JP3692341B2 - 杭基礎構造 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば地中地盤に埋め込まれたフーチング(構造物の基礎)を支承し、構造物の荷重を硬盤層などの深い層に伝達して支持させる先端支持杭や、杭外周面と地盤土砂との間の摩擦力で支持させる摩擦杭のような中空断面構造の杭を用いた基礎構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の杭基礎構造として、従来一般的には、図4に示すような構造のものが知られている。
すなわち、地中地盤81に構造単位としての杭82を打設し、この杭82の頭部に地中に埋め込み設置されたフーチング83を載置し、杭鉄筋及び中詰めコンクリート補強筋のような鉄筋材84とコンクリートにより杭82とフーチング83とを剛結合した構造である。
【0003】
上述したように杭82頭部とフーチング83とを剛結合した杭基礎構造では、地震等の外力が作用した場合、地面を含む地中地盤81と上部構造物とがそれぞれ別々の動きをするために、両者の境界部となる杭頭結合部に曲げモーメントが集中し、杭82頭部及びフーチング83下部とを損傷、破損しやすい。また、このような損傷、破損が生じた際にはその箇所を復旧する必要があるが、杭基礎構造は、地中地盤81に構造単位として打設された杭82に支持された下部構造であるために、復旧作業自体の作業性が非常に悪いとともに莫大な復旧費用を要するという問題点がある。
【0004】
上記のごとき従来一般の杭基礎構造が有する問題点を解消するものとして、従来、例えば特開平1−102124号公報に開示されているように、滑り材を用いた杭基礎構造が提案されている。
その滑り材を用いた杭基礎構造は、図5に示すように、地中地盤に打設されたコンクリート杭91の上端部から上向きに、環状に配設した複数の鉄筋材92と、これら鉄筋材92をそれらの横振れを許容する状態で囲繞する鋼管93とを延出させ、鋼管93の下端部には環状の係止突起94を設けてコンクリート杭91の上端部に埋込み連結する。
【0005】
また、上記鋼管93の上端部には天板95を溶接固着し、この天板95に上記鉄筋材92個々の横振れを許容する状態で鉄筋材92が貫通する融通孔96が形成されている。上記天板95を貫通した鉄筋材92の上端部分を上部のコンクリート構造体(フーチング)97に連結するとともに、上部のコンクリート構造体97の下部に固定したフーチング金物98と上記天板95との間に滑り材99を介装することにより、上部のコンクリート構造体97を天板95上において滑り材99を介して水平方向に相対摺動可能に載置支持させたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記したような滑り材を用いた従来の杭基礎構造においては、地震等の外力が作用して地中地盤と上部のコンクリート構造体97とがそれぞれ別々な動きをした場合、鉄筋材92が撓み、この撓み時に滑り材99を介して上部のコンクリート構造体97が天板95上を水平方向に滑り移動することで両者の境界部となる杭頭結合部への曲げモーメントの集中を減少し、図4に示す従来一般の杭基礎構造に比べて、コンクリート杭91頭部及び上部コンクリート構造体97の下部の損傷、破損を抑制することが可能である。
【0007】
しかしながら、滑り材を用いた従来の杭基礎構造では、上部コンクリート構造体97の滑り移動量が鉄筋材92の貫通する融通孔96により規制されていることと、コンクリート杭91と上部コンクリート構造体97とが鉄筋材92で連結されていることから、地震等により過大な外力が作用したとき、その過大な外力に伴い連結箇所に発生する曲げモーメントを十分に吸収することが不可能で、コンクリート杭91頭部及び上部コンクリート構造体97の下部が損傷、破損することは免れ得ず、図4に示す従来一般の構造と同様に、耐震性能、免震性能を十分に確保することができないという問題があった。
【0008】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、杭頭結合部の軽量化及び施工コストの低減により全体の大幅なコスト低減を図りながら、地震等による過大な外力が作用した場合も、杭頭結合部への曲げモーメントの発生を防止して杭頭部及びフーチングの損傷、破損を防止するに十分な優れた耐震性能、免震性能を確保することができる杭基礎構造を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る杭基礎構造は、中空断面構造の杭の頭部にリング状のゴムシートからなる弾性部材を内蔵したリング状で、かつ、凸形又は凹形の支承部を形成すると共に、上記杭と分離されたフーチングの下部には上記弾性部材を含むリング状の凸形又は凹形支承部の形状に対応するリング状で、かつ、凹形又は凸形の結合部を形成し、上記杭頭部のリング状の凸形又は凹形支承部とフーチング下部のリング状の凹形又は凸形結合部とを嵌合させることで杭頭結合部をピン支持構造としたことを特徴とするものである。
