JP2004158762A - 高保磁力異方性磁石及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】HDDR法を用いた磁石粉末に対して、Dy元素を有効に作用させてHDDR粉末の保磁力を向上させること。
【解決手段】Nd−Fe−B系合金に水素の吸収・放出反応を利用して結晶粒を微細化して得られる高保磁力異方性磁石の製造方法であって、原料インゴットにおいて主相であるNd2Fe14B相のNd含有量をNd1,Dy含有量をDy1とし、粒界部のNd含有量をNd2,Dy含有量をDy2としたとき、
(Dy2/(Nd2+Dy2))/(Dy1/(Nd1+Dy1))>1.5
である原料インゴットを用いてHDDR処理を行うこととした。
【選択図】 図1
【解決手段】Nd−Fe−B系合金に水素の吸収・放出反応を利用して結晶粒を微細化して得られる高保磁力異方性磁石の製造方法であって、原料インゴットにおいて主相であるNd2Fe14B相のNd含有量をNd1,Dy含有量をDy1とし、粒界部のNd含有量をNd2,Dy含有量をDy2としたとき、
(Dy2/(Nd2+Dy2))/(Dy1/(Nd1+Dy1))>1.5
である原料インゴットを用いてHDDR処理を行うこととした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Nd−Fe−B系磁石材料の高保磁力化を目的とした高保磁力異方性磁石の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、Nd−Fe−B系合金に対して水素吸収・脱水素処理を行って結晶粒径を微細化し、保磁力を発現して得られるHDDR法が開発され、磁石性能の高性能化を実現している。このHDDR粉末は異方性を示すNd−Fe−B系磁石粉末であり、この特徴を生かしてボンド磁石を中心として、磁石の高性能化を可能としている。
このHDDR法はNd2Fe14B相を有する母合金に850℃程度で水素を吸収させることによって、
Nd2Fe14B → NdH2 + α−Fe + Fe2B
なる相分解を発生させ、その後、真空中で強制的に脱水素反応によって、
NdH2 + α−Fe + Fe2B → Nd2Fe14B
なる再結合を生じさせて、Nd2Fe14B相結晶の微細化をもとに,保磁力を発現させるものである。
【0003】
一方、Nd−Fe−B系磁石の高保磁力化は、その一部をDyで置換することによってDy2Fe14B化合物を生成させ、Dy2Fe14B化合物の巨大な結晶磁気異方性を利用して高保磁力材料が開発されている(非特許文献1参照)。この手法は種々のNd−Fe−B系磁石材料に適用されており、特に焼結磁石において効果が大きい。
【0004】
【非特許文献1】
J. Magn. Magn. Mater., 61, (1986), 363−369.
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、異方性を有するHDDR粉末に、非特許文献1に記載のNd−Fe−B系磁石の一部をDyで置換しDy2Fe14B化合物を生成させる技術を適用した場合、Dy2Fe14B相は水素との反応性が小さく、HDDR法のプロセスである水素吸収分解及び脱水素再結合反応が阻害されるため、高保磁力を有するDy含有のNd−Fe−B系微細結晶を作製して高保磁力を得ることが困難であった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑み、HDDR法を用いた磁石粉末に対して、Dy元素を有効に作用させてHDDR粉末の保磁力を向上させることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、Nd−Fe−B系合金に水素の吸収・放出反応を利用して結晶粒を微細化して得られる高保磁力異方性磁石の製造方法であって、原料インゴットにおいて主相であるNd2Fe14B相のNd含有量をNd1,Dy含有量をDy1とし、粒界部のNd含有量をNd2,Dy含有量をDy2としたとき、
(Dy2/(Nd2+Dy2))/(Dy1/(Nd1+Dy1))>1.5
