JP2004141929A - レーザ加工方法およびその加工装置、並びにそれらを用いた電子部品の製造方法 - Google Patents

レーザ加工方法およびその加工装置、並びにそれらを用いた電子部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電子部品の製造過程において、電子部品が形成された基板の切断の際の基板に設けられた接合層による切断精度の低下を回避し、製造効率(歩留まり)を向上させることのできるレーザ加工方法およびその加工装置、並びにそれを用いた電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】基板間27に配設された接合層24にレーザ3を照射して接合層24に除去部24aを形成するレーザ加工方法およびその加工装置であり、電子部品の製造過程において、このレーザ加工方法およびその加工装置を用いる電子部品の製造方法である。
【選択図】    図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品である液晶パネル、有機EL(electro−luminescence)パネルおよびプラズマパネル等の表示装置、あるいは、半導体装置の製造過程において、複数の電子部品が形成された接合層を有する基板を個々の製品サイズに切断する際の接合層を切断する場合に有効なレーザ加工方法およびその加工装置、並びにそれらを用いた電子部品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子部品である例えば携帯電話等に用いられるTFD(Thin Film Diode)を利用したTFD液晶表示装置の製造においては、図7および図9に示すように、2枚の大面積のガラス基板21,31を接合層(シール材24)を介して接合して複数の液晶パネル29が形成されたパネル26とした後、このパネル26(ガラス基板21,31)を短冊状に切断してさらに個々の製品サイズに切断し、複数のTFD液晶表示装置100の液晶パネル29を得るという方法が採用されるため、その製造時にガラス基板21,31をスクライブ線12に沿って切断するという工程が不可欠である。
【0003】
このような複数の液晶パネル29が形成されたガラス基板21,31からなるパネル26(27)を切断する方法としては、図10に示すように、ダイヤモンド工具などの超硬工具51の尖った先端や鋭い周縁部をガラス基板21(またはガラス基板31)表面に押しつけて移動させることにより、ガラス基板21,31の表面にスクライブ線12を形成し、その後スクライブ線12に沿って金属板52などで押圧して、ガラス基板21,31に曲げや引っ張りなどの機械的な衝撃を加えて切断する方法である。また、スクライブブレーク方法よりも生産性は劣るが、場合によってはダイシング法による切断も行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、TFD液晶表示装置100の製造工程を、図8の製造工程を示すフローチャートと、図9の図8に対応した基板の状態を示す説明図を用いて説明する。
(A)まず、フォトリソグラフィ工程(素子形成工程)において、対向基板となるガラス基板21に共通電極としての走査線等を形成するとともに、TFD基板となるガラス基板31に画素電極およびスイッチング素子としてのTFD等を形成する。
(B)次に、ガラス基板21に配向膜を形成してラビングを施す。また、ガラス基板31についても同様に配向膜を形成してラビングを施す。
【0005】
(C)ついで、一方の基板、例えばガラス基板21に液晶をシールするためのシール材を塗布し、他方の基板、例えばガラス基板31の配向膜の上にギャップ材を散布する。なお、シール材は、図7に示すように、液晶を封入するために液晶パネル29毎にその一部が開口しており、隣り合う液晶パネル29のそれぞれのシール材24の間は、シール材24のはみ出しや切断時の切断箇所11となる予備エリア25が設けられるように、間隔をあけてシール材24が塗布されている。
(D)そして、上記(A)〜(C)の工程で作られた2枚のガラス基板21,31をシール材24を介して貼り合わせ、1枚の大きなパネル26(図7参照)を作成する。
【0006】