【0010】
上記構成の本発明によれば、中空断面構造の杭頭部に形成されたリング状の凸形又は凹形支承部にフーチング下部に形成されたリング状の凹形又は凸形結合部を嵌合させて、凸形又は凹形支承部に内蔵されているリング状のゴムシートからなる弾性部材の厚さ変化(弾性変形)を介して杭頭結合部を回転自由なピン支持構造とすることにより、地震等の外力が作用したとき、両者(杭頭部とフーチング下部)の相対回転により応力を開放して杭頭結合部への曲げモーメントの発生を防止し、過大な外力が作用したときでも、杭及びフーチングの損傷、破損を防止するに十分な優れた耐震性能、免震性能を確保することが可能である。
【0011】
また、杭が中空断面構造であることに鑑みて、リング状のゴムシートからなる弾性部材を使用することにより、上部構造体による鉛直荷重を中空断面構造の杭の全域に均等に分布させて伝達することが可能となり、これによって、リング状凸形又は凹形支承部の肉厚を薄くして杭頭結合部の軽量化及び施工コストの低減化が図れる。
【0012】
また、本発明において、請求項2に記載のように、上記リング状凸形又は凹形支承部とリング状凹形又は凸形結合部との嵌合部の内周位置及び外周位置にそれぞれ、上記リング状弾性部材のはみ出し防止用のシールリング材を嵌着した封止構造を採用することによって、上部構造体から作用する鉛直荷重により圧縮力が加わっているリング状弾性部材の内外隙間へのはみ出しによる亀裂等の損傷防止及び腐食及び劣化の低減を図ることが可能で、軽量化及びコスト低減につながる中空断面構造の杭を用いつつも弾性部材の厚さ変化を利用したピン支持機能を長期間に亘って良好に維持し、優れた耐震性能、免震性能を長期に亘って安定よく維持することが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は本発明に係る杭基礎構造の実施の形態を示す断面図、図2は図1のB−B線矢視平面図である。この杭基礎構造は、図1に示すように、地中地盤11に打設された遠心力鉄筋コンクリート杭、プレテンション方式遠心力高強度プレストレスコンクリート杭(PHC杭)、SC杭、ST杭等の中空断面構造の既製杭12の頭部に金属製のリング状端板25を固定し、このリング状端板25の上面にリング状で、かつ、凸形の支承部を形成する金属製の下沓13が溶接固定されており、この下沓13の上面にはリング状の弾性部材21が装着されている。
【0014】
一方、上記既製杭12の頭部及びその杭頭部の周囲で地中地盤11の上面に形成された砕石層18、捨てコンクリート層19の上部には既製杭12と分離させて鉄筋コンクリート製のフーチング(構造物の基礎)20が形成されている。このフーチング20のうち上記既製杭12の頭部に対向する下部には上記リング状弾性部材21を含むリング状凸形の下沓13の形状に対応するリング状で、かつ、凹形の結合部を形成する金属製の上沓22が定着用アンカー材23を介して強固に一体固定連結されている。
【0015】
上記した既製杭12頭部のリング状凸形下沓13とフーチング20下部のリング状凹形上沓22とを相互に嵌合させることにより、杭頭結合部を既製杭12頭部とフーチング20下部とが全方向に相対回転可能なピン支持構造を構成している。
【0016】
上記ピン支持構造の杭基礎構造において、リング状凸形下沓13とリング状凹形上沓22との嵌合部の内周位置及び外周位置、具体的には、下沓13の内周面及び外周面でリング状弾性部材21の下面と接触する位置にはそれぞれ、下沓13の内周面及び外周面と上沓22の内周面との間に形成される微小な隙間からの弾性部材21のはみ出しを防止するためのインナーシールリング材24A及びアウターシールリング24Bが嵌着されており、これらシールリング材24A,24Bによってリング状凸形下沓13とリング状凹形上沓22との内外嵌合部がそれぞれ封止構造とされている。
【0017】
なお、上記リング状弾性部材21としては、圧縮復元特性に優れたゴムシートを使用している。また、上記インナー及びアウターシールリング材24A,24Bとしては、パッキン性に優れたPTFEに代表される四弗化樹脂材料が好ましいが、これ以外にも、銅や真鍮等の銅合金を使用してもよい。
【0018】
上記のように構成された杭基礎構造においては、既製杭12の頭部に形成されたリング状凸形下沓13にフーチング20の下部に形成されたリング状凹形上沓22を嵌合させて、リング状凸形下沓13の上面に装着されているゴムシートからなるリング状弾性部材21の厚さ変化(弾性変形)により杭頭結合部を回転自由なピン支持構造とし、既製杭12頭部とフーチング20下部とが全方向に相対回転可能とされている。これによって、地震等の外力が作用したとき、両者(杭12頭部とフーチング20下部)の相対回転により応力を開放して杭頭結合部への曲げモーメントの発生を防止して、杭12及びフーチング20の損傷、破損を防止して、上部構造体に対して十分に優れた耐震性能及び免震性能を確保することが可能である。
