JP2004140577A - 対応関係定義データ作成用格子点決定方法、画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラム - Google Patents
対応関係定義データ作成用格子点決定方法、画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラム Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】各色インク量を成分としたインク量格子点の配置の平滑程度を評価するインク量格子点平滑程度評価関数とCMYの各色成分で規定されるCMY格子点の配置の平滑程度を評価するCMY格子点平滑程度評価関数とを規定し、上記インク量格子点平滑程度評価関数とCMY格子点平滑程度評価関数とを個別に極小化した状態のCMY格子点およびインク量格子点を対応関係定義データ作成用格子点とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、対応関係定義データ作成用格子点決定方法、画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ディスプレイやプリンタ等の画像機器は、通常各画素の色を特定の色成分で階調表現したカラー画像データを使用している。例えば、R(レッド),G(グリーン),B(ブルー)の3色を使用したRGB色空間やC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)系統の色を使用したCMY系色空間(lc:ライトシアン,lm:ライトマゼンタ,DY:ダークイエロー,K:ブラックを含む)等種々の色空間で色を規定して画像データとしている。これらの色は一般に画像機器固有の機器独立色であるので、種々の画像機器間で同じ画像を同じ色で出力可能にするために各機器での色の対応関係を規定したLUT(ルックアップテーブル)が用いられている。
【0003】
当該LUTにおいて各画像機器で出力可能な色の総てについて対応関係を規定することは、記憶容量抑制やLUT作成時の作業性等の関係で非現実的であるため、通常、特定数の代表色について対応関係を規定しておき、他の任意の色については補間演算によって対応関係を算出している。すなわち、膨大な数の色について測色を行うことをせず、実際に測色可能な範囲で画像機器から色を出力して測色を行うことによって特定数の代表色についてのLUTを規定している。
【0004】
LUTを作成する前には、測色対象となるこれら特定数の色、すなわち色空間内での複数の格子点を決定する必要がある。従来の格子点決定方法としては、分版処理が挙げられる。この分版処理においては、例えば、RGB空間に立方格子点を規定し、各色の最大階調値である”255”から各格子のRGB値をそれぞれ減じて仮想のCMY値とする。CMYの3色では印刷装置のインク数に一致しないため、特定の変換関係を規定してこの3色を6色に変換するなどしてインク色を成分とする格子点を決定するなどしている。尚、分版処理以外の格子点決定方法として例えば特許文献1が挙げられる。
【特許文献1】
特願2002−2061号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の格子点決定方法では、色空間の全体にわたって、精度よく、また、グラデーションに局所的な色飛び(トーンジャンプ)を発生させることなく色変換を可能にする代表色を決定することが困難だった。すなわち、LUTを使用して色の対応関係を算出するには上述のように補間演算等を利用するので、上記特定数の代表色以外の色についての色変換精度や各色間でのバランス(特にグラデーション)等は上記特定数の代表色の選び方に大きく依存する。しかし、上記分版処理においてはある種の規則に沿って3色を6色に変換するなどの処理をしているため、種々の場合に応じて種々の条件を加味しつつ色空間の全体にわたって格子点を最適化することが困難であった。特に、印刷装置においては、印刷用紙に打ち込み可能なインク量の制限や粒状感発生防止のためのKインク使用制限等、種々の条件が特定の色に対して課される。従って、局所的に課される各種条件を加味しながらも全体的にトーンジャンプが発生しない様に代表色の格子点を決定することが非常に困難であった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、色空間の全体においてトーンジャンプを発生させにくい代表色の格子点を決定することが可能な対応関係定義データ作成用格子点決定方法、画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラムの提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明では、対応関係定義データを作成する際に参照される格子点を決定するために格子点の平滑程度を評価する評価関数を規定し、当該評価関数を略極小化することで格子点の位置を最適化しており、色空間の全体にわたってトーンジャンプを発生させにくい代表色格子点を決定するために、複数の評価関数を個別に略極小化する。すなわち、各色インク量を成分としたインク量格子点については、当該インク量格子点の配置の平滑程度を評価するインク量格子点平滑程度評価関数を規定し、CMYの各色成分で規定されるCMY格子点については、当該CMY格子点の配置の平滑程度を評価するCMY格子点平滑程度評価関数を規定する。そして、これらインク量格子点平滑程度評価関数とCMY格子点平滑程度評価関数とを個別に略極小化する。これらの関数は値が小さいほど格子点の平滑程度が良好になるように規定されており、これらの関数を極小化することで格子点の位置が最適化される。すなわち格子点の平滑程度が良好になる。
【0007】
ここで、各関数は個別に極小化されるので、CMY格子点とインク量格子点とはそれぞれ別個に最適化され、CMY色空間中の格子点とインク色を成分とした色空間中の格子点とのそれぞれの位置が各色空間中で最適化される。これらの格子点は別個の関数に基づいて最適化されているので、各色空間での格子点を一対一に対応づけられないが、この最適化後に格子点配置の再調整を行って両者を一定の関係に対応づけることができる。再調整を行うことがあり得るという意味で、上記最適化に際して各評価関数を略極小化することができればよい。すなわち、各評価関数を厳密に極小化されていなくても、一旦極小値を算出して各色空間中の格子点の最適位置を把握した上で再調整を行うことによって、両色空間中の格子点に一定の対応関係を課しながらも評価関数を極小化する格子点位置に近い位置を採用することができる。この結果、トーンジャンプが発生しにくい代表色格子点を有する対応関係定義データを決定することができる。
【0008】
対応関係定義データは印刷装置と他の画像機器とで使用される色の対応関係を定義するデータであればよく、例えば、LUTであってもよいし、色の関係を規定したマトリックス等を含むいわゆるプロファイルであってもよい。また、印刷装置で使用されるインクは通常CMY系のインクであり、本発明に関する印刷装置ではCMYの3色より多数色のインクを使用可能である。例えば、CMYKの4色やCMYKlclmの6色インクあるいはそれ以上の色数のインクを使用可能である。一方、本発明に関する他の画像機器では特定の色成分を使用して各色を表現可能である。例えば、RGBの3色を色成分としたディスプレイ等が想定される。
【0009】
また、RGBの各色はCMYの各色といわゆる補色関係にあり、各色について0〜255の256階調の表現をした場合、”C=255−R,M=255−G,Y=255−B”と考えることができる。この関係は、厳密ではない(測色等による色あわせが行われていない)ものの、RGB色空間の格子点とCMY色空間の格子点を一対一に対応づけることができ、対応関係定義データ作成用格子を決定するに当たり、RGB色空間ではなくCMY色空間の格子点を使用してもよい。
【0010】
このCMY色空間の格子点として規定される各色は、CMY系の色であることから、同じCMY系の色であるインク量と対応づけることができる。例えば、6色のインクを要素としたベクトルに3×6のマトリクスを乗じることによってCMY色空間の色に対応づけることができる。従って、上記CMY格子点平滑程度評価関数によってCMY色空間中の格子点配置を最適化すれば、RGB色空間中の格子点配置も最適化されていると考えることができる。
【0011】
また、CMY色空間の格子点とインク量色空間の格子点は上述のようなマトリクス等で対応づけることができるので、上記評価関数の略極小化に際して各色空間で最適化された格子点のいずれかを固定して他の格子点を再調整する処理を実施することができる。尚、インクの色数はCMYの3色より多いので、インク量格子点平滑程度評価関数の極小化過程の方がCMY格子点平滑程度評価関数の極小化過程より極小を与える解が多くなりがちである。解が多いといずれの解が最適の極小値であるかを判断しづらくなり、相対的にCMY格子点の極小値の方が最適の極小値を判定しやすい。そこで、最適化されたCMY格子点とインク量格子点のうち、CMY格子点を固定しつつ上記マトリクスによる束縛条件を課してインク量格子点配置を再調整すると好ましい。
【0012】
インク量格子点平滑程度評価関数とCMY格子点平滑程度評価関数とでは、格子点の配置の平滑程度を評価するとともに当該関数の極小化によって格子点位置を最適化することができればよい。ここで、配置の平滑程度とは、空間中に各格子点が並んでいるときの歪みの程度である。例えば、3次元空間中に格子点が立方格子状に並んでいる場合には歪みがないが、各格子点が立方格子点位置からずれると格子としては歪みが大きくなる。むろん、格子点の並びは立方格子であることが必須ではなく、特定の位置に整然と並んでいる状態を歪みがない状態としたときに当該特定の位置からのずれによって歪みが大きくなれば、平滑度合いが低下することになる。すなわち、複数の格子点が形成する立体を考えたときに平行な辺や平行な面が少なくなるほど歪みが大きくなると考え、この立体に平行な辺や平行な面が多いほど平滑程度が大きくなると考える。
【0013】
ここでは、3次元空間について例示したが、むろん、印刷装置で使用する各色インクを色成分とする色空間においては色成分数が3より多いので、3次元より多次元の空間にて色が規定される。この色空間においても3次元空間の類推から平滑程度を規定することができる。すなわち、インク量格子点が特定の格子点位置に整然と並んでいる(各格子点の相対的位置関係が略等しい)場合には平滑程度が高いと考えることができる。一般に、各色空間で整然と並んでいる格子点の方がその間に位置する色を補間演算によって算出する際に空間の局所的位置によって補間精度を大きく変動させることなく補間を行うことができる。従って、本発明によって格子点配置を最適化することで、対応関係定義データ作成時に測色等が行われる特定数の格子点位置として、色空間の全体においてトーンジャンプを発生させにくいような格子点位置を決定することができる。
【0014】
さらに、インク量格子点平滑程度評価関数とCMY格子点平滑程度評価関数とは、平滑程度を評価する項、すなわち平滑度合いが低下すると値が大きくなる項のみを含むことが必須となるわけではなく、平滑度合いを評価するとともに各種の条件を加味することができる。例えば、印刷装置においては、印刷用紙に打ち込み可能なインク量の制限や粒状感発生防止のためのKインク使用制限等、種々の条件が特定の色に対して課される。そこで、各評価関数でこれらの条件を加味する、すなわち、インク量制限やKインク使用制限の条件に合致しなくなるほど値が大きくなる項を付加することにより、上記各格子配置の平滑程度を評価するに際して各種束縛条件を付したまま最適化することができる。
【0015】
また、請求項2にかかる発明では、平滑程度の評価関数における評価値を向上させて格子点位置の最適化を図るに際して多次元の色空間内の格子点配置と当該多次元の色空間より低次元の色空間内の格子点配置とを別個に最適化し、当該最適化後にいずれか一方の色空間内の格子点配置を略維持しつつ他方の格子点配置を再調整する。従って、各色空間内の格子点配置を最適化するに際して他方の色空間内の格子点配置に影響されることなく最適化を行うことができ、各色空間での真の最適配置に近づけることができる。
【0016】
ここでも、各色空間ごとに別個に格子点配置を最適化すると、互いの位置関係に相関関係を与えずに最適化していることになるので、そのままの格子点配置同士を一対一に対応づけて対応関係定義データ作成用格子点にすることはできないが、この最適化後に格子点配置の再調整を行っているので、この再調整時に互いの位置関係を考慮することによって両者を一定の関係に対応づけることができ、2つの色空間内の格子点を対応づけた対応関係定義データ作成用格子点を決定することができる。各格子点配置は、格子点配置の平滑程度を向上させることによって決定されているので、この格子点が示す色を測色するなどして対応関係定義データを作成することによって、トーンジャンプが発生しにくい代表色格子点を有する対応関係定義データを決定することができる。
【0017】
