JP2004165047A - 膜電極接合体、及びそれを用いた燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】カソード側で発生する水を効率よくアノード側に移動させることができ、アノード側に供給される水素を加湿しなくともアノード側が水不足にならない膜電極接合体、及びそれを用いた燃料電池の提供。
【解決手段】陽イオン交換樹脂膜の両面にアノード電極とカソード電極が接合された固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体において、陽イオン交換樹脂膜は、アノード電極側に配置される陽イオン交換樹脂(A)と、カソード電極側に配置される陽イオン交換樹脂膜(B)との2つの膜部材から構成され、且つ、各膜部材中における酸基濃度値(酸基1個あたりの陽イオン交換樹脂の分子量)は、(A)、(B)中における酸基濃度値をそれぞれa、bとすると、下記の式(1)に示す関係を満足することを特徴とする膜電極接合体により提供。
b>a (1)
【選択図】 図1
【解決手段】陽イオン交換樹脂膜の両面にアノード電極とカソード電極が接合された固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体において、陽イオン交換樹脂膜は、アノード電極側に配置される陽イオン交換樹脂(A)と、カソード電極側に配置される陽イオン交換樹脂膜(B)との2つの膜部材から構成され、且つ、各膜部材中における酸基濃度値(酸基1個あたりの陽イオン交換樹脂の分子量)は、(A)、(B)中における酸基濃度値をそれぞれa、bとすると、下記の式(1)に示す関係を満足することを特徴とする膜電極接合体により提供。
b>a (1)
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、膜電極接合体、及びそれを用いた燃料電池に関し、更に詳しくは、カソード側で発生する水を効率よくアノード側に移動させることができ、アノード側に供給される水素を加湿しなくとも、アノード側が、水不足にならない膜電極接合体、及びそれを用いた燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、燃料電池は、発電効率が高くかつ環境特性に優れているため、社会的に大きな課題となっている環境問題やエネルギー問題の解決に貢献できる次世代の発電装置として注目されている。
燃料電池は、一般にそれを構成する電解質の種類により、リン酸形、溶融炭酸塩型、固体酸化物型、固体高分子型などの幾つかのタイプに分類されるが、中でも、固体高分子形燃料電池(以下、PEFCと略する場合がある)は、他のいずれかのタイプに比べて、装置が小型かつ高出力であるため、小規模オンサイト型発電用、車両パワーソースなどの移動用、または携帯機器用の電源として次世代の燃料電池の主力と位置付けられている。
このように、PEFCは、原理的に優れた長所を有しており、実用化に向けた開発が盛んに行われている。このPEFCでは、燃料として通常、水素を用いる。
水素は、PEFCのアノード側に設置された触媒によりプロトン(水素イオン)と電子に分解される。この内、電子は、外部に供給され、電気として利用され、PEFCのカソード側へと循環される。一方、プロトンはプロトン伝導性膜を通じてカソード側へと移動する。カソード側では、プロトン、循環されてきた電子、及び外部から導入される酸素が触媒により結合され、水が生じる。すなわち、PEFC単体で見れば、PEFCは、水素と酸素から水を作る際に電気を取り出す非常にクリーンなエネルギー源である。
上記したように、プロトンはカソード側に拡散して行くが、その際には電解質膜は、水で十分に膨潤していることが必要である。しかしアノード側に乾いた水素が供給されると、水が蒸発しアノード側の電解質は、十分に水を含まない状態となり、電解質のプロトン伝導性は極端に低下してしまう。このようなことを防ぐ目的で、アノード側に供給される水素は、十分に水を含むように加湿されることが重要であり、このためのシステムが、複雑になるという欠点があった。
【0003】
現在、PEFCにおいて使用れている主なプロトン伝導性膜は、パーフルオロアルキレンを主骨格とし、一部にパーフルオロビニルエーテル側鎖の末端にスルホン酸基を有するフッ素系樹脂系膜である。このようなスルホン化フッ素系樹脂膜としては、例えば、Nafion(登録商標)R膜(Du Pont社製、特許文献1参照)、Dow(登録商標)膜(Dow Chemical社製、特許文献2参照)、Aciplex(登録商標)R膜(旭化成(株)製、特許文献3参照)、Flemion(登録商標)R膜(旭硝子(株)製)等が知られているが、残念なことながら、これらの膜は、いずれもアノード側の水素を加湿しないと、水不足となり、伝導性をおとすという問題点がある。
ところで、上記したように、発電中にはカソード側で水が生成しているので、カソード側で発生した水を速やかにアノード側に拡散させるような水拡散性の高い膜が存在すれば、アノード側の水不足は解消されるはずである。
そのため、こうした問題点を解消した膜の一日も早い出現が待たれていた。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第4,330,654号公報
【特許文献2】
特開平4−366137号公報
【特許文献3】
特開平6−342665号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の固体高分子型燃料電池に用いる電極における問題点に鑑み、カソード側で発生する水を効率よくアノード側に移動させることができ、アノード側に供給される水素を加湿しなくとも、アノード側が、水不足にならない膜電極接合体、及びそれを用いた燃料電池を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、燃料電池用のアノード電極、陽イオン交換樹脂膜及びカソード電極の水分と酸基濃度の関係について鋭意研究を重ねた結果、陽イオン交換樹脂膜を2層とし、さらにアノード電極側の陽イオン交換樹脂膜の酸基濃度をカソード電極側の陽イオン交換樹脂膜の酸基濃度より高めることにより良好な結果が得られることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、陽イオン交換樹脂膜の両面にアノード電極とカソード電極が接合された固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体において、
陽イオン交換樹脂膜は、アノード電極側に配置される陽イオン交換樹脂(A)と、カソード電極側に配置される陽イオン交換樹脂膜(B)との2つの膜部材から構成され、且つ、各膜部材中における酸基濃度値(酸基1個あたりの陽イオン交換樹脂の分子量)は、(A)、(B)中における酸基濃度値をそれぞれa、bとすると、下記の式(1)に示す関係を満足することを特徴とする膜電極接合体が提供される。
b>a (1)
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、上記aとbとの関係は、下記の式(2)を満足することを特徴とする膜電極接合体が提供される。。
2000≧b>800>a≧100 (2)
【0009】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、陽イオン交換樹脂膜(A)は、下記の化学式(1)で表されるスルホン基含有アルコキシシランの低分子量縮合体であることを特徴とする膜電極接合体が提供される。
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R1は炭素数4個以下のアルキル基、R2は炭素原子を1以上有する任意の有機基、R3は炭素原子を1以上有する2価の有機基であり、nは1〜3の整数、mは0〜2の整数を表す。但し、n+m=3である。)
【0012】
さらに、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、上記低分子量縮合体の分子量は、5000以下であることを特徴とする膜電極接合体が提供される。
【0013】
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、陽イオン交換樹脂膜(A)は、厚みが100μm以下の織布又は不織布によって補強されていることを特徴とする膜電極接合体が提供される。
【0014】
本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、陽イオン交換樹脂膜(B)は、スルホン基を含む分子量5000以上のフッ素樹脂であることを特徴とする膜電極接合体が提供される。
【0015】
また、本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、陽イオン交換樹脂膜(B)は、厚みが50μm以下であることを特徴とする膜電極接合体が提供される。
【0016】
また、本発明の第8の発明によれば、第1の発明において、アノード電極に用いられる電解質物質は、陽イオン交換樹脂膜(A)の陽イオン交換樹脂と同一であり、一方、カソード電極に用いられる電解質物質は、陽イオン交換樹脂膜(B)の陽イオン交換樹脂と同一であることを特徴とする膜電極接合体が提供される。
