JP2004168800A - ジアセタール核剤を含有するポリオレフィン樹脂組成物及びその成形体中のジアセタール由来の臭気低減化方法 - Google Patents
ジアセタール核剤を含有するポリオレフィン樹脂組成物及びその成形体中のジアセタール由来の臭気低減化方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】ジベンジリデンソルビトール、その核置換体等のジアセタールの熱分解に基づく、ポリオレフィン樹脂組成物及びポリオレフィン樹脂成形体中のジアセタール由来のアルデヒド臭気を低減化する方法を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、d90が30μm以下の該ジアセタール0.01〜10重量部を均一度が80〜120%となるまで混合し、(a)得られる均一混合物を溶融混合してポリオレフィン樹脂組成物を得、得られるポリオレフィン樹脂組成物を成形に供してポリオレフィン樹脂樹脂成形体を得るか、又は、(b)得られる均一混合物を直接成形に供してポリオレフィン樹脂成形体を得る。
【選択図】なし
【解決手段】ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、d90が30μm以下の該ジアセタール0.01〜10重量部を均一度が80〜120%となるまで混合し、(a)得られる均一混合物を溶融混合してポリオレフィン樹脂組成物を得、得られるポリオレフィン樹脂組成物を成形に供してポリオレフィン樹脂樹脂成形体を得るか、又は、(b)得られる均一混合物を直接成形に供してポリオレフィン樹脂成形体を得る。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジアセタール核剤を含有するポリオレフィン樹脂組成物及びその成形体のジアセタール由来の臭気を低減化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジベンジリデンソルビトール、その核置換体等のジアセタールは、ポリオレフィン樹脂、特にエチレン、プロピレンのホモポリマー又はそれらを主成分とするコポリマーの核剤として有用な化合物である。これらジアセタールは、特に透明性を向上させる効果に優れ、透明性が要求される各種容器等の成形品分野の樹脂添加剤として広く用いられている。
【0003】
しかし、ジアセタールは、成形加工時の熱で一部分解し、ジベンジリデンソルビトール類を構成するベンズアルデヒド類が遊離し、臭気が発生する。このために、最終成形品中にもアルデヒド臭が残存する場合があり、また、成形品中に接触する食品等にアルデヒドの臭気及び味が移行することもあるので、食品容器等の分野において、好まれない場合がある。
【0004】
これまでにも上記問題点の改善のために様々な提案がなされている。特に、臭気及び味の移行を抑制する化合物(臭気及び味移行抑制剤)を添加する方法が提案されている。例えば、ヒドロキシアミン或いはフェニルヒドラジン類による処理(特許文献1、2参照)、非芳香族有機アミンの添加(特許文献3参照)、脂肪族金属塩及び乳酸金属塩等による表面処理(特許文献4参照)、脂肪族アミンの配合(特許文献5参照)、ソルビン酸及び/又はソルビン酸カリウムの添加(特許文献6参照)、アミノ酸アルカリ金属塩またはアミノ酸および脂肪酸アルカリ金属塩の添加(特許文献7、8参照)、香料によるマスキング(特許文献9)、ヒドラジンの添加(特許文献10、11参照)等の方法が知られている。
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、臭気の改善に一定の効果が認められるが、ジアセタール以外の臭気及び味移行抑制剤成分を添加する必要があり、食品や化粧品分野において用途が限定されており、また、臭気改善効果についても更なる向上が要請されている。
【0006】
また、ジアセタールを、平均粒径が15μm以下、d97(当該粒径より小さい粒子量の全粒子量に対する百分率が97%である粒径)が30μm以下の特定の粒度特性を有する超微粉末にまで微粉化した状態で使用すると、ジアセタールの融点以下の低い温度で溶融ポリオレフィン樹脂に溶解させることができ、押出機の通過時間短縮、樹脂の退色、昇華及びプレートアウト等が回避され、また、成形体表面に生じる白点(気泡)が防止できることが開示されている(特許文献12参照)。また、この文献には、ジアセタールの粗大粒子はガスをトラップしているが、上記特定の粒度特性を有するようになるまで微粒子化すると、ガスのトラップがなくなり、そのために白点が防止できる、と記載されている。しかし、この文献には、ジアセタールから発生するアルデヒド由来の臭気及び味を低減化させるためには、どのようにすればよいかについての開示はない。
【0007】
【特許文献1】
特開昭60−32791号公報
【0008】
【特許文献2】
特開昭60−42385号公報
【0009】
【特許文献3】
特開昭62−4289号公報
【0010】
【特許文献4】
特開昭62−50355号公報
【0011】
【特許文献5】
特開平2−196841号公報
【0012】
【特許文献6】
特開平5−202055号公報
【0013】
【特許文献7】
特開平9−286787号公報
【0014】
【特許文献8】
国際公開第02/34827号パンフレット
【0015】
【特許文献9】
国際公開第02/40587号パンフレット
【0016】
【特許文献10】
国際公開第02/24796号
【0017】
【特許文献11】
国際公開第02/24797号
【0018】
【特許文献12】
特許第2610772号公報(段落0011,0027参照)
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ジアセタールの熱分解に基づく上記問題点を解消し、樹脂組成物及び樹脂成形体中のジアセタール由来の臭気を低減化する方法を提供することを課題とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、以下の知見を得た。
【0021】
(1)ポリオレフィン樹脂組成物製造時及び成形加工時の熱によるジアセタールの熱分解は、加熱溶融前に、ジアセタールとポリオレフィン樹脂とを十分に均一になるまで乾式混合(ドライブレンド)している程少なく、逆に、均一分散の程度が不十分でジアセタールが局在化していると熱による不均化反応が起こり、臭気の原因となるベンズアルデヒドが発生しやすくなる。即ち、ジアセタールから発生する臭気は、樹脂組成物製造時及び成形加工時の高温のみならず、ジアセタールが局在化することに大きく起因していることが明らかとなった。
【0022】
(2)上記均一混合を行うことに加えて、粗大粒子が少ないジアセタール粉末、特に、d90(当該粒径より小さい粒子量の全粒子量に対する百分率が90%である粒径)が30μm以下の微粒子状ジアセタールを使用すると、樹脂組成物の製造時又は成形加工時の熱分解により遊離するベンズアルデヒド類の発生量が大幅に抑制され、臭気が低減化されたポリオレフィン樹脂組成物が得られる。この効果は、d90が30μm以下である限り、平均粒径が15μmを超える場合であっても達成されることが判明した。
【0023】
即ち、上記特許文献12に記載の発明は、d97が30μm以下、平均粒子径が15μm以下という特定の粒度特性を有するジアセタール透明剤を使用することを必須とするものであり、これにより、ジアセタールを低い温度で溶融ポリオレフィン樹脂に配合しようとするものであり、また、白点の問題を解消しようとするものである。
【0024】
これに対して、本発明は、ジアセタールの熱分解に由来する臭気の低減方法に関するものであって、ポリオレフィン中へのジアセタールの不均一な分散が不均化を促進してアルデヒド発生量を増大させ、配合時の温度を問わず、臭気発生の大きな原因となるとの新知見に基づき完成されたものである。かかる不均一な分散(及び不均化)を防止するために、本発明では、▲1▼ドライブレンド時にポリオレフィン樹脂とジアセタールとを十分な均一度に達するまで混合分散すること、及び、▲2▼ジアセタールをd90が30μm以下という微粉末状態で使用することを必須とする。本発明では、溶融ポリオレフィン樹脂へのジアセタールの配合温度が当該ジアセタールの融点未満であっても融点以上であっても、また、平均粒径が15μmを超えていても、臭気の低減が可能である。
【0025】
本発明は、かかる知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次のポリオレフィン樹脂組成物又はポリオレフィン樹脂成形体中のジアセタールから発生する臭気の低減化方法、並びにかかる方法により臭気が低減化されているポリオレフィン樹脂組成物及び成形体を提供するものである。
【0026】
項1 一般式(1)
【0027】
【化3】
【0028】
[式中、R1及びR2は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。a及びbは、それぞれ0〜5の整数を示す。cは0又1を表す。aが2である場合、2つのR1は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成してもよく、又、bが2である場合、2つのR2は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成してもよい。]
で表される少なくとも1種のジアセタールを含有するポリオレフィン樹脂組成物中の該ジアセタールから発生する臭気を低減化する方法であって、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、d90が30μm以下の該少なくとも1種のジアセタールの粉末0.01〜10重量部を、均一度が80〜120%となるまで均一混合し、得られる均一混合物を溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得ることを特徴とする方法。
【0029】
項2 ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、前記少なくとも1種のジアセタールを0.05〜3重量部使用する上記項1に記載の方法。
【0030】
項3 前記少なくとも1種のジアセタールが、1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール及び1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記項1又は2に記載の方法。
【0031】
項4 ジアセタール粉末のd90が20μm以下である上記項1〜3のいずれかに記載の方法。
【0032】
項5 ジアセタール粉末のd90が10μm以下である上記項4に記載の方法。
【0033】
項6 上記項1〜5のいずれかに記載の方法により、ジアセタールから発生する臭気が低減化されていることを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【0034】
項7 一般式(1)
【0035】
【化4】
【0036】
[式中、R1及びR2は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。a及びbは、それぞれ0〜5の整数を示す。cは0又1を表す。aが2である場合、2つのR1は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成してもよく、又、bが2である場合、2つのR2は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成してもよい。]
で表される少なくとも1種のジアセタールを含有するポリオレフィン樹脂成形体中の該ジアセタールから発生する臭気を低減化する方法であって、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、d90が30μm以下の該少なくとも1種のジアセタールの粉末0.01〜10重量部を、均一度が80〜120%となるまで均一混合し、(a)得られる均一混合物を溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得、得られるポリオレフィン樹脂組成物を成形に供してポリオレフィン樹脂成形体を得るか、又は、(b)得られる均一混合物を、直接成形に供してポリオレフィン樹脂成形体を得ることを特徴とする方法。
