JP2004150899A - 二次元電気泳動法 - Google Patents

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眞理 田渕
Yoshinobu Baba
嘉信 馬場
Kazuyuki Nakamura
和行 中村
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保宏 藏満
Masanori Fujimoto
正憲 藤本
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Abstract

【課題】マイクロチップ上で微量の試料を簡便かつ迅速に分析しうるタンパク質の二次元電気泳動法を提供することを目的とする。
【解決手段】ローディングチャネルと、該ローディングチャネルに交差する分離用チャネルとを備え、かつ該ローディングチャネルの一端に試料リザーバーが配置され、該ローディングチャネルの他端にアウトレットが配置されたマイクロチップであって、該ローディングチャネルおよび分離用チャネルのそれぞれに泳動用緩衝液が充填されたマイクロチップにおいて、
(a) 泳動用緩衝液のpHとは少なくとも2異なるpHを有し、かつタンパク質を含有した試料を該試料リザーバーに供するステップ、
(b) 該ローディングチャネル内を加圧することにより、該試料リザーバー中の該試料を分離用チャネルに導入するステップ、および
(c) 該分離用チャネルに泳動電場を負荷して該試料を分離チャネル内で泳動させるステップ
を含む、タンパク質の分子量による分離および等電点による分離を同時に行う二次元電気泳動法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロチップ上でのタンパク質の二次元電気泳動法に関する。
【0002】
【従来の技術】
分子量の差異により複数のタンパク質を分離する(以下、分子量分離という)ゲル電気泳動法では、ほぼ同一の分子量を有する複数の分子が存在する場合、それらがゲル上で重なって分離しないことがある。このような場合、ゲル電気泳動での分解能の向上のため、2段階に分けて別種の電気泳動法を組み合わせて行う電気泳動法(二次元電気泳動法という)が用いられている。
【0003】
現在一般に使用されている分子量分離と等電点の差異による分離(以下、等電点分離という)とを組み合わせた二次元電気泳動法では、まず比較的細いガラス管を用いて等電点ゲル電気泳動(一次元目)を行い、次にそのゲルをスラブゲル電気泳動の開始線に埋め込んで分子量分離による電気泳動(二次元目)を行う(例えば、非特許文献1参照)。しかし、この方法は、ゲルの調製に煩雑な工程を必要とする、微量の試料の分離および検出が困難である、分析に長時間を要する、および一次元目の分離の後に二次元目の分離を行うため手順が煩雑になり自動化が困難である等の欠点を有する。
【0004】
一方で、微量のタンパク質を迅速に解析するための手段として、マイクロチップ型電気泳動が近年注目されている(例えば、非特許文献2および3参照)。しかし、マイクロチップ型電気泳動においてほぼ同一の分子量を有する複数のタンパク質を分離することは分解能の点から困難であった。また、マイクロチップ型電気泳動において分子量分離と等電点分離とを1つのチャネルで同時に行うことは困難であった。
【0005】
【非特許文献1】
O’Farrell, P.H., J.Biol.Chem. 1975, 250, 4007−4021
【非特許文献2】
Yao, S. et al. 1999, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 96, 5372−5377
【非特許文献3】
Bousse, L. et al. 2001, Anal.Chem. 73, 1207−1212
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、マイクロチップ上で微量の試料を簡便かつ迅速に分析しうるタンパク質の二次元電気泳動法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨は、
