JP2004148736A - 感熱記録材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱安定性が高く生保存性に優れると共に、非画像部(地肌部)の白色性に優れた感熱記録材料を提供する。
【解決手段】マイクロカプセル中に下記一般式(2)で表される不揮発性オイル成分と共に内包された下記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩と、カプラーとを含み、かつ前記マイクロカプセル中に占める一般式(2)で表される化合物の含有量が、ジアゾニウム塩を除くマイクロカプセル中の不揮発成分の全質量の70質量%以上である感熱記録層を有する感熱記録材料である〔R1、R3、R4:アルキル基、アリール基、アラルキル基;R2、R5:H、アルキル基、ハロゲン原子;X−:対アニオン;R11〜R20:H、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基〕
【化1】
【選択図】 なし
【解決手段】マイクロカプセル中に下記一般式(2)で表される不揮発性オイル成分と共に内包された下記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩と、カプラーとを含み、かつ前記マイクロカプセル中に占める一般式(2)で表される化合物の含有量が、ジアゾニウム塩を除くマイクロカプセル中の不揮発成分の全質量の70質量%以上である感熱記録層を有する感熱記録材料である〔R1、R3、R4:アルキル基、アリール基、アラルキル基;R2、R5:H、アルキル基、ハロゲン原子;X−:対アニオン;R11〜R20:H、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基〕
【化1】
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジアゾニウム塩とカプラーとを発色成分とする感熱記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
サーマルヘッド等により熱を供与して画像を記録する感熱記録材料は、比較的安価であり、その記録装置が簡便で信頼性が高く、メンテナンスが不要であることから広く普及している。かかる状況のもと、近年では特に高画質化、保存安定性の向上等の高性能化に対する要望が高く、感熱記録材料の発色濃度、画像品質、保存性等に関する研究が鋭意行なわれている。
【0003】
感熱記録材料としては、発色成分としてジアゾニウム塩を用いたものが多く開発され、発色濃度、画像品質および保存性の向上が図られてきている。ジアゾニウム塩を含有するジアゾ発色系の感熱記録材料は、ジアゾニウム塩をマイクロカプセルに内包すると共に、熱印画することにより画像を形成した後、光によって未印画部のジアゾニウム塩を熱分解して定着させることによって、記録材料としての保存性(画像保存性)を大きく向上させることができる。
【0004】
しかし、ジアゾ発色系の感熱記録材料は、画像形成前の保存(生保存)時にジアゾニウム塩の一部が徐々に熱分解することが原因で活性を失うため、保存経時で発色濃度が低下してしまうという問題があった。また、熱分解すると、その分解生成物(ステイン)によって地肌部は着色されてしまう問題もあった。
【0005】
これに対し、マイクロカプセル液を調製する際、ジアゾニウム塩と共にオイル成分として芳香族エステルオイルを用いることによって、ジアゾニウム塩の熱分解を抑え、地肌着色を抑制した感熱記録材料が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。しかしながら、芳香族エステルオイルをマイクロカプセルの製造に用いるオイル成分(カプセルオイル)として用いた系では、必ずしも地肌部(非画像部)の白色性の向上には寄与し得ず、ジアゾニウム塩との組合せによっては、得られたマイクロカプセル液が感熱記録層を形成するのに不適当な性状、すなわち経時の沈殿、塗布後の地肌着色などを招来することがあった。
【0006】
また、マイクロカプセルの製造に用いるオイル成分として、アシルホスフィンオキサイドを公知のオイルと併用することにより、地肌着色を低減した感熱記録材料もある(例えば、特許文献6参照)。
しかし、上記のいずれにおいても、未使用の感熱記録材料を長期保存したときの発色性、地肌白色性をともに良好に保持する観点では、必ずしも充分な性能を発揮し得るまでには至っていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−324129号公報
【特許文献2】
特開平9−175017号公報
【特許文献3】
特開平11−291638号公報
【特許文献4】
特開2001−130138公報
【特許文献5】
特開2001−180118公報
【特許文献6】
特開2000−343827公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記事情に鑑み、特願2002−241645では、ジアゾニウム塩自体の熱分解性を抑えることによって、感熱記録材料の熱安定性を向上させる技術が提案されている。すなわち、発色成分としてベンゾチアゾリルジアゾニウム塩を含有させた感熱記録材料は、ジアゾニウム塩自体の熱安定性が高く、長期保存時の生保存性に優れることが記載されている。確かに、この感熱記録材料は画像形成前の生保存性としては良好な性能を示すものの、地肌部(非画像部)における地肌汚れは充分に抑えきれないという課題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑み成されたものであり、熱安定性が高く生保存性に優れると共に、非画像部(地肌部)の白色性に優れた感熱記録材料を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、生保存性および地肌白色性を共に高める技術について鋭意検討を重ね、特に、ベンゾチアゾリン骨格を持つジアゾニウム塩を含む感熱記録材料において、ジアゾニウム塩を内包するマイクロカプセルの調製に用いる不揮発性オイル成分(カプセルオイル)として低極性芳香族化合物が有用であるとの知見を得、かかる知見に基づき本発明は達成された。
【0011】
上記目的を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> マイクロカプセル中に不揮発性オイル成分と共に内包されたジアゾニウム塩と、該ジアゾニウム塩と反応して発色させるカプラーとを含む感熱記録層を有する感熱記録材料において、前記ジアゾニウム塩が下記一般式(1)で表される化合物であり、前記不揮発性オイル成分の少なくとも一種が下記一般式(2)で表される化合物であり、かつ前記マイクロカプセル中に占める該一般式(2)で表される化合物の含有量が、ジアゾニウム塩を除くマイクロカプセル中の不揮発成分の全質量の70質量%以上であることを特徴とする感熱記録材料である。
【0012】
【化3】
【0013】
前記一般式(1)中、R1、R3およびR4は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表し、R2及びR5は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、またはハロゲン原子を表す。X−は対アニオンを表す。
【0014】
【化4】
【0015】
前記一般式(2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、またはアリールオキシ基を表す。R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は任意に結合して環を形成してもよい。
【0016】
<2> 前記一般式(2)で表される化合物の融点(m.p.)が110℃以下である前記<1>に記載の感熱記録材料である。
<3> 前記マイクロカプセルのカプセル壁がポリウレタン及び/又はポリウレアを構成成分に含む前記<1>または<2>に記載の感熱記録材料である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の感熱記録材料においては、ベンゾチアゾリン骨格を持つジアゾニウム塩と共にカプセルオイルとしてビフェニル型の不揮発性芳香族化合物を含み、かつ該不揮発性芳香族化合物の、マイクロカプセル中に含まれるジアゾニウム塩を除く全不揮発成分の全質量に対する量を70質量%以上とする。以下、本発明の感熱記録材料について詳細に説明する。
【0018】
本発明の感熱記録材料は、支持体上に少なくとも一層の感熱記録層を有して構成され、更に保護層、光透過率調製層、中間層等の他の層を有していてもよい。(感熱記録層)
本発明に係る感熱記録層は、マイクロカプセルに内包された下記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩と、該ジアゾニウム塩と反応して発色させるカプラーと、前記マイクロカプセルに前記ジアゾニウム塩と共に内包された下記一般式(2)で表される化合物(不揮発性オイル成分)とを少なくとも含んでなり、更に他の成分を含んでいてもよい。
【0019】
−ジアゾニウム塩−
本発明に係る感熱記録層には、下記一般式(1)で表される化合物をマイクロカプセルに内包して含有する。かかるジアゾニウム塩は熱分解性が低く、作製される感熱記録材料の熱安定性、すなわち生保存性を向上させることができ、環境条件に依存することなく安定的に高濃度の画像を形成することができる。
【0020】
【化5】
【0021】
前記一般式(1)中、R1、R3およびR4は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。このアルキル基、アリール基およびアラルキル基は、いずれも無置換でも置換されていてもよく、置換されている場合の置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基が挙げられる。
【0022】
前記アルキル基としては、総炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、総炭素数1〜20のアルキル基がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、ドデシル基、オクタデシル基、(4−エトキシフェニル)メチル基、N,N−ジエチルカルバモイルメチル基、N,N−ジブチルカルバモイルメチル基、1−(N,N−ジブチルカルバモイル)エチル基、2−メトキシエチルオキシ基等が好適に挙げられる。中でも、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、N,N−ジエチルカルバモイルメチル基、N,N−ジブチルカルバモイルメチル基、1−(N,N−ジブチルカルバモイル)エチル基が特に好ましい。
【0023】
前記アリール基としては、総炭素数6〜30のアリール基が好ましく、総炭素数6〜20のアリール基がさらに好ましい。具体的には、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−フェニルフェノキシ基、4−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基、2,4−ジエトキシフェニル基、2,5−ジブトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、ナフチル基、4−ジブチルカルバモイルフェニル基、4−ジブチルスルファモイルフェニル基等が好適に挙げられる。中でも、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基が特に好ましい。
【0024】
前記アラルキル基としては、総炭素数7〜30のアラルキル基が好ましく、総炭素数7〜20のアラルキル基がさらに好ましい。具体的には、ベンジル基、4−メトキシベンジル基、2−メチルベンジル基、フェネチル基、4−クロロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基、等が挙げられる。中でも、ベンジル基、4−クロロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基が好ましい。
【0025】
前記R2及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはハロゲン原子を表す。
前記R2またはR5で表されるアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、(4−エトキシフェニル)メチル基、N,N−ジエチルカルバモイルメチル基、N,N−ジブチルカルバモイルメチル基、等が好適に挙げられる。中でも、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、N,N−ジエチルカルバモイルメチル基、N,N−ジブチルカルバモイルメチル基が特に好ましい。
【0026】
前記R2またはR5で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は沃素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子がさらに好ましい。
【0027】
前記X−は対アニオンを表す。該対アニオンとしては、無機アニオン、有機アニオンのいずれでもよい。無機アニオンとしては、例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン、ホウフッ化水素酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオンが好ましく、中でも、ヘキサフルオロリン酸イオン、ホウフッ化水素酸イオンが特に好ましい。また、有機アニオンとしては、例えばポリフルオロアルキルカルボン酸イオン、ポリフルオロアルキルスルホン酸イオン、芳香族カルボン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン、特願2002−108919号明細書に記載のイオンが好ましく、中でも、ポリフルオロアルキルカルボン酸イオン、ポリフルオロアルキルスルホン酸イオン、特願2002−108919号明細書に記載のイオンが特に好ましい。
【0028】
前記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩は、下記一般式(3)で表される化合物を原料として用い、以下のようにして合成することができる。
【化6】
【0029】
前記一般式(3)において、R1、R2、R3、R4及びR5は、既述の一般式(1)におけるR1、R2、R3、R4及びR5と各々同義であり、その好ましい態様も同様である。R6は水素原子又はアシル基を表し、該アシル基としては、総炭素数1〜30のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、ブチロイル基、4−フェノキシブチロイル基、ベンゾイル基、(4−エトキシフェニル)カルボニル基、(2−ブトキシフェニル)カルボニル基、(4−クロロフェニル)カルボニル基等が好適に挙げられ、特にアセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、(4−クロロフェニル)カルボニル基が好ましい。
【0030】
まず、一般式(3)で表される化合物は、上記の一般式(4)で表される化合物を出発原料として合成することができる。一般式(4)中のR1、R2、R3、R4、R5及びR6は、前記一般式(3)におけるR1、R2、R3、R4、R5及びR6と同義であり、好ましい具体例も同様である。
【0031】
一般式(3)で表される化合物の合成は下記条件が適用できる。ここでの合成反応は酸化反応である。酸化剤としては、塩素、臭素、ヨウ素、塩化スルホニル、又は塩化スルフリルが好ましく、取り扱い、収率の点からは、臭素が最も好ましい。酸化剤の使用量は、一般式(4)で表される化合物に対してモル比で90〜130%が好ましく、100〜110%が特に好ましい。酸化剤量が少ないと原料が残留し、多いと副反応物が増えることがある。
【0032】
反応に使用する溶媒としては、酸化剤と反応しないものであればよく、酢酸、プロピオン酸、アセトニトリル、クロロホルム、塩化メチレン、酢酸エチル、クロロベンゼンが好ましい。特に、酢酸、クロロホルム、塩化メチレンが、収率の点から好ましい。これらの溶媒の混合溶媒も使用できる。溶媒の使用量は、原料が溶解する程度でよいが、高濃度であると高粘化し撹拌効率が下がり、低濃度では容積効率が低下するため、使用する一般式(4)で表される化合物の質量に対し、100〜2000%の範囲が好ましい。200〜500%であればさらに好ましい。反応温度は、−10〜120℃の範囲で選べばよい。一般的に高温ほど早く反応は完結するが、本合成方法は室温以下でも速やかに反応するため、収率の点から、−5〜35℃範囲で行うことが好ましい。また、酢酸を溶媒に使用する場合には、酢酸の結晶化を防ぐために10℃以上で行うことが好ましい。
【0033】
前記一般式(4)で表される化合物の合成は、「Organic Functional Group Preparations Volume II」(Stanley R. Sandler, Wolf Karo著(1971) AcademicPress, Inc.)、「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応III」((1976)丸善株式会社)、J.Chem.Soc.(C)(1967)p.2212〜2220等による公知の方法で合成できる。
【0034】
上記の一般式(3)で表される化合物からジアゾニウム塩を合成するにあたって、−NHR6(R6=アシル基)の場合にはこれを−NH2に変換して用いられる。変換は、酸性条件下でも塩基性条件下でも可能であり、添加する酸としては塩酸、硫酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸が、添加する塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムが好ましい。添加によって酸を発生する化合物も好ましく、塩化アセチル、塩化プロピオニルが好適である。反応溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、酢酸が好ましく、これらの混合溶媒も好ましい。反応温度としては、室温から溶媒の沸点の間が好ましいが、反応速度及び溶解性の点から50℃以上の高温で行う方が好ましい。
また、−NHR6(R6=水素原子)の場合には、該化合物を酸性溶媒中で亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等を用いてジアゾ化することにより合成できる。
【0035】
前記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩は、油状物、結晶状態のいずれであってもよいが、取扱い性の面で結晶状態のものが好ましい。また、このジアゾニウム塩は一種単独で用いてもよいし、二種以上併用することもできる。
感熱記録層中における、前記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩の含有量としては、0.02〜5g/m2の範囲が好ましく、発色濃度の観点からは特に0.1〜4g/m2の範囲とするのが好ましい。
【0036】
また、上記のジアゾニウム塩の安定化のために塩化亜鉛、塩化カドミウム塩化スズ等を用い、錯化合物を形成させることによってジアゾニウム化合物を安定化させることもできる。
【0037】
以下、前記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩を具体例(例示化合物A−1〜A−27)を示す。但し、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
また、本発明の感熱記録材料は、本発明に係る感熱記録層と、発色成分として公知のジアゾニウム塩およびカプラー、または電子供与性無色染料および電子受容性化合物を含む感熱記録層とを積層した構造であってもよい。
【0042】
前記公知のジアゾニウム塩としては、例えば、下記一般式(5)で表されるジアゾニウム塩が挙げられる。
Ar−N2 +X1− …一般式(5)
〔一般式(5)中、Arは置換若しくは無置換のアリール基を表し、X1−は酸アニオンを表す。〕
【0043】
前記一般式(5)で表されるジアゾニウム塩は、上記の一般式(1)で表される化合物と同様、加熱によって後述のカプラーとカップリング反応を起こして発色し、また光によって分解する化合物である。これらはAr部分の置換基の位置や種類によって、その最大吸収波長を制御することが可能である。
【0044】
前記一般式(5)中のArは、置換または無置換のアリール基を表す。該Arで表されるアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、2−ブトキシフェニル基、2−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル基、2−オクチルオキシフェニル基、3−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシエトキシ)フェニル基、4−クロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3−クロロフェニル基、3−メチルフェニル基、3−メトキシフェニル基、3−ブトキシフェニル基、3−シアノフェニル基、3−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3−(ジブチルアミノカルボニルメトキシ)フェニル基、4−シアノフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、