【0017】
さらに、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明に記載の膜電極接合体を用いてなる燃料電池が提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の膜電極接合体、それを用いた燃料電池について項目毎に詳細に説明する。
【0019】
1.固体高分子型燃料電池
一般的にいわれている固体高分子型燃料電池とは、電解質として、陽イオン交換樹脂膜を用いることを特徴とした電池であり、その基本構造は、陽イオン交換樹脂膜の両側に、触媒(代表的には白金)が担持された電極を配置した構造(いわゆる、膜電極接合体)であり、更にその両外側に燃料を供給するための構造を有する一対のセパレーターが配置されている。これを単位セルとして、隣り合う複数セルを相互に連結することで、所望の電力を取り出せるよう構成されている。
【0020】
2.膜電極接合体
本発明に用いる膜電極接合体は、図1に例示すように、陽イオン交換樹脂膜の両面にアノード電極とカソード電極が接合された固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体において、陽イオン交換樹脂膜は、アノード電極側に配置される陽イオン交換樹脂(A)と、カソード電極側に配置される陽イオン交換樹脂膜(B)との2つの膜部材から構成され、且つ、各膜部材中における酸基濃度値(酸基1個あたりの陽イオン交換樹脂の分子量であり、ETと略称することもある。)は、(A)、(B)中における酸基濃度値をそれぞれa、bとすると、下記の式(1)に示す関係を満足することが必要であり、さらに好ましくは下記の式(2)を満足することである。
【0021】
上記の関係を満たすことが必要な理由を図2に示す模式図を用いて、以下に説明する。尚、説明で用いている電解質とは、イオン伝導性を示す物質であり、本発明では、陽イオン交換樹脂膜のことを指している。
図2は、発電中の電解質内の水の分布を示したものである。水の出入り、移動については以下のようである。まず、アノード側から蒸発により多くの水を失う。
また、アノード側からカソード側に向けて電気浸透現象によりプロトンに随伴して水が移動する。よって、アノード側は、水不足に陥りやすい。一方、カソードでは、反応により水が生成する。よってカソード側の水濃度は高くなる。電解質内の酸基は固定されているので、浸透圧の差によってアノード側に向けて水が移動する。この移動速度(拡散速度)が十分でない場合は、アノード側は極端な水不足に陥り発電が継続できなくなると考えられる。
【0022】
水の移動速度(拡散速度)を規定する要因としては、酸基濃度があり、酸基濃度が低い場所より酸基濃度が高い場所に水は移動する。つまり、酸基濃度の差による現象である。また、水の移動速度(拡散速度)を規定する他の要因としては、膜を構成する高分子の分子量があり、低分子量の方が水の移動速度(拡散速度)は大きい。
膜電極接合体を構成する各要件について、下記にて更に詳細に説明する。
【0023】
2.1 アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)
アノード電極で発生したプロトンは、カソード側に拡散して行くが、その際には、電解質膜は、水で十分に膨潤していることが必要である。しかしアノード側に乾いた水素が供給されると、水が蒸発しアノード側の電解質は、十分に水を含まない状態となり、電解質のプロトン伝導性は、極端に低下してしまう。このようなことを防ぐ目的で、アノード側に供給される水素は、十分に水を含むように加湿されることが重要であり、本発明におけるアノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)は、上記の要件を満たすように分子構造が設計されている。
すなわち、水で十分に膨潤している要件を満たすには、酸基濃度を高くしておく必要があり、例えば、スルホン基を高濃度に含有させることによって達成できる。膜(A)中の酸基濃度の値をaとすると、aは、100以上で800未満であることが好ましい。aが100未満であると、酸基の濃度が高すぎ、高分子膜としての強度を失い、ガスバリア性等が阻害され好ましくなく、800以上であると、酸基の濃度が低くなり、プロトン伝導性が悪くなり、カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)の酸基濃度の値bと、同レベルの値となり、両者の酸基濃度の差がなくなり、カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)からアノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)に向けて、水分を移動させる力が作用しなくなり好ましくない。
【0024】
なお、酸基濃度の値とは、陽イオン交換樹脂膜を構成する高分子において、酸基1個当たりの高分子の分子量であり、その値が高いほど酸基の濃度は低く、その値が低いほど酸基の濃度は高いこととなる。例えば、分子量6000の高分子に3個スルホン基が付いておれば、6000/3=2000であり、酸基濃度の値は2000となり、10個スルホン基がついておれば、6000/10=600となり、数値の低い方が、一定の分子量の高分子に対しては、多くの酸基をもっていることとなるので、酸基の濃度は高いこととなる。アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)の酸基濃度の値をaとすると、aは、100以上で800未満であるから、数値は低いので、酸基の濃度は高いこととなる。
【0025】
また、アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)の分子量は、上記したように水の拡散速度を大きくするために、低分子量であることが好ましい。具体的には、500以上で5000以下、より好ましくは3000以下である。この範囲の分子量であると、カソード側のスルホン酸基含有フッ素樹脂系陽イオン交換樹脂膜(B)中の水分の拡散係数が約3×10−6cm2/secであるのに対して、1×10−5cm2/sec以上の高い拡散係数を得ることができる。
【0026】
2.1.1 アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)の製法
アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)は、上記のような酸基濃度の値及び分子量を具備しておれば、その製法はいかなる方法であってもよいが、下記の方法が好ましい。
すなわち、下記の化学式(1)で表されるスルホン基含有アルコキシシランを加水分解縮合し、低分子量縮合体を製造し陽イオン交換樹脂膜(A)とする。
【0027】
【化3】
【0028】
(式中、R1は炭素数4個以下のアルキル基、R2は炭素原子を1以上有する任意の有機基、R3は炭素原子を1以上有する2価の有機基であり、nは1〜3の整数、mは0〜2の整数を表す。但し、n+m=3である。)
【0029】
上記の化学式(1)で表されるスルホン基含有トリアルコキシシランとしては、3−スルホプロピルトリメトキシシラン、3−スルホプロピルトリエトキシシラン、3−スルホプロピルトリプロポキシシラン、3−スルホプロピルトリブトキシシラン、3−スルホプロピルジメトキシエトキシシラン、3−スルホプロピルメトキシジエトキシシラン、3−スルホエチルトリメトキシシラン、3−スルホエチルトリエトキシシラン、3−スルホエチルトリプロポキシシラン、3−スルホエチルトリブトキシシラン、3−スルホエチルジメトキシエトキシシラン、3−スルホエチルメトキシジエトキシシラン等が例示されるが、コストや反応性の観点から、3−スルホプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0030】
化学式(1)で表されるスルホン酸基含有ジアルコキシシランとしては、3−スルホプロピルメチルジメトキシシラン、3−スルホプロピルメチルジエトキシシラン、3−スルホプロピルメチルジプロポキシシラン、3−スルホプロピルメチルジブトキシシラン、3−スルホプロピルエチルジメトキシシラン、3−スルホプロピルブチルジエトキシシラン、3−スルホプロピルフェニルジメトキシシラン等が例示されるが、コストや反応性の観点から、3−スルホプロピルメチルジメトキシシランが特に好ましい。
【0031】
化学式(1)で表されるスルホン酸基含有モノアルコキシシランとしては、3−スルホプロピルジメチルメトキシシラン、3−スルホプロピルジメチルエトキシシラン、3−スルホプロピルジメチルプロポキシシラン、3−スルホプロピルジメチルブトキシシラン、3−スルホプロピルジエチルメトキシシラン、3−スルホプロピルジブチルエトキシシラン、3−スルホプロピルジフェニルジメトキシシラン等が例示されるが、コストや反応性の観点から、3−スルホプロピルジメチルメトキシシランが特に好ましい。
【0032】
