JP2004140242A - 電子部品収納用容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】絶縁基体に蓋体を接合させる封止材の軟化溶融温度が400℃程度で高いため、封止材を溶融する熱が内部に収容する電子部品に作用して電子部品に特性劣化を招来させてしまう。
【解決手段】絶縁基体1と蓋体2とを封止材8を介して接合させ、絶縁基体1と蓋体2とから成る容器内部4に電子部品3を気密に収容する電子部品収納用容器であって、封止材8は、五酸化燐20〜35質量%、一酸化錫50〜65質量%、酸化硼素1〜6質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および二酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとして二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加したものから成る。
【選択図】 図1
【解決手段】絶縁基体1と蓋体2とを封止材8を介して接合させ、絶縁基体1と蓋体2とから成る容器内部4に電子部品3を気密に収容する電子部品収納用容器であって、封止材8は、五酸化燐20〜35質量%、一酸化錫50〜65質量%、酸化硼素1〜6質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および二酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとして二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加したものから成る。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体素子や圧電振動子等の電子部品を気密に封止して収容するための電子部品収納用容器に関し、特に封止材にガラスを用いて封止を行なう電子部品収納用容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体集積回路素子をはじめとする半導体素子あるいは水晶振動子や弾性表面波素子といった圧電振動子等の電子部品を収容するための電子部品収納用容器は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料から成り、その上面の略中央部に電子部品を搭載するための搭載部およびその周辺から下面にかけて導出されたタングステンやモリブデン等の高融点金属から成る複数個のメタライズ配線層を有する絶縁基体と、それに対向する面の略中央部に電子部品を収容するための凹部を有する蓋体とから構成されている。
【0003】
そして、電子部品が例えば圧電振動子の場合には、絶縁基体の搭載部に圧電振動子の一端を導電性エポキシ樹脂等から成る導電性樹脂を介して接着固定するとともに圧電振動子の各電極をメタライズ配線層に電気的に接続し、しかる後、絶縁基体の上面に蓋体を低融点ガラスから成る封止材を介して接合させ、絶縁基体と蓋体とから成る容器内部に圧電振動子を気密に収容することによって最終製品としての電子部品装置となる。
【0004】
なお、絶縁基体に蓋体を接合する封止材としては一般に酸化鉛55〜60質量%と、酸化硼素3〜13質量%と、二酸化珪素1〜5質量%と、酸化ビスマス3〜8質量%とを含むガラス成分に、フィラーとしてのコージライト系化合物を10〜20質量%、チタン酸錫系化合物を10〜20質量%添加したガラスが使用されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−121582号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の電子部品収納用容器においては、絶縁基体に蓋体を接合させる封止材の軟化溶融温度が400℃程度と高いため、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合させ、絶縁基体と蓋体とから成る容器内部に電子部品を気密に収容する際、封止材を溶融する熱が内部に収容する電子部品に作用して電子部品に特性劣化を招来させるという問題点を有していた。
【0007】
また、絶縁基体に蓋体を接合させる封止材の軟化溶融温度が400℃程度と高く、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合させ、絶縁基体と蓋体とから成る絶縁容器内部に電子部品を気密に収容する際に封止材を溶融させる熱によって電子部品を接着固定する接着剤を劣化させてしまうため、電子部品を接着固定する導電性接着剤に使用上の制限があり、衝撃性に強いエポキシ系やシリコン系の導電性樹脂を使用することができず、落下試験等の耐衝撃信頼性上の問題点を有していた。
【0008】
さらに、封止材として導電性有機樹脂を用いた場合、有機樹脂は耐湿性に劣るため大気中に含まれる水分が封止材を通して絶縁基体と蓋体とから成る容器内部に入り込んでしまい、その結果、容器内部に収容する電子部品表面に水分が付着し、電子部品表面の電極を酸化腐食して電子部品の特性にバラツキを発生させてしまうという問題点を有していた。
【0009】
また、近年地球環境保護運動の高まりの中で、酸化鉛は環境負荷物質に指定されており、例えば酸化鉛を含む電子装置が屋外に廃棄・放置され風雨に曝された場合、環境中に鉛が溶けだし環境を汚染する可能性があり、人体に対して有害である酸化鉛を用いない封止材の開発が要求されるようになってきた。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は電子部品をその特性の劣化を招来することなく気密に封止し、電子部品を長期間にわたり正常に作動させることができる電子部品収納用容器を提供することにある。
【0011】
【問題を解決するための手段】
