JP2004169079A - 非磁性超硬合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】2ナノテラスm3/kg以下の飽和磁化値が安定して得られる非磁性超硬合金の提供を目的とする。
【解決手段】ニッケルを主成分とする結合相と、炭化タングステンからなる硬質相と、周期律表4a,5a,6a族元素の炭化物,窒化物およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種以上からなる立方晶化合物相とからなる非磁性超硬合金であって、該結合相に含まれるタングステン量をa重量%、該結合相に含まれるクロム量をb重量%、該結合相に含まれるシリコン量をc重量%とすると、a,b,cは、5≦a≦30、5≦b≦14、1≦c≦5、8≦(b+c)≦15を満足する非磁性超硬合金は、2ナノテラスm3/kg以下の飽和磁化値を示す。
【解決手段】ニッケルを主成分とする結合相と、炭化タングステンからなる硬質相と、周期律表4a,5a,6a族元素の炭化物,窒化物およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種以上からなる立方晶化合物相とからなる非磁性超硬合金であって、該結合相に含まれるタングステン量をa重量%、該結合相に含まれるクロム量をb重量%、該結合相に含まれるシリコン量をc重量%とすると、a,b,cは、5≦a≦30、5≦b≦14、1≦c≦5、8≦(b+c)≦15を満足する非磁性超硬合金は、2ナノテラスm3/kg以下の飽和磁化値を示す。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁性粉体の成形金型,磁気テープの切断刃,磁気測定用治具などに用いる耐摩耗性を兼備した非磁性超硬合金に関し、特に、強磁場中で使用する耐摩耗性部品やしゅう動部品に適するものである。また、耐食性にも優れることから、腐食環境下でも使用できる。
【0002】
【従来の技術】
従来から非磁性を有する超硬合金として、WC−(Ni−Cr)系,WC−(Ni−Mo)系などが使用されて来た。WC−Co系合金あるいはWC−Fe系の超硬合金では非磁性にはならないが、WC−Ni合金では健全相領域(遊離炭素あるいはNi2W4Cを析出しない合金炭素量の範囲)の極低炭素側ではNi中にWが多量に固溶して非磁性となる。さらに、Cr,Moを添加すれば、非磁性を示す合金炭素量の範囲が増大することが知られている。非磁性超硬合金に関する先行技術には、特開平5−9647号公報、特開平8−300391号公報、特開2002−86042号公報などがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
特開平5−9647号公報には、Si:4.5〜30%を含むシリコン・ニッケル合金を0.5〜35%含有し、残部WCからなる非磁性超硬合金が記載されている。本公報は、ニッケルに固溶して磁気変態点を低下させる元素としてシリコンを選択したものではあるが、シリコン量が少ないと完全に非磁性にすることが困難であり、逆にシリコン量が多いとニッケル結合相の脆化やNi3Si,Ni2Siの析出により、抗折力強度が著しく低下すると言う問題がある。
【0004】
特開平5−9647号公報には、硬質相成分として、炭化クロムを0.5〜2.0重量%、炭化モリブデンを1.0〜3.0重量%を含有し、残りが炭化タングステンを主成分とし、結合相成分として、ニッケルを5.0〜25.0重量%から成り、合金中の炭化物粒度が1.0μmである磁気テープ用切断刃が記載されている。また、特開2002−86042号公報には、硬質相が主として炭化タングステン、結合相としてNiを3〜25重量%、CrとMoとの少なくとも一種が合計で5重量%以下からなり、保磁力が5エルステッド以下、飽和磁気量が10ガウス(1000ナノテラスm3/kg)以下になった超硬合金で構成した塗布装置用塗布工具が記載されている。
【0005】