ここで、化学式(1)で示されるスルホン酸基含有アルコキシシランは、3官能反応性のモノマー(スルホン酸基含有トリアルコキシシラン)又は2官能反応性のモノマー(スルホン酸基含有ジアルコキシシラン)から選ばれる少なくとも1種のモノマーであるが、その一部をスルホン酸基を含まない他のシラン反応性モノマー等から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物等と置換し、それを(1)で示されるスルホン酸基含有アルコキシランと混合して使用してもよい。
これらのシラン化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
アノード電極側に配置する陽イオン交換樹脂膜(A)は、分子量が5000以下と低いので、単独では強度不足が生じる可能性が高い。そこで、強化するために基布に含浸して複合膜の形態とすることが好ましい。基布としては、織布、不織布のどちらかを用いても構わない。なお、厚みについては、基布の厚みにより決まる。ちなみに、分解劣化により極めて小さな酸を含む化合物が生じた場合でもカソード側に配置する陽イオン交換樹脂膜を通ってカソード側に離脱酸が移動することはない。これは、酸は陰イオンであり反発が起こるからである。このことはアノード側に配置する陽イオン交換樹脂膜中の酸基濃度を常に高く保つために重要なことである。厚みが100μm以下の織布又は不織布によって補強されていることが好ましい。
【0034】
織布又は不織布の素材としては、耐酸性が必要であり、例えば、テフロン(登録商標)糸、ポリオレフィン糸、ガラス繊維等が好適に用いられる。以下、ガラス繊維を用いた場合についてさらに詳細に説明する。
ガラスとしては、燃料電池内部の高い酸濃度に耐えるために、通常のEガラスよりも高い耐久性をもつ耐アルカリガラスおよび耐酸性ガラスを用いることが好ましい。
【0035】
ガラスとは、一般に、SiO2、B2O3、P2O5、Al2O3等を主成分とした無機材料で、通常、軟化温度を下げるためにNa2O、K2O等のアルカリ成分が配合される。耐アルカリガラスは、アルカリの移動を止めるために、Ca2O成分が入ることもあり、さらにはNa2O−ZrO2(TiO2)−SiO2系に代表される化学式をもつガラスのことを指す。この化学式中で、ZrO2の比率が多いほど耐アルカリ性が高まるといわれている。
一方、耐酸性ガラスとしては、上記したNa2O、K2O等のアルカリ成分の比率が小さいものが好ましい。例えば、主に、SiO2で構成される石英ガラスや、SiO2、B2O3等を主成分とするホウ珪酸ガラスが好適に使用される。
【0036】
ガラス繊維の長さに関しては、長繊維と短繊維を区別するとき、その長さについては工業規格等で明確な数値としては規定されていないが、本発明においては、10mm以上の長さを有する長繊維を用いることが、強化効率の点から好ましい。
長さの上限の設定は、特にない。また、ガラス繊維径としては、5〜20μm、より好ましくは、9〜13μmの範囲のものを用いることが好ましい。
【0037】
ガラス繊維は、短繊維ならば一般に上記した金属−酸素結合による3次元架橋構造体の原材料や伝導性付与剤とともに配合して攪拌することで、均一に分散できるが、長繊維としては、あらがじめ薄膜状に分散した形態にしておかなければ、本発明のプロトン伝導性膜のなかに均一に配置することはできない。以下、ガラス繊維の形態を説明する。
【0038】
ガラス繊維を長繊維として用いる場合には、織布状形態、不織布状形態の2種類が可能であるが、薄膜の状態で十分な強度を発現するためには、連続繊維を用いることができる織布状形態が、より好ましい形態として挙げられる。
織布としては、平織物、綾織物、トルコ朱子織物、模紗織物、絡み織物等の織り方があるが、本発明では特に伸びの防止のために平織を選定した。また、平織物についてプロトン伝導性膜の伝導性に阻害が少なくなるためには、過度に密な織物を使用することはできない。これは、密な織り方をすると、伝導するスペースが無くなるからである。そこで、一本おきに糸を抜いたような、かなり粗な織り方が好ましい。本発明では、このような織り方を、目抜平織と表現した。上記平織物の構造を規定するために単糸の番手、織密度(ピッチ)等があるが、検討の結果、以下の範囲が好適であることが分かった。
【0039】
単糸とは、ガラス繊維を50本から1000本くらい集束して、撚りをかけたものであり、単糸の番手をTexと表現する。Texの単位は、g/1000mであり、1000mあたりの重量である。最適の番手は3〜50Texである。細いほど好ましいが、細すぎると工程上で切れやすくなる。また50Tex以上では、プロトン伝導性膜に適した薄膜上の基板を作成し難くなる。
織密度は、打ち込み密度又はピッチとも表現されるが、25mm幅あたりの単糸の数のことを示す。織密度が粗いと、補強効果が失われ、逆に密なものを作ることは、上記した単糸の細さにより限界がある。好適な範囲としては、40〜120本/25mm幅である。
【0040】
平織物の厚みは、上記した仕様によってほぼ決定される。上記仕様での厚みは、20〜100ミクロンとなる。
目付量(m2あたりの重量)としては、上記の厚みに関係するが、10〜50g/m2、好ましくは15〜25g/m2である。理由は上記と同一である。
ちなみに、上記した織布の横糸を開繊処理をした織布を用いることも可能である。
【0041】
不織布の場合は、ガラス繊維の均一分散性の上から、ガラス繊維紙が、特に好ましい形態として挙げられる。ガラス繊維紙とは、長さ5mm乃至50mm、直径0.5ミクロン乃至20ミクロンのガラス繊維を、界面活性剤を含んだ水中に均一に分散させた後、網によりすくい取るいわゆる抄造法を用い、薄膜状とした後に、ガラス繊維の折り重なり部分をバインダーで固めた材料である。
バインダーとしては、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂等の各種接着用樹脂が用いられる。
【0042】
ガラス繊維の厚みとしては、好ましくは、100ミクロン以下であることが必要であり、より好ましくは、50ミクロン以下である。10ミクロン以下にすることは、技術上困難であり、ガラス繊維の均一分散性が損なわれるので好ましくない。
ガラス繊維の目付量(m2あたりの重量)としては、膜の厚みに関係するが、1〜50g/m2、好ましくは3〜25g/m2である。膜厚は、厚すぎると水の拡散性が落ち、薄すぎるとガスバリア性が阻害される。
【0043】
2.2 カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)
本発明においては、カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)は、下記の要件を満足するものでなければならない。
【0044】
▲1▼アノード電極で発生したプロトンを、カソード電極に伝導するための電解質膜でなければならないので、スルホン基のようなプロトン伝導基を有していること。
▲2▼カソード側では、反応により生じる活性酸素があるので、耐酸化性に優れた材料を使用することが好ましい。
▲3▼水の拡散性を有すること。そのためには、膜厚は、厚すぎると水の拡散性が落ちるので、50ミクロン以下の厚みであること、より好ましくは30ミクロン以下であることである。
【0045】
▲4▼燃料ガス(水素、メタノール等)を透過させないこと。そのためには、膜厚は、薄すぎるとガスバリア性が阻害されるので10ミクロン以上の厚みであることが好ましい。
また、ガスバリア性は、膜を構成する高分子の分子量に関係があり、低分子であるとガスバリア性が阻害されるので、なるべく高分子であることが必要である。
具体的には、分子量5000以上、より好ましくは10000以上の分子量であることが好ましい。また、低分子であると、カソード内部で流動して白金触媒を完全に被ってしまいカソード性能を落とす可能性もあるので、この観点からも、高分子量であることが好ましい。
▲5▼アノード側の陽イオン交換樹脂膜(A)の酸基濃度の値より低い値の酸基濃度を有すること。このようにすると、浸透圧のバランスのために、カソード側の電解質中の水分は、アノード側の電解質へ移動しやすくなるからである。つまり、酸基濃度の差による現象である。
【0046】
以上の要件を満たす陽イオン交換樹脂膜としては、パーフルオロアルキレンを主骨格とし、一部にパーフルオロビニルエーテル側鎖の末端にスルホン酸基を有するフッ素系樹脂系膜が好ましい。このようなスルホン化フッ素系樹脂膜としては、例えば、Nafion(登録商標)R膜(Du Pont社製)、Dow(登録商標)膜(Dow Chemical社製)、Aciplex(登録商標)R膜(旭化成(株)製)、Flemion(登録商標)R膜(旭硝子(株)製)等が市販されているので、これらから選択して用いても良い。
【0047】
2.3 アノード側電極
本発明において、アノード電極は、水素燃料をプロトンと電子に変換する白金触媒を含み、発生したプロトンをカソード側に伝導する電解質と、電子を導く導電体から構成され、具体的には白金が担持された炭素繊維クロスに、上記のスルホン基含有アルコキシシランを含浸し、次いで縮合反応させて形成させた膜状体であることが好ましい。
【0048】
アノード電極中の酸基濃度の値は、100以上から800未満の値が好ましい。
