JP2004155618A - 酸化物系超伝導部材とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】酸化物系超伝導部材において、零磁場中及び磁場中での臨界温度及び臨界電流密度を高くする。
【解決手段】セラミックス材料または金属材料で構成された基材3上に酸化物系超伝導膜9を形成して酸化物系超伝導部材10を構成する。酸化物系超伝導膜9は、La、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された超伝導相1と、超伝導相1中に分散して形成され且つBa、Cu、Oの元素を含む材料で構成された非超伝導相2とを有する。
【選択図】 図1
【解決手段】セラミックス材料または金属材料で構成された基材3上に酸化物系超伝導膜9を形成して酸化物系超伝導部材10を構成する。酸化物系超伝導膜9は、La、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された超伝導相1と、超伝導相1中に分散して形成され且つBa、Cu、Oの元素を含む材料で構成された非超伝導相2とを有する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化物系超伝導部材とその製造方法に係り、特に液体窒素温度77K(ケルビン)以上で超伝導状態を示す酸化物系超伝導部材とその製造方法に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
1986年に、高い臨界温度を持つ酸化物系超伝導部材のLa−Ba−Cu−Oペロブスカイト構造系超伝導体が発見された。さらに翌年以降、液体窒素温度77Kを超える臨界温度Tc=90Kを有するY−Ba−Cu−O系(以下、Y系という)超伝導材料、臨界温度Tc=110KのBi−Sr−Ca−Cu−O系(以下、Bi系という)超伝導材料、臨界温度Tc=120KのTl−Ba−Ca−Cu−O系(以下、Tl系という)超伝導材料などが発見され、液体窒素を冷媒とする超伝導マグネットや超伝導デバイスなどの応用技術への発展が期待されるようになった。
【0003】
これらの酸化物系超伝導材料の一般的な製造方法は、その出発組成における金属の酸化物または炭酸塩などの原料粉末の混合、粉砕を繰り返し、空気中、酸素中あるいは還元雰囲気中において、800〜1000℃の温度で、数分〜数百時間の熱処理を施すことにより得られる。
【0004】
Bi系超伝導材料の製造方法に関しては、従来のNb−Tiなどの金属系超伝導材料と類似した極細多芯超伝導線形状の線材加工プロセスなども検討された。
【0005】
一方、Y系やTl系超伝導材料で極細多芯超伝導線形状とする超伝導線材では、超伝導特性、特に臨界電流密度が低くなってしまった。Y系に代表される酸化物系超伝導材料の結晶構造は複合層状ペロブスカイト型を有しており、それぞれ階層の異なる複数の構造を持ち、さらに異なる異方性を持つ。酸化物系超伝導体、特にY系やTl系の特徴として、その結晶構造に由来する導電性の大きな異方性があげられる。このため、結晶粒方向がミクロ的に乱雑な極細多芯超伝導線においては、導電面がつながらないため、零磁場での臨界電流密度が104A/cm2以下と低いものになってしまう。
【0006】
臨界電流密度は、超伝導材料とともに製作プロセスに大きく依存する。そこで、臨界電流密度を向上させるために、基板上の中間層の結晶方向をそろえて成長させる配向化などの方法や、基板の結晶方向をそろえてY系などの超伝導材料を膜として形成する方法が提案された(例えば特許文献1)。
【0007】
また、酸化物系超伝導材料の超伝導デバイスや超伝導マグネットなどへの応用を目的として、酸化物系超伝導材料中に、磁場の印加に伴う磁束線を止めるピニングセンターを導入して、磁場中での臨界電流密度を高める研究が行われた。ピニングセンターとして、Y系の場合ではY2Ba1Cu1Ox相の粒子を微細に分散する方法が報告されたが、超伝導膜には適応できなかった。これは、作製された膜で、超伝導電流が流れるのは超伝導部分のみであるので、非超伝導相であるピニングセンターの領域を増やしすぎると、かえって臨界電流密度が低下してしまうためである。
【0008】
そのような中で、Y系超伝導体を用いた薄膜において、Cu、O元素で構成される微細析出物がピニングセンターとして有効に働くことが確認された(非特許文献1)。
【0009】
さらに、基板上にY系酸化物系超伝導薄膜の結晶のc軸面が、基板の薄膜形成面と平行に配列した超伝導相内(c軸配向相)に、結晶のc軸面が基板の薄膜形成面と垂直に配列した超伝導相(a軸配向相)を微細に分散させて形成した超伝導材料において、磁場中での特性改善が確認された(特許文献2)。
【0010】
【特許文献1】
特開平5−279025号公報
【特許文献2】
特開平5−43229号公報
【非特許文献1】
H. Yamane et al. J. Appl. Phys., Vol.69, No.11, 1991 pp.7948−7950
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1のような方法では、零磁場での臨界電流密度を向上することができるが、磁場中での臨界電流密度の低下を抑制することができなかった。
【0012】
また、磁場中での臨界電流密度を高めるために非特許文献1のような方法が考えられたが、微細析出物からなる目的量のピニングセンターを基板上に形成された超伝導薄膜内の目的の位置に均一に分散することが難しく、磁場中での臨界電流密度の低下を十分に抑制することができなかった。
【0013】
さらに、磁場中での特性を改善するために特許文献2ような方法が考えられたが、Y系超伝導薄膜では、このようなピニングセンターとして効果のあるa軸配向相の上にc軸配向相を成長させることが薄膜成長プロセス上困難であり、厚膜化にともない臨界電流密度が下がることが懸念される。
【0014】
前記の従来技術においては、酸化物系超伝導部材を超伝導デバイスや超伝導マグネットなどに応用するため、超伝導材料の結晶を揃える配向化、薄膜化とともに、微細に分散した非超伝導相で構成されるピニングセンターの活用、さらに、より高い臨界温度を持つ酸化物系超伝導部材の材料組成の最適化、及びその製造方法の改善が必要である。
