JP2004161786A - 重質油水素化処理触媒の再生方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】重質油の水素化処理により炭素質および金属分等が付着し失活した使用済み触媒を、再生処理し有効に活用するための水素化処理触媒の再生方法を提供する。
【解決手段】使用済みの重質油水素化処理触媒を焼成した後に、固定床流通方式で、pH7以下の洗浄水で付着金属除去処理を行う重質油水素化処理触媒の再生方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】使用済みの重質油水素化処理触媒を焼成した後に、固定床流通方式で、pH7以下の洗浄水で付着金属除去処理を行う重質油水素化処理触媒の再生方法である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は重質油水素化処理触媒の再生方法に関し、さらに詳しくは、使用済みの重質油水素化処理触媒に付着した非触媒成分である炭素分や金属分等を除去して再使用できる重質油水素化処理触媒の再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油精製においては各種の留分を水素化処理により精製する工程が多数ある。例えば、ナフサ、灯油、軽油等の脱硫、脱窒素や、重質軽油の脱硫、脱窒素、分解、さらには残油、重油の脱硫、脱窒素、脱金属、分解などがある。そのうちでも、比較的沸点が低く、バナジウム等の金属不純物含有量のほとんどないナフサや灯油、軽油を処理する水素化処理工程に用いられる触媒は使用による劣化の度合いが少ない。
【0003】
また、これらの触媒は使用による劣化はほとんどの場合少量の炭素質の蓄積によるものであり、これを燃焼等により除去することで再使用可能であった。さらに炭素質の除去についても、触媒上の炭素質の量が少ないため厳密な燃焼制御は必要としないで再使用可能な触媒が得られる。また、一旦使用した触媒でも劣化の度合いが少ない触媒もあり、このようなものはそのまま再使用できる。これらの触媒は特別の注意を払うことなく再度ナフサ、灯油、軽油等の水素化処理に用いられている。
また、最近は重質軽油や減圧軽油の水素化処理触媒についても、再生等により再使用をしているが、その再生、使用方法についても確立された方法がある。例えば、重質軽油水素化分解プロセスにおいては水素化分解触媒も、その前処理のための水素化脱窒素触媒も水素賦活または酸素賦活により再生使用できることが知られている。
【0004】
これらの留出油の水素化処理に用いられた触媒は、処理原料油中に金属不純物はほとんどないので、触媒上にも原料に起因するバナジウム等の金属の堆積は少ない。また、炭素質の堆積も少ないだけでなく、炭素質の質も燃焼させ易いものであり燃焼による再生時にも触媒表面はそれほど高温にならず、触媒担体の細孔構造や活性金属相の担持状態等の変化も小さく、再度重質軽油や減圧軽油等の留出油の処理に使用することが可能である(非特許文献1参照)。
しかし、残渣油のようなさらに沸点の高い、あるいは蒸留できない留分を含む重質油の水素化処理においては、原料油中に含まれる金属不純物やアスファルテン分等の炭素質化し易い成分が多く、これらが使用済み触媒上に多量の金属分や炭素質を堆積させる。また、質的にも金属分と炭素質が同時に蓄積した使用済み触媒は簡単には炭素質の燃焼除去ができなかった(非特許文献2、非特許文献3参照)。
【0005】
さらに、バナジウム等の金属分が堆積した使用済み触媒はその除去による活性回復は難しかった。これを解決するため、しゅう酸による抽出法(特許文献1)、アルコールによる抽出(特許文献2)や塩素による抽出法(特許文献3)などが報告されている。しかし、これらの方法は特殊な薬品を使用したり、抽出に長時間要したりして作業性に問題があった。さらに、水素化処理触媒に通常使用されているモリブデン等の活性金属成分をも抽出したり、活性金属分を変化させてしまって触媒そのものを変質させてしまうという問題があった。このため、これらの使用済み触媒は再利用されることはなく処分されていた。
また、特許文献4には、使用済み触媒を溶剤洗浄により油分を除去した後、希硫酸で洗浄して、焼成するという再生方法が開示されている。しかし、この方法では、付着したコーク分により希硫酸とバナジウム等の付着金属の接触が十分でなく、かつバナジウムは酸化状態の法が水に溶解し易いこともあり、十分な再生ができない。
【0006】
[非特許文献1]
Studies in Surface and Catalysis,vol.88,p199(1994)
[非特許文献2]
Catal.Today,vol.17,No.4,P539(1993)
[非特許文献3]
Cata1.Rev.Sci.Eng.,33(3&4),p281(1991)
[特許文献1]
米国特許第3020239号明細書
[特許文献2]
特開昭60−190241号公報
[特許文献3]
特開昭54−101794号公報
[特許文献4]
特公平4−43704号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記状況に鑑み、重質油の水素化処理により炭素質および金属分等が付着し失活した使用済み触媒を、再生処理し有効に活用するための水素化処理触媒の再生方法を提供すること、および該再生触媒を用いた重質油の水素化処理方法の提供を目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究の結果、重質油の水素化処理において失活した使用済み触媒を焼成した後、さらにその焼成触媒をpH7以下の水で洗浄することによりその表面に付着している不要金属分等を除去する水素化処理触媒の再生方法を見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
1.使用済みの重質油水素化処理触媒を焼成した後に、固定床流通方式で、pH7以下の洗浄水で付着金属除去処理を行うことを特徴とする重質油水素化処理触媒の再生方法。
