JP2004152522A - 鉛蓄電池再生方法およびそれに用いる装置 - Google Patents

鉛蓄電池再生方法およびそれに用いる装置 Download PDF

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Abstract

【課題】電極損傷のおそれのない鉛蓄電池の再生方法を確立し、再生処理中の安全を確保し得る鉛蓄電池再生装置を提供する。
【解決手段】電極に付着した不導体皮膜を分解して鉛蓄電池を再生する方法であって、(1)鉛蓄電池の定格電圧の80%を超える場合、定格電圧の50%〜80%の電圧まで放電する工程、および(2)充電時間が5時間以上であり、かつ定格電圧の80%を越えるように鉛蓄電池を充電する工程を含む、前記方法およびそれに用いることができる装置に関する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サルフェーション分解による鉛蓄電池再生方法およびそれに用いる装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉛蓄電池は充電および放電を繰り返して行なうことができる二次電池として広い用途で使用されている。鉛蓄電池は充電・放電時に陽極及び陰極で生成された硫酸鉛(PbSO)が、それぞれ硫化鉛・鉛・硫酸として陽極、陰極、電解液(希硫酸37%濃度)に戻る化学変化をしている。
放電時:陽極(正極) PbO+HSO→PbSO+H
陰極(負極) Pb+HSO→PbSO+H
充電時:陽極(正極) PbSO+HO→PbO+HSO
陰極(負極) PbSO+HO→Pb+HSO
【0003】
この化学変化が十分に進行しなくなった場合に鉛蓄電池は寿命となる。通常、寿命がきてしまった鉛蓄電池は廃棄されることとなるが、その廃棄処理は、鉛蓄電池内の希硫酸を中和処理後放出し、蓄電池本体(プラスチック)を解体し産業廃棄物として処分し、電極の再生を行ない新バッテリーの材料として使用するといったことが行なわれている。しかし、このような処理は高コストであるため、近年では不法投棄などの社会問題を引き起こしている。
【0004】
鉛蓄電池の寿命は、ほとんどの場合がサルフェーションによる。サルフェーションとは、電極表面に生じる電極反応に関与しない不活性な硫酸鉛(PbSO)の結晶のことで、鉛蓄電池内の化学反応を繰り返すと、電極面に付着・成長(結晶化)し、不導体皮膜となる。
サルフェーション(不導体皮膜)が電極表面に付着すると、鉛蓄電池の内部抵抗が増大する。この状態で充電すると、電流が流れにくく、電圧だけが上昇し、電極・液が発熱し、危険な状態になる。また、この状態では不十分な充電しかできず、放電時の電気容量は大きく減少し、使用可能な時間も短くなり、充電回数の増加につながる。そして、充電しても電圧が定格電圧までに達しないで、結果的に寿命が尽きたと判断される。
したがって、鉛蓄電池を再生するためには、このサルフェーションを除去することが必要となる。
【0005】
従来知られたサルフェーションを除去する方法のうち物理的な方法としては、パルス方式、マイクロカーボン(ホロン)方式、これらの組合せなどが挙げられる。例えば、直流パルス電流を鉛蓄電池の陽極から陰極に向かって流すことにより電極表面に析出した硫酸鉛(サルフェーション)を減少させ、水系での炭素陽極の電解酸化により得られた炭素懸濁液を鉛蓄電池の電解液に用いて直流電圧を印加することにより鉛蓄電池の陽極を電気化学的ドーピングにより活性化する再生方法が知られている(特許文献1参照)。これらの方法はいわばサルフェーションを電極から削り落とす方式である。
一方、サルフェーション除去反応を促進させる物質を電解液に添加し、大電流を放電することによってサルフェーションを除去する方法(化学的方式)も知られている。例えば、硫酸などの酸性物質を反応促進剤として電解液中に加え、短絡に近い大電流放電することによりサルフェーションを除去する方法(特許文献2および3参照)が知られている。
【0006】
前記のとおり、これまで物理的方式および化学的方式のサルフェーション除去方法が知られていた。しかしながら、いずれの方式も充分なものではなかった。即ち、物理的方式では、サルフェーションを削り取るように除去するため、過度に除去しようとすると電極を損傷してしまい、逆に、電極損傷をおそれるあまり、充分な除去効果を得ることができなかった。また、化学的方式は、電極表面を化学的に処理している点で、物理的方式のような削り落としによる電極損傷のおそれはないが、短絡に近い大電流放電を行なうため、これを繰り返すと電極に過度の負荷がかかり、結局、電極を損傷してしまうといった問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−40537号公報
