JP2004141017A - ハウス被覆用空気膜形成フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の農業用ハウス用のフィルムは、空気の密封性を増すために二重構造となっている空気膜形成フィルムの少なくとも両側長手方向端辺は熱溶着または接着による密閉形態とした。また、送風弁取り付けに足場を組んだり厄介な作業を必要とすることがないようにポリオレフィン系樹脂フィルム製のチューブが二重構造となっている空気膜形成フィルムの表裏いずれかの面を貫通し、該チューブの外面のみ前記空気膜形成フィルムに溶着して取り付け、送風口とした。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、農業用ハウスの被覆に用いる保温性に優れた空気膜ハウスフィルムの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハウスの保温性強化策として、ポリオレフィン系フィルムやフッ素フィルムを二枚重ねて被覆した後、内面被覆フィルムに穴をあけて送風弁を設け、30から100Wのブロアに設けた送風ダクトに取り付け、二枚重ねたフィルムの中間に空気を送り込み、空気層を設け、被覆フィルムの保温性を強化する技法が開発されてきた。透光性空気膜フィルムの天面位置の室温は、一枚被覆フィルムにおける天面位置の室温よりも高く、過冷却の影響をうけにくく、フィルム内面の結露が少なく、水滴付着による太陽光線の透過低下がなくなる。この技術は例えば特開昭52−81242号公報(特許文献1)、実公昭58−44839号公報(特許文献2)そして実公昭58−44840号公報(特許文献3)などに提示されている。この技法を用いると、保温性が高いこと等上記の効果の外に、耐風性が増すこと、耐降雪性にもすぐれていることがわかってきた。
【0003】
ところが、この種先行技術には次に示すような欠点があった。すなわち、フィルム設置時の問題として、▲1▼に、フィルム被覆作業が二回必要で、被覆作業時間が従来法の二倍以上を要してしまうという問題がある。通常、フィルム被覆は、風のない時か或いは弱い時に行うようにしており、例えばフィルムの一枚目被覆終了時に、風が強くなってくると、作業を中断したり二枚目の被覆は翌日に変更せねばならないなどの欠点があった。▲2▼に、フィルム被覆後、足場の悪い高い位置に、上を向いた姿勢でフィルム内面に穴をあけて送風弁を取り付けなければならないといった、厄介な作業を伴う。▲3▼に、従来のものにおいて慣行使用されているスプリングはめ込め式のフィルム固定具のみで二重構造端部を固定すると、空気漏れが生じ易く、高価な大型のブロアを使用したり、或いは空気漏れを防ぐフィルム固定具を新たに設置したりせねばならなくなり、設備費用に新たな費用が発生し、高コストを招くことになる。
また、フィルム自体の問題として、▲1▼防曇剤混入フィルムを使用すると、2シーズン目より被覆フィルム内面に水滴付着量が増し、フィルムの透光性が著しく低下し、昼間の昇温性が低下する。▲2▼ハウス支柱間隔が1m以上だと内側に膨らんだ被覆フィルムの内面の膨らんだ頂点内に結露水が溜り、水滴がハウス内に落ち、栽培作物に病気をもたらす危険性があるといった問題を抱えていた。
【0004】
【特許文献1】特開昭52−81242号公報
発明の名称「農業用ハウスの温度調節法並びに温度調節用プラスチックフイルム」
【特許文献2】実公昭58−44839号公報
考案の名称「二重被覆ハウス」
【特許文献3】実公昭58−44840号公報
考案の名称「農業用二重被覆ハウス」
