JP2004137625A - フライアッシュファイバーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フライアッシュを電気炉で溶融する際、有毒な一酸化炭素ガスの発生やフライアッシュが飛散するなどの作業環境を改善し、繊維が細くショット(粒子)混入率の少ない良質な繊維を製造する方法を提供すること。
【解決手段】粉末状のフライアッシュにバインダーを混合して押出成形したブロック体を、乾燥・焼成処理して未燃炭素分を除去処理した後で、破砕して粒状体としたものを電気炉にて溶融し繊維化することを特徴とするフライアッシュファイバーの製造方法、及びフライアッシュにアルミニウム原料を添加することによりSiO2 含有率を調整し電気炉での溶融粘度制御を行なう上記製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】粉末状のフライアッシュにバインダーを混合して押出成形したブロック体を、乾燥・焼成処理して未燃炭素分を除去処理した後で、破砕して粒状体としたものを電気炉にて溶融し繊維化することを特徴とするフライアッシュファイバーの製造方法、及びフライアッシュにアルミニウム原料を添加することによりSiO2 含有率を調整し電気炉での溶融粘度制御を行なう上記製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フライアッシュファイバーの製造方法に関し、特にフライアッシュを電気炉で溶融し易い性状に前処理することにより、安定的な溶融と良質な繊維化が可能となるフライアッシュファイバーの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石炭焚きボイラ等から排出される石炭灰の大半は、いわゆるフライアッシュで未燃分を含み、その利用方法としては、埋立てや土壌改良、セメント原料、路盤材、人工軽量骨材等として用いられ、一部にフライアッシュファイバーとしての繊維化に関する検討もされている。例えば、繊維化に関して石炭焚きボイラーとしてのスラグタップ式燃焼炉の炉床出口に溶融灰の温度調整装置を有する加熱器を設け、その出口に鉱滓綿製造装置を設けて、エネルギー節減を図ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、石炭灰自体を電気炉で溶融し、遠心力により吹飛ばす(スピニング)か、圧縮空気などで風砕(ブローイング)することにより繊維化する方法も提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3及び非特許文献1参照)が、いずれも実用化には至っていない。
【0003】
フライアッシュファイバーと類似した無機繊維として、鉄鋼スラグを原料としているロックウールや、シリカ等の酸化物を原料としているセラミックファイバーがある。ロックウールは、鉄鋼スラグ(主に高炉スラグ)と珪石(シリカ源)をキューポラまたは電気炉で1500〜1600℃で溶融し、これをスピニング等で吹飛ばして繊維化したものである(例えば、非特許文献2参照)。
セラミックファイバーは、シリカやアルミナ等の主原料を電気炉で約2000℃で溶融し、これを圧縮空気や高圧蒸気などでブローイングし繊維化したものである(例えば、非特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−24410号公報(第1頁、第2図)
【特許文献2】
特開平6−316816号公報(第1頁、第1図)
【特許文献3】
特開平6−316815号公報(第13〜18頁)
【非特許文献1】
渡邊ら著「火力原子力発電」火力原子力発、1995年、p.170−175
【非特許文献2】
「窯業・建材ハンドブック(1996年版)」建設綜合資料社、p.246
【非特許文献3】
堀江鋭二著「セラミックファイバーと断熱施工」省エネルギーセンター、1985年、p.6−7
【0005】
ここで、代表的なフライアッシュの物理的性状を表1に、化学成分含有量を表2に示す。
【表1】
【0006】
【表2】
【0007】
