JP2004150769A - 金属酸化防止装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】自由電子の供給により還元雰囲気にし、酸素との結合を簡単に阻止し、酸化されていない状態の高品質の金属を提供すること。
【解決手段】金属酸化防止装置21は、電気溶融炉22と高電圧直流電源23を設け、溶融炉22の室内24には陽極棒25と陰極棒26とを設けている。陽極棒25は直流電源23の陽極27側に接続し、陰極棒26は同じく直流電源23の陰極28側に接続している。また、直流電流23の陰極棒26をるつぼ36内にある溶融アルミニウム35に接触させて、陽極棒25を溶融アルミニウムと間隔を開けて配置し、両電極間に溶湯35の表面に接触しないように配設し、1000V以上の電圧をかける。
【選択図】 図2
【解決手段】金属酸化防止装置21は、電気溶融炉22と高電圧直流電源23を設け、溶融炉22の室内24には陽極棒25と陰極棒26とを設けている。陽極棒25は直流電源23の陽極27側に接続し、陰極棒26は同じく直流電源23の陰極28側に接続している。また、直流電流23の陰極棒26をるつぼ36内にある溶融アルミニウム35に接触させて、陽極棒25を溶融アルミニウムと間隔を開けて配置し、両電極間に溶湯35の表面に接触しないように配設し、1000V以上の電圧をかける。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は金属の溶解、保持や金属を高温で熱処理する場合の酸化反応を防止する金属酸化防止方法及び金属酸化防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、金属を溶解する場合は酸化反応が避けられずに、酸化物は脱酸剤等を投入し取り除くのが一般的である。
一部、真空や不活性ガスによる無酸化雰囲気を一体化させた装置もあるが、管理が難易で、費用もかかるため、あまり普及していない。
熱処理については、金属は酸化するものとして、消耗品として扱われている。また製品については酸化皮膜が付くと一般的には表面処理の前処理として除去されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平08−013054号公報 (要約参照)
【特許文献2】
特開平09−031566号公報 (要約参照)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、金属を溶解する際に金属の酸化を防止することは、コストや設備がかかるのが実情であった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、金属が酸素と結合する酸化反応で、酸素を除去し酸化を防ぐ、複雑で大規模な装置が必要な方法から、自由電子の供給により還元雰囲気にし、酸素との結合を簡単に阻止し、高品質の金属を提供することができる金属酸化防止装置を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の金属酸化防止装置は、陰極と陽極とを設けた直流電源を備え、上記陰極側の接続端に接続した酸化を防止するための金属に対して上記陽極側の接続端を間隔を開けることにより上記陰極側と陽極側とを非接触状態に配置し、上記直流電源の両接続端間に電圧を印加させて上記陽極と上記金属間に微電流を流し、上記固体金属の酸化を防止するようにした。
また、上記金属酸化防止装置は、上記金属がるつぼ内に収容された溶融金属であり、上記直流電源の陰極側を溶融金属に接触させ、上記直流電源の陽極側の接続端を上記溶融金属と間隔を開けて配置し、上記直流電源の両接続端間に電圧を印加させて上記陽極と溶融金属間に微電流を流し、上記溶融金属の酸化を防止するようにした。
さらに、上記金属酸化防止装置は、上記陽極と上記金属間を加熱する加熱手段を設けることができ、上記直流電源は1000V以上の高電圧とすることができる。
【0006】
金属の酸化を防ぐひとつのメカニズムを本発明からアルミニウムを例に挙げて説明すると、図4のAに示すように、アルミニウムは原子番号13の+3価の金属であり、図4のBに示すようにアルミニウム原子2個と酸素原子3個で構成される。
酸素は、原子番号8でL殻に電子を2個満たすと安定するため、アルミニウムのM殻の電子と結合しようとしアルミニウムの電子が奪われることが酸化である。よって、これを阻止しなければならない。
本発明では、陰極側をアルミニウムと接続し、陽極側をアルミニウムと間隔を開けて配設する。よって、図4のCに示すように、アルミニウムの表面を電子が覆う形になり、アルミニウム自体の外殻電子が奪われないと酸化を防止できると考えられる。
【0007】