ここで、対応関係定義データは印刷装置で使用する各色のインク量と他の画像機器で使用する各色の色成分値との対応関係を規定したデータであればよく、上記と同様に、LUTであってもよいし、色の関係を規定したマトリックス等を含むいわゆるプロファイルであってもよい。また、印刷装置で使用されるインクとしてもCMYKの4色やCMYKlclmの6色インクあるいはそれ以上の色数のインクを使用可能である。従って、他の画像機器では、RGBなど、各印刷装置での使用インク数より少ない色成分で色を規定していればよい。また、本発明において決定する複数の格子点は、対応関係定義データを作成する際に利用される。例えば、LUTに規定する各色成分値を決定するに際して各格子点の色成分にて規定される色が測色対象となる。
【0018】
インク量格子点平滑程度評価関数と低次元色格子点平滑程度評価関数とでは、格子点の配置の平滑程度を評価するとともに当該関数での評価値を向上させることによって格子点位置を最適化することができればよい。ここでも、上述したように配置の平滑程度とは、空間中に各格子点が並んでいるときの歪みの程度である。一般に、各色空間で整然と並んでいる格子点の方がその間に位置する色を補間演算によって算出する際に空間の局所的位置によって補間精度を大きく変動させることなく補間を行うことができる。従って、本発明によって格子点位置を最適化することで、対応関係定義データ作成時に測色等が行われる特定数の格子点位置として、色空間の全体においてトーンジャンプを発生させにくいような格子点位置を決定することができる。
【0019】
むろん、ここでもインク量格子点平滑程度評価関数と低次元色格子点平滑程度評価関数とが、平滑程度を評価する項、すなわち平滑度合いが低下すると値が大きくなる項のみを含むことが必須となるわけではなく、上記と同様に平滑度合いを評価するとともに各種の条件を加味することができる。この意味で、本発明における最適化とは、各色空間内での格子点位置の最適化であり、この位置は色空間内での平滑程度および他の各種条件を加味してこれらが総合的に好ましい状態となるような格子点の位置である。
【0020】
本発明において、上記低次元色空間は上記印刷装置で使用する各色インク数より少ない色成分数で規定される空間であればよい。例えば、印刷装置に4色以上のインクを使用する際には、低次元色空間としてCMY色空間,RGB色空間,Lab色空間(L,a,bのそれぞれには通常*が付されるが本明細書では簡単のため省略する。以下同じ。)等を採用することができる。インク量格子点平滑程度評価関数と低次元色格子点平滑程度評価関数とにおける評価を向上させることによってインク量格子点の配置と低次元色格子点の配置とを個別に最適化することができるので、互いの格子点位置に拘束されずに個別に最適位置を決定することができる。
【0021】
この最適化の後に、いずれか一方を最適化された格子点に維持しつつ他方の最適化された格子点を再調整しているので、少なくとも一方の色空間内の格子点は最適化されたまま、他方の色空間内の格子点位置も好ましい位置に決定することができる。再調整に際しては、上記と同様に低次元色格子点とインク量格子点とを対応づけるマトリクス等を規定し当該マトリクスによって両格子点の関係が保持されるようにして上記他方の格子点位置を再調整すればよい。むろん、複数の格子点のうち一方を固定していると他方が最適化しない場合などもあり、かかる場合にまで厳密に一方を固定することが必須となるわけではない。すなわち、総ての格子点につき一方を固定する必要はなく、一部の格子点についてはなるべく移動量を小さくしながら再調整するようにしてもかまわない。
【0022】
さらに、上記インク量格子点平滑程度評価関数および低次元色格子点平滑程度評価関数とにおいて評価を向上させることによって格子点位置を最適化するための構成は種々の構成が採用可能である。請求項3にかかる発明では、ある2つの隣接格子点の相対位置関係と他の2つの隣接格子点の相対位置関係とで差異が大きくなるほど評価関数の値が大きくなるように構成している。この結果、これらの評価関数を極小化することによって最適な格子点を探索することができる。
【0023】
さらに、ある2つの格子点の相対位置関係と他の2つの格子点の相対位置関係との差異を考慮する際の好適な構成例として請求項4にかかる発明では、着目する格子点を含む隣接格子点間のベクトルと比較対象となる格子点を含む隣接格子点間のベクトルとを考え、両ベクトルの差ベクトルを着目する格子点と上記比較対象となる格子点との距離で除した値を評価関数の成分として含むようにしてある。評価関数を極小化する作業に鑑みれば、評価関数はスカラー関数であることが好ましいので実際はこの成分を2乗したり、絶対値を採用するなどの構成を採用するのがよい。また、着目する格子点と上記比較対象となる格子点との距離で上記差ベクトルを除することにより、格子点配置の平滑程度を規格化して関数に組み入れることができる。すなわち、着目する格子点と比較対象となる格子点との距離が大きければそれら各格子点に隣接する格子点との相対位置関係の差異が大きくなると考えられるので、着目する格子点と比較対象となる格子点との距離で差ベクトルを除することで相対位置関係の差異を定量的に評価関数に組み入れることにしている。この結果、評価関数の極小化によって格子点配置を最適化することが可能になる。
【0024】
上述のようにインク量格子点平滑程度評価関数および低次元色格子点平滑程度評価関数には、格子点配置の平滑程度を評価する項以外の項を組み入れることができ、その構成例として請求項5に記載の発明では、着目する格子点が特定の位置から離れるほど値が大きくなる関数を評価関数に含めることにしており、かかる評価関数によれば、当該評価関数の極小化の過程にて着目する格子点が特定の位置から急激に移動することを防止することができる。極小化の過程では着目する格子点を適宜移動させるが、この移動距離が大きいと評価関数が振動したり発散するなどして、極小値に収束させることが困難になる場合が多い。そこで、着目する格子点が特定の位置から離れるほど評価関数の値が大きくなるようにしておけば、格子点が特定の位置から急激に移動しないように束縛条件を課することができる。
【0025】
一方、特定の位置を各種意図に基づいて定義することにより、様々な意図を反映した束縛条件にすることができる。例えば、着目する格子点位置を移動させて評価関数を極小化させ、この極小化過程を複数回繰り返す演算処理を実行する場合、特定の位置を移動前の格子点位置にしておけば、着目する格子点位置の急激な移動を防止することができる。極小化過程において格子点が示す色の彩度を低下させないような条件を課したい場合は、着目する格子点位置が示す色の彩度と同等の色を示す位置を特定の位置とすれば、彩度を不必要に低下させないような束縛条件を課すことができる。この束縛条件としては、上記インク量格子点平滑程度評価関数および低次元色格子点平滑程度評価関数の双方について同様の意図に基づく束縛条件が課されていてもよいし、別個の意図に基づく束縛条件が課されていてもよい。
【0026】
さらに、評価関数に対して束縛条件を課する際の具体的な構成例として請求項6に記載の発明では、着目する格子点が示す色が特定の色から離れるほど値が大きくなる関数が評価関数に含まれるようにしている。すなわち、各色空間において各格子点は特定の色を示しているが、評価関数を極小化することのみを考えると、各格子点の色の特徴が反映されずに格子点位置が移動するので、色が変化することになる。本発明はむろん、色を微妙に変化させつつ格子点位置を最適化するのであるが、特定の色では格子点位置を自由に変動させることによって自由に色が変動すると好ましくない場合がある。
【0027】
例えば、CMY3色の色成分が略等値であることによってグレーを表現している格子点においては、評価関数が極小化するからといって特定の色成分のみを変動させると、色としてはグレーから離れてしまう場合があるし、CMY3色の色成分でいずれか一つあるいは二つの色成分が「0」であるような色について色成分「0」を保存したい場合もある。このような場合に、それぞれの格子点が示す特定の色から離れるほど評価関数が大きくなるように構成すれば、当該特定の色から大きく離れることを防止しながら格子点位置を最適化することができる。
【0028】
また、格子点が示す色は格子点の位置を特定する座標値で特定され、色空間にて座標値が負の値になり得ないような座標系を採用する場合がある。この場合、座標値が負の値であってその絶対値が大きくなるほど値が大きくなる関数を上記評価関数に含ませると好ましい。但し、上述のように着目する格子点が特定の位置から離れるほど値が大きくなる関数であれば、座標値が負の値であってその絶対値が大きくなるほど値が大きくなる関数と実質的に等価の条件を課することができる。むろん、各座標系にて座標の値域を限定すれば各座標値には最大値が存在しうるので、最大値を超えないような条件を上記評価関数に含ませることも考えられる。ここでも、格子点が特定の位置から離れるほど値が大きくなる関数であれば、座標値がその座標系の最大値より大きくなるほど値が大きくなる関数と実質的に等価の条件を課することができる。
【0029】
上述の評価関数を極小化するためのアルゴリズムとしては種々のものが採用可能であるが、その好適な構成例として請求項7に記載の発明において評価関数は、各色空間を構成する色成分を変数として有する。従って、この変数の値を変動させつつ評価関数の極小値を探索することによって極小化した状態での色成分値を算出することができ、この結果、極小化した状態での格子点位置を決定することができる。
【0030】
また、評価関数が示す格子点配置の平滑程度の評価を向上させるに際し、ある格子点位置を移動させて評価関数を極小化させる位置を探索するが、本発明では各色成分に偏差を加えることによって格子点を移動させたと考える。さらに、この偏差を加えた状態で評価関数が極小化されたと考えて、例えば、各色成分によって評価関数を偏微分し、極小値を算出すれば、評価関数を極小化する偏差を算出することができる。この処理を繰り返せば、格子点位置が最適位置に収束し、配置の平滑程度の評価を向上させることができる。むろん、本発明においては色空間内において複数の格子点位置を決定するので、各格子点について同様の処理を繰り返すことによって全格子点を決定することができる。
【0031】
また、評価関数の極小化に際しては他にも種々のアルゴリズムを採用可能であり、色空間を構成する各色成分を変数として有する評価関数において、当該評価関数を各色成分で偏微分するとともに偏微分値を”0”にする色成分を算出する手法を採用してもよい。但し、上記偏差を利用して格子点位置を決定する手法は、収束性が良くなるという利点を有している。すなわち、偏差に対して”0〜1”の値を有する係数を乗じれば、偏差の大きさを調整することができ、格子点位置が急激に変動することを防止することができる。この結果、上記極小化の過程において評価関数の振動や発散を防止することができ、早期に極小値に収束させることができる。
【0032】
尚、上述の低次元色空間の方がインク量空間より色成分数が少ないので、評価関数の極小値を発見しやすい。極小値を発見しやすいことから、上記再調整に際して低次元色空間内の格子点を維持してインク量空間内の格子点を再調整することが好ましい。この構成を採用する際には、インク量空間内の格子点が再調整されることに鑑み、上記偏差を利用した極小化を低次元色空間内の格子点位置を最適化する際にのみ適用しても良い。
【0033】
本発明において最適化されたインク量格子点と低次元格子点とのいずれか一方を維持しつつ他方を再調整すれば、最適化された格子点を備えるとともに低次元格子点とインク量格子点とが対応づけられた上記対応関係定義データが作成される。このための好適な構成例として請求項8に記載の発明では、上記低次元色格子点を略維持しつつインク量格子点を再調整する構成とし、再調整するに当たり両格子点が所定の変換式にて対応づけられるように束縛条件を課している。従って、個別の評価関数によって独立に最適化された格子点は再調整後に所定の対応関係を有するようになっており、測色等の色あわせがなされていないものの、両色空間の色を対応づけるとともに最適な配置となった格子点からなる対応関係定義データを決定することができる。
【0034】
ここで、所定の変換式としては各種変換式が採用可能であり、例えば、マトリクスを採用可能である。インク数が6色であり低次元色空間の色成分が3色である場合には3×6のマトリクスで6色を3色に変換することにより、インク量格子点を低次元色格子点に変換することができる。変換式において、多次元から低次元に変換する方が一義的な関係を規定しやすく好適である。すなわち、低次元色空間での色を特定した場合にその色と略同一色を示す格子点は多次元色空間に沢山存在するが、多次元色空間での色を特定した場合にその色と略同一色を示す格子点は低次元色空間中に一点とある場合が多く、この場合にはマトリクスを容易に決定することができる。
【0035】
また、上述の束縛条件を課した再調整を行うといっても、上記と同様に各種条件との整合に鑑みて低次元色格子点の位置を維持することが好ましくない場合も存在し、この場合にも低次元色格子点の位置を維持することが必須になるというわけではない。すなわち、低次元色格子点をできうる限り固定してインク量格子点の位置を移動させればよい。
【0036】
以上のようにして対応関係定義データ作成用格子点が決定されると、当該対応関係定義データ作成用格子点にて特定されるインク量でのプリンタによる出力色を測色し、当該測色値によって当該インク量と他の画像機器での使用色とを対応づけることが可能になる。この結果、全色空間に渡ってトーンジャンプを発生させにくいLUTやプロファイルを作成することができる。これらのLUTやプロファイルを利用すれば、プリンタ以外の画像機器での使用色をプリンタでの使用色を規定するインク量に変換するに際して全色空間に渡ってトーンジャンプを発生させずに色変換を実行することができる。
