JP2004168713A - アポトーシス誘導剤 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、滑膜細胞のアポトーシスを誘導する薬剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
アポトーシスは、動物の形態形成や恒常性維持の過程において、不要となった細胞や害となる細胞を取り除く際に行われる、能動的な細胞死である。例えば、発生の過程において、手指は塊状に形成された手から、指間の細胞がアポトーシスを起こし、指が削り出されていくような過程で形成されることが確認されている。また、成人の小腸細胞は、約2週間で古い細胞がアポトーシスによって消滅し、新しい細胞と入れ替わるとされている。その他、ウイルスに感染した細胞等もアポトーシスを起こして、被害の拡大を防いでいると考えられている。
【0003】
アポトーシスは、核クロマチンの凝集や断片化、細胞の小体化を伴う点で、形態学上においてもネクローシスと区別され、更に小体化した細胞は、最終的に食細胞により貪食され、細胞内の内容物が漏出することなく処理されるため、炎症を惹起しないという特徴を有しており、生体の恒常性を維持する点で有利に働いている。
【0004】
このように、アポトーシスは固体の発生・成長及び生体の恒常性維持のために必須の機構であり、近年このアポトーシスの制御異常が増殖性皮膚疾患、慢性関節リウマチ、自己免疫疾患、HIV感染症、肝炎、腎疾患等、様々な疾患の発生に深く関与していることが指摘されている。
例えば、関節リウマチでは、正常な関節滑膜が滑膜細胞の増殖とアポトーシスがバランスよく保たれ、関節の機能が維持されているのに対して、アポトーシスの調節機構が何らかの原因で破壊されて滑膜細胞が異常に増殖し、滑膜肥厚を形成し、これが肉芽組織(パンヌス)に成長して関節軟骨及び骨破壊を引き起こし、最終的には関節機能障害を招くことが明らかにされている(非特許文献1、非特許文献2参照)。
従って、滑膜細胞にアポトーシスを誘導し、その異常な増殖を抑制する薬剤が関節リウマチ等の治療薬として有用であり、その開発が期待される。
【0005】
一方、トリプトライドは、ニシキギ科に属するつる植物の雷公藤(Tripterygium wilfordii Hook. f.)等に含まれるジテルペントリエポキシドの1種であり、これまでに、抗喘息作用(非特許文献3参照)、血管内皮成長因子(VEGF)産生抑制作用(非特許文献4参照)、動脈硬化予防作用(特許文献1参照)を有すること、更には癌細胞や白血病細胞に対してアポトーシスを誘導することが報告されている(非特許文献5, 非特許文献6参照)。
しかしながら、トリプトライドが滑膜細胞に対してアポトーシスを誘導することはこれまでに知られていない。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−302171号公報
【非特許文献1】
Arthritis & Rheumatism 37(6), 783−789(1994)
【非特許文献2】
Internal Medicine 40(4), 275−284(2001)
【非特許文献3】
Zhonghua Jie He He Hu Xi Za Zhi 20, 291−293 (1997)
【非特許文献4】
Acta Pharmacol Sin 22, 651−656 (2001)
【非特許文献5】
J Biol Chem 274, 13451−13455 (1999), Toxicol Lett 122, 81−87(2001)
【非特許文献6】
J Biol Chem 276, 2221−2227 (2001)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、異常増殖等を引き起こした滑膜細胞のアポトーシスを誘導し、その異常な増殖を抑制しうる薬剤を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、ニシキギ科植物の成分について鋭意研究を行った結果、下記式(1)又は(2)で表されるジテルペン化合物に、滑膜細胞のアポトーシスを誘導し、その増殖を強力に抑制する作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、下記式(1)又は(2):
【0010】
【化2】
【0011】
〔式中、R1は酸素原子又はヒドロキシ基を示し、R2は水素原子又はヒドロキシ基を示す。〕
で表されるジテルペン化合物を有効成分とする滑膜細胞のアポトーシス誘導剤を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のジテルペン化合物は、式(1)で示されるトリプトライド誘導体又は式(2)で示されるトリプトフェノライド誘導体である。