【0037】
項8 ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、前記少なくとも1種のジアセタールを0.05〜3重量部使用する上記項7に記載の方法。
【0038】
項9 前記少なくとも1種のジアセタールが、1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール及び1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記項7又は8に記載の方法。
【0039】
項10 ジアセタール粉末のd90が20μm以下である上記項7〜9のいずれかに記載の方法。
【0040】
項11 ジアセタール粉末のd90が10μm以下である上記項10に記載の方法。
【0041】
項12 上記項7〜11のいずれかに記載の方法により、ジアセタールから発生する臭気が低減化されていることを特徴とするポリオレフィン樹脂成形体。
【0042】
【発明の実施の形態】
ジアセタール
一般式(1)において、R1及びR2で表される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が例示され、炭素数1〜8のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が例示される。
【0043】
炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基及びイソプロポキシカルボニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が例示される。
【0044】
a及びbは、それぞれ、1〜5の整数であり、好ましくは1、2又は3である。cは、より好ましくは1である。R1及びR2で表される置換基の置換位置は、特に限定されるものではないが、a及びbが1の場合は、o−、m−又はp−位であり、a及びbが2の場合は、2,4−位、3,4−位、3,5−位等を例示でき、a及びbが3の場合は、2,4,5−位、3,4,5−位等を例示できる。
【0045】
これら一般式(1)で表されるジアセタールは、いずれも公知であるか、又は特公昭48−43748号、特開昭53−5165号、特開昭57−185287号、特開平2−231488号等の公知方法に従って容易に製造できる。
【0046】
上記一般式(1)のジアセタールの代表例としては、次のものを例示できる。
【0047】
1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、 1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,3−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,3−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,5−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,5−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4,5−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4,5−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロピルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−プロピルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−エチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−エチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−クロルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−クロルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチル−ベンジリデン−2,4−O−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチル−ベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチル−ベンジリデン−2,4−O−p−クロルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−クロル−ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトールが例示され、これらは、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用される。
【0048】
これらのうち、より効果的な化合物として、1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、 1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、 1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトールが好ましい。これらは、夫々単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用される。
【0049】
これらの中でも、特に1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールが好ましい。
【0050】
上記ジアセタールの結晶形態は、本発明の効果が得られる限り特に限定されず、六方晶、単斜晶、立方晶、三方晶、斜方晶等の任意の結晶形が使用できる。これらの結晶も公知であるか又は公知の方法に従い製造できる。
【0051】
本発明で使用するジアセタールは、一般式(1)で表される1,3:2,4−体の純度が100%のものであってもよいが、若干不純物を含むものであってもかまわない。一般に、ジアセタールは、一般式(1)で表される1,3:2,4−体の純度が90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは97重量%以上である。
【0052】
一般式(1)で表されるジアセタールの合成の際に、D−ソルビトール等の5価又は6価の多価アルコールと無置換または置換芳香族アルデヒドとの縮合反応により生成するアセタール化合物として、一般式(1)で表される1,3:2,4−ジアセタールに加えて、それ以外のアセタール化合物(副生物)、例えば、1,2−体、3,4−体、2,4−体、1,3−体等のモノアセタール、1,3:2,4:5,6−体、1,2:3,4:5,6−体等のトリアセタール及び1,2:3,4−体等のジアセタール異性体が生成する。
【0053】
本発明において一般式(1)で表されるジアセタールは、一般式(1)で表されるジアセタール以外に、不純物であるモノアセタール、トリアセタール及びジアセタール異性体の少なくとも1種を含んでいてもよく、その場合は該不純物の合計量が、アセタール総量(一般式(1)で表される1,3:2,4−ジアセタール、モノアセタール、トリアセタール及びジアセタール異性体の合計量)に対して、10重量%以下、好ましくは0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%以下の量で存在することは特に問題はないが、10重量%以上となると、核剤特性が低下する傾向がある。
【0054】
また、一般式(1)のジアセタールは、公知のジアセタール組成物の形態で使用してもよい。ここで、ジアセタール組成物とは、例えば、国際公開WO99/18108、特許第3358659号に記載されているように、有機酸等の融点降下剤をジアセタールに均一分散させたジアセタール組成物である。これらジアセタール組成物を、本発明に従ってd90を30μm以下の微粉末形態で使用してもよく、これにより、臭気及び味の移行性を更に抑制するようにしてもよい。
【0055】
ジアセタールの微粉化方法
上記ジアセタールを微粉化する方法としては、特に限定されることはなく、工業的には、例えば、ピンミル、ジェットミル、ボールミル、カッターミル等の慣用の粉砕機を使用することができ、また、必要に応じてスクリーン等を用いて過度に大きい粒子を除去することができる。
【0056】
かかるジアセタールの粒子径とは、単独又は2種以上からなるジアセタールの場合は、ジアセタールそのものの粒子径を指し、また、ジアセタール組成物の場合は、その組成物の粒子径を指す。
【0057】
かかるジアセタール組成物を微粉化する方法としては、特に限定されることなく、例えば、ジアセタールとポリオレフィン用改質剤の少なくとも1種をドライブレンドして、得られたジアセタール組成物を慣用の粉砕機を用いて微粉化する方法等が採用できる。
【0058】
ジアセタールまたはジアセタール組成物の粒子径としては、レーザー光散乱法により測定したd90が30μm以下、好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下である。d90が30μmを越えると、樹脂中にジアセタールが局在する傾向が高くなり、熱分解しやすくなる傾向が見られる。本発明の範囲内では、このようなことは見られない。
【0059】
粒子径の測定方法、表現方法はいくつかあり、それぞれ異なった値を示す。レーザー光散乱法で測定した場合、一般的に体積標準でふるい下累積%が90%の粒子径をd90と呼ぶ。一般式(1)で表されるジアセタール核剤をふるいわけし、レーザー光散乱法により測定すると、d90がふるいの目開き径に近い値を示したので、本発明ではd90を粒子径の基準値として用いた。
【0060】
ポリオレフィン樹脂組成物
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、レーザー光散乱法により測定したd90が30μm以下のジアセタール(又は該ジアセタールを含有するジアセタール組成物)をポリオレフィン樹脂に均一に配合することにより製造することができる。
【0061】
必要であれば、本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物には、使用目的やその用途に応じて、適宜、従来公知のポリオレフィン用改質剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加することもできる。
【0062】
本発明では、まず、ポリオレフィン樹脂、d90が30μm以下の前記一般式(1)で表されるジアセタール(又は該ジアセタールを含有するジアセタール組成物)及び必要に応じてポリオレフィン用改質剤を均一に混合する。その混合方法としては、本発明の効果が得られる限り特に限定されることはなく、工業的には、例えば、ナウタミキサー、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー等を用いて均一に乾式混合(ドライブレンド)する方法等を例示することができる。
【0063】
均一混合に際しては、ポリオレフィン樹脂、本発明のd90が30μm以下のジアセタール(又はジアセタール組成物)、ポリオレフィン樹脂用改質剤の3者をドライブレンドする方法、これら3者のうちの2者を乾式混合し、得られる乾式混合物を残りの1者とドライブレンドする方法等の各種の方法がいずれも使用できる。
【0064】
