JP2004143710A - 杭基礎構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基礎フーチング2の下部に取付けられた上支承部材5と基礎杭1の頭部1aに取付けられた下支承部材4とを、両部材4,5の上下対向面41a,51a間に密閉充填させた可撓性部材6を介して、相対回転自在にピン接合する。下支承部材4は上方に開口する円筒状のシリンダ部41を有し、上支承部材5は、シリンダ部41に回転自在に嵌合されたピストン部51を有する。ピストン部51の下端には、両部41,51との上下対向面41a,51a間に密閉空間3aを形成すべく、両部41,51の対向周面間をシールするシール部材52が設けられている。可撓性部材6は円板形状をなすゴム体であり、密閉空間3aに密閉充填されている。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばビルや橋梁等のような建築・土木関係の構造物に固定されて地中地盤に埋め込まれたコンクリート製フーチング(構造物の基礎)を、基礎杭(硬盤層などの深い層に伝達して支持させる先端支持杭や杭外周面と地盤土砂との間の摩擦力で支持させる摩擦杭)の上端部たる杭頭部に支承させてなる杭基礎構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の杭基礎構造にあっては、一般に、図13に示す如く、地中地盤に構造単位としての基礎杭101を打設し、上部構造体側の柱B及び基礎梁Cに固定されたコンクリート製の基礎フーチング102と基礎杭101の頭部(杭頭部)101aとを、複数の杭鉄筋103…を両者101,102に埋設させることにより、剛接合しているのが普通である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、かかる剛接合構造では、地震等による過大な力(以下「地震力」という)が作用した場合、両者の境界部となる杭頭部接合部に応力が集中し、大地震時に杭頭部101a及びフーチング102の下部が損傷、破損し易く、それが原因で上部構造物の倒壊など被害が拡大する可能性がある。また、剛接合であるため、杭頭部接合部に作用する応力が大きくなるため、鉄筋103…の埋設数を必要以上に多くしたり、杭101やフーチング102の横断面形状(水平断面形状)を大きくしたりする必要がある。その結果、施工が煩雑になるばかりでなく、配筋工事の増大によって施工コストが嵩む。また、杭頭部接合部に損傷、破損が生じた際にはその箇所を復旧する必要があるが、杭頭部接合部は、地中地盤に構造単位としてコンクリート打設された杭101に支持された下部構造であるために、復旧作業自体の作業性が非常に悪いとともに莫大な復旧費用を要する。
【0004】
本発明は、このような問題を生じることなく、優れた耐震性能及び免震性能を発揮しうる杭基礎構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成すべく、基礎フーチングの下部に取付けられた上支承部材と基礎杭の頭部に取付けられた下支承部材とを、両支承部材の上下対向面間に密閉充填させた非圧縮性の可撓性部材を介して、相対回転自在にピン接合させていることを特徴とする杭基礎構造を提案する。
【0006】
かかる杭基礎構造にあって、可撓性部材としては、非圧縮性材であるゴム(天然ゴム,合成ゴム等)で円板状等の中実形状体に構成されたものを使用することが好ましい。好ましい実施の形態にあっては、下支承部材が上方に開口する円筒状のシリンダ部を有するものであり、上支承部材が、当該シリンダ部にその軸線に対して所定範囲で回転自在に嵌合された横断面が円形をなすピストン部を有するものであり、ピストン部の下端には、シリンダ部とピストン部との上下対向面間に密閉空間を形成すべく、ピストン部の下端外周面とこれに対向するシリンダ部の内周面との間をシールするシール部材が設けられており、当該密閉空間に円板形状をなす可撓性部材が密閉充填される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図12に基づいて具体的に説明する。
