JP2004514136A - タンパク質の分離および検出 - Google Patents

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Abstract

本発明は、タンパク質または細胞起源のタンパク質試料を分離、検出する方法に関する。上記タンパク質は分離バッファー溶液中に含まれており、次のステップを実施する。すなわち、第1分離ステップにおいて、フリーフロー電気泳動として等電点電気泳動(IEF)または等速電気泳動を用いて、タンパク質試料を個々の画分に分離し、標識と結合させる;第2分離ステップにおいて、キャピラリー電気泳動を用いて、タンパク質画分を少なくとも1つのキャピラリーに分離する;さらに、タンパク質画分に結合された少なくとも1つの標識を、少なくとも1つのキャピラリーにおいて検出する。

Description

【0001】
本発明は、プロテオーム解析を迅速に行うためのタンパク質の分離および検出方法に関する。
【0002】
プロテオームとは、厳密に規定された条件下で一定の時期に検出、定量される、生物、細胞、細胞小器官、または体液のもつすべてのタンパク質を意味する。プロテオーム解析においては、どのタンパク質が生物学的過程においてどのような役割を担うのか、さらにどのタンパク質が他のタンパク質との相互作用において特に重要であるのかを知るためにタンパク質が研究される。プロテオーム解析に従って、化学薬品、活性物質、および他の外的要因(環境要因、高温、低温、水分不足、pHなど)がどの程度細胞タンパク質の発現に影響するかという問題も詳細に検討される。さらに、毒物学および薬理学においては、どのタンパク質群のどのようなタンパク質がどういった副作用の原因となるのかを究明するためにプロテオーム解析が用いられる。また、発酵生産プロセスの空時収率(space−time yield)を向上させることができるほど、微生物のタンパク質発現に影響を与えることが可能かどうかという問題が検討される。
【0003】
分離および検出に関する技術的な理由から、現在までのところ、プロテオームのすべてのタンパク質を全体的に定量的に観察し評価することは不可能である。疎水性タンパク質、極端なサイズのタンパク質は、特別大きいか特に小さいかに関わらず、また強酸性か強塩基性かに関わらず、こうしたタンパク質の分離に深刻な問題を生じるため、その他の点では最適な条件下でも完全なプロテオームを検出することができない。現在では、すべての発現タンパク質の50%を相当に上回るタンパク質を定量的に記録することができると推測される。
【0004】
膨大な数の発現タンパク質を考慮すると、試料調製は重大な問題を提起する。試料調製の段階がかなり複雑なタンパク質パターンを分離し同定する過程を決定するだろう。
【0005】
タンパク質の分画には溶解度がかなり影響していることがわかっている。水に溶けやすいタンパク質は、一般に分画可能性についてなんの問題も生じない。
【0006】
安定な二次構造または三次構造を有し、水に難溶性のタンパク質は、たとえば塩酸グアニジンまたは尿素といったカオトロピック物質の添加によって、その溶解挙動に関して安定化される。しかしながら、これは個々のタンパク質の好ましからざる反応をもたらす可能性があり、さらに本来1つの形態として存在するタンパク質が複数の形態に変化する原因となり、したがって、すでに存在する試料の不均一性を増大させる。
【0007】
膜タンパク質は、その天然環境は脂質膜であって、それらを相互に分離する際に速やかに再凝集して再び不溶性となる傾向があり、特に取り扱いが難しい。こうした疎水性タンパク質は、界面活性剤を添加した場合にのみ可溶性の状態に保つことができるが、界面活性剤はその後のタンパク質分画段階を妨害することが多い。
【0008】
タンパク質濃度が高いことは、大半の分画法および評価法にとって非常に好ましいが、そのことは凝集塊を生じるリスクも伴う。これに対して、溶解性についてはプラス効果のある低タンパク質濃度では、実際の分離に先立って追加の調製ステップが必要となる。
【0009】
