JP2004137600A - 超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材及びその製造方法 - Google Patents

超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材及びその製造方法の提供。
【解決手段】固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるオーステナイト鋼バルク材であって、前記各ナノ結晶粒子の粒子間及び/又は同粒子の内部に、結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属の酸化物、窒化物、炭化物等を存在させてなるものである。
 鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末を、窒素源となる物質とともに混合し、メカニカルアロイング(MA)することによって、高窒素濃度ナノ結晶オーステナイト鋼粉末を製造した後、同オーステナイト鋼粉末を放電プラズマ焼結、圧延等で固化成形処理してオーステナイト鋼バルク材となす。
【選択図】  図9

Description

 本発明は、金属、特に超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材及びその製造方法に関する。
 金属材料の強さ、硬さはホール・ペッチの関係式が示すように、結晶粒径Dが小さくなるほど増大し、このような強さの粒径依存は、ナノサイズレベルの結晶粒径なっても、Dが50〜100nm付近までは同様に成立するので、結晶粒径をナノサイズレベルまで超微細化することは、金属材料を強化する最も重要な手段の一つになっている。またDが数nm程度まで超微細化されると、超塑性が現れるようになることも専門誌で示唆されている。
 さらにまた、鉄、コバルト、ニッケル等の磁性元素では、結晶粒径Dがミクロンのオーダの範囲にある場合とは逆に、ナノオーダの粒径範囲ではDが小になるほど、保磁力が低下し、軟磁性特性が向上するという報告もみられる。
 しかし、溶解法で製造されている多くの金属材料の結晶粒径Dは、通常数ミクロン〜数十ミクロンであり、後処理によってもDをナノオーダにすることは難しく、例えば、鋼の結晶粒微細化プロセスとして重要な制御圧延の場合でも、その到達できる粒径の下限は4〜5μm程度である。従って、このような通常の方法では、ナノサイズレベルまでに粒径を微細化した材料は得られない。
 例えば、耐熱材料、超硬材料として有用なNi3Al、Co3Ti、Ni3(Si、Ti)、TiAlなどの金属間化合物やAl23、ZrO2、TiC、Cr32、TiN、TiB2などの酸化物系又は非酸化物系セラミックスでは、いずれもその脆さのため、常温では一般にはその塑性加工が困難であり、比較的高い温度域での超塑性を利用した成形加工が極めて重要となる。
 しかし、超塑性を発現させるためには、その結晶粒径をナノサイズ又はこれに近いオーダまで微細化することが必要であるが、このような成形加工に応えられる満足し得る超微細粉末の提供はなされていない。
 代表的なオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304相当組成のクロム−ニッケル系ステンレス鋼に窒素(N)を例えば0.9%(質量)ほど添加すると、そのような高窒素濃度のステンレス鋼は、その耐力(降伏強さ)がSUS304ステンレス鋼の約3倍にあたるまで増加し、しかもこれには破壊靱性の減少が伴わない上、耐食性の面でも耐孔食性を大きく向上させ、応力腐食割れ感受性も著しく低下させる。さらにまた、窒素は極めて強力なオーステナイト安定化元素であるため、オーステナイト鋼としての前記の強度特性や耐食性を損なうことなく高価なニッケルを代替できるばかりでなく、強い冷間加工のもとでも加工誘起マルテンサイト変態を抑制をするなどの優れた特性を示す。
 こうしたNの効果は、クロム−マンガン系オーステナイト鋼にも同様にみられる。このようなことから、高N濃度のクロム−ニッケル系及びクロム−マンガン系オーステナイト鋼は、次世代の有望な新素材として近年になって大きな注目を集めている。
 従来、0.1〜2%(質量)程度までNを含む高Nオーステナイト鋼は、通常窒素ガス雰囲気中での溶解・凝固法や窒素ガス雰囲気中での高温固体拡散・焼結法などによって製造されてきている。しかし、これらの方法では目標とする窒素濃度の高いものほど雰囲気の窒素ガス圧を上げなければならないので、高温高圧という作業上及び安全上の難点があった。
オーステナイト鋼も含め、一般の鉄鋼材料では、他の金属と同様、結晶粒微細化による強度(硬さ)の増加の効果が極めて大きく、高Nオーステナイト鋼についても、結晶粒微細化のため種々改善研究が進められてきている。しかしそうした方法では、ナノサイズレベルまでの結晶粒の微細化は非常に難しく、数十μm程度の結晶粒組織の高Nオーステナイト鋼は得られているが、満足し得る結晶粒の超微細化材料の提供はなされていない。
 一方、次世代の大型技術(磁気浮上列車、超電導応用機器などの周辺技術)を支える鋼種として大きく注目されている高マンガンオーステナイトにおいても、クロム−ニッケル系、クロム−マンガン系オーステナイト鋼の場合と同様、ナノオーダの結晶粒組織をもつ材料の提供はなされていない。
 本発明は上記課題を解決するもので、下記の発明である。