【0015】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、零磁場中及び磁場中での臨界温度及び臨界電流密度の高い酸化物系超伝導部材とその製造方法を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記目的を解決するために、本発明の第1の特徴は、セラミックス材料または金属材料で構成された基材上に酸化物系超伝導膜を形成してなる酸化物系超伝導部材において、前記酸化物系超伝導膜は、La、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された超伝導相と、前記超伝導相中に分散して形成され且つBa、Cu、Oの元素を含む材料で構成された非超伝導相とを有する構成としたものである。
【0017】
本発明の第2の特徴は、セラミックス材料または金属材料で構成された基材上に酸化物系超伝導膜を形成してなる酸化物系超伝導部材において、
前記酸化物系超伝導膜は、La、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された第1の超伝導相と、前記第1の超伝導相中に分散して形成され且つBa、Cu、Oの元素を含む材料で構成された非超伝導相と、前記第1の超伝導相中に分散して形成され且つ前記第1の超伝導相の結晶方向と異なる結晶方向を有する材料で構成された第2の超伝導相とを有する構成としたものである。
【0018】
本発明の第3の特徴は、セラミックス材料または金属材料で構成された基材上に酸化物系超伝導膜を形成してなる酸化物系超伝導部材において、
前記酸化物系超伝導膜は、結晶のc軸方向が基材面に垂直な方向に揃い且つLa、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された第1の超伝導相と、前記第1の超伝導相中に分散して形成され且つBa、Cu、Oの元素を含む材料で構成された非超伝導相と、前記第1の超伝導相中に分散して形成され且つ結晶のc軸方向が基材面に平行な方向に揃った第2の超伝導相とを有する構成としたものである。
【0019】
本発明の第4の特徴は、セラミックス材料または金属材料からなる基材上に酸化物系超伝導膜を形成する酸化物系超伝導部材の製造方法において、酸化物系超伝導相、前記酸化物系超伝導相よりも融点が低いBa、Cu、O組成で構成される酸化物材料、La、Ba、Cu、Oの元素で構成された超伝導材料、の順に堆積して前記酸化物系超伝導膜を形成することにある。
【0020】
本発明の第5の特徴は、セラミックス材料または金属材料からなる基材上に酸化物系超伝導膜を形成する酸化物系超伝導部材の製造方法において、La、Ba、Cu、Oの元素で構成された超伝導相、前記超伝導相中に析出したBa、Cu、O組成の非超伝導相で前記酸化物系超伝導膜を形成し、前記超伝導相よりも融点が低い前記Ba、Cu、O組成で構成される酸化物材料を用いて基材温度750度以上の雰囲気で成膜することにある。
【0021】
本発明の第6の特徴は、セラミックス材料または金属材料からなる基材上に酸化物系超伝導膜を形成する酸化物系超伝導部材の製造方法において、La、Ba、Cu、Oの元素で構成された超伝導相、前記超伝導相中に析出したBa、Cu、O組成の非超伝導相で前記酸化物系超伝導膜を形成し、前記超伝導相よりも融点が低い前記Ba、Cu、O組成で構成される酸化物材料を用いて、酸素分圧0.1Torr以上10Torr以下、基材温度750度以上の雰囲気で成膜することにある。
【0022】
なお、本発明のその他の手段は以下の記述から明らかにされる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、図及び表を用いて説明する。各実施形態の図における同一符号は同一物または相当物を示す。
【0024】
本発明の実施形態1を、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0025】
この実施形態1の酸化物系超伝導部材10は、図1に示すように、基材3と酸化物系超伝導膜9とを有して構成されている。基材3は超伝導体と格子定数の近い金属またはセラミックスで構成された金属基材またはセラミックス基材で構成されている。基材3は本実施形態では基板状部材で構成されている。酸化物系超伝導膜9は超伝導相1と超伝導相4と非超伝導相2とを有して構成され、基材3に形成されている。具体的には、酸化物系超伝導膜9は基材3の表面に超伝導相4を介して超伝導相1が形成されると共に、超伝導相1に非超伝導相2がほぼ均一に分散して形成されることにより構成される。
【0026】
超伝導相1は、c軸配向のLa、Ba、Cu、Oの元素で構成された酸化物系の超伝導相である。非超伝導相2は、超伝導相1中に分散して形成され且つBa、Cu、Oの元素で構成された酸化物系の非超伝導相である。超伝導相4は酸化物系の超伝導相である。
【0027】
係る酸化物系超伝導部材10によれば、酸化物系超伝導膜9は、La、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された酸化物系の超伝導相1と、この酸化物系超伝導相1中に分散して形成され且つBa、Cu、Oの元素を含む材料で構成された酸化物系の非超伝導相2とを有するので、磁場中での臨界温度及び臨界電流密度を高いものとすることができる。
【0028】
超伝導体と格子定数の近い金属またはセラミックスで構成された基材3は、例えば、セラミックス基材であればMgO、SrTiO3、LaAlO3、YSZ(イットリウム安定化ZrO2)などがあげられ、また金属基材であればNiやAg及びそれらの合金があげられる。さらには、それらを複合化したAg金属基材上にMgO材料を設けた複合基材も基材3として用いることができる。これらの基材3は、{100}面が金属及びセラミックスと超伝導体の界面に対して20度以内で平行であり、且つ金属結晶及びセラミックス結晶の<100>方向がお互いに20度以内で揃っており、これによって基材3上に作製した酸化物系超伝導膜9の臨界温度及び臨界電流密度などの超伝導特性を向上させることができる。