得られる乾式混合物(ドライブレンド物)は、その溶融混合前において、ジアセタールが混合物中に均一に混合していることが重要であり、ポリオレフィン樹脂、d90が30μm以下のジアセタール粒子(又はジアセタール組成物粒子)及び必要に応じてポリオレフィン樹脂用改質剤を均一に混合する場合、均一度が80〜120%、特に90〜110%となるまで混合する。
【0065】
ここで、本発明において、「均一度」とは、次の方法により求められる均一分散の尺度である。
【0066】
混合状態の程度を測定するための規格は、本発明者の知る限り存在しないように思われる。そこで、本発明では、上記乾式混合物の複数箇所から適当な方法で一定量サンプリングし、得られたサンプルにおける混合状態から混合物全体の混合状態を評価するものとした。特に、得られた混合物の一部を、混合物の複数の箇所からサンプリングし、その混合状態から混合物全体の混合の均一度を評価した。
【0067】
より具体的には、上記の方法により得られたポリオレフィン樹脂、ジアセタール(及び必要に応じて、ポリオレフィン樹脂用改質剤)の混合物の一部を該混合物の複数の箇所からサンプリングし、次に、ポリオレフィン樹脂を溶解しにくいが、ジアセタールを溶解する有機溶媒(1,4−ジオキサン)で各サンプル1g中のジアセタールを抽出し、抽出液をガスクロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィー分析で分析することにより、上記混合物中に存在するジアセタールの量を測定する。
【0068】
上記混合物においてジアセタール粒子が完全に均一にポリオレフィン樹脂(及び必要に応じて使用されるポリオレフィン樹脂用改質剤)と混合されているとした場合のジアセタール含有量(理論含有量)を計算により求める。上記「均一度」は、該理論含有量に対する、上記抽出後の分析により測定されたジアセタール含有量(分析含有量)の百分率であり、下記式(a)により求める。
【0069】
均一度(%)=(C/Ct)×100 (a)
[式中、Cは分析により測定されたジアセタール含有量(分析含有量)を示し、Ctはジアセタール粒子が完全に均一にポリオレフィン樹脂粒子(及び、該当する場合は、ポリオレフィン樹脂用改質剤)と混合されているとした場合のジアセタール含有量(理論含有量)を示す。]
上記混合物の任意の異なる箇所からサンプリングを少なくとも5回行い、すべてのサンプルについて上記均一度が80〜120%、特に90〜110%であると、臭気低減化の点で優れた結果が得られる。
【0070】
本発明のジアセタールのポリオレフィン樹脂に対する配合量は、所定の効果が得られる限り特に限定されるものではなく、広い範囲から適宜選択することができるが、通常、ポリオレフィン樹脂100重量部当たり、0.01〜10重量部程度、好ましくは0.05〜3重量部程度配合される。これらの範囲内で配合することにより十分に本発明の効果を得ることができる。
【0071】
本発明に係るポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリブテン系樹脂が例示され、より具体的には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、エチレン含量50重量%以上、好ましくは70重量%以上のエチレンコポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン50重量%以上、好ましくは70重量%以上のプロピレンコポリマー、ブテンホモポリマー、ブテン含量50重量%以上、好ましくは70重量%以上のブテンコポリマー、メチルペンテンホモポリマー、メチルペンテン含量50重量%以上、好ましくは70重量%以上のメチルペンテンコポリマー、ポリブタジエン等が例示される。
【0072】
上記コポリマーはランダムコポリマーであってもよく、ブロックコポリマーであってもよい。これらの樹脂の立体規則性がある場合は、アイソタクチックでもシンジオタクチックでもよい。
【0073】
上記コポリマーを構成し得るコモノマーとして、具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン等のα−オレフィン、1,4−エンドメチレンシクロヘキセン等のビシクロ型モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等が例示できる。
【0074】
かかる重合体を製造するために適用される触媒としては、一般に使用されているチーグラー・ナッタ型触媒はもちろん、遷移金属化合物(例えば、三塩化チタン、四塩化チタン等のチタンのハロゲン化物)を塩化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウムを主成分とする担体に担持してなる触媒と、アルキルアルミニウム化合物(トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド等)とを組み合わせてなる触媒系やメタロセン触媒も使用できる。
【0075】
本発明に係るポリオレフィン樹脂の推奨されるメルトフローレート(以下「MFR」と略記する。JIS K 7210−1976)は、その適用する成形方法により適宜選択されるが、通常、0.01〜200g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分である。
【0076】
前記のように、本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物には、使用目的やその用途に応じて、適宜、従来公知のポリオレフィン用改質剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0077】
上記ポリオレフィン用改質剤としては、例えば、ポリオレフィン等衛生協議会編「ポジティブリストの添加剤要覧」(2002年1月)に記載されている各種添加剤が挙げられ、より具体的には、安定剤(金属化合物、エポキシ化合物、窒素化合物、燐化合物、硫黄化合物等)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等)、酸化防止剤(フェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イオウ系化合物等)、界面活性剤、滑剤(パラフィン、ワックス等の脂肪族炭化水素、炭素数8〜22の高級脂肪酸、炭素数8〜22の高級脂肪酸金属(Al、Ca、Mg、Zn)塩、炭素数8〜22の高級脂肪族アルコール、ポリグリコール、炭素数4〜22の高級脂肪酸と炭素数4〜18の脂肪族1価アルコールとのエステル、炭素数8〜22の高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン誘導体等)、充填剤(タルク、ハイドロタルサイト、マイカ、ゼオライト、パーライト、珪藻土、炭酸カルシウム、ガラス繊維等)、発泡剤、発砲助剤、ポリマー添加剤の他、可塑剤(ジアルキルフタレート、ジアルキルヘキサヒドロフタレート等)、架橋剤、架橋促進剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、有機無機の顔料、加工助剤、他の核剤等の各種添加剤が例示される。
【0078】
本発明の樹脂組成物は、種々の方法により製造できるが、好ましくは、まず、上記ポリオレフィン樹脂、d90が30μm以下の一般式(1)で表されるジアセタール(又はジアセタール組成物)の粉末及び必要に応じて従来公知のポリオレフィン用改質剤(該ジアセタールを除く)を均一となるまで乾式混合法により、均一度が前記範囲となるまで混合し、得られる均一混合物を溶融混合することにより得られる。
【0079】
溶融混合は、通常の一軸又は二軸の押出機等の公知の混練装置を用いて行うことが出来る。溶融混合時の温度は、ジアセタールの融点以下の温度であってもよく、また、ジアセタールの融点を超える温度であってもよい。一般には、溶融混練時の樹脂温度は、170〜280℃程度、特に180〜260℃程度に設定するのが好ましい。
【0080】
樹脂組成物は、ペレットの形態にしてもよく、また、高濃度のジアセタールを含有するマスターバッチの形態にしてもよい。
【0081】
かくして得られる本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、当該樹脂組成物製造時のジアセタールの局在化、これに伴う不均化によるアルデヒドの発生並びに最終樹脂組成物中のアルデヒド臭気が低減されている。
【0082】
特に、本発明方法により得られるポリオレフィン樹脂組成物は、 前記従来技術とは異なり、ジアセタールに由来するアルデヒド臭気低減化のための成分(臭気又は味移行抑制剤)を含有することなく、アルデヒド臭気が低減されていること特徴とする。
【0083】
ポリオレフィン樹脂成形体
本発明のポリオレフィン樹脂成形体は、上記のポリオレフィン樹脂組成物を慣用の成形法に従って成形することにより得られる。或いは、上記ポリオレフィン樹脂、d90が30μm以下の一般式(1)で表されるジアセタール(又はジアセタール組成物)の粉末及び必要に応じて従来公知のポリオレフィン用改質剤(該ジアセタールを除く)を均一となるまで乾式混合法により混合して得られる均一混合物を、直接成形することによっても得られる。
【0084】
本発明に係る樹脂組成物又は上記均一混合物を成形するに際しては、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧空成形、回転成形、フィルム成形等の従来公知の成形方法のいずれをも採用できる。成形条件としては、従来採用されている条件が広い範囲から適宜選択できる。
【0085】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、従来、ジアセタールを核剤として配合してなるポリオレフィン樹脂組成物が用いられてきたと同様の分野において適用され、成形体とされる。
【0086】
より具体的には、熱や放射線等により滅菌されるディスポーザブル注射器、輸液・輸血セット、採血器具等の医療用器具類;放射線等により滅菌される食品・植物等の包装物;衣料ケースや衣料保存用コンテナ等の各種ケース類;食品を熱充填するためのカップ、レトルト食品の包装容器;電子レンジ用容器;ジュース、茶等の飲料用、化粧品用、医薬品用、シャンプー用等の缶、ビン等の容器;味噌、醤油等の調味料用容器及びキャップ;水、米、パン、漬物等の食品用ケース及び容器;冷蔵庫用ケース等の雑貨;文具;電気・機械部品;自動車用部品等の素材として好適である。
【0087】
従来のジアセタールを含有する樹脂組成物から成形された成形体に比べて、上記の本発明のポリオレフィン樹脂成形体は、成形加工時のアルデヒド類の発生が低減されるため、成形加工時に臭気の発生が少ない。また、本発明の成形体は、アルデヒド類の量が大幅に低減されているため、アルデヒド類に起因する臭気が低減されている。特に、本発明のポリオレフィン樹脂成形体は、前記従来技術とは異なり、ジアセタール由来のアルデヒド臭気低減のための成分(臭気及び味移行抑制剤)を含有することなく、アルデヒド臭気が低減されていることを特徴とする。
【0088】
しかも、本発明のポリオレフィン樹脂成形体は、透明性にも優れている。従って、食品包装材及び食品容器、化粧品容器等の分野で有利に使用することができる。
【0089】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を揚げ、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0090】
本発明のジアセタールの粒子径、ジアセタールの分散性、樹脂中のジアセタールの定量、射出成型品のアルデヒド発生量及び射出成型品のヘイズ値を以下の方法により測定し、評価した。
【0091】
平均粒子径及びd90
30ml目盛り付き試験管に試料約50mgを秤取り、界面活性剤水溶液を添加し、軽く振り混ぜて試料をなじませた。続いて、水を加えて全量を10mlとし、この混合溶液を試験管ミキサーで1分間攪拌した。攪拌直後、駒込ピペットにてサンプリングを行い、レーザ回折・散乱式粒度分析計(日機装社製、「マイクロトラックX100」)にて、平均粒子径とd90を測定した。界面活性剤水溶液は、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO付加10モル)0.1gと水99.9gから調製した。