 本発明は基本的には、元素状の金属粉末単体、又はこれに他元素等を添加した混合粉末のボールミル等を用いたメカニカルミリング(MM)又はメカニカルアロイング(MA)処理と、それにより得られたナノ結晶微粉末の固化成形処理により、結晶粒径をナノサイズのレベルにまで微細化した場合に達成できるその限界に近い強さ(高強度)ないし硬さ(超硬質)をもつバルク材を提供し、さらに鉄、コバルト、ニッケルなどの磁性元素については、その結晶粒をナノサイズのレベルにまで微細化することによって、より優れた軟磁性を示す新規な材料を提供することである。
 まず、鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などとの元素状混合粉末を、N源となる物質とともに、ボールミル等を用いたメカニカルアロイング(MA)処理をし、それにより得られたナノ結晶オーステナイト鋼微粉末を固化成形処理により、固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)、好ましくは0.3〜1.0%(質量)、特に好ましくは0.4〜0.9.0%(質量)、含有する超硬質で強靱かつ優れた耐食性(耐孔食性)を有する非磁性な高Nナノ結晶オーステナイト鋼材料の新規な製造方法を提供するものである。
 また、高マンガンオーステナイト鋼についても、上記と同様のMA処理・固化成形処理技術を適用することによって、そのナノオーダの結晶組織をもつ材料を提供するものである。
 すなわち本発明は、下記構成のオーステナイト鋼バルク材及びその製造方法あるいは用途である。
  (1) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるオーステナイト鋼バルク材であって、
前記各ナノ結晶粒子の粒子間(粒子と粒子の間)又は同粒子の内部に、あるいは粒子間及び同粒子の内部に、結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属の酸化物を存在させてなることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (2) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるオーステナイト鋼バルク材であって、
前記各ナノ結晶粒子の粒子間(粒子と粒子の間)又は同粒子の内部に、あるいは粒子間及び同粒子の内部に、結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属の窒化物を存在させてなることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (3) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるオーステナイト鋼バルク材であって、
前記各ナノ結晶粒子の粒子間(粒子と粒子の間)又は同粒子の内部に、あるいは粒子間及び同粒子の内部に、結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属の炭化物を存在させてなることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (4) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるオーステナイト鋼バルク材であって、
前記各ナノ結晶粒子の粒子間(粒子と粒子の間)又は同粒子の内部に、あるいは粒子間及び同粒子の内部に、結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属のケイ化物(シリサイド)を存在させてなることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (5) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるオーステナイト鋼バルク材であって、
前記各ナノ結晶粒子の粒子間(粒子と粒子の間)又は同粒子の内部に、あるいは粒子間及び同粒子の内部に、結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属の硼化物(ボライド)を存在させてなることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (6) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるオーステナイト鋼バルク材であって、
前記各ナノ結晶粒子の粒子間(粒子と粒子の間)又は同粒子の内部に、あるいは粒子間及び同粒子の内部に、結晶粒成長抑制物質として、(1)金属又は半金属の酸化物、(2)金属又は半金属の窒化物、(3)金属又は半金属の炭化物、(4)金属又は半金属のケイ化物(シリサイド)又は(5)金属又は半金属の硼化物(ボライド)の(1)〜(5)から選ばれる2種以上を存在させてなることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (7) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるオーステナイト鋼バルク材が、その構成組織中にフェライトナノ結晶粒子を50%未満含有するものであることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (8) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるバルク材が、窒素を0.1〜5.0%(質量)含有するものであることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
