JP2004167540A - フェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フェライト系ステンレス鋼材を熱間圧延するに際し、鋼材表層部の粗粒化および圧延時における鋼材の座屈を抑えると共に鋼材の整粒化を図ること、及び円滑な熱間圧延を実現することができるフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法を提供すること。
【解決手段】連続式加熱炉1にて加熱された鋼材を粗列圧延機3の入側に設けた誘導加熱炉2内でその表層部の温度がフェライト相の再結晶温度域に達するように昇温し急速加熱し、仕上列圧延機6を通過する際の鋼材表層部の温度が850〜1000℃の温度範囲となるように粗列圧延機3と仕上列圧延機6との間に設けられる温度調節装置5により鋼材表層部を温度制御する。
【選択図】 図1
【解決手段】連続式加熱炉1にて加熱された鋼材を粗列圧延機3の入側に設けた誘導加熱炉2内でその表層部の温度がフェライト相の再結晶温度域に達するように昇温し急速加熱し、仕上列圧延機6を通過する際の鋼材表層部の温度が850〜1000℃の温度範囲となるように粗列圧延機3と仕上列圧延機6との間に設けられる温度調節装置5により鋼材表層部を温度制御する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法に関し、更に詳しくは、フェライト系ステンレス鋼材を加熱後に粗列圧延、仕上列圧延してなるフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、フェライト系ステンレス鋼材は、耐食性、加工性、溶接性等に優れていることから、厨房用品、建築内装、自動車用部品、化学プラント等種々の用途に応用されている。従来、工業的に製造されるフェライト系ステンレス鋼材は、連続鋳造で得られた鋳片を分塊圧延により鋼片とし、その鋼片を加熱炉を通して加熱した後、粗列圧延、中間列圧延、仕上列圧延を経て線、棒などの熱間圧延製品となし、得られた熱間圧延製品に焼鈍し・酸洗を施してから冷間引き抜き加工にて所定の製品寸法まで加工されるのが一般的である。
【0003】
このフェライト系ステンレス鋼材に要求される特性として鋼材組織の整粒化がある。鋼材の整粒化を図ることによって圧延後の2次加工工程である冷間引き抜き加工や再結晶焼鈍しの省略が図れるという効果が得られる。整粒化を図る手段としては、通常、熱間圧延工程において、連続式加熱炉にて加熱し粗列圧延機にて粗圧延した後仕上げ圧延を行う前に、鋼材を構成するフェライト相の再結晶温度域で熱処理を施すということがなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−256230号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、粗列圧延工程にて圧延された鋼材を再結晶温度域で熱処理すると、鋼材の表層部が再結晶化すると同時に粗粒化するという問題があった。鋼材表層部が粗粒化すると、例えば、鋼材を伸線加工する際にしわ疵が発生するなど、鋼材の表面性状に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0006】
本発明者は、上記表層部の粗粒化の原因について検討した結果、以下のことが推察された。すなわち、連続式加熱炉での加熱温度が低いと鋼材表層部のフェライト相が再結晶化されておらずこの状態で鋼材を粗圧延すると、鋼材表層部に圧延による加工歪(ひずみ)が発生する。このため鋼材表層部には歪による高いエネルギーが蓄積されており、これに加熱が施されると蓄積された歪エネルギーが解放され、それと同時に発生する熱エネルギーがフェライト相の粗粒化の駆動力となるというものである。
【0007】
そこで、本発明者は、熱間圧延時の整粒化に伴う鋼材表層部のフェライト相の粗粒化を抑えるために、圧延前の加熱工程も含めた熱間圧延工程全体を通して鋼材の表層部温度を再結晶温度域に保持することを試みた。この手法によれば、圧延時の鋼材表層部の熱間加工性が高められるため圧延による加工歪の発生ならびに粗粒化が抑えられると共に、鋼材の表層部温度が再結晶温度域に保持された状態にあるため鋼材の整粒化が図られる。
【0008】
しかし、この手法を用いることによって鋼材表層部におけるフェライト相の粗粒化の抑制及び整粒化は達成されたが、圧延時の鋼材表層部の温度が高くなったことが原因で鋼材が軟化して圧延ロールに噛み込まれる際に座屈するという問題が生じた。特に、鋼材が細径化している仕上圧延工程では座屈が起こりやすく圧延不能(ミスロール)の原因となるという問題があった。
【0009】
この鋼材の座屈問題を解決するために、仕上圧延に入る前に鋼材を冷却して圧延時の座屈を抑えるという手段も考えられるが、そうするとフェライト相の再結晶化が妨げられ、結局、仕上圧延後の鋼材表層部には粗粒化したフェライト相が散在するという結果となり好ましくない。
【0010】
本発明の解決しようとする課題は、フェライト系ステンレス鋼材を熱間圧延するに際し、鋼材表層部の粗粒化および圧延時における鋼材の座屈を抑えると共に鋼材の整粒化を図ること、及び円滑な熱間圧延を実現することができるフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明に係るフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法は、フェライト相を主成分とするフェライト系ステンレス鋼材を連続式加熱炉にて加熱しその後粗列圧延及び仕上列圧延を介して熱間圧延するに際し、前記連続式加熱炉にて加熱された鋼材を前記粗列圧延機の入側に設けた誘導加熱炉内でその表層部の温度がフェライト相の再結晶温度域に達するように昇温し急速加熱する工程と、前記熱間圧延工程の仕上列圧延をする際の鋼材表層部の温度が850〜1000℃の温度範囲となるように前記粗列圧延と前記仕上列圧延との中間工程としてこの表層部を温度制御することを要旨とする。
