JP2004161560A - 炭化ホウ素ナノワイヤーの製造方法 - Google Patents

炭化ホウ素ナノワイヤーの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】炭化ホウ素ナノワイヤーを多量に製造し、製造コストを安価に抑える。
【解決手段】ホウ素、酸化ホウ素及び炭素をアルゴン雰囲気中で1000℃〜2100℃の高温下に反応させる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、炭化ホウ素ナノワイヤーの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、耐熱耐火性衣服をはじめとし、原子力産業用の中性子吸収剤、熱・電気エネルギー変換等の分野で軽量高耐熱高強度材料として有用な炭化ホウ素ナノワイヤーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
炭化ホウ素ナノ材料を合成する方法としてプラズマCVD法が知られている(たとえば、非特許文献1参照)。また、多孔性のアルミナを鋳型として用い、配向性を有する炭化ホウ素ナノワイヤーを製造する方法が提案されている(たとえば、非特許文献2参照)。
【0003】
さらに、カーボンナノチューブを鋳型として用い、炭化ホウ素ナノワイヤーを合成する方法が提案されてもいる(たとえば、非特許文献3参照)。
【0004】
【非特許文献1】
Zhang, D.外4名,ジャーナル・オブ・マテリアル・サイエンス・レターズ(J. Mater. Sci. Lett.)1999年,第1巻,p.349
【非特許文献2】
Pender, M.外1名,ケミカル・マテリアルズ(Chem. Mater. ),2000年,第12巻,p.280
【非特許文献3】
Dai, H.外4名,ネイチャー(Nature),1995年,第375巻,p.769
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の方法には、炭化ホウ素ナノワイヤーの多量な製造ができない、製造コストが高い等の問題がある。
【0006】
この出願の発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、原料を高温で加熱するのみで製造が容易で、上記の問題を解消することのできる新しい炭化ホウ素ナノワイヤーの製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、ホウ素、酸化ホウ素及び炭素をアルゴン雰囲気中で1000℃〜2100℃の高温下に反応させることを特徴とする炭化ホウ素ナノワイヤーの製造方法(請求項1)を提供する。
【0008】
この出願の発明は、請求項1記載の発明に関し、鉄を添加すること(請求項2)を一態様として提供する。
【0009】
また、この出願の発明は、ホウ素、酸化ホウ素及び炭素にBHを添加し、窒素雰囲気中で1000℃〜2100℃の高温下に反応させ、炭化ホウ素ナノワイヤーの表面を窒化ホウ素で被覆することを特徴とする炭化ホウ素ナノワイヤーの製造方法(請求項3)を提供する。
【0010】
さらに、この出願の発明は、請求項1、2又は3いずれかに記載の発明に関し、炭素はカーボンブラックであること(請求項4)を一態様として提供する。
【0011】
以下、実施例を示しつつ、この出願の発明の炭化ホウ素ナノワイヤーの製造方法についてさらに詳しく説明する。
【0012】
【発明の実施の形態】
たとえば、円筒状のるつぼにホウ素、酸化ホウ素及び炭素を入れ、るつぼを高周波誘導加熱炉中に配置し、アルゴン気流中で1000℃〜2100℃の高温に加熱し、その温度に約2時間保って反応させる。1000℃未満であると反応速度が低下し、短時間での収量が減少する。2100℃を超えると、原料の蒸発、生成物の形状変化等が起こる。反応終了後には、るつぼの上壁に黒灰色の繊維状の蒸着物が堆積する。この蒸着物が炭化ホウ素ナノワイヤーである。原料中の出発物質のモル比を変えると、種々の形態の生成物が得られる。たとえば、炭素のモル比を増加させると、ナノワイヤーの含有量が多くなり、炭素のモル比を減少させると、薄片状等の生成物が多く形成される。
【0013】
また、原料中に鉄を添加すると、炭化ホウ素ナノワイヤーの先端部が、主に鉄成分から構成される球状となる。鉄の添加量は、一般的には、0.1重量%〜5重量%程度である。
【0014】
一方、原料のホウ素、酸化ホウ素及び炭素にBHを添加し、窒素雰囲気中で1000℃〜2100℃の高温に加熱すると、炭化ホウ素ナノワイヤーの表面が窒化ホウ素で被覆される。
【0015】
原料の炭素にカーボンブラックを使用すると、カーボンブラックは不定形であり、安価なため、好適となる。
【0016】