 以上においてナノ結晶オーステナイト鋼バルク材が窒素を0.1〜5.0質量%含有することの意義について説明すると、窒素が0.1%未満の含有量では同バルク材の硬さはあまり大きく上昇しないが窒素の含有量が0.1〜5.0質量%の範囲内では、その硬さは窒素含有量の増加とともに上昇する。
 しかし、窒素の含有量が5.0%を越えると、バルク材の硬さの大きな増加は見られなくなり、その靭性も大きく低下するようになる。
 また、ナノ結晶オーステナイト鋼バルク材を構成するオーステナイトナノ結晶粒子が、固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有することの優位性について説明すると、固溶型窒素濃度(含有量)が0.1〜2.0質量%の範囲内では
窒素の多くはオーステナイト結晶のマトリックス(地)に効果的に固溶し、窒素濃度の増加とともに同バルク材の硬さや強さが大きく増大するばかりでなく、特に後記の窒素濃度が0.4〜0.9%(質量)のものでは極めて靭性に富む状態のナノ結晶オーステナイト鋼バルクが得られる。
  (9) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子又はその集合体よりなるバルク材が、金属又は半金属の酸化物の形態で酸素を0.01〜1.0%(質量)含有したものであることを特徴とする前記(1)、(6)又は(7)のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (10) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるバルク材が、窒素化合物を1〜30%(質量)含有したものであることを特徴とする前記(2)、(6)、(7)又は(8)のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (11) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるバルク材が、その固化成形過程での脱窒を防ぐための、窒素との化学的親和力が鉄より大きいニオブ、タンタル、マンガン、クロムなどの窒素親和性金属元素を含有してなることを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (12) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるバルク材の鋼形成成分及び配合組成が、
Cr:12〜30%(質量)、Ni:0〜20%(質量)、Mn:0〜30%(質量)、N:0.1〜5%(質量)、C:0.02〜1.0%(質量)、残部:Feであることを特微とする前記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (13) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるバルク材の鋼形成成分及び配合組成が、
Cr:12〜30%(質量)、Ni:0〜20%(質量)、Mn:0〜30%(質量)、N(化合物型):30%(質量)以下、C:0.01〜1.0%(質量)、残部:Feであることを特微とする前記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (14) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるバルク材の鋼形成成分及び配合組成が、
Mn:4〜40%(質量)、N:0.1〜5%(質量)、C:0.1〜2.0%(質量)、Cr:3〜10%(質量)、残部Feであることを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (15) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるバルク材の鋼形成成分及び配合組成が、
Mn:4〜40%(質量)、N(化合物型):30%(質量)以下、C:0.1〜2.0%(質量)、Cr:3〜10%(質量)、残部Feであることを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (16) 固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子が、ボールミル等を用いるメカニカルアロイング(MA)によって得られたものであることを特徴とする前記(1)〜(15)のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (17) 前記(1)〜(16)のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材が、固溶型窒素を0.3〜1.0%(質量)含有する結晶粒径50〜1000nmのオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるものであることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (18) 