式(1)で示されるトリプトライド誘導体としては、トリプトライド(triptolide;R1:−OH、R2:H)、トリプディオライド(tripdiolide;R1:−OH、R2:−OH)、トリプトナイド(triptonide;R1:=O、R2:H)等が挙げられ、式(2)で示されるトリプトフェノライド誘導体としては、例えばトリプトフェノライド(triptophenolide;R1:−OH、R2:H)が挙げられる。
【0013】
【化3】
【0014】
上記ジテルペン化合物には、例えばナトリウム、カリウム塩等のアルカリ金属類が付加して、薬理学的に許容される塩を形成することができ、斯かる塩もまた本発明に包含される。
また、本発明のジテルペン化合物には、例えば酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸等の低級脂肪酸類が付加して、薬理学的に許容されるエステルを形成することができ、斯かるエステル体もまた本発明に包含される。
【0015】
本発明のジテルペン化合物は、いずれも公知化合物であり、ニシキギ科植物の雷公藤、昆明山海棠、東北雷公藤、蒼山雷公藤等の根、葉、花等から抽出すること、J Org Chem 65, 2208−2217 (2000)に記載の合成法若しくはそれに準ずる方法又は半合成法等によって化学合成することにより得ることができる。
【0016】
植物から本発明のジテルペン化合物を取得する方法は、特に限定されず公知の方法に従って行えばよく、例えば植物の根、葉、花部を水、メタノール、エタノール等の低級アルコール又はアセトンのような水溶性有機溶媒で、室温又は加熱する方法、水とこれらの水溶性有機溶媒との混合物により抽出する方法、更にクロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エステル類、トルエン、炭酸ガスによる超臨界流体等の疎水性有機溶媒とメタノール等の水溶性有機溶媒の混合物により抽出する方法が使用できるが、特に、根、葉を裁断又は粉砕し、エタノール等の低級アルコールで抽出するのが好ましい。そして、得られた抽出物をそのまま或いは濃縮、必要に応じてカラムカラムクロマト等を用いて分画・精製することにより、本発明のジテルペン化合物を単離することができる。
【0017】
かくして得られる本発明のジテルペン化合物は、後記実施例に示すように、関節リウマチ患者の滑膜細胞に対してアポトーシスを誘導すると共にその異常な増殖を抑制する作用を有する。
【0018】
本発明のジテルペン化合物は、そのままでも投与することができるが、効果を低減させない範囲内で、分散補助剤、賦形剤等の通常製剤化に使用されるような担体と混合し、粉剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、リモナーデ剤等の経口剤又は注射剤等の剤形で使用することができる。
【0019】
このような担体としては、例えば、マンニトール、乳糖、デキストラン等の水溶性の単糖類ないしオリゴ糖類もしくは多糖類;例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のゲル形成性又は水溶性のセルロース類;例えば結晶性セルロース、α−セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びそれらの誘導体等の水吸収性でかつ水難溶性のセルロース類;例えばヒドロキシプロピル澱粉、カルボキシメチル澱粉、架橋澱粉、アミロース、アミロペクチン、ペクチン及びそれらの誘導体等の水吸収性でかつ水難溶性の多糖類;例えばアラビアガム、トラガントガム、グリコマンナン及びそれらの誘導体等の水吸収性でかつ水難溶性のガム類;例えばポリビニルピロリドン、架橋ポリアクリル酸及びその塩、架橋ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート及びそれらの誘導体等の架橋ビニル重合体類;リン脂質、コレステロール等のリポソーム等分子集合体を形成する脂質類糖を挙げることができる。
【0020】
本発明アポトーシス誘導剤の投与量は、患者の症状等に合わせて適宜調整すれば良いが、例えば固形物量にして1〜100mg/日、好ましくは10〜100mg/日、特に10mg/日投与するのが好ましい。
【0021】
【実施例】
次に本発明を実施例を挙げて更に詳細に説明するが、これらは単に例示であって本発明を限定するものではない。
【0022】
実施例1 細胞に対するアポトーシス誘導作用:DNA断片化試験
