JP2004167439A - 重金属汚染土壌浄化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】重金属汚染土壌の重金属を土壌から効率よく分離する方法を提供する。
【解決手段】土壌浄化の工程に、土壌中に含有される重金属類を重金属抽出用液を用いて抽出する工程と、土壌中の炭素含有成分を分別する工程とを含める。
【選択図】 なし
【解決手段】土壌浄化の工程に、土壌中に含有される重金属類を重金属抽出用液を用いて抽出する工程と、土壌中の炭素含有成分を分別する工程とを含める。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は重金属汚染土壌浄化方法に関する。更に詳しくは、重金属類を含んだ土壌から重金属類を効率的に除去する、重金属汚染土壌浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
市街地再開発による調査の増加に伴い、工場跡地等の重金属汚染が判明する事例が増加している。土壌環境基準では、カドミウム、鉛、水銀などについて溶出量としての基準値が定められ、また一部の重金属類については含有量参考値が定められている。
【0003】
平成14年の土壌汚染対策法の成立により、かかる土壌汚染に対する法制度が整備され、汚染の除去等の処置の事例が今後大幅に増加することが予測される。
【0004】
土壌の重金属汚染に対して、現在の国内で行われている汚染対策は、不溶化処理、覆土工事、遮水工事など、周辺環境を汚染源から遮断する方法が一般的であるが、これらの方法は重金属類を現場に残したままであることから、環境の変化により再溶出して汚染を引き起こす危険性が残る上、希少資源の節約の観点からも好ましい方法とはいえない。
【0005】
さらに、重金属類が自然含有量よりも遥かに多い土壌が存在する限り、溶出量を基準とした環境基準を満足する処理を行っても、かかる土地の資産価値が損なわれる可能性が存在する。
【0006】
かかる観点から、欧米で実用化されつつある土壌洗浄法の導入が検討されている。
【0007】
土壌洗浄法は、土壌に抽出剤を用いて汚染物質を物理的および/または化学的に土壌から抽出分離する方法である。重金属類汚染土壌に対しては、抽出剤として水、酸水溶液、アルカリ水溶液、キレート剤溶液などを用いる方法が提案されている(たとえば特許文献1,2参照。)。
【0008】
しかしながら、実際の汚染土壌に対して土壌洗浄法を試みた場合、汚染状況によっては、抽出剤で洗浄を繰り返しても依然として対象汚染物質が残存し、完全な浄化土壌が得られない場合があるという問題点があった。
【0009】
【特許文献1】
特開昭52−72368号公報(特許請求の範囲)
【0010】
【特許文献1】
特表平7−507960号公報(特許請求の範囲)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を解決するものであり、重金属類汚染土壌から重金属類を実質的に土壌中に残存しない程度にまで抽出することを可能にする方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、実際の土壌にしばしば含まれる炭素含有成分が重金属類汚染土壌の抽出を妨げていることに着目し、鋭意検討を重ねた結果、炭素含有成分を分離する工程を加えることによって効率よく土壌の抽出ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の一態様によれば、重金属汚染土壌中の重金属類を抽出して低減する重金属汚染土壌浄化方法において、炭素含有成分を分離する工程を含む重金属汚染土壌浄化方法が提供される。
【0015】
炭素含有成分を分離する工程を含めることにより、重金属類を含んだ土壌から重金属類を効率的に分離除去することができ、重金属類が実質的に残存しない程度まで浄化された土壌を得ることが可能になる。
【0016】
下記工程(a)〜(d)を含むことが好ましい。
【0017】
(a)汚染土壌と重金属抽出用液とを撹拌混合し、重金属類を抽出する工程。
【0018】
(b)重金属類抽出後の土壌と重金属類を含む重金属抽出液とを固液分離する工程。
【0019】
(c)重金属類を含む重金属抽出液から重金属類を分離する工程。
【0020】
(d)工程(a)〜(c)の処理前または処理中または処理後の土壌から、炭素含有成分を分離する工程。
【0021】