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、二枚重ねのフィルムの中間に空気を送り込み、空気層を設けたハウス被覆用フィルムにおいて、上記の諸問題を解決すること、すなわちフィルム被覆作業が従来の農業用ハウス並で済み、送風弁取り付けに足場を組んだり厄介な作業を必要とすることがなく、空気の密封性を増すと共に新たな部品と施工機器を必要とせず従来のハウス構造体をそのまま使用出来る農業用ハウス用空気膜フィルムを提供することにある。また、内張りカーテンを必要としない断熱性の高いハウス用フィルムを、ハウス内の室温を外気温より下げるフィルムを、提供すること、更には夏の高温と冬の低温に対応するフィルム設置方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の農業用ハウス用のフィルムは、空気の密封性を増すために二重構造となっている空気膜形成フィルムの少なくとも両側長手方向端辺は熱溶着または接着による密閉形態とした。また、送風弁取り付けに足場を組んだり厄介な作業を必要とすることがないように75〜200μm厚のポリオレフィン系樹脂フィルム製の適当な幅のチューブが二重構造となっている空気膜形成フィルムの表裏いずれかの面を貫通し、該チューブの外面のみ前記空気膜形成フィルムに溶着して取り付け、送風口とした。そしてそのチューブ内面が熱溶着しないように、チューブの内面にチューブ構成樹脂より融点の高い紙又は布又は樹脂を介在させるようにした。更に、上記のハウス天井部分の空気膜用二重フィルムの他ハウス両側壁部分のフィルムを二度に亘るフィルム張り作業とならないように、上記二重フィルムの端辺に連設一体的に取り付けた構成とした。そして、このハウス両側壁部分のフィルムを巻き上げ構造として通気性を確保し、夏場におけるハウスの過昇温防止機能をもたせるようにした。
【0007】
また、夏の高温時空気膜の送風を止めてもポリオレフィン系フィルムと防曇剤被膜の面との融着が起こらないように、本発明の農業用ハウス用の空気膜形成フィルムは、防曇剤を塗布したもの若しくは防曇剤練込製品を用い、該防曇剤塗布面、または防曇剤練り込み面が重ね面で同方向を向くように配置し、ハウスへフィルムを被覆するときには、内側に防曇剤が向くようにして張るようにした。
本発明の農業用ハウス用のフィルム空気膜は、外面に比べて内面のふくらみが少なく、断面図で表すと羽子板状になるように、ハウスの内面側のフィルム厚が厚かったり、糸やクロスで補強したものを用いたり、或いは、フッ素やポリエステル等の硬質フィルムを用いるようにし、弱い空気圧下では、外面の膨らみのほうが内面の膨らみより大きくなるように構成した。
本発明の農業用ハウス用のフィルムは、巻き上げ操作によって防曇剤が剥がれることがないように巻き上げフィルムは防曇剤を練り込んだフィルムを採用した。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の農業用ハウス用のフィルムは、二枚重ねのフィルムの中間に空気を送り込み、空気層を設けたハウス用フィルムにおいて、一枚ずつのフィルムをハウス構造体に順次被覆してゆく従来作業が厄介であることに鑑み、フィルム被覆作業が従来の農業用ハウス並で済む施工法を提示すること、また、2枚のビニールフィルム間に空気を送り込む送風弁取り付けに足場を組んだり上を向いた厄介な作業を必要とすることがなく、かつ空気の密封性を増すと共に新たな部品を必要とせず従来のハウス構造体並びにその施工機器をそのまま使用出来る農業用ハウス被覆用空気膜フィルムの施工法を提示することを目的としスタートしたものである。
まず、2枚のフィルムを予め重ねて端部を熱溶着等により一体構造とすること、更に従来ハウス構造体にフィルム固定用スプリングで固定していたものを、密封性の向上を計るため空気膜室の周囲、少なくとも両側長手方向端辺を熱シール加工を施すなどして一体化加工することに想到したものである。図1に2枚のビニールフィルムを重ねた農業用ハウス被覆用空気膜フィルム1の断面を示す。図の両端に示されている熱溶着された部分4が紙面表裏方向に延在して長手方向に気密構造を形成する。この部分4はハウスに被覆された状態では図4においてフィルム固定用スプリング7によって取り付けられている部分に当たる。二枚のフィルム1が一体構造とされているので、ハウス構造体にフィルムを張る際に2回に分けてフィルムを張る必要が無くなり、図4に示すように新たな固定具を要することも無く、従来のハウス構造体にフィルム固定用スプリング7で固定するだけで被覆することができ、二重構造となっているフィルム間の気密性を増した空気膜形成フィルム1を安定的に形成できる。