[1] ローディングチャネルと、該ローディングチャネルに交差する分離用チャネルとを備え、かつ該ローディングチャネルの一端に試料リザーバーが配置され、該ローディングチャネルの他端にアウトレットが配置されたマイクロチップであって、該ローディングチャネルおよび分離用チャネルのそれぞれに泳動用緩衝液が充填されたマイクロチップにおいて、
(a) 該泳動用緩衝液のpHとは少なくとも2異なるpHを有し、かつタンパク質を含有した試料を該試料リザーバーに供するステップ、
(b) 該ローディングチャネル内を加圧することにより、該試料リザーバー中の該試料を分離用チャネルに導入するステップ、および
(c) 該分離用チャネルに泳動電場を負荷して該試料を分離チャネル内で泳動させるステップ
を含む、タンパク質の分子量による分離および等電点による分離を同時に行う二次元電気泳動法、
[2] ステップ(c)において、分離用チャネルに泳動電場を負荷する前に該分離用チャネル内を0.5〜2kPaで2〜8秒間加圧することを含む、前記[1]記載の二次元電気泳動法、
[3] 泳動用緩衝液のpHと試料のpHとの差が、2〜9である、前記[1]または[2]記載の二次元電気泳動法、
[4] ステップ(b)の加圧が、2〜7kPaで1〜30秒間の加圧である、前記[1]〜[3]いずれか記載の二次元電気泳動法、
[5] 泳動したタンパク質を検出するステップをさらに含む、前記[1]〜[4]いずれか記載の二次元電気泳動法、
に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の二次元電気泳動法は、マイクロチップ上で泳動用緩衝液のpHとは少なくとも2異なるpHを有する試料を、該試料と泳動用緩衝液とが急激に混合しないように比較的に低い圧力で加圧することにより分離用チャネルに導入し、泳動電場を負荷して泳動させることを1つの特徴とする。かかる特徴を有することにより本発明の二次元電気泳動法は、タンパク質の分子量分離および等電点分離を1チャネル上で1回の電気泳動で達成することができる。これにより、分子量がほぼ同一で等電点が異なるタンパク質、特に翻訳後修飾(例えば、リン酸化等)の分離を迅速に達成することができるため、翻訳後修飾の解析を容易に行うことができる。かかる電気泳動法はまた、従来必要とされていた2段階の電気泳動を行うことなく、迅速かつ容易にタンパク質の分離を達成することができる。かかる電気泳動法はまた、マイクロチップ上で分析を行うため、分析に必要とされる試料の量は従来の二次元電気泳動法で使用される試料の量と比べてごく少量であるという利点を有し、少量しか得られないタンパク質の発現解析にも適する。
【0009】
本明細書において、タンパク質とは、複数のアミノ酸がペプチド結合により連結された化合物をいい、天然由来物、合成物、および短鎖のペプチドをも含むことを意味する。
【0010】
本発明の二次元電気泳動法において解析されうるタンパク質としては、特に限定されることなく、天然由来物、合成物、およびアミノ酸以外の構成成分を含む核タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質等が挙げられるが、水溶性タンパク質が特に好適である。
【0011】
本発明の二次元電気泳動法では、マーカーを適宜設定することによりあらゆるサイズのタンパク質が解析可能であるが、6kDa〜210kDaのタンパク質が特に好適に解析されうる。なお、膜結合したタンパク質等は可溶化した後に本発明の電気泳動法に適用するのが好ましい。前記可溶化処理としては、塩溶液やEDTA等のキレート化剤での処理、超音波等の機械的処理、および界面活性剤での処理等が挙げられる。
【0012】