(E)次に、1次ブレーク工程として、前述したスクライブ方法およびブレーク方法、並びにそれらの装置によりパネル26の切断箇所11にスクライブ線12を形成し(図7参照)、そこに曲げ応力を加えて切断して、短冊状のパネル27を形成する。
(F)ついで、短冊状のパネル27の各液晶注入口13(図9参照)を介して、シール材24によって囲まれたそれぞれの空間部14に液晶28を注入し、封止材(図示せず)により各液晶注入口13を閉塞して各液晶パネル29の空間部14に液晶28を封入する。
【0007】
(H)次に、スクライブ工程として、液晶28が封止された短冊状のパネル27を両面の切断箇所11(予備エリア25)に、上記(E)の工程のスクライブ方法およびその装置によりスクライブ線12を形成する。
(I)ついで、2次ブレーク工程として、上記(E)の工程のブレーク方法およびその装置により、液晶28が封止された短冊状のパネル27をその表面に設けられたスクライブ線12に沿って切断し、製品1個分の大きさに相当する液晶パネル29を形成する。
(J)そして、形成された液晶パネル29は、その電極等を駆動するために接続された端子が形成された実装部等とともにTFD液晶表示装置100を構成し、表示部に液晶表示装置を配した液晶表示装置付きの各種モバイル機器、例えば携帯電話の液晶表示部として実装される。
【0008】
【特許文献1】
特開平4−298063号公報(図1)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来のTFD液晶表示装置100の製造過程においては、図9に示すように、2枚のガラス基板21,31をシール材24を介して貼り合わせて短冊状に切断されたパネル27の隣り合う液晶パネル29のそれぞれのシール材24の間に設けられた予備エリア25に対応してスクライブ線12を形成し、このスクライブ線12に沿って切断してTFD液晶表示装置100の液晶パネル29を形成していた。
【0010】
この形成されたTFD液晶表示装置100の液晶パネル29は、図11に示すように、表示エリア36の外周縁部に、予備エリア25とシール材24のシールエリア37と走査線および画素電極等を駆動するためのドライバに配線する配線エリア38(一部シールエリア37を含む)とからなる非表示エリア39が設けられている。
【0011】
このように、非表示エリア39は、液晶パネル29の表示エリア36以外であるため、できる限り狭くすることが望ましい。しかしながら、配線エリア38は画素数が増えれば増えるほど配線数も増えるため、現状よりも狭くすることは難しく、また、シールエリア37もあまり狭すぎるとシール材24の幅が狭くなって液晶28を封止できないおそれがあり、狭くするには限界があった。これに対して、予備エリア25は、シールエリア37のパターニング精度が悪いために生じるシール材24の予備エリア25へのはみ出しによる隣り合う液晶パネル29のシール材24同士のつながりを回避するため、あるいは、切断時の切断箇所11の位置ずれを補うために設けられているので、狭くするあるいは省略することが考えられる。
【0012】
そこで、図12に示すように、予備エリア25を省略し、切断前の隣り合う液晶パネル29のシール材24が共有されるようにシール材24を幅広に塗布し、2枚のガラス基板21,31をシール材24を介して貼り合わせてパネル26を形成し、さらに短冊状に切断した後(図12(a))、上述したようにパネル27にスクライブ線12を形成して(図12(b))、スクライブ線12に沿って切断し、製品1個分の大きさに相当する液晶パネル29を形成するようにした(図12(c))。
【0013】
しかしながら、図13(a)に示すように、ガラス基板21,31の表面に形成されたスクライブ線12に沿って金属板52などで押圧して曲げ応力をかけると、図13(b)に示すように、シール材24が持つ弾性によって板厚方向の切断形状が斜めになってしまう(符号60)など、切断に乱れが生じてしまったり、図13(c)に示すように、ガラス基板21,31がブレークできたとしても、ブレーク位置61がスクライブ線12に沿わずに曲がってしまって、各液晶パネル29のシール材24の幅がほぼ均等にならなかったり、場合によってはシール材24以外の配線エリア38あるいは表示エリア36で切断されてしまうなど、切断精度および製造効率(歩留まり)が低下してしまうという問題があった。また、仮にスクライブ線12に沿って切断できたとしても、シール材24は弾性を有していて切断できないため、液晶パネル29を分離することができない場合もあった。