上記の両公報に記載された非磁性超硬合金の用途は、ニッケル結合相中にCrとMoとを固溶させることによって非磁性を狙ったものではあるが、後述する様に、安定して完全な非磁を実現することが困難であると言う問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決したもので、具体的には、ニッケル結合相中に必然的に固溶するタングステン以外に、少なくともクロムとシリコンの適量を同時に固溶させることにより、安定して極微少以下の飽和磁化値を示す非磁性超硬合金の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、長年に亘って、非磁性超硬合金の成分組成について検討していた所、ニッケルを結合相とし、所定量のクロムとシリコンを同時添加すると、硬さ,抗折力強度,靱性を損なうことなく、シナジー効果により完全に非磁性を示し、かつ安定して製造が可能であると言う知見を得て、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明の非磁性超硬合金は、ニッケルを主成分とする結合相:5〜45体積%と、炭化タングステンからなる硬質相:5〜95体積%と、4a,5a,6a族金属の炭化物,窒化物およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種以上からなる立方晶化合物相:0〜50体積%と不可避不純物とからなる非磁性超硬合金であって、該結合相に含まれるタングステン量をa重量%、該結合相に含まれるクロム量をb重量%、該結合相に含まれるシリコン量をc重量%とすると、a,b,cは、5≦a≦30、5≦b≦14、1≦c≦5、8≦(b+c)≦15を満足する非磁性超硬合金である。
【0009】
非磁性超硬合金に含まれる炭化タングステンの粒径は、0.3〜10μmと通常範囲であり、微粒ほど高硬度で耐摩耗性に優れ、粗粒ほど高靱性で耐衝撃性に優れる。用途により粒径と結合相量を選定する。
【0010】
非磁性超硬合金に含まれる結合相量は、超硬合金全体に対して5体積%未満では焼結が困難となって巣孔が発生して硬さと抗折力強度が共に低下し、逆に45体積%を超えて大きくなると硬さの低下が大きいために、5〜45体積%と定めた。
【0011】
非磁性超硬合金は、ニッケルを主成分とした結合相と、炭化タングステンからなる硬質相とを必要成分とするが、微粒組織を得るため、および/または、耐溶着性,耐摩耗性,耐酸化性などを向上させるため、立方晶化合物相を含んでも良い。
【0012】
立方晶化合物相として、具体的には、VC,NbC,TaC,ZrN,(Ti,W)C,(Ti,Ta,W)C,(Ti,Mo,W)(C,N)などを挙げることができる。VC,TaCはWCの粒成長抑制剤として微粒合金に使用し、TiC,TiN,ZrNなどは耐溶着性,耐摩耗性,耐酸化性などの向上のために用いる。また、立方晶化合物相の構成元素であるV,Nb,Ta,Ti,Zrなどは、微量ながら結合相に固溶し、非磁性化を助長する効果もある。ここで、立方晶化合物相の量は、50体積%を超えて大きくなると、相対的に硬質相量あるいは結合相量が減少して抗折力強度と靱性が低下する。
【0013】
非磁性超硬合金の結合相は、ニッケルを主成分とした合金であり、結合相に含まれるタングステン量をa重量%、結合相に含まれるクロム量をb重量%、結合相に含まれるシリコン量をc重量%とすると、a,b,cは、5≦a≦30、5≦b≦14、1≦c≦5、8≦(b+c)≦15を満足する。
【0014】
タングステンは必然的に結合相に固溶するもので、結合相に含まれるタングステン量は5重量%未満であると遊離炭素が析出し、30重量%を超えるとNi2W4Cが析出する。遊離炭素やNi2W4Cが非磁性超硬合金中に析出すると抗折力強度の低下を招くため、タングステン量を5〜30重量%と定めた。
【0015】
結合相に含まれるクロム量は、5重量%未満では高炭素合金となった場合には完全に磁性を帯び、逆に15重量%を超えて固溶させると、固溶し切れなかったクロムがCr7C3となって非磁性超硬合金中に析出して抗折力強度が低下するために、5〜15重量%と定めた。また、結合相に含まれるシリコン量は、1重量%未満では高炭素合金となった場合には完全に磁性を帯び、逆に5重量%を超えて大きくなると結合相が脆化して抗折力強度が低下するために、1〜5重量%と定めた。
【0016】
