JP2004163122A - 微小開口膜、及び生体分子間相互作用解析装置とその解析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】励起光の照射領域を励起光の波長よりも小さくすることを実現し、生体分子間相互作用を1分子レベルで高感度で検出、定量することを可能にする微小開口膜、及び生体分子間相互作用解析装置とその解析方法を提供する。
【解決手段】直径φが励起光の波長より小さく、間隔dが顕微鏡の対物レンズの分解能より大きい複数の微小開口5が設けられた光を透過しない薄膜を用いる。微小開口5に励起光を照射すれば、微小開口5からエバネッセント場が生じ、このエバネッセント場を用いることで、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射し、生体分子間相互作用を1分子レベルで高感度で検出、定量することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】直径φが励起光の波長より小さく、間隔dが顕微鏡の対物レンズの分解能より大きい複数の微小開口5が設けられた光を透過しない薄膜を用いる。微小開口5に励起光を照射すれば、微小開口5からエバネッセント場が生じ、このエバネッセント場を用いることで、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射し、生体分子間相互作用を1分子レベルで高感度で検出、定量することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量するための微小開口膜、及び生体分子間相互作用解析装置とその解析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量する方法として、主として以下の2つの方法がある。
【0003】
1つは、図9に示すように、ガラス101と水溶液102の界面103にレーザー光104を入射して全反射させ、水溶液102の界面103に発生するエバネッセント場105を利用して、蛍光性生体分子106をイメージングする方法である。エバネッセント場105は、界面103から浸入長150nmで減衰するので局所励起が可能である。一方の蛍光性生体分子106をガラス101に固定し、他方の生体分子を別の蛍光波長の蛍光分子で標識して水溶液102に加えると、これら生体分子同士の結合、解離(分子間相互作用)を超高感度カメラ107で撮影することが可能である。この生体分子の1分子蛍光イメージング法は、発明者らによって1995年に開発され(Funatsu, T. et al., (1995) Nature 374, 555−559)、さまざまな成果を収めてきた。しかし、1.水溶液102中の蛍光性生体分子106の濃度を50nM以下にしないと1分子観察が困難であること、2.蛍光性生体分子がガラス101に非特異的に吸着し、分子間相互作用の検出が困難であるという問題点をかかえており、1分子計測できる生体分子相互作用は限られていた。
【0004】
これらの問題が発生する理由は以下のとおりである。全反射により発生するエバネッセント場105は、界面103に垂直な方向に150nmの局所励起を実現しているが、平行な方向については局所化していないので、水溶液中102の蛍光性生体分子106の濃度を50nM以下にしなければ超高感度カメラ106に接続された光学顕微鏡の分解能(約250nm)の範囲で、個々の蛍光性生体分子106をイメージングすることができない。また、蛍光性生体分子106が発した蛍光108は、超高感度カメラ107まで伝播するあいだに回折の影響を受け、試料面で直径約250nmに相当する大きさに広がってしまう。そのため、個々の蛍光性生体分子106を識別するためには、ガラス101に固定する蛍光性生体分子106の間隔を約250nmよりも大きくしなければならない。そのため、ガラス101上に固定した蛍光性生体分子106が占める面積の割合は0.1%以下と小さくなり、水溶液102中に加えた生体分子のガラス101への非特異的吸着が問題となるのである。これらの問題は、蛍光性生体分子106を励起する領域をさらに小さくし、それらを超高感度カメラ107に接続された光学顕微鏡の分解能よりも離れた位置に配置することによって解決できると期待される。
【0005】
生体分子間相互作用を1分子レベルで検出する2つめの方法は、蛍光相関分光法(FCS;Fluorescence Correlation Spectroscopy)である。これは、図10に示すように、レーザービーム111を開口数の大きい対物レンズ112で回折限界まで絞込み、その中を通過する蛍光性生体分子113の蛍光強度のゆらぎを測定することにより、個々の蛍光性生体分子113の蛍光強度と拡散定数を求める方法である(Eigen M. and Rigler, R. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 5740−5747,特表平11−502608号(特願平6−51570号)公報)。レーザービーム111の焦点114の蛍光115だけを検出するために、レーザービーム111の結像位置にピンホールを置く共焦点光学系が用いられている。2種類の蛍光115の相関をとれば2種類の蛍光性生体分子113の分子間相互作用を解析することも可能である。この方法は、蛍光クロス相関分光法(FCCS;fluorescence Cross−correlation Spectroscopy)と呼ばれる(Rigker, R., Z. et al., (1998) Fluorescence cross−correlation − a new concept for polymerase chain reaction. J. Biotechnol. 63: 97−109)。
【0006】
この方法においても、照射領域が光の回折限界程度に広がるため、蛍光性生体分子113の濃度を100nM程度までしか上げることができなかった。より高濃度で生体分子間相互作用を観察するために、光の回折限界を超える局所励起が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】
特表平11−502608号公報
【0008】
【非特許文献1】
Funatsu, T. et al., (1995) Nature 374, 555−559
【0009】
【非特許文献2】
Eigen M. and Rigler, R. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 5740−5747
【0010】
【非特許文献3】
Rigker, R., Z. et al., (1998) Fluorescence cross−correlation − a new concept for polymerase chain reaction. J. Biotechnol. 63: 97−109
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題を解決することであり、励起光の照射領域を励起光の波長よりも小さくすることを実現し、生体分子間相互作用を1分子レベルで高感度で検出、定量することを可能にする微小開口膜、及び生体分子間相互作用解析装置とその解析方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の微小開口膜は、微小開口が設けられた光を透過しない薄膜からなることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、微小開口の最大開口幅を励起光の波長よりも小さくし、この微小開口に励起光を照射すれば、この微小開口からエバネッセント場が生じ、このエバネッセント場を用いることで、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することが可能になる。
【0014】
本発明の請求項2記載の微小開口膜は、請求項1において、前記薄膜は透明な基板に結合されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、基板に薄膜を支持することで薄膜の製造性と取り扱い性を向上させることができる。また、基板は透明なので励起光の透過を妨げることがない。
【0016】
本発明の請求項3記載の微小開口膜は、請求項1又は2において、前記微小開口は複数設けられ略等間隔に配列されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、複数の微小開口のうちの任意の微小開口において蛍光性生体分子の蛍光を観察することができるので、蛍光検出手段の位置合わせが容易になる。また、微小開口の間隔を蛍光検出手段の分解能と同じか又は蛍光検出手段の分解能よりも大きくすれば、それぞれの微小開口によって励起された個々の蛍光性生体分子の蛍光を分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0018】
本発明の請求項4記載の微小開口膜は、請求項1〜3のいずれか1項において、前記微小開口の最大開口幅は200nm以下であることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、微小開口の最大開口幅を励起光の波長より小さくすることができる。
【0020】
本発明の請求項5記載の生体分子間相互作用解析装置は、励起光を発生する励起光発生手段と、最大開口幅が前記励起光の波長よりも小さい微小開口が設けられた光を透過しない薄膜からなる微小開口膜と、蛍光を検出する蛍光検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、最大開口幅が励起光の波長よりも小さい微小開口膜の微小開口に励起光発生手段からの励起光を照射し、この微小開口に生じるエバネッセント場を用いることで励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することができ、この蛍光性生体分子から発せられる蛍光を蛍光検出手段で検出することができる。また、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することによって、蛍光性生体分子の水溶液中の濃度を高くすることができ、さらに、蛍光性生体分子のガラス面などへの非特異的吸着の影響を抑えることができるので、生体分子間相互作用の検出、定量を確実に行うことができる。
【0022】
本発明の請求項6記載の生体分子間相互作用解析装置は、請求項5において、前記微小開口は複数設けられ等間隔に配列されているとともに、前記微小開口の間隔は前記蛍光検出手段の分解能と同じか又は前記蛍光検出手段の分解能よりも大きいことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、複数の微小開口のうちの任意の微小開口において蛍光性生体分子の蛍光を観察することができるので、蛍光検出手段の位置合わせが容易になる。また、微小開口の間隔は蛍光検出手段の分解能と同じか又は蛍光検出手段の分解能よりも大きいので、それぞれの微小開口によって励起された個々の蛍光性生体分子の蛍光を分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0024】
