JP4057737B2 - 感熱または熱現像記録材料及びその製造方法 - Google Patents

感熱または熱現像記録材料及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は感熱または熱現像記録材料およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、医療分野において環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・イメージセッターまたはレーザー・イメージャーにより効率的に露光させることができ、高解像度および鮮明さを有する鮮明な黒色画像を形成することができる医療診断用および写真技術用途の光感光性熱現像写真材料に関する技術が必要とされている。これら光感光性熱現像写真材料では、溶液系処理化学薬品の使用をなくし、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することができる。
【0003】
一般画像形成材料の分野でも同様の要求はあるが、医療用画像は微細な描写が要求されるため鮮鋭性、粒状性に優れる高画質が必要であるうえ、診断のし易さの観点から冷黒調の画像が好まれる特徴がある。現在、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像の出力システムとしては満足できるものがない。
【0004】
有機銀塩を利用した熱画像形成システムが、例えば、米国特許3152904号、同3457075号の各明細書およびB.シェリー(Shely) による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第2頁、1996年)に記載されている。特に、熱現像感光材料は、一般に、触媒活性量の光触媒(例、ハロゲン化銀)、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した感光性層を有している。熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。そのため、黒色の銀画像は、露光領域に形成される。米国特許2910377号、特公昭43-4924号をはじめとする多くの文献に開示されている。これら有機銀塩を利用した熱画像形成システムは医療用画像として満足される画質と色調を達成し得るものとして研究が進められている。
【0005】
一方、ポリマー支持体、特にポリエステルフィルムは、機械的、物理的、化学的性質が優れていることから、写真感光材料、磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料等の支持体として広範囲に用いられ、医療用画像形成材料に用いる支持体としても広く使用されている。
【0006】
ポリマー支持体を写真感光材料として用いる際に考慮すべき重要な品質としてフィルムのカールがある。問題となるカールには2種類のものがあり、ロール状態に巻かれることにより生ずる巻きぐせカールと称するものと、製膜工程で形成される製膜カールと称するものとがある。
【0007】
ポリエステルフィルムは数多く用いられるプラスチックフィルムの中でも分子鎖が剛直であり、更に延伸されているため巻きぐせカールが強く、専らロール状態で用いられる用途ではこの種のカールが問題になる。一方、写真感光材料の中にはシート状態で用いられるものがある。レントゲン写真フィルム、マイクロフィルム、リスフィルム等はその代表的なものである。このような用途においては、ポリエステルフィルムを支持体としてその上に感光性膜の塗布をした段階では、通常ロール状態であるが、その後に必要なサイズに裁断し、シート状態で保管する。これを使用する場合、露光、現像処理等の取り扱い性において問題となるのは製膜工程で形成される製膜カールである。特に熱現像方式を用いた感光材料では、特開平7-261336号公報に記されたように、110℃〜180℃で加熱し、現像されることが知られている。その場合、巻きぐせカールは瞬時に回復するものの、その後に製膜カールが発現し、製品の現像処理性、集積性等の品質に多大の影響を与えといた問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は製膜カールをコントロールすることで、熱現像処理後の取り扱い性に優れた、画像形成材料を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の手段によって達成された。
(1)製膜カール値が 10mm 以下であるポリマー支持体上に、非感光性有機銀塩、有機銀塩の還元剤および水性ラテックスバインダーを含有する感熱記録層若しくは熱現像記録層少なくとも1層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成されたことを特徴とする感熱または熱現像記録材料。
(2)前記熱現像記録層に感光性ハロゲン化銀を含有することを特徴とする(1)に記載の熱現像記録材料。
(3)延伸工程で表裏の延伸温度を実質的に同一にすることによって、製膜カール値が10mm以下になるように製造されたポリマー支持体上に、非感光性有機銀塩、有機銀塩の還元剤および水性ラテックスバインダーを含有する感熱記録層若しくは熱現像記録層の少なくとも1層を溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成することを特徴とする感熱または熱現像記録材料の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の感熱または熱現像記録材料用ポリマー支持体は、製膜カール値が10mm以下、好ましくは5mm以下のポリマー支持体である。
【0011】
本発明における製膜カール値とは以下の測定法により測定された値である。
(1)製膜カール値測定法
・サンプリング:サンプルフィルム(製膜後フィルム)を原反フィルムの中央、両端の3点において、縦方向(MD)に各3枚ずつサンプリングする。サンプルは2cm×30cmの長方形とし、30cmの片をMD方向に平行にサンプリングする。
【0012】
・製膜カール値の測定:23℃、65%RH条件下に6時間以上調湿後、図1のようにサンプルをセットし、両端のカール変位量(X1、X2)を測定する。下記式に基づき製膜カール値を求める。
製膜カール値=(X1+X2)/2
【0013】
このような支持体の作成方法は、延伸工程で表裏の延伸温度を実質的に同一(差を持たせない)にするポリマー支持体の製造方法により達成される。
【0014】
ここで、実質的に同一(差を持たせない)とは表裏の延伸温度が10℃以下、好ましくは5℃以下、更に好ましくは3℃以下、より好ましくは1℃以下、特に好ましくは同一にすることである。
【0015】
具体的には、例えばキャスティング後に縦方向に特定倍率延伸する際、片面もしくは両面に赤外線ヒーター等の補助的加熱手段を設け、表裏の延伸温度を実質的に同一(差を持たせない)にすることにより、巻きぐせカールが回復した後に発現してくる製膜カールをコントロールする。
【0016】
図2に本発明に従った構成によるポリマー支持体の縦延伸ゾーンの側面図を示している。キャスティング後のフィルム1が縦延伸ローラ2、3で加熱された後、冷却ローラ4を通り、図示されていない横延伸ゾーンに送られる。延伸ローラ3の直後に赤外ヒータ5、6が設けられている。このような構成により、赤外ヒータ直後の延伸温度差を6℃以下、好ましくは4℃以下にすることで、有効に製膜カールをコントロールすることができる。
【0017】
本発明における製膜カールのコントロールメカニズムは、フィルムの表裏での結晶化度及び配向度が異なると熱処理工程での体積収縮率に差を生ずることが考えられ、その差をおさえることがポイントとなる。
【0018】
製膜工程について特に限定するものではないが、本発明に好適な例としてキャスティング後に縦方向に特定倍率延伸し、更にテンターによって横方向に延伸する逐次二軸延伸の場合である。これについて説明する。
【0019】
工程的には結晶化はキャスティング時から縦横の延伸までの全工程に亘って起きるから、表裏の結晶化の差が生じるステップは、キャスティング時、縦延伸時、及び横延伸時のいずれかまたは複数のステップにまたがっている。
【0020】
キャスティング時は、フィルムの厚みが最も厚く、表裏温度差が生じやすいが、生じた結晶の差が等温結晶結晶化度の差として現れるため後工程の延伸時に結晶が破壊され、カールのコントロールが不能になる。
【0021】
これに対して、延伸工程で生ずる結晶化度の差は、配向結晶化度の差として現れるため破壊されにくく、また通常延伸部には加熱、冷却の手段が設けられており補助的加熱手段を付加するため、本発明の手段として運用するのは延伸工程において好適である。
【0022】
更に、縦延伸工程と横延伸工程との比較では、後者の方がフィルムの面積が数倍になっており、コントロールしにくい。
【0023】
従って、上記のような逐次二軸延伸の工程においては、縦延伸時に表裏の結晶化度の差をおさえることが最適である。
【0024】
本発明に用いるポリマー支持体の材質としては、PET,PENなどの結晶性ポリマーが好ましく、ポリエステルが好ましい。
【0025】
本発明における好ましいポリエステル支持体のうち、ポリエステルはジカルボン酸とジオ−ルから構成されるが、好ましいジカルボン酸として、(2,6−、1,5−、1,4−、2,7−)ナフタレンジカルボン酸(NDCA)、テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、オルトフタル酸(OPA)、パラフェニレンジカルボン酸(PPDC)およびそのエステル形成体を挙げることができる。この中で、さらにテレフタル酸(TPA)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(2,6−NDCA)およびこれらのエステル形成体が好ましい。
【0026】
しかし、3−スルフォイソフタル酸塩やスルフォナフタレンジカルボン酸塩のような親水性モノマ−を共重合させると、吸水に起因する力学強度(特に曲げ弾性)の低下を引き起こし好ましくない。
【0027】
ジオールは、エチレングリコール(EG)、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、ネオペンチルグリコール(NPG)、ビスフェノールA(BPA)、ビフェノール(BP)が好ましく、さらにエチレングリコ−ルが好ましい。
【0028】
ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル等のポリアルキレングリコ−ルは、吸水に起因する力学強度(特に曲げ弾性)の低下を引き起こし好ましくない。
【0029】
ジオ−ルとジカルボン酸以外にヒドロキシカルボン酸を用いてもポリエステルを形成でき、パラヒドロキシ安息香酸(PHBA)、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸(HNCA)を用いてもよい。
【0030】
これらのうちで好ましいものは、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成体とエチレングリコ−ルからなるものであり、全ジカルボン酸ユニット中に含まれるナフタレンジカルボン酸の含率が30モル%以上100モル%以下のものが好ましく、より好ましくは50モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは、70モル%以上100モル%以下である。これは、共重合体であってもよく、ポリマ−ブレンドであってもよい。
【0031】
共重合の場合、テレフタル酸、ビスフェノ−ルA、シクロヘキサンジメタノ−ル等のユニットを共重合させたものも好ましい。これらの中で力学強度、コストの観点から最も好ましいのがテレフタル酸ユニットを共重合したものである。
【0032】
このような共重合体は原料のジカルボン酸とジアルコ−ルを1〜2kg/mm2の加圧下あるいは大気圧下で180〜280℃、より好ましくは230〜270℃で0.5〜8時間、さらに好ましくは2〜4時間反応させエステル交換させた後、50〜1mmHgの真空にした240〜290℃で1〜3時間加熱することで重合させて得ることができる。
【0033】
ポリマ−ブレンドの場合、上記のナフタレンジカルボン酸量を実現する成分となるポリエチレンナフタレート(PEN)とブレンドする好ましい相手は、相溶性の観点からポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリアリレ−ト(PAr)、ポリカ−ボネート(PC)、ポリシクロヘキサンジメタノ−ルテレフタレ−ト(PCT)等のポリエステルを挙げることができるが、なかでも力学強度、コストの観点から好ましいのがPETとのポリマ−ブレンドである。このようなポリマーブレンド中のPEN量は上記モル比を満足しさえすればよいが、通常10〜95重量%程度である。
【0034】
このようなポリマ−ブレンドを形成するには、押し出し機内で5分以上30分以下、より好ましくは8分以上25分以下、さらに好ましくは10分以上20分以下混練するのが好ましい。この時、2軸押し出し機を用いるのがより好ましい。
【0035】
好ましいポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレートも挙げられる。この場合、製膜後、後述のように80℃以上220℃以下の温度で熱処理をしたものである。
【0036】
これらのポリエステルは、耐熱性の観点からガラス転移温度(Tg)が60℃以上のものが好ましく、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。この場合のTgの上限に特に制限はないが、200℃程度である。
【0037】
これらのホモポリマーおよびコポリマーは、従来公知のポリエステルの製造方法に従って合成できる。例えば酸成分をグリコール成分と直接エステル化反応してもよく(直重法)、または酸成分としてジアルキルエステル(例えばジメチルエステルやジエチルエステルが好ましい)を用いて、グリコール成分とエステル交換反応をし、これを減圧下で加熱して余剰のグリコール成分を除去してもよい(エステル交換法)。あるいは、酸成分を酸ハライドとしておき、グリコールと反応させてもよい。なかでも好ましいのはエステル交換法、直重法である。
【0038】
これらの重合時、必要に応じて、エステル交換反応触媒あるいは重合反応触媒を用いたり、耐熱安定化剤(例えば亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスフェ−ト、トリエチルフォスフェ−ト、テトラエチルアンモニウム)を添加してもよい。
【0039】
これらのポリエステル合成法については、例えば、高分子実験学第5巻「重縮合と重付加」(共立出版、1980年)第103頁〜第136頁、"合成高分子V"(朝倉書店、1971年)第187頁〜第286頁の記載や特開平5−163337号、同3−179052号、同2−3420号、同1−275628号、特開昭62−290722号、同61−241316号等を参考に行うことができる。
【0040】
このようにして重合したポリマ−は、オルソクロロフェノ−ル溶媒中にて、35℃で測定した極限粘度が0.40以上、0.9以下のものが好ましく、0.45〜0.70のものがさらに好ましい。
【0041】
本発明に用いるポリエステルの好ましい具体的化合物例を示すが、本発明がこれに限定されるものではない。併せてTgを示す。
【0042】
ポリエステル ホモポリマ−例(原料モノマーの括弧内の数字はモル比を示す)
HP−1:ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)
〔2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDCA)/エチレングリコール(EG)(100/100)〕(PEN) Tg=119℃
HP−2:ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)
{テレフタル酸(TPA)/エチレングリコ−ル(EG)(100/100)}(PET) Tg=69℃
【0043】
ポリエステル コポリマ−例(括弧内の数字はモル比を示す)
Figure 0004057737
【0044】
ポリエステル ポリマ−ブレンド例(括弧内の数字は重量比を示す)
PB−1:PEN/PET(60/40) Tg= 95℃
PB−2:PEN/PET(80/20) Tg=104℃
PB−3:PEN/PET(90/10) Tg=109℃
PB−4:PAr/PEN(15/85) Tg=138℃
PB−5:PAr/PCT/PEN(10/10/80) Tg=135℃
PB−6:PAr/PC/PEN(10/10/80) Tg=140℃
PB−7:PEN/PET(20/80) Tg= 79℃
【0045】
本発明における好ましい別の支持体としてポリアリレート系ポリマーを挙げることができる。
【0046】
ポリアリレ−ト(PAr)系ポリマ−とは、ジオ−ルとしてビスフェノ−ル−A(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)と、ジカルボン酸としてテレフタル酸の重縮合体を少なくとも50モル%以上含むものを指す。これ以外のジカルボン酸成分として、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエ−テルジカルボン酸等が挙げられる。またジオ−ルとしては、ビスフェノ−ル−A以外に、4,4'−ビフェノ−ル、ビスフェノ−ル−S、ビスフェノ−ルAF、ビスフェノ−ル−Z、エチレングリコ−ル等を用いることができる。
【0047】
これらのポリマ−は、これらのジカルボン酸のエステルを出発原料としてエステル交換法で重合することができる。これらは、ジブチルスズオキシドやチタン酸テトラブチル、フェニルリン酸2ナトリウム等を触媒に用いて、150℃から350℃で真空下で重縮合させる。この時エステル交換触媒を用いることも好ましい。また、直重法で重合してもよい。詳細はJ.Polym.Sci.,40,399(1959)やJ.Polym.Sci.,28,179(1958),特開昭53-114895号,特開平5-331268号等の方法を参考に実施することができる。生成したポリアリレ−トの分子量は、5千以上10万以下、より好ましくは1万以上5万以下である。
【0048】
これらのなかでより好ましいのが、ビスフェノ−ル−Aとテレフタル酸を構成単位としたものである。これらのポリマ−は単独で用いても良く、混合(ポリマ−ブレンド)して用いても良い。
【0049】
これらのPAr系のポリマーのTgは160〜220℃である。
【0050】
これらのポリマー中には安定性付与のために、リン酸エステルを添加することも好ましい。好ましい添加量はリン原子換算で0ppmから300ppmが好ましく、10ppmから100ppmがより好ましい。
【0051】
また、経時安定性付与の目的で紫外線吸収剤を添加しても良い。紫外線吸収剤としては、可視領域に吸収を持たないものが望ましく、かつその添加量はポリマーフィルムの重量に対して通常0.5重量%ないし20重量%、好ましくは1重量%ないし10重量%程度である。
【0052】
紫外線吸収剤としては2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、2(2′−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2′−ヒドロキシ3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2′−ヒドロキシ−3′−ジ−t−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル、サリチル酸メチル等のサリチル酸系紫外線収剤が挙げられる。
【0053】
また、いわゆるライトパイピング現象を回避するため、フィルムに不活性無機粒子等を含有させる方法ならびに染料を添加する方法等が知られている。染料添加による方法はフィルムヘイズを著しく増加させないので好ましい。
【0054】
フィルム染色に使用する染料については、色調は感光材料の一般的な性質上グレー染色が好ましく、ポリエステルフィルムの製膜温度域での耐熱性に優れ、かつポリエステルとの相溶性に優れたものが好ましい。
【0055】
染料としては、上記の観点から三菱化成製のDiaresin、日本化薬製のKayaset等ポリエステル用として市販されている染料を混合することにより目的を達成することが可能である。特に耐熱安定性の観点から、アントラキノン系の染料を上げることができる。例えば、特開平7−168309号や特願平6−265180号に記載されているものを好ましく用いることができる。
【0056】
本発明によるポリマー支持体は、用途に応じて易滑性を付与することも可能であり、不活性無機化合物の練り込み、あるいは界面活性剤の塗布等が一般的手法として用いられる。
【0057】
このような不活性無機粒子としてはSiO2、TiO2、BaSO4、CaCO3、タルク、カオリン等が例示される。また、上記のポリエステル合成反応系に不活性な粒子を添加する外部粒子系による易滑性付与以外にポリエステルの重合反応時に添加する触媒等を析出させる内部粒子系による易滑性付与方法も採用可能である。外部粒子系としてはポリエステルフィルムと比較的近い屈折率をもつSiO2 、あるいは析出する粒子径を比較的小さくすることが可能な内部粒子系を選択することが望ましい。
【0058】
好ましい添加量は5ppm以上1000ppm以下、より好ましくは10ppm以上500ppm以下、さらに好ましくは20ppm以上200ppm以下である。また添加する粒子の大きさは0.01μm以上10μm以下が好ましく、0.05μm以上5μm以下がより好ましく、0.1μm以上2μm以下がさらに好ましい。
