JP2004144235A - 締結具 - Google Patents

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Kenji Mochizuki
望月 健児
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Abstract

【課題】締結ボルトの頭部と締付体の座面との間における変位荷重が緩和される構造の締結具を実現する。
【解決手段】締付体10のボルト貫通孔142入口をテーパ溝143とし、このボルト貫通孔142に通す締結ボルト30の頭部32底面を該テーパ溝143に没入されるテーパ面321する。締結ボルト30を締付けるに従って締付体10のすり割溝12の対向する端面12a,12bが傾斜し切欠140の座面141が傾斜してきても、締結ボルト30の頭部32底面がボルト貫通孔142入口とテーパ同士の面当りとなってボルト締付け時の変位荷重がテーパ溝143で受け止められ、この座面141に作用する変位荷重を大幅に緩和できる。従って、すり割溝12の端面12aの隆起が防止され、軸Jへの締結力を十分確保できる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸継手やカラーとして使用される締結具に関し、軸の外周に嵌合させる締付体を締結ボルトにより周方向に締付ける形式のものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記締結具としては、例えば、図7(a)に示すように、中心部に軸を挿通する軸孔部711を設けると共に軸方向にすり割溝712を設け、且つ該すり割溝712の対向する一端部714に切欠7140および該切欠7140の座面7141にボルト貫通孔7142を設けると共に他端部715にネジ孔7151を設けた締付体710と、上記締付体710における一端部714のボルト貫通孔7142を通して他端部715のネジ孔7151に螺合させて該締付体710を周方向に締付ける締結ボルト730とを備えるものがある(特許文献1の図1を参照)。
【0003】
そして、上記締結ボルト730を締付けて行くと、締結ボルト730の頭部732底面が締付体710の切欠7140における座面7141を押圧して上記すり割溝712の間隔を狭め、締付体710の軸孔部711を縮径させ、このときの面圧によって締付体710が軸に締付け固定される。
【0004】
このような締結具は、例えば、板バネ中間体によって左右に連結させて各々の締結具に軸を固定させることにより軸継手として使用される他に(特許文献2の図1を参照)、軸の所定位置に固定させてセンサーなどを取付けるカラーとしても使用される。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−295851号公報
【特許文献2】
特開平11−125265号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記締結具は、締結ボルト730を締付けるに従って締付体710のすり割溝712の対向する端面712a,712bが傾斜し、上記切欠7140の座面7141が傾斜されてくる。なお、すり割溝を2箇所に設けて締付体が2分割されて2本の締結ボルトを用いて締付ける場合も各々の締結ボルトを均等に締付けることは熟練者でない限り困難であり、同様にすり割溝の対向する端面が傾斜される。
【0007】
すると、締結ボルト730の頭部732底面と締付体710の上記座面7141とが平面となって対接しているため、締結ボルト730の頭部732底面の角部が上記座面7141と点当りとなってこの座面7141に大きな変位荷重が加わる。この場合、特に、上記座面7141を形成する締付体710の一端部714の肉厚が薄い場合やアルミ等の軟質素材で締付体710を形成する場合等には、図7(b)に示すように、この座面7141が陥没してしまい(図7(b)中の破線K)、その結果、すり割溝712の端面712aが隆起し(図7(b)中の破線L)、そのため、締結ボルト730の締付けを阻害し軸への締結を不十分にする不具合が起こっていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、締結ボルトの頭部と締付体の座面との間における変位荷重が緩和される構造の締結具を実現する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明による締結具は、
中心部に軸を挿通する軸孔部を設けると共に軸方向にすり割溝を設け、且つ該すり割溝の対向する一端部に切欠および該切欠の座面にボルト貫通孔を設けると共に他端部にネジ孔を設けた締付体と、
上記締付体における一端部のボルト貫通孔を通して他端部のネジ孔に螺合させて該締付体を周方向に締付ける締結ボルトとを備え、
上記ボルト貫通孔入口はテーパ溝とし、上記締結ボルトの頭部底面は該テーパ溝に没入されるテーパ面としたことを特徴とする。
【0009】
これによると、締付体のすり割溝における一端部のボルト貫通孔に締結ボルトを通して他端部のネジ孔に螺合させると、上記締結ボルトの頭部底面のテーパ面が上記締付体のボルト貫通孔入口のテーパ溝に没入される。従って、締結ボルトを締付けるに従って締付体のすり割溝の対向する端面が傾斜し切欠の座面が傾斜されてきても、締結ボルトの頭部底面とボルト貫通孔入口とがテーパ同士の面当りとなっているから、締付け時の変位荷重が上記テーパ溝で受け止められ、この座面に作用する変位荷重を大幅に緩和することができる。