【0029】
酸化物系超伝導膜9の製造方法としては、レーザ蒸着法、スパッタ法などの物理蒸着法、有機金属化学気相蒸着法などの化学蒸着法などがあげられる。酸化物系超伝導膜9の製造方法の一例を、図2を参照しながら説明する。
【0030】
まず図2(a)に示すように、セラミックス材料または金属材料からなる基材3上に、種層となる酸化物系の超伝導相4を形成する。この状態で、図2(b)に示すように、Cu元素で構成される材料及びBa元素で構成される材料を供給することにより、Ba、Cu、O組成で構成される酸化物材料5を超伝導相4の上に堆積させる。この酸化物材料5は超伝導相4よりも融点が低い材料で構成されている。酸化物材料5を超伝導相4に堆積させるとき、酸化物材料5の融点よりも高い温度でかつ超伝導相4の融点よりも低い温度で体積させるようにしており、これにより酸化物材料5は液相で堆積される。
【0031】
さらに、図2(c)に示すように、La元素で構成される材料も供給することにより、液相の酸化物材料5を介して、La、Ba、Cu、Oの元素で構成された超伝導材料6を超伝導相4上に堆積させる。この際、図2(d)に示すように、Ba、Cu、O元素で構成される非超伝導相2が超伝導相1中に分散して析出され、これがピニングセンターとして有効に作用する。次いで、酸化物材料5を除去することにより、図1に示す酸化物系超伝導部材10が製造される。
【0032】
これらの製造方法において、超伝導相4、6よりも融点が低いBa、Cu、O組成で構成される酸化物材料5の成膜温度を750度以上とすることにより、超伝導体の特性をさらに向上することができる。また酸化物材料5の作製時の酸素分圧が0.1Torr以上10Torr以下とすることにより、その特性をさらに向上させることができる。また、種層となる酸化物系超伝導相4はLa、Ba、Cu、O系超伝導材料としてもよいし、例えば、Yb、Ba、Cu、O系超伝導材料のようなその他の酸化物系超伝導材料でもよい。
【0033】
特に、La、Ba、Cu、Oの元素で構成された酸化物系の超伝導部材1の化学組成がLa:Ba:Cu=0.9〜1.5:1.5〜2.1:3.0〜3.7の範囲にあれば、ピニングセンターとしての効果が顕著である。また、Ba、Cu、Oの元素で構成される酸化物材料5の組成がBa:Cu=3:5〜7の範囲で製造すると、ピニングセンターとして一層の効果が得られる。
【0034】
さらに、La、Ba、Cu、Oの元素で構成された酸化物系の超伝導相1のc軸方向が基材面に対して垂直な方向に成長して構成されていると、その特性はさらに向上する。
【0035】
La、Ba、Cu、Oの元素で構成された酸化物系の超伝導相1のc軸方向が基材面に対して垂直に成長して構成され、Ba、Cu、O組成の非超伝導相2が、酸化物系の超伝導部材1中に析出していると、超伝導材料の特性はさらに向上する。特に、非超伝導相2の析出物の形状については、基材面に平行な方向に析出している長さが垂直な方向に析出している長さよりも大きいと、前記の効果は飛躍的に向上する。
【0036】
次に、本発明の実施形態2を、図3を参照しながら説明する。この実施形態2は、次に述べる通り実施形態1と相違するものであり、その他の点については実施形態1と基本的には同一である。この実施形態2において、実施形態1と共通する構成においては同じ効果を奏するものである。
【0037】
この実施形態2の酸化物系超伝導部材10は、図3に示すように、セラミックス材料または金属材料からなる基材3と、結晶のc軸方向が基材面に垂直な方向に揃ったLa、Ba、Cu、Oの元素で構成された酸化物系超伝導相1と、超伝導相1中に分散されたBa、Cu、O組成の非超伝導相2と、超伝導相1中に非超伝導相2とともに分散して形成され且つ結晶のc軸方向が超伝導相1と異なる方向を示すかあるいは基材面に平行な方向に揃った材料で構成した酸化物系の超伝導相7とを有して構成されている。
【0038】
この酸化物系超伝導部材10によれば、超伝導特性がさらに向上する。そして、得られた非超伝導相2や超伝導相7のサイズが、基材3に垂直な方向にそれぞれ数nmであり、さらに基材3に平行な方向の間隔が数十nmであると、これらの効果は顕著に表れる。
【0039】
従来の超伝導技術で作製された超伝導デバイスや超伝導マグネットなどの超伝導システムは、液体ヘリウムを用いてその運転を行っていた。実施形態1、2の酸化物系超伝導部材10を用いることにより、液体窒素を用いてその運転を行うことができるため、コスト面で大幅に低減でき、経済面でも有利である。これによって、超伝導マグネット、核磁気共鳴装置、磁気共鳴断層撮影装置、シンクロトロン放射光装置、磁気分離装置、超伝導デバイスなどを、液体窒素を用いて運転することが可能となる。
【0040】
次に、上述した実施形態1、2による複数の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施形態1)
まず実施形態1による実施例1〜3を、表1及び図4を参照しながら説明する。
【0041】
【表1】
基材3としてセラミックス基材のMgO(100)を用いた。この基材3にレーザ蒸着法を用いてLaBa2Cu3O6+y薄膜を50nm成膜した。レーザ蒸着条件は、基材温度850℃、酸素分圧0.4Torr、レーザ周波数10Hz、成膜時間10分で行った。誘導結合プラズマ発光分析法により、得られた膜の膜厚及び組成を確認した結果、膜厚は48nmで、組成はLa:Ba:Cu=1.01:2.0:3.2であった。
【0042】
作製したLaBa2Cu3O6+y薄膜上にBa3Cu7Ox、及びLaBa2Cu3O6+yを積層した。その際のレーザ蒸着条件は、Ba3Cu7Oxについては、基材温度850℃、酸素分圧0.1Torr、レーザ周波数10Hz、成膜時間5分で行い、LaBa2Cu3O6+yについては、基材温度850℃、酸素分圧0.1Torr、レーザ周波数5、10、50Hz、成膜時間はそれぞれ60分(実施例1)、30分(実施例2)、6分(実施例3)で行った。その結果得られた膜1の組成及び膜厚を表1に示す。
【0043】