【0008】
本発明の杭基礎構造は、図1に示す如く、基礎杭1,10の頭部(杭頭部)1a,10aとその上位に配置された基礎フーチング2とを、ピン接合手段3により接合したものであり、以下に種々の実施の形態について説明する。なお、基礎フーチング2は、上部構造体である建物Aから下方へ一体に延設した柱B及び基礎梁Cに固定させて地中に埋め込み設置されたコンクリート製のものである。
【0009】
図2〜図5は第1の実施の形態を示したもので、この実施の形態における本発明に係る杭基礎構造(以下「第1杭基礎構造」という)は、中空状の基礎杭1と基礎フーチング2とを次のようなピン接合手段3により接合してなる。なお、基礎杭1は、地中地盤に打設された遠心力鉄筋コンクリート杭,プレテンション方式遠心力高強度プレストレスコンクリート杭(PHC杭),SC杭,ST杭等の中空断面構造(円筒構造)をなす既成杭であり、杭頭部1aには、図2に示す如く、環状の金属製端板1bが固着されている。
【0010】
ピン接合手段3は、図2に示す如く、杭頭部1aに取付けた下支承部材4と基礎フーチング2の下部に取付けた上支承部材5とを、両支承部材4,5の上下対向面41a,51a間に密閉充填された非圧縮性の可撓性部材6を介して、鉛直軸線に対して所定範囲で相対回転可能に接合させてなる。
【0011】
すなわち、下支承部材4は、図2及び図3に示す如く、上方に開口する有底筒状のシリンダ部41と、その下端外周部から水平に突出する環状鍔部42と、環状鍔部42に垂設した筒状の位置決め部43とからなる金属製(この例では鋼製)のものであり、杭頭部1aに補強支持板7を介して取付けられている。
【0012】
シリンダ部41及び環状鍔部42は、図3に示す如く、金属円筒4aの下端部にこれより大径の金属円板4bを同心状に溶着4cすることにより、一体的に構成されている。すなわち、シリンダ部41は、鋼製円筒(鋼管)4aとその下端部を閉塞する円形鋼板4bの中心部分とで構成されており、環状鍔部42は、鋼管4aの下端外周部から食み出す円形鋼板4bの外周側部分で構成されている。また、位置決め部43は、円形鋼板4bの外周縁部(環状鍔部42の外周縁部)に溶着した鋼製円筒(鋼管)で構成されている。
【0013】
補強支持板7は、図2に示す如く、基礎杭1より若干大径とした円形状をなし且つ杭1の中空部に対応する中央部分7aに支承荷重が作用したときにも撓みを生じない強度を有するに充分な厚みH2をなす金属製円板(この例では鋼板)であり、外周縁部に垂設(溶接)した円筒状の金属製連結体(この例では鋼管)71を、杭1の外周部にその上方から嵌合(外嵌)させることにより、杭頭部1a(より正確には端板1b)上に設置固定されている。なお、連結体71の長さ(杭頭部1aへの嵌合長さ)H1は、少なくとも、地震力等による引抜力が補強支持板7に作用した場合にも連結体71と杭頭部1aとの嵌合形態が解除されない(連結体71が杭頭部1aから外れない)程度に設定されている。また、連結体71の断面形状は、杭頭部1aの断面形状に相似するものであるが、杭頭部1aへの嵌合を容易に行いうる範囲で可及的に小さくしておくこと、つまり両者1a,71間の隙間が可及的に小さくなるように設定しておくことが好ましい。
【0014】
而して、下支承部材4は、図2に示す如く、補強支持板7上に環状鍔部42をボルト8…により固着することにより、補強支持板7を介して杭頭部1aに取付けられている。このとき、下支承部材4の位置決めは、位置決め部43を補強支持板7に嵌合させることにより行われる。なお、補強支持板7の厚みH2は、基礎杭1の中空部1cに対応する中央部分7aがこれにピン接合手段3を介して作用する支承荷重によって撓みを生じない程度の充分な強度を有するように、設定されている。したがって、下支承部材4は、これが取付けられる基礎杭1が中空の既成杭であっても、上記支承荷重により杭中空部1cに対応する部分(杭1による反力を受けない部分)が撓んでピン接合機能が損なわれるような心配はない。