前記(1)〜(16)のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材が、固溶型窒素を0.4〜0.9%(質量)含有する結晶粒径75〜500nmのオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるものであることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  (19) 前記(1)〜(16)のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材が、固溶型窒素を0.4〜0.9%(質量)含有する結晶粒径100〜300nmのオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるものであることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
 なお、以上においてナノ結晶オーステナイト鋼バルク材を構成するオーステナイトナノ結晶粒子が、好ましくは固溶型窒素を0.3〜1.0%(質量)、特に好ましくは0.4〜0.9%(質量)含有することの優位性について説明すると、固溶型窒素が0.3%未満の含有量では同バルク材の硬度を大きく増加させることができず、また1.0%を越えると同バルク材の硬度は上昇するものの靭性の面での向上はみられず、0.3〜1.0%(質量)、特に好ましくは0.4〜0.9%(質量)の含有量において非常に高い硬度と高い靭性を具備することができるのである。
 また、ナノ結晶オーステナイト鋼バルク材を構成するオーステナイトナノ結晶粒子の結晶粒径が、50〜1000nm、より好ましくは75〜500nm、特に好ましくは100〜300nmにすることの意義について説明すると、50nmより小さいと、ナノ結晶粒内において、塑性変形を進める媒体となる転位の密度が極端に小さくなり、同バルク材の塑性加工が行いにくくなるという実用材料としての問題が生じる。一方、1000nmを超えると、転位密度が大きく増加し同バルク材の塑性加工はしやすくなるが耐力(強さ)の低下は避けられないこととなる。バルク材におけるオーステナイト結晶粒が50〜1000nm、好ましくは75〜500nm、より好ましくは100〜300nmであれば、高耐力(高強度)で塑性加工を行いやすい理想的なオーステナイト鋼バルク材となる。
 なお、特に極端に高い強度を要求しないのであれば、固化成形後のバルク材の焼なまし温度を1200℃〜1250℃程度にまで上げると、より短い時間で、溶解法ではその製造が難しい5000nm(5μm)程度までの又はそれ以上の大きい結晶粒を有するオーステナイト鋼バルク材を製造することも容易にできる。
  (20) 鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末を、窒素源となる物質とともに混合し、
ボールミル等を用いてメカニカルアロイング(MA)することによって高窒素濃度ナノ結晶オーステナイト鋼微粉末を製造した後、
同オーステナイト鋼微粉末を(1)圧延、(2)放電プラズマ焼結、(3)押出成形、(4)熱間等方加圧焼結(HIP)、(5)冷間等方加圧成形(CIP)、(6)冷間プレス成形、(7)ホットプレス、(8)鍛造、又は(9)スエージングの(1)〜(9)から選択される1又は2以上の組合せによる固化成形又は爆発成形などの固化成形処理することにより、固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなる超硬質・強靱で優れた耐食性を有するオーステナイト鋼バルク材となすことを特微とするナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  (21) 鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末を、窒素源となる物質とともに混合し、
ボールミル等を用いてメカニカルアロイング(MA)することによって、高窒素濃度ナノ結晶オーステナイト鋼微粉末を製造した後、
同オーステナイト鋼微粉末を、空気中又は酸化抑制雰囲気中あるいは真空中で(1)圧延、(2)放電プラズマ焼結、(3)押出成形、(4)熱間等方加圧焼結(HIP)、(5)ホットプレス、(6)鍛造、又は(7)スエージングの(1)〜(7)から選択される1又は2以上の組合せによる熱間固化成形又は爆発成形などの固化成形処理し、その後急冷することにより、固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなる超硬質・強靱で優れた耐食性を有するオーステナイト鋼バルク材となすことを特微とするナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  (22) 鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末を、窒素源とともに混合し、
ボールミル等を用いてメカニカルアロイング(MA)することによって、