また、工程(a)に用いる重金属抽出用液が酸水溶液であること、酸水溶液が塩酸水溶液であること、工程(d)の分離を比重選別により行うこと、が好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0023】
本発明に係る重金属汚染土壌浄化方法では、炭素含有成分を分離する工程を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明に係る重金属汚染土壌浄化方法において対象とする土壌は、重金属類が、イオン、酸化物、水酸化物などの状態で含有されており、これらによって汚染されているものである。このような土壌は炭素含有成分を含有することが多く、本発明に係る重金属汚染土壌浄化方法は有用である。
【0025】
なお、本発明に係る重金属汚染土壌浄化方法は、炭素含有成分を含有しない土壌について実行しても、害がなく、事前に炭素含有成分を含有するか否かを確認する必要はない。むしろ、炭素含有成分の含有の有無に拘わらず本発明に係る重金属汚染土壌浄化方法を実行することは、重金属汚染土壌の浄化を確実に行う上で好ましいとも言える。すなわち、土壌中の炭素含有成分の有無は本発明の範囲を制限するものではない。
【0026】
炭素含有成分の例としては、燃え殻、活性炭、木片、木屑、動植物の遺骸およびその腐敗物等が挙げられるが、これらに限定されない。むしろ、本発明に係る炭素含有成分分離工程を実施した結果、土壌中の重金属含有量を低減できた場合には、炭素含有成分が存在したためであると考えれば十分である。
【0027】
炭素含有成分を分離する方法としては、炭素含有成分の比重が無機質を主体とする土壌の比重よりも小さいことを利用した、比重選別原理による方法が好ましく、分離に用いる装置としては、重液選別装置、ジグ選別装置、風力分級装置および水力分級装置等を用いることができる。
【0028】
本発明は、より具体的には、上記工程(a)〜(d)を含む。工程(a)〜(c)はこの順序に行えばよい。ただし、他の工程が介在してもよい。工程(d)は、工程(a)〜(c)の処理前でも、処理途中でも、または処理後でも良い。工程(a)〜(d)はそれぞれ複数回実施してもよく、その際の各工程の条件は同一でも異なっていても良い。
【0029】
以下、本発明の浄化方法について図面をもって具体的に例示して説明する。
【0030】
図1は、本発明の浄化方法における実施態様の一例を模式的に示した概略図であって、図1中、処理対象の土壌は、そのまま用いるか、粉砕機などを用いて微細な粒子となし、経路6より抽出装置1に送られる。抽出装置1では、処理対象土壌に重金属抽出用液を添加した後、撹拌または振盪によって土壌粒子から金属イオンが抽出される。
【0031】
ここで処理対象土壌を微細な粒子とする粉砕機としては、既存の粉砕機を用いればよく、たとえば、高速回転式衝撃粉砕機、自生粉砕機、ボールミル等を挙げることができる。また、重金属抽出用液としては酸水溶液、アルカリ水溶液、キレート剤溶液等、公知の抽出剤を用いることができる。その中でも酸水溶液が好ましく、塩酸水溶液がさらに好ましい。一般的に重金属類の抽出効率が高いからである。
【0032】
抽出装置1で重金属類を抽出した後、土壌と重金属抽出液との混合物は経路7を通して、固液分離装置2に供給され、そこで固形分が分離される。
【0033】
固液分離装置2としては、一般に用いられている遠心ろ過機、ドラムフィルター、ヤングフィルター、フィルタープレス、ベルトプレスなどを用いることができる。分離された固形分に残る残液中の重金属類イオンをさらに分離するため、固液分離後に酸や水による洗浄や固液分離を繰り返し実施してもよい。
【0034】
この段階で、重金属類の大部分が重金属抽出用液により液側に移行しているが、一部は固形分である土壌中に残存する。その理由は、汚染土壌に含有される炭素含有成分が、キレート様作用により重金属類と強固な結合をなし、このため、重金属抽出用液を用いても炭素含有成分と結合している重金属類が重金属抽出用液に移行しないためであると推測される。
【0035】
分離された固形分は経路8を経て炭素含有成分分離装置3に送られる。この例では、炭素含有成分分離装置3として、水を媒体とする水力分級装置を使用するものとする。炭素含有成分分離装置3で分離された炭素含有成分は外部に排出される。水力分級に使用した水と土壌との混合物は、経路9を経て、固液分離装置4に送られ、そこで経路11を経て浄化された土壌が取り出される。固液分離装置4で回収された水は、重金属類の含有量が十分低ければそのまま排出することも可能であるが、経路12を介して、再度炭素含有成分分離装置3で使用することも可能である。重金属類の含有量が高い場合は重金属分離装置5に供することも可能である。
