JP2004169232A - 被覆pc鋼撚り線の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】押出機を用いた押出被覆法により、PC鋼撚り線の撚りを開くことなく、熱可塑性樹脂を芯線と側線との間の隙間に充填すると共に、その外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成することができる被覆PC鋼撚り線の製造方法を提供すること。
【解決手段】PC鋼撚り線を連続的に押出機内を通過させながら、押出機により熱可塑性樹脂を溶融押出して、その外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成する被覆PC鋼撚り線の製造方法である。真空引きした押出機内にPC鋼撚り線を導入し、かつ、曲げ半径が自己径の60倍以下となるようにPC鋼撚り線を曲げた状態で押出機内を通過させる。
【選択図】 図1
【解決手段】PC鋼撚り線を連続的に押出機内を通過させながら、押出機により熱可塑性樹脂を溶融押出して、その外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成する被覆PC鋼撚り線の製造方法である。真空引きした押出機内にPC鋼撚り線を導入し、かつ、曲げ半径が自己径の60倍以下となるようにPC鋼撚り線を曲げた状態で押出機内を通過させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる被覆層を有する被覆PC鋼撚り線の製造方法に関し、さらに詳しくは、押出機を用いた押出被覆法により、PC鋼撚り線の撚りを開くことなく、熱可塑性樹脂を芯線と側線との間の隙間に充填すると共に、PC鋼撚り線の外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成することができる被覆PC鋼撚り線の製造方法に関する。本発明の製造方法により得られる被覆PC鋼撚り線は、プレストレストコンクリートの緊張材や各種構造体の緊張材として好適である。
【0002】
【従来の技術】
PC鋼撚り線は、プレストレストコンクリート(以下「PCコンクリート」という)の緊張材や各種構造体の緊張材として用いられている。PC鋼撚り線は、複数のPC鋼素線(単線)を撚り合わせたものであり、一般に、中心の芯線の周囲を複数の側線で撚り合わせた構成を有している。PC鋼撚り線は、「PCストランド」と呼ばれることがある。
【0003】
PCコンクリート工法は、引張荷重の作用するところに予め圧縮力を与えるために、ピアノ線などのPC鋼材を配置し、コンクリートがある強さに達した時に鋼材を緊張する工法である。プレテンション方式のPCコンクリート工法では、予め緊張させたPC鋼撚り線の周囲にコンクリートを打設して養生させることにより、コンクリートにプレストレスを与える方法である。このような工法では、PC鋼撚り線は、コンクリートと長期間接触するため、コンクリートの成分や水などによって腐食が進行する。PC鋼撚り線を各種構造体の緊張材として使用する場合も、設置場所によっては、水や塩水などと接触して腐食が進行することがある。PC鋼撚り線は、緊張状態で腐食が進行すると、切断の危険が生じる。
【0004】
そこで、PC鋼撚り線の腐食を防止するために、耐薬品性に優れた合成樹脂を用いて、PC鋼撚り線の外側に防錆被覆層を形成する方法が提案されている。防錆被覆層は、PC鋼撚り線の外面に密着して形成する必要があるが、これに加えて、PC鋼撚り線は、芯線と側線との間に隙間(空隙部または空間部)が存在するため、防錆被覆層の形成に際し、この隙間も合成樹脂によって充填する必要がある。
【0005】
従来、被覆PC鋼撚り線の防錆被覆方法として、加熱したPCストランドを、各単線が離反した状態に撚りを拡げ、その撚りが拡げられた状態のPCストランドを押出成形機に通し、加熱溶融した熱可塑性樹脂を各単線間に注入した後、元の撚り合わせ状態に戻し、成形口金の中心より順次押し出して、PCストランドの内外に熱可塑性樹脂被覆層を形成するPCストランドの防錆方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかし、上記方法によれば、PC鋼撚り線を、一旦撚りを関いた状態、すなわち緩解状態に置くため、撚り戻しの際に歪みが発生し、それによって、被覆されたPC鋼撚り線に残留応力が生じるという問題があった。また、上記方法では、緩解状態のPC鋼素線を200〜350℃という高温に加熱した溶融樹脂と接触させるため、撚り戻し時の残留応力がより一層増大する傾向を示す。
【0007】
被覆PC鋼撚り線は、緊張材として用いられるため、信頼性の高い物性を有することが求められている。合成樹脂の押出被覆時に、PC鋼撚り線に大きな残留応力が発生すると、応力緩和値が大きくなり、被覆PC鋼撚り線の緊張材としての信頼性が低下する。
【0008】