得られた膜1をX線回折法で評価した結果、c軸配向のLa系超伝導体の構造を有していることが確認された。さらに、この超伝導体の結晶配向性を確認するため、X線回折法の極点測定を行った。その結果、超伝導体の結晶方向がa軸及びb軸に沿って成長していることが確認された。
【0044】
臨界温度Tc及び臨界電流密度Jcを測定するため、超伝導体表面にAu及びAgペーストで端子を接続し、4端子法で直流法により電流―電圧測定を行った。冷媒としては、液体窒素を用いた。測定端子間電圧を1μV/cmとした時の臨界電流より、液体窒素温度における臨界電流密度Jcを求めた。さらに物理測定装置を用い、磁場中における臨界電流密度Jc測定も行った。それらを表1に併せて示す。
【0045】
表1では、磁場のない状態での臨界電流密度JcをJc(0T)で表し、5Tの磁場中における臨界電流密度JcをJc(5T)で表した。また、図4には、レーザ周波数を5Hzとした場合(実施例1)の磁場中における臨界電流密度Jcの測定結果を示す。ただし,測定温度は77Kである。
【0046】
さらに透過型電子顕微鏡を用い、前記で作製した酸化物系超伝導体の微細組織観察を行った。その結果、Ba、Cu、O組成の析出物及び電子線回折から評価されたa軸相が確認された。これらの結晶サイズ及び間隔に関しても表1に示す。
(実施形態2)
次に、実施形態2による実施例4、5を、表2及び図4を参照しながら説明する。
【0047】
【表2】
基材3としてセラミックス基材のLaAlO3基材(実施例4)及びSrTiO3(100)基材(実施例5)を用いた。この基材3にレーザ蒸着法を用いてYbBa2Cu3O6+y薄膜を50nm成膜した。レーザ蒸着条件は、基材温度850℃、酸素分圧0.4Torr、レーザ周波数10Hz、成膜時間10分で行った。誘導結合プラズマ発光分析法により、得られた薄膜の膜厚及び組成を確認した結果、膜厚は48nmで、組成はYb:Ba:Cu=1.0:2.0:3.2であった。
【0048】
作製したYbBa2Cu3O6+y薄膜上に、Ba3Cu7Ox、及びLaBa2Cu3O6+yを積層した。その際のレーザ蒸着条件は、Ba3Cu7Oxについては、基材温度850℃、酸素分圧0.1Torr、レーザ周波数10Hz、成膜時間5分で行い、LaBa2Cu3O6+yについては、基材温度850℃、酸素分圧0.1Torr、レーザ周波数は10Hz、成膜時間は30分と固定した。そのほかの成膜条件や評価方法に関しては実施形態1と同様の方法を用いた。その結果に関して表2及び図4に示す。
(比較例)
次に、比較例を表2を参照しながら説明する。
【0049】
基材3として、セラミックス基材のSrTiO3(100)基材を用いた。基材3上に、LaBa2Cu3O6+y薄膜を積層した。その際のレーザ蒸着条件は、基材温度850℃、酸素分圧0.1Torr、レーザ周波数は10Hz、成膜時間は40分と固定した。そのほかの成膜条件や評価方法に関しては実施形態1、2と同様の方法を用いた。その結果に関して表2に示す。
【0050】
前述した実施形態1、2及び比較例による表1、表2及び図4から明らかなように、零磁場及び磁場中での臨界電流密度Jcの変化などから本発明による効果が顕著であることが確認された。
【0051】
前述した実施形態1、2では基材3を基板状部材で形成したもので説明したが、本発明は基材3を線状としてその周囲に酸化物系超伝導膜を形成するようにしても同様の効果を得ることができる。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、磁場中及び磁場中での臨界温度及び臨界電流密度の高い酸化物系超伝導部材とその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の酸化物系超伝導部材の模式構造図である。
【図2】図1の酸化物系超伝導部材の製造方法を表す工程摸式構造図である。
【図3】本発明の実施形態2の酸化物系超伝導部材の模式構造図である。
【図4】図1及び図2の酸化物系超伝導部材の臨界電流密度の特性を示す図である。
【符号の説明】
1…超伝導相(第1の超伝導相)、2…非超伝導相、3…基材、4…超伝導相(種層)、5…液相の酸化物材料、6…形成途中の超伝導相、7…超伝導相(第2の超伝導相)、9…酸化物系超伝導膜、10…酸化物系超伝導部材。
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化物系超伝導部材とその製造方法に係り、特に液体窒素温度77K(ケルビン)以上で超伝導状態を示す酸化物系超伝導部材とその製造方法に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
1986年に、高い臨界温度を持つ酸化物系超伝導部材のLa−Ba−Cu−Oペロブスカイト構造系超伝導体が発見された。さらに翌年以降、液体窒素温度77Kを超える臨界温度Tc=90Kを有するY−Ba−Cu−O系(以下、Y系という)超伝導材料、臨界温度Tc=110KのBi−Sr−Ca−Cu−O系(以下、Bi系という)超伝導材料、臨界温度Tc=120KのTl−Ba−Ca−Cu−O系(以下、Tl系という)超伝導材料などが発見され、液体窒素を冷媒とする超伝導マグネットや超伝導デバイスなどの応用技術への発展が期待されるようになった。
【0003】
これらの酸化物系超伝導材料の一般的な製造方法は、その出発組成における金属の酸化物または炭酸塩などの原料粉末の混合、粉砕を繰り返し、空気中、酸素中あるいは還元雰囲気中において、800〜1000℃の温度で、数分〜数百時間の熱処理を施すことにより得られる。
【0004】
Bi系超伝導材料の製造方法に関しては、従来のNb−Tiなどの金属系超伝導材料と類似した極細多芯超伝導線形状の線材加工プロセスなども検討された。
【0005】
一方、Y系やTl系超伝導材料で極細多芯超伝導線形状とする超伝導線材では、超伝導特性、特に臨界電流密度が低くなってしまった。Y系に代表される酸化物系超伝導材料の結晶構造は複合層状ペロブスカイト型を有しており、それぞれ階層の異なる複数の構造を持ち、さらに異なる異方性を持つ。酸化物系超伝導体、特にY系やTl系の特徴として、その結晶構造に由来する導電性の大きな異方性があげられる。このため、結晶粒方向がミクロ的に乱雑な極細多芯超伝導線においては、導電面がつながらないため、零磁場での臨界電流密度が104A/cm2以下と低いものになってしまう。
