JP2004152017A - 設備の保全方式を評価する保全方式評価装置、保全方式評価方法、及びその方法をコンピュータに行わせるためのプログラム並びに記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】設備保全コスト評価装置1は、情報収集手段2及びリスク評価手段3を備える。
情報収集手段2は、保全方式のリスク及びコストを算出するために必要なデータを収集する。必要なデータとして、例えば、前記保全方式の適用時における部位別の故障発生の頻度を示す故障率及び前記保全方式における部位別の故障徴候検出確率等が挙げられる。
リスク評価手段3は、情報収集手段2によって収集されたデータを用いて部位別に故障発生時の被害額及び故障徴候見落確率を算出し、上記部位別の故障率、故障発生時の被害額及び故障徴候見落確率に基づいて部位別のリスクを算出する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラントの保全業務において、保全対象となる設備のリスク評価やリスク改善のための評価を定量的に行う技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラントを構成する設備のリスクは、「被害の大きさ」と「故障の起こりやすさ」という2つのパラメータの乗算結果として算出される。従来技術では、これらの2つの値を経験に基づいて推測し、それらを乗算する事によってリスクを定量化している。
【0003】
例えば、このような設備のリスクを評価するある発明によれば、「被害の大きさ」及び「故障の起こりやすさ」をそれぞれ4つのレベルに分けて、利用者の裁量によってそれぞれのレベルを決定させている。そして、それぞれを縦軸及び横軸とする致命度マトリックス図にプロットし、リスクの大きさに基づいて、最適な設備の保全方法を決定する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−123314公報(段落0007、0008及び図6)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術によれば、「被害の大きさ」及び「故障の起こりやすさ」を経験に基づいてリスクを推測しているため、現実の値との差が生じることが多いという問題があった。
【0006】
また、更に、設備全体の故障保全コストは、保全装置によって故障が実際に生じる前に故障が検出されて保全される場合と、故障が実際に生じてから保全される場合とでは異なるはずである。しかし、従来では、両者の相違を考慮せずにコストを算出していたため、現実的なコストを求める事ができないという問題もあった。
【0007】
さらに、算出方法においても、コストは、損失の改善額と保全設備への投資額との差として計算されているため、複数の保全方式間のコストを比較したり、新たな保全方式のコストを推定したりする等、保全方式の評価を行うことが困難であるという問題もあった。
【0008】
以上の問題に鑑み、設備保全コスト評価において、より現実的にリスク及びコストを算出し、これらによって保全方式の評価を行うことを可能とすることが、本発明が解決しようとする課題である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
図1に、上記課題を解決する本発明の原理図を示す。図1に示すように、上記問題を解決するために、本発明の1態様によれば、設備の保全方式についてリスク及びコストを評価する設備保全コスト評価装置1は、情報収集手段2、リスク評価手段3、トータルコスト算出手段4及び保全方式比較手段5を備える。
【0010】
情報収集手段2は、保全方式のリスク及びコストを算出するために必要なデータを収集する。必要なデータとして、例えば、前記保全方式の適用時における部位別の故障発生の頻度を示す故障率及び前記保全方式における部位別の故障徴候検出確率等が挙げられる。
【0011】
リスク評価手段3は、情報収集手段2によって収集されたデータを用いて部位別に故障発生時の被害額及び故障徴候見落確率を算出し、上記部位別の故障率、故障発生時の被害額及び故障徴候見落確率に基づいて部位別のリスクを算出する。
【0012】
ここで、故障徴候見落確率は、例えば、1から故障徴候検出確率を減算することにより算出される。また、リスクは、例えば、被害額と故障率と故障徴候見落確率との掛算によって算出される。また、損害額は、修復コストと生産ロスコストの2つに分けることが可能である。前者は、修復のためにかかる時間と、単位時間当りの人件費と、作業人数と修復時間との積にスペア部品の代金を加算する事によって算出される。後者は、単位時間当りの生産ロスコストに修復時間を掛算する事により算出される。なお、保全方式が事後保全の場合、故障徴候検出確率は0であり、診断又は点検である場合、故障徴候検出確率は0より大きくかつ1未満である。
【0013】
従来、リスクを被害額と故障の起こりやすさの2つのパラメータに経験的な値を割り当てて、その掛算結果をリスクとして算出していたが、本発明によれば、より多くのパラメータを用いて定量的に見積もる事によって、より現実的なリスクを算出することが可能となる。
【0014】
また、保全方式が、2つの互いに独立した第1及び第2の保全方式の複合保全方式である場合、リスク評価手段3は、複合保全方式の故障徴候検出確率を、第1及び第2の保全方式の故障徴候検出確率の和から、第1及び第2の保全方式の故障徴候検出確率の積を減算することにより算出することとしてもよい。
【0015】
トータルコスト算出手段4は、情報収集手段2によって収集されたデータを用いて、保全方式についてのコストを算出する。コストには、修復コスト、生産ロスコスト、保全方式の導入費、保全費が含まれる。
【0016】
ここで、トータルコスト算出手段4は、保全方式が事後保全でない場合、故障徴候が検出された場合と故障徴候が見落された場合とを分けて、修復コスト及び生産ロスコストを算出する。これは、故障徴候が検出された場合にはこれらのコストが最小限に抑えられ、逆に、故障が発生した場合では、予期しなかった故障と同様のコストが生じると考えられるからである。より具体的には、例えば、故障徴候が検出された場合と、故障徴候が見落されて故障が発生した場合とでは、通常、前者の修復時間の方が後者よりも短いと考えられる。
【0017】
このように、保全装置によって故障が実際に生じる前に故障が検出され保全される場合と、故障が実際に生じてから保全される場合との相違を考慮してコストを算出することにより、従来よりも現実的なコストを求めることが可能となる。
【0018】
また、トータルコスト算出手段4は、保全方式の導入費及び保全費もコストに含めて算出することもできる。これにより、新たな保全方式のコスト推定を行うことが可能となる。
【0019】
また、トータルコスト算出手段4は、2以上の保全方式、例えば現状の保全方式及び新たな保全方式についてコストを算出することが可能である。算出されたコストは、保全方式比較手段5によって比較される。これにより、保全方式間のコストを比較する事が可能となる。
【0020】
上記設備保全コスト評価装置によって行われる動作と同様の手順を含む、コンピュータがによって行われる保全方式評価方法も、上記設備保全コスト評価装置と同様の作用・効果が得られるため、上記課題を解決することが可能である。同様に、上記保全方式評価方法において行われる手順と同様の制御をコンピュータに行わせるコンピュータ・プログラムも、そのプログラムをコンピュータに実行させることによって、上記課題を解決することが可能である。さらに、上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体から、そのプログラムをコンピュータに読み出させて実行させることによっても、上記課題を解決することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、同じ装置等には同じ参照番号をつけ、説明を省略する。
【0022】
まず、図2を用いて、本発明に係わる設備保全コスト評価装置の構成について説明する。設備保全コスト評価装置は、設備の保全にかかわるコストを評価する。図2に示すように、設備保全コスト評価装置10は、情報収集部11、対象設備情報テーブル12、故障情報テーブル13、保全方式情報テーブル14、保全効果−検出確率対応テーブル15、リスク評価部16、トータルコスト算出部17、保全方式比較部18、出力部19を備える。
【0023】
情報収集部11は、リスク及びコストを算出するために必要な情報を収集し、対象設備情報テーブル12、故障情報テーブル13及び保全方式情報テーブル14に書き込む。
【0024】