また、図2に給気口2の局部を拡大図示したようにハウス構造体にフィルムを張る前に予め二重構造となっている空気膜形成フィルム1の表裏いずれかの面に穴を空け、該空気膜形成フィルム1を貫通した75〜200μm厚のポリオレフィン系樹脂フィルム製の適当な幅のチューブ2を該チューブ2の外面のみ前記空気膜形成フィルムに熱溶着3させる等して取り付け、給気口とする加工を施しておく。こうしておくことで、このチューブ2にブロア6を接続させて簡単に送風することができ、足場を組んだり上を向いて行なう厄介な作業を必要とするハウス構造体にフィルムを張った後における従来の送風弁取り付け作業を不要とした。そしてその際チューブ2の内面にチューブ構成樹脂より融点の高い紙又は布又は樹脂を介在させることでそのチューブ内面が熱溶着しないようにすることができる。以上のように空気膜を形成するフィルムの周囲を密封度よく封着し、貫通チューブによる給気口も機密性よく取付けられている上に空気膜形成フィルムにガス透過性の低いフィルムを採用すると、更に気密性が増し大きな送風機を必要とせず、常時送風する必要もなくなる。
【0009】
更に、本発明ではハウス両側壁部分のフィルムを張る作業が上記のハウス天面部分の空気膜形成用の二重フィルム1を張る作業に加えて、別の二度に亘る作業とならないように、上記二重フィルムの端辺に熱溶着等の手段によって予め一体的に取り付けられた構成とした。すなわち、図3に断面図として示したようにハウスの両側壁面を覆うフィルム5を空気膜形成フィルム1の端辺に挟んで該端辺を熱溶着4または接着等して密封一体化加工を行うものである。このことにより、二重の空気膜形成フィルム1の他ハウス両側壁部分のフィルム5をも一体化してすべてのフィルム張り作業を一回の作業で行なえるようにしたものである。そして、このハウス両側壁部分のフィルム5を図4や図5に示したような巻上げ機9によって該フィルムを巻上げパイプ10に巻き付ける巻き上げ構造としてハウス内の通気性を確保し、夏場におけるハウスの過昇温防止機能をもたせるようにした。図4のものは巻上げ用フィルム5をひも8で巻上げフィルムを抑える形態のもので、図示の状態はフィルム5を下ろし側壁を閉鎖したところ。図5のものは巻上げ用フィルム5を帯状体8で巻上げフィルムを抑える形態のもので、図示の状態はフィルム5を巻上げ側壁を開放したところである。両図ともブロア6から送風され、送風チューブ2を介して二重のフィルム空間に給気がなされ、空気膜が形成された状態を示している。前記巻き上げフィルム5には防曇剤を練り込んだものを採用することによって、繰返す巻上げ作業によっても防曇剤の剥がれ落ちがないようにし防曇効果の持続性を確保するようにした。本発明のハウス被覆フィルムは図3に示されるように巻上げフィルム5を空気膜形成フィルム1の端辺に挟んで熱溶着4等して密封一体化加工を施したものであるから、従来のハウス構造体におけるフィルム固定用スプリング7によるフィルムの固定だけで空気層の密封度と安定した固定が確保できる。
また、2シーズン以上使用する空気膜フィルム1には防曇剤を塗布したものを用いるものとし、1シーズン使用の場合は、防曇剤練込製品を使用する。その理由は防曇剤練込製品の場合、2シーズン目より被覆フィルム内面に水滴付着量が増し、フィルム1の透光性が低下し昼間の昇温性が悪くなるためである。また、図1および図3に示したように防曇剤塗布面、または防曇剤練り込み面が同方向を向くように積層し、ハウスに被覆し空気膜形成フィルム1として使用する際には、ハウスの内側に防曇剤が向く構造にした。このように構成することにより、夏場空気を吸入せず空気膜を作らない状態でも農業用ポリオレフィン樹脂と防曇剤被膜の融点が異なるため、両フィルム面が熱溶着することがないのである。
【0010】
本発明では空気膜フィルム1の内面と外面は、同質で厚みの異なるフィルム又はクロス材又は糸等で補強したフィルム又はフッ素やポリエステルなど材質の異なるフィルムを使用するようにした。それは空気膜ハウスの内面側のフィルム厚が厚かったり、糸やクロスで補強したものを用いたり、或いは、フッ素やポリエステル等の硬質フィルムを用いると弱い空気圧下では、外面の膨らみのほうが内面の膨らみより大きくなり、外面に比べて内面のふくらみが少なく、その断面形状を上側に凸となる羽子板状とするためである。こうすることでハウス構造体の骨組み間隔を広く設計することが可能となり、コストダウンにつながる。