本発明の二次元電気泳動法に使用する分離用担体としては、特に限定されるものではなく、通常のマイクロチップ型ゲル電気泳動等においてタンパク質の分子量分離分析用に使用される、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミドゲル、ポリジメチルアクリルアミド、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、β−シクロデキストリン、α−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等の分離用担体が挙げられ、また、β−1,3グルカン構造を含むカードラン、ラミナランや海藻抽出物等も適用可能である。分離用担体の添加剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、Triton X−100、ε−アミノカプロン酸、3−〔(3−コラミドプロピル)−ジメチルアミノ〕−1−プロパン、CHAPS、6〜8M尿素、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロマイド(HTAB)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(DTAB)等が挙げられる。
【0013】
泳動用緩衝液としては、例えば、トリス−グリシンバッファー、トリス−ホウ酸バッファー、トリス−塩酸バッファー、トリス−トリシンバッファー、トリス−リン酸二水素ナトリウムバッファー、ホウ酸バッファー、リン酸バッファー等のような一般にタンパク質の電気泳動用緩衝液として使用される緩衝液が挙げられ、市販のタンパク質電気泳動用キット中に提供されている緩衝液等を使用することもできる。前記泳動用緩衝液は、一般にタンパク質の電気泳動用緩衝液として使用される濃度で使用されうる。
【0014】
泳動用緩衝液は、前記分離用担体を含有していてもよい。分離用担体を泳動用緩衝液に添加して用いることにより、操作を簡便にすることができ、解析をより高速で行うことができる。
【0015】
泳動用緩衝液のpHは、泳動用緩衝液と分析対象のタンパク質を含有する試料溶液との間で、分析対象のタンパク質の等電点分離が可能なpH勾配が発生するように適宜設定されるが、適切な電気浸透流およびタンパク質の好適な電気泳動の観点から、3〜12が好ましく、7.5〜9.8がさらに好ましい。
【0016】
泳動用緩衝液のpHの調整は、水酸化ナトリウム、塩酸、ホウ酸、グリシン−塩酸緩衝液、クエン酸−リン酸二ナトリウム緩衝液、β−β’ジメチルグルタル酸−水酸化ナトリウム緩衝液、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液、フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、マレイン酸ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液等やキャリアアンフォライト(バイオライト;バイオラットラボラトリーズ社製)等により行う。
【0017】
分析対象のタンパク質を含有する試料の調製用溶液としては、水、SDS溶液、またはSDS−トリスホウ酸溶液等に2−メルカプトエタノールまたはジチオスレイトールを添加したもの等を使用することができる。ピーク強度の向上、ピーク分離度の向上、検出限界の向上、測定精度の向上の観点から、水が特に好ましい。
【0018】
水としては、超純水、脱イオン水等のタンパク質の電気泳動に通常使用される水が使用されうるが、超純水が特に好ましい。
【0019】
また、水を試料調製用溶液として使用する場合、ピーク強度の増強、検出限界の向上の観点から、タンパク質を水溶解させることが好ましい。
【0020】
分析対象のタンパク質を含有する試料のpHは、泳動用緩衝液と分析対象のタンパク質を含有する試料溶液との間で、分析対象のタンパク質の等電点分離が可能なpH勾配が発生するように適宜設定されるが、適切な電気浸透流およびタンパク質の好適な電気泳動の観点から、3〜8が好ましく、4〜7がさらに好ましい。
【0021】
試料のpHの調整は、水酸化ナトリウム、塩酸、ホウ酸、グリシン−塩酸緩衝液、クエン酸−リン酸二ナトリウム緩衝液、β−β’ジメチルグルタル酸−水酸化ナトリウム緩衝液、酢酸−酢酸ナトリウム、フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、マレイン酸ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液等やキャリアアンフォライト(バイオライト;バイオラットラボラトリーズ社製)等により行う。
【0022】