である原料インゴットを用いてHDDR処理を行うことにより上記課題を解決するに至った。
【0008】
【発明の効果】
本願発明にあっては、HDDR粉末の保磁力は希土類置換を自由に行うことができなかったため保磁力の大幅な増加は認められなかったが、Dyが偏析した母合金を原料としてHDDR処理を行うことによりDyを含んだ微細な再結合粒子が容易に得られるため、保磁力を飛躍的に増大させることができる。更にこの粉末を用いた高保磁力異方性磁石の使用温度範囲がより高温にシフトすることが可能となり、産業上の適用範囲が飛躍的に拡大することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明における高保磁力異方性磁石の製造方法について実施例をもとに説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0010】
(実施例1)
Nd12.6−XDyXFe63.1Co17.4B6.5Zr0.1Ga0.3 組成母合金に対して、X=3において、鋳造法により母合金を作成した。得られた母合金をArフロー中で1000℃において、0−50h程度の熱処理を行うことによって、Dy元素の偏析状態を変化させた。
【0011】
ここで、原料インゴットにおいて主相Nd2Fe14B相のNd含有量をNd1,Dy含有量をDy1とし、Dyリッチ部である粒界部のNd含有量をNd2,Dy含有量をDy2としたとき、Dy濃度’CD y’を’CD y’=(Dy2/(Nd2+Dy2))/(Dy1/(Nd1+Dy1))で表したときに、’CD y’の変化に伴う保磁力HcJの変化を表1及びこの表1の結果をプロットした図1に示す。
(表1)
【0012】
尚、作用したHDDRプロセスは公知の条件であり、H2フロー及びロータリポンプによる減圧処理を850℃で行うことによりHDDR処理を行った。
【0013】
”CDy”値、すなわちDy元素の偏析が1.5以上においてHcJの増大が顕著となり、Dyが偏析した母合金の適用の有効性が確認できる。
本実施例でDyを含有していない母合金を用いて同一のHDDR処理を行った場合のHcJはおよそ10kOe程度であり、これに対してDyをX=3含有して、且つ、Dy元素が偏析していない”CDy”値がほぼ1の母合金を用いた場合は、HcJは5kOe程度にまで低下している。これは前述のようにDy2Fe14B化合物相がHDDRプロセス中で水素吸収相分解及び脱水素再結合反応が十分に行われていないためである。これに対して本発明のDyが偏析した、即ち”CDy”値>1.5の母合金を用いた場合には、HcJは16〜22kOe程度にまで向上するので非常に有効な手段であると言える(請求項1に対応)。
ここで,各保磁力の磁石の使用温度であるが,磁石の温度特性の評価から,10kOe磁石では,40℃程度に止まるが,22kOe磁石では120℃まで上昇する.
【0014】
尚、これらのHDDR処理粉末の異方性は同程度であることを付記しておく。また、”CDy”値が2.5以上の母合金は本実施例では作製することが出来なかった。
【0015】
(実施例2)
Nd12.6−XDyXFe63.1Co17.4B6.5Zr0.1Ga0.3組成に対してXを変化させた。このときの”CDy”値は2一定となるように、鋳造された母合金をAr中1000℃の熱処理を行うことによって調整した。この時の保磁力HcJと残留磁束密度Brの変化を示したものが図2である。
図2から明らかなように、Xの増加と供に保磁力HcJは増加するものの、残留磁束密度Brは低下するため、実用的にはX=5程度が上限となると考えられる(請求項2に対応)。
【0016】
(実施例3)
実施例1において,”CDy”値=2のHDDR粉末を用いて圧縮成形ボンド磁石及び加圧焼結法によるバルク磁石を作製し、粉末の磁気特性とともに磁気特性を以下に示した。
【0017】
ボンド磁石は300μm以下に粒径を調節したHDDR粉末と2wt%のエポキシ樹脂を混合し、20kOeの磁場中で10ton/cm2の加圧力で成形して、その後、150℃で固化した(請求項3に対応)。
【0018】