2.付着金属が鉄、バナジウム及びニッケルから選ばれる少なくとも一種である前記1記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
3.付着金属除去処理を、洗浄水を循環させて行うものである前記1又は2に記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
4.洗浄水の空塔基準線速度が2〜100cm/sである前記1〜3のいずれかに記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
5.付着金属除去処理後、連続して温風を流通させ触媒を乾燥させるものである前記1〜4のいずれかに記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
【0010】
6.付着金属除去処理後、重質油水素化処理触媒の活性成分を含有した水を流通させることによって賦活操作を行うものである前記1〜4のいずれかに記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
7.活性成分が、ニッケル、コバルト及びモリブデンから選ばれる少なくとも一種である前記6記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
8.賦活操作後、連続して温風を循環させ触媒を乾燥させるものである前記6又は7に記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
9.前記1〜8のいずれかに記載の重質油水素化処理触媒の再生方法により再生した触媒を用いた重質油の水素化処理方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明は、使用済みの重質油の水素化処理触媒を再生して再利用しようとするものである。本発明で用いる重質油水素化処理触媒とは、バナジウム、ニッケル等の金属分を不純物として含む残渣油などの重質油を水素化脱硫、水素化脱金属、水素化脱窒素、水素化分解、水素化脱芳香族などの水素化反応させる触媒の総称である。また、使用済みの水素化処理触媒とは、上記のような水素化反応に使用した後の触媒で、触媒活性が低下しそのままでは目的とする水素化処理に使用できないか、使用しても十分な効果を得られなくなった触媒である。これらの使用済み触媒は硫黄分、炭素質や金属分(主に水素化処理の原料油中に含まれていたバナジウム、ニッケル、鉄など)が触媒上に付着しており、触媒活性低下の主な原因となっている。なお、触媒の活性成分として触媒製造当初から担持されている金属分等は付着金属とは言わないで担持金属あるいは活性金属成分と言う。本発明においては、上記のような使用済み水素化処理触媒を焼成し、その後に付着金属等の除去をすることにより、水素化処理触媒としての活性を回復し再使用できる触媒が得られる。
【0012】
本発明においては、まず使用済み触媒を焼成し、その後にその焼成後の触媒を固定床流通方式で、pH7以下の水で洗浄することにより付着金属を除去するものである。
焼成工程から順次説明する。
使用済み触媒はそのまま焼成工程に持っていってもよいが、通常、取扱いの容易さを考えて使用済み触媒をまず溶剤洗浄することが好ましい。溶剤としてはトルエン、アセトン、アルコールや、ナフサ、灯油、軽油などの石油類が好ましい。その他でも、使用済み触媒上に付着した反応原料に由来する有機物を溶かし易い溶剤であれば良い。具体的には、この洗浄処理は、触媒が水素化処理反応器中にあるうちに軽油を循環させて洗浄し、その後50〜200℃程度の水素ガスや窒素ガス等を流通させて乾燥させることで実際的に達成できる。あるいは、軽油を循環させて洗浄した後そのまま抜き出し、発熱や自然発火を防ぐため軽油で濡れた状態にしておき必要なときに乾燥してもよい。また、反応器から抜き出した使用済み触媒から塊状物を粉砕したり、ふるい分け等により粉化触媒、スケール等を除去し、これを軽油で洗浄し、さらにナフサで洗浄して乾燥しやすくする方法もある。少量の場合は、トルエンで洗浄する方法が油分を完全に除去するのに適している。
【0013】
上記のような溶剤洗浄やふるい分けにより油分および不純物を除去しただけでは炭素質や金属分の大部分は除去できない。そこで、焼成により炭素質等を除去することが必要である。焼成は一般には雰囲気温度および酸素濃度を制御した酸化処理により行う。雰囲気温度が高すぎたり、酸素濃度が高すぎると触媒表面が高温になり、担持金属の結晶形や担持状態が変化したり、触媒の細孔が減少し触媒活性が低下してしまう。また、雰囲気温度が低すぎたり、酸素濃度が低すぎると燃焼による炭素質の除去が不十分となり十分な活性回復が望めない。望ましい雰囲気温度としては350〜700℃、特に望ましくは400〜600℃である。
酸素濃度は1〜21容量%の範囲で制御することが望ましいが、燃焼方法、特に燃焼ガスと触媒との接触状態に対応して制御することが好ましい。焼成装置の特性に応じ、雰囲気温度、酸素濃度、雰囲気ガスの流速などを調整して触媒の表面温度を制御し、再生後の触媒の比表面積や細孔容量の低下を防ぎ、水素化活性金属であるコバルト、ニッケルやモリブデンなどの結晶構造や結晶粒子の担持状態の変化を抑えながら、できるだけ多くの炭素質や硫黄分を除去することが重要である。
【0014】
焼成後の触媒の炭素含有量は15%(触媒中の炭素分含有量は対象触媒を測定前に400℃以上で窒素雰囲気で焼成して減量しなくなったものを基準として、炭素を酸化雰囲気で焼成して対象触媒中に含まれている炭素の質量%で表すものとする、以下同じ)以下好ましくは10%以下とすることが望ましい。炭素含有量は使用済み段階では10〜70%程度であることが多いが、再生処理により炭素分を触媒上から除去しその含有量を調整する。その際、硫黄分等の燃焼により除去できる不純物も同時に除去する。炭素分が多すぎるとこれが触媒表面を覆い触媒活性を低下させるが、焼成により炭素含有量を減少させれば活性を回復させることができる。なお、炭素および硫黄はC,S同時分析計で分析した値を用いればよい。
