JP2004158297A - 金属配位化合物を用いた電界発光素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】発光効率が高く、発光寿命が長い発光材料を提供する。
【解決手段】基板上に形成された一対の電極間に、少なくとも1層の発光層を配置した電界発光素子であって、発光層中に少なくとも1種の非イオン性の金錯体を含むことを特徴とし、特に、下記一般式(1)で示される部分構造式を有する錯体を含むことを特徴とする電界発光素子。
S−Au (1)
(但しここで、Auは金であり、Sは硫黄原子を示す。)
【選択図】 図3
【解決手段】基板上に形成された一対の電極間に、少なくとも1層の発光層を配置した電界発光素子であって、発光層中に少なくとも1種の非イオン性の金錯体を含むことを特徴とし、特に、下記一般式(1)で示される部分構造式を有する錯体を含むことを特徴とする電界発光素子。
S−Au (1)
(但しここで、Auは金であり、Sは硫黄原子を示す。)
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機化合物を用いた発光素子に関するものであり、さらに詳しくは、特定の金錯体を発光材料として用いることで、発光効率が高く、素子の発光寿命が長い電界発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、一般に電界発光素子、特に発光材料が有機物よりなる有機エレクトロルミネッセンス素子(以下有機EL素子という)に用いられている発光材料は、分子のエネルギー準位が一重項励起子状態から基底状態に遷移するときに発光する蛍光が利用されている。
【0003】
一方最近、励起三重項状態を経由したりん光発光を利用する電界発光素子の検討が、発光効率の向上が期待できるために盛んである。
【0004】
一般に、高効率のりん光発光する物質は、比較的原子量の大きな金属を中心金属に持つ化合物であることが多い。りん光発光は、励起三重項状態から基底一重項状態への遷移に伴う発光であり、一般にはこの遷移は禁制遷移であって、起こる確率が小さい。しかし、重原子金属を用いた金属配位化合物では、この禁制が「重原子効果」によって解かれ、遷移が許容され、強いりん光を発するもがある。
【0005】
その一例が白金錯体やイリジウム錯体を発光材料とした例である。代表的な化合物例を図2に示した。これらの化合物には、21、22に示す同種の配位子が配意した錯体と、23、24、25に示す異種配位子を伴う錯体がある。
【0006】
一方、金と硫黄原子の結合ユニットを含む金錯体、および金の複核錯体のルミネッセンス特性に関する文献がある。(例えば 非特許文献1、同2参照)。
【0007】
さらに、金錯体を用いたりん光発光素子の検討がなされている。(非特許文献3を参照)。
【0008】
【非特許文献1】
ジェニファー M.フォワード(Jennifer M.Forward)ほか、Luminescence Studies of Gold(I) Thiolate Complexes,Inorganic Chemistry,1995,34,6330−6336
【非特許文献2】
ウイリアム B.ジョーンズ(William B.Jones)ほか、Solid State EXAFS and Lumimescence Studies of Natural,Dinuclear Gold(I) Complexes.Gold(I)−Gold(I) Interractions in the Solid State,Inorg.Chem.1995,34,1996−2001
【非特許文献3】
ユーグアン マ(Yuguang Ma)ほか、High Luminescence Gold(I) and Cu(I) Complexes with a Triplet Excited State for Use inLight−Emitting Diodes,Adv.Mater.,1999,11,No10 p852
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の金属錯体化合物を発光材料として用いた有機EL素子は、高い発光効率は示すものの、一定の発光輝度で長時間通電していると素子の発光輝度が大きく低下してしまう現象が生じる。そのために素子の発光寿命を延ばす試みがなされている。
【0010】
また発光層の組成に関しても、ホスト材料中に一定量のゲスト材料を添加したところで発光輝度の最大値が現れ、それ以上添加しても発光輝度が上がらないという濃度消光という現象が起き、発光輝度を向上させるのに大きな障害になっている。そのためにより高濃度で使用できる材料が求められている。