【0014】
また、従来のように予備エリア25を設けても、シール材24がシールエリア37からはみ出して隣り合う液晶パネル29のシール材24同士がつながってしまった場合は、上記と同様にシール材24の弾性によるパネル27の切断時の障害などの課題を有するとともに、つながった箇所が1ヶ所でなく、空隙を隔てて2ヶ所等でつながってしまった場合は、貼り合わせ時の押圧で空隙が押されて空隙内の空気がシール材24を押圧し、シール材24を破壊してしまって液晶28を封止できなくなるなど、やはり切断精度および製造効率(歩留まり)が低下してしまうという問題があった。さらに、ダイシング法では、ガラス等の脆性材料は切断しやすいが、シール材24のような弾性材料は精度良く切断できない場合がある。
【0015】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、液晶パネル等の表示装置および半導体装置などの電子部品の製造過程において、電子部品が形成された基板の切断の際の基板に設けられた接合層による切断精度の低下を回避し、製造効率(歩留まり)を向上させることのできるレーザ加工方法およびその加工装置、並びにそれを用いた電子部品の製造方法を提供することを目的としたものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るレーザ加工方法は、基板間に配設された接合層にレーザを照射して接合層に除去部を形成する方法である。本発明によれば、接合層に除去部を容易に形成することができる。よって、この除去部により、接合層の弾性による基板の切断時の障害を回避することができるとともに、基板の切断を容易に行うことができ、接合層による切断精度の低下を回避して、製造効率(歩留まり)を向上させることができる。
【0017】
また、本発明に係るレーザ加工方法は、接合層を介して接合された基板を切断する際の接合層を切断するときに、接合層にレーザを照射して除去部を形成する方法である。これにより、接合層の弾性による基板の切断時の障害を回避して、基板の切断を容易に行うことができ、接合層による切断精度の低下を回避するとともに、製造効率(歩留まり)を向上させることができる。
【0018】
さらに、本発明に係るレーザ加工方法は、複数の電子部品が形成された接合層を有する基板を切断する際の接合層を切断するときに、接合層にレーザを照射して除去部を形成する方法である。これにより、接合層の弾性による基板の切断時の障害を回避して、基板の切断を容易に行うことができる。これにより、接合層による切断精度の低下を回避することができるとともに、製造効率(歩留まり)を向上させることができる。
【0019】
また、上記方法において、レーザを複数のレーザ光に分岐し、分岐された複数のレーザ光を接合層に照射する方法である。本発明によれば、複数のレーザ光を接合層に照射するので、接合層に対する加工速度を向上させることができる。
また、上記方法において、複数のレーザ光を、基板の各接合層にそれぞれ同時に照射する方法である。これにより、複数の接合層を有する基板の加工速度を向上させることができる。
【0020】
また、上記方法において、複数のレーザ光の分岐方向を、レーザ光の走査方向と直交する方向とする方法である。これにより、接合層に対する除去部の幅を基板の切断方向と直交する方向に広くすることができ、この幅広い除去部によって、スクライブ時およびブレーク時等における位置ずれなどによる精度低下を防止することができる。
また、複数のレーザ光の分岐方向とレーザ光の走査方向とを任意の角度に設定することで、除去部の幅を任意に調整することができる。
【0021】
また、上記方法は、基板の切断位置に対応する接合層に除去部を形成する方法である。これにより、接合層の弾性による基板の切断時の障害を回避することができ、基板の切断を容易に行うことができる。
【0022】
また、上記方法において、接合層は、切断前の基板に形成された隣り合う電子部品の共有されるシール材とした方法である。これにより、不要な部分を省略することができ、基板から形成される電子部品の取り個数を多くすることができて、コストダウンを図ることができる。