結合相に含まれるクロムとシリコンの合計量が8重量%未満であると、安定した非磁性合金を得ることが困難である。逆に15重量%を超えて大きくなると結合相が脆化するとともに,非磁性超硬合金中にCr7C3あるいはNi3Si、SiCが析出するため抗折力強度が急減する。したがって、結合相に含まれるクロムとシリコンの合計量を、8〜15重量%と定めた。
【0017】
結合相に含まれるニッケルの一部を置換して、ボロン,銀,ビスマス,ゲルマニウム,インジウム,モリブデン,レニウム,ルテニウム,錫の中の少なくとも1種以上からなる添加物を結合相全体に対して5重量%以下含有させると好ましい。結合相に前記添加物を含有させると合金炭素量や不純物、特に鉄とコバルトにかかわらず完全非磁性を安定的に示すためである。特に、ボロン,インジウム,錫の中から選ばれる少なくとも1種を添加させると非磁性超硬合金の焼結性を改善して抗折力強度を向上させるため特に好ましい。
【0018】
結合相として具体的には、結合相に含まれるタングステン量をa重量%、結合相に含まれるクロム量をb重量%、結合相に含まれるシリコン量をc重量%、結合相に含まれるニッケル量をd重量%、結合相に含まれるボロン,銀,ビスマス,ゲルマニウム,インジウム,モリブデン,レニウム,ルテニウム,錫の中の少なくとも1種からなる添加物量をe重量%とすると、a,b,c,d,eは、5≦a≦30、5≦b≦14、1≦c≦5、8≦(b+c)≦15、50≦d≦87,0≦e≦5を満足するNi−W−Cr−Si系合金が挙げられる。
【0019】
本発明の非磁性超硬合金は、室温で測定した飽和磁化値が2ナノテラスm3/kg(0.02ガウスcm3/g)以下である。この値を達成するためには、強磁性金属である鉄やコバルトの混入をなるべく避ける必要がある。すなわち、本発明の非磁性超硬合金では、結合相中に含まれる鉄とコバルトの合計量は1重量%以下であることが好ましく、特に0.5重量%以下が望ましい。
【0020】
本発明の非磁性超硬合金の製造方法は、原料粉末の混合、加圧成形、焼結の各工程からなる通常の粉末冶金法であるが、特に混合工程での不純物混入と合金炭素量の調整に留意する必要がある。具体的な不純物として例えば、ボールミル用のステンレス製ポットからの鉄や超硬合金製ボールからのコバルトであり、摩滅し難い材質を選定し、長時間混合を避ける。また、ウレタンや超硬合金の内張りを施しても良い。一方、合金炭素量の調整では、低炭素合金を狙うと非磁性超硬合金を得やすいが、粗大で脆弱なNi2W4Cが析出して抗折力強度が急減する危険性が高いので、中炭素合金が好ましい。
【0021】
【実施例1】
市販されている平均粒子径が0.5μmのWC(WC/Fと記す),2.1μmのWC(WC/Mと記す),6.7μmのWC(WC/Cと記す),0.5μmのW,0.05μmのカーボンブラック(Cと記す),1.0μmのNi,1.2μmのCr3C2,2μmのSi,3μmのNi3B(5.8重量%B),10μmのAgとGe,1.0μmのMo,1.7μmのVC,1.0μmのTaC,1.2μmの(W,Ti,Ta)C(重量比でWC/TiC/TaC=50/30/20),1.2μmのFe,1.3μmのTiCN(重量比でTiC/TiN)の各粉末を用いて、表1と表2に示す配合組成に秤量し、ステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に封入し、48時間の混合・粉砕を行った後、加熱・乾燥しながらパラフィンワックスを2重量%添加して混合粉末を得た。ここで、すべての試料の合金炭素量は、焼結後に高炭素合金(遊離炭素を析出しない健全相領内での最大の合金炭素量を持つ超硬合金)となるように、WあるいはCの添加により調整した。但し、本発明品3では、意識的に低炭素合金(Ni2W4Cを析出しない健全相領内での最小の合金炭素量を持つ超硬合金)とした。
【0022】
これらの粉末を金型に充填し、196MPaの圧力でもって約5.5×9.5×29mmの圧粉成形体を作製し、アルミナとカーボン繊維からなるシート上に設置し、雰囲気圧力10Paの真空中で、表1と表2に併記した温度でもって1時間加熱保持して、本発明品1〜12及び比較品1〜8の超硬合金を得た。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