【0037】
従って、これらのLUTやプロファイルを利用した処理装置等も本発明の技術思想を利用していると言える。すなわち、請求項9,請求項10のように実体のある画像処理装置としても有効であることに相違はないし、請求項11,請求項12のように実体のある画像処理方法としても有効である。また、このような画像処理装置、方法は単独で実施される場合もあるし、ある機器に組み込まれた状態で他の装置、方法とともに実施されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものであって、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。
【0038】
発明の思想の具現化例として画像処理装置、方法を実施するソフトウェアとなる場合には、かかるソフトウェアを記録した記録媒体上においても当然に存在し、利用される。従って、本発明は請求項13,請求項14のように画像処理プログラムとしても実現可能である。むろん、その記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。また、一次複製品、二次複製品などの複製段階については全く問う余地無く同等である。
【0039】
その他、供給方法として通信回線を利用して行なう場合でも本発明が利用されていることにはかわりない。さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態のものとしてあってもよい。また、必ずしも全部の機能を当該プログラム自身で実現するのではなく、外部のプログラムなどに実現させるようなものであっても良い。その場合であっても、各機能をコンピュータに実現させ得るものであればよいからである。むろん、上述の対応関係定義データ作成用格子点決定方法が発明として成立することから、その方法を実現する装置やプログラムであっても発明として成立することは言うまでもない。
【0040】
【発明の実施の形態】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)本発明の構成:
(2)画像処理装置:
(3)画像処理制御プログラム:
(4)色補正LUT生成装置:
(5)CMY格子点評価関数による最適化:
(5−1)コストEstp n:
(5−2)コストEsop n:
(5−3)コストEsap n:
(5−4)極小値を与えるベクトルの算出:
(6)インク量格子点評価関数による最適化:
(6−1)コストEitp n:
(6−2)コストEiop n:
(6−3)極小値を与えるベクトルの算出:
(7)再調整処理:
(8)他の実施形態:
【0041】
(1)本発明の構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる対応関係定義データ作成用格子点決定方法を利用して色補正LUTを生成する色補正LUT生成装置の機能ブロック図である。同図に示す色補正LUT生成装置20Aでは、本発明にかかる対応関係定義データ作成用格子点決定方法で決定された対応関係定義データ作成用格子点が示す色について測色を行い、当該測色値からsRGBデータとCMYKlclmデータとの対応関係を決定する。当該決定された対応関係が色補正LUTであり、画像処理において色変換を行う際に利用される。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態にかかる画像処理装置の機能ブロック図である。すなわち、上記色補正LUT生成装置20Aにて生成された色補正LUTを使用して色変換を行う装置である。図2は、これら色補正LUT生成装置および画像処理装置の具体的ハードウェア構成例を概略ブロック図により示している。当該実施形態においては、色補正LUT生成装置および画像処理装置を実現するハードウェアの一例としてコンピュータシステムを採用している。
【0043】
図2は、同コンピュータシステムをブロック図により示している。本コンピュータシステムは、画像入力デバイスとして、スキャナ11aとデジタルスチルカメラ11bとビデオカメラ11cとを備えており、コンピュータ本体12に接続されている。それぞれの入力デバイスは画像をドットマトリクス状の画素で表現した画像データはRGBの三原色においてそれぞれ256階調表示することにより、約1670万色を表現可能となっている。
【0044】
コンピュータ本体12には、外部補助記憶装置としてのフレキシブルディスクドライブ13aとハードディスク13bとCD−ROMドライブ13cとが接続されており、ハードディスク13bにはシステム関連の主要プログラムが記録されており、フレキシブルディスクやCD−ROMなどから適宜必要なプログラムなどを読み込み可能となっている。また、コンピュータ本体12を外部のネットワークなどに接続するための通信デバイスとしてモデム14aが接続されており、外部のネットワークに公衆通信回線を介して接続し、ソフトウェアやデータをダウンロードして導入可能となっている。この例ではモデム14aにて電話回線を介して外部にアクセスするようにしているが、LANアダプタを介してネットワークに対してアクセスする構成とすることも可能である。この他、コンピュータ本体12の操作用にキーボード15aやマウス15bも接続されている。
【0045】
さらに、画像出力デバイスとして、デイスフレイ17a、カラープリンタ17bおよびプロジェクタ17cを備えている。ディスプレイ17aについては水平方向に800画素と垂直方向に600画素の表示エリアを備えており、各画素毎に上述した1670万色の表示が可能となっている。この解像度は一例に過ぎず、640×480画素であったり、1024×768画素であるなど、適宜、変更可能である。
【0046】
また、カラープリンタ17bはインクジェットプリンタであり、CMYKlclmの六色の色インクを用いてメディアたる印刷用紙上にドットを付して画像を印刷可能となっている。画素密度は360×360dpiや720×720dpiといった高密度印刷が可能となっているが、階調表現については色インクを付すか否かといった2階調表現となっている。一方、このような画像入力デバイスを使用して画像を入力しつつ、画像出力デバイスに表示あるいは出力するため、コンピュータ本体12内では所定のプログラムが実行されることになる。
【0047】
そのうち、基本プログラムとして稼働しているのはオペレーティングシステム(OS)12aであり、このオペレーティングシステム12aには、ディスプレイ17aでの表示を行わせるディスプレイドライバ12bと、カラープリンタ17bに印刷出力を行わせるプリンタドライバ12cと、プロジェクタ17cでの表示を行わせるプロジェクタドライバ12i(図示せず)が組み込まれている。これらのドライバ12b、12cおよび12iはディスプレイ17a、カラープリンタ17bおよびプロジェクタ17cの機種に依存しており、それぞれの機種に応じてオペレーティングシステム12aに対して追加変更可能である。また、機種に依存して標準処理以上の付加機能を実現することもできるようになっている。すなわち、オペレーティングシステム12aという標準システム上で共通化した処理体系を維持しつつ、許容される範囲内での各種の追加的処理を実現できる。
【0048】
このようなプログラムを実行する前提として、コンピュータ本体12は、CPU12e、RAM12f、ROM12gおよびI/O12hなどを備え、演算処理を実行するCPU12eがRAM12fを一時的なワークエリアや設定記憶領域として使用したりプログラム領域として使用しながら、RAM12fに書き込まれた基本プログラムを適宜実行し、I/O12hを介して接続されている外部機器及び内部機器などを制御している。
【0049】
ここで、基本プログラムとしてのオペレーティングシステム12a上でアプリケーション12dが実行される。アプリケーション12dの処理内容は様々であり、操作デバイスとしてのキーボード15aやマウス15bの操作を監視し、繰作された場合には各種の外部機器を適切に制御して対応する演算処理などを実行し、さらには、処理結果をディスプレイ17aに表示したり、カラープリンタ17bに出力したりすることになる。
【0050】
かかるコンピュータシステムでは、画像入カデバイスであるスキャナ11aなどで画像データを取得し、アプリケーション12dによる所定の画像処理を実行した後、画像出力デバイスとしてのディスプレイ17a、カラープリンタ17bやプロジェクタ17cに表示出力することが可能である。
【0051】
また、本実施形態においては、画像処理装置をコンピュータシステムとして実現しているが、必ずしもかかるコンピュータシステムを必要とするわけではなく、同様の画像データに対して本発明による画像処理が可能なシステムであればよい。例えば、デジタルスチルカメラ内に本発明による画像処理を行う画像処理装置を組み込み、画像処理された画像データを用いてカラープリンタに印字させるようなシステムであっても良い。
【0052】
また、コンピュータシステムを介することなく画像データを入力して印刷するカラープリンタにおいては、スキャナやデジタルスチルカメラまたはモデム等を介して入力される画像データに対して自動的に本発明による画像処理を行って印刷処理するように構成することも可能である。この他、カラーファクシミリ装置、カラーコピー装置、プロジェクタといった画像データを扱う各種の装置においても当然に適用可能である。
【0053】
(2)画像処理装置:
次に、上記コンピュータシステム12を本発明にかかる画像処理装置として機能させる場合の処理を説明する。コンピュータシステム12では、上記スキャナ11a、デジタルスチルカメラ11b、ビデオカメラ11cの入力画像やディスプレイ17a、プロジェクタ17cの出力画像をプリンタ17bにて印刷することができ、この画像印刷の際に色補正LUTを利用した処理を行う。
【0054】
すなわち、画像入力デバイスと画像出力デバイスのように異なる画像機器にて同じ画像を扱う場合であって、各画像機器で使用する画像データにて各画素の色を異なった色空間で表現している場合には色補正LUTを参照して色変換を実施する。このとき、上記色補正LUT生成装置20Aにて作成した色補正LUTを参照する。すなわち、本実施形態においては、画像入力デバイスやディスプレイ17a、プロジェクタ17cでsRGBデータを使用し、プリンタ17bでCMYKlclmデータを使用しており、色補正LUTを参照することによって両者を対応づける。本実施形態においてこの処理は、上記プリンタドライバ12cにて実現される処理である。すなわち、プリンタドライバ12cが実行されるコンピュータシステム12が本発明にかかる画像処理装置として機能する。
【0055】
図3において、画像処理装置20Bは、sRGB画像入力データに対して色変換処理を施し、出力画像信号としてCMYKlclm画像出力データを出力する。ここで、各画像データはカラー画像を所定の色成分毎に色分解しつつ、その色成分毎に強弱を表したものであり、各色成分は有彩色であって所定の比で混合したときにはグレイに代表される無彩色と黒色と白色とになる。
【0056】
画像処理装置20Bは、色補正LUT生成装置20Aによって生成された色補正LUTを少なくとも格納している色補正LUT格納部20bと、色補正LUT選択部20cによって選択された色補正LUTを色補正LUT格納部20bから読み出し、当該読み出された色補正LUTを参照してsRGBデータをCMYKlclmデータに変換する色補正部20aとを備えている。画像処理装置20Bはかかる構成により、図4に示すフローに従って上記色変換処理を行っている。ユーザは上記キーボード15a等を操作して画像の印刷処理を指示するようになっており、当該印刷指示に応じて画像出力が開始される(ステップ70)。
【0057】
画像出力が開始されると、当該画像を印刷する際に参照される所定の色補正LUTが選択される。すなわち、色変換処理に際しては、予めプリンタ17bにて使用されるインクの種類やメディア等に対応させた複数の色補正LUTを用意しておき、適切な色補正LUTを選択して使用する場合が多く、本実施形態においても適切な色補正LUTを選択して利用するようになっている。本実施形態においてはこの中の一つの色補正LUTが上記色補正LUT生成装置20Aにて作成された色補正LUTである。
【0058】
所定の色補正LUTが選択されると(ステップ72、YES)、当該所定の色補正LUTが色補正LUT格納部20bから読み出され、RAM12f内に読み込まれる(ステップ74)。そして、当該色補正LUTを色補正部20aに組み込み(ステップ76)、3次元色補正LUTを参照して補間演算によって画像処理を行い、画像出力処理を行う(ステップ78)。すなわち、CMYKlclm画像出力データを得る。プリンタドライバ12cは、このCMYKlclm画像出力データに対してさらに処理を行って印刷を実行する。
【0059】