細胞に対するトリプトライドのアポトーシス誘導作用をDNAの断片化を指標に確認した。尚、トリプトライドは、BIOMOL Research Laboratories, Inc., 5100Campus Drive, Plvmouth Meeting, PA 19462−1132, USAより購入した「Triptolide」を用いた(実施例2〜5についても同様)。
細胞は、アメリカリウマチ学会の診断基準をもとに関節リウマチと診断された患者の人工膝関節置換術時に、無菌的に採取された滑膜組織より分離した。なお、関節リウマチ滑膜組織は、患者の同意を得た上で本実施例に使用した。組織分散用酵素溶液Dispersol(免疫生物研究所)を使用して単離した細胞を10% FBS、100 U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを含有したRPMI1640培地(10% FBS/RPMI1640)に懸濁してフラスコに移し、5% CO2、37℃条件下で培養後、フラスコ底面に付着した細胞を滑膜細胞とし、1〜2回継代した細胞を使用した。
【0023】
細胞を10% FBS/RPMI1640に懸濁し、96ウェルマイクロプレートに播種して5% CO2、37℃条件下で培養した(2×104 cells/100μl/well)。24時間後、培地を除去し、トリプトライド(DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解)を添加した1% FBS/RPMI1640を200μl加え、5% CO2、37℃条件下で24時間培養した。培養後、Cell Death Detection ELISAPLUS(Roche)を使用して細胞内のDNA断片量を測定した。DNA断片化誘導率(%)は、上記の操作を3回繰り返して得たDNA断片量の平均値から、トリプトライドの代わりにDMSOを用いて同様の処理を行った場合のDNA断片量を100%として算出した。各濃度におけるDNA断片化誘導率を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1に示すように、トリプトライドに濃度依存的なDNA断片化誘導作用、すなわちアポトーシス誘導作用が認められた。
【0026】
実施例2 細胞に対するアポトーシス誘導作用:TUNEL染色法
細胞に対するトリプトライドのアポトーシス誘導作用をterminaltransferase−mediated dUTP nick end labeling(TUNEL)染色法により確認した。
実施例1にて調製した細胞を1% FBS/RPMI1640に懸濁し、8ウェルチャンバースライドに播種して5% CO2、37℃条件下で培養した(6 × 104 cells/300μl/well)。4時間後、トリプトライド(0.1μM)を溶解した1% FBS/RPMI1640 300μlをさらに加え、5% CO2、37℃条件下で24時間培養した。培養後、Apoptosis in situ Detection Kit (Woko)を使用して細胞にTUNEL染色を施した。対比染色ではメチルグリーン染色を施した。図1は、DMSO処理した細胞(a)及びトリプトライド処理した細胞(b)にTUNEL染色を施した後の顕微鏡写真である。
【0027】
図1に示すように、DMSOで処理した細胞ではTUNEL陽性作用は観察されなかった。一方、トリプトライドで処理した細胞にはTUNEL陽性細胞が観察され(矢印)、トリプトライドが細胞に対してアポトーシスを誘導することが確認された。
【0028】
実施例3 細胞の生存率に及ぼす作用
実施例1にて調製した細胞を1% FBS/RPMI1640に懸濁し、96ウェルマイクロプレートに播種して5% CO2、37℃条件下で培養した(2 × 104 cells/100μl/well)。4時間後、トリプトライド(DMSOに溶解)を添加した1% FBS/RPMI1640 100μlを加え、5% CO2、37℃条件下で24時間培養した。培養後、Cell Counting Kit(WST−1)(和光純薬)を使用して生細胞数を測定した。細胞生存率(%)は、上記の操作を3回繰り返して得た測定値から、トリプトライドの代わりにDMSOを用いて同様の処理を行った場合の測定値を100%として算出した。各濃度における細胞生存率を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
表2に示すように、トリプトライドは濃度依存的に細胞に細胞死を誘導した。この結果は、トリプトライドがアポトーシスを介して細胞に細胞死を誘導することを示唆するものである。
【0031】
実施例4 細胞の増殖に対する作用