【0012】
この場合、圧延工程前に鋼材表層部のフェライト相が再結晶化されるので、圧延工程において鋼材表層部の温度が再結晶温度域未満であったとしても鋼材表層部に圧延による加工歪が蓄積されることはなく、フェライト相の粗粒化を効果的に抑制することができる。また、粗列圧延と仕上列圧延の中間工程として仕上圧延時の鋼材表層部の温度が850〜1000℃の範囲となるように温度調節されるので、仕上圧延時に鋼材が座屈し圧延不能となるといった事態を回避することができる。
【0013】
また、連続式加熱炉での加熱条件がフェライト系ステンレス鋼材の表層部温度が1000〜1200℃の温度範囲となるように設定されているので、加熱時に鋼材が垂れて変形することはなく安定にその形状を維持することができる。
【0014】
また、誘導加熱炉における昇温加熱温度を1100〜1300℃の温度範囲とすることにより、鋼材の整粒化及び再結晶化を促進させることができる。また、誘導加熱炉で鋼材を加熱するに際し、その表層部が再結晶温度域となる温度に少なくとも90秒間保持することにより、圧延工程において粗粒が発生しない程度に鋼材表層部のフェライト相を再結晶化させることができる。
【0015】
また、粗圧延と仕上圧延との中間工程として行う温度調節が水冷却によってなされれば、容易かつ効率的に鋼材表層部を希望する温度に調節することができる。
【0016】
また、フェライト系ステンレス鋼片の急速加熱を行う誘導加熱炉が、鋼片を全体に亘って均一に加熱するためにこの鋼片をその長手方向に揺動可能とする揺動機構を備えたものとすることにより、鋼材全体を均一に再結晶化させることができ、特に、鋼材が炉長と同程度の長さを持った長尺物であっても、長手方向に均一な加熱状態を確保することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
初めに、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法について説明する。本発明を実施するための熱間圧延設備としては、例えば、図1に示すようなものが考えられる。この熱間圧延設備は、図示しない連続鋳造機から得られた鋳片を分塊し、これにより得られた鋼片(以下、鋼片については「フェライト系ステンレス鋼材」若しくは単に「鋼材」と記述する。)を熱間圧延可能な温度近傍まで予加熱するための連続式加熱炉1と、この連続式加熱炉1から抽出された鋼材を昇温し急速加熱するための誘導加熱炉(図中では、「IH」と表示する。)2と、この誘導加熱炉2から抽出された鋼材を順次圧延する粗列圧延機3、中間列圧延機4及び仕上列圧延機6と、中間列圧延機4と仕上列圧延機6との間に配置され鋼材表層部の温度を仕上圧延に適した温度に冷却調節するための温度調節手段5とを有するものである。以下に各設備装置について説明する。
【0018】
連続式加熱炉1は、フェライト系ステンレス鋼材を搬送しながら加熱処理する役割を担うものである。使用する連続式加熱炉としては特に限定されるものではないが、省エネ・高効率の観点からウォーキングビーム(WB)炉が好ましい。
【0019】
また、連続式加熱炉1でのフェライト系ステンレス鋼材の加熱温度は、1000〜1200℃の温度範囲にあることが好ましく、更には、1050〜1150℃の温度範囲にあることが好ましい。加熱温度が1000℃未満であると、誘導加熱炉での加熱時間が長くなるという問題があり、一方、加熱温度が1200℃を超えると、鋼材が加熱時に軟化して垂れるおそれがあるため好ましくない。
【0020】
誘導加熱炉2は、一般に、複数個の誘導加熱コイルが所定間隔をあけて配列されており、この誘導加熱コイル内に被加熱鋼材を挿入し、コイルに高周波電流(交流電流)を流すと交番磁束が発生し被加熱鋼材に誘導電流が流れることによって、被加熱鋼材中にジュール熱が発生し被加熱鋼材が加熱されるというものである。この誘導加熱炉によれば、被加熱鋼材の急速・高温加熱が可能であり、また、鋼材の表皮効果により周波数を変化させることによって被加熱鋼材の表層部と内部の加熱効果に差違を持たせることが可能である。
【0021】
具体的には、被加熱鋼材(本発明の場合、フェライト系ステンレス鋼材)の表層部のみを高温加熱する場合には高周波数の電流を用いるのが好ましい。鋼材の表層部のみを高温加熱することができれば、表層部の熱間加工性の向上及びフェライト相の再結晶化を図ることができる一方、内部は表層部ほど高温に達していないので鋼材が軟化し変形するといった不都合を回避することができる。なお、本発明で使用する誘導加熱炉は特に限定されるものではなく、上記機構を備えたものであれば如何なる形態を有するものであっても構わない。
【0022】
この誘導加熱炉2では、フェライト系ステンレス鋼片をその表層部温度が1100〜1300℃の温度範囲となるように加熱することが好ましく、更には、1150〜1300℃の温度範囲となるように加熱することがより好ましい。鋼材の表層部温度が1100℃未満であると、表層部の再結晶化が十分に促進されず、圧延時において表層部に加工歪が発生し粗粒化を引き起こすため好ましくない。一方、鋼材の表層部温度が1300℃を超えると、鋼材の軟化が起こり、その結果、粗圧延の際に座屈(反り)が生じて圧延ロールが噛み込み不能となる、いわゆるミスロールの原因となるため好ましくない。
【0023】
また、この誘導加熱炉2には、フェライト系ステンレス鋼材をその長手方向に揺動可能とする揺動機構を備えたものであることが好ましい。ここで長手方向に揺動とは、圧延工程の進行方向に対して前後に揺動するという意味である。この揺動機構を備えることにより、鋼材の加熱状態が均一となる。すなわち、加熱するフェライト系ステンレス鋼材の長手方向の均一加熱が達成できるように上記揺動機構は適宜変更可能である。
【0024】