【0045】
4−ブトキシフェニル基、4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル基、4−ベンジルフェニル基、4−アミノスルホニルフェニル基、4−N,N−ジブチルアミノスルホニルフェニル基、4−エトキシカルボニルフェニル基、4−(2−エチルヘキシルカルボニル)フェニル基、4−フルオロフェニル基、3−アセチルフェニル基、2−アセチルアミノフェニル基、4−(4−クロロフェニルチオ)フェニル基、4−(4−メチルフェニル)チオ−2,5−ブトキシフェニル基、4−(N−ベンジル−N−メチルアミノ)−2−ドデシルオキシカルボニルフェニル基等が挙げられる。また、これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボアミド基、スルホニル基、スルファモイル基、アルキルオキシ基、シアノ基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、ヘテロ環基、スルホンアミド基、ウレイド基、ハロゲン基、ヘテロ環基等により置換されていてもよく、更に置換されていてもよい。
【0046】
前記一般式(5)で表されるジアゾニウム塩を形成するジアゾニウムの具体例としては、4−(p−トリルチオ)−2,5−ジブトキシベンゼンジアゾニウム、4−(4−クロロフェニルチオ)−2,5−ジブトキシベンゼンジアゾニウム、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゼンジアゾニウム、4−(N,N−ジエチルアミノ)ベンゼンジアゾニウム、4−(N,N−ジプロピルアミノ)ベンゼンジアゾニウム、4−(N−メチル−N−ベンジルアミノ)ベンゼンジアゾニウム、4−(N,N−ジベンジルアミノ)ベンゼンジアゾニウム、4−(N−エチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンゼンジアゾニウム、4−(N,N−ジエチルアミノ)−3−メトキシベンゼンジアゾニウム、4−(N,N−ジメチルアミノ)−2−メトキシベンゼンジアゾニウム、4−(N−ベンゾイルアミノ)−2,5−ジエトキシベンゼンジアゾニウム、4−モルホリノ−2,5−ジブトキシベンゼンジアゾニウム、4−アニリノベンゼンジアゾニウム、4−[N−(4−メトキシベンゾイル)アミノ]−2.5−ジエトキシベンゼンジアゾニウム、4−ピロリジノ−3−エチルベンゼンジアゾニウム、4−[N−(1−メチル−2−(4−メトキシフェノキシ)エチル)−N−ヘキシルアミノ]−2−ヘキシルオキシベンゼンジアゾニウム、4−[N−(2−(4−メトキシフェノキシ)エチル)−N−ヘキシルアミノ]−2−ヘキシルオキシベンゼンジアゾニウム、2−(1−エチルプロピルオキシ)−4−[ジ−(ジ−n−ブチルアミノカルボニルメチル)アミノ]ベンゼンジアゾニウム、2−ベンジルスルホニル−4−[N−メチル−N−(2−オクタノイルオキシエチル)]アミノベンゼンジアゾニウム、等が挙げられる。
【0047】
前記X1−は酸アニオンを表し、該酸アニオンとしては、炭素数1〜9のポリフルオロアルキルカルボン酸、炭素数1〜9のポリフルオアルキルスルホン酸、四フッ化ホウ素、テトラフェニルホウ素、ヘキサフルオロリン酸、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸等が挙げられる。中でも、結晶性の点でヘキサフルオロリン酸が好ましい。
【0048】
上記の公知のジアゾニウム塩の最大吸収波長λmaxは使用する層等によって適宜選定すればよいが、450nm以下が好ましく、290〜440nmがより好ましい。上記λmaxが、450nmを超える長波長側にあると、生保存性が低下することがあり、上記波長範囲よりも短波長側にあると、後述のカプラーとの組合わせにおいて画像定着性、画像保存性が低下したり、色相が劣化することがある。
【0049】
また、ジアゾニウム塩は、炭素数が12以上であるときの水に対する溶解度が1質量%以下で、かつ酢酸エチルに対する溶解度が5質量%以上であることが望ましい。なお、ジアゾニウム塩は、一種単独で用いてもよいし、色相調整等の目的に応じて、二種以上を併用することもできる。
【0050】
−カプラー−
本発明に係る感熱記録層は、既述のジアゾニウム塩と熱時反応して発色させるカプラー(カップリング成分)を含有する。前記カプラーとしては、塩基性雰囲気及び/又は中性雰囲気で上記のジアゾニウム塩とカップリングして色素を形成するものであればいずれの化合物も使用でき、色相等の目的に適合する範囲で適宜選択することができる。
【0051】
前記カプラーとしては、例えば、レゾルシン、フロログルシン、2,3−ヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸モルホリノアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸−2−エチルヘキシルオキシプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸−2−エチルヘキシルアミド、1−ヒドロキシ−8−アセチルアミノナフタレン−1,6−ジスルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−8−アセチルアミノナフタレン−8.6−ジスルホン酸ジアニリド、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ−6−ナフタレンスルホン酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸−2’−メチルアニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸エタノールアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸オクチルアミド、2−ヒドロキシナフトエ酸モルホリノエチルアミド、2−ヒドロキシナフトエ酸ピペリジノプロピルアミド、2−ヒドロキシナフトエ酸ピペリジノエチルアミド、
【0052】
2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸−N−ドデシル−オキシ−プロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸テトラデシルアミド、6−メトキシ−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、6−エトキシ−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、6−メトキシ−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、6−メトキシ−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸−2−ヒドロキシエチルアミド、アセトアニリド、アセトアセトアニリド、2−クロロ−3−(2,4−ジ−1−アミルフェノキシプロピルアミノカルボニル)−ピパロイルアセトアニリド、ベンゾイルアセトアニリド、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2’,4’,6’−トリクロロフェニル)−3−ベンズアミド−5−ピラゾロン、1−(2’,4’,6’−トリクロロフェニル)−3−アニリノ−3−ピラゾロン、1−フェニル−3−フェニルアセトアミド−5−ピラゾロン等を挙げることができる。
【0053】
上記のカプラーは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。感熱記録層中におけるカプラーの含有量としては、ジアゾニウム塩1質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
【0054】
−不揮発性オイル成分−
マイクロカプセル中にジアゾニウム塩と共に内包される不揮発性オイル成分として、下記一般式(2)で表される化合物の少なくとも一種を含有する。上記の一般式(1)で表されるジアゾニウム塩と共にかかる化合物を合わせて含むことにより、上記した熱安定性の向上のみならず、感熱記録材料の非画像部における地肌汚れを抑止して、白色性を向上させることができる。
【0055】
【化10】
【0056】
前記一般式(2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、またはアリールオキシ基を表す。
【0057】
前記R11〜R20で表されるアルキル基としては、飽和・不飽和のいずれでもよく、さらにアルコキシ基、アリール基で置換されていてもよく、炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−アミル基、2−エチルヘキシル基、アリル基、3−ブテニル基、1−ブチニル基、2−フェニル−アセチレニル基、フェノキシエチル基、などが挙げられる。
【0058】
前記R11〜R20で表されるアルコキシ基としては、飽和・不飽和のいずれでもよく、さらにアルコキシ基、アリール基で置換されていてもよく、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピロキシ基、iso−プロピロキシ基、n−ブチロキシ基、2−エチルヘキシロキシ基、2−エトキシエトキシ基、フェノキシエトキシ基、などが挙げられる。
【0059】
前記R11〜R20で表されるアリール基は、さらにアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよく、炭素数6〜30のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、4−メトキシフェニル基などが挙げられる。
【0060】
前記R11〜R20で表されるアラルキル基は、さらにアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子に置換されていてもよく、炭素数7〜30のアラルキル基が好ましい。例えば、ベンジル基、1−メチルベンジル基、フェネチル基、4−メチルフェニルメチル基、2−(4−クロロフェニル)エチル基、4−メトキシフェニルメチル基などが挙げられる。
【0061】
前記R11〜R20で表されるアリールオキシ基は、さらにアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子に置換されていてもよく、炭素数6〜30のアリールオキシ基が好ましい。例えば、フェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、2,4−ジ−t−アミルフェノキシ基、などが挙げられる。
【0062】
また、前記R11〜R20のうち隣接する基が互いに結合して環を形成し、これらの基が結合するベンゼン環と縮環することによりナフタレン環を形成してもよい。
【0063】
また、前記一般式(2)で表される化合物は、マイクロカプセル液を調製する際の、ジアゾニウム塩を含む油相への溶解性を確保する必要性から、融点(m.p.)が110℃以下であることが望ましい。該融点が110℃より高いと、調製時に析出したり、あるいはカプセル壁の形成を阻害して、芯物質(油相)が充分に内包されていない状態のマイクロカプセル液が得られてしまい、生保存時に地肌着色しやすい、地肌汚れを起こすなどの弊害が生じてしまう。特に、20〜100℃とするのが好ましい。
【0064】
以下、前記一般式(2)で表される化合物の具体例(例示化合物(1)〜(15))を示す。但し、本発明においてはこれらに限定されるものではない。なお、カッコ内のm.p.は融点を表す。
【0065】
【化11】
【0066】
【化12】
【0067】
感熱記録層における前記一般式(2)で表される化合物の含有量としては、ジアゾニウム塩に対して、100〜400質量%が好ましく、150〜300質量%がより好ましい。該含有量が、100質量%未満であると、非画像部の白色性、地肌汚れを充分に良化できないことがあり、400質量%を超えると、発色感度が低下して良好な画像が得られ難くなることがある。
【0068】
前記一般式(2)で表される化合物(不揮発性オイル成分)は、ジアゾニウム塩をカプセル内に内包するマイクロカプセル液の調製に用いる、ジアゾニウム塩を含有する油相に添加して用いることができる。この油相は、後述の〈マイクロカプセルの製造方法〉の記載のように別途調製された水相に加えて乳化分散される。
【0069】
−他の成分等−
本発明の感熱記録材料においては、上記のように、発色成分としてジアゾニウム塩とカプラーとの組合せ(ジアゾ発色系)のほか、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せ(ロイコ発色系)を用いることもできる。例えば、感熱記録材料が支持体上に複数層からなる感熱記録層を有して構成されるときに、該感熱記録層を構成する少なくとも1層をロイコ発色系の層に構成することができる。
【0070】
前記電子供与性染料前駆体としては、例えば、トリアリールメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、キサンテン系化合物、スピロピラン系化合物等が挙げられ、中でも、発色濃度が高い点で、トリアリールメタン系化合物、キサンテン系化合物が好ましい。
【0071】
具体的には、下記化合物が挙げられる。例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(すなわちクリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノ)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,3−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(o−メチル−p−ジエチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン(p−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン−B−(p−クロロアニリノ)ラクタム、2−ベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−6−ジエチルアミノフルオラン、
【0072】
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−シクロヘキシルメチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−イソアミルエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−オクチルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−エトキシエチルアミノ−3−クロロ−2−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンジルロイコメチレンブルー、3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3,3’−ジクロロ−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン、等である。
【0073】
感熱記録層における電子供与性染料前駆体の量(塗布量)としては、既述のジアゾニウム塩の場合と同様の理由から、感熱記録層中に0.1〜2g/m2とすることが好ましい。
【0074】
前記電子受容性化合物としては、例えば、フェノール誘導体、サリチル酸誘導体、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられ、中でも特に、ビスフェノール類、ヒドロキシ安息香酸エステル類が好ましい。
【0075】
具体的には、下記化合物が挙げられる。例えば、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわちビスフェノールA)、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(すなわちビスフェノールP)、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸およびその多価金属塩、3,5−ジ(tert−ブチル)サリチル酸およびその多価金属塩、3−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸およびその多価金属塩、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、等が挙げられる。
【0076】
感熱記録層中における電子受容性化合物の含有量としては、電子供与性染料前駆体1質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
【0077】
感熱記録層には、ジアゾニウム塩とカプラーとのカップリング反応を促進する目的で有機塩基を添加することが好ましい。有機塩基は、感熱記録層中にジアゾニウム塩およびカプラーと共に含有させるのが好ましく、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0078】
前記有機塩基としては、第3級アミン類、ピペリジン類、ピペラジン類、アミジン類、ホルムアミジン類、ピリジン類、グアニジン類、モルホリン類等の含窒素化合物等が挙げられる。また、特公昭52−46806号公報、特開昭62−70082号公報、特開昭57−169745号公報、特開昭60−94381号公報、特開昭57−123086号公報、特開昭58−1347901号公報、特開昭60−49991号公報、特公平2−24916号公報、特公平2−28479号公報、特開昭60−165288号公報、特開昭57−185430号公報に記載のものも使用可能である。
【0079】
中でも特に、N,N′−ビス(3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、N,N′−ビス〔3−(p−メチルフェノキシ)−2−ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N,N′−ビス〔3−(p−メトキシフェノキシ)−2−ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N,N′−ビス(3−フェニルチオ−2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、N,N′−ビス〔3−(β−ナフトキシ)−2−ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N−3−(β−ナフトキシ)−2−ヒドロキシプロピル−N′−メチルピペラジン、1,4−ビス{〔3−(N−メチルピペラジノ)−2−ヒドロキシ〕プロピルオキシ}ベンゼン等のピペラジン類、N−〔3−(β−ナフトキシ)−2−ヒドロキシ〕プロピルモルホリン、1,4−ビス(3−モルホリノ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−モルホリノ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)ベンゼン等のモルホリン類、N−(3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル)ピペリジン、N−ドデシルピペリジン等のピペリジン類、トリフェニルグアニジン、トリシクロヘキシルグアニジン、ジシクロヘキシルフェニルグアニジン等のグアニジン類等が好ましい。
【0080】
所望により有機塩基を含有させる場合の、感熱記録層中における有機塩基の含有量としては、ジアゾニウム塩1質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
【0081】
上記の有機塩基のほか、発色反応を促進させる目的で、感熱記録層中に増感剤を加えることもできる。増感剤は、加熱記録時の発色濃度を高くする、若しくは最低発色温度を低くする物質であり、カプラー、有機塩基またはジアゾニウム塩等の融解点を下げたり、カプセル壁の軟化点を低下させる作用によりジアゾニウム塩、有機塩基、カプラー等を反応しやすい状態とするものである。
【0082】
具体的には、分子内に芳香族性の基と極性基を適度に有している低融点有機化合物が好ましく、例えば、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、α−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフトエ酸フェニルエステル、α−ヒドロキシ−β−ナフトエ酸フェニルエステル、β−ナフトール−(p−クロロベンジル)エーテル、1,4−ブタンジオールフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−メチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−エチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−m−メチルフェニルエーテル、1−フェノキシ−2−(p−トリルオキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−エチルフェノキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−クロロフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル等が挙げられる。