様々な分子量のタンパク質のための現行の分画法は、第1に電気泳動であり、第2にクロマトグラフィーである。しかしながら、上記2つのタンパク質分画法はいずれも単独では100種を超える成分を十分に分離することはできない。また一方では、単一の細胞は通常、数千種類の様々なタンパク質を含有し、試料中に含まれるタンパク質の量は10倍も異なると考えられるため、連動した多次元分画法によってのみ創出することが可能な、十分に広範な分離能力を提供する必要がある。
【0010】
タンパク質は両性イオンの性質を有し、したがって正または負の電荷を有する。電気泳動法によって、電場における移動度にしたがって個々の成分を分離することができる。それぞれのタンパク質の電気泳動移動度は固有のパラメーターである。プロテオーム解析のために、2つの電気泳動法、すなわち等電点電気泳動(IEF)およびドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS PAGE)が使用される。
【0011】
等電点電気泳動において、ゲル上の個々のタンパク質はそれぞれ固有の等電点までpH勾配の中を移動し、等電点では最終的な電荷が釣り合って電気泳動上の移動性を失う。もしタンパク質が熱拡散作用のために等電点電荷に相当するpH範囲を超えて移動したならば、すぐに再び電荷を生じ、電場においてpH勾配の中を等電点に相当する位置までもどってくる。
【0012】
SDS PAGE法では、すべてのタンパク質にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加して調製する。負に帯電したSDS−タンパク質複合体は、電場において陽極方向に移動し、その分子量にしたがってポリアクリルアミドマトリックス中で分離される。
【0013】
KloseおよびO’Farrell, 1975 (J. Biol. Chem. 1975, 250, 4007−4020; Humangenetik 1975, 25, 231−245)によって、IEF法とSDS PAGE法が組み合わされて2Dゲル電気泳動(2D PAGE)の開発につながった。
【0014】
上記方法は、等電点電気泳動による第1の次元において、等電点に基づいてタンパク質の分離をもたらす。第2の次元として、分子量にしたがってタンパク質を分画するためにドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動をおこなう。現在まで、この方法が、複雑なタンパク質混合物を分画しうる、分解能の高い唯一の方法となっている。2D PAGE法の利点は、相互に補完しあう2つの分離原則であるが、すなわちこれは電荷および分子量に基づくIEF法およびSDS PAGE法である。基本的にはすべてのタンパク質にこの方法を用いることができる。この方法の分解能は、等電点電気泳動において範囲の狭いpH勾配を使用することによって、著しく向上させることができる(「ズームゲル」)。
【0015】
他方、上記方法には欠点もある。たとえば、試料調製にはある程度の経験と熟練が必要である。アプライする量が限られているため、発現の低いタンパク質を直接検出することはできない。第1から第2の次元にタンパク質を移動することが難しく、再現しにくい。この方法は簡単に自動化できる見込みがない。さらに、必ずしもすべてのタンパク質がこの方法で検出されるわけではない。10,000より小さい分子量、および100,000より大きい分子量については、満足できる意味のある結果は得られない。ゲルで分離した後、さらに複雑な方法で染色しなければならない。
【0016】
染色はたとえば、クーマシーブルーのような色素を用いて、銀コロイドもしくは亜鉛/イミダゾールを用いて、またはSypro(商標)ルビー、Sypro(商標)オレンジもしくはSypro(商標)レッドといったフルオロフォアを用いて行われる。使用される染色法はすべて、タンパク質と染色試薬との結合が共有結合ではなく、イオン、疎水性またはファンデルワールス(van−der−Waals)相互作用に基づくという共通点がある。染色後、ゲルは通常、スキャナーまたは蛍光スキャナーによってデジタル化される。
【0017】
