JP2004138780A - 銀塩光熱写真ドライイメージング材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱現像直後の支持体と画像形成層の剥離が防止され、また熱現像特有の現像ムラが改良された銀塩光熱写真ドライイメージング材料を提供する。
【解決手段】ポリエステル支持体上に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を1〜350W・min/m2の出力でコロナ放電処理することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリエステル支持体上に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を1〜350W・min/m2の出力でコロナ放電処理することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、支持体上に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層(以下、感光層ともいう)を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料に関し、詳しくは、上記構成を有し、かつ改良された下引層を有するポリエステル支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、医療や印刷製版の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が、作業性の上で問題となっており、近年では、環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・イメージャーやレーザー・イメージセッターにより効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像を形成することができる乾式で環境を損なわない光熱写真材料に関する技術が必要となっている。
【0003】
上記の技術として、例えば、米国特許第3,152,904号、同第3,487,075号の各公報、及びD.モーガン(Morgan)による「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Materials)」(Handbook of Imaging Materials,Marcel Dekker,Inc.第48頁、1991)等に記載されているように、支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、及び還元剤を含有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料が知られている。この銀塩光熱写真ドライイメージング材料では溶液系処理薬品を一切使用しないため、より簡便で環境を損なわないシステムをユーザーに提供することができる。
【0004】
ところで、これらの銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、感光性ハロゲン化銀を光センサーとし、有機銀塩を銀イオンの供給源として、内蔵された還元剤によって、通常80〜140℃で熱現像することで画像を形成する感光層(画像形成層、EC層とも呼ぶ)や、レーザー光を吸収するための染料を含有したバッキング層(BC層とも呼ぶ)を支持体上に設けている。これらの層は、熱現像前のみならず、熱現像後においても、支持体に強固に接着していなければならない。
【0005】
一方、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の設計には、従来の現像液により現像する感光材料とは異なる熱現像特有の配慮が必要である。特に熱現像時には従来の現像処理液を使った処理に比較し高温の、通常80〜140℃の熱がかかる。このため、従来とは異なった意味での各層の強固な接着性と膜強度が必要となる。
【0006】
ところで、これらの銀塩光熱写真ドライイメージング材料は医療診断用フィルム及び写真製版用フィルムとして高解像度及び高い鮮鋭性を必要とされている。特に画像部にムラが認められると著しく画質を損なうだけで無く品質上重大な欠陥であり改善が望まれている。
【0007】
画像形成層には上記接着性を向上させるために非画像形成下引層を用いることが一般的である。この非画像形成下引層は環境上水系塗布が好ましい。但しここでの水系塗布とは塗布液溶媒の30質量%から100質量%が水である水系の塗布液を用いる塗布を言う。この様な水系の塗布液をポリエステル等の高分子樹脂に塗設する場合表面にコロナ放電処理を施して樹脂被覆層表面を親水性化することが知られている。
【0008】
米国特許第5,147,678号、同第4,135,932号、同第4,729,945号、同第4,186,018号、及び同第4,128,426号各明細書(特許文献1〜5)には、火炎、コロナ、もしくはオゾンを用いてポリマー表面を処理して接着を改善することが記載されている。しかしながら、コロナ放電処理の処理密度が低すぎても高すぎても該現像後のムラと接着性が劣化してしまう。低すぎる場合には適度な親水性化ができず不均一になるため、一方、強すぎる場合には、過度な処理による表面の破壊と画像形成層に影響を与えうる不要な分解物の不均一な生成により、十分な性能が得られないという問題があった。
【0009】
【特許文献1】
米国特許第5,147,678号明細書(第4−10頁)
【0010】
【特許文献2】
米国特許第4,135,932号明細書(第3−17頁)
【0011】
【特許文献3】
米国特許第4,729,945号明細書(第3−10頁)
【0012】
【特許文献4】
米国特許第4,186,018号明細書(第2−7頁)
【0013】
【特許文献5】
米国特許第4,128,426号明細書(第3−25頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、熱現像直後の支持体と画像形成層の剥離が防止され、また熱現像特有の現像ムラが改良された銀塩光熱写真ドライイメージング材料を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0016】
1.ポリエステル支持体上に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を1〜350W・min/m2の出力でコロナ放電処理することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0017】
2.ポリエステル支持体上に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を1〜350W・min/m2の出力でコロナ放電処理し、かつ、オゾン処理することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0018】
3.ポリエステル支持体上に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を少なくとも2回連続してコロナ放電処理し、該コロナ放電処理の出力の合計が1〜350W・min/m2であり、かつ、先に行われるコロナ放電処理の出力がその次に行われるコロナ放電処理の出力より低いことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0019】
4.ポリエステル支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を1〜350W・min/m2の出力でコロナ放電処理した後、アルコールもしくは純水で処理することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0020】
5.ポリエステル支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を1〜350W・min/m2の出力で、かつポリエステル支持体のTg以上に加熱してコロナ放電処理することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0021】
6.ポリエステル支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面が1〜370W・min/m2の出力でコロナ放電処理されており、かつ画像形成層と支持体の間に位置する少なくとも1層の下引層がエポキシ化合物を含有したことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0022】
7.ポリエステル支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面が1〜370W・min/m2の出力でコロナ放電処理されており、かつ画像形成層と支持体の間に位置する少なくとも1層の下引層がビニルスルホン化合物を含有したことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0023】
8.ポリエステル支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面が1〜370W・min/m2の出力でコロナ放電処理されており、かつ画像形成層と支持体の間に位置する少なくとも1層の下引層が酸化剤を含有したことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
以下、本発明について説明するが、まず、本発明の請求項1の発明から請求項8の発明(以下、特に断りのない限り本発明という)に共通する技術について説明する。共通する技術については基本的には公知の技術を採用することができる。
【0025】
〔ポリエステル支持体〕
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いられる本発明に係るポリエステル支持体のポリエステルとしては、ジオールとジカルボン酸とから縮重合によって得られるポリマーが挙げられ、該ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等が代表的なものとして挙げられ、また該ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が代表的なものとして挙げられる。ポリエステルとしては具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等を挙げることができる。本発明の場合、特にポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0026】
ポリエステル支持体としてのポリエチレンテレフタレートフィルムは、耐水性、耐久性、耐薬品性等に優れているものである。もちろん、これらのポリエステルは、ホモポリエステルであってもコポリエステルであっても構わない。共重合成分としては、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分及びアジピン酸、セバシン酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分を挙げることができる。
【0027】
ポリエステル支持体には、炭酸カルシウム、非晶質ゼオライト粒子、アナターゼ型の二酸化チタン、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、クレー等の微粒子を併用してもよい。これらの添加量は、ポリエステル組成物100質量部に対して0.0005〜25質量部とするのが好ましい。
【0028】
又、このような微粒子以外にも、ポリエステルの重縮合反応系で触媒残渣とリン化合物との反応により析出した微粒子を併用することもできる。析出微粒子としては、例えば、カルシウム、リチウム及びリン化合物から成るもの又はカルシウム、マグネシウム及びリン化合物から成るもの等を挙げることができる。
【0029】
これらの粒子のポリエステル中の含有量は、ポリエステル100質量部に対して0.05〜1.0質量部であることが好ましい。また、ポリエステル支持体には、公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤、染料等が添加されてもよい。
【0030】
尚、ポリエステル支持体の厚さは、機械的強度及び走行性の観点から10〜250μmであることが好ましく、さらに好ましくは15〜200μmである。
【0031】
ポリエステル支持体は、巻ぐせカールを低減させるために、特開昭51−16358号公報等に記載があるように、ポリエステル支持体を製膜後に、ガラス転移温度以下の温度範囲において、0.1〜1500時間の熱処理を行って巻ぐせカールを低減させてもよい。
【0032】
ポリエステル支持体は、必要に応じて接着性を向上させるために公知の表面処理、薬品処理(特公昭34−11031号、同38−22148号、同40−2276号、同41−16423号、同44−5116号の各公報記載)、化学的機械的粗面化処理(特公昭47−19068号公報、同55−5104号公報記載)、コロナ放電処理(特公昭39−12838号、特開昭47−19824号、同48−28067号の各公報記載)、火災処理(特公昭40−12384号公報、特開昭48−85126号公報記載)、紫外線処理(特公昭36−18915号、同37−14493号、同43−2603号、同43−2604号、同52−25726号の各公報記載)、高周波処理(特公昭49−10687号公報記載)、グロー放電(特公昭37−17682号公報記載)、さらには、活性プラズマ処理、レーザー処理などを施してもよい。これらの処理により特公昭57−487号公報記載のように、支持体表面と水との接触角を58°以下にすることが好ましい。また、ポリエステル支持体は、透明でも、不透明でもよく、あるいは着色されていてもよい。
【0033】
〔コロナ放電処理〕
本発明に係るコロナ放電処理は、真空管方式、サイリスター方式等の公知のコロナ放電処理装置を用い、放電電極と被処理ポリエステル支持体との間隔が通常用いられている処理条件例えば0.5〜10mmであり、処理出力が1〜350W・min/m2(本発明の請求項1〜5の発明)または1〜370W・min/m2(本発明の請求項6または7の発明)の範囲にてなされ、好ましくは1〜6W・min/m2の範囲である。本発明では、ポリエステル支持体の表面をコロナ放電処理するにおいて、内部より加熱可能な処理ロールを用いて被処理ポリエステル支持体の温度を60℃以上、130℃以下に加熱しながら処理する。ポリエステル支持体の温度が60℃未満では、表面接着性に関する十分な改良効果が得られないことがある。また、ポリエステル支持体の熱可塑性樹脂の融点或いは、130℃を越える温度ではポリエステル支持体の表面の酸化が進み過ぎたり、ポリエステル支持体にシワ等の形状の変化が起きたりして、好ましくない。
【0034】
なお、本発明におけるコロナ放電処理のガス雰囲気としては、空気で十分な効果が得られるが、窒素ガス、炭酸ガス、その他不活性ガス等で置換し、更に処理効果を高めることもできる。処理ロールを内部より加熱する方法としては、蒸気加熱、熱水加熱、オイル加熱、誘電加熱等の方法が用いられる。
【0035】
〔オゾン処理〕
オゾン(O3)は酸素(O2)の三原子同素体であり、一般的に、放電(電光時のような)もしくは特定の波長でのUV照射によって酸素から生成される。オゾン生成の基本式は:
3O2⇔2O3 ΔH=68Kcal
これは吸熱プロセスであるのでO2とO3との平衡は、温度が高くなるにつれてO2方向にシフトする。温度、圧力、及び空気の流入供給ストックの流速が増加すると、オゾン発生器に生成されるオゾンの割合は減少する。オゾンは、他の反応物よりもより速く有機及び無機基体を酸化し分解する。オゾンは、フッ素の次に二番目の最も強力なオキシダントである。この強力なオキシダントの性質を用いて接着性を改善するために処理する。
【0036】
オゾンは非常に不安定な化合物である。その半減期は、21℃および1×105Paで約20分である。220℃で完全に分解される。本発明に係るポリエステル支持体に適用するオゾン含有ガスの温度は、25〜205℃の間が好ましく、38〜121℃の間の範囲であることがより好ましい。ガス温度が205℃を越えると、オゾンの分解が速くなり、処理効率が著しく低下する。
【0037】
オゾン/空気アプリケーターとポリエステル支持体との距離は、好ましくは0.254cm〜7.62cm(0.1〜3.0インチ)であり、より好ましくは0.50cm〜2.54cm(0.2〜1.0インチ)である。この距離が離れすぎると処理効率が著しく低下する。ポリエステル支持体に適用されるオゾンの量は、好ましくは2〜323mg/m2であり、より好ましくは10.8〜108mg/m2である。この量が少なすぎると、酸化の程度が低下し、30mgを越えると周囲空気中の過剰のオゾンが操作員の健康障害となる可能性がある。
【0038】
オゾン発生器は、EnerconCompac 2,000 (Enercon Industries Corporation製)を好ましく用いることが出来る。該オゾン発生器に、例えば、電力(入力:230/460交流電圧;10/5アンペア、115交流電圧;20アンペア、出力:0〜2kW)を供給し、発生したオゾンを含むオゾン/空気混合気を、ポリエステル支持体面から5cm離して据え付けた長さ方向に沿って孔を有する直径2.54cm(1インチ)のパイプに導いて、本発明に係るオゾン処理をすることができる。
【0039】
〔アルコールもしくは純粋で処理〕
本発明の請求項4の発明において、コロナ放電処理した後、アルコールもしくは純水で処理する際に、使用するアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルキルアルコール、エチレングルリコール等の多価アルコール、エチレングリコールのモノエステルやモノエーテル等が使用できるが、特に優れた効果が得られるものはイソプロピルアルコールである。本発明において、アルコールもしくは純水で処理する処理方法としてはコロナ放電処理、プラズマ処理又は火炎処理したプラスチックフィルムの表面に何らかの方法でアルコールを付着させればよく、例えば、コロナ放電処理後にアルコールで洗浄処理する方法等が挙げられる。洗浄時間、温度等は何ら限定されない。
【0040】
〔下引層のバインダー〕
本発明に係る下引層のバインダーとしては、ゼラチン、誘導体ゼラチン、コロイド状アルブミン、カゼイン等の蛋白質;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物;寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん誘導体等の糖誘導体;合成親水性コロイド(例えばポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド又はこれらの誘導体及び部分加水分解物;ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル等のビニル重合体及びその共重合体);ロジン、シェラック等の天然物及びその誘導体;その他多くの合成樹脂類等が用いられる。又、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル及びその誘導体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリオレフィン、オレフィン−酢酸ビニル共重合体等のエマルジョンも使用することができる。その他、カーボネート系、ポリエステル系、ウレタン系、エポキシ系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、及びポリピロールの如き有機半導体を使用することもできる。これらのバインダーは、2種以上を混合して使用することもできる。特にポリエステル、ビニル系ポリマー、スチレン−ジオレフィン系重合体、ビニルアルコール(PVA)、ポリウレタンが好ましい。
【0041】
必要に応じてポリマーを数種ブレンドしてもよい。ポリマーとしてはゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリエステルなどの水溶性ポリマー、ポリエチルアクリレート、塩化ビニリデン、ポリウレタンなどの疎水性ポリマーなど特に制限なく用いられる。
【0042】
本発明に係る下塗り層の厚みは1層当たり0.05〜5μmが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。
【0043】
(ポリエステル)
本発明に係る下塗り層のバインダーとして用いられるポリエステルは、水に溶解又は分散しうるポリエステル共重合体が好ましい。なお、この様なポリエステルを本発明においては親水性ポリエステルまたは水性ポリエステルともいう。
【0044】
親水性のポリエステル共重合体として、例えば米国特許第4252,885号、同第4,241,169号、同第4,394,442号公報、欧州特許第29,620号、同第78,559号明細書、特開昭54−43017号公報、リサーチ・ディスクロージャー18928等に記載の親水性ポリエステルを挙げることができる。親水性ポリエステルとしては、例えば、多塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とポリオール又はそのエステル形成性誘導体とを重縮合反応して得られる実質的に線状の重合体が挙げられる。
【0045】
上記ポリエステル共重合体の基本となる骨格としては、多塩基酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸を用いることができ、これら成分と共にマレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和多塩基酸やp−ヒドロキシ安息香酸、p−(β−ヒドロキシエトキシ)安息香酸等のヒドロキシカルボン酸を小割合で用いることができる。上記の中でも多塩基酸成分としては、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を有するものが好ましく、更に用いるテレフタル酸とイソフタル酸との割合は、モル比で30/70〜70/30であることがポリエステル支持体への塗布性及び水に対する溶解性の点で特に好ましい。また、これらテレフタル酸成分及びイソフタル酸成分を全ジカルボン酸成分に対し50〜80モル%含むことが好ましい。
【0046】
ポリエステルに水溶性を付与するためには、親水性基を有する成分、例えば、スルホン酸塩を有する成分、ジエチレングリコール成分、ポリアルキレンエーテルグリコール成分、ポリエーテルジカルボン酸成分等をポリエステル中に共重合成分として導入するのが有効な手段である。特に、親水性基を有する成分を導入するためスルホン酸塩を有するジカルボン酸をモノマーとして用いるのが好ましい。
【0047】
上記スルホン酸塩を有するジカルボン酸としては、スルホン酸アルカリ金属塩の基を有するものが特に好ましく、例えば、4−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸などのアルカリ金属塩を挙げることができる。これらのスルホン酸塩を有するジカルボン酸は、水溶性及び耐水性の点から全ジカルボン酸成分に対し5〜20モル%の範囲内、特に6〜10モル%の範囲内で用いることが好ましい。
【0048】
又、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を用いた水溶性ポリエステルには、共重合成分として脂環族ジカルボン酸を用いるのが好ましい。これら脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、4,4′−ビシクロヘキシルジカルボン酸を挙げることができる。
【0049】
更に、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を用いた親水性ポリエステル共重合体には、上記以外のジカルボン酸を共重合成分として用いることができる。これらジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、直鎖状脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸は、全ジカルボン酸成分の30モル%以下の範囲内で用いることが好ましい。これら芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸が挙げられる。また、直鎖状脂肪族ジカルボン酸は、全ジカルボン酸成分の15モル%以下の範囲内で用いることが好ましい。これら直鎖状脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸が挙げられる。
【0050】
ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを用いることができる。
【0051】
又、親水性ポリエステル共重合体のグリコール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリエチレングリコールが好ましい。
【0052】
親水性ポリエステル共重合体が、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を用いたものである場合には、水溶性ポリエステルのグリコール成分としてエチレングリコールもしくはジエチレングリコールを全グリコール成分の40モル%以上有するものを使用することが、機械的性質及びポリエステル支持体との接着性の点から好ましい。
【0053】
又、親水性ポリエステル共重合体として市販されているものに、イーストマンケミカル社製のFPY6762、MPS7762、WD3652、WTL6342、WNT9519、WMS5113、WD SIZE、WNT、WHS(何れも商品名)等があり、いずれも本発明に係る下塗り層のバインダーとして使用し得る。水性ポリエステルについては、例えば「水溶性高分子水分散型樹脂総合資料集(経営開発センター(1981))」等に記載がある。
【0054】
又、バイロン200、300(以上東洋紡績社製)等、また水性ポリエステルとして例えばファインテックスES525、ES611、ES650、ES675(以上大日本インキ化学社製)、KP−1019、KP−1027、KP−1029(以上松本油脂製薬社製)、プラスコートZ−446、710、711、766、770、802、857(以上互応化学工業社製)、ペスレジンA123D、A515GB(以上高松油脂社製)等がある。
【0055】
本発明に係る下塗り層のバインダーとして用いられる親水性ポリエステルの分子量は、重量平均分子量Mwで、2000〜200000であることが好ましい。又、Tgは−10℃以上90℃以下がフィルム形成性及び強度の面から好ましい。
【0056】
本発明において、水溶性ポリエステルの水溶液中でビニル系モノマーを分散重合させた水性分散液は、例えば、水溶性ポリエステルを熱水中に溶解し、得られた水溶性ポリエステルの水溶液にビニル系モノマーを分散させ、乳化重合あるいは懸濁重合させることにより得ることができる。重合は乳化重合によることが好ましい。
【0057】
ビニル系モノマーの重合には重合開始剤が用いられる。用いることができる重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化ベンゾイルが挙げられる。この中で好ましいものは過硫酸アンモニウムである。
【0058】
重合は、界面活性剤を使用することなく行うことができるが、重合安定性を改良する目的で、界面活性剤を乳化剤として用いることも可能である。この場合、一般のノニオン型またはアニオン型いずれの界面活性剤も使用することができる。
【0059】
ビニル系モノマーの使用量は、(水溶性ポリエステル)/(ビニル系モノマー)が質量比で10質量%以上であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下が特に好ましい。
【0060】
本発明に係る下引層は、例えば、上記水溶性ポリエステルの水溶液中でビニル系モノマーを分散重合させた水性分散液を含む塗布液を塗布することにより形成することができる。
【0061】
本発明に係る下引層は、必要に応じてビニルモノマーで変性されたポリエステル以外のポリマーをブレンドしてもよい。ポリマーとしてはゼラチン、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマー、ビニル系のポリマーラテックス、ポリエチルアクリレート、塩化ビニリデン、ポリウレタンなどの疎水性ポリマーなど特に制限なく用いられる。
【0062】
(ビニル系のポリマーラテックス)
本発明においてポリマーラテックスとは、水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水又は水溶性の分散媒中に分散したものを指す。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、或いはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したものなどいずれでもよい。
【0063】
尚、本発明に係る下引層に用いられるポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されている。
【0064】
ポリマーラテックスの分散粒子の平均粒径は1〜50,000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0065】
本発明に係る下引層に用いられるビニル系ポリマーラテックスとしては通常の均一構造のポリマーラテックス以外、いわゆるコア/シェル型のポリマーラテックスでもよい。この場合コアとシェルはガラス転移温度を変えると好ましい場合がある。
【0066】
本発明に係る下引層に用いられるビニル系ポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は−30℃〜90℃、より好ましくは0℃〜70℃程度が好ましい。最低造膜温度をコントロールする為に造膜助剤を添加してもよい。造膜助剤は可塑剤ともよばれポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば前述の「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」に記載されている。
【0067】
ビニル系モノマーの使用量は、(水溶性ポリマー)/(ビニル系ポリマーラテックスを構成するビニル系モノマー)が質量比で99/1〜5/95の範囲にあるのが好ましい。
【0068】
本発明に係る下引層に用いられるビニル系ポリマーラテックスは、乳化重合法で調製することができる。例えば、水を分散媒とし、水に対して10〜50質量%のモノマーとモノマーに対して0.05〜5質量%の重合開始剤、0.1〜20質量%の分散剤を用い、30〜100℃、好ましくは60〜90℃で3〜8時間撹拌下重合させることによって調製することができ、調製に当たっては、モノマーの量、重合開始剤量、反応温度、反応時間等の条件は、幅広く変更することができる。
【0069】
重合開始剤としては、水溶性過酸化物(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、水溶性アゾ化合物(例えば、2,2′−アゾビス(2−アミノジプロパン)ハイドロクロライド等)またはこれらのFe2+塩や亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤等を用いることができる。分散剤としては、水溶性高分子が用いられるが、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも用いることができる。
【0070】
ビニル系ポリマーラテックスの数平均粒径は0.01〜0.8μmが特に好ましいが、0.005〜2.0μmのものであればいずれも好ましく使用することができる。
【0071】
ビニル系ポリマーラテックスとしては、アクリル系ポリマーラテックスが好ましい。アクリル系ポリマーラテックスとは、アクリル系モノマー、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、これらのエステル又は塩、アクリルアミド、メタクリルアミドをポリマーの構成全成分に対して50mol%以上含有するポリマーラテックスである。
【0072】
本発明に係る下引層に用いられるアクリル系ポリマーラテックスは、アクリル系モノマー単独、あるいはアクリル系モノマーとアクリル系モノマーと共重合し得る他のモノマー(以下、コモノマーという)を用いて製造することができる。アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸エステル、例えば、アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルエチルアクリレート等)、ヒドロキシ含有アルキルアクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等);メタクリル酸エステル、例えば、アルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルエチルメタクリレート等)、ヒドロキシ含有アルキルメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等);アクリルアミド;置換アクリルアミド、例えば、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド等;メタクリルアミド;置換メタクリルアミド、例えばN−メチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド等;アミノ基置換アルキルアクリレート、例えば、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート;アミノ基置換アルキルメタクリレート、例えば、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート;エポキシ基含有アクリレート、例えば、グリシジルアクリレート;エポキシ基含有メタクリレート、例えば、グリシジルメタクリレート;アクリル酸の塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩;メタクリル酸の塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。上述のモノマーは1種もしくは2種以上を併用することができる。
【0073】
コモノマーとしては、例えば、スチレン及びその誘導体;不飽和ジカルボン酸(例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸);不飽和ジカルボン酸のエステル(例えば、イタコン酸メチル、イタコン酸ジメチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチル、フマール酸メチル、フマール酸ジメチル);不飽和ジカルボン酸の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩);スルホン酸基又はその塩を含有するモノマー(例えば、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩));無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;ビニルイソシアネート;アリルイソシアネート;ビニルメチルエーテル;ビニルエチルエーテル;酢酸ビニル等が挙げられる。上述のモノマーは1種もしくは2種以上を併用することができる。
【0074】
(スチレン−ジオレフィン系共重合体)
本発明に係る下塗り層のバインダーは、スチレン−ジオレフィン系共重合体を含む疎水性重合体を含有することができる。
【0075】
スチレン−ジオレフィン系共重合体としては、ジオレフィン系のゴム状物質が好ましい。ジオレフィンモノマーは、1分子内に2個の二重結合をもつモノマーをいい、脂肪族不飽和炭化水素でも環式構造をもつものでもよい。
【0076】
具体的には、共役ジエンであるブタジエン、イソプレン、クロプレン、非共役ジエンとして、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、3−ビニル−1,5−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、1,2−ジビニルシクロブタン、1,6−ヘプタジエン、3,5−ジエチル−1,5−ヘプタジエン、4−シクロヘキシル−1,6−ヘプタジエン、3−(4−ペンテニル)−1−シクロペンテン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,9−オクタデカジエン、1−シス−9−シス−1,2−オクタデカトリエン、1,10−ウンデカジエン、1,11−ドデカジエン、1,12−トリデカジエン、1,13−テトラデカンジエン、1,14−ペンタデカジエン、1,15−ヘキサデカジエン、1,17−オクタデカジエン、1,21−ドコサジエン等を挙げることができる。
【0077】
これらのジオレフィンモノマーの内、特に共役ジエンであるブタジエン、イソプレン、クロロプレンが好ましく用いられ、とりわけ、ブタジエンが好ましく用いられる。
【0078】
スチレン−ジオレフィン系共重合体を形成する一方のモノマーであるスチレンは、スチレン及びスチレン誘導体を指し、例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンチルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチルエステル、ジビニルベンゼン、1,5−ヘキサジエン−3−イン、ヘキサトリエン等を挙げることができる。