【特許文献2】
特開2002−100415号公報
【特許文献3】
特開2002−190329号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の課題は、電極損傷のおそれがなく、効率的に鉛蓄電池の再生方法およびそれに用いる装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような事情に鑑み、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、使用済み鉛蓄電池に対して、電極を傷めない程度に充分に放電して、充電時間が長くなるように充放電を制御することによって、電極を傷めることなく、充電中にプラス極側のサルフェーションを分解可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
したがって本発明は、電極に付着した不導体皮膜を分解して鉛蓄電池を再生する方法であって、
(1)鉛蓄電池の定格電圧の80%を超える場合、定格電圧の50%〜80%の電圧まで放電する工程、および
(2)充電時間が5時間以上であり、かつ定格電圧の80%を越えるように鉛蓄電池を充電する工程、
を含む、前記方法に関する。
また本発明は、工程(1)の放電が、定格電圧の80%までの放電であることを特徴とする、前記の方法に関する。
さらに本発明は、工程(1)および工程(2)を2回以上繰り返すことを特徴とする、前記の方法に関する。
また本発明は、放電時間、電圧、電解液の温度および比重を測定して再生程度を評価する工程を含むことを特徴とする、前記の方法に関する。
【0010】
さらに本発明は、他の不導体皮膜除去手段を併用することを特徴とする、前記の方法に関する。
また本発明は、他の不導体皮膜除去手段が、パルスまたはマイクロカーボンにより電極に付着した不導体膜を物理的に除去するものおよび/または不導体膜を化学的に除去できる物質を添加するものであることを特徴とする、前記の方法に関する。
さらに本発明は、鉛蓄電池を定格電圧の50%〜80%、好ましくは80%の電圧まで放電するための放電器、該放電器と直接的または間接的に結線され、鉛蓄電池を定格容量まで充電するための充電器、放電器及び充電器と直接的または間接的に結線され、充放電の電流および/または電圧を制御する充放電制御装置を含む、前記鉛蓄電池再生装置に関する。
また本発明は、定格容量の異なる複数の鉛蓄電池を同時に再生するための、複数の充電器、複数の放電器および複数の充放電制御装置を備えた、前記の鉛蓄電池再生装置に関する。
【0011】
本発明は、上記の構成を採用することにより、鉛蓄電池を再生するとき、電極を損傷することなく、効率的にサルフェーションを化学的分解することができる。また、電極の損傷がないため、鉛蓄電池を長期に渡って再生使用可能にすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の鉛蓄電池再生方法は、電極に付着した不導体皮膜を分解する鉛蓄電池再生方法である。
本発明によって再生可能な鉛蓄電池は、フォークリフトなどの電気車両に用いる鉛蓄電池を主な対象といえるが、特に限定されず、例えば、JIS C8701(可搬蓄電池)、JIS D 5301(自動車用蓄電池)、JIS D 5302(自動車用小型蓄電池)、JIS D 5303(電気車両用蓄電池)、JIS F 8101(船用蓄電池)、JIS W 7301(航空機用蓄電池)などが挙げられる。
【0013】
本発明の方法によるサルフェーションの分解は、以下の各工程を行なうことで達成されるが、各工程は必要に応じて改変が可能である。
(1)鉛蓄電池の定格電圧の一定量になるまで放電する工程
通常、鉛蓄電池を使用した場合、その使用目的を終えた時点で使用済みとなることから、電気残量がどの程度かは、個々の電池によって異なる。しかしながら、いずれの電池であっても、定格容量の50%〜80%を消費していること、さらに80%を消費していることが好ましい。
