JP2004156671A - 弁装置及びそれを用いたダンパー装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ノイズを発生しない弁装置及びそれを用いたダンパー装置を提供する。
【解決手段】本発明の弁装置においては、形状記憶合金からなる軸101への通電タイミングを制御することにより軸101及び弾性部材102が伸縮運動する。この伸縮運動に伴って、第1部材105a、第2部材105b及び第3部材105cが直線運動し、筒状回転部材107が回転する。筒状回転部材107は、2n個の貫通孔108を有し、貫通孔108と筒状部材109の2個の貫通孔110とが整合すると、弁装置内を流体が移動する。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の弁装置においては、形状記憶合金からなる軸101への通電タイミングを制御することにより軸101及び弾性部材102が伸縮運動する。この伸縮運動に伴って、第1部材105a、第2部材105b及び第3部材105cが直線運動し、筒状回転部材107が回転する。筒状回転部材107は、2n個の貫通孔108を有し、貫通孔108と筒状部材109の2個の貫通孔110とが整合すると、弁装置内を流体が移動する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体の流れを制御する弁装置及びそれを用いたダンパー装置の技術に関する。特に、宇宙開発の技術分野で利用される弁装置及びダンパー装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、圧縮空気やガス等の流体の流れを制御する弁装置(バルブ装置)として、電磁気力を利用した電磁弁が一般的に知られている。電磁弁は、ソレノイドコイル等を用いて電界及び磁界を生じさせ、そこに生じる電磁気力により弁体等の移動を制御するという機構に基づいて動作する。
【0003】
しかしながら、ソレノイドコイル等を用いて電界及び磁界を生じさせるに際し、ソレノイドコイルが高周波成分を電波として放射することも考えられ、ソレノイドコイル周辺の機器がノイズ等により誤動作することが懸念される。これに対しては電磁シールドを備える機構も考えうるが、シールド部材を設けることにより機構が複雑になり、小型化も困難となる問題が生じる。
【0004】
また、相応の電磁気力を発生させるにはソレノイドコイル自体の小型化も難しく、それに加えて、発生した電界及び磁界を電磁気力に変換するための機構も備える必要があるため、全体として電磁弁の小型化には限界があった。
【0005】
さらに、大きな電界及び磁界の発生には、それに比例して高電圧が必要であり、消費電力が大きくなることも問題であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前掲の問題点は、通常空間で動作する場合においては言うに及ばず、宇宙空間で動作する場合に特に顕著な問題となる。即ち、宇宙空間においては、宇宙船等への荷物の積載制限が厳しいため、小さな部品ひとつをみても極力小型化することが望ましい。また、精密な機器を密集させて積載するため、電波の放射等によるノイズに起因する誤動作が生じやすい環境とも言える。特に、宇宙空間という隔離された環境では機器のメンテナンスも困難であるため、ノイズ発生の抑制は重要である。
【0007】
上記事情の解決を図るため、本発明の目的は、ノイズを発生しない(換言すれば、他の機器へのノイズの影響を無視できる)弁装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ノイズを発生しない弁装置のさらなる小型化を図ることにある。
【0008】
また、本発明の目的は、本発明の弁装置を部品として組み込むことによりノイズを発生しないダンパー装置又は小型でノイズを発生しないダンパー装置を提供することにある。
【0009】
特に、本発明の他の目的は、宇宙開発の分野における利用に有用な弁装置及びそれを用いたダンパー装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の概略を説明すれば、以下の通りである。即ち、本発明は、一軸方向への運動を、その一軸方向を回転軸とする回転運動に変換する機構を備え、回転運動する回転体を流体の弁として用いる弁装置である。
【0011】
即ち、本発明の第1の発明は、軸と、弾性部材と、運動変換手段と、筒状回転部材と、筒状部材とを有する弁装置であって、前記軸は、前記弾性部材、前記運動変換手段、前記筒状回転部材及び前記筒状部材の中心を通る形状記憶合金であり、前記運動変換手段は、前記軸の伸縮運動を前記筒状回転部材の回転運動に変換する手段であり、前記筒状回転部材は、前記筒状部材に対向する面に、相対する2n(nは自然数)個の貫通孔を有する部材であり、前記筒状部材は、前記筒状回転部材に対向する面に、相対する2個の貫通孔を含む部材である弁装置である。
【0012】
第1の発明において、一軸方向への運動は、形状記憶合金からなる軸と弾性部材(コイルばね、ゴムその他の弾性体からなる部材)とを組み合わせた機構による伸縮運動である。即ち、形状記憶合金からなる軸に通電することでジュール熱を発生させ、軸を伸縮させる。このとき形状記憶合金の長さは、形状記憶合金の伸縮特性、必要なジュール熱及び許容される消費電力等を勘案して決定すれば良い。
【0013】
また、このとき形状記憶合金からなる軸と弾性部材との作用関係は、軸が縮む際に弾性部材が弾性に逆らって縮み、軸が縮みから解放されると弾性部材が原形に回復するような構成とする。なお、形状記憶合金からなる軸は、予め熱処理により一定の形状を記憶させることが可能であるが、本発明の実施にあたっては、縮んだ形状を記憶させておいても伸びた状態を記憶させておいても良い。
【0014】
運動変換手段は、形状記憶合金からなる軸の伸縮運動を、筒状回転部材の回転運動に変換する手段である。運動変換手段は、形状記憶合金からなる軸と一体となって一軸方向に直線運動する手段であり、筒状回転部材を回転させるという目的を達成するあらゆる構造を含む。典型的には、運動変換手段の一部と筒状回転部材の一部を噛み合わせて(又は嵌め合わせて)回転させる構造が挙げられる。
【0015】
筒状回転部材は、流体が流れるように内部が中空となった円筒形部材であり、その側面(部材を貫通して設けられた孔をいう。)外枠に当たる筒状部材に対向する面には相対する2n(nは自然数)個の貫通孔を有する。2n個の貫通孔は、それぞれ互いに形状記憶合金からなる軸を中心として線対称の位置に設けられている。
【0016】
筒状部材は、第1の発明である弁装置の外枠に当たる円筒形部材であり、筒状回転部材に対向する面には、相対する2個の貫通孔が設けられている。この2個の貫通孔も、筒状回転部材の貫通孔と同様に、それぞれ互いに形状記憶合金からなる軸を中心として線対称の位置に設けられている。
【0017】
そして、筒状回転部材の貫通孔と筒状部材の貫通孔が整合したときに弁装置は開状態(内部を流体が移動する状態)となり、整合していないときに閉状態(内部を流体が移動しない状態)となる。
【0018】
以上のように、第1の発明によれば、形状記憶合金からなる軸に対する通電のタイミングを制御するのみで軸の伸縮運動及び筒状回転部材の回転運動を制御でき、弁装置の開閉制御が可能となる。即ち、動作に際して形状記憶合金からなる軸へ直流電流を投入すれば良いので、高周波成分は無視することができ、他の機器に影響を及ぼすようなノイズの発生がない。また、伸縮運動をその軸周りの回転運動へ変換するのみであるため、棒状の弁装置とすることも可能であり、弁装置全体の小型化が容易である。
【0019】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記運動変換手段が前記筒状回転部材を介して配置された第1部材及び第2部材を含む手段であり、前記筒状回転部材が前記第1部材との噛み合いで生じる回転と前記第2部材との噛み合いで生じる回転との組み合わせにより回転する部材である弁装置である。
【0020】
第1部材と筒状回転部材とは、互いに噛み合うように加工された面を有し、その接触面は、所定の角度をもった斜面を有する。即ち、両者が接触する際、第1部材側の接触面の斜面に沿って筒状回転部材側の接触面が移動し、それに伴って筒状回転部材が回転するようになっている。この斜面は、平面であっても曲面であっても良いが、摩擦係数を小さくするためには曲面とするのが好ましい。
【0021】