対象設備情報テーブル12は、保全の対象となる設備に関する情報である対象設備情報を格納する。故障情報テーブル13は、保全の対象となる設備を構成する各部位に発生する故障及びその故障を修復するためにかかるコストに関する情報である故障情報を格納する。保全方式情報テーブル14は、保全の対象となる設備に対する保全方式及びその保全方式にかかるコストに関する情報である保全方式情報を格納する。保全効果−検出確率対応テーブル15は、保全効果に対応させて検出確率を格納する。このテーブルは、保全方式によってどの程度故障徴候を検出できるかを示す故障徴候検出確率を情報収集部11によって得ることができない場合に利用され、予め設備保全コスト評価装置10に備えられる。故障徴候検出確率を得ることができる場合、保全効果−検出確率対応テーブル15は必ずしも必要ではない。
【0025】
リスク評価部16は、情報収集部11によって収集された情報を用いて、保全の対象となる設備に現在適用されている保全方式において、どの部位の故障がもっともリスクが大きい状態にあるのかを定量的に評価する。なお、リスクとは、故障による被害の期待値であり、ある故障が発生した場合の被害の大きさに、その故障の起こりやすさを掛算することによって得られる。ここで、被害の大きさは、修復コストと生産ロスコストとに分けることができる。
【0026】
トータルコスト算出部17は、情報収集部11によって収集された情報を用いて、1以上の保全方式について、保全の効果を示すトータルコストを算出する。トータルコストとは、保全方式の導入コスト、保全コスト、修復コスト及び生産ロスコストの和である。本実施例にかかわるトータルコスト算出部17は、修復コストと生産ロスコストを算出する場合、故障徴候が検出された場合と故障徴候が見落された場合とに分けるという特徴を有する。
【0027】
保全方式比較部18は、トータルコスト算出部17によって複数の保全方式についてトータルコストが算出された場合に、トータルコストに基づいて各保全方式を比較する。出力部19は、リスク評価部16、トータルコスト算出部17及び保全方式比較部18による処理結果を出力する。
【0028】
次に、図3から図6を用いて、対象設備情報テーブル12、故障情報テーブル13、保全方式情報テーブル14及び保全効果−検出確率対応テーブル15に格納される情報について説明する。
【0029】
まず、図3を用いて、対象設備情報テーブル12について説明する。対象設備情報テーブル12は、対象設備情報を格納する。図3に示すように、対象設備情報は、項目として、保全の対象となる設備において、故障が発生するまたは点検を実施する部位iと、その部位iの数NPiを含む。
【0030】
次に、図4を用いて、故障情報テーブル13について説明する。故障情報テーブル13は、故障情報を格納する。図4に示すように、故障情報は、項目として、部位iが1年間で故障する回数NAFi、部位iに故障が発生した場合に要する修復時間の平均値TDi、部位iに故障徴候を検出できずに故障が発生した場合に要する修復時間の平均値TOi、部位iを修復するのに必要な作業者の数NMi、作業者の単価CM、部位i用のスペア(交換部品)ki、部位i用のスペアkiの1個当りの代金CP(ki)、スペアki1個を1年間保管するためにかかる費用CS(ki)、保管するスペアkiの個数NS(ki)、交換する部品kiの使用期限TS(ki)、設備が1時間停止することによって生ずる生産ロスコストCHLを含む。
【0031】
つぎに、図5を用いて、保全方式情報テーブル14について説明する。保全方式情報テーブル14は、保全方式情報を格納する。図5に示すように、保全方式情報は、項目として、保全方式jごとに、運用コストCAGj、導入コストCCj、償却期間TCj及び故障徴候検出確率PDijを含む。
【0032】
運用コストCAGjは、保全方式jを対象設備に対して適用した場合に、1年間以上故障がなくても常に必要となる費用、つまり固定費である。導入コストCCjは、保全方式jを適用する上でオンライン診断システムなどを新規に導入する場合に必要となる費用の総額である。償却期間TCjは、保全方式jを適用する上でオンライン診断システムなどを新規に導入する場合の、そのシステムの償却期間である。故障徴候検出確率PDijは、ある部位iに保全方式jを適用した場合に、どの程度故障徴候を検出できるかを示す確率である。なお、保全方式jとは、どの部位にどの保全を適用するかを考えられる組合せの中からある1つを選んだものである。
【0033】
最後に、図6を用いて保全効果−検出確率対応テーブル15について説明する。保全効果−検出確率対応テーブル15は、保全方式情報テーブル14中の故障徴候検出確率PDijの代わりに備えられる。図6に示すように、保全効果−検出確率対応テーブル15には、保全効果を段階的に分け、各段階に対応する故障徴候検出確率を格納する。図6では、例として、保全効果は優、良、可、不可の4段階に分けられている。
次に、設備保全コスト評価装置10において行われる処理について説明する。まず、図7を用いて、設備保全コスト評価装置10において行われる処理の大きな流れについて説明する。
【0034】
図7に示すように、設備保全コスト評価装置10の情報収集部11は、故障が発生するまたは点検を実施する部位について、対象設備情報、故障情報及び保全方式情報を収集し、それぞれ対象設備情報テーブル12、故障情報テーブル13及び保全方式情報テーブル14に格納する。その際に、各部位について、どのような保全が適用されているか、それによってどの程度故障の徴候を事前に検出できるかを調査する(手順1)。各情報は、データベース(不図示)を検索したり、入力部(不図示)から利用者によって入力されたりする事により、収集される。
【0035】
続いて、リスク評価部16は、対象設備情報テーブル12、故障情報テーブル13、保全方式情報テーブル14及び保全効果−検出確率対応テーブル15に格納された情報に基づいて、故障が発生し得る部位それぞれについて、現在適用されている保全方式におけるリスクを算出する。これにより、現状において、どの部位のリスクが大きくどの部位のリスクが小さいのか知ることができる。リスクが大きい部位は大きい被害をもたらす可能性が高いといえるので、その部位の故障に対してどのように対策を講ずるべきであることがわかる(手順2)。
【0036】
次に、リスク評価の結果、対策を講ずるべき部位が特定されると、現在適用されている保全方式と、現在適用されている保全方式以外の1以上の他の保全方式について検討する。そのために、トータルコスト算出部17は、対象設備情報テーブル12、故障情報テーブル13、保全方式情報テーブル14及び保全効果−検出確率対応テーブル15に格納された情報に基づいて、現在の保全方式と1以上の他の保全方式について、その保全方式を対象設備に適用した場合の保全効果を示すトータルコストを算出し、保全方式比較部18は、トータルコストに基づいて各保全方式を比較する。これにより、コスト面からみて最適な保全方式を知ることが可能となる(手順3)。
【0037】
1.リスクの評価
以下、リスク評価処理についてより詳しく説明する。リスク評価の手順は、大別して、(1)各部位の故障による被害度の算出、(2)各部位に適用している保全方式の効果の算出、及び(3)各部位のリスクの算出に分けられる。以下、順に(1)から(3)の手順について説明する。なお、リスク評価において用いられる数値を、図8に示す。図8において、太い線の枠で囲まれた値は、情報収集部11によって収集される値であり、二重枠で囲まれた値は、最終的に得られる故障部位別のリスクである。矢印は、数値演算を示し、矢印の元にある2以上の値は算出元となる値であり、矢印の先に示される細い線の枠で囲まれた値は数値演算の結果得られる値である。
【0038】
(1)各部位の故障による被害度の算出
まず、部位iが1回故障した際に発生する平均被害額を示すCiを算出する。被害度Ciは、大きく分けて、故障1回当りの平均修復コストCOiと故障1回当りの平均生産ロスコストCLiの2つの和として示すことができる。数式で示すと、(1)式のようになる。
【0039】
【数1】
【0040】
このうち、修復コストCOiは、故障1回当りの修復のための平均人件費CIMiと、部品交換又は修理の代金CP(ki)の和として示すことができる。数式で示すと、(2)式のようになる。
【0041】
【数2】
【0042】
修復のための人件費CIMiは、作業員の時間単価CM、修復作業に要する人数NMiと、平均修復時間TOiの積として示す事ができる。数式で示すと、(3)式のようになる。
【0043】
【数3】
【0044】
生産ロスコストCLiは、単位時間あたりの生産ロスコストCHLと平均修復時間TOiの積として示す事ができる。数式で示すと、(4)式のようになる。
【0045】
【数4】
【0046】