上記の様にすれば、アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)と同じ条件となり、カソード側からアノード側に水を効率よく拡散することができ、アノード側の水素を加湿する必要がなく、燃料電池のシステムを大幅に簡素化できることに役立つ。
なお、スルホン基含有アルコキシシランを含浸し、次いで縮合反応させて膜状体を形成させる方法は、上記したアノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)の製造工程と同じであるので、ここでは省略する。
【0049】
2.4 カソード側電極
本発明において、カソード電極は、アノード側から伝導されてきたプロトン、電池の外部の導体を通ってきた電子及び酸素を水に変換する白金触媒を含み、発生した水をアノード側に伝導する電解質と、電子を導く導電体から構成されることが好ましい。具体的には白金が担持された炭素繊維クロスに、上記のカソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)の溶解液を含浸し、次いで加熱加圧させて形成させた膜状体であることが好ましい。
カソード電極内部の陽イオン交換樹脂が、カソード電極側に配置された陽イオン交換樹脂膜(B)と同じ組成であることが好ましい。
【0050】
カソード電極中の酸基濃度の値は、800を超える値から2000以下の値であることが好ましい。
上記の様にすれば、カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)と同じ条件となり、カソード側からアノード側に水を効率よく拡散することができ、アノード側の水素を加湿する必要がなく、燃料電池のシステムを大幅に簡素化できることに役立つ。
【0051】
2.5 膜電極接合体の作り方
本発明に用いる膜電極接合体は、例えば、上記のようにして準備した、アノード電極、アノード電極側に配置される陽イオン交換樹脂(A)、カソード電極側に配置される陽イオン交換樹脂膜(B)及びカソード電極をこの順番に重ね、プレス機を用い、80〜110℃の温度、0.1〜2kg/cm2の圧力にて5〜30分間加熱加圧処理を行い、接合することによって作成することが好ましい。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明は、これにより何ら限定されるものではない。
【0053】
実施例1
下記の方法により、本発明の膜電極接合体の構成要素である、(1)アノード電極、(2)アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)、(3)カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)、(4)カソード電極を作成し、この4点をこの順に積層して、100℃にて1kg/cm2の圧力で10分間加熱加圧処理を行い、接合し、本発明の膜電極接合体を作成した。
【0054】
(1)アノード電極
E−TEK(登録商標)電極(米国E−TEK社製)(厚み360ミクロン、炭素繊維クロス使用、白金担持率30%、白金担持量1mg/cm2)に、トリヒドロキシシリルプロパンスルホン酸の水アルコール溶液(濃度40%)(米国ジェレスト社製)を含浸し、80℃にて10分間乾燥を行った。さらに、130℃にて1kg/cm2の圧力で3分間加熱加圧処理を行い、縮合反応を行った。これをアノード電極として使用した。
【0055】
(2)アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)
日本板ガラス社製の化学ガラス不織布(厚み:20ミクロン、目付量:4.6g/m2、材質:化学ガラス、平均繊維径0.5ミクロン)を、500℃にて焼成して、ガラス不織布中にある有機物を分解させた。この不織布に、トリヒドロキシシリルプロパンスルホン酸の水アルコール溶液(濃度40%)(米国ジェレスト社製)を含浸し、80℃にて10分間乾燥を行った。さらに、130℃にて1kg/cm2の圧力で3分間加熱加圧処理を行い、縮合反応を行った。複合膜の厚みは20ミクロン、酸基濃度は、EW=190であった。縮合物の平均分子量は約1500であり、低分子体であることを確認した。
【0056】
(3)カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)
固体高分子型電解質膜のナフィオン(登録商標)112(米国デュポン社製)を用いた。厚み50ミクロン、酸基濃度の値(EW)は、EW=1100である。
【0057】
(4)カソード電極
E−TEK(登録商標)電極(米国E−TEK社製)(厚み360ミクロン、炭素繊維クロス使用、白金担持率30%、白金担持量1mg/cm2)に、ナフィオン(登録商標)溶液(5%水アルコール溶液)を含浸量0.8mg/cm2にて、含浸し、130℃にて1kg/cm2の圧力で3分間加熱加圧処理を行った。これをアノード電極として使用した。
【0058】
上記の4点をこの順に積層して、100℃にて1kg/cm2の圧力で10分間加熱処理を行い、接合し、膜電極接合体を作成した。
【0059】
評価試験
上記の膜電極接合体を用いて、下記の発電条件で、単セルでの発電テストを行った。
発電条件 :
水素側流量:50ml/分
酸素側流量:200ml/分
セル面積 :5cm2
セル温度 :80℃
端子間電圧:0.5ボルトに制御
水素側加湿:バブラー方式
酸素側加湿:バブラー方式
【0060】
実験では、水素側のバブラー温度を変更させることで、水素中の水分率(湿度)を制御した。また、バブラーを通さずに、乾燥水素を送ることで、湿度0の場合の実験を行った。
湿度100%、50%、0%のどの場合でも出力が著しく落ちる現象は見られず、目的通り水素側を無加湿で運転が可能なことを実証できた。
ちなみに、上記のカソード側陽イオン交換樹脂膜とアノード側陽イオン交換樹脂膜の2枚を乾燥状態で張り合わせ後に、水分を与え、その分配比率を測定した。分配比率は、1.7:8.3であった。これは、アノード側陽イオン交換樹脂膜に向けてカソード側陽イオン交換樹脂膜から水が移動しやすいことを間接的に示している。
【0061】
比較例1
(アノード及びカソード側電極の作成)
TEK(登録商標)電極(米国E−TEK社製)(厚み360ミクロン、炭素繊維クロス使用、白金担持率30%、白金担持量1mg/cm2)に、ナフィオン(登録商標)溶液(5%水アルコール溶液)を含浸量0.8mg/cm2にて、含浸し、130℃にて1kg/cm2の圧力で3分間加熱加圧処理を行った。これをアノード及びカソード側電極として使用した。
【0062】
(カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B))
固体高分子型電解質膜のナフィオン(登録商標)112(米国デュポン社製)を用いた。厚み50ミクロン、酸基濃度は、EW=1100である。
【0063】
(アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A))
使用せず。
【0064】
上記の3点をこの順に積層して、120℃にて1kg/cm2の圧力で10分間加熱処理を行い、接合し、膜電極接合体を作成した。
このサンプルに対して同様に、その発電出力を湿度別に測定したが、明らかに、湿度が低くなると出力低下が認められ、特に湿度0%では、発電は不可能であった。
【0065】
【表1】
【0066】
【発明の効果】
本発明の膜電極接合体を用いれば、カソード側で発生する水を効率よくアノード側に移動させることができるので、アノード側に供給される水素を加湿しなくともアノード側が水不足にならなく、燃料電池のシステムを大幅に簡素化できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】膜電極接合体の構成を示す図。
【図2】発電中の電解質内の水分分布を示す図。
図2(A)は、従来の膜電極接合体の場合。
図2(B)は、本発明の膜電極接合体の場合。
【符号の説明】
1 アノード電極
2 アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)
3 カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)
4 カソード電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、膜電極接合体、及びそれを用いた燃料電池に関し、更に詳しくは、カソード側で発生する水を効率よくアノード側に移動させることができ、アノード側に供給される水素を加湿しなくとも、アノード側が、水不足にならない膜電極接合体、及びそれを用いた燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、燃料電池は、発電効率が高くかつ環境特性に優れているため、社会的に大きな課題となっている環境問題やエネルギー問題の解決に貢献できる次世代の発電装置として注目されている。
燃料電池は、一般にそれを構成する電解質の種類により、リン酸形、溶融炭酸塩型、固体酸化物型、固体高分子型などの幾つかのタイプに分類されるが、中でも、固体高分子形燃料電池(以下、PEFCと略する場合がある)は、他のいずれかのタイプに比べて、装置が小型かつ高出力であるため、小規模オンサイト型発電用、車両パワーソースなどの移動用、または携帯機器用の電源として次世代の燃料電池の主力と位置付けられている。
