JP2004156117A - 耐摩耗性に優れたアルミニウム合金板材およびその製造方法 - Google Patents

耐摩耗性に優れたアルミニウム合金板材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来のCC法で得られた板材より耐摩耗性の優れる板材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】Fe 0.1〜2.0%およびSi 0.05〜2.0%を含有し、残部Alと不可避的不純物からなり、板材表面のFeおよびSiの合計値Tsと、板材厚さの1/4位置におけるFeおよびSiの合計値Toとの比Ts/Toが1.2以上であるアルミニウム合金板材。更にMn 0.01〜1.5%、Cr 0.01〜0.5%、Zr 0.01〜0.5%およびNi 0.01〜0.5%のうちの1種もしくは2種以上を含有できる。アルミニウム合金の溶湯を双ベルト式連続鋳造により板スラブとし、これを圧延してアルミニウム合金板材を製造する際に、双ベルトにより画定された鋳型壁を有する鋳型内で、生成した凝固シェルを一旦鋳型壁から離した後に、再度該鋳型壁に接触させることにより凝固を完了させて板スラブとし、これを面削せずに全圧下率95%以下で圧延する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス成形等により成形して自動車部材や一般産業用機械等として用いるのに適した、低廉で耐摩耗性に優れたアルミニウム合金板材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金は軽量で成形性が良好であることから、種々の部材に用いられている。しかもAlにSiやFe, 更にMnやCrなどを含有させることで優れた耐摩耗性を付与できるので用途は益々拡大している。
【0003】
このようなアルミニウム合金板材を得るには、CC法(連続鋳造法)およびDC法(半連続鋳造法)がある。CC法は溶湯から直接仕上圧延可能な厚み、例えば25mm厚以下の板スラブを得る方法であり、一般のDC法で不可欠な熱間粗圧延を省けるという特徴がある。
【0004】
CC法としては双ロール法や双ベルト法、ブロック法などが知られている。例えば、双ロール法は、一対のロールの間に溶湯を注入し板スラブを得る方法であるが、ロール間に注入された溶湯は、ロールからの強力な抜熱により非常に短い時間で凝固が完了し、合金元素が固溶乃至微細晶出物となる固溶タイプの板スラブとなることが知られている。また、双ベルト法、ブロック法においても冷却速度は双ロール法ほど大きくはないものの、ベルト間もしくはブロック間に注入された溶湯は、ベルトもしくはブロックからの強力な抜熱により短い時間で凝固が完了し板スラブとなる。
【0005】
前述のCC法の典型例として、双ロール法による製造方法の例は特許文献1に、製造装置の例は特許文献2にに示されているが、このような方法において耐摩耗性を向上させるには合金組成を工夫しなければならない。
【0006】
【特許文献1】
特開昭64−73043号公報(第3頁、特に左上欄から右上欄)
【特許文献2】
特開平7−68354号公報(第2頁、特に第1欄段落0002、図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
CC法における板スラブの冷却速度はDC法と比べると10〜1000倍以上であって、凝固は表面から内部に向かって急速に進行する。
【0008】
前記したように、板材に耐摩耗性を付与するにはSiやFe, 更にMnやCr等の元素を添加し、添加量を多くすれば耐摩耗性を高めることができる。しかし、CC法では板スラブが固溶タイプであることと中心部への偏析が大きいことで、添加元素量に相当する耐摩耗性が得られない。
【0009】