本発明の電子部品収納用容器は、上面に電子部品を搭載するための凹部を有する絶縁基体と、この絶縁基体の上面に封止材を介して接合され、絶縁基体との間の空間に電子部品を気密に収容する蓋体とから成る電子部品収納用容器であって、封止材が五酸化燐20〜35質量%、一酸化錫50〜65質量%、酸化硼素1〜6質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および二酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとして二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加したものから成ることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の電子部品収納用容器によれば、封止材を上記構成としたことから、封止材のガラス成分の軟化溶融温度を350℃以下と低温度とすることができ、その結果、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合させ、絶縁基体と蓋体とから成る絶縁容器内部に電子部品を気密に収容する際、封止材のガラス成分を溶融する熱が内部に収容する電子部品に作用しても電子部品に特性劣化を招来させることはなく、電子部品を長期にわたり正常に作動させることが可能となる。また、電子部品を接着固定する接着剤として従来の接着剤より耐熱性の低い、例えばエポキシ樹脂系の接着剤の使用が可能となり、電子部品の接着固定に対する耐衝撃性の改善を図ることができ、電子部品の接着固定の信頼性を高いものとして長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の電子部品収納用容器によれば、封止材が上記ガラス成分にフィラーとして二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加したものから成ることから、封止材の熱膨張係数を絶縁基体や蓋体の熱膨張係数と近似させることができ、その結果、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合させる際、封止材と絶縁基体および蓋体の間に各々の熱膨張係数の相違に起因して発生する応力を小さなものとすることができ、これによって封止材と絶縁基体および蓋体の間で剥離したり気密封止が破れることが有効に防止され、電子部品収納用容器の気密封止を完全として内部に収容する電子部品を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。さらに、封止材は二酸化珪素系ガラスが上記ガラス成分と良好な濡れ性を示すので二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加した場合においても良好な流動性を示し、その結果、電子部品収納用容器の気密封止をより完全なものとすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の電子部品収納用容器の実施の形態の一例を示す断面図であり、図1には、電子部品が半導体集積回路素子であり、電子部品収納用容器が半導体素子収納用パッケージである場合の例を示している。
【0015】
図1において、1は絶縁基体、2は蓋体であり、主に絶縁基体1と蓋体2とで半導体集積回路素子3を収容するための絶縁容器4が構成される。
【0016】
絶縁基体1は、その上面中央部に半導体集積回路素子3を収容する空所を形成するための凹部1aが設けてあり、凹部1a底面には半導体集積回路素子3がガラスや樹脂・ろう材等の接着剤を介して接着固定される。
【0017】
絶縁基体1は、酸化アルミニウム質焼結体やムライト質焼結体・窒化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料から成り、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合、酸化アルミニウム・二酸化珪素・酸化マグネシウム・酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダー・溶剤等を添加混合して泥漿物を作るとともにこの泥漿物をドクターブレード法やカレンダーロール法等によりシート状に成形してセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得、しかる後、セラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともにこれを複数枚積層し約1600℃の高温で焼成することによって製作される。また、絶縁基体1は、凹部1a周辺から上面にかけて複数個のメタライズ配線層5が被着形成されており、このメタライズ配線層5の凹部1a周辺部には半導体集積回路素子3の各電極がボンディングワイヤ6を介して電気的に接続され、絶縁基体1の上面に導出された部位には外部電気回路(図示せず)と接続される外部リード端子7が銀ろう等のろう材を介して取着されている。
【0018】
メタライズ配線層5は、半導体集積回路素子3の各電極を外部電気回路に電気的に接続する際の導電路として作用し、タングステン・モリブデン・マンガン等の高融点金属粉末により形成されている。
【0019】
このようなメタライズ配線層5は、タングステン・モリブデン・マンガン等の高融点金属粉末に適当な有機溶剤・溶媒・可塑剤等を添加混合して得た金属ペーストを、従来周知のスクリーン印刷法等の厚膜手法を採用して絶縁基体1と成るセラミックグリーンシートにあらかじめ印刷塗布しておき、セラミックグリーンシートと同時に焼成することによって絶縁基体1の凹部1a周辺から上面にかけて所定パターンに被着形成される。
【0020】
なお、メタライズ配線層5はその露出する外表面にニッケル・金等の耐蝕性に優れ、かつ良導電性である金属をめっき法により1〜20μmの厚さに被着させておくと、メタライズ配線層5の酸化腐食を有効に防止するとともにメタライズ配線層5を外部電気回路基板の配線導体に半田等のろう材を介してろう付けする際、そのろう付け強度を強固となすことができる。そのためメタライズ配線層5はその露出する外表面にニッケル・金等の金属を1〜20μmの厚さに被着させておくことが好ましい。
【0021】
また、蓋体2は、酸化アルミニウム質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料、あるいは鉄−ニッケル合金や鉄−ニッケル−コバルト合金等の金属材料から成り、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合、酸化アルミニウムや二酸化珪素・酸化マグネシウム・酸化カルシウム等の原料粉末を所定プレス金型内に充填するとともに一定圧力で押圧して成形し、しかる後、この成形品を1600℃の温度で焼成することにより製作される。
【0022】
なお、蓋体2を絶縁基体1に接合させる封止材8は、五酸化燐20〜35質量%、一酸化錫50〜65質量%、酸化硼素1〜6質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および二酸化珪素1〜3質量%を含む成分にフィラーとして二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加したものから成り、絶縁基体1と蓋体2との間に封止材8を挟み込むとともに封止材8を加熱溶融後、硬化することによって絶縁基体1と蓋体2とを接合させる。