高窒素濃度ナノ結晶オーステナイト鋼微粉末を製造した後、同オーステナイト鋼微粉末を真空中又は酸化抑制雰囲気中で放電プラズマ焼結して固化成形することにより、固溶型窒素を0.3〜1.0%(質量)、より好ましくは0.4〜0.9%(質量)含有する結晶粒径50〜1000nm、より好ましくは75〜500nm、特に好ましくは100〜300nmのオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなる超硬質・強靱で優れた耐食性を有するオーステナイト鋼バルク材となすことを特微とするナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  (23) 鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末を、窒素源とともに混合し、
ボールミル等を用いてメカニカルアロイング(MA)することによって、
高窒素濃度ナノ結晶オーステナイト鋼微粉末を製造した後、同オーステナイト鋼微粉末を真空中又は酸化抑制雰囲気中で放電プラズマ焼結して固化成形し、次いで圧延加工処理し、急冷することにより、固溶型窒素を0.3〜1.0%(質量)、より好ましくは0.4〜0.9%(質量)含有する結晶粒径50〜1000nm、より好ましくは75〜500nm、特に好ましくは100〜300nmの)のオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなる超硬質・強靱で優れた耐食性を有するオーステナイト鋼バルク材となすことを特微とするナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  (24) 前記(20)又は(22)に記載の固化成形体を800〜1250℃の温度にて60分間以下焼なました後、更に急冷することを特徴とするナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  (25) 前記(21)又は(23)に記載の急冷された成形体を800〜1250℃の温度にて60分間以下焼なました後、更に急冷することを特徴とするナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  (26) 窒素源となる物質が、N2ガス、NH3ガス、窒化鉄、窒化クロム又は窒化マンガンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする前記(20)〜(25)のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  (27) メカニカルアロイングを施す雰囲気が、(1)アルゴンガスなどの不活性ガス、(2)N2ガス、又は(3)NH3ガスから選ばれるいずれか1種、又は(1)〜(3)から選ばれる2種以上の混合ガスの雰囲気であることを特徴とする前記(20)〜(26)のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  (28) メカニカルアロイングを施す雰囲気が、若干のH2ガスなどの還元性物質を加えたガスの雰囲気であることを特徴とする前記(20)〜(27)のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  (29) メカニカルアロイングを施す雰囲気が、真空又は真空中に若干のHガスなどの還元性物質を加えた真空又は還元雰囲気であることを特徴とする前記(20)〜(26)のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  (30) 鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末と、1〜10体積%のAlN、NbN、Cr2Nなどの金属窒化物又は0.5〜10%(質量)の鉄より窒素との化学的親和力の大きいニオブ、タンタル、マンガン、クロム、タングステン、モリブデンなどの窒素親和性金属あるいはコバルトを、窒素源となる物質とともに混合し、
メカニカルアロイング(MA)過程及びメカニカルアロイング(MA)処理粉末の固化成形過程で前記添加窒化物を分散させるか、前記金属元素又はその窒化物、炭窒化物等を析出・分散させ、
超硬質・強靱で優れた耐食性を有するオーステナイト鋼バルク材となすことを特微とする前記(20)〜(29)のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  (31) 鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末と、AlN、NbN、TaN、Si34、TiNなどの金属窒化物からなる粒子分散剤1〜10体積%を、窒素源となる物質とともに混合し、
メカニカルアロイング(MA)過程におけるナノサイズレベルでの結晶粒の一層の微細化の促進とメカニカルアロイング(MA)処理粉末の固化成形過程での結晶粒粗大化を抑制し、
超硬質・強靱で優れた耐食性を有するオーステナイト鋼バルク材となすことを特微とする前記(20)〜(30)のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  (32) 鉄とマンガン及び炭素を主体とする高マンガン−炭素鋼タイプのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末を、窒素源としての窒化鉄等の金属窒化物微粉末とともに混合し、
アルゴンガスなどの不活性ガスあるいは真空または真空中に若干のH2ガスなどの還元性物質を加えた真空又は還元雰囲気のもとで、