本発明は、従来のCC法で得られた板材より耐摩耗性の優れる板材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、耐摩耗性に寄与する合金元素の濃度をアルミニウム合金板材の表面において板材全体における合金元素の平均濃度よりも高くしたことにより、合金添加量を低減してコスト低減しつつ優れた耐摩耗性を確保できる。
【0011】
即ち第1の発明は、Fe 0.1〜2.0%およびSi 0.05〜2.0%を含有し、残部Alと不可避的不純物からなるアルミニウム合金板材であって、該板材表面のFeおよびSiの合計値Tsと、該板材厚さの1/4位置におけるFeおよびSiの合計値Toとの比Ts/Toが1.2以上であることを特徴とする耐摩耗性に優れたアルミニウム合金板材である。
【0012】
本明細書中、元素含有量(濃度)の表示単位「%」は、特に断らない限り「質量%」である。
【0013】
耐摩耗性向上元素を上記規定範囲で表面において濃化させることによって、添加した合金元素を耐摩耗性向上に対して有効に利用することができる。
【0014】
望ましくは、前記組成に更にMn 0.01〜1.5%、Cr 0.01〜0.5%、Zr 0.01〜0.5%およびNi 0.01〜0.5%のうちの1種もしくは2種以上を含有してなり、残部Alと不可避的不純物からなるアルミニウム合金板材であって、該板材表面のFe、Si、Mn、Cr、ZrおよびNiの合計値TUsと、該板材厚さの1/4位置におけるFe、Si、Mn、Cr、ZrおよびNiの合計値TUoとの比TUs/TUoが1.2以上である。
【0015】
これにより、板材表面に多種類の耐摩耗向上元素を共存させて、これら元素の相乗作用により板材の耐摩耗性を更に向上させることができる。
【0016】
また、前記アルミニウム合金に、更に鋳造結晶粒微細化剤を0.2%以下含有させることによって、厚い板スラブをCC鋳造等により鋳造速度を速くする場合に、より有効に鋳造割れ発生を防止できる。
【0017】
第2の発明は、上記いずれかの組成を有するアルミニウム合金の溶湯を双ベルト式連続鋳造により板スラブとし、該板スラブを圧延してアルミニウム合金板材を製造する方法であって、
双ベルトにより画定された鋳型壁を有する鋳型内で、生成した凝固シェルから一旦該鋳型壁を離した後に、再び接触させることにより凝固を完了させて板スラブとし、該板スラブを面削なしで圧延してアルミニウム合金板材とし、該圧延を全圧下率95%以下で行なうことを特徴とする耐摩耗性に優れたアルミニウム合金板材の製造方法である。
【0018】
前記板スラブとして凝固が終了する前に該可動鋳型面を該板スラブ表面から所定時間離して鋳造することによって、板スラブ表面の合金元素濃度を該板スラブ内部の合金元素濃度より高くでき、更に該板スラブを板材に至るまでの全圧下率を規制することによって、耐摩耗性の優れたアルミニウム合金板材を製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、アルミニウム合金の凝固の際の逆偏析を積極的に活用して、耐摩耗性向上に有用な合金元素を表面に濃化させ、少ない合金添加量で優れた耐摩耗性を実現する。
【0020】
通常、Al−Fe−Si系の如きアルミニウム合金溶湯が鋳型に注湯され鋳型壁に接触すると、状態図で説明されているように、初めにその溶湯組成より純度の高いα晶が晶出し、その晶出物を起点として近傍の溶湯組成より純度の高いα晶が晶出する。鋳型からの抜熱流に沿ってこのような凝固を連続的に繰り返すことによって、いわゆる樹枝状晶の発達したシェル(薄皮)を形成する。α晶の晶出に際しては合金元素は異物として晶出物からその一部が排出され、樹枝状晶間に集まるため、合金元素は表面から内部に行くほど傾斜的に順次濃度が高くなる。
【0021】