【0010】
また、上記座面に対する変位荷重が大幅に緩和される結果、この座面を形成する締付体の一端部の強度が向上するので、この一端部を薄肉化することができる。
【0011】
また、締結ボルトの頭部底面のテーパ面がボルト貫通孔入口のテーパ溝に没入されるので、締結ボルトの頭部を締付体の一端部に深く潜り込ませることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
なお、以下の実施の形態では、本発明の締結具1を用いた軸継手を例に挙げて説明する。
【0013】
[全体構成]
この軸継手は、図1に示すように、左右の締結具1と、これら締結具1を連結する板バネ中間体2とを備える。この軸継手は、例えば、左右の締結具1の各々に回転出力軸と回転入力軸の各軸Jが締結されるトルク伝達用として使用される。
【0014】
[締結具1]
締結具1は、図2に示すように、大略円筒形のブロック体にて形成される締付体10と、この締付体10を周方向に締付ける締結ボルト30とを備える。
【0015】
[締付体10]
締付体10は、中心部に軸Jを嵌入するための軸孔部1110が貫通形成され、外周面から軸孔部11にかけて軸方向にすり割溝12を設けたC字型に形成されている。この締結体は、鉄製、アルミ製等の切削、鍛造、鋳造等で製作される。なお、軸孔部11のすり割溝12と対向する個所には、この締付体10の縮径を円滑に行わせるための補助溝13が軸方向に設けられている。
【0016】
上記すり割溝12の対向する一端部14には、切欠140が設けられると共にこの切欠140の座面141にボルト貫通孔142が設けられ、また、その他端部15には、締結ボルト30を螺合させるネジ孔151が設けられている。そして、上記ボルト貫通孔142入口は、テーパ溝143が設けられている。
【0017】
また、上記締付体10は、外周面の180度対向位置に凹み部16が設けられており、これら凹み部16に後述の板バネ中間体2における一対の延長片22がピンPにより固定される。
【0018】
[締結ボルト30]
締結ボルト30は、図1、図2に示すように、ネジ溝が設けられたボルト本体31と、円形のボルト頭部32とを有し、上記締付体10における一端部14のボルト貫通孔142を通して他端部15のネジ孔151に螺合させてある。この締結ボルト30を上記締付体10の周方向に締付けることによって締付体10の軸孔部11が縮径される。
上記締結ボルト30のボルト頭部32は、上面部に六角レンチを嵌め込むための六角孔が設けられ、側面部にはローレット加工が施されている。ただし、ボルト頭部32は、円形に限らず、六角状に加工されたものでもよい。
【0019】
また、このボルト頭部32底面は、上記締付体10のボルト貫通孔142入口に設けたテーパ溝143に略合致して没入されるようにテーパ面321となっている。このようにボルト頭部32底面をテーパ面321とするのが、この締結ボルト30の特徴である。
なお、この締結ボルト30としては、例えば、既存のキャップボルト(例えば、M6サイズ[頭部径がφ10])におけるボルト頭部32の下半分程度をテーパ加工し上記テーパ面321を形成することができ、これによって、同サイズの皿ビスよりもボルト頭部32がコンパクトに形成される。
【0020】
[板バネ中間体2]
板バネ中間体2は、図3に示すように、中心孔20が設けられて軸線に略直角な平面となる正八角形の板状部21と、この板状部21の対向する一対の辺から軸方向に延びる一対の第1延長片22Aと、この第1延長片22Aから90度ずれた板状部の対向する一対の辺から前記第1延長片22Aの反対側に延びる一対の第2延長片22Bとを備える。
また、前記第1延長片22Aおよび前記第2延長片22Bの先端部には、前記締付体10の凹み部16に固定する際、ピンPを圧入等するためのピン貫通孔23が2つずつ設けられている。
そして、前記第1延長片22Aは上記一方の締付体10の凹み部16に固定され、前記第2延長片22Bは上記他方の締付体10の凹み部16に固定され、これによって、左右に締結具1が連結される。この板バネ中間体2は、ステンレス板、鉄板等の金属板のプレス加工で製作される。
【0021】
[使用例]
次に、上記軸継手の使用例を説明する。2本の軸Jを連結させるには、まず、各締結具1の締結ボルト30を緩めた状態で、一方の締結具1における締付体10の軸孔部11に片方の軸Jを挿入した後、締結ボルト30を締付体10の周方向に締付けて行く。すると、締結ボルト30の頭部32底面が締付体10のボルト貫通孔142の座面141を押圧して上記すり割溝12の間隔を狭め、締付体10の軸孔部11が縮径される。このとき、すり割溝12と対向する個所に設けた補助溝13の間隔も狭められることによって軸孔部11の縮径が円滑に行われる。そして、この補助溝13の閉塞端13a(図2を参照)が支点となって軸孔部11が縮径されるので、すり割溝12の対向する端面12a,12bの傾斜を緩やかにすることができる。この軸孔部11の縮径によって、締付体10の軸孔部11に軸Jが強固に固定される。もう一方の締結具1にも同様にしてもう片方の軸Jを固定させると、2本の軸Jが連結される。
【0022】