【0023】
上記構成の封止材8は、耐湿性に優れていることから大気中に含まれる水分が封止材8を通して容器内部に入り込もうとしても封止材8で完全に阻止され、その結果、容器内部に収容する半導体素子3に水分が付着し、半導体素子3表面の電極が酸化腐食するのを有効に防止して正常に作動させることが可能となる。
【0024】
また、封止材8は、そのガラス成分の加熱溶融温度が350℃以下と低いことから、絶縁基体1に蓋体2を接合させる際の熱によって半導体素子3が絶縁基体1より外れることはなく、半導体素子3の固定にエポキシ等の接着剤の使用が可能となり、半導体素子3の耐衝撃性の改善がなされ半導体素子3の固定の信頼性を高いものとし、半導体素子3を常に正常に、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0025】
なお、封止材8のガラス成分は、五酸化燐の量が20質量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなって、封止材8のガラス成分を軟化溶融させる熱によって半導体素子3に特性の劣化を招来してしまう傾向があり、他方、35質量%を超えるとガラスの耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。従って、五酸化燐は20〜35質量%の範囲であることが好ましい。
【0026】
また、一酸化錫の量が50質量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、封止材8のガラス成分を軟化溶融させる熱によって半導体素子3に特性の劣化を招来してしまう傾向があり、他方、65質量%を超えると封止材8の耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。従って、一酸化錫は50〜65質量%の範囲であることが好ましい。
【0027】
また、酸化硼素の量が1質量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、封止材8のガラス成分を軟化溶融させる熱によって半導体素子3に特性の劣化を招来してしまう傾向があり、他方、6質量%を超えるとガラスの耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。従って、酸化ナトリウムは1〜6質量%の範囲であることが好ましい。
【0028】
また、酸化亜鉛が1質量%未満であるとガラスの耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向があり、他方、6質量%を超えるとガラスの結晶化が進み低温での容器4の気密封止が困難となる傾向にある。従って、酸化亜鉛の量は1〜6質量%の範囲であることが好ましい。
【0029】
また、酸化アルミニウムの量が1質量%未満であるとガラスの耐湿性が低下し、封止材8を介して容器4の気密封止の信頼性が低下する傾向にあり、他方、4質量%を超えるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、封止材8のガラス成分を軟化溶融させる熱によって半導体素子3に特性の劣化を招来してしまう傾向がある。従って、酸化アルミニウムは1〜4質量%の範囲であることが好ましい。
【0030】
また、二酸化珪素の量が1質量%未満であると封止材8の熱膨張係数が大きくなって絶縁基体1および蓋体2の熱膨張係数と合わなくなり、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下する傾向にある。他方、3質量%を超えるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、封止材8を軟化溶融させる熱によって半導体素子3に特性の劣化を招来してしまう傾向がある。従って、二酸化珪素は1〜3質量%の範囲であることが好ましい。
【0031】
また、フィラーとしての二酸化珪素系ガラスの量が30質量%未満であると封止材8の強度が低下し容器4の気密封止の信頼性が大きく低下する傾向があり、他方、50質量%を超えると封止材8の低温での流動性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が低下する傾向がある。従って、二酸化珪素系ガラスは30〜50質量%の範囲であることが好ましい。なお、封止材8は、二酸化珪素系ガラスが上記ガラス成分と良好な濡れ性を示すので二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加した場合においても良好な流動性を示し、その結果、電子部品収納用容器の気密封止をより完全なものとすることができる。
【0032】
なお、ここで二酸化珪素系ガラスとは酸化珪素を主成分とするガラスをいい、例えば、石英ガラスや二酸化珪素96.3質量%、酸化硼素2.9質量%、酸化アルミニウム0.4質量%、酸化ナトリウム0.02質量%を含むガラス等が例示される。
【0033】
また、二酸化珪素系ガラスは、その熱膨張係数を5×10−7〜10×10−7/℃の範囲とすることにより、封止材8の熱膨張係数を絶縁基体1や蓋体2の熱膨張係数と近似させることができ、絶縁基体1と蓋体2とから成る容器の気密信頼性を高めることができる。従って、二酸化珪素系ガラスの熱膨張係数を5×10−7〜10×10−7/℃の範囲とすることが重要である。
【0034】
なお、二酸化珪素系ガラスは、その軟化溶融温度が封止材8のガラス成分の軟化溶融温度よりも50℃以上高い温度であることが重要である。二酸化珪素系ガラスの軟化溶融温度が封止材8のガラス成分の軟化溶融温度よりも50℃未満高い温度であると、絶縁基体1と蓋体2とを封止材8を介して接合する際に、二酸化珪素系ガラスが封止材8のガラス成分と反応し易くなる傾向があり、二酸化珪素系ガラスがフィラーとしての機能を充分果たすことが困難となってしまう危険性がある。従って、二酸化珪素系ガラスは、その軟化溶融温度が封止材8のガラス成分の軟化溶融温度よりも50℃以上高い温度であることが重要である。
【0035】
かくして本発明の電子部品収納用容器によれば、絶縁基体1の凹部1aの底面に半導体集積回路素子3をガラス・樹脂・ろう材等から成る接着剤を介して接着固定するとともに半導体集積回路素子3の各電極をメタライズ配線層5にボンディングワイヤ6を介して電気的に接続し、しかる後、絶縁基体1の上面に凹部1aを覆うように蓋体2を封止材8を介して接合させ、絶縁基体1と蓋体2とから成る絶縁容器4の内部に半導体集積回路素子3を気密に封止することによって最終製品としての半導体装置が完成する。