焼成処理では酸化処理、特に一般的な方法としては燃焼処理を伴うので、そのときに触媒表面が過熱して触媒の細孔構造や担持金属の担持状態が変化し、触媒活性が低下してしまうことがある。これらを評価する指標としては触媒の比表面積と細孔容量がある。触媒の比表面積や細孔容量は水素化処理反応での使用中にも不純物の付着や反応中の熱による劣化等により徐々に減少するが、再生触媒として使用可能であるためには、再生後の触媒に使用前の新触媒であった時のおよそ70%の比表面積および細孔容量が残っていることが好ましい。これを、再生触媒の物性としてみればそれぞれ比表面積60〜200m2/g、好ましくは100〜200m2/g、細孔容積0.3〜1.0cc/gであることが望ましい。なお、これらの測定は窒素吸着法で行った値である。
【0015】
次いで、バナジウム等の付着物の水洗による除去について説明する。
バナジウムは触媒成分としては含まれていないが、水素化処理される原料油中に含まれる微量不純物に起因するものであり、触媒の活性低下の指標とすることができる。バナジウム含有量は再生触媒基準で好ましくは35%(触媒中の金属分含有量は対象触媒を測定前に400℃以上で窒素雰囲気で焼成して減量しなくなったものを基準として、その金属の酸化物としての質量%で表すものとする、以下金属含有量については同じ)以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。バナジウム含有量が35%を超えると再生触媒の活性が低すぎて水素化処理反応が十分進まない場合がある。なお、バナジウム等の元素分析は、試料を650℃、1時間焼成後、Mo,P,Vは灰分を酸で溶解し誘導結合プラズマ発光吸光分析により、Co,Ni,Alは灰分と四ほう酸リチウムの混合物を高周波加熱でガラスビードとし、蛍光X線分析法で測定する。
このバナジウム等の付着金属分を除去するために、前記の焼成した触媒を、固定床流通方式でpH7以下の水で洗浄する。
【0016】
洗浄水のpHが7を超えると、活性金属成分のモリブデンの溶出が多くなり好ましくない。好ましくは、pH2〜5の範囲である。一般に、洗浄水は焼成時に生成し、触媒上に残存する硫酸根により、自然にpHは7以下になるが、さらに必要に応じて、酢酸、硝酸、硫酸、リンゴ酸、アンモニア等で調整できる。
固定床の容器の材質としては、洗浄水がpH7以下のため耐酸性のものが好ましく、例えば、ガラス、ステンレス、ポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。
固定床の容器の形状については、洗浄水の偏流を最小限に抑えるため円筒形が望ましい。
洗浄水の温度は、10〜95℃の範囲が好ましい。10℃未満であると、付着金属の溶出速度が低下する場合があり、95℃を超えると、担体成分が変質する場合があり好ましくない。より好ましくは20〜50℃の範囲である。
洗浄水のフローは、ダウンフローでもよいが、洗浄水と触媒の接触をよくする点からアップフローが好ましい。また、そのフローについては、ワンスルーでもよいが、洗浄水量低減の点から、洗浄水を循環させて使用するのが好ましい。なお、その場合、汚染された水が触媒に付着している状態になるため、最後に再度清浄な水で洗浄した方がよい。
【0017】
洗浄の時間については、特に限定されないが、表面のバナジウムが十分に洗浄できる時間であればよく、通常30〜300分である。また、洗浄水の空塔基準の線速度が2〜100cm/sの範囲が好ましい。2cm/s未満であると、洗浄効率が低下する場合があり、100cm/sを超えると触媒の摩耗が起こり触媒強度が低下する場合があり好ましくない。
洗浄によって付着金属を除去した後、触媒を10〜120℃で乾燥させることが好ましい。乾燥は容器から抜き出して、風乾あるいは乾燥機で乾燥させてもよいが、固定床の容器に触媒を充填した状態で、連続して温風を流通させ乾燥させるのが好ましい。なお、下記の賦活操作を行う場合には、賦活操作後、上記の方法で乾燥させればよい。
本発明のおいては、洗浄操作だけでも目的は達成されるが、洗浄条件によっては、本来触媒に担持されているニッケル、コバルト、モリブデン等の活性成分も若干流出してしまう場合がある。また、物性の変化による活性の低下を最小限に抑えるために、活性金属塩を洗浄水に溶解させ、上記の洗浄と同じ条件で、該洗浄水を循環させる方が好ましい。この操作を賦活操作と称する。この賦活操作により、触媒活性をより元の状態に再生することができる。なお、その場合、活性金属塩の濃度は、活性金属塩の担持量によって適宜選択することができる。
【0018】
本発明の再生方法により得られた触媒による重質油の水素化処理方法に使用される重質油については、重質油中には通常、硫黄分1質量%以上、窒素分200ppm以上、残炭分5質量%以上、バナジウム5ppm以上、アスファルテン分0.5質量%以上が含まれている。具体的には、各種原油から得られた常圧残油、減圧残油等の他原油、アスファルト油、熱分解油、タールサンド油あるいはこれらを含む混合油などが好適な原料油として挙げられる。
また、前提となる使用前の重質油の水素化処理触媒とは、重質油の水素化処理触媒として製造されたものや、重質油の水素化処理触媒として製造され、脱硫、脱メタル、分解などと同時に脱窒素活性を持つものをも言い、一般に市販されている水素化脱硫触媒、水素化脱メタル触媒などでもよいし、水素化処理機能を持った触媒を特別に製造したものでもよい。
使用前の触媒としては、一度も水素化処理に使用されていないものはもちろん、一旦水素化処理に使用されたが装置上のトラブル等のため短期間で使用を中断し、再度そのまま使用するものも含む。すなわち、一時的に使用されても特別の賦活処理をしなくとも、当初から想定されている水素化活性がまだ十分にある触媒も含まれる。あるいは、一度使用された使用済み触媒を本発明をはじめ何らかの方法により再生した再生触媒も含まれる。
【0019】