一般にフライアッシュは以下の点でロックウール原料およびセラミックファイバー原料と基本的に異なっている。
▲1▼未燃炭素分を約5%以下の割合で含有している。
▲2▼粒径が小さい(0.1mm以下90%以上)。
▲3▼シリカ(SiO2)成分が多い。
ここで表1におけるフライアッシュの強熱減量は、950〜1000℃で15分間加熱した時の質量変化から求めるが、この量は未燃炭素の含有量とほぼ同じであり、本発明ではこの強熱減量を未燃炭素分と称することとする。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
かかる特性を有するフライアッシュを電気炉で溶融する場合、この未燃炭素分が酸化分解し一酸化炭素ガスが発生する。このガスが電気炉の電極の近傍で発生すると、電極からの通電が阻害され、安定した溶融を行うことが出来なくなる。また、ガスの放出により粒径の小さいフライアッシュが飛散すると共に、有毒な一酸化炭素が作業環境を悪化させる。また鉄鋼スラグのSiO2 含有量が34%(「鉄鋼スラグの特性と有用性」繊鋼スラグ協会)、セラミックファイバーでも52%(「商品力タログ」イソライト工業(株))であるのに比べて、フライアッシュのSiO2 含有量は平均でも54%以上あり、フライアッシュはSiO2 含有率が高い原料であるといえる。シリカ含有量が多いと溶融状態での粘性が大きくなり、繊維が細くショット(粒子)が少ない良質な繊維を製造することが困難になる。かかる現状から、本発明の目的はフライアッシュを電気炉で溶融する際、有毒な一酸化炭素ガスの発生やフライアッシュが飛散するなどの作業環境を改善し、繊維が細くショット(粒子)混入率の少ない良質な繊維を製造する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討の結果、フライアッシュを電気炉で溶融し繊維化するに際して、予めフライアッシュ中の未燃炭素分の除去処理と粒状化処理を行なう本発明方法を完成した。
すなわち、上記課題を解決するために本発明の第1の手段は、粉末状のフライアッシュにバインダーを混合して押出成形したブロック体を、乾燥・焼成処理して未燃炭素分を除去処理した後で、破砕して粒状体としたものを電気炉にて溶融し繊維化することを特徴とするフライアッシュファイバーの製造方法である。
また、上記課題を解決するために本発明の第2の手段は、フライアッシュにアルミニウム原料を添加することによりSiO2 含有率を調整し、電気炉での溶融粘度制御を行なう上記に記載のフライアッシュファイバーの製造方法である。
【0010】
【作用】
上記第1の手段によれば、原料フライアッシュ中の未燃炭素分が除去され、且つ粉末状の原料をブロック体に固化させて、乾燥・焼成後に破砕した粒状体で電気炉にて溶融することから、一酸化炭素ガスの発生を抑制し電極からの通電が阻害されることがなくなり、安定した溶融を可能とせしめると共に、フライアッシュの飛散を防止させ作業環境を保全することができる。
また上記第2の手段によれば、フライアッシュの溶融状態での粘性を低減させ、良質な繊維を製造することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図に従って詳細に説明する。
図1は、本発明のフライアッシュファイバーの製造工程を示し、先ず粉末状フライアッシュ1とバインダー2及び水または溶剤3、必要に応じてアルミナや石灰等の粘度調整材4を混合機5にて均一に混合または適宜加熱下で混練した後で、ピストン押出機またはスクリュウ押出機6でブロック体として先端ノズルから押出成形される。
ここで本発明の粉末状フライアッシュ1としては、石炭焚きボイラ、石炭水スラリ焚きボイラ、石炭コークス、石油コークスの燃焼炉、流動床式石炭ガス化炉等にて発生する排ガス中から捕集される粒径0.1mm以下が90%以上の未燃炭素を含有する粉体である。
【0012】
また、粉末状フライアッシュ1をブロック体として押出成形するのに必要なバインダー2としては、成形助剤となるものであって、例えばデンプン質糊料、メチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体、酢酸ビニル誘導体等のモルタル接着増強剤、その他粉体押出し時の形状を保持・粘結増強させる合成高分子、天然高分子等であれば使用可能である。