なお、作業員の時間単価CM、人数NMi、平均修復時間TOi、生産ロスコストCHLは、故障情報テーブル13から取得される。
(2)各部位に適用している保全の効果の算出
続いて、各部位に適用している保全方式の効果を算出する。ある部位iにただ1つの保全方式jを適用する場合は、保全方式情報テーブル14に格納されている故障徴候検出確率PDijを用いる。ここで、故障徴候検出確率PDijを取得することが困難である場合、専門家や担当者等によって段階的に評価された保全方式の効果を、保全効果−検出確率対応テーブル15に基づいて故障徴候検出確率PDijに置き換えることとしても良い。
【0047】
また、1つの部位iに複数の保全(たとえば保全a、保全b)を適用する場合は、それらが独立に故障徴候を検出すると仮定し、その故障徴候検出確率をそれぞれpa、pbとすると、全体として部位iの故障徴候の検出確率PDiは、以下の(5)式のように示される。
【0048】
【数5】
【0049】
図9に、複数の独立な保全についての故障徴候検出確率の合成を示す。(5)式において算出されるPDiは、図9においては、斜線が施された部分の面積に該当する。
【0050】
(3)各部位のリスクの算出
次に、各部位のリスクを算出する。そのために、まず、保全方式jを適用しても部位iの故障徴候を見落して故障が発生する1年間あたりの回数NAOijを算出する。NAOijは、以下の(6)式で示すことができる。ここで、(6)式中のNPiは対象設備情報テーブル12から取得され、NAFiは、故障情報テーブル13から取得され、PDijは、先の手順で算出されている。
【0051】
【数6】
【0052】
部位iの故障による1年当りの被害額の期待値(リスク)Riは、NAOiと、先の手順で算出された被害度Ciの積として得ることができる。数式で示すと(7)式のようになる。
【0053】
【数7】
【0054】
このようにして、部位別の1年当りの被害額の期待値を評価すると、つぎに、リスク評価部16は部位別の1年当りの被害額の期待値の評価結果をランキングする。また、図10に示すように、リスク評価部16は、各部位について、故障の起こりやすさを示すNAOij(横軸)に対する故障1回当りの被害度Ci(縦軸)を示すグラフに、計算結果をプロットし、出力部19にそのグラフを出力させる。
【0055】
たとえば、1年あたりの被害額の期待値が同じであっても、故障による被害は小さいが故障が起こりやすい場合もあれば、故障による被害は大きいが故障頻度が小さい場合もある。前者の場合、図10に示すグラフにおいて、プロットはグラフの右下寄りに位置する。この場合、例えば、設備診断技術などの故障頻度が小さくなるような対策を講じる事が望ましい。一方、後者の場合、図10に示すグラフにおいて、プロットはグラフの左上寄りに位置する。この場合、例えば、保険をかけるなどの対策を講じる事が望ましい。このように、図10に示すグラフにおけるプロットの位置に応じて、その部位のリスクの性質に応じた適切な対策を検討する事ができる。
【0056】
2.トータルコストの算出
次に、トータルコストの算出処理についてより詳しく説明する。トータルコスト算出部17は、保全対象の設備について保全方式を定めたときに、リスクを含めたトータルコストを算出する。これによって、顧客に対して保全方式の改善案を提案する場合に、トータルコストで定量的に比較することが出来る。
【0057】
以下、図11を用いて、トータルコストの算出処理の流れについて説明する。まず、トータルコストを算出するに先立って、情報収集部11は、対象となる設備の構成に関する情報及び発生し得る故障についての情報を取得する(ステップS1)。
【0058】
次に、想定している故障の場合、ステップS2に進む。想定していない故障の場合(ステップS9)、ステップS5に進む。
ステップS2において、トータルコスト算出部17は、想定している劣化又は故障(以下、故障と総称する)を特定する。そして、その故障について保全方式を定める(ステップS3)。なお、ステップS2の後、ステップS3に先立って、想定している故障について、劣化の度合いを表す関数或いは故障率関数を得ることとしてもよい(ステップS7)。
【0059】
続いて、ステップS3において定められた保全方式について、故障発生回数等を推定し(ステップS4)、それらの値を用いて、保全コスト及び生産ロスコストを算出する(ステップS5)。ステップS5の後、トータルコストを算出すべき他の保全方式がある場合(ステップS8)、S3に戻って処理を繰り返す。
【0060】
トータルコストを算出すべき全ての保全方式について、保全コスト及び生産ロスコストを算出し終えた場合、算出された保全コスト及び生産ロスコストに基づいて、各保全方式についてトータルコストを算出し(ステップS6)、処理を終了する。
【0061】
次に、上記のトータルコストの算出処理の考え方について説明する。まず、対象となる設備は時間Tごとに定期的に保全され、保全後は完全に整備された状態にあると仮定する。トータルコスト算出において、この定期保全から定期保全の間の保全コストと生産ロスコストを見積もる。
【0062】
設備には次の保全がそれぞれの故障に対してなされているものとする。
(1)保全A : 予知保全(設備診断技術適用)
(2)保全B : 日常点検
(3)保全C : 事後保全
(4)保全D : 想定していない故障に対する保全
そして、各故障に対して、上記保全A、B、C及びDのうちのどの保全を適用するかを決める。それらの組合せが対象設備に対する1つの保全方式となる。図12を用いて、個々の故障に対する保全と、それらの組合せとしての保全方式を説明する。図12において、各保全方式において、想定されている故障F1、F2、・・・及び想定されていない故障について保全A、B、C及びDの何れかを適用するのか示されている。例えば、保全方式1は、故障F1には保全Aを適用し、故障F2には保全方式Bを適用し、想定されていない故障には保全Dを適用する組合せである。
【0063】
以下、保全方式を定めたときに、保全Aが適用されている故障をAiと表し、保全Aが適用されている故障の集合をA群の故障と呼ぶことにする。保全B、C及びDについても同様とする。
【0064】
このようにして保全方式を決定すると、各保全方式についてトータルコストを算出する。算出の際、故障は、A群、B群、C群及びD群に分けられ、それぞれの群に応じた方法で保全コスト及び生産ロスコストは算出される。
【0065】
(1)A群の故障
A群の故障についての保全コスト及び生産ロスコストを算出するためには、時間に対する故障率関数あるいは時間に対する劣化の度合いを表す関数に基づいて、保全A(つまり、設備診断技術)によって故障Aiがいつ検出されるのか知ることが必要である。これは、B群及びC群でも同様である。図13に劣化検出のモデルの一例を示す。図13に示すように、検出可能な閾値(検出閾値)に達すると、劣化は検出され、保全が行われる。保全が行われると、設備は完全に整備された状態になると仮定すると、保全後、次に劣化が検出されるまでの時間は、ほぼ一定である。図13に示すモデルに基づくと、定期的に劣化が検出されると考えられる。この場合、期間T内で劣化が検出される回数は、以下の(8)式で求める事ができる。
【0066】
回数=T/{(劣化が閾値に達するまでに要す時間)+(保全に要す時間)}
・・・・(8)
A群の故障の平均コストは、以下のように算出される。
【0067】
平均コスト=設備診断適用コストJAi+年間故障徴候検出回数×1回あたりの修復保全コスト+年間故障徴候見落回数×1回あたりの修復保全コスト+年間故障徴候検出回数×1回あたりの生産ロスコスト+年間故障徴候見落回数×1回あたりの生産ロスコスト
(2)B群の故障
B群の故障は、A群の故障と同様にして見積もることができる。
【0068】
平均コスト=日常点検適用コストJBk+年間故障徴候検出回数×1回あたりの修復保全コスト+年間故障徴候見落回数×1回あたりの修復保全コスト+年間故障徴候検出回数×1回あたりの生産ロスコスト+年間故障徴候見落回数×1回あたりの生産ロスコスト
(3)C群の故障
C群の故障の場合、故障発生後に保全を行うため、故障徴候見落回数を考慮する必要はないため、平均コストは、以下のようにして見積もる事ができる。
【0069】
平均コストJCl=年間故障徴候検出回数×1回あたりの修復保全コスト+年間故障徴候検出回数×1回あたりの生産ロスコスト
(4)D群の故障
D群の故障は、想定できない故障であるからまったく推定できない。適当に経験かデータから平均コストを求める。
【0070】
平均コストJD
全体の平均コストJは、各群に属する全ての故障についての平均コストの総和であるため、(9)式で示す事ができる。
【0071】
【数8】
【0072】