本発明を解決するための技術手段としてどのように、金属に電子を供給して金属を還元雰囲気にするかであった。本発明で、陰極を金属に接触させ、陽極は金属に接触させないように近づけて電圧をかけると、微電流が生じ温度の上昇にしたがって電流値が大きくなり、そのことにより金属の酸化を防止することを発見し本発明に到達した。微電流が生じるということは、電子も生じるという証明にもなり、以下の実施形態により本発明を詳細に説明する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態による金属酸化防止方法及び金属酸化防止装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係わる金属酸化防止装置である。この金属酸化防止装置1は、小型電気炉2と高電圧が発生できる直流電源3が設けられ、電気炉2には陽極棒5と陰極棒6とが設けられ、電気炉2の天井壁2aから室内4へ吊り下げている。天井壁2aは非導電材料(セラミック板)で形成している。陽極棒5は直流電源3の陽極7側にリード線9により接続し、陰極棒6は同じく直流電源3の陰極8側にリード線10により接続し、リード線10の中間部には電流計11を設けている。
また、電気炉2の天井壁2aからは、熱温度計12のセンサー13を室内4へ吊り下げている。そして、室内4の内壁部には電熱線14を取付けている。この電熱線14は、図示しない電源から電気の供給を受けて室ない4を加熱することができる。なお、室内4は、真空や不活性ガスによる無酸化雰囲気を作る必要がない。
【0009】
本実施の形態では、このような金属酸化防止装置1により、陽極棒5と陰極棒6の各々に線形φ1.2mmの電極棒(材質はSUS309)を用い、両電極間に直流1000Vの電圧をかけるようにした。そして、両電極の接続端5a,6a間(L)の間隔を開け、10mm〜80mmの間隔において、10mm間隔で8箇所で電流値を測定し、さらに各ポイントで温度を変化させて、電流値と温度の影響を試験してみた。その結果を表1に示す。なお、電流値の単位は(μA)である。
【0010】
【表1】
表1の試験結果より、空気中ではいずれの温度でも電極間の間隔が狭い程、電流地の値が大きくなった。よって、電極間が狭く温度が高いほど電流が流れ易いことがわかる。また、両電極の接続端5a,6aの間隔が同じであれば、温度が高いほど電流値が大きくなることがわかった。
【0011】
次に、図1の小型電気炉2を200℃にセットし電極の両接続端5a,6aの間隔を10mmに設定し、陰極側に#60の紙ヤスリで表裏両面を傷つけた金属試験片(30mm×20mm×厚み0.2mmの鉄板)を吊り下げ、電圧をかけないまま1時間保持した。試験片は、両方の表面が均等に茶色に変色した。これは酸化皮膜である。
次いで、両電極5,6間に直流電圧1000Vをかけ、陰極に同じ形状の別の試験片を吊り下げ1時間保持した。このときの、電流値は0.1μAを示していた。試験片は、表裏両方の面が均等に茶色に変色した。これは酸化皮膜である。試験片は電圧をかけないものと比べると色はうすいが、表面が茶色に変色した。なお、色が薄くなっているのは、電圧をかけなかった試験片よりも電圧をかけた試験片の方が、酸化されていないことが分かる。
【0012】
さらに、両電極間5,6に直流10000Vの電圧をかけ、陰極に形状が同じで別の試験片を吊り下げ1時間保持した。このときの電流値は、0.6μAを示していた。取り出した試験片は表面の光沢に変化はなく、銀白色のままであった。
これより0.6μA/6cm2×2=0.05μAから、酸化を防止するためには、単位面積(cm2)あたり0.05μA以上が必要であると考えられる。以上のように、酸化を防止する必要がある金属の製品や冶工具を、陰極側に接続(または接触)し、空気中に間隔を開けて絶縁状態にある陽極との間に、高電圧で微電流を流し、金属製品等をマイナスに帯電させて、酸化を防止することができる。
【0013】
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
上記第1の実施形態では、固体金属の酸化防止法について説明したが、本実施形態では溶融金属を対象とすることが異なる。
図2に示すように、金属酸化防止装置21は、電気溶融炉22と高電圧が発生できる直流電源23が設けられ、溶融炉22の室内24には陽極棒25と陰極棒26とが、溶融炉22の天井壁22aから吊り下げられている。天井壁22aは非導電材料で形成している。陽極棒25は直流電源23の陽極27側にリード線29により接続し、陰極棒26は同じく直流電源23の陰極28側にリード線30により接続し、リード線30の中間部には電流計31を設けている。なお、陽極棒25は図示しない昇降装置により上下動が可能である。
