以下、添付図面を参照して本発明の光ファイバと光源装置の実施の形態を説明する。なお、図面の説明にあたって同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の光源装置の第1実施形態の構成図である。図1に示すように、この装置は、(a)所定波長のパルス光を発生する光パルス発生器100と、(b)光パルス発生器100から出力されたパルス光を入力し、増幅して、高ピークパルス光を出力する光増幅器200と、(c)光増幅器200から出力された高ピークパルス光を入力し、伝搬することによってSC光を生成し、出力する光ファイバ310とを備える。
図2は、光ファイバ310の構成図であり、長手方向(光の進行方向)における、波長分散の分布を示している。図2に示すように、光ファイバ310は、光増幅器200からの高ピークパルス光の入射端での波長分散DINが正の値であり、長手方向に沿って、波長分散Dが線形に減少する。
本実施形態の光源装置では、まず、光パルス発生器100が、所定波長の短パルス光を発生する。光パルス光発生器100から出力された短パルス光は、光増幅器200に入力し、増幅され、高ピークパルス光となって出力される。そして、光増幅器200から出力された高ピークパルス光が光ファイバ310に入力する。
光ファイバ310に、高ピークパルス光が入力すると、光カー効果によって、光が感じる屈折率が変化し、光波の自己位相変調が発生する。この結果、光ファイバ310内での光パルス内に波長分布が発生する。光ファイバ310に入力した光は、波長分散が正の値である異常分散の領域を進行するので、波長の長い方が群速度の遅い異常分散領域では、パルス圧縮が進む。分散が長手方向に減少していると、パルスはさらに強制的に圧縮される為、ピークパワーは増大する。これが更に非線形効果を助長し、スペクトルの拡大につながっている。
圧縮された光パルスには、ある程度の波長範囲の波長の光が含まれているが、分散値が正から負へ変化する最中に、光カー効果による四光波混合の影響を強く受け、更に広い波長範囲の波長の光が発生する。こうして、SC光が生成される。
図2に示すように、光ファイバ310は、その波長分散Dが進行方向の位置Zの関数であって、
D(Z)=DIN−(ΔD)・Z・・・(3)
と表される。したがって、光が進行すると、自己位相変調によるスペクトル拡大は発生しにくくなるが、進行による異なる波長の光の間での位相差の発生は徐々に低減する。このため、波長分散Dが進行方向の位置Zに依存せず、
D(Z)=DIN・・・(4)
が成り立つ場合に比べて、異なる波長の光の時間的な重なりが大きくなり、効率的に四光波混合が発生する。
すなわち、光ファイバ310では、光が進行するべき方向において、異常分散で始まって、波長分散が減少する分散減少領域を備え、SC光発生の主要部である分散減少領域で、異常分散によるパルス圧縮、自己位相変調、四光波混合等の非線形現象によりSC光を生成している。
そして、波長分散が光の進行方向で変化することにより、四光波混合が発生する光の波長付近で、零分散波長の一種の走査が行われることになるので、様々な波長の光同士で四光波混合が発生しやすくなり、広い波長範囲の波長の光が生成される。
なお、本実施形態においては、光ファイバの分散スロープの絶対値が小さいことが望ましい。分散スロープの絶対値が小さいと、波長が異なる光での時間的な重なりが大きくなるので、四光波混合が発生しやすくなるからである。
また、分散スロープの長手方向に関する積分値の絶対値が小さい程、波長が異なる光での時間的な重なりが大きくなるので、四光波混合が発生しやすくなる。
また、分散減少領域での波長分散値は正の値から負の値まで変化することが好ましい。
分散スロープが所定波長範囲で正であるファイバにおいて、波長分散値が正の値を有する場合には、入射した高ピークパルス光の波長よりも短い波長の光が生成されやすく、波長分散値が負の値を有する場合には、入射した高ピークパルス光の波長よりも長い波長の光が生成されやすい。
したがって、分散減少領域での波長分散値は正の値から負の値まで変化していると、入射した高ピークパルス光の波長に対して短長両側の波長帯の光が効率的に生成されるので、広い波長範囲でのSC光を発生する。
更に、自己位相変調や四光波混合の原因となる非線形光学効果であるカー効果は、非線形屈折率が大きい程、また、光強度密度が大きい程、発現しやすくなる。数10nm以上の波長幅とするには、非線形屈折率n2と実効コア断面積Aeffと高ピークパルス光のピークパワーPpeakとの間に、
(n2/Aeff)・Ppeak>0.03×10−8[1/W]×1.5[W]=0.045×10−8・・・(1)
の関係が成り立つことが必要である。
図3は、高ピークパルス光のピークパワーPpeakが1.5[W]のときの非線形屈折率n2と実効コア断面積Aeffとの比の値とSC光の波長幅との関係を示すグラフである。なお、以下で、光ファイバの長さをLで、分散スロープをDSLOPと記す。
この実測にあたっては、光ファイバ310として、
DIN=1〜4[ps/nm/km]
ΔD=0.5〜2[ps/nm/km2]
DSLOP=0.035[ps/nm2/km]
L=3[km]
の特性の光ファイバを使用した。
また、光ファイバ310に入力する高ピークパルス光は、
パルス中心波長(λ0)=1550[nm]
パルスピークパワー=1.5[W]
パルス幅=3.5[ps](半値全幅)
とした。
そして、種々のDINとΔDとを組合せて、非線形屈折率n2と実効コア断面積Aeffとの比の値とSC光の波長幅とを計算した。
図3から、高ピークパルス光のピークパワーPpeakが1.5[W]のとき、n2/Aeff>0.03×10−8[1/W]であれば、DINとΔDとの組合せにかかわらず、光周波数の変位の幅wfが5000[GHz]程度以上のSC光が生成されて出力された。
なお、光周波数の変位の幅wfと波長範囲wλとの関係は、
wλ〜(λ02/C)・wf・・・(5)
ここで、C:光速度、
で表され、光周波数の変位の幅wfを[THz]単位で、波長範囲wλを[nm]単位で表したとき、λ0=1550[nm]とすると、
wλ〜8wf・・・(6)
となる。
すなわち、高ピークパルス光のピークパワーPpeakが1.5[W]のとき、
n2/Aeff>0.03×10−8[1/W]
であれば、約40nm以上の波長幅のSC光が出力される。
また、本実施形態では、光ファイバ310が偏波保持ファイバであって偏波面保持特性を有することが好ましい。四光波混合については、相互作用する2つの光が同一の偏波面方向を有する場合に、最も良く四光波混合が発生するからである。
以下に、本実施形態の光源装置の実施例を説明する。
(実施例1)
図4は、実施例1の光源装置の構成図である。図4に示すように、この装置は、(a)所定波長のパルス光を発生する光パルス発生器100と、(b)光パルス発生器100から出力されたパルス光を入力し、増幅して、高ピークパルス光を出力する光増幅器200と、(c)光増幅器200から出力された高ピークパルス光を入力し、伝搬することによってSC光を生成し、出力する光ファイバ311とを備える。
光ファイバ311は、
DIN=1[ps/nm/km]
ΔD=1/3[ps/nm/km2]
DSLOP=0.07[ps/nm2/km]
L=3[km]
n2=2.0×10−20[m2/W]
Aeff=50[μm2]
の分散シフトファイバである。
図5は、本実施例での高ピークパルス光と生成されたSC光とのスペクトルを示すグラフである。図5(a)は光ファイバ311に入力する高ピークパルス光のスペクトルを示すグラフであり、図5(b)は光ファイバ311から出力されるSC光とのスペクトルを示すグラフである。
光ファイバ311に入力する高ピークパルス光は、図5(a)に示すスペクトル分布を有するとともに、
パルス中心波長(λ0)=1550[nm]
パルスピークパワー=1.5[W]
パルス幅=3.5[ps](半値全幅)
とした。