実施例1にて調製した細胞を1% FBS/RPMI1640に懸濁し、96ウェルマイクロプレートに播種して5% CO2、37℃条件下で4時間培養した(1 × 104 cells/100μl/well)。その後、トリプトライド(DMSOに溶解)を添加した1% FBS/RPMI1640を50μl加え、5% CO2、37℃条件下で24時間培養した。さらに、5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)(最終濃度10μM)溶液を15μl加えて16〜18時間培養した。培養後、Cell Proliferation ELISA, BrdU(colorimetric)(Roche)を使用して細胞に取り込まれたBrdU量を測定した。細胞増殖率(%)は、上記の操作を3回繰り返して得た測定値から、トリプトライドの代わりにDMSOを用いて同様の処理を行った場合の測定値を100%として算出した。各濃度における細胞増殖率を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
表3に示すように、トリプトライドは濃度依存的に細胞の増殖を抑制した。この結果は、トリプトライドがアポトーシスを介して細胞に細胞死を誘導し、その増殖を抑制することを示唆するものである。
【0034】
実施例5
以下に示す成分を混和して、その混和物を打錠した。
【0035】
【表4】
【0036】
【発明の効果】
本発明のアポトーシス誘導剤は、異常増殖した滑膜細胞にアポトーシスを誘導し、その増殖を強力に抑制することから、当該滑膜細胞の異常増殖が関与する疾患、例えば慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎(psoriatic arthritis)等の予防又は治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例2において、DMSO処理した細胞及びトリプトライド処理した細胞にTUNEL染色を施した後の顕微鏡写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、滑膜細胞のアポトーシスを誘導する薬剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
アポトーシスは、動物の形態形成や恒常性維持の過程において、不要となった細胞や害となる細胞を取り除く際に行われる、能動的な細胞死である。例えば、発生の過程において、手指は塊状に形成された手から、指間の細胞がアポトーシスを起こし、指が削り出されていくような過程で形成されることが確認されている。また、成人の小腸細胞は、約2週間で古い細胞がアポトーシスによって消滅し、新しい細胞と入れ替わるとされている。その他、ウイルスに感染した細胞等もアポトーシスを起こして、被害の拡大を防いでいると考えられている。
【0003】
アポトーシスは、核クロマチンの凝集や断片化、細胞の小体化を伴う点で、形態学上においてもネクローシスと区別され、更に小体化した細胞は、最終的に食細胞により貪食され、細胞内の内容物が漏出することなく処理されるため、炎症を惹起しないという特徴を有しており、生体の恒常性を維持する点で有利に働いている。
【0004】
このように、アポトーシスは固体の発生・成長及び生体の恒常性維持のために必須の機構であり、近年このアポトーシスの制御異常が増殖性皮膚疾患、慢性関節リウマチ、自己免疫疾患、HIV感染症、肝炎、腎疾患等、様々な疾患の発生に深く関与していることが指摘されている。
例えば、関節リウマチでは、正常な関節滑膜が滑膜細胞の増殖とアポトーシスがバランスよく保たれ、関節の機能が維持されているのに対して、アポトーシスの調節機構が何らかの原因で破壊されて滑膜細胞が異常に増殖し、滑膜肥厚を形成し、これが肉芽組織(パンヌス)に成長して関節軟骨及び骨破壊を引き起こし、最終的には関節機能障害を招くことが明らかにされている(非特許文献1、非特許文献2参照)。
従って、滑膜細胞にアポトーシスを誘導し、その異常な増殖を抑制する薬剤が関節リウマチ等の治療薬として有用であり、その開発が期待される。
【0005】
一方、トリプトライドは、ニシキギ科に属するつる植物の雷公藤(Tripterygium wilfordii Hook. f.)等に含まれるジテルペントリエポキシドの1種であり、これまでに、抗喘息作用(非特許文献3参照)、血管内皮成長因子(VEGF)産生抑制作用(非特許文献4参照)、動脈硬化予防作用(特許文献1参照)を有すること、更には癌細胞や白血病細胞に対してアポトーシスを誘導することが報告されている(非特許文献5, 非特許文献6参照)。
しかしながら、トリプトライドが滑膜細胞に対してアポトーシスを誘導することはこれまでに知られていない。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−302171号公報