【0036】
固液分離装置2で分離された液は、経路10を介して重金属分離装置5に送られ、重金属類を分離し、浄化された排水は経路13を経て排出される。重金属分離の方法は公知のどのような方法でも良い。中和沈澱法、鉄共沈法、吸着法、浮選法等を例示することができる。
【0037】
なお、炭素含有成分の分離は、これらの工程の後に実施しても、途中で実施しても、前に実施しても良い。これらの工程の前に実施する場合の実施態様の一例を模式的に示した概略図を図2に示す。
【0038】
図2中、処理対象の土壌は、図1の場合と同様、そのまま用いるか、粉砕機などを用いて微細な粒子となし、経路26より炭素含有成分分離装置21に送られる。この例でも、炭素含有成分分離装置21として、水を媒体とする水力分級装置を使用するものとする。炭素含有成分分離装置21で分離された炭素含有成分は外部に排出される。水力分級に使用した水と土壌との混合物は、経路27を経て、固液分離装置22に送られ、そこで固形分が分離される。固液分離装置22で回収された水は、重金属類の含有量が十分低ければそのまま排出することも可能であるが、経路28を介して、再度炭素含有成分分離装置23で使用することも可能である。重金属類の含有量が高い場合は重金属分離装置25に供することも可能である。
【0039】
固液分離装置22で分離された固形分は、経路29を経て、抽出装置23により、重金属類が抽出される。重金属抽出液と固形分と混合物は経路30を経て、固液分離装置24で、浄化土壌を固形分として分離する。分離された液体は経路31を経て、重金属分離装置25に至り、そこで重金属が分離される。
【0040】
炭素含有成分を分離した浄化土壌に残存する重金属類をさらに抽出し分離するため、浄化後に酸や水による抽出および固液分離を繰り返し実施してもよい。
【0041】
【実施例】
以下実施例により本発明の内容をさらに具体的に説明する。なお、実施例に示される土壌中のカドミウム含量は、該土壌を乾燥後、硫酸−フッ化水素酸加熱により分解・水溶液化し、得られた水溶液中のカドミウムを原子吸光光度計(日立製作所製、Z−8100)を用いて求め、土壌中含量に換算して求めた。
【0042】
[実施例1]
カドミウム297重量ppmを含有し、廃棄された活性炭を主たる炭素含有成分として含有する乾燥汚染土壌10gに濃塩酸50gを加え24時間撹拌後、吸引ろ過により固液分離して固形分20gと抽出水40gとに分離した。固形分に1規定の塩酸水溶液40gを加え2時間撹拌抽出し、吸引ろ過する抽出操作を6回繰り返して、濾液にカドミウムが検出できなくなるまで塩酸抽出を行った。得られた抽出土壌のカドミウム含量を測定したところ、0.62重量ppmのカドミウムが残存していた。
【0043】
この抽出土壌5gに比重2.5のジブロモメタン重液を加えて撹拌し、1時間静置した。浮遊成分を採取し、水で抽出した後乾燥させ、活性炭に富む炭素含有成分1.4gを分離した。浮遊成分を除いた部分をろ過し、水で抽出後乾燥させ、浄化土壌3.6gを得た。この浄化土壌のカドミウム含量を測定したところ、0.1重量ppm未満であり、カドミウムが実質的に残存していない浄化された土壌であった。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、重金属類を含んだ土壌から重金属類を効率的に分離除去することができ、重金属類が実質的に残存しない程度まで浄化された土壌を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様を示すプロセス概略図である。
【図2】本発明の別の一実施態様を示すプロセス概略図である。
【符号の説明】
1 抽出装置
2 固液分離装置
3 炭素含有成分分離装置
4 固液分離装置
5 排水処理・重金属分離装置
6〜13 経路
21 炭素含有成分分離装置
22 固液分離装置
23 抽出装置
24 固液分離装置
25 排水処理・重金属分離装置
26〜33 経路
【発明の属する技術分野】
本発明は重金属汚染土壌浄化方法に関する。更に詳しくは、重金属類を含んだ土壌から重金属類を効率的に除去する、重金属汚染土壌浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
市街地再開発による調査の増加に伴い、工場跡地等の重金属汚染が判明する事例が増加している。土壌環境基準では、カドミウム、鉛、水銀などについて溶出量としての基準値が定められ、また一部の重金属類については含有量参考値が定められている。