すなわち、このCMYKlclm画像出力データにて各色毎のハーフトーン処理やラスタライズ処理等を行い、最終的にはプリンタ17bに送出する印刷データを生成する。生成された印刷データがプリンタ17bに送出されると、当該プリンタ17bはこの印刷データに基づいて印刷を実行する。ここで、本発明にかかる色補正LUTは、後述するようにして平滑化された格子点についての測色結果に基づいて作成されている。この結果、色空間全体に渡って高精度に色変換可能な色補正LUTを作成することができ、色空間の全体においてトーンジャンプが発生していない印刷結果を得ることができる。
【0060】
尚、本実施形態にかかる色補正LUTによれば、異なる色空間の画像データを対応づけつつ、色補正LUTに規定された複数の代表色から補間演算にて任意の色の画像データを算出することができる。従って、色補正LUTにて対応づける色空間は上述のようにsRGBとCMYKlclmに限定されず、機器固有色のRGBとCMYKlclmとを対応づけるなど、種々の態様を採用可能である。
【0061】
(3)画像処理制御プログラム:
本実施形態にかかるコンピュータシステム12は、上述のハードウェア構成においてプリンタドライバ12cが実行されることによって画像処理装置として機能する。また、従って、プリンタドライバ12cにて画像処理を実行するモジュールは本発明にかかる画像処理制御プログラムを構成する。この画換処理制御プログラムは、通常、コンピュータ12が読取可能な形態でフレキシブルディスク、CD−ROMなどの記録媒体に記録されて流通する。当該プログラムは、メディア読取装置(CD−ROMドライブ13c、フレキシブルディスクドライブ13aなど)によって読み取られてハードディスク13bにインストールされる。そして、CPU12eが所望のプログラムを適宜ハードディスク13bから読み出して所望の処理を実行するように構成されている。
【0062】
(4)色補正LUT生成装置:
次に、色補正LUT生成装置20Aでの処理を詳述する。図1に示すように、色補正LUT生成装置20Aは、コスト計算部20dと評価関数による最適化部20eと再調整部20fと色合わせ前LUT生成部20gと測色データ取得部20hと色補正LUT生成部20iと色補正LUT格納部20bとを備えている。また、図5は、色補正LUT生成装置20Aにおける処理の概略フローを示している。コスト計算部20dは、上記CMY格子点評価関数と上記インク量格子点評価関数とに含まれる各項を計算する。
【0063】
ここで、インク量格子点平滑程度評価関数は各色インク量を成分としたインク量格子点の配置の平滑程度を評価する関数である。この各色インク量は上記プリンタ17bに搭載された6色のインクの使用量を特定する値であり、本実施形態においては、”0〜255”の256階調で使用量が表現されている。従って、これら6色のインク量を成分とした6次元空間を考えることができ、本実施形態においてはこの6次元空間をインク量空間と呼んでいる。インク量空間においてもインク量が特定されれば空間内の位置が特定され、その点を格子点とすることができる。
【0064】
また、CMY格子点評価関数はCMYの各色成分で規定されるCMY格子点の配置の平滑程度を評価する関数である。このCMY格子点の各成分値は、上記インク量の6成分を要素とする列ベクトルに対して3行6列の所定行列を乗じることによって算出することができる。また、定数値からCMY格子点の各成分値を減じることによって仮想的にRGBの各色成分と一対一に対応させることができる。このCMY成分を仮想CMYと呼び、当該CMY成分にて規定される色空間を仮想CMY空間と呼ぶことにする。仮想CMY空間を考えれば、CMY成分の各値が特定されたときに当該仮想CMY空間内での位置が特定され、その点を格子点とすることができる。
【0065】
当該仮想CMYは上述のように定数の増減のみでRGBの各色成分と一対一に対応づけることができ、仮想CMY空間内で格子点配置に歪みが少なければRGB色空間内でも格子点配置に歪みが少なくなる。従って、仮想CMY空間内で格子点配置を最適化することによってRGB色空間内での格子点配置の歪みを少なくするよう担保することができる。従って、本実施形態のようにsRGB画像データとCMYKlclm画像データとの対応関係を規定する色補正LUTを作成する際の格子点として好適である。尚、インク量空間は6次元であり、上記仮想CMY空間は3次元であるので、インク量空間と比較したときに仮想CMY空間は低次元色空間である。
【0066】
以上のように、インク量格子点平滑程度評価関数とCMY格子点平滑程度評価関数とは、各色空間での格子点の配置の平滑程度を評価する関数である。また、当該関数の極小化によって格子点位置を最適化する関数である。従って、この関数の各項は格子点の配置が平滑化されるほど値が小さくなる関数であり、これをコストと呼んでいる。上記コスト計算部20dでは、上記CMY格子点評価関数のコスト20d1とインク量格子点評価関数のコスト20d2とを個別に計算することができる。コスト計算部20dが各関数のコストを計算すると、これらの和によって上記CMY格子点評価関数と上記インク量格子点評価関数とが決定されることになる。
【0067】
評価関数による最適化部20eはこれら決定されたCMY格子点評価関数と上記インク量格子点評価関数とを利用して各色空間での格子点位置を最適化する。すなわち、各評価関数の極小解を算出し、極小解を与える際の格子点位置を最適な格子点位置として特定する。評価関数による最適化部20eでは、各評価関数を個別に利用して各色空間での格子点位置を最適化する。極小解を算出する際のアルゴリズムとしては種々のアルゴリズムを採用可能であり、CMY格子点評価関数と上記インク量格子点評価関数とのそれぞれについて別個のアルゴリズムを採用することもできるし、同じアルゴリズムを採用することもできる。いずれか一方の格子点位置がより正確に最適化されていることが必要とされる場合には、いずれか一方についてより正確に最適化可能なアルゴリズムを採用することができる。
【0068】
本発明においては以上のように、各コストの計算および評価関数の最適化を色空間毎に個別に行っており、本実施形態において図5に示すステップS100〜ステップS130にて実現している。すなわち、コスト計算部20dはステップS100にて仮想CMY空間についてのコストを計算し、ステップS110にて評価関数による最適化部20eがCMY格子点評価関数による最適化を実施する。また、コスト計算部20dはステップS120にてインク量空間についてのコストを計算し、ステップS130にて評価関数による最適化部20eがインク量格子点評価関数による最適化を実施する。むろん、CMY格子点評価関数と上記インク量格子点評価関数とは、個別に最適化されていればよいので、ステップS100,S110の前にステップS120,S130を実行しても良い。
【0069】
本発明においては、上述のようにCMY格子点の各成分値がインク量に対する行列の乗算によって算出されるものの、格子点配置の最適化は以上のようにCMY格子点とインク量格子点とで別個に実施されている。従って、最適化後にはCMY格子点とインク量格子点とにおいて上記行列で規定される関係は維持されていない。本発明は、仮想CMY空間とインク量空間とのいずれにおいても最適化された格子点を色補正LUTを作成する際の対応関係定義データ作成用格子点を決定しようとするものである。
【0070】
そこで、色補正LUT生成装置20Aでは、再調整部20fにて仮想CMY空間とインク量空間とのそれぞれにおいて個別に最適化された格子点配置をなるべく移動させないようにしつつも、上記行列で規定される対応関係も満たすように格子点配置を再調整する(ステップS140)。本実施形態において、仮想CMY空間内のCMY格子点は上記最適化された値に保存し、インク量格子点を移動さている。インク量空間は6次元空間であることから、3次元格子の評価関数であるCMY格子点評価関数の極小解より上記インク量格子点評価関数の極小解が多くなりがちであり、真の解を判別しづらい。
【0071】
従って、CMY格子点の方が真の最適値に収束させやすく、本実施形態では、真の最適値に収束していることが期待されるCMY格子点を固定してインク量格子点を移動させている。むろん、CMY格子点を固定した場合にインク量格子点評価関数を極小化するインク量空間を求めることができない場合にまで、必ずCMY格子点を固定することが必須になるわけではない。また、本実施形態のようにプリンタ17bにて印刷を実行する場合には、一般的に、印刷メディアにおいて単位面積に打ち込み可能なインク量が制限されるし、特定の色において特定の色成分のインクを使用しないように制限をかける。
【0072】
本実施形態にて作成する色補正LUTはこれらの条件も加味したルックアップテーブルであり、本実施形態においてはこの再調整の際にこれらの条件を束縛条件として課している。この結果、印刷メディアにおいて単位面積に打ち込み可能なインク量が制限に合致し、特定の色において特定の色成分のインクを使用しないようにする制限に合致したインク量を特定する格子点であって、インク量空間内の配置が最適化されたインク量格子点を算出することができる。また、印刷メディアにおいて単位面積に打ち込み可能なインク量の制限と、特定の色において特定の色成分のインクを使用しないようにする制限とはインク量に対して課される制限であることから、本実施形態のように個別の最適化後にインク量を再調整する実施形態にて非常に都合良くこれらの条件を課することができる。
【0073】
以上の処理によって、特定の格子点について仮想CMY空間とインク量空間との双方の最適配置および各種条件を考慮した格子点が決定される。そこで、全色空間を網羅できるように複数の格子点について以上の最適化処理を行うことにより、全色空間に渡った格子点であってCMY格子点とインク量格子点とを対応づけたLUTを作成することができる。本実施形態においては、評価関数の極小化によって格子点配置を最適化しており、複数回の補正(複数回の極小化処理)を行って各格子点の最適化を行う。
【0074】
そこで、色合わせ前LUT生成部20gは、ステップS150にて全格子点について全補正回数の処理が終了したか否かを判別し、終了したと判別されるまで、各格子点についてステップS100以降の処理を繰り返す。尚、色空間を網羅する格子点と言っても、むろんこれらは代表点であり、有限数の格子点である。格子点の数としては、色補正LUTを作成したときにトーンジャンプを発生させないようにするに十分な数であればよく、例えば、1000個の格子点について上記処理を行えばよい。全格子点について全補正回数の処理が行われた後には色合わせ前(後述する測色前)のLUTが生成される。
【0075】
測色データ取得部20hおよび色補正LUT生成部20iは、ステップS160にて実際の色変換に利用する色補正LUTを生成する。すなわち、色補正LUTにおいてはsRGB画像データによって指定される色と、CMYKlclm画像データによって印刷される色とが一致していることが要求され、sRGB画像データからその色は一義的に特定されるものの、CMYKlclm画像データにて特定されるインク量での出力色は機器依存色であることから測色して実際の色を特定しつつ色補正LUTを規定する。
【0076】
具体的には、上記インク量格子点の各色成分をCMYKlclm画像データの各成分とした印刷パッチを印刷し、測色機等によって測色した測色データを測色データ取得部20hにて取得する。この結果、上記インク量格子点が示す色を機器非依存色で表現したデータが取得される。sRGB画像データについては、公知の式によってその色と機器非依存色とを対応づけることができる。従って、上記測色して得られた格子点と上記測色値から求められたsRGB値とを対応づけたテーブルを作成すればそのテーブルを色補正LUTとすることができ、上記色補正LUT生成部20iにて色補正LUTを生成する。
【0077】
尚、色補正LUTに規定された代表色数は、上記対応関係定義データ作成用格子点より多くするのが一般的である。すなわち、あまりに多くのパッチについて測色するのは煩雑であるため、ある程度の数の測色を行いつつも他の色については測色した格子点から決定された補間演算によって対応関係を算出しても良い。例えば、上述のように1000個の格子点についてのパッチを測色した場合に、補間演算によって173個の格子点とすることも可能である。以上のようにして、色補正LUTが生成されたら、上記色補正LUT格納部20bは所定の記憶媒体に色補正LUTを格納する(ステップS170)。
【0078】
(5)CMY格子点評価関数による最適化:
次に、CMY格子点評価関数を最適化する際のコストの計算と最適化処理について詳述する。以下、本明細書では、各色空間内の格子点を当該色空間の原点から格子点へのベクトル、すなわち、各格子点の色成分値を要素とする列ベクトルとして説明する。最適化処理の最初の段階では、インク量格子点の初期値としてインク量ベクトルIp nを決定する。
【0079】
インク量格子点の配置は最適化されるので、このインク量格子点の初期値選定手法は特に限定されず、例えば、インク量格子点の各色成分を均等に変化させて生成した各格子点を採用することができる。ここで、pは格子点の番号であり、以下の説明では全格子点をP個、すなわち1≦p≦Pとして説明する。また、nは補正回数を示しており、全補正回数をNとして0≦n≦Nである。(n=0は補正前の初期状態を示す)従って、一連の最適化処理では、1≦p≦Pの全格子点についてN回の補正を試みて格子点位置を最適化することになる。
【0080】