【0083】
感熱記録層にはバインダーを含有することができ、該バインダーとしては公知の水溶性高分子化合物やラテックス類等から適宜選択できる。
前記水溶性高分子化合物としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン誘導体、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、エピクロルヒドリン変成ポリアミド、イソブチレン−無水マレインサリチル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド等およびこれらの変成物等が挙げられ、前記ラテックス類としては、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等が挙げられる。
【0084】
また、発色画像の光や熱に対する堅牢性を向上する、または定着後の未印画部分(非画像部)の光による黄変を軽減する目的で、以下に示す公知の酸化防止剤等を含有することも好ましい。
前記酸化防止剤としては、例えば、ヨーロッパ公開特許EP第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、アメリカ特許第4814262号、アメリカ特許第4980275号等に記載のものが挙げられる。
【0085】
本発明において、カプラーや有機塩基、増感剤等の他の成分の使用形態については特に制限はなく、例えば、(1)固体分散して使用する方法、(2)乳化分散して使用する方法、(3)ポリマー分散して使用する方法、(4)ラテックス分散して使用する方法、(5)マイクロカプセル化を利用する方法等を適用することができる。
【0086】
〈マイクロカプセルの製造方法〉
本発明は、ジアゾニウム塩に起因する感熱記録材料の生保存性を向上させると共に地肌白色性おも向上させるために、少なくとも、上記の一般式(1)で表される化合物(ジアゾニウム塩)を一般式(2)で表される化合物(不揮発性オイル)と共にマイクロカプセルに内包する。
【0087】
一般式(1)で表されるジアゾニウム塩を一般式(2)で表される不揮発性オイルと共にマイクロカプセル化する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、一般式(1)で表されるジアゾニウム塩と一般式(2)で表される不揮発性オイルとを同時に水に難溶若しくは不溶の低沸点の有機溶媒に溶解または分散させて油相を調製する。このとき、一般式(2)で表される不揮発性オイルは、形成されるマイクロカプセルに含まれる不揮発成分(ジアゾニウム塩を除く)の全質量に対して70質量%以上となるように加えられる。より好ましくは、75質量%以上とする。そして、得られた油相を、水溶性高分子を溶解した水相中に混合し、ホモジナイザー等の手段によって乳化分散した後、加温することで油相/水相間における油滴界面で高分子形成反応を起こし、高分子物質のマイクロカプセル壁を形成させる界面重合法、などが好適に挙げられる。この界面重合法は、短時間内に均一な粒径のカプセルを形成することができ、生保存性に優れた記録材料を得ることができる。
【0088】
ここで、不揮発とは、必ずしも全く揮発しないことを要するのではなく、感熱記録材料の完成後に、カプセル中の成分質量を計算するうえでその存在量を実質的に無視できない程度をいう。したがって、「ジアゾニウム塩を除くマイクロカプセル中の不揮発成分の全質量」は、マイクロカプセルに内包された全成分のうち、水に溶解、分散しない化合物等であって且つ沸点が100℃以上の油溶成分の全質量であり、感熱記録材料の完成後には実質的に存在しない、低沸点溶媒(例えば、酢酸エチル)等の揮発性成分は含まない。なお、これにはカプセル壁材成分も含まれない。
【0089】
低沸点の溶媒としては、例えば、酢酸エステル、メチレンクロライド、シクロヘキサノン等が挙げられる。前記一般式(2)で表される不揮発性オイル以外の不揮発成分としては、リン酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルその他のカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、ジアリールエタン、塩素化パラフィン、アルコール系溶剤、フェノール系溶剤、エーテル系溶剤、モノオレフィン系溶剤、エポキシ系溶剤等が挙げられる。
【0090】
高沸点溶剤の具体例としては、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリシクロヘキシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジラウレート、フタル酸ジシクロヘキシル、オレフィン酸ブチル、ジエチレングリコールベンゾエート、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、トリメリット酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリエチル、マレイン酸オクチル、マレイン酸ジブチル、イソアミルビフェニル、塩素化パラフィン、ジイソプロピルナフタレン、1,1’−ジトリルエタン、2,4−ジターシャリアミルフェノール、N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−ターシャリオクチルアニリン、ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシルエステル、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
中でも、リン酸エステル系溶剤、カルボン酸エステル系溶剤、ジアリールエタンが特に好ましい。
【0091】
高沸点溶剤としては、特に不飽和脂肪酸を有するものが望ましく、α−メチルスチレンダイマー等も挙げられ、該α−メチルスチレンダイマーには、例えば三井東圧化学社製の「MSD100」等がある。更に、前記高沸点溶剤にヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の炭化防止剤を添加してもよい。
【0092】
前記水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アミノ変性ポリビニルアルコール、イタコン酸変性ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ブタジエン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルピロリドン、エチレン−アクリル酸共重合体、ゼラチン等が挙げられる。中でも、カルボキシ変性ポリビニルアルコールが好ましい。
【0093】
水溶性高分子には、疎水性高分子のエマルジョンまたはラテックス等を併用することもできる。該エマルジョンまたはラテックスとしては、スチレン−ブタジエン共重合体、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等が挙げられる。このとき、必要に応じて従来公知の界面活性剤等を加えてもよい。
【0094】
マイクロカプセル壁を構成する高分子物質としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アミノアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリレート共重合体樹脂、スチレン−メタクリレート共重合体樹脂、ゼラチン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。中でも、ポリウレタン・ポリウレア樹脂が特に好ましい。
【0095】
例えば、ポリウレタン・ポリウレア樹脂をカプセル壁材として用いる場合には、多価イソシアネート等のマイクロカプセル壁前駆体をカプセル化し、芯物質となる油性媒体(油相)中に混合し、更にマイクロカプセル壁前駆体と反応してカプセル壁を形成する第2物質(例えば、ポリオール、ポリアミン)を水溶性高分子水溶液(水相)中に混合した後、得られた油相を水相に乳化分散する。そして、さらに加温することによって油滴界面で高分子形成反応が進み、マイクロカプセル壁を形成することができる。
【0096】
以下、多価イソシアネート化合物の具体例を示す。但し、本発明においてはこれらに限定されるものではない。例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、
【0097】
シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート等のジイソシアネート類、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート等のトリイソシアネート類、4,4’−ジメチルフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等のテトライソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、2,4−トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付加物等のイソシアネートプレポリマー等が挙げられる。また必要に応じ、これら二種以上を併用してもよい。中でも特に好ましいものは、分子内にイソシアネート基を三個以上有するものである。
【0098】
また、前記公知のジアゾニウム塩、電子供与性無色染料等をマイクロカプセル化する場合にも上述の方法を適用することができる。マイクロカプセル化する方法において、上記したカプラー(および電子受容性化合物)、有機塩基、増感剤等の他の成分、並びにマイクロカプセル壁前駆体やこれと反応する第2物質を溶解させる有機溶剤としては、既述の有機溶剤と同様のものが用いられる。
【0099】
マイクロカプセルの粒径としては、0.1〜2.0μmが好ましく、0.2〜1.5μmがより好ましい。
【0100】
以下、多色の感熱記録材料の具体的な構成態様について説明する。
本発明の感熱記録材料は、支持体上に感熱記録層を一層有する単色の感熱記録材料、および単色の記録層を複数積層してなる積層構造の感熱記録層を有する多色の感熱記録材料のいずれであってもよい。
【0101】
特に、シアン発色、イエロー発色、マゼンタ発色の3層で構成されるフルカラーの感熱記録層の場合には、支持体上の3層が全てジアゾ発色系で構成された形態、あるいは支持体に最も近い第一層目の記録層が電子供与性染料および電子受容性化合物を組合せたロイコ発色系で構成され、第二および第三層目の記録層がジアゾ発色系で構成された形態よりなる感熱記録材料が好ましい。また、支持体側から順にシアン、マゼンタ、イエローに発色するように各色相の記録層を積層した構成が好ましく、特に前記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩および一般式(2)で表される不揮発性オイルを内包するマイクロカプセルを含む本発明に係る感熱記録層としてはイエローに発色する層が最適である。
【0102】
本発明の感熱記録材料は、例えば、下記(a)〜(c)に示す態様で構成することができる。すなわち、
(a)支持体上に、最大吸収波長365±40nmであるジアゾニウム塩と該ジアゾニウム塩と反応し呈色するカプラーとを含有する光定着型記録層(第一の記録層(A層))と、最大吸収波長420±40nmであるジアゾニウム塩と該ジアゾニウム塩と反応し呈色するカプラーとを含有する光定着型記録層(第二の記録層(B層))と、を積層してなる記録層を有し、該層上に必要に応じて光透過率調整層、保護層を設けた記録材料、
【0103】
(b)支持体上に、電子供与性染料と電子受容性化合物を含有する記録層(第一の記録層(A層))と、最大吸収波長365±40nmであるジアゾニウム塩と該ジアゾニウム塩と反応し呈色するカプラーとを含有する光定着型記録層(第二の記録層(B層))と、最大吸収波長420±40nmであるジアゾニウム塩と該ジアゾニウム塩と反応し呈色するカプラーとを含有する光定着型記録層(第三の記録層(C層))と、をこの順に積層してなる記録層を有し、該層上に必要に応じて光透過率調整層、保護層を設けた記録材料、
【0104】
(c)支持体上に、最大吸収波長350nm以下のジアゾニウム塩と、該ジアゾニウム塩と呈色反応をするカプラーとを含有する光定着型記録層(第一の記録層(A層))と、最大吸収波長365±40nmであるジアゾニウム塩と該ジアゾニウム塩と反応し呈色するカプラーとを含有する光定着型記録層(第二の記録層(B層))と、最大吸収波長420±40nmであるジアゾニウム塩と該ジアゾニウム塩と反応し呈色するカプラーとを含有する光定着型記録層(第三の記録層(C層))と、をこの順に積層してなる記録層を有し、該層上に必要に応じて光透過率調整層、保護層を設けた記録材料、などである。
【0105】
多色記録の方法について、上記(b)または(c)により以下に説明する。
まず、第三の記録層(C層)を加熱し、該層に含まれるジアゾニウム塩とカプラーとを発色させる。次に、発光中心波長430±30nmの光を照射して、C層中に含まれる未反応のジアゾニウム塩を分解し光定着した後、第二の記録層(B層)が発色するに十分な熱を与え、該層に含まれるジアゾニウム塩とカプラーとを発色させる。このとき、C層も同時に強く加熱されるが、既にジアゾニウム塩は分解されており(光定着されている)、発色能力が失われているため発色しない。さらに、発光中心波長360±20nmの光を照射し、B層に含まれるジアゾニウム塩を分解し光定着した後、最後に、第一の記録層(A層)が発色しうる十分な熱を加えて発色させる。このとき、C層、B層の記録層も同時に強く加熱されるが、既にジアゾニウム塩は分解されており、発色能力が失われているため発色しない。
【0106】
また、全ての記録層(A層、B層、およびC層)をジアゾ系の記録層とした場合、B層およびC層は、発色させた後に光定着を行なうことが必要であるが、最後に画像記録を行なうA層に関しては、必ずしも光定着を行なう必要はない。
【0107】
光定着に用いる定着用光源としては、公知の光源の中から適宜選択でき、例えば、種々の蛍光灯、キセノンランプ、水銀灯等が挙げられ、中でも、高効率に光定着する点で、光源の発光スペクトルが、記録材料に用いたジアゾニウム塩化物の吸収スペクトルとほぼ一致する光源を用いることが好ましい。
【0108】
−他の層−
本発明の感熱記録材料においては、支持体上に単一層若しくは複数層からなる感熱記録層を有するほか、更に光透過率調整層や保護層などの他の層を有して好適に構成することができる。
【0109】
〈光透過率調整層〉
光透過率調整層は、紫外線吸収剤前駆体を含有しており、定着に必要な領域の波長の光照射前は紫外線吸収剤として機能しないので光透過率が高く、光定着型感熱記録層を定着する際、定着に必要な領域の波長を十分に透過させ、しかも可視光線の透過率も高いので、感熱記録層の定着に支障を来すこともない。この紫外線吸収剤前駆体は、マイクロカプセル中に含ませることが好ましい。
また、光透過率調整層に含有する化合物としては、特開平9−1928号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0110】
前記紫外線吸収剤前駆体は、感熱記録層の光照射による定着に必要な領域の波長の光照射が終了した後、光または熱などで反応することにより紫外線吸収剤として機能するようになり、紫外線領域の定着に必要な領域の波長の光は紫外線吸収剤によりその大部分が吸収され、透過率が低くなり、感熱記録材料の耐光性が向上するが、可視光線の吸収効果がないから、可視光線の透過率は実質的に変わらない。
光透過率調整層は感熱記録材料中に少なくとも1層設けることができ、最も望ましくは感熱記録層と最外保護層との間に形成するのがよいが、光透過率調整層を保護層と兼用するようにしてもよい。光透過率調整層の特性は、感熱記録層の特性に応じて任意に選定することができる。
【0111】
光透過率調整層形成用の塗布液(光透過率調整層用塗布液)は、上記各成分を混合して得られる。該光透過率調整層塗布液を、例えばバーコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、カーテンコーター等の公知の塗布方法により塗布して形成することができる。光透過率調整層は、感熱記録層等と同時塗布してもよく、例えば感熱記録層形成用の塗布液を塗布し一旦感熱記録層を乾燥させた後、該層上に塗布形成してもよい。
光透過率調整層の乾燥塗布量としては、0.8〜4.0g/m2が好ましい。
【0112】
〈保護層〉
保護層は、バインダーと共に、顔料、滑剤、界面活性剤、分散剤、蛍光増白剤、金属石鹸、硬膜剤、紫外線吸収剤、架橋剤等を含有してなる。
前記バインダーは、バリアー性および作業性を損なわない範囲で、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、でんぷん類、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、スチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、エチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等より適宜選択して使用することができる。
【0113】
上記のほか、他のバインダーとして、合成ゴムラテックス、合成樹脂エマルジョン等が挙げられ、例えば、スチレンーブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等が挙げられる。
前記バインダーの含有量としては、保護層中の顔料に対して、10〜500質量%が好ましく、50〜400質量%がより好ましい。
【0114】
また、耐水性を更に向上させる目的で、架橋剤およびその反応を促進させる触媒を併用することが有効であり、該架橋剤としては、例えば、エポキシ化合物、ブロックドイソシアネート、ビニルスルホン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、硼酸、カルボン酸無水物、シラン化合物、キレート化合物、ハロゲン化物等が挙げられ、保護層形成用の塗布液のpHを6.0〜7.5に調整できるものが好ましい。上記触媒としては、公知の酸、金属塩等が挙げられ、上記同様に塗布液のpHを6.0〜7.5に調整できるものが好ましい。
【0115】
保護層中の顔料としては、公知の有機または無機の顔料が全て使用でき、具体的には、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、タルク、ロウ石、カオリン、焼成カオリン、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、尿素ホルマリン樹脂粉末、ポリエチレン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末等が挙げられる。これらは単独で、または二種以上を混合して使用できる。
【0116】
また、前記滑剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等が好適に挙げられる。
前記界面活性剤は、感熱記録層上に均一な保護層を形成するために用いられる。このような界面活性剤としては、スルフォコハク酸系のアルカリ金属塩、フッ素含有界面活性剤等が好適に挙げられ、具体的には、ジ−(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸、ジ−(n−ヘキシル)スルホコハク酸等のナトリウム塩、およびアンモニウム塩等が挙げられる。
【0117】
保護層形成用の塗布液(保護層用塗布液)は、上記各成分を混合して得られる。更に、必要に応じて離型剤、ワックス、撥水剤等を加えてもよい。
本発明の感熱記録材料は、支持体上に形成した感熱記録層上に保護層塗布液を公知の塗布方法により塗布して形成することができる。上記公知の塗布方法としては、例えば、バーコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、カーテンコーター等を用いた方法が挙げられる。但し、保護層は、感熱記録層や光透過率調整層と同時塗布してもよく、例えば感熱記録層形成用の塗布液を塗布して一旦感熱記録層を乾燥させた後、該層上に塗布形成してもよい。
【0118】
保護層の乾燥塗布量としては、0.2〜7g/m2が好ましく、1〜4g/m2がより好ましい。該乾燥塗設量が、0.2g/m2未満であると、耐水性が維持できないことがあり、7g/m2を超えると、著しく熱感度が低下することがある。保護層の塗布形成後、必要に応じてキャレンダー処理を施してもよい。
【0119】
〈中間層〉
感熱記録層が複数層で構成される場合、各記録層間には中間層を設けることが好ましい。該中間層には、上記の保護層と同様、各種バインダーに更に顔料、滑剤、界面活性剤、分散剤、蛍光増白剤、金属石鹸、紫外線吸収剤等を含ませることができる。バインダーとしては、保護層と同様のバインダーが使用できる。