応力緩和(リラクセーション)値を低くするために、PCストランドの撚りを拡げることなく、PCストランドの内部空隙部と外周面を常温硬化型液状樹脂からなる防錆材で被覆する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。より具体的に、上記方法は、アクリレート系モノマー、硬化剤、硬化促進剤などを含有する常温で液状のアクリル系樹脂をPCストランドの空隙内に圧入して、硬化させる方法である。
【0009】
上記方法によれば、PCストランドを緩解しないため、撚りの安定性を阻害することなく、PCストランドの空隙部まで樹脂により被覆することができる。しかし、常温硬化型液状樹脂は、一般に高価であることに加えて、重合前の低分子化合物が主成分であるため、臭気が強く、毒性もあり、さらには、引火や爆発の危険性もある。そのため、使用する原料に制限があったり、製造時の作業環境に特別の配慮が必要となる。さらに、上記方法により信頼性の高い被覆PC鋼撚り線を製造するには、実際には、常温硬化型液状樹脂で内部防食層を形成した後、その上に熱可塑性樹脂を押出被覆する必要がある。
【0010】
【特許文献1】
特開平2−33387号公報 (第1頁、第3図)
【特許文献2】
特開平10−226973号公報 (第1−2頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、押出機を用いた押出被覆法により、熱可塑性樹脂からなる被覆層を有する被覆PC鋼撚り線を製造するに際し、PC鋼撚り線の撚りを開くことなく、熱可塑性樹脂を芯線と側線との間の隙間に充填すると共に、PC鋼撚り線の外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成することができる被覆PC鋼撚り線の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、PC鋼撚り線を曲げた状態で押出機内を通過させれば、芯線と側線との間の隙間が広がるため、PC鋼撚り線の撚りを開くことなく、各素線間の隙間に溶融状態の熱可塑性樹脂を充填することが可能ではないかと考えた。しかし、この方法では、各素線間に存在する空気の影響を受けて、被覆層に気泡が発生することが判明した。
【0013】
そこで、さらに研究した結果、押出機内で、真空引きを行い、かつ、曲げ半径が自己径の60倍以下となるようにPC鋼撚り線を曲げる方法に想到した。本発明の方法によれば、PC鋼撚り線を緩解することなく、芯線と側線との間の隙間に熱可塑性樹脂を充填し、その外側を熱可塑性樹脂の被覆層で被覆することができ、しかも被覆層には気泡などの欠陥が生じることがない。本発明の方法によれば、被覆用樹脂材料として、比較的安価で安全性の高い各種熱可塑性樹脂を使用することができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、中心の芯線の周囲に複数の側線を撚り合わせた構成のPC鋼撚り線を連続的に押出機内を通過させながら、押出機により熱可塑性樹脂を溶融押出して、その外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成する被覆PC鋼撚り線の製造方法において、真空引きした押出機内にPC鋼撚り線を導入し、かつ、曲げ半径が自己径の60倍以下となるようにPC鋼撚り線を曲げた状態で押出機内を通過させることを特徴とする被覆PC鋼撚り線の製造方法が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の方法では、中心の芯線の周囲に複数の側線を撚り合わせた構成のPC鋼撚り線を連続的に押出機内を通過させながら、押出機により熱可塑性樹脂を溶融押出して、その外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成する押出被覆法を採用することができる。押出被覆法では、熱可塑性樹脂を溶融状態になるまで加熱し、加圧することにより、PC鋼撚り線の外側を被覆することができ、その後、冷却して被覆樹脂を固化させるだけで被覆PC鋼撚り線を製造することができる。したがって、特殊な樹脂材料を用いたり、被覆樹脂の硬化に特別の加熱手段を用いたり、長い硬化時間を必要とすることがない。
【0016】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。また、被覆用樹脂として、接着性を有する熱可塑性樹脂を好適に使用することができる。このような接着性樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体にスチレンをグラフト重合したグラフト共重合体、無水マレイン酸変性スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、これらの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0017】