本発明の請求項7記載の生体分子間相互作用解析方法は、励起光の波長よりも小さい微小開口から前記励起光によるエバネッセント場を発生させ、このエバネッセント場の領域をブラウン運動により通過する蛍光性生体分子を励起させ、その蛍光性生体分子の蛍光を検出することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することができ、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量することができる。
【0026】
本発明の請求項8記載の生体分子間相互作用解析方法は、励起光の波長よりも小さい微小開口から前記励起光によるエバネッセント場を発生させ、この微小開口に付着させた第一の蛍光性生体分子と、前記エバネッセント場の領域にあって前記第一の蛍光性生体分子と相互作用する第二の蛍光性生体分子とを励起させ、これら第一の蛍光生体分子と第二の蛍光性生体分子の蛍光をそれぞれ検出することを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することができ、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。はじめに、図1、図2に基づき、本発明の微小開口膜の一実施例について説明する。1は微小開口膜であり、解析対象となる蛍光色素で標識化した蛍光性生体分子2を励起する励起光3を透過しない薄膜によって構成されている。この微小開口膜1は、ガラスなどの透明な基板4に結合されており、例えば、蒸着などの手段によって、アルミニウム,クロム,金,銀,ゲルマニウムなどの金属や、炭化シリコン(SiC)などの薄膜を基板4上に形成したものである。
【0029】
この微小開口膜1には、前後左右方向にそれぞれ間隔dを隔てて等間隔に整然と配列した複数の微小開口5が形成されている。この微小開口5は直径φの円形に形成されている。なお、微小開口5は、必ずしも円形である必要はなく、微小開口5が円形でない場合は、直径φを微小開口5の最大開口幅とする。
【0030】
そして、微小開口5の直径φは、励起光3の波長λexよりも小さくなっている。なお、この直径φはできる限り小さいほうが好ましい。すなわち、直径φが小さいほど、後述するエバネッセント場6の領域が小さくなり、1分子レベルで蛍光性生体分子2を励起させるためには好都合であるため、好ましくは、直径φを200nm以下とし、さらに好ましくは20nm以下とする。
【0031】
また、1分子レベルで蛍光性生体分子2が発する蛍光を検出するために、微小開口5の間隔dは、蛍光性生体分子2の蛍光7を検出する、後述する蛍光検出手段12を構成する光学顕微鏡の対物レンズ13の分解能と同じかそれよりも大きくなっている。すなわち、検出する光がコヒーレントでない場合、前記対物レンズ13の開口数NAに対し、蛍光7の波長をλemとすると、その対物レンズ13の分解能は式0.61λem/NAで表されるので、微小開口5の間隔dは、d≧0.61λem/NAの式を満足する値になっている。例えば、蛍光7の波長λemが500nmの場合、対物レンズ13の開口数NAが1.2として、対物レンズ13の分解能は0.61λem/NA≒250nmとなる。したがって、開口数NAが1.2の対物レンズ13を用いる場合は、微小開口5の間隔dが250nm以上の微小開口膜1を用いれば、1分子レベルで蛍光性生体分子2が発する蛍光を検出することができることになる。
【0032】
つぎに、作用について説明する。図2に示すように、基板4の微小開口膜1の結合していない側から励起光3を入射すると、微小開口5で励起光3の染み出し、すなわちエバネッセント場6が発生する。このエバネッセント場6の大きさは、微小開口5の大きさと同程度であり、微小開口5に近接した励起光3の波長λexよりも小さい領域にある蛍光性生体分子2が局所的に励起され、蛍光7を発する。また、多数の微小開口5が、前記光学顕微鏡の対物レンズ13の分解能よりも離れて配置しているため、それぞれの微小開口5によって励起された個々の蛍光性生体分子2の蛍光7を分離して1分子計測することが可能である。
【0033】
なお、エバネッセント場6は、浸入長150nm程度で減衰するので、エバネッセント場6の領域は微小開口5の面積に比例する。したがって、従来のように、微小開口膜1を通さないで界面の全反射によるエバネッセント場を用いて蛍光性生体分子2を励起する場合に、蛍光性生体分子2を1分子レベルで検出するためには、対物レンズ13の分解能である直径250nmの範囲内に1分子のみが存在するように、蛍光性生体分子2の濃度を50nM以下にする必要があった。しかし、本発明の微小開口膜1を用いれば、微小開口5の直径が100nmのときは蛍光性生体分子2の濃度を300nM程度まで、さらに、微小開口5の直径が20nmのときは蛍光性生体分子2の濃度を8000nM程度、すなわち、従来の100〜1000倍程度にまで増加させることができる。したがって、生体分子がガラス面などに非特異的に吸着することによる悪影響を従来の1/100程度まで飛躍的に減少させることができる。
【0034】
以上のとおり、前記実施例の微小開口膜1は、微小開口5が設けられた光を透過しない薄膜からなるので、微小開口5の最大開口幅φを励起光3の波長λexよりも小さくし、この微小開口5に励起光3を照射すれば、この微小開口5からエバネッセント場6が生じ、このエバネッセント場6を用いることで、励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2に照射することが可能になる。
【0035】
また、前記薄膜たる微小開口膜1は透明な基板4に結合されているので、基板4に微小開口膜1を支持することで微小開口膜1の製造性と取り扱い性を向上させることができる。また、基板4は透明なので励起光3の透過を妨げることがない。
【0036】
また、前記微小開口5は複数設けられ略等間隔に配列されているので、複数の微小開口5のうちの任意の微小開口5において蛍光性生体分子2の蛍光7を観察することができるので、蛍光検出手段の位置合わせが容易になる。また、微小開口5の間隔dを蛍光検出手段の分解能と同じか又は蛍光検出手段の分解能よりも大きくすれば、それぞれの微小開口5によって励起された個々の蛍光性生体分子2の蛍光7を分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0037】
さらに、前記微小開口5の最大開口幅たる直径φは200nm以下であるので、微小開口5の直径φを励起光3の波長λexより小さくすることができる。
【0038】
つぎに、本発明の生体分子間相互作用解析装置の第一実施例について、図3、図4を参照して説明する。この生体分子間相互作用解析装置は、前記微小開口膜1を用い、蛍光相関分光法(FCS;Fluorescence Correlation Spectroscopy)によって蛍光性生体分子2が発する蛍光7の強度や、蛍光性生体分子2の拡散係数を求めるための装置である。なお、微小開口膜1の構成は前記実施例と同様であるので、同じ符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0039】
11は、励起光を発生する励起光発生手段たるレーザーである。なお、レーザー11の代わりにランプを用いても良い。このレーザー11は、蛍光性生体分子2の励起光3を微小開口膜1に照射するように構成されている。蛍光性生体分子2が含まれる水溶液8は、基板4の微小開口膜1の結合している側と、カバーガラス9との間に保持されており、励起光3は基板4の微小開口膜1の結合していない側から照射されるように構成されている。
【0040】
カバーガラス9の外側には、蛍光性生体分子2から発せられる蛍光7を検出する蛍光検出手段12が備えられている。この蛍光検出手段12は、顕微鏡(図示せず)の対物レンズ13,光学フィルター14,ピンホール15,検出器16を備えている。対物レンズ13は蛍光性生体分子2から発せられる蛍光7を集め、光学フィルター14は散乱などの背景光を取り除き、蛍光7のみを通過させるように配置されている。また、ピンホール15は、単一の微小開口5からの蛍光7を検出するために配置されるものであって、ピンホール15の穴の大きさは、対物レンズ13の分解能×倍率程度となっている。なお、対物レンズ13の分解能は、前述のとおり、対物レンズ13の開口数NAに対し、式0.61λem/NAで表される。そして、ピンホール15を通過した蛍光7は、高感度の検出器16で検出され、その検出信号はデジタルカウンターやデジタル相関器などで処理されて、従来のFCSの手法に従い解析されるように構成されている。
【0041】
つぎに、上記生体分子間相互作用解析装置を用いた解析方法について説明する。まず、蛍光性生体分子2を含む水溶液8を微小開口膜1とカバーガラス9の間に加え、顕微鏡に装着する。微小開口5の裏面から励起光3を入射してエバネッセント場6を発生させる。蛍光性生体分子2がエバネッセント場6を通過すると励起されて蛍光7を発する。この蛍光7を対物レンズ13で集め、散乱などの背景光を光学フィルター14で除き、蛍光7のみを通過させる。そして、光学フィルター14を通過した蛍光7をピンホール15に通し、単一の微小開口5からの蛍光7のみを検出器16で検出する。その後、その検出信号は、デジタルカウンターやデジタル相関器などで処理して、従来のFCSの手法に従い解析される。
【0042】
以上のとおり、前記実施例の生体分子間相互作用解析装置は、励起光3を発生する励起光発生手段たるレーザー11と、最大開口幅たる直径φが前記励起光3の波長λexよりも小さい微小開口5が設けられた光を透過しない薄膜からなる微小開口膜1と、蛍光7を検出する蛍光検出手段12とを備えたものであり、直径φが励起光3の波長λexよりも小さい微小開口膜1の微小開口5にレーザー11からの励起光3を照射し、この微小開口5に生じるエバネッセント場6を用いることで励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2に照射することができ、この蛍光性生体分子2から発せられる蛍光7を蛍光検出手段12で検出することができる。また、励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2に照射することによって、蛍光性生体分子2の水溶液8中の濃度を高くすることができ、さらに、蛍光性生体分子2のガラス面たる基板4面への非特異的吸着の影響を抑えることができるので、生体分子間相互作用の検出、定量を確実に行うことができる。
【0043】