そのための基本的な触媒構成として酸化物担体、たとえばアルミナ担体やアルミナ・りん担体、アルミナ・硼素担体、アルミナ・珪素担体などに、モリブデン、タングステン、コバルトまたはニッケルの酸化物を担持したものが好適に使用される。この中でも、ニッケル・モリブデン担持/アルミナ担体触媒、ニッケル・モリブデン・りん担持/アルミナ担体触媒、コバルト・モリブデン担持/アルミナ・硼素担体触媒やニッケル・モリブデン・りん担持/アルミナ・珪素担体触媒が特に好ましい。さらに、重質油処理であるので担持金属であるコバルトまたはニッケルを0.1〜10%(再生触媒に対する酸化物としての質量%、以下同じ)、モリブデンを0.2〜25%含有することが好ましい。りんの含有量については0.1〜15%(金属含有量と同じ基準)が好ましい。
次に、本発明の一つの態様である再生した触媒を用いた重質油の水素化処理方法を具体的に説明する。上記の再生触媒を用いれば、反応条件は特に制限されるものではないが一般的な条件で説明する。触媒の配置としては、反応系のすべてを再生触媒とすることもできるが、一部を再生触媒とし残りを新触媒とすることもできる。例えば、脱金属ゾーンには脱金属用の新触媒を、脱硫脱窒素反応ゾーンの前段50容量%には脱硫脱窒素用の新触媒を後段50容量%には脱硫脱窒素用の再生触媒を充填する方法などが例示できる。重質油としては前記で説明したようなものでよいが、常圧残油が好適に使用される。この場合の反応温度は300〜450℃、好ましくは350〜420℃、水素分圧7.0〜25.0MPa、好ましくは10.0〜20.0MPa、液空間速度0.01〜10h−1、好ましくは0.1〜5h−1、水素/原料油比300〜2,500Nm3/キロリットル、好ましくは500〜2,000Nm3/キロリットルの範囲の条件が好適である。
【0020】
生成油の硫黄含有量、窒素含有量、金属分含有量(ニッケル、バナジウム)の調整は上記の反応条件のうちから適当な条件、例えば反応温度を適宜選択して調整すればよい。以上のようにして本発明の重質油の処理方法を用いれば、従来使用できないと考えられていた使用済み触媒を有効に活用し、残油等の水素化処理が可能となる。
【0021】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
[実施例1]
(1)使用済み触媒の調製
長さ3mm、直径1.5mmの円柱形をした市販のニッケル・モリブデンを担持したアルミナ担体触媒(新触媒と言う)を用いた残油水素化脱硫装置に8,000時間中東系の常圧残油を通油し水素化処理を行った。生成油中の主成分(343℃以上の沸点留分)の硫黄分を一定になるよう反応温度を調整しながら水素化脱硫処理を続け、使用済み触媒を得た。通油した代表的な常圧残油の性状を第1表に、脱硫装置での反応条件を第2表に示す。
(2)焼成触媒の調製
この使用済み触媒を反応器から取り出し、トルエンで十分洗浄し、乾燥させた(トルエン洗浄触媒という)。次いで、そのトルエン洗浄触媒を500℃で3時間空気気流中で焼成し炭素質等を除去した触媒を得た(焼成触媒と言う)。新触媒、トルエン洗浄触媒、焼成触媒の組成、物性を第3表に示す。
【0022】
(3)再生触媒の調製
固定床流通式の反応器(管径:2cm)に焼成触媒を100g充填し(触媒層の長さ:約40cm)、循環ポンプを用いて17.5質量%の硫酸溶液250ccを流量9リットル/分(空塔基準線速度=45cm/s)で1時間循環して触媒を洗浄した。この洗浄水を抜き出した後、純水でさらに同じ条件で1時間循環させて洗浄した。このとき、洗浄水のpHは1.5であった。この後、装置内に温風を通して触媒を120℃で3時間乾燥させて再生触媒1を得た。得られた再生触媒1の組成、物性を第3表に示す。
(4)再生触媒の水素化処理反応活性性評価
小型高圧固定床反応器(容量200cc)に再生触媒1を100cc充填した。これを、硫化剤であるジメチルジスルフィド(DMDS)を添加し硫黄濃度を2.5質量%に調整した軽質軽油を、13.5MPa水素気硫中、250℃で、24時間通油し予備硫化処理をした。その後、前記常圧残油を用いて水素化処理反応を行った。反応条件を第4表、水素化処理後の生成油の性状を第5表に示す。
[実施例2]
実施例1の(3)において、2回目の洗浄をニッケル3質量%、モリブデン13質量%溶液を用いて行った他は同様にして再生触媒2を得、実施例1と同様に水素化処理反応を行った。再生触媒2の組成、物性を第3表に、水素化処理後の生成油の性状を第5表に示す。
【0023】
[比較例1]
実施例1の(2)で得られた焼成触媒について、実施例1の(3)の洗浄を行わずに実施例1の(4)と同様にして水素化処理反応を行った。水素化処理後の生成油の性状を第5表に示す。
[比較例2]
実施例1の(2)で得られた焼成触媒について、500ccビーカー内で17.5質量%の硫酸溶液250ccを入れ攪拌機を使用し30rpmで攪拌しながら2時間洗浄し、触媒をろ別して、120℃で3時間乾燥して再生触媒3を得た。得られた再生触媒3の組成、物性を第3表に、水素化処理後の生成油の性状を第5表に示す。
[比較例3]
実施例1の(3)の洗浄で17.5質量%の硫酸溶液を用いるかわりに、17.5質量%の水酸化ナトリウム溶液を用いたほかは、同様にして再生触媒4を得た。このときの洗浄水のpHは8.4であった。得られた再生触媒4の組成、物性を第3表に、水素化処理後の生成油の性状を第5表に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
【発明の効果】
本発明の使用済み触媒の再生方法によれば、触媒に付着した炭素質およびバナジウム等の不要金属分を選択的に除去し、水素化触媒としての活性を回復することができ、使用済み触媒の有効活用方法として優れた方法であることがわかる。
【発明の属する技術分野】
本発明は重質油水素化処理触媒の再生方法に関し、さらに詳しくは、使用済みの重質油水素化処理触媒に付着した非触媒成分である炭素分や金属分等を除去して再使用できる重質油水素化処理触媒の再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油精製においては各種の留分を水素化処理により精製する工程が多数ある。例えば、ナフサ、灯油、軽油等の脱硫、脱窒素や、重質軽油の脱硫、脱窒素、分解、さらには残油、重油の脱硫、脱窒素、脱金属、分解などがある。そのうちでも、比較的沸点が低く、バナジウム等の金属不純物含有量のほとんどないナフサや灯油、軽油を処理する水素化処理工程に用いられる触媒は使用による劣化の度合いが少ない。
