JP2004168187A - 自動車用空調システム - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池自動車に用いられる空調システムにおいて、COPを高く保ちながら充分な空調能力を得る。
【解決手段】燃料電池(70)に膨張機(23)を接続し、凝縮熱交換器(13)で冷却した排出空気を膨張機(23)で膨張させる。蒸発冷却熱交換器(14)へは、膨張して低温となった排出空気を供給する。また、蒸発冷却熱交換器(14)へは、給気側通路(35)を通じて供給空気も導入する。更に、給気側通路(35)における蒸発冷却熱交換器(14)の下流には、冷凍機(90)の蒸発器(95)を設ける。供給空気は、蒸発冷却熱交換器(14)で低温空気により冷却され、その後、更に冷凍機(90)の蒸発器(95)で冷却されてから車室(80)へ供給される。
【選択図】 図1
【解決手段】燃料電池(70)に膨張機(23)を接続し、凝縮熱交換器(13)で冷却した排出空気を膨張機(23)で膨張させる。蒸発冷却熱交換器(14)へは、膨張して低温となった排出空気を供給する。また、蒸発冷却熱交換器(14)へは、給気側通路(35)を通じて供給空気も導入する。更に、給気側通路(35)における蒸発冷却熱交換器(14)の下流には、冷凍機(90)の蒸発器(95)を設ける。供給空気は、蒸発冷却熱交換器(14)で低温空気により冷却され、その後、更に冷凍機(90)の蒸発器(95)で冷却されてから車室(80)へ供給される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池自動車用の空調システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車用の動力源として燃料電池が注目されている。自動車用の燃料電池では、その小型化を図るため、酸化剤としての空気を2〜3気圧程度にまで加圧する場合が多い。このため、燃料電池の空気極側からは2〜3気圧程度の空気がオフガスとして排出されることになる。そして、このオフガスは、大気圧まで減圧されてから車外へ排出される。
【0003】
特許文献1には、オフガスとして排出された空気の減圧に膨張機を用いることが開示されている。つまり、オフガスを膨張機で膨張させることで動力回収を行い、燃料電池へ供給される空気の圧縮に回収した動力を利用して、空気の圧縮に要する動力の削減を図っている。
【0004】
膨張機での膨張過程においては、オフガスの温度が低下する。そこで、特許文献2には、膨張後のオフガスを利用して、車室内の空調を行うことが開示されている。具体的に、この特許文献2の空調装置では、燃料電池の空気極側から排出されたオフガスを予め外気等で冷却してから膨張機へ送り、膨張機で膨張して低温となったオフガスを供給空気と熱交換させ、それによって冷却された供給空気を車室内へ送っている。つまり、燃料電池の運転に必要な圧縮機を利用してエアサイクルを構成し、それによって得られた冷熱を利用して車室内を冷房している。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−149972
【特許文献2】
特開2001− 30742
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
膨張後のオフガスを利用する上記空調装置によれば、燃料電池で発電するために圧縮機を運転すれば同時に車室内を冷房することもでき、電力等のエネルギを新たに投入しなくても車室内の空調が可能となるようにも思える。
【0007】
しかしながら、燃料電池の負荷が変動すると、それに伴って必要な高圧空気の供給量も変化する。そして、燃料電池の負荷に応じて高圧空気の供給量を調節すると、冷房に利用される膨張後のオフガス量も変化してしまい、得られる冷房能力が車室内の冷房負荷に対して不足する場合も想定される。
【0008】
この問題に対しては、冷房負荷に見合った冷房能力を発揮できる量の高圧空気を、燃料電池の負荷とは無関係に燃料電池へ供給し続け、空調に必要なオフガス量を確保するという対策が考えられる。この対策を講じた場合には、冷房能力の不足分をエアサイクルにより得られた冷熱で補うこととなる。ところが、エアサイクルは成績係数(COP)が1以下と低いため、圧縮機を駆動するために余分に必要となる電力等が増大してしまい、結局は空調装置のCOPをさほど高くできないという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、燃料電池自動車に用いられる空調システムにおいて、COPを高く保ちながら充分な空調能力を得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、燃料電池(70)を動力源とする自動車に搭載される空調システムを対象としている。そして、燃料電池(70)へ供給される空気を圧縮する圧縮機(20)と、上記燃料電池(70)から排出された排出空気を冷却する排気冷却器(13)と、上記排気冷却器(13)で冷却された排出空気を膨張させて動力回収を行う膨張機(23)と、車室内への供給空気を上記膨張機(23)から送出された膨張後の空気と熱交換させて冷却する給気冷却器(14)と、上記給気冷却器(14)で冷却された供給空気を更に冷却するために蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷凍機(90)とを備えるものである。
【0011】
−作用−