本発明の第3の発明は、上記第1の発明又は第2の発明において、前記筒状回転部材が前記軸の1回の伸縮運動に連動して1/4n回転する部材である弁装置である。即ち、筒状回転部材は、筒状部材に対向する面に相対する2n(nは自然数)個の貫通孔を有するため、1回の伸縮運動に連動して1/4n回転すると2回の伸縮運動ごとに1回の割合で筒状回転部材の貫通孔と筒状部材の貫通孔とが整合する。
【0022】
本発明の第4の発明は、上記第1の発明において、前記運動変換手段が前記軸の伸縮運動に連動して往復運動する部材であり、前記筒状回転部材が前記往復運動する部材との噛み合いにより回転する部材である弁装置である。
【0023】
第4の発明によれば、通電時のみ弁装置が開状態となるようにすることが可能であるため、停電等の事故に対する安全性の面で有利である。また、運動変換手段の構造も簡易なもので済むため、部品点数を減らすこともできる。
【0024】
本発明の第5の発明は、上記第1の発明又は第4の発明において、前記筒状回転部材が前記軸の1回の伸縮運動に連動して1往復の回転運動をする部材である弁装置である。即ち、筒状回転部材は、軸の伸縮運動に連動して往復運動する部材の1回の運動(縮むか伸びるかどちらか一方の運動)に連動して回転し、その後、前記部材が元の位置に戻る運動に連動して前回の回転とは逆方向へ回転して元の位置に戻る。
【0025】
本発明の第6の発明は、上記第1の発明乃至第5の発明のいずれか一において、前記筒状回転部材に設けられた貫通孔と前記筒状部材に設けられた貫通孔とが整合した時に、流体が前記筒状回転部材の貫通孔を通過しうる弁装置である。
【0026】
以上に示した本発明の各弁装置は、流体の流れを制御する必要のある様々な装置の弁として用いることが可能である。
【0027】
本発明の第7の発明は、特に衝撃緩衝機器としてのダンパー装置(いわゆるショックアブソーバ)に上記弁装置を用いたものである。即ち、本発明の第7の発明は、弁装置と、前記弁装置を介して配置された複数の弾性容器と、前記弾性容器内に充填された流体とを有するダンパー装置であって、前記弁装置は、軸と、弾性部材と、運動変換手段と、筒状回転部材と、筒状部材とを有する弁装置であり、前記軸は、前記弾性部材、前記運動変換手段、前記筒状回転部材及び前記筒状部材の中心を通る形状記憶合金であり、前記運動変換手段は、前記軸の伸縮運動を前記筒状回転部材の回転運動に変換する手段であり、前記筒状回転部材は、前記筒状部材に対向する面に、相対する2n(nは自然数)個の貫通孔を有する部材であり、前記筒状部材は、前記筒状回転部材に対向する面に、相対する2個の貫通孔を含む部材であるダンパー装置である。
【0028】
第7の発明によれば、ダンパー装置の減衰比を弁装置で変更することができる。即ち、弁装置を開状態にすれば流体移動によりダンパー装置として機能し、弁装置を閉状態にすれば流体移動がないのでダンパー装置として機能しなくなる。従って、弁装置の形状記憶合金からなる軸への通電タイミングのみによりダンパー装置の機能を切り換えることが可能である。
【0029】
また、ノイズ発生のない弁装置を部品として組み込むことにより、周辺に配置される他の機器に対してノイズを発生しないダンパー装置を提供できる。また、さらに弁装置の小型化を図ることによりダンパー装置自体の小型化をも図ることができる。
【0030】
本発明の第8の発明は、上記第7の発明において、前記運動変換手段が前記筒状回転部材を介して配置された第1部材及び第2部材を含む手段であり、前記筒状回転部材が前記第1部材との噛み合いで生じる回転と前記第2部材との噛み合いで生じる回転との組み合わせにより回転する部材である弁装置である。
【0031】
本発明の第9の発明は、上記第7の発明又は第8の発明において、前記筒状回転部材が前記軸の1回の伸縮運動に連動して1/4n回転する部材である弁装置である。
【0032】
本発明の第10の発明は、上記第7の発明において、前記運動変換手段が前記軸の伸縮運動に連動して往復運動する部材であり、前記筒状回転部材が前記往復運動する部材との噛み合いにより回転する部材であるダンパー装置である。
【0033】
本発明の第11の発明は、上記第7の発明又は第10の発明において、前記筒状回転部材が前記軸の1回の伸縮運動に連動して1往復の回転運動をする部材であるダンパー装置である。
【0034】
本発明の第12の発明は、上記第7の発明乃至第11の発明のいずれか一において、前記筒状回転部材に設けられた貫通孔と前記筒状部材に設けられた貫通孔とが整合した時に、流体が前記筒状回転部材の貫通孔を通過しうるダンパー装置である。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、本発明は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、本実施の形態の記載内容に限定して解釈すべきではない。なお、実施の形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付するものとする。
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態は、運動変換手段として筒状回転部材を介して配置された二つの部材による噛み合わせを用いた弁装置である。説明には図1〜7を用いる。ここで図1〜図6の図面は、各構成部品の位置関係を説明するためのものであり、図7の図面は、運動変換手段と筒状回転部材の作用関係について説明するためのものである。
【0037】
まず、図1について説明する。図1(A)は、本実施の形態1の弁装置の全体図を示しており、図1(B)は、図1(A)を中心を含む面で切った断面図を示している。なお、図1においては、弁装置の開状態を示している。
【0038】
図1に示す弁装置は、形状記憶合金からなる軸101、コイルばね102、固定部材103a及び103b、止め具104a及び104b、第1部材105a、第2部材105b、第3部材105c、ナット106、筒状回転部材107、貫通孔108、筒状部材109、貫通孔110並びに接続手段111を有する。図1に示す弁装置の各構成部分について、図2〜6を用いて以下に説明する。
【0039】
図2は、第1部材105a、第2部材105b及び筒状回転部材107の構成と位置関係について示している。なお、第1部材105a、第2部材105b及び筒状回転部材107は、それぞれ中空構造となっている。
【0040】
筒状回転部材107は、第1部材105aに接する面(以下、第1接触面という。)201が4n(nは自然数)個の凸部21を有し、第2部材105bに接する面(以下、第2接触面という。)202が4n(nは自然数)個の頂点を含む起伏を有する。また、筒状回転部材107の側面においては、筒状部材109(図示せず)に対向する面に相対するように2n(nは自然数)個の貫通孔108が設けられている。なお、本実施の形態1ではn=1の場合について図示するが、この数に限定する必要はない。
【0041】
また、第1部材105aは、筒状回転部材107に接する面203に凸部21と同一形状の凹部23を有する。また、第2部材105bは、筒状回転部材107に接する面204に第2接触面202と同一形状の起伏を有する。
【0042】
図3は、図2に対し、さらに第3部材105cを設けた状態を示している。本実施の形態1においては、図3に示す構成が運動変換手段に相当する。
【0043】
第3部材105cは、第1部材105a、第2部材105b及び筒状回転部材107の中心に設けられ、第1部材105aと第3部材105cは、ナット106により一体化されている。また、第3部材105cは、第2部材105bとも連結され、第1部材105a、第2部材105b及び第3部材105cが一体となる。また、第3部材105cの中心には、軸101を通すための穴205が設けられている。
【0044】
図4は、図3に対し、さらに形状記憶合金からなる軸101、コイルばね102、固定部材103a並びに止め具104a及び104bを設けた状態を示している。なお、本実施の形態1では弾性部材としてコイルばねを用いた例を示しているが、ゴム等の弾性部材を用いても良い。
【0045】
軸101は、第3部材105c、コイルばね102等の中心を通して設けられ、両端が止め具104a及び104bによって固定されている。固定部材103aが完全に固定になるため、固定部材103a及び止め具104aが固定端として機能する。また、軸101は、止め具104bによって第3部材105cと一体化されるため、結果として図3に示した運動変換手段のすべてが軸101の伸縮に連動して直線運動することになる。
【0046】
また、コイルばね102は、ナット106と固定部材103aとの間に設けられ、その弾性力により第1部材105a、第2部材105b及び第3部材105cを下方に押し下げている。なお、固定部材103aにはネジ切り加工がなされてあり、後に筒状部材(図示せず)に対してネジ止めができるようになっている。