本発明の方法では、PC鋼撚り線に被覆を施す際に、熱可塑性樹脂の押出機内で、真空引きすることにより、まず、芯線と側線とで囲まれた空間内に存在する空気を除去する。押出機内では、PC鋼撚り線を一定の範囲内での曲げ半径で曲げることによって、芯線と側線とで囲まれた空間内に熱可塑性樹脂を十分に充填し、同時にPC鋼撚り線の外周にも熱可塑性樹脂を被覆する。この方法により、緩解による残留応力を発生させることなく、かつ、芯線と測線とで囲まれた空間内に熱可塑性樹脂を十分に充填することができるので、被覆層に安価で汎用かつ安全な熱可塑性樹脂の使用を可能にすることができる。
【0018】
PC鋼撚り線は、中心となる芯線の周囲に複数の側線が撚り合わされた構造を持つため、芯線と各測線とに囲まれた空間が生じる。この空間部分には、側線同士が密着して外部からの樹脂の圧入が困難な部分と、側線間に若干の隙間が開いており、外部からの樹脂の圧入が可能な部分とが存在する。多くの場合、隙間が開いている空間は、特定の側線間に偏って存在しているため、溶融状態の熱可塑性樹脂を圧入しようとしても、一部の空間にしか充填することができない。
【0019】
本発明の方法によれば、PC鋼撚り線を曲げることにより、各素線同士の隙間が増加して、熱可塑性樹脂の充填が容易になる。すなわち、PC鋼撚り線を曲げることにより、元々特定の側線間に存在していた隙間が、別の側線間に移動したり、これまで隙間が存在していなかった側線間や側線と芯線との間に隙間が発生する。
【0020】
PC鋼撚り線の曲げを増加する、すなわち曲げ半径を小さくすればするほど、隙間の移動や増加の程度が増大し、熱可塑性樹脂の充填が容易になる。しかし、緊張材として用いられるPC鋼撚り線の場合、あまり曲げ半径を小さくし過ぎると、撚り線に塑性変形が生じ易くなる。本発明者らの検討によれば、PC鋼撚り線の長手方向の全長に亘って、全く充填されない芯線と側線とで形成される空間を無くすには、被覆前のPC鋼撚り線の自己径の60倍以下の曲げ半径で曲げれば良いことがわかった。また、PC鋼撚り線の撚りの1周期の長さに亘って、全く充填されない芯線と側線とで形成される空間を無くすには、被覆前のPC鋼撚り線の自己径の50倍以下の曲げ半径で曲げれば良いことがわかった。
【0021】
さらに曲げ半径を小さくすることにより、芯線と側線とで形成される空間への樹脂の充填率を上げることができるが、曲げる程度は、使用するPC鋼撚り線に塑性変形が生じない範囲でなければならない。使用する素線の種類にもよるが、多くの場合、被覆前のPC鋼撚り線の自己径の30倍以上の曲げ半径では、塑性変形は生じない。
【0022】
PC鋼撚り線の曲げ半径は、自己径の30〜60倍の範囲内とすることが好ましく、40〜60倍の範囲内とすることがより好ましく、樹脂の充填率を高度に高める上で、45〜55倍の範囲内とすることが特に好ましい。
【0023】
PC鋼撚り線の自己径とは、PC鋼撚り線の長手方向に対する垂直断面において、最大長さを意味する。通常は、図2に示すように、芯線21の直径と、芯線を挟んで対向する2つの側線22,23の各直径との合計(D)から算出することができる。
【0024】
PC鋼撚り線を曲げた状態で押出機内を連続的に通過させながら、押出機により熱可塑性樹脂を溶融押出して、PC鋼撚り線の外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成すると、樹脂被覆層中に部分的に気泡が発生し、この気泡が完全な充填を妨害することが判明した。PC鋼撚り線は、芯線と側線とによって形成される空間が大きいため、その空間部分に存在する空気の量が多い。この空気の一部は、熱可塑性樹脂の加圧充填によって、芯線と側線との間の隙間に封じ込められ、押出時の加圧力により小さな気包に圧縮される。ところが、熱可塑性樹脂は、溶融状態では低粘度であるため、押出時の加圧状態を解かれると、圧縮されていた小さな気泡が急速に膨張して、大きな気泡となる。
【0025】
そこで、本発明者らは、押出機内にてPC鋼撚り線の隙間に熱可塑性樹脂が充填される直前、すなわち、押出機の入口付近に真空槽を配置することにより、芯線と側線によって形成される空間内に存在する空気を除去した後、熱可塑性樹脂を加圧充填したところ、前述のような被覆層中の気泡の発生を効果的に防止することができることを見出した。
【0026】
図1は、本発明の方法を説明するための略図である。押出機1により、熱可塑性樹脂が溶融状態で加圧されてクロスヘッド5内に押し出される。クロスヘッド5の上部には、真空槽3が配置されている。真空槽3は、真空ポンプ4に接続されており、真空引きができるようになっている。PC鋼撚り線8は、一対のガイドローラ6から押出機のクロスヘッド内に連続的に導入され、まず、真空槽で真空引きされて、芯線と側線との間の隙間に存在する空気が除去される。
【0027】
