JP2004160869A - 平版印刷版用湿し水濃縮組成物 - Google Patents

平版印刷版用湿し水濃縮組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】イソプロピルアルコール系に代替しうる作業環境上快適且つ安全で、印刷安定性に優れた湿し水濃縮組成物を提供する。高速度で回転する部材の条件下でも良好で安定した印刷適性および各種のインキに対して安定性の良い印刷適性を発揮し、かつ濃厚でありながら保存安定性の良い平版印刷版用湿し水濃縮組成物を提供する。
【解決手段】エチレングリコールモノターシャリブチルエーテルを5質量%以上15質量%未満、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを10質量%以上30質量%未満、及び1−ブトキシ−2−プロパノールを0質量%以上10質量%未満含有することを特徴とする平版印刷版用湿し水濃縮組成物。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷用湿し水濃縮組成物に関し、より具体的には平版印刷版のオフセット印刷法に有用な湿し水組成物を提供する平版印刷用湿し水濃縮組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷は水と油が本質的に混じり合わない性質を巧みに利用した印刷方式であり、印刷版面は水を受容し油性インキを反撥する領域と、水を反撥し油性インキを受容する領域からなり、前者が非画像領域であり、後者が画像領域である。湿し水によって、非画像領域を湿潤させて画像領域と非画像領域との界面化学的な差を拡大して、非画像領域のインキ反撥性と画像領域のインキ受容性とを増大させることがなされる。従来から一般的に知られている湿し水としては、重クロム酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、リン酸又はその塩、例えばアンモニウム塩、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のコロイド物質等を添加した水溶液がある。しかしながら、これらの化合物だけを含む湿し水は、版の非画像部に均一に濡れ難い欠点があり、このため印刷物が時々汚れたり、また湿し水の供給量を調節するのに相当の熟練を要するなど問題となっていた。また、近年廃水中のクロムイオンの排出規制が厳しくなり、安全衛生面から規制される傾向にある。
【0003】
この欠点を改良するため、イソプロピルアルコールを約20〜25%加えた水溶液を湿し水として用いるダールグレン方式が提案されている。この方式によると、非画像部への濡れが良くなり、湿し水の量が少なくてすみ、印刷インキと水との供給量のバランスの調整が容易であり、印刷インキ中への湿し水の乳化量が少なくなり、更にブランケットへの印刷インキの転移性が良くなる等、作業性の面及び得られた印刷物の精度の面において数々の利点がある。しかしながら、このイソプロピルアルコールは蒸発し易いために、湿し水のイソプロピルアルコール濃度を一定に保つための特殊な装置が必要であり、価格の点において高価なものとなる。また、イソプロピルアルコールは特有の不快臭があることと共に、危険物第4類アルコール類に該当するので、火気には細心の注意を払う必要があるばかりか、有機溶剤中毒予防規則(有機則)第2種有機溶剤であり、湿し水として用いられるときも通常5〜20質量%程度であるため、作業環境の浄化のための措置をとらなければならないことがある。
【0004】
そこでイソプロピルアルコールに置き換わる有機溶剤として、エチレングリコールエーテルやプロピレングリコールエーテルを使用した湿し水が提案され(例えば、特許文献1参照。)、また、3−メトキシ−3−メチルブタノールを使用した湿し水が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3及び特許文献4参照。)。しかしながら、これらの先行文献には、エチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、及び1−ブトキシ−2−プロパノールの3者を組み合わせて使用することに言及されておらず、また、濃縮液で調製する時のそれぞれの溶剤の好ましい濃度範囲についても述べられていない。
【0005】
更に、エネルギー節減の観点から、湿し水は濃縮液としてできるだけ濃厚なものを供給し、輸送と保管のコストを節約することが要求されている。しかしながら、濃縮液の濃度を上げようとすると溶解度の不良による析出や、濃縮液での保存により性能が劣化してしまう等の問題があった。従って、環境衛生面において安全で、印刷作業にあたって専門的熟練を必要とすることなく、輸送のコストが低く、少ないスペースで保管することができ、しかも印刷版の汚れを防止するだけでなく、高速印刷に適合できる等の湿し水特性に優れた高品質の印刷物を得ることができる平版印刷版用の湿し水濃縮組成物が求められている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭51−72507号公報