ところが、シェルがある程度成長した時点で、本発明により鋳型壁をシェルから一旦離すことによって鋳型からの抜熱を遮断すると、シェルより高温の溶湯に接触しているシェル内壁が再溶解する。その際、各樹枝状晶の間の部分は比較的シェルが薄いので、その部分ではシェル肉厚全体が再溶解する。ただし、個々の再溶解領域は樹枝状晶のサイズに対応した極めて微細な領域であり、マクロ的に見るとシェル表面に微細な再溶解領域が均等かつ緻密に分散した状態になり、シェル自体はその形状を維持している。
【0022】
この再溶解に伴い、その時点でシェル近傍の溶湯内に既に生成しているFe、Si、Mn、Cr、Zr、Ni等を含む晶出物が、樹枝状晶の間隙に沿って再溶解領域に流入する。その結果、再溶解領域ではこれら耐摩耗性向上元素が濃化する。
【0023】
この状態で、本発明により鋳型壁を再びシェルに接触させて、鋳型内での凝固を完了させて板スラブとすると、表面に耐摩耗性向上元素が濃化した板スラブが得られる。
【0024】
シェルから鋳型壁を離すことによる抜熱遮断の時間が長過ぎると、再溶解領域のサイズが大きくなり過ぎて、板スラブの表面不良や鋳造不能を引き起こす。したがって、鋳型壁をシェルから離し始める時点でのシェル厚さに対して適切な遮断時間を設定することにより、シェルの溶解潜熱と溶湯の顕熱がバランスして微細な再溶解領域がシェル表面に均等かつ緻密に分散した状態が得られる。
【0025】
このようにして得られた板スラブは、表面は再溶解・再凝固を経て合金濃化すなわち逆偏析した微細な領域が均等かつ緻密に分布しているため高い耐摩耗性を備えており、同時に、この逆偏析により内部は合金濃度が低下しているため高い成形性を備えており、その結果、板スラブおよびこれを圧延して得られる本発明の合金板材は表面の耐摩耗性と全体としての成形性とを兼備することになる。
【0026】
次に本発明における合金成分とその含有量の限定理由について述べる。
〔Fe0.1〜2.0%〕
Feは、Al−Fe系の金属間化合物の晶出により、またSiと共存したときにはAl−Fe−Si系の金属間化合物の晶出により、耐摩耗性を向上させる。その添加量を0.1〜2.0%と限定したのは、0.1%未満とすると原料コスト高になる上、晶出物として出てくる量が少ないため耐摩耗性の向上が小さく、一方、2.0%を超えると鋳造時に巨大な晶出物を生成し板スラブの圧延性および合金板材の成形性を著しく阻害するためである。
【0027】
Feが金属間化合物として晶出し、シェル表面の再溶解・再凝固領域に流入することによって表面に濃化(逆偏析)し、最終的な合金板材の耐摩耗性を向上させる。
〔Si0.05〜2.0%〕
Siは、単体のSiとして晶出し、またFeと共存したときにAl−Fe−Si系の金属間化合物として晶出し、耐摩耗性の向上に寄与する。Si量を0.05〜2.0%と限定したのは、0.05%未満とすると原料コスト高になるし、晶出物として出てくる量が少ないためその効果が小さく、2.0%を超えると流動性の低下により鋳造性が著しく低下し鋳造欠陥が増加するためである。
【0028】
Siが金属間化合物または単体として晶出し、シェル表面の再溶解・再凝固領域に流入することによって表面に濃化(逆偏析)し、最終的な合金板材の耐摩耗性を向上させる。
〔Mn 0.01〜1.5%、Cr 0.01〜0.5%、Zr 0.01〜0.5%、Ni 0.01〜0.5%のうちの1種もしくは2種以上〕
Mn、 Cr、Zr、Niは凝固時にFe、SiとともAl−(Fe,Mn,Cr,Ni)−Si系の金属間化合物、あるいは一部はAl−Mn系、Al−Cr系、Al−Zr系、Al−Ni系等の金属間化合物として晶出し耐摩耗性を向上させる。その添加量が下限値未満では耐摩耗性の向上が小さく、上限値を超えると鋳造時に巨大晶出物が生成し圧延時や成形時に割れが発生するためである。これらの元素の合計量は圧延性を考慮すると2.0%以下が好ましい。
〔鋳造結晶粒微細化剤を0.2%以下〕