このような電気残量は、電圧を測定することで知ることができる。本発明においては、鉛蓄電池の定格電圧の80%を超える場合、電気残量が大きすぎ、50%を下回る場合には、電気残量が小さすぎるので、充電すれば良いが、大きすぎる場合は、放電してやることによって、充電に適した状態にすることができる。
【0014】
したがって、本発明の方法に適した鉛蓄電池の電圧は、定格電圧の50%〜80%、好ましくは、80%である。
例えば、定格電圧が48Vのものでは、約38V程度に減ずるまで放電し、同様に、定格電圧24Vであれば、約19V程度、定格電圧12Vであれば、約9.5V程度まで減ずるまで放電する。
また本発明の方法は、充電時に陽極(プラス極)側の電極のサルフェーションが分解され、充電時間がある程度長いと分解効果が上がることから、一旦、定格容量の、20%〜25%、好ましくは20%まで放電することが好ましい。しかし、放電を過剰に行なうと、電極の損傷のおそれがあるため、下限は定格容量の20%程度であることが必要である。
【0015】
(2)鉛蓄電池を定格容量まで充電する工程
次に、電解液に有機溶液を含み、電気残量が定格容量の一定量になるまで使用または放電した鉛蓄電池に対して充電を行なう。
サルフェーション分解は、この工程の間に、陽極側の電極において行なわれるため、充電中の電流・電圧および充電時間を適切に調整することが好ましい。サルフェーションを分解するためには、1回または2回以上に分けて充電してもよく、合計の充電時間は、5時間以上であり、好ましくは6〜15時間、さらに好ましくは7〜12時間であり、最も好ましいのは8時間程度である。
【0016】
具体的には、表1に示すように鉛蓄電池の容量(AH)の大きさによって、さらに適切に調整する。なお、充電電圧は、鉛蓄電池の定格電圧の約1.2倍までである。
【表1】
Figure 2004152522
【0017】
このように十分な充電時間を確保することで、電極を損傷することなく、陽極電極のサルフェーションを分解しながら、定格容量までの充電を達成することができる。
【0018】
(3)鉛蓄電池の再生程度の評価
充電した鉛蓄電池を放電し、再生程度を評価する場合、この放電は、短絡したような大電流の放電ではなく、電極を損傷しない程度であれば、特に限定されない。
具体的には、表2に示すように鉛蓄電池の容量(AH)の大きさによって、適切に調整する。
【表2】
Figure 2004152522
【0019】
鉛蓄電池の再生程度は、放電時間、電圧、電解液の温度および比重から評価することができる。
即ち、放電時間が、定格容量と放電器のワット数とで計算される理論値に近づけば近づくほど、サルフェーションが分解され、定格電圧が確保されており、鉛蓄電池が再生できたものと評価できる。
【0020】
比重の測定は、鉛蓄電池の各セル毎に、その電解液の温度とともに測定する。
温度と比重の関係は、下記換算式:
20=S+0.0007(t−20)
(S20:20℃での電解液の比重、S:t℃での電解液の比重、t:比重測定時の電解液温度)
で表される。この換算式により画一的な蓄電池の評価が可能となる。
即ち、電解液の温度と電解液の比重を測定して、20℃での電解液の比重が、1.260〜1.280以上であれば、鉛蓄電池が再生できたと評価できる。
なお、表3に比重と充電状態の関係を示す。
【表3】
Figure 2004152522
再生が十分ではないと評価する場合は、その再生程度に応じて、充電・放電を2回以上繰り返してもよい。また、再生評価は、必要に応じて適宜行なうことができる。
【0021】
再生の完了は、各セルの電解液のS20の平均比重値が1.27以上で、電圧がDC2.0V以上であることを目安とし、負荷に対する最後の放電時間と放電完了後の電圧の戻り具合を考慮して完了とする。
なお、容量、負荷、電圧および放電時間の関係は次の式による。
【外1】
Figure 2004152522
【0022】
本発明の方法のために用いる鉛蓄電池再生装置は、鉛蓄電池を充電するための充電器、鉛蓄電池を放電するための放電器、充放電の電流および/または電圧を制御する充放電制御装置を含む。
ここで用いられる充電器としては、特に限定されないが、AEW−500ST−4(愛知電機株式会社製)、P12100T(アルプス計器製)などが挙げられる。また、放電器としては、特に限定されないが、水用フランジヒータ(進興電気工業株式会社製)などが挙げられる。使用に際しては、
【0023】
本発明の方法はさらに他の不導体皮膜除去手段を併用することが好ましい。