【0023】
また、上記方法において、接合層は基板を介してレーザ光が照射される方法である。
さらに、上記方法において、レーザ光が照射される側の基板をレーザ光が透過する材料により構成した方法である。これにより、接合層にレーザ光が照射され、確実に除去部を形成することができる。
【0024】
本発明に係るレーザ加工装置は、上記レーザ加工方法により、基板間に配設された接合層にレーザを照射するものである。本発明によれば、接合層に除去部を容易に形成することができ、この除去部によって接合層の弾性による基板の切断時の障害を回避し、基板の切断を容易に行うことができる。これにより、接合層による切断精度の低下を回避することができるとともに、製造効率(歩留まり)を向上させることができる。
【0025】
また、上記装置において、レーザを発振するレーザ発振器と、レーザ発振器からのレーザを基板に配設された接合層に集光する集光手段とを備えたものである。これにより、接合層に除去部を容易に形成することができる。
また、上記装置において、レーザ発振器から発振されたレーザを複数のレーザ光に分岐する位相格子を備えたものである。これにより、複数のレーザ光で接合層に除去部を形成することができ、接合層に対する加工速度を向上させることができる。
【0026】
本発明に係る電子部品の製造方法は、基板間に接合層を配設して複数の電子部品を形成し、形成された各電子部品を部品毎に切断して電子部品を形成する電子部品の製造方法であって、基板間の接合層にレーザを照射して除去部を形成する接合層除去工程を備えた方法である。本発明によれば、接合層に除去部を容易に形成することができ、この除去部により、接合層の弾性による基板の切断時の障害を回避することができるとともに、基板の切断を容易に行うことができる。これにより、接合層による切断精度の低下を回避して、製造効率(歩留まり)を向上させることができる電子部品の製造方法が得られる。
【0027】
また、上記製造方法において、接合層除去工程の後に、基板の除去部に対応する位置にスクライブ線を形成するスクライブ工程を備え、スクライブ工程の後に、基板を除去部に対応する位置で切断するブレーク工程を備えた方法である。これにより、接合層の弾性による基板の切断時の障害が回避されて、基板の切断を容易に行うことができる。
また、上記製造方法において、接合層除去工程の後に、基板の前記除去部に対応する位置で切断加工する切断工程を備えた方法である。この切断加工は例えばダイシング法が用いられる。これにより、接合層の弾性による基板の切断時の障害が回避されて、基板の切断を容易に行うことができる。
また、上記製造方法の接合層除去工程において、レーザを複数のレーザ光に分岐し、分岐された複数のレーザ光を基板の接合層に照射する方法である。これにより、接合層に対する加工速度を高めることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
まず、本発明の実施の形態1に係る電子部品、ここではTFD液晶表示装置の製造工程を、図1の製造工程を示すフローチャートと、図2および図3の図1に対応した基板の状態を示す説明図を用いて説明する。
(A)まず、フォトリソグラフィ工程において、対向基板となるガラス基板21に共通電極としての走査線22等を形成するとともに、TFD基板となるガラス基板31に画素電極32およびスイッチング素子としてのTFD33等を形成する。なお、フォトリソグラフィ工程において形成される電極や素子等は表示装置の種類に応じて異なるものである。
(B)次に、ガラス基板21に配向膜23を形成してラビングを施し、また、ガラス基板31についても同様に配向膜34を形成してラビングを施す。
【0029】
(C)ついで、一方の基板、例えばガラス基板21に液晶をシールするためのシール材24を、従来では隣り合う液晶パネル29の間に設けられていた予備エリア25を省略して後述する2次ブレーク工程にて切断される前においてそれぞれの液晶パネル29のシール材24が共有されるように幅広に塗布し、他方の基板、例えばガラス基板31の配向膜34の上にギャップ材35を散布する。なお、シール材24の塗布およびギャップ材の散布は、これに限られるものではなく、一方の基板にシール材24を塗布し、さらにギャップ材35を散布してもよい。また、シール材24に予めギャップ材35を混入させておいてもよい。