【0092】
ジアセタールの分散の均一性(樹脂中のジアセタールの定量)
ポリオレフィン樹脂、d90が30μm以下となるように微粉化したジアセタール(及び必要に応じてポリオレフィン樹脂改質剤)をヘンシェルミキサーにより均一に混合し、得られたドライブレンド物の一部をサンプリングした。得られたサンプルの1gを精密に秤量し、これに内部標準として安息香酸エチル50ppmを含有する1,4−ジオキサン5mlを加えて加熱してジアセタールを抽出し、そのまま濾過した。濾液を高速液体クロマトグラフィーにて分析し、ジアセタール含有量を求めた。
【0093】
こうして測定されたジアセタール含有量から、均一度を、下記式(a)により算出した。
【0094】
均一度(%)=(C/Ct)×100 (a)
[式中、Cは分析により測定されたジアセタール含有量(分析含有量)を示し、Ctはジアセタール粒子が完全に均一にポリオレフィン樹脂(及び、該当する場合は、ポリオレフィン樹脂用改質剤)と混合されているとした場合のジアセタール含有量(理論含有量)を示す。]
上記ドライブレンド物の任意の異なる箇所から、上記と同様にしてサンプリング及びサンプル1g中のジアセタール含有量測定及び均一度の算出を合計5回行い、5回とも均一度が80〜120%、特に90〜110%であれば均一に混合されていると判断した。
【0095】
ヘイズ値(%)
東洋精機製作所製のヘイズメータを用いて、JIS K6714、JIS K6717に準じて測定した。得られた数値が小さい程、透明性に優れている。
【0096】
ポリオレフィン樹脂組成物の未分散物の有無
ポリオレフィン樹脂組成物(ストランド)を10m採取し、倍率40倍の光学顕微鏡にて未分散物の個数(10mのストランド中に確認できる個数)を確認した。
【0097】
ポリオレフィン樹脂成形体中のアルデヒド量
ポリオレフィン樹脂成形体20gと脱イオン水140gを225mlのガラス瓶中に密封した後、80℃の恒温槽中に2時間放置し、室温まで冷却した水溶液を高速液体クロマトグラフィーを用いて、サンプルのアルデヒド含有量を定量した。アルデヒド量は、μg/PPg、即ち試験片1g当たりのマイクログラム数で表す。
【0098】
ジアセタールの微粉化方法
ジアセタールをジェットミル(ホソカワミクロン社製、商品名「ジェットミル100AFG型」)にて微粉砕した。
【0099】
ジアセタール核剤を含有するポリオレフィン樹脂組成物の調製と成形方法
エチレン含量3.0重量%のアイソタクチックランダムポリプロピレン樹脂(MFR=20g/10分、以下「r−PP」と略記する。)1000gに対して、ジアセタール粉末2.0g、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピイオネート]メタン(商品名、イルガノックス1010、チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.5gおよびステアリン酸カルシウム0.5gを配合し、ヘンシェルミキサーで1000rpm、5分間ドライブレンドした。
【0100】
次に、樹脂温度220℃で一軸押出機(直径20mm)、L/D=380mm/20mm)、回転数40rpm)を用いて溶融混練して、押出ストランドを水冷し、次に切断してポリオレフィン樹脂組成物を得た。
【0101】
得られたペレットを樹脂温度240℃、金型温度40℃の条件下で射出成形し、ポリオレフィン樹脂成形体(試験片=長さ7cm、幅4cm、厚さ1mm)を調製した。
【0102】
実施例1
(a)特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製した1,3:2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール(以下「Me−DBS」と略記する。)を上記ジアセタールの微粉化方法に従って調製した。得られた微粉化したMe−DBSの平均粒径(dav)とd90を測定し、その結果を表1に記載した。
【0103】
(b)次に、ジアセタール粉末とポリオレフィン樹脂をドライブレンド後、上記ジアセタール核剤を含有するポリオレフィン樹脂組成物の調製と成形方法に従って、ポリオレフィン樹脂組成物及び成形体を得た。
【0104】
(c)得られたドライブレンド物についてジアセタールの分散の均一度(%)を測定した。また、得られた樹脂組成物(ペレット)について未分散物の有無の評価を行い、また、ポリオレフィン樹脂成形体についてアルデヒド量を評価した。その結果を表1に記載した。
【0105】
なお、得られた射出成形体(試験片)のヘイズ値は10%であった。
【0106】
表1において、「均一度」の欄は、サンプリングされた5つの試料について測定された均一度の最小値及び最大値を記載した(以下の実施例及び比較例においても同じ)。
【0107】
比較例1
ヘンシェルミキサーでの混合に代えて、ポリ袋に入れて3分間混合した他は実施例1と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に示す。
【0108】
比較例2
特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製したMe−DBSを微粉砕することなく用いた他は実施例1(b)(c)と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に示す。
【0109】
実施例2
Me−DBSに代えて、特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製した1,3:2,4−ジベンジリデンソルビトール(以下「DBS」と略記する。)を用いた他は実施例1と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0110】
比較例3
特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製したDBSを微粉砕することなく用いた他は実施例1(b)(c)と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0111】
実施例3
Me−DBSに代えて、特開平2−231488号公報記載の方法により実験室的に調製した1,3:2,4−ジ(p−エチルベンジリデン)ソルビトール(以下、「Et−DBS」と略記する。)を用いた他は実施例1と同様の操作にて評価を行なった。その結果を表1に記載した。
【0112】
比較例4
特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製したEt−DBSを乳鉢で粉砕し、目開き140メッシュの標準篩い(JIS Z−8801規格)に通したものを用いた他は実施例1(b)(c)と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0113】
実施例4
Me−DBSに代えて、特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製した1,3:2,4−ジ(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール(以下、「3,4−DMDBS」と略記する。)を用いた他は実施例1と同様の操作にて評価を行なった。得られた結果を表1に記載した。
【0114】
比較例5
特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製した3,4−DMDBSを乳鉢で粉砕し、目開き140メッシュの標準篩いに通したものを用いた以外は実施例1(b)(c)と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0115】
実施例5
実施例1で微粉化したMe−DBS 285g、ステアリン酸15gを5L万能撹拌機に入れ、メタノール400mlを添加し、70℃で1時間撹拌した。さらに水200mlを加え、100℃で1時間撹拌した。次に徐々に減圧にして、メタノールおよび水を除去し、水分1.0wt%以下になるまで乾燥した。
【0116】
こうして得られたMe−DBS/ステアリン酸混合物(=粉末状ジアセタール組成物)を実施例1と同様の操作にて微粉化した。
【0117】
得られた微粉化されたMe−DBS/ステアリン酸混合物を、微粉化されたMe−DBSに代えて使用する以外は実施例1(b)(c)と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0118】
比較例6
実施例5で調製した微粉化していないMe−DBS/ステアリン酸の混合物を乳鉢で粉砕し、目開き140メッシュの篩いに通して粉末を得た。
【0119】
得られたMe−DBS/ステアリン酸混合物の粉末を、微粉化されたMe−DBSに代えて使用する以外は実施例1(b)(c)と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0120】
実施例6
ポリオレフィン樹脂としてアイソタクチックホモポリプロピレン樹脂(MFR=30g/10分、以下「h−PP」と略記する。)を用いた他は実施例1と同様にして評価を行なった。その結果を表1に記載した。
【0121】
比較例7
ポリオレフィン樹脂としてアイソタクチックホモポリプロピレン樹脂(MFR=30g/10分、以下「h−PP」と略記する。)を用い、且つ、Me−DBSを微粉砕することなく用いた他は実施例1(b)(c)と同様にして評価を行なった。その結果を表1に記載した。
【0122】
実施例7
d90が23.4μm、平均粒子径が16.5μmのMe−DBSを用いた他は実施例1と同様の操作にて評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
実施例8
樹脂温度240℃、すなわちDBSの融点以上で溶融混練した以外は実施例2と同様の操作にて評価を行った。結果を表1に示す。
【0124】
比較例8
特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製したDBSを用い、これを微粉砕することなく使用し、樹脂温度240℃、すなわちDBSの融点以上で溶融混練した以外は実施例2と同様の操作にて評価を行った。混合状態は均一であったが、ストランドにおいてDBSの未分散物が確認された。アルデヒドの抽出量は5.8μg/PPgであった。
【0125】
【表1】
【0126】
表1から、本発明の方法により得られる樹脂成形体は、未分散物がなく、アルデヒド抽出量が低いことが判る。
【0127】
【発明の効果】
本発明方法に従ってジアセタールをポリオレフィン樹脂用核剤として使用した場合、ポリオレフィン樹脂の成形加工時及び最終成形品中のアルデヒド類の発生量が大幅に抑制されると共に、臭気が低減化された透明性に優れたポリオレフィン樹脂成形体を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジアセタール核剤を含有するポリオレフィン樹脂組成物及びその成形体のジアセタール由来の臭気を低減化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジベンジリデンソルビトール、その核置換体等のジアセタールは、ポリオレフィン樹脂、特にエチレン、プロピレンのホモポリマー又はそれらを主成分とするコポリマーの核剤として有用な化合物である。これらジアセタールは、特に透明性を向上させる効果に優れ、透明性が要求される各種容器等の成形品分野の樹脂添加剤として広く用いられている。
【0003】
しかし、ジアセタールは、成形加工時の熱で一部分解し、ジベンジリデンソルビトール類を構成するベンズアルデヒド類が遊離し、臭気が発生する。このために、最終成形品中にもアルデヒド臭が残存する場合があり、また、成形品中に接触する食品等にアルデヒドの臭気及び味が移行することもあるので、食品容器等の分野において、好まれない場合がある。