他の不導体皮膜除去手段としては、パルスやマイクロカーボンなどにより、いわば電極のサルフェーションを物理的に削り取る手段や、酸性物質または有機溶液などを鉛蓄電池の電解液に添加して、サルフェーションを化学的に除去できる手段や、有機ポリマーを酸性物質で調整した溶液などによる手段が挙げられるが、不導体皮膜除去という所期の目的を達成できるものであればこれらに限定されない。
【0024】
前記の有機ポリマーとしては、SRS液(有限会社ホットアンドクール社製)が好ましい。
有機ポリマーを調製する酸性溶液としては、希硫酸(20±5%;精製水で調製)が好ましい。
このような有機溶液は、例えば、SRS液(販売元:有限会社ホットアンドクール)として商業的に入手可能である。
【0025】
なお、鉛蓄電池の電解液に有機溶液を加えるのは、充電工程前であればいつでもよいが、作業上、使用済みの鉛蓄電池の再生を始める段階が好ましい。また、鉛蓄電池の状態により、有機溶液を適宜追加することができる。
具体的には、後述の通り、S20(20℃での電解液の比重)を算出し、鉛蓄電池の定格容量との関係で、表4にしたがって有機溶液を加える。
【表4】
Figure 2004152522
【0026】
また本発明の鉛蓄電池再生装置は、定格容量の異なる複数の鉛蓄電池を同時に再生するために、複数の充電器、複数の放電器および複数の充放電制御装置を備え、これらを適宜切り替えられるように結線することも可能である。
本発明の鉛蓄電池再生装置の一態様を図1に示す。
本発明の鉛蓄電池再生装置は、再生すべき鉛蓄電池と接続可能な充電器1、該充電器1と結線し鉛蓄電池の充放電を制御する充放電用制御装置2、該充放電用制御装置2と結線し鉛蓄電池の放電を安全に行なう放電器としてのヒーター4を備えている。
ヒーター4は、安全のためタンク3の内部において発熱する。該タンク3は、内部に水などを貯留することができ、ヒーター4から熱を与えることができる。また、内部の水は流入口5および流出口6を介して入れ替え可能である。
充電器1、充放電用制御装置2およびタンク3は、一体として安定自立できるように脚部7に備え付けられていてもよい。
【0027】
【実施例】
以下に本発明の鉛蓄電池再生方法の実施例を挙げるが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
本発明の鉛蓄電池再生方法にしたがって、使用済みフォークリフト用鉛蓄電池(VCD8AC;GS製)を再生した。
搬入時において、鉛蓄電池の24セルの電解液の比重平均は、1.131であったが、充放電を23回繰り返した後に、1.281となり、再生したことが確認された。図2に、搬入時、1回目、13回目、20回目、23回目の各セルの電解液の比重平均値をグラフにした。
【0028】
実施例2 DC48V専用鉛蓄電池の再生
(1)1回目の充放電
バッテリー液面レベルを希硫酸(約37.5%)および/または精製水で調整し、蓄電池並びに電解液の比重および温度を測定し、充電状態を確認した。
次に、鉛蓄電池再生装置の充電器(AEW−800ST:愛知電機株式会社製)に接続し、充放電用制御装置により、放電器(4000Wのヒーター)を介して所定の電気容量になるまで放電し、その後充電した。
充電完了後、再び充放電用制御装置の制御のもと、放電器(4000Wのヒーター)に放電時間を測定しながら放電した。放電時間は、3時間12分であり、放電完了電圧は37Vであった。次式、
【外2】
Figure 2004152522
から、計算すると、前回の充電で約345.9AHの充電が行なわれたことがわかった。定格容量が440AHであったため、この時点での蓄電容量は、約78.6%であった。
【0029】
(2)2回目の充放電
1回目の充放電で放電された鉛蓄電池の電解液に、1セルあたり7〜20mlのSRS液(販売元:有限会社ホットアンドクール)を加え、1回目と同様に充放電を行なった。
(3)3回目以降の充放電
2回目の充放電を行なった鉛蓄電池に対し、蓄電容量などで再生程度を評価し、再生が不十分である場合に、3回目以降の充放電を1回目と同様に行なった。
【0030】
実施例3
本発明の鉛蓄電池再生方法にしたがって、過放電状態の使用済みフォークリフト用鉛蓄電池(VCDH400P−48(400AH/5HR);YUASA製)を再生した。
充電器として、AEW−800ST(愛知電機株式会社製)を用い、放電器として、4kWのヒーターを用いた。
搬入時、電解液の比重が1.080であった上記電池にSRS液を注入せずに、1回目の充電を行なった。1回目充電後、放電した(1回目放電、放電時間:1時間10分)。各セルの電解液の比重平均値は1.235であった。