【0014】
また、電気炉2の天井壁22aからは、熱温度計32のセンサー33を室内4へ吊り下げている。そして、室内4の内壁部には電熱線14を取付けている。この電熱線14は、図示しない電源から電気の供給を受けることができる。
電気溶融炉22の室内には、炉底に絶縁碍子38を設け、絶縁碍子38の上面には黒鉛るつぼ36を備えている。黒鉛るつぼ36には、アルミニウムが収容される。
【0015】
このような構成により、絶縁状態の絶縁碍子38の上に配設したるつぼ36とるつぼ36内にある固体アルミニウムが電気的に絶緑状態であることを確認する。直流電流23の陰極棒26をるつぼ(釜)36内にある金属に接触させて、陽極棒25を固体アルミニウムと間隔を開けて配置する。溶湯35の表面に接触しないように近づけて、1000V以上の電圧をかける。
そして、電熱線34により固体アルミニウムを加熱、溶解してアルミニウム溶湯35にする。すると、空気中の酸素との反応が活発になり酸化反応が起こるが、空気中より陽極棒25と溶湯35との間に微電流が流れ、陰極側がマイナスに帯電するため(図4参照)電子が溶融金属表面を覆い酸素分子との結合を防ぐ。さらに、溶融金属中の化学成分で酸化し易い元素の酸化を防ぎ化学成分の変動を抑え、品質的に安定した状態で保持する。
【0016】
[実施例]
図2に示す電気溶融炉22を用いて、以下のような試験を行なってみた。
▲1▼黒鉛るつぼ36内のアルミニウム溶湯35に陰極棒26を接触させ、陽極棒25を溶湯35面と間隔を開けて配置した。そして、直流電源23により、1000Vの電圧をかけて微電流(4.8μA)を流し900℃で溶解維持し、24時間経過したものを凝固させた。
▲2▼同条件で、今度は図2に示す陽極棒25の先端をアルミニウム溶湯35中に浸漬し、陰極棒26を溶湯35面と間隔を開けて配置した。そして、直流電源23により、1000Vの電圧をかけて微電流(4.8μA)を流し900℃で溶解維持し、24時間経過したものを凝固させた。
▲3▼同条件で、陽極及び陰極に電圧をかけず、アルミニウム900℃で溶解維持し、24時間経過したものを凝固させた。
上記▲1▼〜▲3▼の擬固した試料の重量を測定し酸化量を比較した。その結果を以下の表2に示す。
【0017】
【表2】
表2より、▲1▼の陰極棒26を溶湯に接触させて加電したものは重量の増加がなくむしろ減少しており、まず酸化はされていないと考えられる。重量の減少は、脱酸素による還元反応と考えられる。
また、無電圧のものは重量が増加しており、これは酸素が結合しているための増加と考えられる。さらに陽極加電のものは酸化が促進し無電圧のものより重量が多いため、陽極酸化反応が起きている。
このことより電子の電荷の大きさは、1Aで1.602×10−19クーロンであるから、4.8μAの電流が流れており、(1/1.6×1019)×4.8×10−6で秒間に3.0×1013個の電子が移動していることになる。
【0018】
図3は、上記第2の実施形態の変形例である。
図3に示すように、黒鉛るつぼ36の内部には溶湯35が溜められている。陰極棒26の先端部は溶湯35内に浸漬され、陽極棒25は溶湯の表面に対して間隔を開けて配設されている。陽極棒25の先端部には、保温用のセラミックまたはその他の絶縁材料で形成されている保温用の筒37が陽極棒25の先端部を覆うようにして配設され、筒37の先端部は溶湯35内に浸漬された状態にしている。よって、陽極棒25の先端部が収容されている筒37の内部はほぼ密閉状態になり、筒37の内部温度が上昇する。
通常、電気が空気中を通電することは困難であるが、上記表1からも分かるように、空気中の温度が上がるにつれて通電しやすい状態になるので、金属を加熱して処理する場合はその熱を利用することにより、空気中の電気を導電しやすくできる。
【0019】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、勿論、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形及び変更が可能である。
例えば、上記第1の実施の形態では、鉄片について説明し、上記第2の実施の形態では、アルミニウムについて説明したが、その他の材料で実施することができる。
【0020】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、陰極と陽極とを設けた直流電源を備え、上記陰極側の接続端に接続した酸化を防止するための金属に対して上記陽極側の接続端を間隔を開けることにより上記陰極側と陽極側とを非接触状態に配置し、上記直流電源の両接続端間に電圧を印加させて上記陽極と上記金属間に微電流を流したので、上記固体金属の酸化を防止することができるようになった。よって、酸化されていない高品質の金属を得ることができる。