鋳造組織微細化剤は、厚い板スラブをCC鋳造したり鋳造速度を速くするような場合に、鋳造割れの発生を防止できる。割れ防止にはTi またはTi およびBの0.2%以下の添加が好ましい。具体的にはTiの0.002〜0.2%、もしくはTiの0.002〜0.2%およびBの0.0002〜0.02%の含有により上記の効果が発揮される。上限値を超える含有は効果の向上が顕著でなく経済的でない。
〔不可避的不純物〕
前記した特定元素以外は不可避的不純物であって、本発明の効果を妨げない範囲で含有していてもよい。その許容される含有量が多いと返り材、その他の低価格材料を使用できて好ましいが、許容できる目安としては、上限値としMgおよびZn1.0%、V0.1%、Ga0.05%その他の元素各0.03%であることが好ましい。
【0029】
次に本発明に係る板材の製造方法について説明する。
【0030】
溶湯の溶製は組成調整後に脱ガス、鎮静、必要により組成の微調整を施し、必要により結晶粒微細化剤を炉内または樋中で添加し連続鋳造する。好ましくはフィルタ通過後可動鋳型に鋳造する。連続鋳造の方法は双ベルト法、双ロール法、ブロック鋳造法などがあるが、その方法は限定されるものでない。ここで可動鋳型に鋳造する溶湯温度は通常より20度程度高めの710℃以上とする。高めに設定するのは逆偏析を均等に生じさせるためであって、710℃より低い鋳造温度では、シェルを十分に溶解するには溶融金属の総熱量が不足し、そのため逆偏析層が板スラブ表面の全面ではなく局部的に偏在することになり、全体的に均一な耐摩耗性が得られ難くなるためである。上限は鋳造の安定性確保として760℃程度である。
【0031】
図1を参照して、本発明により板スラブを鋳造するための好ましい方法を説明図する。同図において、1は湯溜、2はノズル、3は可動鋳型(金属製ベルト)、5は電磁石、6はサンプ、7は板スラブである。
【0032】
図示していない溶解保持炉から前記のように溶製した溶湯を湯溜1に移湯し、該溶湯はノズル2を通って可動鋳型3、3間に注湯される。この可動鋳型3、3は具体的には金属製ベルトで鉄板、銅板等でできている。可動鋳型3、3は図示しない駆動力で矢印8の方向に回転されている。
【0033】
可動鋳型3、3間に注湯された溶湯12は、可動鋳型3、3の抜熱能によって直ちに凝固してシェル4、4を形成する。そして徐々にシェル厚さが増して凝固完了点13において凝固を完了し板スラブ7を形成する。6はシェル4、4に挟まれた溶湯すなわちサンプである。可動鋳型内に注湯された溶湯12は、鋳型に接触して直ちに凝固してシェル4を形成する。溶湯は鋳型から抜熱されシェル4、4が経時的に厚くなり、シェル厚さの成長は可動鋳型の抜熱能に依存する。シェル4、4面から可動鋳型3、3の面を離す最初の位置11は、可動鋳型3、3の溶湯注入口9よりサンプ長さL0の20〜50%のところが適当である。これによってシェル4、4は鋳型からの抜熱が絶たれ内部の溶湯の顕熱で溶解して再溶解領域10が形成され、樹枝状晶間から溶湯12がシェル4、4の外面に浸出し、表面における耐摩耗性が向上する。20%未満の位置ではシェル厚さが薄く溶湯が樹枝状晶間からではなくシェル4を溶解し吹き出てしまう虞があり、スラブ面が斑になり好ましくない。50%を超える位置ではサンプ6内溶湯の熱量が小さくシェルを溶解し難くなる。
【0034】
シェル4、4から可動鋳型3、3を離している距離L1は、サンプ長さL0の30〜70%の範囲が適当である。30%未満の長さではシェルを溶湯の顕熱で均一に溶解し、樹枝状晶間から浸出させ難い。尤も鋳造時の溶湯温度を更に高温にし760℃をはるかに超える温度として溶湯の熱量を高くすれば逆偏析を起こさせ易いが、鋳型の冷却、シェル面から可動鋳型の面を離す位置およびその長さ等の管理が困難となり鋳造が不安定になる。70%を超える長さではシェルを溶解し吹き出てしまう虞があり、スラブ面が斑になり好ましくない。
【0035】