図5(b)に示すように、本実施例の光源装置では、波長=1550[μm]の付近で、出力スペクトルにおけるフラットなピーク部分の光周波数の変位の幅wfが約5000[GHz]のSC光が生成されて出力された。すなわち、本実施例の光源装置では、約40nmの波長幅のSC光が出力された。
(実施例2)
図6は、実施例2の光源装置の構成図である。図6に示すように、この装置は、(a)所定波長のパルス光を発生する光パルス発生器100と、(b)光パルス発生器100から出力されたパルス光を入力し、増幅して、高ピークパルス光を出力する光増幅器200と、(c)光増幅器200から出力された高ピークパルス光を入力し、伝搬することによってSC光を生成し、出力する光ファイバ312とを備える。
光ファイバ312は、
DIN=1[ps/nm/km]
ΔD=0.5[ps/nm/km2]
DSLOP=0.01[ps/nm2/km]
L=3[km]
n2=2.0×10−20[m2/W]
Aeff=50[μm2]
の分散フラットファイバである。
図7は、本実施例で生成されたSC光のスペクトルを示すグラフである。なお、光ファイバ312に入力する高ピークパルス光は、実施例1と同様とした。
図7に示すように、本実施例の光源装置では、波長=1550[μm]の付近で、出力スペクトルにおけるフラットなピーク部分の光周波数の変位の幅wfが約12000[GHz]のSC光が生成されて出力された。すなわち、本実施例の光源装置では、約96nmの波長幅のSC光が出力された。
本実施例は、実施例1と比べてSC光の波長幅が拡大した。
(実施例3)
図8は、実施例3の光源装置の構成図である。図8に示すように、この装置は、(a)所定波長のパルス光を発生する光パルス発生器100と、(b)光パルス発生器100から出力されたパルス光を入力し、増幅して、高ピークパルス光を出力する光増幅器200と、(c)光増幅器200から出力された高ピークパルス光を入力し、伝搬することによってSC光を生成し、出力する光ファイバ313とを備える。
光ファイバ313は、
DIN=0.7[ps/nm/km]
ΔD=1/3[ps/nm/km2]
DSLOP=0.01[ps/nm2/km]
L=3[km]
n2=2.0×10−20[m2/W]
Aeff=50[μm2]
の分散フラットファイバである。
図9は、本実施例で生成されたSC光のスペクトルを示すグラフである。なお、光ファイバ313に入力する高ピークパルス光は、実施例1と同様とした。
図9に示すように、本実施例の光源装置では、波長=1550[μm]の付近で、出力スペクトルにおけるフラットなピーク部分(±5[dB]程度以内)の光周波数の変位の幅wfが約10000[GHz]のSC光が生成されて出力された。すなわち、本実施例の光源装置では、約80nmの波長幅のSC光が出力された。
本実施例は、実施例1と比べて、実施例2と同様にSC光の波長幅が拡大した。
(実施例4)
本実施例は、SC光の波長幅と分散スロープDSLOPとの関係を系統的に計測したものである。
図10は、実施例4の光源装置の構成図である。図10に示すように、この装置は、(a)所定波長のパルス光を発生する光パルス発生器100と、(b)光パルス発生器100から出力されたパルス光を入力し、増幅して、高ピークパルス光を出力する光増幅器200と、(c)光増幅器200から出力された高ピークパルス光を入力し、伝搬することによってSC光を生成し、出力する光ファイバ314とを備える。
光ファイバ314は、
DIN=2[ps/nm/km]
ΔD=1[ps/nm/km2]
DSLOP=0.01〜0.2[ps/nm2/km]
L=3[km]
n2=6.0×10−20[m2/W]
Aeff=10[μm2]
の分散フラットファイバである。
図11および図12は、本実施例で生成されたSC光のスペクトルを示すグラフである。図11(a)はDSLOP=0.2の場合、図11(b)はDSLOP=0.1の場合、図11(c)はDSLOP=0.08の場合、図11(d)はDSLOP=0.05の場合、図12(a)はDSLOP=0.03の場合、図12(b)はDSLOP=0.02の場合、および、図12(c)はDSLOP=0.01の場合を示す。なお、光ファイバ314に入力する高ピークパルス光は、実施例1と同様とした。
図11および図12に示すように、DSLOPが0.1以下で、波長=1550[μm]の付近で、出力スペクトルにおけるフラットなピーク部分の光周波数の変位の幅wfが約10000[GHz]のSC光が生成されて出力された。すなわち、本実施例の光源装置では、DSLOPが0.1以下で、約80nmの波長幅のSC光が出力された。
(実施例5)
図13は、実施例5の光源装置の構成図である。図13に示すように、この装置は、(a)所定波長のパルス光を発生する光パルス発生器100と、(b)光パルス発生器100から出力されたパルス光を入力し、増幅して、高ピークパルス光を出力する光増幅器200と、(c)光増幅器200から出力された高ピークパルス光を入力し、伝搬することによってSC光を生成し、出力する光ファイバ315とを備える。
光ファイバ315は、
DIN=2[ps/nm/km]
ΔD=1[ps/nm/km2]
DSLOP:0.01〜−0.01[ps/nm2/km]で線形に減少
L=3[km]
n2=3.0×10−20[m2/W]
Aeff=50[μm2]
の分散フラットファイバである。
図14は、本実施例で生成されたSC光のスペクトルを示すグラフである。なお、光ファイバ315に入力する高ピークパルス光は、実施例1と同様とした。
図14に示すように、本実施例の光源装置では、波長=1550[μm]の付近で、出力スペクトルにおけるフラットなピーク部分の光周波数の変位の幅wfが約30000[GHz]のSC光が生成されて出力された。すなわち、本実施例の光源装置では、約240nmの波長幅のSC光が出力された。
(第2実施形態)
図15は、本発明の光源装置の第2実施形態の構成図である。図15に示すように、この装置は、(a)所定波長のパルス光を発生する光パルス発生器100と、(b)光パルス発生器100から出力されたパルス光を入力し、増幅して、高ピークパルス光を出力する光増幅器200と、(c)光増幅器200から出力された高ピークパルス光を入力し、伝搬することによってSC光を生成し、出力する光ファイバ320とを備える。
図16は、光ファイバ320の長手方向(光の進行方向)における、波長分散の分布を示すグラフである。
本実施形態は、第1実施形態と比べて、光ファイバ320が、図16に示すように、光増幅器200からの高ピークパルス光の入射端での波長分散DINが正の値であることは同様であるが、長手方向に沿って、波長分散Dが非直線的に減少する点が異なる。
本実施形態の光源装置では、第1実施形態と同様に、光パルス発生器100が発生した短パルス光が光増幅器200に入力し、増幅され、高ピークパルス光となって出力され、光増幅器200から出力された高ピークパルス光が光ファイバ320に入力する。
以後、第1実施形態と同様にして、光ファイバ320に、高ピークパルス光が入力すると、光カー効果によって、光が感じる屈折率が変化し、光波の自己位相変調が発生する。この結果、光ファイバ320内での光パルス内に波長分布が発生する。光ファイバ320に入力した光は、波長分散が正の値である異常分散の領域を進行するので、波長の長い方が群速度の遅い異常分散領域では、パルス圧縮が進む。分散が長手方向に減少しているとパルスは更に強制的に圧縮される為、ピークパワーは増大する。これが更に非線形効果を助長し、スペクトルの拡大につながっている。
圧縮された光パルスには、ある程度の波長範囲の波長の光が含まれているが、分散値が正から負へ変化する最中に、光カー効果による四光波混合の影響を強く受け、更に広い波長範囲の波長の光が発生する。こうして、SC光が生成される。
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、光ファイバの分散スロープの絶対値が小さいことが望ましく、また、分散スロープの長手方向に関する積分値の絶対値が小さい程、波長が異なる光での時間的な重なりが大きくなるので、四光波混合が発生しやすくなる。