(D)そして、上記(A)〜(C)の工程で作られた2枚のガラス基板21,31をシール材24を介して貼り合わせ、1枚の大きなパネル26を作成する。
【0030】
(E)次に、1次ブレーク工程として、ダイヤモンド工具や超硬工具などの尖った先端や鋭い周縁部をガラス基板21(またはガラス基板31)の表面に押しつけて移動させることにより、ガラス基板21,31の表面にスクライブ線12を形成し(図2(D)参照)、その後スクライブ線12に沿って金属板などで押圧して、ガラス基板21,31に曲げや引っ張りなどの機械的な衝撃を加えてパネル26を切断し、短冊状のパネル27を形成する。
(F)ついで、短冊状のパネル27に形成された液晶パネル29のそれぞれに設けられた液晶注入口13を介して、シール材24によって囲まれたそれぞれの空間部14に液晶28を注入し、封止材(図示せず)により各液晶注入口13を閉塞して各液晶パネル29の空間部14に液晶28を封入する。
【0031】
(G)次に、レーザ加工によるシール材24の除去工程として、パネル27の切断箇所11(スクライブ線12の形成予定箇所)に対応するシール材24にレーザを照射し、シール材24をレーザのエネルギによって変質または除去し、変質部または除去部(以下、まとめて除去部24aという)を形成する。
【0032】
(H)次に、スクライブ工程として、シール材24の除去部24aに対応する短冊状のパネル27の両面の切断箇所11に、上記(E)の工程のスクライブ方法およびその装置によりスクライブ線12を形成する。
(I)ついで、2次ブレーク工程として、上記(E)の工程のブレーク方法およびその装置により、短冊状のパネル27をその表面に設けられたスクライブ線12に沿って切断し、製品1個分の大きさに相当する液晶パネル29を形成する。このとき、シール材24の切断箇所11に対応する部分は、レーザの照射によって除去部24aが形成されているため、シール材24の弾性による障害を回避することができ、パネル27は容易に切断される。
(J)そして、形成された液晶パネル29は、その電極等を駆動するために接続された端子が形成された実装部等とともにTFD液晶表示装置100を構成し、表示部に液晶表示装置を配した液晶表示装置付きの各種モバイル機器、例えば携帯電話の液晶表示部として実装される。
【0033】
次に、上記電子部品(TFD液晶表示装置)の製造工程の(G)で用いられたレーザ加工装置について説明する。
図4は本発明の実施の形態1に係る電子部品の製造過程で用いられるレーザ加工装置の構成説明図である。図において、1は例えばYAGレーザ(第3高調波:355μm)が発振されるレーザ発振器、2はレーザ発振器1から発振されたレーザ光3の径を拡大するビームエキスパンダ、4は拡大したレーザ光3の進行路上に配置され、レーザ光3を後述する被加工物10に向けて全反射させるベンディングミラー、5はベンディングミラー4からのレーザ光3を集光して被加工物10に照射する集光レンズである。
【0034】
6は被加工物10を載置する載置台で、制御手段(図示せず)により載置台6をX軸またはY軸方向に移動可能に構成されており、載置台6の移動により集光レンズ5からのレーザ光3の被加工物10への照射位置を、被加工物10の切断箇所11(スクライブ線12)に沿って移動させることができる。なお、載置台6を移動させず、レーザ発振器1、ビームエキスパンダ2、ベンディングミラー4および集光レンズ5をX軸またはY軸方向に移動可能に構成してもよい。
そして、上記1〜6によりレーザ加工装置7が構成される。
【0035】
10は例えばTFD液晶表示装置100の液晶パネル29が複数形成されてシール材24を介して接合された上下一対のガラス基板21,31からなる短冊状に切断されたパネル27である被加工物で、表面にスクライブ線12を設け、そのスクライブ線12に沿って切断することにより、複数の液晶パネル29が形成される。なお、この被加工物10は、少なくとも一方の基板(例えば基板21)がガラスなどのレーザ光3を透過する材料によって構成されている。
【0036】