【0004】
これまでにも上記問題点の改善のために様々な提案がなされている。特に、臭気及び味の移行を抑制する化合物(臭気及び味移行抑制剤)を添加する方法が提案されている。例えば、ヒドロキシアミン或いはフェニルヒドラジン類による処理(特許文献1、2参照)、非芳香族有機アミンの添加(特許文献3参照)、脂肪族金属塩及び乳酸金属塩等による表面処理(特許文献4参照)、脂肪族アミンの配合(特許文献5参照)、ソルビン酸及び/又はソルビン酸カリウムの添加(特許文献6参照)、アミノ酸アルカリ金属塩またはアミノ酸および脂肪酸アルカリ金属塩の添加(特許文献7、8参照)、香料によるマスキング(特許文献9)、ヒドラジンの添加(特許文献10、11参照)等の方法が知られている。
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、臭気の改善に一定の効果が認められるが、ジアセタール以外の臭気及び味移行抑制剤成分を添加する必要があり、食品や化粧品分野において用途が限定されており、また、臭気改善効果についても更なる向上が要請されている。
【0006】
また、ジアセタールを、平均粒径が15μm以下、d97(当該粒径より小さい粒子量の全粒子量に対する百分率が97%である粒径)が30μm以下の特定の粒度特性を有する超微粉末にまで微粉化した状態で使用すると、ジアセタールの融点以下の低い温度で溶融ポリオレフィン樹脂に溶解させることができ、押出機の通過時間短縮、樹脂の退色、昇華及びプレートアウト等が回避され、また、成形体表面に生じる白点(気泡)が防止できることが開示されている(特許文献12参照)。また、この文献には、ジアセタールの粗大粒子はガスをトラップしているが、上記特定の粒度特性を有するようになるまで微粒子化すると、ガスのトラップがなくなり、そのために白点が防止できる、と記載されている。しかし、この文献には、ジアセタールから発生するアルデヒド由来の臭気及び味を低減化させるためには、どのようにすればよいかについての開示はない。
【0007】
【特許文献1】
特開昭60−32791号公報
【0008】
【特許文献2】
特開昭60−42385号公報
【0009】
【特許文献3】
特開昭62−4289号公報
【0010】
【特許文献4】
特開昭62−50355号公報
【0011】
【特許文献5】
特開平2−196841号公報
【0012】
【特許文献6】
特開平5−202055号公報
【0013】
【特許文献7】
特開平9−286787号公報
【0014】
【特許文献8】
国際公開第02/34827号パンフレット
【0015】
【特許文献9】
国際公開第02/40587号パンフレット
【0016】
【特許文献10】
国際公開第02/24796号
【0017】
【特許文献11】
国際公開第02/24797号
【0018】
【特許文献12】
特許第2610772号公報(段落0011,0027参照)
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ジアセタールの熱分解に基づく上記問題点を解消し、樹脂組成物及び樹脂成形体中のジアセタール由来の臭気を低減化する方法を提供することを課題とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、以下の知見を得た。
【0021】
(1)ポリオレフィン樹脂組成物製造時及び成形加工時の熱によるジアセタールの熱分解は、加熱溶融前に、ジアセタールとポリオレフィン樹脂とを十分に均一になるまで乾式混合(ドライブレンド)している程少なく、逆に、均一分散の程度が不十分でジアセタールが局在化していると熱による不均化反応が起こり、臭気の原因となるベンズアルデヒドが発生しやすくなる。即ち、ジアセタールから発生する臭気は、樹脂組成物製造時及び成形加工時の高温のみならず、ジアセタールが局在化することに大きく起因していることが明らかとなった。
【0022】
(2)上記均一混合を行うことに加えて、粗大粒子が少ないジアセタール粉末、特に、d90(当該粒径より小さい粒子量の全粒子量に対する百分率が90%である粒径)が30μm以下の微粒子状ジアセタールを使用すると、樹脂組成物の製造時又は成形加工時の熱分解により遊離するベンズアルデヒド類の発生量が大幅に抑制され、臭気が低減化されたポリオレフィン樹脂組成物が得られる。この効果は、d90が30μm以下である限り、平均粒径が15μmを超える場合であっても達成されることが判明した。
【0023】
即ち、上記特許文献12に記載の発明は、d97が30μm以下、平均粒子径が15μm以下という特定の粒度特性を有するジアセタール透明剤を使用することを必須とするものであり、これにより、ジアセタールを低い温度で溶融ポリオレフィン樹脂に配合しようとするものであり、また、白点の問題を解消しようとするものである。
【0024】
これに対して、本発明は、ジアセタールの熱分解に由来する臭気の低減方法に関するものであって、ポリオレフィン中へのジアセタールの不均一な分散が不均化を促進してアルデヒド発生量を増大させ、配合時の温度を問わず、臭気発生の大きな原因となるとの新知見に基づき完成されたものである。かかる不均一な分散(及び不均化)を防止するために、本発明では、▲1▼ドライブレンド時にポリオレフィン樹脂とジアセタールとを十分な均一度に達するまで混合分散すること、及び、▲2▼ジアセタールをd90が30μm以下という微粉末状態で使用することを必須とする。本発明では、溶融ポリオレフィン樹脂へのジアセタールの配合温度が当該ジアセタールの融点未満であっても融点以上であっても、また、平均粒径が15μmを超えていても、臭気の低減が可能である。
【0025】
本発明は、かかる知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次のポリオレフィン樹脂組成物又はポリオレフィン樹脂成形体中のジアセタールから発生する臭気の低減化方法、並びにかかる方法により臭気が低減化されているポリオレフィン樹脂組成物及び成形体を提供するものである。
【0026】
項1 一般式(1)
【0027】
【化3】
【0028】
[式中、R1及びR2は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。a及びbは、それぞれ0〜5の整数を示す。cは0又1を表す。aが2である場合、2つのR1は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成してもよく、又、bが2である場合、2つのR2は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成してもよい。]
で表される少なくとも1種のジアセタールを含有するポリオレフィン樹脂組成物中の該ジアセタールから発生する臭気を低減化する方法であって、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、d90が30μm以下の該少なくとも1種のジアセタールの粉末0.01〜10重量部を、均一度が80〜120%となるまで均一混合し、得られる均一混合物を溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得ることを特徴とする方法。
【0029】
項2 ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、前記少なくとも1種のジアセタールを0.05〜3重量部使用する上記項1に記載の方法。
【0030】
項3 前記少なくとも1種のジアセタールが、1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール及び1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記項1又は2に記載の方法。
【0031】
項4 ジアセタール粉末のd90が20μm以下である上記項1〜3のいずれかに記載の方法。
【0032】
項5 ジアセタール粉末のd90が10μm以下である上記項4に記載の方法。
【0033】
項6 上記項1〜5のいずれかに記載の方法により、ジアセタールから発生する臭気が低減化されていることを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
【0034】
項7 一般式(1)
【0035】
【化4】
【0036】
[式中、R1及びR2は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表す。a及びbは、それぞれ0〜5の整数を示す。cは0又1を表す。aが2である場合、2つのR1は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成してもよく、又、bが2である場合、2つのR2は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成してもよい。]
で表される少なくとも1種のジアセタールを含有するポリオレフィン樹脂成形体中の該ジアセタールから発生する臭気を低減化する方法であって、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、d90が30μm以下の該少なくとも1種のジアセタールの粉末0.01〜10重量部を、均一度が80〜120%となるまで均一混合し、(a)得られる均一混合物を溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得、得られるポリオレフィン樹脂組成物を成形に供してポリオレフィン樹脂成形体を得るか、又は、(b)得られる均一混合物を、直接成形に供してポリオレフィン樹脂成形体を得ることを特徴とする方法。
【0037】
項8 ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、前記少なくとも1種のジアセタールを0.05〜3重量部使用する上記項7に記載の方法。
【0038】
項9 前記少なくとも1種のジアセタールが、1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール及び1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記項7又は8に記載の方法。
【0039】
項10 ジアセタール粉末のd90が20μm以下である上記項7〜9のいずれかに記載の方法。
【0040】
項11 ジアセタール粉末のd90が10μm以下である上記項10に記載の方法。
【0041】
項12 上記項7〜11のいずれかに記載の方法により、ジアセタールから発生する臭気が低減化されていることを特徴とするポリオレフィン樹脂成形体。
【0042】
【発明の実施の形態】
ジアセタール
一般式(1)において、R1及びR2で表される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が例示され、炭素数1〜8のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が例示される。
【0043】
炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基及びイソプロポキシカルボニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が例示される。
【0044】
a及びbは、それぞれ、1〜5の整数であり、好ましくは1、2又は3である。cは、より好ましくは1である。R1及びR2で表される置換基の置換位置は、特に限定されるものではないが、a及びbが1の場合は、o−、m−又はp−位であり、a及びbが2の場合は、2,4−位、3,4−位、3,5−位等を例示でき、a及びbが3の場合は、2,4,5−位、3,4,5−位等を例示できる。
【0045】
これら一般式(1)で表されるジアセタールは、いずれも公知であるか、又は特公昭48−43748号、特開昭53−5165号、特開昭57−185287号、特開平2−231488号等の公知方法に従って容易に製造できる。
【0046】