粗列圧延機3、中間列圧延機4及び仕上列圧延機6は、上述の誘導加熱炉内より搬出されたフェライト系ステンレス鋼材を粗圧延、中間圧延及び仕上圧延するものであり、2ロール型、3ロール型、4ロール型など、希望する圧延形状に応じて種々のタイプのものが適用可能であり、圧延スタンド基数も圧延スケジュール等に応じて適宜変更可能である。なお、中間列圧延機4は、本発明の必須の構成要件ではなく、配設されていなくても良い。
【0025】
ここで、仕上列圧延機6によってフェライト系ステンレス鋼材が仕上圧延される際に、鋼材表層部の温度が850〜1000℃の範囲にあることが好ましく、更には、850〜950℃の範囲にあることが好ましい。鋼材の表層部温度が850℃未満であると、ワレ、ヘゲが発生してしまうという問題があり、一方、鋼材表層部の温度が1000℃を超えると、鋼材の軟化が起こり、その結果、仕上圧延の際に座屈(反り)が生じて圧延不能(ミスロール)の原因となるため好ましくない。
【0026】
鋼材を冷却するための温度調節手段5は、フェライト系ステンレス鋼材を仕上圧延する際に、鋼材が座屈しないように鋼材表層部の温度を制御する役割を担う。温度制御手段としては水冷による温度制御が好ましい。
【0027】
上記加熱設備及び粗圧延機によって熱間圧延されるフェライト系ステンレス鋼材は、0.12重量%以下のC、11.0〜27.5重量%のCr、及び必要に応じて強化元素であるMo等又は快削性元素であるS、Pb、Te等を含有するステンレス鋼からなるものであり、SUS405、SUS410L、SUS430,SUS430F、SUS434、SUSXM27等が代表的なものとして挙げられる。フェライト系ステンレス鋼材は、板状、線状、棒状等いかなる形状を有するものであっても良い。
【0028】
【実施例】
本発明の効果を、実施例により具体的に説明する。
【0029】
本実施例における熱間圧延設備は、上流側より、ウォーキングビーム炉、誘電加熱炉、粗圧延機、中間圧延機、冷却装置、及び仕上圧延機を順に配設してなる。圧延に用いるフェライト系ステンレス鋼片としては、SUS430(C:0.06重量%、Cr:16.8重量%)鋼材を用いた。また、この鋼片の寸法は、150mm角、長さ11.5mとした。
【0030】
上記熱間圧延設備を経て得られたフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延製品の評価としては、圧延製品表層部の粗粒発生率の評価、仕上圧延時の鋼材の座屈発生率の評価を行った。
【0031】
(熱間圧延製品表層部の粗粒発生率の評価)
粗粒発生率の評価は、熱間圧延製品を熱処理したものを試料とし、その断面組織を顕微鏡を用いて観察し、断面表層部と内部のフェライト相の平均粒子径を比較することにより行った。具体的には、表層部のフェライト相の平均粒子径が内部のものと比較して3倍未満の大きさである場合には表層部は粗粒化していないとしてと判断し、表層部のフェライト相の粒子径が内部のものと比較して3倍以上の大きさである場合には表層部は粗粒化していると判断した。以上の判断を基に、熱間圧延製品表層部の粗粒発生率を算出した。なお、この評価試験は各試験条件(実施例及び比較例)について50試料ずつ行った。
【0032】
(仕上圧延時の鋼材の座屈発生率の評価)
座屈発生率の評価は、仕上圧延の圧延ロールに噛み込み不能となる鋼材の発生率を測定することにより行った。なお、この評価試験は各試験条件(実施例及び比較例)について50試料ずつ行った。
【0033】
(実施例1)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼片をウォーキングビーム(WB)炉内において鋼材の表層部温度が1050℃となるように温度制御して1時間加熱した後、揺動機構を備えた誘導加熱炉に挿入して急速加熱を行った。
誘導加熱炉では、表層部温度を1200℃まで昇温すると共に鋼材を長手方向に揺動しながら90秒間炉内に挿置した。次いで、誘導加熱炉から鋼材を搬出し、粗圧延機、仕上圧延機を通して熱間圧延製品を製造した。なお、中間列圧延と仕上列圧延との中間工程として水冷却装置による鋼材の冷却を行い、仕上圧延機を通過する際の鋼材の表層部温度が950℃となるように温度調節した。
【0034】
(実施例2〜4)
上記実施例1と同様に、ウォーキングビーム炉及び誘導加熱炉での保持時間は一定とし、加熱温度を表1に示す温度に制御して、粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機を通して熱間圧延製品を得た。なお、中間列圧延と仕上列圧延との中間工程として水冷却装置による鋼材の冷却を行い仕上圧延機を通過する際の鋼材の表層部温度が表1の温度となるように温度調節した。
【0035】
(比較例1)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼片をウォーキングビーム炉内において鋼材の表層部温度が1050℃となるように温度制御して1時間加熱した後、鋼材を搬出し、次いで、誘導加熱炉で1100℃まで急速に昇温加熱し、その温度に60秒間保持した後鋼材を抽出し、粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機を通して熱間圧延製品を製造した。
【0036】
(比較例2)
上記比較例1と同様に、ウォーキングビーム炉で1200℃に加熱し、誘導加熱炉で揺動しながら1350℃に昇温加熱しその温度で90秒間保持した後鋼材を抽出した。
【0037】
(比較例3及び4)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼片をウォーキングビーム炉内において鋼材の表層部温度が表1の温度となるように温度制御して1時間加熱した後、鋼材を搬出し、粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機を通して熱間圧延製品を作製した。なお、中間列圧延と仕上列圧延との中間工程として水冷却装置による鋼材の冷却を行い仕上圧延機を通過する際の鋼材の表層部温度が表1の温度となるように温度調節した。