【0047】
図5は、図4に対し、さらに筒状部材109を設けた状態を示している。なお、図5(A)は、筒状部材109の本体を示し、図5(B)は、筒状部材109を図4に示した構成に組み合わせた状態を示している。
【0048】
図5(A)に示す筒状部材109は、中空となっており、内部に図4に示した構成が収まるようになっている。また、側面においては、筒状回転部材107に対向する面に相対するように2個の貫通孔110が設けられている。また、筒状部材109の両端にはネジ切り加工がなされ、固定部材103a及び固定部材103b(図示せず)をネジ止めできるようにしてある。さらに、筒状部材109の内壁の一部に段差206が設けられている。この段差206は、図5(B)に示すように、筒状回転部材107の上方への移動を制限するための段差である。
【0049】
図6は、図5に対し、さらに固定部材103bを設けた状態を示している。なお、図6(A)は、固定部材103bの本体を示し、図6(B)は、固定部材103bを図5に示した構成に組み合わせた状態を示している。
【0050】
固定部材103bは、筒状回転部材107と第2部材105bとの接触部分を覆い隠すように設けられ、筒状回転部材107の下方への移動を制限する役割を果たしている。即ち、筒状回転部材107は、筒状部材109の段差206により上方への移動を制限され、固定部材103bにより下方への移動を制限されるため、その位置を変えることなく、回転のみを行うことになる。
【0051】
また、前述のように、固定部材103bと筒状部材109とは互いにネジ切り加工されてネジ止めができるようになっている。
【0052】
また、固定部材103bの内部には、接続手段111が設けられている。接続手段111は、止め具104bを介して形状記憶合金からなる軸101へと電流を供給するための接点として機能する。即ち、通電により軸101が縮むと止め具104bも図面上方へ移動してしまうため、ばね又は配線等により通電状態を維持できるようにするための手段である。なお、通電した直後に通電を止めてしまっても、残存した熱によって一定時間形状記憶効果を維持できる場合は、接続手段を省略することもできる。
【0053】
以上説明した構成からなる弁装置について、その動作説明を図7を用いて行う。なお、図7(A)〜(C)は、伸縮運動が回転運動へと変換される機構についての時間的変化を示している。また、必要に応じて図1〜6の説明で用いた符号を参照する。
【0054】
図7(A)は、軸101へ通電されていない状態であり、コイルばね102に押されてナット106、第1部材105a、第2部材105b、第3部材105cが一体となって図面下方に押し下げられている。また、このとき筒状回転部材107の第1接触面201に設けられた凸部21と第1部材105aの接触面203に設けられた凹部23は、互いに噛み合っている。
【0055】
一方、筒状回転部材107の第2接触面202と第2部材105bの接触面204は、互いに離れている。このとき、第2接触面202における起伏の頂点の位置と接触面204における起伏の頂点の位置は、若干ずれるようにしてある。この頂点の位置ずれは、後述する図7(C)の運動により意図的に形成されたものであり、次の図7(B)の運動、即ち、軸101の伸縮運動を筒状回転部材107の回転運動に変換させるために必要な構成である。具体的には、第2部材105bが図面上方に移動した際、第2接触面202と接触面204が、第2接触面202の頂点と接触面204の曲面を接点として接触するように位置決めをしてある。
【0056】
図7(B)は、軸101へ通電した状態であり、軸101が縮むのに伴ってナット106、第1部材105a、第2部材105b、第3部材105cが一体となって図面上方に引き上げられた結果、コイルばね102が圧縮されている。また、このとき筒状回転部材107の第2接触面202と第2部材105bの接触面204は、互いに噛み合っている。
【0057】
筒状回転部材107の第2接触面202と第2部材105bの接触面204が完全に噛み合うまでの間、筒状回転部材107は、矢印の方向に回転する。即ち、第2部材105bが図面上方に押し上げられるに伴って第2接触面202の頂点が接触面204の曲面に沿って移動する間、筒状回転部材107は回転することになる。この回転に伴い、貫通孔108は、破線で示された位置から実線で示された位置へと移動する。
【0058】
一方、筒状回転部材107の第1接触面201と第1部材105aの接触面203は、互いに離れることとなる。このとき凸部21の位置と凹部23の位置は、若干ずれるようになっている。両者の位置ずれは、次の図7(C)の運動、即ち、筒状回転部材107を若干回転させるために必要である。この若干の回転が、図7(A)で説明した第2部材105bと筒状回転部材107の位置決めのプロセスとなる。
【0059】
図7(C)は、再び軸101への通電を止めた状態であり、コイルばね102に押されてナット106、第1部材105a、第2部材105b、第3部材105cが一体となって図面下方に押し下げられている。また、このとき筒状回転部材107の第1接触面201に設けられた凸部21と第1部材105aの接触面203に設けられた凹部23は、互いに噛み合っている。
【0060】
筒状回転部材107の凸部21と第1部材105aの凹部23が完全に噛み合うまでの間、筒状回転部材107は、矢印の方向に若干回転する。即ち、第1部材105aが図面下方に押し下げられるに伴って凸部21の頂点が凹部23の曲面に沿って移動する間、筒状回転部材107は回転することになる。この若干の回転に伴い、貫通孔108は、破線で示された位置から実線で示された位置へと移動する。
【0061】
また同時に、第2接触面202における起伏の頂点も移動し、その位置と接触面204における起伏の頂点の位置がずれることとなる。図7(A)にて説明した若干のずれは、このような過程で形成される。即ち、第1部材105a及び第2部材105bは、筒状回転部材107と交互に噛み合わせが可能となるように、相補的に位置決めができるように設計される。
【0062】
以上の繰り返しにより、形状記憶合金からなる軸101の伸縮運動に連動して筒状回転部材107が一方向に向かって間欠的に回転する。即ち、本実施の形態1の弁装置は、筒状回転部材107が、第1部材105aとの噛み合いで生じる回転と第2部材105bとの噛み合いで生じる回転との組み合わせにより回転する。
【0063】
なお、1回の伸縮運動に連動して回転する筒状回転部材107の回転数(即ち、第1部材105aとの噛み合いで生じる回転と第2部材105bとの噛み合いで生じる回転との組み合わせによる回転数)は、1/4n(nは自然数)とするのが好ましい。弁装置が閉状態のときは、2n個の貫通孔のうち隣接する2個の貫通孔の中間点に筒状部材109の貫通孔が当たるようにしておくことが、弁装置としての安全性の観点から好ましいからである。回転数については、筒状回転部材107の第2接触面202の曲面の長さによって制御することができる。
【0064】
そして、筒状回転部材107の貫通孔108の位置が筒状部材109の貫通孔110の位置と整合したとき、流体が貫通孔110、貫通孔108及び筒状回転部材107の内部を通過して移動することになる。
【0065】
従って、軸101の伸縮運動を通電のタイミングを制御することにより弁装置の開閉動作を制御することができ、電波の放射等によるノイズの発生がない弁装置を得ることができる。また、伸縮運動をその軸周りの回転運動へ変換するのみであるため、棒状の弁装置とすることも可能であり、小型の弁装置を得ることができる。
【0066】
(実施の形態2)
本実施の形態2は、運動変換手段の構成を実施の形態1とは異なる構成とした弁装置である。説明は、図8を用いて行う。なお、運動変換手段以外の構成は、実施の形態1の弁装置と同じであるため、構成の異なる部分のみについて説明する。また、実施の形態1で説明したような設計変更は、実施の形態2においても可能である。
【0067】
図8(A)、(B)は、図7(A)〜(C)と同様に、伸縮運動が回転運動へと変換される機構についての時間的変化を示している。
【0068】
図8(A)は、軸101へ通電されていない状態であり、コイルばね102に押されてナット106、第1部材301a、第2部材301b、第3部材301cが一体となって図面下方に押し下げられている。このとき、本実施の形態2の特徴は、第3部材301cに対して垂直に棒状部材31が設けられている点である。
【0069】