【0003】
平成14年の土壌汚染対策法の成立により、かかる土壌汚染に対する法制度が整備され、汚染の除去等の処置の事例が今後大幅に増加することが予測される。
【0004】
土壌の重金属汚染に対して、現在の国内で行われている汚染対策は、不溶化処理、覆土工事、遮水工事など、周辺環境を汚染源から遮断する方法が一般的であるが、これらの方法は重金属類を現場に残したままであることから、環境の変化により再溶出して汚染を引き起こす危険性が残る上、希少資源の節約の観点からも好ましい方法とはいえない。
【0005】
さらに、重金属類が自然含有量よりも遥かに多い土壌が存在する限り、溶出量を基準とした環境基準を満足する処理を行っても、かかる土地の資産価値が損なわれる可能性が存在する。
【0006】
かかる観点から、欧米で実用化されつつある土壌洗浄法の導入が検討されている。
【0007】
土壌洗浄法は、土壌に抽出剤を用いて汚染物質を物理的および/または化学的に土壌から抽出分離する方法である。重金属類汚染土壌に対しては、抽出剤として水、酸水溶液、アルカリ水溶液、キレート剤溶液などを用いる方法が提案されている(たとえば特許文献1,2参照。)。
【0008】
しかしながら、実際の汚染土壌に対して土壌洗浄法を試みた場合、汚染状況によっては、抽出剤で洗浄を繰り返しても依然として対象汚染物質が残存し、完全な浄化土壌が得られない場合があるという問題点があった。
【0009】
【特許文献1】
特開昭52−72368号公報(特許請求の範囲)
【0010】
【特許文献1】
特表平7−507960号公報(特許請求の範囲)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を解決するものであり、重金属類汚染土壌から重金属類を実質的に土壌中に残存しない程度にまで抽出することを可能にする方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、実際の土壌にしばしば含まれる炭素含有成分が重金属類汚染土壌の抽出を妨げていることに着目し、鋭意検討を重ねた結果、炭素含有成分を分離する工程を加えることによって効率よく土壌の抽出ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の一態様によれば、重金属汚染土壌中の重金属類を抽出して低減する重金属汚染土壌浄化方法において、炭素含有成分を分離する工程を含む重金属汚染土壌浄化方法が提供される。
【0015】
炭素含有成分を分離する工程を含めることにより、重金属類を含んだ土壌から重金属類を効率的に分離除去することができ、重金属類が実質的に残存しない程度まで浄化された土壌を得ることが可能になる。
【0016】
下記工程(a)〜(d)を含むことが好ましい。
【0017】
(a)汚染土壌と重金属抽出用液とを撹拌混合し、重金属類を抽出する工程。
【0018】
(b)重金属類抽出後の土壌と重金属類を含む重金属抽出液とを固液分離する工程。
【0019】
(c)重金属類を含む重金属抽出液から重金属類を分離する工程。
【0020】
(d)工程(a)〜(c)の処理前または処理中または処理後の土壌から、炭素含有成分を分離する工程。
【0021】
また、工程(a)に用いる重金属抽出用液が酸水溶液であること、酸水溶液が塩酸水溶液であること、工程(d)の分離を比重選別により行うこと、が好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0023】
本発明に係る重金属汚染土壌浄化方法では、炭素含有成分を分離する工程を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明に係る重金属汚染土壌浄化方法において対象とする土壌は、重金属類が、イオン、酸化物、水酸化物などの状態で含有されており、これらによって汚染されているものである。このような土壌は炭素含有成分を含有することが多く、本発明に係る重金属汚染土壌浄化方法は有用である。
【0025】
なお、本発明に係る重金属汚染土壌浄化方法は、炭素含有成分を含有しない土壌について実行しても、害がなく、事前に炭素含有成分を含有するか否かを確認する必要はない。むしろ、炭素含有成分の含有の有無に拘わらず本発明に係る重金属汚染土壌浄化方法を実行することは、重金属汚染土壌の浄化を確実に行う上で好ましいとも言える。すなわち、土壌中の炭素含有成分の有無は本発明の範囲を制限するものではない。
【0026】