メカニカルアロイング(MA)することによって、Mn:4〜40%(質量)、N:0.1〜5.0%(質量)、C:0.1〜2.0%(質量)、Cr:3.0〜10.0%(質量)、残部Feからなるナノ結晶オーステナイト鋼粉末を製造した後、同オーステナイト鋼粉末を放電プラズマ焼結、シース圧延、押出成形等の熱間固化成形又は爆発成形などの固化成形処理することにより超硬質・強靱で優れた耐食性を有するオーステナイト鋼バルク材となすことを特微とする前記(20)〜(29)又は(31)のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  (33) オーステナイト鋼形成成分及び配合組成が、
Cr:12〜30%(質量)、Ni:0〜20%(質量)、Mn:0〜30%(質量)、N:0.1〜5.0%(質量)、C:0.02〜1.0%(質量)、残部:Feであり、
固化成形の温度が600〜1250℃であることを特微とする前記(20)〜(32)のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  (34) メカニカルアロイング(MA)処理時に処理容器、硬質鋼ボール等から高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼粉末に混入する酸素の量を0.01〜1.0%(質量)に調整し、その酸素の化合物である金属又は半金の酸化物により、メカニカルアロイング(MA)過程におけるナノサイズレベルでの結晶粒の一層の微細化の促進とメカニカルアロイング(MA)処理粉末の固化成形過程での結晶粒粗大化を抑制することを特微とする前記(20)〜(31)のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  (35) 前記(1)〜(19)のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材で製作された、高張力ボルト、ナット等の機械的締結材料、防弾鋼板、防弾チョッキ等の耐弾材料、ダイス、ドリル、スプリング、歯車等の機械工具・機械部材、人工骨、人工関節、人工歯根等の人工医療材料、注射針、手術用メス、カテーテル等の医療用機械器具、金型、水素貯蔵タンク(特に耐水素性に優れているため)、包丁、剃刀、鋏等の利器、タービンフィン、タービンブレード等のタービン部材、要塞、防弾壁、銃砲、戦車等の防衛用兵器、スケート部材、そり部材等のスポーツ材料、配管、タンク、バルブ、海水の淡水化装置等の化学プラント材料、化学反応容器、原子力発電装置用部材、ロケット、ジェット機、宇宙ステーション等の飛行物体部材、パソコン、アタッシュケース等の軽量ハウジング材料、又は自動車、船舶、磁気浮上列車、深海艇等の移送装置用部材、その他耐寒性部材、船舶用リフト、サッシュ、構造材、トラップ等。
 本発明によれば、金属単体の粉末材料をメカニカルミリング(MM)あるいはメカニカルアロイング(MA)処理すると、いずれも超微細結晶粒組織をもつ粉末となり、同粉末の900〜1000℃付近の温度での固化成形により、そのバルク材の製造をより容易に達成できる。
 鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウムなどの実用金属単体の粉末に炭素、ニオブ、チタンなどを添加した混合粉末をメカニカルアロイング(MA)処理すると、より超微細な結晶粒組織となり、前記のような固化成形により、容易にナノ結晶粒組織をもつバルク材となって、その強さ、硬さは溶解法よるものに比べ、はるかに高い値を示す。
 また、鉄、コバルトなどの磁性元素では、MM処理により、ナノオーダレベルの結晶粒径になると、粒径が小さくなるほどその軟磁性特性が向上する。
 また、本発明によれば、鉄とクロム、ニッケル、マンガン、炭素などとからなる例えば、クロム−ニッケル系又はクロム−マンガン系の元素状混合粉末を窒素源物質としてのFe−N合金粉末等とともにメカニカルアロイング(MA)処理すると、溶解過程を経ないで、原料粉末中の成分元素同士が機械的に合金化(オーステナイト化)して、溶解法のような従来の技術では達成できないナノサイズの結晶粒組織をもち、かつ窒素のオーステナイト相への固溶により極度に固溶強化されたオーステナイト鋼粉末となり、次のオーステナイト鋼粉末の固化成形過程においても、メカニカルアロイング(MA)処理粉末に存在する若干量の金属又は半金属の酸化物などのオーステナイト結晶粒界のピン止め効果により、ある程度の結晶粒の成長はあるもののナノ結晶組織が保持されることから、前記の窒素による固溶強化と結晶粒微細化強化の相乗効果に加え、オーステナイト相特有の強靱な特性によって超硬質・超強度で強靱かつ優れた耐食性(耐孔食性)を有する非磁性の高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼(ナノ結晶オーステナイトステンレス鋼)材料を容易に製造することができる。
 さらにまた、高マンガンオーステナイト鋼についても、上記と同様のMA処理・固化成形処理技術の適用により、ナノ結晶粒組織を有する高マンガンオーステナイト鋼を容易に製造することができる。
 本発明では、鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末をボールミル等を用いて、アルゴンガスなどの雰囲気中にて室温でのメカニカルアロイング(MA)処理を施す。
 MA処理された粉末は、ボールミルによって付加された機械的エネルギーにより、約15〜25nmの結晶粒径まで容易に微細化される。