【0031】
1回目放電後、各セル毎に、SRS液を7〜20ml加え、2回目充電を行なった。2回目充電後、再び放電を行なった(2回目放電、放電時間:2時間25分、比重平均値:1.243)。
さらに、2回目放電後、各セル毎に、SRS液を0〜20ml加え、3回目充電を行なった(充電時間:7時間35分)。3回目充電後、再び放電を行なった(3回目放電、放電時間:3時間10分、比重平均値:1.241)。
3回目放電後、電解液を入れ替え、それにSRS液を0〜20ml加え、4回目充電を行なった。4回目充電後、再び放電を行なった(4回目放電、放電時間:3時間20分、比重平均値:1.253)。
この鉛蓄電池を、充電(5回目充電)し、1ヶ月間使用した後に、各セルの電解液の比重を測定すると、その平均は、1.263であった。
【0032】
この結果を、図3(各セル毎の電解液比重値)および表5(4kWヒーターを用いた放電時の電圧の経時的変化)に示す。なお、中間点である43V到達時間も示す。
【表5】
Figure 2004152522
【0033】
実施例4
本発明の鉛蓄電池再生方法にしたがって、使用済みフォークリフト用鉛蓄電池(VCDH400P−48(400AH/5HR);YUASA製)を再生した。
充電器として、AEW−800ST(愛知電機株式会社製)を用い、放電器として、4kWのヒーターを用いた。
搬入時、電解液の比重が1.249であった上記電池にSRS液を0〜20ml注入して、1回目の充電を行なった。1回目充電後、各セル毎にSRS液を0〜20ml加え、放電した(1回目放電、放電時間:4時間10分)。各セルの電解液の比重平均値は1.262であった。
【0034】
次いで、2回目充電を行なった。2回目充電後、再び放電を行なった(2回目放電、放電時間:4時間50分、比重平均値:1.267)。
さらに、2回目放電後、各セル毎に、SRS液を0〜15ml加え、3回目充電を行なった。3回目充電後、再び放電を行なった(3回目放電、放電時間:4時間55分、比重平均値:1.275)。
3回目放電後、電解液を入れ替え、それにSRS液を0〜15ml加え、4回目充電を行なった。4回目充電後、再び放電を行なった(4回目放電、放電時間:4時間50分、比重平均値:1.277)。
【0035】
この結果を、図4(各セル毎の電解液比重値)および表6(4kWヒーターを用いた放電時の電圧の経時的変化)に示す。なお、中間点である43V到達時間も示す。
【表6】
Figure 2004152522
【0036】
実施例5
本発明の鉛蓄電池再生方法にしたがって、使用済みフォークリフト用鉛蓄電池(VZC 225−48(225AH/5HR);YUASA製)を再生した。
充電器として、AEW−800ST(愛知電機株式会社製)を用い、放電器として、4kWのヒーターを用いた。
搬入時、電解液の比重が1.225であった上記電池にSRS液を5〜12ml注入して、1回目の充電を行なった。1回目充電後、各セル毎にSRS液を0〜15ml加え、放電した(1回目放電、放電時間:3時間)。各セルの電解液の比重平均値は1.250であった。
【0037】
次いで、2回目充電を行なった。2回目充電後、再び放電を行なった(2回目放電、放電時間:2時間50分、比重平均値:1.257)。
さらに、2回目放電後、各セル毎に、SRS液を0〜10ml加え、3回目充電を行なった。3回目充電後、再び放電を行なった(3回目放電、放電時間:2時間50分、比重平均値:1.275)。
3回目放電後、電解液を入れ替え、4回目充電を行なった。4回目充電後、再び放電を行なった(4回目放電、放電時間:2時間55分、比重平均値:1.265)。
【0038】
この結果を、図5(各セル毎の電解液比重値)および表7(4kWヒーターを用いた放電時の電圧の経時的変化)に示す。なお、中間点である43V到達時間も示す。
【表7】
Figure 2004152522
【0039】
実施例6
本発明の鉛蓄電池再生方法にしたがって、使用済み鉛蓄電池(FB15−D8AC−M1B(400AH/5HR);GS製)を再生した。
充電器として、AEW−800ST(愛知電機株式会社製)を用い、放電器として、6kWのヒーターを用いた。
搬入時、電解液の比重が1.215であった上記電池にSRS液を計280ml注入して、1回目の充電を行ない、次いで放電した(1回目放電、放電時間:30分)。各セルの電解液の比重平均値は1.230であった。