米国特許第6,043,025号および第6,127,134号は2以上のタンパク質試料において差異を検出できる方法およびキットを記載する。異なる試料のタンパク質抽出物を、様々な正電荷を有するフルオロフォアを用いて共有結合によって標識し、混合して、2D PAGEに供する。このとき、異なる試料に由来する同一のタンパク質は、同一のゲルで、それらの異なる蛍光波長に基づいて、検出し定量することができる。米国特許第6,127,134号で開示された溶液によれば、第1の細胞のタンパク質は既知の処理法を用いて調製される。この第1の細胞は第1群の細胞に由来する。タンパク質は1対の発色団のうち第1の発色団で共有結合により標識される。これに続いて既知の処理法によって第2の細胞群から取り出された第2の細胞を調製する。前記第2の細胞のタンパク質は、第2の発色団で共有結合により標識される。
【0018】
上記染色法に代わる方法としては、放射能標識法も利用できる。そのために、細胞を特定の同位体標識された化合物、たとえば35Sシステインまたは32PO 、と混合する。2D PAGEの後、このような場合、デジタル化のために通例Phosphorimagerが用いられる。たとえば、MELANIE、PDQUEST、IMAGEMASTERまたはZ3のような画像解析プログラムを用いて、得られたデジタル化ゲルにおけるタンパク質スポットを検出、定量、および分類する。個々のスポットを検出し、個別のゲルの間でスポットを照合することは、大変時間のかかることであり、オペレーターの手作業を差し挟む必要がある。
【0019】
2D PAGE法による、電気泳動から始まって染色、検出および定量までの全工程は非常に複雑である。
【0020】
概説した技術的な問題点に鑑みて、本発明の目的は、ゲルの使用を減らし、迅速かつ簡便に実施することができて、自動化が可能であり、さらに分画されたタンパク質の簡便な定量を可能にするタンパク質の分離法を開発することである。
【0021】
上記の目的は、タンパク質を分画して検出する方法であって、そのタンパク質試料が分離バッファー溶液中に含まれており、下記のステップ:
−第1分離ステップにおいて、等電点電気泳動(IEF)または等速電気泳動を用いて、フリーフロー電気泳動によってタンパク質試料を個々の画分に分割し、標識に結合させること、
−第2分離ステップにおいて、キャピラリー電気泳動によって1以上のキャピラリー中に該タンパク質画分を分画し、個別のキャピラリーにおいて少なくとも1つの標識を検出すること、
が実施される方法によって達成されることが明らかになった。
【0022】
本発明で提案する方法の利点として、第1に、複数の試料を同時に自動操作することが可能な、タンパク質または細胞タンパク質の分画を行うことができる。これによって試料の処理量を著しく増大させることができる。さらに、本発明の方法を使用することによって、現行の複雑で大きな労力を要する画像解析の手間を省くことができる。加えて、アプライすべき試料の量をかなり少なくすることができる。蛍光標識法のような適当な標識法によって、発現量の少ないタンパク質の検出に関する感度ならびに分解能をかなり高めることが可能である。
【0023】
本発明の方法の有利な実施形態においては、第1分離ステップ後に得られたタンパク質画分を反応性フルオロフォアに結合させる。これは、たとえば、フルオロフォアのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)またはイソチオシアネートをタンパク質の遊離アミノ基にカップリングさせることによって行うことができる。N末端の、もしくはリシンの遊離アミノ基をカップリング部位として選択することが望ましい。ポリアクリルアミドゲルの蛍光染色とは異なり、本発明の方法においては発色団が個々のタンパク質に共有結合されている。
【0024】
本発明の方法の有利な実施形態においては、第1分離ステップ後に得られたタンパク質画分を標識と混合する。これは、たとえば、Sypro(商標)ルビー、Sypro(商標)オレンジもしくはSypro(商標)レッドのようなフルオロフォアを添加することによって行うことができる。フルオロフォアSypro(商標)ルビー、Sypro(商標)オレンジまたはSypro(商標)レッドは、たとえば疎水性、イオン性またはファンデルワールス力による吸着によって結合すると考えられる。
【0025】