泳動用緩衝液と試料溶液とのpHの差は、等電点分離を達成するのに充分なpH勾配を発生させる観点から、少なくとも2であり、好ましくは2〜9であり、さらに好ましくは3〜5.5である。泳動用緩衝液のpHは、試料溶液のpHと比べてアルカリ性側でも酸性側でもよい。
【0023】
試料中のタンパク質の濃度としては、測定精度の観点から、0.05〜2000ng/μlが好ましく、0.1〜2000ng/μlがより好ましく、0.5〜200ng/μlが特に好ましい。
【0024】
本発明に使用されるマイクロチップは、ローディングチャネルと、該ローディングチャネルに交差する分離用チャネルとを備え、かつ該ローディングチャネルの一端に試料リザーバーが配置され、該ローディングチャネルの他端にアウトレットが配置されたマイクロチップである。
【0025】
マイクロチップの材質としては、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ジメチルシロキサンなどが挙げられる。なかでも、試料の吸着が少なく、チップ加工が容易である観点から、ガラスまたはポリメチルメタクリレートが望ましい。また、キャピラリーと同様に内壁を加工処理したものも用いられる。
【0026】
マイクロチップの大きさは、例えば、縦10〜120mm、横10〜120mm、厚さ500〜5000μmである。
【0027】
ローディングチャネルおよび分離用チャネルのそれぞれの形状は特に限定されるものではない。なお、前記チャネルが一枚のチップ上に3〜96本設置された、同時に多チャネルを解析することができるチップを使用することもできる。多チャネルの並べ方は、並行、放射線状、円形状等があるが、その形状は特に限定されるものではない。
【0028】
前記チャネルの幅は、マイクロチップの大きさ、使用目的などにより適宜設定されうる。具体的には、チャネルの幅は、十分な解析感度を得る観点から、0.1μm以上、好ましくは10μm以上であり、十分な解析精度を得る観点から、100μm以下、好ましくは50μm以下であることが望ましい。また、前記チャネルの深さは、マイクロチップの大きさ、使用目的などにより適宜設定されうる。具体的には、十分な解析感度を得る観点から、0.1μm以上、好ましくは10μm以上であり、十分な解析精度を得る観点から、100μm以下、好ましくは50μm以下であることが望ましい。さらに、前記分離用チャネルの長さは、マイクロチップの大きさ、解析対象の化合物に応じて適宜選択することができるが、有効長を、より長くすることが望ましい。有効長は、チャネル交差部から、高分子化合物の検出点(分離用チャネル上に配置)までの距離をいう。十分な分離能を得る観点から、0.1mm以上、好ましくは10mm以上であり、高速分離の観点から、100mm以下、好ましくは50mm以下であることが望ましい。
【0029】
また、前記リザーバーの大きさは、試料の容量に応じて適宜設定することができる。具体的には、試料導入のハンドリングおよび電極の太さの観点から、直径0.05mm以上、好ましくは3mm以下であることが望ましい。
【0030】
本発明の二次元電気泳動法は、ローディングチャネルおよび分離用チャネルのそれぞれに泳動用緩衝液を充填した前記マイクロチップにおいて、
(a) 泳動用緩衝液のpHとは少なくとも2異なるpHを有し、かつタンパク質を含有した試料を試料リザーバーに供するステップ、
(b) ローディングチャネル内を加圧することにより、試料リザーバー中の試料を分離用チャネルに導入するステップ、および
(c) 分離用チャネルに泳動電場を負荷して試料を分離チャネル内で泳動させるステップ、を含むプロセスにより行われる。
【0031】
前記ステップ(a)は、より具体的には、試料リザーバーに好ましくは1〜10μl、より好ましくは2〜5μlの試料を供給することにより行われる。
【0032】
前記ステップ(b)は、より具体的には、泳動時間の短縮、分離度向上および検出感度向上の観点から、アウトレットに泳動用緩衝液をセッティングしない条件下で試料を試料リザーバーから、加圧、好ましくは2〜7kPa、より好ましくは3〜6kPa、特に好ましくは5〜5.5kPaで加圧することによりローディングチャネルと分離用チャネルとの交差部に試料を泳動させることが望ましい。ここで、前記加圧は、好ましくは1〜30秒間、より好ましくは1〜10秒間、特に好ましくは1〜2秒間行うことが望ましい。