【0059】
次にこれらのポリマー支持体の製膜法について述べる。
上述のような方法で重合したポリマ−をペレット化し、これを80℃〜200℃で1時間以上乾燥する。この後、そのポリマ−の融点温度(Tm)以上、330℃以下で溶融する。この後、フィルタ−を用いて溶融ポリマ−をあらかじめろ過するほうが好ましい。フィルタ−としては、金網、焼結金網、焼結金属、サンド、グラスファイバ−などが挙げられる。これをT−ダイから溶融押し出しを行い未延伸フィルムを製膜する。2種以上のポリマ−ブレンドを行うときは、通常の多軸混練押し出し機を利用するのが好ましい。また、積層体を製膜するときは、共押し出し法、インラインラミネ−ト法、オフラインラミネ−ト法いずれで行っても良い。
【0060】
T−ダイから押し出した溶融ポリマ−は、Tg−80℃〜Tg(Tg:ポリエステルのガラス転移温度)、より好ましくはTg−60℃〜Tg−10℃にしたキャスティングドラム上に押し出す。この時、静電印加法あるいは液膜形成法(水等の流体をキャスティングドラム上に塗布しメルトとドラムの密着をよくする)方法でドラムとの密着を良くし平面性の改良を行うことも好ましい。
【0061】
本発明においては、このようにして作成された未延伸フィルムを同時あるいは逐次2軸延伸、熱固定、熱緩和して2軸延伸フィルムを形成する。縦方向・横方向の延伸回数は限定されるものではないが、なかでも好ましいのが縦延伸後横延伸、熱固定を行う逐次2軸延伸法である。
【0062】
これは、未延伸フィルムを一軸方向(縦方向または横方向)にTg−10℃〜Tg+70℃、より好ましくはTg〜Tg+50℃、さらに好ましくはTg+5℃〜Tg+35℃で2.5〜4.5倍、より好ましくは2.7〜4.0倍、さらに好ましくは2.8〜3.8倍に延伸する。このような延伸は、例えば出口のロ−ラ−速度を入り口のロ−ラ−速度より早くすることで達成できる。
【0063】
次いで上記延伸方向と直角方向(一段目延伸が縦方向の場合には、二段目延伸は横方向となる)にTg℃〜Tg+70℃の温度で2.5〜4.5倍より好ましくは、2.7〜4.0倍、更に好ましくは、2.8〜3.8倍に延伸する。縦、横とも延伸倍率が小さくなると、弾性率が低下し取扱い上好ましくない。一方、延伸倍率が大きくなると、熱収縮率が大きくなりやすく、好ましくない。
【0064】
本発明では、このような延伸工程で、表裏の延伸温度を実質的に同一(差を持たせない)にする。
【0065】
この後、二軸延伸フィルムはTg+30℃〜溶融温度(Tm)、より好ましくは、Tg+40℃〜Tm−10℃、さらに好ましくは、Tg+60℃〜Tm−20℃の温度で熱固定する。好ましい熱固定時間は10秒以上3分以下、より好ましくは15秒以上1分30秒以下、さらに好ましくは20秒以上60秒以下である。さらに熱固定に引き続き熱緩和を行うことも好ましい。この時の温度はTg+30℃〜Tm、より好ましくは、Tg+40℃〜Tm−10℃、さらに好ましくは、Tg+60℃〜Tm−20℃である。好ましい緩和量は0%以上15%以下、より好ましくは2%以上12%以下、さらに好ましくは3%以上10%以下である。緩和は縦方向、横方向のいずれかまたは両方に行ってもよい。この後、冷却、トリミングを行いロ−ルに巻き取る。
【0066】
ポリマー支持体の両端あるいは片端の0.2cm〜10cmのところに、1μm〜100μmの高さのエンボス加工を付与することも、取扱い性を向上させる上で好ましい。
【0067】
ポリマー支持体のベ−ス厚みは50μm以上300μm以下が好ましい。より好ましくは80μm以上200μm以下が好ましく、さらに好ましくは90μm以上180μm以下である。うすくなると、ベ−スのスチフネス(腰の強さ)が弱くなり、一方厚くなると、腰が強くなりすぎ、取扱い上好ましくない。
【0068】
特に、PEN支持体のようなものでは、このようにして得た支持体に50℃以上Tg未満の熱処理(以下BTA処理と呼ぶことがある)を実施することができる。これにより支持体につく巻き癖を著しく小さくすることができる。
【0069】
なお、本発明で言うTgとは、走査型示差熱分析計(DSC)を用いて求めることができる。すなわち、窒素気流中でサンプル量10mgを、一度20℃/分で300℃まで昇温後(1st run)、室温まで急冷したあと、再び20℃/分で昇温したとき(2nd run)にベ−スラインから偏奇しはじめる温度と新たなベースラインに戻る温度の算術平均として求めたものである。
【0070】
BTA処理は、50℃以上Tg未満、より好ましくはTg−35℃以上Tg未満、さらに好ましくはTg−20℃以上Tg未満で行うのが好ましい。すなわち、Tgより低い温度で行うことがポイントであり、このような温度の上限としては例えばTg−1℃である。低い温度で行うと十分な巻き癖効果を得るためには長時間を要し工業生産性が劣り好ましくない。一方高い温度では巻癖をつきにくくすることができない。
【0071】
BTA処理はこの温度範囲内の一定温度で実施してもよく、昇温あるいは冷却しながら実施してもよい。昇温あるいは冷却しながらの熱処理は温度を連続的に変化させても良く、ステップワイズに変化させてもよい。なかでも好ましいのが、一定温度あるいは、冷却しながらの熱処理である。冷却の平均冷却速度は−0.01〜−150℃/時間、より好ましくは−0.1〜−100℃/時間、さらに好ましくは−0.2〜80℃/時間である。このような場合、冷却開始温度はTgとすることができる。BTA処理時間は、0.1時間以上1500時間以下、より好ましくは0.2時間以上500時間以下、さらに好ましくは0.3時間以上150時間以下である。短時間では十分な効果を得ることができず、長時間では効果が飽和する一方、支持体の着色や脆化が起こりやすくなる。
【0072】
このような巻き癖解消の効果をより一層増大させるために、BTA処理の前にTg以上Tm未満の温度で熱処理(以下「前熱処理」と呼ぶことがある)を実施することも好ましい。
【0073】
前熱処理温度はTg以上融点未満で行うのが好ましく、さらにTg+20℃以上結晶化温度以下で行うのがより好ましい。
【0074】
前熱処理はこの温度範囲内で、一定温度で実施してもよく、降温しながら実施してもよく、また昇温しながら実施してもよい。前熱処理の時間は、0.1分以上1500時間以下、さらに好ましくは1分以上1時間以下である。短時間では十分な効果を得ることができず、長時間では支持体の着色や脆化が起こりやすくなる。
【0075】
この前熱処理の後、後熱処理であるBTA処理を実施するが、前熱処理終了温度からBTA処理温度にまで急冷してもよく、BTA処理温度まで連続的に冷却してもよい。また一度室温に冷却した後、BTA処理を行っても良い。
【0076】
BTA処理を行った支持体をDSCで測定すると、Tg−20℃〜Tg+80℃の間に極大値をもつ吸熱ピ−クが現れる。この吸熱ピ−クの面積(吸熱量)が大きいほど、巻癖はつきにくくなる。吸熱量は、100mca1/g以上1000mca1/g以下であるのが好ましい。吸熱量が小さくなると、十分に巻癖をつけることができず、一方吸熱量が大きくなっても巻癖をつきにくくする効果は飽和する。より好ましくは、150mca1/g以上500mca1/g以下、さらに好ましくは、200mca1/g以上400mca1/g以下である。吸熱量はDSCを用いて10mgの試料を20℃/分で昇温しながら窒素気流中で測定した値である。
【0077】
なお、前述のように、PET支持体の場合は、上記の前熱処理に該当するもののみとしてもよく、引き続き30〜60℃程度の温度で5〜100秒程度後熱処理を施すこともできる。このような後熱処理はPEN等においても有効である。
【0078】
このような支持体の熱処理(BTA処理、前熱処理)は、ロ−ル状あるいは、ウェブ状で搬送しながら実施することができる。
【0079】
ロ−ル状で熱処理する場合、ロ−ルを室温から恒温槽中で熱処理する方法(以降低温巻取り法と呼ぶ)、ウェブ搬送中に所定温度にした後その温度でロ−ル状に巻取り熱処理する方法(以降高温巻取り法と呼ぶ)のいずれの方法で実施してもよい。前者の方法は昇温、降温に時間を要するが、設備投資が少なくて済む利点がある。一方、後者の方法は高温での巻取り設備が必要だが昇温時間を省略できる利点がある。
【0080】
低温巻き取り法、高温巻き取り法とも、単位幅当たりの巻張力は0.1〜20kg/cm2が好ましく、より好ましくは0.2〜18kg/cm2、さらに好ましくは0.5〜15kg/cm2である。巻張力が小さくなると、緩巻きのため熱処理中にロ−ルが自重でたるみ変形が発生しやすく、一方、巻張力が大きくなると、巻締まりによるシワが発生しやすい。
【0081】
さらに、この支持体を巻き付ける巻芯の直径は50mm以上2000mm以下、より好ましくは100mm以上1000mm以下、さらに好ましくは150mm以上600mm以下である。巻き芯の材質は特に限定されないが、熱による強度低下や変形のないものが好ましく、例えばステンレス、アルミニウム、ガラスファイバー入り樹脂を挙げることが出来る。また、これらの巻芯上に、必要に応じて、ゴムや樹脂をライニングしてもよい。さらに熱伝達の遅い内部から加熱するため内部に加熱ヒーターを設置していても良く、熱風や高温液体を流液できるように中空になっていても良い。
【0082】
感光性乳剤層を塗布する前に支持体をガラス転移温度以上での前熱処理をウエブ状で行う場合、搬送張力は0.04kg/cm2以上6kg/cm2以下が好ましく、0.2kg/cm2以上5.5kg/cm2以下がより好ましく、1kg/cm2以上5kg/cm2以下がさらに好ましい。搬送張力が小さくなると、搬送中に支持体がバタつき、搬送中に傷が発生しやすい。一方搬送張力が大きくなると張力により支持体が伸ばされ支持体がトタン板状となり平面性が低下しやすく好ましくない。
【0083】
この熱処理は一定温度で実施しても良く、複数の熱処理ゾ−ンを設置し、処理温度を変えながら実施しても良い。
【0084】
なお熱処理(BTA処理、前熱処理)は製膜から感光性層塗布までの間のどこで行っても良い。
【0085】
以下に好ましい熱処理(BTA処理、前熱処理)の例を示すが、これに限定されるものではない(下例中の→は連続して処理したことを示し、→を記載していない間は一度室温まで冷却した不連続な処理であることを示す)。
【0086】
Figure 0004057737
【0087】
Figure 0004057737
【0088】
Figure 0004057737
【0089】
本発明の支持体は下塗り層を有していることが好ましい。
【0090】
本発明における下塗り層とは、感光性層以外の層で支持体の直上に塗設した層を指し、感光性層側、バック層側のいずれにも設けることができる。下塗り層には接着性以外にも帯電防止性、アンチハレ−ション性、クロスオ−バ−カット性、染色性、紫外線カット性、マット性、耐傷保護性等を付与することができる。
【0091】
接着性を付与した下塗り層としては、第1層として支持体によく接着する層(以下、下塗り第1層と略す)を設け、その上に第2層として下塗り第1層と写真層をよく接着する層(以下、下塗り第2層と略す)を塗布するいわゆる重層法と、支持体と写真層をよく接着する層を一層のみ塗布する単層法とがある。
【0092】
重層法における下塗り第1層では、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等の中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合体、エポキシ樹脂、ゼラチン、ニトロセルロース、ポリ酢酸ビニルなどが用いられる。また必要に応じて、トリアジン系、エポキシ系、メラミン系、ブロックイソシアネートを含むイソシアネート系、アジリジン系、オキサザリン系等の架橋剤、コロイダルシリカ等の無機粒子、ポリスチレン等の有機微粒子、界面活性剤、増粘剤、染料、防腐剤などを添加してもよい。(これらについては、E.H.Immergut "Polymer Handbook" VI187〜231、Intersciense Pub.New York 1966や特開昭50−39528号、同50−47196号、同50−63881号、同51−133526号、同64−538号、同63−174698号、特願平1−240965号、特開平1−240965号、同2−184844号、特開昭48−89870号、同48−93672号などに詳しい)。
【0093】
単層法においては、多くは支持体を膨潤させ、下塗りポリマーと界面混合させることによって良好な接着性を得る方法が多く用いられる。この下塗りポリマーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ガゼイン、寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体などの水溶性ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースエステル、塩化ビニル含有共重合体、塩化ビニリデン含有共重合体、アクリル酸エステル含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体等のラテックスポリマー、などが用いられる。好ましいのはポリエステルである。ここでいうポリエステルとはポリマー分子鎖中にアルコールと多塩基酸とがエステル結合した構造を含むポリマーである。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチングリコール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどがある。また、多塩基酸としては例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、4−スルホフタル酸、アジピン酸、イタコン酸、フマル酸などがある。ポリエステルとしては水性ポリエステルを用いても良い。水性ポリエステルは、上記のポリエステルを乳化重合してエマルションとしたものや、カルボキシル基やスルホン酸基等の親水性基を導入して親水化したものである。水性ポリエステルは水溶性のもの、乳化分散型のもの、及びその中間のコロイド分散型のもの等があるが下塗り層としてはいずれも使用できる。水性ポリエステルについては例えば、「水溶性高分子分散型樹脂総合資料集」(経営開発センター(1981))等に記載がある。
【0094】
単層法における下塗り層として重層法の第1層のみを用いることもできる。また、単層法における下塗り層には重層法における下塗り層に含有させることのできる素材、例えば、界面活性剤、無機微粒子、有機微粒子、増粘剤、防腐剤などを含有させることができる。
【0095】
これらの単層法および重層法での乾燥温度は、上述の通り50℃以上150℃以下で行うことがポイントである。
【0096】
バック面の耐傷性付与、すべり性付与、カール補償、帯電防止能の付与等のためにバック層を塗設することも好ましい。この層は、支持体直上に塗設し下塗り層として使用してもよく、上記接着性下塗り層の上に塗設してもよい。このバック層は親水性コロイドをバインダーとしてもよく、疎水性ポリマーをバインダーとしてもよい。親水性コロイドとして最も好ましいものはゼラチンである。ゼラチンは、いわゆる石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、酵素処理ゼラチン、ゼラチン誘導体及び変性ゼラチン等当業界で一般に用いられているものはいずれも用いることができる。これらのゼラチンのうち、最も好ましく用いられるのは石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチンである。ゼラチン以外の親水性コロイドとしてコロイド状アルブミン、カゼイン等の蛋白質、寒天、アルギン酸ナトリウム、デンプン誘導体等の糖誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース化合物、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等の合成親水化合物等を挙げることができる。合成親水化合物の場合、他の成分を共重合してもよい。これらの親水性コロイドは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。疎水性ポリマー層のバインダーとしてはポリメチルメタクリレート、エチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルポリマー、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、スチレン系ポリマー、塩化ビニリデン、ウレタン系ポリマー、ブタジエン等のゴム系ポリマーなどが用いられる。この層は1層でも2層以上でもよい。
【0097】
バック層には更にポリマーラテックスを添加しても良い。本発明に用いられるポリマーラテックスは平均粒径が20mμ〜200mμの水不溶性ポリマーの水分散物で、好ましい使用量はバインダー1.0に対して乾燥重量比で0.01〜1.0で特に好ましくは0.1〜0.8である。本発明に用いられるポリマーラテックスの好ましい例としてはアクリル酸のアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステルまたはグリシジルエステル、あるいはメタアクリル酸のアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、またはグリシジルエステルをモノマー単位として持ち、平均分子量が10万以上、特に好ましくは30〜50万のポリマーである。具体例としてはポリエチルアクリレート、ポリ−n−ブチルアクリレート、ポリ−n−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート・グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン・2−ヒドロオキシプロピルメタクリレート及びエチルアクリレート・アクリル酸共重合体を示すことができる。
【0098】
さらにバック層に導電性の結晶性金酸化物又はその複合酸化物微粒子を添加して表面抵抗率を1012以下にすることが好ましい。導電性の結晶性酸化物又はその複合酸化物の微粒子としては体積抵抗率が107 Ωcm以下、より好ましくは105Ωcm以下のものが望ましい。またその粒子サイズは0.01〜0.7μm、特に0.02〜0.5μmであることが望ましい。本発明に使用される導電性の結晶性金属酸化物あるいは複合酸化物の微粒子の製造方法については特開昭56−143430号公報の明細書に詳細に記載されている。即ち、第1に金属酸化物微粒子で暁成により作製し、導電性を向上させる異種原子の存在下で熱処理する方法、第2に焼成により金属酸化物微粒子を製造するときに導電性を向上させる為の異種原子を共存させる方法、第3に焼成により金属微粒子を製造する際に雰囲気中の酸素濃度を下げて、酸素欠陥を導入する方法等が容易である。金属原子を含む例としてはZnOに対してAl、In等、TiO2 に対してはNb、Ta等、SnO2 に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等があげられる。異種原子の添加量は0.01〜30mol%の範囲が好ましいが0.1〜10mol%であれば特に好ましい。これらのうちSbを添加したSnO2 複合金属酸化物微粒子が最も好ましい。
【0099】
またハレーション防止、セーフライト安全性向上、表裏判別性向上などの目的で、染色された非感光性親水性コロイド層(以降染色層と表わす)を設けてもよい。これらは下記特許に詳しくのべられている、米国特許第3,455,693号、同2,548,564号、同4,124,386号、同3,625,694号、特開昭47−13935号、同55−33172号、同56−36414号、同57−161853号、同52−29727号、同61−198148号、同61−177447号、同61−217039号、同61−219039号等記載の染料を媒染剤に吸着せしめる方法、特開昭61−213839号、同63−208846号、同63−296039号、特開昭56−12639号、同55−155350号、同55−155351号、同63−27838号、同63−197943号、EP15,601号、同274,723号、同276,566号、同299,435号、WO88/04794号、特開平2−264936等の各公報記載の水に不溶性の染料固体を用いる方法などがある。これらの方法の中で染料を固体のまま分散する方法が現像処理後の残色が少ないので好ましい。これら以外にもバック層のバインダ−中に必要に応じてマット剤、すべり剤、界面活性剤、架橋剤などを添加してもよい。
【0100】
さらに、バック補償層を付与することも好ましい。これには、特開平7−128770に記載されているような、ゼラチンに代表される親水性ポリマ−上に水蒸気透過性のポリマ−被膜を付与したものが好ましく用いられる。
【0101】
これらの下塗りおよびバック層の塗布は、一般によく知られた塗布方法、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、或いは米国特許第2,681,294号明細書に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法等により塗布することができる。また必要に応じて、米国特許第2,761,791号、3,508,947号、2,941,898号、及び3,526,528号明細書、原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)等に記載された方法により2層以上の層を同時に塗布することができる。このようなバック下塗り、バック層は、1層でも多層でもよく、乾燥後の厚みが各層0.02〜10μm、より好ましくは0.1〜7μm、これらの層の全厚みが0〜5μmになるように塗設するのが好ましい。