請求項1の発明では、圧縮機(20)で圧縮された空気が、燃料電池(70)の空気極側へ供給される。この空気極側を流れる間に、空気中の酸素が電池反応によって消費される。燃料電池(70)の空気極側からオフガスとして排出された排出空気は、排気冷却器(13)へ送られて冷却され、その後に膨張機(23)へ導入される。膨張機(23)では、排出空気が膨張して動力回収が行われ、その際に排出空気の温度が低下する。膨張して低温となった空気は、給気冷却器(14)へ送られて、車室内への供給空気を冷却するのに利用される。
【0012】
この発明の自動車用空調システム(10)には、冷凍機(90)が設けられる。この冷凍機(90)は、閉回路内で冷媒を循環させて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。そして、供給空気は、先ず給気冷却器(14)で冷却された後、更に冷凍機(90)の蒸発器(95)で冷媒と熱交換して冷却されてから車室内へ送られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の空調システム(10)は、燃料電池(70)を動力源とする自動車に搭載されている。この空調システム(10)は、燃料電池(70)の運転に必要となる空気を利用して車室(80)内の空気調和を行う。また、この空調システム(10)には、冷凍機(90)も設けられている。
【0015】
上記燃料電池(70)は、固体高分子電解質型のものであって、多数の単電池が積層された燃料電池スタックを構成している。この燃料電池(70)には、燃料極側ガス流路(71)と空気極側ガス流路(72)とが、各単電池に対応して多数形成されている。そして、燃料電池(70)では、燃料極側ガス流路(71)を流れる水素が単電池の燃料極(アノード)と接触し、空気極側ガス流路(72)を流れる空気が単電池の空気極(カソード)と接触する。
【0016】
上記燃料電池(70)には、冷却水回路(73)が接続されている。この冷却水回路(73)は、燃料電池(70)とラジエータ(74)と循環ポンプ(75)とが順に配置された閉回路であって、冷却水が充填されている。そして、冷却水回路(73)で冷却水を循環させることにより、燃料電池(70)が所定の作動温度に保たれる。
【0017】
上記燃料電池(70)の燃料極側ガス流路(71)は、燃料側通路(76)の途中に配置されている。燃料電池(70)に対しては、この燃料側通路(76)を通じて水素ガスが供給される。燃料側通路(76)における燃料電池(70)の上流側には、燃料加湿器(77)が設けられている。この燃料加湿器(77)は、燃料電池(70)へ導入される水素ガスを予め加湿し、燃料電池(70)の電解質膜を湿潤状態に保つためのものである。
【0018】
上記燃料電池(70)の空気極側ガス流路(72)は、空気側通路(11)の途中に配置されている。燃料電池(70)に対しては、この空気側通路(11)を通じて酸化剤としての酸素を含む空気が供給される。また、燃料電池(70)の空気極側ガス流路(72)からは、オフガスとして排出空気が排出される。
【0019】
上記空気側通路(11)における燃料電池(70)の上流側には、圧縮機(20)と温調加湿熱交換器(12)とが設けられている。一方、空気側通路(11)における燃料電池(70)の下流側には、凝縮熱交換器(13)と膨張機(23)と蒸発冷却熱交換器(14)とが設けられている。
【0020】
上記圧縮機(20)は、空気を吸入して圧縮するためのものであって、ターボ式やスクロール式等の各種の流体機械で構成される。この圧縮機(20)は、その吸入側が車外に連通すると共に、その吐出側が温調加湿熱交換器(12)に接続されている。
【0021】
上記温調加湿熱交換器(12)は、圧縮機(20)と燃料電池(70)の間に配置されている。この温調加湿熱交換器(12)は、圧縮機(20)から吐出された高圧空気に対して温度調節と加湿とを施すように構成されている。具体的に、温調加湿熱交換器(12)は、例えば外気と熱交換させることによって、高圧空気の温度を調節する。また、温調加湿熱交換器(12)は、高圧空気に水を噴霧して加湿する。
【0022】
上記凝縮熱交換器(13)は、燃料電池(70)の直後に配置されている。この凝縮熱交換器(13)には、燃料電池(70)から排出された排出空気が送り込まれる。また、この凝縮熱交換器(13)には、冷却用ファン(30)により取り込まれた外気が冷却用空気として送り込まれる。そして、凝縮熱交換器(13)は、排出空気を冷却用空気と熱交換させて冷却する排気冷却器を構成している。この凝縮熱交換器(13)では、冷却用空気との熱交換によって排出空気が冷却されると同時に、排出空気に含まれる水分が凝縮して凝縮水が生成する。
【0023】
上記膨張機(23)は、ターボ式やスクロール式等の各種の流体機械で構成されるものであって、凝縮熱交換器(13)の下流に配置されている。この膨張機(23)には、凝縮熱交換器(13)で冷却された排出空気が導入される。この膨張機(23)では、導入された排出空気が膨張してその内部エネルギが回転動力として回収される。この膨張機(23)における膨張過程では、導入された空気の温度が低下すると同時に、その空気中の水蒸気が凝縮して凝縮水が生成する。
【0024】
上記蒸発冷却熱交換器(14)は、膨張機(23)の下流側に配置されている。この蒸発冷却熱交換器(14)には、膨張機(23)で膨張して低温となった排出空気が導入される。また、蒸発冷却熱交換器(14)には、給気側通路(35)を通じて供給空気が送り込まれる。この蒸発冷却熱交換器(14)は、給気冷却器を構成するものであって、車室(80)内への供給空気を膨張機(23)からの排出空気と熱交換させて冷却する。また、この蒸発冷却熱交換器(14)は、膨張機(23)で生成した凝縮水をも供給空気と熱交換させ、供給空気の冷却に凝縮水の蒸発熱を利用する。
【0025】