【0040】
次いで、2回目充放電を行ない、2回目放電後、SRS液を計280ml加え、3回目充電を行なった。3回目充電後、再び放電を行なった(3回目放電、放電時間:1時間45分、比重平均値:1.230)。
3回目放電後、4回目充放電を行ない、その後、電解液を入れ替え、5回目充電を行なった。5回目充電後、再び放電を行なった(5回目放電、放電時間:2時間、比重平均値:1.267)。さらに6回目充電を行ない、電解液の比重を測定すると、1.259であった。
【0041】
この結果を、図6(各セル毎の電解液比重値)および表8(6kWヒーターを用いた放電時の電圧の経時的変化)に示す。
【表8】
Figure 2004152522
【0042】
【発明の効果】
従来の技術は、サルフェーション(不導体皮膜)の初期段階で対処するものが多かったが、この本発明の方法は、サルフェーションで使用できなくなった鉛蓄電池を新品同様に能力を戻すことができた。
さらに本発明の方法は、鉛蓄電池内の過充・放電による極板の劣化程度にもよるが、電極が正常であれば何回でも再生可能であるため、同じ鉛蓄電池を10年間以上使用することが可能である。
本発明の方法は、電極面に付着した不導体皮膜を化学的に分解するため、従来の物理的な方法のように電極を損傷することがない。また、新品の鉛蓄電池であればサルフェーションを起こしにくくなり、寿命を延ばすことも可能である。
本発明の方法は、電極に付着したサルフェーション(硫酸鉛の結晶)に反応し、鉛蓄電池内の電極自体には悪影響は及ぼさず、サルフェーションを分解するため、分解した後のサルフェーションの進行(電極への付着)を有機溶液(SRS液)の効果によって抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鉛蓄電池再生装置を示す概念図である。
【図2】本発明の鉛蓄電池再生方法の効果を示すグラフである。
【図3】本発明の鉛蓄電池再生方法の効果を示すグラフである。
【図4】本発明の鉛蓄電池再生方法の効果を示すグラフである。
【図5】本発明の鉛蓄電池再生方法の効果を示すグラフである。
【図6】本発明の鉛蓄電池再生方法の効果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 充電器
2 充放電用制御装置
3 タンク
4 ヒーター
5 流入口
6 流出口
7 脚部

Claims (8)

  1. 電極に付着した不導体皮膜を分解して鉛蓄電池を再生する方法であって、
    (1)鉛蓄電池の定格電圧の80%を超える場合、定格電圧の50%〜80%の電圧まで放電する工程、および
    (2)充電時間が5時間以上であり、かつ定格電圧の80%を越えるように鉛蓄電池を充電する工程、
    を含む、前記方法。
  2. 工程(1)の放電が、定格電圧の80%までの放電であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 工程(1)および工程(2)を2回以上繰り返すことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
  4. 放電時間、電圧、電解液の温度および比重を測定して再生程度を評価する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 他の不導体皮膜除去手段を併用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 他の不導体皮膜除去手段が、パルスまたはマイクロカーボンにより電極に付着した不導体膜を物理的に除去するものおよび/または不導体膜を化学的に除去できる物質を添加するものであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  7. 鉛蓄電池を定格電圧の50%〜80%の電圧まで放電するための放電器、該放電器と直接的または間接的に結線され、鉛蓄電池を定格容量まで充電するための充電器、放電器及び充電器と直接的または間接的に結線され、充放電の電流および/または電圧を制御する充放電制御装置を含む、前記鉛蓄電池再生装置。
  8. 定格容量の異なる複数の鉛蓄電池を同時に再生するための、複数の充電器、複数の放電器および複数の充放電制御装置を備えた、請求項7に記載の鉛蓄電池再生装置。
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