第2の分離ステップでは、ポリアクリルアミドゲルを含有するキャピラリーか、もしくは上記物質を含有しないキャピラリー(すなわち空のキャピラリー)のいずれかを使用することができる。個別のタンパク質の検出は、レーザー誘起蛍光法を用いた第2分離ステップでおこなう。鋭敏な蛍光検出法によって広範なダイナミックレンジと高感度が保証される。
【0026】
キャピラリー電気泳動におけるタンパク質の移動挙動を改善するために、ドデシル硫酸ナトリウムを分離バッファーに添加することができる。キャピラリー電気泳動の高い分離能は、2D−PAGEゲル法よりも、第2次元でかなり良好な分解能をもたらす。さらに、2つの分離ステップ、FFEおよびキャピラリー電気泳動、はいずれも自動化の可能性が高いので、処理量をかなり多くすることが可能となり、それゆえ得られた結果の統計的評価も高まる。フリーフロー電気泳動の後、比較的多数のタンパク質試料の並行処理を確実に行うために、マイクロタイタープレートのすべてのウェルを、同数のキャピラリーにより並行して別々に検出し定量することができる。これは、たとえば、DNA配列決定のための市販の装置を用いて実施できる。
【0027】
第2分離ステップにおいて、好都合なことに、複数の各種フルオロフォアをそれぞれのキャピラリーにおいて同時に検出することができる。これによって、異なるフルオロフォアで標識された複数のタンパク質試料を1つのキャピラリーで同時に分離することも可能となる。このことは、FFE−IEF法および蛍光標識法の後、異なる実験条件から得られたタンパク質試料を混合し、当該試料を1回のキャピラリー電気泳動の実施で分画する上で好都合である。以前には必要であった個別のゲルにおける個々のスポットの照合は不要となる。
【0028】
鋭敏な蛍光検出法によって広範なダイナミックレンジと高感度が保証される。キャピラリー電気泳動の分離効率が高いため、2D PAGEゲル法よりも第2次元でかなり優れた分解能が達成される。2つの分離ステップ、FFEおよびキャピラリー電気泳動ともに自動化の可能性が高いため、実質的に処理数が増加し、測定結果の統計的評価が高まることが期待される。
【0029】
第1分離ステップでのタンパク質試料の分画は、たとえば、マイクロタイタープレートにおいて、そのウェルの数が分離されたタンパク質画分の数に相当するマイクロタイタープレートを用いて有利に実施することができる。キャピラリー電気泳動による第2分離ステップで使用するキャピラリーの数は、マイクロタイタープレートに導入した試料画分の数に一致させることが好都合である。
【0030】
本発明の方法は、フリーフロー電気泳動およびキャピラリー電気泳動を使用することによって、2つの分離ステップで実施されるが、以下に、使用した成分を明示しつつ、より詳細に説明することとする。
【0031】
Hannig(Hannig, Electrophoresis 1982, 3, 235−243)によって開発されたフリーフロー電気泳動では、電場に対して垂直な連続したバッファーの膜流がある。フリーフロー電気泳動チャンバーの片側に、タンパク質試料を決められた位置に入れる。第1分離ステップにおいて、本発明の方法のためにフリーフロー電気泳動の2つの異なる方法、すなわち等電点電気泳動および等速電気泳動を使用することができる。
【0032】
等電点電気泳動の場合は、キャリアーアンフォライトを用いてpH勾配を形成する(Gerhard WeberおよびPetr Bocek, Electrophoresis 1998, 19, 1649−1653)が、このアンフォライトはバッファー膜流の方向に対して垂直な2つの電極の間に、バッファーとともに添加される。この勾配がフリーフローにおいてタンパク質をその電荷によって分画する(FFE−IEF)。フリーフロー電気泳動チャンバーの反対側に、個々の画分が、一連のチューブによって、たとえばマイクロタイタープレートの個々のウェル内に集められる。
【0033】