上記給気側通路(35)は、その入口端が二手に分岐されており、分岐した一方が車室(80)内に開口し、他方が車室(80)外に開口している。一方、給気側通路(35)の出口端は、車室(80)内に開口している。また、この給気側通路(35)において、蒸発冷却熱交換器(14)の上流側にはダンパ(36)と給気用ファン(37)とが、蒸発冷却熱交換器(14)の下流側には上記冷凍機(90)の蒸発器(95)が、それぞれ配置されている。
【0026】
上記ダンパ(36)は、給気側通路(35)の入口端側の分岐管が合流する箇所に設置されている。このダンパ(36)は、給気側通路(35)へ取り込まれる車内空気と車外空気の割合を変更するためのものである。一方、給気用ファン(37)は、給気側通路(35)におけるダンパ(36)と蒸発冷却熱交換器(14)の間に設けられている。
【0027】
上記圧縮機(20)と膨張機(23)とは、一本の駆動軸(24)で連結されている。また、この駆動軸(24)には、モータ(25)が設けられている。このモータ(25)には、図示しないが、インバータを介して電力が供給される。そして、インバータの出力周波数を変更することにより、モータ(25)の回転速度が可変となっている。
【0028】
上記空調システム(10)には、水タンク(50)と、受水用配管(51)と、給水用配管(52)と、回収用配管(58)とが更に設けられている。
【0029】
上記受水用配管(51)は、その入口端が空気側通路(11)における凝縮熱交換器(13)と膨張機(23)の間に接続され、その出口端が水タンク(50)に接続されている。凝縮熱交換器(13)で生成した凝縮水は、この受水用配管(51)を通じて水タンク(50)へ送られる。そして、水タンク(50)は、送り込まれた凝縮水を貯留する。
【0030】
上記給水用配管(52)は、その入口端が水タンク(50)に接続されると共に、水タンク(50)に蓄えられた凝縮水を吸い上げる給水ポンプ(53)を備えている。また、給水用配管(52)は、その出口端側で四つに分岐され、燃料加湿器(77)と、温調加湿熱交換器(12)と、冷却用空気の通路における凝縮熱交換器(13)の上流側と、蒸発冷却熱交換器(14)とに、それぞれ電磁弁(54,55,56,57)を介して接続されている。そして、第1電磁弁(54)を操作することで燃料加湿器(77)に対する凝縮水の供給量が、第2電磁弁(55)を操作することで温調加湿熱交換器(12)に対する凝縮水の供給量が、第3電磁弁(56)を操作することで冷却用空気に対する凝縮水の供給量が、第4電磁弁(57)を操作することで蒸発冷却熱交換器(14)に対する凝縮水の供給量が、それぞれ変化する。
【0031】
図2に示すように、上記冷凍機(90)は、冷媒回路(91)を備えている。この冷媒回路(91)は、冷媒圧縮機(92)と、凝縮器(93)と、膨張弁(94)と、蒸発器(95)とが順に接続された閉回路であって、いわゆるフロン冷媒等が充填されている。凝縮器(93)は、冷媒を外気と熱交換させるように構成されている。一方、蒸発器(95)は、冷媒を供給空気と熱交換させるように構成されている。そして、この冷凍機(90)は、冷媒回路(91)で冷媒を循環させて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うように構成されている。
【0032】
また、上記空調システム(10)には、コントローラ(60)が設けられている(図1参照)。このコントローラ(60)は、圧縮機(20)を駆動するためのモータ(25)や、冷凍機(90)に対する制御動作を行うように構成されている。
【0033】
−運転動作−
上記空調システム(10)の運転動作について説明する。尚、以下に示す圧力、温度、相対湿度等の値は、何れも例示である。
【0034】
空気側通路(11)へ取り込まれた大気圧(0.1MPa)の外気は、圧縮機(20)へ吸入されて圧力0.28MPaにまで圧縮される。圧縮機(20)から吐出された高圧空気は、温調加湿熱交換器(12)へ送られる。
【0035】
温調加湿熱交換器(12)において、高圧空気は、外気等との熱交換を行い、その温度が燃料電池(70)の動作に適した値(例えば80℃程度)となる。また、温調加湿熱交換器(12)には、給水用配管(52)を通じて水タンク(50)から凝縮水が供給される。温調加湿熱交換器(12)は、供給された凝縮水を噴霧することによって高圧空気を加湿する。この温調加湿熱交換器(12)における高圧空気の加湿は、予め高圧空気の湿度を高めて燃料電池(70)の電解質膜を湿潤状態に保つために行われる。
【0036】
温調加湿熱交換器(12)から送り出された高圧空気は、燃料電池(70)の空気極側ガス流路(72)へ導入される。この空気極側ガス流路(72)では、電池反応によって高圧空気中の酸素が消費される。そして、空気極側ガス流路(72)からは、電池反応により生成した水蒸気を付与された高温高湿度の排出空気、具体的には温度80℃,相対湿度90%以上の排出空気が排出される。
【0037】
凝縮熱交換器(13)へは、燃料電池(70)から排出された排出空気が導入される。凝縮熱交換器(13)では、冷却用空気と熱交換することによって排出空気が冷却され、それに伴って排出空気中の水蒸気が凝縮して凝縮水となる。その際、凝縮熱交換器(13)へ導入される冷却用空気には、給水用配管(52)を通じて水タンク(50)から供給された凝縮水が予め噴霧されている。このため、凝縮熱交換器(13)では、冷却用空気に噴霧された凝縮水が排出空気から吸熱して蒸発する。つまり、凝縮熱交換器(13)では、冷却用空気の顕熱だけでなく、冷却用空気に噴霧された凝縮水の潜熱をも利用して、排出空気の冷却が行われる。そして、この凝縮熱交換器(13)からは、温度40℃,相対湿度100%となった排出空気が送り出される。
【0038】