上記一般式(1)のジアセタールの代表例としては、次のものを例示できる。
【0047】
1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(m−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、 1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,3−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,3−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,5−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,5−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4,5−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4,5−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロピルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−プロピルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−エチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−エチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−クロルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−クロルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチル−ベンジリデン−2,4−O−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチル−ベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチル−ベンジリデン−2,4−O−p−クロルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−クロル−ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトールが例示され、これらは、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用される。
【0048】
これらのうち、より効果的な化合物として、1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、 1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、 1,3:2,4−ビス−O−(p−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトールが好ましい。これらは、夫々単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用される。
【0049】
これらの中でも、特に1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールが好ましい。
【0050】
上記ジアセタールの結晶形態は、本発明の効果が得られる限り特に限定されず、六方晶、単斜晶、立方晶、三方晶、斜方晶等の任意の結晶形が使用できる。これらの結晶も公知であるか又は公知の方法に従い製造できる。
【0051】
本発明で使用するジアセタールは、一般式(1)で表される1,3:2,4−体の純度が100%のものであってもよいが、若干不純物を含むものであってもかまわない。一般に、ジアセタールは、一般式(1)で表される1,3:2,4−体の純度が90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは97重量%以上である。
【0052】
一般式(1)で表されるジアセタールの合成の際に、D−ソルビトール等の5価又は6価の多価アルコールと無置換または置換芳香族アルデヒドとの縮合反応により生成するアセタール化合物として、一般式(1)で表される1,3:2,4−ジアセタールに加えて、それ以外のアセタール化合物(副生物)、例えば、1,2−体、3,4−体、2,4−体、1,3−体等のモノアセタール、1,3:2,4:5,6−体、1,2:3,4:5,6−体等のトリアセタール及び1,2:3,4−体等のジアセタール異性体が生成する。
【0053】
本発明において一般式(1)で表されるジアセタールは、一般式(1)で表されるジアセタール以外に、不純物であるモノアセタール、トリアセタール及びジアセタール異性体の少なくとも1種を含んでいてもよく、その場合は該不純物の合計量が、アセタール総量(一般式(1)で表される1,3:2,4−ジアセタール、モノアセタール、トリアセタール及びジアセタール異性体の合計量)に対して、10重量%以下、好ましくは0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%以下の量で存在することは特に問題はないが、10重量%以上となると、核剤特性が低下する傾向がある。
【0054】
また、一般式(1)のジアセタールは、公知のジアセタール組成物の形態で使用してもよい。ここで、ジアセタール組成物とは、例えば、国際公開WO99/18108、特許第3358659号に記載されているように、有機酸等の融点降下剤をジアセタールに均一分散させたジアセタール組成物である。これらジアセタール組成物を、本発明に従ってd90を30μm以下の微粉末形態で使用してもよく、これにより、臭気及び味の移行性を更に抑制するようにしてもよい。
【0055】
ジアセタールの微粉化方法
上記ジアセタールを微粉化する方法としては、特に限定されることはなく、工業的には、例えば、ピンミル、ジェットミル、ボールミル、カッターミル等の慣用の粉砕機を使用することができ、また、必要に応じてスクリーン等を用いて過度に大きい粒子を除去することができる。
【0056】
かかるジアセタールの粒子径とは、単独又は2種以上からなるジアセタールの場合は、ジアセタールそのものの粒子径を指し、また、ジアセタール組成物の場合は、その組成物の粒子径を指す。
【0057】
かかるジアセタール組成物を微粉化する方法としては、特に限定されることなく、例えば、ジアセタールとポリオレフィン用改質剤の少なくとも1種をドライブレンドして、得られたジアセタール組成物を慣用の粉砕機を用いて微粉化する方法等が採用できる。
【0058】
ジアセタールまたはジアセタール組成物の粒子径としては、レーザー光散乱法により測定したd90が30μm以下、好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下である。d90が30μmを越えると、樹脂中にジアセタールが局在する傾向が高くなり、熱分解しやすくなる傾向が見られる。本発明の範囲内では、このようなことは見られない。
【0059】
粒子径の測定方法、表現方法はいくつかあり、それぞれ異なった値を示す。レーザー光散乱法で測定した場合、一般的に体積標準でふるい下累積%が90%の粒子径をd90と呼ぶ。一般式(1)で表されるジアセタール核剤をふるいわけし、レーザー光散乱法により測定すると、d90がふるいの目開き径に近い値を示したので、本発明ではd90を粒子径の基準値として用いた。
【0060】
ポリオレフィン樹脂組成物
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、レーザー光散乱法により測定したd90が30μm以下のジアセタール(又は該ジアセタールを含有するジアセタール組成物)をポリオレフィン樹脂に均一に配合することにより製造することができる。
【0061】
必要であれば、本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物には、使用目的やその用途に応じて、適宜、従来公知のポリオレフィン用改質剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加することもできる。
【0062】
本発明では、まず、ポリオレフィン樹脂、d90が30μm以下の前記一般式(1)で表されるジアセタール(又は該ジアセタールを含有するジアセタール組成物)及び必要に応じてポリオレフィン用改質剤を均一に混合する。その混合方法としては、本発明の効果が得られる限り特に限定されることはなく、工業的には、例えば、ナウタミキサー、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー等を用いて均一に乾式混合(ドライブレンド)する方法等を例示することができる。
【0063】
均一混合に際しては、ポリオレフィン樹脂、本発明のd90が30μm以下のジアセタール(又はジアセタール組成物)、ポリオレフィン樹脂用改質剤の3者をドライブレンドする方法、これら3者のうちの2者を乾式混合し、得られる乾式混合物を残りの1者とドライブレンドする方法等の各種の方法がいずれも使用できる。
【0064】
得られる乾式混合物(ドライブレンド物)は、その溶融混合前において、ジアセタールが混合物中に均一に混合していることが重要であり、ポリオレフィン樹脂、d90が30μm以下のジアセタール粒子(又はジアセタール組成物粒子)及び必要に応じてポリオレフィン樹脂用改質剤を均一に混合する場合、均一度が80〜120%、特に90〜110%となるまで混合する。
【0065】
ここで、本発明において、「均一度」とは、次の方法により求められる均一分散の尺度である。
【0066】
混合状態の程度を測定するための規格は、本発明者の知る限り存在しないように思われる。そこで、本発明では、上記乾式混合物の複数箇所から適当な方法で一定量サンプリングし、得られたサンプルにおける混合状態から混合物全体の混合状態を評価するものとした。特に、得られた混合物の一部を、混合物の複数の箇所からサンプリングし、その混合状態から混合物全体の混合の均一度を評価した。
【0067】
より具体的には、上記の方法により得られたポリオレフィン樹脂、ジアセタール(及び必要に応じて、ポリオレフィン樹脂用改質剤)の混合物の一部を該混合物の複数の箇所からサンプリングし、次に、ポリオレフィン樹脂を溶解しにくいが、ジアセタールを溶解する有機溶媒(1,4−ジオキサン)で各サンプル1g中のジアセタールを抽出し、抽出液をガスクロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィー分析で分析することにより、上記混合物中に存在するジアセタールの量を測定する。
【0068】
上記混合物においてジアセタール粒子が完全に均一にポリオレフィン樹脂(及び必要に応じて使用されるポリオレフィン樹脂用改質剤)と混合されているとした場合のジアセタール含有量(理論含有量)を計算により求める。上記「均一度」は、該理論含有量に対する、上記抽出後の分析により測定されたジアセタール含有量(分析含有量)の百分率であり、下記式(a)により求める。
【0069】
均一度(%)=(C/Ct)×100 (a)
[式中、Cは分析により測定されたジアセタール含有量(分析含有量)を示し、Ctはジアセタール粒子が完全に均一にポリオレフィン樹脂粒子(及び、該当する場合は、ポリオレフィン樹脂用改質剤)と混合されているとした場合のジアセタール含有量(理論含有量)を示す。]
上記混合物の任意の異なる箇所からサンプリングを少なくとも5回行い、すべてのサンプルについて上記均一度が80〜120%、特に90〜110%であると、臭気低減化の点で優れた結果が得られる。
【0070】
