JP2004156186A - 特殊な絣糸の製造方法とその巻糸パッケージ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数の色の異なるパッケージや複数の糸種の異なるパッケージから少なくとも一本の糸を選択して、糸継をしながら連続的にパッケージに巻成する際に、織成後の紋柄を考慮して種々の色糸や糸種のそれぞれの糸長さを決定し巻成する構成とした。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、絣織物を織成するための絣糸の製造方法に関し、特に、複数の色の異なるパッケージや複数の糸種の異なるパッケージから巻成される特殊な絣糸の製造方法とその巻糸パッケージに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来柄付き織物には、既に染色した径糸と緯糸を使って織った先染物と、織ってから染色する後染物とに大別されるが、絹織物や毛織物では先染物が多く、高級品とされる絣柄、即ち、所々かすったような絣柄を織成した絣織物にあっては染色した糸を使って織り上げている。
【0003】
上記染色した糸を使って織り上げる絣織物において、その緯糸に絣柄を染付けする従来の方法としては、所定の図案に基づいて、先ず緯糸の染色する部分としない部分のものさしとなる種糸を作り、この種糸を使用して、緯糸の染色しない部分を綿糸などで括って防染した後、これを染液に浸染して染色する括り絣柄染付け方法がある。また、これとは反対に、染色する部分に染料をすり込む、いわゆるすり込み絣柄染付け方法があり、更に、型付けで絣模様を描く方法などがある。
【0004】
また、糸の長手方向に対して異なった色を有する少なくとも2種類の繊維から形成される異色部分がランダムに配置された、色彩豊かな捺染絣調紡績糸も知られている。(例えば、特許文献1参照)
【0005】
【特許文献1】
特開平8−291431号公報(第2−5頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような従来の絣柄染付け方法はすべて手作業で行われており、熟練者でも膨大な時間と労力を要する。また、染色する色数も2色から3色程度に限られ、多色絣柄やぼかし絣柄などの多様な絣柄付けをすることは不可能であった。
【0007】
また、色の異なる複数の繊維原料から紡績糸を製造したものでは、各色がランダムに配置された絣調の色彩を有する紡績糸が得られるが、所定の織成後の紋柄を表現するものではない。
【0008】
本発明の目的は、織成後の紋柄を考慮して種々の色糸や糸種が糸の長手方向に正しい糸長で連続して巻成される特殊な絣糸の製造方法とその巻糸パッケージを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために請求項1に係る発明は、複数の色の異なるパッケージや複数の糸種の異なるパッケージから少なくとも一本の糸を選択して、糸継をしながら連続的にパッケージに巻成する際に、織成後の紋柄を考慮して種々の色糸や糸種のそれぞれの糸長さを決定し巻成する特殊な絣糸の製造方法であることを特徴としている。
【0010】
上記の構成を有する請求項1に係る発明によれば、織成後の紋柄を正しく表現する色糸の配列と長さを有する絣糸を得ることができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、糸の長手方向に種々の色糸や糸種をそれぞれ所定長さに測長しながら連続的に巻成する巻糸パッケージであることを特徴としている。
【0012】
上記の構成を有する請求項2に係る発明によれば、各糸の長さを正しく測定しながらパッケージを巻成することで、所定の紋柄を有する織物や編物を製造することが可能となる巻糸パッケージを得ることができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、複数の色の異なるパッケージや複数の糸種の異なるパッケージから少なくとも一本の糸を選択装置により選択して、糸継装置により糸継すると共に、糸の測長と貯留を同時に行う糸測長貯留装置を経由して連続的に巻成することを特徴としている。
【0014】
上記の構成を有する請求項3に係る発明によれば、所望の色糸や糸種の配列と長さを有する巻糸パッケージを連続的に生産することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記糸測長貯留装置がパルスモータもしくは角度制御可能なサーボモータ等により回転駆動される貯留ドラムを備えていると共に、前記モータの回転数を制御することで糸の測長を行うことを特徴としている。