また、本発明ではパイプハウスの曲面より適当分上の位置に巻上げフィルム5を両側面に配すると共に、ハウスにおいて空気膜形成フィルム1の被覆側面比率を50%以上とするフィルムをハウスに被覆設置した。因みに従来のものは30%までしか開けられず、それに較べ換気効率が上がることになる。そして、この空気膜形成フィルム1は、全光線透過率90%以上、厚さ50〜200μmのポリオレフィン樹脂を採用することにより、日中の昇温効果と夜間の保温効果を高めることができる。
また、空気膜構成フィルム1として、通気性の低いポリビニアルコールやナイロン樹脂等やそれらの変性態を採用し、積層の一層に用いて使用することにより、フィルム面を透過する空気量を少なくできるので、空気膜を形成するための給気量を少なくすることが可能となり、小型のブロアーで対応できるものである。更には送風を常時続行する必要が無くなり、運転を停止することも可能となる。
【0011】
[実験例1]
茨城県にて、間口4.5m×奥行き10mの東西に二棟並んだ単棟ハウスに、100μm厚で防曇剤を内面に塗布した農業用ポリオレフィンフィルムを用いて、二重空気膜被覆率60%としたものと、慣行一重被覆を行ったそれぞれのハウスの室温等を比較しようというもので、空気膜フィルムの最内面は、厚さ100μm幅10cm農業用ポリオレフィンフィルムを平チューブにしたフィルムを空気膜最内面のフィルムに切り目を入れ、平チューブの内面に適当な厚さのクラフト紙をはさみ、貫通後熱溶着して給気口として使用した。送風ブロアは、30ワットのものを使用した。フィルムの固定は、慣行のスプリング使用固定具のみを使用した。この実験施設において以下のデータを採取した。
【0012】
次のデータは照度測定であるが、12月6日雨天と12月7日晴天日にかけて測定した。結果を図6に示す。雨天においては二重被覆のハウスの照度も慣行一重被覆ハウスの照度も大差は無く、晴天日の日中午前10時〜午後3時前まで慣行一重被覆ハウスの方が照度が高くなっている。因みに雨天における積算照度は二重被覆のハウスで118.927、慣行一重被覆ハウスでは135.281であり、晴天では二重被覆のハウスで664.104、慣行一重被覆ハウスでは773.478であった。
また、ハウス内の気温と地温の比較は図7に結果を示す。11月21日夕刻より25日明け方までの測定でほぼ1日サイクルの変化パターンを確認した。当然のことながら、日中と夜間の温度差は気温において大きく地温においては小さい。二重被覆のハウスと慣行一重被覆ハウスとでは二重被覆のハウスの方が温度は1乃至3℃高めになっている。この時期は晩秋であることから、日中の昇温性も夜間の保温性も二重被覆のハウスの方が勝ることが判る。
1月11日0時からから15日24時までの気温と地温を測定した結果を図8と図9に示す。このときのデータからも日中の昇温性も夜間の保温性も二重被覆のハウスの方が勝ることが示されている。最低気温については1〜1.5℃二重被覆のハウスの方が高く、平均温度では2.7度二重被覆のハウスの方が高い。また、最低地温については0.4〜1.5℃二重被覆のハウスの方が高く、平均地温では1.8度二重被覆のハウスの方が高いことを示している。
【0013】
[実験例2]
宮城県にて、間口7m奥行き×60mのハウスに、防曇剤を塗布した100μm厚の農業用ポリオレフィンフィルムを上述同様の給気口を設けたフィルムを被覆し、30ワットの送風ブロアを用いて空気膜形成フィルムの膨らみを調査した結果、先の茨城県における奥行き10mのハウスの場合と同様の結果であり、空気膜が膨らむまで6時間はかかったものの本発明の空気膜形成フィルムには小型のブロアを使用できることが実証できた。
ハウス内天井から1mの位置を上、中間高さを中、作物の葉下10cmの位置を下として測定点とした。その2002年2月7日から9日にかけた測定結果は表1乃至3に示したもので、それを図10にグラフ表示した。ここでエアーハウスとしたものが天井部分を二重構造としエアーを吹き込んだ本発明に係るハウスであり、対照ハウスとしたものが従来の一重構造のハウスである。