また、本実施の形態2のさらなる特徴は、筒状回転部材302の内壁に溝(破線で経路のみ示す。)32が設けられており、前掲の棒状部材31と噛み合うような構成となっている。即ち、棒状部材31の先端部が、溝32の内面と接触しつつ図面下方に押し下げられる構成をとることになる。なお、本実施の形態2では、その深さが筒状回転部材302の外側面まで至らない溝を例に挙げたが、外側面まで至るような切り込みを筒状回転部材302に入れても良い。
【0070】
このとき、棒状部材31自体は第3部材301cが図面下方に押し下げられるに伴って直線的に移動するが、筒状回転部材302は回転体であるため、棒状部材31の先端の移動に伴って、相対的に矢印の方向に向かって回転する。この回転数は、溝32の距離で決まり、任意の値とすることができる。
【0071】
図8(B)は、軸101へ通電された状態であり、ナット106、第1部材301a、第2部材301b、第3部材301cが一体となって図面上方に押し上げられた結果、コイルばね102が圧縮されている。このとき、棒状部材31は第3部材301cが図面上方に押し上げられるに伴って直線的に移動し、筒状回転部材302は、棒状部材31の先端の移動に伴って相対的に矢印の方向に向かって回転する。
【0072】
以上のように、本実施の形態2の弁装置は、第1部材301a、第2部材301b、第3部材301c及び棒状部材31が一体となって運動変換手段として機能する。即ち、本実施の形態2の弁装置は、軸の伸縮運動に連動して往復運動する部材(棒状部材301が相当する。)を有し、筒状回転部材がその往復運動する部材と噛み合うことにより回転する。また、その動作原理からも明らかなように、筒状回転部材が、軸の1回の伸縮運動に連動して1往復の回転運動をする。
【0073】
そして、筒状回転部材302の貫通孔108の位置が筒状部材109(図示せず)の貫通孔110の位置と整合したとき、流体が貫通孔110、貫通孔108及び筒状回転部材107の内部を通過して移動することになる。
【0074】
従って、軸101の伸縮運動を通電のタイミングを制御することにより弁装置の開閉動作を制御することができ、電波の放射等によるノイズの発生がない弁装置を得ることができる。また、伸縮運動をその軸周りの回転運動へ変換するのみであるため、棒状の弁装置とすることも可能であり、小型の弁装置を得ることができる。
【0075】
(実施の形態3)
本実施の形態3は、本発明の弁装置を流体の流れを制御するための弁として組み込んだダンパー装置である。説明は、図9を用いて行う。なお、図9(A)は、弁装置が開状態となって流体が移動可能となった状態を示し、図9(B)は、弁装置が閉状態となって流体が移動不可能となった状態を示している。
【0076】
図9(A)に示すダンパー装置は、弁装置901、弾性容器902a及び902b並びに流体903を有する。弾性容器902a及び902bは、弁装置901を介して配置され、それぞれの内部には流体903が充填される。なお、本実施の形態3においては弾性容器の数を二つとしたが、この数に限定する必要はなく、さらに複数の弾性容器が備えられていても良い。
【0077】
弁装置901は、本発明の弁装置であり、具体的には実施の形態1または実施の形態2に示す弁装置を用いることができる。
【0078】
弾性容器902a及び902bは、圧力によって容積が変化する容器であれば足り、典型的には側壁がいわゆる蛇腹になっている容器が挙げられる。また、ピストンとシリンダーを組み合わせたポンプを弾性容器の代わりに備えても良い。即ち、圧力の働きによって流体を送る機能を有する容器であれば置換可能である。
【0079】
流体903は、振動吸収剤としての役割を果たすものであるから、液体を用いることが好ましい。流体903の粘度は、ダンパー装置の用途、使用環境(気圧、温度等)を勘案して決定すべきパラメータであるが、いずれを選択しても本実施の形態3に示すダンパー装置に用いることは可能である。なお、弁装置901に設けられる貫通孔(図1の貫通孔108、110に相当する。)の径は、粘度の大きさを考慮して設計することが望ましい。
【0080】
図9(A)に示す状態においては、弾性容器902a側から圧力(衝撃)がかかると、開状態の弁装置901を通過して流体903が弾性容器902bの方へ移動する。即ち、弾性容器902aの容積が減少し、弾性容器902bの容積が増加する際の流体903の粘性抵抗によって弾性容器902aに付加された衝撃が緩和される。
【0081】
一方、図9(B)に示す状態においては、弾性容器902a側から圧力(衝撃)がかかっても、閉状態の弁装置901を流体903は通過することができず、弾性容器902aの容積変化はない。即ち、ダンパーとしての衝撃緩衝効果はない。
【0082】
以上のように、本実施の形態3に示すダンパー装置は、弁装置901の開閉制御によってダンパーとしての機能の有無を切り換えることが可能である。勿論、弁装置901の開閉制御は、図1に示した形状記憶合金からなる軸101への通電のタイミングを制御するのみで可能であり、動作にあたって他の機器へ悪影響を与える恐れのあるノイズを発生しない。
【0083】
さらに、軸の伸縮運動をその軸周りの回転運動に変換するという簡易な構造の弁装置を備えることにより、ダンパー装置自体の小型化も図ることができる。
【0084】
【発明の効果】
本発明の弁装置は、形状記憶合金からなる軸への通電を制御するのみ電波の放射等によるノイズを発生させずに弁の開閉制御を可能とするものである。さらに、本発明の弁装置は、軸の伸縮運動をその軸周りの回転運動に変換することにより小型化されたものである。
【0085】
また、本発明のダンパー装置は、本発明の弁装置を部品として組み込むことによりノイズの発生が抑制され、周辺に配置される他の機器への悪影響を抑制することを可能とするものである。さらに、小型化された本発明の弁装置を組み込むことによりさらなる小型化を図ったものである。
【0086】
特に、本発明の弁装置及びダンパー装置は、宇宙開発の分野における利用において有用な価値を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1に係る弁装置の全体構成を示す図面である。
【図2】図1の弁装置の一部構成を示す図面である。
【図3】図1の弁装置の一部構成を示す図面である。
【図4】図1の弁装置の一部構成を示す図面である。
【図5】図1の弁装置の一部構成を示す図面である。
【図6】図1の弁装置の一部構成を示す図面である。
【図7】図1の弁装置の運動変換手段の運動を示す図面である。
【図8】実施の形態2に係る弁装置の運動変換手段の運動を示す図面である。
【図9】実施の形態3に係るダンパー装置の構成を示す図面である。
【符号の説明】
101・・・軸、102・・・コイルばね、103a,103b・・・固定部材、104a,104b・・・止め具、105a・・・第1部材、105b・・・第2部材、105c・・・第3部材、106・・・ナット、107・・・筒状回転部材、108,110・・・貫通孔、109・・・筒状部材、111・・・接続手段。
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体の流れを制御する弁装置及びそれを用いたダンパー装置の技術に関する。特に、宇宙開発の技術分野で利用される弁装置及びダンパー装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、圧縮空気やガス等の流体の流れを制御する弁装置(バルブ装置)として、電磁気力を利用した電磁弁が一般的に知られている。電磁弁は、ソレノイドコイル等を用いて電界及び磁界を生じさせ、そこに生じる電磁気力により弁体等の移動を制御するという機構に基づいて動作する。
【0003】
しかしながら、ソレノイドコイル等を用いて電界及び磁界を生じさせるに際し、ソレノイドコイルが高周波成分を電波として放射することも考えられ、ソレノイドコイル周辺の機器がノイズ等により誤動作することが懸念される。これに対しては電磁シールドを備える機構も考えうるが、シールド部材を設けることにより機構が複雑になり、小型化も困難となる問題が生じる。
【0004】
また、相応の電磁気力を発生させるにはソレノイドコイル自体の小型化も難しく、それに加えて、発生した電界及び磁界を電磁気力に変換するための機構も備える必要があるため、全体として電磁弁の小型化には限界があった。
【0005】
さらに、大きな電界及び磁界の発生には、それに比例して高電圧が必要であり、消費電力が大きくなることも問題であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前掲の問題点は、通常空間で動作する場合においては言うに及ばず、宇宙空間で動作する場合に特に顕著な問題となる。即ち、宇宙空間においては、宇宙船等への荷物の積載制限が厳しいため、小さな部品ひとつをみても極力小型化することが望ましい。また、精密な機器を密集させて積載するため、電波の放射等によるノイズに起因する誤動作が生じやすい環境とも言える。特に、宇宙空間という隔離された環境では機器のメンテナンスも困難であるため、ノイズ発生の抑制は重要である。