かかるバインダーを粉末状フライアッシュと混合する時には、必要に応じて、水3または溶剤や可塑剤等を添加して均一に混合または適宜加熱下で混練される。押出機6での押出成形に際しては、スクリュー押出機の場合は混練しつつ先端ノズルから立方体、円柱体等の形態で押出して適宜の長さのブロック体とする。
【0013】
本発明では、粉末状フライアッシュにはバインダーの他に、必要に応じてSiO2 含有率の調整と電気炉での溶融粘度を下げる制御を行なうために粘度調整材を配合するが、その配合はバインダーと同時であっても良いし、或いは電気炉に直接添加してもよい。粘度調整材としてはアルミナや石灰等が使用できるが、特に好ましくはアルミナを含む材料であり、例えば粘土鉱物、仮焼アルミナ等の酸化アルミニウムやバンド頁岩等の高アルミナ天然原料等を挙げることができる。特に原料フライアッシュのSiO2 含有率は、原料炭の種類によって変化するが、原料のSiO2の組成が40〜70wt%、より好ましくは50〜60wt%となるように調整することが望ましい。
【0014】
得られた成形ブロック体は、熱風等による乾燥機7によりバインダーに含まれた水分や溶剤を蒸発させて乾燥固化した後、ガスバーナー等による焼成炉8にて、1000〜1300℃で未燃炭素分を完全に焼却して除去処理する。焼却時に部分融着したブロック体は適宜破砕機9で破砕処理して、粒径5mm以下の粒状体とする。粒状体は、電極11を備えた抵抗式電気炉10に直接投入して1800〜2000℃で溶融化する。電気炉出口のノズル12から出滓される溶融灰13は、公知の遠心力により吹飛ばす(スピニング)か、コンプレッサー14からの圧縮空気などで風砕(ブローイング)するか、又はこれらを併用することにより繊維化する方法で繊維化されてフライアッシュファイバー15が得られる。この場合には、繊維が細くショット(粒子)混入率の少ない良質なフライアッシュファイバーを製造することができる。
【0015】
【実施例】
以下に本発明の具体的な実施例を説明する。
使用したフライアッシュは、オーストラリア産のブレアソール炭を石炭火力発電所でボイラー焚きした時の排ガスを石炭火力発電所の電気集塵器で処理して採取したものであり、未燃炭素分は5%以下である。その化学成分の含有率を表3に示す。
【0016】
【表3】
【0017】
ブレアソール炭はSiO2が多いので、溶融時の粘性を小さくするためにアルミナをフライアッシュ9に対し1重量比となるように添加し、さらに成形性を保持させる成形バインダー(松本油脂製マーポローズ:建材用化学糊)と水を表4に示す配合割合で均一に混合してフライアッシュの成形原料とした。
【0018】
【表4】
【0019】
これらのフライアッシュの成形原料を図1の混合機5でよく混合した後、押出し成形機6で断面が正方形(一辺の長さ50mm)の立方体として押出し、長さ約200mmのブロック体に切断した。これを熱風乾燥器7に装填し、50℃にて3日間乾燥させ固化した。次いでブロック体をガスバーナーによる焼成炉8に入れ、1200℃で5時間焼成した。これにより成形助剤と未燃炭素は酸化分解し、焼結したブロック体が得られた。焼結したブロック体を破砕機9に投入し、粒径5mm以下に破砕した。
【0020】
破砕した原料を抵抗式の電気炉10に装填した。電極11はモリブデン製で3本挿入し、3相の交流電流を通電した。溶融温度は1800〜2000℃、平均1880℃であった。かかる電気炉で溶融する間、一酸化炭素ガスの発生もなく、従って粒径の小さいフライアッシュの飛散も認められず作業環境は極めて良好で、且つ電極からの通電が阻害されることなく安定した溶融が行われることが確認された。溶融灰13は、炉底に設置したタングステン製のノズル孔12(φ5.8mm)から出滓した。出滓量は47kg/hで、粘度は0.5Pa・s程度であった。出滓した溶融灰は、電気炉10の直下でコンプレッサー13からの圧縮空気(5〜6kg/cm2)により、繊維に風砕された。空気量は溶融灰1kg当り8〜9m3であった。