【0102】
これらの下塗りに先だって、表面処理を行うことも接着性を改良する上で好ましい。好ましい表面処理はグロー放電処理、コロナ処理、紫外線照射処理、火炎処理が挙げられる。感光性乳剤層あるいはバック層(バッキング層)の処方によっては、表面処理のみで必要な接着性が得られる場合もあり、その場合には必ずしも下塗りを行う必要はない。
【0103】
グロー処理は、従来知られている方法、例えば特公昭35−7578号、同36−10336号、同45−22004号、同45−22005号、同45−24040号、同46−43480号、特開昭53−129262号、米国特許3,057,792号、同3,057,795号、同3,179,482号、同3,288,638号、同3,309,299号、同3,424,735号、同3,462,335号、同3,475,307号、同3,761,299号、同4,072,769号、英国特許891,469号、同997,093号、等の方法を用いることができる。
【0104】
このようなグロー処理では、特に雰囲気に水蒸気を導入した場合において最も優れた接着効果を得ることができる。水蒸気分圧は、10%以上100%以下が好ましく、更に好ましくは40%以上90%以下である。10%未満では充分な接着性を得ることが困難となる。水蒸気以外のガスは酸素、窒素等からなる空気である。
【0105】
さらに、表面処理すべき支持体を加熱した状態でグロー処理を行うと短時間の処理で接着性が向上し、有効である。予熱温度は50℃以上Tg以下が好ましく、60℃以上Tg以下がより好ましく、70℃以上Tg以下がさらに好ましい。Tg以上の温度で予熱すると接着が悪化する。
【0106】
グロー処理時の真空度は0.005〜20Torrとするのが好ましい。より好ましくは0.02〜2Torrである。また、電圧は、500〜5000Vの間が好ましい。より好ましくは500〜3000Vである。使用する放電周波数は従来技術に見られるように、直流から数1000MHz、好ましくは50Hz〜20MHz、さらに好ましくは1KHz〜1MHzである。放電処理強度は、0.01KV・A・分/m2〜5KV・A・分/m2が好ましく、更に好ましくは0.15KV・A・分/m2〜1KV・A・分/m2で所望の接着性能が得られる。
【0107】
コロナ処理は、最もよく知られている方法であり、従来公知のいずれの方法、例えば特公昭48−5043号、同47−51905号、特開昭47−28067号、同49−83767号、同51−41770号、同51−131576号等に開示された方法により達成することができる。放電周波数は50Hz〜5000kHz、好ましくは5kHz〜数100kHzが適当である。被処理物の処理強度に関しては、0.001KV・A・分/m2〜5KV・A・分/m2、好ましくは0.01KV・A・分/m2〜1KV・A・分/m2が適当である。電極と誘電体ロールのギャップクリアランスは0.5〜2.5mm、好ましくは1.0〜2.0mmが適当である。
【0108】
紫外線処理は、特公昭43−2603号、特公昭43−2604号、特公昭45−3828号記載の処理方法によって行われるのが好ましい。水銀灯は石英管からなる高圧水銀灯、低圧水銀灯で、紫外線の波長が180〜380nmの間であるものが好ましい。
【0109】
紫外線照射の方法については、365nmを主波長とする高圧水銀ランプであれば、照射光量20〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは50〜2000(mJ/cm2)である。254nmを主波長とする低圧水銀ランプの場合には、照射光量100〜10000(mJ/cm2)がよく、より好ましくは200〜1500(mJ/cm2)である。
【0110】
火焔処理の方法は天然ガスでも液化プロパンガスでもかまわないが、空気との混合比が重要である。プロパンガスの場合は、プロパンガス/空気の好ましい混合比は、容積比で1/14〜1/22、好ましくは1/16〜1/19である。また、天然ガスの場合は、1/6〜1/10、好ましくは1/7〜1/9である。
【0111】
火焔処理は1〜50Kcal/m2、より好ましくは3〜30Kcal/m2の範囲で行うとよい。またバーナーの内炎の先端と支持体の距離を4cm未満にするとより効果的である。処理装置は春日電気(株)製フレーム処理装置を用いることができる。また、火焔処理時に支持体を支えるバックアップロールは中空型ロールで、冷却水を通して水冷し、常に一定温度で処理するのがよい。
【0112】
本発明における支持体は感熱もしくは熱現像記録材料の支持体として用いられる。感熱もしくは熱現像記録材料としては、有機銀塩を利用した熱画像形成システムが挙げられ、例えば、米国特許3152904号、同3457075号の各明細書およびB.シェリー(Shely) による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第2頁、1996年)に記載されている。特に、熱現像感光材料は、一般に、触媒活性量の光触媒(例、ハロゲン化銀)、還元剤、還元可能な銀塩として非感光性有機銀塩、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した感光性層を有している。熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。そのため、黒色の銀画像は、露光領域に形成される。
【0113】
本発明に用いることのできる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は銀イオンを還元できる源を含む任意の有機物質であってよい。このような非感光性の有機銀塩については、特開平10-62899号の段落番号0048〜0049、欧州特許公開第0803763A1号の第18ページ第24行〜第19ページ第37行に記載されている。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪カルボン酸の銀塩が好ましい。有機銀塩は、好ましくは画像形成層の約5〜70wt%を構成することができる。好ましい有機銀塩はカルボキシル基を有する有機化合物の銀塩を含む。これらの例は、脂肪族カルボン酸の銀塩および芳香族カルボン酸の銀塩を含むがこれらに限定されることはない。脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、リノール酸銀、酪酸銀及び樟脳酸銀、これらの混合物などを含む。
【0114】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はないが、本発明においてはりん片状の有機銀塩が好ましい。本発明において、りん片状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機酸銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機酸銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短かい方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
x=b/a
【0115】
このようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものをりん片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは20≧x(平均)≧2.0である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
【0116】
りん片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μm 以上0.23μm が好ましく0.1μm 以上0.20μm 以下がより好ましい。c/bの平均は好ましくは1以上6以下、より好ましくは1.05以上4以下、さらに好ましくは1.1以上3以下、特に好ましくは1.1以上2以下である。
【0117】
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。
【0118】
本発明に用いられる有機酸銀は、上記に示した有機酸のアルカリ金属塩(Na塩,K塩,Li塩等が挙げられる)溶液または懸濁液と硝酸銀を反応させることで調製される。本発明の有機酸アルカリ金属塩は、上記有機酸をアルカリ処理することによって得られる。本発明の有機酸銀は任意の好適な容器中で回文式または連続式で行うことができる。反応容器中の攪拌は粒子の要求される特性によって任意の攪拌方法で攪拌することができる。有機酸銀の調製法としては、有機酸アルカリ金属塩溶液あるいは懸濁液の入った反応容器に硝酸銀水溶液を徐々にあるいは急激に添加する方法、硝酸銀水溶液の入った反応容器に予め調製した有機酸アルカリ金属塩溶液あるいは懸濁液を徐々にあるいは急激に添加する方法、予め調製した硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液を反応容器中に同時に添加する方法のいずれもが好ましく用いることができる。
【0119】
硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液は調整する有機酸銀の粒子サイズ制御のために任意の濃度の物を用いることができ、また任意の添加速度で添加することができる。硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液の添加方法としては、添加速度一定で添加する方法、任意の時間関数による加速添加法あるいは減速添加法にて添加することができる。また反応液に対し、液面に添加してもよく、また液中に添加してもよい。予め調製した硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液を反応容器中に同時に添加する方法の場合には、硝酸銀水溶液あるいは有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液のいずれかを先行させて添加することもできるが、硝酸銀水溶液を先行させて添加することが好ましい。先行度としては総添加量の0から50%が好ましく、0から25%が特に好ましい。また特開平9-127643号公報等に記載のように反応中の反応液のpHないしは銀電位を制御しながら添加する方法も好ましく用いることができる。
【0120】
添加される硝酸銀水溶液や有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液は粒子の要求される特性によりpHを調整することができる。pH調整のために任意の酸やアルカリを添加することができる。また、粒子の要求される特性により、例えば調整する有機酸銀の粒子サイズの制御のため反応容器中の温度を任意に設定することができるが、添加される硝酸銀水溶液や有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液も任意の温度に調整することができる。有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液は液の流動性を確保するために、50℃以上に加熱保温することが好ましい。
【0121】
本発明に用いる有機酸銀は第3アルコールの存在下で調製されることが好ましい。本発明に用いる第3アルコールは総炭素数15以下の物が好ましく、10以下が特に好ましい。好ましい第3アルコールの例としては、tert-ブタノール等が挙げられるが、本発明はこれに限定されない。
【0122】
本発明に用いられる第3アルコールの添加時期は有機酸銀調整時のいずれのタイミングでも良いが、有機酸アルカリ金属塩の調製時に添加して、有機酸アルカリ金属塩を溶解して用いることが好ましい。また、本発明の第3アルコールの使用量は有機酸銀調製時の溶媒としてのH2Oに対して重量比で0.01〜10の範囲で任意に使用することができるが、0.03〜1の範囲が好ましい。
【0123】
本発明において好ましいりん片状の有機酸銀塩は、水溶性銀塩を含む水溶液と有機酸アルカリ金属塩を含む第3アルコール水溶液とを反応容器内で反応させる(反応容器内の液に有機酸アルカリ金属塩を含む第3アルコール水溶液を添加する工程を含む。)際に、反応容器内の液(好ましくは、先行して入れた水溶性銀塩を含む水溶液、または水溶性銀塩を含む水溶液を先行することなく有機酸アルカリ金属塩を含む第3アルコール水溶液とはじめから同時に添加する場合は、後述のように、水もしくは水と第3アルコールとの混合溶媒であり、水溶性銀塩を含む水溶液を先行して入れる場合においても水または水と第3アルコールとの混合溶媒をあらかじめ入れておいてもよい。)と添加する有機酸アルカリ金属塩を含む第3アルコール水溶液との温度差を20℃以上85℃以下とする方法で製造されることが好ましい。
【0124】
このような温度差を有機酸アルカリ金属塩を含む第3アルコール水溶液の添加中にて維持することによって、有機酸銀塩の結晶形態等が好ましく制御される。
【0125】
この水溶性銀塩としては硝酸銀が好ましく、水溶液における水溶性銀塩濃度としては、0.03mol/l以上6.5mol/l以下が好ましく、より好ましくは、0.1mol/l以上5mol/l以下であり、この水溶液のpHとしては2以上6以下が好ましく、より好ましくはpH3.5以上6以下である。
【0126】
また、炭素数4〜6の第3アルコールが含まれていてもよく、その場合は水溶性銀塩の水溶液の全体積に対し、体積として70%以下であり、好ましくは50%以下である。また、その水溶液の温度としては0℃以上50℃以下が好ましく、5℃以上30℃以下がより好ましく、後述のように、水溶性銀塩を含む水溶液と有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液を同時添加する場合は、5℃以上15℃以下が最も好ましい。
【0127】
有機酸アルカリ金属塩のアルカリ金属は、具体的にはNa、Kである。有機酸アルカリ金属塩は、有機酸にNaOHまたはKOHを添加することにより調製される。このとき、アルカリの量を有機酸の等量以下にして、未反応の有機酸を残存させることが好ましい。この場合の、残存有機酸量は全有機酸1molに対し3mol%以上50mol%以下であり、好ましくは3mol%以上30mol%以下である。また、アルカリを所望の量以上に添加した後に、硝酸、硫酸等の酸を添加し、余剰のアルカリ分を中和させることで調製してもよい。
【0128】
また、有機酸銀塩の要求される特性によりpHを調節することができる。pH調節のためには、任意の酸やアルカリを使用することができる。
【0129】
さらに、本発明に用いる水溶性銀塩を含む水溶液、有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液、あるいは反応容器の液には、例えば特開昭62−65035号の一般式(1)で示されるような化合物、また、特開昭62−150240号に記載のような、水溶性基含有Nヘテロ環化合物、特開昭50−101019号記載のような無機過酸化物、特開昭51−78319号記載のようなイオウ化合物、特開昭57−643号記載のジスルフィド化合物、また過酸化水素等を添加することができる。
【0130】
本発明の有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液としては、液の均一性を得るため炭素数4〜6の第3アルコールと水との混合溶媒であることが好ましい。炭素数がこれを越えると水との相溶性が無く好ましくない。炭素数4〜6の第3アルコールの中でも、最も水との相溶性のあるtert−ブタノールが最も好ましい。第3アルコール以外の他のアルコールは還元性を有し、有機酸銀塩形成時に弊害を生じるため先に述べたように好ましくない。有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液に併用される第3アルコール量は、この第3アルコール水溶液中の水分の体積に対し、溶媒体積として3%以上70%以下であり、好ましくは5%以上50%以下である。
【0131】
本発明に用いる有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液における有機酸アルカリ金属塩の濃度は、重量比として、7wt%以上50wt%以下であり、好ましくは、7wt%以上45wt%以下であり、さらに好ましくは、10wt%以上40wt%以下である。
【0132】
本発明の反応容器に添加する有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液の温度としては、有機酸アルカリ金属塩の結晶化、固化の現象を避けるに必要な温度に保っておく目的で50℃以上90℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以上85℃以下がより好ましく、65℃以上85℃以下が最も好ましい。また、反応の温度を一定にコントロールするために上記範囲から選ばれるある温度で一定にコントロールされることが好ましい。
【0133】
本発明の有機酸銀塩は、i)水溶性銀塩を含む水溶液が先に反応容器に全量存在する水溶液中に有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液をシングル添加する方法か、またはii)水溶性銀塩の水溶液と有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液が、反応容器に同時に添加される時期が存在する方法(同時添加法)によって製造される。本発明においては、有機酸銀塩の平均粒子サイズをコントロールし、分布を狭くする点で後者の同時に添加される方法が好ましい。その場合、総添加量の30vol%以上が同時に添加されることが好ましく、より好ましくは50〜75vol%が同時に添加されることである。いずれかを先行して添加する場合は水溶性銀塩の溶液を先行させる方が好ましい。
【0134】
いずれの場合においても、反応容器中の液(前述のように先行して添加された水溶性銀塩の水溶液または先行して水溶性銀塩の水溶液を添加しない場合には、後述のようにあらかじめ反応容器中に入れられている溶媒をいう。)の温度は、好ましくは5℃以上75℃以下、より好ましくは5℃以上60℃以下、最も好ましくは10℃以上50℃以下である。反応の全行程にわたって前記温度から選ばれるある一定の温度にコントロールされることが好ましいが、前記温度範囲内でいくつかの温度パターンでコントロールすることも好ましい。
【0135】
本発明において、有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液と反応容器中の液との温度の温度差は、20℃以上85℃以下が好ましく、より好ましくは30℃以上80℃以下である。この場合有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液の温度の方が高いことが好ましい。
【0136】
これにより、高温の有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液が反応容器で急冷されて微結晶状に析出する速度と、水溶性銀塩との反応で有機酸銀塩化する速度が好ましく制御され、有機酸銀塩の結晶形態、結晶サイズ、結晶サイズ分布を好ましく制御することができる。また同時に熱現像材料、特に熱現像感光材料として性能をより向上させることができる。
【0137】
反応容器中には、あらかじめ溶媒を含有させておいてもよく、あらかじめ入れられる溶媒には水が好ましく用いられるが、前記第3アルコールとの混合溶媒も好ましく用いられる。
【0138】
本発明の有機酸アルカリ金属の第3アルコール水溶液、水溶性銀塩の水溶液、あるいは反応液には水性媒体可溶な分散助剤を添加することができる。分散助剤としては、形成した有機酸銀塩を分散可能なものであればいずれのものでもよい。具体的な例は、後述の有機酸銀塩の分散助剤の記載に準じる。
【0139】
本発明の有機酸銀塩調製法において、銀塩形成後に脱塩・脱水工程を行うことが好ましい。その方法は特に制限はなく、周知・慣用の手段を用いることができる。例えば、遠心濾過、吸引濾過、限外濾過、凝集法によるフロック形成水洗等の公知の濾過方法、また、遠心分離沈降による上澄み除去等も好ましく用いられる。脱塩・脱水は1回でもよいし、複数繰り返してもよい。水の添加および除去を連続的に行ってもよいし、個別に行ってもよい。脱塩・脱水は最終的に脱水された水の伝導度が好ましくは300μS/cm以下、より好ましくは100μS/cm以下、最も好ましくは60μS/cm以下になる程度に行う。この場合の伝導度の下限に特に制限はないが、通常5μS/cm程度である。
【0140】
さらに、熱現像材料、特に熱現像感光材料の塗布面状を良好にするためには、有機酸銀塩の水分散物を得、これを高圧で高速流に変換し、その後圧力降下することによって再分散し、微細水分散物とすることが好ましい。この場合の分散媒は水のみであることが好ましいが、20wt% 以下であれば有機溶媒を含んでいてもよい。
【0141】
有機酸銀塩を微粒子分散化する方法は、分散助剤の存在下で公知の微細化手段(例えば、高速ミキサー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、バンバリーミキサー、ホモミキサー、ニーダー、ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミル、トロンミル、高速ストーンミル)を用い、機械的に分散することができる。
【0142】