【0011】
また、前記〔非特許文献3〕に示されている化合物(Au2(dppm)2)などは、化合物の錯体部分が電気的に陽イオンであり、無電荷の錯体ではないためにカウンターアニオンを伴ってイオン性の化合物となっている。このような種類の化合物の場合、化合物自体が電荷を内在するため、電界印加による発光中に有機物内の電流を阻害するなどの問題が生じ、低電圧での高輝度・高発光効率が望めない。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基板上に形成された一対の電極間に、少なくとも1層の発光層を配置した電界発光素子であって、前記発光層中に少なくとも1種の非イオン性の金錯体を含むことを特徴とする電界発光素子を提供することである。
【0013】
さらに本発明は、特に下記一般式(1)で示される部分構造式を有する錯体を含むことを特徴とする電界発光素子である。
【0014】
S−Au (1)
(但しここで、は金であり、Sは硫黄原子を示す。)
また本発明は、下記一般式(2)で示される部分構造式を有する金錯体を含むことを特徴とする電界発光素子である。
【0015】
【外1】
【0016】
[但し、Pはりん原子であり、またQは、同じまたは異なる構造の、置換基を有していても良い芳香環基、または炭素原子数が1から10の分岐していてもよいアルキル基を示す。上記置換基は、アルキル基、ハロゲン、芳香環基を示す。]さらに本発明は、前記一般式(1)で示される部分構造式を有する金錯体が、金原子を2つ以上含む複核金錯体であり、該複核金属配位化合物を含むことを特徴とする電界発光素子である。
【0017】
前記電界発光素子の発光層が前記一般式(1)または(2)で示される部分構造式を有する金錯体のみからなることを特徴とする電界発光素子。
【0018】
前記金錯体を含む有機化合物層が一対の電極に狭持され、該電極間に電圧を印加することにより発光し、また前記発光がりん光発光であることを特徴とする電界発光素子。
【0019】
さらに本発明は、前記電界発光素子と電気信号を印加する駆動信号印加回路により構成されることを特徴とする表示装置である。
【0020】
【発明の実施の形態】
発光層が、キャリア輸送性を有するホスト材料とりん光発光性のゲストの組成物からなる場合、3重項励起子状態からりん光発光遷移にいたる主な過程は、以下のいくつかの過程からなる。
1.発光層内での電子・ホールの輸送
2.ホストの励起子生成
3.ホスト分子間の励起エネルギー伝達
4.ホストからゲストへの励起エネルギー移動
5.ゲストの三重項励起子生成
6.ゲストの三重項励起子→基底状態時のりん光発光
上記それぞれの過程における所望のエネルギー移動や、発光はさまざまな失活過程との競争反応である。
【0021】
そこで、電界発光素子の発光効率を高めるためには、発光材料そのものの発光量子収率が大きいことは言うまでもない。しかしながら、ホストーホスト間、あるいはホストーゲスト間のエネルギー移動の効率も大きな問題となる。
【0022】
また、ホスト分子が励起子となる上記発光メカニズム以外に、ゲスト上で直接、電子とホールが再結合して、励起子を生成するメカニズムが考えられる。
【0023】
これらホスト分子が励起子となりゲストにエネルギー移動してゲストの励起子ができる場合を間接励起、ゲスト分子が直接励起される場合を直接励起と呼ぶ。直接励起と間接励起がどちらが起こっているかを実験的に判断するのは困難であるが、いずれにしてもこのどちらか、あるいは、2つの現象が混在した現象である。
【0024】
図3および4に本発明に用いられる金錯体の例をあげる。特に図4に示す配位化合物は、下記1)から4)に示されており、従来公知の材料である。またこれらは、室温の固体や溶液中で光励起によりよく発光する。これらは、粉末固体中でよく発光するが、それは、濃度消光に強く、かつ、金原子間の相互作用が関与して発光するためであることが知られている。一般の配位化合物、例えばイリジウム錯体などのりん光発光材料は、ホスト中への分散濃度が高くなると相対的に発光効率が低下するという濃度消光現象が発生する。
【0025】
しかしながら、金配位化合物の場合には、金−金相互作用が関与した発光を示すため、濃度を高くした場合においても、強い発光を示す。従って、有機EL素子に金配位化合物を用いる場合、金配位化合物を発光層に高濃度でドープするあるいは、発光層に金配位化合物を100%で用いても、濃度消光が発生しにくいため、他の錯体に比べて高い発光効率が可能になる。また、高濃度ドープが可能なため、濃度のばらつきが抑制でき、生産性が向上する。
【0026】