更に、第1実施形態と同様に、自己位相変調や四光波混合の原因となる非線形光学効果であるカー効果は、非線形屈折率が大きい程、また、光強度密度が大きい程、発現しやすくなる。数10nm以上の波長幅とするには、非線形屈折率n2と実効コア断面積Aeffと高ピークパルス光のピークパワーPpeakとの間に、
(n2/Aeff)・Ppeak>0.03×10−8[1/W]×1.5[W]=0.045×10−8 ・・・(1)
の関係が成り立つことが必要である。
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、光ファイバ320が偏波保持ファイバであって偏波面保持特性を有することが好ましい。四光波混合については、相互作用する2つの光が同一の偏波面方向を有する場合に、最も良く四光波混合が発生するからである。
以下、本実施形態の実施例を説明する。
(実施例6)
図17は、実施例6の光源装置の構成図である。図17に示すように、この装置は、(a)所定波長のパルス光を発生する光パルス発生器100と、(b)光パルス発生器100から出力されたパルス光を入力し、増幅して、高ピークパルス光を出力する光増幅器200と、(c)光増幅器200から出力された高ピークパルス光を入力し、伝搬することによってSC光を生成し、出力する光ファイバ321とを備える。
光ファイバ321は、
DIN=1.8[ps/nm/km]
DOUT=−0.1[ps/nm/km]
DSLOP=0.01[ps/nm2/km]
L=3[km]
n2=2.0×10−20[m2/W]
Aeff=50[μm2]
の分散フラットファイバである。
図18は、本実施例でのSC光の生成の測定結果を示すグラフである。なお、光ファイバ321に入力する高ピークパルス光は、実施例1と同様とした。
図18に示すように、本実施例の光源装置では、波長=1550[μm]の付近で、出力スペクトルにおけるフラットなピーク部分の光周波数の変位の幅wfが約12000[GHz]のSC光が生成されて出力された。すなわち、本実施例の光源装置では、約96nmの波長幅のSC光が出力された。
(第3実施形態)
図19は、本発明の光源装置の第3実施形態の構成図である。図19に示すように、この装置は、(a)所定波長のパルス光を発生する光パルス発生器100と、(b)光パルス発生器100から出力されたパルス光を入力し、増幅して、高ピークパルス光を出力する光増幅器200と、(c)光増幅器200から出力された高ピークパルス光を入力し、伝搬することによってSC光を生成し、出力する光ファイバ330とを備える。
図20は、光ファイバ330の長手方向(光の進行方向)における、波長分散の分布を示すグラフである。
本実施形態は、第1実施形態と比べて、光ファイバ320が、図20に示すように、光増幅器200からの高ピークパルス光の入射端での波長分散DINが正の値であることは同様であるが、長手方向に沿って、波長分散Dが離散的に減少する点が異なる。
こうした光ファイバは、各区間の波長分散値Diを有する、各区間の長さLiの光ファイバを接続することによって得られる。
本実施形態の光源装置では、第1実施形態と同様に、光パルス発生器100が発生した短パルス光が光増幅器200に入力し、増幅され、高ピークパルス光となって出力され、光増幅器200から出力された高ピークパルス光が光ファイバ330に入力する。
以後、第1実施形態と同様にして、光ファイバ330に、高ピークパルス光が入力すると、光カー効果によって、光が感じる屈折率が変化し、光波の自己位相変調が発生する。この結果、光ファイバ330内での光パルス内に波長分布が発生する。光ファイバ330に入力した光は、波長分散が正の値である異常分散の領域を進行するので、波長の長い方が群速度の遅い異常分散領域では、パルス圧縮が進む。分散が長手方向に減少しているとパルスは更に強制的に圧縮される為、ピークパワーは増大する。これが更に非線形効果を助長し、スペクトルの拡大につながっている。
圧縮された光パルスには、ある程度の波長範囲の波長の光が含まれているが、分散値が正から負へ変化する最中に、光カー効果による四光波混合の影響を強く受け、更に広い波長範囲の波長の光が発生する。こうして、SC光が生成される。
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、光ファイバの分散スロープの絶対値が小さいことが望ましく、また、分散スロープの長手方向に関する積分値の絶対値が小さい程、波長が異なる光での時間的な重なりが大きくなるので、四光波混合が発生しやすくなる。
更に、第1実施形態と同様に、自己位相変調や四光波混合の原因となる非線形光学効果であるカー効果は、非線形屈折率が大きい程、また、光強度密度が大きい程、発現しやすくなる。数10nm以上の波長幅とするには、非線形屈折率n2と実効コア断面積Aeffと高ピークパルス光のピークパワーPpeakとの間に、
(n2/Aeff)・Ppeak>0.03×10−8[1/W]×1.5[W]=0.045×10−8 ・・・(1)
の関係が成り立つことが必要である。
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、光ファイバ330が偏波保持ファイバであって偏波面保持特性を有することが好ましい。四光波混合については、相互作用する2つの光が同一の偏波面方向を有する場合に、最も良く四光波混合が発生するからである。
以下、本実施形態の実施例を説明する。
(実施例7)
図21は、実施例7の光源装置の構成図である。図21に示すように、この装置は、(a)所定波長のパルス光を発生する光パルス発生器100と、(b)光パルス発生器100から出力されたパルス光を入力し、増幅して、高ピークパルス光を出力する光増幅器200と、(c)光増幅器200から出力された高ピークパルス光を入力し、伝搬することによってSC光を生成し、出力する光ファイバ331とを備える。
光ファイバ331は、図21に示すように、各区間の長さLiが全て500[m]であり、
D1=2.0[ps/nm/km]、
D2=1.4[ps/nm/km]、
D3=0.8[ps/nm/km]、
D4=0.2[ps/nm/km]、
D5=0.01[ps/nm/km]、
D6=−0.2[ps/nm/km]、
DSLOP=0.01[ps/nm2/km]
L=3[km]
n2=2.0×10−20[m2/W]
Aeff=50[μm2]
の特性を有する。
図22は、本実施例で生成されたSC光のスペクトルを示すグラフである。なお、光ファイバ321に入力する高ピークパルス光は、実施例1と同様とした。
図22に示すように、本実施例の光源装置では、波長=1550[μm]の付近で、出力スペクトルにおけるフラットなピーク部分の光周波数の変位の幅wfが約12000[GHz]のSC光が生成されて出力された。すなわち、本実施例の光源装置では、約96nmの波長幅のSC光が出力された。
(第4実施形態)
図23は、本発明の光源装置の第4実施形態の構成図である。図23に示すように、この装置は、(a)所定波長のパルス光を発生する光パルス発生器100と、(b)光パルス発生器100から出力されたパルス光を入力し、増幅して、高ピークパルス光を出力する光増幅器200と、(c)光増幅器200から出力された高ピークパルス光を入力し、伝搬することによってSC光を生成し、出力する、光ファイバ341と光ファイバ342とからなる光ファイバ340とを備える。
図24は、光ファイバ340の長手方向(光の進行方向)における、波長分散の分布を示すグラフである。図24に示すように、(i)光ファイバ341では、光増幅器200からの高ピークパルス光の入射端での波長分散DINが正の値であり、長手方向に沿って、波長分散Dが線形に減少し、(ii)光ファイバ342では、波長分散が小さな値を有する。
こうした光ファイバは、各区間の波長分散値Diを有する、各区間の長さLiの光ファイバを接続することによって得られる。