これにより繊維径が0.6〜11.3μm、平均3.8μmで、ショットも4%以下と少ない良質なフライアッシュファイバーを製造することができた。そのフライアッシュファイバーの化学成分組成を表5に示す。
【0021】
【表5】
【0022】
比較例1
実施例1で使用したフライアッシュに、成形バインダーを配合しないで、ブロック体に押出し成形することなく、その他は同じ配合で直接に電気炉に装填して同一条件で溶融した。
この結果、フライアッシュを電気炉で溶融する場合、一酸化炭素ガスが発生すると共にガスの放出により粒径の小さいフライアッシュが飛散して作業環境を悪化させると共に、電極からの通電が阻害され、安定した溶融を行うことが出来なくなって繊維化を中止した。
【0023】
比較例2
実施例1で使用したフライアッシュに、アルミナを添加しない他は、同一配合条件でブロック体に押出し成形し、乾燥・焼成後に破砕して電気炉に装填して同一条件で溶融した。
電気炉で溶融する間、一酸化炭素ガスの発生もなく、従って粒径の小さいフライアッシュの飛散も認められず作業環境は極めて良好で、且つ電極からの通電が阻害されることなく安定した溶融が行われることが確認されたが、溶融粘度が1.0Pa・sと実施例1よりも高くなった。これにより繊維径が8.4〜59.9μm、平均23.2μmで繊維が実施例1よりも比較的太く、ショットが10%程度と多いフライアッシュファイバーしか得られなかった。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、フライアッシ土を電気炉で溶融する際の一酸化炭素ガスの発生を抑制し、安定した溶融を可能とせしめると共に、フライアッシュの飛散を防止させ作業環境を保全することができる。
更に本発明によれば、フライアッシュの溶融状態での粘性を低減させ、繊維が細くショット(粒子)が少ない良質な繊維を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フライアッシュファイバーの製造工程を示した系統図である。
【符号の説明】
1 粉末状フライアッシュ
2 バインダー
3 水または溶剤
4 粘度調整材
5 混合機
6 押出機
7 乾燥機
8 焼成炉
9 破砕機
10 電気炉
11 電極
12 出口のノズル
13 溶融灰
14 コンプレッサー
15 フライアッシュファイバー
【発明の属する技術分野】
本発明は、フライアッシュファイバーの製造方法に関し、特にフライアッシュを電気炉で溶融し易い性状に前処理することにより、安定的な溶融と良質な繊維化が可能となるフライアッシュファイバーの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石炭焚きボイラ等から排出される石炭灰の大半は、いわゆるフライアッシュで未燃分を含み、その利用方法としては、埋立てや土壌改良、セメント原料、路盤材、人工軽量骨材等として用いられ、一部にフライアッシュファイバーとしての繊維化に関する検討もされている。例えば、繊維化に関して石炭焚きボイラーとしてのスラグタップ式燃焼炉の炉床出口に溶融灰の温度調整装置を有する加熱器を設け、その出口に鉱滓綿製造装置を設けて、エネルギー節減を図ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、石炭灰自体を電気炉で溶融し、遠心力により吹飛ばす(スピニング)か、圧縮空気などで風砕(ブローイング)することにより繊維化する方法も提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3及び非特許文献1参照)が、いずれも実用化には至っていない。
【0003】
フライアッシュファイバーと類似した無機繊維として、鉄鋼スラグを原料としているロックウールや、シリカ等の酸化物を原料としているセラミックファイバーがある。ロックウールは、鉄鋼スラグ(主に高炉スラグ)と珪石(シリカ源)をキューポラまたは電気炉で1500〜1600℃で溶融し、これをスピニング等で吹飛ばして繊維化したものである(例えば、非特許文献2参照)。