凝縮熱交換器(13)から送出された排出空気は、膨張機(23)へ流入する。膨張機(23)では、圧力0.28MPaの排出空気が圧力0.1MPaまで膨張し、排出空気の内部エネルギが駆動軸(24)の回転動力に変換される。膨張機(23)で回収された動力は、モータ(25)で得られた動力と共に、圧縮機(20)の駆動に用いられる。この膨張機(23)からは、温度2℃,相対湿度100%となった排出空気、即ち低温空気が送り出される。
【0039】
また、膨張機(23)の膨張過程では、排出空気の温度が低下すると同時に、排出空気中の水蒸気が凝縮して凝縮水が生成する。このため、膨張機(23)からは、霧状あるいは細かい液滴状の凝縮水が、低温空気と共に送り出される。
【0040】
膨張機(23)から送出された低温空気と凝縮水は、蒸発冷却熱交換器(14)へ導入される。また、蒸発冷却熱交換器(14)へは、必要に応じて水タンク(50)の凝縮水が供給される。更に、蒸発冷却熱交換器(14)へは、車室(80)内へ供給される供給空気が、給気側通路(35)を通じて導入される。
【0041】
この蒸発冷却熱交換器(14)では、低温空気が供給空気から吸熱して温度上昇すると共に、凝縮水が低温空気から吸熱して蒸発する。つまり、蒸発冷却熱交換器(14)では、低温空気の顕熱と凝縮水の蒸発熱とを利用して供給空気が冷却される。供給空気から吸熱した低温空気や凝縮水が蒸発して生成した水蒸気は、車外へ排出される。また、蒸発冷却熱交換器(14)で蒸発しなかった凝縮水は、回収用配管(58)を通じて水タンク(50)へ送り返される。
【0042】
蒸発冷却熱交換器(14)で冷却された供給空気は、冷凍機(90)の蒸発器(95)へ送られる。冷凍機(90)では、冷媒圧縮機(92)が運転されて蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。具体的に、冷媒圧縮機(92)から吐出された冷媒は、凝縮器(93)で外気等へ放熱して凝縮する。凝縮した冷媒は、膨張弁(94)を通過する際に減圧されてから蒸発器(95)へ導入される。その後、冷媒は、蒸発器(95)で供給空気から吸熱して蒸発し、その後に冷媒圧縮機(92)へ吸入されて圧縮される。そして、蒸発冷却熱交換器(14)で冷却された後に、蒸発器(95)で更に冷却された供給空気が、車室(80)内へ供給される。
【0043】
−コントローラの制御動作−
コントローラ(60)は、圧縮機(20)からの高圧空気の吐出量を調節するために、インバータの出力周波数を操作してモータ(25)の回転速度を調節する動作を行う。つまり、コントローラ(60)は、燃料電池(70)の負荷変動に応じてモータ(25)の回転速度を調節し、要求された発電量を得るのに必要な量の高圧空気を燃料電池(70)へ供給する。
【0044】
また、コントローラ(60)は、車室(80)内の冷房負荷に応じて冷凍機(90)の運転を制御する。つまり、コントローラ(60)は、車室(80)内の冷房負荷に応じて、冷媒圧縮機(92)の容量や膨張弁(94)の開度を適宜調節する。このコントローラ(60)の動作により、蒸発冷却熱交換器(14)で得られる冷却能力と冷凍機(90)の蒸発器(95)で得られる冷却能力とのトータルが、車室(80)内の冷房負荷に見合った値に設定される。
【0045】
−実施形態の効果−
本実施形態では、燃料電池(70)からの排出空気を膨張機(23)で膨張させて得られた低温空気だけでなく、冷凍機(90)の蒸発器(95)へ送り込まれた冷媒をも利用して、車室内への供給空気を冷却できる。このため、蒸発冷却熱交換器(14)で得られる冷却能力が車室(80)の冷房負荷に対して過少である場合には、冷凍機(90)の蒸発器(95)で得られる冷却能力によって冷却能力の不足分を補うことができる。また、冷凍機(90)で行われる蒸気圧縮式冷凍サイクルでは、3前後の比較的高いCOPが期待できる。
【0046】
従って、本実施形態によれば、圧縮機(20)からの高圧空気の吐出量を冷房負荷に応じて調節してCOPの低いエアサイクルにより冷房能力の不足分を補う場合に比べ、空調システム(10)の消費電力の増加を抑制でき、空調システム(10)のCOPを高く保ちつつ充分な冷房能力を得ることが可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、膨張機(23)から蒸発冷却熱交換器(14)へ供給された低温空気を車室(80)内への供給空気の冷却に利用している。このため、冷凍機(90)の運転により得られる冷熱だけで供給空気を冷却する一般的な空調システムに比べ、冷凍機(90)の運転に要する電力を削減できる。
【0048】
つまり、モータ(25)で消費される電力は燃料電池(70)での発電に必要不可欠であるため、新たな電力を投入することなく蒸発冷却熱交換器(14)での冷却能力が得られる。従って、本実施形態によれば、供給空気の冷却に膨張後の低温空気を利用することにより、空調システム(10)の冷房能力を低下させることなく、その消費電力だけを削減できる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、燃料電池(70)からの排出空気を膨張機(23)で膨張させて得られる冷熱と、冷凍機(90)の運転により得られる冷熱との両方を、車室内への供給空気を冷却するために利用できる。このため、排出空気の膨張で得られる冷熱だけでは車室(80)の冷房負荷に対応しきれない場合には、比較的高いCOPを期待できる冷凍機(90)の蒸気圧縮冷凍サイクルにより得られた冷熱で冷房能力の不足分を補うことができる。従って、本発明によれば、COPの低いエアサイクルにより冷房能力の不足分を補う場合に比べ、空調システム(10)の運転に要するエネルギの増加を抑制でき、空調システム(10)のCOPを高く保ちつつ充分な冷房能力を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態における空調システムの概略構成図である。