分散時に、感光性銀塩を共存させると、カブリが上昇し、感度が著しく低下するため、分散時には感光性銀塩を実質的に含まないことがより好ましい。本発明は、分散される水分散液中での感光性銀塩量は、その液中の有機酸銀塩1molに対し0.1mol%以下であり、積極的な感光性銀塩の添加は行わないものである。
【0143】
本発明において、高S/Nで、粒子サイズが小さく、凝集のない均一な有機銀塩固体分散物を得るには画像形成媒体である有機銀塩粒子の破損や高温化を生じさせない範囲で、大きな力を均一に与えることが好ましい。そのためには有機銀塩及び分散剤水溶液からなる水分散物を高速流に変換した後、圧力降下させる分散法が好ましい。
【0144】
本発明において、上記のような再分散法を実施するのに用いられる分散装置およびその技術については、例えば「分散系レオロジーと分散化技術」(梶内俊夫、薄井洋基 著、1991、信山社出版(株)、p357〜403)、「化学工学の進歩 第24集」(社団法人 化学工学会東海支部 編、1990、槙書店、p184〜185)、特開昭59−49832号、米国特許4533254号、特開平8−137044号、特開平8−238848号、特開平2−261525号、特開平1−94933号等に詳しいが、本発明での再分散法は、少なくとも有機酸銀塩を含む水分散液を高圧ポンプ等で加圧して配管内に送入した後、配管内に設けられた細いスリットを通過させ、この後に分散液に急激な圧力低下を生じさせることにより微細な分散を行う方法である。
【0145】
本発明が関連する高圧ホモジナイザーについては、一般には(a)分散質が狭間隙(75μm 〜350μm 程度)を高圧、高速で通過する際に生じる「せん断力」、(b)高圧化の狭い空間で液-液衝突、あるいは壁面衝突させるときに生じる衝撃力は変化させずにその後の圧力降下によるキャビテーション力をさらに強くし、均一で効率の良い分散が行われると考えられている。この種の分散装置としては、古くはゴーリンホモジナイザーが挙げられるが、この装置では、高圧で送られた被分散液が円柱面上の狭い間隙で高速流に変換され、その勢いで周囲の壁面に衝突し、その衝撃力で乳化・分散が行われる。上記液−液衝突としては、マイクロフルイダイザーのY型チャンバー、後述の特開平8-103642号に記載のような球形型の逆止弁を利用した球形チャンバーなどがあげられ、液−壁面衝突としては、マイクロフルイダイザーのZ型チャンバー等があげられる。使用圧力は一般には100〜600kg/cm2、流速は数m〜30m/秒の範囲であり、分散効率を上げるために高速流部を鋸刃状にして衝突回数を増やすなどの工夫を施したものも考案されている。このような装置の代表例としてゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション社製のマイクロフルイダイザー、みづほ工業(株)製のマイクロフルイダイザー、特殊機化工業(株)製のナノマイザー等があげられる。特開平8-238848号、同8-103642号、USP4533254にも記載されている。
【0146】
本発明の有機酸銀塩においては、流速、圧力降下時の差圧と処理回数の調節によって、所望の粒子サイズに分散することができるが、写真特性と粒子サイズの点から、流速が200m/秒〜600m/秒、圧力降下時の差圧が900〜3000kg/cm2の範囲が好ましく、さらに流速が300m/秒〜600m/秒、圧力降下時の差圧が1500〜3000kg/cm2の範囲であることがより好ましい。分散処理回数は必要に応じて選択できる。通常は1〜10回の範囲が選ばれるが、生産性の観点で1〜3回程度が選ばれる。高圧下でこのような水分散液を高温にすることは、分散性・写真性の観点で好ましくなく、90℃を越えるような高温では粒子サイズが大きくなりやすくなるとともに、カブリが高くなる傾向がある。従って、本発明では、前記の高圧、高速流に変換する前の工程もしくは、圧力降下させた後の工程、あるいはこれら両工程に冷却装置を含み、このような水分散の温度が冷却工程により5℃〜90℃の範囲に保たれていることが好ましく、さらに好ましくは5℃〜80℃の範囲、特に5℃〜65℃の範囲に保たれていることが好ましい。特に、1500〜3000kg/cm2の範囲の高圧の分散時には、前記の冷却工程を設置することが有効である。冷却装置は、その所要熱交換量に応じて、2重管や3重管にスタチックミキサーを使用したもの、多管式熱交換器、蛇管式熱交換器等を適宜選択することができる。また、熱交換の効率を上げるために、使用圧力を考慮して、管の太さ、肉厚や材質などの好適なものを選べばよい。冷却器に使用する冷媒は、熱交換量から、20℃の井水や冷凍機で処理した5〜10℃の冷水、また、必要に応じて−30℃のエチレングリコール/水等の冷媒を使用することができる。
【0147】
有機酸銀塩を分散剤を使用して固体微粒子化する際には、例えば、ポリアクリル酸、アクリル酸の共重合体、マレイン酸共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸共重合体、などの合成アニオンポリマー、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルセルロースなどの半合成アニオンポリマー、アルギン酸、ペクチン酸などのアニオン性ポリマー、特開昭52-92716号、WO88/04794号などに記載のアニオン性界面活性剤、特願平7-350753号に記載の化合物、あるいは公知のアニオン性、ノニオン性、カチオン性界面活性剤や、その他ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の公知のポリマー、或いはゼラチン等の自然界に存在する高分子化合物を適宜選択して用いることができる。
【0148】
分散助剤は、分散前に有機酸銀塩の粉末またはウェットケーキ状態の有機酸銀塩と混合し、スラリーとして分散機に送り込むのは一般的な方法であるが、予め有機酸銀塩と混ぜ合わせた状態で熱処理や溶媒による処理を施して有機酸銀塩粉末またはウェットケーキとしても良い。分散前後または分散中に適当なpH調整剤によりpHコントロールしても良い。
【0149】
機械的に分散する以外にも、pHコントロールすることで溶媒中に粗分散し、その後、分散助剤の存在下でpHを変化させて微粒子化させても良い。このとき、粗分散に用いる溶媒として有機酸溶媒を使用しても良く、通常有機溶媒は微粒子化終了後除去される。
【0150】
調製された分散物は、保存時の微粒子の沈降を抑える目的で撹拌しながら保存したり、親水性コロイドにより粘性の高い状態(例えば、ゼラチンを使用しゼリー状にした状態)で保存したりすることもできる。また、保存時の雑菌などの繁殖を防止する目的で防腐剤を添加することもできる。
【0151】
本発明の有機酸銀塩の調製法にて調製された有機酸銀塩は、水溶媒中で分散された後、感光性銀塩水溶液と混合して感光性画像形成媒体塗布液として供給されることが好ましい。
【0152】
分散操作に先だって、原料液は、粗分散(予備分散)される。粗分散する手段としては公知の分散手段(例えば、高速ミキサー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、バンバリーミキサー、ホモミキサー、ニーダー、ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミル、トロンミル、高速ストーンミル)を用いることができる。機械的に分散する以外にも、pHコントロールすることで溶媒中に粗分散し、その後、分散助剤の存在下でpHを変化させて微粒子化させても良い。このとき、粗分散に用いる溶媒として有機溶媒を使用しても良く、通常有機溶媒は微粒子化終了後除去される。
【0153】
感光性銀塩水溶液は、微細分散された後に混合され、感光性画像形成媒体塗布液を製造する。このような塗布液を用いて熱現像感光材料を作製するとヘイズが低く、低カブリで高感度の熱現像感光材料が得られる。これに対し、高圧、高速流に変換して分散する時に、感光性銀塩を共存させると、カブリが上昇し、感度が著しく低下する。また、分散媒として水ではなく、有機溶剤を用いると、ヘイズが高くなり、カブリが上昇し、感度が低下しやすくなる。一方、感光性銀塩水溶液を混合する方法にかえて、分散液中の有機銀塩の一部を感光性銀塩に変換するコンバージョン法を用いると感度が低下する。
【0154】
上記において、高圧、高速化に変換して分散される水分散液は、実質的に感光性銀塩を含まないものであり、その含有量は非感光性の有機銀塩に対して0.1モル%以下であり、積極的な感光性銀塩の添加は行わないものである。
【0155】
本発明の有機銀塩固体微粒子分散物の粒子サイズ(体積荷重平均直径)は、例えば液中に分散した固体微粒子分散物にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積荷重平均直径)から求めることができる。平均粒子サイズ0.05μm以上10.0μm以下の固体微粒子分散物が好ましい。より好ましくは平均粒子サイズ0.1μm以上5.0μm以下、更に好ましくは平均粒子サイズ0.1μm以上2.0μm以下である。
【0156】
本発明に用いる有機銀塩固体微粒子分散物は、少なくとも有機銀塩と水から成るものである。有機銀塩と水との割合は特に限定されるものではないが、有機銀塩の全体に占める割合は5〜50wt%であることが好ましく、特に10〜30wt%の範囲が好ましい。前述の分散助剤を用いることは好ましいが、粒子サイズ#を最小にするのに適した範囲で最少量使用するのが好ましく、有機銀塩に対して1〜30wt%、特に3〜15wt%の範囲が好ましい。
【0157】
本発明では有機銀塩水分散液と感光性銀塩水分散液を混合して感光材料を製造することが可能であるが、有機銀塩と感光性銀塩の混合比率は目的に応じて選べるが、有機銀塩に対する感光性銀塩の割合は1〜30モル%の範囲が好ましく、更に3〜20モル%、特に5〜15モル%の範囲が好ましい。混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。
【0158】
本発明の有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜3g/m2である。
【0159】
本発明の熱画像形成材料には有機銀塩のための還元剤を含む。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質、好ましくは有機物質であってよい。フェニドン、ハイドロキノンおよびカテコールなどの従来の写真現像剤は有用であるが、ヒンダードフェノール還元剤(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール)、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン)が好ましい。このような還元剤は、特開平10-62899号の段落番号0052〜0053や、欧州特許公開第0803764A1号の第7ページ第34行〜第18ページ第12行に記載されている。
【0160】
還元剤の添加量は0.01〜5.0g/m2であることが好ましく、0.1〜3.0g/m2であることがより好ましく、画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5〜50%モル含まれることが好ましく、10〜40モル%で含まれることがさらに好ましい。還元剤の添加層は画像形成層を有する面のいかなる層でも良い。画像形成層以外の層に添加する場合は銀1モルに対して10〜50モル%と多めに使用することが好ましい。また、還元剤は現像時のみ有効に機能を持つように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
【0161】
本発明の還元剤は、溶液、粉末、固体微粒子分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0162】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができる。粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。構造として好ましくいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。また塩化銀または塩臭化銀粒子の表面に臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0163】
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。感光性ハロゲン化銀の粒子サイズは、画像形成後の白濁を低く抑える目的のために小さいことが好ましく具体的には0.20μm以下、より好ましくは0.01μm以上0.15μm以下、更に好ましくは0.02μm以上0.12μm以下がよい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合にはハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。その他正常晶でない場合、たとえば球状粒子、棒状粒子等の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。
【0164】
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子、平板状粒子が好ましい。平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比として好ましい値は100:1〜2:1、より好ましくは50:1〜3:1である。さらに、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い[100]面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数[100]面の比率は増感色素の吸着における[111]面と[100]面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
【0165】
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体を含有する。周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくはロジウム、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10-9モルから1×10-3モルの範囲が好ましく、1×10-8モルから1×10-4モルの範囲がより好ましい。具体的な金属錯体の構造としては特開平7-225449号等に記載された構造の金属錯体を用いることができる。
【0166】
本発明に用いられるロジウム化合物としては、水溶性ロジウム化合物を用いることができる。たとえば、ハロゲン化ロジウム(III)化合物、またはロジウム錯塩で配位子としてハロゲン、アミン類、オキザラト等を持つもの、たとえば、ヘキサクロロロジウム(III)錯塩、ペンタクロロアコロジウム(III)錯塩、テトラクロロジアコロジウム(III)錯塩、ヘキサブロモロジウム(III)錯塩、ヘキサアンミンロジウム(III)錯塩、トリザラトロジウム(III)錯塩等が挙げられる。これらのロジウム化合物は、水あるいは適当な溶媒に溶解して用いられるが、ロジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行われる方法、すなわち、ハロゲン化水素水溶液(たとえば塩酸、臭酸、フッ酸等)、あるいはハロゲン化アルカリ(たとえばKCl、NaCl、KBr、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性ロジウムを用いる代わりにハロゲン化銀調製時に、あらかじめロジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。
【0167】
これらのロジウム化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り1×10-8モル〜5×10-6モルの範囲が好ましく、特に好ましくは5×10-8モル〜1×10-6モルである。
【0168】
これらの化合物の添加は、ハロゲン化銀乳剤粒子の製造時および乳剤を塗布する前の各段階において適宜行うことができるが、特に乳剤形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましい。
【0169】
本発明に用いられるレニウム、ルテニウム、オスミウムは特開昭63-2042号、特開平1-285941号、同2-20852号、同2-20855号等に記載された水溶性錯塩の形で添加される。特に好ましいものとして、以下の式で示される六配位錯体が挙げられる。
[ML6]n-
ここでMはRu、ReまたはOsを表し、Lは配位子を表し、nは0、1、2、3または4を表す。
【0170】
この場合、対イオンは重要性を持たず、アンモニウムもしくはアルカリ金属イオンが用いられる。
【0171】
また好ましい配位子としてはハロゲン化物配位子、シアン化物配位子、シアン酸化物配位子、ニトロシル配位子、チオニトロシル配位子等が挙げられる。以下に本発明に用いられる具体的錯体の例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0172】
[ReCl6]3-、[ReBr6]3-、[ReCl5(NO)]2-、[Re(NS)Br5]2-、[Re(NO)(CN)5]2-、[Re(O)2(CN)4]3-、[RuCl6]3-、[RuCl4(H2O)2]-、[RuCl5(H2O)]2-、[RuCl5(NO)]2-、[RuBr5(NS)]2-、[Ru(CO)3Cl3]2-、[Ru(CO)Cl5]2-、[Ru(CO)Br5]2-、[OsCl6]3-、[OsCl5(NO)]2-、[Os(NO)(CN)5]2-、[Os(NS)Br5]2-、[Os(O)2(CN)4]4-
【0173】
これらの化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り1×10-9モル〜1×10-5モルの範囲が好ましく、特に好ましくは1×10-8モル〜1×10-6モルである。
【0174】
これらの化合物の添加は、ハロゲン化銀乳剤粒子の製造時および乳剤を塗布する前の各段階において適宜行うことができるが、特に乳剤形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましい。
【0175】
これらの化合物をハロゲン化銀の粒子形成中に添加してハロゲン化銀粒子中に組み込むには、金属錯体の粉末もしくはNaCl、KClと一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性塩または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、あるいは銀塩とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、あるいは粒子形成中に必要量の金属錯体の水溶液を反応容器に投入する方法などがある。特に粉末もしくはNaCl、KClと一緒に溶解した水溶液を、水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。
【0176】
粒子表面に添加するには、粒子形成直後または物理熟成時途中もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属錯体の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0177】
本発明で用いられるイリジウム化合物としては種々のものを使用できるが、例えばヘキサクロロイリジウム、ヘキサアンミンイリジウム、トリオキザラトイリジウム、ヘキサシアノイリジウム、ペンタクロロニトロシルイリジウム等が挙げられる。これらのイリジウム化合物は、水あるいは適当な溶媒に溶解して用いられるが、イリジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行われる方法、すなわち、ハロゲン化水素水溶液(例えば塩酸、臭酸、フッ酸等)、あるいはハロゲン化アルカリ(例えばKCl、NaCl、KBr、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性イリジウムを用いる代わりにハロゲン化銀調製時に、あらかじめイリジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。これらイリジウム化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当たり1×10-8モル〜1×10-3モルの範囲が好ましく、1×10-7モル〜5×10-4モルの範囲がより好ましい。
【0178】
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に、コバルト、鉄、ニッケル、クロム、パラジウム、白金、金、タリウム、銅、鉛、等の金属原子を含有してもよい。コバルト、鉄、クロム、さらにルテニウムの化合物については六シアノ金属錯体を好ましく用いることができる。具体例としては、フェリシアン酸イオン、フェロシアン酸イオン、ヘキサシアノコバルト酸イオン、ヘキサシアノクロム酸イオン、ヘキサシアノルテニウム酸イオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ハロゲン化銀中の金属錯体の含有相は均一でも、コア部に高濃度に含有させてもよく、あるいはシェル部に高濃度に含有させてもよく特に制限はない。
【0179】
上記金属はハロゲン化銀1モルあたり1×10-9〜1×10-4モルが好ましい。また、上記金属を含有せしめるには単塩、複塩、または錯塩の形の金属塩にして粒子調製時に添加することができる。