セラミックファイバーは、シリカやアルミナ等の主原料を電気炉で約2000℃で溶融し、これを圧縮空気や高圧蒸気などでブローイングし繊維化したものである(例えば、非特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−24410号公報(第1頁、第2図)
【特許文献2】
特開平6−316816号公報(第1頁、第1図)
【特許文献3】
特開平6−316815号公報(第13〜18頁)
【非特許文献1】
渡邊ら著「火力原子力発電」火力原子力発、1995年、p.170−175
【非特許文献2】
「窯業・建材ハンドブック(1996年版)」建設綜合資料社、p.246
【非特許文献3】
堀江鋭二著「セラミックファイバーと断熱施工」省エネルギーセンター、1985年、p.6−7
【0005】
ここで、代表的なフライアッシュの物理的性状を表1に、化学成分含有量を表2に示す。
【表1】
【0006】
【表2】
【0007】
一般にフライアッシュは以下の点でロックウール原料およびセラミックファイバー原料と基本的に異なっている。
▲1▼未燃炭素分を約5%以下の割合で含有している。
▲2▼粒径が小さい(0.1mm以下90%以上)。
▲3▼シリカ(SiO2)成分が多い。
ここで表1におけるフライアッシュの強熱減量は、950〜1000℃で15分間加熱した時の質量変化から求めるが、この量は未燃炭素の含有量とほぼ同じであり、本発明ではこの強熱減量を未燃炭素分と称することとする。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
かかる特性を有するフライアッシュを電気炉で溶融する場合、この未燃炭素分が酸化分解し一酸化炭素ガスが発生する。このガスが電気炉の電極の近傍で発生すると、電極からの通電が阻害され、安定した溶融を行うことが出来なくなる。また、ガスの放出により粒径の小さいフライアッシュが飛散すると共に、有毒な一酸化炭素が作業環境を悪化させる。また鉄鋼スラグのSiO2 含有量が34%(「鉄鋼スラグの特性と有用性」繊鋼スラグ協会)、セラミックファイバーでも52%(「商品力タログ」イソライト工業(株))であるのに比べて、フライアッシュのSiO2 含有量は平均でも54%以上あり、フライアッシュはSiO2 含有率が高い原料であるといえる。シリカ含有量が多いと溶融状態での粘性が大きくなり、繊維が細くショット(粒子)が少ない良質な繊維を製造することが困難になる。かかる現状から、本発明の目的はフライアッシュを電気炉で溶融する際、有毒な一酸化炭素ガスの発生やフライアッシュが飛散するなどの作業環境を改善し、繊維が細くショット(粒子)混入率の少ない良質な繊維を製造する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討の結果、フライアッシュを電気炉で溶融し繊維化するに際して、予めフライアッシュ中の未燃炭素分の除去処理と粒状化処理を行なう本発明方法を完成した。
すなわち、上記課題を解決するために本発明の第1の手段は、粉末状のフライアッシュにバインダーを混合して押出成形したブロック体を、乾燥・焼成処理して未燃炭素分を除去処理した後で、破砕して粒状体としたものを電気炉にて溶融し繊維化することを特徴とするフライアッシュファイバーの製造方法である。
また、上記課題を解決するために本発明の第2の手段は、フライアッシュにアルミニウム原料を添加することによりSiO2 含有率を調整し、電気炉での溶融粘度制御を行なう上記に記載のフライアッシュファイバーの製造方法である。
【0010】
【作用】
上記第1の手段によれば、原料フライアッシュ中の未燃炭素分が除去され、且つ粉末状の原料をブロック体に固化させて、乾燥・焼成後に破砕した粒状体で電気炉にて溶融することから、一酸化炭素ガスの発生を抑制し電極からの通電が阻害されることがなくなり、安定した溶融を可能とせしめると共に、フライアッシュの飛散を防止させ作業環境を保全することができる。
また上記第2の手段によれば、フライアッシュの溶融状態での粘性を低減させ、良質な繊維を製造することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図に従って詳細に説明する。