本実施形態の光源装置では、第1実施形態と同様に、光パルス発生器100が発生した短パルス光が光増幅器200に入力し、増幅され、高ピークパルス光となって出力され、光増幅器200から出力された高ピークパルス光が光ファイバ340の光ファイバ341に入力する。
以後、第1実施形態と同様にして、光ファイバ341に、高ピークパルス光が入力すると、光カー効果によって、光が感じる屈折率が変化し、光波の自己位相変調が発生する。この結果、光ファイバ341内での光パルス内に波長分布が発生する。光ファイバ341に入力した光は、波長分散が正の値である異常分散の領域を進行するので、波長の長い方が群速度の遅い異常分散領域では、パルス圧縮が進む。分散が長手方向に減少しているとパルスは更に強制的に圧縮される為、ピークパワーは増大する。これが更に非線形効果を助長し、スペクトルの拡大につながっている。
圧縮された光パルスには、ある程度の波長範囲の波長の光が含まれているが、分散値が正から負に変化する最中に、光カー効果による四光波混合の影響を強く受け、更に広い波長範囲の波長の光が発生する。こうして、SC光が生成される。
こうして生成されたSC光は、光ファイバ341から出力され、光ファイバ342に入力し、光ファイバ342を伝搬後に出力される。
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、光ファイバ341の分散スロープの絶対値が小さいことが望ましく、また、分散スロープの長手方向に関する積分値の絶対値が小さい程、波長が異なる光での時間的な重なりが大きくなるので、四光波混合が発生しやすくなる。
更に、第1実施形態と同様に、光ファイバ341での自己位相変調や四光波混合の原因となる非線形光学効果であるカー効果は、非線形屈折率が大きい程、また、光強度密度が大きい程、発現しやすくなる。数10nm以上の波長幅とするには、非線形屈折率n2と実効コア断面積Aeffと高ピークパルス光のピークパワーPpeakとの間に、
(n2/Aeff)・Ppeak>0.03×10−8[1/W]×1.5[W]=0.045×10−8 ・・・(1)
の関係が成り立つことが必要である。
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、光ファイバ341が偏波保持ファイバであって偏波面保持特性を有することが好ましい。四光波混合については、相互作用する2つの光が同一の偏波面方向を有する場合に、最も良く四光波混合が発生するからである。
以下、本実施形態の実施例を説明する。
(実施例8)
図25は、実施例8の光源装置の構成図である。図25に示すように、この装置は、(a)所定波長のパルス光を発生する光パルス発生器100と、(b)光パルス発生器100から出力されたパルス光を入力し、増幅して、高ピークパルス光を出力する光増幅器200と、(c)光増幅器200から出力された高ピークパルス光を入力し、伝搬することによってSC光を生成して出力する、光ファイバ346と光ファイバ347とからなる光ファイバ345とを備える。
光ファイバ346は、図25に示すように、
DIN=0.8[ps/nm/km]、
ΔD=2[ps/nm/km2]、
DSLOP=0.01[ps/nm2/km]、
L=0.5[km]
n2=6.0×10−20[m2/W]
Aeff=10[μm2]
の特性を有する。
また、光ファイバ347は、図25に示すように、
DIN〜0[ps/nm/km]、
ΔD〜0[ps/nm/km2]、
DSLOP=0.01[ps/nm2/km]、
L=2.5[km]
n2=6.0×10−20[m2/W]
Aeff=10[μm2]
の特性を有する。
図26は、本実施例で生成されたSC光のスペクトルを示すグラフである。なお、光ファイバ335に入力する高ピークパルス光は、実施例1と同様とした。
図26に示すように、本実施例の光源装置では、波長=1550[μm]の付近で、出力スペクトルにおけるフラットなピーク部分の光周波数の変位の幅wfが約10000[GHz]のSC光が生成されて出力された。すなわち、本実施例の光源装置では、約80nmの波長幅のSC光が出力された。
なお、本実施例においては、第1実施形態に対する第2または第3実施形態と同様の変形が可能である。
(第5実施形態)
図27は、本発明の光源装置の第5実施形態の構成図である。図27に示すように、この装置は、(a)所定波長のパルス光を発生する光パルス発生器100と、(b)光パルス発生器100から出力されたパルス光を入力し、増幅して、高ピークパルス光を出力する光増幅器200と、(c)光増幅器200から出力された高ピークパルス光を入力し、伝搬することによってSC光を生成し、出力する、光ファイバ351と光ファイバ352と光ファイバ353とからなる光ファイバ350とを備える。
図28は、光ファイバ350の長手方向(光の進行方向)における、波長分散の分布を示すグラフである。図28に示すように、(i)光ファイバ351では、波長分散Dが小さな値を有し、(ii)光ファイバ352では、高ピークパルス光の入射端での波長分散DINが正の値であり、長手方向に沿って、波長分散Dが線形に減少し、(iii)光ファイバ353では、波長分散Dが小さな値を有する。
こうした光ファイバは、各区間の波長分散値Diを有する、各区間の長さLiの光ファイバを接続することによって得られる。
本実施形態の光源装置では、第1実施形態と同様に、光パルス発生器100が発生した短パルス光が光増幅器200に入力し、増幅され、高ピークパルス光となって出力され、光増幅器200から出力された高ピークパルス光が光ファイバ350の光ファイバ351に入力する。そして、光ファイバ351を伝搬後に光ファイバ352に入力する。
以後、第1実施形態と同様にして、光ファイバ352に、高ピークパルス光が入力すると、光カー効果によって、光が感じる屈折率が変化し、光波の自己位相変調が発生する。この結果、光ファイバ352内での光パルス内に波長分布が発生する。光ファイバ352に入力した光は、波長分散が正の値である異常分散の領域を進行するので、波長の長い方が群速度の遅い異常分散領域では、パルス圧縮が進む。分散が長手方向に減少しているとパルスは更に強制的に圧縮される為、ピークパワーは増大する。これが更に非線形効果を助長し、スペクトルの拡大につながっている。
圧縮された光パルスには、ある程度の波長範囲の波長の光が含まれているが、分散値が正から負へ変化する最中に、光カー効果による四光波混合の影響を強く受け、更に広い波長範囲の波長の光が発生する。こうして、SC光が生成される。
こうして生成されたSC光は、光ファイバ352から出力され、光ファイバ353に入力し、光ファイバ353を伝搬後に出力される。
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、光ファイバ352の分散スロープの絶対値が小さいことが望ましく、また、分散スロープの長手方向に関する積分値が略0であると、波長が異なる光での時間的な重なりがほぼ理想的に大きくなるので、四光波混合が発生しやすくなる。
更に、第1実施形態と同様に、光ファイバ352での自己位相変調や四光波混合の原因となる非線形光学効果であるカー効果は、非線形屈折率が大きい程、また、光強度密度が大きい程、発現しやすくなる。数10nm以上の波長幅とするには、非線形屈折率n2と実効コア断面積Aeffと高ピークパルス光のピークパワーPpeakとの間に、
(n2/Aeff)・Ppeak>0.03×10−8[1/W]×1.5[W]=0.045×10−8・・・(1)、
の関係が成り立つことが必要である。
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、光ファイバ351、352が偏波保持ファイバであって偏波面保持特性を有することが好ましい。四光波混合については、相互作用する2つの光が同一の偏波面方向を有する場合に、最も良く四光波混合が発生するからである。
以下、本実施形態の実施例を説明する。
(実施例9)