【0180】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0181】
本発明のハロゲン化銀乳剤に金増感を施す場合に用いられる金増感剤としては、金の酸化数が+1価でも+3価でもよく、金増感剤として通常用いられる金化合物を用いることができる。代表的な例としては塩化金酸、カリウムクロロオーレート、オーリックトリクロライド、カリウムオーリックチオシアネート、カリウムヨードオーレート、テトラシアノオーリックアシド、アンモニウムオーロチオシアネート、ピリジルトリクロロゴールドなどがあげられる。
【0182】
金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当り1×10-7モル以上1×10-3モル以下、より好ましくは1×10-6モル以上5×10-4以下である。
【0183】
本発明のハロゲン化銀乳剤は金増感と他の化学増感とを併用することが好ましい。他の化学増感の方法としては、硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、貴金属増感法などの知られている方法を用いることができる。金増感法と組み合わせて使用する場合には、例えば、硫黄増感法と金増感法、セレン増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法と金増感法、硫黄増感法とテルル増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法とテルル増感法と金増感法などが好ましい。
【0184】
本発明に好ましく用いられる硫黄増感は、通常、硫黄増感剤を添加して、40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。硫黄増感剤としては公知の化合物を使用することができ、例えば、ゼラチン中に含まれる硫黄化合物のほか、種々の硫黄化合物、例えばチオ硫酸塩、チオ尿素類、チアゾール類、ローダニン類等を用いることができる。好ましい硫黄化合物は、チオ硫酸塩、チオ尿素化合物である。硫黄増感剤の添加量は、化学熟成時のpH、温度、ハロゲン化銀粒子の大きさなど種々の条件下で変化するが、ハロゲン化銀1モル当り1×10-7〜1×10-2モルであり、より好ましくは1×10-5〜1×10-3モルである。
【0185】
本発明に用いられるセレン増感剤としては、公知のセレン化合物を用いることができる。すなわち、通常、不安定型および/または非不安定型セレン化合物を添加して40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。不安定型セレン化合物としては特公昭44-15748号、同43-13489号、特開平4-25832号、同4-109240号、同3-121798号等に記載の化合物を用いることができる。特に特開平4-324855号中の一般式(VIII)および(IX)で示される化合物を用いることが好ましい。
【0186】
本発明に用いられるテルル増感剤は、ハロゲン化銀粒子表面または内部に、増感核になると推定されるテルル化銀を生成させる化合物である。ハロゲン化銀乳剤中のテルル化銀生成速度については特開平5-313284号に記載の方法で試験することができる。テルル増感剤としては例えばジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)テルリド類、ビス(カルバモイル)テルリド類、ジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)ジテルリド類、ビス(カルバモイル)ジテルリド類、P=Te結合を有する化合物、テルロカルボン酸塩類、Te-オルガニルテルロカルボン酸エステル類、ジ(ポリ)テルリド類、テルリド類、テルロール類、テルロアセタール類、テルロスルホナート類、P-Te結合を有する化合物、含Teヘテロ環類、テルロカルボニル化合物、無機テルル化合物、コロイド状テルルなどを用いることができる。具体的には、米国特許第1,623,499号、同第3,320,069号、同第3,772,031号、英国特許第235,211号、同第1,121,496号、同第1,295,462号、同第1,396,696号、カナダ特許第800,958号、特開平4-204640号、同3-53693号、同3-131598号、同4-129787号、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・ケミカル・コミュニケーション(J. Chem. Soc. Chem. Commun.), 635(1980)、ibid ,1102(1979)、ibid ,645(1979)、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・パーキン・トランザクション1(J.Chem.Soc.Perkin.Trans.1),2191(1980)、S.パタイ(S.Patai)編、ザ・ケミストリー・オブ・オーガニック・セレニウム・アンド・テルリウム・カンパウンズ(The Chemistry of Organic Serenium and Tellunium Compounds),Vol 1(1986)、同 Vol 2(1987)に記載の化合物を用いることができる。特に特開平5-313284号中の一般式(II)、(III)、(IV)で示される化合物が好ましい。
【0187】
本発明で用いられるセレンおよびテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、一般にハロゲン化銀1モル当たり1×10-8〜1×10-2モル、好ましくは1×10-7〜1×10-3モル程度を用いる。本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、好ましくは7〜10であり、温度としては40〜95℃、好ましくは45〜85℃である。
【0188】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤にはハロゲン化銀粒子の形成または物理熟成の過程においてカドミウム塩、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩などを共存させてもよい。
【0189】
本発明においては、還元増感を用いることができる。還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。また、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することができる。
【0190】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、欧州特293,917号に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
【0191】
本発明に用いられる感光材料中のハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。
【0192】
感光性ハロゲン化銀の添加量は、感材1m2当たりの塗布量で示して、0.03〜0.6g/m2であることが好ましく、0.05〜0.4g/m2であることがさらに好ましく、0.1〜0.4g/m2であることが最も好ましく、有機銀塩1モルに対しては、感光性ハロゲン化銀0.01モル以上0.5モル以下が好ましく、0.02モル以上0.3モル以下がより好ましく、0.03モル以上0.25モル以下が特に好ましい。
【0193】
別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0194】
本発明のハロゲン化銀の熱現像記録層(以下、画像形成層ということあり)塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前にであるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳"液体混合技術"(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0195】
本発明においては、感熱記録層、熱現像記録層(好ましくは有機銀塩含有層)、が溶媒の30wt%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成される。さらに有機銀塩含有層のバインダーがポリマーラテックス由来のバインダーであり、該ポリマーが水系溶媒(水溶媒)に分散可能で、特に25℃60%RHでの平衡含水率が2wt%以下のポリマーのラテックスからなる場合に向上する。最も好ましい形態は、イオン伝導度が2.5mS/cm以下になるように調製されたものであり、このような調製法としてポリマー合成後分離機能膜を用いて精製処理する方法が挙げられる。
【0196】
ここでいう前記ポリマーが分散可能である水系溶媒とは、水または水に70wt%以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルミアミドなどを挙げることができる。
【0197】
なお、ポリマーが熱力学的に溶解しておらず、いわゆる分散状態で存在している系の場合にも、ここでは水系溶媒という言葉を使用する。
【0198】
また「25℃60%RHにおける平衡含水率」とは、25℃60%RHの雰囲気下で調湿平衡にあるポリマーの重量W1と25℃で絶乾状態にあるポリマーの重量W0を用いて以下のように表すことができる。
25℃60%RHにおける平衡含水率=[(W1-W0)/W0]×100(wt%)
【0199】
含水率の定義と測定法については、例えば高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)を参考にすることができる。
【0200】
本発明のバインダーポリマーの25℃60%RHにおける平衡含水率は2wt%以下であることが好ましいが、より好ましくは0.01wt%以上1.5wt%以下、さらに好ましくは0.02wt%以上1wt%以下が望ましい。
【0201】
本発明においては水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。
【0202】
分散状態の例としては、固体ポリマーの微粒子が分散しているラテックスである
【0203】
本発明において好ましい態様としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ゴム系樹脂(例えばSBR樹脂)、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。ポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよい。ポリマーとしては単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。ポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000、好ましくは10000〜200000がよい。分子量が小さすぎるものは乳剤層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。
【0204】
前記「水系溶媒」とは、組成の30wt%以上が水である分散媒をいう。分散状態としては乳化分散したもの、ミセル分散したもの、更に分子中に親水性部位を持ったポリマーを分子状態で分散したものなど、どのようなものでもよいが、これらのうちでラテックスが特に好ましい。
【0205】
好ましいポリマーの具体例としては以下のものを挙げることができる。以下では原料モノマーを用いて表し、括弧内の数値はwt%、分子量は数平均分子量である。
【0206】
P-1;-MMA(70)-EA(27)-MAA(3)-のラテックス(分子量37000)
P-2;-MMA(70)-2EHA(20)-St(5)-AA(5)-のラテックス(分子量40000)
P-3;-St(50)-Bu(47)-MAA(3)-のラテックス(分子量45000)
P-4;-St(68)-Bu(29)-AA(3)-のラテックス(分子量60000)
P-5;-St(70)-Bu(27)-IA(3)-のラテックス(分子量120000)
P-6;-St(75)-Bu(24)-AA(1)-のラテックス(分子量108000)
P-7;-St(60)-Bu(35)-DVB(3)-MAA(2)-のラテックス(分子量150000)
P-8;-St(70)-Bu(25)-DVB(2)-AA(3)-のラテックス(分子量280000)
P-9;-VC(50)-MMA(20)-EA(20)-AN(5)-AA(5)-のラテックス(分子量80000)
P-10;-VDC(85)-MMA(5)-EA(5)-MAA(5)-のラテックス(分子量67000)
P-11;-Et(90)-MAA(10)-のラテックス(分子量12000)
P-12;-St(70)-2EHA(27)-AA(3)のラテックス(分子量130000)
P-13;-MMA(63)-EA(35)-AA(2)のラテックス(分子量33000)
【0207】
上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA;メチルメタクリレート,EA;エチルアクリレート、MAA;メタクリル酸,2EHA;2エチルヘキシルアクリレート,St;スチレン,Bu;ブタジエン,AA;アクリル酸,DVB;ジビニルベンゼン,VC;塩化ビニル,AN;アクリロニトリル,VDC;塩化ビニリデン,Et;エチレン,IA;イタコン酸。
【0208】
以上に記載したポリマーは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル樹脂の例としては、セビアンA-4635,46583,4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリエステル樹脂の例としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD-size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリウレタン樹脂の例としては、HYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム系樹脂の例としては、LACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、Nipol Lx416、410、438C、2507(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニル樹脂の例としては、G351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニリデン樹脂の例としては、L502、L513(以上旭化成工業(株)製)など、オレフィン樹脂の例としては、ケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。
【0209】
これらのポリマーはポリマーラテックスとして単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。
【0210】
本発明に用いられるポリマーラテックスとしては、特に、スチレン-ブタジエン共重合体のラテックスが好ましい。スチレン-ブタジエン共重合体におけるスチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との重量比は40:60〜95:5であることが好ましい。また、スチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との共重合体に占める割合は60〜99wt%であることが好ましい。好ましい分子量の範囲は前記と同様である。
【0211】
本発明に用いることが好ましいスチレン-ブタジエン共重合体のラテックスとしては、前記のP-3〜P-8、市販品であるLACSTAR-3307B、7132C、Nipol Lx416等が挙げられる。
【0212】
本発明の感光材料の有機銀塩含有層には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は有機銀塩含有層の全バインダーの30wt%以下、より好ましくは20wt%以下が好ましい。
【0213】
本発明の有機銀塩含有層は、ポリマーラテックスとを用いて形成されたものであるが、有機銀塩含有層のバインダーの量は、全バインダー/有機銀塩の重量比が1/10〜10/1、更には1/5〜4/1の範囲が好ましい。
【0214】
また、このような有機銀塩含有層は、通常、感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光層(乳剤層)でもあり、このような場合の、全バインダー/ハロゲン化銀の重量比は400〜5、より好ましくは200〜10の範囲が好ましい。
【0215】
本発明の画像形成層の全バインダー量は0.2〜30g/m2、より好ましくは1〜15g/m2の範囲が好ましい。本発明の画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0216】
本発明において感光材料の有機銀塩含有層塗布液の溶媒(ここでは簡単のため、溶媒と分散媒をあわせて溶媒と表す)は、水を30wt%以上含む水系溶媒である。水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなど任意の水混和性有機溶媒を用いてよい。塗布液の溶媒の水含有率は50wt%以上、より好ましくは70wt%以上が好ましい。好ましい溶媒組成の例を挙げると、水/メチルアルコール=90/10、水/メチルアルコール=70/30、水/メチルアルコール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メチルアルコール/エチルセルソルブ=85/10/5、水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール=85/10/5などがある。
【0217】
本発明における増感色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので有ればいかなるものでも良い。増感色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロホーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。本発明に使用される有用な増感色素は例えばRESEARCH DISCLOSURE Item17643IV-A項(1978年12月p.23)、同Item1831X項(1979年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種レーザーイメージャー、スキャナー、イメージセッターや製版カメラの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。
【0218】
増感色素は、特開平10-62899号の段落番号0056〜0066、特開平10-186572号一般式(II)で表される化合物、欧州特許公開第0803764A1号の第19ページ第38行〜第20ページ第35行に記載されている。増感色素としては、カルボン酸基を有する色素(例としては特開平3-163440号、6-301141号、米国特許5,441,899号に記載された色素)、メロシアニン色素、多核メロシアニン色素や多核シアニン色素(特開昭47-6329号、同49-105524号、同51-127719号、同52-80829号、同54-61517号、同59-214846号、同60-6750号、同63-159841号、特開平6-35109号、同6-59381号、同7-146537号、同7-146537号、特表平5-550111号、英国特許1,467,638号、米国特許5,281,515号に記載された色素)、また、J-bandを形成する色素(米国特許5,510,236号、同3,871,887号の実施例5記載の色素、特開平2-96131号、特開昭59-48753号)が本発明に好ましく用いることができる。
【0219】
これらの増感色素は単独に用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。増感色素の組合せは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せ及び強色増感を示す物質はResearch Disclosure 176巻17643(1978年12月発行)第23頁IVのJ項、あるいは特公昭49-25500号、同43-4933号、特開昭59-19032号、同59-192242号等に記載されている。
【0220】
増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加させるには、それらを直接乳剤中に分散してもよいし、あるいは水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルセルソルブ、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、3-メトキシ-1-プロパノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、N,N-ジメチルホルムアミド等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解して乳剤に添加してもよい。
【0221】