【0033】
前記ステップ(c)において、試料を分離チャネル内で泳動させるための泳動電場は、良好な分解能を得、移動時間を短縮する観点から、好ましくは20V/cm〜50kV/cmであり、より好ましくは50〜5kV/cmであり、特に好ましくは100V/cm〜1kV/cmであることが望ましい。
【0034】
分離用チャネルに泳動電場を負荷する前に、より高速で高分離能を得る観点から、分離用チャネルを、好ましくは0.5〜2kPa、より好ましくは0.8〜1.5kPa、特に好ましくは1〜1.2kPaで加圧してもよい。ここで、前記加圧は、好ましくは2〜8秒間、より好ましくは2.3〜5秒間、特に好ましくは2.5〜3.5秒間行うことが望ましい。
【0035】
本発明の二次元電気泳動法においては、分子量マーカーおよび/または等電点マーカーをタンパク質試料と共に電気泳動に供することもできる。分子量マーカーとしては、Agilent Technologies No.5065−4430の分子サイズ6kDa、分子サイズ210kDaのミオシン、HMW、LMWマーカーキット(Amersham Pharmacia Biotech社製)等のタンパク質の電気泳動に通常使用される市販の分子量マーカーや、市販の分子量および濃度既知の標準試料のタンパク質や生体試料から精製および/または定量したタンパク質を含む分子量マーカーを用いることができる。これらの分子量マーカーは組み合わせて使用することもできる。等電点マーカーとしては、キャリアアンフォライト(バイオライト;日本バイオラットラボラトリーズ社製)、固定化pH勾配プレキャストゲル(日本バイオラットラボラトリーズ社製)、アンフォライン(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)、フォルマライト(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)、サルバライト(コスモバイオ社製)等がある。
【0036】
電気泳動に供したタンパク質の検出法としては、例えば、UV波長光による吸収、蛍光、レーザー、ランプ、LEDなどによる検出、電気化学的検出、化学発光検出などが挙げられる。具体的には、タンパク質またはペプチドの場合、200nmにおける吸収を測定すること;SYPRO Orangeとタンパク質またはペプチドとを反応させ、460〜550nmで励起させ、550〜650nmで蛍光を測定すること、あるいはタンパク質と蛍光マーカー(AgilentTechnologies社製No.5065−4430)と反応させ、630〜650nmで励起させ、670〜700nmで蛍光を測定すること、および電気化学的測定、化学発光測定などにより、タンパク質またはペプチドを検出することができる。
【0037】
また、分離用チャネル上に配置された検出点にUV波長光の検出器を設置してもよく、あるいは、蛍光波長を発しうる装置と該蛍光波長を検出可能な検出器とを設置してもよい。また同時に多チャネルを検出可能である。
【0038】
検出の際、タンパク質、ペプチド、アミノ酸等の同定を行う場合には、UV吸収、分子量マーカー、標品との移動時間の比較、マススペクトルの解析などにより行うことができる。
【0039】
本発明の二次元電気泳動法において、未知のタンパク質を含有する試料を解析する場合には、異なる条件下にて多チャネルで並行して二次元電気泳動を行うことによりタンパク質の分子量分離と等電点分離とを判別することができる。
【0040】
具体的には、解析対象の未知のタンパク質の分子量が予想できる場合には、例えば、分離用チャネル上の前記タンパク質の予想される分子量付近の位置に1チャネル目はpH3〜4、2チャネル目はpH5〜6、3チャネル目はpH6〜7等のように種々の比較的小さなpH勾配が形成されるように試料と緩衝液とのpHの組み合せおよび加圧条件を設定し、本発明の二次元電気泳動法により解析する。このとき対照として分子量分離のみの電気泳動を並行して行うことが好ましい。得られたそれぞれの電気泳動の結果を比較することにより分子量分離と等電点分離とを判別することができる。
【0041】