図29は、実施例9の光源装置の構成図である。図29に示すように、この装置は、(a)所定波長のパルス光を発生する光パルス発生器100と、(b)光パルス発生器100から出力されたパルス光を入力し、増幅して、高ピークパルス光を出力する光増幅器200と、(c)光増幅器200から出力された高ピークパルス光を入力し、伝搬することによってSC光を生成して出力する、光ファイバ356と光ファイバ357と光ファイバ358とからなる光ファイバ355とを備える。
光ファイバ356は、図29に示すように、
DIN=0.2[ps/nm/km]、
ΔD〜0[ps/nm/km2]、
DSLOP=0.035[ps/nm2/km]、
L=1[km]
n2=5.0×10−20[m2/W]
Aeff=13.85[μm2]
の特性を有する。
また、光ファイバ357は、図29に示すように、
DIN=0.8[ps/nm/km]、
ΔD=1[ps/nm/km2]、
DSLOP=0.035[ps/nm2/km]、
L=1[km]
n2=5.0×10−20[m2/W]
Aeff=13.85[μm2]
の特性を有する。
また、光ファイバ358は、図29に示すように、
DIN=0.2[ps/nm/km]、
ΔD〜0[ps/nm/km2]、
DSLOP=0.035[ps/nm2/km]、
L=1[km]
n2=5.0×10−20[m2/W]
Aeff=13.85[μm2]
の特性を有する。
図30は、本実施例で生成されたSC光のスペクトルを示すグラフである。なお、光ファイバ355に入力する高ピークパルス光は、実施例1と同様とした。
図30に示すように、本実施例の光源装置では、波長=1550[μm]の付近で、出力スペクトルにおけるフラットなピーク部分の光周波数の変位の幅wfが約12000[GHz]のSC光が生成されて出力された。すなわち、本実施例の光源装置では、約96nmの波長幅のSC光が出力された。
なお、本実施例においては、第1実施形態に対する第2または第3実施形態と同様の変形が可能である。
また、図31に示すように、上記実施形態のSC光用の光ファイバの所定位置L=L0における零分散波長は、入射パルス光の波長λ0に一致する。波長λ0における光ファイバの入射端L=0の波長分散をDINとし、光ファイバはどの位置においても、λ0±20nmの波長範囲において一定の分散スロープDSLOPを有する。
(第6実施形態)
SC光を発生させるためには、必ずしも分散スロープDSLOPがλ0±20nmの波長範囲において一定である必要はなく、図32に示すように、波長分散Dはλ0±20nmの波長範囲において略一定(フラット(DSLOP≒0)であってもよい。この光ファイバは所定の長さ方向のある位置において、2つの零分散波長を1530〜1570nmの波長範囲内に有する。
図33は、図32の特性を有するSC光用光ファイバ360を用いた第6実施形態の光源装置を示す。図33に示すように、この装置は、(a)所定波長のパルス光を発生する光パルス発生器100と、(b)光パルス発生器100から出力されたパルス光を入力し、増幅して、高ピークパルス光を出力する光増幅器200と、(c)光増幅器200から出力された高ピークパルス光を入力し、伝搬することによってSC光を生成し、出力する光ファイバ360とを備える。光ファイバ360は、光増幅器200からの高ピークパルス光の入射端での波長分散DINが正の値であり、長手方向に沿って、所定波長範囲λ0±20nm内の波長分散Dが線形に減少する。すなわち、長さL=0における波長分散DはDINであり、長さL=L0における波長分散Dは零であり、長さL=Lにおける波長分散DはDOUTである。
本実施形態の光源装置では、まず、光パルス発生器100が、所定波長の短パルス光を発生する。光パルス光発生器100から出力された短パルス光は、光増幅器200に入力し、増幅され、高ピークパルス光となって出力される。そして、光増幅器200から出力された高ピークパルス光が光ファイバ360に入力する。
光ファイバ360に、高ピークパルス光が入力すると、光カー効果によって、光が感じる屈折率が変化し、光波の自己位相変調が発生する。この結果、光ファイバ360内での光パルス内に波長分布が発生する。光ファイバ360に入力した光は、波長分散Dが正の値である異常分散の領域を進行するので、波長の長い方が群速度の遅い異常分散領域では、パルス圧縮が進む。分散が長手方向に減少しているとパルスは更に強制的に圧縮される為、ピークパワーは増大する。これが更に非線形効果を助長し、スペクトルの拡大につながっている。
圧縮された光パルスには、ある程度の波長範囲の波長の光が含まれているが、分散値が正から負へ変化する最中に、光カー効果による四光波混合の影響を強く受け、更に広い波長範囲の波長の光が発生する。こうして、SC光が生成される。
図34は、このSC光ファイバ360から出射される出射光のスペクトルを示す。なお、光ファイバ360の長さLは1kmである。このSC光の波長スペクトルのピーク波長λ0は1550nmであり、最大強度より−20dB低い強度レベルでの出射スペクトルが有する帯域幅をSC帯域と定義すると、SC帯域は100nm以上である。また、ピーク波長λ0±50nmの波長帯域内における出射光のスペクトルの平坦度、すなわち、この範囲内の出射光強度の最大値と最小値との差は15dB以内である。
なお、この光ファイバ360に逆方向から同一の光パルスを入射した場合、図35に示すスペクトルが得られた。この場合、出射光のスペクトルの拡大は小さくSC帯域で30nm以下である。勿論、出射光のスペクトルの平坦度、すなわち、出射光強度の最大値と最小値との差は15dBよりも大きい。なお、最も左側のピークは雑音光のスペクトルである。
また、図36に示す波長分散特性を有し、分散Dが長さ方向に一定である光ファイバに図34の光パルスと同一の光パルスを入力した場合、図37に示すようなスペクトルが得られた。この光ファイバの長さLは1kmであり、このスペクトルの平坦度は15dBよりも大きい。なお、最も左側のピークは雑音光のスペクトルである。
次に、SC光について説明する。図38は、図31に示した波長分散特性を有し、分散Dが長さ方向Lに沿って線形に減少した図1に示す光ファイバ310からの出力光のスペクトルを示す。この光ファイバの分散スロープDSLOPは0.03[ps/nm2/km]であり、分散Dは3から−2[ps/nm/km]まで減少する。本スペクトルの半値全幅は160nmであり、ピーク波長λ0±50nmの波長帯域内における出射光のスペクトルの平坦度、すなわち、出射光強度の最大値と最小値との差は15dB以内である。したがって、SC光は、ピーク波長λ0±50nmの波長帯域におけるスペクトルの平坦度が15dB以内であって、半値全幅が少なくとも30nm以上であり、好ましくは100nm以上の光である。
この光ファイバ310に逆方向から光を入射した場合には、図39に示すスペクトルが得られた。これはSC光ではなく、この光のピーク波長λ0±50nmの波長帯域におけるスペクトルの平坦度は15dBよりも大きく、半値全幅は30nmよりも小さい。
図40は、この光ファイバ310の断面図である。この光ファイバ310はコア310xと、コア310xを取り囲む内側クラッド310ICと、内側クラッド310ICを取り囲む外側クラッド310OCとを備える。コア310の直径DCは、長さ方向(光の伝搬方向)に沿って線形に減少しており、内側クラッド310ICの直径DICは長さ方向に沿って線形に減少しており、外側クラッド310OCの直径DOCは長さ方向に沿って線形に減少している。
非線形光学効果を生ぜしめるためには、光ファイバ310の1kmあたりの外径DOCの長さ方向変動量(DOC/km)は2μm/km以上であることが好ましい。また、光ファイバ310の1kmあたりの外径DOCに対するコアの直径DCの比率(DC/DOC)の長さ方向変動量((DC/DOC)/km)は、0.5%/km以上であることが好ましい。なお、光ファイバ1mあたりの平均外径が、長手方向に2μm以上増加又は減少している部分を含むこととしてもよい。また、光ファイバの外径に対するコアの直径の比が長さ方向に0.005以上増加又は減少している部分を含むこととしてもよい。