【0006】
臨界電流密度は、超伝導材料とともに製作プロセスに大きく依存する。そこで、臨界電流密度を向上させるために、基板上の中間層の結晶方向をそろえて成長させる配向化などの方法や、基板の結晶方向をそろえてY系などの超伝導材料を膜として形成する方法が提案された(例えば特許文献1)。
【0007】
また、酸化物系超伝導材料の超伝導デバイスや超伝導マグネットなどへの応用を目的として、酸化物系超伝導材料中に、磁場の印加に伴う磁束線を止めるピニングセンターを導入して、磁場中での臨界電流密度を高める研究が行われた。ピニングセンターとして、Y系の場合ではY2Ba1Cu1Ox相の粒子を微細に分散する方法が報告されたが、超伝導膜には適応できなかった。これは、作製された膜で、超伝導電流が流れるのは超伝導部分のみであるので、非超伝導相であるピニングセンターの領域を増やしすぎると、かえって臨界電流密度が低下してしまうためである。
【0008】
そのような中で、Y系超伝導体を用いた薄膜において、Cu、O元素で構成される微細析出物がピニングセンターとして有効に働くことが確認された(非特許文献1)。
【0009】
さらに、基板上にY系酸化物系超伝導薄膜の結晶のc軸面が、基板の薄膜形成面と平行に配列した超伝導相内(c軸配向相)に、結晶のc軸面が基板の薄膜形成面と垂直に配列した超伝導相(a軸配向相)を微細に分散させて形成した超伝導材料において、磁場中での特性改善が確認された(特許文献2)。
【0010】
【特許文献1】
特開平5−279025号公報
【特許文献2】
特開平5−43229号公報
【非特許文献1】
H. Yamane et al. J. Appl. Phys., Vol.69, No.11, 1991 pp.7948−7950
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1のような方法では、零磁場での臨界電流密度を向上することができるが、磁場中での臨界電流密度の低下を抑制することができなかった。
【0012】
また、磁場中での臨界電流密度を高めるために非特許文献1のような方法が考えられたが、微細析出物からなる目的量のピニングセンターを基板上に形成された超伝導薄膜内の目的の位置に均一に分散することが難しく、磁場中での臨界電流密度の低下を十分に抑制することができなかった。
【0013】
さらに、磁場中での特性を改善するために特許文献2ような方法が考えられたが、Y系超伝導薄膜では、このようなピニングセンターとして効果のあるa軸配向相の上にc軸配向相を成長させることが薄膜成長プロセス上困難であり、厚膜化にともない臨界電流密度が下がることが懸念される。
【0014】
前記の従来技術においては、酸化物系超伝導部材を超伝導デバイスや超伝導マグネットなどに応用するため、超伝導材料の結晶を揃える配向化、薄膜化とともに、微細に分散した非超伝導相で構成されるピニングセンターの活用、さらに、より高い臨界温度を持つ酸化物系超伝導部材の材料組成の最適化、及びその製造方法の改善が必要である。
【0015】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、零磁場中及び磁場中での臨界温度及び臨界電流密度の高い酸化物系超伝導部材とその製造方法を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記目的を解決するために、本発明の第1の特徴は、セラミックス材料または金属材料で構成された基材上に酸化物系超伝導膜を形成してなる酸化物系超伝導部材において、前記酸化物系超伝導膜は、La、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された超伝導相と、前記超伝導相中に分散して形成され且つBa、Cu、Oの元素を含む材料で構成された非超伝導相とを有する構成としたものである。
【0017】
本発明の第2の特徴は、セラミックス材料または金属材料で構成された基材上に酸化物系超伝導膜を形成してなる酸化物系超伝導部材において、
前記酸化物系超伝導膜は、La、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された第1の超伝導相と、前記第1の超伝導相中に分散して形成され且つBa、Cu、Oの元素を含む材料で構成された非超伝導相と、前記第1の超伝導相中に分散して形成され且つ前記第1の超伝導相の結晶方向と異なる結晶方向を有する材料で構成された第2の超伝導相とを有する構成としたものである。
【0018】
本発明の第3の特徴は、セラミックス材料または金属材料で構成された基材上に酸化物系超伝導膜を形成してなる酸化物系超伝導部材において、
前記酸化物系超伝導膜は、結晶のc軸方向が基材面に垂直な方向に揃い且つLa、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された第1の超伝導相と、前記第1の超伝導相中に分散して形成され且つBa、Cu、Oの元素を含む材料で構成された非超伝導相と、前記第1の超伝導相中に分散して形成され且つ結晶のc軸方向が基材面に平行な方向に揃った第2の超伝導相とを有する構成としたものである。
【0019】
本発明の第4の特徴は、セラミックス材料または金属材料からなる基材上に酸化物系超伝導膜を形成する酸化物系超伝導部材の製造方法において、酸化物系超伝導相、前記酸化物系超伝導相よりも融点が低いBa、Cu、O組成で構成される酸化物材料、La、Ba、Cu、Oの元素で構成された超伝導材料、の順に堆積して前記酸化物系超伝導膜を形成することにある。
【0020】
本発明の第5の特徴は、セラミックス材料または金属材料からなる基材上に酸化物系超伝導膜を形成する酸化物系超伝導部材の製造方法において、La、Ba、Cu、Oの元素で構成された超伝導相、前記超伝導相中に析出したBa、Cu、O組成の非超伝導相で前記酸化物系超伝導膜を形成し、前記超伝導相よりも融点が低い前記Ba、Cu、O組成で構成される酸化物材料を用いて基材温度750度以上の雰囲気で成膜することにある。
【0021】