【0120】
−支持体−
本発明の感熱記録材料を構成する支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、紙、プラスチック樹脂ラミネート紙、合成紙等が挙げられる。また、透明な感熱記録材料を得る場合には、透明支持体を使用する必要があり、該透明支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、三酢酸セルロースフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等の合成高分子フィルムが挙げられる。
【0121】
支持体は、単独であるいは貼り合わせて使用することができる。前記合成高分子フィルムの厚さとしては、25〜300μmが好ましく、100〜250μmがより好ましい。
【0122】
前記合成高分子フィルムは任意の色相に着色されていてもよく、高分子フィルムを着色する方法としては、フィルム成形前に予め樹脂に染料を混練しフィルム状に成形する方法、染料を適当な溶剤に溶かした塗布液を調製しこれを透明無色な樹脂フィルム上に公知の塗布方法、例えば、グラビアコート法、ローラーコート法、ワイヤーコート法等により塗布、乾燥する方法等が挙げられる。中でも、青色染料を混練したポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂をフィルム状に成形し、これに耐熱処理、延伸処理、帯電防止処理を施したものが好ましい。
【0123】
上記の感熱記録層(記録層)、保護層、光透過率調整層、中間層等は、支持体上に、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等の公知の塗布方法により各々の層を形成するための塗布液を塗布し、乾燥して形成できる。
【0124】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。
【0125】
(実施例1)
<フタル化ゼラチン水溶液の調製>
フタル化ゼラチン(商品名:MGPゼラチン、ニッピコラーゲン(株)製)32質量部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液、ダイトーケミックス(株)製)0.914質量部、イオン交換水367.1質量部を混合し、40℃にて溶解し、フタル化ゼラチン水溶液を得た。
【0126】
<アルカリ処理ゼラチン水溶液の調製>
アルカリ処理低イオンゼラチン(商品名:#750ゼラチン、新田ゼラチン(株)製)25.5質量部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液、ダイトーケミックス(株)製)0.729質量部、水酸化カルシウム0.153質量部、イオン交換水143.6質量部を混合し、50℃にて溶解し、アルカリ処理ゼラチン水溶液を得た。
【0127】
<イエロー感熱記録層用塗布液(a)の調製>
(ジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(a)の調製)
酢酸エチル20.4質量部に、下記ジアゾニウム塩(A)4.2質量部(一般式(1)で表される化合物)、モノイソプロピルビフェニル(室温液体;一般式(2)で表される化合物)10.6質量部、およびジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(商品名:ルシリンTPO,BASFジャパン(株)製)0.6質量部を添加し、36℃に加熱して均一に溶解した。
【0128】
【化13】
【0129】
上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物との混合物(商品名:タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),三井武田ケミカル(株)製)8.6質量部を添加し、均一に攪拌し混合液(I)を得た。
【0130】
別途、上記のフタル化ゼラチン水溶液58.6質量部にイオン交換水16.3質量部、Scraph AG−8(50質量%、日本精化(株)製)0.33質量部添加し、混合液(II)を得た。
混合液(II)に混合液(I)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水20質量部を加え均一化した後、40℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ(株)製)6.1質量部、アンバーライトIRC50(オルガノ(株)製)9.2質量部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が20.0%になるように濃度調節しジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(a)を得た(モノイソプロピルビフェニルの、ジアゾニウム塩を除くマイクロカプセル中の不揮発成分の全質量に占める量は95質量%である。)。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.37±0.005μmであった。
【0131】
(カプラー乳化液(a)の調製)
酢酸エチル33.0質量部に下記カプラー(B)9.9質量部、トリフェニルグアニジン(保土ヶ谷化学(株)製)9.9質量部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(商品名:ビスフェノールM、三井石油化学(株)製)20.8質量部、3,3,3’,3’−テトラメチル−5,5’,6,6’−テトラ(1−プロピロキシ)−1,1’−スピロビスインダン(三協化学(株)製)3.3質量部、4−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゼンスルホン酸アミド(マナック(株)製)13.6質量部、4−n−ペンチルオキシベンゼンスルホン酸アミド(マナック(株)製)6.8質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名:パイオニンA−41−C(70%メタノール溶液),竹本油脂(株)製)4.2質量部を溶解し、混合液(III)を得た。
【0132】
【化14】
【0133】
別途、上記より得たアルカリ処理ゼラチン水溶液206.3質量部にイオン交換水107.3質量部を混合し、混合液(IV)を得た。
混合液(IV)に混合液(III)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られたカプラー乳化物を減圧、加熱し、酢酸エチルを除去した後、固形分濃度が26.5質量%になるように濃度調節をおこなった。得られたカプラー乳化物の粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.21μmであった。
さらに上記カプラー乳化物100質量部に対してSBRラテックス(商品名:SN−307、48質量%溶液、住化エイビーエスラテックス(株)製)を26.5質量%に濃度調整したものを9質量部添加して均一に攪拌してカプラー乳化液(a)を得た。
【0134】
(イエロー感熱記録層用塗布液(a)の調製)
前記ジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(a)および前記カプラー乳化液(a)を、カプラー/ジアゾニウム塩の質量比が2/1になるように混合してイエロー感熱記録層用塗布液(a)を得た。
【0135】
<中間層用塗布液の調製>
アルカリ処理低イオンゼラチン(商品名:#750ゼラチン,新田ゼラチン(株)製)水溶液100.0質量部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5質量%メタノール溶液、ダイトーケミックス(株)製)2.86質量部、水酸化カルシウム0.5質量部、およびイオン交換水521.643質量部を混合し、50℃にて溶解して中間層作製用ゼラチン水溶液を得た。
【0136】
上記より得た中間層作製用ゼラチン水溶液10.0質量部、4−〔(4−ノニルフェノキシ)トリオキシエチレン〕ブチルスルホン酸ナトリウム(三協化学(株)製、2.0質量%水溶液)0.05質量部、硼酸(4.0質量%水溶液)1.5質量部、ポリスチレンスルホン酸(一部水酸化カリウム中和型)水溶液(5質量%)0.19質量部、下記化合物(C)の4質量%水溶液3.42質量部、下記化合物(C’)の4質量%水溶液1.13質量部、およびイオン交換水0.67質量部を混合し、中間層用塗布液とした。
【0137】
【化15】
【0138】
<光透過率調整層用塗布液の調製>
(紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液の調製)
酢酸エチル71質量部に、紫外線吸収剤前駆体として[2−アリル−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチルフェニル]ベンゼンスルホナート14.5質量部、2,5−ジ−(t−オクチル)ハイドロキノン5.0質量部、燐酸トリクレジル1.9質量部、α−メチルスチレンダイマー(商品名:MSD−100,三井化学(株)製)5.7質量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名:パイオニンA−41−C(70%メタノール溶液),竹本油脂(株)製)0.45質量部を加えて均一に溶解した。この混合液に、カプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物(商品名:タケネートD110N(75質量%酢酸エチル溶液),三井武田ケミカル(株)製)54.7質量部を添加して均一に攪拌し、紫外線吸収剤前駆体混合液を得た。
【0139】
別途、イタコン酸変性ポリビニルアルコール(商品名:KL−318,(株)クラレ製)52質量部に、30質量%燐酸水溶液8.9質量部、およびイオン交換水532.6質量部を混合し、紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液用PVA水溶液を調製した。
得られた紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液用PVA水溶液516.06質量部に上記の紫外線吸収剤前駆体混合液を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて20℃の下で乳化分散した。得られた乳化液にイオン交換水254.1質量部を加え均一化した後、40℃下で攪拌しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトMB−3(オルガノ(株)製)94.3質量部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が13.5%になるように濃度調節した。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.23±0.05μmであった。このカプセル液859.1質量部にカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックス(商品名:SN−307,(48質量%水溶液),住友ノーガタック(株)製)2.416質量部、およびイオン交換水39.5質量部を混合し、紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液を得た。
【0140】
(光透過率調整層用塗布液の調製)
前記紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液1000質量部、フッ素系界面活性剤(商品名:メガファックF−120,大日本インキ化学工業(株)製)(5質量%水溶液)5.2質量部、4質量%水酸化ナトリウム水溶液7.75質量部、および(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム(三協化学(株)製:2.0質量%水溶液)73.39質量部を混合し、光透過率調整層用塗布液を得た。
【0141】
<保護層用塗布液の調製>
(保護層用ポリビニルアルコール溶液の調製)
ビニルアルコール−アルキルビニルエーテル共重合物(商品名:EP−130,電気化学工業(株)製)160質量部、アルキルスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルとの混合液(商品名:ネオスコアCM−57(54質量%水溶液)、東邦化学工業(株)製)8.74質量部、およびイオン交換水3832質量部を混合し、90℃のもとで1時間溶解し均一な保護層用ポリビニルアルコール溶液を得た。
【0142】
(保護層用顔料分散液の調製)
硫酸バリウム(商品名:BF−21F,硫酸バリウム含有量93%以上,堺化学工業(株)製)8質量部に、陰イオン性特殊ポリカルボン酸型高分子活性剤(商品名:ポイズ532A(40質量%水溶液),花王(株)製)0.2質量部、およびイオン交換水11.8質量部を混合し、ダイノミルにて分散した。この分散液は粒径測定(LA−910,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.15μm以下であった。
得られた分散液45.6質量部に対し、コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスO(20質量%水分散液、日産化学(株)製)8.1質量部を添加して目的の保護層用顔料分散液を得た。
【0143】
(保護層用マット剤分散液の調製)
小麦澱粉(商品名:小麦澱粉S,新進食料工業(株)製)220質量部に、1,2−ベンズイソチアゾリン−3(2H)−オンの水分散物(商品名:PROXEL B.D,I.C.I(株)製)3.81質量部、およびイオン交換水1976.19質量部を混合し、均一に分散し、保護層用マット剤分散液を得た。
【0144】
(保護層用塗布ブレンド液の調製)
前記保護層用ポリビニルアルコール溶液1000質量部に、フッ素系界面活性剤(商品名:メガファックF−120,大日本インキ化学工業(株)製)(5質量%水溶液)40質量部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム(三協化学(株)製;2.0質量%水溶液)50質量部、前記保護層用顔料分散液49.87質量部、前記保護層用マット剤分散液16.65質量部、およびステアリン酸亜鉛分散液(商品名:ハイドリンF115,20.5質量%水溶液,中京油脂(株)製)48.7部を均一に混合し保護層用塗布ブレンド液を得た。
【0145】
<下塗り層つき支持体の作製>
(下塗り層用塗布液の調製)
酵素分解ゼラチン(平均分子量:10000、PAGI法粘度:1.5mPa・s(15mP)、PAGI法ゼリー強度:20g)40質量部をイオン交換水60質量部に加えて40℃で攪拌溶解し、下塗り層用ゼラチン水溶液を調製した。別途、水膨潤性の合成雲母(アスペクト比:1000、商品名:ソマシフME100,コープケミカル社製)8質量部と水92質量部とを混合した後、ビスコミルで湿式分散し、体積平均粒径が2.0μmの雲母分散液を得た。この雲母分散液に雲母濃度が5質量%となるように水を加え、均一に混合し、所望の雲母分散液を調製した。
【0146】
次いで、40℃の40質量%の上記下塗り層用ゼラチン水溶液100質量部に、水120質量部およびメタノール556質量部を加え、十分攪拌混合した後、5質量%上記雲母分散液208質量部を加えて、十分に攪拌混合し、1.66質量%ポリエチレンオキサイド系界面活性剤9.8質量部を加えた。そして液温を35℃〜40℃に保ち、エポキシ化合物のゼラチン硬膜剤7.3質量部を加えて下塗り層用塗布液(5.7質量%)を調製した。
【0147】
(下塗り層つき支持体の作製)
LBPS50質量部およびLBPK50質量部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5質量部、アニオンポリアクリルアミド1.0質量部、硫酸アルミニウム1.0質量部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1質量部、カチオンポリアクリルアミド0.5質量部をいずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により坪量114g/m2の原紙を抄造し、キャレンダー処理によって厚み100μmに調整した。
【0148】
前記原紙の両面にコロナ放電処理を行った後、溶融押出機を用いてポリエチレンを樹脂厚36μmとなるようにコーティングしマット面からなる樹脂層を形成した(この面を「ウラ面」と称する)。次に、この樹脂層を形成したウラ面とは反対側の面に溶融押出機を用いて、アナターゼ型二酸化チタン10質量%および微量の群青を含有したポリエチレンを樹脂厚50μmになるようにコーティングし、光沢面からなる樹脂層を形成した(この面を「オモテ面」と称する)。ウラ面のポリエチレン樹脂被覆面にコロナ放電処理した後、帯電防止剤として酸化アルミニウム(商品名:アルミナゾル100、日産化学工業(株)製)/二酸化珪素(商品名:スノーテックスO、日産化学工業(株)製)=1/2(質量比)を水に分散させて乾燥後の質量で0.2g/m2となるように塗布した。次に、オモテ面のポリエチレン樹脂被覆面にコロナ放電処理した後、上記より得た下塗り層用塗布液を、含有する雲母の塗布量が0.26g/m2となるように塗布し、下塗り層つき支持体を得た。
【0149】
<各塗布液の塗布>
上記より得た支持体の下塗り層表面に、該表面側から順に、前記中間層用塗布液、前記イエロー感熱記録層用塗布液(a)、前記光透過率調整層用塗布液、前記保護層用塗布液を4層同時に連続塗布し、30℃相対湿度30%、および40℃相対湿度30%の条件で連続に乾燥して本発明の感熱記録材料(T−1)を得た。
【0150】
このとき、イエロー感熱記録層用塗布液(a)の塗布量は、液中に含まれるジアゾニウム塩(A)の塗布量が固形分塗布量で0.076g/m2となるように塗布を行なった。また、中間層用塗布液は、固形分塗布量が2.39g/m2となるように、光透過率調整層用塗布液は、固形分塗布量が2.35g/m2となるように、保護層は、固形分塗布量が1.39g/m2となるように各々塗布を行なった。
【0151】
(実施例2)
実施例1において、「ジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(a)の調製」に用いたモノイソプロピルビフェニル10.6質量部を、m−ターフェニル(m.p.=86℃;一般式(2)で表される化合物)8.5部およびフタル酸ジフェニル2.1部に代えた(m−ターフェニルの、ジアゾニウム塩を除くマイクロカプセル中の不揮発成分の全質量に占める量は80質量%である。)こと以外、実施例1と同様にして、本発明の感熱記録材料(T−2)を得た。
【0152】
(実施例3)
実施例1において、「ジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(a)の調製」に用いたジアゾニウム塩(A)を下記ジアゾニウム塩(B)に代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明の感熱記録材料(T−3)を得た。
【0153】
【化16】
【0154】
(比較例1)
実施例1において、「ジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(a)の調製」に用いたモノイソプロピルビフェニル10.6質量部を、フタル酸ジフェニル9.8質量部に代えたこと以外、実施例1と同様にして、比較の感熱記録材料(R−1)を得た。
【0155】
(比較例2)
実施例1において、「ジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(a)の調製」に用いたモノイソプロピルビフェニル10.6質量部を、モノイソプロピルビフェニル5.0質量部およびフタル酸ジイソノニル5.6質量部に代えたこと以外、実施例1と同様にして、比較の感熱記録材料(R−2)を得た。
【0156】
(評価)
上記のようにして得た、本発明の感熱記録材料(T−1)〜(T−3)、及び比較の感熱記録材料(R−1)〜(R−2)について下記評価を行なった。評価、測定の結果を下記表1に示す。
(1) 熱記録(画像形成)
京セラ(株)製のサーマルヘッド(KST型)を用いて、記録エネルギー23mJ/mm2になるようにサーマルヘッドに対する印加電圧、パルス幅を決めて各感熱記録材料に熱印画し、イエローの画像を形成した。そして、印画後の各感熱記録材料を発光中心波長365nm、出力40Wの紫外線ランプ下で25秒間照射した。
【0157】
(2) 発色濃度
上記「(1)熱記録」にて記録された各感熱記録材料の、イエローに発色した画像部の最大濃度と非画像部(未印画部分)の地肌濃度を、X−rite 310TR(日本平板機材(株)製)を用いて測定した。
【0158】
(3) 生保存性(熱安定性)
記録前の各感熱記録材料を60℃/30%RHの環境条件下にて72時間強制保存(強制試験)した。その後、上記(1)及び(2)と同様にして、熱記録と発色濃度(最大濃度、地肌濃度)の測定を行なった。なお、画像部においては、強制試験の前(D1)と後(D2)との最大濃度の濃度比(D2/D1)を求めた。
【0159】
【表1】
【0160】