以下、トータルコストの算出について詳しく説明する。トータルコストの算出手順は、大別して、(1)年間故障徴候検出回数と年間故障徴候見落回数の算出、(2)年間故障徴候検出時修復時間と年間故障徴候見落時修復時間の算出、(3)故障徴候検出1回当りの生産ロスコストと故障徴候見落1回当りの生産ロスコストの算出、(4)年間故障徴候検出時生産ロスコストと年間故障徴候見落時生産ロスコストの算出、(5)年間生産ロスコストの算出、(6)平均修復時間の算出、(7)各部位の修復1回あたりの修復コスト算出、(8)各交換部品の年間交換回数の算出、(9)故障部位別年間修復コストの算出、(10)年間スペア保管代の算出、(11)年間修復コストの算出、(12)1年当りの導入コストの算出、及び(13)年間トータルコストの算出に分けられる。以下、順に(1)から(13)の手順について説明する。
【0073】
なお、トータルコストの算出において用いられる数値を、図14に示す。図8と同様に、図14において、太い線の枠で囲まれた値は、情報収集部11によって収集される値であり、二重枠で囲まれた値は、最終的に得られる故障部位別のリスクである。矢印は、数値演算を示し、矢印の元にある2以上の値は算出元となる値であり、矢印の先に示される細い線の枠で囲まれた値は数値演算の結果得られる値である。
【0074】
(1)年間故障徴候検出回数と年間故障徴候見落回数の算出
年間故障徴候検出回数NADijとは、部位iに対して保全方式jを適用した場合に、1年間あたりに故障徴候を検出できる回数の推定値であり、年間故障徴候見落回数NAOijとは、部位iに対して保全方式jを適用した場合に、1年間あたりに故障徴候を見落して故障が発生する回数の推定値である。それぞれ、(10)式及び(11)式で示される。
【0075】
【数9】
【0076】
【数10】
【0077】
なお、式中の部位iの数NPiは、対象設備情報テーブル12から、部位iの年間故障回数NAFiは、故障情報テーブル13から、故障徴候検出確率PDijは保全方式情報テーブル14から取得することができる。
【0078】
(2)年間故障徴候検出時修復時間と年間故障徴候見落時修復時間の算出
年間故障徴候検出時修復時間TADijは、部位iに対して保全方式jを適用して故障徴候を検出した場合の修復時間1年間分の総和の推定値であり、年間故障徴候見落時修復時間TAOijは、部位iに対して保全方式jを適用して故障徴候を見落した場合の修復時間1年間分の総和の推定値である。それぞれ、(12)式及び(13)式で示される。
【0079】
【数11】
【0080】
【数12】
【0081】
なお、式中の故障徴候検出時平均修復時間TDi及び故障発生時平均修復時間TOiは、故障情報テーブル13から取得することができる。年間故障徴候検出回数NADij及び年間故障徴候見落回数NAOijは、(1)において算出される。
【0082】
(3)故障徴候検出1回当りの生産ロスコストと故障徴候見落1回当りの生産ロスコストの算出
故障徴候検出1回当りの生産ロスコストCIDLijとは、部位iに対して保全方式jを適用して故障徴候を検出した場合の1回あたりの生産ロスコストの推定値であり、故障徴候見落1回当りの生産ロスコストCIOLijとは、部位iに対して保全方式jを適用して故障徴候を見落した場合の1回あたりの生産ロスコストの推定値である。それぞれ、(14)式及び(15)式で示される。
【0083】
【数13】
【0084】
【数14】
【0085】
なお、式中の1時間当たり生産ロスコストCHLは、故障情報テーブル13から取得される。
(4)年間故障徴候検出時生産ロスコストと年間故障徴候見落時生産ロスコストの算出
年間故障徴候検出時生産ロスコストCDLijとは、部位iに対して保全方式jを適用して故障徴候を検出した場合の生産ロスコスト1年間分の総和の推定値であり、年間故障徴候見落時生産ロスコストCOLijとは、部位iに対して保全方式jを適用して故障徴候を見落した場合の生産ロスコスト1年間分の総和の推定値である。それぞれ、(16)式及び(17)式で示される。
【0086】
【数15】
【0087】
【数16】
【0088】
なお、式中の年間故障徴候検出回数NADij及び年間故障徴候見落回数NAOijは、(1)で算出され、故障徴候検出1回当りの生産ロスコストCIDLij及び故障徴候見落1回当り生産ロスコストCIOLijは、(3)において算出される。
【0089】
(5)年間生産ロスコストの算出
まず、部位iに対して保全方式jを適用した場合の年間生産ロスコストの推定値である部位別年間生産ロスコストCLijを以下の(18)式を用いて算出する。
【0090】
【数17】
【0091】
なお、式中の年間故障徴候検出時生産ロスコストCDLij及び年間故障見落時生産ロスコストCOLijは、(4)において算出される。
続いて、部位別の年間生産ロスコストCLijを部位iについて総和する事により、設備全体に対して保全方式jを適用した場合の年間生産ロスコストの推定値である年間生産ロスコストCALjを算出する。数式で示すと(19)式のとおりとなる。
【0092】
【数18】
【0093】
(6)平均修復時間の算出
平均修復時間TRijは、部位iに対して保全方式jを適用した場合に、故障徴候を事前に検出するケースと見落すケースをあわせた全体としての平均修復時間の推定値である。数式で示すと(20)式のとおりとなる。
【0094】
【数19】
【0095】
式中の年間故障徴候回数NADij及び年間故障徴候見落回数NAOijは、(1)で算出され、年間故障徴候検出時修復時間TADij及び年間故障徴候見落時修復時間TAOijは(2)において算出される。
【0096】
(7)各部位の修復1回あたりの修復コスト算出
まず、各部位iについて保全方式jを適用した場合の修復1回あたりの修復作業費CIMiを以下の(21)式に基づいて算出する。
【0097】
【数20】
【0098】
続いて、各部位iの修復1回あたりの修復コストCRiを、修復1回あたりの修復作業費CIMiと部品交換/修理の代金CP(ki)の和として算出する。式で示すと、(22)式のようになる。
【0099】
【数21】
【0100】
式中の部品交換/修理の代金CP(ki)は、故障情報テーブル13から取得される。
(8)各交換部品の年間交換回数の算出
各部位iについて保全方式jを適用した場合の1年あたりの交換回数NEijは、交換する部品の使用期限TS(ki)、年間故障徴候検出回数NADij、年間故障徴候見落回数NAOijを用いて、次の(23)式に基づいて算出される。
【0101】
【数22】
【0102】
式中の交換する部品の使用期限TS(ki)は故障情報テーブル13から取得され、年間故障徴候検出回数NADij及び年間故障徴候見落回数NAOijは、(1)において算出される。
【0103】
(9)故障部位別年間修復コストの算出
各部位iについて保全方式jを適用した場合の、1年あたりの修復コストCIARijは修復1回あたりの修復コストCRiと1年あたりの交換回数NEijとから、次の(24)式に基づいて算出される。
【0104】
【数23】
【0105】
式中の修復1回あたりの修復コストCRiは、(7)で、1年あたりの交換回数NEijは(8)において算出される。
(10)年間スペア保管代の算出
各部位iについて1年間あたりのスペアの保管代CAS(ki)は、スペア1個あたりの年間スペア保管代CS(ki)とそれぞれのスペアの数NS(ki)から、次の(25)式に基づいて算出される。
【0106】
【数24】
【0107】
式中のスペア1個あたりの年間スペア保管代CS(ki)とそれぞれのスペアの数NS(ki)は、故障情報テーブル13から取得される。
(11)年間修復コストの算出
対象設備全体について保全方式jを適用した場合の、1年あたりの修復コストCARjは、故障部位別年間修復コストCIARijと年間スペア保管代CAS(ki)から、次の(26)式に基づいて算出される。
【0108】
【数25】
【0109】
式中の故障部位別年間修復コストCIARijは、(9)で算出され、年間スペア保管代CAS(ki)は、(10)において算出される。
(12)1年当りの導入コストの算出
保全方式jを適用した場合の1年あたりの導入コストCACjは、各保全方式jの導入コストCCjをその償却期間TCjで割算することによって算出される。数式で示すと次の(27)式のようになる。
【0110】
【数26】
【0111】
式中の導入コストCCj及び償却期間TCjは、保全方式情報テーブル14から取得される。
(13)年間トータルコストの算出
対象設備全体に対して各保全方式jを適用した場合の、年間トータルコストCTjは、以下の(28)式で示すように、
算出する。
【0112】
【数27】
【0113】
式中において、運用コストCAGjは、保全方式情報テーブル14から取得され、年間生産ロスコストCALjは(5)で算出され、CARjは(11)で算出され、CACjは(12)において算出される。