【0003】
また、これらの触媒は使用による劣化はほとんどの場合少量の炭素質の蓄積によるものであり、これを燃焼等により除去することで再使用可能であった。さらに炭素質の除去についても、触媒上の炭素質の量が少ないため厳密な燃焼制御は必要としないで再使用可能な触媒が得られる。また、一旦使用した触媒でも劣化の度合いが少ない触媒もあり、このようなものはそのまま再使用できる。これらの触媒は特別の注意を払うことなく再度ナフサ、灯油、軽油等の水素化処理に用いられている。
また、最近は重質軽油や減圧軽油の水素化処理触媒についても、再生等により再使用をしているが、その再生、使用方法についても確立された方法がある。例えば、重質軽油水素化分解プロセスにおいては水素化分解触媒も、その前処理のための水素化脱窒素触媒も水素賦活または酸素賦活により再生使用できることが知られている。
【0004】
これらの留出油の水素化処理に用いられた触媒は、処理原料油中に金属不純物はほとんどないので、触媒上にも原料に起因するバナジウム等の金属の堆積は少ない。また、炭素質の堆積も少ないだけでなく、炭素質の質も燃焼させ易いものであり燃焼による再生時にも触媒表面はそれほど高温にならず、触媒担体の細孔構造や活性金属相の担持状態等の変化も小さく、再度重質軽油や減圧軽油等の留出油の処理に使用することが可能である(非特許文献1参照)。
しかし、残渣油のようなさらに沸点の高い、あるいは蒸留できない留分を含む重質油の水素化処理においては、原料油中に含まれる金属不純物やアスファルテン分等の炭素質化し易い成分が多く、これらが使用済み触媒上に多量の金属分や炭素質を堆積させる。また、質的にも金属分と炭素質が同時に蓄積した使用済み触媒は簡単には炭素質の燃焼除去ができなかった(非特許文献2、非特許文献3参照)。
【0005】
さらに、バナジウム等の金属分が堆積した使用済み触媒はその除去による活性回復は難しかった。これを解決するため、しゅう酸による抽出法(特許文献1)、アルコールによる抽出(特許文献2)や塩素による抽出法(特許文献3)などが報告されている。しかし、これらの方法は特殊な薬品を使用したり、抽出に長時間要したりして作業性に問題があった。さらに、水素化処理触媒に通常使用されているモリブデン等の活性金属成分をも抽出したり、活性金属分を変化させてしまって触媒そのものを変質させてしまうという問題があった。このため、これらの使用済み触媒は再利用されることはなく処分されていた。
また、特許文献4には、使用済み触媒を溶剤洗浄により油分を除去した後、希硫酸で洗浄して、焼成するという再生方法が開示されている。しかし、この方法では、付着したコーク分により希硫酸とバナジウム等の付着金属の接触が十分でなく、かつバナジウムは酸化状態の法が水に溶解し易いこともあり、十分な再生ができない。
【0006】
[非特許文献1]
Studies in Surface and Catalysis,vol.88,p199(1994)
[非特許文献2]
Catal.Today,vol.17,No.4,P539(1993)
[非特許文献3]
Cata1.Rev.Sci.Eng.,33(3&4),p281(1991)
[特許文献1]
米国特許第3020239号明細書
[特許文献2]
特開昭60−190241号公報
[特許文献3]
特開昭54−101794号公報
[特許文献4]
特公平4−43704号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記状況に鑑み、重質油の水素化処理により炭素質および金属分等が付着し失活した使用済み触媒を、再生処理し有効に活用するための水素化処理触媒の再生方法を提供すること、および該再生触媒を用いた重質油の水素化処理方法の提供を目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究の結果、重質油の水素化処理において失活した使用済み触媒を焼成した後、さらにその焼成触媒をpH7以下の水で洗浄することによりその表面に付着している不要金属分等を除去する水素化処理触媒の再生方法を見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
1.使用済みの重質油水素化処理触媒を焼成した後に、固定床流通方式で、pH7以下の洗浄水で付着金属除去処理を行うことを特徴とする重質油水素化処理触媒の再生方法。
2.付着金属が鉄、バナジウム及びニッケルから選ばれる少なくとも一種である前記1記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
3.付着金属除去処理を、洗浄水を循環させて行うものである前記1又は2に記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
4.洗浄水の空塔基準線速度が2〜100cm/sである前記1〜3のいずれかに記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
5.付着金属除去処理後、連続して温風を流通させ触媒を乾燥させるものである前記1〜4のいずれかに記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
【0010】
6.付着金属除去処理後、重質油水素化処理触媒の活性成分を含有した水を流通させることによって賦活操作を行うものである前記1〜4のいずれかに記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
7.活性成分が、ニッケル、コバルト及びモリブデンから選ばれる少なくとも一種である前記6記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
8.賦活操作後、連続して温風を循環させ触媒を乾燥させるものである前記6又は7に記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