PC鋼撚り線8は、前記一対のガイドローラ6とクロスヘッド5の外にある一対のガイドローラ7により、曲げ半径が自己径の60倍以下となるように曲げた状態とされ、その状態で押出機のクロスヘッド5内を通過する。クロスヘッド5内では、溶融状態で押出された熱可塑性樹脂がPC鋼撚り線の芯線と側線との間の空間を充填し、同時にその外周を被覆する。溶融樹脂が被覆されたPC鋼撚り線は、成形ダイ2から押出され、その後、冷却される。
【0028】
真空ポンプ4を用いた真空引きは、真空槽内の圧力が常圧以下となるようにするが、好ましくは0〜10kPa程度となるように調整することが望ましい。
【0029】
図1には、クロスヘッドを用いた押出被覆法の例を示したが、押出機の形状や真空引きの方法は、この方法に限定されるものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、様々な変形が可能である。
【0030】
本発明の方法によれば、芯線と側線とで形成される空間への熱可塑性樹脂の充填と同時に、PC鋼撚り線の外周に熱可塑性樹脂を被覆することができる。押出機内で熱可塑性樹脂を被覆した後、外側に存在する余分な樹脂を除去して断面形状を所望の形状に整えるなどの加工を施すこともできる。必要であれば、被覆PC鋼撚り線を別の押出機や粉体塗装機に連続的に送り込み、多層構造の被覆層を形成することもできる。
【0031】
熱可塑性樹脂の被覆層の厚みは、PC鋼素線やPC鋼撚り線の太さなどによって適宜選択することができるが、PC鋼素線が突き出しているクラウン部(もしくは最薄部)で、通常、200〜2,000μm、好ましくは300〜1,500μm、より好ましくは400〜1,300μm程度である。
【0032】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。
【0033】
[実施例1]
線径5.25mmの芯線の周囲に線径5.05mmの側線6本を撚り合わせた構造のPC鋼撚り線を、図1に示す真空槽3付きクロスヘッド5に連続的に通過させ、エチレン−メタクリル酸共重合体〔三井デュポンポリケミカル社製「ニュクレルN1525」(登録商標)〕を溶融状態で押出して圧入した。この時のクロスヘッド内の樹脂圧力は50MPa、樹脂温度は170℃、クロスヘッド内のPC鋼撚り線の曲げ半径は900mmであった。真空槽の真空度(圧力)は、約8kPaであった。被覆層の厚みは、クラウン部(もしくは最薄部)で、約800μmであった。
【0034】
[実施例2]
クロスヘッド内のPC鋼撚り線の曲げ半径を800mmに変えたこと以外は、実施例1と全く同じ条件にて試作した。
【0035】
[実施例3]
クロスヘッド内のPC鋼撚り線の曲げ半径を750mmに変えたこと以外は、実施例1と全く同じ条件にて試作した。
【0036】
[比較例1]
クロスヘッド内のPC鋼撚り線の曲げ半径が無限大、すなわち曲げを与えない直線状態としたこと以外は、実施例1と全く同じ条件にて試作した。
【0037】
[比較例2]
クロスヘッド内のPC鋼撚り線の曲げ半径を1200mmとしたこと以外は、実施例1と全く同じ条件にて試作した。
【0038】
[比較例3]
真空槽付きクロスヘッドの真空槽を大気圧の状態にしたこと以外は、実施例3と全く同じ方法にて試作した。
【0039】
上記各実施例と比較例により作製したサンプルについて、樹脂の充填状況と気泡の有無を観察した。芯線と側線とで形成される空間への樹脂の充填状況は、各サンプルとも、長さ250mmのサンプルを切り取り、撚り線を解体して観察する方法により確認した。充填状況の評価は、芯線と側線とで形成される空間6個に対し、全く樹脂が充填されてなかった空間の数と、完全に充填されていた空間の数の両方を示した。この際、被覆層内の気泡の有無も同時に調べた。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
(脚注)
*:樹脂の充填状況は、サンプル中、芯線と側線とで形成される空間6個に対して、「全く樹脂が充填されていなかった空間の数」を左側に示し、「樹脂が完全に充填されていた空間の数」を右側に示した。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、押出機を用いた押出被覆法により、熱可塑性樹脂からなる被覆層を有する被覆PC鋼撚り線を製造するに際し、PC鋼撚り線の撚りを開くことなく、熱可塑性樹脂を芯線と側線との間の隙間に充填すると共に、PC鋼撚り線の外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成することができる。
【0043】
本発明の製造方法により得られた被覆PC鋼撚り線は、撚りの開きに起因する残留応力の発生がない。また、特殊な常温硬化型液状樹脂を用いることなく、比較的安価で汎用性と安全性の高い熱可塑性樹脂を用いて、押出被覆法により被覆層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の製造方法の一例を示す説明図である。