また、前記微小開口5は複数設けられ等間隔に配列されているとともに、前記微小開口5の間隔dは前記蛍光検出手段12を構成する対物レンズ13の分解能と同じか又は対物レンズ13の分解能よりも大きいので、複数の微小開口5のうちの任意の微小開口5において蛍光性生体分子2の蛍光7を観察することができるので、蛍光検出手段12の位置合わせが容易になる。また、微小開口5の間隔は蛍光検出手段12を構成する対物レンズ13の分解能と同じか又は対物レンズ13の分解能よりも大きいので、それぞれの微小開口5によって励起された個々の蛍光性生体分子2の蛍光7を分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0044】
さらに、前記実施例の生体分子間相互作用解析方法は、励起光3の波長λexよりも小さい微小開口5から前記励起光3によるエバネッセント場6を発生させ、このエバネッセント場6の領域をブラウン運動により通過する蛍光性生体分子2を励起させ、その蛍光性生体分子2の蛍光7を検出するので、励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2に照射することができ、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量することができる。
【0045】
つぎに、本発明の生体分子間相互作用解析装置の第二実施例について、図5、図6を参照して説明する。この生体分子間相互作用解析装置は、前記微小開口膜1を用い、蛍光クロス相関分光法(FCCS;fluorescence Cross−correlationSpectroscopy)によって、それぞれ異なる蛍光波長をもつ蛍光分子で標識した蛍光性生体分子2a,2bが発する蛍光7(7a,7b)から蛍光性生体分子2a,2bの生体分子間相互作用を検出するための装置である。なお、前記実施例と同様の部分には同じ符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0046】
11は、励起光を発生する励起光発生手段たるレーザーである。なお、レーザー11の代わりにランプを用いても良い。このレーザー11は、2種類の蛍光性生体分子2a,2bに共通な励起光3を微小開口膜1に照射するように構成されている。蛍光性生体分子2a,2bが含まれる水溶液8は、基板4の微小開口膜1の結合している側と、カバーガラス9との間に保持されており、励起光3は基板4の微小開口膜1の結合していない側から照射されるように構成されている。
【0047】
カバーガラス9の外側には、蛍光性生体分子2a,2bから発せられる蛍光7(7a,7b)を検出する蛍光検出手段21が備えられている。この蛍光検出手段21は、顕微鏡(図示せず)の対物レンズ13,ピンホール15,ダイクロイックミラー22,光学フィルター14a,14b,検出器16a,16bを備えている。対物レンズ13は蛍光性生体分子2a,2bから発せられる蛍光7(7a,7b)を集め、ピンホール15は、対物レンズ13で集められた蛍光7の中から単一の微小開口5からの蛍光7(7a,7b)を検出するために配置されるものである。なお、ピンホール15の穴の大きさは、対物レンズ13の分解能×倍率程度となっている。なお、対物レンズ13の分解能は、前述のとおり、対物レンズ13の開口数NAに対し、式0.61λem/NAで表される。
【0048】
ダイクロイックミラー22は、特定の波長だけを透過させ、その他の波長を反射するものであり、ここでは、ピンホール15を通過した蛍光7のうち、蛍光性生体分子2aから発せられた蛍光7aを透過させ、蛍光性生体分子2bから発せられた蛍光7bを反射するように構成されている。また、光学フィルター14a,14bは、ダイクロイックミラー22で透過,反射された蛍光7a,7bを含む光の中から、散乱などの背景光を取り除き、蛍光7a,7bのみをそれぞれ通過させるように配置されている。そして、光学フィルター14a,14bを通過した蛍光7a,7bは、それぞれ高感度の検出器16a,16bで検出され、その検出信号はデジタルカウンターやデジタル相関器などで処理されて、従来のFCCSの手法に従い蛍光7a,7bのクロス相関をとることにより、蛍光性生体分子2aと蛍光性生体分子2bの結合を検出するように構成されている。
【0049】
つぎに、上記生体分子間相互作用解析装置を用いた解析方法について説明する。まず、蛍光性生体分子2a,2bを含む水溶液8を微小開口膜1とカバーガラス9の間に加え、顕微鏡に装着する。微小開口5の裏面から励起光7を入射してエバネッセント場6を発生させる。蛍光性生体分子2a,2bがエバネッセント場6を通過すると励起されてそれぞれ蛍光7a,7bを発する。この蛍光7a,7bを対物レンズ13で集め、ピンホール15に通し、単一の微小開口5からの蛍光7a,7bのみを通過させる。そして、ピンホール15を通過した蛍光7a,7bを、ダイクロイックミラー22を用いて分離する。すなわち、蛍光7aはダイクロイックミラー22を透過し、蛍光7bはダイクロイックミラー22で反射される。そして、ダイクロイックミラー22で分離された蛍光7a,7bは、それぞれ光学フィルター14a,14bによって散乱などの背景光が除かれる。光学フィルター14a,14bを通過した蛍光7a,7bは、その後、それぞれ検出器16a,16bによって検出される。
【0050】
なお、図5の中央の微小開口5のように、蛍光性生体分子2aと蛍光性生体分子2bが結合している場合は、蛍光性生体分子2aと蛍光性生体分子2bの蛍光7a,7bが同時に観察される。一方、図5の両端の微小開口5のように、2つの蛍光性生体分子2a,2bが結合していない場合は、一方の蛍光7(蛍光7a又は蛍光7b)しか検出されない。その検出信号はデジタルカウンターやデジタル相関器などで処理されて、従来のFCCSの手法に従い、蛍光7a,7bのクロス相関をとることにより、蛍光性生体分子2aと蛍光性生体分子2bの結合を検出する。
【0051】
以上のとおり、前記実施例の生体分子間相互作用解析装置は、励起光3を発生する励起光発生手段たるレーザー11と、最大開口幅たる直径φが前記励起光3の波長λexよりも小さい微小開口5が設けられた光を透過しない薄膜からなる微小開口膜1と、蛍光7(7a,7b)を検出する蛍光検出手段21とを備えたものであり、直径φが励起光3の波長λexよりも小さい微小開口膜1の微小開口5にレーザー11からの励起光3を照射し、この微小開口5に生じるエバネッセント場6を用いることで励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2a,2bに照射することができ、この蛍光性生体分子2a,2bから発せられる蛍光7a,7bを蛍光検出手段21で検出することができる。また、励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2a,2bに照射することによって、蛍光性生体分子2a,2bの水溶液8中の濃度を高くすることができ、さらに、蛍光性生体分子2a,2bのガラス面たる基板4面への非特異的吸着の影響を抑えることができるので、生体分子間相互作用の検出、定量を確実に行うことができる。
【0052】
また、前記微小開口5は複数設けられ等間隔に配列されているとともに、前記微小開口5の間隔dは前記蛍光検出手段21を構成する対物レンズ13の分解能と同じか又は対物レンズ13の分解能よりも大きいので、複数の微小開口5のうちの任意の微小開口5において蛍光性生体分子2a,2bの蛍光7a,7bを観察することができるので、蛍光検出手段21の位置合わせが容易になる。また、微小開口5の間隔は蛍光検出手段21を構成する対物レンズ13の分解能と同じか又は対物レンズ13の分解能よりも大きいので、それぞれの微小開口5によって励起された個々の蛍光性生体分子2a,2bの蛍光7a,7bを分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0053】
さらに、前記実施例の生体分子間相互作用解析方法は、励起光3の波長λexよりも小さい微小開口5から前記励起光3によるエバネッセント場6を発生させ、このエバネッセント場6の領域をブラウン運動により通過する蛍光性生体分子2a,2bを励起させ、その蛍光性生体分子2a,2bの蛍光7a,7bを検出するので、励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2a,2bに照射することができ、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量することができる。
【0054】
つぎに、本発明の生体分子間相互作用解析装置の第三実施例について、図7、図8を参照して説明する。この生体分子間相互作用解析装置は、前記微小開口膜1を用い、1分子蛍光イメージ法、或いは、多分子の蛍光顕微定量法によって、それぞれ異なる蛍光波長をもつ蛍光分子で標識した蛍光性生体分子2a,2bを用いて、蛍光性生体分子2bが発する蛍光7bから蛍光性生体分子2a,2bの生体分子間相互作用を検出するための装置である。なお、前記実施例と同様の部分には同じ符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0055】
11は、励起光を発生する励起光発生手段たるレーザーである。なお、レーザー11の代わりにランプを用いても良い。このレーザー11は、励起光3を微小開口膜1に照射するように構成されている。蛍光性生体分子2aは、微小開口5に付着しており、蛍光性生体分子2bが含まれる水溶液8は、基板4の微小開口膜1の結合している側と、カバーガラス9との間に保持されている。そして、励起光3は基板4の微小開口膜1の結合していない側から照射されるように構成されている。
【0056】
カバーガラス9の外側には、蛍光性生体分子2a,2bから発せられる蛍光7(7a,7b)を検出する蛍光検出手段31が備えられている。この蛍光検出手段31は、顕微鏡(図示せず)の対物レンズ13,光学フィルター14,カメラ32を備えている。対物レンズ13は蛍光性生体分子2a,2bから発せられる蛍光7(7a,7b)を集め、光学フィルター14は散乱などの背景光を取り除き、蛍光7(7a,7b)のみを通過させるように配置されている。なお、対物レンズ13の分解能は、前述のとおり、対物レンズ13の開口数NAに対し、式0.61λem/NAで表される。そして、光学フィルター14を通過した蛍光7(7a,7b)の像は、高感度のカメラ32で検出されるように構成されている。
【0057】
つぎに、上記生体分子間相互作用解析装置を用いた解析方法について説明する。まず、蛍光性生体分子2aを含む水溶液を微小開口膜1とカバーガラス9の間に加え、蛍光性生体分子2aを微小開口5に付着させる。微小開口5に付着しなかった蛍光性生体分子2aを洗い流した後、別の蛍光性生体分子2bを含む水溶液8を微小開口膜1とカバーガラス9の間に加え、顕微鏡に装着する。微小開口5の裏面から励起光7を入射してエバネッセント場6を発生させる。
【0058】
まず、蛍光性生体分子2aを励起して、その蛍光7aの像をカメラ32で観察して蛍光性生体分子2aの位置を確認しておく。1分子蛍光イメージング法の場合は、個々の微小開口5に関し、付着した蛍光性生体分子2aの数が1以下になるように調節する。多分子の蛍光顕微定量法の場合は、個々の微小開口5に関し、付着した蛍光性生体分子2aの数を1以上の任意の値に設定することが可能である。
【0059】