こうして得た本発明品1〜15及び比較品1〜8の超硬合金を#230のダイヤモンド砥石で湿式研削加工し、4.0×8.0×25.0mmの形状に作製し、JIS法による抗折力強度とロックウェル硬さ(Aスケール)を測定した。これらの結果を表3と表4に示した。また、同試料の1面を粒径0.3μmのダイヤモンドペーストでラップ加工した後、電界放射型走査電子顕微鏡にて組織写真を撮り、画像処理装置にて、WC,結合相,炭化クロム(Cr7C3),立方晶化合物などの体積;vと平均粒径;d(結合相は除く)を求めた。その結果を表5と表6に記載した。
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
【表6】
【0030】
次に、前記の抗折力試験片について飽和磁化測定装置を用いて磁気特性を測定し、その結果を表7と表8に示す。さらに、この試験片を超硬合金製乳鉢中で100#以下に粉砕し、これを5Nの塩酸と共にビーカーに入れて50℃で24時間保持することによって、超硬合金中の金属結合相成分のみを溶解・抽出した。各抽出液から原子吸光分析装置を用いて成分元素を測定し、結合相の成分量を求めた。その結果を表9と表10に記載した。
【0031】
【表7】
【0032】
【表8】
【0033】
【表9】
【0034】
【表10】
【0035】
【発明の効果】
本発明の非磁性超硬合金は、従来のクロム,シリコンなどを単独添加した非磁性超硬合金に比べて、同一結合相量の合金で抗折力強度が約1.2倍と優れ、かつ高炭素合金でも2ナノテラスm3/kg以下の飽和磁化値を持ち、ほぼ完全に非磁性を示すと言う効果を有する。すなわち、本発明の非磁性超硬合金は、結合相であるニッケルに所定量のクロムとシリコンを固溶させると磁性をほぼ完全に消去できるとともに、抗折力強度を向上させる。本発明の非磁性超硬合金は、不純物の存在や合金炭素量にかかわらず、安定して磁性をほぼ完全に消去できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁性粉体の成形金型,磁気テープの切断刃,磁気測定用治具などに用いる耐摩耗性を兼備した非磁性超硬合金に関し、特に、強磁場中で使用する耐摩耗性部品やしゅう動部品に適するものである。また、耐食性にも優れることから、腐食環境下でも使用できる。
【0002】
【従来の技術】
従来から非磁性を有する超硬合金として、WC−(Ni−Cr)系,WC−(Ni−Mo)系などが使用されて来た。WC−Co系合金あるいはWC−Fe系の超硬合金では非磁性にはならないが、WC−Ni合金では健全相領域(遊離炭素あるいはNi2W4Cを析出しない合金炭素量の範囲)の極低炭素側ではNi中にWが多量に固溶して非磁性となる。さらに、Cr,Moを添加すれば、非磁性を示す合金炭素量の範囲が増大することが知られている。非磁性超硬合金に関する先行技術には、特開平5−9647号公報、特開平8−300391号公報、特開2002−86042号公報などがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
特開平5−9647号公報には、Si:4.5〜30%を含むシリコン・ニッケル合金を0.5〜35%含有し、残部WCからなる非磁性超硬合金が記載されている。本公報は、ニッケルに固溶して磁気変態点を低下させる元素としてシリコンを選択したものではあるが、シリコン量が少ないと完全に非磁性にすることが困難であり、逆にシリコン量が多いとニッケル結合相の脆化やNi3Si,Ni2Siの析出により、抗折力強度が著しく低下すると言う問題がある。
【0004】
特開平5−9647号公報には、硬質相成分として、炭化クロムを0.5〜2.0重量%、炭化モリブデンを1.0〜3.0重量%を含有し、残りが炭化タングステンを主成分とし、結合相成分として、ニッケルを5.0〜25.0重量%から成り、合金中の炭化物粒度が1.0μmである磁気テープ用切断刃が記載されている。また、特開2002−86042号公報には、硬質相が主として炭化タングステン、結合相としてNiを3〜25重量%、CrとMoとの少なくとも一種が合計で5重量%以下からなり、保磁力が5エルステッド以下、飽和磁気量が10ガウス(1000ナノテラスm3/kg)以下になった超硬合金で構成した塗布装置用塗布工具が記載されている。
【0005】