また、米国特許3,469,987号明細書等に開示されているように、色素を揮発性の有機溶剤に溶解し、該溶液を水または親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭44-23389号、同44-27555号、同57-22091号等に開示されているように、色素を酸に溶解し、該溶液を乳剤中に添加したり、酸または塩基を共存させて水溶液として乳剤中へ添加する方法、米国特許3,822,135号、同4,006,025号明細書等に開示されているように界面活性剤を共存させて水溶液あるいはコロイド分散物としたものを乳剤中に添加する方法、特開昭53-102733号、同58-105141号に開示されているように親水性コロイド中に色素を直接分散させ、その分散物を乳剤中に添加する方法、特開昭51-74624号に開示されているように、レッドシフトさせる化合物を用いて色素を溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法を用いることもできる。また、溶液に超音波を用いることもできる。
【0222】
本発明に用いる増感色素を本発明のハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、これまで有用であることが認められている乳剤調製のいかなる工程中であってもよい。例えば米国特許2,735,766号、同3,628,960号、同4,183,756号、同4,225,666号、特開昭58-184142号、同60-196749号等の明細書に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程または/および脱塩前の時期、脱銀工程中および/または脱塩後から化学熟成の開始前までの時期、特開昭58-113920号等の明細書に開示されているように、化学熟成の直前または工程中の時期、化学熟成後、塗布までの時期の乳剤が塗布される前ならばいかなる時期、工程において添加されてもよい。また、米国特許4,225,666号、特開昭58-7629号等の明細書に開示されているように、同一化合物を単独で、または異種構造の化合物と組み合わせて、例えば粒子形成工程中と化学熟成工程中または化学熟成完了後とに分けたり、化学熟成の前または工程中と完了後とに分けるなどして分割して添加してもよく、分割して添加する化合物および化合物の組み合わせの種類を変えて添加してもよい。好ましくは、脱塩工程後、塗布までの時期であり、より好ましくは脱塩後から化学熟成の開始前までの時期である。
【0223】
本発明における増感色素の使用量としては感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、感光性層のハロゲン化銀1モル当たり10-6〜1モルが好ましく、10-4〜10-1モルがさらに好ましい。
【0224】
本発明におけるハロゲン化銀乳剤または/および有機銀塩は、カブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体によって、付加的なかぶりの生成に対して更に保護され、在庫貯蔵中における感度の低下に対して安定化することができる。単独または組合せて使用することができる適当なカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体は、特開平10-62899号の段落番号0070、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第57行〜第21ページ第7行に記載の特許のものがあげられる。
【0225】
本発明に好ましく用いられるかぶり防止剤は有機ハロゲン化物であり、例えば、特開昭50-119624号、同50-120328号、同51-121332号、同54-58022号、同56-70543号、同56-99335号、同59-90842号、同61-129642号、同62-129845号、特開平6-208191号、同7-5621号、同7-2781号、同8-15809号、米国特許第5340712号、同5369000号、同5464737号に開示されているような化合物が挙げられる。
【0226】
本発明のカブリ防止剤は、溶液、粉末、固体微粒子分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0227】
本発明を実施するために必要ではないが、乳剤層にカブリ防止剤として水銀(II)塩を加えることが有利なことがある。この目的に好ましい水銀(II)塩は、酢酸水銀および臭化水銀である。本発明に使用する水銀の添加量としては、塗布された銀1モル当たり好ましくは1×10-9モル〜1×10-3モル、さらに好ましくは1×10-9モル〜1×10-4モルの範囲である。
【0228】
本発明における熱現像感光材料は高感度化やカブリ防止を目的としてアゾリウム塩や安息香酸類を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59-193447号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55-12581号記載の化合物、特開昭60-153039号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。安息香酸類はいかなる安息香酸誘導体でもよいが、好ましい構造の例としては、米国特許4,784,939号、同4,152,160号、特願平8-151242号、同8-151241号、同8-98051号などに記載の化合物が挙げられる。アゾリウム塩や安息香酸類は感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては感光性層を有する面の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。アゾリウム塩や安息香酸類の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩や安息香酸類の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。本発明においてアゾリウム塩や安息香酸類の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10-6モル以上2モル以下が好ましく、1×10-3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
【0229】
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができる。
【0230】
このようなメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物としては特開平10-62899号の段落番号0067〜0069、特開平10-186572号の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第36〜56行に記載されている。中でもメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましく、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプト-5-メチルベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンズオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプト-5-メチルベンズイミダゾール、6-エトキシ-2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2'-ジチオビス-(ベンゾチアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、4,5-ジフェニル-2-イミダゾールチオール、2-メルカプトイミダゾール、1-エチル-2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトキノリン、8-メルカプトプリン、2-メルカプト-4(3H)-キナゾリノン、7-トリフルオロメチル-4-キノリンチオール、2,3,5,6-テトラクロロ-4-ピリジンチオール、4-アミノ-6-ヒドロキシ-2-メルカプトピリミジンモノヒドレート、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、4-ヒドキロシ-2-メルカプトピリミジン、2-メルカプトピリミジン、4,6-ジアミノ-2-メルカプトピリミジン、2-メルカプト-4-メチルピリミジンヒドロクロリド、3-メルカプト-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール、2-メルカプト-4-フェニルオキサゾール、3-メルカプト-4-フェニル-5-へプチル-1,2-4-トリアゾールなどが挙げられる。
【0231】
これらのメルカプト化合物の添加量としては乳剤層中に銀1モル当たり0.001〜1.0モルの範囲が好ましく、さらに好ましくは、銀の1モル当たり0.01〜0.3モルの量である。
【0232】
画像を向上させる「色調剤」として知られる添加剤を含むと光学濃度が高くなることがある。また、色調剤は黒色銀画像を形成させるうえでも有利になることがある。色調剤は画像形成層を有する面に銀1モルあたりの0.1〜50モル%の量含まれることが好ましく、0.5〜20モル%含まれることがさらに好ましい。また、色調剤は現像時のみ有効に機能を持つように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
【0233】
このような色調剤は、特開平10-62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許公開第0803764A1号の第21ページ第23〜48行に記載されている色調剤としては、フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、または4-(1-ナフチル)フタラジノン、6-クロロフタラジノン、5,7-ジメトキシフタラジノンおよび2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4-メチルフタル酸、4-ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩、または4-(1-ナフチル)フタラジン、6-イソプロピルフタラジン、6-t-ブチルフラタジン、6-クロロフタラジン、5,7-ジメトキシフタラジンおよび2,3-ジヒドロフタラジンなどの誘導体);フタラジン類とフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4-メチルフタル酸、4-ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せが好ましく、特にフタラジン類とフタル酸誘導体の組合せが好ましい。
【0234】
本発明の色調剤は、溶液、粉末、固体微粒子分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0235】
本発明における感光性層には、可塑剤および潤滑剤として多価アルコール(例えば、米国特許第2,960,404号に記載された種類のグリセリンおよびジオール)、米国特許第2,588,765号および同第3,121,060号に記載の脂肪酸またはエステル、英国特許第955,061号に記載のシリコーン樹脂などを用いることができる。
【0236】
本発明は、超硬調画像形成のため超硬調化剤を用いることができる。例えば、米国特許第5,464,738号、同5,496,695号、同6,512,411号、同5,536,622号、特願平7-228627号、同8-215822号、同8-130842号、同8-148113号、同8-156378号、同8-148111号、同8-148116号に記載のヒドラジン誘導体、あるいは、特願平8-83566号に記載の四級窒素原子を有する化合物や米国特許第5,545,515号に記載のアクリロニトリル化合物を用いることができる。化合物の具体例としては、前記米国特許第5,464,738号の化合物1〜10、同5,496,695号のH-1〜H-28、特願平8-215822号のI-1〜I-86、同8-130842号のH-1〜H-62、同8-148113号の1-1〜1-21、同8-148111号の1〜50、同8-148116号の1〜40、同8-83566号のP-1〜P-26、およびT-1〜T-18、米国特許第5,545,515号のCN-1〜CN-13などが挙げられる。
【0237】
また、本発明は超硬調画像形成のために、前記の超硬調化剤とともに硬調化促進剤を併用することができる。例えば、米国特許第5,545,505号に記載のアミン化合物、具体的にはAM-1〜AM-5、同5,545,507号に記載のヒドロキサム酸類、具体的にはHA-1〜HA-11、同5,545,507号に記載のアクリロニトリル類、具体的にはCN-1〜CN-13、同5,558,983号に記載のヒドラジン化合物、具体的にはCA-1〜CA-6、特願平8-132836号に記載のオニュ−ム塩類、具体的にはA-1〜A-42、B-1〜B-27、C-1〜C-14などを用いることができる。
【0238】
これらの超硬調化剤、および硬調化促進剤の合成方法、添加方法、添加量等は、それぞれの前記引用特許に記載されているように行うことができる。
【0239】
本発明における画像形成材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。
【0240】
本発明の表面保護層のバインダーとしてはいかなるポリマーでもよいが、カルボン酸残基を有するポリマーを100mg/m2以上5g/m2以下含むことが好ましい。ここでいうカルボキシル残基を有するポリマーとしては天然高分子(ゼラチン、アルギン酸など)、変成天然高分子(カルボキシメチルセルロース、フタル化ゼラチンなど)、合成高分子(ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルメタクリレート/アクリレート共重合体、ポリスチレン/ポリメタクリレート共重合体など)などがあげられる。該ポリマーのカルボキシ残基の含有量としてはポリマー100g当たり1×10-2モル以上1.4モル以下であることが好ましい。また、カルボン酸残基はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機カチオンなどと塩を形成してもよい。
【0241】
また、表面保護層には、バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)を用いることも好ましく、完全けん化物のPVA−105[ポリビニルアルコール(PVA)含有率94.0wt% 以上、けん化度98.5±0.5モル%、酢酸ナトリウム含有率1.5wt% 以下、揮発分5.0wt% 以下、粘度(4wt% 、20℃)5.6±0.4CPS]、部分けん化物のPVA−205[PVA含有率94.0wt% 、けん化度88.0±1.5モル%、酢酸ナトリウム含有率1.0wt% 、揮発分5.0wt% 、粘度(4wt% 、20℃)5.0±0.4CPS]、変性ポリビニルアルコールのMP−102、MP−202、MP−203、R−1130、R−2105(以上、クラレ(株)製の商品名)などがあげられる。
【0242】
保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3g/m2〜4.0g/m2が好ましく、0.3g/m2〜2.0g/m2がより好ましい。
【0243】
本発明の表面保護層としては、いかなる付着防止材料を使用してもよい。付着防止材料の例としては、ワックス、シリカ粒子、スチレン含有エラストマー性ブロックコポリマー(例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン)、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートやこれらの混合物などがある。また、表面保護層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0244】
本発明における画像形成層もしくは画像形成層の保護層には、米国特許第3,253,921号、同第2,274,782号、同第2,527,583号および同第2,956,879号に記載されているような光吸収物質およびフィルター染料を含む写真要素において使用することができる。また、例えば米国特許第3,282,699号に記載のように染料を媒染することができる。フィルター染料の使用量としては露光波長での吸光度が0.1〜3.0であることが好ましく、0.2〜1.5が特に好ましい。
【0245】
本発明における画像形成層もしくは乳剤層の画像形成層には、艶消剤、例えばデンプン、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、米国特許第2,992,101号および同第2,701,245号に記載された種類のビーズを含むポリマービーズなどを含有することができる。
【0246】
本発明の画像形成層塗布液の調製温度は30℃以上65℃以下がよく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることがい。また、該ラテックス添加前に還元剤と有機銀塩が混合されていることが好ましい。
【0247】
本発明における有機銀塩含有流体もしくは熱画像形成層塗布液は、いわゆるチキソトロピー流体であることが好ましい。チキソトロピー性とは剪断速度の増加に伴い、粘度が低下する性質を言う。本発明の粘度測定にはいかなる装置を使用してもよいが、レオメトリックスファーイースト株式会社製RFSフルードスペクトロメーターが好ましく用いられ25℃で測定される。ここで、本発明における有機銀塩含有流体もしくは熱画像形成層塗布液は剪断速度0.1S−1における粘度は400mPa・s以上100,000mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは500mPa・s以上20,000mPa・s以下である。また、剪断速度1000S−1においては1mPa・s以上200mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは5mPa・s以上80mPa・s以下である。
【0248】
チキソトロピー性を発現する系は各種知られており高分子刊行会編「講座・レオロジー」、室井、森野共著「高分子ラテックス」(高分子刊行会発行)などに記載されている。流体がチキソトロピー性を発現させるには固体微粒子を多く含有することが必要である。また、チキソトロピー性を強くするには増粘線形高分子を含有させること、含有する固体微粒子の異方形でアスペクト比が大きくすること、アルカリ増粘、界面活性剤の使用などが有効である。
【0249】
本発明の熱現像感光材料は、支持体上に一またはそれ以上の層で構成される。一層の構成は感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、有機銀塩の還元剤およびバインダー、ならびに色調剤、被覆助剤および他の補助剤などの所望による追加の材料を含む。二層の構成は、第1乳剤層(通常は基材に隣接した層)中に有機銀塩およびハロゲン化銀を含み、第2層または両層中にいくつかの他の成分を含まなければならない。しかし、全ての成分を含む単一乳剤層および保護トップコートを含んでなる二層の構成も考えられる。多色感光性熱現像写真材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。多染料多色感光性熱現像写真材料の場合、各乳剤層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各感光層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
【0250】
本発明の感光性層には色調改良、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料を用いることができる。これらについてはWO98/36322に詳細に記載されている。本発明の感光性層に用いる好ましい染料および顔料としてはアントラキノン染料、アゾメチン染料、インドアニリン染料、アゾ染料、アントラキノン系のインダントロン顔料(C.I. Pigment Blue 60など)、フタロシアニン顔料(C.I. Pigment Blue 15等の銅フタロシアニン、C.I. Pigment Blue 16等の無金属フタロシアニンなど)、染付けレーキ顔料系のトリアリールカルボニル顔料、インジゴ、無機顔料(群青、コバルトブルーなど)が挙げられる。これらの染料や顔料の添加法としては、溶液、乳化物、固体微粒子分散物、高分子媒染剤に媒染された状態などいかなる方法でも良い。これらの化合物の使用量は目的の吸収量によって決められるが、一般的に1m2当たり1μg以上1g以下の範囲で用いることが好ましい。
【0251】
本発明においてはアンチハレーション層を感光性層に対して光源から遠い側に設けることができる。アンチハレーション層は所望の波長範囲での最大吸収が0.3以上2以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5以上2以下の露光波長の吸収であり、かつ処理後の可視領域においての吸収が0.001以上0.5未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.001以上0.3未満の光学濃度を有する層であることが好ましい。
【0252】