図6は、上記図5のステップS100,S110での処理を詳細に示したフローチャートであり、上記インク量ベクトルIp nを決定した後に行われる処理である。まず、ステップS102ではCMYベクトルSp nを算出する。CMYベクトルは上記仮想CMY空間内の格子点を指定するベクトルである。
【0081】
上述のようにCMY格子点の各成分値は、上記インク量の6成分を要素とする列ベクトルに対して3行6列の所定行列Kを乗じることによって算出することができ、当該ステップS102においては、以下の式(1)によってSp nを算出している。
【数1】
尚、この式においてベクトル量と行列はボールド体で示している(以下同じ)。
【0082】
次に、ステップS104にてCMY格子点評価関数Esp nを算出する。CMY格子点評価関数Esp nは以下の式(2)で与えられる。
Esp n=Estp n+Esop n+Esap n ・・・(2)
本実施形態において、CMY格子点評価関数は、格子点の配置が平滑化されるほど値が小さくなるコスト項の和で表現され、
Estp nは、CMY格子点の配置の平滑程度を評価するコストであり、平滑程度が低くなるほど大きくなる関数である。
Esop nは、CMY格子点が特定の位置に近いか否かを評価するコストであり、CMY格子点が特定の位置から離れるほど値が大きくなる関数である。
Esap nは、CMY格子点が示す色が特定の色に近いか否かを評価するコストであり、CMY格子点が示す色が特定の色から離れるほど値が大きくなる関数である。
尚、以上のコストは後述するように、総てスカラ量である。
【0083】
以下、各項について詳細に説明する。ただし、全ての項を必ずしも用いる必要はなく、必要に応じて使用する項を選択できる。すなわち、本発明においてCMY格子点評価関数および後述するインク量格子点評価関数の各項であって、あるベクトルXに対するコスト項Ecは一般式(3)として書き下すことができ、この一般式(3)に該当するあらゆる条件を取捨選択し、コスト項として組み入れることができる。
【数2】
【0084】
ここで、
Ecは、コスト(スカラ値)であり、
Xは、要素数Xである列ベクトルであり、
Mは、Y×Xの行列で、ベクトルXをコストの対象となる要素数YのベクトルY=M・Xに変換する変換行列であり、
YTは、要素数Yである列ベクトルであり、
W1は、要素数Yの列ベクトルで、ベクトルY−YTの各要素へのコストに対する重みを表すベクトルであり、
W2は、Y×Yの対角行列で、ベクトルY−YTの各要素へのコストに対する重みを表す行列であり、tは転置を表している。
以下の説明において、式(3)の第1式を1次式形式、第2式を2次式形式と称する。
【0085】
(5−1)コストEstp n:
ある番号pのCMY格子点に着目し、当該格子点pに隣接する格子点をpj(以下、「参照格子点」と称する)とする。また、格子点pに隣接し、格子点pjと異なる格子点をpv(以下、「遷移格子点」と称する)とし、遷移格子点pvに隣接する格子点pvjであって、上記遷移格子点pvと格子点pvjとの相対位置関係が上記格子点pと参照格子点pjとの相対位置関係と類似している格子点を遷移参照格子点pvjとする。すなわち、格子点pから参照格子点pjを眺めた方向と遷移格子点pvから遷移参照格子点pvjを眺めた方向は似通っている。尚、上記参照格子点pjと遷移格子点pvとは同一であっても良い。
【0086】
ここで、格子点pを示すベクトルが上述のようにSp nであることに対応させ、格子点pj,pv,pvjの色成分値を要素とする列ベクトルをそれぞれベクトルSpj n,Spv n,Spvj nとする。図7は上述の格子点の位置関係を示している。本実施形態においては、着目する格子点pと参照格子点pjとの相対位置関係を上記遷移格子点pvと遷移参照格子点pvjとの相対位置関係と比較して格子点の配置の平滑程度を評価する。
【0087】
そこで、着目する格子点pと参照格子点pjとの相対位置関係を保ちながら着目する格子点pを遷移格子点pvに遷移させた場合を考えて、差ベクトルを利用した演算によって格子点の配置の平滑程度を評価する。まず、ベクトルSpj nとベクトルSp nの差ベクトル(Spj n−Sp n)と、ベクトルSpvj nとベクトルSpv nの差ベクトル(Spvj n−Spv n)とを考える。そして、差ベクトル(Spj n−Sp n)と、差ベクトル(Spvj n−Spv n)との変化量を遷移距離Dsvで除した値、すなわち、単位遷移距離当たりの差ベクトルの変化量をねじれ量ベクトルとして定義する。
【0088】
このねじれ量ベクトルは、着目する格子点pと参照格子点pjとの相対位置関係に対して上記遷移格子点pvと遷移参照格子点pvjとの相対位置関係が似ているほど小さくなる。例えば、3次元的に直行する立方格子において、ねじれ量は”0”である。本実施形態では、格子点pと隣接する全ての格子点を対象に格子点pj,格子点pvを考えた場合、それら全ての組み合わせにおいて、ねじれ量ベクトルの大きさの2乗を加算した値を各格子点の配置の平滑程度を評価するコストと定義する。
【0089】
すなわち、以下の式(4)によって定義される。
【数3】
尚、j及びvはそれぞれ、参照格子点、遷移格子点の格子点番号であり、J及びVは参照格子点数、遷移格子点数を表す。参照格子点、遷移格子点の対象としては種々の格子点を選択可能であり、格子点pの最隣接格子点や最隣接格子点と第2隣接格子点を含む格子点を選択しても良い。例えば、3次元立方格子を初期格子点位置として補正を行う場合には、着目格子点pの上下左右前後で隣接する6個の格子点を選択しても良いし、斜め方向まで含めた26格子点等を選択しても良い。
【0090】
ここで、式(4)を式(3)の第2式に照らし合わせると、CMYベクトルSを他の空間のベクトルに変換する必要がないため、Mは単位行列となり省略できる。また、各要素に重みをかけていないので、ベクトルW2も単位ベクトルとなり省略できる。(1/Dsv)2はある遷移格子点pvについて定数であるため、式(3)の第2式と式(4)とは同じ形をしている。
【0091】
(5−2)コストEsop n:
Esop nは、CMY格子点が特定の位置に近いか否かを評価するコストであり、本実施形態においては、特定の位置として、補正前のCMYベクトルを採用している。すなわち、n+1回目の補正でCMYベクトルSp n+1を算出する際に、n回目の補正で算出したCMYベクトルSp nを特定の位置として利用しており、コストEsop nは式(5)で定義される。
【数4】
ここで、Wsoは、CMYベクトルSの各要素に対する重みが規定された対角行列であり、補正を行う際に、小カッコ内第2項のCMYベクトルSp nではn回目の格子点pの成分値を代入して定数値とし、小カッコ内第1項のCMYベクトルSp nを独立変数として考える。
【0092】
複数回の補正を繰り返してコストを徐々に低下させていくような最適値探索問題では、補正回数が多いほどCMYベクトルSp nが理想的な値に近づくことが期待されるが、実際には補正回数毎に理想的な値に近づくとは限らない。例えば、CMYベクトルSp nの値が発散したり、振動したりすることがある。この発散や振動はある補正回数nの次にn+1回目の補正を実行するに当たり、CMYベクトルSp nを大きく動かした時に頻発する。そこで、本実施形態においてコストEsop nを考慮することで、効果的に上記発散や振動を防止して、速やかにCMYベクトルSp nを収束させることができる。
【0093】
すなわち、式(5)に示すコストは、n+1回目の補正でCMYベクトルSp n+1がSp nと比較して大きく変わるほど、大きくなる。従って、このコスト項をCMY格子点評価関数に組み入れることで、一回の補正で大きくCMYベクトルSが変動することを防止することができる。尚、CMYベクトルSの変動がコストに与える影響は上記対角行列Wsoの各要素の重みで調整することができる。
【0094】
本コストEsop nによれば、上記発散や振動を防止する他、様々な意図を反映した束縛条件にすることができる。例えば、CMY格子点pが示す色の彩度を低下させないような条件を課したい場合は、当該格子点pが示す色の彩度と同等の色を示す位置を特定の位置とすれば、彩度を不必要に低下させないような束縛条件を課すことができる。この場合、CMYベクトルSp nが示す色の彩度と同程度の彩度を有するCMYベクトルStp nを定義し、以下の式(6)のようなコストにしても良い。
【数5】
【0095】
むろん、CMY格子点は上記行列Kとインク量ベクトルIp nとの乗算によってその色成分が決定されるので、その色が厳密に定義されるとは限らない。しかし、少なくともCMYベクトルSによって特定される色を予想するとともに彩度を特定し、その彩度と同程度の彩度を有するCMYベクトルStp nを定義し、コスト項に組み入れることによって、補正の繰り返しによって彩度が必要以上に低下することを防止することができる。尚、上記式(5),(6)においても上記式(3)の第2式と同じ形であることが確認できる。
【0096】
このように、彩度の低下を防止する条件の他にも、適切な記憶色を維持する条件を課することも可能である。グレーや肌色,緑色,青色など、人間の記憶色と本来の色とが異なる色に関し、人間の記憶色に近い色が出力されるように色補正LUTを調整しておくことがある。このような色に関しては、記憶色を維持しやすい格子点配置を選択し、その格子点配置を示すCMYベクトルStp nを定義すればよい。
【0097】
(5−3)コストEsap n:
Esap nは、CMY格子点が示す色が特定の色に近いか否かを評価するコストであり、本実施形態においては特定の色としてCMYベクトルSの各成分のうちいずれか一つでも”0”である色および各成分が等値の色すなわち無彩色を採用している。尚、これ以降、CMYベクトルSの各成分のうちいずれか2つの成分が”0”である場合を1次色,いずれか1つが”0”である場合を2次色と呼ぶ。また、無彩色には各成分の総てが”0”の場合を含んでいる。
【0098】
本実施形態においては、CMY格子点が示す色が1次色,2次色,無彩色から離れることによって値が大きくなる関数をコストEsap nとしており、以下の式(7)にて定義される。
【数6】
【0099】
ここで、Hは6行3列の行列であって以下の式(8)にて定義され、Wsapは対角行列であってH・Sp nにより変換された要素に対する重みを表す重み行列であり以下の式(9)にて定義される。
【数7】
【数8】
【0100】
すなわち、CMYベクトルSの各色成分を(scp n,smp n,syp n)としたときに、上記H・Sp nによる変換結果は、ベクトル(scp n,smp n,syp n,scp n−smp n,smp n−syp n,−scp n+syp n)となり、このベクトルの成分のうち、束縛条件を課する成分に有限の値を与えるように行列Wsapの各成分を規定する。
【0101】
例えば、シアンの1次色の場合、マゼンタ成分,イエロー成分は”0”でなければならない。つまり、マゼンタ成分、イエロー成分が有限の値を持つことで値が大きくなるようにコストを規定する。この場合、重み行列Wsapの要素wsapm、wsapy以外の要素を”0”とし、wsapm、wsapyに有限の値を与える。この状況で上記式(7)を展開すると下式(10)になる。
【数9】
【0102】
同式(10)で明らかなように、CMYベクトルSp nのマゼンタ成分smp nとイエロー成分syp nが”0”以外の値を持つ場合、コストEsap nが有限の値を有する。従って、このコストEsap nがなるべく小さくなるようにすることによって、シアンの1次色が当該1次色から離れることを防ぐことができる。他の1次色、2次色から離れる場合のコストも同様に考えることができる。
【0103】
次に、例えば、CMYベクトルSp nのシアン成分と、マゼンタ成分を等値にすることにより、ブルーを表すような場合を考える。ここで、重み行列Wsapのwsapcm以外の要素を”0”にし、wsapcmに有限の値を与える。この状況で上記式(7)を展開すると下式(11)になる。
【数10】
【0104】
同式(11)で明らかなように、CMYベクトルSp nのシアン成分scp nとマゼンタ成分smp nが等値でない場合、コストEsap nが有限の値を有する。従って、このコストEsap nがなるべく小さくなるようにすることによって、シアン成分とマゼンタ成分とが等値の状況から遠くなることを防ぐことができる。シアン成分とイエロー成分とを等値にしたり、イエロー成分とマゼンタ成分とを等値にする場合のコストも同様に考えることができる。これらの例のように、格子点pの諸条件により、Wsapの重み要素は様々な値を取り得る。
【0105】
むろん、本実施形態においてコストEsap nは総ての番号pの格子点に対して課される条件ではなく、特定の格子点番号の格子点について課される条件である。また、コンピュータにて画像を扱う際にその階調値を正に限定する場合も多く、本実施形態のコストEsap nが各色成分いずれかに”0”を含む色について、その成分が”0”から離れることによって値が大きくなる関数形であることにより、各色成分が負にならないと言う条件を課していると考えることもできる。尚、上記式(7)は上記式(3)の第2式でYTを”0”とした場合に該当する。むろん、各色成分の階調値について最大値を規定する場合には、当該最大値より大きな座標値になっているときにコストが大きくなるような関数としても良い。
【0106】
(5−4)極小値を与えるベクトルの算出:
以上のようにして各コスト項を算出すると、上記式(2)によってCMY格子点評価関数Esp nが求められ、上記図6に示すステップS104までの処理が実施される。この後、上記ステップS112〜ステップS116にてCMY格子点評価関数Esp nの極小値を算出することによって最適化処理を行う。CMY格子点評価関数Esp nの極小値を算出する手法は種々の手法が存在するが、本実施形態においては、効果的にCMY格子点の各成分が振動したり発散したりすることを防止可能な以下の手法を採用している。
【0107】
CMY格子点評価関数Esp nは、式(4),(5),(7)の和であり、これら総ての項においてCMYベクトルSp nが含まれる。従って、CMY格子点評価関数Esp nはCMYベクトルSp nの関数である。すなわち、以下の式(12)のように関数fsで表現可能である。
【数11】
【0108】
ここで、CMYベクトルSp nに補正量ベクトルepを加えた場合に、CMY格子点評価関数Esp nが最小値を取り得ると仮定すると、下記式(13)をCMYベクトルSp nの各要素で偏微分したベクトルがゼロベクトルとなる。これを式(14)で表す。
【数12】
【数13】
ここで、sqp nはCMYベクトルSp nの成分を表し、qはその成分の識別を示している。また、ベクトルAsp nの各成分は、式(13)をscp n,smp n,syp nのそれぞれで偏微分したものである。
【0109】
本実施形態では、上記式(14)を補正量ベクトルepについて解き、以下の式(15)により、補正回数nのCMYベクトルから、補正回数n+1のCMYベクトルを求めている。
【数14】
ここで、λは任意のスカラ値であり、補正量ベクトルepにかかる係数で、一般的に(0≦λ≦1)である。λ=1の場合、上記式(14)式をそのまま解いたことになるが、本実施形態においては0≦λ≦1の範囲で調整することにより、CMYベクトルを効率的に収束させるとともにCMY格子点の各成分が振動したり発散したりすることを防止している。
【0110】
より具体的には、式(14)の第一式は以下の式(16)〜(19)ように表現される。
【数15】
ここで、Astp n,Asop n,Asap nはそれぞれ、Estp n,Esop n,Esap nをCMYベクトルSp nの各成分で偏微分したベクトルを表し、tは行列の転置を表している。また、式(17)〜(19)のqは上述のqと同様であり、ベクトルの成分を識別するための符号である。尚、式(17)において、DsvはCMYベクトルSp nの各成分を用いて算出されるが、処理の簡略のため本実施形態では定数として扱う。
【0111】
式(16)〜(19)を利用して式(14)を補正量ベクトルepについて解くと、式(20)のように表現される。尚、式(20)においてQsは式(21)、Bsは式(22)にて表現され、式(20)内の”−1”は逆行列を示すとともに、式(21)のUは単位行列を示している。
【数16】
【0112】
以上の式(20)によれば、上記式(15)の補正量ベクトルepを算出することができるので、λを決定すれば補正回数n+1回目のCMYベクトルSp n+1を算出することができる。本実施形態においては、まず、上記図6のステップS112において式(20)により補正量ベクトルepを算出し、式(15)で1≦p≦Pについてλ=1としてCMYベクトルSp n+1を算出する。そして、ステップS114にてこのCMYベクトルSp n+1を式(4),(5),(7)のCMYベクトルSp nの代わりに代入してn+1回目のCMY格子点評価関数Esp n+1(1≦p≦P)の値を算出する。
【0113】
ここで、Esp n+1>Esp nであればλを小さくして再度CMYベクトルSp n+1を算出する(ステップS116)。すなわち、Esp n+1>Esp nであればn+1回目の補正でCMY格子点の配置が平滑化されたとは言えないので、λを小さくすることによってn+1回目の補正量を小さくする。λの算出法としては種々の手法が採用可能であるが、本実施形態では下記式(23)を採用している。
【数17】
以上の式(23)によってλを決定し、上記式(15)によって最終的に総ての格子点番号1≦p≦PについてCMYベクトルSp n+1を決定する。上述のようにλの算出手法としては、種々の手法を採用可能であり、コストEstp nとEstp n+1の比較でも良い。
【0114】
(6)インク量格子点評価関数による最適化:
次に、インク量格子点評価関数を最適化する際のコストの計算と最適化処理について詳述する。上述のように最適化処理の最初の段階では、インク量格子点の初期値としてインク量ベクトルIp nが決定されており、この値を利用してコスト計算および評価関数の最適化を行う。ここでも、pは格子点の番号であり、以下の説明では全格子点をP個、すなわち1≦p≦Pとして説明する。また、nは補正回数を示しており、全補正回数をNとして0≦n≦Nである。(n=0は補正前の初期状態を示す)従って、一連の最適化処理では、1≦p≦Pの全格子点についてN回の補正を試みて格子点位置を最適化することになる。
【0115】
インク量格子点評価関数による最適化は、上述のように図5のステップS120,S130にて実施されており、まず、ステップS120ではインク量格子点評価関数Eip nを算出する。インク量格子点評価関数Eip nは以下の式(24)で与えられる。
Eip n=Eitp n+Eiop n ・・・(24)
【0116】
本実施形態において、インク量格子点評価関数は、格子点の配置が平滑化されるほど値が小さくなるコスト項の和で表現され、
Eitp nは、インク量格子点の配置の平滑程度を評価するコストであり、平滑程度が低くなるほど大きくなる関数である。
Eiop nは、インク量格子点が特定の位置に近いか否かを評価するコストであり、インク量格子点が特定の位置から離れるほど値が大きくなる関数である。以下、各項について詳細に説明する。ただし、全ての項を必ずしも用いる必要はなく、必要に応じて使用する項を選択できる。また、インク量格子点評価関数においても上述のCMY格子点と同様に、インク量格子点が示す色が特定の色に近いか否かを評価するコストを考慮しても良い。
【0117】
(6−1)コストEitp n:
インク量格子点評価関数におけるコストEitp nも上記CMY格子点評価関数におけるコストEstp nと同様に考えることによって、インク量空間内の格子点の配置の平滑程度を評価することができる。すなわち、ある番号pのインク量格子点に着目し、当該格子点pに隣接する格子点を参照格子点pjとする。また、格子点pに隣接し、格子点pjと異なる格子点を遷移格子点pvとし、遷移格子点pvに隣接する格子点pvjであって、上記遷移格子点pvと格子点pvjとの相対位置関係が上記格子点pと参照格子点pjとの相対位置関係と類似している格子点を遷移参照格子点pvjとする。
【0118】
すなわち、インク量空間は6次元であるが、上記仮想CMY空間における定義と同様に着目する格子点pと参照格子点pjと遷移格子点pvと遷移参照格子点pvjとを定義することによって、上記コストEstp nと同様にコストEitp nを定義して格子点配置の平滑程度を評価することができる。ここでも格子点pj,pv,pvjの色成分値を要素とする列ベクトルをそれぞれベクトルIpj n,Ipv n,Ipvj nとする。図8は上述の格子点の位置関係を模式的に示している。
【0119】
ここでも、着目する格子点pと参照格子点pjとの相対位置関係を保ちながら着目する格子点pを遷移格子点pvに遷移させた場合を考えて、差ベクトルを利用した演算によって格子点の配置の平滑程度を評価する。また、差ベクトル(Ipj n−Ip n)と、差ベクトル(Ipvj n−Ipv n)との変化量を遷移距離Divで除した値、すなわち、単位遷移距離当たりの差ベクトルの変化量をねじれ量ベクトルとして定義する。
【0120】
このねじれ量ベクトルは、着目する格子点pと参照格子点pjとの相対位置関係に対して上記遷移格子点pvと遷移参照格子点pvjとの相対位置関係が似ているほど小さくなる。本実施形態では、格子点pと隣接する全ての格子点を対象に格子点pj,格子点pvを考えた場合、それら全ての組み合わせにおいて、ねじれ量ベクトルの大きさの2乗を加算した値を各格子点の配置の平滑程度を評価するコストと定義する。
【0121】
すなわち、以下の式(25)によって定義される。
【数18】
尚、j及びvはそれぞれ、参照格子点、遷移格子点の格子点番号であり、J及びVは参照格子点数、遷移格子点数を表す。参照格子点、遷移格子点の対象としては種々の格子点を選択可能であり、格子点pの最隣接格子点や最隣接格子点と第2隣接格子点を含む格子点を選択しても良い。
【0122】
ここで、式(25)を式(3)の第2式に照らし合わせると、インク量ベクトルIを他の空間のベクトルに変換する必要がないため、Mは単位行列となり省略できる。また、各要素に重みをかけていないので、ベクトルW2も単位ベクトルとなり省略できる。(1/Div)2はある遷移格子点pvについて定数であるため、式(3)の第2式と式(25)とは同じ形をしている。
【0123】
(6−2)コストEiop n:
Eiop nは、インク量格子点が特定の位置に近いか否かを評価するコストであり、本実施形態においては、特定の位置として、補正前のインク量ベクトルを採用している。すなわち、n+1回目の補正でインク量ベクトルIp n+1を算出する際に、n回目の補正で算出したインク量ベクトルIp nを特定の位置として利用しており、コストEiop nは式(26)で定義される。
【数19】
ここで、Wioは、インク量ベクトルIの各要素に対する重みが規定された対角行列であり、補正を行う際に、小カッコ内第2項のインク量ベクトルIp nではn回目の格子点pの成分値を代入して定数値とし、小カッコ内第1項のインク量ベクトルIp nを独立変数として考える。
【0124】
ここでも、コストEiop nを考慮していることにより、効果的に発散や振動を防止して、速やかにインク量ベクトルIp nを収束させることができる。尚、インク量ベクトルIの変動がコストに与える影響は上記対角行列Wioの各要素の重みで調整することができる。本コストEiop nにおいても、上記発散や振動を防止する他、様々な意図を反映した束縛条件にすることができる。例えば、インク量格子点pが示す色の彩度を低下させないような条件を課したい場合は、インク量ベクトルIp nが示す色の彩度と同程度の彩度を有するインク量ベクトルItp nを定義し、以下の式(27)のようなコストにしても良い。
【数20】
尚、上記式(26),(27)においても上記式(3)の第2式と同じ形であることが確認できる。
【0125】
また、彩度の低下を防止する条件の他にも、適切な記憶色を維持する条件を課することも可能であり、記憶色を維持しやすい格子点配置を選択し、その格子点配置を示すインク量ベクトルItp nを定義してもよい。さらに、光源によって色の見え方が大きく変わってしまうことを防止するために、光源による影響を受けやすい色について特殊な分光特性を示すインクを使用したり、特定のインクをある程度以下の使用量に抑える場合、これらの条件を満たすようなインク量ベクトルItp nを定義してもよい。
【0126】
(6−3)極小値を与えるベクトルの算出:
以上のようにして各コスト項を算出すると、上記式(24)によってインク量格子点評価関数Eip nが求められ、上記図5に示すステップS130にてインク量格子点評価関数Eip nの極小値を算出することによって最適化処理を行う。インク量格子点評価関数Eip nの極小値を算出する手法は種々の手法が存在するが、本実施形態においては、上記CMY格子点評価関数の最適化とは異なる手法を採用している。すなわち、インク量格子点評価関数の最適化ではCMY格子点評価関数の最適化より極小値算出の精度は低下するものの高速に処理可能なアルゴリズムを採用している。これは、後述するようにインク量格子点の配置は再調整されるからであるが、むろん、CMY格子点評価関数の最適化と同様のアルゴリズムを採用しても良い。
【0127】
インク量格子点評価関数Eip nは、式(25),(26)の和であり、これら総ての項においてインク量ベクトルIp nが含まれる。従って、インク量格子点評価関数Eip nはインク量ベクトルIp nの関数である。すなわち、以下の式(28)のように関数fiで表現可能である。
【数21】
【0128】
ここで、式(28)をインク量ベクトルIp nの各成分で偏微分したベクトル(式(29))が”0”ベクトルになるとき、Eip nは最小になる。
【数22】
ここで、imp nはインク量ベクトルIp nの成分を表し、mはその成分の識別を示している。すなわち、本実施形態において、m=1,2,,,6である。
【0129】
本実施形態では、上記式(29)を解くことによってインク量ベクトルIp nを算出する。より具体的には、式(29)の第一式は以下の式(30)〜(32)ように表現される。
【数23】
ここで、Aitp n,Aiop nはそれぞれ、Eitp n,Eiop nをインク量ベクトルIp nの各成分で偏微分したベクトルを表している。また、式(30)〜(32)のmは上述のmと同様であり、ベクトルの成分を識別するための符号である。尚、式(31)において、Divはインク量ベクトルIp nの各成分を用いて算出されるが、処理の簡略のため本実施形態では定数として扱う。
【0130】