このように、PEFCは、原理的に優れた長所を有しており、実用化に向けた開発が盛んに行われている。このPEFCでは、燃料として通常、水素を用いる。
水素は、PEFCのアノード側に設置された触媒によりプロトン(水素イオン)と電子に分解される。この内、電子は、外部に供給され、電気として利用され、PEFCのカソード側へと循環される。一方、プロトンはプロトン伝導性膜を通じてカソード側へと移動する。カソード側では、プロトン、循環されてきた電子、及び外部から導入される酸素が触媒により結合され、水が生じる。すなわち、PEFC単体で見れば、PEFCは、水素と酸素から水を作る際に電気を取り出す非常にクリーンなエネルギー源である。
上記したように、プロトンはカソード側に拡散して行くが、その際には電解質膜は、水で十分に膨潤していることが必要である。しかしアノード側に乾いた水素が供給されると、水が蒸発しアノード側の電解質は、十分に水を含まない状態となり、電解質のプロトン伝導性は極端に低下してしまう。このようなことを防ぐ目的で、アノード側に供給される水素は、十分に水を含むように加湿されることが重要であり、このためのシステムが、複雑になるという欠点があった。
【0003】
現在、PEFCにおいて使用れている主なプロトン伝導性膜は、パーフルオロアルキレンを主骨格とし、一部にパーフルオロビニルエーテル側鎖の末端にスルホン酸基を有するフッ素系樹脂系膜である。このようなスルホン化フッ素系樹脂膜としては、例えば、Nafion(登録商標)R膜(Du Pont社製、特許文献1参照)、Dow(登録商標)膜(Dow Chemical社製、特許文献2参照)、Aciplex(登録商標)R膜(旭化成(株)製、特許文献3参照)、Flemion(登録商標)R膜(旭硝子(株)製)等が知られているが、残念なことながら、これらの膜は、いずれもアノード側の水素を加湿しないと、水不足となり、伝導性をおとすという問題点がある。
ところで、上記したように、発電中にはカソード側で水が生成しているので、カソード側で発生した水を速やかにアノード側に拡散させるような水拡散性の高い膜が存在すれば、アノード側の水不足は解消されるはずである。
そのため、こうした問題点を解消した膜の一日も早い出現が待たれていた。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第4,330,654号公報
【特許文献2】
特開平4−366137号公報
【特許文献3】
特開平6−342665号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の固体高分子型燃料電池に用いる電極における問題点に鑑み、カソード側で発生する水を効率よくアノード側に移動させることができ、アノード側に供給される水素を加湿しなくとも、アノード側が、水不足にならない膜電極接合体、及びそれを用いた燃料電池を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、燃料電池用のアノード電極、陽イオン交換樹脂膜及びカソード電極の水分と酸基濃度の関係について鋭意研究を重ねた結果、陽イオン交換樹脂膜を2層とし、さらにアノード電極側の陽イオン交換樹脂膜の酸基濃度をカソード電極側の陽イオン交換樹脂膜の酸基濃度より高めることにより良好な結果が得られることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、陽イオン交換樹脂膜の両面にアノード電極とカソード電極が接合された固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体において、
陽イオン交換樹脂膜は、アノード電極側に配置される陽イオン交換樹脂(A)と、カソード電極側に配置される陽イオン交換樹脂膜(B)との2つの膜部材から構成され、且つ、各膜部材中における酸基濃度値(酸基1個あたりの陽イオン交換樹脂の分子量)は、(A)、(B)中における酸基濃度値をそれぞれa、bとすると、下記の式(1)に示す関係を満足することを特徴とする膜電極接合体が提供される。
b>a (1)
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、上記aとbとの関係は、下記の式(2)を満足することを特徴とする膜電極接合体が提供される。。
2000≧b>800>a≧100 (2)
【0009】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、陽イオン交換樹脂膜(A)は、下記の化学式(1)で表されるスルホン基含有アルコキシシランの低分子量縮合体であることを特徴とする膜電極接合体が提供される。
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R1は炭素数4個以下のアルキル基、R2は炭素原子を1以上有する任意の有機基、R3は炭素原子を1以上有する2価の有機基であり、nは1〜3の整数、mは0〜2の整数を表す。但し、n+m=3である。)
【0012】
さらに、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、上記低分子量縮合体の分子量は、5000以下であることを特徴とする膜電極接合体が提供される。
【0013】
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、陽イオン交換樹脂膜(A)は、厚みが100μm以下の織布又は不織布によって補強されていることを特徴とする膜電極接合体が提供される。
【0014】
本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、陽イオン交換樹脂膜(B)は、スルホン基を含む分子量5000以上のフッ素樹脂であることを特徴とする膜電極接合体が提供される。
【0015】
また、本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、陽イオン交換樹脂膜(B)は、厚みが50μm以下であることを特徴とする膜電極接合体が提供される。
【0016】
また、本発明の第8の発明によれば、第1の発明において、アノード電極に用いられる電解質物質は、陽イオン交換樹脂膜(A)の陽イオン交換樹脂と同一であり、一方、カソード電極に用いられる電解質物質は、陽イオン交換樹脂膜(B)の陽イオン交換樹脂と同一であることを特徴とする膜電極接合体が提供される。
【0017】
さらに、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明に記載の膜電極接合体を用いてなる燃料電池が提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の膜電極接合体、それを用いた燃料電池について項目毎に詳細に説明する。
【0019】
1.固体高分子型燃料電池
一般的にいわれている固体高分子型燃料電池とは、電解質として、陽イオン交換樹脂膜を用いることを特徴とした電池であり、その基本構造は、陽イオン交換樹脂膜の両側に、触媒(代表的には白金)が担持された電極を配置した構造(いわゆる、膜電極接合体)であり、更にその両外側に燃料を供給するための構造を有する一対のセパレーターが配置されている。これを単位セルとして、隣り合う複数セルを相互に連結することで、所望の電力を取り出せるよう構成されている。
【0020】
2.膜電極接合体
本発明に用いる膜電極接合体は、図1に例示すように、陽イオン交換樹脂膜の両面にアノード電極とカソード電極が接合された固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体において、陽イオン交換樹脂膜は、アノード電極側に配置される陽イオン交換樹脂(A)と、カソード電極側に配置される陽イオン交換樹脂膜(B)との2つの膜部材から構成され、且つ、各膜部材中における酸基濃度値(酸基1個あたりの陽イオン交換樹脂の分子量であり、ETと略称することもある。)は、(A)、(B)中における酸基濃度値をそれぞれa、bとすると、下記の式(1)に示す関係を満足することが必要であり、さらに好ましくは下記の式(2)を満足することである。
【0021】
上記の関係を満たすことが必要な理由を図2に示す模式図を用いて、以下に説明する。尚、説明で用いている電解質とは、イオン伝導性を示す物質であり、本発明では、陽イオン交換樹脂膜のことを指している。
図2は、発電中の電解質内の水の分布を示したものである。水の出入り、移動については以下のようである。まず、アノード側から蒸発により多くの水を失う。
また、アノード側からカソード側に向けて電気浸透現象によりプロトンに随伴して水が移動する。よって、アノード側は、水不足に陥りやすい。一方、カソードでは、反応により水が生成する。よってカソード側の水濃度は高くなる。電解質内の酸基は固定されているので、浸透圧の差によってアノード側に向けて水が移動する。この移動速度(拡散速度)が十分でない場合は、アノード側は極端な水不足に陥り発電が継続できなくなると考えられる。
【0022】
