はなかった。
実施例2における蒸着条件及び繰り返しヒートショック試験の結果を表2に示す。
なお、イオンアシスト時の真空度、導入ガスの成分の好適な範囲は、実施例1の場合と同様である。
【0034】
(比較例1)
比較例1の液晶プロジェクタ装置用偏光板における反射防止膜付サファイア基板を作製した。比較例1における反射防止膜付サファイア基板は実施例1におけるサファイア基板において、EB蒸着前にイオンアシストし、且つ全ての薄膜のEB蒸着時にイオンアイストを行って、各薄膜を作製し反射防止膜を形成したのに代えて、EB蒸着前のイオンアシスト及びEB蒸着時のイオンアシストを行わなかった以外は、実施例1の反射防止膜付サファイア基板と同様に作製した。
【0035】
比較例1における反射防止膜付サファイア基板に、実施例1と同様に繰り返しヒートショック試験を行い、マイクロ剥離の有無を調べた。マイクロ剥離は多数発生していた。
比較例1における蒸着条件及び繰り返しヒートショック試験の結果を表2に示す。
【0036】
(比較例2)
比較例2の液晶プロジェクタ用偏光板における反射防止膜付サファイア基板を作製した。比較例2における反射防止膜付サファイア基板は実施例1におけるサファイア基板において、EB蒸着前にイオンアシストし、且つ全ての薄膜のEB蒸着時に酸素イオンによるイオンアイストを行って、各薄膜を作製し反射防止膜としたのに代えて、EB蒸着前のイオンアシストを行わず、EB蒸着時のイオンアシストをアルゴンイオンで行った以外は、実施例1における反射防止膜付サファイア基板と同様に作製した。
【0037】
比較例2における反射防止膜付サファイア基板に、実施例1と同様に繰り返しヒートショック試験を行い、マイクロ剥離の有無を調べた。マイクロ剥離は比較例1よりははるかに少ないが発生していた。
比較例2における蒸着条件及び繰り返しヒートショック試験の結果を表2に示す。
【0038】
(比較例3)
比較例3の液晶プロジェクタ装置用偏光板におけるサファイア基板を作製した。比較例3における反射防止膜付サファイア基板は実施例1におけるサファイア基板において、酸素イオンによるイオンアシストを行ったのに代えて、アルゴンガスによるイオンアシストを行った以外は実施例1における反射防止膜付サファイア基板と同様に作製した。
【0039】
比較例3における反射防止膜付サファイア基板に、実施例1と同様に繰り返しヒートショック試験を行い、マイクロ剥離の有無を調べた。マイクロ剥離は比較例2よりは少ないが発生していた。
比較例3における蒸着条件及び繰り返しヒートショック試験の結果を表2に示す。
【0040】
(比較例4)
比較例4の液晶プロジェクタ装置用偏光板における反射防止膜付サファイア基板を作製した。比較例4における反射防止膜付サファイア基板は実施例1のサファイア基板において、EB蒸着前にイオンアシストを行ったのに代えて、EB蒸着前にイオンアシストを行わなかった以外は実施例1の反射防止膜付サファイア基板と同様に作製した。
【0041】
比較例4の反射防止膜付サファイア基板に、実施例1と同様に繰り返しヒートショック試験を行い、マイクロ剥離の有無を調べた。マイクロ剥離は比較例3より少ないが、僅かに発生していた。
比較例4における蒸着条件及び繰り返しヒートショック試験の結果を表2に示す。
【0042】
なお、サファイア基板上に形成する多層膜からなる広帯域反射防止膜の例として、表1に示す構成のものを示したが、表3に示す構成のものでも良い。
【0043】
【表3】
Figure 2004170757
【0044】
すなわち、サファイア基板と空気の間に形成する多層薄膜からなる反射防止膜で、サファイア基板上に、光学膜厚ndが0.100である酸化タンタル(Ta:屈折率2.10)、光学膜厚ndが0.553である二酸化珪素(SiO:屈折率1.46)、光学膜厚ndが0.407である酸化タンタル(Ta)、光学膜厚ndが0.513である二酸化珪素(SiO)、光学膜厚ndが2.307である酸化タンタル(Ta)、及び光学膜厚ndが1.054であるフッ化マグネシウム(MgF)を順次積層しても良い。中心波長は500nmである。
【0045】
EB蒸着する際には、酸素イオン(又は、酸素イオンとアルゴンイオンの混合:実施例1と同様)による、EB蒸着前及びEB蒸着中イオンアシストを行うことにより、良好な付着力を有し耐熱性の良好な反射防止膜付サファイア基板を得る。なお、高屈折率膜としては、チタニア(TiO)も用いることができる。
【0046】
以上、表2より分かるように、サファイア基板上に、上述した表1に示す構成の多層膜からなる反射防止膜をEB蒸着により形成する際に、EB蒸着前に、サファイア基板に酸素イオン(酸素イオンとアルゴンイオンの混合でも良い)のイオンアシストした上で、酸素イオン(酸素イオンとアルゴンイオンの混合でも良い)イオンアシストしながら各薄膜のEB蒸着を行うと、十分な付着力を有し、耐熱性の良好な反射防止膜をサファイア基板上に形成できることが分かる。なお、EB蒸着中の酸素イオンのイオンアシストはサファイア基板に接する第1層の薄膜に対して行うだけでも良い。これらの反射防止膜付サファイア基板を用いると耐熱性の良好な液晶プロジェクタ用偏光板を得ることができる。