また、解析対象の未知のタンパク質の分子量が予想できない場合には、例えば、1チャネル目は約6〜14kDaの位置にpH4〜8、2チャネル目は約14〜31kDa付近の位置にpH4〜8、3チャネル目は約31〜45kDaの位置にpH4〜8等のように分離用チャネル上の種々の分子量の位置に比較的大きなpH勾配が形成されるように試料と緩衝液とのpHの組み合せおよび加圧条件を設定し、本発明の二次元電気泳動法により解析する。このとき対照として分子量分離のみの電気泳動を並行して行うことが好ましい。得られたそれぞれの電気泳動の結果を比較することにより分子量分離と等電点分離とを判別することができる。
【0042】
本発明の二次元電気泳動法は、前記のような特徴を有することから、分子量がほぼ同一で等電点が異なるタンパク質、特に翻訳後修飾(例えば、リン酸化等)の分離を、1チャネル上で1回の電気泳動により迅速に達成することができるため、翻訳後修飾の解析を容易に行うことができる。本発明の二次元電気泳動法はまた、ターゲットプロテイン(病気診断用マーカープロテイン)の分離にも適用可能であり、今後のプロテオミクス研究への応用が期待されるものである。
【0043】
【実施例】
調製例(被検試料の調製)
ヒト白血病細胞、ジャルカット細胞(Human T lymphoblastic cell line, Jurkat cells )を、RPMI―1640(Sigma社製)、10% ウシ胎児血清(Equitech−Bio社製)中で培養した。使用する1時間前に、培地を、10mM HEPESを補充した血清フリーのRPMI−1640に交換した。
【0044】
熱ショック処理タンパク質試料と非熱ショック処理タンパク質試料とを調製した。非熱ショック処理タンパク質試料の調製のために、1×10個の前記ジャルカット細胞を100mmディシュに播種し、37℃、30分間インキュベートした。また、熱ショック処理タンパク質試料の調製のために、1×10個の前記ジャルカット細胞を、51℃、30分間ウォーターバスでインキュベートした。その後、それぞれの細胞を200×gで5分間遠心分離した。得られたペレットを1mLのPBS、pH7.4で洗浄した。洗浄したペレットを、1% Noridet P−40(コスモバイオ社製)、1mM EDTA(pH7.4)に溶解し、タンパク質を抽出した。細胞溶解液を、20000×gで10分間遠心分離後、上清をタンパク質の混合物サンプルとして供した。以下では、非熱ショック処理タンパク質試料をサンプルA、熱ショック処理タンパク質試料をサンプルBと呼ぶ。
【0045】
比較例1
サンプルAを従来の二次元電気泳動法で解析した。二次元電気泳動法はO’Farrell法(O’Farrell,P.H., J.Biol.Chem. 1975, 250, 4007−4021 )の改良法を用いた。ポリアクリルアミドキャピラリーゲル(4%T、5.4%C、2% Ampholine pH3.5−10;Amersham Pharmacia Biotech社製)、長さ62mm、直径1.2mmを1次元電気泳動の等電点電気泳動(以下、IEFという)として用いた。16℃、24時間、400Vで用いた。50μgのタンパク質を含有するサンプルをIEFにロードし、16℃で電圧を段階的に増加させた(200Vで15分、400Vで15分、800Vで30分、2500Vで288分)。二次元目の電気泳動,SDS−ポリアクリルアミド電気泳動は、85mm(W)×60mm(H)×1mm(T)スラブタイプゲル(15%T、2.67%C)を用いて行った。1プレートあたり15mAで1次元目に12時間、2次元目に3時間、トータル15時間泳動した。二次元電気泳動の終了後、ゲル中のタンパク質を、0.05%クマシーブリリアントブルー(CBB R−250;日本バイオラット・ラボラトリーズ社製)を用いて染色した。IEF中のpH勾配はIEFゲルの5mm各から抽出したpHをマイクロpHメーター(pH Boy P−2;Shin Dengen社製)で測定することで決定した。その結果を図1に示す。図1において、スポットIとスポットIIaとを検出した。
【0046】
比較例2
上記サンプルBを、比較例1と同様にして二次元電気泳動に供した。その結果を図2に示す。図2において、スポットIとスポットIIaのほかにスポットIIbを検出した。さらにスポットIとスポットIIbが図1のそれぞれより増加しているのが認められた。