【0079】
スチレン−ジオレフィン系共重合体中のジオレフィンモノマーの含有量は共重合体全体の10〜60質量%、特に15〜40質量%であることが好ましい。スチレン類が共重合体全体の70〜40質量%であることが好ましい。また、本発明に用いられるスチレン−ジオレフィン系共重合体には第3成分のモノマーを組み込んでもよい。第3成分としてはアクリル酸エステル類、メタルクリル酸エステル類、ビニルエステル類、塩化ビニル等の塩素含有モノマー等が好ましい。また分子内に2個以上のビニル基、アクリロイル等、メタクリロイル基、アリル基を有するモノマーを共重合することができる。
【0080】
該モノマーとしては、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルフタレート、ジアリルカルビノール、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート等を挙げることができる。
【0081】
本発明で好ましく使用できるスチレン−ジオレフィン系共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン、スチレン−クロロプレン、メチルメタクリレート−ブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン等を挙げることができる。この中でも、スチレン−ブタジエン系ラテックスが特に好ましい。また、市販されている共重合体も用いることができる。
【0082】
(ポリビニルアルコール(PVA))
本発明に係る下塗り層のバインダーとして用いられるビニルアルコールユニットを含有するポリマーとしては、ポリビニルアルコールの誘導体で、エチレン共重合ポリビニルアルコール、部分ブチラール化して水に溶解したポリビニルアルコール変性物等を挙げることができる。
【0083】
ポリビニルアルコールとしては、重合度100以上が好ましい。また、ビニルアルコールユニットを含有するポリマーとしては、ケン化前の酢酸ビニル系ポリマーの共重合成分として、エチレン、プロピレン等のビニル化合物、アクリル酸エステル類(t−ブチルアクリレート、フェニルアクリレート、2−ナフチルアクリレート等)、メタクリル酸エステル類(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、クレジルメタクリレート、4−クロロベンジルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等)、アクリルアミド類(アクリルアミド、メチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、プロピルアクリルアミド、ブチルアクリルアミド、tert−ブチルアクリルアミド、シクロヘキシルアクリルアミド、ベンジルアクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、メトキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、フェニルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、β−シアノエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(メタクリルアミド、メチルメタクリルアミド、エチルメタクリルアミド、プロピルメタクリルアミド、ブチルメタクリルアミド、tert−ブチルメタクリルアミド、シクロヘキシルメタクリルアミド、ベンジルメタクリルアミド、ヒドロキシメチルメタクリルアミド、メトキシエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、フェニルメタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド、β−シアノエチルメタクリルアミド等)、スチレン類(スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチレンスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル等)、ジビニルベンゼン、アクリルニトリル、メタアクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、塩化ビニリデン、フェニルビニルケトン等のモノマーユニットを持つポリマーを挙げることができる。これらの中で好ましくは、エチレン共重合ポリビニルアルコールである。
【0084】
ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールは、一般に市販されているものを用いることができる。ポリビニルアルコールの代表的な市販品としては、クラレ社製のPVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−228、PVA−235、PVA−403、PVA−405、PVA−420など、日本合成化学社製のゴーセノールGL−03、GL−05、AL−02、NK−05など、電気化学工業社製のデンカポバールK−02、B−03など、変性ポリビニルアルコールの代表的な市販品としては、クラレ社製のMP−202、MP−203などが挙げられる。
【0085】
(ポリウレタン)
本発明に係る下塗り層のバインダーとして用いられるウレタンとしては、水溶性あるいは水分散性のポリウレタンが好ましく、特公昭42−24194号公報、特公昭46−7720号公報、特公昭46−10193号公報、特公昭49−37839号公報、特開昭50−123197号公報、特開昭53−126058号公報、特開昭54−138098号公報などに記載されたポリウレタン系樹脂あるいは、それらに準じたポリウレタン系樹脂を用いることができる。
【0086】
ポリウレタン形成成分の主要な構成成分は、ポリイソシアネート、ポリオール、鎖長延長剤、架橋剤などである。ポリイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどがある。ポリオールの例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテテトラメチレングリコールのようなポリエーテル類、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンーブチレンアジペート、ポリカプロロラクトンのようなポリエステル類、アクリル系ポリオール、ひまし油などがある。
【0087】
鎖長延長剤、あるいは架橋剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、水などがある。水溶性あるいは水分散性とするために、界面活性剤などによって強制分散化させてもよいが、好ましくは、ポリエーテル類のような親水性のノニオン成分や、四級アンモニウム塩のようなカチオン性基を有する自己分散型塗布剤、さらに好ましくは、アニオン性基を有する、水溶性または水分散性ポリウレタン系樹脂塗布剤を用いる。
【0088】
アニオン性基を有するポリウレタン系樹脂は、ポリウレタン形成成分であるポリオール、ポリイソシアネート化合物、鎖長延長剤などにアニオン性基を有する化合物を用いる方法、生成したポリウレタンの未反応イソシアネート基とアニオン性基を有する化合物を反応させる方法、ポリウレタンの活性水素を有する基と特定の化合物を反応させる方法などを用いて製造できる。ポリウレタン形成成分としてアニオン性基を有する化合物を用いる場合は、例えば芳香族イソシアネート化合物をスルホン化する方法で得られる化合物、ジアミノカルボン酸塩、アミノアルコール類の硫酸エステル塩などを用いることができる。
【0089】
ポリウレタンの未反応のイソシアネート基とアニオン性基を有する化合物を反応させる方法は、例えば重亜硫酸塩、アミノスルホン酸およびその塩類、アミノカルボン酸およびその塩類、アミノアルコール類の硫酸エステルおよびその塩類、ヒドロキシ酢酸およびその塩類などを用いることができる。ポリウレタンの活性水素を有する基と特定の化合物を反応させる方法は、例えばジカルボン酸無水物、テトラカルボン酸無水物、サルトン、ラクトン、エポキシカルボン酸、エポキシスルホン酸、2,4−ジオキソ−オキサゾリジン、イサト酸無水物、ホストン、硫酸カルビン酸などの環式化合物を用いることができる。
【0090】
本発明に係る下塗り層のバインダーとして用いられるポリウレタン系樹脂としては、分子量300〜20,000のポリオール、ポリイソシアネート、反応性水素原子を有する鎖長延長剤およびイソシアネート基と反応する基、およびアニオン性基を少なくとも1個有する化合物から成る樹脂が好ましい。ポリウレタン系樹脂中のアニオン性基は、−SO3H、−OSO3H、−COOHなどのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩あるいはマグネシウム塩が挙げられ、これらの中でも、スルホン酸塩基およびカルボン酸塩基が特に好ましい。ポリウレタン系樹脂中のアニオン性基の量は、0.05〜8質量%の範囲が好ましい。アニオン性基の量が少ないと、ポリウレタン系樹脂の水溶性あるいは水分散性が悪く、逆にアニオン性基が多いと、塗布後の塗布層の耐水性が劣ったり、吸湿してフィルムが相互に固着しやすくなる。
【0091】
市販の水性ポリウレタンの例としては、武田薬品工業社製のタケラックXWシリーズのW−7004、W−6015、W−621、W−511、W−310、W−512、バイエル社製のインプラニル(impranil)DLH及びインプラニルDLN、第一工業製薬社製のスーパーフレックス100、スーパーフレックス200、スーパーフレックス300、ハイドランHW−140、ハイドランHW−111、ハイドランHW−100、ハイドランHW−101、ハイドランHW−312、ハイドランHW−311、ハイドランHW−310、ハイドランLW−513、ハイドランHC−200、ハイドランHC−400M、ボンディック1010C、ボンディック1050、ボンディック1070、ボンディック1310B、ボンディック1310F、ボンディック1310NS、ボンディック1340、ボンディック1510、ボンディック1610NS、ボンディック1630、ボンディック1640、ボンディック1670(N)、ボンディック1670−40等を挙げることができる。これら市販品の水性ポリウレタンのうち、特に好ましい商品としては、W−7004、W−6015、インプラニルDLH、インプラニルDLN、スーパーフレックス100、スーパーフレックス200、ハイドランHW−312、ハイドランHW−140、ハイドランHW−310、ハイドランHW−311等を挙げることができる。
【0092】
〔本発明に係る下引層に用いられるエポキシ化合物〕
本発明に係るエポキシ化合物としては、エポキシ型硬膜剤が挙げられ、ヒドロキシ基又はエーテル縮合を含有するものが好ましい。具体例を以下に挙げる。
【0093】
【化1】
【0094】
【化2】
【0095】
本発明に係るエポキシ化合物の使用量は、好ましくは下引層を形成するバインダー成分(下引下層に添加する場合は下層のバインダー、下引上層に添加する場合は上層のバインダー)に対し0.01〜60質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。分子量はMW=3000〜50000程度が好ましい。
【0096】
〔本発明に係る下引層に用いられるビニルスルホン化合物〕
本発明に係るビニルスルホン化合物としては、ビニルスルホン型硬膜剤が挙げられ、好ましくは下記一般式で表すことができる。
【0097】
CH2=CHSO2−L−SO2CH=CH2
式中、Lは2価の連結基を表し、例えば脂肪族炭化水素基(例えばアルキレン基、アルキリデン基、アルキリジン基等、或いはこれらが結合して形成される基)、芳香族炭化水素基(例えばアリーレン基等、或いはこれらが結合して形成される基)、−O−、−NR′−(R′は水素原子又は好ましくは1〜15個の炭素原子を有するアルキル基を表す)、−S−、−N=、−CO−、−SO−、−SO2−又は−SO3−で示される結合を1つ、或いは複数組み合わせることによって形成される2価の基であり、−NR′−を2つ以上含む場合、それらのR′同士が結合して環を形成してもよい。連結基Lは更に、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキル基又はアリール基等の置換基を有するものを含む。
【0098】
以下にその具体例を挙げる。
【0099】
【化3】
【0100】
本発明に係るビニルスルホン化合物の使用量は、好ましくは下引層を形成するバインダー成分(下引下層に添加する場合は下層のバインダー、下引上層に添加する場合は上層のバインダー)に対し0.01〜60質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0101】
〔本発明に係る下引層に用いられる酸化剤〕
本発明に係る酸化剤としては、無機物、有機物のいずれも用いることができる。例えば、無機物酸化剤としては、オゾン、過酸化水素及びその付加物、ペルオキシ酸塩等の酸素酸塩、沃素や臭素等のハロゲン元素及びチオスルフォン酸塩等がある。また、有機物酸化剤としては、p−キノン等のキノン類や有機過酸化物がある。
【0102】
本発明において酸化剤の添加量は、0.1μmol/m2〜500μmol/m2が好ましく、さらに好ましくは0.2μmol/m2〜50μmol/m2、さらにより好ましくは0.2μmol/m2〜20μmol/m2である。
【0103】
本発明に用いることのできる有機過酸化物としては、一般に知られているアルキルヒドロペルオキシド、アリルペルオキシド、アシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシドを挙げることができる。具体的には、エチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化ジエチル、過酸化ジアセチル、クメンヒドロペルオキシド、クメニルヒドロペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどを挙げることができる。これらのうちで好ましい化合物は、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、コハク酸ペルオキシドであり、特に好ましいのは過酸化ベンゾイルである。なお、本発明ではここに例示した化合物以外の有機過酸化物も用いることが可能である。添加量は0.1μmol/m2〜500μmol/m2が好ましく、さらに好ましくは0.2μmol/m2〜50μmol/m2、さらにより好ましくは0.2μmol/m2〜20μmol/m2である。有機過酸化物の含有量が少なすぎると効果がなく、多すぎると感度の低下をもたらす場合がある。
【0104】
有機過酸化物を含む層は、有機過酸化物を含む塗布液を塗布して乾燥することにより形成することができる。塗布液を調製する際に、有機過酸化物はどのような態様で添加してもよく、例えば、有機過酸化物を溶剤に溶解して塗布液を調製する途中ないし最後の段階において添加することができる。本発明の好ましい態様においては、有機過酸化物はポリマー微粒子分散物に分散させ、塗布液に添加する。また、別の好ましい態様では、有機溶剤塗布するときにバインダーとともに有機過酸化物を溶解して添加する。有機過酸化物をポリマー微粒子分散物中に分散する方法として、種々の方法を用いることができる。例えば、分散させる有機過酸化物の種類と量によっては、モノマーを乳化重合するときの重合開始剤として有機過酸化物を添加することができる。モノマーが重合してポリマー微粒子が形成されたときには、残存した有機過酸化物がポリマー微粒子分散物に分散した状態にすることができる。また、重合開始剤としては有機過酸化物以外の水溶性の重合開始剤を使用しておき、有機過酸化物はモノマーに溶解させておくこともできる。さらに別の方法としては、ポリマー微粒子分散物に有機過酸化物を含浸させる方法も挙げられる。ここでいう「含浸」とは、あるプロセス中に有機過酸化物の少なくとも一部をポリマー微粒子分散物に含ませ、ポリマー中に有機過酸化物が存在する状態にすることを意味する。
【0105】
本発明に用いられる有機過酸化物を溶解する有機溶剤は、後の工程で除去することが好ましい。従って、沸点は150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることが特に好ましい。有機溶剤の好ましい具体例としては、水非混和性有機溶剤では、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸s−アミル、酢酸n−アミル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化アミル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソプロピルエーテル、炭酸ジエチル、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、リグロイン、ニトロメタンなどが挙げられ、また水混和性有機溶剤では、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。上記有機溶媒の中で特に好ましいものは酢酸エチル、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、アセトニトリルである。本発明では上記以外の有機溶剤を用いることも可能であり、また2種類以上の有機溶剤を併用することもできる。
【0106】
本発明で有機過酸化物を水または水性媒体に分散する場合、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の性能に悪影響を与えない範囲で、通常の界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えばn−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイルメチルタウリドナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、2−ヘプタデシル−ベンズイミダゾール−5−スルホン酸ナトリウム、スルホン化コハク酸ジイソオクチルエステルナトリウム塩、ドデシル硫酸ナトリウム、エチレンオキシドとアルキルフェノール縮合物などを挙げることができる。
【0107】
〔その他本発明に係る下引層について〕
上記下引層を形成する塗布液にはさらにアニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤等の界面活性剤を必要量添加することができる。
【0108】
界面活性剤としては、水性塗布液の表面張力を500μN/cm2以下にすることができ、ポリエステルフィルムへの濡れを促進できるものが好ましく、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、第4級アンモニウムクロライド塩、アルキルアミン塩酸塩等を挙げることができる。
【0109】
本発明に係る下引層には、必要に応じて、可塑剤、架橋剤、染料等を添加してもよい。特に、フィラーの添加は、熱現像時の耐熱性向上に効果があるため望ましい。
【0110】
本発明に係る下引層用の塗布液には、必要に応じて、膨潤剤、マット剤、クロスオーバー用染料、アンチハレーション染料、顔料、カブリ防止剤、防腐剤等を加えてもよい。膨潤剤としては、例えば、フェノール、レゾルシン、クレゾール、クロロフェノール等が用いられ、添加量は本発明の下引層用塗布液1L当たり1〜10gが好ましい。マット剤としては、粒径0.1〜10μmのシリカ、ポリスチレン球、メチルメタクリレート球等が好ましい。
【0111】
本発明においては、下塗り層にマット剤を用いることが、製造における高速搬送性を良くするために好ましい。マット剤としては平均粒径が通常0.1〜8μm、好ましくは0.2〜5μm程度のスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカなどの微粒子が用いられている。マット剤の使用量は、銀塩光熱写真ドライイメージング材料1m2当たり1〜200mgが好ましく、2〜100mgがより好ましい。
【0112】
本発明に係る下引層の乾燥膜厚は、0.01〜10μm、特に0.03〜3μmであることが好ましい。
【0113】
架橋剤としてはエポキシ、イソシアネート、メラミンなどの公知の化合物が用いられる。また、特開昭51−114120号公報などに記載されている活性ハロゲン架橋剤も好ましい。
【0114】
また、染料としてはアンチハレーション、色調調整用染料などを用いることができる。
【0115】
更に、本発明に係る下引層を形成する塗布液には、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、有機フィラー、無機フィラー、潤滑剤、ブロッキング防止剤、安定剤等の他の添加剤を添加することができる。
【0116】
本発明に係る下引層は、水系、有機溶媒系いずれの塗布液を塗布乾燥して形成してもよいが、コストや環境の点からは水系塗布液を塗布する水系塗布の方が好ましい。ここで「水系塗布液」とは塗布液の溶媒(分散媒)の30質量%以上、より好ましくは50質量%以上が水である塗布液を言う。具体的な溶媒組成としては例えば水以外に以下の混合溶液が挙げられる。
【0117】
水/メタノール=85/15、水/メタノール=70/30、水/メタノール/ジメチルホルムアミド(DMF)=80/15/5、水/イソプロピルアルコール=60/40等(ただしここで数字は質量比を表す)。
【0118】
本発明に係る下引層は、一般によく知られている塗布方法を用いて塗布乾燥することにより形成することができる。用いることができる塗布方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビヤコート法、あるいは米国特許第2,681,294号公報に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法等が挙げられる。また、必要に応じて、米国特許第2,761,791号、同第3,508,947号、同第2,941,898号及び同第3,526,528号公報、原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)等に記載された2層以上の層を同時に塗布する方法も、好ましく用いることができる。
【0119】
本発明に係る下引層に用いる塗布液の塗布膜厚は3〜100μm、特に5〜20μmであることが好ましい。本発明の下引層に用いる塗布液を塗設した後の乾燥条件は25〜200℃で0.5秒〜1分程度である。本発明の下引層は、塗布、乾燥後、更に熱処理することが好ましく、その処理条件は110〜200℃で10秒〜10分程度である。
【0120】
塗布液温度は25〜35℃が適正といえる。35℃を超えると塗布液のポットライフが劣化する。また、25℃未満では接着強度、フィルム形成強度が低下することがある。
【0121】
〔バッキング層〕
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、画像形成層の反対側に溶剤系または水系のバッキング層を形成してもよい。
【0122】
バッキング層は、溶剤系塗布液、もしくは水性塗布液を用いて塗設することができ、1層のみ設けても2層以上設けてもよい。
【0123】
本発明でいう溶剤系バッキング層とは、溶剤系塗布液を用いて塗設されるバッキング層を指し、水系バッキング層とは、水系塗布液を用いて塗設されるバッキング層を指す。ここで溶剤系とは、有機溶媒が溶媒全体の50質量%以上を占めるものを指し、水系とは、有機溶媒が溶媒全体の50質量%未満であるものを指す。
【0124】
本発明において、バッキング層に好適なバインダーは、透明または半透明で、一般に無色の天然高分子化合物や合成高分子化合物ならば使用できる。例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルピロリドン、カゼイン、デンプン、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセタール類(例えば、ポリビニルホルマール及びポリビニルブチラール)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド類等がある。
【0125】
溶剤系バッキング層のバインダーとしては、例えば、セルロースアセテートブチレートが、また水系バッキング層のバインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン等が好ましく用いられる。
【0126】
本発明において、バッキング層は、所望の波長範囲で最大吸収が0.3以上2以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5以上2以下の吸収であり、かつ処理後の可視領域においての吸収が0.001以上0.5未満であることが好ましく、0.001以上0.3未満の光学濃度を有する層であることがより好ましい。
【0127】
バッキング層には、さらに必要に応じて界面活性剤、架橋剤、スベリ剤などを添加してもよい。また、米国特許第4,460,681号および同第4,374,921号に示されるような裏面抵抗性加熱層(backing resistive heating layer)を設けることもできる。
【0128】
バッキング層の厚みは、0.1〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmが好ましい。
【0129】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、バッキング層の上に保護層(バッキング面保護層)を設けてもよい。バッキング面保護層のバインダーには、特に制限はなく、バッキング層で記述したと同様のポリマーを用いることができる。バッキング面保護層も、前述の水系塗布液を用いて、塗布、乾燥して形成することが好ましい。バッキング面保護層にも必要に応じてマット剤、染料、スベリ剤、界面活性剤などを添加してもよい。
【0130】
バッキング面保護層の厚みは、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmの範囲がより好ましい。
【0131】
〔有機銀塩〕
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いることができる有機銀塩(以下、本発明に係る有機銀塩という)は還元可能な銀源であり、有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特に長鎖の(炭素数10〜30、好ましくは15〜25)脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環化合物の銀塩が好ましい。
【0132】
配位子が銀イオンに対する総安定度常数として4.0〜10.0の値をもつようなリサーチ・ディスクロージャー17029、同29963に記載された有機又は無機の錯体も好ましい。これら好適な銀塩の例としては、有機酸の銀塩、例えば、没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩等が挙げられる。その他の例としては、特開2001−83659号公報段落番号「0193」に記載の有機銀塩が挙げられる。又、有機銀塩の作製法、有機銀塩の粒径、についても、同公報の段落番号「0194」〜「0197」の記載が参照できる。又本発明に係る有機銀塩として、特開2001−48902公報段落番号「0028」〜「0033」、特開2000−72777号公報段落番号「0025」〜「0041」等に記載の技術を用いることができる。
【0133】
〔画像形成層〕
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いることができる感光性ハロゲン化銀(以下、本発明に係る感光性ハロゲン化銀という)とは、ハロゲン化銀結晶の固有の性質として本来的に、又は、人為的に物理化学的な方法により、可視光ないし赤外光を吸収し得て、かつ可視光ないし赤外光を吸収したときに当該ハロゲン化銀結晶内や結晶表面に物理化学的変化が起こり得るように処理調製されたハロゲン化銀結晶粒子をいう。
【0134】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、P.Glafkides著Chimieet Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(TheFocal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いてハロゲン化銀粒子乳剤として調製することができる。
【0135】
この中でも、形成条件をコントロールしつつハロゲン化銀粒子を調製する所謂コントロールドダブルジェット法が好ましい。ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。又、本発明に係るハロゲン化銀の粒子形成は通常、ハロゲン化銀種粒子(核)生成と粒子成長の2段階に分けられ、一度にこれらを連続的に行う方法でもよく、又核(種粒子)形成と粒子成長を分離して行う方法でもよく、特開2001−83659号公報段落番号「0063」に記載の技術を用いることができる。
【0136】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、画像形成後の白濁を低く抑える、良好な画質を得る等のため平均粒子サイズが小さい方が好ましい。平均粒子サイズが好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.01〜0.17μm、特に0.02〜0.14μmが好ましい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合は、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。又、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。
【0137】
粒子サイズは単分散であることが好ましく、詳しくは、特開2001−83659号公報段落番号「0064」〜「0066」に記載の技術を用いることができる。粒子の形状としては、立方体、八面体、14面体、平板状ハロゲン化銀粒子のいずれでもよい。平板状ハロゲン化銀粒子の場合、平均アスペクト比は、概ね1.5以上100以下、好ましくは2以上50以下がよい。これらは米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号の各明細書等に記載の技術を適用できる。又、粒子形成技術としては、特開2001−83659号公報段落番号「0068」〜「0090」に記載の技術を適用できる。
【0138】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、照度不軌改良のため元素周期律表の6族から11族に属する遷移金属のイオンを含有することが好ましい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10−9〜1×10−2モル、より好ましくは1×10−8〜1×10−4の範囲である。好ましい遷移金属錯体又は錯体イオンは、一般式〔ML6〕m(ここで、Mは元素周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子を表し、mは0、−、2−、3−又は4−を表す)で表される。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲンイオン(弗素イオン、塩素イオン等)、シアナイド、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシルである。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つ又は二つを占めることが好ましい。遷移金属配位錯イオンとしては、特開2001−83659号公報段落番号「0094」〜「0095」記載のものを用いることができる。
【0139】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感に関しては、特開2000−112057号公報段落番号「0044」〜「0045」に記載の化学増感剤、技術を用いることができる。
【0140】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、分光増感されていることが好ましい。好ましい分光増感に関しては、特開2001−83659号公報段落番号「0099」〜「0144」に記載の増感色素、技術を用いることができる。
【0141】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感効果を発現する強色増感剤を用いてもよい。強色増感剤については、特開2001−83659号公報段落番号「0148」〜「0152」に記載の化合物を用いることができる。
【0142】
本発明においては、上記の強色増感剤の他に、特願2000−70296号明細書段落番号「0022」〜「0028」に記載の一般式(1)で表される化合物と少なくとも1種のヘテロ原子を有する大環状化合物を強色増感剤として使用できる。該一般式(1)で表される化合物の具体例は、特願2000−70296号明細書段落番号「0034」〜「0039」に記載されている。又、ヘテロ原子を有する大環状化合物については、特願2000−70296号明細書段落番号「0044」〜「0054」に記載されている。
【0143】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いることができる還元剤(以下、本発明に係る還元剤という)としては、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の技術分野で公知の還元剤の中から適宜選択して使用することができる。特に、有機銀塩に脂肪族カルボン酸銀塩を使用する場合、2個以上のヒドロキシフェニル基がアルキレン基又は硫黄によって連結されたポリフェノール類、特にヒドロキシフェニル基のヒドロキシ置換位置に隣接した位置の少なくとも一つにアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等)又はアシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基等)が置換したヒドロキシフェニル基の2個以上がアルキレン基又は硫黄によって連結されたビスフェノール類が好ましい。
【0144】
例えば、特開2000−112057号公報段落番号「0047」〜「0048」に記載のヒンダードフェノールタイプの還元剤は、本発明において好ましく用いられる。その具体的例示化合物については、特開2000−112057号公報段落番号「0050」〜「0051」に記載されている。還元剤の使用量は銀1モル当たり1×10−2〜10モル、好ましくは1×10−2〜1.5モルである。
【0145】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いることができるバインダー(以下、本発明に係るバインダーという)は、透明又は半透明で、一般に無色であり、天然高分子や合成高分子である。本発明に係るバインダーの例として、特開2001−66725公報段落番号「0193」に記載の天然又は合成高分子が挙げられる。本発明に係るバインダーとしては、ポリビニルアセタール類が好ましく、ポリビニルブチラールが特に好ましい。バインダーの使用量としては、バインダーと有機銀塩との割合は15:1〜1:2、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。又、本発明に係るバインダーとしては、ポリマーラテックスも好ましく用いることができる。ポリマーラテックスに関しては、特開2001−66725公報段落番号「0194」〜段落番号「0203」に記載されている化合物と技術を適用できる。
【0146】
本発明に係るバインダーは、架橋剤を用いることにより膜付きがよくなり、現像ムラが少なくなり、又、保存時のカブリ抑制や現像後のプリントアウト銀の生成を抑制する効果が期待できる。特開昭50−96216号公報に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系の架橋剤を用いることができるが、好ましい架橋剤としてはイソシアネート系化合物、シラン化合物、エポキシ化合物又は酸無水物である。
【0147】
イソシアネート系化合物については、特開2001−83659号公報段落番号「0159」〜「0168」に記載されている化合物と技術を適用できる。エポキシ化合物については、特開2001−83659号公報段落番号「0170」〜「0180」に記載されている化合物と技術を適用できる。酸無水物については、特開2001−83659号公報段落番号「0182」〜「0187」に記載されている化合物と技術を適用できる。シラン化合物については、特願2000−77904号明細書段落番号「0022」〜「0028」に記載されている化合物と技術を適用できる。
【0148】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は必要に応じて色調剤を用いることができる。本発明において用いることのできる色調剤としては、特開2000−198757号公報段落番号「0064」〜「0066」に記載されている化合物と技術を適用できる。