つぎに、別の蛍光性生体分子2bを励起して、その蛍光7bの像をカメラ32で捉えることによって、微小開口5に付着した蛍光性生体分子2aと別の蛍光性生体分子2bの結合、解離などの相互作用の様子を観察する。なお、1分子蛍光イメージング法の場合は、個々の微小開口5ごとに解析を行う。また、1分子蛍光イメージング法で用いる装置と同じ装置を用いて、観測する分子を多くすれば多分子の蛍光顕微定量法による観測を行うことができるが、多分子の蛍光顕微定量法の場合は、複数の微小開口5からの蛍光7bを同時に検出する。したがって、多分子の蛍光顕微定量法の場合は、カメラ32以外に、光電子倍増管などの検出器を用いてもよい。以上の方法で、生体分子間相互作用の結合速度定数,解離速度定数,解離定数などを得ることができる。
【0060】
以上のとおり、前記実施例の生体分子間相互作用解析装置は、励起光3を発生する励起光発生手段たるレーザー11と、最大開口幅たる直径φが前記励起光3の波長λexよりも小さい微小開口5が設けられた光を透過しない薄膜からなる微小開口膜1と、蛍光7(7a,7b)を検出する蛍光検出手段31とを備えたものであり、直径φが励起光3の波長λexよりも小さい微小開口膜1の微小開口5にレーザー11からの励起光3を照射し、この微小開口5に生じるエバネッセント場6を用いることで励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2a,2bに照射することができ、この蛍光性生体分子2a,2bから発せられる蛍光7a,7bを蛍光検出手段31で検出することができる。また、励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2a,2bに照射することによって、蛍光性生体分子2a,2bの水溶液8中の濃度を高くすることができ、さらに、蛍光性生体分子2a,2bのガラス面たる基板4面への非特異的吸着の影響を抑えることができるので、生体分子間相互作用の検出、定量を確実に行うことができる。
【0061】
また、前記微小開口5は複数設けられ等間隔に配列されているとともに、前記微小開口5の間隔dは前記蛍光検出手段31を構成する対物レンズ13の分解能と同じか又は対物レンズ13の分解能よりも大きいので、複数の微小開口5のうちの任意の微小開口5において蛍光性生体分子2a,2bの蛍光7を観察することができるので、蛍光検出手段31の位置合わせが容易になる。また、微小開口5の間隔は蛍光検出手段31を構成する対物レンズ13の分解能と同じか又は対物レンズ13の分解能よりも大きいので、それぞれの微小開口5によって励起された個々の蛍光性生体分子2a,2bの蛍光7a,7bを分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0062】
さらに、前記実施例の生体分子間相互作用解析方法は、励起光3の波長λexよりも小さい微小開口5から前記励起光3によるエバネッセント場6を発生させ、この微小開口5に付着させた第一の蛍光性生体分子2aと、前記エバネッセント場6の領域にあって前記第一の蛍光性生体分子2aと相互作用する第二の蛍光性生体分子2bとを励起させ、これら第一の蛍光生体分子2aと第二の蛍光性生体分子2bの蛍光7a,7bをそれぞれ検出するので、励起光3の波長より小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2a,2bに照射することができ、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量することができる。
【0063】
以上、上記実施例で詳細に説明したとおり、本発明は、微小開口からのエバネッセント場の生成,1分子蛍光イメージング法,FCS,FCCSなどの既知の方法を巧みに組み合わせることにより、従来の原理的な問題を解決して水溶液中に従来の限界濃度の100〜1000倍もの高濃度の分子を加えることを可能にしたほか、ガラス面などへの非特異的吸着の影響を従来の1/100程度にまで抑えることを可能にしている。
【0064】
そして、本発明は、生体分子間相互作用を1分子レベルで高感度に定量することを可能とするものであって、生物学、医学、薬学などの広範な分野で利用可能である。特に、ポストゲノム研究として、タンパク質間相互作用の研究が重要になっているが、本発明により、生体分子間相互作用、特に、タンパク質間相互作用を1分子レベルで高感度に検出し、機能解析を行ことが可能になる。そして、本発明によれば、従来は不可能であった結合定数が106Mよりも小さい弱い相互作用を検出することができる。本発明は、DNAチップやタンパク質チップに直ちに応用可能であり、タンパク質間相互作用の解析に大きな威力を発揮するであろう。
【0065】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものでなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、微小開口が多数ある微小開口膜を例にとって説明したが、微小開口が1つの微小開口膜であってもよい。
【0066】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載の微小開口膜は、微小開口が設けられた光を透過しない薄膜からなるものであり、微小開口の最大開口幅を励起光の波長よりも小さくし、この微小開口に励起光を照射すれば、この微小開口からエバネッセント場が生じ、このエバネッセント場を用いることで、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することが可能になる。
【0067】
本発明の請求項2記載の微小開口膜は、請求項1において、前記薄膜は透明な基板に結合されているものであり、基板に薄膜を支持することで薄膜の製造性と取り扱い性を向上させることができる。また、基板は透明なので励起光の透過を妨げることがない。
【0068】
本発明の請求項3記載の微小開口膜は、請求項1又は2において、前記微小開口は複数設けられ略等間隔に配列されているものであり、複数の微小開口のうちの任意の微小開口において蛍光性生体分子の蛍光を観察することができるので、蛍光検出手段の位置合わせが容易になる。また、微小開口の間隔を蛍光検出手段の分解能と同じか又は蛍光検出手段の分解能よりも大きくすれば、それぞれの微小開口によって励起された個々の蛍光性生体分子の蛍光を分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0069】
本発明の請求項4記載の微小開口膜は、請求項1〜3のいずれか1項において、前記微小開口の最大開口幅は200nm以下であり、微小開口の最大開口幅を励起光の波長より小さくすることができる。
【0070】
本発明の請求項5記載の生体分子間相互作用解析装置は、励起光を発生する励起光発生手段と、最大開口幅が前記励起光の波長よりも小さい微小開口が設けられた光を透過しない薄膜からなる微小開口膜と、蛍光を検出する蛍光検出手段とを備えたものであり、最大開口幅が励起光の波長よりも小さい微小開口膜の微小開口に励起光発生手段からの励起光を照射し、この微小開口に生じるエバネッセント場を用いることで励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することができ、この蛍光性生体分子から発せられる蛍光を蛍光検出手段で検出することができる。また、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することによって、蛍光性生体分子の水溶液中の濃度を高くすることができ、さらに、蛍光性生体分子のガラス面などへの非特異的吸着の影響を抑えることができるので、生体分子間相互作用の検出、定量を確実に行うことができる。
【0071】
本発明の請求項6記載の生体分子間相互作用解析装置は、請求項5において、前記微小開口は複数設けられ等間隔に配列されているとともに、前記微小開口の間隔は前記蛍光検出手段の分解能と同じか又は前記蛍光検出手段の分解能よりも大きいものであり、複数の微小開口のうちの任意の微小開口において蛍光性生体分子の蛍光を観察することができるので、蛍光検出手段の位置合わせが容易になる。また、微小開口の間隔は蛍光検出手段の分解能と同じか又は蛍光検出手段の分解能よりも大きいので、それぞれの微小開口によって励起された個々の蛍光性生体分子の蛍光を分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0072】
本発明の請求項7記載の生体分子間相互作用解析方法は、励起光の波長よりも小さい微小開口から前記励起光によるエバネッセント場を発生させ、このエバネッセント場の領域をブラウン運動により通過する蛍光性生体分子を励起させ、その蛍光性生体分子の蛍光を検出するものであり、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することができ、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量することができる。
【0073】
本発明の請求項8記載の生体分子間相互作用解析方法は、励起光の波長よりも小さい微小開口から前記励起光によるエバネッセント場を発生させ、この微小開口に付着させた第一の蛍光性生体分子と、前記エバネッセント場の領域にあって前記第一の蛍光性生体分子と相互作用する第二の蛍光性生体分子とを励起させ、これら第一の蛍光生体分子と第二の蛍光性生体分子の蛍光をそれぞれ検出するものであり、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することができ、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の微小開口膜の一実施例を示す正面図である。
【図2】同上微小開口によるエバネッセント場の発生を示す模式図である。
【図3】本発明の生体分子間相互作用解析装置の第一実施例を示す微小開口を用いたFCSの測定原理の模式図である。
【図4】同上微小開口を用いたFCS装置の模式図である。
【図5】本発明の生体分子間相互作用解析装置の第二実施例を示す微小開口を用いたFCCSの測定原理の模式図である。
【図6】同上微小開口を用いたFCCS装置の模式図である。
【図7】本発明の生体分子間相互作用解析装置の第三実施例を示す微小開口を用いた1分子蛍光イメージング法の測定原理の模式図である。
【図8】同上微小開口を用いた1分子蛍光イメージング装置の模式図である。
【図9】従来の全反射によるエバネッセント場を用いた生体分子観察法を示す模式図である。
【図10】従来のFCSの原理を示す模式図である。
【符号の説明】
1 微小開口膜
2,2a,2b 蛍光性生体分子
3 励起光
4 基板
5 微小開口
6 エバネッセント場
7,7a,7b 蛍光
11 レーザー(励起光発生手段)
12,21,31 蛍光検出手段
13 対物レンズ(蛍光検出手段)
d 間隔
φ 直径(最大開口幅)
λex 波長