式(29)を、式(30)〜(32)によって、インク量ベクトルIp nについて解き、そのインク量ベクトルIp nを更新後のインク量ベクトルIp n+1であるとすると下式(33)のように表せる。尚、式(33)においてQiは式(34)、Biは式(35)にて表現され、式(33)内の”−1”は逆行列を示すとともに、式(34)のUは単位行列を示している。
【数24】
以上のようにしてインク量ベクトルIp n+1を算出することができるので、上記式(33)によって最終的に総ての格子点番号1≦p≦Pについてインク量ベクトルIp n+1を決定すると一回の補正が終了する。
【0131】
(7)再調整処理:
以上のステップS100〜S130においては、CMYベクトルSp n+1とインク量ベクトルIp n+1とを算出する際にCMY格子点評価関数Esp nとインク量格子点評価関数Eip nとを個別に極小化している。従って、両ベクトルに相関がなく、そのままで両者を対応づけても色合わせ前のLUTにならない。そこで、本実施形態ではステップS140に示す再調整処理を行って、両者を対応づける。
【0132】
CMYベクトルSp n+1の各成分はインク量ベクトルIp n+1の各成分に上記行列Kを乗じることによって算出することができる。従って、上記式(1)を束縛条件にしながらインク量ベクトルIp n+1を移動させると両ベクトルの所定の相関が与えられる。インク量ベクトルIp n+1は上述の極小化によって格子点位置が最適化されているので、移動距離がなるべく少ない方がよい。そこで、ここでも上述のような評価関数、すなわち、インク量ベクトルIp n+1の移動量が大きくなるほどコストが大きくなる第1再調整用評価関数を考え、当該第1再調整用評価関数を極小化することによって得られたインク量ベクトルを再調整後のベクトルとする。
【0133】
但し、第1再調整用評価関数を極小化する解を必ず発見できるとも限らない。そこで、本実施形態においては解が発見されない場合に上記CMYベクトルSp n+1を移動させることにしている。ここでも、CMY格子点は最適化されているので、CMY格子点をなるべく動かさないようにしており、CMYベクトルSp n+1とインク量ベクトルIp n+1との双方の移動量が大きくなるほどコストが大きくなる第2再調整用評価関数を考える。
【0134】
具体的には、図9に示すフローチャートに従って処理を進めている。同図9は、上記図5のステップS140での処理を詳細に示したフローチャートである。本実施形態において、上記第1再調整用評価関数は下記式(36)で与えられる。
【数25】
ここで、インク量ベクトルIcp n+1は再調整後のベクトルであり、インク量ベクトルIp n+1は再調整前のベクトル、すなわち、ステップS130で算出されたインク量ベクトルである。
【0135】
プリンタ17bにて印刷を実行する場合には、一般的に、印刷メディアにおいて単位面積に打ち込み可能なインク量が制限されるし、特定の色において特定の色成分のインクを使用しないように制限をかける。そこで、この極小化の際にこれらの制限を定式化した束縛条件を課すことによって、インク量に関する制限を満たしつつ上記格子点位置も最適化されたインク量ベクトルを特定することができる。
【0136】
本実施形態においては、これらインク量に関する制限と上記行列Kとによる束縛条件を課しており、各条件は以下の式(37)〜(39)で表現される。
【数26】
ここで、icmp n+1は上記インク量ベクトルIcp n+1の各成分であり、wdlmは各インク量成分の任意の組み合わせについてそのインク量の合計値を算出するための係数で、1または0を取り得る。
【0137】
また、dlはインク量制限値を表し、各インク量成分の組み合わせの合計値の最大値を表す。Lはインク量制限値の条件数であり、lはその条件番号である。すなわち、式(38)はインク量制限を定式化したものである。式(39)は特定の色において特定の色成分のインクを使用しないようにする制限を定式化したものであり、womはある格子点において特定のインク量成分を使用しない場合に1、それ以外の場合に0を取り得る係数である。すなわち、この式はインク量成分icmp n+1の組み合わせで示される格子点において、特定のインクが発生することが許されない場合(当該特定のインク量成分が0以外の値を持ってはいけない場合)の条件を示している。尚、mはインク量ベクトルの成分番号であって、本実施形態においてm=1,2,,,6である。
【0138】
ステップS142においては、上記式(37)〜(39)を束縛条件として上記式(36)を極小化する処理を行っており、本実施形態においては、2次計画法と呼ばれる手法を採用している。この際、上記式(38)に示す不等式を束縛条件に組み込むために非負の人工変数iulを考えて式(38)を式(40)に変換する。
【数27】
【0139】
そして、上記束縛条件の式(37),(39),(40)を下記式(41)の様に一つの式で表現する。
【数28】
【0140】
尚、行列Aは(3+L+M)行(M+L)列の行列であり、本実施形態においてインク数Mは6であるので、左上の3行M列はインク量の6成分値をCMY格子点の3成分値に変換する3行6列の上記行列Kに該当し、右上の3行L列は0行列である。また、中段左のL行M列は、上記係数wdlmを成分とする行列であり、中段右のULはL行L列の単位行列である。さらに、左下のM行M列は係数womを対角成分とする対角行列であり、右下の0MLはM行L列の0行列である。ベクトルIxはインク量ベクトルIcp n+1および人工変数iulを成分とするベクトルであり、ベクトルBはCMYベクトルSp n+1とインク量制限値dlと0とを成分とするベクトルである。
【0141】
従って、上記式(41)によって、本実施形態の束縛条件の式(37),(39),(40)が一つの式として定式化されていることになる。第1再調整用評価関数は上記式(36)で与えられるので、同式のインク量ベクトルIcp n+1とインク量ベクトルIp n+1とを束縛条件を加味したベクトルで置き換えるとともにその式を極小化することを考える。すなわち、上記式(36)のインク量ベクトルIcp n+1とインク量ベクトルIp n+1とをベクトルIx、ベクトルIy(式(42))に置き換えると、同式は以下のように展開できる。
【数29】
【数30】
尚、ここで、d=Iy t・Iy,C=−2Iy,Q=2U(Uは(M+L)行(M+L)列の単位行列)である。
【0142】
すなわち、本実施形態にかかる2次計画法においては、式(41)を束縛条件として式(43)を極小化することができればよい。特定の条件下で特定の式を極小化する場合にはラグランジュの未定乗数法を利用することができる。ラグランジュの未定乗数法における汎用関数Fは下記式(44)で表すことができる。
【数31】
尚、式(44)において、ベクトルRaはラグランジュの未定乗数ベクトルであって(3+L+M)列の列ベクトルであり、汎用関数Fの極小値を与えるベクトルIxが存在する場合、当該ベクトルRaは基底変数ベクトルである。
さらに、式(45)に示す(M+L)列の列ベクトルMuを導入し、当該式(45)が0であることから式(45)を式(44)から減じて式(46)とし、当該式(46)を極小化する。
【数32】
尚、式(45)において、ベクトルMuは人工変数ベクトルであり、その成分は、ベクトルIxの対応する成分について、一方が基底変数である場合、他方が非基底変数となるようにしてある。これにより、上記式(45)が0となる。
【0143】
ここで、汎用関数FをベクトルIxの各成分で偏微分したものを下記式(47)のようにゼロベクトルとし、このときのベクトルIxを求めると、汎用関数Fが最小となる場合のベクトルIxを得ることができる。
【数33】
尚、式(47)において、ixntはベクトルIxの成分を表し、nt(=1〜(M+L))はベクトルIxの成分番号である。また、0Ntは(M+L)列のゼロベクトルである。式(46)を極小化する最適解が存在する場合、上記式(41),(47),(45)をすべて満たすベクトルIxが存在する。このベクトルIxを算出するための具体的な解法としては、線形計画法にて周知のシンプレックス第1段解法等を採用することができる。むろん、上記式(36)を極小化するための手法は2次計画法の他、準ニュートン法等種々の解法を採用可能である。
【0144】
以上のようにして、ステップS142において最適解を算出してインク量ベクトルIcp n+1を算出するが、条件によっては式(37)と式(38)又は(39)を両立できない場合が発生する。そこで、ステップS144においては、上記ステップS142にてインク量ベクトルIcp n+1が算出されたか否かを判別し、同ステップS144にてインク量ベクトルIcp n+1が算出されたと判別したときには、ステップS148にてインク量ベクトルIcp n+1をインク量ベクトルIp n+1に代入し、再調整後のインク量ベクトル値とする。
【0145】
ステップS144にてインク量ベクトルIcp n+1が算出されたと判別しないときには、ステップS146,S147にてCMY格子点の移動を許容するとともに、上記インク量に関する制限を加味してインク量ベクトルおよびCMYベクトルを再調整する。本実施形態においては、CMY格子点の移動量ができるだけ少なくなるようにしており、以下の式(48)を第2再調整用評価関数として採用している。
【数34】
【0146】
ここで、WciはM行M列の対角行列であり、各成分は各インク量成分に対する重みを表す重み行列である。また、Wcsは3行3列の対角行列であり、各成分は各CMY成分に対する重みを表す重み行列である。各重み行列の値を調整することにより、CMY格子点とインク量格子点との移動量を相対的に調整することが可能である。例えば、CMY格子点の移動量をインク量格子点の移動量より小さくしたい場合、任意のm,qについて、以下の式(49)のような条件で重み係数を決定すればよい。
wcim≪wcsq …(49)
ここで、wcimは上記行列Wciの対角成分であり、wcsqは上記行列Wcsの対角成分である。
【0147】
また、重み係数wcsqは、CMYベクトルの成分の内、値が小さい成分であるほど、大きな値になるように設定する。例えば、CMYベクトルSp n+1のシアン成分とマゼンタ成分とを比較したときに、シアン成分の方がマゼンタ成分より大きな値であるならば、下式(50)のように重み係数を決定する。
wcsc<wcsm …(50)
すなわち、CMYベクトルのある成分値が小さい場合と大きい場合では、一定量の変化に対して前者の方が変化による影響が大きくなるので、重み係数に逆数的な大きさを与えることにより、その影響を軽減(平均化)している。
【0148】
ステップS146では、以上のようにしてCMYベクトルSp n+1の各成分値から重み行列Wcsを算出し、また、行列Wciを算出して上記式(48)に示す第2再調整用評価関数Ecpを決定する。ステップS147においては、式(48)に示す第2再調整用評価関数Ecpを最小化する最適解を算出することによってEcpが極小化したときのインク量ベクトルIcp n+1を算出する。このとき、上記第1再調整用評価関数の極小化に利用した2次計画法を利用することによって最適解を算出することができ、束縛条件としては、上記式(38)(39)を利用する。具体的な解法は、上記第1再調整用評価関数の極小化の解法に準ずる。
【0149】
以上のようにしてインク量ベクトルIcp n+1を算出した後には、ステップS148にてインク量ベクトルIcp n+1をインク量ベクトルIp n+1に代入する。また、上記ステップS102〜ステップS116にて算出したCMYベクトルSp n+1を当該インク量ベクトルIp n+1および上記式(1)により更新する。この結果、番号pの格子について再調整されたCMY格子点とインク量格子点とであって両者が対応づけられた格子点を決定することができる。
【0150】
(8)他の実施形態:
上記実施形態においては対応関係定義データが色補正LUTであり、本発明にかかる方法で決定した対応関係定義データ作成用格子点が指定する印刷色を測色することによって色補正LUTを作成していたが、むろん本発明の実施形態はこの態様に限定されない。例えば、対応関係定義データがプロファイルであり、本発明にかかる方法で決定した対応関係定義データ作成用格子点が指定する印刷色を測色することによってプロファイルを作成しても良い。
【0151】
この実施形態は、例えば、上記図1に示す色補正LUT生成装置20Aにおいて、色補正LUT生成部20iの代わりにプロファイルを生成可能なプロファイル生成部を構成し、色補正LUT格納部20bの代わりにプロファイル格納部を構成することによって実現される。すなわち、プロファイル生成部によって、測色データ取得部20hによって取得された測色データからプロファイルを作成し、プロファイル格納部に格納する。
【0152】
より具体的には、色合わせ前LUT生成部20gにて生成された各インク量格子点の各色成分をCMYKlclm画像データの各成分とした印刷パッチを印刷し、測色機等によって測色した測色データを測色データ取得部20hにて取得する。この結果、上記インク量格子点が示す色を機器非依存色で表現することができる。従って、インク量格子点が示す色を上述のsRGB画像データと対応づけたプロファイルや、インク量格子点が示す色をLab色空間での座標データに対応づけたプロファイル等種々のプロファイルを生成することができ、上記プロファイル生成部にてプロファイルを作成する。
【0153】