【0149】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、感光層を透過する光の量または波長分布を制御するために感光層と同じ側または反対の側にフィルター層を形成するか、感光層に染料又は顔料を含有させることが好ましい。本発明において用いられる染料としては、感光材料の感色性に応じて種々の波長領域の光を吸収する公知の化合物が使用できる。例えば、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料を赤外光による画像記録材料とする場合には、特願平11−255557号明細書段落番号「0032」〜「0034」に開示されているようなチオピリリウム核を有するスクアリリウム染料、ピリリウム核を有するスクアリリウム染料等を用いることが好ましい。又、スクアリリウム染料に類似したチオピリリウム核を有するクロコニウム染料、ピリリウム核を有するクロコニウム染料を使用することもできる。
【0150】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、還元剤として、ビスフェノール類やスルホンアミドフェノール類のようなプロトンをもった還元剤が用いられているので、これらの水素を引き抜くことができる活性種を発生することにより還元剤を不活性化できる化合物が含有されていることが好ましい。無色の光酸化性物質として、露光時にフリーラジカルを反応活性種として生成可能な化合物が好ましい。これらの化合物として、特願2000−57004号明細書段落番号「0065」〜「0069」に開示されているビイミダゾリル化合物や、特願2000−57004号明細書段落番号「0071」〜「0082」に開示されているヨードニウム化合物を用いることができる。
【0151】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、還元剤を不活性化し還元剤が有機銀塩を銀に還元できないようにする化合物として、ハロゲン原子を活性種として放出する化合物を使用することができる。活性ハロゲン原子を生成する化合物の具体例としては、特願2000−57004号明細書段落番号「0086」〜「0102」に開示されている化合物を用いることができる。
【0152】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は省銀化剤を用いることができる。省銀化剤とは、一定の銀画像濃度を得るために必要な銀量を低減化し得る化合物をいう。この低減化する機能の作用機構は種々考えられるが、現像銀の被覆力を向上させる機能を有する化合物が好ましい。ここで、現像銀の被覆力とは、銀の単位量当たりの光学濃度をいう。本発明において用いることのできる省銀化剤としては、特開2001−66725号に開示されているヒドラジン誘導体化合物、ビニル化合物、4級オニウム化合物が挙げられる。
【0153】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、本発明に係る下引層を設けた支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する感光層を有してなるものであるが、感光層の上に非感光層を形成するのが好ましい。例えば感光層の上には保護層が、感光層を保護する目的で、又支持体の反対の面にはくっつきを防止する為に、バッキング層が設けられるのが好ましい。これらの保護層やバッキング層に用いるバインダーとしては感光層よりもガラス転移点が高く、擦り傷や変形の生じにくいポリマー、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが、前記のバインダーのなかから選ばれる。又、階調調整等のために、感光層を支持体の一方の側に2層以上又は支持体の両側に1層以上設置してもよい。
【0154】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解又は分散させた塗布液を作り、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば感光層、保護層)の塗布液を作製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成し得ることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が例えば、70質量%以下となる前に、上層を設けることが好ましい。
【0155】
各構成層を複数同時に重層塗布する方法は特に制限はなく、例えばバーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストルージョン塗布法などの公知の方法を用いることができる。これらのうちより好ましくはエクストルージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。エクストルージョン塗布法はスライド塗布方式のようにスライド面での溶媒の揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。この塗布方法は感光層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引きとともに塗布する場合についても同様である。もちろん、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は水系の溶媒でもよい。
【0156】
〔露光、現像処理〕
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の現像処理について説明する。
【0157】
現像処理は使用する機器、装置、或いは手段に依存して変化するが、典型的には適した高温に於いて像様に露光した光熱写真ドライイメージング材料を加熱することを伴う。露光後に得られた潜像は、例えば80〜200℃、好ましくは100〜200℃で、概ね1秒〜2分間加熱することにより現像することができる。加熱温度が80℃以下では短時間に十分な画像濃度が得られず、200℃以上ではバインダーが溶融しローラーへの転写など、画像そのものだけでなく搬送性や、現像機等への悪影響を及ぼす。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。
【0158】
この反応過程は、外部からの水等の処理液の供給なしに進行する。加熱する機器、装置、或いは手段はホットプレート、アイロン、ホットローラー、炭素又は白色チタン等を用いた熱発生器として典型的な加熱手段で行ってよい。本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料が保護層を有する場合であれば、保護層を有する側の面を加熱手段と接触させ加熱処理するのが、均一な加熱を行う上で、又熱効率、作業性の点などから好ましく、該面をヒートローラに接触させながら搬送し加熱処理して現像することが好ましい。
【0159】
現像時において、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、溶剤を通常5〜1000mg/m2、好ましくは100〜500mg/m2であるように調製する。これにより高感度、低カブリ、最高濃度の高い銀塩光熱写真ドライイメージング材料となる。
【0160】
溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、イソフォロン等のケトン類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類、イソプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、塩化メチレン、ジクロルベンゼン等の塩化物類、炭化水素類等が挙げられる。その他に水、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、トルイジン、テトラヒドロフラン、酢酸等が挙げられる。但しこれらに限定されるものではない。又、これらの溶剤は単独、又は、数種類組み合わせることができる。
【0161】
尚、銀塩光熱写真ドライイメージング材料中の上記溶剤の含有量は塗布工程後の乾燥工程等における温度条件等の条件変化によって調整できる。又、当該溶剤の含有量は含有させた溶剤を検出するために適した条件下におけるガスクロマトグラフィーで測定できる。
【0162】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の露光について説明する。
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の露光は、銀塩光熱写真ドライイメージング材料に付与した感色性に対し適切な光源を用いることが望ましい。例えば、赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならばいかなる光源にも適用可能であるが、レーザーパワーがハイパワーであることや、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザー(780nm又は820nm)が好ましく用いられる。
【0163】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の露光は、レーザー走査露光により行うことが好ましく、その露光方法には種々の方法が採用できる。
【0164】
第1の好ましい方法として、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の露光面と走査レーザー光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザー走査露光機を用いる方法が挙げられる。ここで、「実質的に垂直になることがない」とはレーザー走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55度以上88度以下、より好ましくは60度以上86度以下、更に好ましくは65度以上84度以下、最も好ましくは70度以上82度以下であることをいう。レーザー光が、感光材料に走査されるときの感光材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザー入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。ビームスポット直径の下限は10μmである。このようなレーザー走査露光を行うことにより干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることができる。
【0165】
第2の方法として、縦マルチである走査レーザー光を発するレーザー走査露光機を用いて露光を行うことも好ましい。縦単一モードの走査レーザー光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、合波による戻り光を利用する、高周波重畳をかける、等の方法がよい。ここで、縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0166】
第3の態様として、2本以上のレーザを用いて、走査露光により画像を形成することも好ましい。複数本のレーザを利用した画像記録方法としては、高解像度化、高速化の要求から1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むレーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段で使用されている技術であり、例えば特開昭60−166916号公報等により知られている。これは、光源ユニットから放射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、fθレンズ等を介して感光体上に結像する方法であり、これはレーザイメージャなどと原理的に同じレーザ走査光学装置である。レーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段における銀塩光熱写真ドライイメージング材料上へのレーザ光の結像は、1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むという用途から、一つのレーザ光の結像位置から1ライン分ずらして次のレーザ光が結像されている。具体的には、二つの光ビームは互いに副走査方向に像面上で数10μmオーダーの間隔で近接しており、印字密度が400dpi(ここで、1インチ即ち、2.54cm当たりのドットの数のことをdpi(ドットパーインチ)と定義する)で2ビームの副走査方向ピッチは63.5μm、600dpiで42.3μmである。
【0167】
副走査方向に解像度分ずらした方法とは異なり、同一の場所に2本以上のレーザを入射角を変え露光面に集光させ画像形成することも好ましい。この際、通常の1本のレーザ(波長λ[nm])で書き込むときの露光面での露光エネルギーがEである場合、露光に使用するN本のレーザが同一波長(波長λ[nm])、同一露光エネルギー(En)とした場合、0.9×E≦En×N≦1.1×Eの範囲にするのが好ましい。このようにすることにより、露光面ではエネルギーは確保されるが、それぞれのレーザ光の画像形成層への反射は、レーザの露光エネルギーが低いため低減され、ひいては干渉縞の発生が抑えられる。なお、上述では複数本のレーザの波長をλと同一のものを使用したが、波長の異なるものを用いてもよい。この場合、λ[nm]に対して(λ−30)<λ1、λ2、・・・λn≦(λ+30)の範囲にするのが好ましい。
【0168】
上述した第1、第2及び第3の態様の露光方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている、ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等のガスレーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。
【0169】
なお、レーザ・イメージャやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、銀塩光熱写真ドライイメージング材料に走査されるときの露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は銀塩光熱写真ドライイメージング材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、銀塩光熱写真ドライイメージング材料毎に最適な値に設定することができる。
【0170】
〔その他〕
本発明において、下引層は導電性を有してもよい。好ましくは酸素不足酸化物、金属過剰酸化物、金属不足酸化物、酸素過剰酸化物等の不定比化合物を形成し易い金属酸化物微粒子等が挙げられる。この中で本発明に最も好ましい金属酸化物は、製造方法などが多様な方式をとることが可能な金属酸化物微粒子である。金属酸化物としては、結晶性の金属酸化物が一般的であり、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、B2O、MoO3及びこれらの複合酸化物を挙げることができる。これらの中でもZnO、TiO2、SnO2が好ましく、複合酸化物としては、ZnOに対してAl、In等、TiO2に対しては、Nb、Ta等、SnO2に対してSb、Nb、ハロゲン元素等の異種元素を0.01〜30mol%含むものが好ましく、0.1〜10mol%含むものが特に好ましい。
【0171】
これらの金属酸化物の微粒子の体積抵抗率は107Ω・cm以下、特に105Ω・cm以下であることが好ましい。結晶内に酸素欠陥を有するもの、及び前記金属酸化物に対して所謂ドナーとなる異種原子を少量含む場合には導電性が向上するので好ましい。この様な金属酸化物微粒子の製造方法について詳細は例えば特開昭56−143430号公報に記載されている。
【0172】
この様な金属酸化物微粒子は導電性が高くなるが、光散乱に対して粒子径と粒子/バインダーの比などを考慮する必要があり、ヘイズの劣化があること、分散するのが難しいこと、等より水中でコロイド状で存在する無機コロイドを使用するのが更に好ましい。無機コロイドとは、共立出版社「化学大辞典」に定義されているものであり、粒子1個中に105〜109個の原子を含むものである。
【0173】
元素により金属コロイド、あるいは酸化物コロイド、水酸化物コロイドとして得られる。金属コロイドとしては、金、パラジウム、白金、銀、イオウなどが好ましく使用され、酸化物コロイド、水酸化物コロイド、炭酸塩コロイド、硫酸塩コロイドとしては、亜鉛、マグネシウム、ケイ素、カルシウム、アルミニウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、インジウム、モリブデン、バナジウムなどの酸化物コロイド、水酸化物コロイド、炭酸塩コロイド及び硫酸塩コロイドが本発明に好ましく使用される。特にZnO、TiO2、及びSnO2が好ましく、更にSnO2が特に好ましい。また、異種原子がドープされた例としては、ZnOに対してはAl、In等、TiO2に対しては、Nb、Ta等、SnO2に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等が挙げられる。無機コロイド粒子の平均粒径は好ましくは0.001〜1μmが分散安定上好ましい。
【0174】
本発明に用いる金属酸化物コロイド、特に酸化第二錫からなるコロイド状SnO2ゾルの製造方法に関しては、SnO2超微粒子を適当な溶媒に分散して製造する方法、または溶媒に可溶なSn化合物の溶媒中における分散反応から製造する方法などいずれの方法でもよい。
【0175】
SnO2超微粒子の製造方法に関しては、特に温度条件が重要で、高温度の熱処理を伴う方法は、一次粒子の成長や、結晶性が高くなる現象を生じるので好ましくなく、やむをえず熱処理を行う必要があるときには、300℃以下、好ましくは200℃以下さらに好ましくは150℃以下で行うべきである。しかし、25℃から150℃までの加温は、バインダー中への分散を考えたときには、好適に選ばれる手段である。
【0176】
溶媒に可溶なSn化合物の溶媒中における分解反応から製造する方法に関して以下に述べる。溶媒に可溶なSn化合物とは、K2SnO3・3H2Oのようなオキソ陰イオンを含む化合物、SnCl4のような水溶性ハロゲン化物、R′2SnR2、R3SnX、R2SnX2等の構造を有する化合物で(ここで、R及びR′はアルキル基を表す)、例えば(CH3)3SnCl・(ピリジン)、(C4H9)2Sn(O2CC2H5)2など有機金属化合物、Sn(SO4)2・2H2Oなどのオキソ塩を挙げることができる。これらの溶媒に可溶なSn化合物を用いてSnO2ゾルを製造する方法としては、溶媒に溶解後、加熱、加圧などの物理的方法、酸化、還元、加水分解などの化学的方法、または中間体を経由後、SnO2ゾルを製造する方法などがある。特公昭35−6616号公報に記載されたSnO2ゾルの製造方法を、本発明の金属酸化物の製造に適用することができる。
【0177】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0178】
実施例1
[PET支持体の作製]
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレート(PET)を得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後(尚、光学濃度0.170(コニカ社製デンシトメータPDA−65で測定)に青色着色した)、T型ダイから押し出して急冷し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、周速の異なるロールを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後、これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4×9.8×104Paで巻き取り、厚み175μmのPET支持体(フィルムロール)を作製した。
【0179】
[表面処理済みPET支持体の作製]
上記PET支持体の両面に表1、2、3記載のようにコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理は、春日電機(株)製のAGI−080を一部改造したものを用いて、電極とフィルムの間隙は1mmに設定して行った。
【0180】
更に、オゾン処理は、コロナ放電処理装置とコーターの間にオゾン発生器を設置し50mg/m2で表1、2、3記載のように行って、表面処理済みPET支持体を作製した。
【0181】
[下引済み支持体の作製]
上記表面処理済み支持体の一方の面に、下記下引下層用塗布液a−1を乾燥膜厚が0.2μmになるように塗設し、123℃で乾燥して画像形成側下引下層を表1、2、3記載のように形成した。これを下引下層A−1という。
【0182】
又、反対側の面にバッキング層下引層として下記下引下層用塗布液b−1を乾燥膜厚が0.12μmになるように塗設し、123℃で乾燥させてバッキング層側に帯電防止機能を持つ下引導電層を塗設した。これを下引下層B−1という。
【0183】
下引下層A−1と下引下層B−1の表面に、4W/m2・分のコロナ放電を施し、下引下層A−1の上には、下記下引上層用塗布液a−2を乾燥膜厚0.1μmになる様に塗設し123℃で乾燥させて下引上層A−2を表1、2、3記載のように形成した。
【0184】
又、下引下層B−1の上には下記下引上層用塗布液b−2を乾燥膜厚0.2μmになる様に塗設し123℃で乾燥させて下引上層B−2とした。後、さらに、123℃で2分間支持体を熱処理し、下引済み支持体1〜12、21〜25、31〜37、41〜50、51〜55、61〜65、71〜75、81〜87を作製した。
【0185】
《バッキング層側下引下層用塗布液b−1》
アクリル系ポリマーラテックスC−1(固形分30%) 30.0g
(スチレン:グリシジルメタクリレート:n−ブチルアクリレート=20:40:40)
アクリル系ポリマーラテックスC−2(固形分30%) 7.6g
(スチレン:n−ブチルアクリレート:t−ブチルアクリレート:ヒドロキシエチルメタクリレート=27:10:35:28)
SnO2ゾル(G−1) 180g
界面活性剤(A) 0.5g
PVA−613(クラレ社製 PVA)5質量%水溶液 0.4g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0186】
《バッキング層側下引上層用塗布液b−2》
以上に蒸留水を加えて1000mlとし塗布液とした。
【0187】
《画像形成層側下引下層用塗布液a−1》
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0188】
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0189】
尚、上記で用いた水性ポリエステルA−1溶液、水性ポリエステルA−2溶液、変性水性ポリエステルB−1溶液、SnO2ゾル(G−1)は、下記のようにして調製した。
【0190】
(水性ポリエステルA−1溶液の調製)
テレフタル酸ジメチル35.4質量部、イソフタル酸ジメチル33.63質量部、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム塩17.92質量部、エチレングリコール62質量部、酢酸カルシウム一水塩0.065質量部、酢酸マンガン四水塩0.022質量部を、窒素気流下において、170〜220℃でメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った後、リン酸トリメチル0.04質量部、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.04質量部及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸6.8質量部を加え、220〜235℃の反応温度で、ほぼ理論量の水を留去しエステル化を行った。
【0191】
その後、更に反応系内を約1時間かけて減圧、昇温し最終的に280℃、133Pa以下で約1時間重縮合を行い、水性ポリエステルA−1を作製した。得られた水性ポリエステルA−1の固有粘度は0.33(100ml/g)であった。また、Mw=80,000〜100,000であった。
【0192】
次いで、撹拌翼、環流冷却管、温度計を付した2Lの3つ口フラスコに、純水850mlを入れ、撹拌翼を回転させながら、水性ポリエステルA−1を150g徐々に添加した。室温でこのまま30分間撹拌した後、1.5時間かけて内温が98℃になるように加熱し、この温度で3時間加熱溶解した。加熱終了後、1時間かけて室温まで冷却し、一夜放置して、15質量%の水性ポリエステルA−1溶液を調製した。Tg:56℃
(水性ポリエステルA−2溶液の調製)
ペスレジンA−515GB(高松油脂社製 変性水性ポリエステル Tg:60℃)を水で固形分15質量%に仕上げた。これを水性ポリエステルA−2溶液とする。
【0193】
(変性水性ポリエステルB−1溶液の調製)
撹拌翼、環流冷却管、温度計、滴下ロートを付した3Lの4つ口フラスコに、前記15質量%の水性ポリエステルA−1溶液1900mlを入れ、撹拌翼を回転させながら、内温度を80℃まで加熱する。この中に、過酸化アンモニウムの24%水溶液を6.52ml加え、モノマー混合液(メタクリル酸グリシジル28.5g、アクリル酸エチル21.4g、メタクリル酸メチル21.4g)を30分間かけて滴下し、さらに3時間反応を続ける。その後、30℃以下まで冷却、濾過して、固形分濃度が18質量%の変性水性ポリエステルB−1溶液(ビニル系成分変性比率20質量%)を調製した。Tg:56℃
(SnO2ゾル(G−1)の調製)
特公昭35−6616号の実施例1に記載の方法で合成したSnO2ゾルを固形分が10質量%になるように加熱濃縮した後、アンモニア水でpH10に調整した。これをSnO2ゾル(G−1)とする。
【0194】
[溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料101〜109の作製]
〔バッキング層の形成〕
前記で作製した下引済み支持体1〜9のバッキング下引上層上に、下記のバッキング層塗布液を、乾燥膜厚が3.5μmになるように押し出しコーターにて塗布、乾燥(乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥)し、バッキング層を形成した。
【0195】
《バッキング層塗布液の調製》
メチルエチルケトン830gを撹拌しながら、セルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社、CAB381−20)84.2gおよびポリエステル樹脂(Bostic社製、VitelPE2200B)4.5gを添加し、溶解した。次に、溶解した液に、0.30gの赤外染料−1を添加し、さらにメタノール43.2gに溶解したフッ素系界面活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)4.5gとフッ素系界面活性剤(大日本インク社、メガファッグF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に撹拌を行った。最後に、メチルエチルケトンに1質量%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ(W.R.Grace社、シロイド64X6000)を75g添加、撹拌しバッキング層塗布液を調製した。
【0196】
【化4】
【0197】
〔感光層側の層形成〕
バッキング層を形成した上記支持体の感光層側である下引上層A−2面上に、下記感光層塗布液と表面保護層塗布液を押し出し(エクストルージョン)コーターを用いて同時に重層塗布した。塗布は、感光層は塗布銀量1.9g/m2、表面保護層は乾燥膜厚で2.5μmになる様にしておこなった。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて、10分間乾燥を行い銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料101〜109を作製した。
【0198】
(感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製)
溶液(A1)
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
化合物(A)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
溶液(B1)
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
溶液(C1)
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
溶液(D1)
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
塩化イリジウム(1%溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
溶液(E1)
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
溶液(F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
溶液(G1)
56%酢酸水溶液 18.0ml
溶液(H1)
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
化合物(A):
HO(CH2CH2O)n−(CH(CH3)CH2O)17−(CH2CH2O)mH(m+n=5〜7)
特公昭58−58288号公報に記載の混合撹拌機を用いて溶液(A1)に溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し核形成を行った。1分後、溶液(F1)の全量を添加した。この間pAgの調整を溶液(E1)を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の全量を、温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。
【0199】
5分間撹拌した後、40℃に降温し、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10L加え、撹拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10L加え、撹拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、更に120分撹拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤Aを得た。
【0200】
この乳剤は、平均粒子サイズ0.058μm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0201】
(粉末有機銀塩Aの調製)
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に、1.5Mの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。該脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの上記感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間撹拌した。
【0202】
次に、1Mの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間撹拌し有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて撹拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、得られたケーキ状の有機銀塩を、気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)を用いて、窒素ガス雰囲気及び乾燥機入り口熱風温度の運転条件により含水率が0.1%になるまで乾燥して有機銀塩の乾燥済み粉末有機銀塩Aを得た。
【0203】
なお、有機銀塩組成物の含水率測定には赤外線水分計を使用した。
(予備分散液Aの調製)
ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社製 Butvar B−79)14.57gをメチルエチルケトン1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて撹拌しながら粉末有機銀塩A500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液Aを調製した。
【0204】
(感光性乳剤分散液1の調製)
予備分散液Aを、ポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ社製トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/秒にて分散を行なうことにより感光性乳剤分散液1を調製した。
【0205】
(安定剤液の調製)
1.0gの安定剤−1、0.31gの酢酸カリウムをメタノール4.97gに溶解し安定剤液を調製した。
【0206】
(赤外増感色素液Aの調製)
19.2mgの赤外増感色素SD−1、1.488gの2−クロロ−安息香酸、2.779gの安定剤−2および365mgの5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾールを31.3mlのメチルエチルケトンに暗所にて溶解し赤外増感色素液Aを調製した。
【0207】
(添加液aの調製)
還元剤(現像剤)としての1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパンを27.98gと1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの前記赤外染料−1を110gのメチルエチルケトンに溶解し添加液aとした。
【0208】
(添加液bの調製)
1.56gのカブリ防止剤−2、3.43gのフタラジンを40.9gのメチルエチルケトンに溶解し添加液bとした。
【0209】
【化5】
【0210】
《感光層塗布液の調製》
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液1(50g)およびメチルエチルケトン15.11gを撹拌しながら21℃に保温し、さらに臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加して10分撹拌した。続いて、安定剤液167mlを添加して10分間撹拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液Aを添加して1時間撹拌した。
【0211】
その後、温度を13℃まで降温してさらに30分撹拌した。13℃に保温したまま、ポリビニルブチラール(Monsanto社 Butvar B−79)13.31gを添加して30分撹拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4質量%メチルエチルケトン溶液)1.084gを添加して15分間撹拌した。さらに撹拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300/モーベイ社製の脂肪族イソシアネート(10%メチルエチルケトン溶液)、4.27gの添加液bを順次添加し撹拌することにより感光層塗布液を得た。
【0212】
(マット剤分散液の調製)
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製、7.5gのCAB171−15)を42.5gのメチルエチルケトンに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社製、Super−Pflex200)5gを添加、ディゾルバ型ホモジナイザにて8000rpmで30分間分散しマット剤分散液を調製した。
【0213】
《表面保護層塗布液の調製》
メチルエチルケトン865gを撹拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製、CAB171−15)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製、パラロイドA−21)を4.5g、ビニルスルホン化合物HD−1(下記構造)を1.5g、ベンズトリアゾールを1.0g、F系界面活性剤(旭硝子社製、サーフロンKH40)を1.0g、添加し溶解した。次に上記マット剤分散液30gを添加して撹拌し、表面保護層塗布液を調製した。
【0214】
ビニルスルホン化合物HD−1:(CH2=CHSO2CH2)2CHOH
[水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料110〜112の作製]
上記下引済み支持体10〜12(尚、これら試料については、表1記載のように下引下層A−1を塗設せず、コロナ放電処理面に表1記載のように下引上層A−2を塗設してある)のバッキング下引上層B−2上に、下記ハレーション防止層塗布液を染料固体微粒子の固形分塗布量が0.04g/m2となるように、また下記バック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.7g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、ハレーション防止バック層を作製した。バック面と反対の面に下引面から後記の画像形成層(ハロゲン化銀の塗布銀量0.14g/m2)、中間層、保護層第1層、保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、銀塩光熱写真ドライイメージング材料(水系)試料110〜112を作製した。