9.前記1〜8のいずれかに記載の重質油水素化処理触媒の再生方法により再生した触媒を用いた重質油の水素化処理方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明は、使用済みの重質油の水素化処理触媒を再生して再利用しようとするものである。本発明で用いる重質油水素化処理触媒とは、バナジウム、ニッケル等の金属分を不純物として含む残渣油などの重質油を水素化脱硫、水素化脱金属、水素化脱窒素、水素化分解、水素化脱芳香族などの水素化反応させる触媒の総称である。また、使用済みの水素化処理触媒とは、上記のような水素化反応に使用した後の触媒で、触媒活性が低下しそのままでは目的とする水素化処理に使用できないか、使用しても十分な効果を得られなくなった触媒である。これらの使用済み触媒は硫黄分、炭素質や金属分(主に水素化処理の原料油中に含まれていたバナジウム、ニッケル、鉄など)が触媒上に付着しており、触媒活性低下の主な原因となっている。なお、触媒の活性成分として触媒製造当初から担持されている金属分等は付着金属とは言わないで担持金属あるいは活性金属成分と言う。本発明においては、上記のような使用済み水素化処理触媒を焼成し、その後に付着金属等の除去をすることにより、水素化処理触媒としての活性を回復し再使用できる触媒が得られる。
【0012】
本発明においては、まず使用済み触媒を焼成し、その後にその焼成後の触媒を固定床流通方式で、pH7以下の水で洗浄することにより付着金属を除去するものである。
焼成工程から順次説明する。
使用済み触媒はそのまま焼成工程に持っていってもよいが、通常、取扱いの容易さを考えて使用済み触媒をまず溶剤洗浄することが好ましい。溶剤としてはトルエン、アセトン、アルコールや、ナフサ、灯油、軽油などの石油類が好ましい。その他でも、使用済み触媒上に付着した反応原料に由来する有機物を溶かし易い溶剤であれば良い。具体的には、この洗浄処理は、触媒が水素化処理反応器中にあるうちに軽油を循環させて洗浄し、その後50〜200℃程度の水素ガスや窒素ガス等を流通させて乾燥させることで実際的に達成できる。あるいは、軽油を循環させて洗浄した後そのまま抜き出し、発熱や自然発火を防ぐため軽油で濡れた状態にしておき必要なときに乾燥してもよい。また、反応器から抜き出した使用済み触媒から塊状物を粉砕したり、ふるい分け等により粉化触媒、スケール等を除去し、これを軽油で洗浄し、さらにナフサで洗浄して乾燥しやすくする方法もある。少量の場合は、トルエンで洗浄する方法が油分を完全に除去するのに適している。
【0013】
上記のような溶剤洗浄やふるい分けにより油分および不純物を除去しただけでは炭素質や金属分の大部分は除去できない。そこで、焼成により炭素質等を除去することが必要である。焼成は一般には雰囲気温度および酸素濃度を制御した酸化処理により行う。雰囲気温度が高すぎたり、酸素濃度が高すぎると触媒表面が高温になり、担持金属の結晶形や担持状態が変化したり、触媒の細孔が減少し触媒活性が低下してしまう。また、雰囲気温度が低すぎたり、酸素濃度が低すぎると燃焼による炭素質の除去が不十分となり十分な活性回復が望めない。望ましい雰囲気温度としては350〜700℃、特に望ましくは400〜600℃である。
酸素濃度は1〜21容量%の範囲で制御することが望ましいが、燃焼方法、特に燃焼ガスと触媒との接触状態に対応して制御することが好ましい。焼成装置の特性に応じ、雰囲気温度、酸素濃度、雰囲気ガスの流速などを調整して触媒の表面温度を制御し、再生後の触媒の比表面積や細孔容量の低下を防ぎ、水素化活性金属であるコバルト、ニッケルやモリブデンなどの結晶構造や結晶粒子の担持状態の変化を抑えながら、できるだけ多くの炭素質や硫黄分を除去することが重要である。
【0014】
焼成後の触媒の炭素含有量は15%(触媒中の炭素分含有量は対象触媒を測定前に400℃以上で窒素雰囲気で焼成して減量しなくなったものを基準として、炭素を酸化雰囲気で焼成して対象触媒中に含まれている炭素の質量%で表すものとする、以下同じ)以下好ましくは10%以下とすることが望ましい。炭素含有量は使用済み段階では10〜70%程度であることが多いが、再生処理により炭素分を触媒上から除去しその含有量を調整する。その際、硫黄分等の燃焼により除去できる不純物も同時に除去する。炭素分が多すぎるとこれが触媒表面を覆い触媒活性を低下させるが、焼成により炭素含有量を減少させれば活性を回復させることができる。なお、炭素および硫黄はC,S同時分析計で分析した値を用いればよい。
焼成処理では酸化処理、特に一般的な方法としては燃焼処理を伴うので、そのときに触媒表面が過熱して触媒の細孔構造や担持金属の担持状態が変化し、触媒活性が低下してしまうことがある。これらを評価する指標としては触媒の比表面積と細孔容量がある。触媒の比表面積や細孔容量は水素化処理反応での使用中にも不純物の付着や反応中の熱による劣化等により徐々に減少するが、再生触媒として使用可能であるためには、再生後の触媒に使用前の新触媒であった時のおよそ70%の比表面積および細孔容量が残っていることが好ましい。これを、再生触媒の物性としてみればそれぞれ比表面積60〜200m2/g、好ましくは100〜200m2/g、細孔容積0.3〜1.0cc/gであることが望ましい。なお、これらの測定は窒素吸着法で行った値である。
【0015】
次いで、バナジウム等の付着物の水洗による除去について説明する。
バナジウムは触媒成分としては含まれていないが、水素化処理される原料油中に含まれる微量不純物に起因するものであり、触媒の活性低下の指標とすることができる。バナジウム含有量は再生触媒基準で好ましくは35%(触媒中の金属分含有量は対象触媒を測定前に400℃以上で窒素雰囲気で焼成して減量しなくなったものを基準として、その金属の酸化物としての質量%で表すものとする、以下金属含有量については同じ)以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。バナジウム含有量が35%を超えると再生触媒の活性が低すぎて水素化処理反応が十分進まない場合がある。なお、バナジウム等の元素分析は、試料を650℃、1時間焼成後、Mo,P,Vは灰分を酸で溶解し誘導結合プラズマ発光吸光分析により、Co,Ni,Alは灰分と四ほう酸リチウムの混合物を高周波加熱でガラスビードとし、蛍光X線分析法で測定する。