なお、図1は説明図であるので樹枝状晶間から溶湯12がシェル4、4の外面に浸出する状況が粗大であるが、実際は稠密状態で浸出しているものと思われる。
【0036】
可動鋳型内の溶湯の凝固が完全に終了する前に可動鋳型をシェルから離す方法には、図1に示したように電磁石5、5を設けて、その電磁力によりシェルとは反対方向に可動鋳型3,3を途中で引っ張ってシェルから可動鋳型を引き離す方法がある。この場合シェル4、4面から可動鋳型3、3の面を離す最初の位置11に開始補助ローラ15、15を設け、終了位置17,17には終了補助ローラ16,16を設けて可動鋳型3、3の向きを制御すると、電磁石5,5の磁力に幅をもたせることができ、しかもシェル4、4から可動鋳型3、3を離している長さL1の管理がし易くなる利点がある。
【0037】
上記したような方法でシェル面から可動鋳型面を離しシェルを断熱するタイミングはどのような鋳型を使用するかによって夫々異なるが、双ベルト法は溶湯がベルトに接触してから2秒から20秒内に離すことで達成できる。ブロック法は溶湯がブロックに接触してから1秒から20秒以内に離すことで達成できる。シェルから浸出した晶出物を含む合金元素濃度の高い溶湯は前記したようにシェルの溶解潜熱と溶湯の顕熱のバランスしたところで凝固するが、シェルと可動鋳型の間隔L2が小さく、例えば数百μmの場合は、浸出溶湯が可動鋳型に接触して凝固し板スラブ面を形成することもある。
【0038】
このようにして得られた板スラブは表面を面削しないで圧延する。表面を面削しないで圧延するのは、耐摩耗性に寄与する表面の晶出物を含む合金元素濃度の高い部分を残すためである。冷間圧延の前または途中で焼鈍しても良いが、最終製品に至るまでのトータルの圧下率は95%以下とする。95%を超えて圧延した場合、製品表面の晶出物間に内部組織の合金元素濃度の低い部分が過剰に露出し、その結果表面の晶出物割合が低下し耐摩耗性が劣化するためである。
【0039】
【実施例】
本発明によりアルミニウム合金板材を製造した。表1に示される成分組成のアルミニウム合金溶湯を用いた。
【0040】
CC法として図1に示すような双ベルト鋳造装置を用いて鋳造した。鋳造厚は15mmとし、鋳造速度(スラブの引出し速度)は3m/minとした。鋳造に際し可動鋳型の溶湯注入口より20cm離れた位置から長さ20cmにわたり可動鋳型を約2mm内側に電磁力によりベルトを内側に引き込むことで、可動鋳型を板スラブ表面から引き離した。なお、このときのサンプ長さは50cmであった。鋳造された板スラブを面削することなく所定の圧下率まで圧延して合金板材とした。
【0041】
一方、比較として、前記の双ベルト法において可動鋳型を板スラブ表面から引き離さない方法およびDC法による鋳造方法によりアルミニウム合金板材を製造した。DC法による鋳造厚は406mmとし、鋳造された鋳塊は面削なし、530℃×4時間の均質化熱処理、熱間圧延および冷間圧延、また必要に応じて中間焼鈍の工程を経て所定の圧下率まで圧延した。鋳造条件を表2に示す。
【0042】
上記のように本発明および比較法により製造したアルミニウム合金板材について、図2に示したように厚さの1/4の位置におけるFeおよびSiの合計量に対する板材表面におけるFeおよびSiの合計量比(Ts/To)、または厚さの1/4の位置におけるFe、Si、Mn、Cr、Zr、Niの含有量に対する板表面におけるFe、Si、Mn、Cr、Zr、Niの含有量比(TUs/TUo)を調べた。合金元素含有量の分析はグロー放電型発光分析法によった。
【0043】
含有量比は板材表面のFeおよびSiの合計値をTsとし、該板材厚さの1/4位置におけるFeおよびSiの合計値をToとしたとき、合計値比はTs/Toで計算される値である。Mn、Cr、Zr、Niのうちの1種もしくは2種以上を含有させた場合の含有量比は同様に、板材表面のFe、Si、Mn、Cr、ZrおよびNiの合計値をTUsとし、該板材厚さの1/4位置におけるFe、Si、Mn、Cr、ZrおよびNiの合計値をTUoとしたとき、合計値比はTUs/ TUoで計算される値である。