【図2】実施形態における冷凍機の構成を示す配管系統図である。
【符号の説明】
(13) 凝縮熱交換器(排気冷却器)
(14) 蒸発冷却熱交換器(給気冷却器)
(20) 圧縮機
(23) 膨張機
(70) 燃料電池
(90) 冷凍機
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池自動車用の空調システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車用の動力源として燃料電池が注目されている。自動車用の燃料電池では、その小型化を図るため、酸化剤としての空気を2〜3気圧程度にまで加圧する場合が多い。このため、燃料電池の空気極側からは2〜3気圧程度の空気がオフガスとして排出されることになる。そして、このオフガスは、大気圧まで減圧されてから車外へ排出される。
【0003】
特許文献1には、オフガスとして排出された空気の減圧に膨張機を用いることが開示されている。つまり、オフガスを膨張機で膨張させることで動力回収を行い、燃料電池へ供給される空気の圧縮に回収した動力を利用して、空気の圧縮に要する動力の削減を図っている。
【0004】
膨張機での膨張過程においては、オフガスの温度が低下する。そこで、特許文献2には、膨張後のオフガスを利用して、車室内の空調を行うことが開示されている。具体的に、この特許文献2の空調装置では、燃料電池の空気極側から排出されたオフガスを予め外気等で冷却してから膨張機へ送り、膨張機で膨張して低温となったオフガスを供給空気と熱交換させ、それによって冷却された供給空気を車室内へ送っている。つまり、燃料電池の運転に必要な圧縮機を利用してエアサイクルを構成し、それによって得られた冷熱を利用して車室内を冷房している。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−149972
【特許文献2】
特開2001− 30742
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
膨張後のオフガスを利用する上記空調装置によれば、燃料電池で発電するために圧縮機を運転すれば同時に車室内を冷房することもでき、電力等のエネルギを新たに投入しなくても車室内の空調が可能となるようにも思える。
【0007】
しかしながら、燃料電池の負荷が変動すると、それに伴って必要な高圧空気の供給量も変化する。そして、燃料電池の負荷に応じて高圧空気の供給量を調節すると、冷房に利用される膨張後のオフガス量も変化してしまい、得られる冷房能力が車室内の冷房負荷に対して不足する場合も想定される。
【0008】
この問題に対しては、冷房負荷に見合った冷房能力を発揮できる量の高圧空気を、燃料電池の負荷とは無関係に燃料電池へ供給し続け、空調に必要なオフガス量を確保するという対策が考えられる。この対策を講じた場合には、冷房能力の不足分をエアサイクルにより得られた冷熱で補うこととなる。ところが、エアサイクルは成績係数(COP)が1以下と低いため、圧縮機を駆動するために余分に必要となる電力等が増大してしまい、結局は空調装置のCOPをさほど高くできないという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、燃料電池自動車に用いられる空調システムにおいて、COPを高く保ちながら充分な空調能力を得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、燃料電池(70)を動力源とする自動車に搭載される空調システムを対象としている。そして、燃料電池(70)へ供給される空気を圧縮する圧縮機(20)と、上記燃料電池(70)から排出された排出空気を冷却する排気冷却器(13)と、上記排気冷却器(13)で冷却された排出空気を膨張させて動力回収を行う膨張機(23)と、車室内への供給空気を上記膨張機(23)から送出された膨張後の空気と熱交換させて冷却する給気冷却器(14)と、上記給気冷却器(14)で冷却された供給空気を更に冷却するために蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷凍機(90)とを備えるものである。
【0011】
−作用−
請求項1の発明では、圧縮機(20)で圧縮された空気が、燃料電池(70)の空気極側へ供給される。この空気極側を流れる間に、空気中の酸素が電池反応によって消費される。燃料電池(70)の空気極側からオフガスとして排出された排出空気は、排気冷却器(13)へ送られて冷却され、その後に膨張機(23)へ導入される。膨張機(23)では、排出空気が膨張して動力回収が行われ、その際に排出空気の温度が低下する。膨張して低温となった空気は、給気冷却器(14)へ送られて、車室内への供給空気を冷却するのに利用される。
【0012】
この発明の自動車用空調システム(10)には、冷凍機(90)が設けられる。この冷凍機(90)は、閉回路内で冷媒を循環させて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。そして、供給空気は、先ず給気冷却器(14)で冷却された後、更に冷凍機(90)の蒸発器(95)で冷媒と熱交換して冷却されてから車室内へ送られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の空調システム(10)は、燃料電池(70)を動力源とする自動車に搭載されている。この空調システム(10)は、燃料電池(70)の運転に必要となる空気を利用して車室(80)内の空気調和を行う。また、この空調システム(10)には、冷凍機(90)も設けられている。
【0015】
