JP2004138215A - 焼結含油軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】駆動側のシャフトを軸受内周面で支持する焼結含油軸受において、前記軸受内周面の画像を画像解析装置によって解析して得られる気孔の円相当直径として、軸受内径と前記シャフトとの間の直径クリアランスの4倍以下である気孔の合計面積が、画像面積の7%以上になっている。
【選択図】 なし
Description
【発明が属する技術分野】
この発明は、自動車等に電装される寒冷地環境で好適なモータ用焼結含油軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車に電装される室内送風装置のフアンモータや座席駆動用ギヤードモータ等に使用される焼結含油軸受は、鉄系材料、銅系材料、鉄銅系材料などのうち、青銅系材料、鉄銅系材料が好ましいものとされている。後者の場合、銅合金の特徴である滑り特性、なじみ性、放熱性などと、鉄の特徴である比較的硬質、安価などを兼ね備えており、焼結合金の鉄部分と銅部分の含有量はそれぞれ同量程度とされる。このような焼結含油軸受を用いたモータは、温暖な環境下で運転したときは通常に稼働するが、零下30℃というような寒冷地環境で運転すると、運転し始めたしばらくの間、鳴き音(金属音)が発生するという問題がある。このような鳴き音の発生は、通常、運転初期段階に摺動面の潤滑が不足している状態で起動されると、軸が振動しながら回転しているためと考えられているが、鳴き音が発生する挙動は明かではない。また、従来対策には、低温状態での摺動抵抗を減少する上で、下記文献1の例のごとく軸受に含油する油組成物を工夫したり、下記文献2の例のごとく軸受内周面の一部にフッ素樹脂の樹脂摺動部を形成することも提案されているが、それらは二次的な改良に過ぎない。
【0003】
以上の背景から、発明者らは先に低温環境で鳴き音が発生しない焼結含油軸受を実現した(特願平2001−317713号)。この先願発明の軸受は、下記(1)〜(6)の知見に基づいてなされ、焼結合金がSn及びPを含むCu合金相とFeのフェライト相とが面積比において均等割合の混在状態を呈した断面組織で、0.7質量%以下の黒鉛粒子を含有し、サイジング後の軸受内周表面に露出する鉄部の面積が2〜6%、有効多孔率20〜30%、軸受の通気度が6〜50×10−11cm2であり、気孔内には40℃の動粘度で61.2〜74.8mm2/sの合成油が含油されていることを特徴としている。
(1)軸受の有効多孔率自身は摺動音に大きな影響を与えない。
(2)軸受焼結合金の通気度は摺動音と関係がある。通気度と騒音レベルの関係は二次関数に近似していて、通気度が高いと騒音レベルも高くなる。
(3)含油している潤滑油の量が減少すると、騒音レベルが大きくなる。この場合、潤滑油が有効多孔率の半分以下になると、その増加が極度に大きくなる。
(4)潤滑油が充分に存在していれば、青銅系の軸受でも純鉄系の軸受でも騒音レベルに差が認められない。
(5)含油している潤滑油の量が減少したときは、純鉄系軸受が青銅系軸受より騒音レベルが大きくなる。
(6)潤滑油の粘度は、比較的高い方が騒音レベルが低くなる。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−295896号公報(第2−5頁)
【特許文献2】
特開2002−39183号公報(第4−6頁、図3と図4)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記先願発明は、軸受断面組織や軸受内周面に露出する鉄部面積などを特定することにより、低温環境でも鳴き音が発生しない軸受構成を完成したものである。ところで、本発明者らは、先願発明の焼結含油軸受をモデルとして、各種の焼結合金、密度、表面の気孔量が異なる軸受について低温軸受実装試験を重ねてきた結果、鳴き音が発生しない軸受に共通する性状として、焼結含油軸受の気孔の形態が密接な関係にあることを知見した。これは、低温環境でモータを運転し始めたとき、潤滑油の挙動が軸受気孔の形態により大きく異なることに起因するものと推察される。すなわち、軸受が常温から低温になる過程で潤滑油が収縮して多孔質である焼結軸受の気孔に吸収されること、軸受内周面には所定のクリアランスをもってシャフトが挿入されており、軸受内周面とシャフトとの隙間に発生する潤滑油の表面張力より該隙間に潤滑油が残存しようとすること、潤滑油は低温になると粘度が上昇し粘性抵抗がより増大した状態になること等の理由から、低温状態でシャフトの回転が始まると、粘性抵抗の高い潤滑油が隙間に残存している影響により初期段階では高トルクになる。