【0007】
上記事情の解決を図るため、本発明の目的は、ノイズを発生しない(換言すれば、他の機器へのノイズの影響を無視できる)弁装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ノイズを発生しない弁装置のさらなる小型化を図ることにある。
【0008】
また、本発明の目的は、本発明の弁装置を部品として組み込むことによりノイズを発生しないダンパー装置又は小型でノイズを発生しないダンパー装置を提供することにある。
【0009】
特に、本発明の他の目的は、宇宙開発の分野における利用に有用な弁装置及びそれを用いたダンパー装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の概略を説明すれば、以下の通りである。即ち、本発明は、一軸方向への運動を、その一軸方向を回転軸とする回転運動に変換する機構を備え、回転運動する回転体を流体の弁として用いる弁装置である。
【0011】
即ち、本発明の第1の発明は、軸と、弾性部材と、運動変換手段と、筒状回転部材と、筒状部材とを有する弁装置であって、前記軸は、前記弾性部材、前記運動変換手段、前記筒状回転部材及び前記筒状部材の中心を通る形状記憶合金であり、前記運動変換手段は、前記軸の伸縮運動を前記筒状回転部材の回転運動に変換する手段であり、前記筒状回転部材は、前記筒状部材に対向する面に、相対する2n(nは自然数)個の貫通孔を有する部材であり、前記筒状部材は、前記筒状回転部材に対向する面に、相対する2個の貫通孔を含む部材である弁装置である。
【0012】
第1の発明において、一軸方向への運動は、形状記憶合金からなる軸と弾性部材(コイルばね、ゴムその他の弾性体からなる部材)とを組み合わせた機構による伸縮運動である。即ち、形状記憶合金からなる軸に通電することでジュール熱を発生させ、軸を伸縮させる。このとき形状記憶合金の長さは、形状記憶合金の伸縮特性、必要なジュール熱及び許容される消費電力等を勘案して決定すれば良い。
【0013】
また、このとき形状記憶合金からなる軸と弾性部材との作用関係は、軸が縮む際に弾性部材が弾性に逆らって縮み、軸が縮みから解放されると弾性部材が原形に回復するような構成とする。なお、形状記憶合金からなる軸は、予め熱処理により一定の形状を記憶させることが可能であるが、本発明の実施にあたっては、縮んだ形状を記憶させておいても伸びた状態を記憶させておいても良い。
【0014】
運動変換手段は、形状記憶合金からなる軸の伸縮運動を、筒状回転部材の回転運動に変換する手段である。運動変換手段は、形状記憶合金からなる軸と一体となって一軸方向に直線運動する手段であり、筒状回転部材を回転させるという目的を達成するあらゆる構造を含む。典型的には、運動変換手段の一部と筒状回転部材の一部を噛み合わせて(又は嵌め合わせて)回転させる構造が挙げられる。
【0015】
筒状回転部材は、流体が流れるように内部が中空となった円筒形部材であり、その側面(部材を貫通して設けられた孔をいう。)外枠に当たる筒状部材に対向する面には相対する2n(nは自然数)個の貫通孔を有する。2n個の貫通孔は、それぞれ互いに形状記憶合金からなる軸を中心として線対称の位置に設けられている。
【0016】
筒状部材は、第1の発明である弁装置の外枠に当たる円筒形部材であり、筒状回転部材に対向する面には、相対する2個の貫通孔が設けられている。この2個の貫通孔も、筒状回転部材の貫通孔と同様に、それぞれ互いに形状記憶合金からなる軸を中心として線対称の位置に設けられている。
【0017】
そして、筒状回転部材の貫通孔と筒状部材の貫通孔が整合したときに弁装置は開状態(内部を流体が移動する状態)となり、整合していないときに閉状態(内部を流体が移動しない状態)となる。
【0018】
以上のように、第1の発明によれば、形状記憶合金からなる軸に対する通電のタイミングを制御するのみで軸の伸縮運動及び筒状回転部材の回転運動を制御でき、弁装置の開閉制御が可能となる。即ち、動作に際して形状記憶合金からなる軸へ直流電流を投入すれば良いので、高周波成分は無視することができ、他の機器に影響を及ぼすようなノイズの発生がない。また、伸縮運動をその軸周りの回転運動へ変換するのみであるため、棒状の弁装置とすることも可能であり、弁装置全体の小型化が容易である。
【0019】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記運動変換手段が前記筒状回転部材を介して配置された第1部材及び第2部材を含む手段であり、前記筒状回転部材が前記第1部材との噛み合いで生じる回転と前記第2部材との噛み合いで生じる回転との組み合わせにより回転する部材である弁装置である。
【0020】
第1部材と筒状回転部材とは、互いに噛み合うように加工された面を有し、その接触面は、所定の角度をもった斜面を有する。即ち、両者が接触する際、第1部材側の接触面の斜面に沿って筒状回転部材側の接触面が移動し、それに伴って筒状回転部材が回転するようになっている。この斜面は、平面であっても曲面であっても良いが、摩擦係数を小さくするためには曲面とするのが好ましい。
【0021】
本発明の第3の発明は、上記第1の発明又は第2の発明において、前記筒状回転部材が前記軸の1回の伸縮運動に連動して1/4n回転する部材である弁装置である。即ち、筒状回転部材は、筒状部材に対向する面に相対する2n(nは自然数)個の貫通孔を有するため、1回の伸縮運動に連動して1/4n回転すると2回の伸縮運動ごとに1回の割合で筒状回転部材の貫通孔と筒状部材の貫通孔とが整合する。
【0022】
本発明の第4の発明は、上記第1の発明において、前記運動変換手段が前記軸の伸縮運動に連動して往復運動する部材であり、前記筒状回転部材が前記往復運動する部材との噛み合いにより回転する部材である弁装置である。
【0023】
第4の発明によれば、通電時のみ弁装置が開状態となるようにすることが可能であるため、停電等の事故に対する安全性の面で有利である。また、運動変換手段の構造も簡易なもので済むため、部品点数を減らすこともできる。
【0024】
本発明の第5の発明は、上記第1の発明又は第4の発明において、前記筒状回転部材が前記軸の1回の伸縮運動に連動して1往復の回転運動をする部材である弁装置である。即ち、筒状回転部材は、軸の伸縮運動に連動して往復運動する部材の1回の運動(縮むか伸びるかどちらか一方の運動)に連動して回転し、その後、前記部材が元の位置に戻る運動に連動して前回の回転とは逆方向へ回転して元の位置に戻る。
【0025】
本発明の第6の発明は、上記第1の発明乃至第5の発明のいずれか一において、前記筒状回転部材に設けられた貫通孔と前記筒状部材に設けられた貫通孔とが整合した時に、流体が前記筒状回転部材の貫通孔を通過しうる弁装置である。
【0026】
以上に示した本発明の各弁装置は、流体の流れを制御する必要のある様々な装置の弁として用いることが可能である。
【0027】
本発明の第7の発明は、特に衝撃緩衝機器としてのダンパー装置(いわゆるショックアブソーバ)に上記弁装置を用いたものである。即ち、本発明の第7の発明は、弁装置と、前記弁装置を介して配置された複数の弾性容器と、前記弾性容器内に充填された流体とを有するダンパー装置であって、前記弁装置は、軸と、弾性部材と、運動変換手段と、筒状回転部材と、筒状部材とを有する弁装置であり、前記軸は、前記弾性部材、前記運動変換手段、前記筒状回転部材及び前記筒状部材の中心を通る形状記憶合金であり、前記運動変換手段は、前記軸の伸縮運動を前記筒状回転部材の回転運動に変換する手段であり、前記筒状回転部材は、前記筒状部材に対向する面に、相対する2n(nは自然数)個の貫通孔を有する部材であり、前記筒状部材は、前記筒状回転部材に対向する面に、相対する2個の貫通孔を含む部材であるダンパー装置である。
【0028】
第7の発明によれば、ダンパー装置の減衰比を弁装置で変更することができる。即ち、弁装置を開状態にすれば流体移動によりダンパー装置として機能し、弁装置を閉状態にすれば流体移動がないのでダンパー装置として機能しなくなる。従って、弁装置の形状記憶合金からなる軸への通電タイミングのみによりダンパー装置の機能を切り換えることが可能である。
【0029】
また、ノイズ発生のない弁装置を部品として組み込むことにより、周辺に配置される他の機器に対してノイズを発生しないダンパー装置を提供できる。また、さらに弁装置の小型化を図ることによりダンパー装置自体の小型化をも図ることができる。