本発明に用いられる発光性の金配位化合物は、カウンターアニオンを有せず、錯体部分がイオン結合性の金属配位錯体ではなく、電気的に中性な無電荷の非イオン性金配位錯体である。例えば、りん光発光で有名なルテニウム−トリスビピリジン錯体は、ルテニウムが2価でビピリジンが0価のため、必ずカウンターアニオンを伴う。それらは、例えば、ClO4−やPF6−、BF4−であり、この錯体とカウンターアニオンとは、イオン結合で結ばれており、錯体自体はイオン性であり、プラス2価の電荷を有している。また、例えば、〔非特許文献3〕にあげれられているAu2(dppm)2はプラス2価のイオンであり、(SO3CF3−)なるカウンターアニオンを伴っている。本発明に用いられる、図3に掲載した化合物は、すべて以上のようなイオン性ではない非イオン性の金配位化合物である。
【0027】
図4にその他に考えられる新規な金配位錯体の例を示す。
なおこれらの合成方法については、下記文献に記載の方法を使用した。
1)例示化合物41と42は、Organometallics 1997,16,p3541
2)例示化合物43は、Inorg.Chem.,1995,34,p6330
3)例示化合物44と45は、J.Organomet.Chem.1994,484,p209
4)例示化合物46と47は、Inorg.Chem.,1999,38,p4616
以下実施例により、本発明の電界発光素子を詳細に説明する。
【0028】
(実施例1−3)
図4に示した化合物41を発光材料にして、素子を作成した。
【0029】
化合物の合成は、上記1)の文献記載の方法に従った。
【0030】
この化合物をトルエン溶液に溶かし、励起光340nmの紫外光を照射してフォトルミネッセンス(PL)特性を調べた。このときの発光スペクトルは、460nmに極大ピークを持つ青色発光が得られた。
【0031】
素子構成としては、図1(a)に示す有機層が2層の素子を使用した。
まず、1.1mm厚のガラス基板上に、厚さ100nmの透明導電膜ITOをスパッタ−法により成膜して、定法によりストライプ状にパターニングした。
【0032】
発光層13は、ホスト材料としてポリビニルカルバゾール(PVK)を用い、化合物41の混合物のクロロベンゼン溶液(固形分濃度1.2重量%)を調整し、1000回転/分の回転速度で、20秒間スピンコートして厚み90nmに膜形成した。
(ただし化合物41の比率が10重量%(実施例1)、同20%(実施例2)、同35重量%(実施例3))。
【0033】
その上に、電子輸送層12としてアルミキノリノール(Alq)を30nmの厚みに真空蒸着し、さらに金属電極層を、10−4Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着し、連続製膜した。
【0034】
これに下記の電極材料を連続成膜して、対向する電極面積が3mm2になるようにパターニングした。
【0035】
金属電極層1(15nm):AlLi合金(Li含有量1.8重量%)
金属電極層2(100nm):Al
これらにAlをマイナス、ITO側をプラスにしてDC電圧を印加して素子特性を評価した。それぞれの素子において、前記フォトルミネセンス(PL)発光(発光ピーク波長 460nm)とほぼ同じ位置に電界発光(EL)スペクトル(発光ピーク波長 463nm)が得られ、金錯体からの発光であることが確認された。
【0036】
12V印加時の発光輝度は、実施例1−3(発光層の発光材料の重量比10、20、35%)において、それぞれ、680cd/m2、660cd/m2、750cd/m2であり、低電圧で発光することが確認できた。
【0037】
また従来の素子に比較して、ホストに対する添加量が10%以上となる高濃度においても高い発光効率を有し、従来の化合物では濃度消光の現象が出現するような添加濃度領域であっても、本化合物の場合は良好な発光特性を有していることが明らかとなった。
【0038】
このことは製造工程中で、ゲスト分子の高濃度ドープが可能なことを示しおり、恭蒸着時の分散濃度が高くできるために、低濃度ドープ時に必要であったドープ密度制御が容易になる分、生産性が向上することになる。
【0039】
また素子の発光輝度の寿命を測定したところ、100cd/m2の初期輝度で100時間連続通電を行ったが、発光輝度の低下が数%程度であり、安定した発光寿命が得られた。
【0040】
(実施例4)
実施例1の有機層1を以下に変更する以外は、同様の実施例である。
【0041】
化合物の合成は、上記4)に従った。
【0042】
この発光層は、化合物47を100%状態で使用し、上記クロルベンゼン溶液に溶かして、スピンコート法によって厚み90nmに形成した。
【0043】