上記発明は、金属をるつぼ内に収容した溶融金属に適用し、かつ、上記直流電源の陰極側を溶融金属に接触させ、上記直流電源の陽極側の接続端を上記溶融金属と間隔を開けて配置し、上記直流電源の両接続端間に高電圧を印加させて上記陽極と溶融金属間に微電流を流し、上記溶融金属の酸化を防止するようにしたので、溶融金属の酸化を防止することができる。
また、上記発明は、上記陽極と上記金属間を加熱する加熱手段を設けることにより、電流値を大きくすることが可能である。
さらに上記発明は、上記直流電源が1000V以上の高電圧とすることで、容易に陽極側と陰極側の間に電流を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による金属酸化防止装置の概略図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態において、アルミニウムを溶融する電気炉に用いられる金属酸化防止装置の概略図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態において、空気中の高温を保つための方法示し他金属酸化防止装置の電気炉の室内の概略図である。
【図4】本発明に関連するアルミニウムの酸化とその防止のメカニズムを説明するための図であり、AはAアルミニウム原子と酸素原子を示し、Bはアルミニウム原子と酸素原子の化学結合を示す図であり、Aはアルミニウムの表面を電子が帯電している状態を示す図である。
【符号の説明】
1,21 金属酸化防止装置
2 電気炉
3,23 直流電源
5,25 陽極棒
6,26 陰極棒
7,27 陽極
8,28 陰極
14 ヒータ
22 溶融炉
35 溶湯
36 るつぼ
37 筒
【発明の属する技術分野】
本発明は金属の溶解、保持や金属を高温で熱処理する場合の酸化反応を防止する金属酸化防止方法及び金属酸化防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、金属を溶解する場合は酸化反応が避けられずに、酸化物は脱酸剤等を投入し取り除くのが一般的である。
一部、真空や不活性ガスによる無酸化雰囲気を一体化させた装置もあるが、管理が難易で、費用もかかるため、あまり普及していない。
熱処理については、金属は酸化するものとして、消耗品として扱われている。また製品については酸化皮膜が付くと一般的には表面処理の前処理として除去されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平08−013054号公報 (要約参照)
【特許文献2】
特開平09−031566号公報 (要約参照)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、金属を溶解する際に金属の酸化を防止することは、コストや設備がかかるのが実情であった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、金属が酸素と結合する酸化反応で、酸素を除去し酸化を防ぐ、複雑で大規模な装置が必要な方法から、自由電子の供給により還元雰囲気にし、酸素との結合を簡単に阻止し、高品質の金属を提供することができる金属酸化防止装置を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の金属酸化防止装置は、陰極と陽極とを設けた直流電源を備え、上記陰極側の接続端に接続した酸化を防止するための金属に対して上記陽極側の接続端を間隔を開けることにより上記陰極側と陽極側とを非接触状態に配置し、上記直流電源の両接続端間に電圧を印加させて上記陽極と上記金属間に微電流を流し、上記固体金属の酸化を防止するようにした。
また、上記金属酸化防止装置は、上記金属がるつぼ内に収容された溶融金属であり、上記直流電源の陰極側を溶融金属に接触させ、上記直流電源の陽極側の接続端を上記溶融金属と間隔を開けて配置し、上記直流電源の両接続端間に電圧を印加させて上記陽極と溶融金属間に微電流を流し、上記溶融金属の酸化を防止するようにした。
さらに、上記金属酸化防止装置は、上記陽極と上記金属間を加熱する加熱手段を設けることができ、上記直流電源は1000V以上の高電圧とすることができる。
【0006】
金属の酸化を防ぐひとつのメカニズムを本発明からアルミニウムを例に挙げて説明すると、図4のAに示すように、アルミニウムは原子番号13の+3価の金属であり、図4のBに示すようにアルミニウム原子2個と酸素原子3個で構成される。
酸素は、原子番号8でL殻に電子を2個満たすと安定するため、アルミニウムのM殻の電子と結合しようとしアルミニウムの電子が奪われることが酸化である。よって、これを阻止しなければならない。