【0030】
本発明の第8の発明は、上記第7の発明において、前記運動変換手段が前記筒状回転部材を介して配置された第1部材及び第2部材を含む手段であり、前記筒状回転部材が前記第1部材との噛み合いで生じる回転と前記第2部材との噛み合いで生じる回転との組み合わせにより回転する部材である弁装置である。
【0031】
本発明の第9の発明は、上記第7の発明又は第8の発明において、前記筒状回転部材が前記軸の1回の伸縮運動に連動して1/4n回転する部材である弁装置である。
【0032】
本発明の第10の発明は、上記第7の発明において、前記運動変換手段が前記軸の伸縮運動に連動して往復運動する部材であり、前記筒状回転部材が前記往復運動する部材との噛み合いにより回転する部材であるダンパー装置である。
【0033】
本発明の第11の発明は、上記第7の発明又は第10の発明において、前記筒状回転部材が前記軸の1回の伸縮運動に連動して1往復の回転運動をする部材であるダンパー装置である。
【0034】
本発明の第12の発明は、上記第7の発明乃至第11の発明のいずれか一において、前記筒状回転部材に設けられた貫通孔と前記筒状部材に設けられた貫通孔とが整合した時に、流体が前記筒状回転部材の貫通孔を通過しうるダンパー装置である。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、本発明は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、本実施の形態の記載内容に限定して解釈すべきではない。なお、実施の形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付するものとする。
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態は、運動変換手段として筒状回転部材を介して配置された二つの部材による噛み合わせを用いた弁装置である。説明には図1〜7を用いる。ここで図1〜図6の図面は、各構成部品の位置関係を説明するためのものであり、図7の図面は、運動変換手段と筒状回転部材の作用関係について説明するためのものである。
【0037】
まず、図1について説明する。図1(A)は、本実施の形態1の弁装置の全体図を示しており、図1(B)は、図1(A)を中心を含む面で切った断面図を示している。なお、図1においては、弁装置の開状態を示している。
【0038】
図1に示す弁装置は、形状記憶合金からなる軸101、コイルばね102、固定部材103a及び103b、止め具104a及び104b、第1部材105a、第2部材105b、第3部材105c、ナット106、筒状回転部材107、貫通孔108、筒状部材109、貫通孔110並びに接続手段111を有する。図1に示す弁装置の各構成部分について、図2〜6を用いて以下に説明する。
【0039】
図2は、第1部材105a、第2部材105b及び筒状回転部材107の構成と位置関係について示している。なお、第1部材105a、第2部材105b及び筒状回転部材107は、それぞれ中空構造となっている。
【0040】
筒状回転部材107は、第1部材105aに接する面(以下、第1接触面という。)201が4n(nは自然数)個の凸部21を有し、第2部材105bに接する面(以下、第2接触面という。)202が4n(nは自然数)個の頂点を含む起伏を有する。また、筒状回転部材107の側面においては、筒状部材109(図示せず)に対向する面に相対するように2n(nは自然数)個の貫通孔108が設けられている。なお、本実施の形態1ではn=1の場合について図示するが、この数に限定する必要はない。
【0041】
また、第1部材105aは、筒状回転部材107に接する面203に凸部21と同一形状の凹部23を有する。また、第2部材105bは、筒状回転部材107に接する面204に第2接触面202と同一形状の起伏を有する。
【0042】
図3は、図2に対し、さらに第3部材105cを設けた状態を示している。本実施の形態1においては、図3に示す構成が運動変換手段に相当する。
【0043】
第3部材105cは、第1部材105a、第2部材105b及び筒状回転部材107の中心に設けられ、第1部材105aと第3部材105cは、ナット106により一体化されている。また、第3部材105cは、第2部材105bとも連結され、第1部材105a、第2部材105b及び第3部材105cが一体となる。また、第3部材105cの中心には、軸101を通すための穴205が設けられている。
【0044】
図4は、図3に対し、さらに形状記憶合金からなる軸101、コイルばね102、固定部材103a並びに止め具104a及び104bを設けた状態を示している。なお、本実施の形態1では弾性部材としてコイルばねを用いた例を示しているが、ゴム等の弾性部材を用いても良い。
【0045】
軸101は、第3部材105c、コイルばね102等の中心を通して設けられ、両端が止め具104a及び104bによって固定されている。固定部材103aが完全に固定になるため、固定部材103a及び止め具104aが固定端として機能する。また、軸101は、止め具104bによって第3部材105cと一体化されるため、結果として図3に示した運動変換手段のすべてが軸101の伸縮に連動して直線運動することになる。
【0046】
また、コイルばね102は、ナット106と固定部材103aとの間に設けられ、その弾性力により第1部材105a、第2部材105b及び第3部材105cを下方に押し下げている。なお、固定部材103aにはネジ切り加工がなされてあり、後に筒状部材(図示せず)に対してネジ止めができるようになっている。
【0047】
図5は、図4に対し、さらに筒状部材109を設けた状態を示している。なお、図5(A)は、筒状部材109の本体を示し、図5(B)は、筒状部材109を図4に示した構成に組み合わせた状態を示している。
【0048】
図5(A)に示す筒状部材109は、中空となっており、内部に図4に示した構成が収まるようになっている。また、側面においては、筒状回転部材107に対向する面に相対するように2個の貫通孔110が設けられている。また、筒状部材109の両端にはネジ切り加工がなされ、固定部材103a及び固定部材103b(図示せず)をネジ止めできるようにしてある。さらに、筒状部材109の内壁の一部に段差206が設けられている。この段差206は、図5(B)に示すように、筒状回転部材107の上方への移動を制限するための段差である。
【0049】
図6は、図5に対し、さらに固定部材103bを設けた状態を示している。なお、図6(A)は、固定部材103bの本体を示し、図6(B)は、固定部材103bを図5に示した構成に組み合わせた状態を示している。
【0050】
固定部材103bは、筒状回転部材107と第2部材105bとの接触部分を覆い隠すように設けられ、筒状回転部材107の下方への移動を制限する役割を果たしている。即ち、筒状回転部材107は、筒状部材109の段差206により上方への移動を制限され、固定部材103bにより下方への移動を制限されるため、その位置を変えることなく、回転のみを行うことになる。
【0051】
また、前述のように、固定部材103bと筒状部材109とは互いにネジ切り加工されてネジ止めができるようになっている。
【0052】
また、固定部材103bの内部には、接続手段111が設けられている。接続手段111は、止め具104bを介して形状記憶合金からなる軸101へと電流を供給するための接点として機能する。即ち、通電により軸101が縮むと止め具104bも図面上方へ移動してしまうため、ばね又は配線等により通電状態を維持できるようにするための手段である。なお、通電した直後に通電を止めてしまっても、残存した熱によって一定時間形状記憶効果を維持できる場合は、接続手段を省略することもできる。
【0053】
以上説明した構成からなる弁装置について、その動作説明を図7を用いて行う。なお、図7(A)〜(C)は、伸縮運動が回転運動へと変換される機構についての時間的変化を示している。また、必要に応じて図1〜6の説明で用いた符号を参照する。
【0054】
図7(A)は、軸101へ通電されていない状態であり、コイルばね102に押されてナット106、第1部材105a、第2部材105b、第3部材105cが一体となって図面下方に押し下げられている。また、このとき筒状回転部材107の第1接触面201に設けられた凸部21と第1部材105aの接触面203に設けられた凹部23は、互いに噛み合っている。
【0055】