そして、隙間にある潤滑油の量は僅かで粘度が高いので、瞬時に油切れ状態となり、金属同士の摩擦へと変化する。このとき、未だ低温になっていると、高粘度な潤滑油の摩擦より金属同士の摩擦の方が低くなっており、回転トルクは急激に低下する。この急激なトルク低下がきっかけとなって発振し鳴き音へと発展すると考えられる。この発明は、以上のような知見に基づき、零下30℃それ以下の低温環境でモータを駆動しても鳴き音が発生せず、基本対策となり得る焼結含油軸受を得ることを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、駆動側のシャフトを軸受内周面で支持する焼結含油軸受において、前記軸受の内周面の画像を画像解析装置によって解析して得られる気孔の円相当直径として、軸受内径と前記シャフトとの間の直径クリアランスの4倍以下である気孔の合計面積が、画像面積の7%以上になっていることを特徴としている。
また、請求項2の発明は、駆動側のシャフトを軸受内周面で支持する焼結含油軸受において、前記軸受の内周面の画像を画像解析装置によって気孔の面積を演算して得られる気孔面積率が25%以下であり、前記画像解析装置によって得られる各気孔の円相当直径が150μmを超えるものが無く、かつ、前記円相当直径として40μm以下に該当する気孔の合計面積が画像面積の7%以上になっていることを特徴としている。
【0007】
(要部説明)以上の各発明において、気孔面積率や気孔の円相当直径は次の測定方法による。まず、軸受の内周面を光学顕微鏡により撮影する。このとき、軸受内周面の曲率の影響(焦点深度影響)が出ない範囲の撮影倍率とし、倍率は明確に設定する。そして、同じ倍率の内周面写真を画像解析ソフトウエアーを内蔵したコンピュータにデジタル画像として取り込む。画像解析ソフトウエアーは、Winroof Ver.3(三谷商事株式会社製)を使用する。この場合、コンピュータに取り込まれた軸受の内周面画像から、気孔の分布が平均的な画像を抽出し、金属部分に相当する光沢部分と、気孔部分に相当する黒色部分の領域をモニター画面表示させ、抽出画像全域の画素(Pixel)数に占める気孔部分領域の画素(Pixel)数の割合(%)を演算させる。この割合は、抽出画像全域面積に対する気孔部分領域の面積比率に相当し、これを気孔面積率という。また、気孔部分における不定型な個々の気孔の面積(画素数)を基に円に換算し、該円の直径に演算させる。これは気孔1個ごと行われる。次に、例えば直径100μmの円を前記した軸受内周面の撮影倍率と同じにしてデジタル画像として取り込み、この直径100μmの円画像の面積(画素)数を演算させる。その結果、直径100μmで描いた円画像の面積(Pixel)数が93Pixelである場合、各気孔画像の演算直径の画素数が93Pixelであるとき真の直径を100μmとする。この関係から、各気孔画像の演算直径の画素数の1.0752倍(=直径100μm÷93Pixel)を円相当直径(μm)という。
【0008】
そして、前記の各発明は段落0005に記載した考えに準拠し、軸受の気孔形態を指標として軸受構成を工夫したものであり、零下30℃という低温環境でモータを駆動しても運転初期時や運転直後の鳴き音が発生せず、トルク低下要因も解消して摺動特性を良好に維持でき、上記先願発明と比べて基本対策となり得る点で優れている。実施に際しては、請求項2〜4のように具体化されることが好ましい。なお、製法は、後述する実施例に限られず、上記した先願発明中、段落0008に記載した考え方などを参考にして各発明の気孔要件を充足させる。
【0009】
請求項3は、40℃における動粘度が61.2〜74.5mm2/sの合成油が含油されている構成である。これは、軸受気孔に含油される合成油として、低温環境に対応できると共に高温においても有効である粘度グレードISO VG68相当、つまり40℃における動粘度が61.2〜74.8mm2/s(cSt)のものが好ましいからである。この合成油は、潤滑特性、低温特性、熱安定性に優れる基油のPAO(ポリ−α−オレフィン)、及び/又は油性向上効果のあるエステルを主成分とするものである。このような合成油に該当する市販品としては、例えば、商品名アンデロール465(アンデロール社製)、商品名オールタイムJ−652(NOKクリューバ社製)等が挙げられる。