本発明では、陰極側をアルミニウムと接続し、陽極側をアルミニウムと間隔を開けて配設する。よって、図4のCに示すように、アルミニウムの表面を電子が覆う形になり、アルミニウム自体の外殻電子が奪われないと酸化を防止できると考えられる。
【0007】
本発明を解決するための技術手段としてどのように、金属に電子を供給して金属を還元雰囲気にするかであった。本発明で、陰極を金属に接触させ、陽極は金属に接触させないように近づけて電圧をかけると、微電流が生じ温度の上昇にしたがって電流値が大きくなり、そのことにより金属の酸化を防止することを発見し本発明に到達した。微電流が生じるということは、電子も生じるという証明にもなり、以下の実施形態により本発明を詳細に説明する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態による金属酸化防止方法及び金属酸化防止装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係わる金属酸化防止装置である。この金属酸化防止装置1は、小型電気炉2と高電圧が発生できる直流電源3が設けられ、電気炉2には陽極棒5と陰極棒6とが設けられ、電気炉2の天井壁2aから室内4へ吊り下げている。天井壁2aは非導電材料(セラミック板)で形成している。陽極棒5は直流電源3の陽極7側にリード線9により接続し、陰極棒6は同じく直流電源3の陰極8側にリード線10により接続し、リード線10の中間部には電流計11を設けている。
また、電気炉2の天井壁2aからは、熱温度計12のセンサー13を室内4へ吊り下げている。そして、室内4の内壁部には電熱線14を取付けている。この電熱線14は、図示しない電源から電気の供給を受けて室ない4を加熱することができる。なお、室内4は、真空や不活性ガスによる無酸化雰囲気を作る必要がない。
【0009】
本実施の形態では、このような金属酸化防止装置1により、陽極棒5と陰極棒6の各々に線形φ1.2mmの電極棒(材質はSUS309)を用い、両電極間に直流1000Vの電圧をかけるようにした。そして、両電極の接続端5a,6a間(L)の間隔を開け、10mm〜80mmの間隔において、10mm間隔で8箇所で電流値を測定し、さらに各ポイントで温度を変化させて、電流値と温度の影響を試験してみた。その結果を表1に示す。なお、電流値の単位は(μA)である。
【0010】
【表1】
表1の試験結果より、空気中ではいずれの温度でも電極間の間隔が狭い程、電流地の値が大きくなった。よって、電極間が狭く温度が高いほど電流が流れ易いことがわかる。また、両電極の接続端5a,6aの間隔が同じであれば、温度が高いほど電流値が大きくなることがわかった。
【0011】
次に、図1の小型電気炉2を200℃にセットし電極の両接続端5a,6aの間隔を10mmに設定し、陰極側に#60の紙ヤスリで表裏両面を傷つけた金属試験片(30mm×20mm×厚み0.2mmの鉄板)を吊り下げ、電圧をかけないまま1時間保持した。試験片は、両方の表面が均等に茶色に変色した。これは酸化皮膜である。
次いで、両電極5,6間に直流電圧1000Vをかけ、陰極に同じ形状の別の試験片を吊り下げ1時間保持した。このときの、電流値は0.1μAを示していた。試験片は、表裏両方の面が均等に茶色に変色した。これは酸化皮膜である。試験片は電圧をかけないものと比べると色はうすいが、表面が茶色に変色した。なお、色が薄くなっているのは、電圧をかけなかった試験片よりも電圧をかけた試験片の方が、酸化されていないことが分かる。
【0012】
さらに、両電極間5,6に直流10000Vの電圧をかけ、陰極に形状が同じで別の試験片を吊り下げ1時間保持した。このときの電流値は、0.6μAを示していた。取り出した試験片は表面の光沢に変化はなく、銀白色のままであった。
これより0.6μA/6cm2×2=0.05μAから、酸化を防止するためには、単位面積(cm2)あたり0.05μA以上が必要であると考えられる。以上のように、酸化を防止する必要がある金属の製品や冶工具を、陰極側に接続(または接触)し、空気中に間隔を開けて絶縁状態にある陽極との間に、高電圧で微電流を流し、金属製品等をマイナスに帯電させて、酸化を防止することができる。
【0013】
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
上記第1の実施形態では、固体金属の酸化防止法について説明したが、本実施形態では溶融金属を対象とすることが異なる。