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量するための微小開口膜、及び生体分子間相互作用解析装置とその解析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量する方法として、主として以下の2つの方法がある。
【0003】
1つは、図9に示すように、ガラス101と水溶液102の界面103にレーザー光104を入射して全反射させ、水溶液102の界面103に発生するエバネッセント場105を利用して、蛍光性生体分子106をイメージングする方法である。エバネッセント場105は、界面103から浸入長150nmで減衰するので局所励起が可能である。一方の蛍光性生体分子106をガラス101に固定し、他方の生体分子を別の蛍光波長の蛍光分子で標識して水溶液102に加えると、これら生体分子同士の結合、解離(分子間相互作用)を超高感度カメラ107で撮影することが可能である。この生体分子の1分子蛍光イメージング法は、発明者らによって1995年に開発され(Funatsu, T. et al., (1995) Nature 374, 555−559)、さまざまな成果を収めてきた。しかし、1.水溶液102中の蛍光性生体分子106の濃度を50nM以下にしないと1分子観察が困難であること、2.蛍光性生体分子がガラス101に非特異的に吸着し、分子間相互作用の検出が困難であるという問題点をかかえており、1分子計測できる生体分子相互作用は限られていた。
【0004】
これらの問題が発生する理由は以下のとおりである。全反射により発生するエバネッセント場105は、界面103に垂直な方向に150nmの局所励起を実現しているが、平行な方向については局所化していないので、水溶液中102の蛍光性生体分子106の濃度を50nM以下にしなければ超高感度カメラ106に接続された光学顕微鏡の分解能(約250nm)の範囲で、個々の蛍光性生体分子106をイメージングすることができない。また、蛍光性生体分子106が発した蛍光108は、超高感度カメラ107まで伝播するあいだに回折の影響を受け、試料面で直径約250nmに相当する大きさに広がってしまう。そのため、個々の蛍光性生体分子106を識別するためには、ガラス101に固定する蛍光性生体分子106の間隔を約250nmよりも大きくしなければならない。そのため、ガラス101上に固定した蛍光性生体分子106が占める面積の割合は0.1%以下と小さくなり、水溶液102中に加えた生体分子のガラス101への非特異的吸着が問題となるのである。これらの問題は、蛍光性生体分子106を励起する領域をさらに小さくし、それらを超高感度カメラ107に接続された光学顕微鏡の分解能よりも離れた位置に配置することによって解決できると期待される。
【0005】
生体分子間相互作用を1分子レベルで検出する2つめの方法は、蛍光相関分光法(FCS;Fluorescence Correlation Spectroscopy)である。これは、図10に示すように、レーザービーム111を開口数の大きい対物レンズ112で回折限界まで絞込み、その中を通過する蛍光性生体分子113の蛍光強度のゆらぎを測定することにより、個々の蛍光性生体分子113の蛍光強度と拡散定数を求める方法である(Eigen M. and Rigler, R. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 5740−5747,特表平11−502608号(特願平6−51570号)公報)。レーザービーム111の焦点114の蛍光115だけを検出するために、レーザービーム111の結像位置にピンホールを置く共焦点光学系が用いられている。2種類の蛍光115の相関をとれば2種類の蛍光性生体分子113の分子間相互作用を解析することも可能である。この方法は、蛍光クロス相関分光法(FCCS;fluorescence Cross−correlation Spectroscopy)と呼ばれる(Rigker, R., Z. et al., (1998) Fluorescence cross−correlation − a new concept for polymerase chain reaction. J. Biotechnol. 63: 97−109)。
【0006】
この方法においても、照射領域が光の回折限界程度に広がるため、蛍光性生体分子113の濃度を100nM程度までしか上げることができなかった。より高濃度で生体分子間相互作用を観察するために、光の回折限界を超える局所励起が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】
特表平11−502608号公報
【0008】
【非特許文献1】
Funatsu, T. et al., (1995) Nature 374, 555−559
【0009】
【非特許文献2】
Eigen M. and Rigler, R. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 5740−5747
【0010】
【非特許文献3】
Rigker, R., Z. et al., (1998) Fluorescence cross−correlation − a new concept for polymerase chain reaction. J. Biotechnol. 63: 97−109
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題を解決することであり、励起光の照射領域を励起光の波長よりも小さくすることを実現し、生体分子間相互作用を1分子レベルで高感度で検出、定量することを可能にする微小開口膜、及び生体分子間相互作用解析装置とその解析方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の微小開口膜は、微小開口が設けられた光を透過しない薄膜からなることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、微小開口の最大開口幅を励起光の波長よりも小さくし、この微小開口に励起光を照射すれば、この微小開口からエバネッセント場が生じ、このエバネッセント場を用いることで、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することが可能になる。
【0014】
本発明の請求項2記載の微小開口膜は、請求項1において、前記薄膜は透明な基板に結合されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、基板に薄膜を支持することで薄膜の製造性と取り扱い性を向上させることができる。また、基板は透明なので励起光の透過を妨げることがない。
【0016】
本発明の請求項3記載の微小開口膜は、請求項1又は2において、前記微小開口は複数設けられ略等間隔に配列されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、複数の微小開口のうちの任意の微小開口において蛍光性生体分子の蛍光を観察することができるので、蛍光検出手段の位置合わせが容易になる。また、微小開口の間隔を蛍光検出手段の分解能と同じか又は蛍光検出手段の分解能よりも大きくすれば、それぞれの微小開口によって励起された個々の蛍光性生体分子の蛍光を分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0018】
本発明の請求項4記載の微小開口膜は、請求項1〜3のいずれか1項において、前記微小開口の最大開口幅は200nm以下であることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、微小開口の最大開口幅を励起光の波長より小さくすることができる。
【0020】
本発明の請求項5記載の生体分子間相互作用解析装置は、励起光を発生する励起光発生手段と、最大開口幅が前記励起光の波長よりも小さい微小開口が設けられた光を透過しない薄膜からなる微小開口膜と、蛍光を検出する蛍光検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、最大開口幅が励起光の波長よりも小さい微小開口膜の微小開口に励起光発生手段からの励起光を照射し、この微小開口に生じるエバネッセント場を用いることで励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することができ、この蛍光性生体分子から発せられる蛍光を蛍光検出手段で検出することができる。また、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することによって、蛍光性生体分子の水溶液中の濃度を高くすることができ、さらに、蛍光性生体分子のガラス面などへの非特異的吸着の影響を抑えることができるので、生体分子間相互作用の検出、定量を確実に行うことができる。
【0022】
本発明の請求項6記載の生体分子間相互作用解析装置は、請求項5において、前記微小開口は複数設けられ等間隔に配列されているとともに、前記微小開口の間隔は前記蛍光検出手段の分解能と同じか又は前記蛍光検出手段の分解能よりも大きいことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、複数の微小開口のうちの任意の微小開口において蛍光性生体分子の蛍光を観察することができるので、蛍光検出手段の位置合わせが容易になる。また、微小開口の間隔は蛍光検出手段の分解能と同じか又は蛍光検出手段の分解能よりも大きいので、それぞれの微小開口によって励起された個々の蛍光性生体分子の蛍光を分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0024】
本発明の請求項7記載の生体分子間相互作用解析方法は、励起光の波長よりも小さい微小開口から前記励起光によるエバネッセント場を発生させ、このエバネッセント場の領域をブラウン運動により通過する蛍光性生体分子を励起させ、その蛍光性生体分子の蛍光を検出することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することができ、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量することができる。
【0026】
本発明の請求項8記載の生体分子間相互作用解析方法は、励起光の波長よりも小さい微小開口から前記励起光によるエバネッセント場を発生させ、この微小開口に付着させた第一の蛍光性生体分子と、前記エバネッセント場の領域にあって前記第一の蛍光性生体分子と相互作用する第二の蛍光性生体分子とを励起させ、これら第一の蛍光生体分子と第二の蛍光性生体分子の蛍光をそれぞれ検出することを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することができ、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。はじめに、図1、図2に基づき、本発明の微小開口膜の一実施例について説明する。1は微小開口膜であり、解析対象となる蛍光色素で標識化した蛍光性生体分子2を励起する励起光3を透過しない薄膜によって構成されている。この微小開口膜1は、ガラスなどの透明な基板4に結合されており、例えば、蒸着などの手段によって、アルミニウム,クロム,金,銀,ゲルマニウムなどの金属や、炭化シリコン(SiC)などの薄膜を基板4上に形成したものである。