一方、筒状回転部材107の第2接触面202と第2部材105bの接触面204は、互いに離れている。このとき、第2接触面202における起伏の頂点の位置と接触面204における起伏の頂点の位置は、若干ずれるようにしてある。この頂点の位置ずれは、後述する図7(C)の運動により意図的に形成されたものであり、次の図7(B)の運動、即ち、軸101の伸縮運動を筒状回転部材107の回転運動に変換させるために必要な構成である。具体的には、第2部材105bが図面上方に移動した際、第2接触面202と接触面204が、第2接触面202の頂点と接触面204の曲面を接点として接触するように位置決めをしてある。
【0056】
図7(B)は、軸101へ通電した状態であり、軸101が縮むのに伴ってナット106、第1部材105a、第2部材105b、第3部材105cが一体となって図面上方に引き上げられた結果、コイルばね102が圧縮されている。また、このとき筒状回転部材107の第2接触面202と第2部材105bの接触面204は、互いに噛み合っている。
【0057】
筒状回転部材107の第2接触面202と第2部材105bの接触面204が完全に噛み合うまでの間、筒状回転部材107は、矢印の方向に回転する。即ち、第2部材105bが図面上方に押し上げられるに伴って第2接触面202の頂点が接触面204の曲面に沿って移動する間、筒状回転部材107は回転することになる。この回転に伴い、貫通孔108は、破線で示された位置から実線で示された位置へと移動する。
【0058】
一方、筒状回転部材107の第1接触面201と第1部材105aの接触面203は、互いに離れることとなる。このとき凸部21の位置と凹部23の位置は、若干ずれるようになっている。両者の位置ずれは、次の図7(C)の運動、即ち、筒状回転部材107を若干回転させるために必要である。この若干の回転が、図7(A)で説明した第2部材105bと筒状回転部材107の位置決めのプロセスとなる。
【0059】
図7(C)は、再び軸101への通電を止めた状態であり、コイルばね102に押されてナット106、第1部材105a、第2部材105b、第3部材105cが一体となって図面下方に押し下げられている。また、このとき筒状回転部材107の第1接触面201に設けられた凸部21と第1部材105aの接触面203に設けられた凹部23は、互いに噛み合っている。
【0060】
筒状回転部材107の凸部21と第1部材105aの凹部23が完全に噛み合うまでの間、筒状回転部材107は、矢印の方向に若干回転する。即ち、第1部材105aが図面下方に押し下げられるに伴って凸部21の頂点が凹部23の曲面に沿って移動する間、筒状回転部材107は回転することになる。この若干の回転に伴い、貫通孔108は、破線で示された位置から実線で示された位置へと移動する。
【0061】
また同時に、第2接触面202における起伏の頂点も移動し、その位置と接触面204における起伏の頂点の位置がずれることとなる。図7(A)にて説明した若干のずれは、このような過程で形成される。即ち、第1部材105a及び第2部材105bは、筒状回転部材107と交互に噛み合わせが可能となるように、相補的に位置決めができるように設計される。
【0062】
以上の繰り返しにより、形状記憶合金からなる軸101の伸縮運動に連動して筒状回転部材107が一方向に向かって間欠的に回転する。即ち、本実施の形態1の弁装置は、筒状回転部材107が、第1部材105aとの噛み合いで生じる回転と第2部材105bとの噛み合いで生じる回転との組み合わせにより回転する。
【0063】
なお、1回の伸縮運動に連動して回転する筒状回転部材107の回転数(即ち、第1部材105aとの噛み合いで生じる回転と第2部材105bとの噛み合いで生じる回転との組み合わせによる回転数)は、1/4n(nは自然数)とするのが好ましい。弁装置が閉状態のときは、2n個の貫通孔のうち隣接する2個の貫通孔の中間点に筒状部材109の貫通孔が当たるようにしておくことが、弁装置としての安全性の観点から好ましいからである。回転数については、筒状回転部材107の第2接触面202の曲面の長さによって制御することができる。
【0064】
そして、筒状回転部材107の貫通孔108の位置が筒状部材109の貫通孔110の位置と整合したとき、流体が貫通孔110、貫通孔108及び筒状回転部材107の内部を通過して移動することになる。
【0065】
従って、軸101の伸縮運動を通電のタイミングを制御することにより弁装置の開閉動作を制御することができ、電波の放射等によるノイズの発生がない弁装置を得ることができる。また、伸縮運動をその軸周りの回転運動へ変換するのみであるため、棒状の弁装置とすることも可能であり、小型の弁装置を得ることができる。
【0066】
(実施の形態2)
本実施の形態2は、運動変換手段の構成を実施の形態1とは異なる構成とした弁装置である。説明は、図8を用いて行う。なお、運動変換手段以外の構成は、実施の形態1の弁装置と同じであるため、構成の異なる部分のみについて説明する。また、実施の形態1で説明したような設計変更は、実施の形態2においても可能である。
【0067】
図8(A)、(B)は、図7(A)〜(C)と同様に、伸縮運動が回転運動へと変換される機構についての時間的変化を示している。
【0068】
図8(A)は、軸101へ通電されていない状態であり、コイルばね102に押されてナット106、第1部材301a、第2部材301b、第3部材301cが一体となって図面下方に押し下げられている。このとき、本実施の形態2の特徴は、第3部材301cに対して垂直に棒状部材31が設けられている点である。
【0069】
また、本実施の形態2のさらなる特徴は、筒状回転部材302の内壁に溝(破線で経路のみ示す。)32が設けられており、前掲の棒状部材31と噛み合うような構成となっている。即ち、棒状部材31の先端部が、溝32の内面と接触しつつ図面下方に押し下げられる構成をとることになる。なお、本実施の形態2では、その深さが筒状回転部材302の外側面まで至らない溝を例に挙げたが、外側面まで至るような切り込みを筒状回転部材302に入れても良い。
【0070】
このとき、棒状部材31自体は第3部材301cが図面下方に押し下げられるに伴って直線的に移動するが、筒状回転部材302は回転体であるため、棒状部材31の先端の移動に伴って、相対的に矢印の方向に向かって回転する。この回転数は、溝32の距離で決まり、任意の値とすることができる。
【0071】
図8(B)は、軸101へ通電された状態であり、ナット106、第1部材301a、第2部材301b、第3部材301cが一体となって図面上方に押し上げられた結果、コイルばね102が圧縮されている。このとき、棒状部材31は第3部材301cが図面上方に押し上げられるに伴って直線的に移動し、筒状回転部材302は、棒状部材31の先端の移動に伴って相対的に矢印の方向に向かって回転する。
【0072】
以上のように、本実施の形態2の弁装置は、第1部材301a、第2部材301b、第3部材301c及び棒状部材31が一体となって運動変換手段として機能する。即ち、本実施の形態2の弁装置は、軸の伸縮運動に連動して往復運動する部材(棒状部材301が相当する。)を有し、筒状回転部材がその往復運動する部材と噛み合うことにより回転する。また、その動作原理からも明らかなように、筒状回転部材が、軸の1回の伸縮運動に連動して1往復の回転運動をする。
【0073】
そして、筒状回転部材302の貫通孔108の位置が筒状部材109(図示せず)の貫通孔110の位置と整合したとき、流体が貫通孔110、貫通孔108及び筒状回転部材107の内部を通過して移動することになる。
【0074】
従って、軸101の伸縮運動を通電のタイミングを制御することにより弁装置の開閉動作を制御することができ、電波の放射等によるノイズの発生がない弁装置を得ることができる。また、伸縮運動をその軸周りの回転運動へ変換するのみであるため、棒状の弁装置とすることも可能であり、小型の弁装置を得ることができる。
【0075】
(実施の形態3)
本実施の形態3は、本発明の弁装置を流体の流れを制御するための弁として組み込んだダンパー装置である。説明は、図9を用いて行う。なお、図9(A)は、弁装置が開状態となって流体が移動可能となった状態を示し、図9(B)は、弁装置が閉状態となって流体が移動不可能となった状態を示している。
【0076】
図9(A)に示すダンパー装置は、弁装置901、弾性容器902a及び902b並びに流体903を有する。弾性容器902a及び902bは、弁装置901を介して配置され、それぞれの内部には流体903が充填される。なお、本実施の形態3においては弾性容器の数を二つとしたが、この数に限定する必要はなく、さらに複数の弾性容器が備えられていても良い。
【0077】