【0010】
請求項4は青銅系多孔質焼結合金からなる構成である。請求項5はFe含有量が40〜80質量%でFeのフェライト相と青銅系合金相とが混在した金属面組織である多孔質焼結合金からなる構成である。これらは、鳴き音発生を防ぐ上で青銅合金系の軸受内周面が最も好ましいからである。青銅系多孔質焼結合金としては、質量でSnが3〜5%程度、Niが4〜7%程度を含む合金、更にCoを含む合金、或いはこれらの合金中に黒鉛又は二硫化モリブデンを含有するものが含まれる。また、鉄と青銅系合金の混合組織である多孔質焼結合金としては、例えば、還元鉄粉42〜50質量%、電解銅粉41〜43%質量、箔状の銅粉2〜10%質量、錫粉1.4〜2.7%質量、P含有量が8〜9質量%のりん銅合金粉3〜5質量%、黒鉛粉0.7%質量以下を含む混合粉を用い、成形、焼結、サイジングして作られたものが該当する。
【0011】
請求項6は環境温度が零下で使用されること、請求項7は自動車のファンモータ用又はギヤードモータ用であるという構成である。これらは、発明軸受の用途環境や軸受対象を確認的に特定したものである。零下の環境は、例えば、自動車が冬季に遭遇する国内、或いは、緯度の大きい寒冷地の大気温度を指す。但し、発明軸受は自動車以外の用途であっても何ら差し支えない。
【0012】
【実施例】
以下の実施例は、発明構成と結果を明らかにする試験例であるが、発明を制約するものではない。
【0013】
(原料粉末)この実施例では、試験用軸受を製造するため次の原料粉を準備した。組成、原料配合割合、粒度は質量%で表している。
(1)銅粉:この粉末は下表の3種である。
(2)Cu−30%Ni合金:この粉末は福田金属箔粉工業製で、粒度が−150〜+350メッシュ41%、−350メッシュ59%のものである。
(3)、銅被覆二硫化モリブデン粉:この粉末は、ジャパンエナジー製で、粒度が−150+350メッシュ50%、−350メッシュ50%のものである。
(4)錫粉:この粉末は日本アトマイズ加工製で、粒度が−350メッシュ95%のものである。
【0014】
(試料軸受)以上の粉末を用い、各粉末の配合割合は、銅粉77%、錫粉3%、二硫化モリブデン粉2%、Cu−Ni合金粉18%とした。この場合、銅粉については、粒度(篩粒度)−350メッシュ量を基準とし、該350メッシュ量のものが80%(試料1)、66%(試料2)、53%(試料3)、45%(試料4)になるよう上記3種の銅粉を適宜に組み合わせて混合調節した。すなわち、試料1〜4は、銅粉の粒度−350メッシュ量が多い方から試料1,試料2,試料3,試料4である。そして、各試料混合粉は、同じ成形型及び条件で、圧粉成形、焼結、サイジング、及び含油して軸受試料(以下、これを試料軸受1〜4と称する)とした。ここで、試料軸受1〜4は、内径寸法が8mmで、密度6.3Mg/m3 である。なお、粉末成形は、前記試料1〜4の各混合粉を金型で軸受形状に圧縮成形(成形体密度が6.0g/cm3)した。焼結は、前記各圧粉成形体を水素ガスと窒素ガスの混合ガス中、同じ温度で焼結した。前記各焼結体をサイジングし、軸受内周面の塑性変形が塑性流動による封孔が進まない程度とした。含油は、合成油として商品名アンデロール465(アンデロール社製)を温度40℃で含浸処理した。
【0015】
(気孔形態)前記試料軸受1〜4について、段落0007に記載の測定方法により、内径面拡大写真を画像解析により求めた気孔面積率、及び、気孔の円相当直径の小さい方から階層ごとの気孔面積率の累積は表1に示す通りである。試料軸受1〜4において、気孔面積率及び最大円相当直径は、試料軸受1が22.5%、110μmであり、試料軸受2が22.0%、103μmであり、試料軸受3が35.5%、238μmであり、試料軸受4が46.5%、535μmである。
【0016】
【表1】
【0017】
(評価)前記試料軸受1〜4は同じモータ装置のシャフト用として実装した。その際、各軸受内径とモータ側金属製シャフトとの間のクリアランスが(直径クリアランスの値で)10μmになるように設定した。そして、実装試験では、前記モータ装置を零下30℃の冷蔵庫内に保管した後、通電して運転したときの音の発生状況を調べ、更に、零下40℃に保管した後の音発生状況も調べた。この音は、冷蔵庫内に設置したマイクから外部に導かれたスピーカを通して拡声し判断した。その結果は、試料軸受1と試料軸受2は異常な音が何れの温度でも認められなかった。一方、試料軸受3と試料軸受4は何れの温度でも鳴き音が認められた。