【0036】
なお、図2は本発明の電子部品収納用パッケージの実施の形態の他の例を示す断面図であり、同図においては電子部品が水晶振動子等の圧電振動子であり電子部品収納用容器が圧電素子収納用容器である場合の例を示している。
【0037】
【実施例】
効果の確認を行なうために、次の実験を行なった。なお、ここでは、主成分の五酸化燐、一酸化錫および外添加のフィラー添加量について決定した実験例を示す。
【0038】
まず、各構成要素の質量%を変化させてガラスを作製した。そして、各ガラスを用いた容器の気密信頼性を評価するために、熱衝撃試験1000サイクル後の封止容器のヘリウムガスリークテストを実施した。また、蓋体の封着強度を比較するために、容器と金体とのせん断強度を測定した。なお、評価用容器としては、絶縁基体の縦方向の寸法が5.0mm、横方向の寸法が3.2mm、高さが0.7mmであり、蓋体との接合面の幅が0.5mmの容器を用いた。
【0039】
(実験1)
五酸化燐を16〜40質量%の間で変化させ、その他の構成要素を加えて合計が100質量%となるように調合(小数点2桁以下を四捨五入)した。この時の実験結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
実験結果より、五酸化燐については、20〜35質量%の範囲で良好な気密性信頼性を示すとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかった。
【0042】
次に、一酸化錫および五酸化燐について、次の実験を行なった。
(実験2)
五酸化燐の含有量を20〜35質量%の範囲とし、一酸化錫の含有量を46〜70質量%の間で変化させ、その他の構成要素を加えて合計が100質量%となるように調合(小数点2桁以下を四捨五入)した。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
実験結果より、一酸化錫については、50〜65質量%の範囲で良好な気密性信頼性を示すとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかった。
【0045】
また、微量元素においても同種の実験を行ない、封止材が五酸化燐20〜35質量%、一酸化錫50〜65質量%、酸化硼素1〜6質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および二酸化珪素1〜3質量%を含むガラスの場合において、良好な気密性信頼性を示すとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかり、本発明の効果を確認することができた。
【0046】
(実験3)
さらに、ガラス組成を一定にし、フィラー添加量を変化させての同様の実験を行なった。評価結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
フィラーとしては、二酸化珪素系ガラス(SiO2を96.3質量%、B2O3を2.9質量%、Al2O3を0.4質量%、Na2Oを0.02質量%含むガラス)を外添加で30〜50質量%添加した場合において良好な気密性信頼性が得られるとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかった。
【0049】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0050】
【発明の効果】
本発明の電子部品収納用容器によれば、封止材を上記構成としたことから、封止材のガラス成分の軟化溶融温度を350℃以下と低温度とすることができ、その結果、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合させ、絶縁基体と蓋体とから成る絶縁容器内部に電子部品を気密に収容する際、封止材のガラス成分を溶融する熱が内部に収容する電子部品に作用しても電子部品に特性劣化を招来させることはなく、電子部品を長期にわたり正常に作動させることが可能となる。また、電子部品を接着固定する接着剤として従来の接着剤より耐熱性の低い、例えばエポキシ樹脂系の接着剤の使用が可能となり、電子部品の接着固定に対する耐衝撃性の改善を図ることができ、電子部品の接着固定の信頼性を高いものとして長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0051】
また、本発明の電子部品収納用容器によれば、封止材が上記ガラス成分にフィラーとして二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加したものから成ることから、封止材の熱膨張係数を絶縁基体や蓋体の熱膨張係数と近似させることができ、その結果、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合させる際、封止材と絶縁基体および蓋体の間に各々の熱膨張係数の相違に起因して発生する応力を小さなものとすることができ、これによって封止材と絶縁基体および蓋体の間で剥離したり気密封止が破れることが有効に防止され、電子部品収納用容器の気密封止を完全として内部に収容する電子部品を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。さらに、封止材は二酸化珪素系ガラスが上記ガラス成分と良好な濡れ性を示すので二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加した場合においても良好な流動性を示し、その結果、電子部品収納用容器の気密封止をより完全なものとすることができる。
【0052】
さらに、本発明の電子部品収納用容器によれば、封止材はガラスから成り、耐湿性に優れていることから、大気中に含まれる水分が封止材を通して電子部品素子が収容される容器内部に入り込もうとしても封止材で完全に阻止され、その結果、容器内部に収容する電子部品素子に水分が付着し電子部品表面の電極が酸化腐食するのを有効に防止して電子部品を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0053】