【0029】
この微小開口膜1には、前後左右方向にそれぞれ間隔dを隔てて等間隔に整然と配列した複数の微小開口5が形成されている。この微小開口5は直径φの円形に形成されている。なお、微小開口5は、必ずしも円形である必要はなく、微小開口5が円形でない場合は、直径φを微小開口5の最大開口幅とする。
【0030】
そして、微小開口5の直径φは、励起光3の波長λexよりも小さくなっている。なお、この直径φはできる限り小さいほうが好ましい。すなわち、直径φが小さいほど、後述するエバネッセント場6の領域が小さくなり、1分子レベルで蛍光性生体分子2を励起させるためには好都合であるため、好ましくは、直径φを200nm以下とし、さらに好ましくは20nm以下とする。
【0031】
また、1分子レベルで蛍光性生体分子2が発する蛍光を検出するために、微小開口5の間隔dは、蛍光性生体分子2の蛍光7を検出する、後述する蛍光検出手段12を構成する光学顕微鏡の対物レンズ13の分解能と同じかそれよりも大きくなっている。すなわち、検出する光がコヒーレントでない場合、前記対物レンズ13の開口数NAに対し、蛍光7の波長をλemとすると、その対物レンズ13の分解能は式0.61λem/NAで表されるので、微小開口5の間隔dは、d≧0.61λem/NAの式を満足する値になっている。例えば、蛍光7の波長λemが500nmの場合、対物レンズ13の開口数NAが1.2として、対物レンズ13の分解能は0.61λem/NA≒250nmとなる。したがって、開口数NAが1.2の対物レンズ13を用いる場合は、微小開口5の間隔dが250nm以上の微小開口膜1を用いれば、1分子レベルで蛍光性生体分子2が発する蛍光を検出することができることになる。
【0032】
つぎに、作用について説明する。図2に示すように、基板4の微小開口膜1の結合していない側から励起光3を入射すると、微小開口5で励起光3の染み出し、すなわちエバネッセント場6が発生する。このエバネッセント場6の大きさは、微小開口5の大きさと同程度であり、微小開口5に近接した励起光3の波長λexよりも小さい領域にある蛍光性生体分子2が局所的に励起され、蛍光7を発する。また、多数の微小開口5が、前記光学顕微鏡の対物レンズ13の分解能よりも離れて配置しているため、それぞれの微小開口5によって励起された個々の蛍光性生体分子2の蛍光7を分離して1分子計測することが可能である。
【0033】
なお、エバネッセント場6は、浸入長150nm程度で減衰するので、エバネッセント場6の領域は微小開口5の面積に比例する。したがって、従来のように、微小開口膜1を通さないで界面の全反射によるエバネッセント場を用いて蛍光性生体分子2を励起する場合に、蛍光性生体分子2を1分子レベルで検出するためには、対物レンズ13の分解能である直径250nmの範囲内に1分子のみが存在するように、蛍光性生体分子2の濃度を50nM以下にする必要があった。しかし、本発明の微小開口膜1を用いれば、微小開口5の直径が100nmのときは蛍光性生体分子2の濃度を300nM程度まで、さらに、微小開口5の直径が20nmのときは蛍光性生体分子2の濃度を8000nM程度、すなわち、従来の100〜1000倍程度にまで増加させることができる。したがって、生体分子がガラス面などに非特異的に吸着することによる悪影響を従来の1/100程度まで飛躍的に減少させることができる。
【0034】
以上のとおり、前記実施例の微小開口膜1は、微小開口5が設けられた光を透過しない薄膜からなるので、微小開口5の最大開口幅φを励起光3の波長λexよりも小さくし、この微小開口5に励起光3を照射すれば、この微小開口5からエバネッセント場6が生じ、このエバネッセント場6を用いることで、励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2に照射することが可能になる。
【0035】
また、前記薄膜たる微小開口膜1は透明な基板4に結合されているので、基板4に微小開口膜1を支持することで微小開口膜1の製造性と取り扱い性を向上させることができる。また、基板4は透明なので励起光3の透過を妨げることがない。
【0036】
また、前記微小開口5は複数設けられ略等間隔に配列されているので、複数の微小開口5のうちの任意の微小開口5において蛍光性生体分子2の蛍光7を観察することができるので、蛍光検出手段の位置合わせが容易になる。また、微小開口5の間隔dを蛍光検出手段の分解能と同じか又は蛍光検出手段の分解能よりも大きくすれば、それぞれの微小開口5によって励起された個々の蛍光性生体分子2の蛍光7を分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0037】
さらに、前記微小開口5の最大開口幅たる直径φは200nm以下であるので、微小開口5の直径φを励起光3の波長λexより小さくすることができる。
【0038】
つぎに、本発明の生体分子間相互作用解析装置の第一実施例について、図3、図4を参照して説明する。この生体分子間相互作用解析装置は、前記微小開口膜1を用い、蛍光相関分光法(FCS;Fluorescence Correlation Spectroscopy)によって蛍光性生体分子2が発する蛍光7の強度や、蛍光性生体分子2の拡散係数を求めるための装置である。なお、微小開口膜1の構成は前記実施例と同様であるので、同じ符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0039】
11は、励起光を発生する励起光発生手段たるレーザーである。なお、レーザー11の代わりにランプを用いても良い。このレーザー11は、蛍光性生体分子2の励起光3を微小開口膜1に照射するように構成されている。蛍光性生体分子2が含まれる水溶液8は、基板4の微小開口膜1の結合している側と、カバーガラス9との間に保持されており、励起光3は基板4の微小開口膜1の結合していない側から照射されるように構成されている。
【0040】
カバーガラス9の外側には、蛍光性生体分子2から発せられる蛍光7を検出する蛍光検出手段12が備えられている。この蛍光検出手段12は、顕微鏡(図示せず)の対物レンズ13,光学フィルター14,ピンホール15,検出器16を備えている。対物レンズ13は蛍光性生体分子2から発せられる蛍光7を集め、光学フィルター14は散乱などの背景光を取り除き、蛍光7のみを通過させるように配置されている。また、ピンホール15は、単一の微小開口5からの蛍光7を検出するために配置されるものであって、ピンホール15の穴の大きさは、対物レンズ13の分解能×倍率程度となっている。なお、対物レンズ13の分解能は、前述のとおり、対物レンズ13の開口数NAに対し、式0.61λem/NAで表される。そして、ピンホール15を通過した蛍光7は、高感度の検出器16で検出され、その検出信号はデジタルカウンターやデジタル相関器などで処理されて、従来のFCSの手法に従い解析されるように構成されている。
【0041】
つぎに、上記生体分子間相互作用解析装置を用いた解析方法について説明する。まず、蛍光性生体分子2を含む水溶液8を微小開口膜1とカバーガラス9の間に加え、顕微鏡に装着する。微小開口5の裏面から励起光3を入射してエバネッセント場6を発生させる。蛍光性生体分子2がエバネッセント場6を通過すると励起されて蛍光7を発する。この蛍光7を対物レンズ13で集め、散乱などの背景光を光学フィルター14で除き、蛍光7のみを通過させる。そして、光学フィルター14を通過した蛍光7をピンホール15に通し、単一の微小開口5からの蛍光7のみを検出器16で検出する。その後、その検出信号は、デジタルカウンターやデジタル相関器などで処理して、従来のFCSの手法に従い解析される。
【0042】
以上のとおり、前記実施例の生体分子間相互作用解析装置は、励起光3を発生する励起光発生手段たるレーザー11と、最大開口幅たる直径φが前記励起光3の波長λexよりも小さい微小開口5が設けられた光を透過しない薄膜からなる微小開口膜1と、蛍光7を検出する蛍光検出手段12とを備えたものであり、直径φが励起光3の波長λexよりも小さい微小開口膜1の微小開口5にレーザー11からの励起光3を照射し、この微小開口5に生じるエバネッセント場6を用いることで励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2に照射することができ、この蛍光性生体分子2から発せられる蛍光7を蛍光検出手段12で検出することができる。また、励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2に照射することによって、蛍光性生体分子2の水溶液8中の濃度を高くすることができ、さらに、蛍光性生体分子2のガラス面たる基板4面への非特異的吸着の影響を抑えることができるので、生体分子間相互作用の検出、定量を確実に行うことができる。
【0043】
また、前記微小開口5は複数設けられ等間隔に配列されているとともに、前記微小開口5の間隔dは前記蛍光検出手段12を構成する対物レンズ13の分解能と同じか又は対物レンズ13の分解能よりも大きいので、複数の微小開口5のうちの任意の微小開口5において蛍光性生体分子2の蛍光7を観察することができるので、蛍光検出手段12の位置合わせが容易になる。また、微小開口5の間隔は蛍光検出手段12を構成する対物レンズ13の分解能と同じか又は対物レンズ13の分解能よりも大きいので、それぞれの微小開口5によって励起された個々の蛍光性生体分子2の蛍光7を分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0044】
さらに、前記実施例の生体分子間相互作用解析方法は、励起光3の波長λexよりも小さい微小開口5から前記励起光3によるエバネッセント場6を発生させ、このエバネッセント場6の領域をブラウン運動により通過する蛍光性生体分子2を励起させ、その蛍光性生体分子2の蛍光7を検出するので、励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2に照射することができ、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量することができる。
【0045】
つぎに、本発明の生体分子間相互作用解析装置の第二実施例について、図5、図6を参照して説明する。この生体分子間相互作用解析装置は、前記微小開口膜1を用い、蛍光クロス相関分光法(FCCS;fluorescence Cross−correlationSpectroscopy)によって、それぞれ異なる蛍光波長をもつ蛍光分子で標識した蛍光性生体分子2a,2bが発する蛍光7(7a,7b)から蛍光性生体分子2a,2bの生体分子間相互作用を検出するための装置である。なお、前記実施例と同様の部分には同じ符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0046】