バルク磁石は同様に300μm以下のHDDR粉末を20kOeの磁場中で2ton/cm2の加圧力で仮成形し、引続き放電プラズマ燒結法で焼結した。焼結温度及び保磁時間は750℃×3min,加圧力は3ton/cm2であった(請求項4に対応)。
【0019】
表2は上記HDDR粉末,ボンド磁石及びバルク磁石の残留磁束密度Br,保磁力HcJ,最大エネルギー積(BH)max,密度Dを表2に示す。
(表2)
【0020】
上記から明らかのように、本発明で得られたボンド磁石及びバルク磁石は、原料磁石粉末から予想される磁気特性を示すことが明らかとなり、本発明の高保磁力のボンド磁石及びバルク磁石が実現できた。
【0021】
(各実施例の作用)
HDDR処理においてDy元素が有効に作用しないのは、原料となる母合金中にDy2Fe14B相が生成し、この相が通常のHDDRプロセス中で水素吸収・相分解反応しにくいことが原因である。そのため、相分解とその後に生じる再結合反応が行われないため結晶粒の微細化が起こらず、結果的に保磁力の向上が得られていない。
そこで本発明では、出発原料である母合金の中において、主相Nd2Fe14B相の粒界部にDyリッチな偏析を設けて、意図的にDy2Fe14B化合物を生じていないものを出発原料とする。このDyリッチな領域は水素吸収段階において、容易に水素化物(DyH2等)を生成するために、その後の脱水素・再結合反応においてもDy元素を含有しながら反応が進むこととなる。そのためDyを含んだ、即ち(Nd−Dy)2Fe14B化合物の微細結晶が再結合によって生成されるため、従来のHDDR粉末対して飛躍的に保磁力を向上させることが可能となる(請求項1に対応)。
【0022】
本発明のDyが偏析した母合金は鋳造法を用いて作製されるいわゆるブックモールド材において実現できる。この母合金の構造としては、初晶のFe部が存在し、その周囲にNd2Fe14B相が主成分である部分が存在し、その周囲にDyに富んだDyリッチ部が存在している。
Dyの含有量は5at%を上限としたが、これは多量のDy置換により材料の保磁力は増加する傾向を示すものの、飽和磁束密度が低下するために、実用的には5at%程度が上限となると考えられる(請求項2に対応)。
【0023】
本発明によって得られた高保磁力異方性磁石粉末は一般的なボンド磁石および一般的なバルク磁石として適用が可能である(請求項3,4,5に対応)。その製造方法は特に限定されるものではなく、公知のボンド磁石の製造方法および公知のバルク磁石の製造方法を採用すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における”CDy”値に伴う保磁力の変化を表す図である。
【図2】実施例2におけるNd12.6−XDyXFe63.1Co17.4B6.5Zr0.1Ga0.3組成に対するXの変化に伴う保磁力及び残留磁束密度の変化を表す図である。
【符号の説明】
○ 保磁力
● 残留磁束密度
【発明の属する技術分野】
本発明は、Nd−Fe−B系磁石材料の高保磁力化を目的とした高保磁力異方性磁石の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、Nd−Fe−B系合金に対して水素吸収・脱水素処理を行って結晶粒径を微細化し、保磁力を発現して得られるHDDR法が開発され、磁石性能の高性能化を実現している。このHDDR粉末は異方性を示すNd−Fe−B系磁石粉末であり、この特徴を生かしてボンド磁石を中心として、磁石の高性能化を可能としている。
このHDDR法はNd2Fe14B相を有する母合金に850℃程度で水素を吸収させることによって、
Nd2Fe14B → NdH2 + α−Fe + Fe2B
なる相分解を発生させ、その後、真空中で強制的に脱水素反応によって、
NdH2 + α−Fe + Fe2B → Nd2Fe14B
なる再結合を生じさせて、Nd2Fe14B相結晶の微細化をもとに,保磁力を発現させるものである。
【0003】
一方、Nd−Fe−B系磁石の高保磁力化は、その一部をDyで置換することによってDy2Fe14B化合物を生成させ、Dy2Fe14B化合物の巨大な結晶磁気異方性を利用して高保磁力材料が開発されている(非特許文献1参照)。この手法は種々のNd−Fe−B系磁石材料に適用されており、特に焼結磁石において効果が大きい。