上記の両公報に記載された非磁性超硬合金の用途は、ニッケル結合相中にCrとMoとを固溶させることによって非磁性を狙ったものではあるが、後述する様に、安定して完全な非磁を実現することが困難であると言う問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決したもので、具体的には、ニッケル結合相中に必然的に固溶するタングステン以外に、少なくともクロムとシリコンの適量を同時に固溶させることにより、安定して極微少以下の飽和磁化値を示す非磁性超硬合金の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、長年に亘って、非磁性超硬合金の成分組成について検討していた所、ニッケルを結合相とし、所定量のクロムとシリコンを同時添加すると、硬さ,抗折力強度,靱性を損なうことなく、シナジー効果により完全に非磁性を示し、かつ安定して製造が可能であると言う知見を得て、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明の非磁性超硬合金は、ニッケルを主成分とする結合相:5〜45体積%と、炭化タングステンからなる硬質相:5〜95体積%と、4a,5a,6a族金属の炭化物,窒化物およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種以上からなる立方晶化合物相:0〜50体積%と不可避不純物とからなる非磁性超硬合金であって、該結合相に含まれるタングステン量をa重量%、該結合相に含まれるクロム量をb重量%、該結合相に含まれるシリコン量をc重量%とすると、a,b,cは、5≦a≦30、5≦b≦14、1≦c≦5、8≦(b+c)≦15を満足する非磁性超硬合金である。
【0009】
非磁性超硬合金に含まれる炭化タングステンの粒径は、0.3〜10μmと通常範囲であり、微粒ほど高硬度で耐摩耗性に優れ、粗粒ほど高靱性で耐衝撃性に優れる。用途により粒径と結合相量を選定する。
【0010】
非磁性超硬合金に含まれる結合相量は、超硬合金全体に対して5体積%未満では焼結が困難となって巣孔が発生して硬さと抗折力強度が共に低下し、逆に45体積%を超えて大きくなると硬さの低下が大きいために、5〜45体積%と定めた。
【0011】
非磁性超硬合金は、ニッケルを主成分とした結合相と、炭化タングステンからなる硬質相とを必要成分とするが、微粒組織を得るため、および/または、耐溶着性,耐摩耗性,耐酸化性などを向上させるため、立方晶化合物相を含んでも良い。
【0012】
立方晶化合物相として、具体的には、VC,NbC,TaC,ZrN,(Ti,W)C,(Ti,Ta,W)C,(Ti,Mo,W)(C,N)などを挙げることができる。VC,TaCはWCの粒成長抑制剤として微粒合金に使用し、TiC,TiN,ZrNなどは耐溶着性,耐摩耗性,耐酸化性などの向上のために用いる。また、立方晶化合物相の構成元素であるV,Nb,Ta,Ti,Zrなどは、微量ながら結合相に固溶し、非磁性化を助長する効果もある。ここで、立方晶化合物相の量は、50体積%を超えて大きくなると、相対的に硬質相量あるいは結合相量が減少して抗折力強度と靱性が低下する。
【0013】
非磁性超硬合金の結合相は、ニッケルを主成分とした合金であり、結合相に含まれるタングステン量をa重量%、結合相に含まれるクロム量をb重量%、結合相に含まれるシリコン量をc重量%とすると、a,b,cは、5≦a≦30、5≦b≦14、1≦c≦5、8≦(b+c)≦15を満足する。
【0014】
タングステンは必然的に結合相に固溶するもので、結合相に含まれるタングステン量は5重量%未満であると遊離炭素が析出し、30重量%を超えるとNi2W4Cが析出する。遊離炭素やNi2W4Cが非磁性超硬合金中に析出すると抗折力強度の低下を招くため、タングステン量を5〜30重量%と定めた。
【0015】
結合相に含まれるクロム量は、5重量%未満では高炭素合金となった場合には完全に磁性を帯び、逆に15重量%を超えて固溶させると、固溶し切れなかったクロムがCr7C3となって非磁性超硬合金中に析出して抗折力強度が低下するために、5〜15重量%と定めた。また、結合相に含まれるシリコン量は、1重量%未満では高炭素合金となった場合には完全に磁性を帯び、逆に5重量%を超えて大きくなると結合相が脆化して抗折力強度が低下するために、1〜5重量%と定めた。