11は、励起光を発生する励起光発生手段たるレーザーである。なお、レーザー11の代わりにランプを用いても良い。このレーザー11は、2種類の蛍光性生体分子2a,2bに共通な励起光3を微小開口膜1に照射するように構成されている。蛍光性生体分子2a,2bが含まれる水溶液8は、基板4の微小開口膜1の結合している側と、カバーガラス9との間に保持されており、励起光3は基板4の微小開口膜1の結合していない側から照射されるように構成されている。
【0047】
カバーガラス9の外側には、蛍光性生体分子2a,2bから発せられる蛍光7(7a,7b)を検出する蛍光検出手段21が備えられている。この蛍光検出手段21は、顕微鏡(図示せず)の対物レンズ13,ピンホール15,ダイクロイックミラー22,光学フィルター14a,14b,検出器16a,16bを備えている。対物レンズ13は蛍光性生体分子2a,2bから発せられる蛍光7(7a,7b)を集め、ピンホール15は、対物レンズ13で集められた蛍光7の中から単一の微小開口5からの蛍光7(7a,7b)を検出するために配置されるものである。なお、ピンホール15の穴の大きさは、対物レンズ13の分解能×倍率程度となっている。なお、対物レンズ13の分解能は、前述のとおり、対物レンズ13の開口数NAに対し、式0.61λem/NAで表される。
【0048】
ダイクロイックミラー22は、特定の波長だけを透過させ、その他の波長を反射するものであり、ここでは、ピンホール15を通過した蛍光7のうち、蛍光性生体分子2aから発せられた蛍光7aを透過させ、蛍光性生体分子2bから発せられた蛍光7bを反射するように構成されている。また、光学フィルター14a,14bは、ダイクロイックミラー22で透過,反射された蛍光7a,7bを含む光の中から、散乱などの背景光を取り除き、蛍光7a,7bのみをそれぞれ通過させるように配置されている。そして、光学フィルター14a,14bを通過した蛍光7a,7bは、それぞれ高感度の検出器16a,16bで検出され、その検出信号はデジタルカウンターやデジタル相関器などで処理されて、従来のFCCSの手法に従い蛍光7a,7bのクロス相関をとることにより、蛍光性生体分子2aと蛍光性生体分子2bの結合を検出するように構成されている。
【0049】
つぎに、上記生体分子間相互作用解析装置を用いた解析方法について説明する。まず、蛍光性生体分子2a,2bを含む水溶液8を微小開口膜1とカバーガラス9の間に加え、顕微鏡に装着する。微小開口5の裏面から励起光7を入射してエバネッセント場6を発生させる。蛍光性生体分子2a,2bがエバネッセント場6を通過すると励起されてそれぞれ蛍光7a,7bを発する。この蛍光7a,7bを対物レンズ13で集め、ピンホール15に通し、単一の微小開口5からの蛍光7a,7bのみを通過させる。そして、ピンホール15を通過した蛍光7a,7bを、ダイクロイックミラー22を用いて分離する。すなわち、蛍光7aはダイクロイックミラー22を透過し、蛍光7bはダイクロイックミラー22で反射される。そして、ダイクロイックミラー22で分離された蛍光7a,7bは、それぞれ光学フィルター14a,14bによって散乱などの背景光が除かれる。光学フィルター14a,14bを通過した蛍光7a,7bは、その後、それぞれ検出器16a,16bによって検出される。
【0050】
なお、図5の中央の微小開口5のように、蛍光性生体分子2aと蛍光性生体分子2bが結合している場合は、蛍光性生体分子2aと蛍光性生体分子2bの蛍光7a,7bが同時に観察される。一方、図5の両端の微小開口5のように、2つの蛍光性生体分子2a,2bが結合していない場合は、一方の蛍光7(蛍光7a又は蛍光7b)しか検出されない。その検出信号はデジタルカウンターやデジタル相関器などで処理されて、従来のFCCSの手法に従い、蛍光7a,7bのクロス相関をとることにより、蛍光性生体分子2aと蛍光性生体分子2bの結合を検出する。
【0051】
以上のとおり、前記実施例の生体分子間相互作用解析装置は、励起光3を発生する励起光発生手段たるレーザー11と、最大開口幅たる直径φが前記励起光3の波長λexよりも小さい微小開口5が設けられた光を透過しない薄膜からなる微小開口膜1と、蛍光7(7a,7b)を検出する蛍光検出手段21とを備えたものであり、直径φが励起光3の波長λexよりも小さい微小開口膜1の微小開口5にレーザー11からの励起光3を照射し、この微小開口5に生じるエバネッセント場6を用いることで励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2a,2bに照射することができ、この蛍光性生体分子2a,2bから発せられる蛍光7a,7bを蛍光検出手段21で検出することができる。また、励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2a,2bに照射することによって、蛍光性生体分子2a,2bの水溶液8中の濃度を高くすることができ、さらに、蛍光性生体分子2a,2bのガラス面たる基板4面への非特異的吸着の影響を抑えることができるので、生体分子間相互作用の検出、定量を確実に行うことができる。
【0052】
また、前記微小開口5は複数設けられ等間隔に配列されているとともに、前記微小開口5の間隔dは前記蛍光検出手段21を構成する対物レンズ13の分解能と同じか又は対物レンズ13の分解能よりも大きいので、複数の微小開口5のうちの任意の微小開口5において蛍光性生体分子2a,2bの蛍光7a,7bを観察することができるので、蛍光検出手段21の位置合わせが容易になる。また、微小開口5の間隔は蛍光検出手段21を構成する対物レンズ13の分解能と同じか又は対物レンズ13の分解能よりも大きいので、それぞれの微小開口5によって励起された個々の蛍光性生体分子2a,2bの蛍光7a,7bを分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0053】
さらに、前記実施例の生体分子間相互作用解析方法は、励起光3の波長λexよりも小さい微小開口5から前記励起光3によるエバネッセント場6を発生させ、このエバネッセント場6の領域をブラウン運動により通過する蛍光性生体分子2a,2bを励起させ、その蛍光性生体分子2a,2bの蛍光7a,7bを検出するので、励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2a,2bに照射することができ、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量することができる。
【0054】
つぎに、本発明の生体分子間相互作用解析装置の第三実施例について、図7、図8を参照して説明する。この生体分子間相互作用解析装置は、前記微小開口膜1を用い、1分子蛍光イメージ法、或いは、多分子の蛍光顕微定量法によって、それぞれ異なる蛍光波長をもつ蛍光分子で標識した蛍光性生体分子2a,2bを用いて、蛍光性生体分子2bが発する蛍光7bから蛍光性生体分子2a,2bの生体分子間相互作用を検出するための装置である。なお、前記実施例と同様の部分には同じ符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0055】
11は、励起光を発生する励起光発生手段たるレーザーである。なお、レーザー11の代わりにランプを用いても良い。このレーザー11は、励起光3を微小開口膜1に照射するように構成されている。蛍光性生体分子2aは、微小開口5に付着しており、蛍光性生体分子2bが含まれる水溶液8は、基板4の微小開口膜1の結合している側と、カバーガラス9との間に保持されている。そして、励起光3は基板4の微小開口膜1の結合していない側から照射されるように構成されている。
【0056】
カバーガラス9の外側には、蛍光性生体分子2a,2bから発せられる蛍光7(7a,7b)を検出する蛍光検出手段31が備えられている。この蛍光検出手段31は、顕微鏡(図示せず)の対物レンズ13,光学フィルター14,カメラ32を備えている。対物レンズ13は蛍光性生体分子2a,2bから発せられる蛍光7(7a,7b)を集め、光学フィルター14は散乱などの背景光を取り除き、蛍光7(7a,7b)のみを通過させるように配置されている。なお、対物レンズ13の分解能は、前述のとおり、対物レンズ13の開口数NAに対し、式0.61λem/NAで表される。そして、光学フィルター14を通過した蛍光7(7a,7b)の像は、高感度のカメラ32で検出されるように構成されている。
【0057】
つぎに、上記生体分子間相互作用解析装置を用いた解析方法について説明する。まず、蛍光性生体分子2aを含む水溶液を微小開口膜1とカバーガラス9の間に加え、蛍光性生体分子2aを微小開口5に付着させる。微小開口5に付着しなかった蛍光性生体分子2aを洗い流した後、別の蛍光性生体分子2bを含む水溶液8を微小開口膜1とカバーガラス9の間に加え、顕微鏡に装着する。微小開口5の裏面から励起光7を入射してエバネッセント場6を発生させる。
【0058】
まず、蛍光性生体分子2aを励起して、その蛍光7aの像をカメラ32で観察して蛍光性生体分子2aの位置を確認しておく。1分子蛍光イメージング法の場合は、個々の微小開口5に関し、付着した蛍光性生体分子2aの数が1以下になるように調節する。多分子の蛍光顕微定量法の場合は、個々の微小開口5に関し、付着した蛍光性生体分子2aの数を1以上の任意の値に設定することが可能である。
【0059】
つぎに、別の蛍光性生体分子2bを励起して、その蛍光7bの像をカメラ32で捉えることによって、微小開口5に付着した蛍光性生体分子2aと別の蛍光性生体分子2bの結合、解離などの相互作用の様子を観察する。なお、1分子蛍光イメージング法の場合は、個々の微小開口5ごとに解析を行う。また、1分子蛍光イメージング法で用いる装置と同じ装置を用いて、観測する分子を多くすれば多分子の蛍光顕微定量法による観測を行うことができるが、多分子の蛍光顕微定量法の場合は、複数の微小開口5からの蛍光7bを同時に検出する。したがって、多分子の蛍光顕微定量法の場合は、カメラ32以外に、光電子倍増管などの検出器を用いてもよい。以上の方法で、生体分子間相互作用の結合速度定数,解離速度定数,解離定数などを得ることができる。
【0060】
以上のとおり、前記実施例の生体分子間相互作用解析装置は、励起光3を発生する励起光発生手段たるレーザー11と、最大開口幅たる直径φが前記励起光3の波長λexよりも小さい微小開口5が設けられた光を透過しない薄膜からなる微小開口膜1と、蛍光7(7a,7b)を検出する蛍光検出手段31とを備えたものであり、直径φが励起光3の波長λexよりも小さい微小開口膜1の微小開口5にレーザー11からの励起光3を照射し、この微小開口5に生じるエバネッセント場6を用いることで励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2a,2bに照射することができ、この蛍光性生体分子2a,2bから発せられる蛍光7a,7bを蛍光検出手段31で検出することができる。また、励起光3の波長λexより小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2a,2bに照射することによって、蛍光性生体分子2a,2bの水溶液8中の濃度を高くすることができ、さらに、蛍光性生体分子2a,2bのガラス面たる基板4面への非特異的吸着の影響を抑えることができるので、生体分子間相互作用の検出、定量を確実に行うことができる。