また、本発明の電子部品収納用容器の封止材は、従来の低温封止ガラスと異なり酸化鉛その他の環境に悪影響を及ぼす成分を含んでいないため、地球環境保全の面からも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子部品収納容器の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の電子部品収納容器の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1、11・・・・・・・・絶縁基体
2、12・・・・・・・・蓋体
3・・・・・・・・・・電子部品(半導体集積回路素子)
13・・・・・・・・・・電子部品(圧電振動子)
4、14・・・・・・・・絶縁容器
8、17・・・・・・・・封止材
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体素子や圧電振動子等の電子部品を気密に封止して収容するための電子部品収納用容器に関し、特に封止材にガラスを用いて封止を行なう電子部品収納用容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体集積回路素子をはじめとする半導体素子あるいは水晶振動子や弾性表面波素子といった圧電振動子等の電子部品を収容するための電子部品収納用容器は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料から成り、その上面の略中央部に電子部品を搭載するための搭載部およびその周辺から下面にかけて導出されたタングステンやモリブデン等の高融点金属から成る複数個のメタライズ配線層を有する絶縁基体と、それに対向する面の略中央部に電子部品を収容するための凹部を有する蓋体とから構成されている。
【0003】
そして、電子部品が例えば圧電振動子の場合には、絶縁基体の搭載部に圧電振動子の一端を導電性エポキシ樹脂等から成る導電性樹脂を介して接着固定するとともに圧電振動子の各電極をメタライズ配線層に電気的に接続し、しかる後、絶縁基体の上面に蓋体を低融点ガラスから成る封止材を介して接合させ、絶縁基体と蓋体とから成る容器内部に圧電振動子を気密に収容することによって最終製品としての電子部品装置となる。
【0004】
なお、絶縁基体に蓋体を接合する封止材としては一般に酸化鉛55〜60質量%と、酸化硼素3〜13質量%と、二酸化珪素1〜5質量%と、酸化ビスマス3〜8質量%とを含むガラス成分に、フィラーとしてのコージライト系化合物を10〜20質量%、チタン酸錫系化合物を10〜20質量%添加したガラスが使用されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−121582号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の電子部品収納用容器においては、絶縁基体に蓋体を接合させる封止材の軟化溶融温度が400℃程度と高いため、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合させ、絶縁基体と蓋体とから成る容器内部に電子部品を気密に収容する際、封止材を溶融する熱が内部に収容する電子部品に作用して電子部品に特性劣化を招来させるという問題点を有していた。
【0007】
また、絶縁基体に蓋体を接合させる封止材の軟化溶融温度が400℃程度と高く、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合させ、絶縁基体と蓋体とから成る絶縁容器内部に電子部品を気密に収容する際に封止材を溶融させる熱によって電子部品を接着固定する接着剤を劣化させてしまうため、電子部品を接着固定する導電性接着剤に使用上の制限があり、衝撃性に強いエポキシ系やシリコン系の導電性樹脂を使用することができず、落下試験等の耐衝撃信頼性上の問題点を有していた。
【0008】
さらに、封止材として導電性有機樹脂を用いた場合、有機樹脂は耐湿性に劣るため大気中に含まれる水分が封止材を通して絶縁基体と蓋体とから成る容器内部に入り込んでしまい、その結果、容器内部に収容する電子部品表面に水分が付着し、電子部品表面の電極を酸化腐食して電子部品の特性にバラツキを発生させてしまうという問題点を有していた。
【0009】
また、近年地球環境保護運動の高まりの中で、酸化鉛は環境負荷物質に指定されており、例えば酸化鉛を含む電子装置が屋外に廃棄・放置され風雨に曝された場合、環境中に鉛が溶けだし環境を汚染する可能性があり、人体に対して有害である酸化鉛を用いない封止材の開発が要求されるようになってきた。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は電子部品をその特性の劣化を招来することなく気密に封止し、電子部品を長期間にわたり正常に作動させることができる電子部品収納用容器を提供することにある。
【0011】
【問題を解決するための手段】
本発明の電子部品収納用容器は、上面に電子部品を搭載するための凹部を有する絶縁基体と、この絶縁基体の上面に封止材を介して接合され、絶縁基体との間の空間に電子部品を気密に収容する蓋体とから成る電子部品収納用容器であって、封止材が五酸化燐20〜35質量%、一酸化錫50〜65質量%、酸化硼素1〜6質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および二酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとして二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加したものから成ることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の電子部品収納用容器によれば、封止材を上記構成としたことから、封止材のガラス成分の軟化溶融温度を350℃以下と低温度とすることができ、その結果、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合させ、絶縁基体と蓋体とから成る絶縁容器内部に電子部品を気密に収容する際、封止材のガラス成分を溶融する熱が内部に収容する電子部品に作用しても電子部品に特性劣化を招来させることはなく、電子部品を長期にわたり正常に作動させることが可能となる。