【特許文献2】
特開平4−1091号公報
【特許文献3】
特開平5−221180号公報
【特許文献4】
特開平3−90389号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、イソプロピルアルコール系に代替しうる作業環境上快適且つ安全で、印刷安定性に優れた湿し水濃縮組成物を提供することにある。本発明の目的はまた、高速度で回転する部材の条件下でも良好で安定した印刷適性および各種のインキに対して安定性の良い印刷適性を発揮し、かつ濃厚でありながら保存安定性の良い平版印刷版用湿し水濃縮組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは,上記課題を達成するため平版印刷版用湿し水濃縮組成物について研究を重ねた結果、エチレングリコールモノターシャリブチルエーテル及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを所定の範囲の量で含有させ、更に1−ブトキシ−2−プロパノールを所定の量までの範囲で任意に含有させた濃縮タイプの湿し水において、該濃縮液の安定性と、それを希釈して印刷機に使用したときの印刷性能が優れていることを見出した。
従って本発明は、エチレングリコールモノターシャリブチルエーテルを5質量%以上15質量%未満、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを10質量%以上30質量%未満、及び1−ブトキシ−2−プロパノールを0質量%以上10質量%未満含有することを特徴とする平版印刷版用湿し水濃縮組成物である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の平版印刷版用湿し水濃縮組成物を詳しく説明する。なお、本発明の湿し水濃縮組成物は、使用する時に20倍〜100倍に濃縮液を希釈して使用する。本明細書中で以下に触れる各種成分の含有量や添加量は、特に記載しない限り、濃縮組成物の全質量に基づいたものである。
本発明の平版印刷版用湿し水濃縮組成物は、エチレングリコールモノターシャリブチルエーテルを5質量%以上15質量%未満の範囲で含む。エチレングリコールモノターシャリブチルエーテルの量が5質量%より少ないと、印刷時の汚れ防止効果が不足し、一方15質量%以上であると濃縮液の安定性が劣化する。
本発明の平版印刷版用湿し水濃縮組成物はまた、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを10質量%以上30質量%未満の範囲で含む。3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールの量が10質量%未満であると印刷時の汚れ防止効果が不足し、一方30質量%以上であると濃縮液での無機成分の溶解度が不足し、濃縮液を作るのに適当でない。より好ましい範囲は15〜25質量%である。本発明の平版印刷版用湿し水濃縮組成物はまた、1−ブトキシ−2−プロパノールを10質量%未満の量で含んでもよい。1−ブトキシ−2−プロパノールは、それ自身の水への溶解度が低く、10質量%以上添加すると、濃縮液の保存経時中に分離を起こし好ましくない。
【0010】
本発明の平版印刷版用湿し水濃縮組成物は、好ましい態様として、下記一般式(I)で表される化合物及び下記一般式(II)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
HO−(−CHCH(CH)−O−)m−H (I)
(式中mは1〜30の整数を表す。)
RO−(−CHCH(CH)−O−)n−H (II)
(式中Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜30の整数を表す。)
上記一般式(I)で示される化合物において、式中mは1〜30の整数を表し、特にmが5より大きいと、印刷時の汚れ改良効果がさらに良好である。一方濃縮液中での溶解度の点でmは30を超えないことが好ましい。式中mのより好ましい範囲は6〜30の整数であり、最も好ましくは10〜20の整数である。
上記一般式(II)で示される化合物において、式中Rは炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。この炭素原子数は4より小さいことが濃縮液中での溶解度を維持する点で好ましい。Rの炭素原子数のより好ましい範囲は1又は2である。また、一般式(II)において、nは1〜30の整数を表し、とくにnが3より大きいとき、印刷時の汚れ改良効果がさらに良好である。一方nが30を超えないことが濃縮液中での溶解度を維持する点で好ましい。nのより好ましい範囲は4〜30の整数であり、最も好ましくは8〜20の整数である。
【0011】