【0016】
上記の構成を有する請求項4に係る発明によれば、パルスモータや角度制御可能なサーボモータ等の回転数を制御することで微小単位の糸長さまで正確に制御することが可能となり、いろんな紋柄に対応した巻糸パッケージを得ることができる。
【0017】
請求項5に係る発明は、前記測長される所定長さが、織成後の紋柄を考慮して決定される種々の色糸や糸種のそれぞれの糸長さであることを特徴としている。
【0018】
上記の構成を有する請求項5に係る発明によれば、所定の紋柄を正しく表現する巻糸パッケージを得ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る特殊な絣糸の製造方法とその巻糸パッケージの実施の形態について、図1から図5に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明に係る絣糸の製造方法の一実施例を示す概略説明図である。図2は糸の選択装置を示す概略図である。図3は糸の選択装置の駆動手段を示す。図4は糸測長貯留装置を示す概略説明図である。図5は本発明に係る巻糸パッケージを示し、(a)は全体斜視図を示し、(b)は所定の糸長さ毎に糸継されて連続形成された糸の一例を示す。
【0021】
図1より本発明に係る絣糸の製造方法について説明する。クリール10に装着されたパッケージP1,P2,P3から糸Y1,Y2,Y3をそれぞれ引き出して張力付加部材11を挿通して糸の選択装置20、糸継装置12、糸測長貯留装置30を通り、第二の張力付加部材13を介して巻取ドラム14により巻糸パッケージPWを製造するところを示している。15は給糸パッケージPWを支持するクレードルである。
【0022】
パッケージP1,P2,P3は、それぞれ色や糸種の異なるパッケージであって、糸継装置12により糸継されながら連続的に糸測長貯留装置30に供給される。また、巻糸パッケージPWを形成するのに必要な色種・糸種のパッケージがクリール10に装着されるものであり、図示した3個に限定されず、6個もしくは12個装着されることもあって数量には制限がない。
【0023】
糸の選択装置20はパッケージP1,P2,P3毎に配設された糸ガイド21a,21b,21c(図3参照)をそれぞれ有していて、後述するように糸継装置12へ糸Yを案内する糸ガイド位置(図中21Aに相当)と、糸Yを吸引部材16へ案内する位置(図中21Bに相当)とに移動自在に制御される構成である。
【0024】
糸継装置12により糸Yの切断と糸継を行っており、糸の選択装置20により選択された糸が図2に示す案内ガイド26により糸継装置12方向へ案内されて糸継されるよう構成されている。この糸継装置12としては空気渦流により糸継するスプライサー装置でもよいし、糸結びを行うノッター装置でもよい。スプライサー装置を採用するかノッター装置を採用するかは、使用する糸種や求められる糸継形態によって選択される。
【0025】
図2、図3により糸の選択装置20について詳細に説明する。糸ガイド21として、糸Y1を案内する糸ガイド21aと、糸Y2を案内する糸ガイド21bと、糸Y3を案内する糸ガイド21c・・・とがそれぞれ配設されており、シリンダー27により揺動部材28を支点28aを回転中心として揺動することで、揺動部材28の他端部に配設された押上棒28bが糸ガイド21の後部ガイド板22Bに当接して糸ガイド21を揺動し、糸継装置12へ糸Yを案内する糸ガイド位置(図中21Aに相当)と糸Yを吸引部材16へ案内する位置(図中21Bに相当)とに移動自在に構成されている。
【0026】
糸ガイド21はボス部22を有しており、回転軸22Aの回りに回転自在に構成されている。ボス部22には後方に延設される後部ガイド板22Bが配設されていて、該後部ガイド板22Bに装着されるバネ部材23により糸ガイド21を糸継装置12へ糸Yを案内する糸ガイド位置(図中21Aに相当)方向に付勢するよう構成されている。
【0027】
吸引部材16に吸引されている糸Yは、糸保持ローラ17と糸保持板18により挟持されている。糸保持ローラ17は、外周面にウレタン等の弾性材が被覆されたローラ部材であり、糸保持板18は、シリンダー19により、前記糸保持ローラ17に当接・離反する構成である。
【0028】
糸の選別中に糸ガイド21が揺動しているときには、糸保持板18は糸保持ローラ17から離反しており、糸Yを吸引部材16が吸引可能としている。所定の糸が選択され所定の糸ガイド21が21Aに位置すると、シリンダー19により糸保持板18が糸保持ローラ17に当接されて、吸引部材16に吸引されている糸Yを保持するよう構成されている。