【図2】図2は、PC鋼撚り線の自己径を測定するための説明図である。
【符号の説明】
1:押出機、
2:ダイ、
3:真空槽、
4:真空ポンプ、
5:クロスヘッド、
6:ガイドローラ、
7:ガイドローラ、
8:PC鋼撚り線、
21:芯線、
22:側線、
23:側線。
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる被覆層を有する被覆PC鋼撚り線の製造方法に関し、さらに詳しくは、押出機を用いた押出被覆法により、PC鋼撚り線の撚りを開くことなく、熱可塑性樹脂を芯線と側線との間の隙間に充填すると共に、PC鋼撚り線の外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成することができる被覆PC鋼撚り線の製造方法に関する。本発明の製造方法により得られる被覆PC鋼撚り線は、プレストレストコンクリートの緊張材や各種構造体の緊張材として好適である。
【0002】
【従来の技術】
PC鋼撚り線は、プレストレストコンクリート(以下「PCコンクリート」という)の緊張材や各種構造体の緊張材として用いられている。PC鋼撚り線は、複数のPC鋼素線(単線)を撚り合わせたものであり、一般に、中心の芯線の周囲を複数の側線で撚り合わせた構成を有している。PC鋼撚り線は、「PCストランド」と呼ばれることがある。
【0003】
PCコンクリート工法は、引張荷重の作用するところに予め圧縮力を与えるために、ピアノ線などのPC鋼材を配置し、コンクリートがある強さに達した時に鋼材を緊張する工法である。プレテンション方式のPCコンクリート工法では、予め緊張させたPC鋼撚り線の周囲にコンクリートを打設して養生させることにより、コンクリートにプレストレスを与える方法である。このような工法では、PC鋼撚り線は、コンクリートと長期間接触するため、コンクリートの成分や水などによって腐食が進行する。PC鋼撚り線を各種構造体の緊張材として使用する場合も、設置場所によっては、水や塩水などと接触して腐食が進行することがある。PC鋼撚り線は、緊張状態で腐食が進行すると、切断の危険が生じる。
【0004】
そこで、PC鋼撚り線の腐食を防止するために、耐薬品性に優れた合成樹脂を用いて、PC鋼撚り線の外側に防錆被覆層を形成する方法が提案されている。防錆被覆層は、PC鋼撚り線の外面に密着して形成する必要があるが、これに加えて、PC鋼撚り線は、芯線と側線との間に隙間(空隙部または空間部)が存在するため、防錆被覆層の形成に際し、この隙間も合成樹脂によって充填する必要がある。
【0005】
従来、被覆PC鋼撚り線の防錆被覆方法として、加熱したPCストランドを、各単線が離反した状態に撚りを拡げ、その撚りが拡げられた状態のPCストランドを押出成形機に通し、加熱溶融した熱可塑性樹脂を各単線間に注入した後、元の撚り合わせ状態に戻し、成形口金の中心より順次押し出して、PCストランドの内外に熱可塑性樹脂被覆層を形成するPCストランドの防錆方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかし、上記方法によれば、PC鋼撚り線を、一旦撚りを関いた状態、すなわち緩解状態に置くため、撚り戻しの際に歪みが発生し、それによって、被覆されたPC鋼撚り線に残留応力が生じるという問題があった。また、上記方法では、緩解状態のPC鋼素線を200〜350℃という高温に加熱した溶融樹脂と接触させるため、撚り戻し時の残留応力がより一層増大する傾向を示す。
【0007】
被覆PC鋼撚り線は、緊張材として用いられるため、信頼性の高い物性を有することが求められている。合成樹脂の押出被覆時に、PC鋼撚り線に大きな残留応力が発生すると、応力緩和値が大きくなり、被覆PC鋼撚り線の緊張材としての信頼性が低下する。
【0008】
応力緩和(リラクセーション)値を低くするために、PCストランドの撚りを拡げることなく、PCストランドの内部空隙部と外周面を常温硬化型液状樹脂からなる防錆材で被覆する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。より具体的に、上記方法は、アクリレート系モノマー、硬化剤、硬化促進剤などを含有する常温で液状のアクリル系樹脂をPCストランドの空隙内に圧入して、硬化させる方法である。
【0009】
上記方法によれば、PCストランドを緩解しないため、撚りの安定性を阻害することなく、PCストランドの空隙部まで樹脂により被覆することができる。しかし、常温硬化型液状樹脂は、一般に高価であることに加えて、重合前の低分子化合物が主成分であるため、臭気が強く、毒性もあり、さらには、引火や爆発の危険性もある。そのため、使用する原料に制限があったり、製造時の作業環境に特別の配慮が必要となる。さらに、上記方法により信頼性の高い被覆PC鋼撚り線を製造するには、実際には、常温硬化型液状樹脂で内部防食層を形成した後、その上に熱可塑性樹脂を押出被覆する必要がある。