本発明の湿し水濃縮組成物における上記一般式(I)の含有量は、濃縮組成物の全質量に基づいて0.5〜30質量%が適当であり、より好ましくは1〜25質量%である。また、上記一般式(II)の含有量は、濃縮組成物の全質量に基づいて1〜25質量%が適当であり、より好ましくは2〜20質量%である。また、一般式(I)の化合物と一般式(II)の化合物とを併用する場合の好ましい比率は、(I):(II)の質量比で、1:10から10:1の範囲が適当である。
【0012】
本発明の湿し水濃縮組成物には、その他に、以下のものを含ませることができる。
(a)濡れ性向上のための助剤
(b)水溶性高分子化合物
(c)pH調整剤
(d)臭気マスキング剤
(e)その他((i)防腐剤、(ii)キレート化剤、(iii)着色剤、(iv)防錆剤、(v)消泡剤など)
【0013】
(a)濡れ性向上の助剤として、界面活性剤や他の溶剤を使用することができる。界面活性剤のうち、例えばアニオン型界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩類、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ひまし油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホ琥珀酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0014】
非イオン型界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、蔗糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、トリエタノールアミン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー類、トリアルキルアミンオキシド類などが挙げられる。その他、弗素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤も使用することができる。界面活性剤を使用する場合、その含有量は発泡の点を考慮すると、10質量%以下、好ましくは0.1〜5質量%が適当である。また、これらの界面活性剤を2種以上併用することもできる。
【0015】
助剤としてはその他に、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングルコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングルコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングルコールモノイソプロピルエーテル、テトラエチレングルコールモノイソプロピルエーテル、
【0016】
エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、1−位が炭素原子数1〜8のアルキル基で置換された2−ピロリドン誘導体などが挙げられる。これらの中でもグリセリン、上記2−ピロリドン誘導体は特に好ましい。該2−ピロリドン誘導体において1−位の炭素原子数1〜8のアルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
これらの溶剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。一般にこれらの溶剤は、湿し水濃縮組成物の全質量に基づいて1〜30質量%の範囲で使用するのが適当で、好ましくは2〜20質量%である。
【0017】
本発明の湿し水濃縮組成物に使用する(b)水溶性高分子化合物としては、例えばアラビアガム、澱粉誘導体(例えば、デキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化酵素分解デキストリン、カルボキシメチル化澱粉、リン酸澱粉、オクテニルコハク化澱粉)、アルギン酸塩、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)等の天然物及びその変性体、ポリエチレングリコール及びその共重合体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ポリアクリル酸及びその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸及びその共重合体の合成物、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの中でもカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースが特に好ましい。水溶性高分子化合物の含有量は、湿し水濃縮組成物に対して0.01〜10質量%が適しており、より好ましくは、0.05〜5質量%である。
【0018】