【0114】
上記のようにトータルコスト算出部17がトータルコストを算出すると、保全方式比較部18は、各保全方式のトータルコストの算出結果を比較する。図15に比較結果の一例を示す。図15において、現在設備に適用されている保全方式と、他の保全方式1、2及び3のトータルコストが比較されている。この例によると、保全方式3のトータルコストが最も低いため、保全対象となる設備に、現状の保全方式の代わりに保全方式3を適用する事により、より低コストでより良い保全効果を得ることが可能である事が分かる。このように、設備保全コスト評価装置10によれば、複数の保全方式についてトータルコストを算出し、そのトータルコストに基づいて、各保全方式の効果を定量的に比較する事が可能となる。
【0115】
以下、上記設備保全コスト評価装置10によって行われる処理について、具体的な設備を例にとって説明する。なお、以下の説明は具体的であるが、説明を明確にするためであり、本発明を限定する趣旨ではない。
【0116】
まず、例として採用する具体的な設備について説明する。
この例では、半導体を生産する工場内の空調設備における送風機について、保全方式のコストを評価する。空調設備の運転条件及び構成は以下の通りである。
【0117】
・通年24時間運転
・工場は3フロアであり、1フロアにつき送風機10台設置される。工場内で送風機は合計30台存在する。
【0118】
・送風機の監視サーバは各フロアに1台ずつ設置される。工場内で送風機の監視サーバは合計3台存在する。
・送風機に使用されるモータは600V以下である。
【0119】
・現在は、空調設備に診断方法を適用しておらず、事後保全を行っているのみである。
図16に、保全対象となる設備となる送風機の保全設備の一例を示す。図16において、送風機の監視サーバに、送風機の状態を監視する監視ユニットが接続されている。図16において、監視ユニットとして、振動系監視ユニット、電気系監視ユニット及び温度系監視ユニットの3種の監視ユニットが示されている。振動系監視ユニットは、モータ及び送風機の振動を検出する振動検出センサを備え、異常な振動を検出すると故障が発生したと判断する。電気系監視ユニットは、モータ電流を検出するセンサを有し、電流値の異常な低下を検出すると故障が発生したと判断する。温度系監視ユニットは、モータ近辺の温度を検出するセンサを有し、異常な温度上昇を検出すると故障が発生したと判断する。なお、図16において、簡略化のために送風機監視サーバに接続される送風機は1台となっているが、上記例の工場では、実際には、監視サーバ1台は10台の送風機を監視する。
【0120】
以下、上記設備のリスク評価必要な情報を収集し、リスク評価を行う。まず、図17を用いて、部位別故障率の取得方法について説明する。まず、上記設備に用いられている600Vのモータの故障率とその修復時間及び三相誘導電動機に発生する故障の部位別比率に関する情報を取得する。これらの情報は、例えば、既存の書籍や経験等から取得することが可能である。図17(a)に600Vのモータの故障率とその修復時間を示す表の一例を、図17(b)に三相誘導電動機(モータ)に発生する故障の部位別比率を示す表の一例を示す。
【0121】
ある装置を構成する部位別の故障率は、その装置全体の故障率に部位別の故障比率を算出することによって得ることができる。従って、モータ全体の故障率(図17(a)に示される表中にある)に、モータに発生する故障の部位別比率(図17(b)に示される表中にある)を掛算する事により、図17(c)に示すようなモータを構成する部位それぞれについての故障率を得ることができる。
【0122】
続いて、送風機を構成するモータ以外の部位、つまり、ベルト及びファンについての年間故障率を取得する。まず、ベルトの平均寿命は、例えば、鹿島技術研究所年報第46号「建築設備機器の寿命推定(その1)−間欠運動ファンのVベルト−」によれば、12500時間である。一方、モータの軸受けの寿命は約30000時間であり、その故障率は図17(c)に示すように0.004905である。ベルトの寿命は軸受けの寿命の半分であるため、ベルトの故障率は軸受けのそれの約2倍、つまり0.01と設定することができる。
【0123】
一方、ファンは、さらに軸受けと羽根車に分けることができるが、ファンの軸受けの故障率はモータのそれと同じであると設定した。さらに、現状では、事後保全を行っているため、故障徴候検出確率は「0」である。従って、以上のようにして得られた年間故障率は、そのまま、年間故障徴候見落回数と同じとなる。これにより、図18に示すような、1台の送風機の部位別の年間故障徴候見落回数を示す表を得る。
【0124】
次に、図19に示すようにして、1台の送風機の部位別年間故障徴候見落回数の表(図19(a)に示す)に、保全対象設備に備えられる送風機の台数(図19(b)に示す)、つまり30を掛算する事により、図19(c)に示すような設備全体における故障部位別の年間故障徴候見落回数の表を得ることができる。
【0125】
続いて、故障部位ごとのスペアのかかる費用の代金を取得する。図20に、故障部位ごとのスペアにかかる費用を示す表の一例を示す。
さらに、部位別に、故障を修復するための修復作業費を算出する。図21に示すように、部位別修復作業費(図21(d)に示す)は、作業者1人の単位時間当りの作業費(図21(a)に示す)と、部位別の修復作業に要する作業人数(図21(b)に示す)と、故障発生時にその部位の修復作業にかかる時間(図21(c)に示す)を掛算する事によって、算出することができる。
【0126】
次に、図22に示すようにして、部位別のスペアにかかる費用(図22(a)に示す)と、先ほど算出した部位別の修復作業費(図22(b)に示す)とを加算する事により、1回当りの部位別の修復コスト(図22(c)に示す)を算出する。
【0127】
次に、以下の式に基づいて、設備対象となる半導体工場が停止した場合の1時間あたりの生産ロスコストを算出する。
1時間当りの生産ロスコスト=工場の年間売上高/年間運転日数/工場の数/1日当りの運転時間
今回の例では、3つの工場全体の半導体の売上高を年間約3600億円、1日当り売上高約10億円、従って、工場1つ当り年間2から3億円、1フロア当り1日約1億円の売上であると見積もる事ができる。工場は24時間運転であるため、この例の場合、1時間当りの生産ロスコストは、4166667円として算出される。
【0128】
さらに、図23に示すようにして、この1時間あたりの生産ロスコスト(図23(a)に示す)に、故障発生時に部位別の修復作業時間(図23(b)に示す)を掛算する事により、部位別の故障1回当りの生産ロスコスト(図23(c)に示す)を算出する。
【0129】
次に、図24に示すようにして、先に算出した故障部位別修復コスト(図24(a)に示す)と、部位別の故障1回当りの生産ロスコスト(図24(b)に示す)とを加算することにより、部位別の故障1回あたりのロス(被害度又は被害額)(図24(c)に示す)を算出する。
【0130】
最後に、図25に示すようにして、先に算出した保全対象設備全体における部位別の年間の故障徴候見落回数(図25(a)に示す)に、故障1回当りのロス(図25(b)に示す)を掛算する事により、故障部位別のリスク(図25(c)の右端欄に示す)を算出する。
【0131】
リスク評価部16は、この故障部位別のリスクをランキングする。さらに、リスク評価部16は、上記の計算に基づいて、各部位についての故障の起こりやすさを示す年間故障徴候見落回数NAOij(横軸)に対する故障1回当りの被害度Ci(縦軸)を示すグラフに、計算結果をプロットする。図26に、各部位についての故障の起こりやすさを示す年間故障徴候見落回数NAOij(横軸)に対する故障1回当りの被害度Ci(縦軸)を示すグラフの一例を示す。
【0132】
図26から、この例に係わる設備の場合、現状では、部位別の年間故障発生回数についてはベルトのそれが最大であり、故障1回当りの部位別のロスについては、モータの軸受けのそれが最大である事が分かる。
【0133】
また、さらに、リスク評価部16は、上記の計算に基づいて、各部位についての故障の起こりやすさを示す年間故障徴候見落回数NAOij(横軸)に対する故障部位別のリスクRij(縦軸)を示すグラフに、計算結果をプロットすることとしてもよい。図27に、各部位についての故障の起こりやすさを示す年間故障徴候見落回数NAOij(横軸)に対する故障部位別のリスクRij(縦軸)を示すグラフの一例を示す。図27から、この例に係わる設備の場合、一番保全対策が必要であると考えられる部位は、リスクが最も高い部位、つまり、モータの軸受けであることがわかる。
【0134】
次に、トータルコストの算出について説明する。まず、部位別の年間故障率を算出する。この年間故障率の算出方法は、リスク評価の場合と同じであるため、説明を省略する。