上記表1の結果に示すように、比較例1との比較において、一般式(1)で表されるジアゾニウム塩を一般式(2)で表される不揮発性オイル成分と共に含む本発明の感熱記録材料(1)〜(3)では、地肌濃度が低く白色性に優れており、高温下で保存された場合の地肌部の濃度上昇、および画像部における発色濃度の低下も抑えられ、熱安定性に特に優れていた。また、比較例2との比較において、本発明の感熱記録材料(1)〜(3)のように、一般式(2)で表される化合物を、ジアゾニウム塩を除くマイクロカプセル中の不揮発成分の全質量の70質量%以上含有することにより顕著な効果を得ることができた。
【0161】
【発明の効果】
本発明によれば、熱安定性が高く生保存性に優れると共に、非画像部(地肌部)の白色性に優れた感熱記録材料を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジアゾニウム塩とカプラーとを発色成分とする感熱記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
サーマルヘッド等により熱を供与して画像を記録する感熱記録材料は、比較的安価であり、その記録装置が簡便で信頼性が高く、メンテナンスが不要であることから広く普及している。かかる状況のもと、近年では特に高画質化、保存安定性の向上等の高性能化に対する要望が高く、感熱記録材料の発色濃度、画像品質、保存性等に関する研究が鋭意行なわれている。
【0003】
感熱記録材料としては、発色成分としてジアゾニウム塩を用いたものが多く開発され、発色濃度、画像品質および保存性の向上が図られてきている。ジアゾニウム塩を含有するジアゾ発色系の感熱記録材料は、ジアゾニウム塩をマイクロカプセルに内包すると共に、熱印画することにより画像を形成した後、光によって未印画部のジアゾニウム塩を熱分解して定着させることによって、記録材料としての保存性(画像保存性)を大きく向上させることができる。
【0004】
しかし、ジアゾ発色系の感熱記録材料は、画像形成前の保存(生保存)時にジアゾニウム塩の一部が徐々に熱分解することが原因で活性を失うため、保存経時で発色濃度が低下してしまうという問題があった。また、熱分解すると、その分解生成物(ステイン)によって地肌部は着色されてしまう問題もあった。
【0005】
これに対し、マイクロカプセル液を調製する際、ジアゾニウム塩と共にオイル成分として芳香族エステルオイルを用いることによって、ジアゾニウム塩の熱分解を抑え、地肌着色を抑制した感熱記録材料が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。しかしながら、芳香族エステルオイルをマイクロカプセルの製造に用いるオイル成分(カプセルオイル)として用いた系では、必ずしも地肌部(非画像部)の白色性の向上には寄与し得ず、ジアゾニウム塩との組合せによっては、得られたマイクロカプセル液が感熱記録層を形成するのに不適当な性状、すなわち経時の沈殿、塗布後の地肌着色などを招来することがあった。
【0006】
また、マイクロカプセルの製造に用いるオイル成分として、アシルホスフィンオキサイドを公知のオイルと併用することにより、地肌着色を低減した感熱記録材料もある(例えば、特許文献6参照)。
しかし、上記のいずれにおいても、未使用の感熱記録材料を長期保存したときの発色性、地肌白色性をともに良好に保持する観点では、必ずしも充分な性能を発揮し得るまでには至っていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−324129号公報
【特許文献2】
特開平9−175017号公報
【特許文献3】
特開平11−291638号公報
【特許文献4】
特開2001−130138公報
【特許文献5】
特開2001−180118公報
【特許文献6】
特開2000−343827公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記事情に鑑み、特願2002−241645では、ジアゾニウム塩自体の熱分解性を抑えることによって、感熱記録材料の熱安定性を向上させる技術が提案されている。すなわち、発色成分としてベンゾチアゾリルジアゾニウム塩を含有させた感熱記録材料は、ジアゾニウム塩自体の熱安定性が高く、長期保存時の生保存性に優れることが記載されている。確かに、この感熱記録材料は画像形成前の生保存性としては良好な性能を示すものの、地肌部(非画像部)における地肌汚れは充分に抑えきれないという課題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑み成されたものであり、熱安定性が高く生保存性に優れると共に、非画像部(地肌部)の白色性に優れた感熱記録材料を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、生保存性および地肌白色性を共に高める技術について鋭意検討を重ね、特に、ベンゾチアゾリン骨格を持つジアゾニウム塩を含む感熱記録材料において、ジアゾニウム塩を内包するマイクロカプセルの調製に用いる不揮発性オイル成分(カプセルオイル)として低極性芳香族化合物が有用であるとの知見を得、かかる知見に基づき本発明は達成された。
【0011】
上記目的を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> マイクロカプセル中に不揮発性オイル成分と共に内包されたジアゾニウム塩と、該ジアゾニウム塩と反応して発色させるカプラーとを含む感熱記録層を有する感熱記録材料において、前記ジアゾニウム塩が下記一般式(1)で表される化合物であり、前記不揮発性オイル成分の少なくとも一種が下記一般式(2)で表される化合物であり、かつ前記マイクロカプセル中に占める該一般式(2)で表される化合物の含有量が、ジアゾニウム塩を除くマイクロカプセル中の不揮発成分の全質量の70質量%以上であることを特徴とする感熱記録材料である。
【0012】
【化3】
【0013】
前記一般式(1)中、R1、R3およびR4は、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表し、R2及びR5は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、またはハロゲン原子を表す。X−は対アニオンを表す。
【0014】
【化4】
【0015】
前記一般式(2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、またはアリールオキシ基を表す。R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は任意に結合して環を形成してもよい。
【0016】
<2> 前記一般式(2)で表される化合物の融点(m.p.)が110℃以下である前記<1>に記載の感熱記録材料である。
<3> 前記マイクロカプセルのカプセル壁がポリウレタン及び/又はポリウレアを構成成分に含む前記<1>または<2>に記載の感熱記録材料である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の感熱記録材料においては、ベンゾチアゾリン骨格を持つジアゾニウム塩と共にカプセルオイルとしてビフェニル型の不揮発性芳香族化合物を含み、かつ該不揮発性芳香族化合物の、マイクロカプセル中に含まれるジアゾニウム塩を除く全不揮発成分の全質量に対する量を70質量%以上とする。以下、本発明の感熱記録材料について詳細に説明する。
【0018】
本発明の感熱記録材料は、支持体上に少なくとも一層の感熱記録層を有して構成され、更に保護層、光透過率調製層、中間層等の他の層を有していてもよい。(感熱記録層)
本発明に係る感熱記録層は、マイクロカプセルに内包された下記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩と、該ジアゾニウム塩と反応して発色させるカプラーと、前記マイクロカプセルに前記ジアゾニウム塩と共に内包された下記一般式(2)で表される化合物(不揮発性オイル成分)とを少なくとも含んでなり、更に他の成分を含んでいてもよい。
【0019】
−ジアゾニウム塩−
本発明に係る感熱記録層には、下記一般式(1)で表される化合物をマイクロカプセルに内包して含有する。かかるジアゾニウム塩は熱分解性が低く、作製される感熱記録材料の熱安定性、すなわち生保存性を向上させることができ、環境条件に依存することなく安定的に高濃度の画像を形成することができる。
【0020】
【化5】
【0021】
前記一般式(1)中、R1、R3およびR4は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。このアルキル基、アリール基およびアラルキル基は、いずれも無置換でも置換されていてもよく、置換されている場合の置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基が挙げられる。
【0022】
前記アルキル基としては、総炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、総炭素数1〜20のアルキル基がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、ドデシル基、オクタデシル基、(4−エトキシフェニル)メチル基、N,N−ジエチルカルバモイルメチル基、N,N−ジブチルカルバモイルメチル基、1−(N,N−ジブチルカルバモイル)エチル基、2−メトキシエチルオキシ基等が好適に挙げられる。中でも、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、N,N−ジエチルカルバモイルメチル基、N,N−ジブチルカルバモイルメチル基、1−(N,N−ジブチルカルバモイル)エチル基が特に好ましい。
【0023】
前記アリール基としては、総炭素数6〜30のアリール基が好ましく、総炭素数6〜20のアリール基がさらに好ましい。具体的には、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−フェニルフェノキシ基、4−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基、2,4−ジエトキシフェニル基、2,5−ジブトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、ナフチル基、4−ジブチルカルバモイルフェニル基、4−ジブチルスルファモイルフェニル基等が好適に挙げられる。中でも、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基が特に好ましい。
【0024】
前記アラルキル基としては、総炭素数7〜30のアラルキル基が好ましく、総炭素数7〜20のアラルキル基がさらに好ましい。具体的には、ベンジル基、4−メトキシベンジル基、2−メチルベンジル基、フェネチル基、4−クロロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基、等が挙げられる。中でも、ベンジル基、4−クロロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基が好ましい。
【0025】
前記R2及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはハロゲン原子を表す。
前記R2またはR5で表されるアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、(4−エトキシフェニル)メチル基、N,N−ジエチルカルバモイルメチル基、N,N−ジブチルカルバモイルメチル基、等が好適に挙げられる。中でも、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、N,N−ジエチルカルバモイルメチル基、N,N−ジブチルカルバモイルメチル基が特に好ましい。
【0026】
前記R2またはR5で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は沃素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子がさらに好ましい。
【0027】
前記X−は対アニオンを表す。該対アニオンとしては、無機アニオン、有機アニオンのいずれでもよい。無機アニオンとしては、例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン、ホウフッ化水素酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオンが好ましく、中でも、ヘキサフルオロリン酸イオン、ホウフッ化水素酸イオンが特に好ましい。また、有機アニオンとしては、例えばポリフルオロアルキルカルボン酸イオン、ポリフルオロアルキルスルホン酸イオン、芳香族カルボン酸イオン、芳香族スルホン酸イオン、特願2002−108919号明細書に記載のイオンが好ましく、中でも、ポリフルオロアルキルカルボン酸イオン、ポリフルオロアルキルスルホン酸イオン、特願2002−108919号明細書に記載のイオンが特に好ましい。
【0028】
前記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩は、下記一般式(3)で表される化合物を原料として用い、以下のようにして合成することができる。
【化6】
【0029】
前記一般式(3)において、R1、R2、R3、R4及びR5は、既述の一般式(1)におけるR1、R2、R3、R4及びR5と各々同義であり、その好ましい態様も同様である。R6は水素原子又はアシル基を表し、該アシル基としては、総炭素数1〜30のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、ブチロイル基、4−フェノキシブチロイル基、ベンゾイル基、(4−エトキシフェニル)カルボニル基、(2−ブトキシフェニル)カルボニル基、(4−クロロフェニル)カルボニル基等が好適に挙げられ、特にアセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、(4−クロロフェニル)カルボニル基が好ましい。
【0030】
まず、一般式(3)で表される化合物は、上記の一般式(4)で表される化合物を出発原料として合成することができる。一般式(4)中のR1、R2、R3、R4、R5及びR6は、前記一般式(3)におけるR1、R2、R3、R4、R5及びR6と同義であり、好ましい具体例も同様である。
【0031】
一般式(3)で表される化合物の合成は下記条件が適用できる。ここでの合成反応は酸化反応である。酸化剤としては、塩素、臭素、ヨウ素、塩化スルホニル、又は塩化スルフリルが好ましく、取り扱い、収率の点からは、臭素が最も好ましい。酸化剤の使用量は、一般式(4)で表される化合物に対してモル比で90〜130%が好ましく、100〜110%が特に好ましい。酸化剤量が少ないと原料が残留し、多いと副反応物が増えることがある。
【0032】
反応に使用する溶媒としては、酸化剤と反応しないものであればよく、酢酸、プロピオン酸、アセトニトリル、クロロホルム、塩化メチレン、酢酸エチル、クロロベンゼンが好ましい。特に、酢酸、クロロホルム、塩化メチレンが、収率の点から好ましい。これらの溶媒の混合溶媒も使用できる。溶媒の使用量は、原料が溶解する程度でよいが、高濃度であると高粘化し撹拌効率が下がり、低濃度では容積効率が低下するため、使用する一般式(4)で表される化合物の質量に対し、100〜2000%の範囲が好ましい。200〜500%であればさらに好ましい。反応温度は、−10〜120℃の範囲で選べばよい。一般的に高温ほど早く反応は完結するが、本合成方法は室温以下でも速やかに反応するため、収率の点から、−5〜35℃範囲で行うことが好ましい。また、酢酸を溶媒に使用する場合には、酢酸の結晶化を防ぐために10℃以上で行うことが好ましい。
【0033】
前記一般式(4)で表される化合物の合成は、「Organic Functional Group Preparations Volume II」(Stanley R. Sandler, Wolf Karo著(1971) AcademicPress, Inc.)、「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応III」((1976)丸善株式会社)、J.Chem.Soc.(C)(1967)p.2212〜2220等による公知の方法で合成できる。
【0034】
上記の一般式(3)で表される化合物からジアゾニウム塩を合成するにあたって、−NHR6(R6=アシル基)の場合にはこれを−NH2に変換して用いられる。変換は、酸性条件下でも塩基性条件下でも可能であり、添加する酸としては塩酸、硫酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸が、添加する塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムが好ましい。添加によって酸を発生する化合物も好ましく、塩化アセチル、塩化プロピオニルが好適である。反応溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、酢酸が好ましく、これらの混合溶媒も好ましい。反応温度としては、室温から溶媒の沸点の間が好ましいが、反応速度及び溶解性の点から50℃以上の高温で行う方が好ましい。
また、−NHR6(R6=水素原子)の場合には、該化合物を酸性溶媒中で亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等を用いてジアゾ化することにより合成できる。
【0035】
前記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩は、油状物、結晶状態のいずれであってもよいが、取扱い性の面で結晶状態のものが好ましい。また、このジアゾニウム塩は一種単独で用いてもよいし、二種以上併用することもできる。
感熱記録層中における、前記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩の含有量としては、0.02〜5g/m2の範囲が好ましく、発色濃度の観点からは特に0.1〜4g/m2の範囲とするのが好ましい。
【0036】
また、上記のジアゾニウム塩の安定化のために塩化亜鉛、塩化カドミウム塩化スズ等を用い、錯化合物を形成させることによってジアゾニウム化合物を安定化させることもできる。
【0037】
以下、前記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩を具体例(例示化合物A−1〜A−27)を示す。但し、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
また、本発明の感熱記録材料は、本発明に係る感熱記録層と、発色成分として公知のジアゾニウム塩およびカプラー、または電子供与性無色染料および電子受容性化合物を含む感熱記録層とを積層した構造であってもよい。
【0042】
前記公知のジアゾニウム塩としては、例えば、下記一般式(5)で表されるジアゾニウム塩が挙げられる。
Ar−N2 +X1− …一般式(5)
〔一般式(5)中、Arは置換若しくは無置換のアリール基を表し、X1−は酸アニオンを表す。〕
【0043】
前記一般式(5)で表されるジアゾニウム塩は、上記の一般式(1)で表される化合物と同様、加熱によって後述のカプラーとカップリング反応を起こして発色し、また光によって分解する化合物である。これらはAr部分の置換基の位置や種類によって、その最大吸収波長を制御することが可能である。
【0044】
前記一般式(5)中のArは、置換または無置換のアリール基を表す。該Arで表されるアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、2−ブトキシフェニル基、2−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル基、2−オクチルオキシフェニル基、3−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシエトキシ)フェニル基、4−クロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3−クロロフェニル基、3−メチルフェニル基、3−メトキシフェニル基、3−ブトキシフェニル基、3−シアノフェニル基、3−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3−(ジブチルアミノカルボニルメトキシ)フェニル基、4−シアノフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、
【0045】
4−ブトキシフェニル基、4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニル基、4−ベンジルフェニル基、4−アミノスルホニルフェニル基、4−N,N−ジブチルアミノスルホニルフェニル基、4−エトキシカルボニルフェニル基、4−(2−エチルヘキシルカルボニル)フェニル基、4−フルオロフェニル基、3−アセチルフェニル基、2−アセチルアミノフェニル基、4−(4−クロロフェニルチオ)フェニル基、4−(4−メチルフェニル)チオ−2,5−ブトキシフェニル基、4−(N−ベンジル−N−メチルアミノ)−2−ドデシルオキシカルボニルフェニル基等が挙げられる。また、これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボアミド基、スルホニル基、スルファモイル基、アルキルオキシ基、シアノ基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、ヘテロ環基、スルホンアミド基、ウレイド基、ハロゲン基、ヘテロ環基等により置換されていてもよく、更に置換されていてもよい。