炭素含有成分の例としては、燃え殻、活性炭、木片、木屑、動植物の遺骸およびその腐敗物等が挙げられるが、これらに限定されない。むしろ、本発明に係る炭素含有成分分離工程を実施した結果、土壌中の重金属含有量を低減できた場合には、炭素含有成分が存在したためであると考えれば十分である。
【0027】
炭素含有成分を分離する方法としては、炭素含有成分の比重が無機質を主体とする土壌の比重よりも小さいことを利用した、比重選別原理による方法が好ましく、分離に用いる装置としては、重液選別装置、ジグ選別装置、風力分級装置および水力分級装置等を用いることができる。
【0028】
本発明は、より具体的には、上記工程(a)〜(d)を含む。工程(a)〜(c)はこの順序に行えばよい。ただし、他の工程が介在してもよい。工程(d)は、工程(a)〜(c)の処理前でも、処理途中でも、または処理後でも良い。工程(a)〜(d)はそれぞれ複数回実施してもよく、その際の各工程の条件は同一でも異なっていても良い。
【0029】
以下、本発明の浄化方法について図面をもって具体的に例示して説明する。
【0030】
図1は、本発明の浄化方法における実施態様の一例を模式的に示した概略図であって、図1中、処理対象の土壌は、そのまま用いるか、粉砕機などを用いて微細な粒子となし、経路6より抽出装置1に送られる。抽出装置1では、処理対象土壌に重金属抽出用液を添加した後、撹拌または振盪によって土壌粒子から金属イオンが抽出される。
【0031】
ここで処理対象土壌を微細な粒子とする粉砕機としては、既存の粉砕機を用いればよく、たとえば、高速回転式衝撃粉砕機、自生粉砕機、ボールミル等を挙げることができる。また、重金属抽出用液としては酸水溶液、アルカリ水溶液、キレート剤溶液等、公知の抽出剤を用いることができる。その中でも酸水溶液が好ましく、塩酸水溶液がさらに好ましい。一般的に重金属類の抽出効率が高いからである。
【0032】
抽出装置1で重金属類を抽出した後、土壌と重金属抽出液との混合物は経路7を通して、固液分離装置2に供給され、そこで固形分が分離される。
【0033】
固液分離装置2としては、一般に用いられている遠心ろ過機、ドラムフィルター、ヤングフィルター、フィルタープレス、ベルトプレスなどを用いることができる。分離された固形分に残る残液中の重金属類イオンをさらに分離するため、固液分離後に酸や水による洗浄や固液分離を繰り返し実施してもよい。
【0034】
この段階で、重金属類の大部分が重金属抽出用液により液側に移行しているが、一部は固形分である土壌中に残存する。その理由は、汚染土壌に含有される炭素含有成分が、キレート様作用により重金属類と強固な結合をなし、このため、重金属抽出用液を用いても炭素含有成分と結合している重金属類が重金属抽出用液に移行しないためであると推測される。
【0035】
分離された固形分は経路8を経て炭素含有成分分離装置3に送られる。この例では、炭素含有成分分離装置3として、水を媒体とする水力分級装置を使用するものとする。炭素含有成分分離装置3で分離された炭素含有成分は外部に排出される。水力分級に使用した水と土壌との混合物は、経路9を経て、固液分離装置4に送られ、そこで経路11を経て浄化された土壌が取り出される。固液分離装置4で回収された水は、重金属類の含有量が十分低ければそのまま排出することも可能であるが、経路12を介して、再度炭素含有成分分離装置3で使用することも可能である。重金属類の含有量が高い場合は重金属分離装置5に供することも可能である。
【0036】
固液分離装置2で分離された液は、経路10を介して重金属分離装置5に送られ、重金属類を分離し、浄化された排水は経路13を経て排出される。重金属分離の方法は公知のどのような方法でも良い。中和沈澱法、鉄共沈法、吸着法、浮選法等を例示することができる。
【0037】
なお、炭素含有成分の分離は、これらの工程の後に実施しても、途中で実施しても、前に実施しても良い。これらの工程の前に実施する場合の実施態様の一例を模式的に示した概略図を図2に示す。
【0038】
図2中、処理対象の土壌は、図1の場合と同様、そのまま用いるか、粉砕機などを用いて微細な粒子となし、経路26より炭素含有成分分離装置21に送られる。この例でも、炭素含有成分分離装置21として、水を媒体とする水力分級装置を使用するものとする。炭素含有成分分離装置21で分離された炭素含有成分は外部に排出される。水力分級に使用した水と土壌との混合物は、経路27を経て、固液分離装置22に送られ、そこで固形分が分離される。固液分離装置22で回収された水は、重金属類の含有量が十分低ければそのまま排出することも可能であるが、経路28を介して、再度炭素含有成分分離装置23で使用することも可能である。重金属類の含有量が高い場合は重金属分離装置25に供することも可能である。