【0135】
さらに、保全方式を決定する。この例では、振動系監視ユニット及び電力系監視ユニットを用いる保全方式1、振動系監視ユニットを用いる保全方式2、電力系監視ユニットを用いる保全方式3、温度系監視ユニットを用いる保全方式4及び事後保全(現状)の保全方式5をトータルコストの算出対象となる保全方式として決定する。なお、保全方式1から4は上述の設備診断に該当するため、A群の故障についての算出方法を適用し、保全方式5は事後保全であるため、C群の故障についての算出方法を適用する。
【0136】
続いて、各保全方式についての故障徴候検出確率を取得する。この例では、故障徴候検出確率が数値で与えられているのではなく、専門化等の判断によって段階的に評価された保全効果を保全効果−検出確率対応テーブル15に基づいて故障徴候検出確率に変換するとして説明する。図28に、保全効果の評価を保全効果−検出確率対応テーブル15に基づいて故障徴候検出確率に変換する方法について説明する図を示す。図28(a)に示すように、各保全方式において採用されている診断方法の部位別の効果が段階的に評価されている。図28(a)に示す各部位別の効果のそれぞれを図28(b)に示す保全効果−検出確率対応テーブル15に基づいて故障徴候検出確率に変換することにより、図28(c)に示すような診断方法の部位別の故障徴候検出確率を得ることができる。ここで、図28(c)では、振動系監視ユニット及び電力系監視ユニットを用いる保全方式1についての部位別の故障徴候検出確率は、空欄のままである。
【0137】
以下、保全方式1のような振動系監視ユニット及び電力系監視ユニットを用いた複合診断についての部位別の故障徴候検出確率の算出方法について説明する。図9に示すように、診断方法Aと診断方法Bとを複合した診断方法Cの故障徴候検出確率cは、診断方法Aの故障徴候検出確率をa、診断方法Bの故障徴候検出確率をbとすると、「c=a+b−ab」から算出される。
【0138】
従って、例えば、保全方式1におけるファンの軸受けについての故障徴候検出確率の算出は、以下のようにして行う事ができる。
保全方式1におけるファンの軸受けについての故障徴候検出確率=
(保全方式2におけるファンの軸受けについての故障徴候検出確率)
+(保全方式3におけるファンの軸受けについての故障徴候検出確率)
−(保全方式2におけるファンの軸受けについての故障徴候検出確率)
×(保全方式2におけるファンの軸受けについての故障徴候検出確率)
=0.9+0.3−0.9×0.3
=0.93
以上のようにして他の部位についても同様の計算をすることにより、保全方式1についての部位別の故障徴候検出確率を得ることができる。このようにして算出された保全方式1についての部位別の故障徴候検出確率の例は、図29(b)に示されている。
【0139】
次に、図29に示すようにして、部位別の年間故障率(図29(a)に示す)と、先ほど算出された部位別の年間故障徴候検出確率(図29(b)に示す)とを掛算する事により、各保全方式についての部位別の年間故障徴候検出回数(図29(c)に示す)を算出する。
【0140】
さらに、各保全方式についての部位別の年間故障徴候見落回数を算出する。部位別の年間故障徴候見落回数は、以下のようにして算出される。
部位別の年間故障徴候見落回数=(部位別検出率)×(1−部位別の年間故障徴候検出確率)
図30(c)に、部位別の年間故障率(図30(a)に示す)と部位別の年間故障徴候検出確率(図30(b)示す)とから算出された部位別の年間故障徴候見落回数の一例を示す。
【0141】
次に、図31に示すように、以上のようにして算出された部位別の年間故障徴候検出回数(図31(a)に示す)に、設備に含まれる送風機の台数(図31(b)に示す)を掛算する事により、設備全体での、部位別の年間故障徴候検出回数(図31(c)に示す)を算出する。
【0142】
同様に、図32に示すようにして、以上のようにして算出された部位別の年間故障徴候見落回数(図32(a)に示す)に、設備に含まれる送風機の台数(図32(b)に示す)を掛算する事により、設備全体での、部位別の年間故障徴候見落回数(図32(c)に示す)を算出する。
【0143】
次に、故障徴候を検出した場合の1回当りの生産ロスコストと、故障徴候を見落した場合の1回当りの生産ロスコストを算出する。まず、故障徴候を検出した場合の生産ロスコストの算出について説明する。
【0144】
故障徴候を1回検出した場合の生産ロスコストは、故障徴候検出時の部位別の修復時間に、1時間当りの生産ロスコストを掛算することにより算出することができる。図33(c)に、故障徴候検出時の部位別の修復時間(図33(a)に示す)と、1時間あたり生産ロスコスト(図33(b)に示す)とから算出された、故障徴候を1回検出した際の生産ロスコストの一例を示す。
【0145】
また、故障徴候を1回見落した場合の生産ロスコストは、故障徴候を見落して故障が発生した場合の部位別の修復時間に、1時間当りの生産ロスコストを掛算することにより算出することができる。図34(c)に、故障発生時の部位別の修復時間(図34(a)に示す)と、1時間あたり生産ロスコスト(図34(b)に示す)とから算出された、故障発生1回当りの生産ロスコストの一例を示す。故障徴候検出時の部位別の修復時間と、故障発生時の部位別の修復時間とが、互いに異なる事に注意されたい。
【0146】
続いて、故障徴候を検出した場合の部位別の年間の生産ロスコストと、故障徴候を見落した場合の部位別の年間の生産ロスコストを算出する。故障徴候を検出した場合の部位別の年間の生産ロスコストは、部位別の年間の故障徴候検出回数に、故障徴候を1回検出した際の部位別の生産ロスコストを掛算する事により算出される。同様に、故障発生時の部位別の年間の生産ロスコストは、部位別の年間の故障徴候見落回数に、故障発生1回当りの部位別の生産ロスコストを掛算する事により算出される。図35(a)に、故障徴候を検出した場合についての部位別の年間の生産ロスコストの算出結果の一例を、図35(b)に、故障発生時についての部位別の年間の生産ロスコストの算出結果の一例を示す。
【0147】
部位別の年間生産ロスコストは、以上のようにして算出された故障徴候を検出した場合の部位別の年間の生産ロスコストと、故障徴候を見落した場合の部位別の年間の生産ロスコストとの和として得ることができる。さらに、保全方式ごとに、部位別の年間の生産ロスコストを合計する事により、保全方式別の年間の生産ロスコストを得ることができる。図35(c)に、部位別の年間の生産ロスコストと保全方式別の年間の生産ロスコストの算出結果の一例を示す。
【0148】
次に、保全方法別に、故障部位別の平均修復時間を算出する。上記において、保全方式別の故障部位別の年間故障徴候検出回数、部位別の故障徴候検出時部位別修復時間、保全方式別の故障部位別の年間故障徴候見落回数及び部位別の故障発生時部位別修復時間を取得或いは算出している。故障部位別の平均修復時間は、これらを用いて、以下の式で表す事ができる。
【0149】
保全方式別故障部位別の平均修復時間=(各保全方式の故障部位別年間故障徴候検出回数×故障徴候検出時部位別修復時間+各保全方式の故障部位別年間故障徴候見落回数×故障発生時部位別修復時間)/(各保全方式の故障部位別年間故障徴候検出回数+各保全方式の故障部位別年間故障徴候見落回数)
図36(e)に、保全方式別の故障部位別の年間故障徴候検出回数(図36(a)に示す)、部位別の故障徴候検出時部位別修復時間(図36(b)に示す)、保全方式別の故障部位別の年間故障徴候見落回数(図36(c)に示す)及び部位別の故障発生時部位別修復時間(図36(d)に示す)に基づいて算出された保全方式別の故障部位別の平均修復時間の一例を示す。
【0150】
続いて、保全方式別の故障部位別の平均修復時間と、一人一時間あたりの作業費と、各故障を修復するのに必要な人数とから、以下の式に基づいて、保全方式別の故障部位別の修復作業費を求める。
【0151】
保全方式別の故障部位別の修復作業費=保全方式別の故障部位別の平均修復時間×一人一時間あたりの作業費×各故障を修復するのに必要な人数
図37(d)に、保全方式別の故障部位別の平均修復時間(図37(a)に示す)と、一人一時間あたりの作業費(図37(b)に示す)と、各故障を修復するのに必要な人数(図37(c)に示す)とから算出された保全方式別の故障部位別の修復作業費の一例を示す。
【0152】
さらに、算出された保全方式別の故障部位別の修復作業費に、スペア代金を加算する事により、保全方式別の故障部位別修復コストを得ることができる。図37(f)に、保全方式別の故障部位別の修復作業費(図37(d)に示す)に、スペア代金(図37(e)に示す)を加算する事により得られた保全方式別の故障部位別の修復作業費の一例を示す。