【0004】
【非特許文献1】
J. Magn. Magn. Mater., 61, (1986), 363−369.
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、異方性を有するHDDR粉末に、非特許文献1に記載のNd−Fe−B系磁石の一部をDyで置換しDy2Fe14B化合物を生成させる技術を適用した場合、Dy2Fe14B相は水素との反応性が小さく、HDDR法のプロセスである水素吸収分解及び脱水素再結合反応が阻害されるため、高保磁力を有するDy含有のNd−Fe−B系微細結晶を作製して高保磁力を得ることが困難であった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑み、HDDR法を用いた磁石粉末に対して、Dy元素を有効に作用させてHDDR粉末の保磁力を向上させることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、Nd−Fe−B系合金に水素の吸収・放出反応を利用して結晶粒を微細化して得られる高保磁力異方性磁石の製造方法であって、原料インゴットにおいて主相であるNd2Fe14B相のNd含有量をNd1,Dy含有量をDy1とし、粒界部のNd含有量をNd2,Dy含有量をDy2としたとき、
(Dy2/(Nd2+Dy2))/(Dy1/(Nd1+Dy1))>1.5
である原料インゴットを用いてHDDR処理を行うことにより上記課題を解決するに至った。
【0008】
【発明の効果】
本願発明にあっては、HDDR粉末の保磁力は希土類置換を自由に行うことができなかったため保磁力の大幅な増加は認められなかったが、Dyが偏析した母合金を原料としてHDDR処理を行うことによりDyを含んだ微細な再結合粒子が容易に得られるため、保磁力を飛躍的に増大させることができる。更にこの粉末を用いた高保磁力異方性磁石の使用温度範囲がより高温にシフトすることが可能となり、産業上の適用範囲が飛躍的に拡大することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明における高保磁力異方性磁石の製造方法について実施例をもとに説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0010】
(実施例1)
Nd12.6−XDyXFe63.1Co17.4B6.5Zr0.1Ga0.3 組成母合金に対して、X=3において、鋳造法により母合金を作成した。得られた母合金をArフロー中で1000℃において、0−50h程度の熱処理を行うことによって、Dy元素の偏析状態を変化させた。
【0011】
ここで、原料インゴットにおいて主相Nd2Fe14B相のNd含有量をNd1,Dy含有量をDy1とし、Dyリッチ部である粒界部のNd含有量をNd2,Dy含有量をDy2としたとき、Dy濃度’CD y’を’CD y’=(Dy2/(Nd2+Dy2))/(Dy1/(Nd1+Dy1))で表したときに、’CD y’の変化に伴う保磁力HcJの変化を表1及びこの表1の結果をプロットした図1に示す。
(表1)
【0012】
尚、作用したHDDRプロセスは公知の条件であり、H2フロー及びロータリポンプによる減圧処理を850℃で行うことによりHDDR処理を行った。
【0013】
”CDy”値、すなわちDy元素の偏析が1.5以上においてHcJの増大が顕著となり、Dyが偏析した母合金の適用の有効性が確認できる。
本実施例でDyを含有していない母合金を用いて同一のHDDR処理を行った場合のHcJはおよそ10kOe程度であり、これに対してDyをX=3含有して、且つ、Dy元素が偏析していない”CDy”値がほぼ1の母合金を用いた場合は、HcJは5kOe程度にまで低下している。これは前述のようにDy2Fe14B化合物相がHDDRプロセス中で水素吸収相分解及び脱水素再結合反応が十分に行われていないためである。これに対して本発明のDyが偏析した、即ち”CDy”値>1.5の母合金を用いた場合には、HcJは16〜22kOe程度にまで向上するので非常に有効な手段であると言える(請求項1に対応)。
ここで,各保磁力の磁石の使用温度であるが,磁石の温度特性の評価から,10kOe磁石では,40℃程度に止まるが,22kOe磁石では120℃まで上昇する.
【0014】
尚、これらのHDDR処理粉末の異方性は同程度であることを付記しておく。また、”CDy”値が2.5以上の母合金は本実施例では作製することが出来なかった。
【0015】
(実施例2)
Nd12.6−XDyXFe63.1Co17.4B6.5Zr0.1Ga0.3組成に対してXを変化させた。このときの”CDy”値は2一定となるように、鋳造された母合金をAr中1000℃の熱処理を行うことによって調整した。この時の保磁力HcJと残留磁束密度Brの変化を示したものが図2である。
図2から明らかなように、Xの増加と供に保磁力HcJは増加するものの、残留磁束密度Brは低下するため、実用的にはX=5程度が上限となると考えられる(請求項2に対応)。