本発明の第6の特徴は、セラミックス材料または金属材料からなる基材上に酸化物系超伝導膜を形成する酸化物系超伝導部材の製造方法において、La、Ba、Cu、Oの元素で構成された超伝導相、前記超伝導相中に析出したBa、Cu、O組成の非超伝導相で前記酸化物系超伝導膜を形成し、前記超伝導相よりも融点が低い前記Ba、Cu、O組成で構成される酸化物材料を用いて、酸素分圧0.1Torr以上10Torr以下、基材温度750度以上の雰囲気で成膜することにある。
【0022】
なお、本発明のその他の手段は以下の記述から明らかにされる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、図及び表を用いて説明する。各実施形態の図における同一符号は同一物または相当物を示す。
【0024】
本発明の実施形態1を、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0025】
この実施形態1の酸化物系超伝導部材10は、図1に示すように、基材3と酸化物系超伝導膜9とを有して構成されている。基材3は超伝導体と格子定数の近い金属またはセラミックスで構成された金属基材またはセラミックス基材で構成されている。基材3は本実施形態では基板状部材で構成されている。酸化物系超伝導膜9は超伝導相1と超伝導相4と非超伝導相2とを有して構成され、基材3に形成されている。具体的には、酸化物系超伝導膜9は基材3の表面に超伝導相4を介して超伝導相1が形成されると共に、超伝導相1に非超伝導相2がほぼ均一に分散して形成されることにより構成される。
【0026】
超伝導相1は、c軸配向のLa、Ba、Cu、Oの元素で構成された酸化物系の超伝導相である。非超伝導相2は、超伝導相1中に分散して形成され且つBa、Cu、Oの元素で構成された酸化物系の非超伝導相である。超伝導相4は酸化物系の超伝導相である。
【0027】
係る酸化物系超伝導部材10によれば、酸化物系超伝導膜9は、La、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された酸化物系の超伝導相1と、この酸化物系超伝導相1中に分散して形成され且つBa、Cu、Oの元素を含む材料で構成された酸化物系の非超伝導相2とを有するので、磁場中での臨界温度及び臨界電流密度を高いものとすることができる。
【0028】
超伝導体と格子定数の近い金属またはセラミックスで構成された基材3は、例えば、セラミックス基材であればMgO、SrTiO3、LaAlO3、YSZ(イットリウム安定化ZrO2)などがあげられ、また金属基材であればNiやAg及びそれらの合金があげられる。さらには、それらを複合化したAg金属基材上にMgO材料を設けた複合基材も基材3として用いることができる。これらの基材3は、{100}面が金属及びセラミックスと超伝導体の界面に対して20度以内で平行であり、且つ金属結晶及びセラミックス結晶の<100>方向がお互いに20度以内で揃っており、これによって基材3上に作製した酸化物系超伝導膜9の臨界温度及び臨界電流密度などの超伝導特性を向上させることができる。
【0029】
酸化物系超伝導膜9の製造方法としては、レーザ蒸着法、スパッタ法などの物理蒸着法、有機金属化学気相蒸着法などの化学蒸着法などがあげられる。酸化物系超伝導膜9の製造方法の一例を、図2を参照しながら説明する。
【0030】
まず図2(a)に示すように、セラミックス材料または金属材料からなる基材3上に、種層となる酸化物系の超伝導相4を形成する。この状態で、図2(b)に示すように、Cu元素で構成される材料及びBa元素で構成される材料を供給することにより、Ba、Cu、O組成で構成される酸化物材料5を超伝導相4の上に堆積させる。この酸化物材料5は超伝導相4よりも融点が低い材料で構成されている。酸化物材料5を超伝導相4に堆積させるとき、酸化物材料5の融点よりも高い温度でかつ超伝導相4の融点よりも低い温度で体積させるようにしており、これにより酸化物材料5は液相で堆積される。
【0031】
さらに、図2(c)に示すように、La元素で構成される材料も供給することにより、液相の酸化物材料5を介して、La、Ba、Cu、Oの元素で構成された超伝導材料6を超伝導相4上に堆積させる。この際、図2(d)に示すように、Ba、Cu、O元素で構成される非超伝導相2が超伝導相1中に分散して析出され、これがピニングセンターとして有効に作用する。次いで、酸化物材料5を除去することにより、図1に示す酸化物系超伝導部材10が製造される。
【0032】
これらの製造方法において、超伝導相4、6よりも融点が低いBa、Cu、O組成で構成される酸化物材料5の成膜温度を750度以上とすることにより、超伝導体の特性をさらに向上することができる。また酸化物材料5の作製時の酸素分圧が0.1Torr以上10Torr以下とすることにより、その特性をさらに向上させることができる。また、種層となる酸化物系超伝導相4はLa、Ba、Cu、O系超伝導材料としてもよいし、例えば、Yb、Ba、Cu、O系超伝導材料のようなその他の酸化物系超伝導材料でもよい。
【0033】
特に、La、Ba、Cu、Oの元素で構成された酸化物系の超伝導部材1の化学組成がLa:Ba:Cu=0.9〜1.5:1.5〜2.1:3.0〜3.7の範囲にあれば、ピニングセンターとしての効果が顕著である。また、Ba、Cu、Oの元素で構成される酸化物材料5の組成がBa:Cu=3:5〜7の範囲で製造すると、ピニングセンターとして一層の効果が得られる。
【0034】
さらに、La、Ba、Cu、Oの元素で構成された酸化物系の超伝導相1のc軸方向が基材面に対して垂直な方向に成長して構成されていると、その特性はさらに向上する。
【0035】
La、Ba、Cu、Oの元素で構成された酸化物系の超伝導相1のc軸方向が基材面に対して垂直に成長して構成され、Ba、Cu、O組成の非超伝導相2が、酸化物系の超伝導部材1中に析出していると、超伝導材料の特性はさらに向上する。特に、非超伝導相2の析出物の形状については、基材面に平行な方向に析出している長さが垂直な方向に析出している長さよりも大きいと、前記の効果は飛躍的に向上する。
【0036】