図2に示すように、金属酸化防止装置21は、電気溶融炉22と高電圧が発生できる直流電源23が設けられ、溶融炉22の室内24には陽極棒25と陰極棒26とが、溶融炉22の天井壁22aから吊り下げられている。天井壁22aは非導電材料で形成している。陽極棒25は直流電源23の陽極27側にリード線29により接続し、陰極棒26は同じく直流電源23の陰極28側にリード線30により接続し、リード線30の中間部には電流計31を設けている。なお、陽極棒25は図示しない昇降装置により上下動が可能である。
【0014】
また、電気炉2の天井壁22aからは、熱温度計32のセンサー33を室内4へ吊り下げている。そして、室内4の内壁部には電熱線14を取付けている。この電熱線14は、図示しない電源から電気の供給を受けることができる。
電気溶融炉22の室内には、炉底に絶縁碍子38を設け、絶縁碍子38の上面には黒鉛るつぼ36を備えている。黒鉛るつぼ36には、アルミニウムが収容される。
【0015】
このような構成により、絶縁状態の絶縁碍子38の上に配設したるつぼ36とるつぼ36内にある固体アルミニウムが電気的に絶緑状態であることを確認する。直流電流23の陰極棒26をるつぼ(釜)36内にある金属に接触させて、陽極棒25を固体アルミニウムと間隔を開けて配置する。溶湯35の表面に接触しないように近づけて、1000V以上の電圧をかける。
そして、電熱線34により固体アルミニウムを加熱、溶解してアルミニウム溶湯35にする。すると、空気中の酸素との反応が活発になり酸化反応が起こるが、空気中より陽極棒25と溶湯35との間に微電流が流れ、陰極側がマイナスに帯電するため(図4参照)電子が溶融金属表面を覆い酸素分子との結合を防ぐ。さらに、溶融金属中の化学成分で酸化し易い元素の酸化を防ぎ化学成分の変動を抑え、品質的に安定した状態で保持する。
【0016】
[実施例]
図2に示す電気溶融炉22を用いて、以下のような試験を行なってみた。
▲1▼黒鉛るつぼ36内のアルミニウム溶湯35に陰極棒26を接触させ、陽極棒25を溶湯35面と間隔を開けて配置した。そして、直流電源23により、1000Vの電圧をかけて微電流(4.8μA)を流し900℃で溶解維持し、24時間経過したものを凝固させた。
▲2▼同条件で、今度は図2に示す陽極棒25の先端をアルミニウム溶湯35中に浸漬し、陰極棒26を溶湯35面と間隔を開けて配置した。そして、直流電源23により、1000Vの電圧をかけて微電流(4.8μA)を流し900℃で溶解維持し、24時間経過したものを凝固させた。
▲3▼同条件で、陽極及び陰極に電圧をかけず、アルミニウム900℃で溶解維持し、24時間経過したものを凝固させた。
上記▲1▼〜▲3▼の擬固した試料の重量を測定し酸化量を比較した。その結果を以下の表2に示す。
【0017】
【表2】
表2より、▲1▼の陰極棒26を溶湯に接触させて加電したものは重量の増加がなくむしろ減少しており、まず酸化はされていないと考えられる。重量の減少は、脱酸素による還元反応と考えられる。
また、無電圧のものは重量が増加しており、これは酸素が結合しているための増加と考えられる。さらに陽極加電のものは酸化が促進し無電圧のものより重量が多いため、陽極酸化反応が起きている。
このことより電子の電荷の大きさは、1Aで1.602×10−19クーロンであるから、4.8μAの電流が流れており、(1/1.6×1019)×4.8×10−6で秒間に3.0×1013個の電子が移動していることになる。
【0018】
図3は、上記第2の実施形態の変形例である。
図3に示すように、黒鉛るつぼ36の内部には溶湯35が溜められている。陰極棒26の先端部は溶湯35内に浸漬され、陽極棒25は溶湯の表面に対して間隔を開けて配設されている。陽極棒25の先端部には、保温用のセラミックまたはその他の絶縁材料で形成されている保温用の筒37が陽極棒25の先端部を覆うようにして配設され、筒37の先端部は溶湯35内に浸漬された状態にしている。よって、陽極棒25の先端部が収容されている筒37の内部はほぼ密閉状態になり、筒37の内部温度が上昇する。
通常、電気が空気中を通電することは困難であるが、上記表1からも分かるように、空気中の温度が上がるにつれて通電しやすい状態になるので、金属を加熱して処理する場合はその熱を利用することにより、空気中の電気を導電しやすくできる。
【0019】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は、勿論、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形及び変更が可能である。
例えば、上記第1の実施の形態では、鉄片について説明し、上記第2の実施の形態では、アルミニウムについて説明したが、その他の材料で実施することができる。