【0014】
【表1】
【表2】
【表3】
この結果から明かなことは、まず、上部のデータから本発明に係るエアーハウスは夜間の保温性に優れていることが顕著に示されている。夜間の放熱は天井部部で最も多いものと予測されるが、その部分がエアー層を介した二重構造となっていることがこの効果に貢献しているものと解される。9日22時にはその温度差は4.3℃、8日未明の3時30分には温度差3.4℃と特に冷え込みの激しいときにその効果を発揮している。また、作物の位置では、夜間の保温性も認められるが、日中の昇温性に優れていることがよく分かる。9日11時29分には最高温度差7.8℃を示している。グラフからは見え難いところであるが、これは本発明に係るハウスが日照により急激に温度上昇することを示しており、8日10時30分温度差7.3℃と他の昇温時点でも同じ傾向が見られる。また、7日14時30分温度差3.5℃、8日15時30分温度差3.6℃、9日14時29分温度差4.7℃とあるように急激に温度が下がるときにもその保温性のため、温度差が大きく現われる。上がり易く冷え難いということは作物位置においてある一定温度以上を保つ時間が長いことにつながり、作物の成長には重要なこととなる。因みにこの3日間で作物位置が15℃以上であった積算時間は対照ハウスで19時間であるのに対し、本発明に係るエアーハウスでは24時間半ということで差は5時間半ということになる。路地との差では無くハウス同士でこのような大きな差が出ることに注目すべきであろう。
【0015】
[実験例3]
宮城県にて、間口7m×奥行き20mのハウスに、上述同様の給気口を設けた空気膜形成フィルムを用いて、空気膜被覆率70%とした本発明の空気膜形成フィルムのハウスと、南北に横並びで設置した慣行一重被覆のハウスで共に内張りカーテンを使用した結果を比較すると、本発明に係る空気膜ハウスの夜間温度が平均で5℃高い結果が認められた。
【0016】
[実験例4]
福島県いわき市において、平成12年9月〜13年12月まで、フィルム被覆内面の水滴付着量を調査した結果、防曇剤練りこみタイプの水滴付着量は、1年3ケ月経過後3.6g/20cm×20cmで、防曇剤塗布フィルムは1.4g/20cm×20cmであり、防曇剤練りこみタイプは、水滴付着量が多く、長期の防曇持続性に劣る結果であった。
【表4】
※水滴付着量は20cm×20cm吸湿紙で、農業用ポリオレフィンフィルムに付着
した水分量を測定したものである。
【0017】
[実験例5]
平成12年12月から13年12月まで、秋田県にて間口7m×奥行き20mのハウスで100μm厚の防暑剤練りこみタイプの農業用ポリオレフィンフィルムを用いて、二回の被覆作業をして被覆後、内面のフィルムに穴をあけ金属の送風弁を取りつけ、50ワットのブロアを用いて空気膜ハウスを設置し、東西に並んだ慣行のハウスと比較して、空気膜ハウスは降雪による雪が積もりにくい結果を得た。
原因は、空気膜の上に積もった雪が、風でフィルムがゆれ、その影響でフィルムの上に積った雪が滑り落ちるものと推察される。防曇剤練り込みフィルムを使用した空気膜フィルムは、使用期間が1シーズンを越すと空気膜内に結露現象を呈し、透光性が著しく低下する。そのための昼間の昇温不足からか、防曇性が良好の時と比べて夜温が高くなかった。又、結露したフィルムを使用すると空気膜内面に水が溜まるという問題も発生した。
茨城、宮城での実証例では、防曇剤練り込みフィルムではなく防曇剤を塗布したフィルムを使用したため、1シーズン使用後の被覆内面の結露は発生せず、結露に起因する保温性の低下、透光性の低下は発生しなかった。
【0018】
[実験例6]
現行の農業用ポリオレフィンフィルムは通気性が高いため、常時空気を送風しなければ空気膜の形成・維持ができないが、ガスバリアー性の高いポリビニアルコールやナイロン樹脂を使用することにより、常時空気を送風しなくてすむ空気膜ハウスを実現することができる知見を得た。その際、給気ガスとして空気以外のチッソや炭酸ガスを用いるとガス漏れが少なく、常時送風することなく空気膜ハウスを実現することができ、しかも空気より断熱性が高くなる。
【0019】
[実験例7]