このバナジウム等の付着金属分を除去するために、前記の焼成した触媒を、固定床流通方式でpH7以下の水で洗浄する。
【0016】
洗浄水のpHが7を超えると、活性金属成分のモリブデンの溶出が多くなり好ましくない。好ましくは、pH2〜5の範囲である。一般に、洗浄水は焼成時に生成し、触媒上に残存する硫酸根により、自然にpHは7以下になるが、さらに必要に応じて、酢酸、硝酸、硫酸、リンゴ酸、アンモニア等で調整できる。
固定床の容器の材質としては、洗浄水がpH7以下のため耐酸性のものが好ましく、例えば、ガラス、ステンレス、ポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。
固定床の容器の形状については、洗浄水の偏流を最小限に抑えるため円筒形が望ましい。
洗浄水の温度は、10〜95℃の範囲が好ましい。10℃未満であると、付着金属の溶出速度が低下する場合があり、95℃を超えると、担体成分が変質する場合があり好ましくない。より好ましくは20〜50℃の範囲である。
洗浄水のフローは、ダウンフローでもよいが、洗浄水と触媒の接触をよくする点からアップフローが好ましい。また、そのフローについては、ワンスルーでもよいが、洗浄水量低減の点から、洗浄水を循環させて使用するのが好ましい。なお、その場合、汚染された水が触媒に付着している状態になるため、最後に再度清浄な水で洗浄した方がよい。
【0017】
洗浄の時間については、特に限定されないが、表面のバナジウムが十分に洗浄できる時間であればよく、通常30〜300分である。また、洗浄水の空塔基準の線速度が2〜100cm/sの範囲が好ましい。2cm/s未満であると、洗浄効率が低下する場合があり、100cm/sを超えると触媒の摩耗が起こり触媒強度が低下する場合があり好ましくない。
洗浄によって付着金属を除去した後、触媒を10〜120℃で乾燥させることが好ましい。乾燥は容器から抜き出して、風乾あるいは乾燥機で乾燥させてもよいが、固定床の容器に触媒を充填した状態で、連続して温風を流通させ乾燥させるのが好ましい。なお、下記の賦活操作を行う場合には、賦活操作後、上記の方法で乾燥させればよい。
本発明のおいては、洗浄操作だけでも目的は達成されるが、洗浄条件によっては、本来触媒に担持されているニッケル、コバルト、モリブデン等の活性成分も若干流出してしまう場合がある。また、物性の変化による活性の低下を最小限に抑えるために、活性金属塩を洗浄水に溶解させ、上記の洗浄と同じ条件で、該洗浄水を循環させる方が好ましい。この操作を賦活操作と称する。この賦活操作により、触媒活性をより元の状態に再生することができる。なお、その場合、活性金属塩の濃度は、活性金属塩の担持量によって適宜選択することができる。
【0018】
本発明の再生方法により得られた触媒による重質油の水素化処理方法に使用される重質油については、重質油中には通常、硫黄分1質量%以上、窒素分200ppm以上、残炭分5質量%以上、バナジウム5ppm以上、アスファルテン分0.5質量%以上が含まれている。具体的には、各種原油から得られた常圧残油、減圧残油等の他原油、アスファルト油、熱分解油、タールサンド油あるいはこれらを含む混合油などが好適な原料油として挙げられる。
また、前提となる使用前の重質油の水素化処理触媒とは、重質油の水素化処理触媒として製造されたものや、重質油の水素化処理触媒として製造され、脱硫、脱メタル、分解などと同時に脱窒素活性を持つものをも言い、一般に市販されている水素化脱硫触媒、水素化脱メタル触媒などでもよいし、水素化処理機能を持った触媒を特別に製造したものでもよい。
使用前の触媒としては、一度も水素化処理に使用されていないものはもちろん、一旦水素化処理に使用されたが装置上のトラブル等のため短期間で使用を中断し、再度そのまま使用するものも含む。すなわち、一時的に使用されても特別の賦活処理をしなくとも、当初から想定されている水素化活性がまだ十分にある触媒も含まれる。あるいは、一度使用された使用済み触媒を本発明をはじめ何らかの方法により再生した再生触媒も含まれる。
【0019】
そのための基本的な触媒構成として酸化物担体、たとえばアルミナ担体やアルミナ・りん担体、アルミナ・硼素担体、アルミナ・珪素担体などに、モリブデン、タングステン、コバルトまたはニッケルの酸化物を担持したものが好適に使用される。この中でも、ニッケル・モリブデン担持/アルミナ担体触媒、ニッケル・モリブデン・りん担持/アルミナ担体触媒、コバルト・モリブデン担持/アルミナ・硼素担体触媒やニッケル・モリブデン・りん担持/アルミナ・珪素担体触媒が特に好ましい。さらに、重質油処理であるので担持金属であるコバルトまたはニッケルを0.1〜10%(再生触媒に対する酸化物としての質量%、以下同じ)、モリブデンを0.2〜25%含有することが好ましい。りんの含有量については0.1〜15%(金属含有量と同じ基準)が好ましい。
次に、本発明の一つの態様である再生した触媒を用いた重質油の水素化処理方法を具体的に説明する。上記の再生触媒を用いれば、反応条件は特に制限されるものではないが一般的な条件で説明する。触媒の配置としては、反応系のすべてを再生触媒とすることもできるが、一部を再生触媒とし残りを新触媒とすることもできる。例えば、脱金属ゾーンには脱金属用の新触媒を、脱硫脱窒素反応ゾーンの前段50容量%には脱硫脱窒素用の新触媒を後段50容量%には脱硫脱窒素用の再生触媒を充填する方法などが例示できる。重質油としては前記で説明したようなものでよいが、常圧残油が好適に使用される。この場合の反応温度は300〜450℃、好ましくは350〜420℃、水素分圧7.0〜25.0MPa、好ましくは10.0〜20.0MPa、液空間速度0.01〜10h−1、好ましくは0.1〜5h−1、水素/原料油比300〜2,500Nm3/キロリットル、好ましくは500〜2,000Nm3/キロリットルの範囲の条件が好適である。