FFE−IEFに代わるものとして、等速電気泳動を第1分離ステップに使用することができる。先導電解質および後続電解質からなる不連続のバッファー系において、電場に電位勾配が形成される。低い移動度のイオンの領域では、より高い移動度のイオンの領域よりも電界強度が高い。すべてのイオンは同じ速度で移動することになるので、タンパク質試料混合物から個々のタンパク質の純粋なゾーンが形成される。平衡状態では、最も高い移動度のイオンは先導電解質の先導イオンの後に続き、最も低い移動度のイオンは後続電解質の前に移動し、その他は移動度の低下する順に移動する。実際には、インターバル等速電気泳動がおこなわれる(Gerhard WeberおよびPetr Bocek, Electrophoresis 1998, 19, 3090−3093)。タンパク質試料および電解質をフリーフロー電気泳動チャンバーにアプライした後、タンパク質を分離するために2分間高電圧をかける。その後、分離された画分は、電圧フリーの状態で一連のチューブを経てマイクロタイタープレートの個別のウェルに運ばれる。
【0034】
タンパク質を分離するための本発明の第1ステップでは、FFE−IEFおよびフリーフロー等速電気泳動のいずれのためにも、たとえばDr. Weber GmbHの提供する電気泳動装置「OCTOPUS」が用いられる。
【0035】
上記電気泳動装置においては、等電点電気泳動(FFE−IEF)または等速電気泳動の後、個々のタンパク質画分(96が望ましい)がマイクロタイタープレート中に得られる。前記画分中のタンパク質は、たとえば、Sypro(商標)オレンジ、Sypro(商標)レッドもしくはSypro(商標)ルビーといったフルオロフォアの標識、および少なくとも1つの反応性フルオロフォアの両者と結合させることができる。こうした目的に適した誘導体にはたとえば、フルオロフォアのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)またはイソチオシアネートがあるが、これらはタンパク質の遊離アミノ基に結合される。タンパク質またはタンパク質画分のN末端またはリシンが特に好適である。さらに、適当な誘導体化フルオロフォアをタンパク質のカルボン酸、チオールおよびヒドロキシル基に結合させることもできる。共有結合フルオロフォアを使用することから得られる利点は、主として、後の分離ステップで、異なる色素で標識された複数の試料をそれぞれのキャピラリーで同時に検出することが可能となる点である。
【0036】
第2分離ステップにおいて、共有結合で蛍光標識されたタンパク質は、たとえばキャピラリー電気泳動法によって分離することができる。一方では、使用する1以上のキャピラリーチューブはポリアクリルアミドゲルで満たすこともできるが、他方では、充填されない、すなわち空のキャピラリーチューブを使用することもできる。
【0037】
望ましくはレーザー誘起蛍光法による検出を次に行うが、キャピラリー電気泳動におけるタンパク質の移動挙動を改善するために、ドデシル硫酸ナトリウムを分離バッファーに添加することができる。マイクロタイタープレートのすべてのウェルを同数のキャピラリーを用いて並行して個別に検出し、定量することが理想的である。DNA配列決定のための市販の装置、たとえばAmersham Pharmacia製のMega−BACEまたは別の同様に設計された装置が、好適かつ簡便な方法で使用される。従来の2Dゲル電気泳動とそれに続く定量のための非共有結合染色および画像解析と比べて、本明細書に記載の方法によって得られたエレクトロフェログラムは市販のソフトウェアを用いて容易に定量できるという利点がある。
【0038】
本発明の方法のある実施形態では、各キャピラリー中のフルオロフォアのような、複数の各種標識を同時に検出することが可能であり、これらの標識は第2分画ステップに従ってキャピラリー電気泳動において使用することができる。上記方法の改変として、唯一のフルオロフォアまたは蛍光物質を検出することも可能である。したがって、異なるフルオロフォアで標識された複数のタンパク質試料を混合し、単一のキャピラリーで同時に分離することができる。このことが、第2分離ステップにおいて、並列化、すなわち複数の試料の同時並行処理に寄与する。1回の運転操作で解析される複数の試料は、異なる細胞、異なる生育段階の細胞、または異なる外的条件(たとえば、高温、低温、活性物質、化学薬品など)にさらされた細胞に由来するタンパク質とすることが望ましい。
【0039】