弁装置901は、本発明の弁装置であり、具体的には実施の形態1または実施の形態2に示す弁装置を用いることができる。
【0078】
弾性容器902a及び902bは、圧力によって容積が変化する容器であれば足り、典型的には側壁がいわゆる蛇腹になっている容器が挙げられる。また、ピストンとシリンダーを組み合わせたポンプを弾性容器の代わりに備えても良い。即ち、圧力の働きによって流体を送る機能を有する容器であれば置換可能である。
【0079】
流体903は、振動吸収剤としての役割を果たすものであるから、液体を用いることが好ましい。流体903の粘度は、ダンパー装置の用途、使用環境(気圧、温度等)を勘案して決定すべきパラメータであるが、いずれを選択しても本実施の形態3に示すダンパー装置に用いることは可能である。なお、弁装置901に設けられる貫通孔(図1の貫通孔108、110に相当する。)の径は、粘度の大きさを考慮して設計することが望ましい。
【0080】
図9(A)に示す状態においては、弾性容器902a側から圧力(衝撃)がかかると、開状態の弁装置901を通過して流体903が弾性容器902bの方へ移動する。即ち、弾性容器902aの容積が減少し、弾性容器902bの容積が増加する際の流体903の粘性抵抗によって弾性容器902aに付加された衝撃が緩和される。
【0081】
一方、図9(B)に示す状態においては、弾性容器902a側から圧力(衝撃)がかかっても、閉状態の弁装置901を流体903は通過することができず、弾性容器902aの容積変化はない。即ち、ダンパーとしての衝撃緩衝効果はない。
【0082】
以上のように、本実施の形態3に示すダンパー装置は、弁装置901の開閉制御によってダンパーとしての機能の有無を切り換えることが可能である。勿論、弁装置901の開閉制御は、図1に示した形状記憶合金からなる軸101への通電のタイミングを制御するのみで可能であり、動作にあたって他の機器へ悪影響を与える恐れのあるノイズを発生しない。
【0083】
さらに、軸の伸縮運動をその軸周りの回転運動に変換するという簡易な構造の弁装置を備えることにより、ダンパー装置自体の小型化も図ることができる。
【0084】
【発明の効果】
本発明の弁装置は、形状記憶合金からなる軸への通電を制御するのみ電波の放射等によるノイズを発生させずに弁の開閉制御を可能とするものである。さらに、本発明の弁装置は、軸の伸縮運動をその軸周りの回転運動に変換することにより小型化されたものである。
【0085】
また、本発明のダンパー装置は、本発明の弁装置を部品として組み込むことによりノイズの発生が抑制され、周辺に配置される他の機器への悪影響を抑制することを可能とするものである。さらに、小型化された本発明の弁装置を組み込むことによりさらなる小型化を図ったものである。
【0086】
特に、本発明の弁装置及びダンパー装置は、宇宙開発の分野における利用において有用な価値を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1に係る弁装置の全体構成を示す図面である。
【図2】図1の弁装置の一部構成を示す図面である。
【図3】図1の弁装置の一部構成を示す図面である。
【図4】図1の弁装置の一部構成を示す図面である。
【図5】図1の弁装置の一部構成を示す図面である。
【図6】図1の弁装置の一部構成を示す図面である。
【図7】図1の弁装置の運動変換手段の運動を示す図面である。
【図8】実施の形態2に係る弁装置の運動変換手段の運動を示す図面である。
【図9】実施の形態3に係るダンパー装置の構成を示す図面である。
【符号の説明】
101・・・軸、102・・・コイルばね、103a,103b・・・固定部材、104a,104b・・・止め具、105a・・・第1部材、105b・・・第2部材、105c・・・第3部材、106・・・ナット、107・・・筒状回転部材、108,110・・・貫通孔、109・・・筒状部材、111・・・接続手段。
Claims (12)
- 軸と、弾性部材と、運動変換手段と、筒状回転部材と、筒状部材とを有する弁装置であって、
前記軸は、前記弾性部材、前記運動変換手段、前記筒状回転部材及び前記筒状部材の中心を通る形状記憶合金であり、
前記運動変換手段は、前記軸の伸縮運動を前記筒状回転部材の回転運動に変換する手段であり、
前記筒状回転部材は、前記筒状部材に対向する面に、相対する2n(nは自然数)個の貫通孔を有する部材であり、
前記筒状部材は、前記筒状回転部材に対向する面に、相対する2個の貫通孔を含む部材である弁装置。 - 前記運動変換手段は、前記筒状回転部材を介して配置された第1部材及び第2部材を含む手段であり、
前記筒状回転部材は、前記第1部材との噛み合いで生じる回転と前記第2部材との噛み合いで生じる回転との組み合わせにより回転する部材である請求項1に記載の弁装置。 - 前記筒状回転部材は、前記軸の1回の伸縮運動に連動して1/4n回転する部材である請求項1又は請求項2に記載の弁装置。
- 前記運動変換手段は、前記軸の伸縮運動に連動して往復運動する部材であり、
前記筒状回転部材は、前記往復運動する部材との噛み合いにより回転する部材である請求項1に記載の弁装置。 - 前記筒状回転部材は、前記軸の1回の伸縮運動に連動して1往復の回転運動をする部材である請求項1又は請求項4に記載の弁装置。
- 前記筒状回転部材に設けられた貫通孔と前記筒状部材に設けられた貫通孔とが整合した時に、流体が前記筒状回転部材の貫通孔を通過しうる請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の弁装置。
- 弁装置と、前記弁装置を介して配置された複数の弾性容器と、前記弾性容器内に充填された流体とを有するダンパー装置であって、
前記弁装置は、軸と、弾性部材と、運動変換手段と、筒状回転部材と、筒状部材とを有する弁装置であり、
前記軸は、前記弾性部材、前記運動変換手段、前記筒状回転部材及び前記筒状部材の中心を通る形状記憶合金であり、
前記運動変換手段は、前記軸の伸縮運動を前記筒状回転部材の回転運動に変換する手段であり、
前記筒状回転部材は、前記筒状部材に対向する面に、相対する2n(nは自然数)個の貫通孔を有する部材であり、
前記筒状部材は、前記筒状回転部材に対向する面に、相対する2個の貫通孔を含む部材であるダンパー装置。 - 前記運動変換手段は、前記筒状回転部材を介して配置された第1部材及び第2部材を含む手段であり、
前記筒状回転部材は、前記第1部材との噛み合いで生じる回転と前記第2部材との噛み合いで生じる回転との組み合わせにより回転する部材である請求項7に記載のダンパー装置。 - 前記筒状回転部材は、前記軸の1回の伸縮運動に連動して1/4n回転する部材である請求項7又は請求項8に記載のダンパー装置。
- 前記運動変換手段は、前記軸の伸縮運動に連動して往復運動する部材であり、前記筒状回転部材は、前記往復運動する部材との噛み合いにより回転する部材である請求項7に記載のダンパー装置。
- 前記筒状回転部材は、前記軸の1回の伸縮運動に連動して1往復の回転運動をする部材である請求項7又は請求項10に記載のダンパー装置。
- 前記筒状回転部材に設けられた貫通孔と前記筒状部材に設けられた貫通孔とが整合した時に、流体が前記筒状回転部材の貫通孔を通過しうる請求項7乃至請求項11のいずれか一項に記載のダンパー装置。
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JP2002321329A JP2004156671A (ja) | 2002-11-05 | 2002-11-05 | 弁装置及びそれを用いたダンパー装置 |
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JP (1) | JP2004156671A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US9212754B2 (en) | 2013-03-12 | 2015-12-15 | A. Raymond Et Cie | Shape memory alloy valve |
CN110319228A (zh) * | 2018-03-29 | 2019-10-11 | 四川农业大学 | 一种可变阻力一片式球阀 |
CN113745032A (zh) * | 2021-09-18 | 2021-12-03 | 中国空空导弹研究院 | 一种旋转驱动伸缩机构 |
-
2002
- 2002-11-05 JP JP2002321329A patent/JP2004156671A/ja active Pending
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