【0015】
上支承部材5は、図2に示す如く、上方開放状の有底筒体をなす金属製のピストン部51と、ピストン部51の下端部に設けられた環状シール部材52とからなる。ピストン部51は、図3に示す如く、鋼製円筒(鋼管)5aの下端部にこれより若干大径の円形鋼板5bを同心状に溶着5cすることにより構成されており、その下端側部分が下支承部材4のシリンダ部41に上方から嵌入されている。なお、ピストン部51の外径は、これとシリンダ部41との対向周面41b,51b間に両部41,51の相対回転変位(地震力を吸収すべき相対回転変位)を許容するために必要且つ充分な環状隙間3bを形成すべく、シリンダ部41の内径より所定量小さく設定されている。また、ピストン部51のシリンダ部41への嵌合長さH3(図3参照)は、地震力等による引抜力が両部41,51の嵌合部に作用した場合にも両部41,51の嵌合形態が解除されない(ピストン部51がシリンダ部41から引き抜かれない)程度に設定されている。
【0016】
環状シール部材52は、充填材入りPTFE等からなる合成樹脂製のもので、ピストン部51の下端外周部つまり円形鋼板5bの外周部に係合保持されていて、シリンダ部41の底面つまり円形鋼板4bの上面41aとピストン部51の底面つまり円形鋼板5bの下面51aとの間に密閉空間3aを形成すべく、ピストン部51の下端外周面(円形鋼板5bの外周面)とこれに対向するシリンダ部41の内周面(鋼管4aの内周面)との間をシールするものである。
【0017】
而して、上支承部材5は、基礎フーチング2のコンクリート打設時において、図1に示す如く、フーチング2の一部2aをピストン部51内に充填させることにより、フーチング2の下端部に取付けられる。なお、フーチング2の下端部とシリンダ部41の上端面との鉛直方向距離は、地震による両支承部材4,5の相対回転を妨げない範囲で適宜に設定されるが、フーチング2は、ピストン部51内への充填部分2aがフーチング下端部2bから下方へ突出すると共にピストン部51の上端部(周壁5aの上端部)がフーチング下端部2bに没入する形態となるように、構築される。
【0018】
可撓性部材6は、図2及び図3に示す如く、外径がシリンダ部41の内径に一致する厚さ一定の弾性円板(中実円板)であり、前記密閉空間3aに密に充填されている。弾性円板6の構成材としては、圧縮復元特性に優れた天然ゴム,合成ゴム等のゴム弾性材又はゴム基材で構成されるエラストマー材が使用されるが、この例では耐候性に優れた合成ゴムを使用している。
【0019】
ところで、シリンダ部41とこれに嵌合されたピストン部51との対向周面41b,51b間に形成される環状隙間3bは、両部41,51の相対回転変位を許容するために不可避なものであるが、この環状隙間3bには、当該杭基礎構造の構築時又は上下支承部材4,5の相対変位時において周辺の土砂等が侵入,堆積する虞れがある。そして、環状隙間3bに土砂等が侵入,堆積すると、両支承部材4,5の相対回転変位が円滑に行われなくなり、ピン接合手段3による免震,耐震機能が良好に発揮されない虞れがある。そこで、環状隙間3bの少なくとも上端部(開口部)に弾性材製の環状スクレーパ9を配置して、環状隙間3bへの土砂等の侵入,堆積を防止しうるように図っている。すなわち、環状隙間3bの上端部(入口部)は、図2及び図3に示す如く、両部41,51の対向周面41b,51bの一方に固着(接着剤等による)され且つ当該対向周面41b,51bに圧接する弾性材製の環状スクレーパ9により、密閉シールされている。この例では、環状スクレーパ9の外周部をシリンダ部41の内周面41bに接着剤により固着して、その内周部9aをピストン部51の外周面51bに圧接させてある。なお、スクレーパ9の構成材としては、両部41,51の相対変位に伴って弾性変形しうる弾性材であればよく、この例ではスポンジゴムが使用されている。
【0020】