【0153】
次に、保全方式別の年間部品交換回数を算出する。保全方式別の年間部品交換回数は、以下の式で表す事ができる。
保全方式別の年間部品交換回数=(各診断方法の故障部位別年間故障徴候検出回数+各診断方法の故障部位別年間故障徴候見落回数)/{1−EXP(−(各診断方法の故障部位別年間故障徴候検出回数+各診断方法の故障部位別年間故障徴候見落回数)×交換部品の使用期間)}
図38(d)に、各診断方法の故障部位別年間故障徴候検出回数(図38(a)に示す)、各診断方法の故障部位別年間故障徴候見落回数(図38(b)に示す)、交換部品の使用期間(図38(c)に示す)を用いて、上記式に基づいて算出された保全方式別の年間部品交換回数の一例を示す。
【0154】
以下、上記式の考え方について説明する。
まず、ある部品をスペアと交換する場合には、2通りある。1つが、故障徴候を検出した場合であり、1つが、部品が決められた使用期間に達した場合である。部品の故障率λが時間に依存せず、一定であると仮定すると、時間に対するその部品の信頼度を示す信頼度関数R(t)は、以下のようになる。
【0155】
R(t)=exp(−λt)
図39(a)に、R(t)のグラフを示す。時刻Tにおいて必ず部品は交換されると仮定すると、平均の交換時間τは、時間t=0から時間t=Tに至るまでのR(t)の積分値となる。つまり、平均の交換時間τは、図39(b)において斜線が施された部分の面積となる。
【0156】
従って、τは以下の式で示す事ができる。
τ={1−exp(−λT)}/λ
単位時間あたりの交換回数は、τの逆数として示されるため、以下の式で示される。
【0157】
1/τ=λ/{1−exp(−λT)}
上記の式において、1/τは年間交換回数に該当し、λは、(各診断方法の故障部位別年間故障徴候検出回数+各診断方法の故障部位別年間故障徴候見落回数)に該当し、Tは交換部品の使用期間に該当する。
【0158】
次に、保全方式別の故障部位別修復コストと保全方式別の年間交換回数を掛算する事により、保全方式別の故障部位別年間修復コストを算出する。図40(c)に、保全方式別の故障部位別修復コスト(図40(a)に示す)と保全方式別の年間回数(図40(b)に示す)から算出された保全方式別の故障部位別年間修復コストの一例を示す。
【0159】
さらに、スペアを保管するためには保管代金が必要であるため、このスペアの年間保管代金を算出し、それを修復コストに反映させる。スペアの年間保管代金は、スペア1つあたりの年間保管代金を収集し、その1つ当りの年間保管代金に必要なスペア台数を掛算する事により算出することができる。図41(c)に、スペアの年間保管代金(図41(a)に示す)と、スペア台数(図41(b)に示す)から算出された年間スペア保管代金の一例を示す。
【0160】
続いて、先に算出された保全方式別の故障部位別年間修復コストを、保全方法別に合計し、その合計値に算出された年間スペア保管代金を加算することによって、保全方式別の年間修復コストを算出する。図42(c)に、保全方式別の故障部位別年間修復コスト(図42(a)に示す)と、年間スペア保管代金(図41(b)に示す)とから算出された保全方式別の年間修復コストの一例を示す。
【0161】
さらに、各保全方式の導入コストを収集し、その導入コストをその保全方式の償却期間で除算することにより、各保全方式の1年当りの導入コストを算出する。図43(c)に、各保全方式の導入コスト(図43(a)に示す)と、その保全方式の償却期間(図43(b)に示す)とから算出された各保全方式の1年当りの導入コストの一例を示す。
【0162】
最後に、保全方式ごとに、年間修復コスト、年間生産ロスコスト、及び1年あたりの導入コストを加算する事により、各保全方式のトータルコストを算出する。図44(c)に、今まで算出された、保全方式ごとの年間修復コスト(図44(a)に示す)、年間生産ロスコスト(図44(b)に示す)、及び1年あたりの導入コスト(図44(c)に示す)を合計する事によって算出されたトータルコストの一例を示す。さらに、保全方式比較部18は、以上のようにして算出された各保全方式についてのトータルコストを比較するグラフを作成する。図45に、作成されるグラフの一例を示す。図45において、保全方式1から5のそれぞれについてのトータルコストの算出結果を棒グラフで示している。図45から、設備に現状している保全方式5、つまり事後保全は、最もコストが高くなっている事が分かる。また、保全方式1から4の現状以外の保全方式のうちでは、保全方式1、つまり、振動系監視ユニット及び電力系監視ユニットを用いて故障徴候を検出する保全方式を採用すると、最も低コストとなると予測されている事が分かる。
【0163】
このように、設備保全コスト評価装置10によれば、現状の保全方式及び他の保全方式について、現実的にリスク及びコストを算出ことが可能となる。
また、修復作業時間、スペア代金等、リスク及びトータルコストの算出に用いられる収集データが変化する毎、或いは定期的に、リスク及びトータルコストを算出し、算出されたリスク及びトータルコストを算出日時と共に格納手段に蓄積する事により、リスクとコストの時間的変化を監視することも可能である。
【0164】
上記において説明した設備保全コスト評価装置10は、コンピュータを用いて構成することができる。以下、コンピュータの構成について、図46を用いて説明する。
【0165】
図46に示すようにコンピュータ20は、CPU21、メモリ22、入力装置23、出力装置24、外部記憶装置25、媒体駆動装置26、及びネットワーク接続装置27を備え、それらはバス28により互いに接続されている。
【0166】
メモリ22は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random AccessMemory)等を含み、処理に用いられるプログラムとデータを格納する。設備保全コスト評価装置10を構成する情報収集部11、リスク評価部16、トータルコスト算出部17、保全方式比較部18は、コンピュータ20のメモリ22の特定のプログラムコードセグメントにプログラムとして格納される。なお、設備保全コスト評価装置10によって行われる処理は、図を用いて既に説明した。
【0167】
CPU21は、メモリ22を利用して上述のプログラムを実行することにより、必要な処理を行う。
入力装置23は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル等であり、ユーザからの指示や情報の入力に用いられる。出力装置24は、例えば、ディスプレイやプリンタ等であり、コンピュータのユーザへの問い合わせ、処理結果等の出力に用いられる。出力装置24は、出力部19に相当する。
【0168】
外部記憶装置25は、例えば、磁気ディスク装置、光ディスク装置、光磁気ディスク装置等である。外部記憶装置25は、対象設備情報テーブル12、故障情報テーブル13、保全方式情報テーブル14及び保全効果−検出確率対応テーブル15を実現する。また、上述のプログラムをコンピュータ20の外部記憶装置25に保存しておき、必要に応じて、それらをメモリ22にロードして使用することもできる。
【0169】
媒体駆動装置26は、可搬記録媒体29を駆動し、その記録内容にアクセスする。可搬記録媒体29としては、メモリカード、メモリスティック、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光ディスク、光磁気ディスク、DVD(Digital VersatileDisk)等、任意のコンピュータ読み取り可能な記録媒体が用いられる。この可搬記録媒体29に上述のプログラムを格納しておき、必要に応じて、それをコンピュータ20のメモリ22にロードして使用することもできる。
【0170】
ネットワーク接続装置27は、LAN、WAN等の任意のネットワークN(回線)を介して外部の装置を通信し、通信に伴うデータ変換を行う。また、必要に応じて、上述のプログラムを外部の装置から受け取り、それをコンピュータ20のメモリ22にロードして使用することもできる。
【0171】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その他の様々な変更が可能である。
【0172】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、設備保全コスト評価において、より現実的にリスク及びコストを算出し、これらによって保全方式の評価を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理図である。
【図2】設備保全コスト評価装置の構成図である。
【図3】対象設備情報テーブルに格納されるデータ項目の一例を示す図である。