そして、このように構成されたレーザ加工装置7を用いて上記TFD液晶表示装置100の製造工程における(G)の工程、つまりレーザ加工によるシール材24の除去工程を実施する場合、液晶28が封止された短冊状のパネル27を載置台6に載せた後、パネル27の切断箇所11(スクライブ線12の形成予定箇所)に対応する加工始点27a(図3参照)に、レーザ発振器1から発振されビームエキスパンダ2、ベンディングミラー4および集光レンズ5を介して集光されたレーザ光3を照射する。このとき、ガラス基板21は、レーザ光3を透過する材料によって構成されているため、照射されたレーザ光3は、図4に示すように、ガラス基板21を透過してシール材24に照射される。ついで、レーザ光3の照射位置を載置台6の移動により切断箇所11に沿って移動し、シール材24をレーザ光3の熱により変質または除去して、除去部24aを形成する。
【0037】
このように、TFD液晶表示装置100の製造過程において、隣り合う液晶パネル29の間に設けられていた予備エリア25を省略して、切断前は共有されるシール材24を介して接合された2枚のガラス基板21,31からなる短冊状に切断されたパネル27である被加工物10に、レーザ光3が透過するガラス基板21側からシール材24にレーザ光3を照射し、被加工物10の切断箇所11に沿ってシール材24を変質または除去して除去部24aを形成するようにしたので、この除去部24aによりシール材24の弾性による被加工物10の切断時の障害を回避することができ、被加工物10の切断を容易に行うことができる。これにより、接合層による切断精度の低下を回避することができ、製造効率(歩留まり)を向上させることができる電子部品の製造方法を得ることができる。
【0038】
また、切断して形成された液晶パネル29の各非表示エリア39の配線エリア38を狭くすることなく予備エリア25を省略することができるとともに、シールエリア37の幅も狭くすることができるため、液晶パネル29の外形寸法に対する非表示エリア39を小さくすることができ、限られた外形寸法で表示エリア36の大型化を可能にすることができる。さらに、外形寸法を小さく設計できるので、基板から形成される液晶パネル29の取り個数を多くすることができ、コストダウンを図ることができる。
【0039】
なお、上述の実施の形態1では、レーザ光3をガラス基板21側から照射した場合を説明したが、ガラス基板31側から照射してもよく、両者21,31側から照射してもよい。両者21,31側から照射した場合は、より早く被加工物10に除去部24aを形成することができる。
また、上述の実施の形態1では、レーザ加工によるシール材24の除去工程である上記(G)の工程の後に、パネル27の両面の切断箇所11にスクライブ線12を形成するスクライブ工程((H)の工程)を行い、その(H)の工程の後に、スクライブ線12に沿って切断して製品1個分の大きさに相当する液晶パネル29を形成する2次ブレーク工程((I)の工程)を行う場合を示したが、(H),(I)の工程を省略し、図1の破線に示すように、(G)の工程の後に例えばダイシング法を用いた切断工程((K)の工程)を行って液晶パネル29を形成するようにしてもよい。
【0040】
ここで、ダイシング法およびその装置について簡単に説明する。
ダイシング法とは、図3に示すように、回転砥石41を用いた切断方向の一種で、最も精密な切断・溝加工が可能である。回転砥石41の砥石42に用いられる砥粒は微細なダイヤモンド粒子が一般的であり、金属や樹脂に練り込まれて円形(ドーナツ型)の砥石42として整形されている。砥石42の厚さは数百μm〜百μm以下で、毎分数万回転で回転する軸43に取り付けられている。軸43の回転ぶれは極力低く抑えられ、砥石42の精度も極めてよい。このため、一般的な回転砥石による加工に比べて高精度な切断が可能で、チッピングと呼ばれる端面かどの「欠け」も比較的少なく抑えることができる。また、このダイシング法は、主にシリコン、セラミックス、ガラスなどの脆性材料の精密微細切断、溝入れに用いられ、切断幅は砥石42の厚さの通り、数百μm以下の微細なものとなる。そして、切断の形態としては、基板を短冊状あるいは格子状に切断して長方形の固片に切り出すことが一般的で、最も多く用いられているのは、シリコンウェハーに形成された多数の半導体素子をチップ単位の固片に分割する工程である。
【0041】
実施の形態2.