【0010】
【特許文献1】
特開平2−33387号公報 (第1頁、第3図)
【特許文献2】
特開平10−226973号公報 (第1−2頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、押出機を用いた押出被覆法により、熱可塑性樹脂からなる被覆層を有する被覆PC鋼撚り線を製造するに際し、PC鋼撚り線の撚りを開くことなく、熱可塑性樹脂を芯線と側線との間の隙間に充填すると共に、PC鋼撚り線の外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成することができる被覆PC鋼撚り線の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、PC鋼撚り線を曲げた状態で押出機内を通過させれば、芯線と側線との間の隙間が広がるため、PC鋼撚り線の撚りを開くことなく、各素線間の隙間に溶融状態の熱可塑性樹脂を充填することが可能ではないかと考えた。しかし、この方法では、各素線間に存在する空気の影響を受けて、被覆層に気泡が発生することが判明した。
【0013】
そこで、さらに研究した結果、押出機内で、真空引きを行い、かつ、曲げ半径が自己径の60倍以下となるようにPC鋼撚り線を曲げる方法に想到した。本発明の方法によれば、PC鋼撚り線を緩解することなく、芯線と側線との間の隙間に熱可塑性樹脂を充填し、その外側を熱可塑性樹脂の被覆層で被覆することができ、しかも被覆層には気泡などの欠陥が生じることがない。本発明の方法によれば、被覆用樹脂材料として、比較的安価で安全性の高い各種熱可塑性樹脂を使用することができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、中心の芯線の周囲に複数の側線を撚り合わせた構成のPC鋼撚り線を連続的に押出機内を通過させながら、押出機により熱可塑性樹脂を溶融押出して、その外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成する被覆PC鋼撚り線の製造方法において、真空引きした押出機内にPC鋼撚り線を導入し、かつ、曲げ半径が自己径の60倍以下となるようにPC鋼撚り線を曲げた状態で押出機内を通過させることを特徴とする被覆PC鋼撚り線の製造方法が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の方法では、中心の芯線の周囲に複数の側線を撚り合わせた構成のPC鋼撚り線を連続的に押出機内を通過させながら、押出機により熱可塑性樹脂を溶融押出して、その外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成する押出被覆法を採用することができる。押出被覆法では、熱可塑性樹脂を溶融状態になるまで加熱し、加圧することにより、PC鋼撚り線の外側を被覆することができ、その後、冷却して被覆樹脂を固化させるだけで被覆PC鋼撚り線を製造することができる。したがって、特殊な樹脂材料を用いたり、被覆樹脂の硬化に特別の加熱手段を用いたり、長い硬化時間を必要とすることがない。
【0016】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。また、被覆用樹脂として、接着性を有する熱可塑性樹脂を好適に使用することができる。このような接着性樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体にスチレンをグラフト重合したグラフト共重合体、無水マレイン酸変性スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、これらの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0017】
本発明の方法では、PC鋼撚り線に被覆を施す際に、熱可塑性樹脂の押出機内で、真空引きすることにより、まず、芯線と側線とで囲まれた空間内に存在する空気を除去する。押出機内では、PC鋼撚り線を一定の範囲内での曲げ半径で曲げることによって、芯線と側線とで囲まれた空間内に熱可塑性樹脂を十分に充填し、同時にPC鋼撚り線の外周にも熱可塑性樹脂を被覆する。この方法により、緩解による残留応力を発生させることなく、かつ、芯線と測線とで囲まれた空間内に熱可塑性樹脂を十分に充填することができるので、被覆層に安価で汎用かつ安全な熱可塑性樹脂の使用を可能にすることができる。
【0018】
PC鋼撚り線は、中心となる芯線の周囲に複数の側線が撚り合わされた構造を持つため、芯線と各測線とに囲まれた空間が生じる。この空間部分には、側線同士が密着して外部からの樹脂の圧入が困難な部分と、側線間に若干の隙間が開いており、外部からの樹脂の圧入が可能な部分とが存在する。多くの場合、隙間が開いている空間は、特定の側線間に偏って存在しているため、溶融状態の熱可塑性樹脂を圧入しようとしても、一部の空間にしか充填することができない。