【0046】
前記一般式(5)で表されるジアゾニウム塩を形成するジアゾニウムの具体例としては、4−(p−トリルチオ)−2,5−ジブトキシベンゼンジアゾニウム、4−(4−クロロフェニルチオ)−2,5−ジブトキシベンゼンジアゾニウム、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゼンジアゾニウム、4−(N,N−ジエチルアミノ)ベンゼンジアゾニウム、4−(N,N−ジプロピルアミノ)ベンゼンジアゾニウム、4−(N−メチル−N−ベンジルアミノ)ベンゼンジアゾニウム、4−(N,N−ジベンジルアミノ)ベンゼンジアゾニウム、4−(N−エチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンゼンジアゾニウム、4−(N,N−ジエチルアミノ)−3−メトキシベンゼンジアゾニウム、4−(N,N−ジメチルアミノ)−2−メトキシベンゼンジアゾニウム、4−(N−ベンゾイルアミノ)−2,5−ジエトキシベンゼンジアゾニウム、4−モルホリノ−2,5−ジブトキシベンゼンジアゾニウム、4−アニリノベンゼンジアゾニウム、4−[N−(4−メトキシベンゾイル)アミノ]−2.5−ジエトキシベンゼンジアゾニウム、4−ピロリジノ−3−エチルベンゼンジアゾニウム、4−[N−(1−メチル−2−(4−メトキシフェノキシ)エチル)−N−ヘキシルアミノ]−2−ヘキシルオキシベンゼンジアゾニウム、4−[N−(2−(4−メトキシフェノキシ)エチル)−N−ヘキシルアミノ]−2−ヘキシルオキシベンゼンジアゾニウム、2−(1−エチルプロピルオキシ)−4−[ジ−(ジ−n−ブチルアミノカルボニルメチル)アミノ]ベンゼンジアゾニウム、2−ベンジルスルホニル−4−[N−メチル−N−(2−オクタノイルオキシエチル)]アミノベンゼンジアゾニウム、等が挙げられる。
【0047】
前記X1−は酸アニオンを表し、該酸アニオンとしては、炭素数1〜9のポリフルオロアルキルカルボン酸、炭素数1〜9のポリフルオアルキルスルホン酸、四フッ化ホウ素、テトラフェニルホウ素、ヘキサフルオロリン酸、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸等が挙げられる。中でも、結晶性の点でヘキサフルオロリン酸が好ましい。
【0048】
上記の公知のジアゾニウム塩の最大吸収波長λmaxは使用する層等によって適宜選定すればよいが、450nm以下が好ましく、290〜440nmがより好ましい。上記λmaxが、450nmを超える長波長側にあると、生保存性が低下することがあり、上記波長範囲よりも短波長側にあると、後述のカプラーとの組合わせにおいて画像定着性、画像保存性が低下したり、色相が劣化することがある。
【0049】
また、ジアゾニウム塩は、炭素数が12以上であるときの水に対する溶解度が1質量%以下で、かつ酢酸エチルに対する溶解度が5質量%以上であることが望ましい。なお、ジアゾニウム塩は、一種単独で用いてもよいし、色相調整等の目的に応じて、二種以上を併用することもできる。
【0050】
−カプラー−
本発明に係る感熱記録層は、既述のジアゾニウム塩と熱時反応して発色させるカプラー(カップリング成分)を含有する。前記カプラーとしては、塩基性雰囲気及び/又は中性雰囲気で上記のジアゾニウム塩とカップリングして色素を形成するものであればいずれの化合物も使用でき、色相等の目的に適合する範囲で適宜選択することができる。
【0051】
前記カプラーとしては、例えば、レゾルシン、フロログルシン、2,3−ヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸モルホリノアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸−2−エチルヘキシルオキシプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸−2−エチルヘキシルアミド、1−ヒドロキシ−8−アセチルアミノナフタレン−1,6−ジスルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−8−アセチルアミノナフタレン−8.6−ジスルホン酸ジアニリド、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ−6−ナフタレンスルホン酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸−2’−メチルアニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸エタノールアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸オクチルアミド、2−ヒドロキシナフトエ酸モルホリノエチルアミド、2−ヒドロキシナフトエ酸ピペリジノプロピルアミド、2−ヒドロキシナフトエ酸ピペリジノエチルアミド、
【0052】
2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸−N−ドデシル−オキシ−プロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸テトラデシルアミド、6−メトキシ−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、6−エトキシ−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、6−メトキシ−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、6−メトキシ−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸−2−ヒドロキシエチルアミド、アセトアニリド、アセトアセトアニリド、2−クロロ−3−(2,4−ジ−1−アミルフェノキシプロピルアミノカルボニル)−ピパロイルアセトアニリド、ベンゾイルアセトアニリド、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2’,4’,6’−トリクロロフェニル)−3−ベンズアミド−5−ピラゾロン、1−(2’,4’,6’−トリクロロフェニル)−3−アニリノ−3−ピラゾロン、1−フェニル−3−フェニルアセトアミド−5−ピラゾロン等を挙げることができる。
【0053】
上記のカプラーは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。感熱記録層中におけるカプラーの含有量としては、ジアゾニウム塩1質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
【0054】
−不揮発性オイル成分−
マイクロカプセル中にジアゾニウム塩と共に内包される不揮発性オイル成分として、下記一般式(2)で表される化合物の少なくとも一種を含有する。上記の一般式(1)で表されるジアゾニウム塩と共にかかる化合物を合わせて含むことにより、上記した熱安定性の向上のみならず、感熱記録材料の非画像部における地肌汚れを抑止して、白色性を向上させることができる。
【0055】
【化10】
【0056】
前記一般式(2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、またはアリールオキシ基を表す。
【0057】
前記R11〜R20で表されるアルキル基としては、飽和・不飽和のいずれでもよく、さらにアルコキシ基、アリール基で置換されていてもよく、炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−アミル基、2−エチルヘキシル基、アリル基、3−ブテニル基、1−ブチニル基、2−フェニル−アセチレニル基、フェノキシエチル基、などが挙げられる。
【0058】
前記R11〜R20で表されるアルコキシ基としては、飽和・不飽和のいずれでもよく、さらにアルコキシ基、アリール基で置換されていてもよく、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピロキシ基、iso−プロピロキシ基、n−ブチロキシ基、2−エチルヘキシロキシ基、2−エトキシエトキシ基、フェノキシエトキシ基、などが挙げられる。
【0059】
前記R11〜R20で表されるアリール基は、さらにアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよく、炭素数6〜30のアリール基が好ましい。例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、4−メトキシフェニル基などが挙げられる。
【0060】
前記R11〜R20で表されるアラルキル基は、さらにアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子に置換されていてもよく、炭素数7〜30のアラルキル基が好ましい。例えば、ベンジル基、1−メチルベンジル基、フェネチル基、4−メチルフェニルメチル基、2−(4−クロロフェニル)エチル基、4−メトキシフェニルメチル基などが挙げられる。
【0061】
前記R11〜R20で表されるアリールオキシ基は、さらにアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子に置換されていてもよく、炭素数6〜30のアリールオキシ基が好ましい。例えば、フェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、2,4−ジ−t−アミルフェノキシ基、などが挙げられる。
【0062】
また、前記R11〜R20のうち隣接する基が互いに結合して環を形成し、これらの基が結合するベンゼン環と縮環することによりナフタレン環を形成してもよい。
【0063】
また、前記一般式(2)で表される化合物は、マイクロカプセル液を調製する際の、ジアゾニウム塩を含む油相への溶解性を確保する必要性から、融点(m.p.)が110℃以下であることが望ましい。該融点が110℃より高いと、調製時に析出したり、あるいはカプセル壁の形成を阻害して、芯物質(油相)が充分に内包されていない状態のマイクロカプセル液が得られてしまい、生保存時に地肌着色しやすい、地肌汚れを起こすなどの弊害が生じてしまう。特に、20〜100℃とするのが好ましい。
【0064】
以下、前記一般式(2)で表される化合物の具体例(例示化合物(1)〜(15))を示す。但し、本発明においてはこれらに限定されるものではない。なお、カッコ内のm.p.は融点を表す。
【0065】
【化11】
【0066】
【化12】
【0067】
感熱記録層における前記一般式(2)で表される化合物の含有量としては、ジアゾニウム塩に対して、100〜400質量%が好ましく、150〜300質量%がより好ましい。該含有量が、100質量%未満であると、非画像部の白色性、地肌汚れを充分に良化できないことがあり、400質量%を超えると、発色感度が低下して良好な画像が得られ難くなることがある。
【0068】
前記一般式(2)で表される化合物(不揮発性オイル成分)は、ジアゾニウム塩をカプセル内に内包するマイクロカプセル液の調製に用いる、ジアゾニウム塩を含有する油相に添加して用いることができる。この油相は、後述の〈マイクロカプセルの製造方法〉の記載のように別途調製された水相に加えて乳化分散される。
【0069】
−他の成分等−
本発明の感熱記録材料においては、上記のように、発色成分としてジアゾニウム塩とカプラーとの組合せ(ジアゾ発色系)のほか、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せ(ロイコ発色系)を用いることもできる。例えば、感熱記録材料が支持体上に複数層からなる感熱記録層を有して構成されるときに、該感熱記録層を構成する少なくとも1層をロイコ発色系の層に構成することができる。
【0070】
前記電子供与性染料前駆体としては、例えば、トリアリールメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、キサンテン系化合物、スピロピラン系化合物等が挙げられ、中でも、発色濃度が高い点で、トリアリールメタン系化合物、キサンテン系化合物が好ましい。
【0071】
具体的には、下記化合物が挙げられる。例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(すなわちクリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノ)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,3−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(o−メチル−p−ジエチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン(p−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン−B−(p−クロロアニリノ)ラクタム、2−ベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−6−ジエチルアミノフルオラン、
【0072】
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−シクロヘキシルメチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−イソアミルエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−オクチルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−エトキシエチルアミノ−3−クロロ−2−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンジルロイコメチレンブルー、3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3,3’−ジクロロ−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン、等である。
【0073】
感熱記録層における電子供与性染料前駆体の量(塗布量)としては、既述のジアゾニウム塩の場合と同様の理由から、感熱記録層中に0.1〜2g/m2とすることが好ましい。
【0074】
前記電子受容性化合物としては、例えば、フェノール誘導体、サリチル酸誘導体、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられ、中でも特に、ビスフェノール類、ヒドロキシ安息香酸エステル類が好ましい。
【0075】
具体的には、下記化合物が挙げられる。例えば、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわちビスフェノールA)、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(すなわちビスフェノールP)、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸およびその多価金属塩、3,5−ジ(tert−ブチル)サリチル酸およびその多価金属塩、3−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸およびその多価金属塩、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、等が挙げられる。
【0076】
感熱記録層中における電子受容性化合物の含有量としては、電子供与性染料前駆体1質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
【0077】
感熱記録層には、ジアゾニウム塩とカプラーとのカップリング反応を促進する目的で有機塩基を添加することが好ましい。有機塩基は、感熱記録層中にジアゾニウム塩およびカプラーと共に含有させるのが好ましく、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0078】
前記有機塩基としては、第3級アミン類、ピペリジン類、ピペラジン類、アミジン類、ホルムアミジン類、ピリジン類、グアニジン類、モルホリン類等の含窒素化合物等が挙げられる。また、特公昭52−46806号公報、特開昭62−70082号公報、特開昭57−169745号公報、特開昭60−94381号公報、特開昭57−123086号公報、特開昭58−1347901号公報、特開昭60−49991号公報、特公平2−24916号公報、特公平2−28479号公報、特開昭60−165288号公報、特開昭57−185430号公報に記載のものも使用可能である。
【0079】
中でも特に、N,N′−ビス(3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、N,N′−ビス〔3−(p−メチルフェノキシ)−2−ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N,N′−ビス〔3−(p−メトキシフェノキシ)−2−ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N,N′−ビス(3−フェニルチオ−2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、N,N′−ビス〔3−(β−ナフトキシ)−2−ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N−3−(β−ナフトキシ)−2−ヒドロキシプロピル−N′−メチルピペラジン、1,4−ビス{〔3−(N−メチルピペラジノ)−2−ヒドロキシ〕プロピルオキシ}ベンゼン等のピペラジン類、N−〔3−(β−ナフトキシ)−2−ヒドロキシ〕プロピルモルホリン、1,4−ビス(3−モルホリノ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−モルホリノ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)ベンゼン等のモルホリン類、N−(3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル)ピペリジン、N−ドデシルピペリジン等のピペリジン類、トリフェニルグアニジン、トリシクロヘキシルグアニジン、ジシクロヘキシルフェニルグアニジン等のグアニジン類等が好ましい。
【0080】
所望により有機塩基を含有させる場合の、感熱記録層中における有機塩基の含有量としては、ジアゾニウム塩1質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
【0081】
上記の有機塩基のほか、発色反応を促進させる目的で、感熱記録層中に増感剤を加えることもできる。増感剤は、加熱記録時の発色濃度を高くする、若しくは最低発色温度を低くする物質であり、カプラー、有機塩基またはジアゾニウム塩等の融解点を下げたり、カプセル壁の軟化点を低下させる作用によりジアゾニウム塩、有機塩基、カプラー等を反応しやすい状態とするものである。
【0082】
具体的には、分子内に芳香族性の基と極性基を適度に有している低融点有機化合物が好ましく、例えば、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、α−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフトエ酸フェニルエステル、α−ヒドロキシ−β−ナフトエ酸フェニルエステル、β−ナフトール−(p−クロロベンジル)エーテル、1,4−ブタンジオールフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−メチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−エチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−m−メチルフェニルエーテル、1−フェノキシ−2−(p−トリルオキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−エチルフェノキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−クロロフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル等が挙げられる。
【0083】
感熱記録層にはバインダーを含有することができ、該バインダーとしては公知の水溶性高分子化合物やラテックス類等から適宜選択できる。
前記水溶性高分子化合物としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン誘導体、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、エピクロルヒドリン変成ポリアミド、イソブチレン−無水マレインサリチル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド等およびこれらの変成物等が挙げられ、前記ラテックス類としては、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等が挙げられる。