本発明のジアセタールのポリオレフィン樹脂に対する配合量は、所定の効果が得られる限り特に限定されるものではなく、広い範囲から適宜選択することができるが、通常、ポリオレフィン樹脂100重量部当たり、0.01〜10重量部程度、好ましくは0.05〜3重量部程度配合される。これらの範囲内で配合することにより十分に本発明の効果を得ることができる。
【0071】
本発明に係るポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリブテン系樹脂が例示され、より具体的には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、エチレン含量50重量%以上、好ましくは70重量%以上のエチレンコポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン50重量%以上、好ましくは70重量%以上のプロピレンコポリマー、ブテンホモポリマー、ブテン含量50重量%以上、好ましくは70重量%以上のブテンコポリマー、メチルペンテンホモポリマー、メチルペンテン含量50重量%以上、好ましくは70重量%以上のメチルペンテンコポリマー、ポリブタジエン等が例示される。
【0072】
上記コポリマーはランダムコポリマーであってもよく、ブロックコポリマーであってもよい。これらの樹脂の立体規則性がある場合は、アイソタクチックでもシンジオタクチックでもよい。
【0073】
上記コポリマーを構成し得るコモノマーとして、具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン等のα−オレフィン、1,4−エンドメチレンシクロヘキセン等のビシクロ型モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等が例示できる。
【0074】
かかる重合体を製造するために適用される触媒としては、一般に使用されているチーグラー・ナッタ型触媒はもちろん、遷移金属化合物(例えば、三塩化チタン、四塩化チタン等のチタンのハロゲン化物)を塩化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウムを主成分とする担体に担持してなる触媒と、アルキルアルミニウム化合物(トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド等)とを組み合わせてなる触媒系やメタロセン触媒も使用できる。
【0075】
本発明に係るポリオレフィン樹脂の推奨されるメルトフローレート(以下「MFR」と略記する。JIS K 7210−1976)は、その適用する成形方法により適宜選択されるが、通常、0.01〜200g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分である。
【0076】
前記のように、本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物には、使用目的やその用途に応じて、適宜、従来公知のポリオレフィン用改質剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0077】
上記ポリオレフィン用改質剤としては、例えば、ポリオレフィン等衛生協議会編「ポジティブリストの添加剤要覧」(2002年1月)に記載されている各種添加剤が挙げられ、より具体的には、安定剤(金属化合物、エポキシ化合物、窒素化合物、燐化合物、硫黄化合物等)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等)、酸化防止剤(フェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イオウ系化合物等)、界面活性剤、滑剤(パラフィン、ワックス等の脂肪族炭化水素、炭素数8〜22の高級脂肪酸、炭素数8〜22の高級脂肪酸金属(Al、Ca、Mg、Zn)塩、炭素数8〜22の高級脂肪族アルコール、ポリグリコール、炭素数4〜22の高級脂肪酸と炭素数4〜18の脂肪族1価アルコールとのエステル、炭素数8〜22の高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン誘導体等)、充填剤(タルク、ハイドロタルサイト、マイカ、ゼオライト、パーライト、珪藻土、炭酸カルシウム、ガラス繊維等)、発泡剤、発砲助剤、ポリマー添加剤の他、可塑剤(ジアルキルフタレート、ジアルキルヘキサヒドロフタレート等)、架橋剤、架橋促進剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、有機無機の顔料、加工助剤、他の核剤等の各種添加剤が例示される。
【0078】
本発明の樹脂組成物は、種々の方法により製造できるが、好ましくは、まず、上記ポリオレフィン樹脂、d90が30μm以下の一般式(1)で表されるジアセタール(又はジアセタール組成物)の粉末及び必要に応じて従来公知のポリオレフィン用改質剤(該ジアセタールを除く)を均一となるまで乾式混合法により、均一度が前記範囲となるまで混合し、得られる均一混合物を溶融混合することにより得られる。
【0079】
溶融混合は、通常の一軸又は二軸の押出機等の公知の混練装置を用いて行うことが出来る。溶融混合時の温度は、ジアセタールの融点以下の温度であってもよく、また、ジアセタールの融点を超える温度であってもよい。一般には、溶融混練時の樹脂温度は、170〜280℃程度、特に180〜260℃程度に設定するのが好ましい。
【0080】
樹脂組成物は、ペレットの形態にしてもよく、また、高濃度のジアセタールを含有するマスターバッチの形態にしてもよい。
【0081】
かくして得られる本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、当該樹脂組成物製造時のジアセタールの局在化、これに伴う不均化によるアルデヒドの発生並びに最終樹脂組成物中のアルデヒド臭気が低減されている。
【0082】
特に、本発明方法により得られるポリオレフィン樹脂組成物は、 前記従来技術とは異なり、ジアセタールに由来するアルデヒド臭気低減化のための成分(臭気又は味移行抑制剤)を含有することなく、アルデヒド臭気が低減されていること特徴とする。
【0083】
ポリオレフィン樹脂成形体
本発明のポリオレフィン樹脂成形体は、上記のポリオレフィン樹脂組成物を慣用の成形法に従って成形することにより得られる。或いは、上記ポリオレフィン樹脂、d90が30μm以下の一般式(1)で表されるジアセタール(又はジアセタール組成物)の粉末及び必要に応じて従来公知のポリオレフィン用改質剤(該ジアセタールを除く)を均一となるまで乾式混合法により混合して得られる均一混合物を、直接成形することによっても得られる。
【0084】
本発明に係る樹脂組成物又は上記均一混合物を成形するに際しては、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧空成形、回転成形、フィルム成形等の従来公知の成形方法のいずれをも採用できる。成形条件としては、従来採用されている条件が広い範囲から適宜選択できる。
【0085】
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、従来、ジアセタールを核剤として配合してなるポリオレフィン樹脂組成物が用いられてきたと同様の分野において適用され、成形体とされる。
【0086】
より具体的には、熱や放射線等により滅菌されるディスポーザブル注射器、輸液・輸血セット、採血器具等の医療用器具類;放射線等により滅菌される食品・植物等の包装物;衣料ケースや衣料保存用コンテナ等の各種ケース類;食品を熱充填するためのカップ、レトルト食品の包装容器;電子レンジ用容器;ジュース、茶等の飲料用、化粧品用、医薬品用、シャンプー用等の缶、ビン等の容器;味噌、醤油等の調味料用容器及びキャップ;水、米、パン、漬物等の食品用ケース及び容器;冷蔵庫用ケース等の雑貨;文具;電気・機械部品;自動車用部品等の素材として好適である。
【0087】
従来のジアセタールを含有する樹脂組成物から成形された成形体に比べて、上記の本発明のポリオレフィン樹脂成形体は、成形加工時のアルデヒド類の発生が低減されるため、成形加工時に臭気の発生が少ない。また、本発明の成形体は、アルデヒド類の量が大幅に低減されているため、アルデヒド類に起因する臭気が低減されている。特に、本発明のポリオレフィン樹脂成形体は、前記従来技術とは異なり、ジアセタール由来のアルデヒド臭気低減のための成分(臭気及び味移行抑制剤)を含有することなく、アルデヒド臭気が低減されていることを特徴とする。
【0088】
しかも、本発明のポリオレフィン樹脂成形体は、透明性にも優れている。従って、食品包装材及び食品容器、化粧品容器等の分野で有利に使用することができる。
【0089】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を揚げ、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0090】
本発明のジアセタールの粒子径、ジアセタールの分散性、樹脂中のジアセタールの定量、射出成型品のアルデヒド発生量及び射出成型品のヘイズ値を以下の方法により測定し、評価した。
【0091】
平均粒子径及びd90
30ml目盛り付き試験管に試料約50mgを秤取り、界面活性剤水溶液を添加し、軽く振り混ぜて試料をなじませた。続いて、水を加えて全量を10mlとし、この混合溶液を試験管ミキサーで1分間攪拌した。攪拌直後、駒込ピペットにてサンプリングを行い、レーザ回折・散乱式粒度分析計(日機装社製、「マイクロトラックX100」)にて、平均粒子径とd90を測定した。界面活性剤水溶液は、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO付加10モル)0.1gと水99.9gから調製した。
【0092】
ジアセタールの分散の均一性(樹脂中のジアセタールの定量)
ポリオレフィン樹脂、d90が30μm以下となるように微粉化したジアセタール(及び必要に応じてポリオレフィン樹脂改質剤)をヘンシェルミキサーにより均一に混合し、得られたドライブレンド物の一部をサンプリングした。得られたサンプルの1gを精密に秤量し、これに内部標準として安息香酸エチル50ppmを含有する1,4−ジオキサン5mlを加えて加熱してジアセタールを抽出し、そのまま濾過した。濾液を高速液体クロマトグラフィーにて分析し、ジアセタール含有量を求めた。
【0093】
こうして測定されたジアセタール含有量から、均一度を、下記式(a)により算出した。
【0094】
均一度(%)=(C/Ct)×100 (a)
[式中、Cは分析により測定されたジアセタール含有量(分析含有量)を示し、Ctはジアセタール粒子が完全に均一にポリオレフィン樹脂(及び、該当する場合は、ポリオレフィン樹脂用改質剤)と混合されているとした場合のジアセタール含有量(理論含有量)を示す。]
上記ドライブレンド物の任意の異なる箇所から、上記と同様にしてサンプリング及びサンプル1g中のジアセタール含有量測定及び均一度の算出を合計5回行い、5回とも均一度が80〜120%、特に90〜110%であれば均一に混合されていると判断した。
【0095】
ヘイズ値(%)
東洋精機製作所製のヘイズメータを用いて、JIS K6714、JIS K6717に準じて測定した。得られた数値が小さい程、透明性に優れている。
【0096】
ポリオレフィン樹脂組成物の未分散物の有無
ポリオレフィン樹脂組成物(ストランド)を10m採取し、倍率40倍の光学顕微鏡にて未分散物の個数(10mのストランド中に確認できる個数)を確認した。
【0097】
ポリオレフィン樹脂成形体中のアルデヒド量
ポリオレフィン樹脂成形体20gと脱イオン水140gを225mlのガラス瓶中に密封した後、80℃の恒温槽中に2時間放置し、室温まで冷却した水溶液を高速液体クロマトグラフィーを用いて、サンプルのアルデヒド含有量を定量した。アルデヒド量は、μg/PPg、即ち試験片1g当たりのマイクログラム数で表す。
【0098】
ジアセタールの微粉化方法
ジアセタールをジェットミル(ホソカワミクロン社製、商品名「ジェットミル100AFG型」)にて微粉砕した。
【0099】