また、電子部品を接着固定する接着剤として従来の接着剤より耐熱性の低い、例えばエポキシ樹脂系の接着剤の使用が可能となり、電子部品の接着固定に対する耐衝撃性の改善を図ることができ、電子部品の接着固定の信頼性を高いものとして長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の電子部品収納用容器によれば、封止材が上記ガラス成分にフィラーとして二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加したものから成ることから、封止材の熱膨張係数を絶縁基体や蓋体の熱膨張係数と近似させることができ、その結果、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合させる際、封止材と絶縁基体および蓋体の間に各々の熱膨張係数の相違に起因して発生する応力を小さなものとすることができ、これによって封止材と絶縁基体および蓋体の間で剥離したり気密封止が破れることが有効に防止され、電子部品収納用容器の気密封止を完全として内部に収容する電子部品を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。さらに、封止材は二酸化珪素系ガラスが上記ガラス成分と良好な濡れ性を示すので二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加した場合においても良好な流動性を示し、その結果、電子部品収納用容器の気密封止をより完全なものとすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の電子部品収納用容器の実施の形態の一例を示す断面図であり、図1には、電子部品が半導体集積回路素子であり、電子部品収納用容器が半導体素子収納用パッケージである場合の例を示している。
【0015】
図1において、1は絶縁基体、2は蓋体であり、主に絶縁基体1と蓋体2とで半導体集積回路素子3を収容するための絶縁容器4が構成される。
【0016】
絶縁基体1は、その上面中央部に半導体集積回路素子3を収容する空所を形成するための凹部1aが設けてあり、凹部1a底面には半導体集積回路素子3がガラスや樹脂・ろう材等の接着剤を介して接着固定される。
【0017】
絶縁基体1は、酸化アルミニウム質焼結体やムライト質焼結体・窒化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料から成り、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合、酸化アルミニウム・二酸化珪素・酸化マグネシウム・酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダー・溶剤等を添加混合して泥漿物を作るとともにこの泥漿物をドクターブレード法やカレンダーロール法等によりシート状に成形してセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得、しかる後、セラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともにこれを複数枚積層し約1600℃の高温で焼成することによって製作される。また、絶縁基体1は、凹部1a周辺から上面にかけて複数個のメタライズ配線層5が被着形成されており、このメタライズ配線層5の凹部1a周辺部には半導体集積回路素子3の各電極がボンディングワイヤ6を介して電気的に接続され、絶縁基体1の上面に導出された部位には外部電気回路(図示せず)と接続される外部リード端子7が銀ろう等のろう材を介して取着されている。
【0018】
メタライズ配線層5は、半導体集積回路素子3の各電極を外部電気回路に電気的に接続する際の導電路として作用し、タングステン・モリブデン・マンガン等の高融点金属粉末により形成されている。
【0019】
このようなメタライズ配線層5は、タングステン・モリブデン・マンガン等の高融点金属粉末に適当な有機溶剤・溶媒・可塑剤等を添加混合して得た金属ペーストを、従来周知のスクリーン印刷法等の厚膜手法を採用して絶縁基体1と成るセラミックグリーンシートにあらかじめ印刷塗布しておき、セラミックグリーンシートと同時に焼成することによって絶縁基体1の凹部1a周辺から上面にかけて所定パターンに被着形成される。
【0020】
なお、メタライズ配線層5はその露出する外表面にニッケル・金等の耐蝕性に優れ、かつ良導電性である金属をめっき法により1〜20μmの厚さに被着させておくと、メタライズ配線層5の酸化腐食を有効に防止するとともにメタライズ配線層5を外部電気回路基板の配線導体に半田等のろう材を介してろう付けする際、そのろう付け強度を強固となすことができる。そのためメタライズ配線層5はその露出する外表面にニッケル・金等の金属を1〜20μmの厚さに被着させておくことが好ましい。
【0021】
また、蓋体2は、酸化アルミニウム質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料、あるいは鉄−ニッケル合金や鉄−ニッケル−コバルト合金等の金属材料から成り、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合、酸化アルミニウムや二酸化珪素・酸化マグネシウム・酸化カルシウム等の原料粉末を所定プレス金型内に充填するとともに一定圧力で押圧して成形し、しかる後、この成形品を1600℃の温度で焼成することにより製作される。
【0022】
なお、蓋体2を絶縁基体1に接合させる封止材8は、五酸化燐20〜35質量%、一酸化錫50〜65質量%、酸化硼素1〜6質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および二酸化珪素1〜3質量%を含む成分にフィラーとして二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加したものから成り、絶縁基体1と蓋体2との間に封止材8を挟み込むとともに封止材8を加熱溶融後、硬化することによって絶縁基体1と蓋体2とを接合させる。
【0023】
上記構成の封止材8は、耐湿性に優れていることから大気中に含まれる水分が封止材8を通して容器内部に入り込もうとしても封止材8で完全に阻止され、その結果、容器内部に収容する半導体素子3に水分が付着し、半導体素子3表面の電極が酸化腐食するのを有効に防止して正常に作動させることが可能となる。
【0024】
また、封止材8は、そのガラス成分の加熱溶融温度が350℃以下と低いことから、絶縁基体1に蓋体2を接合させる際の熱によって半導体素子3が絶縁基体1より外れることはなく、半導体素子3の固定にエポキシ等の接着剤の使用が可能となり、半導体素子3の耐衝撃性の改善がなされ半導体素子3の固定の信頼性を高いものとし、半導体素子3を常に正常に、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0025】