【0215】
塗布はスピード160m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隔を0.14〜0.28mmに、また、塗布液の吐出スリット幅に対して塗布幅が左右ともに各0.5mm広がるように調節し、減圧室の圧力を大気圧に対して392Pa低く設定した。その際、支持体は帯電しないようにハンドリング及び温湿度を制御し、更に塗布直前にイオン風で除電した。引き続くチリングゾーンでは、乾球温度が18℃、湿球温度が12℃の風を30秒間吹き当てて、塗布液を冷却した後、つるまき式の浮上方式の乾燥ゾーンにて、乾球温度が30℃、湿球温度が18℃の乾燥風を200秒間吹き当てた後70℃の乾燥ゾーンを20秒間通した後、90℃の乾燥ゾーンを10秒間通し、その後25℃に冷却して、塗布液中の溶剤の揮発を行った。チリングゾーンおよび乾燥ゾーンでの塗布液膜面に吹き当たる風の平均風速は7m/secであった。作製された銀塩光熱写真ドライイメージング材料のマット度はベック平滑度で画像形成層面側が550秒、バック面が130秒であった。
【0216】
《ハレーション防止層塗布液の調製》
(1)塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)の調製
塩基プレカーサー化合物11を64g、ジフェニルスルフォンを28gおよび花王社製界面活性剤デモールNを10gとり、蒸留水220mlと混合し、混合液をサンドミル(1/4 Gallonサンドグラインダーミル、アイメックス社製)を用いてビーズ分散し、平均粒子径0.2μmの、塩基プレカーサー化合物の固体微粒子分散液(a)を得た。
【0217】
(2)染料固体微粒子分散液の調製
シアニン染料化合物13を9.6gおよびp−ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム5.8gを蒸留水305mlと混合し、混合液をサンドミル(1/4Gallonサンドグラインダーミル、アイメックス社製)を用いてビーズ分散して平均粒子径0.2μmの染料固体微粒子分散液を得た。
【0218】
《ハレーション防止層塗布液の調製》
ゼラチン17g、ポリアクリルアミド9.6g、上記塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)70g、上記染料固体微粒子分散液56g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ6.5μm)1.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.03g、ポリエチレンスルフォン酸ナトリウム2.2g、青色染料化合物14を0.2g、水を844ml混合し、ハレーション防止層塗布液を調製した。
【0219】
【化6】
【0220】
《バック面保護層塗布液の調製》
容器を40℃に保温し、ゼラチン50g、ポリスチレンスルフォン酸ナトリウム0.2g、N,N−エチレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)2.4g、t−オクチルフェノキシエトキシエタンスルフォン酸ナトリウム1g、ベンゾイソチアゾリノン30mg、N−パーフルオロオクチルスルフォニル−N−プロピルアラニンカリウム塩37mg、ポリエチレングリコールモノ(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−プロピル−2−アミノエチル)エーテル[エチレンオキサイド平均重合度15]0.15g、C8F17SO3K32mg、C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)4(CH2)4−SO3Na64mg、アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(共重合質量比5/95)8.8g、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)0.6g、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして1.8g、水950mlを混合してバック面保護層塗布液とした。
【0221】
(ハロゲン化銀乳剤1の調製)
蒸留水1421mlに1質量%臭化カリウム溶液8.0mlを加え、さらに1モル/L硝酸を8.2ml、フタル化ゼラチン20gを添加した液をチタンコートしたステンレス製反応釜中で撹拌しながら、37℃に液温を保ち、硝酸銀37.04gに蒸留水を加え159mlに希釈した溶液Aと臭化カリウム32.6gを蒸留水にて容量200mlに希釈した溶液Bを準備し、コントロールドダブルジェット法でpAgを8.1に維持しながら、溶液Aの全量を一定流量で1分間かけて添加した。
【0222】
溶液Bは、コントロールドダブルジェット法にて添加した。その後3.5質量%の過酸化水素水溶液を30ml添加し、さらにベンツイミダゾールの3質量%水溶液を36ml添加した。その後、再び溶液Aを蒸留水で希釈して317.5mlにした溶液A2と、溶液Bに対して最終的に銀1モル当たり1×10−4モルになるよう6塩化イリジウム酸3カリウム塩を溶解し、液量を溶液Bの2倍の400mlまで蒸留水で希釈した溶液B2を用いて、やはりコントロールドダブルジェット法にて、pAgを8.1に維持しながら、一定流量で溶液A2を10分間かけて全量添加した。溶液B2は、コントロールドダブルジェット法で添加した。その後、5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾールの0.5質量%メタノール溶液を50ml添加し、さらに硝酸銀でpAgを7.5に上げてから1モル/L硫酸を用いてpHを3.8に調整し、撹拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程を行い、脱イオンゼラチン3.5gを加えて1モル/Lの水酸化ナトリウムを添加して、pH6.0、pAg8.2に調整してハロゲン化銀分散物を作製した。
【0223】
出来上がったハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.053μm、球相当径の変動係数18%の純臭化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。この粒子の[100]面比率は、クベルカムンク法を用いて85%と求められた。
【0224】
上記乳剤を38℃に撹拌しながら維持して、ベンゾイソチアゾリノンを0.035g(3.5質量%メタノール溶液で添加)を加え、40分後に分光増感色素A(固体分散物(ゼラチン水溶液))を銀1モル当たり5×10−3モル加え、1分後に47℃に昇温し、20分後にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムを銀1モルに対して3×10−5モル加え、さらに2分後にテルル増感剤Bを銀1モル当たり5×10−5モル加えて90分間熟成した。熟成終了間際に、N,N−ジヒドロキシ−N−ジエチルメラミンの0.5質量%メタノール溶液を5mlを加え、温度を31℃に下げ、フェノキシエタノールの3.5質量%メタノール溶液5ml、5−メチル−2−メルカプトベンヅイミダゾールを銀1モル当たり7×10−3モル及び1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールを銀1モルに対して6.4×10−3モルを添加して、ハロゲン化銀乳剤1を作製した。
【0225】
【化7】
【0226】
(ハロゲン化銀乳剤2の調製)
ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温37℃を50℃に変更する以外は同様にして平均球相当径0.08μm、球相当径の変動係数15%の純臭化銀立方体粒子乳剤の調製した。ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈降/脱塩/水洗/分散を行った。更に分光増感色素の添加量を銀1モル当たり4.5×10−3モルに変えた以外は乳剤1と同様にして分光増感、化学増感及び5−メチル−2−メルカプトベンヅイミダゾール、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールの添加を行い、ハロゲン化銀乳剤2を得た。
【0227】
(ハロゲン化銀乳剤3の調製)
ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温37℃を27℃に変更する以外は同様にして平均球相当径0.038μm、球相当径の変動係数20%の純臭化銀立方体粒子乳剤の調製した。ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈降/脱塩/水洗/分散を行った。更に分光増感色素の添加量を銀1モル当たり6×10−3モルに変えた以外は乳剤1と同様にして分光増感、化学増感及び5−メチル−2−メルカプトベンヅイミダゾール、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールの添加を行い、ハロゲン化銀乳剤3を得た。
【0228】
(塗布液用混合乳剤Aの調製)
ハロゲン化銀乳剤1を70質量%、ハロゲン化銀乳剤2を15質量%、ハロゲン化銀乳剤3を15質量%混合し、ベンゾチアゾリウムヨーダイド(1質量%水溶液)を銀1モル当たり7×10−3モル添加した。
【0229】
(りん片状脂肪酸銀塩の調製)
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22−85R)87.6g、蒸留水423ml、5モル/LのNaOH水溶液49.2ml、tert−ブタノール120mlを混合し、75℃にて1時間撹拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、硝酸銀40.4gの水溶液206.2ml(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635mlの蒸留水と30mlのtert−ブタノールを入れた反応容器を30℃に保温し、撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ62分10秒と60分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後7分20秒間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後9分30秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。
【0230】
このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、スチームトレースにより保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるようにスチーム開度を調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調整した。ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、25℃に降温した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
【0231】
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均アスペクト比5.2、平均球相当径0.52μm、球相当径の変動係数15%のりん片状の結晶であった。乾燥固形分100g相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217、平均重合度約1700)7.4gおよび水を添加し、全体量を385gとしてからホモミキサーにて予備分散した。次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−110S−EH、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、G10Zインタラクションチャンバー使用)の圧力を1750×9.8×104Paに調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後にそれぞれ装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0232】
(還元剤の25質量%分散物の調製)
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ社製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgに、水16kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス社製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製し、還元剤分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.8μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにて濾過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0233】
(メルカプト化合物の10質量%分散物の調製)
1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールを5kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ社製ポバールMP203)の20質量%水溶液5kgに、水8.3kgを添加して、良く混合してスラリーとした。
【0234】
このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス社製)にて6時間分散したのち、水を加えてメルカプト化合物の濃度が10質量%になるように調製し、メルカプト分散物を得た。こうして得たメルカプト化合物分散物に含まれるメルカプト化合物粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られたメルカプト化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにて濾過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。また、使用直前に再度孔径10μmのポリプロピレン製フィルターにて濾過した。
【0235】
(有機ポリハロゲン化合物の分散物−1(20質量%)の調製)
トリブロモメチルナフチルスルホン5kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ社製ポバールMP203)の20質量%水溶液2.5kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液213gと、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス社製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が20質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物の分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物の分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.36μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにて濾過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0236】
(有機ポリハロゲン化合物の分散物−2(25質量%)の調製)
有機ポリハロゲン化合物の分散物−1(20質量%)と同様に、但し、トリブロモメチルナフチルスルホン5kgの代わりにN−ブチル−3−トリブロモメタンスルホニルベンズアミド5kgを用い、分散し、この有機ポリハロゲン化合物が25質量%となるように希釈し、濾過を行った。こうして得た有機ポリハロゲン化合物の分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.39μm、最大粒子径2.2μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物の分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにて濾過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0237】
(有機ポリハロゲン化合物の分散物−3(30質量%)の調製)
有機ポリハロゲン化合物の分散物−1(20質量%)と同様に、但し、トリブロモメチルナフチルスルホン5kgの代わりにトリブロモメチルフェニルスルホン5kgを用い、20質量%MP203水溶液を5kgとし、分散し、この有機ポリハロゲン化合物が30質量%となるように希釈し、濾過を行った。こうして得た有機ポリハロゲン化合物の分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物の分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにて濾過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。また、収納後、使用までは10℃以下で保管した。
【0238】
(フタラジン化合物の5質量%溶液の調製)
8kgのクラレ社製変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57Kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15Kgと6−イソプロピルフタラジンの70質量%水溶液14.28kgを添加し、6−イソプロピルフタラジンの5質量%液を調製した。
【0239】
(顔料の20質量%分散物の調製)
C.I.Pigment Blue 60を64gと花王社製デモールNを6.4gに水250gを添加し良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス社製)にて25時間分散し顔料の20質量%分散物を得た。こうして得た顔料分散物に含まれる顔料粒子は平均粒径0.21μmであった。
【0240】
(SBRラテックス(40質量%)の調製)
外濾過(UF)精製したSBRラテックスは以下のようにして得た。下記のSBRラテックスを蒸留水で10倍に希釈したものをUF−精製用モジュールFS03−FC−FUY03A1(ダイセン・メンブレン・システム社製)を用いてイオン伝導度が1.5mS/cmになるまで希釈精製し、三洋化成社製サンデット−BLを0.22質量%になるよう添加した。更にNaOHとNH4OHを用いてNa+イオン:NH4+イオン=1:2.3(モル比)になるように添加し、pH8.4に調整した。この時のラテックス濃度は40質量%であった。
【0241】
SBRラテックス:−St(68)−Bu(29)−AA(3)−のラテックス、平均粒径0.1μm、濃度45%、25℃相対湿度60%における平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.2mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業社製伝導度計CM−30S使用しラテックス原液(40%)を25℃にて測定)、pH8.2であった。
【0242】
《画像形成層塗布液の調製》
上記で得た顔料の20質量%水分散物を1.1g、有機酸銀分散物103g、ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ社製)の20質量%水溶液5g、上記還元剤の25質量%分散物25g、有機ポリハロゲン化合物の分散物−1,−2,−3を2:5:2(質量比)で総量13.2g、メルカプト化合物の10%分散物6.2g、限外濾過(UF)精製しpH調整したSBRラテックス(40質量%)を106g、フタラジン化合物の5質量%溶液を18mlを添加し、ハロゲン化銀混合乳剤A10gを添加、良く混合して画像形成層塗布液を調製し、そのままコーティングダイへ70ml/m2となるように送液して塗布した。
【0243】
上記画像形成層塗布液の粘度は東京計器のB型粘度計で測定して、40℃(No.1ローター、60rpm)で85(mPa・s)であった。レオメトリックスファーイースト社製RFSフルードスペクトロメーターを使用した25℃での塗布液の粘度は剪断速度が0.1、1、10、100、1000(1/秒)においてそれぞれ1500、220、70、40、20(mPa・s)であった。
【0244】
《中間層塗布液の調製》
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ社製)の10質量%水溶液772g、前記顔料の20質量%分散物5.3g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液226g、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液2ml、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液10.5mlを加え総量880gになるように水を加えて中間層塗布液(画像形成層面側用)とし、10ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で21(mPa・s)であった。
【0245】
《保護層第1層塗布液の調製》
イナートゼラチン64gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液80g、フタル酸の10質量%メタノール溶液23ml、4−メチルフタル酸の10質量%水溶液23ml、1モル/Lの硫酸28ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液5ml、フェノキシエタノール0.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.1gを加え、総量750gになるように水を加えて保護層第1層塗布液(画像形成層面側用)とし、4質量%のクロムみょうばん26mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを18.6ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で17(mPa・s)であった。
【0246】
《保護層第2層塗布液の調製》
イナートゼラチン80gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液102g、N−パーフルオロオクチルスルフォニル−N−プロピルアラニンカリウム塩の5質量%溶液3.2ml、ポリエチレングリコールモノ(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−プロピル−2−アミノエチル)エーテル(この化合物のエチレンオキシド平均重合度は15である)の2質量%水溶液32ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%溶液23ml、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径0.7μm)4g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径6.4μm)21g、4−メチルフタル酸1.6g、フタル酸4.8g、1モル/Lの硫酸44ml、ベンゾイソチアゾリノン10mgを加え、総量650gとなるよう水を添加して、4質量%のクロムみょうばんと0.67質量%のフタル酸を含有する水溶液445mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを保護層第2層塗布液(画像形成層面側用)とし、8.3ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で9(mPa・s)であった。
【0247】
[評価方法]
《熱現像直後の画像形成層の接着性》
銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料を濃度1.3になるように均一に露光し、ヒートドラムを有する熱現像用自動現像機を用いて、123℃で15秒熱現像処理し、熱現像直後(45〜60秒)の試料に、試料面に対して45°の角度で、カミソリの刃を入れ、切り込みを挟んでセロテープ(R)を圧着し、急激に45°と反対方向にほぼ水平方向に引き剥がした剥離済み試料について、熱現像直後の画像形成層の剥離面積率を下記のようにして求め、下記に示す評価基準に従って評価した。
【0248】
剥離面積率
剥離済み試料の下に方眼紙を重ね、透過光で目視観察して剥離部分の面積(剥離面積)を測定し、下式から剥離面積率を求めた。
【0249】
剥離面積率(%)=〔剥離面積/セロテープ(R)圧着面積〕×100
評価基準
1:接着力が非常に弱く、熱現像画像形成層が完全に剥離
2:剥離面積が50%以上、100%未満
3:剥離面積が20%以上、50%未満である(実用化可能ギリギリの水準)
4:接着力が強く、剥離面積が5%以上、20%未満
5:接着力が非常に強く、剥離面積が5%未満である
《現像ムラ》
作製した銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料を濃度1.5になるように均一に露光し、ヒートドラムを有する熱現像用自動現像機を用いて、123℃で15秒熱現像処理した。目視観察し、現像ムラ(塗布性)を下記に示す評価基準に従って評価した。
【0250】
1:ムラがはっきりと判る
2:全体にうっすらムラが認められる
3:細かいムラが認められる
4:殆どムラが判らない
5:均一でムラが無い
【0251】
【表1】
【0252】
注1:エポキシ化合物またはビニルスルホン化合物
注2:酸化剤
S−1:過酸化水素水
S−2:過酸化ベンゾイル
S−3:コハク酸ペルオキシド
【0253】
【表2】
【0254】
※:下引下層A−1にではなく、下引上層A−2に添加
【0255】
【表3】
【0256】
※:下引下層A−1にではなく、下引上層A−2に添加
表1から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項2の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、優れていることがわかる。
【0257】
実施例2
《溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料201〜204の作製》下引済み支持体試料21〜24に、実施例1同様にしてバック面にバッキング層、バック面と反対の面に画像形成層、表面保護層を設けて表1記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料201〜204を作製した。
【0258】
《水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料205の作製》
下引済み支持体試料25に、実施例1同様にしてバック面にハレーション防止層、バック面保護層、バック面と反対の面に画像形成層、中間層、保護層第1層、保護層第2層を設けて表1記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料205を作製した。
【0259】
実施例1と同様にして評価した結果を表1に示した。
表1から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項2の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、より優れていることがわかる。
【0260】
実施例3
《溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料301〜306の作製》下引済み支持体試料31〜36に、実施例1同様にしてバック面にバッキング層、バック面と反対の面に画像形成層、表面保護層を設けて表1記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料301〜306を作製した。
【0261】
《水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料307の作製》
下引済み支持体試料37に、実施例1同様にしてバック面にハレーション防止層、バック面保護層、バック面と反対の面に画像形成層、中間層、保護層第1層、保護層第2層を設けて表1記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料307を作製した。
【0262】
実施例1と同様にして評価した結果を表1に示した。
表1から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項3の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、より優れていることがわかる。
【0263】
実施例4
《溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料401〜404、406〜409の作製》
下引済み支持体試料41〜44、46〜49に、実施例1同様にしてバック面にバッキング層、バック面と反対の面に画像形成層、表面保護層を設けて表2記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料401〜404、406〜409を作製した。
【0264】
《水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料405、410の作製》
下引済み支持体試料45、50に、実施例1同様にしてバック面にハレーション防止層、バック面保護層、バック面と反対の面に画像形成層、中間層、保護層第1層、保護層第2層を設けて表2記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料405、410を作製した。
【0265】
実施例1と同様にして評価した結果を表2に示した。
表2から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項4の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、より優れていることがわかる。
【0266】
実施例5
《溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料501〜504の作製》下引済み支持体試料51〜54に、実施例1同様にしてバック面にバッキング層、バック面と反対の面に画像形成層、表面保護層を設けて表2記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料501〜504を作製した。
【0267】
《水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料505の作製》
下引済み支持体試料55に、実施例1同様にしてバック面にハレーション防止層、バック面保護層、バック面と反対の面に画像形成層、中間層、保護層第1層、保護層第2層を設けて表2記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料505を作製した。
【0268】
実施例1と同様にして評価した結果を表2に示した。
表2から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項5の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、より優れていることがわかる。
【0269】
実施例6
《溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料601〜604の作製》下引済み支持体試料61〜64に、実施例1同様にしてバック面にバッキング層、バック面と反対の面に画像形成層、表面保護層を設けて表2記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料601〜604を作製した。
【0270】
《水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料605の作製》
下引済み支持体試料65に、実施例1同様にしてバック面にハレーション防止層、バック面保護層、バック面と反対の面に画像形成層、中間層、保護層第1層、保護層第2層を設けて表2記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料605を作製した。
【0271】
実施例1と同様にして評価した結果を表2に示した。
表2から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項6の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、より優れていることがわかる。
【0272】
実施例7
《溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料701〜704の作製》下引済み支持体試料71〜74に、実施例1同様にしてバック面にバッキング層、バック面と反対の面に画像形成層、表面保護層を設けて表3記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料701〜704を作製した。
【0273】
《水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料705の作製》
下引済み支持体試料75に、実施例1同様にしてバック面にハレーション防止層、バック面保護層、バック面と反対の面に画像形成層、中間層、保護層第1層、保護層第2層を設けて表3記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料705を作製した。
【0274】
実施例1と同様にして評価した結果を表3に示した。
表3から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項7の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、より優れていることがわかる。
【0275】
実施例8
《溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料801〜806の作製》下引済み支持体試料81〜86に、実施例1同様にしてバック面にバッキング層、バック面と反対の面に画像形成層、表面保護層を設けて表3記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料801〜806を作製した。
【0276】
《水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料807の作製》
下引済み支持体試料87に、実施例1同様にしてバック面にハレーション防止層、バック面保護層、バック面と反対の面に画像形成層、中間層、保護層第1層、保護層第2層を設けて表3記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料807を作製した。
【0277】
実施例1と同様にして評価した結果を表3に示した。
表3から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項8の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、より優れていることがわかる。
【0278】
【発明の効果】
本発明により、熱現像直後の支持体と画像形成層の剥離が防止され、また熱現像特有の現像ムラが改良された銀塩光熱写真ドライイメージング材料を提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、支持体上に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層(以下、感光層ともいう)を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料に関し、詳しくは、上記構成を有し、かつ改良された下引層を有するポリエステル支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、医療や印刷製版の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が、作業性の上で問題となっており、近年では、環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・イメージャーやレーザー・イメージセッターにより効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像を形成することができる乾式で環境を損なわない光熱写真材料に関する技術が必要となっている。
【0003】