以上のようにピン接合手段3により杭頭部1aとフーチング2とをピン接合した第1杭基礎構造にあっては、地震力が作用した場合、図4に示す如く、両支承部材4,5間に密閉充填された合成ゴム製円板6の弾性変形による杭頭部1aとフーチング2との全方向への相対回転変位により、地震力によるエネルギーが効果的に吸収緩和されることになる。したがって、地震力が作用したときの杭頭部1aとフーチング2との接合部への応力集中が著しく減少されるために、杭1及びフーチング2の断面を強度上の必要最低限に縮小し、かつ、配筋量も低減して施工の容易性及び低コスト化を図りながらも、過大な水平力が作用したときでも、杭頭部1a及びフーチング2の損傷、破損を防止して優れた耐震性能、免震性能を発揮させることが可能となる。
【0021】
また、シリンダ部41とこれに嵌合されたピストン部51との間に介在されている弾性部材6にはフーチング2を通じて上部構造体の重量が長期鉛直荷重として作用しており、さらに、地震力が作用した場合には、杭頭部1aとフーチング2との相対回転変位に伴い弾性部材6には強大な偏荷重が作用することになるが、弾性部材6が非圧縮性材製部材(合成ゴム製円板)であって両部41,51間に形成された密閉空間3aに密に充填されたものであることから、ピン接合部に作用する荷重をすべて弾性部材6で受け止めることになり、当該荷重に対しては一種の剛体として機能することになる。一方、フーチング2はコンクリート製のものであるから、このように剛体として機能する弾性部材6に比して脆弱であるが、当該荷重が直接作用するフーチング部分2aはピストン部51内に充填されていて、当該フーチング部分2aの横方向への変形がピストン部51の鋼製周壁(鋼管)5aで完全に阻止されているから、当該フーチング部分2aの強度(圧縮強度)は大幅に増大されることになる。したがって、これらの点から、杭頭部1aとフーチング2との相対回転変位に伴って作用する荷重に対して充分に対抗することができ、ピン接合部の強度,耐久性が大幅に向上する。その結果、耐震性能、免震性能を長期に亘って安定且つ良好に発揮させることができると共に、ピン接合構造の大幅な小型化を実現することができる。すなわち、ピン接合部の設置数低減と各ピン接合部の小型化とを共に実現することができる。
【0022】
また、基礎杭1が中空断面構造をなす既成杭である場合、下支承部材4を杭頭部1a上に設置すると、上下支承部材4,5における杭中空部1cに対応する部分が杭1からの反力(支持力)を受け得ないことから、ピン接合手段3の強度を確保するために下支承部材4(及び上支承部材5)を必要以上に大型化しておく必要がある(さもないと、支承荷重により杭中空部1cに対応する部分が撓んでピン接合機能が損なわれる)が、下支承部材4を前記した補強支持板7を介して杭頭部1a上に設置しておくことにより、このような問題を回避することができ、上記したこととも相俟って、ピン接合部の設置数低減と各ピン接合部の小型化とを共に実現することができる。
【0023】
しかも、補強支持板7を、これに設けた連結体71を杭頭部1aに嵌合させることにより、杭頭部1aに固定させているから、下支承部材4と補強支持板7とをボルト8…により連結させていることとも相俟って、ピン接合手段3の設置及び組立作業を、天候に左右される溶接作業を必要とすることなく、容易且つ効率良く行うことができる。すなわち、ピン接合手段3の設置,組立は、補強支持板7をクレーンにより吊支,下降させて、連結体71を介して杭頭部1aに嵌合固定する第1工程、下支承部材4をクレーンにより吊支,下降させて、杭頭部1aに固定された補強支持板7上に載置させる第2工程(下支承部材4の位置決めは位置決め部43の補強支持板7への嵌合により行う)、下支承部材4を補強支持板7にボルト8…により連結させる第3工程、及び上支承部材5をクレーンにより吊支,下降させて、上支承部材5のピストン部51を可撓性部材6が装填されている下支承部材4のシリンダ部41に嵌合させる第4工程によって行われるが、これらの工程は、第3工程を除いて、すべてクレーン作業のみによって行うことができ、しかも第3工程も熟練を要しない極めて容易な作業であるから、溶接作業を必要とする場合に比して、ピン接合手段3の設置,組立極めて容易且つ効率良く行うことができる。