なお、封止材8のガラス成分は、五酸化燐の量が20質量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなって、封止材8のガラス成分を軟化溶融させる熱によって半導体素子3に特性の劣化を招来してしまう傾向があり、他方、35質量%を超えるとガラスの耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。従って、五酸化燐は20〜35質量%の範囲であることが好ましい。
【0026】
また、一酸化錫の量が50質量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、封止材8のガラス成分を軟化溶融させる熱によって半導体素子3に特性の劣化を招来してしまう傾向があり、他方、65質量%を超えると封止材8の耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。従って、一酸化錫は50〜65質量%の範囲であることが好ましい。
【0027】
また、酸化硼素の量が1質量%未満であるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、封止材8のガラス成分を軟化溶融させる熱によって半導体素子3に特性の劣化を招来してしまう傾向があり、他方、6質量%を超えるとガラスの耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向がある。従って、酸化ナトリウムは1〜6質量%の範囲であることが好ましい。
【0028】
また、酸化亜鉛が1質量%未満であるとガラスの耐薬品性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下してしまう傾向があり、他方、6質量%を超えるとガラスの結晶化が進み低温での容器4の気密封止が困難となる傾向にある。従って、酸化亜鉛の量は1〜6質量%の範囲であることが好ましい。
【0029】
また、酸化アルミニウムの量が1質量%未満であるとガラスの耐湿性が低下し、封止材8を介して容器4の気密封止の信頼性が低下する傾向にあり、他方、4質量%を超えるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、封止材8のガラス成分を軟化溶融させる熱によって半導体素子3に特性の劣化を招来してしまう傾向がある。従って、酸化アルミニウムは1〜4質量%の範囲であることが好ましい。
【0030】
また、二酸化珪素の量が1質量%未満であると封止材8の熱膨張係数が大きくなって絶縁基体1および蓋体2の熱膨張係数と合わなくなり、容器4の気密封止の信頼性が大きく低下する傾向にある。他方、3質量%を超えるとガラスの軟化溶融温度が高くなり、封止材8を軟化溶融させる熱によって半導体素子3に特性の劣化を招来してしまう傾向がある。従って、二酸化珪素は1〜3質量%の範囲であることが好ましい。
【0031】
また、フィラーとしての二酸化珪素系ガラスの量が30質量%未満であると封止材8の強度が低下し容器4の気密封止の信頼性が大きく低下する傾向があり、他方、50質量%を超えると封止材8の低温での流動性が低下し、容器4の気密封止の信頼性が低下する傾向がある。従って、二酸化珪素系ガラスは30〜50質量%の範囲であることが好ましい。なお、封止材8は、二酸化珪素系ガラスが上記ガラス成分と良好な濡れ性を示すので二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加した場合においても良好な流動性を示し、その結果、電子部品収納用容器の気密封止をより完全なものとすることができる。
【0032】
なお、ここで二酸化珪素系ガラスとは酸化珪素を主成分とするガラスをいい、例えば、石英ガラスや二酸化珪素96.3質量%、酸化硼素2.9質量%、酸化アルミニウム0.4質量%、酸化ナトリウム0.02質量%を含むガラス等が例示される。
【0033】
また、二酸化珪素系ガラスは、その熱膨張係数を5×10−7〜10×10−7/℃の範囲とすることにより、封止材8の熱膨張係数を絶縁基体1や蓋体2の熱膨張係数と近似させることができ、絶縁基体1と蓋体2とから成る容器の気密信頼性を高めることができる。従って、二酸化珪素系ガラスの熱膨張係数を5×10−7〜10×10−7/℃の範囲とすることが重要である。
【0034】
なお、二酸化珪素系ガラスは、その軟化溶融温度が封止材8のガラス成分の軟化溶融温度よりも50℃以上高い温度であることが重要である。二酸化珪素系ガラスの軟化溶融温度が封止材8のガラス成分の軟化溶融温度よりも50℃未満高い温度であると、絶縁基体1と蓋体2とを封止材8を介して接合する際に、二酸化珪素系ガラスが封止材8のガラス成分と反応し易くなる傾向があり、二酸化珪素系ガラスがフィラーとしての機能を充分果たすことが困難となってしまう危険性がある。従って、二酸化珪素系ガラスは、その軟化溶融温度が封止材8のガラス成分の軟化溶融温度よりも50℃以上高い温度であることが重要である。
【0035】
かくして本発明の電子部品収納用容器によれば、絶縁基体1の凹部1aの底面に半導体集積回路素子3をガラス・樹脂・ろう材等から成る接着剤を介して接着固定するとともに半導体集積回路素子3の各電極をメタライズ配線層5にボンディングワイヤ6を介して電気的に接続し、しかる後、絶縁基体1の上面に凹部1aを覆うように蓋体2を封止材8を介して接合させ、絶縁基体1と蓋体2とから成る絶縁容器4の内部に半導体集積回路素子3を気密に封止することによって最終製品としての半導体装置が完成する。
【0036】
なお、図2は本発明の電子部品収納用パッケージの実施の形態の他の例を示す断面図であり、同図においては電子部品が水晶振動子等の圧電振動子であり電子部品収納用容器が圧電素子収納用容器である場合の例を示している。
【0037】
【実施例】
効果の確認を行なうために、次の実験を行なった。なお、ここでは、主成分の五酸化燐、一酸化錫および外添加のフィラー添加量について決定した実験例を示す。
【0038】
まず、各構成要素の質量%を変化させてガラスを作製した。そして、各ガラスを用いた容器の気密信頼性を評価するために、熱衝撃試験1000サイクル後の封止容器のヘリウムガスリークテストを実施した。また、蓋体の封着強度を比較するために、容器と金体とのせん断強度を測定した。なお、評価用容器としては、絶縁基体の縦方向の寸法が5.0mm、横方向の寸法が3.2mm、高さが0.7mmであり、蓋体との接合面の幅が0.5mmの容器を用いた。
【0039】
(実験1)
五酸化燐を16〜40質量%の間で変化させ、その他の構成要素を加えて合計が100質量%となるように調合(小数点2桁以下を四捨五入)した。この時の実験結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