【0019】
本発明の方法によれば、PC鋼撚り線を曲げることにより、各素線同士の隙間が増加して、熱可塑性樹脂の充填が容易になる。すなわち、PC鋼撚り線を曲げることにより、元々特定の側線間に存在していた隙間が、別の側線間に移動したり、これまで隙間が存在していなかった側線間や側線と芯線との間に隙間が発生する。
【0020】
PC鋼撚り線の曲げを増加する、すなわち曲げ半径を小さくすればするほど、隙間の移動や増加の程度が増大し、熱可塑性樹脂の充填が容易になる。しかし、緊張材として用いられるPC鋼撚り線の場合、あまり曲げ半径を小さくし過ぎると、撚り線に塑性変形が生じ易くなる。本発明者らの検討によれば、PC鋼撚り線の長手方向の全長に亘って、全く充填されない芯線と側線とで形成される空間を無くすには、被覆前のPC鋼撚り線の自己径の60倍以下の曲げ半径で曲げれば良いことがわかった。また、PC鋼撚り線の撚りの1周期の長さに亘って、全く充填されない芯線と側線とで形成される空間を無くすには、被覆前のPC鋼撚り線の自己径の50倍以下の曲げ半径で曲げれば良いことがわかった。
【0021】
さらに曲げ半径を小さくすることにより、芯線と側線とで形成される空間への樹脂の充填率を上げることができるが、曲げる程度は、使用するPC鋼撚り線に塑性変形が生じない範囲でなければならない。使用する素線の種類にもよるが、多くの場合、被覆前のPC鋼撚り線の自己径の30倍以上の曲げ半径では、塑性変形は生じない。
【0022】
PC鋼撚り線の曲げ半径は、自己径の30〜60倍の範囲内とすることが好ましく、40〜60倍の範囲内とすることがより好ましく、樹脂の充填率を高度に高める上で、45〜55倍の範囲内とすることが特に好ましい。
【0023】
PC鋼撚り線の自己径とは、PC鋼撚り線の長手方向に対する垂直断面において、最大長さを意味する。通常は、図2に示すように、芯線21の直径と、芯線を挟んで対向する2つの側線22,23の各直径との合計(D)から算出することができる。
【0024】
PC鋼撚り線を曲げた状態で押出機内を連続的に通過させながら、押出機により熱可塑性樹脂を溶融押出して、PC鋼撚り線の外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成すると、樹脂被覆層中に部分的に気泡が発生し、この気泡が完全な充填を妨害することが判明した。PC鋼撚り線は、芯線と側線とによって形成される空間が大きいため、その空間部分に存在する空気の量が多い。この空気の一部は、熱可塑性樹脂の加圧充填によって、芯線と側線との間の隙間に封じ込められ、押出時の加圧力により小さな気包に圧縮される。ところが、熱可塑性樹脂は、溶融状態では低粘度であるため、押出時の加圧状態を解かれると、圧縮されていた小さな気泡が急速に膨張して、大きな気泡となる。
【0025】
そこで、本発明者らは、押出機内にてPC鋼撚り線の隙間に熱可塑性樹脂が充填される直前、すなわち、押出機の入口付近に真空槽を配置することにより、芯線と側線によって形成される空間内に存在する空気を除去した後、熱可塑性樹脂を加圧充填したところ、前述のような被覆層中の気泡の発生を効果的に防止することができることを見出した。
【0026】
図1は、本発明の方法を説明するための略図である。押出機1により、熱可塑性樹脂が溶融状態で加圧されてクロスヘッド5内に押し出される。クロスヘッド5の上部には、真空槽3が配置されている。真空槽3は、真空ポンプ4に接続されており、真空引きができるようになっている。PC鋼撚り線8は、一対のガイドローラ6から押出機のクロスヘッド内に連続的に導入され、まず、真空槽で真空引きされて、芯線と側線との間の隙間に存在する空気が除去される。
【0027】
PC鋼撚り線8は、前記一対のガイドローラ6とクロスヘッド5の外にある一対のガイドローラ7により、曲げ半径が自己径の60倍以下となるように曲げた状態とされ、その状態で押出機のクロスヘッド5内を通過する。クロスヘッド5内では、溶融状態で押出された熱可塑性樹脂がPC鋼撚り線の芯線と側線との間の空間を充填し、同時にその外周を被覆する。溶融樹脂が被覆されたPC鋼撚り線は、成形ダイ2から押出され、その後、冷却される。
【0028】
真空ポンプ4を用いた真空引きは、真空槽内の圧力が常圧以下となるようにするが、好ましくは0〜10kPa程度となるように調整することが望ましい。
【0029】
図1には、クロスヘッドを用いた押出被覆法の例を示したが、押出機の形状や真空引きの方法は、この方法に限定されるものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、様々な変形が可能である。
【0030】