この出願の発明の炭化ホウ素ナノワイヤーの製造方法は、以上のとおり、原料を加熱するだけであるため、これまでに提案された前述のどの製造方法より大きな経済的利点を有する。また、炭化ホウ素ナノワイヤーを多量に製造することを可能にする。
【0017】
【実施例】
(実施例1)
カーボンブラック、ホウ素粉末(純度99%)及び酸化ホウ素(純度99.99%)をモル比1:2:1として円筒状のるつぼ中に入れた。このるつぼを高周波誘導加熱炉の中に入れ、アルゴン気流中で急速に加熱し、15分以内に1650℃に昇温してこの温度に2時間保持した。反応終了後、るつぼの上壁に繊維状の生成物が堆積した。
【0018】
生成物についてその結晶構造をX線回折により解析した。その結果が図1に示したX線回折パターンである。このX線回折パターンからBC(a=5.6003Å, c=12.086Å)あるいはB13(a=5.6330Å, c=12.1640Å)の構造と一致しており、他の構造を示すパターンは見られず、高純度の炭化ホウ素であることが判明した。
【0019】
生成物を走査型電子顕微鏡で観察した結果が図2a及び図2bの写真である。
【0020】
図2a及び図2bの写真から非常に均質なナノワイヤーであることが確認された。ナノワイヤーの直径は50nm〜200nmであった。
(実施例2)
カーボンブラック、ホウ素粉末及び酸化ホウ素のモル比を1:8:4に変更した以外は、実施例1と同様にした。実施例2では、実施例1に比べカーボンブラックのモル数が減少している。図3a及び図3bに生成物の走査型電子顕微鏡写真を示したように、炭化ホウ素のナノワイヤーの他に薄片状物質や小板状物質が生成していることが確認された。また、図3cの走査型電子顕微鏡写真に示したように、屈曲したナノワイヤーも得られた。
(実施例3)
カーボンブラックとして、鉄を0.5重量%、ニッケルを0.1重量%含むものを出発物質に用いた以外は、実施例1と同様にした。生成物の走査型電子顕微鏡写真を示した図4aから明らかなように、ナノワイヤーであることが確認された。また、直径50nm〜200nmのナノワイヤーの他に、これよりも細い直径10nm〜30nmのナノワイヤーが生成していることも確認される。
【0021】
さらに、図4bに示した走査型電子顕微鏡写真から、以上のナノワイヤーの先端部は球状になっていることが確認された。その球状部分は、図4cに示したエネルギー分散X線回折パターンから主に鉄成分から構成されていることが判明した。
(実施例4)
実施例1で用いた原料の全量に対して20重量%のBHを添加し、窒素ガス雰囲気中において実施例1と同様に炭素ホウ素ナノワイヤーの製造を行った。得られた生成物は、図5の透過型電子顕微鏡写真に示したように、炭化ホウ素ナノワイヤーの表面が窒化ホウ素で被覆されていることが確認された。
【0022】
もちろん、この出願の発明は、以上の実施形態及び実施例によって限定されるものではない。出発物質のモル比、加熱条件、添加物の添加量等の細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【0023】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この出願の発明によって、耐熱耐火性衣服をはじめとし、原子力産業用の中性子吸収剤、熱・電気エネルギー変換等の分野で軽量高耐熱高強度材料として有望視される炭化ホウ素ナノワイヤーを多量に製造し、製造コストを安価に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた生成物のX線回折パターンである。
【図2】a,bはそれぞれ実施例1で得られた生成物の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】a,b,cはそれぞれ実施例2で得られた生成物の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】a,bはそれぞれ実施例3で得られた生成物の走査型電子顕微鏡写真であり、cは球状先端部のエネルギー分散X線回折パターンである。
【図5】実施例4で得られた生成物の走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (4)

  1. ホウ素、酸化ホウ素及び炭素をアルゴン雰囲気中で1000℃〜2100℃の高温下に反応させることを特徴とする炭化ホウ素ナノワイヤーの製造方法。
  2. 鉄を添加する請求項1記載の炭化ホウ素ナノワイヤーの製造方法。
  3. ホウ素、酸化ホウ素及び炭素にBHを添加し、窒素雰囲気中で1000℃〜2100℃の高温下に反応させ、炭化ホウ素ナノワイヤーの表面を窒化ホウ素で被覆することを特徴とする炭化ホウ素ナノワイヤーの製造方法。
  4. 炭素はカーボンブラックである請求項1、2又は3いずれかに記載の炭化ホウ素ナノワイヤーの製造方法。
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