上記の技術として、例えば、米国特許第3,152,904号、同第3,487,075号の各公報、及びD.モーガン(Morgan)による「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Materials)」(Handbook of Imaging Materials,Marcel Dekker,Inc.第48頁、1991)等に記載されているように、支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、及び還元剤を含有する銀塩光熱写真ドライイメージング材料が知られている。この銀塩光熱写真ドライイメージング材料では溶液系処理薬品を一切使用しないため、より簡便で環境を損なわないシステムをユーザーに提供することができる。
【0004】
ところで、これらの銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、感光性ハロゲン化銀を光センサーとし、有機銀塩を銀イオンの供給源として、内蔵された還元剤によって、通常80〜140℃で熱現像することで画像を形成する感光層(画像形成層、EC層とも呼ぶ)や、レーザー光を吸収するための染料を含有したバッキング層(BC層とも呼ぶ)を支持体上に設けている。これらの層は、熱現像前のみならず、熱現像後においても、支持体に強固に接着していなければならない。
【0005】
一方、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の設計には、従来の現像液により現像する感光材料とは異なる熱現像特有の配慮が必要である。特に熱現像時には従来の現像処理液を使った処理に比較し高温の、通常80〜140℃の熱がかかる。このため、従来とは異なった意味での各層の強固な接着性と膜強度が必要となる。
【0006】
ところで、これらの銀塩光熱写真ドライイメージング材料は医療診断用フィルム及び写真製版用フィルムとして高解像度及び高い鮮鋭性を必要とされている。特に画像部にムラが認められると著しく画質を損なうだけで無く品質上重大な欠陥であり改善が望まれている。
【0007】
画像形成層には上記接着性を向上させるために非画像形成下引層を用いることが一般的である。この非画像形成下引層は環境上水系塗布が好ましい。但しここでの水系塗布とは塗布液溶媒の30質量%から100質量%が水である水系の塗布液を用いる塗布を言う。この様な水系の塗布液をポリエステル等の高分子樹脂に塗設する場合表面にコロナ放電処理を施して樹脂被覆層表面を親水性化することが知られている。
【0008】
米国特許第5,147,678号、同第4,135,932号、同第4,729,945号、同第4,186,018号、及び同第4,128,426号各明細書(特許文献1〜5)には、火炎、コロナ、もしくはオゾンを用いてポリマー表面を処理して接着を改善することが記載されている。しかしながら、コロナ放電処理の処理密度が低すぎても高すぎても該現像後のムラと接着性が劣化してしまう。低すぎる場合には適度な親水性化ができず不均一になるため、一方、強すぎる場合には、過度な処理による表面の破壊と画像形成層に影響を与えうる不要な分解物の不均一な生成により、十分な性能が得られないという問題があった。
【0009】
【特許文献1】
米国特許第5,147,678号明細書(第4−10頁)
【0010】
【特許文献2】
米国特許第4,135,932号明細書(第3−17頁)
【0011】
【特許文献3】
米国特許第4,729,945号明細書(第3−10頁)
【0012】
【特許文献4】
米国特許第4,186,018号明細書(第2−7頁)
【0013】
【特許文献5】
米国特許第4,128,426号明細書(第3−25頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、熱現像直後の支持体と画像形成層の剥離が防止され、また熱現像特有の現像ムラが改良された銀塩光熱写真ドライイメージング材料を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0016】
1.ポリエステル支持体上に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を1〜350W・min/m2の出力でコロナ放電処理することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0017】
2.ポリエステル支持体上に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を1〜350W・min/m2の出力でコロナ放電処理し、かつ、オゾン処理することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0018】
3.ポリエステル支持体上に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を少なくとも2回連続してコロナ放電処理し、該コロナ放電処理の出力の合計が1〜350W・min/m2であり、かつ、先に行われるコロナ放電処理の出力がその次に行われるコロナ放電処理の出力より低いことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0019】
4.ポリエステル支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を1〜350W・min/m2の出力でコロナ放電処理した後、アルコールもしくは純水で処理することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0020】
5.ポリエステル支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を1〜350W・min/m2の出力で、かつポリエステル支持体のTg以上に加熱してコロナ放電処理することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0021】
6.ポリエステル支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面が1〜370W・min/m2の出力でコロナ放電処理されており、かつ画像形成層と支持体の間に位置する少なくとも1層の下引層がエポキシ化合物を含有したことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0022】
7.ポリエステル支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面が1〜370W・min/m2の出力でコロナ放電処理されており、かつ画像形成層と支持体の間に位置する少なくとも1層の下引層がビニルスルホン化合物を含有したことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0023】
8.ポリエステル支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面が1〜370W・min/m2の出力でコロナ放電処理されており、かつ画像形成層と支持体の間に位置する少なくとも1層の下引層が酸化剤を含有したことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
以下、本発明について説明するが、まず、本発明の請求項1の発明から請求項8の発明(以下、特に断りのない限り本発明という)に共通する技術について説明する。共通する技術については基本的には公知の技術を採用することができる。
【0025】
〔ポリエステル支持体〕
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いられる本発明に係るポリエステル支持体のポリエステルとしては、ジオールとジカルボン酸とから縮重合によって得られるポリマーが挙げられ、該ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等が代表的なものとして挙げられ、また該ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が代表的なものとして挙げられる。ポリエステルとしては具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等を挙げることができる。本発明の場合、特にポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0026】
ポリエステル支持体としてのポリエチレンテレフタレートフィルムは、耐水性、耐久性、耐薬品性等に優れているものである。もちろん、これらのポリエステルは、ホモポリエステルであってもコポリエステルであっても構わない。共重合成分としては、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分及びアジピン酸、セバシン酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分を挙げることができる。
【0027】
ポリエステル支持体には、炭酸カルシウム、非晶質ゼオライト粒子、アナターゼ型の二酸化チタン、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、クレー等の微粒子を併用してもよい。これらの添加量は、ポリエステル組成物100質量部に対して0.0005〜25質量部とするのが好ましい。
【0028】
又、このような微粒子以外にも、ポリエステルの重縮合反応系で触媒残渣とリン化合物との反応により析出した微粒子を併用することもできる。析出微粒子としては、例えば、カルシウム、リチウム及びリン化合物から成るもの又はカルシウム、マグネシウム及びリン化合物から成るもの等を挙げることができる。
【0029】
これらの粒子のポリエステル中の含有量は、ポリエステル100質量部に対して0.05〜1.0質量部であることが好ましい。また、ポリエステル支持体には、公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤、染料等が添加されてもよい。
【0030】
尚、ポリエステル支持体の厚さは、機械的強度及び走行性の観点から10〜250μmであることが好ましく、さらに好ましくは15〜200μmである。
【0031】
ポリエステル支持体は、巻ぐせカールを低減させるために、特開昭51−16358号公報等に記載があるように、ポリエステル支持体を製膜後に、ガラス転移温度以下の温度範囲において、0.1〜1500時間の熱処理を行って巻ぐせカールを低減させてもよい。
【0032】
ポリエステル支持体は、必要に応じて接着性を向上させるために公知の表面処理、薬品処理(特公昭34−11031号、同38−22148号、同40−2276号、同41−16423号、同44−5116号の各公報記載)、化学的機械的粗面化処理(特公昭47−19068号公報、同55−5104号公報記載)、コロナ放電処理(特公昭39−12838号、特開昭47−19824号、同48−28067号の各公報記載)、火災処理(特公昭40−12384号公報、特開昭48−85126号公報記載)、紫外線処理(特公昭36−18915号、同37−14493号、同43−2603号、同43−2604号、同52−25726号の各公報記載)、高周波処理(特公昭49−10687号公報記載)、グロー放電(特公昭37−17682号公報記載)、さらには、活性プラズマ処理、レーザー処理などを施してもよい。これらの処理により特公昭57−487号公報記載のように、支持体表面と水との接触角を58°以下にすることが好ましい。また、ポリエステル支持体は、透明でも、不透明でもよく、あるいは着色されていてもよい。
【0033】
〔コロナ放電処理〕
本発明に係るコロナ放電処理は、真空管方式、サイリスター方式等の公知のコロナ放電処理装置を用い、放電電極と被処理ポリエステル支持体との間隔が通常用いられている処理条件例えば0.5〜10mmであり、処理出力が1〜350W・min/m2(本発明の請求項1〜5の発明)または1〜370W・min/m2(本発明の請求項6または7の発明)の範囲にてなされ、好ましくは1〜6W・min/m2の範囲である。本発明では、ポリエステル支持体の表面をコロナ放電処理するにおいて、内部より加熱可能な処理ロールを用いて被処理ポリエステル支持体の温度を60℃以上、130℃以下に加熱しながら処理する。ポリエステル支持体の温度が60℃未満では、表面接着性に関する十分な改良効果が得られないことがある。また、ポリエステル支持体の熱可塑性樹脂の融点或いは、130℃を越える温度ではポリエステル支持体の表面の酸化が進み過ぎたり、ポリエステル支持体にシワ等の形状の変化が起きたりして、好ましくない。
【0034】
なお、本発明におけるコロナ放電処理のガス雰囲気としては、空気で十分な効果が得られるが、窒素ガス、炭酸ガス、その他不活性ガス等で置換し、更に処理効果を高めることもできる。処理ロールを内部より加熱する方法としては、蒸気加熱、熱水加熱、オイル加熱、誘電加熱等の方法が用いられる。
【0035】
〔オゾン処理〕
オゾン(O3)は酸素(O2)の三原子同素体であり、一般的に、放電(電光時のような)もしくは特定の波長でのUV照射によって酸素から生成される。オゾン生成の基本式は:
3O2⇔2O3 ΔH=68Kcal
これは吸熱プロセスであるのでO2とO3との平衡は、温度が高くなるにつれてO2方向にシフトする。温度、圧力、及び空気の流入供給ストックの流速が増加すると、オゾン発生器に生成されるオゾンの割合は減少する。オゾンは、他の反応物よりもより速く有機及び無機基体を酸化し分解する。オゾンは、フッ素の次に二番目の最も強力なオキシダントである。この強力なオキシダントの性質を用いて接着性を改善するために処理する。
【0036】
オゾンは非常に不安定な化合物である。その半減期は、21℃および1×105Paで約20分である。220℃で完全に分解される。本発明に係るポリエステル支持体に適用するオゾン含有ガスの温度は、25〜205℃の間が好ましく、38〜121℃の間の範囲であることがより好ましい。ガス温度が205℃を越えると、オゾンの分解が速くなり、処理効率が著しく低下する。
【0037】
オゾン/空気アプリケーターとポリエステル支持体との距離は、好ましくは0.254cm〜7.62cm(0.1〜3.0インチ)であり、より好ましくは0.50cm〜2.54cm(0.2〜1.0インチ)である。この距離が離れすぎると処理効率が著しく低下する。ポリエステル支持体に適用されるオゾンの量は、好ましくは2〜323mg/m2であり、より好ましくは10.8〜108mg/m2である。この量が少なすぎると、酸化の程度が低下し、30mgを越えると周囲空気中の過剰のオゾンが操作員の健康障害となる可能性がある。
【0038】
オゾン発生器は、EnerconCompac 2,000 (Enercon Industries Corporation製)を好ましく用いることが出来る。該オゾン発生器に、例えば、電力(入力:230/460交流電圧;10/5アンペア、115交流電圧;20アンペア、出力:0〜2kW)を供給し、発生したオゾンを含むオゾン/空気混合気を、ポリエステル支持体面から5cm離して据え付けた長さ方向に沿って孔を有する直径2.54cm(1インチ)のパイプに導いて、本発明に係るオゾン処理をすることができる。
【0039】
〔アルコールもしくは純粋で処理〕
本発明の請求項4の発明において、コロナ放電処理した後、アルコールもしくは純水で処理する際に、使用するアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルキルアルコール、エチレングルリコール等の多価アルコール、エチレングリコールのモノエステルやモノエーテル等が使用できるが、特に優れた効果が得られるものはイソプロピルアルコールである。本発明において、アルコールもしくは純水で処理する処理方法としてはコロナ放電処理、プラズマ処理又は火炎処理したプラスチックフィルムの表面に何らかの方法でアルコールを付着させればよく、例えば、コロナ放電処理後にアルコールで洗浄処理する方法等が挙げられる。洗浄時間、温度等は何ら限定されない。
【0040】
〔下引層のバインダー〕
本発明に係る下引層のバインダーとしては、ゼラチン、誘導体ゼラチン、コロイド状アルブミン、カゼイン等の蛋白質;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物;寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん誘導体等の糖誘導体;合成親水性コロイド(例えばポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド又はこれらの誘導体及び部分加水分解物;ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル等のビニル重合体及びその共重合体);ロジン、シェラック等の天然物及びその誘導体;その他多くの合成樹脂類等が用いられる。又、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル及びその誘導体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリオレフィン、オレフィン−酢酸ビニル共重合体等のエマルジョンも使用することができる。その他、カーボネート系、ポリエステル系、ウレタン系、エポキシ系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、及びポリピロールの如き有機半導体を使用することもできる。これらのバインダーは、2種以上を混合して使用することもできる。特にポリエステル、ビニル系ポリマー、スチレン−ジオレフィン系重合体、ビニルアルコール(PVA)、ポリウレタンが好ましい。
【0041】
必要に応じてポリマーを数種ブレンドしてもよい。ポリマーとしてはゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリエステルなどの水溶性ポリマー、ポリエチルアクリレート、塩化ビニリデン、ポリウレタンなどの疎水性ポリマーなど特に制限なく用いられる。
【0042】
本発明に係る下塗り層の厚みは1層当たり0.05〜5μmが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。
【0043】
(ポリエステル)
本発明に係る下塗り層のバインダーとして用いられるポリエステルは、水に溶解又は分散しうるポリエステル共重合体が好ましい。なお、この様なポリエステルを本発明においては親水性ポリエステルまたは水性ポリエステルともいう。
【0044】
親水性のポリエステル共重合体として、例えば米国特許第4252,885号、同第4,241,169号、同第4,394,442号公報、欧州特許第29,620号、同第78,559号明細書、特開昭54−43017号公報、リサーチ・ディスクロージャー18928等に記載の親水性ポリエステルを挙げることができる。親水性ポリエステルとしては、例えば、多塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とポリオール又はそのエステル形成性誘導体とを重縮合反応して得られる実質的に線状の重合体が挙げられる。
【0045】
上記ポリエステル共重合体の基本となる骨格としては、多塩基酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸を用いることができ、これら成分と共にマレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和多塩基酸やp−ヒドロキシ安息香酸、p−(β−ヒドロキシエトキシ)安息香酸等のヒドロキシカルボン酸を小割合で用いることができる。上記の中でも多塩基酸成分としては、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を有するものが好ましく、更に用いるテレフタル酸とイソフタル酸との割合は、モル比で30/70〜70/30であることがポリエステル支持体への塗布性及び水に対する溶解性の点で特に好ましい。また、これらテレフタル酸成分及びイソフタル酸成分を全ジカルボン酸成分に対し50〜80モル%含むことが好ましい。
【0046】
ポリエステルに水溶性を付与するためには、親水性基を有する成分、例えば、スルホン酸塩を有する成分、ジエチレングリコール成分、ポリアルキレンエーテルグリコール成分、ポリエーテルジカルボン酸成分等をポリエステル中に共重合成分として導入するのが有効な手段である。特に、親水性基を有する成分を導入するためスルホン酸塩を有するジカルボン酸をモノマーとして用いるのが好ましい。
【0047】
上記スルホン酸塩を有するジカルボン酸としては、スルホン酸アルカリ金属塩の基を有するものが特に好ましく、例えば、4−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸などのアルカリ金属塩を挙げることができる。これらのスルホン酸塩を有するジカルボン酸は、水溶性及び耐水性の点から全ジカルボン酸成分に対し5〜20モル%の範囲内、特に6〜10モル%の範囲内で用いることが好ましい。
【0048】
又、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を用いた水溶性ポリエステルには、共重合成分として脂環族ジカルボン酸を用いるのが好ましい。これら脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、4,4′−ビシクロヘキシルジカルボン酸を挙げることができる。
【0049】
更に、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を用いた親水性ポリエステル共重合体には、上記以外のジカルボン酸を共重合成分として用いることができる。これらジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、直鎖状脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸は、全ジカルボン酸成分の30モル%以下の範囲内で用いることが好ましい。これら芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸が挙げられる。また、直鎖状脂肪族ジカルボン酸は、全ジカルボン酸成分の15モル%以下の範囲内で用いることが好ましい。これら直鎖状脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸が挙げられる。
【0050】
ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを用いることができる。
【0051】
又、親水性ポリエステル共重合体のグリコール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリエチレングリコールが好ましい。
【0052】
親水性ポリエステル共重合体が、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を用いたものである場合には、水溶性ポリエステルのグリコール成分としてエチレングリコールもしくはジエチレングリコールを全グリコール成分の40モル%以上有するものを使用することが、機械的性質及びポリエステル支持体との接着性の点から好ましい。
【0053】
又、親水性ポリエステル共重合体として市販されているものに、イーストマンケミカル社製のFPY6762、MPS7762、WD3652、WTL6342、WNT9519、WMS5113、WD SIZE、WNT、WHS(何れも商品名)等があり、いずれも本発明に係る下塗り層のバインダーとして使用し得る。水性ポリエステルについては、例えば「水溶性高分子水分散型樹脂総合資料集(経営開発センター(1981))」等に記載がある。
【0054】
又、バイロン200、300(以上東洋紡績社製)等、また水性ポリエステルとして例えばファインテックスES525、ES611、ES650、ES675(以上大日本インキ化学社製)、KP−1019、KP−1027、KP−1029(以上松本油脂製薬社製)、プラスコートZ−446、710、711、766、770、802、857(以上互応化学工業社製)、ペスレジンA123D、A515GB(以上高松油脂社製)等がある。
【0055】
本発明に係る下塗り層のバインダーとして用いられる親水性ポリエステルの分子量は、重量平均分子量Mwで、2000〜200000であることが好ましい。又、Tgは−10℃以上90℃以下がフィルム形成性及び強度の面から好ましい。
【0056】
本発明において、水溶性ポリエステルの水溶液中でビニル系モノマーを分散重合させた水性分散液は、例えば、水溶性ポリエステルを熱水中に溶解し、得られた水溶性ポリエステルの水溶液にビニル系モノマーを分散させ、乳化重合あるいは懸濁重合させることにより得ることができる。重合は乳化重合によることが好ましい。
【0057】
ビニル系モノマーの重合には重合開始剤が用いられる。用いることができる重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化ベンゾイルが挙げられる。この中で好ましいものは過硫酸アンモニウムである。
【0058】
重合は、界面活性剤を使用することなく行うことができるが、重合安定性を改良する目的で、界面活性剤を乳化剤として用いることも可能である。この場合、一般のノニオン型またはアニオン型いずれの界面活性剤も使用することができる。
【0059】
ビニル系モノマーの使用量は、(水溶性ポリエステル)/(ビニル系モノマー)が質量比で10質量%以上であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下が特に好ましい。
【0060】
本発明に係る下引層は、例えば、上記水溶性ポリエステルの水溶液中でビニル系モノマーを分散重合させた水性分散液を含む塗布液を塗布することにより形成することができる。
【0061】
本発明に係る下引層は、必要に応じてビニルモノマーで変性されたポリエステル以外のポリマーをブレンドしてもよい。ポリマーとしてはゼラチン、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマー、ビニル系のポリマーラテックス、ポリエチルアクリレート、塩化ビニリデン、ポリウレタンなどの疎水性ポリマーなど特に制限なく用いられる。
【0062】
(ビニル系のポリマーラテックス)
本発明においてポリマーラテックスとは、水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水又は水溶性の分散媒中に分散したものを指す。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、或いはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したものなどいずれでもよい。
【0063】
尚、本発明に係る下引層に用いられるポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されている。
【0064】
ポリマーラテックスの分散粒子の平均粒径は1〜50,000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0065】
本発明に係る下引層に用いられるビニル系ポリマーラテックスとしては通常の均一構造のポリマーラテックス以外、いわゆるコア/シェル型のポリマーラテックスでもよい。この場合コアとシェルはガラス転移温度を変えると好ましい場合がある。
【0066】
本発明に係る下引層に用いられるビニル系ポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は−30℃〜90℃、より好ましくは0℃〜70℃程度が好ましい。最低造膜温度をコントロールする為に造膜助剤を添加してもよい。造膜助剤は可塑剤ともよばれポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば前述の「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」に記載されている。
【0067】
ビニル系モノマーの使用量は、(水溶性ポリマー)/(ビニル系ポリマーラテックスを構成するビニル系モノマー)が質量比で99/1〜5/95の範囲にあるのが好ましい。
【0068】
本発明に係る下引層に用いられるビニル系ポリマーラテックスは、乳化重合法で調製することができる。例えば、水を分散媒とし、水に対して10〜50質量%のモノマーとモノマーに対して0.05〜5質量%の重合開始剤、0.1〜20質量%の分散剤を用い、30〜100℃、好ましくは60〜90℃で3〜8時間撹拌下重合させることによって調製することができ、調製に当たっては、モノマーの量、重合開始剤量、反応温度、反応時間等の条件は、幅広く変更することができる。
【0069】
重合開始剤としては、水溶性過酸化物(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、水溶性アゾ化合物(例えば、2,2′−アゾビス(2−アミノジプロパン)ハイドロクロライド等)またはこれらのFe2+塩や亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤等を用いることができる。分散剤としては、水溶性高分子が用いられるが、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも用いることができる。
【0070】
ビニル系ポリマーラテックスの数平均粒径は0.01〜0.8μmが特に好ましいが、0.005〜2.0μmのものであればいずれも好ましく使用することができる。
【0071】
ビニル系ポリマーラテックスとしては、アクリル系ポリマーラテックスが好ましい。アクリル系ポリマーラテックスとは、アクリル系モノマー、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、これらのエステル又は塩、アクリルアミド、メタクリルアミドをポリマーの構成全成分に対して50mol%以上含有するポリマーラテックスである。
【0072】
本発明に係る下引層に用いられるアクリル系ポリマーラテックスは、アクリル系モノマー単独、あるいはアクリル系モノマーとアクリル系モノマーと共重合し得る他のモノマー(以下、コモノマーという)を用いて製造することができる。アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸エステル、例えば、アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルエチルアクリレート等)、ヒドロキシ含有アルキルアクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等);メタクリル酸エステル、例えば、アルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルエチルメタクリレート等)、ヒドロキシ含有アルキルメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等);アクリルアミド;置換アクリルアミド、例えば、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド等;メタクリルアミド;置換メタクリルアミド、例えばN−メチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド等;アミノ基置換アルキルアクリレート、例えば、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート;アミノ基置換アルキルメタクリレート、例えば、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート;エポキシ基含有アクリレート、例えば、グリシジルアクリレート;エポキシ基含有メタクリレート、例えば、グリシジルメタクリレート;アクリル酸の塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩;メタクリル酸の塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。上述のモノマーは1種もしくは2種以上を併用することができる。
【0073】
コモノマーとしては、例えば、スチレン及びその誘導体;不飽和ジカルボン酸(例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸);不飽和ジカルボン酸のエステル(例えば、イタコン酸メチル、イタコン酸ジメチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチル、フマール酸メチル、フマール酸ジメチル);不飽和ジカルボン酸の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩);スルホン酸基又はその塩を含有するモノマー(例えば、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩));無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;ビニルイソシアネート;アリルイソシアネート;ビニルメチルエーテル;ビニルエチルエーテル;酢酸ビニル等が挙げられる。上述のモノマーは1種もしくは2種以上を併用することができる。
【0074】
(スチレン−ジオレフィン系共重合体)
本発明に係る下塗り層のバインダーは、スチレン−ジオレフィン系共重合体を含む疎水性重合体を含有することができる。
【0075】
スチレン−ジオレフィン系共重合体としては、ジオレフィン系のゴム状物質が好ましい。ジオレフィンモノマーは、1分子内に2個の二重結合をもつモノマーをいい、脂肪族不飽和炭化水素でも環式構造をもつものでもよい。
【0076】
具体的には、共役ジエンであるブタジエン、イソプレン、クロプレン、非共役ジエンとして、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、3−ビニル−1,5−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、1,2−ジビニルシクロブタン、1,6−ヘプタジエン、3,5−ジエチル−1,5−ヘプタジエン、4−シクロヘキシル−1,6−ヘプタジエン、3−(4−ペンテニル)−1−シクロペンテン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,9−オクタデカジエン、1−シス−9−シス−1,2−オクタデカトリエン、1,10−ウンデカジエン、1,11−ドデカジエン、1,12−トリデカジエン、1,13−テトラデカンジエン、1,14−ペンタデカジエン、1,15−ヘキサデカジエン、1,17−オクタデカジエン、1,21−ドコサジエン等を挙げることができる。
【0077】
これらのジオレフィンモノマーの内、特に共役ジエンであるブタジエン、イソプレン、クロロプレンが好ましく用いられ、とりわけ、ブタジエンが好ましく用いられる。
【0078】
スチレン−ジオレフィン系共重合体を形成する一方のモノマーであるスチレンは、スチレン及びスチレン誘導体を指し、例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンチルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチルエステル、ジビニルベンゼン、1,5−ヘキサジエン−3−イン、ヘキサトリエン等を挙げることができる。
【0079】
スチレン−ジオレフィン系共重合体中のジオレフィンモノマーの含有量は共重合体全体の10〜60質量%、特に15〜40質量%であることが好ましい。スチレン類が共重合体全体の70〜40質量%であることが好ましい。また、本発明に用いられるスチレン−ジオレフィン系共重合体には第3成分のモノマーを組み込んでもよい。第3成分としてはアクリル酸エステル類、メタルクリル酸エステル類、ビニルエステル類、塩化ビニル等の塩素含有モノマー等が好ましい。また分子内に2個以上のビニル基、アクリロイル等、メタクリロイル基、アリル基を有するモノマーを共重合することができる。
【0080】
該モノマーとしては、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルフタレート、ジアリルカルビノール、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート等を挙げることができる。
【0081】
本発明で好ましく使用できるスチレン−ジオレフィン系共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン、スチレン−クロロプレン、メチルメタクリレート−ブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン等を挙げることができる。この中でも、スチレン−ブタジエン系ラテックスが特に好ましい。また、市販されている共重合体も用いることができる。
【0082】
(ポリビニルアルコール(PVA))
本発明に係る下塗り層のバインダーとして用いられるビニルアルコールユニットを含有するポリマーとしては、ポリビニルアルコールの誘導体で、エチレン共重合ポリビニルアルコール、部分ブチラール化して水に溶解したポリビニルアルコール変性物等を挙げることができる。
【0083】