【0044】
耐摩耗性を調べた。耐摩耗性は、フリクトロン式摩擦摩耗試験機を使用し、摩擦速度を0.139m/秒,摩擦距離を1000m,加圧荷重を100kg,相手材をSUJ2とし、シェルから可動鋳型を離さないCC法で得られた板材の摩耗量を1として各試料の摩耗量比を求めた。結果を表2に示す。
【0045】
なお、成形性をエリクセン試験機で評価したがシェルから可動鋳型を引き離さない従来法と比べて良好であった。
【0046】
表2の結果から、本発明例(試料番号2、3、4、9、10、11、15、16、17、21、22、23、27、28、29、33、4、35、39、40、41、45、46、47、51、52、53、57、58、59、63、64、65、69、70、71、75、76、77,81,82,83,87,88,89,93,94,95)は、表面において元素の合計量比が高く摩耗量が低くなり、耐摩耗性に優れていることが判る。またTi,Bの含有有無で耐磨耗性に顕在化するほどの差は見られないことが判る。Ti,Bの含有量の少ないもの(試料番号4,11,17,23,29,35,41,47,53,59,65,71,77,83,89,95,)は、スラブ厚さが厚くなく、鋳造速度も速くなかったので割れることなく鋳造することができた。
【0047】
一方、比較例として圧下率の高いもの(試料番号5、12、12、18、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90,96)は、シェルから可動鋳型を離したとしても元素合計量比低く、摩耗量大きく耐摩耗性に劣っていることが判る。
【0048】
比較例としてシェルから可動鋳型を離さないもの(試料番号6、13、19、25、31、37、43、49、55、61、67、73、79、85、91、97,101)は、圧下率が低くても元素合計量比が低く、摩耗量大きく耐摩耗性に劣っていることが判る。
【0049】
DC法によるもの(試料番号1、8、14、20、26、32、38、44、50、56、62、68、74、80、86、92、98)は圧下率が極端に大きく元素合計量比が1.00で摩耗量大きく、耐摩耗性に劣っていることが判る。
【0050】
比較例としてCC法で鋳造温度の低いもの(試料番号7)は、板スラブ面が均一でなく逆偏析層が偏在していて板材として不適当なものであった。
比較例としてCC法でFe含有量の低いものでシェルから可動鋳型を離したもの(試料番号99)は、元素合計量比が本発明の範囲に入るが、Fe含有量を低く抑えるためにコストが高くなる。
【0051】
比較例としてCC法でSi含有量が低く、かつシェルから可動鋳型を離さないもの(試料番号101)は、圧下率が低くても元素合計量比が低く、摩耗量大きく耐摩耗性が劣り、かつFe含有量を低く抑えるためにコストが高くなる。
【0052】
比較例としてCC法でSi含有量が低く、かつシェルから可動鋳型を離したもの(試料番号68)は、元素合計量比が本発明の範囲に入るがSi含有量を低く抑えるためにコストが高くなる。
【0053】
比較例としてCC法でFe含有量の高いもの(試料番号102)、Mn含有量の高いもの(試料番号103)、Zr含有量の高いもの(試料番号104)、Cr含有量の高いもの(試料番号105)、Ni含有量の高いもの(試料番号106)は、可動鋳型を離して鋳造はしたもののその後の圧延が割れ等の発生不良で各位置の測定ができなかった。
【0054】
比較例としてCC法で鋳造しSi含有量の高いもの(試料番号107)は、流動性が悪く大きな引けが生じて鋳造ができなっかた。
【0055】
【表1】
Figure 2004156117
【0056】
【表2】