【0039】
固液分離装置22で分離された固形分は、経路29を経て、抽出装置23により、重金属類が抽出される。重金属抽出液と固形分と混合物は経路30を経て、固液分離装置24で、浄化土壌を固形分として分離する。分離された液体は経路31を経て、重金属分離装置25に至り、そこで重金属が分離される。
【0040】
炭素含有成分を分離した浄化土壌に残存する重金属類をさらに抽出し分離するため、浄化後に酸や水による抽出および固液分離を繰り返し実施してもよい。
【0041】
【実施例】
以下実施例により本発明の内容をさらに具体的に説明する。なお、実施例に示される土壌中のカドミウム含量は、該土壌を乾燥後、硫酸−フッ化水素酸加熱により分解・水溶液化し、得られた水溶液中のカドミウムを原子吸光光度計(日立製作所製、Z−8100)を用いて求め、土壌中含量に換算して求めた。
【0042】
[実施例1]
カドミウム297重量ppmを含有し、廃棄された活性炭を主たる炭素含有成分として含有する乾燥汚染土壌10gに濃塩酸50gを加え24時間撹拌後、吸引ろ過により固液分離して固形分20gと抽出水40gとに分離した。固形分に1規定の塩酸水溶液40gを加え2時間撹拌抽出し、吸引ろ過する抽出操作を6回繰り返して、濾液にカドミウムが検出できなくなるまで塩酸抽出を行った。得られた抽出土壌のカドミウム含量を測定したところ、0.62重量ppmのカドミウムが残存していた。
【0043】
この抽出土壌5gに比重2.5のジブロモメタン重液を加えて撹拌し、1時間静置した。浮遊成分を採取し、水で抽出した後乾燥させ、活性炭に富む炭素含有成分1.4gを分離した。浮遊成分を除いた部分をろ過し、水で抽出後乾燥させ、浄化土壌3.6gを得た。この浄化土壌のカドミウム含量を測定したところ、0.1重量ppm未満であり、カドミウムが実質的に残存していない浄化された土壌であった。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、重金属類を含んだ土壌から重金属類を効率的に分離除去することができ、重金属類が実質的に残存しない程度まで浄化された土壌を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様を示すプロセス概略図である。
【図2】本発明の別の一実施態様を示すプロセス概略図である。
【符号の説明】
1 抽出装置
2 固液分離装置
3 炭素含有成分分離装置
4 固液分離装置
5 排水処理・重金属分離装置
6〜13 経路
21 炭素含有成分分離装置
22 固液分離装置
23 抽出装置
24 固液分離装置
25 排水処理・重金属分離装置
26〜33 経路
Claims (5)
- 重金属汚染土壌中の重金属類を抽出して低減する重金属汚染土壌浄化方法において、炭素含有成分を分離する工程を含む重金属汚染土壌浄化方法。
- 下記工程(a)〜(d)を含む、請求項1に記載の重金属汚染土壌浄化方法。
(a)汚染土壌と重金属抽出用液とを撹拌混合し、重金属類を抽出する工程。
(b)重金属類抽出後の土壌と重金属類を含む重金属抽出液とを固液分離する工程。
(c)重金属類を含む重金属抽出液から重金属類を分離する工程。
(d)工程(a)〜(c)の処理前または処理中または処理後の土壌から、炭素含有成分を分離する工程。 - 工程(a)に用いる重金属抽出用液が酸水溶液である、請求項2に記載の重金属汚染土壌浄化方法。
- 酸水溶液が塩酸水溶液である、請求項3に記載の重金属汚染土壌浄化方法。
- 工程(d)の分離を比重選別により行う、請求項2〜4のいずれかに記載の重金属汚染土壌浄化方法。
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JP2010201385A (ja) * | 2009-03-05 | 2010-09-16 | Taiheiyo Cement Corp | 重金属含有畑地土壌の浄化方法 |
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- 2002-11-22 JP JP2002338737A patent/JP2004167439A/ja active Pending
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