上記燃料電池(70)は、固体高分子電解質型のものであって、多数の単電池が積層された燃料電池スタックを構成している。この燃料電池(70)には、燃料極側ガス流路(71)と空気極側ガス流路(72)とが、各単電池に対応して多数形成されている。そして、燃料電池(70)では、燃料極側ガス流路(71)を流れる水素が単電池の燃料極(アノード)と接触し、空気極側ガス流路(72)を流れる空気が単電池の空気極(カソード)と接触する。
【0016】
上記燃料電池(70)には、冷却水回路(73)が接続されている。この冷却水回路(73)は、燃料電池(70)とラジエータ(74)と循環ポンプ(75)とが順に配置された閉回路であって、冷却水が充填されている。そして、冷却水回路(73)で冷却水を循環させることにより、燃料電池(70)が所定の作動温度に保たれる。
【0017】
上記燃料電池(70)の燃料極側ガス流路(71)は、燃料側通路(76)の途中に配置されている。燃料電池(70)に対しては、この燃料側通路(76)を通じて水素ガスが供給される。燃料側通路(76)における燃料電池(70)の上流側には、燃料加湿器(77)が設けられている。この燃料加湿器(77)は、燃料電池(70)へ導入される水素ガスを予め加湿し、燃料電池(70)の電解質膜を湿潤状態に保つためのものである。
【0018】
上記燃料電池(70)の空気極側ガス流路(72)は、空気側通路(11)の途中に配置されている。燃料電池(70)に対しては、この空気側通路(11)を通じて酸化剤としての酸素を含む空気が供給される。また、燃料電池(70)の空気極側ガス流路(72)からは、オフガスとして排出空気が排出される。
【0019】
上記空気側通路(11)における燃料電池(70)の上流側には、圧縮機(20)と温調加湿熱交換器(12)とが設けられている。一方、空気側通路(11)における燃料電池(70)の下流側には、凝縮熱交換器(13)と膨張機(23)と蒸発冷却熱交換器(14)とが設けられている。
【0020】
上記圧縮機(20)は、空気を吸入して圧縮するためのものであって、ターボ式やスクロール式等の各種の流体機械で構成される。この圧縮機(20)は、その吸入側が車外に連通すると共に、その吐出側が温調加湿熱交換器(12)に接続されている。
【0021】
上記温調加湿熱交換器(12)は、圧縮機(20)と燃料電池(70)の間に配置されている。この温調加湿熱交換器(12)は、圧縮機(20)から吐出された高圧空気に対して温度調節と加湿とを施すように構成されている。具体的に、温調加湿熱交換器(12)は、例えば外気と熱交換させることによって、高圧空気の温度を調節する。また、温調加湿熱交換器(12)は、高圧空気に水を噴霧して加湿する。
【0022】
上記凝縮熱交換器(13)は、燃料電池(70)の直後に配置されている。この凝縮熱交換器(13)には、燃料電池(70)から排出された排出空気が送り込まれる。また、この凝縮熱交換器(13)には、冷却用ファン(30)により取り込まれた外気が冷却用空気として送り込まれる。そして、凝縮熱交換器(13)は、排出空気を冷却用空気と熱交換させて冷却する排気冷却器を構成している。この凝縮熱交換器(13)では、冷却用空気との熱交換によって排出空気が冷却されると同時に、排出空気に含まれる水分が凝縮して凝縮水が生成する。
【0023】
上記膨張機(23)は、ターボ式やスクロール式等の各種の流体機械で構成されるものであって、凝縮熱交換器(13)の下流に配置されている。この膨張機(23)には、凝縮熱交換器(13)で冷却された排出空気が導入される。この膨張機(23)では、導入された排出空気が膨張してその内部エネルギが回転動力として回収される。この膨張機(23)における膨張過程では、導入された空気の温度が低下すると同時に、その空気中の水蒸気が凝縮して凝縮水が生成する。
【0024】
上記蒸発冷却熱交換器(14)は、膨張機(23)の下流側に配置されている。この蒸発冷却熱交換器(14)には、膨張機(23)で膨張して低温となった排出空気が導入される。また、蒸発冷却熱交換器(14)には、給気側通路(35)を通じて供給空気が送り込まれる。この蒸発冷却熱交換器(14)は、給気冷却器を構成するものであって、車室(80)内への供給空気を膨張機(23)からの排出空気と熱交換させて冷却する。また、この蒸発冷却熱交換器(14)は、膨張機(23)で生成した凝縮水をも供給空気と熱交換させ、供給空気の冷却に凝縮水の蒸発熱を利用する。
【0025】
上記給気側通路(35)は、その入口端が二手に分岐されており、分岐した一方が車室(80)内に開口し、他方が車室(80)外に開口している。一方、給気側通路(35)の出口端は、車室(80)内に開口している。また、この給気側通路(35)において、蒸発冷却熱交換器(14)の上流側にはダンパ(36)と給気用ファン(37)とが、蒸発冷却熱交換器(14)の下流側には上記冷凍機(90)の蒸発器(95)が、それぞれ配置されている。
【0026】
上記ダンパ(36)は、給気側通路(35)の入口端側の分岐管が合流する箇所に設置されている。このダンパ(36)は、給気側通路(35)へ取り込まれる車内空気と車外空気の割合を変更するためのものである。一方、給気用ファン(37)は、給気側通路(35)におけるダンパ(36)と蒸発冷却熱交換器(14)の間に設けられている。
【0027】
上記圧縮機(20)と膨張機(23)とは、一本の駆動軸(24)で連結されている。また、この駆動軸(24)には、モータ(25)が設けられている。このモータ(25)には、図示しないが、インバータを介して電力が供給される。そして、インバータの出力周波数を変更することにより、モータ(25)の回転速度が可変となっている。
【0028】
上記空調システム(10)には、水タンク(50)と、受水用配管(51)と、給水用配管(52)と、回収用配管(58)とが更に設けられている。