図5は本発明の実施の形態2に係る電子部品の製造過程で用いられるレーザ加工装置の要部の構成説明図である。この実施の形態2は、実施の形態1に係るレーザ加工装置7のベンディングミラー4と集光レンズ5との間に位相格子8を設けたもので、ベンディングミラー4により被加工物10側に反射されたレーザ光3を位相格子8により複数のレーザ光3aに分岐し、各分岐したレーザ光3aをそれぞれ集光レンズ5により集光させて複数のレーザ光3aを被加工物10に照射するようにしたものである。
【0042】
このように構成されたレーザ加工装置7を用いて例えばTFD液晶表示装置100を製造する場合は、実施の形態1で説明した場合と同様に、上記(A)〜(J)の工程が実施される(上記(K)の工程を含ませて実施してもよい)。そして、レーザ加工によるシール材24の除去工程である上記(G)の工程において、位相格子8により分岐した複数のレーザ光3aをシール材24に照射し、シール材24を幅広い領域で変質または除去し、除去部24aを形成する。
【0043】
同時に照射される複数のレーザ光3aの分岐方向を、図5に示すように、パネル27(被加工物10)の切断箇所11(スクライブ線12の形成予定箇所)に沿う方向、つまりレーザ光3aの走査方向(矢印m)と同一方向にした場合、シール材24は切断箇所11の長さ方向に複数のレーザ光3aが同時に照射されて除去部24aが形成され、1つの切断箇所11に対する加工速度を向上させることができる。
【0044】
一方、同時に照射される複数のレーザ光3aの分岐方向を、レーザ光3aの走査方向と任意の角度に設定した場合、図6に示すように、シール材24は、切断箇所11の直交する方向に対して幅広い除去部24aが形成される。つまり、切断箇所11に対しての直交方向とレーザ光3aの分岐方向とがなす角θ(図6参照)を、0度を超える90度未満の範囲で設定することができる。例えば角θを0度から大きくしていくと、照射エリアの幅は狭くなっていき、角θの値をある程度以上にすると、複数の照射がつながって、図6に示すように、1つの幅広な除去部24aが形成される。これにより、スクライブ工程でのスクライブ線12の形成位置のずれや2次ブレーク工程での切断位置のずれに対応することができ、スクライブ精度および切断精度の低下を防ぐことができる。ただし、角θを90度とした場合は、レーザ光3aが分岐されない場合と同じ状態になるため、1つの幅広な除去部24aを形成するときは、90度は含めない。
【0045】
また、同時に照射される複数のレーザ光3aの分岐方向を、切断箇所11に対して直交する方向にし、同時に複数の切断箇所11に対して各レーザ光3aをそれぞれ照射すると、各切断箇所11にそれぞれ除去部24aが形成される。これにより、パネル27に対する加工速度を向上させることができる。
【0046】
このように、TFD液晶表示装置100の製造過程において、シール材24を介して接合された2枚のガラス基板21,31からなる短冊状に切断されたパネル27である被加工物10のシール材24に、分岐方向がレーザ光3aの走査方向と同一方向になるように分岐させたレーザ光3aを照射することによって、除去部24aを形成するようにしたので、1つの切断箇所11に対応する加工速度を向上させることができる。また、分岐した複数のレーザ光3aを被加工物10の切断箇所11が幅広になる任意の角度になるように照射し、シール材24を幅広い領域で変質または除去して除去部24aを形成するようにしたので、この幅広い除去部24aによりスクライブ工程でのスクライブ線12の形成位置のずれによるスクライブ精度および2次ブレーク工程での切断位置のずれによる切断精度の低下を防ぐことができる。これにより、接合層による切断精度の低下を回避することができ、製造効率(歩留まり)を向上させることができる電子部品の製造方法を得ることができる。
【0047】
なお、上述の実施の形態2では、位相格子8により複数のレーザ光3aに分岐し、各分岐したレーザ光3aを集光レンズ5により集光させて被加工物10に照射するようにした場合を示したが、集光レンズ5を省略し、例えばフルネル型構造の位相格子のように位相格子自体に分岐と集光の作用を持たせるようにしてもよい。この場合も同様の効果を奏する。
【0048】
また、上述の実施の形態1,2では、例えば携帯電話などの液晶表示部として実装されるTFD液晶表示装置100を製造する場合について説明したが、TFT(Thin Film Transistor)液晶表示装置、有機ELパネルおよびプラズマパネル等の表示装置や半導体装置を製造する場合にも本発明を実施することができ、表示装置は特にノートパソコン、PDA(Personal Digital Assistance)、テレビ電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カーナビゲーション等のモバイル機器に多く利用される。そして、これらの場合も同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の電子部品の製造工程のフローチャート。