本発明の湿し水濃縮組成物に用いられる(c)pH調整剤としては、水溶性の有機酸、無機酸及びそれらの塩類から選ばれる少なくとも1種が使用できる。これらの化合物は、湿し水のpH調整あるいはpH緩衝、平版印刷版支持体の適度なエッチング又は防腐食に効果がある。好ましい有機酸としては、例えばクエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、酢酸、グルコン酸、ヒドロキシ酢酸、蓚酸、マロン酸、レブリン酸、スルファニル酸、p−トルエンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸等が挙げられる。無機酸としては例えばリン酸、硝酸、硫酸、ポリリン酸が挙げられる。更にこれら有機酸及び/又は無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩あるいはアンモニウム塩、有機アミン塩も好適に用いられ、これらの有機酸、無機酸及びこれらの塩から1種を単独で使用しても、あるいは2種以上の混合物として使用してもよい。これらpH調整剤の本発明の湿し水濃縮組成物への添加量は、有機酸、無機酸及びこれらの塩を合わせて0.05モル/リットル〜1.0モル/リットルの範囲が好ましい。0.05モル/リットル未満であると、平版印刷版の支持体であるアルミニウムのエッチング力が不足し、印刷時の汚れがやや悪化しやすい。また逆に1.0モル/リットルを超えると、印刷機を錆びさせたり、湿し水濃縮液での溶解度が不足しやすく濃縮液の安定性に懸念が生じる。湿し水濃縮組成物のpH値は3〜7の範囲の酸性領域で用いることが好ましいが、アルカリ金属水酸化物、リン酸、アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、ケイ酸塩などを含有したpH7〜11のアルカリ性領域で用いることもできる。
【0019】
(d)臭気マスキング剤としては、従来香料としての用途が知られているエステルを含む。例えば下記一般式(III)で示されるものがある。
−COOR (III)
一般式(III)の化合物において、式中Rは炭素原子数1〜15のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基、あるいはフェニル基である。アルキル基又はアルケニル基の場合、その炭素原子数は好ましくは4〜8である。Rがアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を表す場合、それらは直鎖でも分岐鎖でもよい。アルケニル基は特に二重結合を1個有するものが適当である。アラルキル基としては、ベンジル基やフェニルエチル基が挙げられる。なお、Rで示されるアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基、あるいはフェニル基の1以上の水素原子が、水酸基又はアセチル基で置換されていてもよい。Rは炭素原子数3〜10のアルキル基、アラルキル基又はフェニル基であって、それらは直鎖でも分岐鎖でもよい。アルキル基の場合、その炭素原子数は好ましくは3〜9である。アラルキル基としては、ベンジル基やフェニルエチル基が挙げられる。
【0020】
使用できる(d)臭気マスキング剤として具体的に、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、2−エチル酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチル吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、4−メチルペンタン酸(イソヘキサン酸)、2−ヘキセン酸、4−ペンテン酸、ヘプタン酸、2−メチルヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、2−デセン酸、ラウリン酸又はミリスチン酸のエステルが挙げられる。その他、フェニル酢酸ベンジル、アセト酢酸エチルやアセト酢酸2−ヘキシルといったアセト酢酸エステル等もある。中でも好ましいものとして、酢酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、酪酸n−ブチル、酪酸n−ペンチル及び酪酸イソペンチルが挙げられ、特に酪酸n−ブチル、酪酸n−ペンチル及び酪酸イソペンチルが好適である。これらの臭気マスキング剤(d)の湿し水濃縮組成物における含有量は、湿し水濃縮組成物の全重量に基づいて0.01〜10質量%が適当で、より好ましくは0.1〜5質量%である。これらを使用することにより、作業環境をより改善することができる。また。バニリン、エチルバニリン等を併用してもよい。
【0021】