【0038】
表1に実施例品及び比較例品の評価結果を示す。なお、表1における加熱温度は、加熱により達成されるフェライト系ステンレス鋼片の表面温度を指す。表1より、実施例に係る熱間圧延製品は、表層部の粗粒発生率を調べた結果、粗粒の発生が見られず表層部及び内部ともに均質に整粒化されていた。また、仕上圧延前の水冷却によって鋼材表層部の温度が850〜1000℃に制御されたことにより、仕上圧延時に鋼材の座屈は発生せず、表面性状の良好な熱間圧延製品が得られた。
【0039】
一方、比較例に係る熱間圧延製品について見てみると、比較例1では、鋼材表層部での粗粒化は認められなかったものの、仕上圧延時に鋼材の座屈が生じ(座屈発生率:30%)、また、座屈しなかった試料においてはワレ、ヘゲが多数発生した。仕上圧延時に座屈が認められたのは、仕上圧延工程に入る前に鋼材を冷却する冷却しなかったことにより鋼材の温度が軟化温度域以下まで下がりきれなかったことが原因と考えられ、ワレ、ヘゲが発生したのは、誘導加熱炉での加熱保持時間が短かったため圧延前に鋼材表層部の熱間加工性を十分に高くすることができなかったことが原因と考えられる。
【0040】
比較例2では、誘導加熱炉での加熱温度が高すぎたため鋼材が軟化し、粗圧延時に座屈が起こり粗圧延することができなかった。
【0041】
比較例3では、仕上圧延前の冷却により仕上圧延時の鋼材表層部の温度が950℃に抑えられたため座屈は発生しなかったが、得られた熱間圧延製品の表層部にはフェライト相の粗粒が発生していた(粗粒発生率:80%)。粗粒化が生じたのは、加熱工程及び粗圧延工程を通して再結晶温度域に保持されていた鋼材の表層部温度が仕上圧延前の冷却によって再結晶温度域以下に下げられたためフェライト相の再結晶化が停止してしまい、表層部が十分に再結晶化しない状態で鋼材が仕上圧延されたことが原因と考えられる。
【0042】
比較例4は、比較例3と同様に理由により表層部のフェライト相が完全に粗粒化(粗粒発生率:100%)しており、さらに仕上圧延時の鋼材表層部の温度が700℃と低すぎたために鋼材表層部に多数のワレ、ヘゲが発生した。
【0043】
【表1】
【0044】
以上の結果より、実施例1〜4に係る熱間圧延製品は、表層部にフェライト相の粗粒が発生することがなく優れた表面性状を有しており、また、仕上圧延時に鋼材が座屈することがないため円滑な熱間圧延を実現することができた。
【0045】
以上、実施例について説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、上記実施例では、連続式加熱炉としてウォーキングビーム炉を用いたが、これに限られるものではない。また誘導加熱炉は、均一加熱を実現するため揺動式としたが、被加熱体の長さ等に応じて均一加熱を達成できる場合には揺動機構は備えられていなくても構わない。また、上記実施例における熱間圧延方法では、粗圧延工程、仕上圧延工程の順にフェライト系ステンレス鋼材の圧延を行ったが、両工程間に中間圧延の工程が備えられていても良い。
【0046】
【発明の効果】
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法によれば、圧延工程前に鋼材表層部のフェライト相が再結晶化されるので、圧延工程において鋼材表層部の温度が再結晶温度域未満であったとしても鋼材表層部に圧延による加工歪が蓄積されることはなく、フェライト相の粗粒化を効果的に抑制することができると共に表面性状に優れた熱間圧延製品を提供することができるという効果がある。また、仕上圧延時の鋼材表層部の温度が850〜1000℃の範囲となるように温度調節されるので、仕上圧延時の鋼材の座屈が抑えられ、良好な熱間圧延を実現することができると共に熱間圧延工程の生産能率を高めることができるという効果がある。
【0047】
また、フェライト系ステンレス鋼材が連続式加熱炉にてその表層部の温度が1000〜1200℃の温度範囲となるように加熱されるので、加熱時の鋼材の垂れが抑えられ、その後の円滑な搬送作業及び圧延作業を実現することができるという効果がある。
【0048】
また、誘導加熱炉にて鋼材表層部の温度が1000〜1300℃の温度範囲となるように急速加熱し、また、誘導加熱炉で鋼材を加熱するに際し、その表層部が再結晶温度域となる温度に少なくとも90秒間保持することにより、鋼材表層部のフェライト相の再結晶化が十分に促進され、圧延工程における鋼材表層部での加工歪の蓄積ならびにフェライト相の粗粒化を効果的に抑制することができるという効果がある。
【0049】
また、フェライト系ステンレス鋼材の急速加熱を行う誘導加熱炉を、鋼材を圧延方向全長に亘って均一加熱するためこの鋼材をその長手方向に揺動させるものとすることにより、加熱が不十分となりがちな鋼材端部も内側部分と同等に加熱されることとなるため、鋼材長が炉長と同程度となるような長尺物であっても均一加熱を達成することができる。その結果、従来加熱不十分により捨て材となっていた鋼材端部も有効活用することができ歩留り向上となり、熱間圧延工程全体の生産能率の向上ならびに熱間圧延製品の生産コストの低減を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施の形態に係る熱間圧延設備を示したものである。
【符号の説明】
1 連続式加熱炉
2 誘導加熱炉
3 粗列圧延機
4 中間列圧延機
5 温度制御装置
6 仕上列圧延機