蛍光検出法は、実質的に感度がよいと分類されるべきもので、広範なダイナミックレンジおよび高感度を保証する。さらに、キャピラリー電気泳動における分離効率が高いために、タンパク質試料もしくは細胞起源のタンパク質試料について、2D PAGE法と比較して、第2次元においてかなり優れた分解能を達成することができる。2つの方法、フリーフロー電気泳動およびキャピラリー電気泳動の自動化の可能性がかなり高いので、処理量が大幅に増加し、したがってデータの統計的評価が高まると考えられる。本発明の方法を実施した後、エレクトロフェログラムを評価するためのプログラムシーケンスを作成する必要がある。さらに、本発明の方法の実施には、たとえば、フリーフロー電気泳動装置(Dr.Weber GmbHの「Octopus」)およびAmershamのMega−BACEシーケンサーまたは同様の装置も必要である。

Claims (17)

  1. 分離バッファー溶液中に含有されるタンパク質もしくは細胞起源のタンパク質試料を分画して検出する方法であって、下記のステップ:
    −第1分離ステップにおいて、フリーフロー電気泳動、すなわち等電点電気泳動(IEF)または等速電気泳動、によってタンパク質試料を個々の画分に分割し、標識に結合させること、
    −第2分離ステップにおいて、キャピラリー電気泳動によって1以上のキャピラリー中に該タンパク質画分を分画し、該タンパク質画分に結合された少なくとも1つの標識を前記1つのキャピラリーまたは前記数個のキャピラリーにおいて検出すること、
    を実施することを含んでなる方法。
  2. 第1分離ステップの後、得られたタンパク質画分中の全てのタンパク質を反応性フルオロフォアに結合させることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
  3. タンパク質の遊離アミノ基にフルオロフォアのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル)またはイソチオシアネートをカップリングさせることを含んでなる、請求項2に記載の方法。
  4. カップリング部位がタンパク質のN末端またはリシンのような遊離アミノ基である、請求項3に記載の方法。
  5. タンパク質の遊離スルフヒドリル基にフルオロフォアのヨードアセトアミド、マレイミド、[アセチルメルカプトスクシノイル]アミノ−(=SAMSA)、ピリジルジチオプロピオンアミド(=PDP)またはブロモメチル誘導体をカップリングさせることを含んでなる、請求項2に記載の方法。
  6. 反応性フルオロフォアをタンパク質のカルボン酸基、チオール基もしくはヒドロキシル基にカップリングさせることを含んでなる、請求項2に記載の方法。
  7. カップリング部位がシステインの遊離スルフヒドリル基である、請求項5に記載の方法。
  8. 第1分離ステップの後、得られたタンパク質画分中の全てのタンパク質を蛍光標識と混合する、請求項1に記載の方法。
  9. 標識がファンデルワールス、イオン性または疎水性相互作用による吸着によってタンパク質に結合される、請求項8に記載の方法。
  10. 第2分離ステップで使用するキャピラリーがポリアクリルアミドゲルを含有する、請求項1に記載の方法。
  11. 第2分離ステップで使用するキャピラリーがアガロースを含有する、請求項1に記載の方法。
  12. 第2分離ステップで使用するキャピラリーがゲルを含有しない、請求項1に記載の方法。
  13. 第2分離ステップで使用するキャピラリーが合成ポリマーマトリックスを含有する、請求項1に記載の方法。
  14. 第2分画ステップにおける検出がレーザー誘起蛍光法によって行われる、請求項1に記載の方法。
  15. キャピラリー電気泳動時にタンパク質を含有する分離バッファーにドデシル硫酸ナトリウムを添加することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
  16. 第1分離ステップにおいて、タンパク質試料を、好ましくは96の異なるタンパク質画分に、並行して分画することを含んでなり、ウェルの数が分離されるタンパク質画分の数に相当するマイクロタイタープレートを使用する、請求項1に記載の方法。
  17. 第2分離ステップにおけるキャピラリーの数が、マイクロタイタープレートにアプライしたタンパク質画分の数、またはその数の一部に相当する、請求項16に記載の方法。
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