従って、以上のような軸継手によれば、軸Jを固定させる際、締結ボルト30を締付けるに従って締付体10のすり割溝12の対向する端面12a,12bが傾斜し、切欠140の座面141が傾斜してくるが、テーパ面321となった締結ボルト30の頭部32底面がボルト貫通孔142入口のテーパ溝143に没入されるので、このテーパ溝143においてテーパ同士の面当りとなってボルト締付け時の変位荷重が受け止められ、これによって、切欠140の座面141に作用する変位荷重が大幅に緩和される。
【0023】
このことは、上記テーパ溝143においてボルト頭部32の底面のテーパ面とでテーパ同士の面当りとなってボルト締付け時の変位荷重を受け止めることで、この座面141を形成する締付体10の一端部14の強度が向上されることを意味する。
【0024】
これによって、締付体10の一端部14におけるすり割溝12の端面の隆起(図7(b)中の破線Lで示す。)が防止され、従来の如く、すり割溝12の端面12aの隆起によって軸Jの締結を阻害することなく、軸Jへの締結力を十分に確保することができる。
【0025】
また、締結ボルト30の頭部32底面のテーパ面321をボルト貫通孔142入口のテーパ溝143に没入させることによって、締結ボルト30を締結体の一端部14に深く潜り込ませることができる。従って、締結ボルト30の締付け後の状態においては締結ボルト30の頭部32が締付体10の外周面から突出するようなことも防止できる。
【0026】
しかも、上述したように、切欠140の座面141に対する変位荷重が大幅に緩和される結果、この座面141を形成する締付体10の一端部14の強度が向上するので、この一端部14の肉厚(座面141とすり割溝12の端面12aとの間の厚さ)を比較的薄く形成可能となり、これによって、締結ボルト30の頭部32が締付体10の外周面から突出するようなことが一層確実に防止できる。
【0027】
[その他]
なお、本発明の締結具は、上記実施の形態のものに限定されない。
例えば、上記実施の形態では、2つの締結具1を板バネ中間体2で連結し軸継手として用いたが、上記締結具1のみを軸Jの所定個所に固定させ、センサー等の取付けに利用するカラーとして用いてもよい。
【0028】
また、図4に示す締結具1Aのように、締付体10のすり割溝12が180度位置に2箇所設けられ、この締付体10が半円状の分割片10a,10bに2分割されるようにしたものでもよい。この場合、締結ボルト30の締付けを一方側から行えるように、一方側の分割片10aには上記切欠140、上記ボルト貫通孔142および上記テーパ溝143が2箇所設けられ、他方側の分割片10bには上記ネジ孔151が上記ボルト貫通孔142と整合させて2箇所設けられるようにしている。ただし、これに限らず、図5に示す締結具1Bのように、分割片10Cの一端部14に上記切欠140、上記ボルト貫通孔142および上記テーパ溝143を設けると共に他端部15に上記ネジ孔151を設け、この分割片10Cを一対に組合せたものでもよい。図5のものでは、分割片が同一構造であるので、製造上有利である。
【0029】
また、図6に示す軸継手のように、中心孔20aを設けたブロック中間体2aに一部を一体化させて左右に上記の締結具1(1A,1B)を配置させた構成としてもよい。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明の締結具によれば、上記締付体のボルト貫通孔入口をテーパ溝とし、且つ上記締結ボルトの頭部底面を上記ボルト貫通孔入口のテーパ溝に没入させるテーパ面としたので、締付体の切欠の座面に作用するボルト締結締付け時の変位荷重を大幅に緩和することができる。従って、締付体のボルト貫通孔を設ける一端部の強度が向上されてすり割溝の端面の隆起が防止され、その結果、軸への締結力を十分に確保することができる。
【0031】
また、締結ボルトを締付体の一端部に深く締付けることができ、また、この一端部の薄肉化も可能となり、その結果、締結ボルトの締付け後の状態においては締結ボルトの頭部が締付体の外周面から突出するようなことも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による軸継手を示す側面図である。
【図2】締結具の構成を示す断面図である。
【図3】板バネ中間体の構成を示す斜視図である。
【図4】締結具の他の構成例を示す断面図である。
【図5】締結具のさらに他の構成例を示す断面図である。
【図6】軸継手の他の例を示す側面図である。
【図7】従来の締結具の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 締結具
10 締付体
11 軸孔部
12 すり割溝
12a,12b すり割溝の対向する端面
13 補助溝
14 一端部
15 他端部
16 凹み部
2 板バネ中間体
22A,22B 延長片
140 切欠
141 座面
142 ボルト貫通孔
143 テーパ溝
30 締結ボルト
31 ボルト本体
32 ボルト頭部
321 テーパ面
P ピン

Claims (1)

  1. 中心部に軸を挿通する軸孔部を設けると共に軸方向にすり割溝を設け、且つ該すり割溝の対向する一端部に切欠および該切欠の座面にボルト貫通孔を設けると共に他端部にネジ孔を設けた締付体と、
    上記締付体における一端部のボルト貫通孔を通して他端部のネジ孔に螺合させて該締付体を周方向に締付ける締結ボルトとを備え、
    上記ボルト貫通孔入口はテーパ溝とし、上記締結ボルトの頭部底面は該テーパ溝に没入されるテーパ面としたことを特徴とする締結具。
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