【非特許文献1】
Arthritis & Rheumatism 37(6), 783−789(1994)
【非特許文献2】
Internal Medicine 40(4), 275−284(2001)
【非特許文献3】
Zhonghua Jie He He Hu Xi Za Zhi 20, 291−293 (1997)
【非特許文献4】
Acta Pharmacol Sin 22, 651−656 (2001)
【非特許文献5】
J Biol Chem 274, 13451−13455 (1999), Toxicol Lett 122, 81−87(2001)
【非特許文献6】
J Biol Chem 276, 2221−2227 (2001)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、異常増殖等を引き起こした滑膜細胞のアポトーシスを誘導し、その異常な増殖を抑制しうる薬剤を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、ニシキギ科植物の成分について鋭意研究を行った結果、下記式(1)又は(2)で表されるジテルペン化合物に、滑膜細胞のアポトーシスを誘導し、その増殖を強力に抑制する作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、下記式(1)又は(2):
【0010】
【化2】
【0011】
〔式中、R1は酸素原子又はヒドロキシ基を示し、R2は水素原子又はヒドロキシ基を示す。〕
で表されるジテルペン化合物を有効成分とする滑膜細胞のアポトーシス誘導剤を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のジテルペン化合物は、式(1)で示されるトリプトライド誘導体又は式(2)で示されるトリプトフェノライド誘導体である。
式(1)で示されるトリプトライド誘導体としては、トリプトライド(triptolide;R1:−OH、R2:H)、トリプディオライド(tripdiolide;R1:−OH、R2:−OH)、トリプトナイド(triptonide;R1:=O、R2:H)等が挙げられ、式(2)で示されるトリプトフェノライド誘導体としては、例えばトリプトフェノライド(triptophenolide;R1:−OH、R2:H)が挙げられる。
【0013】
【化3】
【0014】
上記ジテルペン化合物には、例えばナトリウム、カリウム塩等のアルカリ金属類が付加して、薬理学的に許容される塩を形成することができ、斯かる塩もまた本発明に包含される。
また、本発明のジテルペン化合物には、例えば酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸等の低級脂肪酸類が付加して、薬理学的に許容されるエステルを形成することができ、斯かるエステル体もまた本発明に包含される。
【0015】
本発明のジテルペン化合物は、いずれも公知化合物であり、ニシキギ科植物の雷公藤、昆明山海棠、東北雷公藤、蒼山雷公藤等の根、葉、花等から抽出すること、J Org Chem 65, 2208−2217 (2000)に記載の合成法若しくはそれに準ずる方法又は半合成法等によって化学合成することにより得ることができる。
【0016】
植物から本発明のジテルペン化合物を取得する方法は、特に限定されず公知の方法に従って行えばよく、例えば植物の根、葉、花部を水、メタノール、エタノール等の低級アルコール又はアセトンのような水溶性有機溶媒で、室温又は加熱する方法、水とこれらの水溶性有機溶媒との混合物により抽出する方法、更にクロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エステル類、トルエン、炭酸ガスによる超臨界流体等の疎水性有機溶媒とメタノール等の水溶性有機溶媒の混合物により抽出する方法が使用できるが、特に、根、葉を裁断又は粉砕し、エタノール等の低級アルコールで抽出するのが好ましい。そして、得られた抽出物をそのまま或いは濃縮、必要に応じてカラムカラムクロマト等を用いて分画・精製することにより、本発明のジテルペン化合物を単離することができる。
【0017】
かくして得られる本発明のジテルペン化合物は、後記実施例に示すように、関節リウマチ患者の滑膜細胞に対してアポトーシスを誘導すると共にその異常な増殖を抑制する作用を有する。
【0018】
本発明のジテルペン化合物は、そのままでも投与することができるが、効果を低減させない範囲内で、分散補助剤、賦形剤等の通常製剤化に使用されるような担体と混合し、粉剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、リモナーデ剤等の経口剤又は注射剤等の剤形で使用することができる。