これらにAlをマイナス、ITO側をプラスにしてDC電圧を印加して素子特性を評価した。前記フォトルミネッセンス(PL)発光とほぼ同じ位置にEL発光スペクトルが得られ、金錯体からの発光であることが確認された。
【0044】
また、素子の発光輝度を100cd/m2の初期輝度に設定し、100時間連続通電を行い、発光輝度の時間変化を測定した。このときの発光輝度の低下は数%程度であり、安定発光が得られた。これは従来の金属錯体を用いた場合よりも格段に良い値である。
【0045】
このように形成した有機EL素子は、従来公知の技術によって、素子周辺に素子を駆動するための駆動回路を配置し、さらに外部から駆動用の信号発生回路を配置することによって、所望の画像を表示することができる。
【0046】
本発明で示した高効率で安定な発光素子は、省エネルギーや高輝度が必要な製品に応用が可能である。応用例としては表示装置・照明装置やプリンターの光源、液晶表示装置のバックライトなどが考えられる。表示装置としては、省エネルギーや高視認性・軽量なフラットパネルディスプレイが可能となる。照明装置やバックライトに関しては、本発明による省エネルギー効果も合わせて期待できる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、金錯体を電界発光素子の発光材料として用いた本発明の電界発光素子は、発光効率が向上し、素子の発光寿命が延びた。また、本発明の金錯体および金錯体を含む電界発光素子は、高濃度でドーピングしても、濃度消光の問題がなく、従って、低濃度ドーピングに必要な厳密なドーピング濃度制御を要しない分、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機EL素子構成例を示す図。(a)発光層と電子輸送層の2層構成、(b)発光層と電子輸送層およびホール輸送層の3層構成、(c)さらに励起子拡散防止層が加わった4層構成の図を示す。
【図2】従来技術の金属錯体構成を持つ発光材料の説明図。
【図3】本発明の新規な金錯体の構造を示す図。
【図4】本発明で利用できる金錯体の構造を示す図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機化合物を用いた発光素子に関するものであり、さらに詳しくは、特定の金錯体を発光材料として用いることで、発光効率が高く、素子の発光寿命が長い電界発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、一般に電界発光素子、特に発光材料が有機物よりなる有機エレクトロルミネッセンス素子(以下有機EL素子という)に用いられている発光材料は、分子のエネルギー準位が一重項励起子状態から基底状態に遷移するときに発光する蛍光が利用されている。
【0003】
一方最近、励起三重項状態を経由したりん光発光を利用する電界発光素子の検討が、発光効率の向上が期待できるために盛んである。
【0004】
一般に、高効率のりん光発光する物質は、比較的原子量の大きな金属を中心金属に持つ化合物であることが多い。りん光発光は、励起三重項状態から基底一重項状態への遷移に伴う発光であり、一般にはこの遷移は禁制遷移であって、起こる確率が小さい。しかし、重原子金属を用いた金属配位化合物では、この禁制が「重原子効果」によって解かれ、遷移が許容され、強いりん光を発するもがある。
【0005】
その一例が白金錯体やイリジウム錯体を発光材料とした例である。代表的な化合物例を図2に示した。これらの化合物には、21、22に示す同種の配位子が配意した錯体と、23、24、25に示す異種配位子を伴う錯体がある。
【0006】
一方、金と硫黄原子の結合ユニットを含む金錯体、および金の複核錯体のルミネッセンス特性に関する文献がある。(例えば 非特許文献1、同2参照)。
【0007】
さらに、金錯体を用いたりん光発光素子の検討がなされている。(非特許文献3を参照)。
【0008】
【非特許文献1】
ジェニファー M.フォワード(Jennifer M.Forward)ほか、Luminescence Studies of Gold(I) Thiolate Complexes,Inorganic Chemistry,1995,34,6330−6336
【非特許文献2】
ウイリアム B.ジョーンズ(William B.Jones)ほか、Solid State EXAFS and Lumimescence Studies of Natural,Dinuclear Gold(I) Complexes.Gold(I)−Gold(I) Interractions in the Solid State,Inorg.Chem.1995,34,1996−2001