【0024】
また、シリンダ部41とこれに嵌合されているピストン部51との対向周面41b,51b間に形成される環状隙間3bには、当該杭基礎構造の構築時又は上下支承部材4,5の相対変位時において周辺の土砂等が侵入,堆積する虞れがあるが、かかる土砂等の環状隙間3bへの侵入は当該環状隙間3bの開口部(上端部)に設けた環状スクレーパ9により確実に防止されて、両支承部材4,5の円滑な相対回転変位が確保され、ピン接合手段3による免震,耐震機能が良好に発揮される。すなわち、当該基礎構造の構築時及び上下支承部材4,5の相対変位時においては、図2〜図4に示す如く、環状隙間3bの開口部が、その形状変化に追従して弾性変形する環状スクレーパ9により、常に、閉塞(シール)されることから、環状隙間3bに土砂等が侵入することがない。
【0025】
ところで、上下支承部材4,5の相対回転時においては、シリンダ部41がピストン部51に対して、図5に例示する如く、地震発生により、常態位置(同図に実線で示す位置)から免震位置(同図に鎖線で示す位置)へと相対変位(免震動作)し、地震沈静後は免震位置から常態位置へと相対変位(復帰動作)することになり、ピストン部51の外周面51bの一部51c,51dが環状弾性部材(スクレーパ)9の内周部9aを相対的に通過して環状隙間3b内へと進入することになる。すなわち、免震動作においては、常態位置における環状弾性部材9から上方に食み出している外周面部分51cが、免震位置への変位に伴って、相対的に環状弾性部材9の内周部9aを通過して環状隙間3bへと変位する。また、復帰動作においては、免震位置における環状弾性部材9から上方に食み出している外周面部分51dが、常態位置への変位に伴って、相対的に環状弾性部材9の内周部9aを通過して環状隙間3bへと変位する。したがって、環状弾性部材9がシール機能のみを有するに過ぎないものである場合には、このような外周面部分51c,51dの環状隙間3bへの進入に伴って、当該外周面部分51c,51dに付着している土砂等が環状弾性部材9の内周部9aを通過して環状隙間3bに侵入する虞れがある。また、復帰動作において、一旦環状隙間3b内に進入した外周面部分51cが再び環状隙間3b外へと変位する際に、当該外周面部分51cに付着,残存している土砂等が環状弾性部材9の内周部9aによって環状隙間3b内に掻き落とされる虞れもある。
【0026】
しかし、環状弾性部材9が、前述した如く、内周部9aをピストン部51の外周面51bに圧接させたスクレーパに構成されていることから、当該内周部9aが両部41,51の相対変位に伴ってピストン部51の外周面51bを擦りつつ相対移動するスクレーパ機能を発揮することになり、前記外周面部分51c,51dが環状隙間3b内へと進行する際に、当該外周面部分51c,51dに付着している土砂等がスクレーパ9の内周部9aで掻き取られて環状隙間3bへと侵入することがない。すなわち、免震動作においては外周面部分51cが、また復帰動作においては外周面51dが、夫々、スクレーパ9の内周部であるスクレーパ部9aで擦られつつ環状隙間3b内に進行していくことになり、当該外周面部分51c,51dに付着している土砂等をスクレーパ部9aで掻き落とされた清浄面として環状隙間3b内へと進入することになる。したがって、シール機能及びスクレーパ機能を有するスクレーパ9を環状隙間3bの入口部に設けておくことにより、環状隙間3b内に土砂等が侵入,堆積することがなく、両部41,51の相対回転が円滑に行われ、免震,耐震機能が良好に発揮される。なお、スクレーパ機能を更に効果的に発揮させるためには、スクレーパ部(この例では、スクレーパ9の内周部)9aを、図6に示す如く、尖端形状に構成しておくことが好ましい。また、スクレーパ9は、環状隙間3bの入口部のみならず、当該隙間3b全面に充填されるような大きなものとしておいてもよい。
【0027】
ところで、本発明は、上記した実施の形態に限定されず、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において、適宜に改良,変更することができる。