【0019】
このような担体としては、例えば、マンニトール、乳糖、デキストラン等の水溶性の単糖類ないしオリゴ糖類もしくは多糖類;例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のゲル形成性又は水溶性のセルロース類;例えば結晶性セルロース、α−セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びそれらの誘導体等の水吸収性でかつ水難溶性のセルロース類;例えばヒドロキシプロピル澱粉、カルボキシメチル澱粉、架橋澱粉、アミロース、アミロペクチン、ペクチン及びそれらの誘導体等の水吸収性でかつ水難溶性の多糖類;例えばアラビアガム、トラガントガム、グリコマンナン及びそれらの誘導体等の水吸収性でかつ水難溶性のガム類;例えばポリビニルピロリドン、架橋ポリアクリル酸及びその塩、架橋ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート及びそれらの誘導体等の架橋ビニル重合体類;リン脂質、コレステロール等のリポソーム等分子集合体を形成する脂質類糖を挙げることができる。
【0020】
本発明アポトーシス誘導剤の投与量は、患者の症状等に合わせて適宜調整すれば良いが、例えば固形物量にして1〜100mg/日、好ましくは10〜100mg/日、特に10mg/日投与するのが好ましい。
【0021】
【実施例】
次に本発明を実施例を挙げて更に詳細に説明するが、これらは単に例示であって本発明を限定するものではない。
【0022】
実施例1 細胞に対するアポトーシス誘導作用:DNA断片化試験
細胞に対するトリプトライドのアポトーシス誘導作用をDNAの断片化を指標に確認した。尚、トリプトライドは、BIOMOL Research Laboratories, Inc., 5100Campus Drive, Plvmouth Meeting, PA 19462−1132, USAより購入した「Triptolide」を用いた(実施例2〜5についても同様)。
細胞は、アメリカリウマチ学会の診断基準をもとに関節リウマチと診断された患者の人工膝関節置換術時に、無菌的に採取された滑膜組織より分離した。なお、関節リウマチ滑膜組織は、患者の同意を得た上で本実施例に使用した。組織分散用酵素溶液Dispersol(免疫生物研究所)を使用して単離した細胞を10% FBS、100 U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを含有したRPMI1640培地(10% FBS/RPMI1640)に懸濁してフラスコに移し、5% CO2、37℃条件下で培養後、フラスコ底面に付着した細胞を滑膜細胞とし、1〜2回継代した細胞を使用した。
【0023】
細胞を10% FBS/RPMI1640に懸濁し、96ウェルマイクロプレートに播種して5% CO2、37℃条件下で培養した(2×104 cells/100μl/well)。24時間後、培地を除去し、トリプトライド(DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解)を添加した1% FBS/RPMI1640を200μl加え、5% CO2、37℃条件下で24時間培養した。培養後、Cell Death Detection ELISAPLUS(Roche)を使用して細胞内のDNA断片量を測定した。DNA断片化誘導率(%)は、上記の操作を3回繰り返して得たDNA断片量の平均値から、トリプトライドの代わりにDMSOを用いて同様の処理を行った場合のDNA断片量を100%として算出した。各濃度におけるDNA断片化誘導率を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1に示すように、トリプトライドに濃度依存的なDNA断片化誘導作用、すなわちアポトーシス誘導作用が認められた。
【0026】
実施例2 細胞に対するアポトーシス誘導作用:TUNEL染色法
細胞に対するトリプトライドのアポトーシス誘導作用をterminaltransferase−mediated dUTP nick end labeling(TUNEL)染色法により確認した。
実施例1にて調製した細胞を1% FBS/RPMI1640に懸濁し、8ウェルチャンバースライドに播種して5% CO2、37℃条件下で培養した(6 × 104 cells/300μl/well)。4時間後、トリプトライド(0.1μM)を溶解した1% FBS/RPMI1640 300μlをさらに加え、5% CO2、37℃条件下で24時間培養した。培養後、Apoptosis in situ Detection Kit (Woko)を使用して細胞にTUNEL染色を施した。対比染色ではメチルグリーン染色を施した。図1は、DMSO処理した細胞(a)及びトリプトライド処理した細胞(b)にTUNEL染色を施した後の顕微鏡写真である。