【0016】
結合相に含まれるクロムとシリコンの合計量が8重量%未満であると、安定した非磁性合金を得ることが困難である。逆に15重量%を超えて大きくなると結合相が脆化するとともに,非磁性超硬合金中にCr7C3あるいはNi3Si、SiCが析出するため抗折力強度が急減する。したがって、結合相に含まれるクロムとシリコンの合計量を、8〜15重量%と定めた。
【0017】
結合相に含まれるニッケルの一部を置換して、ボロン,銀,ビスマス,ゲルマニウム,インジウム,モリブデン,レニウム,ルテニウム,錫の中の少なくとも1種以上からなる添加物を結合相全体に対して5重量%以下含有させると好ましい。結合相に前記添加物を含有させると合金炭素量や不純物、特に鉄とコバルトにかかわらず完全非磁性を安定的に示すためである。特に、ボロン,インジウム,錫の中から選ばれる少なくとも1種を添加させると非磁性超硬合金の焼結性を改善して抗折力強度を向上させるため特に好ましい。
【0018】
結合相として具体的には、結合相に含まれるタングステン量をa重量%、結合相に含まれるクロム量をb重量%、結合相に含まれるシリコン量をc重量%、結合相に含まれるニッケル量をd重量%、結合相に含まれるボロン,銀,ビスマス,ゲルマニウム,インジウム,モリブデン,レニウム,ルテニウム,錫の中の少なくとも1種からなる添加物量をe重量%とすると、a,b,c,d,eは、5≦a≦30、5≦b≦14、1≦c≦5、8≦(b+c)≦15、50≦d≦87,0≦e≦5を満足するNi−W−Cr−Si系合金が挙げられる。
【0019】
本発明の非磁性超硬合金は、室温で測定した飽和磁化値が2ナノテラスm3/kg(0.02ガウスcm3/g)以下である。この値を達成するためには、強磁性金属である鉄やコバルトの混入をなるべく避ける必要がある。すなわち、本発明の非磁性超硬合金では、結合相中に含まれる鉄とコバルトの合計量は1重量%以下であることが好ましく、特に0.5重量%以下が望ましい。
【0020】
本発明の非磁性超硬合金の製造方法は、原料粉末の混合、加圧成形、焼結の各工程からなる通常の粉末冶金法であるが、特に混合工程での不純物混入と合金炭素量の調整に留意する必要がある。具体的な不純物として例えば、ボールミル用のステンレス製ポットからの鉄や超硬合金製ボールからのコバルトであり、摩滅し難い材質を選定し、長時間混合を避ける。また、ウレタンや超硬合金の内張りを施しても良い。一方、合金炭素量の調整では、低炭素合金を狙うと非磁性超硬合金を得やすいが、粗大で脆弱なNi2W4Cが析出して抗折力強度が急減する危険性が高いので、中炭素合金が好ましい。
【0021】
【実施例1】
市販されている平均粒子径が0.5μmのWC(WC/Fと記す),2.1μmのWC(WC/Mと記す),6.7μmのWC(WC/Cと記す),0.5μmのW,0.05μmのカーボンブラック(Cと記す),1.0μmのNi,1.2μmのCr3C2,2μmのSi,3μmのNi3B(5.8重量%B),10μmのAgとGe,1.0μmのMo,1.7μmのVC,1.0μmのTaC,1.2μmの(W,Ti,Ta)C(重量比でWC/TiC/TaC=50/30/20),1.2μmのFe,1.3μmのTiCN(重量比でTiC/TiN)の各粉末を用いて、表1と表2に示す配合組成に秤量し、ステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に封入し、48時間の混合・粉砕を行った後、加熱・乾燥しながらパラフィンワックスを2重量%添加して混合粉末を得た。ここで、すべての試料の合金炭素量は、焼結後に高炭素合金(遊離炭素を析出しない健全相領内での最大の合金炭素量を持つ超硬合金)となるように、WあるいはCの添加により調整した。但し、本発明品3では、意識的に低炭素合金(Ni2W4Cを析出しない健全相領内での最小の合金炭素量を持つ超硬合金)とした。
【0022】
これらの粉末を金型に充填し、196MPaの圧力でもって約5.5×9.5×29mmの圧粉成形体を作製し、アルミナとカーボン繊維からなるシート上に設置し、雰囲気圧力10Paの真空中で、表1と表2に併記した温度でもって1時間加熱保持して、本発明品1〜12及び比較品1〜8の超硬合金を得た。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