次に、本発明の実施形態2を、図3を参照しながら説明する。この実施形態2は、次に述べる通り実施形態1と相違するものであり、その他の点については実施形態1と基本的には同一である。この実施形態2において、実施形態1と共通する構成においては同じ効果を奏するものである。
【0037】
この実施形態2の酸化物系超伝導部材10は、図3に示すように、セラミックス材料または金属材料からなる基材3と、結晶のc軸方向が基材面に垂直な方向に揃ったLa、Ba、Cu、Oの元素で構成された酸化物系超伝導相1と、超伝導相1中に分散されたBa、Cu、O組成の非超伝導相2と、超伝導相1中に非超伝導相2とともに分散して形成され且つ結晶のc軸方向が超伝導相1と異なる方向を示すかあるいは基材面に平行な方向に揃った材料で構成した酸化物系の超伝導相7とを有して構成されている。
【0038】
この酸化物系超伝導部材10によれば、超伝導特性がさらに向上する。そして、得られた非超伝導相2や超伝導相7のサイズが、基材3に垂直な方向にそれぞれ数nmであり、さらに基材3に平行な方向の間隔が数十nmであると、これらの効果は顕著に表れる。
【0039】
従来の超伝導技術で作製された超伝導デバイスや超伝導マグネットなどの超伝導システムは、液体ヘリウムを用いてその運転を行っていた。実施形態1、2の酸化物系超伝導部材10を用いることにより、液体窒素を用いてその運転を行うことができるため、コスト面で大幅に低減でき、経済面でも有利である。これによって、超伝導マグネット、核磁気共鳴装置、磁気共鳴断層撮影装置、シンクロトロン放射光装置、磁気分離装置、超伝導デバイスなどを、液体窒素を用いて運転することが可能となる。
【0040】
次に、上述した実施形態1、2による複数の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施形態1)
まず実施形態1による実施例1〜3を、表1及び図4を参照しながら説明する。
【0041】
【表1】
基材3としてセラミックス基材のMgO(100)を用いた。この基材3にレーザ蒸着法を用いてLaBa2Cu3O6+y薄膜を50nm成膜した。レーザ蒸着条件は、基材温度850℃、酸素分圧0.4Torr、レーザ周波数10Hz、成膜時間10分で行った。誘導結合プラズマ発光分析法により、得られた膜の膜厚及び組成を確認した結果、膜厚は48nmで、組成はLa:Ba:Cu=1.01:2.0:3.2であった。
【0042】
作製したLaBa2Cu3O6+y薄膜上にBa3Cu7Ox、及びLaBa2Cu3O6+yを積層した。その際のレーザ蒸着条件は、Ba3Cu7Oxについては、基材温度850℃、酸素分圧0.1Torr、レーザ周波数10Hz、成膜時間5分で行い、LaBa2Cu3O6+yについては、基材温度850℃、酸素分圧0.1Torr、レーザ周波数5、10、50Hz、成膜時間はそれぞれ60分(実施例1)、30分(実施例2)、6分(実施例3)で行った。その結果得られた膜1の組成及び膜厚を表1に示す。
【0043】
得られた膜1をX線回折法で評価した結果、c軸配向のLa系超伝導体の構造を有していることが確認された。さらに、この超伝導体の結晶配向性を確認するため、X線回折法の極点測定を行った。その結果、超伝導体の結晶方向がa軸及びb軸に沿って成長していることが確認された。
【0044】
臨界温度Tc及び臨界電流密度Jcを測定するため、超伝導体表面にAu及びAgペーストで端子を接続し、4端子法で直流法により電流―電圧測定を行った。冷媒としては、液体窒素を用いた。測定端子間電圧を1μV/cmとした時の臨界電流より、液体窒素温度における臨界電流密度Jcを求めた。さらに物理測定装置を用い、磁場中における臨界電流密度Jc測定も行った。それらを表1に併せて示す。
【0045】
表1では、磁場のない状態での臨界電流密度JcをJc(0T)で表し、5Tの磁場中における臨界電流密度JcをJc(5T)で表した。また、図4には、レーザ周波数を5Hzとした場合(実施例1)の磁場中における臨界電流密度Jcの測定結果を示す。ただし,測定温度は77Kである。
【0046】
さらに透過型電子顕微鏡を用い、前記で作製した酸化物系超伝導体の微細組織観察を行った。その結果、Ba、Cu、O組成の析出物及び電子線回折から評価されたa軸相が確認された。これらの結晶サイズ及び間隔に関しても表1に示す。
(実施形態2)
次に、実施形態2による実施例4、5を、表2及び図4を参照しながら説明する。
【0047】
【表2】
基材3としてセラミックス基材のLaAlO3基材(実施例4)及びSrTiO3(100)基材(実施例5)を用いた。この基材3にレーザ蒸着法を用いてYbBa2Cu3O6+y薄膜を50nm成膜した。レーザ蒸着条件は、基材温度850℃、酸素分圧0.4Torr、レーザ周波数10Hz、成膜時間10分で行った。誘導結合プラズマ発光分析法により、得られた薄膜の膜厚及び組成を確認した結果、膜厚は48nmで、組成はYb:Ba:Cu=1.0:2.0:3.2であった。
【0048】
作製したYbBa2Cu3O6+y薄膜上に、Ba3Cu7Ox、及びLaBa2Cu3O6+yを積層した。その際のレーザ蒸着条件は、Ba3Cu7Oxについては、基材温度850℃、酸素分圧0.1Torr、レーザ周波数10Hz、成膜時間5分で行い、LaBa2Cu3O6+yについては、基材温度850℃、酸素分圧0.1Torr、レーザ周波数は10Hz、成膜時間は30分と固定した。そのほかの成膜条件や評価方法に関しては実施形態1と同様の方法を用いた。その結果に関して表2及び図4に示す。
(比較例)
次に、比較例を表2を参照しながら説明する。
【0049】
基材3として、セラミックス基材のSrTiO3(100)基材を用いた。基材3上に、LaBa2Cu3O6+y薄膜を積層した。その際のレーザ蒸着条件は、基材温度850℃、酸素分圧0.1Torr、レーザ周波数は10Hz、成膜時間は40分と固定した。そのほかの成膜条件や評価方法に関しては実施形態1、2と同様の方法を用いた。その結果に関して表2に示す。
【0050】
前述した実施形態1、2及び比較例による表1、表2及び図4から明らかなように、零磁場及び磁場中での臨界電流密度Jcの変化などから本発明による効果が顕著であることが確認された。
【0051】