ジアセタール核剤を含有するポリオレフィン樹脂組成物の調製と成形方法
エチレン含量3.0重量%のアイソタクチックランダムポリプロピレン樹脂(MFR=20g/10分、以下「r−PP」と略記する。)1000gに対して、ジアセタール粉末2.0g、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピイオネート]メタン(商品名、イルガノックス1010、チバスペシャルティーケミカルズ社製)0.5gおよびステアリン酸カルシウム0.5gを配合し、ヘンシェルミキサーで1000rpm、5分間ドライブレンドした。
【0100】
次に、樹脂温度220℃で一軸押出機(直径20mm)、L/D=380mm/20mm)、回転数40rpm)を用いて溶融混練して、押出ストランドを水冷し、次に切断してポリオレフィン樹脂組成物を得た。
【0101】
得られたペレットを樹脂温度240℃、金型温度40℃の条件下で射出成形し、ポリオレフィン樹脂成形体(試験片=長さ7cm、幅4cm、厚さ1mm)を調製した。
【0102】
実施例1
(a)特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製した1,3:2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール(以下「Me−DBS」と略記する。)を上記ジアセタールの微粉化方法に従って調製した。得られた微粉化したMe−DBSの平均粒径(dav)とd90を測定し、その結果を表1に記載した。
【0103】
(b)次に、ジアセタール粉末とポリオレフィン樹脂をドライブレンド後、上記ジアセタール核剤を含有するポリオレフィン樹脂組成物の調製と成形方法に従って、ポリオレフィン樹脂組成物及び成形体を得た。
【0104】
(c)得られたドライブレンド物についてジアセタールの分散の均一度(%)を測定した。また、得られた樹脂組成物(ペレット)について未分散物の有無の評価を行い、また、ポリオレフィン樹脂成形体についてアルデヒド量を評価した。その結果を表1に記載した。
【0105】
なお、得られた射出成形体(試験片)のヘイズ値は10%であった。
【0106】
表1において、「均一度」の欄は、サンプリングされた5つの試料について測定された均一度の最小値及び最大値を記載した(以下の実施例及び比較例においても同じ)。
【0107】
比較例1
ヘンシェルミキサーでの混合に代えて、ポリ袋に入れて3分間混合した他は実施例1と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に示す。
【0108】
比較例2
特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製したMe−DBSを微粉砕することなく用いた他は実施例1(b)(c)と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に示す。
【0109】
実施例2
Me−DBSに代えて、特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製した1,3:2,4−ジベンジリデンソルビトール(以下「DBS」と略記する。)を用いた他は実施例1と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0110】
比較例3
特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製したDBSを微粉砕することなく用いた他は実施例1(b)(c)と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0111】
実施例3
Me−DBSに代えて、特開平2−231488号公報記載の方法により実験室的に調製した1,3:2,4−ジ(p−エチルベンジリデン)ソルビトール(以下、「Et−DBS」と略記する。)を用いた他は実施例1と同様の操作にて評価を行なった。その結果を表1に記載した。
【0112】
比較例4
特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製したEt−DBSを乳鉢で粉砕し、目開き140メッシュの標準篩い(JIS Z−8801規格)に通したものを用いた他は実施例1(b)(c)と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0113】
実施例4
Me−DBSに代えて、特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製した1,3:2,4−ジ(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール(以下、「3,4−DMDBS」と略記する。)を用いた他は実施例1と同様の操作にて評価を行なった。得られた結果を表1に記載した。
【0114】
比較例5
特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製した3,4−DMDBSを乳鉢で粉砕し、目開き140メッシュの標準篩いに通したものを用いた以外は実施例1(b)(c)と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0115】
実施例5
実施例1で微粉化したMe−DBS 285g、ステアリン酸15gを5L万能撹拌機に入れ、メタノール400mlを添加し、70℃で1時間撹拌した。さらに水200mlを加え、100℃で1時間撹拌した。次に徐々に減圧にして、メタノールおよび水を除去し、水分1.0wt%以下になるまで乾燥した。
【0116】
こうして得られたMe−DBS/ステアリン酸混合物(=粉末状ジアセタール組成物)を実施例1と同様の操作にて微粉化した。
【0117】
得られた微粉化されたMe−DBS/ステアリン酸混合物を、微粉化されたMe−DBSに代えて使用する以外は実施例1(b)(c)と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0118】
比較例6
実施例5で調製した微粉化していないMe−DBS/ステアリン酸の混合物を乳鉢で粉砕し、目開き140メッシュの篩いに通して粉末を得た。
【0119】
得られたMe−DBS/ステアリン酸混合物の粉末を、微粉化されたMe−DBSに代えて使用する以外は実施例1(b)(c)と同様の操作にて評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0120】
実施例6
ポリオレフィン樹脂としてアイソタクチックホモポリプロピレン樹脂(MFR=30g/10分、以下「h−PP」と略記する。)を用いた他は実施例1と同様にして評価を行なった。その結果を表1に記載した。
【0121】
比較例7
ポリオレフィン樹脂としてアイソタクチックホモポリプロピレン樹脂(MFR=30g/10分、以下「h−PP」と略記する。)を用い、且つ、Me−DBSを微粉砕することなく用いた他は実施例1(b)(c)と同様にして評価を行なった。その結果を表1に記載した。
【0122】
実施例7
d90が23.4μm、平均粒子径が16.5μmのMe−DBSを用いた他は実施例1と同様の操作にて評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
実施例8
樹脂温度240℃、すなわちDBSの融点以上で溶融混練した以外は実施例2と同様の操作にて評価を行った。結果を表1に示す。
【0124】
比較例8
特開平2−231488号公報に記載の方法により実験室的に調製したDBSを用い、これを微粉砕することなく使用し、樹脂温度240℃、すなわちDBSの融点以上で溶融混練した以外は実施例2と同様の操作にて評価を行った。混合状態は均一であったが、ストランドにおいてDBSの未分散物が確認された。アルデヒドの抽出量は5.8μg/PPgであった。
【0125】
【表1】
【0126】
表1から、本発明の方法により得られる樹脂成形体は、未分散物がなく、アルデヒド抽出量が低いことが判る。
【0127】
【発明の効果】
本発明方法に従ってジアセタールをポリオレフィン樹脂用核剤として使用した場合、ポリオレフィン樹脂の成形加工時及び最終成形品中のアルデヒド類の発生量が大幅に抑制されると共に、臭気が低減化された透明性に優れたポリオレフィン樹脂成形体を得ることができる。
Claims (12)
- 一般式(1)
で表される少なくとも1種のジアセタールを含有するポリオレフィン樹脂組成物中の該ジアセタールから発生する臭気を低減化する方法であって、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、d90が30μm以下の該少なくとも1種のジアセタールの粉末0.01〜10重量部を、均一度が80〜120%となるまで均一混合し、得られる均一混合物を溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得ることを特徴とする方法。 - ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、前記少なくとも1種のジアセタールの粉末を0.05〜3重量部使用する請求項1に記載の方法。
- 前記少なくとも1種のジアセタールが、1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール及び1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の方法。
- ジアセタール粉末のd90が20μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- ジアセタール粉末のd90が10μm以下である請求項4に記載の方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の方法により、ジアセタールから発生する臭気が低減化されていることを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
- 一般式(1)
で表される少なくとも1種のジアセタールを含有するポリオレフィン樹脂成形体中の該ジアセタールから発生する臭気を低減化する方法であって、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、d90が30μm以下の該少なくとも1種のジアセタールの粉末0.01〜10重量部を均一度が80〜120%となるまで均一混合し、(a)得られる均一混合物を溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得、得られるポリオレフィン樹脂組成物を成形に供してポリオレフィン樹脂成形体を得るか、又は、(b)得られる均一混合物を、直接成形に供してポリオレフィン樹脂成形体を得ることを特徴とする方法。 - ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、前記少なくとも1種のジアセタールを0.05〜3重量部使用する請求項7に記載の方法。
- 前記少なくとも1種のジアセタールが、1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(o−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール及び1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7又は8に記載の方法。
- ジアセタール粉末のd90が20μm以下である請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
- ジアセタール粉末のd90が10μm以下である請求項4に記載の方法。
- 請求項7〜11のいずれかに記載の方法により、ジアセタールから発生する臭気が低減化されていることを特徴とするポリオレフィン樹脂成形体。
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