【0029】
上記受水用配管(51)は、その入口端が空気側通路(11)における凝縮熱交換器(13)と膨張機(23)の間に接続され、その出口端が水タンク(50)に接続されている。凝縮熱交換器(13)で生成した凝縮水は、この受水用配管(51)を通じて水タンク(50)へ送られる。そして、水タンク(50)は、送り込まれた凝縮水を貯留する。
【0030】
上記給水用配管(52)は、その入口端が水タンク(50)に接続されると共に、水タンク(50)に蓄えられた凝縮水を吸い上げる給水ポンプ(53)を備えている。また、給水用配管(52)は、その出口端側で四つに分岐され、燃料加湿器(77)と、温調加湿熱交換器(12)と、冷却用空気の通路における凝縮熱交換器(13)の上流側と、蒸発冷却熱交換器(14)とに、それぞれ電磁弁(54,55,56,57)を介して接続されている。そして、第1電磁弁(54)を操作することで燃料加湿器(77)に対する凝縮水の供給量が、第2電磁弁(55)を操作することで温調加湿熱交換器(12)に対する凝縮水の供給量が、第3電磁弁(56)を操作することで冷却用空気に対する凝縮水の供給量が、第4電磁弁(57)を操作することで蒸発冷却熱交換器(14)に対する凝縮水の供給量が、それぞれ変化する。
【0031】
図2に示すように、上記冷凍機(90)は、冷媒回路(91)を備えている。この冷媒回路(91)は、冷媒圧縮機(92)と、凝縮器(93)と、膨張弁(94)と、蒸発器(95)とが順に接続された閉回路であって、いわゆるフロン冷媒等が充填されている。凝縮器(93)は、冷媒を外気と熱交換させるように構成されている。一方、蒸発器(95)は、冷媒を供給空気と熱交換させるように構成されている。そして、この冷凍機(90)は、冷媒回路(91)で冷媒を循環させて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うように構成されている。
【0032】
また、上記空調システム(10)には、コントローラ(60)が設けられている(図1参照)。このコントローラ(60)は、圧縮機(20)を駆動するためのモータ(25)や、冷凍機(90)に対する制御動作を行うように構成されている。
【0033】
−運転動作−
上記空調システム(10)の運転動作について説明する。尚、以下に示す圧力、温度、相対湿度等の値は、何れも例示である。
【0034】
空気側通路(11)へ取り込まれた大気圧(0.1MPa)の外気は、圧縮機(20)へ吸入されて圧力0.28MPaにまで圧縮される。圧縮機(20)から吐出された高圧空気は、温調加湿熱交換器(12)へ送られる。
【0035】
温調加湿熱交換器(12)において、高圧空気は、外気等との熱交換を行い、その温度が燃料電池(70)の動作に適した値(例えば80℃程度)となる。また、温調加湿熱交換器(12)には、給水用配管(52)を通じて水タンク(50)から凝縮水が供給される。温調加湿熱交換器(12)は、供給された凝縮水を噴霧することによって高圧空気を加湿する。この温調加湿熱交換器(12)における高圧空気の加湿は、予め高圧空気の湿度を高めて燃料電池(70)の電解質膜を湿潤状態に保つために行われる。
【0036】
温調加湿熱交換器(12)から送り出された高圧空気は、燃料電池(70)の空気極側ガス流路(72)へ導入される。この空気極側ガス流路(72)では、電池反応によって高圧空気中の酸素が消費される。そして、空気極側ガス流路(72)からは、電池反応により生成した水蒸気を付与された高温高湿度の排出空気、具体的には温度80℃,相対湿度90%以上の排出空気が排出される。
【0037】
凝縮熱交換器(13)へは、燃料電池(70)から排出された排出空気が導入される。凝縮熱交換器(13)では、冷却用空気と熱交換することによって排出空気が冷却され、それに伴って排出空気中の水蒸気が凝縮して凝縮水となる。その際、凝縮熱交換器(13)へ導入される冷却用空気には、給水用配管(52)を通じて水タンク(50)から供給された凝縮水が予め噴霧されている。このため、凝縮熱交換器(13)では、冷却用空気に噴霧された凝縮水が排出空気から吸熱して蒸発する。つまり、凝縮熱交換器(13)では、冷却用空気の顕熱だけでなく、冷却用空気に噴霧された凝縮水の潜熱をも利用して、排出空気の冷却が行われる。そして、この凝縮熱交換器(13)からは、温度40℃,相対湿度100%となった排出空気が送り出される。
【0038】
凝縮熱交換器(13)から送出された排出空気は、膨張機(23)へ流入する。膨張機(23)では、圧力0.28MPaの排出空気が圧力0.1MPaまで膨張し、排出空気の内部エネルギが駆動軸(24)の回転動力に変換される。膨張機(23)で回収された動力は、モータ(25)で得られた動力と共に、圧縮機(20)の駆動に用いられる。この膨張機(23)からは、温度2℃,相対湿度100%となった排出空気、即ち低温空気が送り出される。
【0039】
また、膨張機(23)の膨張過程では、排出空気の温度が低下すると同時に、排出空気中の水蒸気が凝縮して凝縮水が生成する。このため、膨張機(23)からは、霧状あるいは細かい液滴状の凝縮水が、低温空気と共に送り出される。
【0040】
膨張機(23)から送出された低温空気と凝縮水は、蒸発冷却熱交換器(14)へ導入される。また、蒸発冷却熱交換器(14)へは、必要に応じて水タンク(50)の凝縮水が供給される。更に、蒸発冷却熱交換器(14)へは、車室(80)内へ供給される供給空気が、給気側通路(35)を通じて導入される。
【0041】
この蒸発冷却熱交換器(14)では、低温空気が供給空気から吸熱して温度上昇すると共に、凝縮水が低温空気から吸熱して蒸発する。つまり、蒸発冷却熱交換器(14)では、低温空気の顕熱と凝縮水の蒸発熱とを利用して供給空気が冷却される。供給空気から吸熱した低温空気や凝縮水が蒸発して生成した水蒸気は、車外へ排出される。また、蒸発冷却熱交換器(14)で蒸発しなかった凝縮水は、回収用配管(58)を通じて水タンク(50)へ送り返される。