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法に関し、更に詳しくは、フェライト系ステンレス鋼材を加熱後に粗列圧延、仕上列圧延してなるフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、フェライト系ステンレス鋼材は、耐食性、加工性、溶接性等に優れていることから、厨房用品、建築内装、自動車用部品、化学プラント等種々の用途に応用されている。従来、工業的に製造されるフェライト系ステンレス鋼材は、連続鋳造で得られた鋳片を分塊圧延により鋼片とし、その鋼片を加熱炉を通して加熱した後、粗列圧延、中間列圧延、仕上列圧延を経て線、棒などの熱間圧延製品となし、得られた熱間圧延製品に焼鈍し・酸洗を施してから冷間引き抜き加工にて所定の製品寸法まで加工されるのが一般的である。
【0003】
このフェライト系ステンレス鋼材に要求される特性として鋼材組織の整粒化がある。鋼材の整粒化を図ることによって圧延後の2次加工工程である冷間引き抜き加工や再結晶焼鈍しの省略が図れるという効果が得られる。整粒化を図る手段としては、通常、熱間圧延工程において、連続式加熱炉にて加熱し粗列圧延機にて粗圧延した後仕上げ圧延を行う前に、鋼材を構成するフェライト相の再結晶温度域で熱処理を施すということがなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−256230号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、粗列圧延工程にて圧延された鋼材を再結晶温度域で熱処理すると、鋼材の表層部が再結晶化すると同時に粗粒化するという問題があった。鋼材表層部が粗粒化すると、例えば、鋼材を伸線加工する際にしわ疵が発生するなど、鋼材の表面性状に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0006】
本発明者は、上記表層部の粗粒化の原因について検討した結果、以下のことが推察された。すなわち、連続式加熱炉での加熱温度が低いと鋼材表層部のフェライト相が再結晶化されておらずこの状態で鋼材を粗圧延すると、鋼材表層部に圧延による加工歪(ひずみ)が発生する。このため鋼材表層部には歪による高いエネルギーが蓄積されており、これに加熱が施されると蓄積された歪エネルギーが解放され、それと同時に発生する熱エネルギーがフェライト相の粗粒化の駆動力となるというものである。
【0007】
そこで、本発明者は、熱間圧延時の整粒化に伴う鋼材表層部のフェライト相の粗粒化を抑えるために、圧延前の加熱工程も含めた熱間圧延工程全体を通して鋼材の表層部温度を再結晶温度域に保持することを試みた。この手法によれば、圧延時の鋼材表層部の熱間加工性が高められるため圧延による加工歪の発生ならびに粗粒化が抑えられると共に、鋼材の表層部温度が再結晶温度域に保持された状態にあるため鋼材の整粒化が図られる。
【0008】
しかし、この手法を用いることによって鋼材表層部におけるフェライト相の粗粒化の抑制及び整粒化は達成されたが、圧延時の鋼材表層部の温度が高くなったことが原因で鋼材が軟化して圧延ロールに噛み込まれる際に座屈するという問題が生じた。特に、鋼材が細径化している仕上圧延工程では座屈が起こりやすく圧延不能(ミスロール)の原因となるという問題があった。
【0009】
この鋼材の座屈問題を解決するために、仕上圧延に入る前に鋼材を冷却して圧延時の座屈を抑えるという手段も考えられるが、そうするとフェライト相の再結晶化が妨げられ、結局、仕上圧延後の鋼材表層部には粗粒化したフェライト相が散在するという結果となり好ましくない。
【0010】
本発明の解決しようとする課題は、フェライト系ステンレス鋼材を熱間圧延するに際し、鋼材表層部の粗粒化および圧延時における鋼材の座屈を抑えると共に鋼材の整粒化を図ること、及び円滑な熱間圧延を実現することができるフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明に係るフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法は、フェライト相を主成分とするフェライト系ステンレス鋼材を連続式加熱炉にて加熱しその後粗列圧延及び仕上列圧延を介して熱間圧延するに際し、前記連続式加熱炉にて加熱された鋼材を前記粗列圧延機の入側に設けた誘導加熱炉内でその表層部の温度がフェライト相の再結晶温度域に達するように昇温し急速加熱する工程と、前記熱間圧延工程の仕上列圧延をする際の鋼材表層部の温度が850〜1000℃の温度範囲となるように前記粗列圧延と前記仕上列圧延との中間工程としてこの表層部を温度制御することを要旨とする。
【0012】
この場合、圧延工程前に鋼材表層部のフェライト相が再結晶化されるので、圧延工程において鋼材表層部の温度が再結晶温度域未満であったとしても鋼材表層部に圧延による加工歪が蓄積されることはなく、フェライト相の粗粒化を効果的に抑制することができる。また、粗列圧延と仕上列圧延の中間工程として仕上圧延時の鋼材表層部の温度が850〜1000℃の範囲となるように温度調節されるので、仕上圧延時に鋼材が座屈し圧延不能となるといった事態を回避することができる。
【0013】
また、連続式加熱炉での加熱条件がフェライト系ステンレス鋼材の表層部温度が1000〜1200℃の温度範囲となるように設定されているので、加熱時に鋼材が垂れて変形することはなく安定にその形状を維持することができる。
【0014】
また、誘導加熱炉における昇温加熱温度を1100〜1300℃の温度範囲とすることにより、鋼材の整粒化及び再結晶化を促進させることができる。また、誘導加熱炉で鋼材を加熱するに際し、その表層部が再結晶温度域となる温度に少なくとも90秒間保持することにより、圧延工程において粗粒が発生しない程度に鋼材表層部のフェライト相を再結晶化させることができる。
【0015】
また、粗圧延と仕上圧延との中間工程として行う温度調節が水冷却によってなされれば、容易かつ効率的に鋼材表層部を希望する温度に調節することができる。
【0016】