慣行ハウスにおいて側面巻き上げ換気を行うと、夏季の高温時被覆内面の室温は、6℃外気温より高くなり、慣行巻上げ換気位置より1〜1.5m高い位置まで巻き上げて換気を行うと、ハウスの軒高によって若干の差があるが、ハウス内の室温は、おおよそ外気温並になることが確認された。
パイプハウスのアーチに対して空気膜被覆率50%で側面巻き上げフィルムを慣行フィルムより、15%程度長いフィルムを用いて空気膜フィルムを使用すれば、冬季の夜間気温はその保温効果により少なくとも慣行ハウスよりは高くなり、夏季は換気面積が増えるので、被覆内の室温は慣行ハウスより低くなり外気温にかなり近づいたハウスを実現することができる。
【0020】
【発明の効果】
本発明の農業用ハウス用のフィルムは、二重構造となっている空気膜形成フィルムの少なくとも両側長手方向端面は熱シール加工を施す等の溶着により一体形成されているので二度張りの必要がなく、封入空気の密封性にも優れている。また、二重構造となっている空気膜形成フィルムの両側長手方向端部位置に、巻き上げフィルムを熱溶着して一体的に取り付けたことにより、側面の巻き上げフィルム部分まで一回で被覆できるので、被覆設置作業時間が従来の半分以下になる。密閉形態とした。
被覆した空気膜ハウスフィルムの水滴付着量が少ないため、透明持続性増し、被覆内面の保温性も向上する。高保温性を有すので、暖房費を節約できる。内張りカーテンなしでも同等の保温性が発揮でき、ハウス内の内張りカーテン支持針金などの用具不要になり、ハウス内での作業性が向上し、ハウス内の光をさえぎる要素が少なくなる。空気漏れが少なく慣行の用具で設置でき、ローコストで設置できる。夜温が慣行の被覆方法に比べて2〜5℃高くなり、内張りカーンがなくても同等の効果が得られ内張りカーテン設備が不要に成り、ハウス設置費用が軽減できる、といった効果を奏する。
【0021】
また、本発明の農業用ハウス用のフィルムは、二重構造となっている空気膜形成フィルムの表裏いずれかの面に、該空気膜形成フィルムを貫通した75〜200μm厚のポリオレフィン系樹脂フィルム製の適当な幅のチューブをチューブの外面のみ前記空気膜形成フィルムに溶着して取り付け、給気口としたので、従来の送風弁の取り付け作業が平易になり、被覆したフィルムに穴をあける時、誤って切りすぎたりする作業ミスや手を上に挙げたままの姿勢による作業より開放され、高い位置での作業時間が短縮できる。そして、チューブの内面にチューブ構成樹脂より融点の高い紙又は布又は樹脂を設けるようにすることで、チューブ内面が熱溶着してしまうようなことがない。
本発明の空気膜形成フィルムについても防曇剤を塗布したもの若しくは防曇剤練込製品を用い、該防曇剤塗布面、または防曇剤練り込み面が重ね面で同方向を向くように配置し、ハウス構造体へフィルムを被覆するときには、内側に防曇剤が向くように張れるようにすることで、防曇効果の持続性を増すと共に、夏季において給気をしていない状態でも重なっているフィル面が溶着してしまうようなことがない。
【0022】
二重構造となっている空気膜形成フィルムの内面と外面は、同質で厚みの異なるフィルム、クロス材や糸等で補強したフィルム又はフッ素やポリエステルなど材質の異なるフィルムを使用したものである本発明は、空気層断面を羽子板状に上に凸とすることができるため、ハウスの骨組間隔を慣行ハウスより広くすることができ、ハウス設置費用が安上がりになる。
巻き上げフィルムとして防曇剤を練り込んだフィルムを採用した本発明は、繰返す側壁を被覆するフィルムの巻上げ操作に対して防曇剤が剥げ落ちてしまうようなことが無くその防曇効果を持続させることができる。
空気膜構成フィルムとして、通気性の低いポリビニルアルコール、ナイロン樹脂又はそれらの変性態を積層の一層に用いた本発明は、フィルム面からの空気の透過が殆どなく、気密性が高いため大型のブロアを必要とすることがない上、給気を停止ても空気層を維持することができるなど、コストダウンに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のハウス被覆用空気膜フィルムの断面図である。
【図2】本発明のハウス被覆用空気膜フィルムの給気口部分の拡大図である。