【0042】
蒸発冷却熱交換器(14)で冷却された供給空気は、冷凍機(90)の蒸発器(95)へ送られる。冷凍機(90)では、冷媒圧縮機(92)が運転されて蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。具体的に、冷媒圧縮機(92)から吐出された冷媒は、凝縮器(93)で外気等へ放熱して凝縮する。凝縮した冷媒は、膨張弁(94)を通過する際に減圧されてから蒸発器(95)へ導入される。その後、冷媒は、蒸発器(95)で供給空気から吸熱して蒸発し、その後に冷媒圧縮機(92)へ吸入されて圧縮される。そして、蒸発冷却熱交換器(14)で冷却された後に、蒸発器(95)で更に冷却された供給空気が、車室(80)内へ供給される。
【0043】
−コントローラの制御動作−
コントローラ(60)は、圧縮機(20)からの高圧空気の吐出量を調節するために、インバータの出力周波数を操作してモータ(25)の回転速度を調節する動作を行う。つまり、コントローラ(60)は、燃料電池(70)の負荷変動に応じてモータ(25)の回転速度を調節し、要求された発電量を得るのに必要な量の高圧空気を燃料電池(70)へ供給する。
【0044】
また、コントローラ(60)は、車室(80)内の冷房負荷に応じて冷凍機(90)の運転を制御する。つまり、コントローラ(60)は、車室(80)内の冷房負荷に応じて、冷媒圧縮機(92)の容量や膨張弁(94)の開度を適宜調節する。このコントローラ(60)の動作により、蒸発冷却熱交換器(14)で得られる冷却能力と冷凍機(90)の蒸発器(95)で得られる冷却能力とのトータルが、車室(80)内の冷房負荷に見合った値に設定される。
【0045】
−実施形態の効果−
本実施形態では、燃料電池(70)からの排出空気を膨張機(23)で膨張させて得られた低温空気だけでなく、冷凍機(90)の蒸発器(95)へ送り込まれた冷媒をも利用して、車室内への供給空気を冷却できる。このため、蒸発冷却熱交換器(14)で得られる冷却能力が車室(80)の冷房負荷に対して過少である場合には、冷凍機(90)の蒸発器(95)で得られる冷却能力によって冷却能力の不足分を補うことができる。また、冷凍機(90)で行われる蒸気圧縮式冷凍サイクルでは、3前後の比較的高いCOPが期待できる。
【0046】
従って、本実施形態によれば、圧縮機(20)からの高圧空気の吐出量を冷房負荷に応じて調節してCOPの低いエアサイクルにより冷房能力の不足分を補う場合に比べ、空調システム(10)の消費電力の増加を抑制でき、空調システム(10)のCOPを高く保ちつつ充分な冷房能力を得ることが可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、膨張機(23)から蒸発冷却熱交換器(14)へ供給された低温空気を車室(80)内への供給空気の冷却に利用している。このため、冷凍機(90)の運転により得られる冷熱だけで供給空気を冷却する一般的な空調システムに比べ、冷凍機(90)の運転に要する電力を削減できる。
【0048】
つまり、モータ(25)で消費される電力は燃料電池(70)での発電に必要不可欠であるため、新たな電力を投入することなく蒸発冷却熱交換器(14)での冷却能力が得られる。従って、本実施形態によれば、供給空気の冷却に膨張後の低温空気を利用することにより、空調システム(10)の冷房能力を低下させることなく、その消費電力だけを削減できる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、燃料電池(70)からの排出空気を膨張機(23)で膨張させて得られる冷熱と、冷凍機(90)の運転により得られる冷熱との両方を、車室内への供給空気を冷却するために利用できる。このため、排出空気の膨張で得られる冷熱だけでは車室(80)の冷房負荷に対応しきれない場合には、比較的高いCOPを期待できる冷凍機(90)の蒸気圧縮冷凍サイクルにより得られた冷熱で冷房能力の不足分を補うことができる。従って、本発明によれば、COPの低いエアサイクルにより冷房能力の不足分を補う場合に比べ、空調システム(10)の運転に要するエネルギの増加を抑制でき、空調システム(10)のCOPを高く保ちつつ充分な冷房能力を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態における空調システムの概略構成図である。
【図2】実施形態における冷凍機の構成を示す配管系統図である。
【符号の説明】
(13) 凝縮熱交換器(排気冷却器)
(14) 蒸発冷却熱交換器(給気冷却器)
(20) 圧縮機
(23) 膨張機
(70) 燃料電池
(90) 冷凍機
Claims (1)
- 燃料電池(70)を動力源とする自動車に搭載される空調システムであって、
燃料電池(70)へ供給される空気を圧縮する圧縮機(20)と、
上記燃料電池(70)から排出された排出空気を冷却する排気冷却器(13)と、
上記排気冷却器(13)で冷却された排出空気を膨張させて動力回収を行う膨張機(23)と、
車室内への供給空気を上記膨張機(23)から送出された膨張後の空気と熱交換させて冷却する給気冷却器(14)と、
上記給気冷却器(14)で冷却された供給空気を更に冷却するために蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷凍機(90)と
を備えている自動車用空調システム。
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