【0061】
また、前記微小開口5は複数設けられ等間隔に配列されているとともに、前記微小開口5の間隔dは前記蛍光検出手段31を構成する対物レンズ13の分解能と同じか又は対物レンズ13の分解能よりも大きいので、複数の微小開口5のうちの任意の微小開口5において蛍光性生体分子2a,2bの蛍光7を観察することができるので、蛍光検出手段31の位置合わせが容易になる。また、微小開口5の間隔は蛍光検出手段31を構成する対物レンズ13の分解能と同じか又は対物レンズ13の分解能よりも大きいので、それぞれの微小開口5によって励起された個々の蛍光性生体分子2a,2bの蛍光7a,7bを分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0062】
さらに、前記実施例の生体分子間相互作用解析方法は、励起光3の波長λexよりも小さい微小開口5から前記励起光3によるエバネッセント場6を発生させ、この微小開口5に付着させた第一の蛍光性生体分子2aと、前記エバネッセント場6の領域にあって前記第一の蛍光性生体分子2aと相互作用する第二の蛍光性生体分子2bとを励起させ、これら第一の蛍光生体分子2aと第二の蛍光性生体分子2bの蛍光7a,7bをそれぞれ検出するので、励起光3の波長より小さい領域で励起光3を蛍光性生体分子2a,2bに照射することができ、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量することができる。
【0063】
以上、上記実施例で詳細に説明したとおり、本発明は、微小開口からのエバネッセント場の生成,1分子蛍光イメージング法,FCS,FCCSなどの既知の方法を巧みに組み合わせることにより、従来の原理的な問題を解決して水溶液中に従来の限界濃度の100〜1000倍もの高濃度の分子を加えることを可能にしたほか、ガラス面などへの非特異的吸着の影響を従来の1/100程度にまで抑えることを可能にしている。
【0064】
そして、本発明は、生体分子間相互作用を1分子レベルで高感度に定量することを可能とするものであって、生物学、医学、薬学などの広範な分野で利用可能である。特に、ポストゲノム研究として、タンパク質間相互作用の研究が重要になっているが、本発明により、生体分子間相互作用、特に、タンパク質間相互作用を1分子レベルで高感度に検出し、機能解析を行ことが可能になる。そして、本発明によれば、従来は不可能であった結合定数が106Mよりも小さい弱い相互作用を検出することができる。本発明は、DNAチップやタンパク質チップに直ちに応用可能であり、タンパク質間相互作用の解析に大きな威力を発揮するであろう。
【0065】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものでなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、微小開口が多数ある微小開口膜を例にとって説明したが、微小開口が1つの微小開口膜であってもよい。
【0066】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載の微小開口膜は、微小開口が設けられた光を透過しない薄膜からなるものであり、微小開口の最大開口幅を励起光の波長よりも小さくし、この微小開口に励起光を照射すれば、この微小開口からエバネッセント場が生じ、このエバネッセント場を用いることで、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することが可能になる。
【0067】
本発明の請求項2記載の微小開口膜は、請求項1において、前記薄膜は透明な基板に結合されているものであり、基板に薄膜を支持することで薄膜の製造性と取り扱い性を向上させることができる。また、基板は透明なので励起光の透過を妨げることがない。
【0068】
本発明の請求項3記載の微小開口膜は、請求項1又は2において、前記微小開口は複数設けられ略等間隔に配列されているものであり、複数の微小開口のうちの任意の微小開口において蛍光性生体分子の蛍光を観察することができるので、蛍光検出手段の位置合わせが容易になる。また、微小開口の間隔を蛍光検出手段の分解能と同じか又は蛍光検出手段の分解能よりも大きくすれば、それぞれの微小開口によって励起された個々の蛍光性生体分子の蛍光を分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0069】
本発明の請求項4記載の微小開口膜は、請求項1〜3のいずれか1項において、前記微小開口の最大開口幅は200nm以下であり、微小開口の最大開口幅を励起光の波長より小さくすることができる。
【0070】
本発明の請求項5記載の生体分子間相互作用解析装置は、励起光を発生する励起光発生手段と、最大開口幅が前記励起光の波長よりも小さい微小開口が設けられた光を透過しない薄膜からなる微小開口膜と、蛍光を検出する蛍光検出手段とを備えたものであり、最大開口幅が励起光の波長よりも小さい微小開口膜の微小開口に励起光発生手段からの励起光を照射し、この微小開口に生じるエバネッセント場を用いることで励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することができ、この蛍光性生体分子から発せられる蛍光を蛍光検出手段で検出することができる。また、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することによって、蛍光性生体分子の水溶液中の濃度を高くすることができ、さらに、蛍光性生体分子のガラス面などへの非特異的吸着の影響を抑えることができるので、生体分子間相互作用の検出、定量を確実に行うことができる。
【0071】
本発明の請求項6記載の生体分子間相互作用解析装置は、請求項5において、前記微小開口は複数設けられ等間隔に配列されているとともに、前記微小開口の間隔は前記蛍光検出手段の分解能と同じか又は前記蛍光検出手段の分解能よりも大きいものであり、複数の微小開口のうちの任意の微小開口において蛍光性生体分子の蛍光を観察することができるので、蛍光検出手段の位置合わせが容易になる。また、微小開口の間隔は蛍光検出手段の分解能と同じか又は蛍光検出手段の分解能よりも大きいので、それぞれの微小開口によって励起された個々の蛍光性生体分子の蛍光を分離して、1分子レベルで生体分子間相互作用を検出することができる。
【0072】
本発明の請求項7記載の生体分子間相互作用解析方法は、励起光の波長よりも小さい微小開口から前記励起光によるエバネッセント場を発生させ、このエバネッセント場の領域をブラウン運動により通過する蛍光性生体分子を励起させ、その蛍光性生体分子の蛍光を検出するものであり、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することができ、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量することができる。
【0073】
本発明の請求項8記載の生体分子間相互作用解析方法は、励起光の波長よりも小さい微小開口から前記励起光によるエバネッセント場を発生させ、この微小開口に付着させた第一の蛍光性生体分子と、前記エバネッセント場の領域にあって前記第一の蛍光性生体分子と相互作用する第二の蛍光性生体分子とを励起させ、これら第一の蛍光生体分子と第二の蛍光性生体分子の蛍光をそれぞれ検出するものであり、励起光の波長より小さい領域で励起光を蛍光性生体分子に照射することができ、生体分子間相互作用を1分子レベルで検出、定量することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の微小開口膜の一実施例を示す正面図である。
【図2】同上微小開口によるエバネッセント場の発生を示す模式図である。
【図3】本発明の生体分子間相互作用解析装置の第一実施例を示す微小開口を用いたFCSの測定原理の模式図である。
【図4】同上微小開口を用いたFCS装置の模式図である。
【図5】本発明の生体分子間相互作用解析装置の第二実施例を示す微小開口を用いたFCCSの測定原理の模式図である。
【図6】同上微小開口を用いたFCCS装置の模式図である。
【図7】本発明の生体分子間相互作用解析装置の第三実施例を示す微小開口を用いた1分子蛍光イメージング法の測定原理の模式図である。
【図8】同上微小開口を用いた1分子蛍光イメージング装置の模式図である。
【図9】従来の全反射によるエバネッセント場を用いた生体分子観察法を示す模式図である。
【図10】従来のFCSの原理を示す模式図である。
【符号の説明】
1 微小開口膜
2,2a,2b 蛍光性生体分子
3 励起光
4 基板
5 微小開口
6 エバネッセント場
7,7a,7b 蛍光
11 レーザー(励起光発生手段)
12,21,31 蛍光検出手段
13 対物レンズ(蛍光検出手段)
d 間隔
φ 直径(最大開口幅)
λex 波長
Claims (8)
- 微小開口が設けられた光を透過しない薄膜からなることを特徴とする微小開口膜。
- 前記薄膜は透明な基板に結合されていることを特徴とする請求項1記載の微小開口膜。
- 前記微小開口は複数設けられ略等間隔に配列されていることを特徴とする請求項1又は2記載の微小開口膜。
- 前記微小開口の最大開口幅は200nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の微小開口膜。
- 励起光を発生する励起光発生手段と、最大開口幅が前記励起光の波長よりも小さい微小開口が設けられた光を透過しない薄膜からなる微小開口膜と、蛍光を検出する蛍光検出手段とを備えたことを特徴とする生体分子間相互作用解析装置。
- 前記微小開口は複数設けられ等間隔に配列されているとともに、前記微小開口の間隔は前記蛍光検出手段の分解能と同じか又は前記蛍光検出手段の分解能よりも大きいことを特徴とする請求項5記載の生体分子間相互作用解析装置。
- 励起光の波長よりも小さい微小開口から前記励起光によるエバネッセント場を発生させ、このエバネッセント場の領域をブラウン運動により通過する蛍光性生体分子を励起させ、その蛍光性生体分子の蛍光を検出することを特徴とする生体分子間相互作用解析方法。
- 励起光の波長よりも小さい微小開口から前記励起光によるエバネッセント場を発生させ、この微小開口に付着させた第一の蛍光性生体分子と、前記エバネッセント場の領域にあって前記第一の蛍光性生体分子と相互作用する第二の蛍光性生体分子とを励起させ、これら第一の蛍光生体分子と第二の蛍光性生体分子の蛍光をそれぞれ検出することを特徴とする生体分子間相互作用解析方法。
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