水の移動速度(拡散速度)を規定する要因としては、酸基濃度があり、酸基濃度が低い場所より酸基濃度が高い場所に水は移動する。つまり、酸基濃度の差による現象である。また、水の移動速度(拡散速度)を規定する他の要因としては、膜を構成する高分子の分子量があり、低分子量の方が水の移動速度(拡散速度)は大きい。
膜電極接合体を構成する各要件について、下記にて更に詳細に説明する。
【0023】
2.1 アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)
アノード電極で発生したプロトンは、カソード側に拡散して行くが、その際には、電解質膜は、水で十分に膨潤していることが必要である。しかしアノード側に乾いた水素が供給されると、水が蒸発しアノード側の電解質は、十分に水を含まない状態となり、電解質のプロトン伝導性は、極端に低下してしまう。このようなことを防ぐ目的で、アノード側に供給される水素は、十分に水を含むように加湿されることが重要であり、本発明におけるアノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)は、上記の要件を満たすように分子構造が設計されている。
すなわち、水で十分に膨潤している要件を満たすには、酸基濃度を高くしておく必要があり、例えば、スルホン基を高濃度に含有させることによって達成できる。膜(A)中の酸基濃度の値をaとすると、aは、100以上で800未満であることが好ましい。aが100未満であると、酸基の濃度が高すぎ、高分子膜としての強度を失い、ガスバリア性等が阻害され好ましくなく、800以上であると、酸基の濃度が低くなり、プロトン伝導性が悪くなり、カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)の酸基濃度の値bと、同レベルの値となり、両者の酸基濃度の差がなくなり、カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)からアノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)に向けて、水分を移動させる力が作用しなくなり好ましくない。
【0024】
なお、酸基濃度の値とは、陽イオン交換樹脂膜を構成する高分子において、酸基1個当たりの高分子の分子量であり、その値が高いほど酸基の濃度は低く、その値が低いほど酸基の濃度は高いこととなる。例えば、分子量6000の高分子に3個スルホン基が付いておれば、6000/3=2000であり、酸基濃度の値は2000となり、10個スルホン基がついておれば、6000/10=600となり、数値の低い方が、一定の分子量の高分子に対しては、多くの酸基をもっていることとなるので、酸基の濃度は高いこととなる。アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)の酸基濃度の値をaとすると、aは、100以上で800未満であるから、数値は低いので、酸基の濃度は高いこととなる。
【0025】
また、アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)の分子量は、上記したように水の拡散速度を大きくするために、低分子量であることが好ましい。具体的には、500以上で5000以下、より好ましくは3000以下である。この範囲の分子量であると、カソード側のスルホン酸基含有フッ素樹脂系陽イオン交換樹脂膜(B)中の水分の拡散係数が約3×10−6cm2/secであるのに対して、1×10−5cm2/sec以上の高い拡散係数を得ることができる。
【0026】
2.1.1 アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)の製法
アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)は、上記のような酸基濃度の値及び分子量を具備しておれば、その製法はいかなる方法であってもよいが、下記の方法が好ましい。
すなわち、下記の化学式(1)で表されるスルホン基含有アルコキシシランを加水分解縮合し、低分子量縮合体を製造し陽イオン交換樹脂膜(A)とする。
【0027】
【化3】
【0028】
(式中、R1は炭素数4個以下のアルキル基、R2は炭素原子を1以上有する任意の有機基、R3は炭素原子を1以上有する2価の有機基であり、nは1〜3の整数、mは0〜2の整数を表す。但し、n+m=3である。)
【0029】
上記の化学式(1)で表されるスルホン基含有トリアルコキシシランとしては、3−スルホプロピルトリメトキシシラン、3−スルホプロピルトリエトキシシラン、3−スルホプロピルトリプロポキシシラン、3−スルホプロピルトリブトキシシラン、3−スルホプロピルジメトキシエトキシシラン、3−スルホプロピルメトキシジエトキシシラン、3−スルホエチルトリメトキシシラン、3−スルホエチルトリエトキシシラン、3−スルホエチルトリプロポキシシラン、3−スルホエチルトリブトキシシラン、3−スルホエチルジメトキシエトキシシラン、3−スルホエチルメトキシジエトキシシラン等が例示されるが、コストや反応性の観点から、3−スルホプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0030】
化学式(1)で表されるスルホン酸基含有ジアルコキシシランとしては、3−スルホプロピルメチルジメトキシシラン、3−スルホプロピルメチルジエトキシシラン、3−スルホプロピルメチルジプロポキシシラン、3−スルホプロピルメチルジブトキシシラン、3−スルホプロピルエチルジメトキシシラン、3−スルホプロピルブチルジエトキシシラン、3−スルホプロピルフェニルジメトキシシラン等が例示されるが、コストや反応性の観点から、3−スルホプロピルメチルジメトキシシランが特に好ましい。
【0031】
化学式(1)で表されるスルホン酸基含有モノアルコキシシランとしては、3−スルホプロピルジメチルメトキシシラン、3−スルホプロピルジメチルエトキシシラン、3−スルホプロピルジメチルプロポキシシラン、3−スルホプロピルジメチルブトキシシラン、3−スルホプロピルジエチルメトキシシラン、3−スルホプロピルジブチルエトキシシラン、3−スルホプロピルジフェニルジメトキシシラン等が例示されるが、コストや反応性の観点から、3−スルホプロピルジメチルメトキシシランが特に好ましい。
【0032】
ここで、化学式(1)で示されるスルホン酸基含有アルコキシシランは、3官能反応性のモノマー(スルホン酸基含有トリアルコキシシラン)又は2官能反応性のモノマー(スルホン酸基含有ジアルコキシシラン)から選ばれる少なくとも1種のモノマーであるが、その一部をスルホン酸基を含まない他のシラン反応性モノマー等から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物等と置換し、それを(1)で示されるスルホン酸基含有アルコキシランと混合して使用してもよい。
これらのシラン化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
アノード電極側に配置する陽イオン交換樹脂膜(A)は、分子量が5000以下と低いので、単独では強度不足が生じる可能性が高い。そこで、強化するために基布に含浸して複合膜の形態とすることが好ましい。基布としては、織布、不織布のどちらかを用いても構わない。なお、厚みについては、基布の厚みにより決まる。ちなみに、分解劣化により極めて小さな酸を含む化合物が生じた場合でもカソード側に配置する陽イオン交換樹脂膜を通ってカソード側に離脱酸が移動することはない。これは、酸は陰イオンであり反発が起こるからである。このことはアノード側に配置する陽イオン交換樹脂膜中の酸基濃度を常に高く保つために重要なことである。厚みが100μm以下の織布又は不織布によって補強されていることが好ましい。
【0034】
織布又は不織布の素材としては、耐酸性が必要であり、例えば、テフロン(登録商標)糸、ポリオレフィン糸、ガラス繊維等が好適に用いられる。以下、ガラス繊維を用いた場合についてさらに詳細に説明する。
ガラスとしては、燃料電池内部の高い酸濃度に耐えるために、通常のEガラスよりも高い耐久性をもつ耐アルカリガラスおよび耐酸性ガラスを用いることが好ましい。
【0035】
ガラスとは、一般に、SiO2、B2O3、P2O5、Al2O3等を主成分とした無機材料で、通常、軟化温度を下げるためにNa2O、K2O等のアルカリ成分が配合される。耐アルカリガラスは、アルカリの移動を止めるために、Ca2O成分が入ることもあり、さらにはNa2O−ZrO2(TiO2)−SiO2系に代表される化学式をもつガラスのことを指す。この化学式中で、ZrO2の比率が多いほど耐アルカリ性が高まるといわれている。
一方、耐酸性ガラスとしては、上記したNa2O、K2O等のアルカリ成分の比率が小さいものが好ましい。例えば、主に、SiO2で構成される石英ガラスや、SiO2、B2O3等を主成分とするホウ珪酸ガラスが好適に使用される。
【0036】
ガラス繊維の長さに関しては、長繊維と短繊維を区別するとき、その長さについては工業規格等で明確な数値としては規定されていないが、本発明においては、10mm以上の長さを有する長繊維を用いることが、強化効率の点から好ましい。