実験結果より、五酸化燐については、20〜35質量%の範囲で良好な気密性信頼性を示すとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかった。
【0042】
次に、一酸化錫および五酸化燐について、次の実験を行なった。
(実験2)
五酸化燐の含有量を20〜35質量%の範囲とし、一酸化錫の含有量を46〜70質量%の間で変化させ、その他の構成要素を加えて合計が100質量%となるように調合(小数点2桁以下を四捨五入)した。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
実験結果より、一酸化錫については、50〜65質量%の範囲で良好な気密性信頼性を示すとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかった。
【0045】
また、微量元素においても同種の実験を行ない、封止材が五酸化燐20〜35質量%、一酸化錫50〜65質量%、酸化硼素1〜6質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および二酸化珪素1〜3質量%を含むガラスの場合において、良好な気密性信頼性を示すとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかり、本発明の効果を確認することができた。
【0046】
(実験3)
さらに、ガラス組成を一定にし、フィラー添加量を変化させての同様の実験を行なった。評価結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
フィラーとしては、二酸化珪素系ガラス(SiO2を96.3質量%、B2O3を2.9質量%、Al2O3を0.4質量%、Na2Oを0.02質量%含むガラス)を外添加で30〜50質量%添加した場合において良好な気密性信頼性が得られるとともに50N(ニュートン)以上の高いせん断強度が得られることがわかった。
【0049】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0050】
【発明の効果】
本発明の電子部品収納用容器によれば、封止材を上記構成としたことから、封止材のガラス成分の軟化溶融温度を350℃以下と低温度とすることができ、その結果、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合させ、絶縁基体と蓋体とから成る絶縁容器内部に電子部品を気密に収容する際、封止材のガラス成分を溶融する熱が内部に収容する電子部品に作用しても電子部品に特性劣化を招来させることはなく、電子部品を長期にわたり正常に作動させることが可能となる。また、電子部品を接着固定する接着剤として従来の接着剤より耐熱性の低い、例えばエポキシ樹脂系の接着剤の使用が可能となり、電子部品の接着固定に対する耐衝撃性の改善を図ることができ、電子部品の接着固定の信頼性を高いものとして長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0051】
また、本発明の電子部品収納用容器によれば、封止材が上記ガラス成分にフィラーとして二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加したものから成ることから、封止材の熱膨張係数を絶縁基体や蓋体の熱膨張係数と近似させることができ、その結果、絶縁基体と蓋体とを封止材を介して接合させる際、封止材と絶縁基体および蓋体の間に各々の熱膨張係数の相違に起因して発生する応力を小さなものとすることができ、これによって封止材と絶縁基体および蓋体の間で剥離したり気密封止が破れることが有効に防止され、電子部品収納用容器の気密封止を完全として内部に収容する電子部品を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。さらに、封止材は二酸化珪素系ガラスが上記ガラス成分と良好な濡れ性を示すので二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加した場合においても良好な流動性を示し、その結果、電子部品収納用容器の気密封止をより完全なものとすることができる。
【0052】
さらに、本発明の電子部品収納用容器によれば、封止材はガラスから成り、耐湿性に優れていることから、大気中に含まれる水分が封止材を通して電子部品素子が収容される容器内部に入り込もうとしても封止材で完全に阻止され、その結果、容器内部に収容する電子部品素子に水分が付着し電子部品表面の電極が酸化腐食するのを有効に防止して電子部品を長期間にわたり正常、かつ安定に作動させることが可能となる。
【0053】
また、本発明の電子部品収納用容器の封止材は、従来の低温封止ガラスと異なり酸化鉛その他の環境に悪影響を及ぼす成分を含んでいないため、地球環境保全の面からも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子部品収納容器の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の電子部品収納容器の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1、11・・・・・・・・絶縁基体
2、12・・・・・・・・蓋体
3・・・・・・・・・・電子部品(半導体集積回路素子)
13・・・・・・・・・・電子部品(圧電振動子)
4、14・・・・・・・・絶縁容器
8、17・・・・・・・・封止材
Claims (1)
- 上面に電子部品を搭載するための凹部を有する絶縁基体と、該絶縁基体の上面に封止材を介して接合され、前記絶縁基体との間の空間に電子部品を気密に収容する蓋体とから成る電子部品収納用容器であって、前記封止材は、五酸化燐20〜35質量%、一酸化錫50〜65質量%、酸化硼素1〜6質量%、酸化亜鉛1〜6質量%、酸化アルミニウム1〜4質量%および二酸化珪素1〜3質量%を含むガラス成分にフィラーとして二酸化珪素系ガラスを外添加で30〜50質量%添加したものから成ることを特徴とする電子部品収納用容器。
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JP2002304715A JP2004140242A (ja) | 2002-10-18 | 2002-10-18 | 電子部品収納用容器 |
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