【図3】本発明のハウス被覆用空気膜フィルムに巻上げフィルムを一体化したものの断面図である。
【図4】本発明のハウス被覆用空気膜フィルムをハウスに被覆した形態を示す図で、巻上げフィルムを下ろした状態である。
【図5】本発明のハウス被覆用空気膜フィルムをハウスに被覆した他の形態を示す図で、巻上げフィルムを巻上げた状態である。
【図6】実験施設でのハウス内での二重被覆のハウスと慣行一重被覆ハウスのハウス内照度を比較したデータのグラフである。
【図7】実験施設でのハウス内での二重被覆のハウスと慣行一重被覆ハウスのハウス内気温と地温を比較したデータのグラフである。
【図8】実験施設でのハウス内での二重被覆のハウスと慣行一重被覆ハウスのハウス内気温を比較したデータのグラフと最低気温と平均気温を比較したデータである。
【図9】実験施設でのハウス内での二重被覆のハウスと慣行一重被覆ハウスのハウス内気温を比較したデータのグラフと最低地温と平均地温を比較したデータである。
【図10】実験施設でのハウス内での二重被覆のハウスと慣行一重被覆ハウスのハウス内の上中下各位置における気温を比較したデータのグラフである。
【符号の説明】
1 ポリオレフィン系フィルム 1a 防曇剤塗布部
2 チューブ 7 フィルム固定用スプリング
3,4 熱溶着部(接着部) 8 巻上げフィルム抑え
5 巻上げフィルム 9 巻上げ機
6 ブロアー 10 巻上げパイプ
Claims (10)
- 二重構造となっている空気膜形成フィルムの少なくとも両側長手方向端辺は熱溶着または接着により密閉形態とした農業用ハウス被覆用のフィルム。
- 75〜200μm厚のポリオレフィン系樹脂フィルム製の適当な幅のチューブが、二重構造となっている空気膜形成フィルムの表裏いずれかの面を貫通すると共に、該チューブの外面のみが前記空気膜形成フィルムに熱溶着または接着にて気密に取り付けられ、給気口とされた農業用ハウス被覆用のフィルム。
- チューブ内面が溶着しないように、チューブの内面にチューブ構成樹脂より融点の高い紙又は布又は樹脂を介在させた状態で熱溶着したことを特徴とする請求項2に記載の農業用ハウス被覆用のフィルムの給気口取り付け方法。
- 空気膜形成フィルムは防曇剤を塗布したもの若しくは防曇剤練込製品を用い、該防曇剤塗布面、または防曇剤練り込み面が重ね面で同方向を向くように配置し、ハウス構造体へフィルムを被覆するときには、内側に防曇剤が向くように張ることにより、空気膜非形成時に両面が溶着することが無いようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の農業用ハウス被覆用のフィルム。
- 二重構造となっている空気膜形成フィルムの内面と外面は、同質で厚みの異なるフィルム、クロス材や糸等で補強したフィルム又はフッ素やポリエステルなど材質の異なるフィルムを使用することにより、空気膜形成時には上に凸の羽子板状になることを特徴とする請求項1、2または4のいずれかに記載の農業用ハウス被覆用のフィルム。
- 空気膜形成フィルムは、酸化チタン或いはアルミを混練り又は蒸着し、遮光率90%以上、可視光反射率70%以上のフィルムを使用したものである請求項1、2、4および5のいずれかに記載の農業用ハウス被覆用のフィルム。
- 二重構造となっている空気膜形成フィルムの両側長手方向端部位置に、側面換気用巻き上げフィルムを熱溶着または接着して一体的に取り付けたことを特徴とする請求項1、2、4、5、および6のいずれかに記載の農業用ハウス被覆用のフィルム。
- 二重構造となっている空気膜形成フィルムが蒲鉾型ハウスの被覆側面比率50%以上となる請求項7に記載の農業用ハウス被覆用のフィルム。
- 巻き上げフィルムは防曇剤を練り込んだフィルムである請求項7又は8に記載の農業用ハウス被覆用のフィルム。
- 空気膜構成フィルムは、通気性の低いポリビニルアルコール、ナイロン樹脂又はそれらの変性態を積層の一層に用いたフィルムを使用することにより、空気の気密性を高め給気量を少なくできることを特徴とする請求項1、2または請求項4乃至9のいずれかに記載の農業用ハウス被覆用のフィルム。
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