【図4】故障情報テーブルに格納されるデータ項目の一例を示す図である。
【図5】保全方式情報テーブルに格納されるデータ項目の一例を示す図である。
【図6】保全効果−検出確率対応テーブルの一例を示す図である。
【図7】設備保全コストの評価処理の流れを示す図である。
【図8】リスク評価のデータフローを示す図である。
【図9】複数の独立な保全による検出確率の合成を説明する図である。
【図10】リスクランキングの効果を説明する図である。
【図11】トータルコストの算出処理の流れを示す図である。
【図12】個々の故障に対する保全と、それらの組合せとしての保全方式を説明する図である。
【図13】劣化検出のモデルを示す図である。
【図14】トータルコスト算出のデータフローを示す図である。
【図15】トータルコストの比較例を示す図である。
【図16】送風機の保全設備の一例を示す図である。
【図17】送風機の部位別の故障率の算出を説明する図である。
【図18】送風機の部位別故障率の算出結果の一例を示す図である。
【図19】故障部位別の故障徴候見落回数の算出を説明する図である。
【図20】故障部位ごとのスペアにかかる費用の例を示す図である。
【図21】故障部位別修復作業費の算出を説明する図である。
【図22】故障部位別の修復コストの算出を説明する図である。
【図23】故障1回当りの生産ロスコストの算出を説明する図である。
【図24】故障1回当りのロスの算出を説明する図である。
【図25】故障要因別のリスクの算出を説明する図である。
【図26】各部位について、故障発生回数と故障1回当りのロスとの関係を示す図である。
【図27】各部位について、故障発生回数とリスクの関係を示す図である。
【図28】各診断方法の故障部位別の故障徴候検出確率の取得を説明する図である。
【図29】各診断方法の故障部位別の年間故障徴候検出回数の算出を説明する図である。
【図30】各診断方法の故障部位別の年間故障徴候見落回数の算出を説明する図である。
【図31】送風機の台数を考慮した、各診断方法の故障部位別の年間故障徴候検出回数の算出を説明する図である。
【図32】送風機の台数を考慮した、核診断方法の故障部位別の年間故障徴候見落回数の算出を説明する図である。
【図33】故障徴候検出1回当りの生産ロスコストの算出を説明する図である。
【図34】故障1回当りの生産ロスコストの算出を説明する図である。
【図35】故障徴候検出時及び故障発生時部位別の、診断方法別年間生産ロスコスト並びにそれらの和である故障部位別診断方法別年間生産ロスコストの算出結果の一例を示す図である。
【図36】故障部位別診断方法別平均修復時間の算出を説明する図である。
【図37】故障部位別診断方法別修復コストの算出を説明する図である。
【図38】診断方法別年間交換回数の算出を説明する図である。
【図39】年間交換回数の推定を説明する図である。
【図40】故障部位別診断方法別年間修復コストの算出を説明する図である。
【図41】スペア台数を考慮した、年間スペア保管代の算出を説明する図である。
【図42】診断方法別年間修復コストの算出を説明する図である。
【図43】診断方法別1年あたりの導入コストの算出を説明する図である。
【図44】各保全方式のトータルコストの算出を説明する図である。
【図45】各診断方法のトータルコストと年間故障徴候検出回数を示す図である。
【図46】コンピュータの構成図である。
【符号の説明】
1 設備保全コスト評価装置
2 情報収集手段
3 リスク評価手段
4 トータルコスト算出手段
5 保全方式比較手段
10 設備保全コスト評価装置
11 情報収集部
12 対象設備情報テーブル
13 故障情報テーブル
14 保全方式テーブル
15 保全効果−検出確率対応テーブル
16 リスク評価部
17 トータルコスト算出部
18 保全方式比較部
19 出力部
20 コンピュータ
21 CPU
22 メモリ
23 入力装置
24 出力装置
25 外部記憶装置
26 媒体駆動装置
27 ネットワーク接続装置
28 バス
29 可搬記録媒体
S ステップ
Claims (12)
- 設備を保全する保全方式を評価する制御をコンピュータに行わせるコンピュータ・プログラムであって、
設備を構成する部位別に、前記保全方式における故障発生の頻度を示す故障率を取得し、
前記保全方式における部位別の故障徴候検出確率を取得し、
前記部位別の故障徴候検出確率に基づいて、前記部位の故障徴候を見落して故障が発生する確率である故障徴候見落確率を算出し、
前記部位別の故障率、故障発生時の被害額、及び前記故障徴候見落確率に基づいて、前記部位別のリスクを算出する、
ことを含む制御を前記コンピュータに行わせることを特徴とするコンピュータ・プログラム。 - 前記故障発生時の被害額は、故障1回当りの修復コストと故障1回当りの生産ロスコストの和として算出される、
ことを特徴とする請求項1に記載のコンピュータ・プログラム。 - 前記保全方式が、2つの互いに独立した第1及び第2の保全方式の複合保全方式である場合、
前記複合保全方式の故障徴候検出確率は、前記第1及び第2の保全方式の故障徴候検出確率の和から、前記第1及び第2の保全方式の故障徴候検出確率の積を減算することにより取得される、
ことを特徴とする請求項1に記載のコンピュータ・プログラム。 - 前記保全方式についてコストを算出する、
ことを更に含む制御を前記コンピュータに行わせることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンピュータ・プログラム。 - 前記保全方式が事後保全でない場合、故障徴候が検出された場合と故障徴候が見落された場合とに分けて、前記コストを算出する、
ことを更に含む制御を前記コンピュータに行わせることを特徴とする請求項4に記載のコンピュータ・プログラム。 - 前記コストの算出において、前記故障徴候が検出された場合と、故障徴候が見落された場合とで互いに異なる修復時間を用いる、
ことを特徴とする請求項5に記載のコンピュータ・プログラム。 - 前記コストは、修復コストを含み、
時間に対する前記部位の部品の信頼度を示す信頼度関数に基づいて一定期間内の交換回数を算出し、
前記一定期間内の交換回数と故障1回当りの修復コストに基づいて、一定期間内の修復コストを算出する、
ことを更に含む制御を前記コンピュータに行わせることを特徴とする請求項4に記載のコンピュータ・プログラム。 - 前記信頼度関数は、時間をt、前記故障率をλとすると、
exp(−λt)
で示され、
前記一定期間内の交換回数は、前記一定期間をTとすると、 λ/{1−exp(−λT)}で算出される、
ことを特徴とする請求項4に記載のコンピュータ・プログラム。 - 2以上の保全方式についてコストを算出した場合、前記コストに基づいて前記2以上の保全方式をランキングする、
ことを更に含む制御を前記コンピュータに行わせることを特徴とする請求項4に記載のコンピュータ・プログラム。 - 設備を保全する保全方式を評価する制御をコンピュータに行わせるプログラムを記録した記録媒体であって、
設備を構成する部位別に、前記保全方式における故障発生の頻度を示す故障率を取得し、
前記保全方式における部位別の故障徴候検出確率を取得し、
前記部位別の故障徴候検出確率に基づいて、前記部位の故障徴候を見落して故障が発生する確率である故障徴候見落確率を算出し、
前記部位別の故障率、故障発生時の被害額、及び前記故障徴候見落確率に基づいて、前記部位別のリスクを算出する、
ことを含む制御を前記コンピュータに行わせるプログラムを記録した記録媒体。 - コンピュータが、設備を保全する保全方式を評価する保全方式評価方法であって、
設備を構成する部位別に、前記保全方式における故障発生の頻度を示す故障率を取得し、
前記保全方式における部位別の故障徴候検出確率を取得し、
前記部位別の故障徴候検出確率に基づいて、前記部位の故障徴候を見落して故障が発生する確率である故障徴候見落確率を算出し、
前記部位別の故障率、故障発生時の被害額、及び前記故障徴候見落確率に基づいて、前記部位別のリスクを算出する、
ことを含むことを特徴とする保全方式評価方法。 - 設備を保全する保全方式を評価する保全方式評価装置であって、
設備を構成する部位別に、前記保全方式における故障発生の頻度を示す故障率及び前記保全方式における部位別の故障徴候検出確率を取得する情報収集手段と、
前記部位の故障徴候を見落して故障が発生する確率である故障徴候見落確率を算出し、前記部位別の故障率、故障発生時の被害額及び前記故障徴候見落確率に基づいて部位別のリスクを算出し、前記部位別のリスクをランキングするリスク評価手段と、
を備えることを特徴とする保全方式評価装置。
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