【0016】
(実施例3)
実施例1において,”CDy”値=2のHDDR粉末を用いて圧縮成形ボンド磁石及び加圧焼結法によるバルク磁石を作製し、粉末の磁気特性とともに磁気特性を以下に示した。
【0017】
ボンド磁石は300μm以下に粒径を調節したHDDR粉末と2wt%のエポキシ樹脂を混合し、20kOeの磁場中で10ton/cm2の加圧力で成形して、その後、150℃で固化した(請求項3に対応)。
【0018】
バルク磁石は同様に300μm以下のHDDR粉末を20kOeの磁場中で2ton/cm2の加圧力で仮成形し、引続き放電プラズマ燒結法で焼結した。焼結温度及び保磁時間は750℃×3min,加圧力は3ton/cm2であった(請求項4に対応)。
【0019】
表2は上記HDDR粉末,ボンド磁石及びバルク磁石の残留磁束密度Br,保磁力HcJ,最大エネルギー積(BH)max,密度Dを表2に示す。
(表2)
【0020】
上記から明らかのように、本発明で得られたボンド磁石及びバルク磁石は、原料磁石粉末から予想される磁気特性を示すことが明らかとなり、本発明の高保磁力のボンド磁石及びバルク磁石が実現できた。
【0021】
(各実施例の作用)
HDDR処理においてDy元素が有効に作用しないのは、原料となる母合金中にDy2Fe14B相が生成し、この相が通常のHDDRプロセス中で水素吸収・相分解反応しにくいことが原因である。そのため、相分解とその後に生じる再結合反応が行われないため結晶粒の微細化が起こらず、結果的に保磁力の向上が得られていない。
そこで本発明では、出発原料である母合金の中において、主相Nd2Fe14B相の粒界部にDyリッチな偏析を設けて、意図的にDy2Fe14B化合物を生じていないものを出発原料とする。このDyリッチな領域は水素吸収段階において、容易に水素化物(DyH2等)を生成するために、その後の脱水素・再結合反応においてもDy元素を含有しながら反応が進むこととなる。そのためDyを含んだ、即ち(Nd−Dy)2Fe14B化合物の微細結晶が再結合によって生成されるため、従来のHDDR粉末対して飛躍的に保磁力を向上させることが可能となる(請求項1に対応)。
【0022】
本発明のDyが偏析した母合金は鋳造法を用いて作製されるいわゆるブックモールド材において実現できる。この母合金の構造としては、初晶のFe部が存在し、その周囲にNd2Fe14B相が主成分である部分が存在し、その周囲にDyに富んだDyリッチ部が存在している。
Dyの含有量は5at%を上限としたが、これは多量のDy置換により材料の保磁力は増加する傾向を示すものの、飽和磁束密度が低下するために、実用的には5at%程度が上限となると考えられる(請求項2に対応)。
【0023】
本発明によって得られた高保磁力異方性磁石粉末は一般的なボンド磁石および一般的なバルク磁石として適用が可能である(請求項3,4,5に対応)。その製造方法は特に限定されるものではなく、公知のボンド磁石の製造方法および公知のバルク磁石の製造方法を採用すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における”CDy”値に伴う保磁力の変化を表す図である。
【図2】実施例2におけるNd12.6−XDyXFe63.1Co17.4B6.5Zr0.1Ga0.3組成に対するXの変化に伴う保磁力及び残留磁束密度の変化を表す図である。
【符号の説明】
○ 保磁力
● 残留磁束密度
Claims (5)
- Nd−Fe−B系合金に水素の吸収・放出反応を利用して結晶粒を微細化して得られる高保磁力異方性磁石の製造方法であって、原料インゴットにおいて主相であるNd2Fe14B相のNd含有量をNd1,Dy含有量をDy1とし、粒界部のNd含有量をNd2,Dy含有量をDy2としたとき、
(Dy2/(Nd2+Dy2))/(Dy1/(Nd1+Dy1))>1.5
である原料インゴットを用いてHDDR処理を行うことを特徴とした高保磁力異方性磁石の製造方法。 - 請求項1に記載の高保磁力異方性磁石の製造方法において、
前記原料インゴットは、Dyが0.01 〜 5.0at%であることを特徴とする高保磁力異方性磁石の製造方法。 - 請求項1または2記載の高保磁力異方性磁石の製造方法を用いて高保磁力異方性磁石を製造した後、該高保磁力異方性磁石と樹脂とを混合して圧縮成形又は射出成形することを特徴とする高保磁力異方性ボンド磁石の製造方法。
- 請求項1または2記載の高保磁力異方性磁石の製造方法によって高保磁力異方性磁石を製造した後、該高保磁力異方性磁石粉末を加圧成形することを特徴とする高保磁力異方性バルク磁石の製造方法。
- 請求項1ないし4いずれか1つに記載の高保磁力異方性磁石,高保磁力異方性ボンド磁石及び高保磁力異方性バルク磁石の製造方法によって得られた高保磁力異方性磁石粉末,高保磁力異方性ボンド磁石及び高保磁力異方性バルク磁石。
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