【0084】
また、発色画像の光や熱に対する堅牢性を向上する、または定着後の未印画部分(非画像部)の光による黄変を軽減する目的で、以下に示す公知の酸化防止剤等を含有することも好ましい。
前記酸化防止剤としては、例えば、ヨーロッパ公開特許EP第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、アメリカ特許第4814262号、アメリカ特許第4980275号等に記載のものが挙げられる。
【0085】
本発明において、カプラーや有機塩基、増感剤等の他の成分の使用形態については特に制限はなく、例えば、(1)固体分散して使用する方法、(2)乳化分散して使用する方法、(3)ポリマー分散して使用する方法、(4)ラテックス分散して使用する方法、(5)マイクロカプセル化を利用する方法等を適用することができる。
【0086】
〈マイクロカプセルの製造方法〉
本発明は、ジアゾニウム塩に起因する感熱記録材料の生保存性を向上させると共に地肌白色性おも向上させるために、少なくとも、上記の一般式(1)で表される化合物(ジアゾニウム塩)を一般式(2)で表される化合物(不揮発性オイル)と共にマイクロカプセルに内包する。
【0087】
一般式(1)で表されるジアゾニウム塩を一般式(2)で表される不揮発性オイルと共にマイクロカプセル化する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、一般式(1)で表されるジアゾニウム塩と一般式(2)で表される不揮発性オイルとを同時に水に難溶若しくは不溶の低沸点の有機溶媒に溶解または分散させて油相を調製する。このとき、一般式(2)で表される不揮発性オイルは、形成されるマイクロカプセルに含まれる不揮発成分(ジアゾニウム塩を除く)の全質量に対して70質量%以上となるように加えられる。より好ましくは、75質量%以上とする。そして、得られた油相を、水溶性高分子を溶解した水相中に混合し、ホモジナイザー等の手段によって乳化分散した後、加温することで油相/水相間における油滴界面で高分子形成反応を起こし、高分子物質のマイクロカプセル壁を形成させる界面重合法、などが好適に挙げられる。この界面重合法は、短時間内に均一な粒径のカプセルを形成することができ、生保存性に優れた記録材料を得ることができる。
【0088】
ここで、不揮発とは、必ずしも全く揮発しないことを要するのではなく、感熱記録材料の完成後に、カプセル中の成分質量を計算するうえでその存在量を実質的に無視できない程度をいう。したがって、「ジアゾニウム塩を除くマイクロカプセル中の不揮発成分の全質量」は、マイクロカプセルに内包された全成分のうち、水に溶解、分散しない化合物等であって且つ沸点が100℃以上の油溶成分の全質量であり、感熱記録材料の完成後には実質的に存在しない、低沸点溶媒(例えば、酢酸エチル)等の揮発性成分は含まない。なお、これにはカプセル壁材成分も含まれない。
【0089】
低沸点の溶媒としては、例えば、酢酸エステル、メチレンクロライド、シクロヘキサノン等が挙げられる。前記一般式(2)で表される不揮発性オイル以外の不揮発成分としては、リン酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルその他のカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、ジアリールエタン、塩素化パラフィン、アルコール系溶剤、フェノール系溶剤、エーテル系溶剤、モノオレフィン系溶剤、エポキシ系溶剤等が挙げられる。
【0090】
高沸点溶剤の具体例としては、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリシクロヘキシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジラウレート、フタル酸ジシクロヘキシル、オレフィン酸ブチル、ジエチレングリコールベンゾエート、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、トリメリット酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリエチル、マレイン酸オクチル、マレイン酸ジブチル、イソアミルビフェニル、塩素化パラフィン、ジイソプロピルナフタレン、1,1’−ジトリルエタン、2,4−ジターシャリアミルフェノール、N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−ターシャリオクチルアニリン、ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシルエステル、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
中でも、リン酸エステル系溶剤、カルボン酸エステル系溶剤、ジアリールエタンが特に好ましい。
【0091】
高沸点溶剤としては、特に不飽和脂肪酸を有するものが望ましく、α−メチルスチレンダイマー等も挙げられ、該α−メチルスチレンダイマーには、例えば三井東圧化学社製の「MSD100」等がある。更に、前記高沸点溶剤にヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の炭化防止剤を添加してもよい。
【0092】
前記水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アミノ変性ポリビニルアルコール、イタコン酸変性ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ブタジエン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルピロリドン、エチレン−アクリル酸共重合体、ゼラチン等が挙げられる。中でも、カルボキシ変性ポリビニルアルコールが好ましい。
【0093】
水溶性高分子には、疎水性高分子のエマルジョンまたはラテックス等を併用することもできる。該エマルジョンまたはラテックスとしては、スチレン−ブタジエン共重合体、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等が挙げられる。このとき、必要に応じて従来公知の界面活性剤等を加えてもよい。
【0094】
マイクロカプセル壁を構成する高分子物質としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アミノアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリレート共重合体樹脂、スチレン−メタクリレート共重合体樹脂、ゼラチン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。中でも、ポリウレタン・ポリウレア樹脂が特に好ましい。
【0095】
例えば、ポリウレタン・ポリウレア樹脂をカプセル壁材として用いる場合には、多価イソシアネート等のマイクロカプセル壁前駆体をカプセル化し、芯物質となる油性媒体(油相)中に混合し、更にマイクロカプセル壁前駆体と反応してカプセル壁を形成する第2物質(例えば、ポリオール、ポリアミン)を水溶性高分子水溶液(水相)中に混合した後、得られた油相を水相に乳化分散する。そして、さらに加温することによって油滴界面で高分子形成反応が進み、マイクロカプセル壁を形成することができる。
【0096】
以下、多価イソシアネート化合物の具体例を示す。但し、本発明においてはこれらに限定されるものではない。例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、
【0097】
シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート等のジイソシアネート類、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート等のトリイソシアネート類、4,4’−ジメチルフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等のテトライソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、2,4−トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付加物等のイソシアネートプレポリマー等が挙げられる。また必要に応じ、これら二種以上を併用してもよい。中でも特に好ましいものは、分子内にイソシアネート基を三個以上有するものである。
【0098】
また、前記公知のジアゾニウム塩、電子供与性無色染料等をマイクロカプセル化する場合にも上述の方法を適用することができる。マイクロカプセル化する方法において、上記したカプラー(および電子受容性化合物)、有機塩基、増感剤等の他の成分、並びにマイクロカプセル壁前駆体やこれと反応する第2物質を溶解させる有機溶剤としては、既述の有機溶剤と同様のものが用いられる。
【0099】
マイクロカプセルの粒径としては、0.1〜2.0μmが好ましく、0.2〜1.5μmがより好ましい。
【0100】
以下、多色の感熱記録材料の具体的な構成態様について説明する。
本発明の感熱記録材料は、支持体上に感熱記録層を一層有する単色の感熱記録材料、および単色の記録層を複数積層してなる積層構造の感熱記録層を有する多色の感熱記録材料のいずれであってもよい。
【0101】
特に、シアン発色、イエロー発色、マゼンタ発色の3層で構成されるフルカラーの感熱記録層の場合には、支持体上の3層が全てジアゾ発色系で構成された形態、あるいは支持体に最も近い第一層目の記録層が電子供与性染料および電子受容性化合物を組合せたロイコ発色系で構成され、第二および第三層目の記録層がジアゾ発色系で構成された形態よりなる感熱記録材料が好ましい。また、支持体側から順にシアン、マゼンタ、イエローに発色するように各色相の記録層を積層した構成が好ましく、特に前記一般式(1)で表されるジアゾニウム塩および一般式(2)で表される不揮発性オイルを内包するマイクロカプセルを含む本発明に係る感熱記録層としてはイエローに発色する層が最適である。
【0102】
本発明の感熱記録材料は、例えば、下記(a)〜(c)に示す態様で構成することができる。すなわち、
(a)支持体上に、最大吸収波長365±40nmであるジアゾニウム塩と該ジアゾニウム塩と反応し呈色するカプラーとを含有する光定着型記録層(第一の記録層(A層))と、最大吸収波長420±40nmであるジアゾニウム塩と該ジアゾニウム塩と反応し呈色するカプラーとを含有する光定着型記録層(第二の記録層(B層))と、を積層してなる記録層を有し、該層上に必要に応じて光透過率調整層、保護層を設けた記録材料、
【0103】
(b)支持体上に、電子供与性染料と電子受容性化合物を含有する記録層(第一の記録層(A層))と、最大吸収波長365±40nmであるジアゾニウム塩と該ジアゾニウム塩と反応し呈色するカプラーとを含有する光定着型記録層(第二の記録層(B層))と、最大吸収波長420±40nmであるジアゾニウム塩と該ジアゾニウム塩と反応し呈色するカプラーとを含有する光定着型記録層(第三の記録層(C層))と、をこの順に積層してなる記録層を有し、該層上に必要に応じて光透過率調整層、保護層を設けた記録材料、
【0104】
(c)支持体上に、最大吸収波長350nm以下のジアゾニウム塩と、該ジアゾニウム塩と呈色反応をするカプラーとを含有する光定着型記録層(第一の記録層(A層))と、最大吸収波長365±40nmであるジアゾニウム塩と該ジアゾニウム塩と反応し呈色するカプラーとを含有する光定着型記録層(第二の記録層(B層))と、最大吸収波長420±40nmであるジアゾニウム塩と該ジアゾニウム塩と反応し呈色するカプラーとを含有する光定着型記録層(第三の記録層(C層))と、をこの順に積層してなる記録層を有し、該層上に必要に応じて光透過率調整層、保護層を設けた記録材料、などである。
【0105】
多色記録の方法について、上記(b)または(c)により以下に説明する。
まず、第三の記録層(C層)を加熱し、該層に含まれるジアゾニウム塩とカプラーとを発色させる。次に、発光中心波長430±30nmの光を照射して、C層中に含まれる未反応のジアゾニウム塩を分解し光定着した後、第二の記録層(B層)が発色するに十分な熱を与え、該層に含まれるジアゾニウム塩とカプラーとを発色させる。このとき、C層も同時に強く加熱されるが、既にジアゾニウム塩は分解されており(光定着されている)、発色能力が失われているため発色しない。さらに、発光中心波長360±20nmの光を照射し、B層に含まれるジアゾニウム塩を分解し光定着した後、最後に、第一の記録層(A層)が発色しうる十分な熱を加えて発色させる。このとき、C層、B層の記録層も同時に強く加熱されるが、既にジアゾニウム塩は分解されており、発色能力が失われているため発色しない。
【0106】
また、全ての記録層(A層、B層、およびC層)をジアゾ系の記録層とした場合、B層およびC層は、発色させた後に光定着を行なうことが必要であるが、最後に画像記録を行なうA層に関しては、必ずしも光定着を行なう必要はない。
【0107】
光定着に用いる定着用光源としては、公知の光源の中から適宜選択でき、例えば、種々の蛍光灯、キセノンランプ、水銀灯等が挙げられ、中でも、高効率に光定着する点で、光源の発光スペクトルが、記録材料に用いたジアゾニウム塩化物の吸収スペクトルとほぼ一致する光源を用いることが好ましい。
【0108】
−他の層−
本発明の感熱記録材料においては、支持体上に単一層若しくは複数層からなる感熱記録層を有するほか、更に光透過率調整層や保護層などの他の層を有して好適に構成することができる。
【0109】
〈光透過率調整層〉
光透過率調整層は、紫外線吸収剤前駆体を含有しており、定着に必要な領域の波長の光照射前は紫外線吸収剤として機能しないので光透過率が高く、光定着型感熱記録層を定着する際、定着に必要な領域の波長を十分に透過させ、しかも可視光線の透過率も高いので、感熱記録層の定着に支障を来すこともない。この紫外線吸収剤前駆体は、マイクロカプセル中に含ませることが好ましい。
また、光透過率調整層に含有する化合物としては、特開平9−1928号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0110】
前記紫外線吸収剤前駆体は、感熱記録層の光照射による定着に必要な領域の波長の光照射が終了した後、光または熱などで反応することにより紫外線吸収剤として機能するようになり、紫外線領域の定着に必要な領域の波長の光は紫外線吸収剤によりその大部分が吸収され、透過率が低くなり、感熱記録材料の耐光性が向上するが、可視光線の吸収効果がないから、可視光線の透過率は実質的に変わらない。
光透過率調整層は感熱記録材料中に少なくとも1層設けることができ、最も望ましくは感熱記録層と最外保護層との間に形成するのがよいが、光透過率調整層を保護層と兼用するようにしてもよい。光透過率調整層の特性は、感熱記録層の特性に応じて任意に選定することができる。
【0111】
光透過率調整層形成用の塗布液(光透過率調整層用塗布液)は、上記各成分を混合して得られる。該光透過率調整層塗布液を、例えばバーコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、カーテンコーター等の公知の塗布方法により塗布して形成することができる。光透過率調整層は、感熱記録層等と同時塗布してもよく、例えば感熱記録層形成用の塗布液を塗布し一旦感熱記録層を乾燥させた後、該層上に塗布形成してもよい。
光透過率調整層の乾燥塗布量としては、0.8〜4.0g/m2が好ましい。
【0112】
〈保護層〉
保護層は、バインダーと共に、顔料、滑剤、界面活性剤、分散剤、蛍光増白剤、金属石鹸、硬膜剤、紫外線吸収剤、架橋剤等を含有してなる。
前記バインダーは、バリアー性および作業性を損なわない範囲で、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、でんぷん類、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、スチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、エチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等より適宜選択して使用することができる。
【0113】
上記のほか、他のバインダーとして、合成ゴムラテックス、合成樹脂エマルジョン等が挙げられ、例えば、スチレンーブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等が挙げられる。
前記バインダーの含有量としては、保護層中の顔料に対して、10〜500質量%が好ましく、50〜400質量%がより好ましい。
【0114】
また、耐水性を更に向上させる目的で、架橋剤およびその反応を促進させる触媒を併用することが有効であり、該架橋剤としては、例えば、エポキシ化合物、ブロックドイソシアネート、ビニルスルホン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、硼酸、カルボン酸無水物、シラン化合物、キレート化合物、ハロゲン化物等が挙げられ、保護層形成用の塗布液のpHを6.0〜7.5に調整できるものが好ましい。上記触媒としては、公知の酸、金属塩等が挙げられ、上記同様に塗布液のpHを6.0〜7.5に調整できるものが好ましい。
【0115】
保護層中の顔料としては、公知の有機または無機の顔料が全て使用でき、具体的には、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、タルク、ロウ石、カオリン、焼成カオリン、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、尿素ホルマリン樹脂粉末、ポリエチレン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末等が挙げられる。これらは単独で、または二種以上を混合して使用できる。
【0116】
また、前記滑剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等が好適に挙げられる。
前記界面活性剤は、感熱記録層上に均一な保護層を形成するために用いられる。このような界面活性剤としては、スルフォコハク酸系のアルカリ金属塩、フッ素含有界面活性剤等が好適に挙げられ、具体的には、ジ−(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸、ジ−(n−ヘキシル)スルホコハク酸等のナトリウム塩、およびアンモニウム塩等が挙げられる。
【0117】
保護層形成用の塗布液(保護層用塗布液)は、上記各成分を混合して得られる。更に、必要に応じて離型剤、ワックス、撥水剤等を加えてもよい。
本発明の感熱記録材料は、支持体上に形成した感熱記録層上に保護層塗布液を公知の塗布方法により塗布して形成することができる。上記公知の塗布方法としては、例えば、バーコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、カーテンコーター等を用いた方法が挙げられる。但し、保護層は、感熱記録層や光透過率調整層と同時塗布してもよく、例えば感熱記録層形成用の塗布液を塗布して一旦感熱記録層を乾燥させた後、該層上に塗布形成してもよい。
【0118】
保護層の乾燥塗布量としては、0.2〜7g/m2が好ましく、1〜4g/m2がより好ましい。該乾燥塗設量が、0.2g/m2未満であると、耐水性が維持できないことがあり、7g/m2を超えると、著しく熱感度が低下することがある。保護層の塗布形成後、必要に応じてキャレンダー処理を施してもよい。
【0119】
〈中間層〉
感熱記録層が複数層で構成される場合、各記録層間には中間層を設けることが好ましい。該中間層には、上記の保護層と同様、各種バインダーに更に顔料、滑剤、界面活性剤、分散剤、蛍光増白剤、金属石鹸、紫外線吸収剤等を含ませることができる。バインダーとしては、保護層と同様のバインダーが使用できる。
【0120】
−支持体−
本発明の感熱記録材料を構成する支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、紙、プラスチック樹脂ラミネート紙、合成紙等が挙げられる。また、透明な感熱記録材料を得る場合には、透明支持体を使用する必要があり、該透明支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、三酢酸セルロースフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等の合成高分子フィルムが挙げられる。
【0121】
支持体は、単独であるいは貼り合わせて使用することができる。前記合成高分子フィルムの厚さとしては、25〜300μmが好ましく、100〜250μmがより好ましい。
【0122】
前記合成高分子フィルムは任意の色相に着色されていてもよく、高分子フィルムを着色する方法としては、フィルム成形前に予め樹脂に染料を混練しフィルム状に成形する方法、染料を適当な溶剤に溶かした塗布液を調製しこれを透明無色な樹脂フィルム上に公知の塗布方法、例えば、グラビアコート法、ローラーコート法、ワイヤーコート法等により塗布、乾燥する方法等が挙げられる。中でも、青色染料を混練したポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂をフィルム状に成形し、これに耐熱処理、延伸処理、帯電防止処理を施したものが好ましい。