【0019】
加えて、中空断面構造の既製杭12であることに対応して、杭12の肉厚断面とほぼ同位置となるようなリング状の弾性部材21を使用することによって、図3の(A)に示すように、上部構造体による鉛直荷重Wが中空断面構造の杭12の全域に均等に分布されて伝達され、中空断面構造の既製杭12に図3の(B)に示す中実円板状の弾性部材21を使用する場合のような荷重分布の不均等さがなくなり、これによって、リング状凸形下沓13の肉厚tを図3の(B)の場合の肉厚t1に比べて薄くすることが可能で、杭頭結合部の軽量化及び施工コストの低減化を図ることができる。
【0020】
また、上記の杭基礎構造において、ピン支持構造の中枢をなし、かつ、上部構造体重量による鉛直荷重Wにより圧縮力が加わっているリング状弾性部材21の内外両面でのはみ出しをシールリング材24A,24Bにより防止する封止構造を採用しているので、リング状弾性部材21の微小隙間へのはみ出しに伴う亀裂等の損傷を防止することが可能であると同時に、リング状弾性部材21が外部環境に晒されることに伴うリング状弾性部材21の腐食及び劣化も低減することが可能であり、これによって、弾性部材21の厚さ変化を利用したピン支持機能を長期間に亘って維持し、上述の優れた耐震性能、免震性能を長期に亘って安定よく維持することができる。
【0021】
なお、上記した実施の形態では、中空断面構造の既製杭12の頭部側に凸形の支承部を形成する金属製の下沓13を固定したもので説明したが、これらとは逆に、中空断面構造の既製杭12の頭部側に凹形の結合部を形成する金属製の下沓もしくはリング状凹形の下沓を固定しても、上記実施の形態と同様な効果を期待できるものである。
【0022】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ゴムシートからなる弾性部材の厚さ変化(弾性変形)を利用して杭頭結合部を回転自由なピン支持構造としているので、地震等の外力が作用したとき、杭頭部とフーチング下部の相対回転により応力を開放して杭頭結合部への曲げモーメントの発生を防止することができる。したがって、地震等によって過大な外力が作用したときでも、杭及びフーチングの損傷、破損を防止するに十分な優れた耐震性能、免震性能を確保することができると共に、杭及びフーチングの両者に用いる鉄筋の配筋量の低減が可能で、施工性及び低コスト化を向上することができる。
【0023】
しかも、上部構造体による鉛直荷重を中空断面構造の杭の全域に均等に分布させて伝達することが可能で、リング状凸形支承部の肉厚を薄くして杭頭結合部の軽量化及び施工コストの低減化を図り、杭基礎構造全体の大幅なコスト低減を達成しながら、上述したとおりの優れた耐震性能、免震性能を確保できるという効果を奏する。
【0024】
また、本発明において、弾性部材のはみ出し防止用のシールリング材を嵌着した封止構造を採用することによって、上部構造体から作用する鉛直荷重により圧縮力が加わっている弾性部材のはみ出しによる亀裂等の損傷防止及び腐食及び劣化の低減を図り、弾性部材の厚さ変化を利用したピン支持機能を長期間に亘って良好に維持し、優れた耐震性能、免震性能を長期に亘って安定よく維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る杭基礎構造の実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1のB−B線矢視平面図である。
【図3】(A)同上杭基礎構造における荷重分布の説明図、(B)は中実円板状弾性部材を用いる場合の荷重分布の説明図である。
【図4】従来一般の杭基礎構造を示す断面図である。
【図5】従来の杭基礎構造を示す断面図である。
【符号の説明】
11 地中地盤
12 既製杭
13 凸形下沓(支承部)
20 フーチング
21 ゴムシートからなるリング状弾性部材
22 凹形上沓(結合部)
24A,24B シールリング材

Claims (2)

  1. 中空断面構造の杭の頭部にリング状のゴムシートからなる弾性部材を内蔵したリング状で、かつ、凸形又は凹形の支承部を形成すると共に、
    上記杭と分離されたフーチングの下部には上記弾性部材を含むリング状の凸形又は凹形支承部の形状に対応するリング状で、かつ、凹形又は凸形の結合部を形成し、
    上記杭頭部のリング状の凸形又は凹形支承部とフーチング下部のリング状の凹形又は凸形結合部とを嵌合させることで杭頭結合部をピン支持構造としたことを特徴とする杭基礎構造。
  2. 上記リング状の凸形支承部とリング状の凹形結合部との嵌合部の内周位置及び外周位置にはそれぞれ、上記リング状弾性部材のはみ出し防止用のシールリング材を嵌着した封止構造が設けられている請求項1に記載の杭基礎構造。
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