【非特許文献3】
ユーグアン マ(Yuguang Ma)ほか、High Luminescence Gold(I) and Cu(I) Complexes with a Triplet Excited State for Use inLight−Emitting Diodes,Adv.Mater.,1999,11,No10 p852
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の金属錯体化合物を発光材料として用いた有機EL素子は、高い発光効率は示すものの、一定の発光輝度で長時間通電していると素子の発光輝度が大きく低下してしまう現象が生じる。そのために素子の発光寿命を延ばす試みがなされている。
【0010】
また発光層の組成に関しても、ホスト材料中に一定量のゲスト材料を添加したところで発光輝度の最大値が現れ、それ以上添加しても発光輝度が上がらないという濃度消光という現象が起き、発光輝度を向上させるのに大きな障害になっている。そのためにより高濃度で使用できる材料が求められている。
【0011】
また、前記〔非特許文献3〕に示されている化合物(Au2(dppm)2)などは、化合物の錯体部分が電気的に陽イオンであり、無電荷の錯体ではないためにカウンターアニオンを伴ってイオン性の化合物となっている。このような種類の化合物の場合、化合物自体が電荷を内在するため、電界印加による発光中に有機物内の電流を阻害するなどの問題が生じ、低電圧での高輝度・高発光効率が望めない。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基板上に形成された一対の電極間に、少なくとも1層の発光層を配置した電界発光素子であって、前記発光層中に少なくとも1種の非イオン性の金錯体を含むことを特徴とする電界発光素子を提供することである。
【0013】
さらに本発明は、特に下記一般式(1)で示される部分構造式を有する錯体を含むことを特徴とする電界発光素子である。
【0014】
S−Au (1)
(但しここで、は金であり、Sは硫黄原子を示す。)
また本発明は、下記一般式(2)で示される部分構造式を有する金錯体を含むことを特徴とする電界発光素子である。
【0015】
【外1】
【0016】
[但し、Pはりん原子であり、またQは、同じまたは異なる構造の、置換基を有していても良い芳香環基、または炭素原子数が1から10の分岐していてもよいアルキル基を示す。上記置換基は、アルキル基、ハロゲン、芳香環基を示す。]さらに本発明は、前記一般式(1)で示される部分構造式を有する金錯体が、金原子を2つ以上含む複核金錯体であり、該複核金属配位化合物を含むことを特徴とする電界発光素子である。
【0017】
前記電界発光素子の発光層が前記一般式(1)または(2)で示される部分構造式を有する金錯体のみからなることを特徴とする電界発光素子。
【0018】
前記金錯体を含む有機化合物層が一対の電極に狭持され、該電極間に電圧を印加することにより発光し、また前記発光がりん光発光であることを特徴とする電界発光素子。
【0019】
さらに本発明は、前記電界発光素子と電気信号を印加する駆動信号印加回路により構成されることを特徴とする表示装置である。
【0020】
【発明の実施の形態】
発光層が、キャリア輸送性を有するホスト材料とりん光発光性のゲストの組成物からなる場合、3重項励起子状態からりん光発光遷移にいたる主な過程は、以下のいくつかの過程からなる。
1.発光層内での電子・ホールの輸送
2.ホストの励起子生成
3.ホスト分子間の励起エネルギー伝達
4.ホストからゲストへの励起エネルギー移動
5.ゲストの三重項励起子生成
6.ゲストの三重項励起子→基底状態時のりん光発光
上記それぞれの過程における所望のエネルギー移動や、発光はさまざまな失活過程との競争反応である。
【0021】
そこで、電界発光素子の発光効率を高めるためには、発光材料そのものの発光量子収率が大きいことは言うまでもない。しかしながら、ホストーホスト間、あるいはホストーゲスト間のエネルギー移動の効率も大きな問題となる。
【0022】
また、ホスト分子が励起子となる上記発光メカニズム以外に、ゲスト上で直接、電子とホールが再結合して、励起子を生成するメカニズムが考えられる。
【0023】
これらホスト分子が励起子となりゲストにエネルギー移動してゲストの励起子ができる場合を間接励起、ゲスト分子が直接励起される場合を直接励起と呼ぶ。直接励起と間接励起がどちらが起こっているかを実験的に判断するのは困難であるが、いずれにしてもこのどちらか、あるいは、2つの現象が混在した現象である。
【0024】