【0123】
上記の感熱記録層(記録層)、保護層、光透過率調整層、中間層等は、支持体上に、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等の公知の塗布方法により各々の層を形成するための塗布液を塗布し、乾燥して形成できる。
【0124】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。
【0125】
(実施例1)
<フタル化ゼラチン水溶液の調製>
フタル化ゼラチン(商品名:MGPゼラチン、ニッピコラーゲン(株)製)32質量部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液、ダイトーケミックス(株)製)0.914質量部、イオン交換水367.1質量部を混合し、40℃にて溶解し、フタル化ゼラチン水溶液を得た。
【0126】
<アルカリ処理ゼラチン水溶液の調製>
アルカリ処理低イオンゼラチン(商品名:#750ゼラチン、新田ゼラチン(株)製)25.5質量部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5%メタノール溶液、ダイトーケミックス(株)製)0.729質量部、水酸化カルシウム0.153質量部、イオン交換水143.6質量部を混合し、50℃にて溶解し、アルカリ処理ゼラチン水溶液を得た。
【0127】
<イエロー感熱記録層用塗布液(a)の調製>
(ジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(a)の調製)
酢酸エチル20.4質量部に、下記ジアゾニウム塩(A)4.2質量部(一般式(1)で表される化合物)、モノイソプロピルビフェニル(室温液体;一般式(2)で表される化合物)10.6質量部、およびジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(商品名:ルシリンTPO,BASFジャパン(株)製)0.6質量部を添加し、36℃に加熱して均一に溶解した。
【0128】
【化13】
【0129】
上記混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物との混合物(商品名:タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液),三井武田ケミカル(株)製)8.6質量部を添加し、均一に攪拌し混合液(I)を得た。
【0130】
別途、上記のフタル化ゼラチン水溶液58.6質量部にイオン交換水16.3質量部、Scraph AG−8(50質量%、日本精化(株)製)0.33質量部添加し、混合液(II)を得た。
混合液(II)に混合液(I)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られた乳化液に水20質量部を加え均一化した後、40℃下で攪拌し酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ(株)製)6.1質量部、アンバーライトIRC50(オルガノ(株)製)9.2質量部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が20.0%になるように濃度調節しジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(a)を得た(モノイソプロピルビフェニルの、ジアゾニウム塩を除くマイクロカプセル中の不揮発成分の全質量に占める量は95質量%である。)。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.37±0.005μmであった。
【0131】
(カプラー乳化液(a)の調製)
酢酸エチル33.0質量部に下記カプラー(B)9.9質量部、トリフェニルグアニジン(保土ヶ谷化学(株)製)9.9質量部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(商品名:ビスフェノールM、三井石油化学(株)製)20.8質量部、3,3,3’,3’−テトラメチル−5,5’,6,6’−テトラ(1−プロピロキシ)−1,1’−スピロビスインダン(三協化学(株)製)3.3質量部、4−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゼンスルホン酸アミド(マナック(株)製)13.6質量部、4−n−ペンチルオキシベンゼンスルホン酸アミド(マナック(株)製)6.8質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名:パイオニンA−41−C(70%メタノール溶液),竹本油脂(株)製)4.2質量部を溶解し、混合液(III)を得た。
【0132】
【化14】
【0133】
別途、上記より得たアルカリ処理ゼラチン水溶液206.3質量部にイオン交換水107.3質量部を混合し、混合液(IV)を得た。
混合液(IV)に混合液(III)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて40℃の下で乳化分散した。得られたカプラー乳化物を減圧、加熱し、酢酸エチルを除去した後、固形分濃度が26.5質量%になるように濃度調節をおこなった。得られたカプラー乳化物の粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.21μmであった。
さらに上記カプラー乳化物100質量部に対してSBRラテックス(商品名:SN−307、48質量%溶液、住化エイビーエスラテックス(株)製)を26.5質量%に濃度調整したものを9質量部添加して均一に攪拌してカプラー乳化液(a)を得た。
【0134】
(イエロー感熱記録層用塗布液(a)の調製)
前記ジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(a)および前記カプラー乳化液(a)を、カプラー/ジアゾニウム塩の質量比が2/1になるように混合してイエロー感熱記録層用塗布液(a)を得た。
【0135】
<中間層用塗布液の調製>
アルカリ処理低イオンゼラチン(商品名:#750ゼラチン,新田ゼラチン(株)製)水溶液100.0質量部、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン(3.5質量%メタノール溶液、ダイトーケミックス(株)製)2.86質量部、水酸化カルシウム0.5質量部、およびイオン交換水521.643質量部を混合し、50℃にて溶解して中間層作製用ゼラチン水溶液を得た。
【0136】
上記より得た中間層作製用ゼラチン水溶液10.0質量部、4−〔(4−ノニルフェノキシ)トリオキシエチレン〕ブチルスルホン酸ナトリウム(三協化学(株)製、2.0質量%水溶液)0.05質量部、硼酸(4.0質量%水溶液)1.5質量部、ポリスチレンスルホン酸(一部水酸化カリウム中和型)水溶液(5質量%)0.19質量部、下記化合物(C)の4質量%水溶液3.42質量部、下記化合物(C’)の4質量%水溶液1.13質量部、およびイオン交換水0.67質量部を混合し、中間層用塗布液とした。
【0137】
【化15】
【0138】
<光透過率調整層用塗布液の調製>
(紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液の調製)
酢酸エチル71質量部に、紫外線吸収剤前駆体として[2−アリル−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチルフェニル]ベンゼンスルホナート14.5質量部、2,5−ジ−(t−オクチル)ハイドロキノン5.0質量部、燐酸トリクレジル1.9質量部、α−メチルスチレンダイマー(商品名:MSD−100,三井化学(株)製)5.7質量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(商品名:パイオニンA−41−C(70%メタノール溶液),竹本油脂(株)製)0.45質量部を加えて均一に溶解した。この混合液に、カプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物(商品名:タケネートD110N(75質量%酢酸エチル溶液),三井武田ケミカル(株)製)54.7質量部を添加して均一に攪拌し、紫外線吸収剤前駆体混合液を得た。
【0139】
別途、イタコン酸変性ポリビニルアルコール(商品名:KL−318,(株)クラレ製)52質量部に、30質量%燐酸水溶液8.9質量部、およびイオン交換水532.6質量部を混合し、紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液用PVA水溶液を調製した。
得られた紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液用PVA水溶液516.06質量部に上記の紫外線吸収剤前駆体混合液を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて20℃の下で乳化分散した。得られた乳化液にイオン交換水254.1質量部を加え均一化した後、40℃下で攪拌しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトMB−3(オルガノ(株)製)94.3質量部を加え、更に1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が13.5%になるように濃度調節した。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.23±0.05μmであった。このカプセル液859.1質量部にカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックス(商品名:SN−307,(48質量%水溶液),住友ノーガタック(株)製)2.416質量部、およびイオン交換水39.5質量部を混合し、紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液を得た。
【0140】
(光透過率調整層用塗布液の調製)
前記紫外線吸収剤前駆体マイクロカプセル液1000質量部、フッ素系界面活性剤(商品名:メガファックF−120,大日本インキ化学工業(株)製)(5質量%水溶液)5.2質量部、4質量%水酸化ナトリウム水溶液7.75質量部、および(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム(三協化学(株)製:2.0質量%水溶液)73.39質量部を混合し、光透過率調整層用塗布液を得た。
【0141】
<保護層用塗布液の調製>
(保護層用ポリビニルアルコール溶液の調製)
ビニルアルコール−アルキルビニルエーテル共重合物(商品名:EP−130,電気化学工業(株)製)160質量部、アルキルスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルとの混合液(商品名:ネオスコアCM−57(54質量%水溶液)、東邦化学工業(株)製)8.74質量部、およびイオン交換水3832質量部を混合し、90℃のもとで1時間溶解し均一な保護層用ポリビニルアルコール溶液を得た。
【0142】
(保護層用顔料分散液の調製)
硫酸バリウム(商品名:BF−21F,硫酸バリウム含有量93%以上,堺化学工業(株)製)8質量部に、陰イオン性特殊ポリカルボン酸型高分子活性剤(商品名:ポイズ532A(40質量%水溶液),花王(株)製)0.2質量部、およびイオン交換水11.8質量部を混合し、ダイノミルにて分散した。この分散液は粒径測定(LA−910,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.15μm以下であった。
得られた分散液45.6質量部に対し、コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスO(20質量%水分散液、日産化学(株)製)8.1質量部を添加して目的の保護層用顔料分散液を得た。
【0143】
(保護層用マット剤分散液の調製)
小麦澱粉(商品名:小麦澱粉S,新進食料工業(株)製)220質量部に、1,2−ベンズイソチアゾリン−3(2H)−オンの水分散物(商品名:PROXEL B.D,I.C.I(株)製)3.81質量部、およびイオン交換水1976.19質量部を混合し、均一に分散し、保護層用マット剤分散液を得た。
【0144】
(保護層用塗布ブレンド液の調製)
前記保護層用ポリビニルアルコール溶液1000質量部に、フッ素系界面活性剤(商品名:メガファックF−120,大日本インキ化学工業(株)製)(5質量%水溶液)40質量部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウム(三協化学(株)製;2.0質量%水溶液)50質量部、前記保護層用顔料分散液49.87質量部、前記保護層用マット剤分散液16.65質量部、およびステアリン酸亜鉛分散液(商品名:ハイドリンF115,20.5質量%水溶液,中京油脂(株)製)48.7部を均一に混合し保護層用塗布ブレンド液を得た。
【0145】
<下塗り層つき支持体の作製>
(下塗り層用塗布液の調製)
酵素分解ゼラチン(平均分子量:10000、PAGI法粘度:1.5mPa・s(15mP)、PAGI法ゼリー強度:20g)40質量部をイオン交換水60質量部に加えて40℃で攪拌溶解し、下塗り層用ゼラチン水溶液を調製した。別途、水膨潤性の合成雲母(アスペクト比:1000、商品名:ソマシフME100,コープケミカル社製)8質量部と水92質量部とを混合した後、ビスコミルで湿式分散し、体積平均粒径が2.0μmの雲母分散液を得た。この雲母分散液に雲母濃度が5質量%となるように水を加え、均一に混合し、所望の雲母分散液を調製した。
【0146】
次いで、40℃の40質量%の上記下塗り層用ゼラチン水溶液100質量部に、水120質量部およびメタノール556質量部を加え、十分攪拌混合した後、5質量%上記雲母分散液208質量部を加えて、十分に攪拌混合し、1.66質量%ポリエチレンオキサイド系界面活性剤9.8質量部を加えた。そして液温を35℃〜40℃に保ち、エポキシ化合物のゼラチン硬膜剤7.3質量部を加えて下塗り層用塗布液(5.7質量%)を調製した。
【0147】
(下塗り層つき支持体の作製)
LBPS50質量部およびLBPK50質量部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5質量部、アニオンポリアクリルアミド1.0質量部、硫酸アルミニウム1.0質量部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1質量部、カチオンポリアクリルアミド0.5質量部をいずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により坪量114g/m2の原紙を抄造し、キャレンダー処理によって厚み100μmに調整した。
【0148】
前記原紙の両面にコロナ放電処理を行った後、溶融押出機を用いてポリエチレンを樹脂厚36μmとなるようにコーティングしマット面からなる樹脂層を形成した(この面を「ウラ面」と称する)。次に、この樹脂層を形成したウラ面とは反対側の面に溶融押出機を用いて、アナターゼ型二酸化チタン10質量%および微量の群青を含有したポリエチレンを樹脂厚50μmになるようにコーティングし、光沢面からなる樹脂層を形成した(この面を「オモテ面」と称する)。ウラ面のポリエチレン樹脂被覆面にコロナ放電処理した後、帯電防止剤として酸化アルミニウム(商品名:アルミナゾル100、日産化学工業(株)製)/二酸化珪素(商品名:スノーテックスO、日産化学工業(株)製)=1/2(質量比)を水に分散させて乾燥後の質量で0.2g/m2となるように塗布した。次に、オモテ面のポリエチレン樹脂被覆面にコロナ放電処理した後、上記より得た下塗り層用塗布液を、含有する雲母の塗布量が0.26g/m2となるように塗布し、下塗り層つき支持体を得た。
【0149】
<各塗布液の塗布>
上記より得た支持体の下塗り層表面に、該表面側から順に、前記中間層用塗布液、前記イエロー感熱記録層用塗布液(a)、前記光透過率調整層用塗布液、前記保護層用塗布液を4層同時に連続塗布し、30℃相対湿度30%、および40℃相対湿度30%の条件で連続に乾燥して本発明の感熱記録材料(T−1)を得た。
【0150】
このとき、イエロー感熱記録層用塗布液(a)の塗布量は、液中に含まれるジアゾニウム塩(A)の塗布量が固形分塗布量で0.076g/m2となるように塗布を行なった。また、中間層用塗布液は、固形分塗布量が2.39g/m2となるように、光透過率調整層用塗布液は、固形分塗布量が2.35g/m2となるように、保護層は、固形分塗布量が1.39g/m2となるように各々塗布を行なった。
【0151】
(実施例2)
実施例1において、「ジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(a)の調製」に用いたモノイソプロピルビフェニル10.6質量部を、m−ターフェニル(m.p.=86℃;一般式(2)で表される化合物)8.5部およびフタル酸ジフェニル2.1部に代えた(m−ターフェニルの、ジアゾニウム塩を除くマイクロカプセル中の不揮発成分の全質量に占める量は80質量%である。)こと以外、実施例1と同様にして、本発明の感熱記録材料(T−2)を得た。
【0152】
(実施例3)
実施例1において、「ジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(a)の調製」に用いたジアゾニウム塩(A)を下記ジアゾニウム塩(B)に代えたこと以外、実施例1と同様にして、本発明の感熱記録材料(T−3)を得た。
【0153】
【化16】
【0154】
(比較例1)
実施例1において、「ジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(a)の調製」に用いたモノイソプロピルビフェニル10.6質量部を、フタル酸ジフェニル9.8質量部に代えたこと以外、実施例1と同様にして、比較の感熱記録材料(R−1)を得た。
【0155】
(比較例2)
実施例1において、「ジアゾニウム塩内包マイクロカプセル液(a)の調製」に用いたモノイソプロピルビフェニル10.6質量部を、モノイソプロピルビフェニル5.0質量部およびフタル酸ジイソノニル5.6質量部に代えたこと以外、実施例1と同様にして、比較の感熱記録材料(R−2)を得た。
【0156】
(評価)
上記のようにして得た、本発明の感熱記録材料(T−1)〜(T−3)、及び比較の感熱記録材料(R−1)〜(R−2)について下記評価を行なった。評価、測定の結果を下記表1に示す。
(1) 熱記録(画像形成)
京セラ(株)製のサーマルヘッド(KST型)を用いて、記録エネルギー23mJ/mm2になるようにサーマルヘッドに対する印加電圧、パルス幅を決めて各感熱記録材料に熱印画し、イエローの画像を形成した。そして、印画後の各感熱記録材料を発光中心波長365nm、出力40Wの紫外線ランプ下で25秒間照射した。
【0157】
(2) 発色濃度
上記「(1)熱記録」にて記録された各感熱記録材料の、イエローに発色した画像部の最大濃度と非画像部(未印画部分)の地肌濃度を、X−rite 310TR(日本平板機材(株)製)を用いて測定した。
【0158】
(3) 生保存性(熱安定性)
記録前の各感熱記録材料を60℃/30%RHの環境条件下にて72時間強制保存(強制試験)した。その後、上記(1)及び(2)と同様にして、熱記録と発色濃度(最大濃度、地肌濃度)の測定を行なった。なお、画像部においては、強制試験の前(D1)と後(D2)との最大濃度の濃度比(D2/D1)を求めた。
【0159】
【表1】
【0160】
上記表1の結果に示すように、比較例1との比較において、一般式(1)で表されるジアゾニウム塩を一般式(2)で表される不揮発性オイル成分と共に含む本発明の感熱記録材料(1)〜(3)では、地肌濃度が低く白色性に優れており、高温下で保存された場合の地肌部の濃度上昇、および画像部における発色濃度の低下も抑えられ、熱安定性に特に優れていた。また、比較例2との比較において、本発明の感熱記録材料(1)〜(3)のように、一般式(2)で表される化合物を、ジアゾニウム塩を除くマイクロカプセル中の不揮発成分の全質量の70質量%以上含有することにより顕著な効果を得ることができた。
【0161】
【発明の効果】
本発明によれば、熱安定性が高く生保存性に優れると共に、非画像部(地肌部)の白色性に優れた感熱記録材料を提供することができる。
Claims (3)
- マイクロカプセル中に不揮発性オイル成分と共に内包されたジアゾニウム塩と、該ジアゾニウム塩と反応して発色させるカプラーとを含む感熱記録層を有する感熱記録材料において、
前記ジアゾニウム塩が下記一般式(1)で表される化合物であり、前記不揮発性オイル成分の少なくとも一種が下記一般式(2)で表される化合物であり、
かつ前記マイクロカプセル中に占める該一般式(2)で表される化合物の含有量が、ジアゾニウム塩を除くマイクロカプセル中の不揮発成分の全質量の70質量%以上であることを特徴とする感熱記録材料。
- 前記一般式(2)で表される化合物の融点が110℃以下である請求項1に記載の感熱記録材料。
- 前記マイクロカプセルのカプセル壁がポリウレタン及び/又はポリウレアを構成成分に含む請求項1又は2に記載の感熱記録材料。
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