【図2】図1に対応した基板の状態を示す説明図。
【図3】図1に対応した基板の状態を示す説明図である(図2の続き)。
【図4】本発明の実施の形態1のレーザ加工装置の構成説明図。
【図5】本発明の実施の形態2のレーザ加工装置の要部の構成説明図。
【図6】図5のレーザ加工装置のレーザ光の進行状態を示す説明図。
【図7】従来のTFD液晶表示装置の製造途中の基板の平面図。
【図8】従来のTFD液晶表示装置の製造工程のフローチャート。
【図9】図8に対応した基板の状態を示す説明図。
【図10】TFD液晶表示装置の製造過程の切断装置の説明図。
【図11】従来のTFD液晶表示装置の液晶パネルの平面図。
【図12】従来の予備エリアが省略された基板の状態を示す説明図。
【図13】図12の基板の切断状態を示す説明図。
【符号の説明】
1 レーザ発振器、3,3a レーザ光、5 集光レンズ、7 レーザ加工装置、8 位相格子、10 被加工物、11 切断箇所、12 スクライブ線、21 ガラス基板、24 シール材(接合層)、24a 除去部、26,27 パネル、29 液晶パネル、31 ガラス基板、100 TFD液晶表示装置。

Claims (17)

  1. 基板間に配設された接合層にレーザを照射して前記接合層に除去部を形成することを特徴とするレーザ加工方法。
  2. 接合層を介して接合された基板を切断する際の前記接合層を切断するときに、前記接合層にレーザを照射して除去部を形成することを特徴とするレーザ加工方法。
  3. 複数の電子部品が形成された接合層を有する基板を切断する際の前記接合層を切断するときに、前記接合層にレーザを照射して除去部を形成することを特徴とするレーザ加工方法。
  4. 前記レーザを複数のレーザ光に分岐し、前記分岐された複数のレーザ光を前記接合層に照射することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のレーザ加工方法。
  5. 前記複数のレーザ光を、前記基板の各接合層にそれぞれ同時に照射することを特徴とする請求項4記載のレーザ加工方法。
  6. 前記複数のレーザ光の分岐方向と前記レーザ光の走査方向とを任意の角度とすることを特徴とする請求項4または5に記載のレーザ加工方法。
  7. 前記基板の切断位置に対応する接合層に前記除去部を形成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のレーザ加工方法。
  8. 前記接合層は、切断前の前記基板に形成された隣り合う電子部品の共有されるシール材としたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のレーザ加工方法。
  9. 前記接合層は前記基板を介してレーザ光が照射されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のレーザ加工方法。
  10. 前記レーザ光が照射される側の基板を前記レーザ光が透過する材料により構成したことを特徴とする請求項9記載のレーザ加工方法。
  11. 請求項1乃至10のいずれかに記載のレーザ加工方法により、基板間に配設された接合層にレーザを照射することを特徴とするレーザ加工装置。
  12. レーザを発振するレーザ発振器と、前記レーザ発振器からのレーザを基板に配設された接合層に集光する集光手段とを備えたことを特徴とする請求項11記載のレーザ加工装置。
  13. 前記レーザ発振器から発振されたレーザを複数のレーザ光に分岐する位相格子を備えたことを特徴とする請求項12記載のレーザ加工装置。
  14. 基板間に接合層を配設して複数の電子部品を形成し、前記形成された各電子部品を部品毎に切断して前記電子部品を形成する電子部品の製造方法であって、
    前記基板間の接合層にレーザを照射して除去部を形成する接合層除去工程を備えたことを特徴とする電子部品の製造方法。
  15. 前記接合層除去工程の後に、前記基板の前記除去部に対応する位置にスクライブ線を形成するスクライブ工程を備え、前記スクライブ工程の後に、前記基板を前記除去部に対応する位置で切断するブレーク工程を備えたことを特徴とする請求項14記載の電子部品の製造方法。
  16. 前記接合層除去工程の後に、前記基板の前記除去部に対応する位置で切断加工する切断工程を備えたことを特徴とする請求項15記載の電子部品の製造方法。
  17. 前記接合層除去工程において、前記レーザを複数のレーザ光に分岐し、前記分岐された複数のレーザ光を前記基板間の接合層に照射することを特徴とする請求項14乃至16のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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