ポリビニルアルコールとしては、重合度100以上が好ましい。また、ビニルアルコールユニットを含有するポリマーとしては、ケン化前の酢酸ビニル系ポリマーの共重合成分として、エチレン、プロピレン等のビニル化合物、アクリル酸エステル類(t−ブチルアクリレート、フェニルアクリレート、2−ナフチルアクリレート等)、メタクリル酸エステル類(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、クレジルメタクリレート、4−クロロベンジルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等)、アクリルアミド類(アクリルアミド、メチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、プロピルアクリルアミド、ブチルアクリルアミド、tert−ブチルアクリルアミド、シクロヘキシルアクリルアミド、ベンジルアクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、メトキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、フェニルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、β−シアノエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(メタクリルアミド、メチルメタクリルアミド、エチルメタクリルアミド、プロピルメタクリルアミド、ブチルメタクリルアミド、tert−ブチルメタクリルアミド、シクロヘキシルメタクリルアミド、ベンジルメタクリルアミド、ヒドロキシメチルメタクリルアミド、メトキシエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、フェニルメタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド、β−シアノエチルメタクリルアミド等)、スチレン類(スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチレンスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル等)、ジビニルベンゼン、アクリルニトリル、メタアクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、塩化ビニリデン、フェニルビニルケトン等のモノマーユニットを持つポリマーを挙げることができる。これらの中で好ましくは、エチレン共重合ポリビニルアルコールである。
【0084】
ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールは、一般に市販されているものを用いることができる。ポリビニルアルコールの代表的な市販品としては、クラレ社製のPVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−228、PVA−235、PVA−403、PVA−405、PVA−420など、日本合成化学社製のゴーセノールGL−03、GL−05、AL−02、NK−05など、電気化学工業社製のデンカポバールK−02、B−03など、変性ポリビニルアルコールの代表的な市販品としては、クラレ社製のMP−202、MP−203などが挙げられる。
【0085】
(ポリウレタン)
本発明に係る下塗り層のバインダーとして用いられるウレタンとしては、水溶性あるいは水分散性のポリウレタンが好ましく、特公昭42−24194号公報、特公昭46−7720号公報、特公昭46−10193号公報、特公昭49−37839号公報、特開昭50−123197号公報、特開昭53−126058号公報、特開昭54−138098号公報などに記載されたポリウレタン系樹脂あるいは、それらに準じたポリウレタン系樹脂を用いることができる。
【0086】
ポリウレタン形成成分の主要な構成成分は、ポリイソシアネート、ポリオール、鎖長延長剤、架橋剤などである。ポリイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどがある。ポリオールの例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテテトラメチレングリコールのようなポリエーテル類、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンーブチレンアジペート、ポリカプロロラクトンのようなポリエステル類、アクリル系ポリオール、ひまし油などがある。
【0087】
鎖長延長剤、あるいは架橋剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、水などがある。水溶性あるいは水分散性とするために、界面活性剤などによって強制分散化させてもよいが、好ましくは、ポリエーテル類のような親水性のノニオン成分や、四級アンモニウム塩のようなカチオン性基を有する自己分散型塗布剤、さらに好ましくは、アニオン性基を有する、水溶性または水分散性ポリウレタン系樹脂塗布剤を用いる。
【0088】
アニオン性基を有するポリウレタン系樹脂は、ポリウレタン形成成分であるポリオール、ポリイソシアネート化合物、鎖長延長剤などにアニオン性基を有する化合物を用いる方法、生成したポリウレタンの未反応イソシアネート基とアニオン性基を有する化合物を反応させる方法、ポリウレタンの活性水素を有する基と特定の化合物を反応させる方法などを用いて製造できる。ポリウレタン形成成分としてアニオン性基を有する化合物を用いる場合は、例えば芳香族イソシアネート化合物をスルホン化する方法で得られる化合物、ジアミノカルボン酸塩、アミノアルコール類の硫酸エステル塩などを用いることができる。
【0089】
ポリウレタンの未反応のイソシアネート基とアニオン性基を有する化合物を反応させる方法は、例えば重亜硫酸塩、アミノスルホン酸およびその塩類、アミノカルボン酸およびその塩類、アミノアルコール類の硫酸エステルおよびその塩類、ヒドロキシ酢酸およびその塩類などを用いることができる。ポリウレタンの活性水素を有する基と特定の化合物を反応させる方法は、例えばジカルボン酸無水物、テトラカルボン酸無水物、サルトン、ラクトン、エポキシカルボン酸、エポキシスルホン酸、2,4−ジオキソ−オキサゾリジン、イサト酸無水物、ホストン、硫酸カルビン酸などの環式化合物を用いることができる。
【0090】
本発明に係る下塗り層のバインダーとして用いられるポリウレタン系樹脂としては、分子量300〜20,000のポリオール、ポリイソシアネート、反応性水素原子を有する鎖長延長剤およびイソシアネート基と反応する基、およびアニオン性基を少なくとも1個有する化合物から成る樹脂が好ましい。ポリウレタン系樹脂中のアニオン性基は、−SO3H、−OSO3H、−COOHなどのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩あるいはマグネシウム塩が挙げられ、これらの中でも、スルホン酸塩基およびカルボン酸塩基が特に好ましい。ポリウレタン系樹脂中のアニオン性基の量は、0.05〜8質量%の範囲が好ましい。アニオン性基の量が少ないと、ポリウレタン系樹脂の水溶性あるいは水分散性が悪く、逆にアニオン性基が多いと、塗布後の塗布層の耐水性が劣ったり、吸湿してフィルムが相互に固着しやすくなる。
【0091】
市販の水性ポリウレタンの例としては、武田薬品工業社製のタケラックXWシリーズのW−7004、W−6015、W−621、W−511、W−310、W−512、バイエル社製のインプラニル(impranil)DLH及びインプラニルDLN、第一工業製薬社製のスーパーフレックス100、スーパーフレックス200、スーパーフレックス300、ハイドランHW−140、ハイドランHW−111、ハイドランHW−100、ハイドランHW−101、ハイドランHW−312、ハイドランHW−311、ハイドランHW−310、ハイドランLW−513、ハイドランHC−200、ハイドランHC−400M、ボンディック1010C、ボンディック1050、ボンディック1070、ボンディック1310B、ボンディック1310F、ボンディック1310NS、ボンディック1340、ボンディック1510、ボンディック1610NS、ボンディック1630、ボンディック1640、ボンディック1670(N)、ボンディック1670−40等を挙げることができる。これら市販品の水性ポリウレタンのうち、特に好ましい商品としては、W−7004、W−6015、インプラニルDLH、インプラニルDLN、スーパーフレックス100、スーパーフレックス200、ハイドランHW−312、ハイドランHW−140、ハイドランHW−310、ハイドランHW−311等を挙げることができる。
【0092】
〔本発明に係る下引層に用いられるエポキシ化合物〕
本発明に係るエポキシ化合物としては、エポキシ型硬膜剤が挙げられ、ヒドロキシ基又はエーテル縮合を含有するものが好ましい。具体例を以下に挙げる。
【0093】
【化1】
【0094】
【化2】
【0095】
本発明に係るエポキシ化合物の使用量は、好ましくは下引層を形成するバインダー成分(下引下層に添加する場合は下層のバインダー、下引上層に添加する場合は上層のバインダー)に対し0.01〜60質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。分子量はMW=3000〜50000程度が好ましい。
【0096】
〔本発明に係る下引層に用いられるビニルスルホン化合物〕
本発明に係るビニルスルホン化合物としては、ビニルスルホン型硬膜剤が挙げられ、好ましくは下記一般式で表すことができる。
【0097】
CH2=CHSO2−L−SO2CH=CH2
式中、Lは2価の連結基を表し、例えば脂肪族炭化水素基(例えばアルキレン基、アルキリデン基、アルキリジン基等、或いはこれらが結合して形成される基)、芳香族炭化水素基(例えばアリーレン基等、或いはこれらが結合して形成される基)、−O−、−NR′−(R′は水素原子又は好ましくは1〜15個の炭素原子を有するアルキル基を表す)、−S−、−N=、−CO−、−SO−、−SO2−又は−SO3−で示される結合を1つ、或いは複数組み合わせることによって形成される2価の基であり、−NR′−を2つ以上含む場合、それらのR′同士が結合して環を形成してもよい。連結基Lは更に、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキル基又はアリール基等の置換基を有するものを含む。
【0098】
以下にその具体例を挙げる。
【0099】
【化3】
【0100】
本発明に係るビニルスルホン化合物の使用量は、好ましくは下引層を形成するバインダー成分(下引下層に添加する場合は下層のバインダー、下引上層に添加する場合は上層のバインダー)に対し0.01〜60質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0101】
〔本発明に係る下引層に用いられる酸化剤〕
本発明に係る酸化剤としては、無機物、有機物のいずれも用いることができる。例えば、無機物酸化剤としては、オゾン、過酸化水素及びその付加物、ペルオキシ酸塩等の酸素酸塩、沃素や臭素等のハロゲン元素及びチオスルフォン酸塩等がある。また、有機物酸化剤としては、p−キノン等のキノン類や有機過酸化物がある。
【0102】
本発明において酸化剤の添加量は、0.1μmol/m2〜500μmol/m2が好ましく、さらに好ましくは0.2μmol/m2〜50μmol/m2、さらにより好ましくは0.2μmol/m2〜20μmol/m2である。
【0103】
本発明に用いることのできる有機過酸化物としては、一般に知られているアルキルヒドロペルオキシド、アリルペルオキシド、アシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシドを挙げることができる。具体的には、エチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化ジエチル、過酸化ジアセチル、クメンヒドロペルオキシド、クメニルヒドロペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどを挙げることができる。これらのうちで好ましい化合物は、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、コハク酸ペルオキシドであり、特に好ましいのは過酸化ベンゾイルである。なお、本発明ではここに例示した化合物以外の有機過酸化物も用いることが可能である。添加量は0.1μmol/m2〜500μmol/m2が好ましく、さらに好ましくは0.2μmol/m2〜50μmol/m2、さらにより好ましくは0.2μmol/m2〜20μmol/m2である。有機過酸化物の含有量が少なすぎると効果がなく、多すぎると感度の低下をもたらす場合がある。
【0104】
有機過酸化物を含む層は、有機過酸化物を含む塗布液を塗布して乾燥することにより形成することができる。塗布液を調製する際に、有機過酸化物はどのような態様で添加してもよく、例えば、有機過酸化物を溶剤に溶解して塗布液を調製する途中ないし最後の段階において添加することができる。本発明の好ましい態様においては、有機過酸化物はポリマー微粒子分散物に分散させ、塗布液に添加する。また、別の好ましい態様では、有機溶剤塗布するときにバインダーとともに有機過酸化物を溶解して添加する。有機過酸化物をポリマー微粒子分散物中に分散する方法として、種々の方法を用いることができる。例えば、分散させる有機過酸化物の種類と量によっては、モノマーを乳化重合するときの重合開始剤として有機過酸化物を添加することができる。モノマーが重合してポリマー微粒子が形成されたときには、残存した有機過酸化物がポリマー微粒子分散物に分散した状態にすることができる。また、重合開始剤としては有機過酸化物以外の水溶性の重合開始剤を使用しておき、有機過酸化物はモノマーに溶解させておくこともできる。さらに別の方法としては、ポリマー微粒子分散物に有機過酸化物を含浸させる方法も挙げられる。ここでいう「含浸」とは、あるプロセス中に有機過酸化物の少なくとも一部をポリマー微粒子分散物に含ませ、ポリマー中に有機過酸化物が存在する状態にすることを意味する。
【0105】
本発明に用いられる有機過酸化物を溶解する有機溶剤は、後の工程で除去することが好ましい。従って、沸点は150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることが特に好ましい。有機溶剤の好ましい具体例としては、水非混和性有機溶剤では、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸s−アミル、酢酸n−アミル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化アミル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソプロピルエーテル、炭酸ジエチル、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、リグロイン、ニトロメタンなどが挙げられ、また水混和性有機溶剤では、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。上記有機溶媒の中で特に好ましいものは酢酸エチル、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、アセトニトリルである。本発明では上記以外の有機溶剤を用いることも可能であり、また2種類以上の有機溶剤を併用することもできる。
【0106】
本発明で有機過酸化物を水または水性媒体に分散する場合、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の性能に悪影響を与えない範囲で、通常の界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えばn−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイルメチルタウリドナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、2−ヘプタデシル−ベンズイミダゾール−5−スルホン酸ナトリウム、スルホン化コハク酸ジイソオクチルエステルナトリウム塩、ドデシル硫酸ナトリウム、エチレンオキシドとアルキルフェノール縮合物などを挙げることができる。
【0107】
〔その他本発明に係る下引層について〕
上記下引層を形成する塗布液にはさらにアニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤等の界面活性剤を必要量添加することができる。
【0108】
界面活性剤としては、水性塗布液の表面張力を500μN/cm2以下にすることができ、ポリエステルフィルムへの濡れを促進できるものが好ましく、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、第4級アンモニウムクロライド塩、アルキルアミン塩酸塩等を挙げることができる。
【0109】
本発明に係る下引層には、必要に応じて、可塑剤、架橋剤、染料等を添加してもよい。特に、フィラーの添加は、熱現像時の耐熱性向上に効果があるため望ましい。
【0110】
本発明に係る下引層用の塗布液には、必要に応じて、膨潤剤、マット剤、クロスオーバー用染料、アンチハレーション染料、顔料、カブリ防止剤、防腐剤等を加えてもよい。膨潤剤としては、例えば、フェノール、レゾルシン、クレゾール、クロロフェノール等が用いられ、添加量は本発明の下引層用塗布液1L当たり1〜10gが好ましい。マット剤としては、粒径0.1〜10μmのシリカ、ポリスチレン球、メチルメタクリレート球等が好ましい。
【0111】
本発明においては、下塗り層にマット剤を用いることが、製造における高速搬送性を良くするために好ましい。マット剤としては平均粒径が通常0.1〜8μm、好ましくは0.2〜5μm程度のスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカなどの微粒子が用いられている。マット剤の使用量は、銀塩光熱写真ドライイメージング材料1m2当たり1〜200mgが好ましく、2〜100mgがより好ましい。
【0112】
本発明に係る下引層の乾燥膜厚は、0.01〜10μm、特に0.03〜3μmであることが好ましい。
【0113】
架橋剤としてはエポキシ、イソシアネート、メラミンなどの公知の化合物が用いられる。また、特開昭51−114120号公報などに記載されている活性ハロゲン架橋剤も好ましい。
【0114】
また、染料としてはアンチハレーション、色調調整用染料などを用いることができる。
【0115】
更に、本発明に係る下引層を形成する塗布液には、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、有機フィラー、無機フィラー、潤滑剤、ブロッキング防止剤、安定剤等の他の添加剤を添加することができる。
【0116】
本発明に係る下引層は、水系、有機溶媒系いずれの塗布液を塗布乾燥して形成してもよいが、コストや環境の点からは水系塗布液を塗布する水系塗布の方が好ましい。ここで「水系塗布液」とは塗布液の溶媒(分散媒)の30質量%以上、より好ましくは50質量%以上が水である塗布液を言う。具体的な溶媒組成としては例えば水以外に以下の混合溶液が挙げられる。
【0117】
水/メタノール=85/15、水/メタノール=70/30、水/メタノール/ジメチルホルムアミド(DMF)=80/15/5、水/イソプロピルアルコール=60/40等(ただしここで数字は質量比を表す)。
【0118】
本発明に係る下引層は、一般によく知られている塗布方法を用いて塗布乾燥することにより形成することができる。用いることができる塗布方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビヤコート法、あるいは米国特許第2,681,294号公報に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法等が挙げられる。また、必要に応じて、米国特許第2,761,791号、同第3,508,947号、同第2,941,898号及び同第3,526,528号公報、原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)等に記載された2層以上の層を同時に塗布する方法も、好ましく用いることができる。
【0119】
本発明に係る下引層に用いる塗布液の塗布膜厚は3〜100μm、特に5〜20μmであることが好ましい。本発明の下引層に用いる塗布液を塗設した後の乾燥条件は25〜200℃で0.5秒〜1分程度である。本発明の下引層は、塗布、乾燥後、更に熱処理することが好ましく、その処理条件は110〜200℃で10秒〜10分程度である。
【0120】
塗布液温度は25〜35℃が適正といえる。35℃を超えると塗布液のポットライフが劣化する。また、25℃未満では接着強度、フィルム形成強度が低下することがある。
【0121】
〔バッキング層〕
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、画像形成層の反対側に溶剤系または水系のバッキング層を形成してもよい。
【0122】
バッキング層は、溶剤系塗布液、もしくは水性塗布液を用いて塗設することができ、1層のみ設けても2層以上設けてもよい。
【0123】
本発明でいう溶剤系バッキング層とは、溶剤系塗布液を用いて塗設されるバッキング層を指し、水系バッキング層とは、水系塗布液を用いて塗設されるバッキング層を指す。ここで溶剤系とは、有機溶媒が溶媒全体の50質量%以上を占めるものを指し、水系とは、有機溶媒が溶媒全体の50質量%未満であるものを指す。
【0124】
本発明において、バッキング層に好適なバインダーは、透明または半透明で、一般に無色の天然高分子化合物や合成高分子化合物ならば使用できる。例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルピロリドン、カゼイン、デンプン、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセタール類(例えば、ポリビニルホルマール及びポリビニルブチラール)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド類等がある。
【0125】
溶剤系バッキング層のバインダーとしては、例えば、セルロースアセテートブチレートが、また水系バッキング層のバインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン等が好ましく用いられる。
【0126】
本発明において、バッキング層は、所望の波長範囲で最大吸収が0.3以上2以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5以上2以下の吸収であり、かつ処理後の可視領域においての吸収が0.001以上0.5未満であることが好ましく、0.001以上0.3未満の光学濃度を有する層であることがより好ましい。
【0127】
バッキング層には、さらに必要に応じて界面活性剤、架橋剤、スベリ剤などを添加してもよい。また、米国特許第4,460,681号および同第4,374,921号に示されるような裏面抵抗性加熱層(backing resistive heating layer)を設けることもできる。
【0128】
バッキング層の厚みは、0.1〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmが好ましい。
【0129】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、バッキング層の上に保護層(バッキング面保護層)を設けてもよい。バッキング面保護層のバインダーには、特に制限はなく、バッキング層で記述したと同様のポリマーを用いることができる。バッキング面保護層も、前述の水系塗布液を用いて、塗布、乾燥して形成することが好ましい。バッキング面保護層にも必要に応じてマット剤、染料、スベリ剤、界面活性剤などを添加してもよい。
【0130】
バッキング面保護層の厚みは、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmの範囲がより好ましい。
【0131】
〔有機銀塩〕
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いることができる有機銀塩(以下、本発明に係る有機銀塩という)は還元可能な銀源であり、有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特に長鎖の(炭素数10〜30、好ましくは15〜25)脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環化合物の銀塩が好ましい。
【0132】
配位子が銀イオンに対する総安定度常数として4.0〜10.0の値をもつようなリサーチ・ディスクロージャー17029、同29963に記載された有機又は無機の錯体も好ましい。これら好適な銀塩の例としては、有機酸の銀塩、例えば、没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩等が挙げられる。その他の例としては、特開2001−83659号公報段落番号「0193」に記載の有機銀塩が挙げられる。又、有機銀塩の作製法、有機銀塩の粒径、についても、同公報の段落番号「0194」〜「0197」の記載が参照できる。又本発明に係る有機銀塩として、特開2001−48902公報段落番号「0028」〜「0033」、特開2000−72777号公報段落番号「0025」〜「0041」等に記載の技術を用いることができる。
【0133】
〔画像形成層〕
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いることができる感光性ハロゲン化銀(以下、本発明に係る感光性ハロゲン化銀という)とは、ハロゲン化銀結晶の固有の性質として本来的に、又は、人為的に物理化学的な方法により、可視光ないし赤外光を吸収し得て、かつ可視光ないし赤外光を吸収したときに当該ハロゲン化銀結晶内や結晶表面に物理化学的変化が起こり得るように処理調製されたハロゲン化銀結晶粒子をいう。
【0134】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、P.Glafkides著Chimieet Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(TheFocal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いてハロゲン化銀粒子乳剤として調製することができる。
【0135】
この中でも、形成条件をコントロールしつつハロゲン化銀粒子を調製する所謂コントロールドダブルジェット法が好ましい。ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。又、本発明に係るハロゲン化銀の粒子形成は通常、ハロゲン化銀種粒子(核)生成と粒子成長の2段階に分けられ、一度にこれらを連続的に行う方法でもよく、又核(種粒子)形成と粒子成長を分離して行う方法でもよく、特開2001−83659号公報段落番号「0063」に記載の技術を用いることができる。
【0136】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、画像形成後の白濁を低く抑える、良好な画質を得る等のため平均粒子サイズが小さい方が好ましい。平均粒子サイズが好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.01〜0.17μm、特に0.02〜0.14μmが好ましい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合は、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。又、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。
【0137】
粒子サイズは単分散であることが好ましく、詳しくは、特開2001−83659号公報段落番号「0064」〜「0066」に記載の技術を用いることができる。粒子の形状としては、立方体、八面体、14面体、平板状ハロゲン化銀粒子のいずれでもよい。平板状ハロゲン化銀粒子の場合、平均アスペクト比は、概ね1.5以上100以下、好ましくは2以上50以下がよい。これらは米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号の各明細書等に記載の技術を適用できる。又、粒子形成技術としては、特開2001−83659号公報段落番号「0068」〜「0090」に記載の技術を適用できる。
【0138】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、照度不軌改良のため元素周期律表の6族から11族に属する遷移金属のイオンを含有することが好ましい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10−9〜1×10−2モル、より好ましくは1×10−8〜1×10−4の範囲である。好ましい遷移金属錯体又は錯体イオンは、一般式〔ML6〕m(ここで、Mは元素周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子を表し、mは0、−、2−、3−又は4−を表す)で表される。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲンイオン(弗素イオン、塩素イオン等)、シアナイド、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシルである。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つ又は二つを占めることが好ましい。遷移金属配位錯イオンとしては、特開2001−83659号公報段落番号「0094」〜「0095」記載のものを用いることができる。
【0139】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感に関しては、特開2000−112057号公報段落番号「0044」〜「0045」に記載の化学増感剤、技術を用いることができる。
【0140】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、分光増感されていることが好ましい。好ましい分光増感に関しては、特開2001−83659号公報段落番号「0099」〜「0144」に記載の増感色素、技術を用いることができる。
【0141】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感効果を発現する強色増感剤を用いてもよい。強色増感剤については、特開2001−83659号公報段落番号「0148」〜「0152」に記載の化合物を用いることができる。
【0142】
本発明においては、上記の強色増感剤の他に、特願2000−70296号明細書段落番号「0022」〜「0028」に記載の一般式(1)で表される化合物と少なくとも1種のヘテロ原子を有する大環状化合物を強色増感剤として使用できる。該一般式(1)で表される化合物の具体例は、特願2000−70296号明細書段落番号「0034」〜「0039」に記載されている。又、ヘテロ原子を有する大環状化合物については、特願2000−70296号明細書段落番号「0044」〜「0054」に記載されている。
【0143】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いることができる還元剤(以下、本発明に係る還元剤という)としては、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の技術分野で公知の還元剤の中から適宜選択して使用することができる。特に、有機銀塩に脂肪族カルボン酸銀塩を使用する場合、2個以上のヒドロキシフェニル基がアルキレン基又は硫黄によって連結されたポリフェノール類、特にヒドロキシフェニル基のヒドロキシ置換位置に隣接した位置の少なくとも一つにアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等)又はアシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基等)が置換したヒドロキシフェニル基の2個以上がアルキレン基又は硫黄によって連結されたビスフェノール類が好ましい。
【0144】
例えば、特開2000−112057号公報段落番号「0047」〜「0048」に記載のヒンダードフェノールタイプの還元剤は、本発明において好ましく用いられる。その具体的例示化合物については、特開2000−112057号公報段落番号「0050」〜「0051」に記載されている。還元剤の使用量は銀1モル当たり1×10−2〜10モル、好ましくは1×10−2〜1.5モルである。
【0145】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いることができるバインダー(以下、本発明に係るバインダーという)は、透明又は半透明で、一般に無色であり、天然高分子や合成高分子である。本発明に係るバインダーの例として、特開2001−66725公報段落番号「0193」に記載の天然又は合成高分子が挙げられる。本発明に係るバインダーとしては、ポリビニルアセタール類が好ましく、ポリビニルブチラールが特に好ましい。バインダーの使用量としては、バインダーと有機銀塩との割合は15:1〜1:2、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。又、本発明に係るバインダーとしては、ポリマーラテックスも好ましく用いることができる。ポリマーラテックスに関しては、特開2001−66725公報段落番号「0194」〜段落番号「0203」に記載されている化合物と技術を適用できる。
【0146】
本発明に係るバインダーは、架橋剤を用いることにより膜付きがよくなり、現像ムラが少なくなり、又、保存時のカブリ抑制や現像後のプリントアウト銀の生成を抑制する効果が期待できる。特開昭50−96216号公報に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系の架橋剤を用いることができるが、好ましい架橋剤としてはイソシアネート系化合物、シラン化合物、エポキシ化合物又は酸無水物である。
【0147】
イソシアネート系化合物については、特開2001−83659号公報段落番号「0159」〜「0168」に記載されている化合物と技術を適用できる。エポキシ化合物については、特開2001−83659号公報段落番号「0170」〜「0180」に記載されている化合物と技術を適用できる。酸無水物については、特開2001−83659号公報段落番号「0182」〜「0187」に記載されている化合物と技術を適用できる。シラン化合物については、特願2000−77904号明細書段落番号「0022」〜「0028」に記載されている化合物と技術を適用できる。
【0148】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は必要に応じて色調剤を用いることができる。本発明において用いることのできる色調剤としては、特開2000−198757号公報段落番号「0064」〜「0066」に記載されている化合物と技術を適用できる。
【0149】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、感光層を透過する光の量または波長分布を制御するために感光層と同じ側または反対の側にフィルター層を形成するか、感光層に染料又は顔料を含有させることが好ましい。本発明において用いられる染料としては、感光材料の感色性に応じて種々の波長領域の光を吸収する公知の化合物が使用できる。例えば、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料を赤外光による画像記録材料とする場合には、特願平11−255557号明細書段落番号「0032」〜「0034」に開示されているようなチオピリリウム核を有するスクアリリウム染料、ピリリウム核を有するスクアリリウム染料等を用いることが好ましい。又、スクアリリウム染料に類似したチオピリリウム核を有するクロコニウム染料、ピリリウム核を有するクロコニウム染料を使用することもできる。
【0150】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、還元剤として、ビスフェノール類やスルホンアミドフェノール類のようなプロトンをもった還元剤が用いられているので、これらの水素を引き抜くことができる活性種を発生することにより還元剤を不活性化できる化合物が含有されていることが好ましい。無色の光酸化性物質として、露光時にフリーラジカルを反応活性種として生成可能な化合物が好ましい。これらの化合物として、特願2000−57004号明細書段落番号「0065」〜「0069」に開示されているビイミダゾリル化合物や、特願2000−57004号明細書段落番号「0071」〜「0082」に開示されているヨードニウム化合物を用いることができる。
【0151】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、還元剤を不活性化し還元剤が有機銀塩を銀に還元できないようにする化合物として、ハロゲン原子を活性種として放出する化合物を使用することができる。活性ハロゲン原子を生成する化合物の具体例としては、特願2000−57004号明細書段落番号「0086」〜「0102」に開示されている化合物を用いることができる。