また、フェライト系ステンレス鋼片の急速加熱を行う誘導加熱炉が、鋼片を全体に亘って均一に加熱するためにこの鋼片をその長手方向に揺動可能とする揺動機構を備えたものとすることにより、鋼材全体を均一に再結晶化させることができ、特に、鋼材が炉長と同程度の長さを持った長尺物であっても、長手方向に均一な加熱状態を確保することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
初めに、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法について説明する。本発明を実施するための熱間圧延設備としては、例えば、図1に示すようなものが考えられる。この熱間圧延設備は、図示しない連続鋳造機から得られた鋳片を分塊し、これにより得られた鋼片(以下、鋼片については「フェライト系ステンレス鋼材」若しくは単に「鋼材」と記述する。)を熱間圧延可能な温度近傍まで予加熱するための連続式加熱炉1と、この連続式加熱炉1から抽出された鋼材を昇温し急速加熱するための誘導加熱炉(図中では、「IH」と表示する。)2と、この誘導加熱炉2から抽出された鋼材を順次圧延する粗列圧延機3、中間列圧延機4及び仕上列圧延機6と、中間列圧延機4と仕上列圧延機6との間に配置され鋼材表層部の温度を仕上圧延に適した温度に冷却調節するための温度調節手段5とを有するものである。以下に各設備装置について説明する。
【0018】
連続式加熱炉1は、フェライト系ステンレス鋼材を搬送しながら加熱処理する役割を担うものである。使用する連続式加熱炉としては特に限定されるものではないが、省エネ・高効率の観点からウォーキングビーム(WB)炉が好ましい。
【0019】
また、連続式加熱炉1でのフェライト系ステンレス鋼材の加熱温度は、1000〜1200℃の温度範囲にあることが好ましく、更には、1050〜1150℃の温度範囲にあることが好ましい。加熱温度が1000℃未満であると、誘導加熱炉での加熱時間が長くなるという問題があり、一方、加熱温度が1200℃を超えると、鋼材が加熱時に軟化して垂れるおそれがあるため好ましくない。
【0020】
誘導加熱炉2は、一般に、複数個の誘導加熱コイルが所定間隔をあけて配列されており、この誘導加熱コイル内に被加熱鋼材を挿入し、コイルに高周波電流(交流電流)を流すと交番磁束が発生し被加熱鋼材に誘導電流が流れることによって、被加熱鋼材中にジュール熱が発生し被加熱鋼材が加熱されるというものである。この誘導加熱炉によれば、被加熱鋼材の急速・高温加熱が可能であり、また、鋼材の表皮効果により周波数を変化させることによって被加熱鋼材の表層部と内部の加熱効果に差違を持たせることが可能である。
【0021】
具体的には、被加熱鋼材(本発明の場合、フェライト系ステンレス鋼材)の表層部のみを高温加熱する場合には高周波数の電流を用いるのが好ましい。鋼材の表層部のみを高温加熱することができれば、表層部の熱間加工性の向上及びフェライト相の再結晶化を図ることができる一方、内部は表層部ほど高温に達していないので鋼材が軟化し変形するといった不都合を回避することができる。なお、本発明で使用する誘導加熱炉は特に限定されるものではなく、上記機構を備えたものであれば如何なる形態を有するものであっても構わない。
【0022】
この誘導加熱炉2では、フェライト系ステンレス鋼片をその表層部温度が1100〜1300℃の温度範囲となるように加熱することが好ましく、更には、1150〜1300℃の温度範囲となるように加熱することがより好ましい。鋼材の表層部温度が1100℃未満であると、表層部の再結晶化が十分に促進されず、圧延時において表層部に加工歪が発生し粗粒化を引き起こすため好ましくない。一方、鋼材の表層部温度が1300℃を超えると、鋼材の軟化が起こり、その結果、粗圧延の際に座屈(反り)が生じて圧延ロールが噛み込み不能となる、いわゆるミスロールの原因となるため好ましくない。
【0023】
また、この誘導加熱炉2には、フェライト系ステンレス鋼材をその長手方向に揺動可能とする揺動機構を備えたものであることが好ましい。ここで長手方向に揺動とは、圧延工程の進行方向に対して前後に揺動するという意味である。この揺動機構を備えることにより、鋼材の加熱状態が均一となる。すなわち、加熱するフェライト系ステンレス鋼材の長手方向の均一加熱が達成できるように上記揺動機構は適宜変更可能である。
【0024】
粗列圧延機3、中間列圧延機4及び仕上列圧延機6は、上述の誘導加熱炉内より搬出されたフェライト系ステンレス鋼材を粗圧延、中間圧延及び仕上圧延するものであり、2ロール型、3ロール型、4ロール型など、希望する圧延形状に応じて種々のタイプのものが適用可能であり、圧延スタンド基数も圧延スケジュール等に応じて適宜変更可能である。なお、中間列圧延機4は、本発明の必須の構成要件ではなく、配設されていなくても良い。
【0025】
ここで、仕上列圧延機6によってフェライト系ステンレス鋼材が仕上圧延される際に、鋼材表層部の温度が850〜1000℃の範囲にあることが好ましく、更には、850〜950℃の範囲にあることが好ましい。鋼材の表層部温度が850℃未満であると、ワレ、ヘゲが発生してしまうという問題があり、一方、鋼材表層部の温度が1000℃を超えると、鋼材の軟化が起こり、その結果、仕上圧延の際に座屈(反り)が生じて圧延不能(ミスロール)の原因となるため好ましくない。
【0026】
鋼材を冷却するための温度調節手段5は、フェライト系ステンレス鋼材を仕上圧延する際に、鋼材が座屈しないように鋼材表層部の温度を制御する役割を担う。温度制御手段としては水冷による温度制御が好ましい。
【0027】
上記加熱設備及び粗圧延機によって熱間圧延されるフェライト系ステンレス鋼材は、0.12重量%以下のC、11.0〜27.5重量%のCr、及び必要に応じて強化元素であるMo等又は快削性元素であるS、Pb、Te等を含有するステンレス鋼からなるものであり、SUS405、SUS410L、SUS430,SUS430F、SUS434、SUSXM27等が代表的なものとして挙げられる。フェライト系ステンレス鋼材は、板状、線状、棒状等いかなる形状を有するものであっても良い。
【0028】
【実施例】