図1は、本発明のフライアッシュファイバーの製造工程を示し、先ず粉末状フライアッシュ1とバインダー2及び水または溶剤3、必要に応じてアルミナや石灰等の粘度調整材4を混合機5にて均一に混合または適宜加熱下で混練した後で、ピストン押出機またはスクリュウ押出機6でブロック体として先端ノズルから押出成形される。
ここで本発明の粉末状フライアッシュ1としては、石炭焚きボイラ、石炭水スラリ焚きボイラ、石炭コークス、石油コークスの燃焼炉、流動床式石炭ガス化炉等にて発生する排ガス中から捕集される粒径0.1mm以下が90%以上の未燃炭素を含有する粉体である。
【0012】
また、粉末状フライアッシュ1をブロック体として押出成形するのに必要なバインダー2としては、成形助剤となるものであって、例えばデンプン質糊料、メチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体、酢酸ビニル誘導体等のモルタル接着増強剤、その他粉体押出し時の形状を保持・粘結増強させる合成高分子、天然高分子等であれば使用可能である。
かかるバインダーを粉末状フライアッシュと混合する時には、必要に応じて、水3または溶剤や可塑剤等を添加して均一に混合または適宜加熱下で混練される。押出機6での押出成形に際しては、スクリュー押出機の場合は混練しつつ先端ノズルから立方体、円柱体等の形態で押出して適宜の長さのブロック体とする。
【0013】
本発明では、粉末状フライアッシュにはバインダーの他に、必要に応じてSiO2 含有率の調整と電気炉での溶融粘度を下げる制御を行なうために粘度調整材を配合するが、その配合はバインダーと同時であっても良いし、或いは電気炉に直接添加してもよい。粘度調整材としてはアルミナや石灰等が使用できるが、特に好ましくはアルミナを含む材料であり、例えば粘土鉱物、仮焼アルミナ等の酸化アルミニウムやバンド頁岩等の高アルミナ天然原料等を挙げることができる。特に原料フライアッシュのSiO2 含有率は、原料炭の種類によって変化するが、原料のSiO2の組成が40〜70wt%、より好ましくは50〜60wt%となるように調整することが望ましい。
【0014】
得られた成形ブロック体は、熱風等による乾燥機7によりバインダーに含まれた水分や溶剤を蒸発させて乾燥固化した後、ガスバーナー等による焼成炉8にて、1000〜1300℃で未燃炭素分を完全に焼却して除去処理する。焼却時に部分融着したブロック体は適宜破砕機9で破砕処理して、粒径5mm以下の粒状体とする。粒状体は、電極11を備えた抵抗式電気炉10に直接投入して1800〜2000℃で溶融化する。電気炉出口のノズル12から出滓される溶融灰13は、公知の遠心力により吹飛ばす(スピニング)か、コンプレッサー14からの圧縮空気などで風砕(ブローイング)するか、又はこれらを併用することにより繊維化する方法で繊維化されてフライアッシュファイバー15が得られる。この場合には、繊維が細くショット(粒子)混入率の少ない良質なフライアッシュファイバーを製造することができる。
【0015】
【実施例】
以下に本発明の具体的な実施例を説明する。
使用したフライアッシュは、オーストラリア産のブレアソール炭を石炭火力発電所でボイラー焚きした時の排ガスを石炭火力発電所の電気集塵器で処理して採取したものであり、未燃炭素分は5%以下である。その化学成分の含有率を表3に示す。
【0016】
【表3】
【0017】
ブレアソール炭はSiO2が多いので、溶融時の粘性を小さくするためにアルミナをフライアッシュ9に対し1重量比となるように添加し、さらに成形性を保持させる成形バインダー(松本油脂製マーポローズ:建材用化学糊)と水を表4に示す配合割合で均一に混合してフライアッシュの成形原料とした。
【0018】
【表4】
【0019】
これらのフライアッシュの成形原料を図1の混合機5でよく混合した後、押出し成形機6で断面が正方形(一辺の長さ50mm)の立方体として押出し、長さ約200mmのブロック体に切断した。これを熱風乾燥器7に装填し、50℃にて3日間乾燥させ固化した。次いでブロック体をガスバーナーによる焼成炉8に入れ、1200℃で5時間焼成した。これにより成形助剤と未燃炭素は酸化分解し、焼結したブロック体が得られた。焼結したブロック体を破砕機9に投入し、粒径5mm以下に破砕した。