Figure 2004156117
【0057】
【表3】
Figure 2004156117
【0058】
【表4】
Figure 2004156117
【0059】
【表5】
Figure 2004156117
【0060】
【表6】
Figure 2004156117
【0061】
【表7】
Figure 2004156117
【0062】
【表8】
Figure 2004156117
【0063】
【表9】
Figure 2004156117
【0064】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のアルミニウム合金板材は低コストで製造可能で、耐摩耗性に優れ、鋳造性、圧延性のいずれにおいても優れた特性を有する。また、板材内部の合金元素量は合金元素が表面に移動した分少ないので、表面および内部ともに合金元素濃度の高い板材に比較して成形性が良好である。そのため、得られたアルミニウム合金板は、ケース、摺動板、フィン、変速機部品、ハードディスクドライブ部品等として、優れた特性を示す材質として使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明によりアルミニウム合金を鋳造する装置を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明によるアルミニウム合金板材の表面および1/4厚さ部の分析位置を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1…湯溜
2…注湯ノズル
3…双ベルト式可動鋳型
4…凝固シェル
5…電磁石
6…サンプ(未凝固溶湯)
7…板スラブ
8…双ベルト回転方向
9…溶湯注入口
10…再溶解領域
11…シェルから鋳型を離し始める位置
12…溶湯
13…凝固完了点
15…鋳型を離し始める位置の補助ローラ
16…鋳型を再接触させる位置の補助ローラ
17…鋳型を再接触させる位置
…サンプ長さ
…鋳型を離している距離

Claims (4)

  1. Fe 0.1〜2.0%およびSi 0.05〜2.0%を含有し、残部Alと不可避的不純物からなるアルミニウム合金板材であって、該板材表面のFeおよびSiの合計値Tsと、該板材厚さの1/4位置におけるFeおよびSiの合計値Toとの比Ts/Toが1.2以上であることを特徴とする耐摩耗性に優れたアルミニウム合金板材。
  2. 更にMn 0.01〜1.5%、Cr 0.01〜0.5%、Zr 0.01〜0.5%およびNi 0.01〜0.5%のうちの1種もしくは2種以上を含有してなり、残部Alと不可避的不純物からなるアルミニウム合金板材であって、該板材表面のFe、Si、Mn、Cr、ZrおよびNiの合計値TUsと、該板材厚さの1/4位置におけるFe、Si、Mn、Cr、ZrおよびNiの合計値TUoとの比TUs/TUoが1.2以上であることを特徴とする請求項1記載の耐摩耗性に優れたアルミニウム合金板材。
  3. 前記アルミニウム合金板は、更に鋳造結晶粒微細化剤を0.2%以下含有していることを特徴とする請求項1または2記載の耐摩耗性に優れたアルミニウム合金板材。
  4. 請求項1から3までのいずれか1項に記載のアルミニウム合金の溶湯を双ベルト式連続鋳造により板スラブとし、該板スラブを圧延してアルミニウム合金板材を製造する方法であって、
    双ベルトにより画定された鋳型壁を有する鋳型内で、生成した凝固シェルを一旦該鋳型壁から離した後に、再度該鋳型壁に接触させることにより凝固を完了させて板スラブとし、該板スラブを面削なしで圧延してアルミニウム合金板材とし、該圧延を全圧下率95%以下で行なうことを特徴とする耐摩耗性に優れたアルミニウム合金板材の製造方法。
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