【0047】
一方、反射防止膜を形成する際に、蒸着前にイオンアシストを行わない場合には、いずれも良好な付着力を有する耐熱性の良好な反射防止膜を得ることができない。蒸着前イオンアシストをアルゴンイオンによって行っても、不十分であることが分かる。
このように、本発明に係るサファイア基板上に形成した反射防止多層光学膜は、従来法で形成した膜に比べ高い剥離信頼性を有するので、この基板を用いて可視光の広帯域で反射の無い高輝度液晶プロジェクタ装置用偏光板を実現でき、液晶プロジェクタ装置における光利用効率向上を図ることができる効果がある。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の液晶プロジェクタ装置用偏光板の製造方法は、請求項1記載によれば、10mPaから20mPaの真空度に保持した前記サファイア基板の表面上に60秒から600秒の間、酸素イオンを照射し、引き続き前記酸素イオンを照射しながら、前記サファイア基板の表面上に前記多層薄膜を真空蒸着により積層して、前記反射防止膜を形成することにより、偏光板の一部を構成するサファイア基板上に高温においても膜剥離を生じない耐熱性の良好な広帯域反射防止膜を形成した液晶プロジェクタ装置用偏光板の製造方法を提供できるという効果がある。
また、本発明の液晶プロジェクタ装置用偏光板は、請求項2記載によれば、請求項1に記載の液晶プロジェクタ装置用偏光板の製造方法によって製造された液晶プロジェクタ装置用偏光板であって、多層の酸化物薄膜を積層してなる反射防止膜が一方の面上に形成されたサファイア基板と、前記サファイア基板の他方の面上に形成された接着層と、前記接着層上に形成された偏光膜と、を有することにより、偏光板の一部を構成するサファイア基板上に高温においても膜剥離を生じない耐熱性の良好な広帯域反射防止膜を形成した液晶プロジェクタ装置用偏光板を提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶プロジェクタ装置用偏光板の実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の液晶プロジェクタ装置用偏光板の実施例における反射防止膜付サファイア基板を示す構成図である。
【図3】本発明に係るイオンガン付電子ビーム蒸着装置を示す構成図である。
【図4】一般的な電子ビーム蒸着装置を示す構成図である。
【図5】一般的なイオンガン付電子ビーム蒸着装置を示す構成図である。
【図6】単板式液晶プロジェクタ装置を示す構成図である。
【符号の説明】
1…光源、2…反射鏡、3…フィルタ、4…インテグレータレンズ、5…集光レンズ、6…偏光板、7…偏光板、8…液晶パネル、9…投影レンズ、10…単板式液晶プロジェクタ、20…液晶プロジェクタ用偏光板、21…反射防止膜、22…基板、23…接着剤、24…偏光膜、25…接着層、26…反射防止膜、27…サファイア基板、30…反射防止膜、31…ジルコニア(ZrO)膜、32…アルミナ(Al)膜、33…ジルコニア(ZrO)膜、34…アルミナ(Al)膜、35…ジルコニア(ZrO)膜、36…フッ化マグネシウム(MgF)膜、50…電子ビーム蒸着装置、50A,50B…イオンガン付電子ビーム蒸着装置、52…基板ホルダ、53…基板、54…真空槽、55…真空ポンプ、56…電子銃、57…蒸着源、58…イオンガン、59…導入ガス、61…電子ビーム、62…イオン流、65…蒸気流、66…イオン流、67…導入ガス。

Claims (2)

  1. 光源からの光をレンズ光学系、偏光板を介して液晶パネルに照射し、前記液晶パネルから反射した反射光を出射する構成の液晶プロジェクタ装置における、前記偏光板の一部を構成するサファイア基板の表面上に、波長430nmから波長680nmの光帯域に亘って、反射率が0.4%以下となる反射防止膜を、真空蒸着により多層の酸化物薄膜により積層形成する液晶プロジェクタ装置用偏光板の製造方法であって、
    10mPaから20mPaの真空度に保持した前記サファイア基板の表面上に60秒から600秒の間、酸素イオンを照射し、引き続き前記酸素イオンを照射しながら、前記サファイア基板の表面上に前記多層薄膜を真空蒸着により積層して、前記反射防止膜を形成することを特徴とする液晶プロジェクタ装置用偏光板の製造方法。
  2. 請求項1に記載の液晶プロジェクタ装置用偏光板の製造方法によって製造された液晶プロジェクタ装置用偏光板であって、
    多層の酸化物薄膜を積層してなる反射防止膜が一方の面上に形成されたサファイア基板と、
    前記サファイア基板の他方の面上に形成された接着層と、
    前記接着層上に形成された偏光膜と、を有することを特徴とする液晶プロジェクタ装置用偏光板。
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