本発明の湿し水濃縮組成物に使用する(e)(i)防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンズトリアゾール誘導体、アミジン又はグアニジンの誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン又はグアニジンの誘導体、ダイアジン又はトリアゾールの誘導体、オキサゾール又はオキサジンの誘導体、ブロモニトロアルコール系のブロモニトロプロパノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、3−ブロモ−3−ニトロペンタン−2,4−ジオール等が挙げられる。好ましい添加量は細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、湿し水濃縮組成物に対し、0.01〜10質量%の範囲が好ましく、また種々のカビ、細菌、酵母に対して効力のあるような2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
【0022】
本発明の湿し水濃縮組成物には、さらに、(e)(ii)キレート化剤を添加することができる。湿し水濃縮組成物は、使用時に通常、水道水、井戸水などを加えて希釈して調製されるが、この際、希釈する水道水や井戸水に含まれているカルシウムイオン等が印刷に悪影響を与え、印刷物を汚れ易くする原因となることもある。このような場合、キレート化剤を添加しておくことにより、上記欠点を解消することができる。好ましいキレート化剤としては例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記のキレート剤のナトリウム塩あるいはカリウム塩の代わりに、有機アミンの塩も有効である。これらのキレート化剤は使用時の湿し水濃縮組成物中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。使用時の湿し水濃縮組成物中のキレート化合物の含有量としては、0.01〜10質量%が適当で、好ましくは0.05〜5質量%である。
【0023】
本発明の湿し水濃縮組成物に使用する(e)(iii)着色剤としては、食品用色素等が好ましく使用できる。例えば、黄色色素としてはCINo. 19140、15985、赤色色素としてはCINo. 16185、45430、16255、45380、45100、紫色色素としてはCINo. 42640、青色色素としてはCINo.42090、73015、緑色色素としてはCINo. 42095、等が挙げられる。本発明の湿し水濃縮組成物に使用する(e)(iv)防錆剤としては、例えばベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、チオサリチル酸、ベンゾイミダゾール及びその誘導体等が挙げられる。本発明の湿し水濃縮組成物に使用する(e)(v)消泡剤としてはシリコン消泡剤が好ましく、その中で乳化分散型及び可溶化型等いずれも使用することができる。
【0024】
本発明の湿し水濃縮組成物の成分として残余は、水である。湿し水濃縮組成物は、通常使用時に水道水、井戸水等で20〜100倍程度に希釈し、使用時の湿し水組成物とする。
【0025】
【発明の効果】
本発明の平版印刷版用湿し水濃縮組成物は、イソプロピルアルコールを必要としないことから作業環境上、快適で安全性が高い。本発明の平版印刷版用湿し水濃縮組成物は経時保存しても性能の変化が少ない。本発明の湿し水濃縮組成物は、高速度で回転する部材の条件下でも、ローラー上及び版面上で良好な濡れ性を発揮できるので、安定に優れた印刷物を得ることができる。特に、従来湿し水で印刷がしにくいと言われていた金属顔料インキやUVインキを使用した場合の印刷性も向上させることができる。長期間安定使用できることから、生産性の向上にもつながる。
【0026】
【実施例】
次に本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明する。なお、%は特に指定のない限り質量%を示す。
表1〜2の組成に従って、例1〜26の各種湿し水濃縮組成物を調製した。本発明に従った例あるいは比較例の区別は表中の最下段に表す。
組成の残余は水であり、単位は表1〜2に示すとおりである。ここで調製した濃縮組成物は、使用時に希釈して湿し水組成物とする。
【0027】
表1〜2の組成で調液した濃縮組成物を、50℃で1週間保存することにより保存安定性を評価した。また、室温25℃で保存しておいた湿し水により印刷安定幅、給水ローラ安定性の評価も行った。印刷テストの実験は濃縮組成物を各々、水道水を用いて50倍に希釈し、pHが4.8〜5.3付近となるようにNaOH/リン酸(85%)にて調整して、実際に使用する湿し水組成物として印刷テストに供した。印刷機はハイデルMOV(アルカラー給水装置)を使用して、東洋インキ(株)の名称ハイエコーのシアンインキと、使用プレートとして富士写真フイルム(株)製のVPSを標準条件で製版したものを用いて、下記の印刷テストを実施した。それらの結果を表1〜2に併せて示す。
【0028】
(a)濃縮組成物の保存安定性