本発明でハレーション防止染料を使用する場合、該染料は波長範囲で目的の吸収を有し、処理後に可視領域での吸収が充分少なく、上記アンチハレーション層の好ましい吸光度スペクトルの形状が得られればいかなる化合物でも良い。例えば以下に挙げるものが開示されているが本発明はこれに限定されるものではない。単独の染料としては特開昭59-56458号、特開平2-216140号、同7-13295号、同7-11432号、米国特許5,380,635号記載、特開平2-68539号公報第13頁左下欄1行目から同第14頁左下欄9行目、同3-24539号公報第14頁左下欄から同第16頁右下欄記載の化合物があり、処理で消色する染料としては特開昭52-139136号、同53-132334号、同56-501480号、同57-16060号、同57-68831号、同57-101835号、同59-182436号、特開平7-36145号、同7-199409号、特公昭48-33692号、同50-16648号、特公平2-41734号、米国特許4,088,497号、同4,283,487号、同4,548,896号、同5,187,049号がある。
【0253】
本発明では熱現像感光材料の非感光性層に消色染料と塩基プレカーサーとを添加して、非感光性層をフィルター層またはアンチハレーション層として機能させることが好ましい。熱現像感光材料は一般に、感光性層に加えて非感光性層を有する。非感光性層は、その配置から(1)感光性層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる保護層、(2)複数の感光性層の間や感光性層と保護層の間に設けられる中間層、(3)感光性層と支持体との間に設けられる下塗り層、(4)感光性層の反対側に設けられるバック層に分類できる。フィルター層は、(1)または(2)の層として感光材料に設けられる。アンチハレーション層は、(3)または(4)の層として感光材料に設けられる。
【0254】
消色染料と塩基プレカーサーとは、同一の非感光性層に添加することが好ましい。ただし、隣接する二つの非感光性層に別々に添加してもよい。また、二つの非感光性層の間にバリアー層を設けてもよい。
【0255】
消色染料を非感光性層に添加する方法としては、溶液、乳化物、固体微粒子分散物あるいはポリマー含浸物を非感光性層の塗布液に添加する方法が採用できる。また、ポリマー媒染剤を用いて非感光性層に染料を添加してもよい。これらの添加方法は、通常の熱現像感光材料に染料を添加する方法と同様である。ポリマー含浸物に用いるラテックスについては、米国特許4199363号、西独特許公開25141274号、同2541230号、欧州特許公開029104号の各明細書および特公昭53−41091号公報に記載がある。また、ポリマーを溶解した溶液中に染料を添加する乳化方法については、国際公開番号88/00723号明細書に記載がある。
【0256】
消色染料の添加量は、染料の用途により決定する。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を越える量で使用する。光学濃度は、0.2乃至2であることが好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001乃至1g/m2程度である。好ましくは、0.005乃至0.8g/m2程度であり、特に好ましくは、0.01乃至0.2g/m2程度である。
【0257】
なお、このように染料を消色すると、光学濃度を0.1以下に低下させることができる。二種類以上の消色染料を、熱消色型記録材料や熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、二種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。
【0258】
本発明における熱現像感光材料は、支持体の一方の側に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤を含む感光性層を有し、他方の側にバック層を有する、いわゆる片面感光材料であることが好ましい。
【0259】
本発明において感光材料は、搬送性改良のためにマット剤を添加しても良い。マット剤は、一般に水に不溶性の有機または無機化合物の微粒子である。マット剤としては任意のものを使用でき、例えば米国特許第1,939,213号、同2,701,245号、同2,322,037号、同3,262,782号、同3,539,344号、同3,767,448号等の各明細書に記載の有機マット剤、同1,260,772号、同2,192,241号、同3,257,206号、同3,370,951号、同3,523,022号、同3,769,020号等の各明細書に記載の無機マット剤など当業界で良く知られたものを用いることができる。例えば具体的にはマット剤として用いることのできる有機化合物の例としては、水分散性ビニル重合体の例としてポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-α-メチルスチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ポリビニルアセテート、ポリエチレンカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンなど、セルロース誘導体の例としてはメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなど、澱粉誘導体の例としてカルボキシ澱粉、カルボキシニトロフェニル澱粉、尿素-ホルムアルデヒド-澱粉反応物など、公知の硬化剤で硬化したゼラチンおよびコアセルベート硬化して微少カプセル中空粒体とした硬化ゼラチンなど好ましく用いることができる。無機化合物の例としては二酸化珪素、二酸化チタン、二酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、公知の方法で減感した塩化銀、同じく臭化銀、ガラス、珪藻土などを好ましく用いることができる。上記のマット剤は必要に応じて異なる種類の物質を混合して用いることができる。マット剤の大きさ、形状に特に限定はなく、任意の粒径のものを用いることができる。本発明の実施に際しては0.1μm〜30μmの粒径のものを用いるのが好ましく、2μm〜10μmの平均粒径のものを用いるのが更に好ましい。また、マット剤の粒径分布は狭くても広くても良い。一方、マット剤は感材のヘイズ、表面光沢に大きく影響することから、マット剤作製時あるいは複数のマット剤の混合により、粒径、形状および粒径分布を必要に応じた状態にすることが好ましい。
【0260】
マット剤は感光材料1m2当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1〜400mg/m2、より好ましくは5〜300mg/m2である。
【0261】
また、乳剤面のマット度は星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が50秒以上10000秒以下が好ましく、特に80秒以上10000秒以下が好ましい。
【0262】
本発明においてバック層のマット度としてはベック平滑度が250秒以下10秒以上が好ましく、さらに好ましくは180秒以下50秒以上である。
【0263】
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0264】
本発明においてバック層の好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン-無水マレイン酸)、コポリ(スチレン-アクリロニトリル)、コポリ(スチレン-ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒またはエマルションから被覆形成してもよい。
【0265】
本発明においてバック層は、所望の波長範囲での最大吸収が0.3以上2以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5以上2以下の吸収であり、かつ処理後の可視領域においての吸収が0.001以上0.5未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.001以上0.3未満の光学濃度を有する層であることが好ましい。また、バック層に用いるハレーション防止染料の例としては前述のアンチハレーション層と同じである。
【0266】
米国特許第4,460,681号および同第4,374,921号に示されるような裏面抵抗性加熱層(backside resistive heating layer)を感光性熱現像写真画像系に使用することもできる。
【0267】
本発明の感光性層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。硬膜剤の例としてはT.H.James著"THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION"(Macmillan Publishing Co., Inc.刊、1977年刊)77頁から87頁に記載の各方法があり、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060号、特開平6-208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などのエポキシ化合物類、特開昭62-89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
【0268】
硬膜剤は溶液として添加され、該溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳"液体混合技術"(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0269】
本発明には塗布性、帯電改良などを目的として界面活性剤を用いても良い。界面活性剤の例としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、フッ素系などいかなるものも適宜用いられる。具体的には、特開昭62-170950号、米国特許5,380,644号などに記載のフッ素系高分子界面活性剤、特開昭60-244945号、特開昭63-188135号などに記載のフッ素系界面活性剤、米国特許3,885,965号などに記載のポリシロキ酸系界面活性剤、特開平6-301140号などに記載のポリアルキレンオキサイドやアニオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0270】
本発明に用いられる溶剤の例としては新版溶剤ポケットブック(オーム社、1994年刊)などに挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本発明で使用する溶剤の沸点としては40℃以上180℃以下のものが好ましい。
【0271】
本発明の溶剤の例としてはヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、1,1,1-トリクロロエタン、テトラヒドロフラン、トリエチルアミン、チオフェン、トリフルオロエタノール、パーフルオロペンタン、キシレン、n-ブタノール、フェノール、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、炭酸ジエチル、クロロベンゼン、ジブチルエーテル、アニソール、エチレングリコールジエチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、モルホリン、プロパンスルトン、パーフルオロトリブチルアミン、水などが挙げられる。
【0272】
本発明における感光材料は、帯電防止または導電性層、例えば、可溶性塩(例えば塩化物、硝酸塩など)、蒸着金属層、米国特許第2,861,056号および同第3,206,312号に記載のようなイオン性ポリマーまたは米国特許第3,428,451号に記載のような不溶性無機塩などを含む層などを有してもよい。
【0273】
熱現像感光材料は、モノシート型(受像材料のような他のシートを使用せずに、熱現像感光材料上に画像を形成できる型)であることが好ましい。
【0274】
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。各種の添加剤は、感光性層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10−186567号、同10−18568号等の各明細書を参考にすることができる。
【0275】
本発明における感光性層には、可塑剤および潤滑剤として多価アルコール(例えば、米国特許第2,960,404号に記載された種類のグリセリンおよびジオール)、米国特許第2,588,765号および同第3,121,060号に記載の脂肪酸またはエステル、英国特許第955,061号に記載のシリコーン樹脂などを用いることができる。
【0276】
本発明における熱現像感光材料を用いてカラー画像を得る方法としては特開平7-13295号10頁左欄43行目から11左欄40行目に記載の方法がある。また、カラー染料画像の安定剤としては英国特許第1,326,889号、米国特許第3,432,300号、同第3,698,909号、同第3,574,627号、同第3,573,050号、同第3,764,337号および同第4,042,394号に例示されている。
【0277】
本発明における熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されても良い。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、または米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F. Kistler、Petert M. Schweizer著"LIQUID FILM COATING"(CHAPMAN & HALL社刊、1997年)399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、またはスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427頁のFigure 11b.1にある。また、所望により同書399頁から536頁記載の方法、米国特許第2,761,791号および英国特許第837,095号に記載の方法により2層またはそれ以上の層を同時に被覆することができる。
【0278】
本発明における熱現像感光材料の中に追加の層、例えば移動染料画像を受容するための染料受容層、反射印刷が望まれる場合の不透明化層、保護トップコート層および光熱写真技術において既知のプライマー層などを含むことができる。本発明の感材はその感材一枚のみで画像形成できることが好ましく、受像層等の画像形成に必要な機能性層が別の感材とならないことが好ましい。
【0279】
本発明における熱現像感光材料の中に追加の層、例えば移動染料画像を受容するための染料受容層、反射印刷が望まれる場合の不透明化層、保護トップコート層および光熱写真技術において既知のプライマー層などを含むことができる。本発明の感材はその感材一枚のみで画像形成できることが好ましく、受像層等の画像形成に必要な機能性層が別の感材とならないことが好ましい。
【0280】
本発明の感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80〜250℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。現像時間としては1〜180秒が好ましく、10〜90秒がさらに好ましく、10〜40秒が特に好ましい。
【0281】
熱現像の方式としてはプレートヒーター方式が好ましい。プレートヒーター方式による熱現像方式とは特願平9−229684号、特願平10−177610号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒータからなり、かつ前記プレートヒータの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒータとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒータを2〜6段に分けて先端部については1〜10℃程度温度を下げることが好ましい。このような方法は特開昭54-30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外せしめることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を押さえることもできる。
【0282】
本発明の感光材料はいかなる方法で露光されても良いが、露光光源としてレーザー光が好ましい。本発明によるレーザー光としては、ガスレーザー(Ar+、He-Ne)、YAGレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが好ましい。また、半導体レーザーと第2高調波発生素子などを用いることもできる。好ましくは赤〜赤外発光のガス若しくは半導体レーザーである。
【0283】
レーザー光はシングルモードレーザーが利用できるが、本発明のような熱現像感光材料は露光時のヘイズが低く、干渉縞が発生しやすい傾向にあり、この干渉縞発生防止技術としては、特開平5-113548などに開示されているレーザー光を感光材料に対して斜めに入光させる技術や、WO95/31754などに開示されているマルチモードレーザーを利用する方法が知られており、これらの技術を用いることができる。
【0284】
本発明の熱現像感光材料を露光するにはSPIE vol.169 Laser Printing 116-128頁(1979)、特開平4-51043、WO95/31754などに開示されているようにレーザー光が重なるように露光し、走査線が見えないようにすることが好ましい。
【0285】
レーザー出力としては、1mW以上のものが好ましく、10mW以上のものがより好ましく、40mW以上の高出力のものが更に好ましい。その際、複数のレーザーを合波してもよい。レーザー光の径としてはガウシアンビームの1/e2スポットサイズで30〜200μm程度とすることができる。
【0286】
本発明の熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。これらの使用において、形成された黒白画像をもとにして、医療診断用では富士写真フイルム(株)製の複製用フィルムMI-Dupに複製画像を形成したり、印刷用では富士写真フイルム(株)製の返し用フイルムDO-175,PDO-100やオフセット印刷版に画像を形成するためのマスクとして使用できることは言うまでもない。
【0287】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0288】
実施例1
(PET支持体の作成)
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い固有粘度(IV)=0.66(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後、130度で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、急冷し、熱固定後の膜厚が175μになるような厚みの未延伸フィルムを作成した。これを、周速の異なるロールを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。その縦延伸の際に、図1に示したように縦延伸ゾーンの片面(5のみ)、両面(5、両方使用)に補助加熱源として赤外ヒータを設置した。その赤外ヒーターの出力を以下のように行った。
【0289】
Figure 0004057737
これら支持体の製膜カール値の値を表1に示す。
【0290】
(表面コロナ処理)
ピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0291】
(下塗り支持体の作成)
(1)下塗層塗布液の作成
処方(1)(感光層側下塗り層用)
高松油脂(株)製ペスレジンA-515GB(30%溶液) 234g ポリエチレングリコール モノノニルフェニル エーテル (平均エチレンオキシド数=8.5) 10%溶液 21.5g 綜研化学(株)製 MP-1000(ポリマー微粒子) 0.91g 蒸留水 744ml
処方(2)(バック面第1層用)
ブタジエン−スチレン共重合体ラテックス 131g (固形分40wt% 、ブタジエン/スチレン重量比=32/68)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S− トリアジンナトリウム塩 8wt%水溶液 5.1g ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム−1wt% 水溶液 10ml 蒸留水 854ml
処方(3)(バック面側第2層用)
SnO2/SbO (9/1重量比、平均粒径0.038μm、17%分散物) 62g ゼラチン(10%水溶液) 65.7g 信越化学(株)製 メトローズTC-5(2%水溶液) 6.3g 綜研化学(株)製 MP-1000(ポリマー微粒子) 0.01g ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム−1wt% 水溶液 10ml 蒸留水 856ml
【0292】
(下塗り支持体の作成)