図3および4に本発明に用いられる金錯体の例をあげる。特に図4に示す配位化合物は、下記1)から4)に示されており、従来公知の材料である。またこれらは、室温の固体や溶液中で光励起によりよく発光する。これらは、粉末固体中でよく発光するが、それは、濃度消光に強く、かつ、金原子間の相互作用が関与して発光するためであることが知られている。一般の配位化合物、例えばイリジウム錯体などのりん光発光材料は、ホスト中への分散濃度が高くなると相対的に発光効率が低下するという濃度消光現象が発生する。
【0025】
しかしながら、金配位化合物の場合には、金−金相互作用が関与した発光を示すため、濃度を高くした場合においても、強い発光を示す。従って、有機EL素子に金配位化合物を用いる場合、金配位化合物を発光層に高濃度でドープするあるいは、発光層に金配位化合物を100%で用いても、濃度消光が発生しにくいため、他の錯体に比べて高い発光効率が可能になる。また、高濃度ドープが可能なため、濃度のばらつきが抑制でき、生産性が向上する。
【0026】
本発明に用いられる発光性の金配位化合物は、カウンターアニオンを有せず、錯体部分がイオン結合性の金属配位錯体ではなく、電気的に中性な無電荷の非イオン性金配位錯体である。例えば、りん光発光で有名なルテニウム−トリスビピリジン錯体は、ルテニウムが2価でビピリジンが0価のため、必ずカウンターアニオンを伴う。それらは、例えば、ClO4−やPF6−、BF4−であり、この錯体とカウンターアニオンとは、イオン結合で結ばれており、錯体自体はイオン性であり、プラス2価の電荷を有している。また、例えば、〔非特許文献3〕にあげれられているAu2(dppm)2はプラス2価のイオンであり、(SO3CF3−)なるカウンターアニオンを伴っている。本発明に用いられる、図3に掲載した化合物は、すべて以上のようなイオン性ではない非イオン性の金配位化合物である。
【0027】
図4にその他に考えられる新規な金配位錯体の例を示す。
なおこれらの合成方法については、下記文献に記載の方法を使用した。
1)例示化合物41と42は、Organometallics 1997,16,p3541
2)例示化合物43は、Inorg.Chem.,1995,34,p6330
3)例示化合物44と45は、J.Organomet.Chem.1994,484,p209
4)例示化合物46と47は、Inorg.Chem.,1999,38,p4616
以下実施例により、本発明の電界発光素子を詳細に説明する。
【0028】
(実施例1−3)
図4に示した化合物41を発光材料にして、素子を作成した。
【0029】
化合物の合成は、上記1)の文献記載の方法に従った。
【0030】
この化合物をトルエン溶液に溶かし、励起光340nmの紫外光を照射してフォトルミネッセンス(PL)特性を調べた。このときの発光スペクトルは、460nmに極大ピークを持つ青色発光が得られた。
【0031】
素子構成としては、図1(a)に示す有機層が2層の素子を使用した。
まず、1.1mm厚のガラス基板上に、厚さ100nmの透明導電膜ITOをスパッタ−法により成膜して、定法によりストライプ状にパターニングした。
【0032】
発光層13は、ホスト材料としてポリビニルカルバゾール(PVK)を用い、化合物41の混合物のクロロベンゼン溶液(固形分濃度1.2重量%)を調整し、1000回転/分の回転速度で、20秒間スピンコートして厚み90nmに膜形成した。
(ただし化合物41の比率が10重量%(実施例1)、同20%(実施例2)、同35重量%(実施例3))。
【0033】
その上に、電子輸送層12としてアルミキノリノール(Alq)を30nmの厚みに真空蒸着し、さらに金属電極層を、10−4Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着し、連続製膜した。
【0034】
これに下記の電極材料を連続成膜して、対向する電極面積が3mm2になるようにパターニングした。
【0035】
金属電極層1(15nm):AlLi合金(Li含有量1.8重量%)
金属電極層2(100nm):Al
これらにAlをマイナス、ITO側をプラスにしてDC電圧を印加して素子特性を評価した。それぞれの素子において、前記フォトルミネセンス(PL)発光(発光ピーク波長 460nm)とほぼ同じ位置に電界発光(EL)スペクトル(発光ピーク波長 463nm)が得られ、金錯体からの発光であることが確認された。
【0036】
12V印加時の発光輝度は、実施例1−3(発光層の発光材料の重量比10、20、35%)において、それぞれ、680cd/m2、660cd/m2、750cd/m2であり、低電圧で発光することが確認できた。
【0037】