長さの上限の設定は、特にない。また、ガラス繊維径としては、5〜20μm、より好ましくは、9〜13μmの範囲のものを用いることが好ましい。
【0037】
ガラス繊維は、短繊維ならば一般に上記した金属−酸素結合による3次元架橋構造体の原材料や伝導性付与剤とともに配合して攪拌することで、均一に分散できるが、長繊維としては、あらがじめ薄膜状に分散した形態にしておかなければ、本発明のプロトン伝導性膜のなかに均一に配置することはできない。以下、ガラス繊維の形態を説明する。
【0038】
ガラス繊維を長繊維として用いる場合には、織布状形態、不織布状形態の2種類が可能であるが、薄膜の状態で十分な強度を発現するためには、連続繊維を用いることができる織布状形態が、より好ましい形態として挙げられる。
織布としては、平織物、綾織物、トルコ朱子織物、模紗織物、絡み織物等の織り方があるが、本発明では特に伸びの防止のために平織を選定した。また、平織物についてプロトン伝導性膜の伝導性に阻害が少なくなるためには、過度に密な織物を使用することはできない。これは、密な織り方をすると、伝導するスペースが無くなるからである。そこで、一本おきに糸を抜いたような、かなり粗な織り方が好ましい。本発明では、このような織り方を、目抜平織と表現した。上記平織物の構造を規定するために単糸の番手、織密度(ピッチ)等があるが、検討の結果、以下の範囲が好適であることが分かった。
【0039】
単糸とは、ガラス繊維を50本から1000本くらい集束して、撚りをかけたものであり、単糸の番手をTexと表現する。Texの単位は、g/1000mであり、1000mあたりの重量である。最適の番手は3〜50Texである。細いほど好ましいが、細すぎると工程上で切れやすくなる。また50Tex以上では、プロトン伝導性膜に適した薄膜上の基板を作成し難くなる。
織密度は、打ち込み密度又はピッチとも表現されるが、25mm幅あたりの単糸の数のことを示す。織密度が粗いと、補強効果が失われ、逆に密なものを作ることは、上記した単糸の細さにより限界がある。好適な範囲としては、40〜120本/25mm幅である。
【0040】
平織物の厚みは、上記した仕様によってほぼ決定される。上記仕様での厚みは、20〜100ミクロンとなる。
目付量(m2あたりの重量)としては、上記の厚みに関係するが、10〜50g/m2、好ましくは15〜25g/m2である。理由は上記と同一である。
ちなみに、上記した織布の横糸を開繊処理をした織布を用いることも可能である。
【0041】
不織布の場合は、ガラス繊維の均一分散性の上から、ガラス繊維紙が、特に好ましい形態として挙げられる。ガラス繊維紙とは、長さ5mm乃至50mm、直径0.5ミクロン乃至20ミクロンのガラス繊維を、界面活性剤を含んだ水中に均一に分散させた後、網によりすくい取るいわゆる抄造法を用い、薄膜状とした後に、ガラス繊維の折り重なり部分をバインダーで固めた材料である。
バインダーとしては、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂等の各種接着用樹脂が用いられる。
【0042】
ガラス繊維の厚みとしては、好ましくは、100ミクロン以下であることが必要であり、より好ましくは、50ミクロン以下である。10ミクロン以下にすることは、技術上困難であり、ガラス繊維の均一分散性が損なわれるので好ましくない。
ガラス繊維の目付量(m2あたりの重量)としては、膜の厚みに関係するが、1〜50g/m2、好ましくは3〜25g/m2である。膜厚は、厚すぎると水の拡散性が落ち、薄すぎるとガスバリア性が阻害される。
【0043】
2.2 カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)
本発明においては、カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)は、下記の要件を満足するものでなければならない。
【0044】
▲1▼アノード電極で発生したプロトンを、カソード電極に伝導するための電解質膜でなければならないので、スルホン基のようなプロトン伝導基を有していること。
▲2▼カソード側では、反応により生じる活性酸素があるので、耐酸化性に優れた材料を使用することが好ましい。
▲3▼水の拡散性を有すること。そのためには、膜厚は、厚すぎると水の拡散性が落ちるので、50ミクロン以下の厚みであること、より好ましくは30ミクロン以下であることである。
【0045】
▲4▼燃料ガス(水素、メタノール等)を透過させないこと。そのためには、膜厚は、薄すぎるとガスバリア性が阻害されるので10ミクロン以上の厚みであることが好ましい。
また、ガスバリア性は、膜を構成する高分子の分子量に関係があり、低分子であるとガスバリア性が阻害されるので、なるべく高分子であることが必要である。
具体的には、分子量5000以上、より好ましくは10000以上の分子量であることが好ましい。また、低分子であると、カソード内部で流動して白金触媒を完全に被ってしまいカソード性能を落とす可能性もあるので、この観点からも、高分子量であることが好ましい。
▲5▼アノード側の陽イオン交換樹脂膜(A)の酸基濃度の値より低い値の酸基濃度を有すること。このようにすると、浸透圧のバランスのために、カソード側の電解質中の水分は、アノード側の電解質へ移動しやすくなるからである。つまり、酸基濃度の差による現象である。
【0046】
以上の要件を満たす陽イオン交換樹脂膜としては、パーフルオロアルキレンを主骨格とし、一部にパーフルオロビニルエーテル側鎖の末端にスルホン酸基を有するフッ素系樹脂系膜が好ましい。このようなスルホン化フッ素系樹脂膜としては、例えば、Nafion(登録商標)R膜(Du Pont社製)、Dow(登録商標)膜(Dow Chemical社製)、Aciplex(登録商標)R膜(旭化成(株)製)、Flemion(登録商標)R膜(旭硝子(株)製)等が市販されているので、これらから選択して用いても良い。
【0047】
2.3 アノード側電極
本発明において、アノード電極は、水素燃料をプロトンと電子に変換する白金触媒を含み、発生したプロトンをカソード側に伝導する電解質と、電子を導く導電体から構成され、具体的には白金が担持された炭素繊維クロスに、上記のスルホン基含有アルコキシシランを含浸し、次いで縮合反応させて形成させた膜状体であることが好ましい。
【0048】
アノード電極中の酸基濃度の値は、100以上から800未満の値が好ましい。
上記の様にすれば、アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)と同じ条件となり、カソード側からアノード側に水を効率よく拡散することができ、アノード側の水素を加湿する必要がなく、燃料電池のシステムを大幅に簡素化できることに役立つ。
なお、スルホン基含有アルコキシシランを含浸し、次いで縮合反応させて膜状体を形成させる方法は、上記したアノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)の製造工程と同じであるので、ここでは省略する。
【0049】
2.4 カソード側電極
本発明において、カソード電極は、アノード側から伝導されてきたプロトン、電池の外部の導体を通ってきた電子及び酸素を水に変換する白金触媒を含み、発生した水をアノード側に伝導する電解質と、電子を導く導電体から構成されることが好ましい。具体的には白金が担持された炭素繊維クロスに、上記のカソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)の溶解液を含浸し、次いで加熱加圧させて形成させた膜状体であることが好ましい。
カソード電極内部の陽イオン交換樹脂が、カソード電極側に配置された陽イオン交換樹脂膜(B)と同じ組成であることが好ましい。
【0050】
カソード電極中の酸基濃度の値は、800を超える値から2000以下の値であることが好ましい。
上記の様にすれば、カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)と同じ条件となり、カソード側からアノード側に水を効率よく拡散することができ、アノード側の水素を加湿する必要がなく、燃料電池のシステムを大幅に簡素化できることに役立つ。
【0051】
2.5 膜電極接合体の作り方
本発明に用いる膜電極接合体は、例えば、上記のようにして準備した、アノード電極、アノード電極側に配置される陽イオン交換樹脂(A)、カソード電極側に配置される陽イオン交換樹脂膜(B)及びカソード電極をこの順番に重ね、プレス機を用い、80〜110℃の温度、0.1〜2kg/cm2の圧力にて5〜30分間加熱加圧処理を行い、接合することによって作成することが好ましい。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明は、これにより何ら限定されるものではない。
【0053】
実施例1
下記の方法により、本発明の膜電極接合体の構成要素である、(1)アノード電極、(2)アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)、(3)カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)、(4)カソード電極を作成し、この4点をこの順に積層して、100℃にて1kg/cm2の圧力で10分間加熱加圧処理を行い、接合し、本発明の膜電極接合体を作成した。