こうして得た本発明品1〜15及び比較品1〜8の超硬合金を#230のダイヤモンド砥石で湿式研削加工し、4.0×8.0×25.0mmの形状に作製し、JIS法による抗折力強度とロックウェル硬さ(Aスケール)を測定した。これらの結果を表3と表4に示した。また、同試料の1面を粒径0.3μmのダイヤモンドペーストでラップ加工した後、電界放射型走査電子顕微鏡にて組織写真を撮り、画像処理装置にて、WC,結合相,炭化クロム(Cr7C3),立方晶化合物などの体積;vと平均粒径;d(結合相は除く)を求めた。その結果を表5と表6に記載した。
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
【表6】
【0030】
次に、前記の抗折力試験片について飽和磁化測定装置を用いて磁気特性を測定し、その結果を表7と表8に示す。さらに、この試験片を超硬合金製乳鉢中で100#以下に粉砕し、これを5Nの塩酸と共にビーカーに入れて50℃で24時間保持することによって、超硬合金中の金属結合相成分のみを溶解・抽出した。各抽出液から原子吸光分析装置を用いて成分元素を測定し、結合相の成分量を求めた。その結果を表9と表10に記載した。
【0031】
【表7】
【0032】
【表8】
【0033】
【表9】
【0034】
【表10】
【0035】
【発明の効果】
本発明の非磁性超硬合金は、従来のクロム,シリコンなどを単独添加した非磁性超硬合金に比べて、同一結合相量の合金で抗折力強度が約1.2倍と優れ、かつ高炭素合金でも2ナノテラスm3/kg以下の飽和磁化値を持ち、ほぼ完全に非磁性を示すと言う効果を有する。すなわち、本発明の非磁性超硬合金は、結合相であるニッケルに所定量のクロムとシリコンを固溶させると磁性をほぼ完全に消去できるとともに、抗折力強度を向上させる。本発明の非磁性超硬合金は、不純物の存在や合金炭素量にかかわらず、安定して磁性をほぼ完全に消去できる。
Claims (3)
- ニッケルを主成分とする結合相:5〜45体積%と、炭化タングステンからなる硬質相:5〜95体積%と、周期律表4a,5a,6a族元素の炭化物,窒化物およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種以上からなる立方晶化合物相:0〜50体積%とからなる非磁性超硬合金であって、該結合相に含まれるタングステン量をa重量%、該結合相に含まれるクロム量をb重量%、該結合相に含まれるシリコン量をc重量%とすると、a,b,cは、5≦a≦30、5≦b≦14、1≦c≦5、8≦(b+c)≦15を満足する非磁性超硬合金。
- 前記非磁性超硬合金の飽和磁化値が2ナノテラスm3/kg以下(0を含む)であることを特徴とする請求項1に記載の非磁性超硬合金。
- 前記結合相に含まれる鉄とコバルトの合計量が1重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の非磁性超硬合金。
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JP2002334508A JP2004169079A (ja) | 2002-11-19 | 2002-11-19 | 非磁性超硬合金 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US20210355567A1 (en) * | 2016-06-23 | 2021-11-18 | HYPERION MATERIALS & TECHNOLOGIES, (Sweden) AB | Corrosion and fatigue resistant cemented carbide process line tool |
-
2002
- 2002-11-19 JP JP2002334508A patent/JP2004169079A/ja not_active Withdrawn
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