本発明の効果を、実施例により具体的に説明する。
【0029】
本実施例における熱間圧延設備は、上流側より、ウォーキングビーム炉、誘電加熱炉、粗圧延機、中間圧延機、冷却装置、及び仕上圧延機を順に配設してなる。圧延に用いるフェライト系ステンレス鋼片としては、SUS430(C:0.06重量%、Cr:16.8重量%)鋼材を用いた。また、この鋼片の寸法は、150mm角、長さ11.5mとした。
【0030】
上記熱間圧延設備を経て得られたフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延製品の評価としては、圧延製品表層部の粗粒発生率の評価、仕上圧延時の鋼材の座屈発生率の評価を行った。
【0031】
(熱間圧延製品表層部の粗粒発生率の評価)
粗粒発生率の評価は、熱間圧延製品を熱処理したものを試料とし、その断面組織を顕微鏡を用いて観察し、断面表層部と内部のフェライト相の平均粒子径を比較することにより行った。具体的には、表層部のフェライト相の平均粒子径が内部のものと比較して3倍未満の大きさである場合には表層部は粗粒化していないとしてと判断し、表層部のフェライト相の粒子径が内部のものと比較して3倍以上の大きさである場合には表層部は粗粒化していると判断した。以上の判断を基に、熱間圧延製品表層部の粗粒発生率を算出した。なお、この評価試験は各試験条件(実施例及び比較例)について50試料ずつ行った。
【0032】
(仕上圧延時の鋼材の座屈発生率の評価)
座屈発生率の評価は、仕上圧延の圧延ロールに噛み込み不能となる鋼材の発生率を測定することにより行った。なお、この評価試験は各試験条件(実施例及び比較例)について50試料ずつ行った。
【0033】
(実施例1)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼片をウォーキングビーム(WB)炉内において鋼材の表層部温度が1050℃となるように温度制御して1時間加熱した後、揺動機構を備えた誘導加熱炉に挿入して急速加熱を行った。
誘導加熱炉では、表層部温度を1200℃まで昇温すると共に鋼材を長手方向に揺動しながら90秒間炉内に挿置した。次いで、誘導加熱炉から鋼材を搬出し、粗圧延機、仕上圧延機を通して熱間圧延製品を製造した。なお、中間列圧延と仕上列圧延との中間工程として水冷却装置による鋼材の冷却を行い、仕上圧延機を通過する際の鋼材の表層部温度が950℃となるように温度調節した。
【0034】
(実施例2〜4)
上記実施例1と同様に、ウォーキングビーム炉及び誘導加熱炉での保持時間は一定とし、加熱温度を表1に示す温度に制御して、粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機を通して熱間圧延製品を得た。なお、中間列圧延と仕上列圧延との中間工程として水冷却装置による鋼材の冷却を行い仕上圧延機を通過する際の鋼材の表層部温度が表1の温度となるように温度調節した。
【0035】
(比較例1)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼片をウォーキングビーム炉内において鋼材の表層部温度が1050℃となるように温度制御して1時間加熱した後、鋼材を搬出し、次いで、誘導加熱炉で1100℃まで急速に昇温加熱し、その温度に60秒間保持した後鋼材を抽出し、粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機を通して熱間圧延製品を製造した。
【0036】
(比較例2)
上記比較例1と同様に、ウォーキングビーム炉で1200℃に加熱し、誘導加熱炉で揺動しながら1350℃に昇温加熱しその温度で90秒間保持した後鋼材を抽出した。
【0037】
(比較例3及び4)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼片をウォーキングビーム炉内において鋼材の表層部温度が表1の温度となるように温度制御して1時間加熱した後、鋼材を搬出し、粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機を通して熱間圧延製品を作製した。なお、中間列圧延と仕上列圧延との中間工程として水冷却装置による鋼材の冷却を行い仕上圧延機を通過する際の鋼材の表層部温度が表1の温度となるように温度調節した。
【0038】
表1に実施例品及び比較例品の評価結果を示す。なお、表1における加熱温度は、加熱により達成されるフェライト系ステンレス鋼片の表面温度を指す。表1より、実施例に係る熱間圧延製品は、表層部の粗粒発生率を調べた結果、粗粒の発生が見られず表層部及び内部ともに均質に整粒化されていた。また、仕上圧延前の水冷却によって鋼材表層部の温度が850〜1000℃に制御されたことにより、仕上圧延時に鋼材の座屈は発生せず、表面性状の良好な熱間圧延製品が得られた。
【0039】
一方、比較例に係る熱間圧延製品について見てみると、比較例1では、鋼材表層部での粗粒化は認められなかったものの、仕上圧延時に鋼材の座屈が生じ(座屈発生率:30%)、また、座屈しなかった試料においてはワレ、ヘゲが多数発生した。仕上圧延時に座屈が認められたのは、仕上圧延工程に入る前に鋼材を冷却する冷却しなかったことにより鋼材の温度が軟化温度域以下まで下がりきれなかったことが原因と考えられ、ワレ、ヘゲが発生したのは、誘導加熱炉での加熱保持時間が短かったため圧延前に鋼材表層部の熱間加工性を十分に高くすることができなかったことが原因と考えられる。
【0040】
比較例2では、誘導加熱炉での加熱温度が高すぎたため鋼材が軟化し、粗圧延時に座屈が起こり粗圧延することができなかった。
【0041】
比較例3では、仕上圧延前の冷却により仕上圧延時の鋼材表層部の温度が950℃に抑えられたため座屈は発生しなかったが、得られた熱間圧延製品の表層部にはフェライト相の粗粒が発生していた(粗粒発生率:80%)。粗粒化が生じたのは、加熱工程及び粗圧延工程を通して再結晶温度域に保持されていた鋼材の表層部温度が仕上圧延前の冷却によって再結晶温度域以下に下げられたためフェライト相の再結晶化が停止してしまい、表層部が十分に再結晶化しない状態で鋼材が仕上圧延されたことが原因と考えられる。