【0028】
例えば、図7は第2の実施の形態を示すものであり、この実施の形態における本発明に係る杭基礎構造(以下「第2杭基礎構造」という)にあっては、補強支持板7の杭頭部1aへの固定手段及び下支承部材4との位置決め手段を工夫することによって、補強支持板7を含めたピン接合手段3の更なる小型化を図っている。なお、第2杭基礎構造の構成,作用効果は、以下に述べる点を除いて、第1杭基礎構造と同一である。
【0029】
すなわち、補強支持板7及び下支承部材4の環状鍔部42の外径は、同一であり、基礎杭1の外径と同一又はやや小径に設定されている。補強支持板7の下面中央部には同心状に円筒状の金属製連結体(鋼管)72が垂設(溶接)されており、この連結体72を杭1の内周部(中空部)1cにその上方から嵌合(内嵌)させることにより、補強支持板7を杭頭部1a(端板1b)上に設置固定しうるように構成されている。また、下支承部材4と補強支持板7との位置決めを、シリンダ部41の下面中心部に形成した位置決め凹部44と補強支持板7の上面中心部に形成した位置決め凸部73とを係合させることによって行うように構成されている。したがって、下支承部材4及び補強支持板7が、杭頭部1aから横方向に食み出さないことから、下支承部材4及び補強支持板7の外周部(位置決め部43及び連結体71)が杭頭部1aから横方向に食み出すことになる第1杭基礎構造に比して、補強支持板7を含むピン接合手段3を更に小型化できる。なお、連結体72の長さ(杭中空部1cへの嵌合長さ)H1は、第1杭基礎構造における連結体71と同様に、少なくとも地震力等による引抜力が補強支持板7に作用した場合にも連結体72と杭頭部1aとの嵌合形態が解除されない(連結体72が杭頭部1aから外れない)程度に設定される。また、連結体72の断面形状は、杭中空部1cの断面形状に相似するものであるが、杭中空部1cへの嵌合を容易に行いうる範囲で可及的に大きくしておくこと、つまり杭1の内周面と連結体72の外周面との隙間が可及的に小さくなるように設定しておくことが好ましい。
【0030】
また、補強支持板7の杭頭部1aへの取り付けは、連結体71,72による係合手段によらず、溶接手段によって行うこともできる。例えば、図8に示す杭基礎構造(以下「第3杭基礎構造」という)及び第9図に示す杭基礎構造(以下「第4杭基礎構造」という)では、補強支持板7を杭頭部1aつまり端板1bに溶接8aするようにしている。特に、第4杭基礎構造にあっては、下支承部材4と補強支持板7との連結を現場で行わず、予め両者4,7を溶接8bにより一体連結させておくようにしている。なお、第3及び第4杭基礎構造の構成,作用効果は、上記した点を除いて、第2杭基礎構造と同一である。
【0031】
また、下支承部材4の杭頭部1aへの取付手段,手法は、基礎杭の形式,形態等に応じて任意に変更することができる。例えば、基礎杭が、地中地盤に場所打施工により形成された断面中実柱状の鉄筋コンクリート杭(一般に「場所打杭」又は「現場造成杭」と称せられるもの)10である場合には、既成杭1のような中空部1cを有しないことから、第1〜第4杭基礎構造における如き補強支持板7を設けておく必要がなく、例えば図10〜図12に示す如く、下支承部材4を杭頭部10aに直接的に取付けておくことができる。
【0032】
すなわち、図10に示す杭基礎構造(以下「第5杭基礎構造」という)及び図11に示す杭基礎構造(以下「第6杭基礎構造」という)にあっては、下支承部材4を杭主筋10bを利用して取付けてある。第5杭基礎構造にあっては、図10に示す如く、環状鍔部42に穿設した各鉄筋挿通孔に、杭頭部10aから鉛直上方に延びる鉄筋(杭主筋)10bの露出部分を挿通させると共に、当該露出部分に形成したネジ部に環状鍔42上において螺合させた取付ナット10cを締め付けることにより、下支承部材4を杭頭部10aに固定してある。