【0029】
後部ガイド板22Bはその後端部に切欠を形成し、係止片24が係止する構成であって、シリンダー27により押上棒28bを介して糸ガイド21を糸Yを吸引部材16へ案内する位置(図中21Bに相当)に押下げた時に、シリンダー25が係止片4を前記後部ガイド板22B後端部の切欠に係止させることで、糸ガイド21の位置を図中21Bの位置に固定するものである。係止片24は支点24Aを回転中心としてシリンダー25により回動自在に構成されている。
【0030】
糸の切換え方法は、先ずシリンダー27を少し伸ばして前記後部ガイド板22Bを持ち上げて係止片24との係合状態を解除する。次に、選択される糸種に相当するシリンダー25のみを駆動して係止片24を移動させることで、後部ガイド板22Bの位置に拘らずに係止片24が当接しない状態となる。その後、シリンダー27を縮めて糸ガイド21がバネ部材23により回動移動する状態とすると、前記選択された糸種に相当する係止片24のみが後部ガイド板22Bと係合しない位置にあるので、選択された糸種に相当する糸ガイド21が糸継装置12へ糸Yを案内する糸ガイド位置(図中21Aに相当)に移動して、その他の糸ガイド21は係止片4が後部ガイド板22Bに係合して図中21Bのガイド位置に停止する構成である。
【0031】
選択された糸ガイド21に挿通している糸は、その一端を吸引部材16に保持された状態であって、破線で示すYAとなっている。糸YAは、案内ガイド26を図中の矢印方向に旋回することで糸継装置12方向へ案内されて、それまでに巻糸パッケージPWに巻かれていた糸Yと糸継されて巻成開始するよう構成されている。
【0032】
この際に、選択される糸種は一つとは限定されず、二本の糸(例えば糸Y1とY2)を同時に選択して糸継する構成としてもよい。
【0033】
図4により糸測長貯留装置30について説明する。糸測長貯留装置30が駆動され巻成が開始されると、所定長さの糸長の糸Yが貯留ドラム33に貯留されることになる。装置本体31内部の中心軸に沿う糸通路32bを備える回転軸32がパルスモータ37(もしくは角度制御可能なサーボモータでもよい)により回転駆動される。パルスモータ37に配設されたプーリ36と駆動ベルト35を介して、回転軸32に装着されたプーリ34が回転駆動されることで、回転軸32が回転され、該回転軸32から分岐された巻付け管32aが貯留ドラム33の周囲を旋回する構成である。
【0034】
巻付け管32aを貯留ドラム33の周囲に回転駆動すると、回転軸32の中心軸部から巻付け管32aを貫通するように配設されている糸通路32bを挿通している糸Yは、糸の進行方向に僅かに縮径するテーパー状に形成された貯留ドラム33に巻回されて貯留される。巻付け管32aから出た糸Yは貯留ドラム33のテーパー部外径部に巻き付けられるので、そのテーパー部を滑るようにして僅かに縮径している前方に向かって移動する。巻付け管32aが回転しながら糸Yを貯留ドラム33に巻回していくと、前記糸滑り作用が連続して行われるので、貯留ドラムのテーパー部外径部の略全長に渡って、糸Yが螺旋状に整列した状態で貯留される構成である。
【0035】
選択される糸長さの制御は、図示していない制御装置によりパルスモータ37(もしくは角度制御可能なサーボモータ等)の回転角度を制御することで行う。そのために、微小寸法(1cm以下)の長さ制御が可能となる。織成後の紋柄を考慮して決定される制御プログラムにより回転駆動されるパルスモータ37の回転角度(織成後の紋柄を考慮して決定される糸長さに相当する)に連動して、巻付け管32aが所定角度回転するので、上記貯留ドラム33に巻回されて貯留される糸長は、正確に織成後の紋柄を形成する糸長に制御されている。貯留ドラム33に貯留される糸Yの存在は、光電センサ等の検知センサで行い、本実施例においては、先頭部検知センサ39aと後端部検知センサ39bとを配設した。
【0036】
糸Yの貯留ドラム33への巻付けを開始して、先頭部検知センサ39aが糸Yを検知すると、巻付け管32aの回転駆動を一時停止する構成とする。糸Yの貯留ドラム33への巻付けを停止して貯留を中断した状態で巻取動作を続行すると、貯留ドラム33から徐々に糸が減少していき、後端部検知センサ39b部で糸Yが消費されて検知しなくなるので、パルスモータ37を再駆動して糸測長貯留装置30による巻付けを再開する構成とする。巻付けを再開すると、巻回される糸Yが貯留ドラム33のテーパー状外径部を滑るようにして僅かに縮径している前方に向かって前進しながら巻付けられるので、再度貯留部全長に渡って貯留され先頭部検知センサ39aが糸Yを検知することになる。