図41は、図40に示した光ファイバの径方向の屈折率分布を示す。コア310xと外側クラッド310OCの比屈折率差△+(=(nc−nOC)/nOC)は1.2%、内側クラッド310ICと外側クラッド310OCの比屈折率差△−(=(nIC−nOC)/nOC)は−0.6%である。なお、ncはコア310xの屈折率、nICは内側クラッド310ICの屈折率、nOCは外側クラッドの屈折率である。また、非線形屈折率n2は3.8×10−16(cm2/W)であり、モードフィールド径MFDは5.2μmである。
図42は、上記光源装置を用いた光源システムを示す。光源100は、光ファイバリングレーザであり、1.55μm帯のパルス光を発生する。光源100と光ファイバ増幅器200とは光ファイバOP1で接続されている。光ファイバ増幅器200は、エルビウム添加ファイバ増幅器である。光ファイバ増幅器200から出射された1.55μm帯のパルス光は、光ファイバOP2を介して上記いずれかのSC光発生用光ファイバFに入力される。光ファイバFは、SC光を出力する。光ファイバFから出力されたSC光は光ファイバOP3を介して光分波器DMに入力される。SC光は、波長λ1、λ2及びλ3の成分を含む。光分波器DMは、筐体HSと、筐体HSに取付けられた入力ポートPIN、第1出力ポートP1、第2出力ポートP2、第3出力ポートP3と、筐体HS内に配置された複数の光学フィルタF1、F2、F3、F4、F5を有する。光学フィルタF1、F2、F3、F4、F5はダイクロイックミラーである。なお、この光分波器DMは図示しない複数のレンズを内部に有する。
光学フィルタF1は波長λ1の光を透過させ、波長λ2及びλ3の光を反射する。光学フィルタF2は少なくとも波長λ2及びλ3の光を反射する。光学フィルタF3は波長λ2の光を透過させ、波長λ3の光を反射する。光学フィルタF4は少なくとも波長λ3の光を反射する。光学フィルタF1を通過した波長λ1の光は、出力ポートP1に入力され、光ファイバOP4を介して出力される。光学フィルタF3を通過した波長λ2の光は、出力ポートP2に入力され、光ファイバOP5を介して出力される。光学フィルタF4で反射された波長λ3の光は出力ポートP3に入力され、光ファイバOP6を介して出力される。
上述の分散Dが光の進行方向に減少した光ファイバFは、SC光の生成のみではなく、アイドラ光の生成にも用いることができる。
図43は、アイドラ光を発生する光源装置を示す。この装置は、1.55μm帯の励起光(ポンプ光)を出射する光源100と、光ファイバOP1で接続され、励起光を増幅するエルビウム添加光ファイバ増幅器200と、励起光及び複数の信号光λ10及びλ20が光ファイバOP7を介して入力される光合波器WDMと、光合波器WDMで合波された光が入力される光ファイバOP8及び光ファイバFと、光ファイバFから出射された光が入力される光ファイバOP9とを有する。
なお、励起光λPのピークパワーは、励起光λP自身が光ファイバFを通過することによってSC光とならない程度に弱い。光合波器WDMには、複数の信号光λ10及びλ20が光ファイバOP7を介して入力される。
図44は、光ファイバに入力される励起光λP、信号光λ10,λ20及び出射光λ10’,λ20’と光強度との関係を示す。信号光λ10が光ファイバFに入力されると、励起光の波長λPに対して対称な位置の波長の光、アイドラ光λ10’(=λP−(λ10−λP))が光ファイバF内で発生し、出射される。信号光λ20が光ファイバFに入力されると、励起光の波長λPに対して対称な位置の波長の光、アイドラ光λ20’(=λP−(λ20−λP))が光ファイバF内で発生し、出射される。すなわち、波長λ10’,λ20’を有するアイドラ光は、波長λ10,λ20を有する信号光と位相共役の関係にある。ここで、アイドラ光は四光波混合によって生成されていると考えられる。なお、光ファイバFの分散Dは長さ方向に沿って減少しており、したがって、分散スロープが正の場合、零分散波長λ0が長さ方向に沿って増加する。励起光源100から出射される励起光の波長λPは変えることができる。したがって、信号光λ10,λ20の波長を変えることなく、波長λPを変えることによって、アイドラ光λ10’,λ20’の波長を変えることができ、その時のアイドラ光のパワーが急激に小さくなることを避けることができる。
図45〜図51は、励起光の波長λP(nm)とアイドラ光λ10’(又はλ20’)の強度(パワー)との関係を示すグラフである。励起光と信号光の入射パワーは各々10dBmである。
図45は、励起光の波長λP(nm)と信号光の波長λ10(nm)との波長差△λを5nmとしつつ、励起光の波長λPを可変した場合の励起光の波長λP(nm)とアイドラ光λ10’の強度(dBm)との関係を示す。長さ1kmの光ファイバFの零分散波長λ0は長さ方向に沿って一定であり、1550nmである。この場合、励起光の波長λPが零分散波長λ0に一致した場合に、高いアイドラ光λ10’の強度が得られているが、λPが1539nmや1561nmの付近でアイドラ光の出力パワーが急激に小さくなる、効率の谷が現われていることが分かる。
図46は、励起光の波長λP(nm)と信号光の波長λ10(nm)との波長差△λを5nmとし、励起光の波長λPを可変した場合の励起光の波長λP(nm)とアイドラ光λ10’の強度(dBm)との関係を示す。長さ1kmの光ファイバFの零分散波長λ0は長さ方向に沿って1545nm〜1555nmの間で線形に変化する。この場合、前記と同様に励起光の波長λPが零分散波長λ0に一致した場合に、高いアイドラ光λ10’の強度が得られているが、λPを変えた時のアイドラ光の出力パワーの変化が小さくなっている。
図47は、励起光の波長λP(nm)と信号光の波長λ10(nm)との波長差△λを5nmとし、励起光の波長λPを可変した場合の励起光の波長λP(nm)とアイドラ光λ10’の強度(dBm)との関係を示す。長さ1kmの光ファイバFの零分散波長λ0は長さ方向に沿って1535nm〜1565nmの間で線形に変化する。この場合、前記と同様に励起光の波長λPが零分散波長λ0に一致した場合に、高いアイドラ光λ10’の強度が得られているが、λPをアイドラ光の出力パワーの変化が前述よりも更に小さくなり、λP依存性の低い、すなわち、広帯域利用可能なファイバであることが分かる。
図48は、信号光の波長λ10(nm)を1560nmとし、励起光の波長λPを可変した場合の励起光の波長λP(nm)とアイドラ光λ10’の強度(dBm)との関係を示す。長さ1kmの光ファイバFの零分散波長λ0は長さ方向に沿って一定であり、1550nmである。この場合、励起光の波長λPが零分散波長λ0に一致するかλ0に近い場合に、高いアイドラ光λ10’の強度が得られる。しかし、λPがλ0よりも短くなるとアイドラ光の強度は急激に減少する。
図49は、信号光の波長λ10(nm)を1560nmとし、励起光の波長λPを可変した場合の励起光の波長λP(nm)とアイドラ光λ10’の強度(dBm)との関係を示す。長さ1kmの光ファイバFの零分散波長λ0は長さ方向に沿って1542nm〜1552nmの間で線形に変化する。この場合、励起光の波長λPが零分散波長λ0の範囲内にある場合と、信号光の波長λ10から5nm以内にある場合に、高いアイドラ光λ10’の強度が得られているが、前記条件と異なり、λPが1550nmより短くなってもアイドラ光の強度はそれほど減少していない。なお、零分散波長λ0は長さ方向に5nm以上線形に変化していれば高いアイドラ光λ10’の強度が得られることも確認している。
図50は、信号光の波長λ10(nm)を1560nmとし、励起光の波長λPを可変した場合の励起光の波長λP(nm)とアイドラ光λ10’の強度(dBm)との関係を示す。長さ1kmの光ファイバFの零分散波長λ0は長さ方向に沿って1545nm〜1555nmの間で線形に変化する。この場合、1545nm〜1560nmの波長範囲内において略均一なアイドラ光λ10’の強度が得られる。これはλpを可変にしてもアイドラ光の出力強度が変わらないことを意味し、アイドラ光の波長に任意性を持たせる、即ち、広帯域化が実現できることになる。