【0018】
以上の試験では、鳴き音の発生有無と表1に示す軸受内周面の気孔形態の関係をみると、粗大な気孔があるもの、及び、気孔の円相当直径が20μm以下〜50μm以下における累積気孔面積が少ないものが鳴き音を発生する点で共通していることが分かる。そして、良否の臨界としては、気孔の円相当直径150μmを越えるものが無く、円相当直径が40μm以下に該当する気孔面積率合計が少なくとも7%以上であれば鳴き音が発生しないと言える。請求項2はこの気孔構成を上記の気孔面積率(25%以下)と共に特定したものである。
【0019】
以上のような現象は次のような理由によるものと推察される。すなわち、上記した直径クリアランスは10μmであり、該直径クリアランスに保持される合成油(潤滑油)は最大10μmの隙間で存在するため、毛細管の力として捉えると10μmの毛細管力に相当する。このとき、多孔質体である軸受の気孔径が毛細管力に対して強くなり、軸受内周面の潤滑油を吸収するためには10μmの毛細管力より大きい力が必要である。気孔はほぼ全てが異形であり、大きな気孔であっても狭い隙間が一部に存在し、気孔径(d)としたときの最小隙間は1/4d〜1/5d程度になる。従って、10μmの毛細管力と同等の毛細管力を示すことができるのは、d=40μm程度以下となる。
【0020】
ここで、毛細管力(P)は、表面張力(N/m)を(σ)、固相に対する液相の接触角(rad)を(θ)、管の半径(m)を(r)とすると、P=2・σ・cosθ/rで表され、管半径が小さいほど毛細管力が大きい。油は毛細管力が大きい方に移動することになる。また、毛細管力は温度が低下することで、表面張力及び接触角共に大きくなる傾向があり、低温下では熱収縮と相まって潤滑油の多孔質体への吸収が強くなる。該毛細管力が強い気孔がどの程度あるかが重要であり、実験を重ねた結果から、気孔の円相当直径40μm以下が軸受内周面の面積に対して7%以上、気孔面積に対しては20%以上のとき鳴き音が発生しない。これは、シャフトと軸受内周面の直径クリアランスに対し気孔の円相当直径が4倍以下であることを示している。つまり直径クリアランス(C)に設定したとき、軸受内周面の気孔円相当直径は4C以下の量が多い軸受とすると、鳴き音が発生しなくなることを教示している(請求項1の気孔構成)。
【0021】
また、軸受とシャフトの隙間に潤滑油があまり存在しない方が鳴き音が発生しにくい理由は以下のように推定される。すなわち、シャフトと軸受内周面との間の摩擦において、潤滑油が全く存在しない場合は、金属接触の摩擦となり、温度依存性がなく、一定の摩擦係数(例えば、摩擦係数μ=0.3〜0.5程度)となる。一方、潤滑油が存在する場合は、潤滑油の粘性抵抗が摩擦抵抗を決定する因子となり、低温度で粘度が非常に上昇した状態で摩擦されることになるため、高い摩擦係数(例えば、摩擦係数μ=1以上)となる。
【0022】
このような現象から、低温度でシャフトが回転し始めたとき、隙間に潤滑油がない状態のときでは、摩擦係数が低い水準でスタートし、次第に摩擦熱が発生して潤滑油が熱膨張等の力で摩擦面に供給され、摩擦面温度が上昇しているため比較的低摩擦係数で維持される。反対に、粘度が高い状態になっている潤滑油が隙間にある場合では、初期の高粘度潤滑油の抵抗により摩擦係数が高い状態でスタートし、その潤滑油は粘度が高く少量しか存在しないため、摺動面に油切れ状態を形成し、隙間に潤滑油がない状態となって急激に摩擦係数が低下する。その後、前記したと同様に軸受から摩擦面へ潤滑油が供給されるようになるが、前者に比べて起動初期段階の摩擦係数の低下が急激となる。このように、鳴き音の発生のきっかけは、摩擦係数の急激な低下が重要な因子であると考えられている。
【0023】