【0152】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は省銀化剤を用いることができる。省銀化剤とは、一定の銀画像濃度を得るために必要な銀量を低減化し得る化合物をいう。この低減化する機能の作用機構は種々考えられるが、現像銀の被覆力を向上させる機能を有する化合物が好ましい。ここで、現像銀の被覆力とは、銀の単位量当たりの光学濃度をいう。本発明において用いることのできる省銀化剤としては、特開2001−66725号に開示されているヒドラジン誘導体化合物、ビニル化合物、4級オニウム化合物が挙げられる。
【0153】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、本発明に係る下引層を設けた支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する感光層を有してなるものであるが、感光層の上に非感光層を形成するのが好ましい。例えば感光層の上には保護層が、感光層を保護する目的で、又支持体の反対の面にはくっつきを防止する為に、バッキング層が設けられるのが好ましい。これらの保護層やバッキング層に用いるバインダーとしては感光層よりもガラス転移点が高く、擦り傷や変形の生じにくいポリマー、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが、前記のバインダーのなかから選ばれる。又、階調調整等のために、感光層を支持体の一方の側に2層以上又は支持体の両側に1層以上設置してもよい。
【0154】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解又は分散させた塗布液を作り、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば感光層、保護層)の塗布液を作製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成し得ることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が例えば、70質量%以下となる前に、上層を設けることが好ましい。
【0155】
各構成層を複数同時に重層塗布する方法は特に制限はなく、例えばバーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストルージョン塗布法などの公知の方法を用いることができる。これらのうちより好ましくはエクストルージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。エクストルージョン塗布法はスライド塗布方式のようにスライド面での溶媒の揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。この塗布方法は感光層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引きとともに塗布する場合についても同様である。もちろん、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は水系の溶媒でもよい。
【0156】
〔露光、現像処理〕
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の現像処理について説明する。
【0157】
現像処理は使用する機器、装置、或いは手段に依存して変化するが、典型的には適した高温に於いて像様に露光した光熱写真ドライイメージング材料を加熱することを伴う。露光後に得られた潜像は、例えば80〜200℃、好ましくは100〜200℃で、概ね1秒〜2分間加熱することにより現像することができる。加熱温度が80℃以下では短時間に十分な画像濃度が得られず、200℃以上ではバインダーが溶融しローラーへの転写など、画像そのものだけでなく搬送性や、現像機等への悪影響を及ぼす。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。
【0158】
この反応過程は、外部からの水等の処理液の供給なしに進行する。加熱する機器、装置、或いは手段はホットプレート、アイロン、ホットローラー、炭素又は白色チタン等を用いた熱発生器として典型的な加熱手段で行ってよい。本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料が保護層を有する場合であれば、保護層を有する側の面を加熱手段と接触させ加熱処理するのが、均一な加熱を行う上で、又熱効率、作業性の点などから好ましく、該面をヒートローラに接触させながら搬送し加熱処理して現像することが好ましい。
【0159】
現像時において、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料は、溶剤を通常5〜1000mg/m2、好ましくは100〜500mg/m2であるように調製する。これにより高感度、低カブリ、最高濃度の高い銀塩光熱写真ドライイメージング材料となる。
【0160】
溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、イソフォロン等のケトン類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類、イソプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、塩化メチレン、ジクロルベンゼン等の塩化物類、炭化水素類等が挙げられる。その他に水、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、トルイジン、テトラヒドロフラン、酢酸等が挙げられる。但しこれらに限定されるものではない。又、これらの溶剤は単独、又は、数種類組み合わせることができる。
【0161】
尚、銀塩光熱写真ドライイメージング材料中の上記溶剤の含有量は塗布工程後の乾燥工程等における温度条件等の条件変化によって調整できる。又、当該溶剤の含有量は含有させた溶剤を検出するために適した条件下におけるガスクロマトグラフィーで測定できる。
【0162】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の露光について説明する。
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の露光は、銀塩光熱写真ドライイメージング材料に付与した感色性に対し適切な光源を用いることが望ましい。例えば、赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならばいかなる光源にも適用可能であるが、レーザーパワーがハイパワーであることや、本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザー(780nm又は820nm)が好ましく用いられる。
【0163】
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料の露光は、レーザー走査露光により行うことが好ましく、その露光方法には種々の方法が採用できる。
【0164】
第1の好ましい方法として、銀塩光熱写真ドライイメージング材料の露光面と走査レーザー光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザー走査露光機を用いる方法が挙げられる。ここで、「実質的に垂直になることがない」とはレーザー走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55度以上88度以下、より好ましくは60度以上86度以下、更に好ましくは65度以上84度以下、最も好ましくは70度以上82度以下であることをいう。レーザー光が、感光材料に走査されるときの感光材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザー入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。ビームスポット直径の下限は10μmである。このようなレーザー走査露光を行うことにより干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることができる。
【0165】
第2の方法として、縦マルチである走査レーザー光を発するレーザー走査露光機を用いて露光を行うことも好ましい。縦単一モードの走査レーザー光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、合波による戻り光を利用する、高周波重畳をかける、等の方法がよい。ここで、縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0166】
第3の態様として、2本以上のレーザを用いて、走査露光により画像を形成することも好ましい。複数本のレーザを利用した画像記録方法としては、高解像度化、高速化の要求から1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むレーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段で使用されている技術であり、例えば特開昭60−166916号公報等により知られている。これは、光源ユニットから放射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、fθレンズ等を介して感光体上に結像する方法であり、これはレーザイメージャなどと原理的に同じレーザ走査光学装置である。レーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段における銀塩光熱写真ドライイメージング材料上へのレーザ光の結像は、1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むという用途から、一つのレーザ光の結像位置から1ライン分ずらして次のレーザ光が結像されている。具体的には、二つの光ビームは互いに副走査方向に像面上で数10μmオーダーの間隔で近接しており、印字密度が400dpi(ここで、1インチ即ち、2.54cm当たりのドットの数のことをdpi(ドットパーインチ)と定義する)で2ビームの副走査方向ピッチは63.5μm、600dpiで42.3μmである。
【0167】
副走査方向に解像度分ずらした方法とは異なり、同一の場所に2本以上のレーザを入射角を変え露光面に集光させ画像形成することも好ましい。この際、通常の1本のレーザ(波長λ[nm])で書き込むときの露光面での露光エネルギーがEである場合、露光に使用するN本のレーザが同一波長(波長λ[nm])、同一露光エネルギー(En)とした場合、0.9×E≦En×N≦1.1×Eの範囲にするのが好ましい。このようにすることにより、露光面ではエネルギーは確保されるが、それぞれのレーザ光の画像形成層への反射は、レーザの露光エネルギーが低いため低減され、ひいては干渉縞の発生が抑えられる。なお、上述では複数本のレーザの波長をλと同一のものを使用したが、波長の異なるものを用いてもよい。この場合、λ[nm]に対して(λ−30)<λ1、λ2、・・・λn≦(λ+30)の範囲にするのが好ましい。
【0168】
上述した第1、第2及び第3の態様の露光方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている、ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等のガスレーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。
【0169】
なお、レーザ・イメージャやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、銀塩光熱写真ドライイメージング材料に走査されるときの露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は銀塩光熱写真ドライイメージング材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、銀塩光熱写真ドライイメージング材料毎に最適な値に設定することができる。
【0170】
〔その他〕
本発明において、下引層は導電性を有してもよい。好ましくは酸素不足酸化物、金属過剰酸化物、金属不足酸化物、酸素過剰酸化物等の不定比化合物を形成し易い金属酸化物微粒子等が挙げられる。この中で本発明に最も好ましい金属酸化物は、製造方法などが多様な方式をとることが可能な金属酸化物微粒子である。金属酸化物としては、結晶性の金属酸化物が一般的であり、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、B2O、MoO3及びこれらの複合酸化物を挙げることができる。これらの中でもZnO、TiO2、SnO2が好ましく、複合酸化物としては、ZnOに対してAl、In等、TiO2に対しては、Nb、Ta等、SnO2に対してSb、Nb、ハロゲン元素等の異種元素を0.01〜30mol%含むものが好ましく、0.1〜10mol%含むものが特に好ましい。
【0171】
これらの金属酸化物の微粒子の体積抵抗率は107Ω・cm以下、特に105Ω・cm以下であることが好ましい。結晶内に酸素欠陥を有するもの、及び前記金属酸化物に対して所謂ドナーとなる異種原子を少量含む場合には導電性が向上するので好ましい。この様な金属酸化物微粒子の製造方法について詳細は例えば特開昭56−143430号公報に記載されている。
【0172】
この様な金属酸化物微粒子は導電性が高くなるが、光散乱に対して粒子径と粒子/バインダーの比などを考慮する必要があり、ヘイズの劣化があること、分散するのが難しいこと、等より水中でコロイド状で存在する無機コロイドを使用するのが更に好ましい。無機コロイドとは、共立出版社「化学大辞典」に定義されているものであり、粒子1個中に105〜109個の原子を含むものである。
【0173】
元素により金属コロイド、あるいは酸化物コロイド、水酸化物コロイドとして得られる。金属コロイドとしては、金、パラジウム、白金、銀、イオウなどが好ましく使用され、酸化物コロイド、水酸化物コロイド、炭酸塩コロイド、硫酸塩コロイドとしては、亜鉛、マグネシウム、ケイ素、カルシウム、アルミニウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、インジウム、モリブデン、バナジウムなどの酸化物コロイド、水酸化物コロイド、炭酸塩コロイド及び硫酸塩コロイドが本発明に好ましく使用される。特にZnO、TiO2、及びSnO2が好ましく、更にSnO2が特に好ましい。また、異種原子がドープされた例としては、ZnOに対してはAl、In等、TiO2に対しては、Nb、Ta等、SnO2に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等が挙げられる。無機コロイド粒子の平均粒径は好ましくは0.001〜1μmが分散安定上好ましい。
【0174】
本発明に用いる金属酸化物コロイド、特に酸化第二錫からなるコロイド状SnO2ゾルの製造方法に関しては、SnO2超微粒子を適当な溶媒に分散して製造する方法、または溶媒に可溶なSn化合物の溶媒中における分散反応から製造する方法などいずれの方法でもよい。
【0175】
SnO2超微粒子の製造方法に関しては、特に温度条件が重要で、高温度の熱処理を伴う方法は、一次粒子の成長や、結晶性が高くなる現象を生じるので好ましくなく、やむをえず熱処理を行う必要があるときには、300℃以下、好ましくは200℃以下さらに好ましくは150℃以下で行うべきである。しかし、25℃から150℃までの加温は、バインダー中への分散を考えたときには、好適に選ばれる手段である。
【0176】
溶媒に可溶なSn化合物の溶媒中における分解反応から製造する方法に関して以下に述べる。溶媒に可溶なSn化合物とは、K2SnO3・3H2Oのようなオキソ陰イオンを含む化合物、SnCl4のような水溶性ハロゲン化物、R′2SnR2、R3SnX、R2SnX2等の構造を有する化合物で(ここで、R及びR′はアルキル基を表す)、例えば(CH3)3SnCl・(ピリジン)、(C4H9)2Sn(O2CC2H5)2など有機金属化合物、Sn(SO4)2・2H2Oなどのオキソ塩を挙げることができる。これらの溶媒に可溶なSn化合物を用いてSnO2ゾルを製造する方法としては、溶媒に溶解後、加熱、加圧などの物理的方法、酸化、還元、加水分解などの化学的方法、または中間体を経由後、SnO2ゾルを製造する方法などがある。特公昭35−6616号公報に記載されたSnO2ゾルの製造方法を、本発明の金属酸化物の製造に適用することができる。
【0177】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0178】
実施例1
[PET支持体の作製]
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレート(PET)を得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後(尚、光学濃度0.170(コニカ社製デンシトメータPDA−65で測定)に青色着色した)、T型ダイから押し出して急冷し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、周速の異なるロールを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後、これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4×9.8×104Paで巻き取り、厚み175μmのPET支持体(フィルムロール)を作製した。
【0179】
[表面処理済みPET支持体の作製]
上記PET支持体の両面に表1、2、3記載のようにコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理は、春日電機(株)製のAGI−080を一部改造したものを用いて、電極とフィルムの間隙は1mmに設定して行った。
【0180】
更に、オゾン処理は、コロナ放電処理装置とコーターの間にオゾン発生器を設置し50mg/m2で表1、2、3記載のように行って、表面処理済みPET支持体を作製した。
【0181】
[下引済み支持体の作製]
上記表面処理済み支持体の一方の面に、下記下引下層用塗布液a−1を乾燥膜厚が0.2μmになるように塗設し、123℃で乾燥して画像形成側下引下層を表1、2、3記載のように形成した。これを下引下層A−1という。
【0182】
又、反対側の面にバッキング層下引層として下記下引下層用塗布液b−1を乾燥膜厚が0.12μmになるように塗設し、123℃で乾燥させてバッキング層側に帯電防止機能を持つ下引導電層を塗設した。これを下引下層B−1という。
【0183】
下引下層A−1と下引下層B−1の表面に、4W/m2・分のコロナ放電を施し、下引下層A−1の上には、下記下引上層用塗布液a−2を乾燥膜厚0.1μmになる様に塗設し123℃で乾燥させて下引上層A−2を表1、2、3記載のように形成した。
【0184】
又、下引下層B−1の上には下記下引上層用塗布液b−2を乾燥膜厚0.2μmになる様に塗設し123℃で乾燥させて下引上層B−2とした。後、さらに、123℃で2分間支持体を熱処理し、下引済み支持体1〜12、21〜25、31〜37、41〜50、51〜55、61〜65、71〜75、81〜87を作製した。
【0185】
《バッキング層側下引下層用塗布液b−1》
アクリル系ポリマーラテックスC−1(固形分30%) 30.0g
(スチレン:グリシジルメタクリレート:n−ブチルアクリレート=20:40:40)
アクリル系ポリマーラテックスC−2(固形分30%) 7.6g
(スチレン:n−ブチルアクリレート:t−ブチルアクリレート:ヒドロキシエチルメタクリレート=27:10:35:28)
SnO2ゾル(G−1) 180g
界面活性剤(A) 0.5g
PVA−613(クラレ社製 PVA)5質量%水溶液 0.4g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0186】
《バッキング層側下引上層用塗布液b−2》
以上に蒸留水を加えて1000mlとし塗布液とした。
【0187】
《画像形成層側下引下層用塗布液a−1》
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0188】
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0189】
尚、上記で用いた水性ポリエステルA−1溶液、水性ポリエステルA−2溶液、変性水性ポリエステルB−1溶液、SnO2ゾル(G−1)は、下記のようにして調製した。
【0190】
(水性ポリエステルA−1溶液の調製)
テレフタル酸ジメチル35.4質量部、イソフタル酸ジメチル33.63質量部、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム塩17.92質量部、エチレングリコール62質量部、酢酸カルシウム一水塩0.065質量部、酢酸マンガン四水塩0.022質量部を、窒素気流下において、170〜220℃でメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った後、リン酸トリメチル0.04質量部、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.04質量部及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸6.8質量部を加え、220〜235℃の反応温度で、ほぼ理論量の水を留去しエステル化を行った。
【0191】
その後、更に反応系内を約1時間かけて減圧、昇温し最終的に280℃、133Pa以下で約1時間重縮合を行い、水性ポリエステルA−1を作製した。得られた水性ポリエステルA−1の固有粘度は0.33(100ml/g)であった。また、Mw=80,000〜100,000であった。
【0192】
次いで、撹拌翼、環流冷却管、温度計を付した2Lの3つ口フラスコに、純水850mlを入れ、撹拌翼を回転させながら、水性ポリエステルA−1を150g徐々に添加した。室温でこのまま30分間撹拌した後、1.5時間かけて内温が98℃になるように加熱し、この温度で3時間加熱溶解した。加熱終了後、1時間かけて室温まで冷却し、一夜放置して、15質量%の水性ポリエステルA−1溶液を調製した。Tg:56℃
(水性ポリエステルA−2溶液の調製)
ペスレジンA−515GB(高松油脂社製 変性水性ポリエステル Tg:60℃)を水で固形分15質量%に仕上げた。これを水性ポリエステルA−2溶液とする。
【0193】
(変性水性ポリエステルB−1溶液の調製)
撹拌翼、環流冷却管、温度計、滴下ロートを付した3Lの4つ口フラスコに、前記15質量%の水性ポリエステルA−1溶液1900mlを入れ、撹拌翼を回転させながら、内温度を80℃まで加熱する。この中に、過酸化アンモニウムの24%水溶液を6.52ml加え、モノマー混合液(メタクリル酸グリシジル28.5g、アクリル酸エチル21.4g、メタクリル酸メチル21.4g)を30分間かけて滴下し、さらに3時間反応を続ける。その後、30℃以下まで冷却、濾過して、固形分濃度が18質量%の変性水性ポリエステルB−1溶液(ビニル系成分変性比率20質量%)を調製した。Tg:56℃
(SnO2ゾル(G−1)の調製)
特公昭35−6616号の実施例1に記載の方法で合成したSnO2ゾルを固形分が10質量%になるように加熱濃縮した後、アンモニア水でpH10に調整した。これをSnO2ゾル(G−1)とする。
【0194】
[溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料101〜109の作製]
〔バッキング層の形成〕
前記で作製した下引済み支持体1〜9のバッキング下引上層上に、下記のバッキング層塗布液を、乾燥膜厚が3.5μmになるように押し出しコーターにて塗布、乾燥(乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥)し、バッキング層を形成した。
【0195】
《バッキング層塗布液の調製》
メチルエチルケトン830gを撹拌しながら、セルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社、CAB381−20)84.2gおよびポリエステル樹脂(Bostic社製、VitelPE2200B)4.5gを添加し、溶解した。次に、溶解した液に、0.30gの赤外染料−1を添加し、さらにメタノール43.2gに溶解したフッ素系界面活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)4.5gとフッ素系界面活性剤(大日本インク社、メガファッグF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に撹拌を行った。最後に、メチルエチルケトンに1質量%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ(W.R.Grace社、シロイド64X6000)を75g添加、撹拌しバッキング層塗布液を調製した。
【0196】
【化4】
【0197】
〔感光層側の層形成〕
バッキング層を形成した上記支持体の感光層側である下引上層A−2面上に、下記感光層塗布液と表面保護層塗布液を押し出し(エクストルージョン)コーターを用いて同時に重層塗布した。塗布は、感光層は塗布銀量1.9g/m2、表面保護層は乾燥膜厚で2.5μmになる様にしておこなった。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて、10分間乾燥を行い銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料101〜109を作製した。
【0198】
(感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製)
溶液(A1)
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
化合物(A)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
溶液(B1)
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
溶液(C1)
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
溶液(D1)
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
塩化イリジウム(1%溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
溶液(E1)
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
溶液(F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
溶液(G1)
56%酢酸水溶液 18.0ml
溶液(H1)
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
化合物(A):
HO(CH2CH2O)n−(CH(CH3)CH2O)17−(CH2CH2O)mH(m+n=5〜7)
特公昭58−58288号公報に記載の混合撹拌機を用いて溶液(A1)に溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し核形成を行った。1分後、溶液(F1)の全量を添加した。この間pAgの調整を溶液(E1)を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の全量を、温度45℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。
【0199】
5分間撹拌した後、40℃に降温し、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10L加え、撹拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10L加え、撹拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、更に120分撹拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤Aを得た。
【0200】
この乳剤は、平均粒子サイズ0.058μm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0201】
(粉末有機銀塩Aの調製)
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に、1.5Mの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。該脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの上記感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間撹拌した。
【0202】
次に、1Mの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間撹拌し有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて撹拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、得られたケーキ状の有機銀塩を、気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)を用いて、窒素ガス雰囲気及び乾燥機入り口熱風温度の運転条件により含水率が0.1%になるまで乾燥して有機銀塩の乾燥済み粉末有機銀塩Aを得た。
【0203】
なお、有機銀塩組成物の含水率測定には赤外線水分計を使用した。
(予備分散液Aの調製)
ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社製 Butvar B−79)14.57gをメチルエチルケトン1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて撹拌しながら粉末有機銀塩A500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液Aを調製した。
【0204】
(感光性乳剤分散液1の調製)
予備分散液Aを、ポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ社製トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/秒にて分散を行なうことにより感光性乳剤分散液1を調製した。
【0205】
(安定剤液の調製)
1.0gの安定剤−1、0.31gの酢酸カリウムをメタノール4.97gに溶解し安定剤液を調製した。
【0206】
(赤外増感色素液Aの調製)
19.2mgの赤外増感色素SD−1、1.488gの2−クロロ−安息香酸、2.779gの安定剤−2および365mgの5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾールを31.3mlのメチルエチルケトンに暗所にて溶解し赤外増感色素液Aを調製した。
【0207】
(添加液aの調製)
還元剤(現像剤)としての1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパンを27.98gと1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの前記赤外染料−1を110gのメチルエチルケトンに溶解し添加液aとした。
【0208】
(添加液bの調製)
1.56gのカブリ防止剤−2、3.43gのフタラジンを40.9gのメチルエチルケトンに溶解し添加液bとした。
【0209】
【化5】
【0210】
《感光層塗布液の調製》
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液1(50g)およびメチルエチルケトン15.11gを撹拌しながら21℃に保温し、さらに臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加して10分撹拌した。続いて、安定剤液167mlを添加して10分間撹拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液Aを添加して1時間撹拌した。
【0211】
その後、温度を13℃まで降温してさらに30分撹拌した。13℃に保温したまま、ポリビニルブチラール(Monsanto社 Butvar B−79)13.31gを添加して30分撹拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4質量%メチルエチルケトン溶液)1.084gを添加して15分間撹拌した。さらに撹拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300/モーベイ社製の脂肪族イソシアネート(10%メチルエチルケトン溶液)、4.27gの添加液bを順次添加し撹拌することにより感光層塗布液を得た。
【0212】
(マット剤分散液の調製)
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製、7.5gのCAB171−15)を42.5gのメチルエチルケトンに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社製、Super−Pflex200)5gを添加、ディゾルバ型ホモジナイザにて8000rpmで30分間分散しマット剤分散液を調製した。
【0213】
《表面保護層塗布液の調製》
メチルエチルケトン865gを撹拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製、CAB171−15)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製、パラロイドA−21)を4.5g、ビニルスルホン化合物HD−1(下記構造)を1.5g、ベンズトリアゾールを1.0g、F系界面活性剤(旭硝子社製、サーフロンKH40)を1.0g、添加し溶解した。次に上記マット剤分散液30gを添加して撹拌し、表面保護層塗布液を調製した。
【0214】
ビニルスルホン化合物HD−1:(CH2=CHSO2CH2)2CHOH
[水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料110〜112の作製]
上記下引済み支持体10〜12(尚、これら試料については、表1記載のように下引下層A−1を塗設せず、コロナ放電処理面に表1記載のように下引上層A−2を塗設してある)のバッキング下引上層B−2上に、下記ハレーション防止層塗布液を染料固体微粒子の固形分塗布量が0.04g/m2となるように、また下記バック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.7g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、ハレーション防止バック層を作製した。バック面と反対の面に下引面から後記の画像形成層(ハロゲン化銀の塗布銀量0.14g/m2)、中間層、保護層第1層、保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、銀塩光熱写真ドライイメージング材料(水系)試料110〜112を作製した。
【0215】
塗布はスピード160m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隔を0.14〜0.28mmに、また、塗布液の吐出スリット幅に対して塗布幅が左右ともに各0.5mm広がるように調節し、減圧室の圧力を大気圧に対して392Pa低く設定した。その際、支持体は帯電しないようにハンドリング及び温湿度を制御し、更に塗布直前にイオン風で除電した。引き続くチリングゾーンでは、乾球温度が18℃、湿球温度が12℃の風を30秒間吹き当てて、塗布液を冷却した後、つるまき式の浮上方式の乾燥ゾーンにて、乾球温度が30℃、湿球温度が18℃の乾燥風を200秒間吹き当てた後70℃の乾燥ゾーンを20秒間通した後、90℃の乾燥ゾーンを10秒間通し、その後25℃に冷却して、塗布液中の溶剤の揮発を行った。チリングゾーンおよび乾燥ゾーンでの塗布液膜面に吹き当たる風の平均風速は7m/secであった。作製された銀塩光熱写真ドライイメージング材料のマット度はベック平滑度で画像形成層面側が550秒、バック面が130秒であった。
【0216】
《ハレーション防止層塗布液の調製》
(1)塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)の調製
塩基プレカーサー化合物11を64g、ジフェニルスルフォンを28gおよび花王社製界面活性剤デモールNを10gとり、蒸留水220mlと混合し、混合液をサンドミル(1/4 Gallonサンドグラインダーミル、アイメックス社製)を用いてビーズ分散し、平均粒子径0.2μmの、塩基プレカーサー化合物の固体微粒子分散液(a)を得た。
【0217】
(2)染料固体微粒子分散液の調製
シアニン染料化合物13を9.6gおよびp−ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム5.8gを蒸留水305mlと混合し、混合液をサンドミル(1/4Gallonサンドグラインダーミル、アイメックス社製)を用いてビーズ分散して平均粒子径0.2μmの染料固体微粒子分散液を得た。
【0218】