【0054】
(1)アノード電極
E−TEK(登録商標)電極(米国E−TEK社製)(厚み360ミクロン、炭素繊維クロス使用、白金担持率30%、白金担持量1mg/cm2)に、トリヒドロキシシリルプロパンスルホン酸の水アルコール溶液(濃度40%)(米国ジェレスト社製)を含浸し、80℃にて10分間乾燥を行った。さらに、130℃にて1kg/cm2の圧力で3分間加熱加圧処理を行い、縮合反応を行った。これをアノード電極として使用した。
【0055】
(2)アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)
日本板ガラス社製の化学ガラス不織布(厚み:20ミクロン、目付量:4.6g/m2、材質:化学ガラス、平均繊維径0.5ミクロン)を、500℃にて焼成して、ガラス不織布中にある有機物を分解させた。この不織布に、トリヒドロキシシリルプロパンスルホン酸の水アルコール溶液(濃度40%)(米国ジェレスト社製)を含浸し、80℃にて10分間乾燥を行った。さらに、130℃にて1kg/cm2の圧力で3分間加熱加圧処理を行い、縮合反応を行った。複合膜の厚みは20ミクロン、酸基濃度は、EW=190であった。縮合物の平均分子量は約1500であり、低分子体であることを確認した。
【0056】
(3)カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)
固体高分子型電解質膜のナフィオン(登録商標)112(米国デュポン社製)を用いた。厚み50ミクロン、酸基濃度の値(EW)は、EW=1100である。
【0057】
(4)カソード電極
E−TEK(登録商標)電極(米国E−TEK社製)(厚み360ミクロン、炭素繊維クロス使用、白金担持率30%、白金担持量1mg/cm2)に、ナフィオン(登録商標)溶液(5%水アルコール溶液)を含浸量0.8mg/cm2にて、含浸し、130℃にて1kg/cm2の圧力で3分間加熱加圧処理を行った。これをアノード電極として使用した。
【0058】
上記の4点をこの順に積層して、100℃にて1kg/cm2の圧力で10分間加熱処理を行い、接合し、膜電極接合体を作成した。
【0059】
評価試験
上記の膜電極接合体を用いて、下記の発電条件で、単セルでの発電テストを行った。
発電条件 :
水素側流量:50ml/分
酸素側流量:200ml/分
セル面積 :5cm2
セル温度 :80℃
端子間電圧:0.5ボルトに制御
水素側加湿:バブラー方式
酸素側加湿:バブラー方式
【0060】
実験では、水素側のバブラー温度を変更させることで、水素中の水分率(湿度)を制御した。また、バブラーを通さずに、乾燥水素を送ることで、湿度0の場合の実験を行った。
湿度100%、50%、0%のどの場合でも出力が著しく落ちる現象は見られず、目的通り水素側を無加湿で運転が可能なことを実証できた。
ちなみに、上記のカソード側陽イオン交換樹脂膜とアノード側陽イオン交換樹脂膜の2枚を乾燥状態で張り合わせ後に、水分を与え、その分配比率を測定した。分配比率は、1.7:8.3であった。これは、アノード側陽イオン交換樹脂膜に向けてカソード側陽イオン交換樹脂膜から水が移動しやすいことを間接的に示している。
【0061】
比較例1
(アノード及びカソード側電極の作成)
TEK(登録商標)電極(米国E−TEK社製)(厚み360ミクロン、炭素繊維クロス使用、白金担持率30%、白金担持量1mg/cm2)に、ナフィオン(登録商標)溶液(5%水アルコール溶液)を含浸量0.8mg/cm2にて、含浸し、130℃にて1kg/cm2の圧力で3分間加熱加圧処理を行った。これをアノード及びカソード側電極として使用した。
【0062】
(カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B))
固体高分子型電解質膜のナフィオン(登録商標)112(米国デュポン社製)を用いた。厚み50ミクロン、酸基濃度は、EW=1100である。
【0063】
(アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A))
使用せず。
【0064】
上記の3点をこの順に積層して、120℃にて1kg/cm2の圧力で10分間加熱処理を行い、接合し、膜電極接合体を作成した。
このサンプルに対して同様に、その発電出力を湿度別に測定したが、明らかに、湿度が低くなると出力低下が認められ、特に湿度0%では、発電は不可能であった。
【0065】
【表1】
【0066】
【発明の効果】
本発明の膜電極接合体を用いれば、カソード側で発生する水を効率よくアノード側に移動させることができるので、アノード側に供給される水素を加湿しなくともアノード側が水不足にならなく、燃料電池のシステムを大幅に簡素化できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】膜電極接合体の構成を示す図。
【図2】発電中の電解質内の水分分布を示す図。
図2(A)は、従来の膜電極接合体の場合。
図2(B)は、本発明の膜電極接合体の場合。
【符号の説明】
1 アノード電極
2 アノード電極側の陽イオン交換樹脂膜(A)
3 カソード電極側の陽イオン交換樹脂膜(B)
4 カソード電極
Claims (9)
- 陽イオン交換樹脂膜の両面にアノード電極とカソード電極が接合された固体高分子型燃料電池用の膜電極接合体において、
陽イオン交換樹脂膜は、アノード電極側に配置される陽イオン交換樹脂膜(A)と、カソード電極側に配置される陽イオン交換樹脂膜(B)との2つの膜部材から構成され、且つ、各膜部材中における酸基濃度値(酸基1個あたりの陽イオン交換樹脂の分子量)は、(A)、(B)中における酸基濃度値をそれぞれa、bとすると、下記の式(1)に示す関係を満足することを特徴とする膜電極接合体。
b>a (1) - 上記aとbとの関係は、下記の式(2)を満足することを特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体。
2000≧b>800>a≧100 (2) - 上記低分子量縮合体の分子量は、5000以下であることを特徴とする請求項3に記載の膜電極接合体。
- 陽イオン交換樹脂膜(A)は、厚みが100μm以下の織布又は不織布によって補強されていることを特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体。
- 陽イオン交換樹脂膜(B)は、スルホン基を含む分子量5000以上のフッ素樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体。
- 陽イオン交換樹脂膜(B)は、厚みが50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体。
- アノード電極に用いられる電解質物質は、陽イオン交換樹脂膜(A)の陽イオン交換樹脂と同一であり、一方、カソード電極に用いられる電解質物質は、陽イオン交換樹脂膜(B)の陽イオン交換樹脂と同一であることを特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の膜電極接合体を用いてなる燃料電池。
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JP2002331000A JP2004165047A (ja) | 2002-11-14 | 2002-11-14 | 膜電極接合体、及びそれを用いた燃料電池 |
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JP2007018995A (ja) * | 2004-12-22 | 2007-01-25 | Asahi Glass Co Ltd | 電解質膜、その製造方法及び固体高分子型燃料電池用膜電極接合体 |
JP2007095433A (ja) * | 2005-09-28 | 2007-04-12 | Asahi Glass Co Ltd | 固体高分子形燃料電池用電解質膜及びその製造方法 |
WO2007139147A1 (ja) * | 2006-05-31 | 2007-12-06 | University Of Yamanashi | イオン伝導性高分子組成物、その製造方法及びこのイオン伝導性高分子組成物を含む膜並びにこれを用いた電気化学デバイス |
JP2009252723A (ja) * | 2008-04-11 | 2009-10-29 | Asahi Glass Co Ltd | 固体高分子形燃料電池用電解質膜、その製造方法及び固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 |
JP2017199464A (ja) * | 2016-04-25 | 2017-11-02 | 国立大学法人山梨大学 | 高分子電解質膜及びその利用 |
-
2002
- 2002-11-14 JP JP2002331000A patent/JP2004165047A/ja active Pending
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