ここで、プロファイルとしては、特定の色空間上の色を特定する画像データとCMYKlclm画像データとを対応づけることができれば良く、種々の態様を採用可能である。すなわち、複数の代表点について一対一に色の関係を規定したLUTであっても良いし、特定の関数や行列等によって色の関係を規定したプロファイルであっても良い。ICC(International Color Consortium)の企画に準拠したプロファイルを生成しても良い。むろん、この場合もプロファイル生成装置やプロファイル生成方法,プロファイル生成プログラムやその記録媒体としても発明が成立する。
【図面の簡単な説明】
【図1】色補正LUT生成装置の機能ブロック図である。
【図2】色補正LUT生成装置および画像処理装置のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。
【図3】画像処理装置の機能ブロック図である。
【図4】色変換処理のフローチャートである。
【図5】色補正LUT生成装置における処理の概略フローチャートである。
【図6】CMY格子点を算出する処理のフローチャートである。
【図7】CMY格子点の位置関係を示す図である。
【図8】インク量格子点の位置関係を示す図である。
【図9】再調整処理のフローチャートである。
【符号の説明】
11a…スキャナ
11b…デジタルスチルカメラ
11c…ビデオカメラ
12…コンピュータ本体
12a…オペレーティングシステム
12b…ディスプレイドライバ
12c…プリンタドライバ
12d…アプリケーション
12e…CPU
12f…RAM
12g…ROM
12h…I/O
12i…プロジェクタドライバ
13a…フレキシブルディスクドライブ
13b…ハードディスク
13c…CD−ROMドライブ
14a…モデム
15a…キーボード
15b…マウス
17a…デイスフレイ
17b…カラープリンタ
17c…プロジェクタ
20B…画像処理装置
20a…色補正部
20b…色補正LUT格納部
20d…コスト計算部
20e…最適化部
20f…再調整部
20g…色合わせ前LUT生成部
20h…測色データ取得部
20i…色補正LUT生成部
Claims (14)
- 印刷装置で使用されるとともにCMYの3色より多数色の各色インク量と他の画像機器で使用される各色の色成分値との対応関係を規定した対応関係定義データを作成するにあたり参照される複数の格子点を決定する対応関係定義データ作成用格子点決定方法であって、
上記各色インク量を成分としたインク量格子点の配置の平滑程度を評価するインク量格子点平滑程度評価関数とCMYの各色成分で規定されるCMY格子点の配置の平滑程度を評価するCMY格子点平滑程度評価関数とを規定し、上記インク量格子点平滑程度評価関数とCMY格子点平滑程度評価関数とを個別に略極小化した状態のCMY格子点およびインク量格子点を対応関係定義データ作成用格子点とすることを特徴とする対応関係定義データ作成用格子点決定方法。 - 印刷装置で使用する各色のインク量と他の画像機器で使用する各色の色成分値との対応関係を規定した対応関係定義データを作成するにあたり参照される複数の格子点を決定する対応関係定義データ作成用格子点決定方法であって、
上記各色のインク量を成分としたインク量空間内におけるインク量格子点の配置の平滑程度を評価するインク量格子点平滑程度評価関数とこれらのインク数より少数の色成分で規定される低次元色空間内における低次元色格子点の配置の平滑程度を評価する低次元色格子点平滑程度評価関数とを規定し、上記インク量格子点平滑程度評価関数と低次元色格子点平滑程度評価関数とで個別に評価を向上させることによってインク量格子点と低次元色格子点とを個別に最適化し、インク量格子点と低次元色格子点とのいずれか一方を最適化された格子点に維持しつつ他方の最適化された格子点を再調整することにより上記複数の格子点を決定することを特徴とする対応関係定義データ作成用格子点決定方法。 - 上記インク量格子点平滑程度評価関数および低次元色格子点平滑程度評価関数のいずれかまたは双方は、着目する格子点とその隣接格子点との相対的な位置関係と、上記着目する格子点に隣接し比較対象となる格子点とその隣接格子点との相対的な位置関係とで差異が大きくなるほど値が大きくなる関数を含むことを特徴とする上記請求項2に記載の対応関係定義データ作成用格子点決定方法。
- 上記相対的な位置関係の差異は、上記着目する格子点とその隣接格子点とを結ぶベクトルと、上記着目する格子点に隣接し比較対象となる格子点とその隣接格子点とを結ぶベクトルとの差ベクトルを、上記着目する格子点と上記比較対象となる格子点との距離で除した値を成分として有する関数を含むことを特徴とする上記請求項3に記載の対応関係定義データ作成用格子点決定方法。
- 上記インク量格子点平滑程度評価関数および低次元色格子点平滑程度評価関数のいずれかまたは双方は、着目する格子点が特定の位置から離れるほど値が大きくなる関数を含むことを特徴とする上記請求項2〜請求項4のいずれかに記載の対応関係定義データ作成用格子点決定方法。
- 上記インク量格子点平滑程度評価関数および低次元色格子点平滑程度評価関数のいずれかまたは双方は、着目する格子点が示す色が特定の色から離れるほど値が大きくなる関数を含むことを特徴とする上記請求項2〜請求項5のいずれかに記載の対応関係定義データ作成用格子点決定方法。
- 上記インク量格子点平滑程度評価関数および低次元色格子点平滑程度評価関数のいずれかまたは双方は、それぞれの色空間を構成する各色成分を変数として有する関数であり、ある格子点についての最適化に際して当該格子点の各色成分に対して偏差を加えた状態で評価関数を極小化する偏差を算出し、当該格子点に対して当該偏差分の補正を繰り返すことによって配置の平滑程度の評価を向上させることを特徴とする上記請求項2〜請求項6のいずれかに記載の対応関係定義データ作成用格子点決定方法。
- 上記インク量格子点の再調整では、インク量格子点を低次元色格子点に変換する所定の変換式によって再調整後のインク量格子点が上記最適化された低次元色格子点に変換されるように束縛条件を課しつつインク量格子点を決定することを特徴とする上記請求項2〜請求項7のいずれかに記載の対応関係定義データ作成用格子点決定方法。
- 印刷装置で使用されるとともにCMYの3色より多数色の各色インク量と他の画像機器で使用される各色の色成分値との対応関係を規定した対応関係定義データを参照して、上記画像機器で使用される各色の色成分値を上記インク量に変換して印刷を実行させるための印刷データを生成する画像処理装置であって、
上記対応関係定義データは、上記各色インク量を成分としたインク量格子点の配置の平滑程度を評価するインク量格子点平滑程度評価関数とCMYの各色成分で規定されるCMY格子点の配置の平滑程度を評価するCMY格子点平滑程度評価関数とを規定し、上記インク量格子点平滑程度評価関数とCMY格子点平滑程度評価関数とを個別に略極小化した状態のCMY格子点およびインク量格子点を対応関係定義データ作成用格子点とし、当該対応関係定義データ作成用格子点にて規定されるインク量での印刷結果を所定の測色機によって測色した測色値によって上記インク量と上記他の画像機器で使用される各色の色成分値とを対応づけることで作成されるデータであることを特徴とする画像処理装置。 - 印刷装置で使用する各色のインク量と他の画像機器で使用する各色の色成分値との対応関係を規定した対応関係定義データを参照して、上記画像機器で使用する各色の色成分値を上記インク量に変換して印刷を実行させるための印刷データを生成する画像処理装置であって、
上記対応関係定義データは、上記各色のインク量を成分としたインク量空間内におけるインク量格子点の配置の平滑程度を評価するインク量格子点平滑程度評価関数とこれらのインク数より少数の色成分で規定される低次元色空間内における低次元色格子点の配置の平滑程度を評価する低次元色格子点平滑程度評価関数とを規定し、上記インク量格子点平滑程度評価関数と低次元色格子点平滑程度評価関数とで個別に評価を向上させることによってインク量格子点と低次元色格子点とを個別に最適化し、インク量格子点と低次元色格子点とのいずれか一方を最適化された格子点に維持しつつ他方の最適化された格子点を再調整することにより複数の格子点を決定して対応関係定義データ作成用格子点とし、当該対応関係定義データ作成用格子点にて規定されるインク量での印刷結果を所定の測色機によって測色した測色値によって上記インク量と上記他の画像機器で使用する各色の色成分値とを対応づけることで作成されるデータであることを特徴とする画像処理装置。 - 印刷装置で使用されるとともにCMYの3色より多数色の各色インク量と他の画像機器で使用される各色の色成分値との対応関係を規定した対応関係定義データを参照して、上記画像機器で使用される各色の色成分値を上記インク量に変換して印刷を実行させるための印刷データを生成する画像処理方法であって、
上記対応関係定義データは、上記各色インク量を成分としたインク量格子点の配置の平滑程度を評価するインク量格子点平滑程度評価関数とCMYの各色成分で規定されるCMY格子点の配置の平滑程度を評価するCMY格子点平滑程度評価関数とを規定し、上記インク量格子点平滑程度評価関数とCMY格子点平滑程度評価関数とを個別に略極小化した状態のCMY格子点およびインク量格子点を対応関係定義データ作成用格子点とし、当該対応関係定義データ作成用格子点にて規定されるインク量での印刷結果を所定の測色機によって測色した測色値によって上記インク量と上記他の画像機器で使用される各色の色成分値とを対応づけることで作成されるデータであることを特徴とする画像処理方法。 - 印刷装置で使用する各色のインク量と他の画像機器で使用する各色の色成分値との対応関係を規定した対応関係定義データを参照して、上記画像機器で使用する各色の色成分値を上記インク量に変換して印刷を実行させるための印刷データを生成する画像処理方法であって、
上記対応関係定義データは、上記各色のインク量を成分としたインク量空間内におけるインク量格子点の配置の平滑程度を評価するインク量格子点平滑程度評価関数とこれらのインク数より少数の色成分で規定される低次元色空間内における低次元色格子点の配置の平滑程度を評価する低次元色格子点平滑程度評価関数とを規定し、上記インク量格子点平滑程度評価関数と低次元色格子点平滑程度評価関数とで個別に評価を向上させることによってインク量格子点と低次元色格子点とを個別に最適化し、インク量格子点と低次元色格子点とのいずれか一方を最適化された格子点に維持しつつ他方の最適化された格子点を再調整することにより複数の格子点を決定して対応関係定義データ作成用格子点とし、当該対応関係定義データ作成用格子点にて規定されるインク量での印刷結果を所定の測色機によって測色した測色値によって上記インク量と上記他の画像機器で使用する各色の色成分値とを対応づけることで作成されるデータであることを特徴とする画像処理方法。 - 印刷装置で使用されるとともにCMYの3色より多数色の各色インク量と他の画像機器で使用される各色の色成分値との対応関係を規定した対応関係定義データを参照して、上記画像機器で使用される各色の色成分値を上記インク量に変換して印刷を実行させるための印刷データを生成する機能をコンピュータに実現させる画像処理プログラムであって、
上記対応関係定義データは、上記各色インク量を成分としたインク量格子点の配置の平滑程度を評価するインク量格子点平滑程度評価関数とCMYの各色成分で規定されるCMY格子点の配置の平滑程度を評価するCMY格子点平滑程度評価関数とを規定し、上記インク量格子点平滑程度評価関数とCMY格子点平滑程度評価関数とを個別に略極小化した状態のCMY格子点およびインク量格子点を対応関係定義データ作成用格子点とし、当該対応関係定義データ作成用格子点にて規定されるインク量での印刷結果を所定の測色機によって測色した測色値によって上記インク量と上記他の画像機器で使用される各色の色成分値とを対応づけることで作成されるデータであることを特徴とする画像処理プログラム。 - 印刷装置で使用する各色のインク量と他の画像機器で使用する各色の色成分値との対応関係を規定した対応関係定義データを参照して、上記画像機器で使用する各色の色成分値を上記インク量に変換して印刷を実行させるための印刷データを生成する機能をコンピュータに実現させる画像処理プログラムであって、
上記対応関係定義データは、上記各色のインク量を成分としたインク量空間内におけるインク量格子点の配置の平滑程度を評価するインク量格子点平滑程度評価関数とこれらのインク数より少数の色成分で規定される低次元色空間内における低次元色格子点の配置の平滑程度を評価する低次元色格子点平滑程度評価関数とを規定し、上記インク量格子点平滑程度評価関数と低次元色格子点平滑程度評価関数とで個別に評価を向上させることによってインク量格子点と低次元色格子点とを個別に最適化し、インク量格子点と低次元色格子点とのいずれか一方を最適化された格子点に維持しつつ他方の最適化された格子点を再調整することにより複数の格子点を決定して対応関係定義データ作成用格子点とし、当該対応関係定義データ作成用格子点にて規定されるインク量での印刷結果を所定の測色機によって測色した測色値によって上記インク量と上記他の画像機器で使用する各色の色成分値とを対応づけることで作成されるデータであることを特徴とする画像処理プログラム。
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