《ハレーション防止層塗布液の調製》
ゼラチン17g、ポリアクリルアミド9.6g、上記塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)70g、上記染料固体微粒子分散液56g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ6.5μm)1.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.03g、ポリエチレンスルフォン酸ナトリウム2.2g、青色染料化合物14を0.2g、水を844ml混合し、ハレーション防止層塗布液を調製した。
【0219】
【化6】
【0220】
《バック面保護層塗布液の調製》
容器を40℃に保温し、ゼラチン50g、ポリスチレンスルフォン酸ナトリウム0.2g、N,N−エチレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)2.4g、t−オクチルフェノキシエトキシエタンスルフォン酸ナトリウム1g、ベンゾイソチアゾリノン30mg、N−パーフルオロオクチルスルフォニル−N−プロピルアラニンカリウム塩37mg、ポリエチレングリコールモノ(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−プロピル−2−アミノエチル)エーテル[エチレンオキサイド平均重合度15]0.15g、C8F17SO3K32mg、C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)4(CH2)4−SO3Na64mg、アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(共重合質量比5/95)8.8g、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)0.6g、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして1.8g、水950mlを混合してバック面保護層塗布液とした。
【0221】
(ハロゲン化銀乳剤1の調製)
蒸留水1421mlに1質量%臭化カリウム溶液8.0mlを加え、さらに1モル/L硝酸を8.2ml、フタル化ゼラチン20gを添加した液をチタンコートしたステンレス製反応釜中で撹拌しながら、37℃に液温を保ち、硝酸銀37.04gに蒸留水を加え159mlに希釈した溶液Aと臭化カリウム32.6gを蒸留水にて容量200mlに希釈した溶液Bを準備し、コントロールドダブルジェット法でpAgを8.1に維持しながら、溶液Aの全量を一定流量で1分間かけて添加した。
【0222】
溶液Bは、コントロールドダブルジェット法にて添加した。その後3.5質量%の過酸化水素水溶液を30ml添加し、さらにベンツイミダゾールの3質量%水溶液を36ml添加した。その後、再び溶液Aを蒸留水で希釈して317.5mlにした溶液A2と、溶液Bに対して最終的に銀1モル当たり1×10−4モルになるよう6塩化イリジウム酸3カリウム塩を溶解し、液量を溶液Bの2倍の400mlまで蒸留水で希釈した溶液B2を用いて、やはりコントロールドダブルジェット法にて、pAgを8.1に維持しながら、一定流量で溶液A2を10分間かけて全量添加した。溶液B2は、コントロールドダブルジェット法で添加した。その後、5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾールの0.5質量%メタノール溶液を50ml添加し、さらに硝酸銀でpAgを7.5に上げてから1モル/L硫酸を用いてpHを3.8に調整し、撹拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程を行い、脱イオンゼラチン3.5gを加えて1モル/Lの水酸化ナトリウムを添加して、pH6.0、pAg8.2に調整してハロゲン化銀分散物を作製した。
【0223】
出来上がったハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.053μm、球相当径の変動係数18%の純臭化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。この粒子の[100]面比率は、クベルカムンク法を用いて85%と求められた。
【0224】
上記乳剤を38℃に撹拌しながら維持して、ベンゾイソチアゾリノンを0.035g(3.5質量%メタノール溶液で添加)を加え、40分後に分光増感色素A(固体分散物(ゼラチン水溶液))を銀1モル当たり5×10−3モル加え、1分後に47℃に昇温し、20分後にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムを銀1モルに対して3×10−5モル加え、さらに2分後にテルル増感剤Bを銀1モル当たり5×10−5モル加えて90分間熟成した。熟成終了間際に、N,N−ジヒドロキシ−N−ジエチルメラミンの0.5質量%メタノール溶液を5mlを加え、温度を31℃に下げ、フェノキシエタノールの3.5質量%メタノール溶液5ml、5−メチル−2−メルカプトベンヅイミダゾールを銀1モル当たり7×10−3モル及び1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールを銀1モルに対して6.4×10−3モルを添加して、ハロゲン化銀乳剤1を作製した。
【0225】
【化7】
【0226】
(ハロゲン化銀乳剤2の調製)
ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温37℃を50℃に変更する以外は同様にして平均球相当径0.08μm、球相当径の変動係数15%の純臭化銀立方体粒子乳剤の調製した。ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈降/脱塩/水洗/分散を行った。更に分光増感色素の添加量を銀1モル当たり4.5×10−3モルに変えた以外は乳剤1と同様にして分光増感、化学増感及び5−メチル−2−メルカプトベンヅイミダゾール、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールの添加を行い、ハロゲン化銀乳剤2を得た。
【0227】
(ハロゲン化銀乳剤3の調製)
ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温37℃を27℃に変更する以外は同様にして平均球相当径0.038μm、球相当径の変動係数20%の純臭化銀立方体粒子乳剤の調製した。ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈降/脱塩/水洗/分散を行った。更に分光増感色素の添加量を銀1モル当たり6×10−3モルに変えた以外は乳剤1と同様にして分光増感、化学増感及び5−メチル−2−メルカプトベンヅイミダゾール、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールの添加を行い、ハロゲン化銀乳剤3を得た。
【0228】
(塗布液用混合乳剤Aの調製)
ハロゲン化銀乳剤1を70質量%、ハロゲン化銀乳剤2を15質量%、ハロゲン化銀乳剤3を15質量%混合し、ベンゾチアゾリウムヨーダイド(1質量%水溶液)を銀1モル当たり7×10−3モル添加した。
【0229】
(りん片状脂肪酸銀塩の調製)
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22−85R)87.6g、蒸留水423ml、5モル/LのNaOH水溶液49.2ml、tert−ブタノール120mlを混合し、75℃にて1時間撹拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、硝酸銀40.4gの水溶液206.2ml(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635mlの蒸留水と30mlのtert−ブタノールを入れた反応容器を30℃に保温し、撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ62分10秒と60分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後7分20秒間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後9分30秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。
【0230】
このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、スチームトレースにより保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるようにスチーム開度を調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調整した。ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、25℃に降温した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
【0231】
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均アスペクト比5.2、平均球相当径0.52μm、球相当径の変動係数15%のりん片状の結晶であった。乾燥固形分100g相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217、平均重合度約1700)7.4gおよび水を添加し、全体量を385gとしてからホモミキサーにて予備分散した。次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−110S−EH、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、G10Zインタラクションチャンバー使用)の圧力を1750×9.8×104Paに調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後にそれぞれ装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0232】
(還元剤の25質量%分散物の調製)
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ社製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgに、水16kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス社製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製し、還元剤分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.8μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにて濾過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0233】
(メルカプト化合物の10質量%分散物の調製)
1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールを5kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ社製ポバールMP203)の20質量%水溶液5kgに、水8.3kgを添加して、良く混合してスラリーとした。
【0234】
このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス社製)にて6時間分散したのち、水を加えてメルカプト化合物の濃度が10質量%になるように調製し、メルカプト分散物を得た。こうして得たメルカプト化合物分散物に含まれるメルカプト化合物粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られたメルカプト化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにて濾過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。また、使用直前に再度孔径10μmのポリプロピレン製フィルターにて濾過した。
【0235】
(有機ポリハロゲン化合物の分散物−1(20質量%)の調製)
トリブロモメチルナフチルスルホン5kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ社製ポバールMP203)の20質量%水溶液2.5kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液213gと、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス社製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が20質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物の分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物の分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.36μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにて濾過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0236】
(有機ポリハロゲン化合物の分散物−2(25質量%)の調製)
有機ポリハロゲン化合物の分散物−1(20質量%)と同様に、但し、トリブロモメチルナフチルスルホン5kgの代わりにN−ブチル−3−トリブロモメタンスルホニルベンズアミド5kgを用い、分散し、この有機ポリハロゲン化合物が25質量%となるように希釈し、濾過を行った。こうして得た有機ポリハロゲン化合物の分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.39μm、最大粒子径2.2μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物の分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにて濾過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0237】
(有機ポリハロゲン化合物の分散物−3(30質量%)の調製)
有機ポリハロゲン化合物の分散物−1(20質量%)と同様に、但し、トリブロモメチルナフチルスルホン5kgの代わりにトリブロモメチルフェニルスルホン5kgを用い、20質量%MP203水溶液を5kgとし、分散し、この有機ポリハロゲン化合物が30質量%となるように希釈し、濾過を行った。こうして得た有機ポリハロゲン化合物の分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物の分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにて濾過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。また、収納後、使用までは10℃以下で保管した。
【0238】
(フタラジン化合物の5質量%溶液の調製)
8kgのクラレ社製変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57Kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15Kgと6−イソプロピルフタラジンの70質量%水溶液14.28kgを添加し、6−イソプロピルフタラジンの5質量%液を調製した。
【0239】
(顔料の20質量%分散物の調製)
C.I.Pigment Blue 60を64gと花王社製デモールNを6.4gに水250gを添加し良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス社製)にて25時間分散し顔料の20質量%分散物を得た。こうして得た顔料分散物に含まれる顔料粒子は平均粒径0.21μmであった。
【0240】
(SBRラテックス(40質量%)の調製)
外濾過(UF)精製したSBRラテックスは以下のようにして得た。下記のSBRラテックスを蒸留水で10倍に希釈したものをUF−精製用モジュールFS03−FC−FUY03A1(ダイセン・メンブレン・システム社製)を用いてイオン伝導度が1.5mS/cmになるまで希釈精製し、三洋化成社製サンデット−BLを0.22質量%になるよう添加した。更にNaOHとNH4OHを用いてNa+イオン:NH4+イオン=1:2.3(モル比)になるように添加し、pH8.4に調整した。この時のラテックス濃度は40質量%であった。
【0241】
SBRラテックス:−St(68)−Bu(29)−AA(3)−のラテックス、平均粒径0.1μm、濃度45%、25℃相対湿度60%における平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.2mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業社製伝導度計CM−30S使用しラテックス原液(40%)を25℃にて測定)、pH8.2であった。
【0242】
《画像形成層塗布液の調製》
上記で得た顔料の20質量%水分散物を1.1g、有機酸銀分散物103g、ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ社製)の20質量%水溶液5g、上記還元剤の25質量%分散物25g、有機ポリハロゲン化合物の分散物−1,−2,−3を2:5:2(質量比)で総量13.2g、メルカプト化合物の10%分散物6.2g、限外濾過(UF)精製しpH調整したSBRラテックス(40質量%)を106g、フタラジン化合物の5質量%溶液を18mlを添加し、ハロゲン化銀混合乳剤A10gを添加、良く混合して画像形成層塗布液を調製し、そのままコーティングダイへ70ml/m2となるように送液して塗布した。
【0243】
上記画像形成層塗布液の粘度は東京計器のB型粘度計で測定して、40℃(No.1ローター、60rpm)で85(mPa・s)であった。レオメトリックスファーイースト社製RFSフルードスペクトロメーターを使用した25℃での塗布液の粘度は剪断速度が0.1、1、10、100、1000(1/秒)においてそれぞれ1500、220、70、40、20(mPa・s)であった。
【0244】
《中間層塗布液の調製》
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ社製)の10質量%水溶液772g、前記顔料の20質量%分散物5.3g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液226g、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液2ml、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液10.5mlを加え総量880gになるように水を加えて中間層塗布液(画像形成層面側用)とし、10ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で21(mPa・s)であった。
【0245】
《保護層第1層塗布液の調製》
イナートゼラチン64gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液80g、フタル酸の10質量%メタノール溶液23ml、4−メチルフタル酸の10質量%水溶液23ml、1モル/Lの硫酸28ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液5ml、フェノキシエタノール0.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.1gを加え、総量750gになるように水を加えて保護層第1層塗布液(画像形成層面側用)とし、4質量%のクロムみょうばん26mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを18.6ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で17(mPa・s)であった。
【0246】
《保護層第2層塗布液の調製》
イナートゼラチン80gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液102g、N−パーフルオロオクチルスルフォニル−N−プロピルアラニンカリウム塩の5質量%溶液3.2ml、ポリエチレングリコールモノ(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−プロピル−2−アミノエチル)エーテル(この化合物のエチレンオキシド平均重合度は15である)の2質量%水溶液32ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%溶液23ml、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径0.7μm)4g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径6.4μm)21g、4−メチルフタル酸1.6g、フタル酸4.8g、1モル/Lの硫酸44ml、ベンゾイソチアゾリノン10mgを加え、総量650gとなるよう水を添加して、4質量%のクロムみょうばんと0.67質量%のフタル酸を含有する水溶液445mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを保護層第2層塗布液(画像形成層面側用)とし、8.3ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で9(mPa・s)であった。
【0247】
[評価方法]
《熱現像直後の画像形成層の接着性》
銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料を濃度1.3になるように均一に露光し、ヒートドラムを有する熱現像用自動現像機を用いて、123℃で15秒熱現像処理し、熱現像直後(45〜60秒)の試料に、試料面に対して45°の角度で、カミソリの刃を入れ、切り込みを挟んでセロテープ(R)を圧着し、急激に45°と反対方向にほぼ水平方向に引き剥がした剥離済み試料について、熱現像直後の画像形成層の剥離面積率を下記のようにして求め、下記に示す評価基準に従って評価した。
【0248】
剥離面積率
剥離済み試料の下に方眼紙を重ね、透過光で目視観察して剥離部分の面積(剥離面積)を測定し、下式から剥離面積率を求めた。
【0249】
剥離面積率(%)=〔剥離面積/セロテープ(R)圧着面積〕×100
評価基準
1:接着力が非常に弱く、熱現像画像形成層が完全に剥離
2:剥離面積が50%以上、100%未満
3:剥離面積が20%以上、50%未満である(実用化可能ギリギリの水準)
4:接着力が強く、剥離面積が5%以上、20%未満
5:接着力が非常に強く、剥離面積が5%未満である
《現像ムラ》
作製した銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料を濃度1.5になるように均一に露光し、ヒートドラムを有する熱現像用自動現像機を用いて、123℃で15秒熱現像処理した。目視観察し、現像ムラ(塗布性)を下記に示す評価基準に従って評価した。
【0250】
1:ムラがはっきりと判る
2:全体にうっすらムラが認められる
3:細かいムラが認められる
4:殆どムラが判らない
5:均一でムラが無い
【0251】
【表1】
【0252】
注1:エポキシ化合物またはビニルスルホン化合物
注2:酸化剤
S−1:過酸化水素水
S−2:過酸化ベンゾイル
S−3:コハク酸ペルオキシド
【0253】
【表2】
【0254】
※:下引下層A−1にではなく、下引上層A−2に添加
【0255】
【表3】
【0256】
※:下引下層A−1にではなく、下引上層A−2に添加
表1から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項2の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、優れていることがわかる。
【0257】
実施例2
《溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料201〜204の作製》下引済み支持体試料21〜24に、実施例1同様にしてバック面にバッキング層、バック面と反対の面に画像形成層、表面保護層を設けて表1記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料201〜204を作製した。
【0258】
《水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料205の作製》
下引済み支持体試料25に、実施例1同様にしてバック面にハレーション防止層、バック面保護層、バック面と反対の面に画像形成層、中間層、保護層第1層、保護層第2層を設けて表1記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料205を作製した。
【0259】
実施例1と同様にして評価した結果を表1に示した。
表1から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項2の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、より優れていることがわかる。
【0260】
実施例3
《溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料301〜306の作製》下引済み支持体試料31〜36に、実施例1同様にしてバック面にバッキング層、バック面と反対の面に画像形成層、表面保護層を設けて表1記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料301〜306を作製した。
【0261】
《水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料307の作製》
下引済み支持体試料37に、実施例1同様にしてバック面にハレーション防止層、バック面保護層、バック面と反対の面に画像形成層、中間層、保護層第1層、保護層第2層を設けて表1記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料307を作製した。
【0262】
実施例1と同様にして評価した結果を表1に示した。
表1から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項3の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、より優れていることがわかる。
【0263】
実施例4
《溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料401〜404、406〜409の作製》
下引済み支持体試料41〜44、46〜49に、実施例1同様にしてバック面にバッキング層、バック面と反対の面に画像形成層、表面保護層を設けて表2記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料401〜404、406〜409を作製した。
【0264】
《水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料405、410の作製》
下引済み支持体試料45、50に、実施例1同様にしてバック面にハレーション防止層、バック面保護層、バック面と反対の面に画像形成層、中間層、保護層第1層、保護層第2層を設けて表2記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料405、410を作製した。
【0265】
実施例1と同様にして評価した結果を表2に示した。
表2から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項4の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、より優れていることがわかる。
【0266】
実施例5
《溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料501〜504の作製》下引済み支持体試料51〜54に、実施例1同様にしてバック面にバッキング層、バック面と反対の面に画像形成層、表面保護層を設けて表2記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料501〜504を作製した。
【0267】
《水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料505の作製》
下引済み支持体試料55に、実施例1同様にしてバック面にハレーション防止層、バック面保護層、バック面と反対の面に画像形成層、中間層、保護層第1層、保護層第2層を設けて表2記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料505を作製した。
【0268】
実施例1と同様にして評価した結果を表2に示した。
表2から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項5の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、より優れていることがわかる。
【0269】
実施例6
《溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料601〜604の作製》下引済み支持体試料61〜64に、実施例1同様にしてバック面にバッキング層、バック面と反対の面に画像形成層、表面保護層を設けて表2記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料601〜604を作製した。
【0270】
《水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料605の作製》
下引済み支持体試料65に、実施例1同様にしてバック面にハレーション防止層、バック面保護層、バック面と反対の面に画像形成層、中間層、保護層第1層、保護層第2層を設けて表2記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料605を作製した。
【0271】
実施例1と同様にして評価した結果を表2に示した。
表2から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項6の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、より優れていることがわかる。
【0272】
実施例7
《溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料701〜704の作製》下引済み支持体試料71〜74に、実施例1同様にしてバック面にバッキング層、バック面と反対の面に画像形成層、表面保護層を設けて表3記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料701〜704を作製した。
【0273】
《水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料705の作製》
下引済み支持体試料75に、実施例1同様にしてバック面にハレーション防止層、バック面保護層、バック面と反対の面に画像形成層、中間層、保護層第1層、保護層第2層を設けて表3記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料705を作製した。
【0274】
実施例1と同様にして評価した結果を表3に示した。
表3から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項7の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、より優れていることがわかる。
【0275】
実施例8
《溶剤系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料801〜806の作製》下引済み支持体試料81〜86に、実施例1同様にしてバック面にバッキング層、バック面と反対の面に画像形成層、表面保護層を設けて表3記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料801〜806を作製した。
【0276】
《水系の銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料807の作製》
下引済み支持体試料87に、実施例1同様にしてバック面にハレーション防止層、バック面保護層、バック面と反対の面に画像形成層、中間層、保護層第1層、保護層第2層を設けて表3記載の様に銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料807を作製した。
【0277】
実施例1と同様にして評価した結果を表3に示した。
表3から明らかなように、本発明に係る下引済み支持体を用いた銀塩光熱写真ドライイメージング材料試料(本発明の請求項8の発明の構成)は、比較試料に比べて、熱現像直後の支持体と画像形成層との剥離が防止されまた現像ムラが改良され、より優れていることがわかる。
【0278】
【発明の効果】
本発明により、熱現像直後の支持体と画像形成層の剥離が防止され、また熱現像特有の現像ムラが改良された銀塩光熱写真ドライイメージング材料を提供できる。
Claims (8)
- ポリエステル支持体上に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を1〜350W・min/m2の出力でコロナ放電処理することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
- ポリエステル支持体上に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を1〜350W・min/m2の出力でコロナ放電処理し、かつ、オゾン処理することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
- ポリエステル支持体上に、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を少なくとも2回連続してコロナ放電処理し、該コロナ放電処理の出力の合計が1〜350W・min/m2であり、かつ、先に行われるコロナ放電処理の出力がその次に行われるコロナ放電処理の出力より低いことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
- ポリエステル支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を1〜350W・min/m2の出力でコロナ放電処理した後、アルコールもしくは純水で処理することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
- ポリエステル支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面を1〜350W・min/m2の出力で、かつポリエステル支持体のTg以上に加熱してコロナ放電処理することを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
- ポリエステル支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面が1〜370W・min/m2の出力でコロナ放電処理されており、かつ画像形成層と支持体の間に位置する少なくとも1層の下引層がエポキシ化合物を含有したことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
- ポリエステル支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面が1〜370W・min/m2の出力でコロナ放電処理されており、かつ画像形成層と支持体の間に位置する少なくとも1層の下引層がビニルスルホン化合物を含有したことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
- ポリエステル支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、還元剤、及びバインダーを含有する少なくとも1つの画像形成層を有してなる銀塩光熱写真ドライイメージング材料において、画像形成層が塗布される側のポリエステル支持体の面が1〜370W・min/m2の出力でコロナ放電処理されており、かつ画像形成層と支持体の間に位置する少なくとも1層の下引層が酸化剤を含有したことを特徴とする銀塩光熱写真ドライイメージング材料。
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