【0020】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、陰極と陽極とを設けた直流電源を備え、上記陰極側の接続端に接続した酸化を防止するための金属に対して上記陽極側の接続端を間隔を開けることにより上記陰極側と陽極側とを非接触状態に配置し、上記直流電源の両接続端間に電圧を印加させて上記陽極と上記金属間に微電流を流したので、上記固体金属の酸化を防止することができるようになった。よって、酸化されていない高品質の金属を得ることができる。
上記発明は、金属をるつぼ内に収容した溶融金属に適用し、かつ、上記直流電源の陰極側を溶融金属に接触させ、上記直流電源の陽極側の接続端を上記溶融金属と間隔を開けて配置し、上記直流電源の両接続端間に高電圧を印加させて上記陽極と溶融金属間に微電流を流し、上記溶融金属の酸化を防止するようにしたので、溶融金属の酸化を防止することができる。
また、上記発明は、上記陽極と上記金属間を加熱する加熱手段を設けることにより、電流値を大きくすることが可能である。
さらに上記発明は、上記直流電源が1000V以上の高電圧とすることで、容易に陽極側と陰極側の間に電流を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による金属酸化防止装置の概略図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態において、アルミニウムを溶融する電気炉に用いられる金属酸化防止装置の概略図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態において、空気中の高温を保つための方法示し他金属酸化防止装置の電気炉の室内の概略図である。
【図4】本発明に関連するアルミニウムの酸化とその防止のメカニズムを説明するための図であり、AはAアルミニウム原子と酸素原子を示し、Bはアルミニウム原子と酸素原子の化学結合を示す図であり、Aはアルミニウムの表面を電子が帯電している状態を示す図である。
【符号の説明】
1,21 金属酸化防止装置
2 電気炉
3,23 直流電源
5,25 陽極棒
6,26 陰極棒
7,27 陽極
8,28 陰極
14 ヒータ
22 溶融炉
35 溶湯
36 るつぼ
37 筒
Claims (3)
- 陰極と陽極とを設けた直流電源を備え、上記陰極側の接続端に接続した酸化を防止するための金属に対して上記陽極側の接続端に対して間隔を開けることにより上記陰極側と陽極側とを非接触状態に配置し、上記直流電源の両接続端間に電圧を印加させて上記陽極と上記金属間に微電流を流し、上記固体金属の酸化を防止するようにした金属酸化防止装置。
- 上記金属はるつぼ内に収容された溶融金属であり、上記直流電源の陰極側を溶融金属に接触させ、上記直流電源の陽極側の接続端を上記溶融金属と間隔を開けて配置し、上記直流電源の両接続端間に高電圧を印加させて上記陽極と溶融金属間に微電流を流し、上記溶融金属の酸化を防止するようにした請求項1に記載の金属酸化防止装置。
- 上記陽極と上記金属間を加熱する加熱手段を設けるようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の金属酸化防止装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002319208A JP2004150769A (ja) | 2002-11-01 | 2002-11-01 | 金属酸化防止装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002319208A JP2004150769A (ja) | 2002-11-01 | 2002-11-01 | 金属酸化防止装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004150769A true JP2004150769A (ja) | 2004-05-27 |
Family
ID=32462114
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002319208A Pending JP2004150769A (ja) | 2002-11-01 | 2002-11-01 | 金属酸化防止装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004150769A (ja) |
-
2002
- 2002-11-01 JP JP2002319208A patent/JP2004150769A/ja active Pending
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