第6杭基礎構造は、下支承部材4が汎用品であって、環状鍔部42を有しないか環状鍔部42に鉄筋挿通孔を形成すべきスペースが存在しないものである場合に好適するものであり、図11に示す如く、下支承部材4に鉄筋挿通孔を形成した取付板45を溶着8cして、この取付板45を第5杭基礎構造におけると同様にして杭頭部1aに取付けてある。ところで、第5杭基礎構造における環状鍔部42又は第6杭基礎構造における取付板45を杭頭部10aに取付けるに当たっては、予め、エポキシ樹脂等のセルフレベリング材や無収縮モルタル材等の時効硬化材により、杭頭部10a上に、上面を水平面とするレベリング層を形成して、このレベリング層の上面をもって環状鍔部42又は取付板45を設置する取付面となしておくことが好ましい。なお、第5及び第6杭基礎構造の構成,作用効果は、上記した点を除いて、第1〜第4杭基礎構造と同一である。
【0033】
また、基礎杭10が場所打杭である場合、下支承部材4を図12に示す如く杭頭部10aに埋設固定しておくことができる。すなわち、図12に示す杭基礎構造(以下「第7杭基礎構造」という)にあっては、下支承部材4全体を、場所打杭10の施工時に杭頭部10aに埋設固定している。なお、第7杭基礎構造の構成,作用効果は、上記した点を除いて、第5及び第6杭基礎構造と同一である。
【0034】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、本発明の杭基礎構造によれば、冒頭で述べた問題を生じることなく、長期に亘って良好且つ安定した耐震,免震機能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1〜第7杭基礎構造を示す正面図である。
【図2】第1杭基礎構造の要部を示す縦断正面図である。
【図3】図2の要部(ピン接合手段の周辺部分)を拡大して示す詳細図である。
【図4】図2と異なる状態を示す図2相当の縦断正面図である。
【図5】ピン接合手段の作用状態を示す図2及び図4対応の概略図である。
【図6】第1杭基礎構造の変形例を示す図3対応の縦断正面図である。
【図7】第2杭基礎構造の要部を示す図2相当の縦断正面図である。
【図8】第3杭基礎構造の要部を示す図2相当の縦断正面図である。
【図9】第4杭基礎構造の要部を示す図2相当の縦断正面図である。
【図10】第5杭基礎構造の要部を示す図2相当の縦断正面図である。
【図11】第6杭基礎構造の要部を示す図2相当の縦断正面図である。
【図12】第7杭基礎構造の要部を示す図2相当の縦断正面図である。
【図13】従来の杭基礎構造を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
1,10…基礎杭、1a,10a…杭頭部、1c…中空部、2…基礎フーチング、2a…フーチングの一部(充填部分)、3…ピン接合手段、3a…密閉空間、3b…環状隙間、4…下支承部材、5…上支承部材、6…可撓性部材、7…補強支持板、9…スクレーパ、9a…スクレーパ部、41…シリンダ部、41a,51a…シリンダ部とピストン部との上下対向面、51…ピストン部、52…シール部材。
Claims (3)
- 基礎フーチングの下部に取付けられた上支承部材と基礎杭の頭部に取付けられた下支承部材とを、両支承部材の上下対向面間に密閉充填させた非圧縮性の可撓性部材を介して、相対回転自在にピン接合させていることを特徴とする杭基礎構造。
- 可撓性部材がゴム製の中実形状体であることを特徴とする、請求項1に記載する杭基礎構造。
- 下支承部材が上方に開口する円筒状のシリンダ部を有するものであり、上支承部材が、当該シリンダ部にその軸線に対して所定範囲で回転自在に嵌合された横断面が円形をなすピストン部を有するものであり、ピストン部の下端には、シリンダ部とピストン部との上下対向面間に密閉空間を形成すべく、ピストン部の下端外周面とこれに対向するシリンダ部の内周面との間をシールするシール部材が設けられており、当該密閉空間に円板形状をなす可撓性部材が密閉充填されていることを特徴とする、請求項2に記載する杭基礎構造。
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