【0047】
比較例1および2の二次元電気泳動法においてタンパク質の解析に要した時間は、ゲルの作製に1時間、電気泳動に15時間、スポットの染色および検出に24時間であった。また、使用したタンパク質は50μgであり、使用した試薬(泳動用緩衝液)は10mlであった。
【0048】
比較例3
上記比較例1で得られたゲルをポリビニリデンジフルオロライド(Immobilon P;Milipore社製)メンブランにセミドライブロッター(KS−8460;Marysol社製)を用いて10mM CAPSバッファーpH11、150mAで2時間転写した。メンブラン上のペプチドをガスフェイズプロテインシークエンサー(PPSQ−21;Shimadzu社製)に供した。ペプチドのアミノ酸シークエンスのホモロジーサーチはインターネットホモロジーサーチプログラムMPサーチ(htt://www.dna.affrc.go.jp/htdocs/homology/homology.htm)を用いた。これにより、図1のスポットIは7kDaのサイモシンβ4、スポットIIaはスタスミン(Mw18kDa、pI 5.9)と同定された。
【0049】
比較例4
比較例3と同様にして図2のスポットI、IIaおよびIIbは、それぞれサイモシンベータ4(7kDa)、スタスミン(Mw 18kDa、pI 5.9)、リン酸化スタスミン(Mw 18.5kDa、pI 5.6)と同定された。
【0050】
実施例1
サンプルAを本発明の二次元電気泳動法で解析した。2.7μg/μlのタンパク質濃度を有する2μlのサンプルAをHClでpH5に調整した。泳動用緩衝液をホウ酸でpH9.3に調整した。電気泳動には、Hitachi Electronics Engineering社製のマイクロチップ電気泳動装置cosmo−i 1100およびHitachichemical社製のi−chip3のキット内のマイクロチップを用いた。泳動用緩衝液をローディングチャネルおよび分離用チャネルそれぞれに満たし、サンプルAを試料用リザーバーに入れ、ローディングチャネル内を2.5〜5kPaで1秒間加圧することによりサンプルAをローディングチャネルと分離用チャネルとの交差部に移動させた。その後、分離用チャネル内を1kPaで3秒間加圧し、890V/cmの泳動電場で15秒間分離を行った。その結果を図3に示す。比較例1で見出されたスポットIの7kDaおよびスポットIIaの18kDaのそれぞれのピークを検出した。
【0051】
実施例2
サンプルBを実施例1と同様にして二次元電気泳動に供した。その結果を図4に示す。7kDa付近(スポットI)に1本のピークおよび18kDa付近に比較例2と同様にスポットIIa(pI 5.9、Mw 18kDa)およびIIb(Mw 18.5kDa)の2本のピークの出現が認められた。これは、pH5の試料とpH9.7のバッファーとを使用することにより分離用チャネル内にpHの勾配が形成されたためであると思われる。本発明の二次元電気泳動法により、分子量分離と等電点分離との両方が1チャネル内で達成されたことがわかる。
【0052】
実施例1および2の二次元電気泳動法においてタンパク質の解析に要した時間は、15秒であった。また、使用したタンパク質は5.4μgであり、使用した試薬(泳動用緩衝液)は35μlであった。このことから、本発明の二次元電気泳動法は、比較例1および2の従来の二次元電気泳動法と比べて極めて迅速に、かつ少量の試薬によりタンパク質の分離を行いうることがわかる。
【0053】
比較例5
電気泳動装置(Agilent 2100 bioanalyzer;Agilent technology社製)を用いてサンプルAを従来のマイクロチップ型電気泳動に供した。泳動用緩衝液およびマイクロチップはマイクロチップキット(protein200 Plus;caliper technology社製)を用いた。電気泳動の条件は、Agilent 2100 bioanalyzerに添付のマニュアルに従った。サンプルのpHは7、バッファーのpHは7.6であった。結果を図5に示す。7kDaおよび18kDaのそれぞれのピークが分子量マーカーまたはシステムピークと重なるため、図1で得られたスポットIおよびIIaのそれぞれサイモシンベータ4およびスタスミンのピークを確認することはできなかった。