本発明の方法によれば、芯線と側線とで形成される空間への熱可塑性樹脂の充填と同時に、PC鋼撚り線の外周に熱可塑性樹脂を被覆することができる。押出機内で熱可塑性樹脂を被覆した後、外側に存在する余分な樹脂を除去して断面形状を所望の形状に整えるなどの加工を施すこともできる。必要であれば、被覆PC鋼撚り線を別の押出機や粉体塗装機に連続的に送り込み、多層構造の被覆層を形成することもできる。
【0031】
熱可塑性樹脂の被覆層の厚みは、PC鋼素線やPC鋼撚り線の太さなどによって適宜選択することができるが、PC鋼素線が突き出しているクラウン部(もしくは最薄部)で、通常、200〜2,000μm、好ましくは300〜1,500μm、より好ましくは400〜1,300μm程度である。
【0032】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。
【0033】
[実施例1]
線径5.25mmの芯線の周囲に線径5.05mmの側線6本を撚り合わせた構造のPC鋼撚り線を、図1に示す真空槽3付きクロスヘッド5に連続的に通過させ、エチレン−メタクリル酸共重合体〔三井デュポンポリケミカル社製「ニュクレルN1525」(登録商標)〕を溶融状態で押出して圧入した。この時のクロスヘッド内の樹脂圧力は50MPa、樹脂温度は170℃、クロスヘッド内のPC鋼撚り線の曲げ半径は900mmであった。真空槽の真空度(圧力)は、約8kPaであった。被覆層の厚みは、クラウン部(もしくは最薄部)で、約800μmであった。
【0034】
[実施例2]
クロスヘッド内のPC鋼撚り線の曲げ半径を800mmに変えたこと以外は、実施例1と全く同じ条件にて試作した。
【0035】
[実施例3]
クロスヘッド内のPC鋼撚り線の曲げ半径を750mmに変えたこと以外は、実施例1と全く同じ条件にて試作した。
【0036】
[比較例1]
クロスヘッド内のPC鋼撚り線の曲げ半径が無限大、すなわち曲げを与えない直線状態としたこと以外は、実施例1と全く同じ条件にて試作した。
【0037】
[比較例2]
クロスヘッド内のPC鋼撚り線の曲げ半径を1200mmとしたこと以外は、実施例1と全く同じ条件にて試作した。
【0038】
[比較例3]
真空槽付きクロスヘッドの真空槽を大気圧の状態にしたこと以外は、実施例3と全く同じ方法にて試作した。
【0039】
上記各実施例と比較例により作製したサンプルについて、樹脂の充填状況と気泡の有無を観察した。芯線と側線とで形成される空間への樹脂の充填状況は、各サンプルとも、長さ250mmのサンプルを切り取り、撚り線を解体して観察する方法により確認した。充填状況の評価は、芯線と側線とで形成される空間6個に対し、全く樹脂が充填されてなかった空間の数と、完全に充填されていた空間の数の両方を示した。この際、被覆層内の気泡の有無も同時に調べた。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
(脚注)
*:樹脂の充填状況は、サンプル中、芯線と側線とで形成される空間6個に対して、「全く樹脂が充填されていなかった空間の数」を左側に示し、「樹脂が完全に充填されていた空間の数」を右側に示した。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、押出機を用いた押出被覆法により、熱可塑性樹脂からなる被覆層を有する被覆PC鋼撚り線を製造するに際し、PC鋼撚り線の撚りを開くことなく、熱可塑性樹脂を芯線と側線との間の隙間に充填すると共に、PC鋼撚り線の外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成することができる。
【0043】
本発明の製造方法により得られた被覆PC鋼撚り線は、撚りの開きに起因する残留応力の発生がない。また、特殊な常温硬化型液状樹脂を用いることなく、比較的安価で汎用性と安全性の高い熱可塑性樹脂を用いて、押出被覆法により被覆層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の製造方法の一例を示す説明図である。
【図2】図2は、PC鋼撚り線の自己径を測定するための説明図である。
【符号の説明】
1:押出機、
2:ダイ、
3:真空槽、
4:真空ポンプ、
5:クロスヘッド、
6:ガイドローラ、
7:ガイドローラ、
8:PC鋼撚り線、
21:芯線、
22:側線、
23:側線。
Claims (1)
- 中心の芯線の周囲に複数の側線を撚り合わせた構成のPC鋼撚り線を連続的に押出機内を通過させながら、押出機により熱可塑性樹脂を溶融押出して、その外側に熱可塑性樹脂の被覆層を形成する被覆PC鋼撚り線の製造方法において、真空引きした押出機内にPC鋼撚り線を導入し、かつ、曲げ半径が自己径の60倍以下となるようにPC鋼撚り線を曲げた状態で押出機内を通過させることを特徴とする被覆PC鋼撚り線の製造方法。
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