濃縮組成物18リットルをポリエチレン製の容器に入れて密封し、50℃で1週間の保存後、容器の上部から1リットル採取し、これに水道水を加え50倍に希釈し、2%の濃度になるよう調製し印刷テストに使用した。印刷時の水目盛りを下げていき、地汚れの発生する水目盛りの値を調べた。これとは別に、室温25℃で保存しておいた湿し水についても同様のテストを行い、地汚れの発生する水目盛りの値を調べた。この試験では、室温25℃で保存しておいた湿し水と比べて、保存後の濃縮組成物から希釈した液の方が、より高い水目盛りで地汚れが発生する。よって、保存後の濃縮組成物からの希釈液において印刷時の水目盛りを下げていき、地汚れの発生する水目盛りと、室温25℃で保存しておいた湿し水において印刷時の水目盛りを下げていき、地汚れの発生する水目盛りとの差を求め、この差の値が小さいほど濃縮組成物の保存安定性が良好である、と判定した。
○‥‥差が5目盛り以下
△‥‥差が6〜10
×‥‥差が11以上
【0029】
(b)印刷安定幅
室温25℃で保存しておいた湿し水濃縮組成物に水道水を加え50倍に希釈し、2%の濃度になるよう調製し印刷テストに使用した。印刷機の給水目盛り1〜100(給水ローラの回転数のメジャーでもある)において、印刷のできる幅を観察した。給水目盛りを小さくすると印刷物に汚れが生じやすく、また給水目盛りを大きくすると印刷物のインキ濃度が低くなってしまう。給水目盛りの許容幅としては広いほうが好ましい。
○〜◎‥50〜100
○‥‥ 60〜100
△‥‥ 70〜100
×‥‥ 80〜100
(c)給水ローラ安定性
室温25℃で保存しておいた湿し水濃縮組成物に水道水を加え50倍に希釈し、2%の濃度になるよう調製した湿し水を用いて1日 10,000枚印刷を3日間連続で実施した。1日目(1万枚印刷後)、2日目(2万枚印刷後)、3日目(3万枚印刷後)の給水ローラ上の汚れ(ローラ上に水膜が均一にきれいにできるかどうか)を観察した。
‥‥ほとんど汚れなし
△‥‥やや汚れが見られる
×‥‥汚れる
【0030】
(d)金属顔料インキ、UVインキ印刷安定性
室温25℃で保存しておいた湿し水濃縮組成物に水道水を加え50倍に希釈し、2%の濃度になるよう調製した湿し水を用いて、東洋インキ(株)の名称ハイエコーのシアンインキの代わりに女神インキ(株)金インキ(青口)、ベストキュアー紅(UVインキ)東華色素(株)を用いて印刷のテストを行った。
○‥‥5000枚印刷でも良好
△‥‥ブランケット上でインキ汚れ(途中1回版面洗浄)
×‥‥1000枚付近でインキ汚れ(途中、版面及びブランケット2回洗浄)
【0031】
【表1】
Figure 2004160869
【0032】
【表2】
Figure 2004160869
【0033】
表1〜2の結果より、本発明による湿し水濃縮組成物は、それを希釈して湿し水組成物として使用することで、いずれのテスト項目についても優れており、良好な印刷物が得られ、また、湿し水濃縮組成物での安定性も優れていることが判った。

Claims (5)

  1. エチレングリコールモノターシャリブチルエーテルを5質量%以上15質量%未満、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールを10質量%以上30質量%未満、及び1−ブトキシ−2−プロパノールを0質量%以上10質量%未満含有することを特徴とする平版印刷版用湿し水濃縮組成物。
  2. 下記一般式(I)で表される化合物及び下記一般式(II)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1記載の平版印刷版用湿し水濃縮組成物。
    HO−(−CHCH(CH)−O−)m−H (I)
    (式中mは1〜30の整数を表す。)
    RO−(−CHCH(CH)−O−)n−H (II)
    (式中Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜30の整数を表す。)
  3. 1位が炭素原子数1〜8のアルキル基で置換された2−ピロリドン誘導体及びグリセリンから選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1又は2記載の平版印刷版用湿し水濃縮組成物。
  4. カルボキシメチルセルロース及び/又はヒドロキシエチルセルロースを含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の平版印刷版用湿し水濃縮組成物。
  5. 有機酸、無機酸及びこれらの塩類から選ばれる少なくとも1種を0.05〜1.0モル/リットル含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の平版印刷版用湿し水濃縮組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006181854A (ja) * 2004-12-27 2006-07-13 Fuji Photo Film Co Ltd 平版印刷版用湿し水濃縮組成物
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WO2013046877A1 (ja) 2011-09-30 2013-04-04 富士フイルム株式会社 機上現像型の平版印刷版原版を用いる印刷方法

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