前述した実施形態1、2では基材3を基板状部材で形成したもので説明したが、本発明は基材3を線状としてその周囲に酸化物系超伝導膜を形成するようにしても同様の効果を得ることができる。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、磁場中及び磁場中での臨界温度及び臨界電流密度の高い酸化物系超伝導部材とその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の酸化物系超伝導部材の模式構造図である。
【図2】図1の酸化物系超伝導部材の製造方法を表す工程摸式構造図である。
【図3】本発明の実施形態2の酸化物系超伝導部材の模式構造図である。
【図4】図1及び図2の酸化物系超伝導部材の臨界電流密度の特性を示す図である。
【符号の説明】
1…超伝導相(第1の超伝導相)、2…非超伝導相、3…基材、4…超伝導相(種層)、5…液相の酸化物材料、6…形成途中の超伝導相、7…超伝導相(第2の超伝導相)、9…酸化物系超伝導膜、10…酸化物系超伝導部材。
Claims (13)
- セラミックス材料または金属材料で構成された基材上に酸化物系超伝導膜を形成してなる酸化物系超伝導部材において、
前記酸化物系超伝導膜は、La、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された超伝導相と、前記超伝導相中に分散して形成され且つBa、Cu、Oの元素を含む材料で構成された非超伝導相とを有する
ことを特徴とする酸化物系超伝導部材。 - セラミックス材料または金属材料で構成された基材上に酸化物系超伝導膜を形成してなる酸化物系超伝導部材において、
前記酸化物系超伝導膜は、La、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された第1の超伝導相と、前記第1の超伝導相中に分散して形成され且つBa、Cu、Oの元素を含む材料で構成された非超伝導相と、前記第1の超伝導相中に分散して形成され且つ前記第1の超伝導相の結晶方向と異なる結晶方向を有する材料で構成された第2の超伝導相とを有する
ことを特徴とする酸化物系超伝導部材。 - 請求項2記載の酸化物系超伝導部材において、前記第2の超伝導相はLa、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された酸化物系超伝導相であることを特徴とする酸化物系超伝導部材。
- セラミックス材料または金属材料で構成された基材上に酸化物系超伝導膜を形成してなる酸化物系超伝導部材において、
前記酸化物系超伝導膜は、結晶のc軸方向が基材面に垂直な方向に揃い且つLa、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された第1の超伝導相と、前記第1の超伝導相中に分散して形成され且つBa、Cu、Oの元素を含む材料で構成された非超伝導相と、前記第1の超伝導相中に分散して形成され且つ結晶のc軸方向が基材面に平行な方向に揃った第2の超伝導相とを有する
ことを特徴とする酸化物系超伝導部材。 - 請求項4記載の酸化物系超伝導部材において、前記第2の超伝導相がLa、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された酸化物系超伝導相であることを特徴とする酸化物系超伝導部材。
- 請求項1〜5の何れかに記載の酸化物系超伝導部材において、前記非超伝導相が基材面に垂直な方向の長さよりも基材面に平行な方向の長さが大きいことを特徴とする酸化物系超伝導部材。
- 請求項1〜6の何れかに記載の酸化物系超伝導部材において、前記非超伝導相が非晶質相または微結晶であることを特徴とする酸化物系超伝導部材。
- 請求項1〜7の何れかに記載の酸化物系超伝導部材において、La、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された前記超伝導部材がLa:Ba:Cu=0.9〜1.5:1.5〜2.1:3.0〜3.7の範囲にあることを特徴とする酸化物系超伝導部材。
- 請求項1〜5の何れかに記載の酸化物系超伝導部材において、前記のLa、Ba、Cu、Oの元素を含む材料で構成された超伝導相よりも融点が低いBa、Cu、O組成で構成される酸化物材料を用いて当該超伝導相を形成し、前記酸化物材料の組成が、Ba:Cu=3:5〜7の範囲にあることを特徴とする酸化物系超伝導部材。
- セラミックス材料または金属材料からなる基材上に酸化物系超伝導膜を形成する酸化物系超伝導部材の製造方法において、
酸化物系超伝導相、前記酸化物系超伝導相よりも融点が低いBa、Cu、O組成で構成される酸化物材料、La、Ba、Cu、Oの元素で構成された超伝導材料、の順に堆積して前記酸化物系超伝導膜を形成する
ことを特徴とする酸化物系超伝導部材の製造方法。 - セラミックス材料または金属材料からなる基材上に酸化物系超伝導膜を形成する酸化物系超伝導部材の製造方法において、
La、Ba、Cu、Oの元素で構成された超伝導相、前記超伝導相中に析出したBa、Cu、O組成の非超伝導相で前記酸化物系超伝導膜を形成し、
前記超伝導相よりも融点が低い前記Ba、Cu、O組成で構成される酸化物材料を用いて基材温度750度以上の雰囲気で成膜する
ことを特徴とする酸化物系超伝導部材の製造方法。 - セラミックス材料または金属材料からなる基材上に酸化物系超伝導膜を形成する酸化物系超伝導部材の製造方法において、
La、Ba、Cu、Oの元素で構成された超伝導相、前記超伝導相中に析出したBa、Cu、O組成の非超伝導相で前記酸化物系超伝導膜を形成し、
前記超伝導相よりも融点が低い前記Ba、Cu、O組成で構成される酸化物材料を用いて、酸素分圧0.1Torr以上10Torr以下、基材温度750度以上の雰囲気で成膜する
ことを特徴とする酸化物系超伝導部材の製造方法。 - 請求項11または12に記載の酸化物系超伝導部材の製造方法において、物理気相蒸着法、またはレーザ蒸着法、またはスパッタ蒸着法、または化学気相蒸着法、または有機金属化学蒸着法などの手法により前記酸化物材料を用いて成膜することを特徴とする酸化物系超伝導部材の製造方法。
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