【0037】
巻付け管32aを回転して糸Yを貯留する速度は、巻取ドラム14により巻糸パッケージPWとして巻き取られる速度よりも高速とした。これは巻取ドラム14の回転により巻き取られる糸Yの巻取速度と貯留速度との誤差を吸収すると共に、糸選択の時間と糸継の時間とを考慮したものであり、巻取速度よりも速く糸を貯留することで、糸の貯留を停止して、糸を選択し糸継を行う間をも、巻取動作を続行可能とした構成である。
【0038】
図5に巻糸パッケージPWを示す。該パッケージPWは、糸Y1,Y2,Y3・・・の各種の色糸が所定の順番に、所定の長さで巻き取られて一本の糸Yとして巻成されたパッケージである。そのために、図5(b)に示すように、長さL1の赤糸、長さL2の黄糸、長さL3の青糸、長さL4の黒糸等の色分布をした糸Yを得ることができる。また、配列は糸の色だけには限定されず、糸の太さ、構成本数(単糸、双糸、三子糸等)を替えた配列としてもよい。さらには糸種を替えて配列することもできる。
【0039】
本発明によれば、複数の色の異なるパッケージや複数の糸種の異なるパッケージから少なくとも一本の糸を選択して、糸継をしながら連続的にパッケージに巻成する際に、織成後の紋柄を考慮して種々の色糸や糸種のそれぞれの糸長さを決定し巻成することができるので、所望の紋柄を織成することを可能にする種々の色糸や糸種が糸の長手方向に正しい糸長で連続して巻成される特殊な絣糸を製造することができる。またそのための巻糸パッケージを容易に得ることができる。
【0040】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、織成後の紋柄を正しく表現する色糸の配列と長さを有する絣糸を得ることができる。
【0041】
請求項2に係る発明によれば、各糸の長さを正しく測定しながらパッケージを巻成することで、所定の紋柄を有する織物や編物を製造することが可能となる巻糸パッケージを得ることができる。
【0042】
請求項3に係る発明によれば、所望の色糸や糸種の配列と長さを有する巻糸パッケージを連続的に生産することができる。
【0043】
請求項4に係る発明によれば、パルスモータや角度制御可能なサーボモータ等の回転数を制御することで微小単位の糸長さまで正確に制御することが可能となり、いろんな紋柄に対応した巻糸パッケージを得ることができる。
【0044】
請求項5に係る発明によれば、所定の紋柄を正しく表現する巻糸パッケージを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る絣糸の製造方法の一実施例を示す概略説明図である。
【図2】糸の選択装置を示す概略図である。
【図3】糸の選択装置の駆動手段を示す。
【図4】糸測長貯留装置を示す概略説明図である。
【図5】本発明に係る巻糸パッケージを示し、(a)は全体斜視図を示し、(b)は所定の糸長さ毎に糸継されて連続形成された糸の一例を示す。
【符号の説明】
P パッケージ
PW 巻糸パッケージ
12 糸継装置
20 選択装置
30 糸測長貯留装置
33 貯留ドラム
37 パルスモータ
Claims (5)
- 複数の色の異なるパッケージや複数の糸種の異なるパッケージから少なくとも一本の糸を選択して、糸継をしながら連続的にパッケージに巻成する際に、織成後の紋柄を考慮して種々の色糸や糸種のそれぞれの糸長さを決定し巻成することを特徴とする特殊な絣糸の製造方法。
- 糸の長手方向に種々の色糸や糸種をそれぞれ所定長さに測長しながら連続的に巻成する巻糸パッケージ。
- 複数の色の異なるパッケージや複数の糸種の異なるパッケージから少なくとも一本の糸を選択装置により選択し、糸継装置により糸継すると共に、糸の測長と貯留を同時に行う糸測長貯留装置を経由して連続的に巻成することを特徴とする請求項2に記載の巻糸パッケージ。
- 前記糸測長貯留装置がパルスモータもしくは角度制御可能なサーボモータ等により回転駆動される貯留ドラムを備えていると共に、前記モータの回転数を制御することで糸の測長を行うことを特徴とする請求項3に記載の巻糸パッケージ。
- 前記測長される所定長さが、織成後の紋柄を考慮して決定される種々の色糸や糸種のそれぞれの糸長さであることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の巻糸パッケージ。
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