また従来の素子に比較して、ホストに対する添加量が10%以上となる高濃度においても高い発光効率を有し、従来の化合物では濃度消光の現象が出現するような添加濃度領域であっても、本化合物の場合は良好な発光特性を有していることが明らかとなった。
【0038】
このことは製造工程中で、ゲスト分子の高濃度ドープが可能なことを示しおり、恭蒸着時の分散濃度が高くできるために、低濃度ドープ時に必要であったドープ密度制御が容易になる分、生産性が向上することになる。
【0039】
また素子の発光輝度の寿命を測定したところ、100cd/m2の初期輝度で100時間連続通電を行ったが、発光輝度の低下が数%程度であり、安定した発光寿命が得られた。
【0040】
(実施例4)
実施例1の有機層1を以下に変更する以外は、同様の実施例である。
【0041】
化合物の合成は、上記4)に従った。
【0042】
この発光層は、化合物47を100%状態で使用し、上記クロルベンゼン溶液に溶かして、スピンコート法によって厚み90nmに形成した。
【0043】
これらにAlをマイナス、ITO側をプラスにしてDC電圧を印加して素子特性を評価した。前記フォトルミネッセンス(PL)発光とほぼ同じ位置にEL発光スペクトルが得られ、金錯体からの発光であることが確認された。
【0044】
また、素子の発光輝度を100cd/m2の初期輝度に設定し、100時間連続通電を行い、発光輝度の時間変化を測定した。このときの発光輝度の低下は数%程度であり、安定発光が得られた。これは従来の金属錯体を用いた場合よりも格段に良い値である。
【0045】
このように形成した有機EL素子は、従来公知の技術によって、素子周辺に素子を駆動するための駆動回路を配置し、さらに外部から駆動用の信号発生回路を配置することによって、所望の画像を表示することができる。
【0046】
本発明で示した高効率で安定な発光素子は、省エネルギーや高輝度が必要な製品に応用が可能である。応用例としては表示装置・照明装置やプリンターの光源、液晶表示装置のバックライトなどが考えられる。表示装置としては、省エネルギーや高視認性・軽量なフラットパネルディスプレイが可能となる。照明装置やバックライトに関しては、本発明による省エネルギー効果も合わせて期待できる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、金錯体を電界発光素子の発光材料として用いた本発明の電界発光素子は、発光効率が向上し、素子の発光寿命が延びた。また、本発明の金錯体および金錯体を含む電界発光素子は、高濃度でドーピングしても、濃度消光の問題がなく、従って、低濃度ドーピングに必要な厳密なドーピング濃度制御を要しない分、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機EL素子構成例を示す図。(a)発光層と電子輸送層の2層構成、(b)発光層と電子輸送層およびホール輸送層の3層構成、(c)さらに励起子拡散防止層が加わった4層構成の図を示す。
【図2】従来技術の金属錯体構成を持つ発光材料の説明図。
【図3】本発明の新規な金錯体の構造を示す図。
【図4】本発明で利用できる金錯体の構造を示す図。
Claims (1)
- 基板上に形成された一対の電極間に、少なくとも1層の発光層を配置した電界発光素子であって、前記発光層中に少なくとも1種の非イオン性の金錯体を含むことを特徴とする電界発光素子。
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JP2002322721A JP2004158297A (ja) | 2002-11-06 | 2002-11-06 | 金属配位化合物を用いた電界発光素子 |
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JP2007016196A (ja) * | 2004-08-31 | 2007-01-25 | Showa Denko Kk | 発光体、それを用いた照明及び表示装置 |
JP2007053132A (ja) * | 2005-08-15 | 2007-03-01 | Fujifilm Corp | 有機電界発光素子 |
JP2011528172A (ja) * | 2008-07-17 | 2011-11-10 | メルク パテント ゲーエムベーハー | 光電子部材における使用のための錯体 |
-
2002
- 2002-11-06 JP JP2002322721A patent/JP2004158297A/ja not_active Withdrawn
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