上記厚さ175μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体1から支持体4の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(感光性層面)に下塗り塗布液処方(1)をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6ml/m2(片面当たり)になるように塗布して180 ℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面(バック面)に下塗り塗布液処方(2)をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7ml/m2になるように塗布して180 ℃で5分間乾燥し、更に裏面(バック面)に下塗り塗布液処方(3)をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7ml/m2になるように塗布して180 ℃で6分間乾燥して下塗り支持体を作成した。
【0293】
(バック面塗布液の調製)
(塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)の調製)
塩基プレカーサー化合物11を64g、ジフェニルスルフォン化合物12を28gおよび花王(株)製界面活性剤デモールN 10g を蒸留水220mlと混合し、混合液をサンドミル(1/4 Gallonサンドグラインダーミル、アイメックス(株)製)を用いてビーズ分散し、平均粒子径0.2μmの、塩基プレカーサー化合物の固体微粒子分散液(a)を得た。
【0294】
(染料固体微粒子分散液の調製)
シアニン染料化合物13を9.6gおよびP-アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム5.8gを蒸留水305mlと混合し、混合液をサンドミル(1/4 Gallonサンドグラインダーミル、アイメックス(株)製)を用いてビーズ分散して平均粒子径0.2μmの染料固体微粒子分散液を得た。
【0295】
(ハレーション防止層塗布液の調製)
ゼラチン17g、ポリアクリルアミド9.6g、上記塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)70g、上記染料固体微粒子分散液56g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ6.5μm)1.5g、ポリエチレンスルフォン酸ナトリウム2.2g、青色染料化合物14を0.2g、H2Oを844ml混合し、ハレーション防止層塗布液を調製した。
【0296】
(バック面保護層塗布液の調製)
容器を40℃に保温し、ゼラチン50g、ポリスチレンスルフォン酸ナトリウム0.2g、N,N-エチレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド) 2.4g、t-オクチルフェノキシエトキシエタンスルフォン酸ナトリウム1g、化合物4を30mg、C8F17SO3K 32mg、C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)4(CH2)4-SO3Na 64 mg、アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(共重合重量比5/95)8.8g、H2Oを950ml混合してバック面保護層塗布液とした。
【0297】
《ハロゲン化銀粒子1の調製》
蒸留水1421ccに1wt%臭化カリウム溶液8.0ccを加え、さらに1N硝酸を8.2cc、フタル化ゼラチン20gを添加した液をチタンコートしたステンレス製反応壺中で攪拌しながら、37℃に液温を保ち、硝酸銀37.04gに蒸留水を加え159ccに希釈した溶液Aと臭化カリウム32.6gを蒸留水にて容量200ccに希釈した溶液Bを準備し、コントロールダブルジェット法でpAgを8.1に維持しながら、溶液Aの全量を一定流量で1分間かけて添加した。溶液Bは、コントロールドダブルジェット法にて添加した。その後3.5wt%の過酸化水素水溶液を30cc添加し、さらに化合物1の3wt%水溶液を36cc添加した。その後、再び溶液Aを蒸留水で希釈して317.5ccにした溶液A2と、溶液Bに対して最終的に銀1モル当たり1×10-4モルになるよう化合物2を溶解し、液量を溶液Bの2倍の400ccまで蒸留水で希釈した溶液B2を用いて、やはりコントロールドダブルジェット法にて、pAg を8.1に維持しながら、一定流量で溶液A2を10分間かけて全量添加した。溶液B2は、コントロールドダブルジェット法で添加した。その後、化合物3の0.5wt%メタノール溶液を50cc添加し、さらに硝酸銀でpAgを7.5に上げてから1N硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程を行い、脱イオンゼラチン3.5gを加えて1Nの水酸化ナトリウムを添加して、pH6.0、pAg8.2に調整してハロゲン化銀分散物を作成した。
【0298】
できあがったハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.053μm、球相当径の変動係数18%の純臭化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。この粒子の[100]面比率は、クベルカムンク法を用いて85%と求められた。
【0299】
上記乳剤を38℃に攪拌しながら維持して、化合物4を0.035g(3.5wt%メタノール溶液で添加)加え、40分後に分光増感色素Aの固体分散物(ゼラチン水溶液)を銀1モル当たり5×10-3モル加え、1分後に47℃に昇温し、20分後に化合物5を銀1モルに対して3×10-5モル加え、さらに2分後にテルル増感剤Bを銀1モル当たり5×10-5モル加えて90分間熟成した。熟成終了間際に、化合物6の0.5wt%メタノール溶液を5ccを加え、温度を31℃に下げ、化合物7の3.5wt%メタノール溶液5cc、化合物3を銀1モル当たり7×10-3モル及び化合物8を銀1モルに対して6.4×10-3モルを添加して、ハロゲン化銀乳剤1を作成した。
【0300】
《ハロゲン化銀粒子2の調製》
ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温37℃を50℃に変更する以外は同様にして平均円相当径0.08μm、球相当径の変動係数15%の純臭化銀立方体粒子乳剤の調製した。ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈殿/脱塩/水洗/分散を行った。更に分光増感色素Aの添加量を銀1モル当たり4.5×10-3モルに変えた以外は乳剤1と同様にして分光増感、化学増感及び化合物3、化合物8の添加を行い、ハロゲン化銀乳剤2を得た。
【0301】
《ハロゲン化銀粒子3の調製》
ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温37℃を27℃に変更する以外は同様にして平均円相当径0.038μm、球相当径の変動係数20%の純臭化銀立方体粒子乳剤の調製した。ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈殿/脱塩/水洗/分散を行った。更に分光増感色素Aの添加量を銀1モル当たり6×10-3モルに変えた以外は乳剤1と同様にして分光増感、化学増感及び化合物3、化合物8の添加を行い、ハロゲン化銀乳剤3を得た。
【0302】
《塗布液用混合乳剤Aの調製》
ハロゲン化銀乳剤1を70重量%、ハロゲン化銀乳剤2を15重量%、ハロゲン化銀乳剤3を15重量%溶解し、化合物9を1wt%水溶液にて銀1モル当たり7×10-3モル添加した。
【0303】
《りん片状脂肪酸銀塩の調製》
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名EdenorC22-85R)87.6g、蒸留水423ml、5N-NaOH水溶液49.2ml、tert-ブタノール120mlを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、硝酸銀40.4gの水溶液206.2ml (pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635mlの蒸留水と30mlのtert−ブタノールを入れた反応容器を30℃に保温し、撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ62分10秒と60分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後7分20秒間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後9分30秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が上がらないように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、スチームトレースにより保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるようにスチーム開度を調整した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調整した。
【0304】
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、25℃に降温した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
【0305】
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.14μm、b=0.4μm、c=0.6μm、平均球相当径の変動係数15%のりん片状の結晶であった。(a,b,cは本文の規定)
乾燥固形分100g相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA-205)7.4gおよび水を添加し、全体量を385gとしてからホモミキサーにて予備分散した。
【0306】
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−110S−EH、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、G10Zインタラクションチャンバー使用)の圧力を1750kg/cm2に調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで所望の分散温度に設定した。
【0307】
《還元剤の25%分散物の調製》
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサン80gとクラレ(株)製変性ポリビニルアルコールポバールMP203の20%水溶液64gに水176gを添加し、良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800g用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて5時間分散し、還元剤分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子は平均粒径0.72μmであった。
【0308】
《メルカプト化合物の20%分散物の調製》
前述の化合物8を64gとクラレ(株)製変性ポリビニルアルコールポバールMP203の20%水溶液32gに水224gを添加し、良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800g用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて10時間分散しメルカプト分散物を得た。こうして得たメルカプト化合物分散物に含まれるメルカプト化合物粒子は平均粒径0.67μmであった。
【0309】
《有機ポリハロゲン化合物の30%分散物の調製》
トリブロモメチルフェニルスルホン48gと3-トリブロモメチルスルホニル-4-フェニル-5-トリデシル-1,2,4-トリアゾール48gとクラレ(株)製変性ポリビニルアルコールポバールMP203の20%水溶液48gに水224gを添加し、良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800g用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて5時間分散し有機ポリハロゲン化合物分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれるポリハロゲン化合物粒子は平均粒径0.74μmであった。
【0310】
《フタラジン化合物の10wt%メタノール溶液の調製》
6-イソプロピルフタラジン10gをメタノール90gに溶解して使用した。
【0311】
《顔料の20%分散物の調製》
C.I. Pigment Blue 60を64gと花王(株)製デモールNを6.4gに水250gを添加し良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800g用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて25時間分散し顔料分散物を得た。こうして得た顔料分散物に含まれる顔料粒子は平均粒径0.21μmであった。
【0312】
《SBRラテックス40wt%の調製》
限外濾過(UF)精製したSBRラテックスは以下のように得た。
下記のSBRラテックスを蒸留水で10倍に希釈したものをUF-精製用モジュールFS03-FC-FUY03A1(ダイセン・メンブレン・システム(株))を用いてイオン伝導度が1.5mS/cmになるまで希釈精製したものを用いた。この時のラテックス濃度は40%であった。
【0313】
(SBRラテックス:-St(68)-Bu(29)-AA(3)-のラテックス)
平均粒径0.1μm、濃度45%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.6wt%、イオン伝導度4.2mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM-30S使用しラテックス原液(40%)を25℃にて測定)、pH8.2
【0314】
《乳剤層(感光性層)塗布液の調製》
上記で得た顔料の20%水分散物を1.1g、有機酸銀分散物103g、ポリビニルアルコールPVA-205(クラレ(株)製)の20wt%水溶液5g、上記25wt%還元剤分散物25g、有機ポリハロゲン化合物30%分散物11.5g、メルカプト化合物20%分散物3.1g、限外濾過(UF)精製したSBRラテックス40wt%を106g、フタラジン化合物の20wt%メタノール溶液を8mlを添加し、ハロゲン化銀混合乳剤Aを10gを良く混合し、乳剤層塗布液を調製し、そのままコーティングダイへ70ml/m2となるように送液し、塗布した。
【0315】
該乳剤層塗布液の粘度は東京計器のB型粘度計で測定して、40℃(No.1ローター)で85[mPa・s]であった。
【0316】
レオメトリックスファーイースト株式会社製RFSフルードスペクトロメーターを使用した25℃での塗布液の粘度は剪断速度が0.1、1、10、100、1000[1/秒]においてそれぞれ1500、220、70、40、20[mPa・s]であった。
【0317】
《乳剤面中間層塗布液の調製》
ポリビニルアルコールPVA-205(クラレ(株)製)の10wt%水溶液772g、顔料の20wt%分散物0.7g、メチルメタクリレート/スチレン/2-エチルヘキシルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比59/9/26/5/1)ラテックス27.5%液226gにエアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5wt%水溶液を2mlを加えて中間層塗布液とし、5ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター)で21[mPa・s]であった。
【0318】
《乳剤面保護層第1層塗布液の調製》
イナートゼラチン64gを水に溶解し、ラテックス[メチルメタクリレート/アクリル酸/N-メチロールアクリルアミド共重合体、共重合重量比93/3/4]16g、フタル酸の10wt%メタノール溶液を64ml、4-メチルフタル酸の10wt%水溶液74ml、1Nの硫酸を28ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5wt%水溶液を5ml、フェノキシエタノール1gを加え、総量1000gになるように水を加えて塗布液とし、10ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター)で17[mPa・s]であった。
【0319】
《乳剤面保護層第2層塗布液の調製》
イナートゼラチン80gを水に溶解し、ラテックス[メチルメタクリレート/アクリル酸/N-メチロールアクリルアミド共重合体、共重合重量比93/3/4]20g、N-パーフルオロオクチルスルフォニル-N-プロピルアラニンカリウム塩の5%溶液を20ml、ポリエチレングリコールモノ(N-パーフルオロオクチルスルホニル-N-プロピル-2-アミノエチル)エーテル[エチレンオキシド平均重合度=15]の2%水溶液を50ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5wt%溶液を16ml、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径4.0μm)25g、4-メチルフタル酸1.6g、フタル酸8.1g、1Nの硫酸を44ml、ベンゾイソチアゾリノン10mgに総量1555gとなるよう水を添加して、4wt%のクロムみょうばんと0.67wt%のフタル酸を含有する水溶液445mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを表面保護層塗布液とし、10ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター)で9[mPa・s]であった。
【0320】
《熱現像感光材料の作製》
上記下塗り支持体のバック面側に、ハレーション防止層塗布液を固体微粒子染料の固形分塗布量が0.04g/m2となるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、ハレーション防止バック層を作成した。
【0321】
バック面と反対の面に下塗り面から乳剤層、中間層、保護層第1層、保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、熱現像感光材料の試料101を作製した。
【0322】
塗布はスピード160m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隔を0.18mmに、減圧室の圧力を大気圧に対して392Pa低く設定した。引き続くチリングゾーンでは、乾球温度が18℃、湿球温度が12℃の風を30秒間吹き当てて、塗布液を冷却した後、つるまき式の浮上方式の乾燥ゾーンにて、乾球温度が30℃、湿球温度が18℃の乾燥風を200 秒間吹き当てた後70℃の乾燥ゾーンを30秒間通し、その後25℃に冷却して、塗布液中の溶剤の揮発を行った。チリングゾーンおよび乾燥ゾーンでの塗布液膜面に吹き当たる風の平均風速は7m/secであった。
【0323】
【化1】
Figure 0004057737
【0324】
【化2】
Figure 0004057737
【0325】
【化3】
Figure 0004057737
【0326】
(露光、現像)
レーザー感光計(詳細は下記)で写真材料を露光した後、写真材料を118℃で5秒、続いて122℃で16秒間処理(熱現像)した。
Figure 0004057737
これらの露光現像済感光材料の、取扱性を表1に示す。
【0327】
【表1】
Figure 0004057737
【0328】
ここで明らかなように本発明における支持体を用いた感光材料は、比較例の支持体を用いた材料に比べ、取扱性の面で優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】製膜カール値の測定の概略を示す図である。
【図2】縦延伸ゾーンの側面図である。
【符号の説明】
1 フィルム
2 縦延伸ローラ
3 縦延伸ローラ
4 冷却ローラ
5 赤外ヒータ
6 赤外ヒータ

Claims (3)

  1. 製膜カール値が 10mm 以下であるポリマー支持体上に、非感光性有機銀塩、有機銀塩の還元剤および水性ラテックスバインダーを含有する感熱記録層若しくは熱現像記録層少なくとも1層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成されたことを特徴とする感熱または熱現像記録材料。
  2. 前記熱現像記録層に感光性ハロゲン化銀を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱現像記録材料。
  3. 延伸工程で表裏の延伸温度を実質的に同一にすることによって、製膜カール値が10mm以下になるように製造されたポリマー支持体上に、非感光性有機銀塩、有機銀塩の還元剤および水性ラテックスバインダーを含有する感熱記録層若しくは熱現像記録層の少なくとも1層を溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成することを特徴とする感熱または熱現像記録材料の製造方法。
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