【0020】
破砕した原料を抵抗式の電気炉10に装填した。電極11はモリブデン製で3本挿入し、3相の交流電流を通電した。溶融温度は1800〜2000℃、平均1880℃であった。かかる電気炉で溶融する間、一酸化炭素ガスの発生もなく、従って粒径の小さいフライアッシュの飛散も認められず作業環境は極めて良好で、且つ電極からの通電が阻害されることなく安定した溶融が行われることが確認された。溶融灰13は、炉底に設置したタングステン製のノズル孔12(φ5.8mm)から出滓した。出滓量は47kg/hで、粘度は0.5Pa・s程度であった。出滓した溶融灰は、電気炉10の直下でコンプレッサー13からの圧縮空気(5〜6kg/cm2)により、繊維に風砕された。空気量は溶融灰1kg当り8〜9m3であった。
これにより繊維径が0.6〜11.3μm、平均3.8μmで、ショットも4%以下と少ない良質なフライアッシュファイバーを製造することができた。そのフライアッシュファイバーの化学成分組成を表5に示す。
【0021】
【表5】
【0022】
比較例1
実施例1で使用したフライアッシュに、成形バインダーを配合しないで、ブロック体に押出し成形することなく、その他は同じ配合で直接に電気炉に装填して同一条件で溶融した。
この結果、フライアッシュを電気炉で溶融する場合、一酸化炭素ガスが発生すると共にガスの放出により粒径の小さいフライアッシュが飛散して作業環境を悪化させると共に、電極からの通電が阻害され、安定した溶融を行うことが出来なくなって繊維化を中止した。
【0023】
比較例2
実施例1で使用したフライアッシュに、アルミナを添加しない他は、同一配合条件でブロック体に押出し成形し、乾燥・焼成後に破砕して電気炉に装填して同一条件で溶融した。
電気炉で溶融する間、一酸化炭素ガスの発生もなく、従って粒径の小さいフライアッシュの飛散も認められず作業環境は極めて良好で、且つ電極からの通電が阻害されることなく安定した溶融が行われることが確認されたが、溶融粘度が1.0Pa・sと実施例1よりも高くなった。これにより繊維径が8.4〜59.9μm、平均23.2μmで繊維が実施例1よりも比較的太く、ショットが10%程度と多いフライアッシュファイバーしか得られなかった。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、フライアッシ土を電気炉で溶融する際の一酸化炭素ガスの発生を抑制し、安定した溶融を可能とせしめると共に、フライアッシュの飛散を防止させ作業環境を保全することができる。
更に本発明によれば、フライアッシュの溶融状態での粘性を低減させ、繊維が細くショット(粒子)が少ない良質な繊維を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フライアッシュファイバーの製造工程を示した系統図である。
【符号の説明】
1 粉末状フライアッシュ
2 バインダー
3 水または溶剤
4 粘度調整材
5 混合機
6 押出機
7 乾燥機
8 焼成炉
9 破砕機
10 電気炉
11 電極
12 出口のノズル
13 溶融灰
14 コンプレッサー
15 フライアッシュファイバー
Claims (2)
- 粉末状のフライアッシュにバインダーを混合して押出成形したブロック体を、乾燥・焼成処理して未燃炭素分を除去処理した後で、破砕して粒状体としたものを電気炉にて溶融し繊維化することを特徴とするフライアッシュファイバーの製造方法。
- フライアッシュにアルミニウム原料を添加することによりSiO2 含有率を調整し、電気炉での溶融粘度制御を行なう請求項1に記載のフライアッシュファイバーの製造方法。
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2002
- 2002-10-17 JP JP2002303259A patent/JP2004137625A/ja active Pending
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