(他の試験からの検証)次に、以上のような結果と考察を基に、軸受表面に青銅系合金が多量に存在して、あたかも摺動部が青銅系結合金のようであって、成分としては鉄を多量に含ませて、安価及び耐摩耗性を向上させる焼結合金を適用してみる。このような焼結合金には用いる銅粉として、比較的細かい粉末、及び箔状の粉末を使用すると、軸受表面に露出する鉄粒子が少なく、表面に銅合金相が多く存在する焼結合金が得られる。そこで、この試験では、粒度が150メッシュ篩下の海綿状の還元鉄粉45%、粒度が150メッシュ篩下で350メッシュ篩下が72%である電解銅粉44%、粒度が100メッシュ篩下の箔状銅粉4.5%、粒度が350メッシュ篩下で95%の錫粉2%、P含有量が8%のりん銅合金粉4%、黒鉛粉0.5%、及び成形潤滑剤0.3%、を含む混合粉を製作し、この混合粉を前記したと同様に圧縮成形、焼結、サイジングを施し、又、前例と同じ合成油を40℃で含浸した。この試料軸受5は寸法、形状が前例と同様で、密度は6.3Mg/m3 である。該試料軸受5について、上記と同じ測定方法を適用して、内周面拡大写真から画像解析により求めた気孔面積率、及び、気孔の円相当直径の小さい方から階層ごとの気孔面積率の累積は表2に示す通りである。試料軸受5の気孔面積率は22.8%、最大円相当直径は114μmである。また、試料軸受5は、前例と同様に、零下30℃及び零下40℃でモータ装置に実装して評価した。その結果は異常な音がいずれも認められなかった。
【0024】
表2に示した試料軸受5の気孔状態をみると、前述したように気孔の円相当直径が150μmを越えるものは無く、円相当直径が40μm以下に該当する気孔面積率合計が8.8%である。これは、上記試料軸受2が7.0%であったことを考えると、鳴き音が起こらないような軸受内周面の気孔形態としては、焼結合金の組成にかかわらず、画像解析によって得られる気孔の円相当直径の最大が150μm以下である要件と、円相当直径が40μm以下に該当する気孔面積率合計が7%以上である要件とを充足することが最も好ましいことを示している。
【0025】
【表2】
【0026】
以上のことは、これ以外の試験として、例えば、試料軸受5の鉄粉の含有量45%を、40%又は50%に代えた焼結合金についても同様な結果となった。また、試料軸受5の原料配合割合のうち、銅粉の量を44%から25%に少なくし、黒鉛粉の代わりに二硫化モリブデン5%としたもの、りん銅合金を含まないもので作った焼結合金でも同様な結果となった。なお、通常はこれらの鉄を含む焼結合金において、軸受内周面の大部分が銅合金で覆われているものが常温での摺動特性に優れており、鉄の含有量は50%より少ない方が好ましい。
【0027】
【発明の効果】
以上、説明したように、この発明の焼結含油軸受は、軸受内周面の気孔形態を指標として軸受構成を工夫することにより、例えば、零下30℃、更にそれ以下の寒冷地で運転する必要があるモータ装置に適用しても、運転初期段階での鳴き音を発生させず、適用モータ装置の品質及び信頼性を向上することができる。
Claims (7)
- 駆動側のシャフトを軸受内周面で支持する焼結含油軸受において、前記軸受内周面の画像を画像解析装置によって解析して得られる気孔の円相当直径として、軸受内径と前記シャフトとの間の直径クリアランスの4倍以下である気孔の合計面積が、画像面積の7%以上になっていることを特徴とする焼結含油軸受。
- 駆動側のシャフトを軸受内周面で支持する焼結含油軸受において、前記軸受内周面の画像を画像解析装置によって気孔の面積を演算して得られる気孔面積率が25%以下であり、前記画像解析装置によって得られる各気孔の円相当直径が150μmを超えるものが無く、かつ、前記円相当直径として40μm以下に該当する気孔の合計面積が画像面積の7%以上になっていることを特徴とする焼結含油軸受。
- 40℃における動粘度が61.2〜74.8mm2 /sの合成油が含油されている請求項1又は2に記載の焼結含油軸受。
- 青銅系多孔質焼結合金からなる請求項1又は2に記載の焼結含油軸受。
- Fe含有量が40〜80質量%でFeのフェライト相と青銅系合金相とが混在した金属面組織である多孔質焼結合金からなる請求項1又は2に記載の焼結含油軸受。
- 環境温度が零下で使用される請求項1又は2に記載の焼結含油軸受。
- 自動車のファンモータ用又はギヤードモータ用である請求項1又は2に記載の焼結含油軸受。
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Legal Events
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20081002 |
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A521 | Written amendment |
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20081226 |