図51は、信号光の波長λ10(nm)を1560nmとし、励起光の波長λPを可変した場合の励起光の波長λP(nm)とアイドラ光λ10’の強度(dBm)との関係を示す。長さ1kmの光ファイバFの零分散波長λ0は長さ方向に沿って1547nm〜1557nmの間で線形に変化する。この場合、この場合、1550nm〜1560nmの波長範囲内において略均一なアイドラ光λ10’の強度が得られており、図50の場合と同様、広帯域化が可能である。
アイドラ光を効率良く発生させるためには、励起光の波長λPが零分散波長λ0と一致していることが望ましい。本光ファイバFの零分散波長λ0は、長手方向に異なっており、その範囲が励起光の波長λPを含んでいる。励起光の波長λPは、光ファイバFの長手方向の所定位置における所定の零分散波長λ0と一致する。したがって、本光ファイバFは、励起光の波長λPによらず、アイドラ光λ10’,λ20’を効率的に発生させることができる。なお、アイドラ光を効率良く発生させるためには、光ファイバFの信号光の波長帯内の分散スロープDSLOPの絶対値が0.04[ps/nm2/km]以下であることが好ましい。また、信号光の波長帯内の分散DはファイバFの長さ方向に減少もしくは増加する領域を含んでいることが好ましい。
また、光ファイバFの非線形屈折率がn2、実効コア断面積がAeff、励起光λPのピークパワーがPpeakの時、非線形光学効果を生ぜしめるためには、n2≧3.2×10−20(m2/W)、Aeff≦50×10−12(m2)、Ppeak≧10×10−3(W)であることが好ましく、したがって、(n2/Aeff)×Ppeak≧6.4×10−12であることが好ましい。また、非線形光学効果を生ぜしめるためには、n2≧4×10−20(m2/W)であることがさらに好ましい。また、非線形光学効果を生ぜしめるためには、図40に示したコア310xと外側クラッド310OCの比屈折率差△+(=(nc−nOC)/nOC)は1.2%以上、内側クラッド310ICと外側クラッド310OCの比屈折率差△+(=(nOC−nIC)/nOC)は−0.6%以下であることが好ましい。なお、本例では、外側クラッド310OCの屈折率nOCは石英の屈折率である。
本発明は、上記の実施形態や実施例に限定されるものではなく変形が可能である。例えば、波長分散の減少の態様は、指数関数的などであってもよいし、また、SC光生成用の光ファイバの具体的な態様は、上記の実施例の数値の態様には限定されない。
以上、説明したように、本発明に係る光ファイバは、入力される所定波長のパルス光に応じて非線形現象光を出力する光ファイバであって、非線形現象光の主要生成領域は、パルス光の進行に伴い、波長分散が正の値から減少する分散減少領域を備えることを特徴とする。非線形現象光は、スーパーコンティニウム光又はアイドラ光等の非線形現象によって発生する光である。光ファイバが、上記分散減少領域を備える場合、これらの非線形現象光が効率的にかつ広帯域に発生する。
また、分散減少領域内において、パルス光の進行方向に伴って波長分散が、正の値から負の値まで減少している場合には更に効率的にスーパーコンティニウム光が発生する。信号光と異なる波長のポンプ光を入力して、所定の波長領域で非線形現象光を生成する光ファイバであって、信号光波長帯で分散スロープの絶対値が0.04(ps/nm2/km)以下であり、光ファイバの長手方向に零分散波長を5nm以上増加又は減少させた場合には、アイドラ光等の非線形現象光が効率的に発生する。
この分散減少領域は、所定位置で1.5μm帯の零分散波長を有することが好ましい。この場合、入力されるパルス光を励起光として信号光を同時に前記光ファイバに導入すると、効率的にアイドラ光等の非線形現象光を発生させることができる。
分散減少領域は、偏波保持ファイバを含むことが望ましく、非線形現象光の発生するための四光波混合が発生しやすくなり、さらに効率的に非線形現象光を発生させることができる。
また、光ファイバ1mあたりの平均外径が長手方向に2μm以上増加又は減少している部分を含む場合や、光ファイバの外径に対するコアの直径の比が長さ方向に0.005以上増加又は減少している部分を含む場合には、効率的に非線形現象光を発生させることができる。
さらに、非線形現象光の発生のためには、分散減少領域は、コア及びコアを囲むクラッドを有し、コアの直径及びクラッドの直径は共に長手方向に沿って減少している部分を含むことが望ましく、コアの石英に対する比屈折率差は+1.2%以上であり、クラッドのコア近傍の石英に対する比屈折率差は−0.6%以下であることが望ましい。
また、非線形現象光を発生させるためには、分散減少領域の所定波長領域内の分散スロープは、−0.1(ps/nm2/km)以上、0.1(ps/nm2/km)以下であることが望ましい。
この分散減少領域の所定波長領域内の分散スロープの絶対値が、0.04(ps/nm2/km)以下である場合には、アイドラ光等の非線形現象光を効率的に発生させることができる。
非線形現象光を発生させるためには、前記パルス光のピークパワーPpeak、分散減少領域の非線形屈折率n2、及び実効コア断面積Aeffは、(n2/Aeff)・Ppeak>4.5×10−10の関係を満たすことが望ましい。
また、パルス光のピークパワーPpeak、分散減少領域の非線形屈折率n2、及び実効コア断面積Aeffは、(n2/Aeff)・Ppeak>6.4×10−12の関係を満たすことが更に望ましい。
この場合、特に非線形屈折率n2が、4×10−20(m2/W)以上であれば更に好適に非線形現象光を発生させることができる。
また、本発明の光源装置は、前記光ファイバと、光ファイバの一端に光学的に結合しパルス光を出射する光源とを備えることを特徴とする。
また、本発明の光源システムは、前記光ファイバと、光ファイバの一端に光学的に結合しパルス光を出射する光源と、光ファイバの他端に光学的に結合した光分波器を備えたことを特徴とする。光源から出射されたパルス光は光ファイバに入射して広い波長範囲のスーパーコンティニウム光等の非線形現象光として出力されるが、これは光分波器で波長毎に分離され、波長多重の通信に利用することができる。
また、本発明の光源システムは、前記光ファイバと、光ファイバの一端に光学的に結合しパルス光を出射する光源と、パルス光とともに複数の信号光をファイバの一端に結合させる光合波器とを備えたことを特徴とする。複数の信号光は励起光とともに光合波器によって光ファイバに入力されるため、複数のアイドラ光を発生させることができる。
また、励起光を発生する光源と、励起光及び信号光が入力され、非線形現象光を出射する光ファイバとを備えた光源装置において、信号光の波長帯における光ファイバの分散スロープの絶対値は0.04(ps/nm2/km)以下であり、光ファイバの零分散波長は励起光の波長を含む所定の波長範囲内で光ファイバの長手方向に沿って変化している場合には、アイドラ光等の非線形現象光の発生を行うことができる。本発明では、励起光の波長の値に拘らず、光ファイバのいずれかの地点において零分散波長とこれを一致させることができるため、効率的にアイドラ光等の非線形現象光の発生させることができる。特に、励起光の波長が可変可能である場合には、アイドラ光は信号光に対して対称な位置の波長を有するため、励起光の波長を変えることによって、信号光の波長を変えることなくアイドラ光の波長を変えることができる。
なお、上述の現象発生の考えられる原理等について以下に説明する。すなわち、上記光ファイバでは、高ピークパルス光が分散減少領域に入力すると、光カー効果によって、光が感じる屈折率が変化し、光波の自己位相変調が発生する。この結果、光ファイバ内での光の波長分布に、パルス光の立ち上がりで波長が長く、パルス光の立ち下がりで波長が短い負のチャープが発生する。分散減少領域に入力した光は、少なくとも当初は、異常分散の領域を進行するので、波長の長い方が群速度の遅い異常分散領域では、波長分布の発生とパルス圧縮とが同時に進行する。