【0020】
生成油の硫黄含有量、窒素含有量、金属分含有量(ニッケル、バナジウム)の調整は上記の反応条件のうちから適当な条件、例えば反応温度を適宜選択して調整すればよい。以上のようにして本発明の重質油の処理方法を用いれば、従来使用できないと考えられていた使用済み触媒を有効に活用し、残油等の水素化処理が可能となる。
【0021】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
[実施例1]
(1)使用済み触媒の調製
長さ3mm、直径1.5mmの円柱形をした市販のニッケル・モリブデンを担持したアルミナ担体触媒(新触媒と言う)を用いた残油水素化脱硫装置に8,000時間中東系の常圧残油を通油し水素化処理を行った。生成油中の主成分(343℃以上の沸点留分)の硫黄分を一定になるよう反応温度を調整しながら水素化脱硫処理を続け、使用済み触媒を得た。通油した代表的な常圧残油の性状を第1表に、脱硫装置での反応条件を第2表に示す。
(2)焼成触媒の調製
この使用済み触媒を反応器から取り出し、トルエンで十分洗浄し、乾燥させた(トルエン洗浄触媒という)。次いで、そのトルエン洗浄触媒を500℃で3時間空気気流中で焼成し炭素質等を除去した触媒を得た(焼成触媒と言う)。新触媒、トルエン洗浄触媒、焼成触媒の組成、物性を第3表に示す。
【0022】
(3)再生触媒の調製
固定床流通式の反応器(管径:2cm)に焼成触媒を100g充填し(触媒層の長さ:約40cm)、循環ポンプを用いて17.5質量%の硫酸溶液250ccを流量9リットル/分(空塔基準線速度=45cm/s)で1時間循環して触媒を洗浄した。この洗浄水を抜き出した後、純水でさらに同じ条件で1時間循環させて洗浄した。このとき、洗浄水のpHは1.5であった。この後、装置内に温風を通して触媒を120℃で3時間乾燥させて再生触媒1を得た。得られた再生触媒1の組成、物性を第3表に示す。
(4)再生触媒の水素化処理反応活性性評価
小型高圧固定床反応器(容量200cc)に再生触媒1を100cc充填した。これを、硫化剤であるジメチルジスルフィド(DMDS)を添加し硫黄濃度を2.5質量%に調整した軽質軽油を、13.5MPa水素気硫中、250℃で、24時間通油し予備硫化処理をした。その後、前記常圧残油を用いて水素化処理反応を行った。反応条件を第4表、水素化処理後の生成油の性状を第5表に示す。
[実施例2]
実施例1の(3)において、2回目の洗浄をニッケル3質量%、モリブデン13質量%溶液を用いて行った他は同様にして再生触媒2を得、実施例1と同様に水素化処理反応を行った。再生触媒2の組成、物性を第3表に、水素化処理後の生成油の性状を第5表に示す。
【0023】
[比較例1]
実施例1の(2)で得られた焼成触媒について、実施例1の(3)の洗浄を行わずに実施例1の(4)と同様にして水素化処理反応を行った。水素化処理後の生成油の性状を第5表に示す。
[比較例2]
実施例1の(2)で得られた焼成触媒について、500ccビーカー内で17.5質量%の硫酸溶液250ccを入れ攪拌機を使用し30rpmで攪拌しながら2時間洗浄し、触媒をろ別して、120℃で3時間乾燥して再生触媒3を得た。得られた再生触媒3の組成、物性を第3表に、水素化処理後の生成油の性状を第5表に示す。
[比較例3]
実施例1の(3)の洗浄で17.5質量%の硫酸溶液を用いるかわりに、17.5質量%の水酸化ナトリウム溶液を用いたほかは、同様にして再生触媒4を得た。このときの洗浄水のpHは8.4であった。得られた再生触媒4の組成、物性を第3表に、水素化処理後の生成油の性状を第5表に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
【発明の効果】
本発明の使用済み触媒の再生方法によれば、触媒に付着した炭素質およびバナジウム等の不要金属分を選択的に除去し、水素化触媒としての活性を回復することができ、使用済み触媒の有効活用方法として優れた方法であることがわかる。
Claims (9)
- 使用済みの重質油水素化処理触媒を焼成した後に、固定床流通方式で、pH7以下の洗浄水で付着金属除去処理を行うことを特徴とする重質油水素化処理触媒の再生方法。
- 付着金属が鉄、バナジウム及びニッケルから選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
- 付着金属除去処理を、洗浄水を循環させて行うものである請求項1又は2に記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
- 洗浄水の空塔基準線速度が2〜100cm/sである請求項1〜3のいずれかに記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
- 付着金属除去処理後、連続して温風を流通させ触媒を乾燥させるものである請求項1〜4のいずれかに記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
- 付着金属除去処理後、重質油水素化処理触媒の活性成分を含有した水を流通させることによって賦活操作を行うものである請求項1〜4のいずれかに記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
- 活性成分が、ニッケル、コバルト及びモリブデンから選ばれる少なくとも一種である請求項6記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
- 賦活操作後、連続して温風を循環させ触媒を乾燥させるものである請求項6又は7に記載の重質油水素化処理触媒の再生方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の重質油水素化処理触媒の再生方法により再生した触媒を用いた重質油の水素化処理方法。
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