【0054】
比較例6
サンプルBを比較例5と同様にして従来のマイクロチップ型電気泳動に供した。その結果を図6に示す。7kDaおよび18kDaのピークが分子量マーカーまたはシステムピークと重なるため、図2で得られたスポットI、IIaおよびIIbのそれぞれサイモシンベータ4、スタスミン(Mw 18kDa、pI 5.9)およびリン酸化スタスミン(Mw 18.5kDa、pI 5.6)のピークを確認することはできなかった。これらの結果より、従来型のマイクロチップ型電気泳動法では、分子量分離と等電点分離を1チャネルで1回の電気泳動で行うことは不可能であった。
【0055】
【発明の効果】
本発明により、分子量がほぼ同一で等電点が異なるタンパク質を1チャネル上で1回の電気泳動により迅速に分離しうる二次元電気泳動法が提供される。かかる電気泳動法は、リン酸化等の翻訳後修飾の解析やターゲットプロテイン(病気診断用マーカープロテイン)の分離に適用可能であり、今後のプロテオミクス研究への応用が期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、従来の二次元電気泳動法によりジャルカット細胞由来のタンパク質を分離した結果を示す図である。
【図2】図2は、従来の二次元電気泳動法によりジャルカット細胞由来のタンパク質を分離した結果を示す図である。
【図3】図3は、本発明の二次元電気泳動法によりジャルカット細胞由来のタンパク質を分離した結果を示す図である。
【図4】図4は、本発明の二次元電気泳動法によりジャルカット細胞由来のタンパク質を分離した結果を示す図である。
【図5】図5は、従来のマイクロチップ型電気泳動法によりジャルカット細胞由来のタンパク質を分離した結果を示す図である。
【図6】図6は、従来のマイクロチップ型電気泳動法によりジャルカット細胞由来のタンパク質を分離した結果を示す図である。

Claims (5)

  1. ローディングチャネルと、該ローディングチャネルに交差する分離用チャネルとを備え、かつ該ローディングチャネルの一端に試料リザーバーが配置され、該ローディングチャネルの他端にアウトレットが配置されたマイクロチップであって、該ローディングチャネルおよび分離用チャネルのそれぞれに泳動用緩衝液が充填されたマイクロチップにおいて、
    (a) 泳動用緩衝液のpHとは少なくとも2異なるpHを有し、かつタンパク質を含有した試料を該試料リザーバーに供するステップ、
    (b) 該ローディングチャネル内を加圧することにより、該試料リザーバー中の該試料を分離用チャネルに導入するステップ、および
    (c) 該分離用チャネルに泳動電場を負荷して該試料を分離チャネル内で泳動させるステップ
    を含む、タンパク質の分子量による分離および等電点による分離を同時に行う二次元電気泳動法。
  2. ステップ(c)において、分離用チャネルに泳動電場を負荷する前に該分離用チャネル内を0.5〜2kPaで2〜8秒間加圧することを含む、請求項1記載の二次元電気泳動法。
  3. 泳動用緩衝液のpHと試料のpHとの差が2〜9である、請求項1または2記載の二次元電気泳動法。
  4. ステップ(b)の加圧が、2〜7kPaで1〜30秒間の加圧である、請求項1〜3いずれか記載の二次元電気泳動法。
  5. 泳動したタンパク質を検出するステップをさらに含む、請求項1〜4いずれか記載の二次元電気泳動法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2008065986A1 (fr) * 2006-12-01 2008-06-05 Nec Corporation Procédé de séparation de points isoélectrique et procédé de détermination de gradient de concentration d'ion hydrogène dans le champ de séparation

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