分散が長手方向に減少していると、圧縮が更に効率的に行われてパルスピークパワーが大きくなるが、すると非線形現象がより起こりやすくなり、スペクトルの広がりが発生する。
光カー効果の自己位相変調、四光波混合等によって、このように広い波長範囲の波長の光を得ることができ、スーパーコンティニウム光となる。効率的な四光波混合を促進するためには、異なる波長の光が略同一時刻かつ略同一位置に存在して相互作用する必要があるが、こうした相互作用を効率良く行なうには、異なる波長の光の間での群速度の差が小さいことが望ましい。
光が進行するべき方向において、異常分散で始まって、波長分散が減少する分散減少領域を備える光ファイバでは、スーパーコンティニウム光発生の主要部である分散減少領域で、主に自己位相変調や四光波混合等よりスーパーコンティニウム光を生成している。
そして、波長分散が光の進行方向で変化することにより、四光波混合が発生する光の波長付近で零分散波長の一種の走査が行われることになるので、様々な波長の光同士で四光波混合が発生しやすくなり、広い波長範囲の波長の光が生成される。この結果、広い波長範囲でのスーパーコンティニウム光が発生する。
なお、分散減少領域以外の部分は、スーパーコンティニウム光の波長範囲で分散の絶対値が小さいこと、また、分散スロープの絶対値の小さな分散フラットファイバを使用することが、四光波混合およびスーパーコンティニウム光に含まれる各波長の光の相互作用長が長くなる点から望ましい。
分散減少領域は波長分散が異なる複数の光ファイバを備え、これらの複数の光ファイバが長手方向に縦続接続されている構成でもよい。
波長分散が異なる複数の光ファイバを長手方向に縦続接続して、光ファイバを構成するので、この光ファイバを容易に製造可能である。
なお、上記光ファイバにおいて、(i)正の値である第1の平均波長分散値を有する第1の光ファイバと、(ii)第1の平均波長分散値よりも小さな第2の平均波長分散値を有するとともに、第1の光ファイバの光を出射すべき端面に光を入射すべき端面が接続された第2の光ファイバとを備えることを特徴としてもよい。この光ファイバでは、光の進行方向における波長分散の減少変化が離散的となるが、自己位相変調や四光波混合等の発生について上記と同様に作用する。なお、この光ファイバでは、光の進行方向で波長分散が増加しない構成とすることを条件に、更に適当な波長分散値を有する光ファイバを第2の光ファイバの下流側に縦続接続してもよい。
分散減少領域の各位置における、スーパーコンティニウム光の生成波長域での波長に関する分散スロープが、−0.1[ps/nm2/km]〜0.1[ps/nm2/km]である場合、分散減少領域の各位置における波長間での分散の差が小さい。したがって、非線形光学効果である光カー効果が効率的に発現し、広い波長範囲のスーパーコンティニウム光を生成することができる。
また、広い波長範囲のスーパーコンティニウム光の生成の観点からは、分散スロープの絶対値は小さい程好ましい。例えば、分散スロープ値が、−0.04[ps/nm2/km]〜0.04[ps/nm2/km]となる分散フラットファイバを使用することが好ましい。
なお、分散スロープに関しては絶対値が問題であり、絶対値が同一であれば、値の符号が異なっていても、スーパーコンティニウム光の波長幅への寄与はあまり変わらない。
分散減少領域において、光が進行すべき方向で、分散スロープが、例えば、正の値から負の値まで、または、負の値から正の値まで変化し、分散スロープが一定である場合よりも群遅延差が低減される場合、分散減少領域での分散スロープを、光の進行方向で極性が変化する程度に変化させることにより、分散スロープが一定である場合よりも、分散減少領域における群遅延差を低減することができる。この結果、各波長の光の時間領域での重なりが増加し、効率的にスーパーコンティニウム光を発生することができる。
分散減少領域が1.5μm帯に零分散波長を有する場合には、以下の利点を有する。近年、石英ガラスを主材とする光ファイバの使用にあたって、光ファイバを伝搬させる光としては、伝送損失が低い1.5μm帯の波長の光が多用される。したがって、波長分散による波形の歪の防止の観点から、光ファイバとして、1.5μm帯に零分散波長を有する光ファイバが使用される。この場合、1.5μm帯に零分散波長を有するので、1.5μm帯の波長を有するスーパーコンティニウム光の成分については、波長分散の影響が低減され、好適なスーパーコンティニウム光の出力を得ることができる。なお、1.3μm帯でのSC光の発生を行う場合には、零分散波長を1.3μm帯の波長に設定することが好適である。
更に、零分散波長を1.3μm帯または1.5μm帯の波長として、1.3μm帯および1.5μm帯のSC光を発生させることも可能である。
上記分散減少領域が偏波保持特性を有する場合、以下に利点を有する。非線形光学効果の発現の度合いは、媒体物質の組成と伝搬光の偏波面の方向とに依存する。したがって、このように分散減少領域が偏波保持特性を有する場合、同一の条件で、時間を隔てて光パルスが入力した場合、同様の非線形光学効果が発現し、安定したスーパーコンティニウム光の発生が行なわれる。また、四光波混合については、相互作用する2つの光が同一の偏波面方向を有する場合に、最も良く四光波混合が発生する。したがって、この光ファイバでは、スーパーコンティニウム光の発生の過程で偏波面が保持されるので、自己位相変調や四光波混合によって発生した各波長の光は同様の偏波面方向を有し、効率良くスーパーコンティニウム光を発生することができる。
分散減少領域において、非線形屈折率n2と実効コア断面積Aeffと入射したパルス光のピークパワーPpeakとの間に、(n2/Aeff)・Ppeak>0.03×10−8[1/W]×1.5[W]=0.045×10−8、の関係が成り立つ場合、以下の利点を有する。屈折率nは、入力光のパワーレベルPの関数であり、n(P)=n0+(n2/Aeff)・P・・・(2)、ここで、n0:0次屈折率、と表すことができる。そして、(n2/Aeff)・Pが大きい程、非線形光学効果の発現が顕著となり、効率良くスーパーコンティニウム光が生成される。なお、入力光のパワーレベルPが同一であれば、(n2/Aeff)が大きい程、非線形光学効果の発現が顕著となり、効率良くスーパーコンティニウム光が生成される。
この光ファイバでは、(n2/Aeff)・Ppeak>0.045×10−8としたので、効率的に数10nm以上の波長幅でSC光が生成される。なお、通常の半導体レーザと光ファイバ増幅器とを用いた場合に容易に得られるピークパワーレベルPpeakは1.5[W]程度であるので、(n2/Aeff)>0.03[1/W]とすることで、効率的に数10nm以上の波長幅でSC光が生成される。
また光源装置は、(a)所定の波長の高ピークパルス光を発生するパルス光発生手段と、(b)パルス光発生手段が発生した高ピークパルス光を入力し、スーパ−コンティニウム光を生成する上記光ファイバとを備える。この光源装置では、パルス光発生手段が所定の波長の高ピークパルス光を発生し、発生した高ピークパルス光を上記光ファイバへ入力する。高ピークパルス光がこの光ファイバに入力して進行すると、上記で説明したように、スーパーコンティニウム光を生成し、光源の出力として出力する。
このパルス光発生手段は、(i)短パルス光を発生するパルス光発生器と、(ii)パルス光発生器から出力された短パルス光を入力し、増幅して出力する光増幅器とを備えていてもよい。この場合、高ピークパルス光の発生にあたっては、パルス光発生器が発生した短パルス光を、光増幅器で増幅することにより、高ピークパルス光を得ることとすることにより、パルス光発生器が単体で高ピークパルス光を発生することを必要とせずに済み、容易にスーパーコンティニウム光を出力する光源を実現できる。なお、上記光ファイバはスーパーコンティニウム光だけななく、アイドラ光の発生にも有効である。
100・・・パルス発生器、200・・・光増幅器、310,320,330,340,350・・・光ファイバ、341,342,351,352,353・・・光ファイバ。