【0042】
比較例4は、比較例3と同様に理由により表層部のフェライト相が完全に粗粒化(粗粒発生率:100%)しており、さらに仕上圧延時の鋼材表層部の温度が700℃と低すぎたために鋼材表層部に多数のワレ、ヘゲが発生した。
【0043】
【表1】
【0044】
以上の結果より、実施例1〜4に係る熱間圧延製品は、表層部にフェライト相の粗粒が発生することがなく優れた表面性状を有しており、また、仕上圧延時に鋼材が座屈することがないため円滑な熱間圧延を実現することができた。
【0045】
以上、実施例について説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、上記実施例では、連続式加熱炉としてウォーキングビーム炉を用いたが、これに限られるものではない。また誘導加熱炉は、均一加熱を実現するため揺動式としたが、被加熱体の長さ等に応じて均一加熱を達成できる場合には揺動機構は備えられていなくても構わない。また、上記実施例における熱間圧延方法では、粗圧延工程、仕上圧延工程の順にフェライト系ステンレス鋼材の圧延を行ったが、両工程間に中間圧延の工程が備えられていても良い。
【0046】
【発明の効果】
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法によれば、圧延工程前に鋼材表層部のフェライト相が再結晶化されるので、圧延工程において鋼材表層部の温度が再結晶温度域未満であったとしても鋼材表層部に圧延による加工歪が蓄積されることはなく、フェライト相の粗粒化を効果的に抑制することができると共に表面性状に優れた熱間圧延製品を提供することができるという効果がある。また、仕上圧延時の鋼材表層部の温度が850〜1000℃の範囲となるように温度調節されるので、仕上圧延時の鋼材の座屈が抑えられ、良好な熱間圧延を実現することができると共に熱間圧延工程の生産能率を高めることができるという効果がある。
【0047】
また、フェライト系ステンレス鋼材が連続式加熱炉にてその表層部の温度が1000〜1200℃の温度範囲となるように加熱されるので、加熱時の鋼材の垂れが抑えられ、その後の円滑な搬送作業及び圧延作業を実現することができるという効果がある。
【0048】
また、誘導加熱炉にて鋼材表層部の温度が1000〜1300℃の温度範囲となるように急速加熱し、また、誘導加熱炉で鋼材を加熱するに際し、その表層部が再結晶温度域となる温度に少なくとも90秒間保持することにより、鋼材表層部のフェライト相の再結晶化が十分に促進され、圧延工程における鋼材表層部での加工歪の蓄積ならびにフェライト相の粗粒化を効果的に抑制することができるという効果がある。
【0049】
また、フェライト系ステンレス鋼材の急速加熱を行う誘導加熱炉を、鋼材を圧延方向全長に亘って均一加熱するためこの鋼材をその長手方向に揺動させるものとすることにより、加熱が不十分となりがちな鋼材端部も内側部分と同等に加熱されることとなるため、鋼材長が炉長と同程度となるような長尺物であっても均一加熱を達成することができる。その結果、従来加熱不十分により捨て材となっていた鋼材端部も有効活用することができ歩留り向上となり、熱間圧延工程全体の生産能率の向上ならびに熱間圧延製品の生産コストの低減を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施の形態に係る熱間圧延設備を示したものである。
【符号の説明】
1 連続式加熱炉
2 誘導加熱炉
3 粗列圧延機
4 中間列圧延機
5 温度制御装置
6 仕上列圧延機
Claims (6)
- フェライト相を主成分とするフェライト系ステンレス鋼材を連続式加熱炉にて加熱しその後粗列圧延及び仕上列圧延を介して熱間圧延するフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法において、
前記連続式加熱炉にて加熱された鋼材を前記粗列圧延機の入側に設けた誘導加熱炉内でその表層部の温度がフェライト相の再結晶温度域に達するように昇温し急速加熱する工程と、
前記熱間圧延工程の仕上列圧延をする際の鋼材表層部の温度が850〜1000℃の温度範囲となるように前記粗列圧延と前記仕上列圧延との中間工程としてこの表層部を温度制御することを特徴とするフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法。 - 前記連続式加熱炉において、鋼材をその表面温度が1000〜1200℃の温度範囲となるように加熱してなることを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法。
- 前記再結晶温度域が、1100〜1300℃の温度範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法。
- 前記誘導加熱炉で鋼材を加熱するに際し、その表層部が再結晶温度域となる温度に少なくとも90秒間保持することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法。
- 前記粗列圧延と前記仕上列圧延との中間工程として行う温度調節が、水冷によるものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法。
- 前記誘導加熱炉が、前記フェライト系ステンレス鋼片を圧延方向全長に亘って均一加熱するためこの鋼材をその長手方向に揺動することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延方法。
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