【0027】
図1に示すように、DMSOで処理した細胞ではTUNEL陽性作用は観察されなかった。一方、トリプトライドで処理した細胞にはTUNEL陽性細胞が観察され(矢印)、トリプトライドが細胞に対してアポトーシスを誘導することが確認された。
【0028】
実施例3 細胞の生存率に及ぼす作用
実施例1にて調製した細胞を1% FBS/RPMI1640に懸濁し、96ウェルマイクロプレートに播種して5% CO2、37℃条件下で培養した(2 × 104 cells/100μl/well)。4時間後、トリプトライド(DMSOに溶解)を添加した1% FBS/RPMI1640 100μlを加え、5% CO2、37℃条件下で24時間培養した。培養後、Cell Counting Kit(WST−1)(和光純薬)を使用して生細胞数を測定した。細胞生存率(%)は、上記の操作を3回繰り返して得た測定値から、トリプトライドの代わりにDMSOを用いて同様の処理を行った場合の測定値を100%として算出した。各濃度における細胞生存率を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
表2に示すように、トリプトライドは濃度依存的に細胞に細胞死を誘導した。この結果は、トリプトライドがアポトーシスを介して細胞に細胞死を誘導することを示唆するものである。
【0031】
実施例4 細胞の増殖に対する作用
実施例1にて調製した細胞を1% FBS/RPMI1640に懸濁し、96ウェルマイクロプレートに播種して5% CO2、37℃条件下で4時間培養した(1 × 104 cells/100μl/well)。その後、トリプトライド(DMSOに溶解)を添加した1% FBS/RPMI1640を50μl加え、5% CO2、37℃条件下で24時間培養した。さらに、5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)(最終濃度10μM)溶液を15μl加えて16〜18時間培養した。培養後、Cell Proliferation ELISA, BrdU(colorimetric)(Roche)を使用して細胞に取り込まれたBrdU量を測定した。細胞増殖率(%)は、上記の操作を3回繰り返して得た測定値から、トリプトライドの代わりにDMSOを用いて同様の処理を行った場合の測定値を100%として算出した。各濃度における細胞増殖率を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
表3に示すように、トリプトライドは濃度依存的に細胞の増殖を抑制した。この結果は、トリプトライドがアポトーシスを介して細胞に細胞死を誘導し、その増殖を抑制することを示唆するものである。
【0034】
実施例5
以下に示す成分を混和して、その混和物を打錠した。
【0035】
【表4】
【0036】
【発明の効果】
本発明のアポトーシス誘導剤は、異常増殖した滑膜細胞にアポトーシスを誘導し、その増殖を強力に抑制することから、当該滑膜細胞の異常増殖が関与する疾患、例えば慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎(psoriatic arthritis)等の予防又は治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例2において、DMSO処理した細胞及びトリプトライド処理した細胞にTUNEL染色を施した後の顕微鏡写真である。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012516899A (ja) * | 2009-02-05 | 2012-07-26 | ファーマジェネシス, インコーポレイテッド | 抗癌剤および免疫調節因子としてのトリプトリドc環誘導体 |
CN110051675A (zh) * | 2018-01-18 | 2019-07-26 | 德清奥丽芙生物科技有限公司 | 雷酚内酯在制备降糖药物中的应用 |
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2002
- 2002-11-20 JP JP2002336972A patent/JP2004168713A/ja active Pending
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