 次いで、そのようなMA処理粉末を約7mm内径のステンレス鋼チューブ(シース)に真空封入し、これを800〜1000℃付近の温度にて圧延機を用いたシース圧延により固化成形すると、厚さ1.5mm程度のシートを容易に製造することができる。
 さらにまた、鉄、コバルト、ニッケル各元素の単体の粉末をボールミル等を用いてメカニカルミリング(MM)処理を施すと、ナノオーダまで超微細化されたこれらのMM処理粉末では、いずれも20nm付近の粒径Dを境にして、Dの減少とともに保磁力が減少するので、このことを利用することによって、より優れた軟磁性材料を製造することができる。
 本発明では、鉄、クロム、ニッケル、マンガンなどの元素状粉末と窒素(N)源となる窒化鉄などの粉末とを目標組成となるように調合した例えばクロム−ニッケル系又はクロム−マンガン系材料の混合粉末に、ボールミルを用いてアルゴンガスなどの雰囲気中にて室温でのメカニカルアロイング(MA)処理を施す。
 すると、メカニカルアロイング(MA)処理された粉末はボールミルなどによって付加された機械的エネルギーにより、溶解過程を経ないで機械的に合金化し、メカニカルアロイング(MA)処理された合金粉末は数nm〜数十nmのレベルまで超微細化して、クロム−ニッケル系又はクロム−マンガン系の高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼粉末となる。
 次いで、このようなオーステナイト鋼粉末を7mm程度の内径のステンレス鋼チューブ(シース)に真空封入し、これを例えば900℃にて圧延機を用いたシース圧延により固化成形すると、30〜80nm程度の結晶粒からなるナノ結晶組織をもつ厚さ1.5mm程度の高Nオーステナイト鋼シートを容易に製造することができる。
 また、前項に記載のメカニカルアロイング(MA)処理粉末に通常、MA処理過程で金属又は半金属の酸化物の形態で必然的に混入する酸素の量を0.5%(質量)程度までに調整し、固化成形過程での結晶粒粗大化を抑制する。このような抑制効果を高めるため、メカニカルアロイング(MA)処理粉末にAlN、NbNなどの粒子分散剤を1〜10体積%、特に3〜5体積%添加することはより好ましい。
 前項に記載の鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などの元素状混合粉末に、例えば窒素(N)源としての窒化鉄を添加し、さらにこの混合粉末に鉄よりNとの化学的親和力の大きい金属元素ニオブ、タンタル、クロム、マンガンなどを10%(質量)までの範囲で適宜、新規に添加するか又は増量してメカニカルアロイング(MA)処理すると、MA過程での結晶粒の微細化が一層促進され、さらにまた、固化成形過程においては、これらの金属元素はマトリックス(オーステナイト)中へのNの溶解度を増加させかつNの拡散係数を著しく低下させるので、固化成形温度・時間等の調整により、マトリックス相からの脱窒をほとんど完全に防ぐことができる。なお、ニオブ、タンタルなどの高融点元素を添加すると、固化成形過程での結晶粒粗大化を抑制する効果も現れる。
 しかしながら、前記の金属元素の添加ないし増量においては、マンガン以外の金属元素はフェライト安定化元素であるため、オーステナイト母相の安定性を損なわない範囲内での添加ないし増量でないとその効果は生じない。
 また、本発明では、20〜30%(質量)前後のマンガンを含む高マンガンオーステナイト鋼組成の鉄、マンガン、炭素からなる元素状混合粉末を、ボールミルを用いてアルゴンガス雰囲気中にて室温でのメカニカルアロイング(MA)処理を施す。
 すると、MA処理された合金粉末は、数nmから数十nmオーダの高マンガンナノ結晶オーステナイト鋼微粉末となる。次いで、前項と同様の固化成形により、50〜70nm程度のナノ結晶粒組織を有する厚さ1.5mm程度の高マンガンオーステナイト鋼を容易に製造することができる。
 本高マンガン鋼においても、窒素を0.1〜5.0%(質量)含有させると、その固溶硬化の効果は、顕著に現れる。
 本発明では、鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などからなる例えばクロム−ニッケル系又はクロム−マンガン系の元素状混合粉末を窒素(N)源物質としての窒化鉄粉末とともメカニカルアロイング(MA)処理し、原料粉末中の成分元素同士を機械的に合金化(オーステナイト化)させて、ナノサイズの結晶粒組織をもち、かつ窒素のオーステナイト相への固溶により極度に固溶強化された高窒素濃度のオーステナイト鋼粉末を製造し、これにシース圧延、押出加工などの固化成形を施すと、メカニカルアロイング(MA)処理過程で必然的に生成する若干量の金属又は半金属の酸化物を、酸素量として0.5%(質量)程度まで調整することによって、その酸化物などの結晶粒界に対するピン止め効果(pinning effect)により、結晶粒の粗大化が抑制されて、高N濃度のナノ結晶オーステナイト鋼材料の製造をより効果的に行うことができる。
 さらにまた、高マンガンオーステナイト鋼についても、上記と同様のMA処理・固化成形処理技術の適用によって、ナノ結晶粒組織をもつ高マンガンオーステナイト鋼をより効果的に製造することができる。
 以下、本発明の実施例について、添付図面を参照しながら説明する。
実施例1:
 図1は、鉄、コバルト、ニッケルの各元素の粉末に他元素(A)として炭素(C)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、リン(P)、ホウ素(B)など(図中、窒素Nのデータは鉄のみに関するもの)を15原子%加えたM8515(原子%)(M=鉄、コバルト又はニッケル)組成の元素状混合粉末を50h(時間)メカニカルアロイング(MA)処理したときの、処理済みの鉄、コバルト、ニッケルの各元素の平均結晶粒径の変化を示すものである。
 ここでDFe、DCo、DNiはそれぞれ処理済みの鉄、コバルト、ニッケルの平均結晶粒径(nm)である。本図より、鉄、コバルト、ニッケルの各元素の結晶粒微細化は、炭素、ニオブ、タンタル、チタンなどを添加してメカニカルアロイング処理を行うことによって、より効果的に促進され、三元素とも数ナノオーダの粒径まで微細化されることが解る。
 また、銅、アルミニウム、チタンの場合も、他元素添加により、結晶粒の微細化が促進され、これらの元素においては、とくに炭素、リン、ホウ素の効果が大きかった。
実施例2:
 図2は、メカニカルミリング(MM)処理した窒素無添加の鉄、コバルトの平均結晶粒径D(nm)と保磁力Hc(kOe)との関係を示したものである。
 これより、鉄、コバルトいずれの場合も、20nm付近の粒径Dを境にして、Dが減少するとともに保磁力Hcが減少し、その軟磁性特性が向上することが解る。
実施例3:
 図3は、窒素無添加TiC単体の粉末試料2(a)、(b)について行った1000℃での押出成形加工(押出圧力:98MPa)の説明図である。
 ここで100hMM処理を施した試料(a)とMM処理を施していない試料(b)を比較すると、試料(a)の場合はダイス1の開孔口から成形試料が押出されている部分の長さは約12mmほどであるのに対して、試料(b)の場合のそれは1〜2mm程度であった。このような両試料における成形挙動の違いは、MM処理によりその結晶粒が超微細化されている試料(a)にみられる超塑性によるものと解釈される。なお、図において1は押出ダイス、2は試料、3はダミーブロック、4は容器(材質はダイス鋼SKD11である)、5はラムである。
実施例4:
 図4は、Fe、Cr及びNiの元素状粉末とFe−N合金(5.85%(質量)含有N)粉末とから目標組成となるように調合したクロム−ニッケル系の粉末試料(a)Fe81-yCr19Niy(質量%)(ただしy=8〜17)及び(b)Fe80.1-yCr19Niy0.9(質量%)(ただしy=4〜11)を、アルゴン雰囲気中にて、硬質鋼製円筒状試料容器(内径75mm×高さ90mm)に充填して、汎用の遊星型ボールミル(試料容器4個取付け)を用いて室温にて720ks(200h)メカニカルアロイング(MA)処理した後、これらのメカニカルアロイング(MA)処理済み粉末における生成相をX線回折(XRD)(X線:コバルトKα線(波長λ=0.179021nm))によって調べた結果を示している。ここで試料容器の回転速度は385rpm、試料の全質量は100g(1個の試料容器につき25g装填)、クロム鋼ボールの質量対粉末試料質量の比は11.27対1とした。
 図中○印は生成相がオーステナイト(γ)であることを示し、●印はMA処理過程での強加工によって誘起生成したマルテンサイト(α’)であることを示している。
 図4より窒素(N)を含まない場合(a)は、オーステナイト単相とするにはニッケル(y)の含有量を14%(質量)以上であることが必要である(同図(a))が、窒素(N)を0.9%(質量)添加すると、ニッケルの含有量が6%(質量)以上ではほとんどオーステナイトとなっていることが解る。このことは、そのオーステナイト化が著しく促進され(同図(b))、メカニカルアロイング(MA)生成物をオーステナイト単相にするための高価なニッケルの添加量を大きく低減できることを示している。
 図5は、クロム−マンガン系のFe63.1Cr18Mn15Mo30.9(質量%)試料について、クロム−ニッケル系試料(図4)の場合と同様のメカニカルアロイング(MA)実験(MA処理時間:200h、X線:コバルトKα線(λ=0.179021nm))を行い、メカニカルアロイング(MA)処理試料のオーストテナイトに対する窒素の効果を示したものである。
 また、X線回折(XRD)によってオーステナイト(図中、○印はオーステナイト(γ))であることが同定されたメカニカルアロイング(MA)処理粉末については、その磁気特性(オーステナイト相が示す非磁性)の面からも調べ、その結果を図6に示した。
 図6は、振動試料型磁気分析計(VSM)を用いて測定したFe69.1Cr19Ni110.9及びFe63.1Cr18Mn15Mo30.9(質量%)の両メカニカルアロイング(MA)試料の室温における磁化Mmax(emu/g)をメカニカルアロイング(MA)処理時間t(ks)の関数として示したものである(磁場:15kOe)。
 本図より両メカニカルアロイング(MA)試料とも、tが540ks(150h)付近でMmaxが急激に低下しオーステナイト(非磁性)となっていくことが示される。
 以上の実施例4及び図4〜図5からみて、本発明によれば、N濃度0.9質量%程度の高Nオーステナイト鋼粉末を製造するには、鉄とクロム、ニッケル、マンガンなどの混合粉末を窒素源物質としてのFe−N合金粉末とともに150〜200hメカニカルアロイング(MA)処理すればよいことが解る。
 また本法と同様にして、Fe−N合金粉末の添加量を増量することにより、5質量%N濃度程度の高窒素オーステナイト鋼粉末を容易に製造することができた。
 なお、後記実施例5以降の固化成形用メカニカルアロイング(MA)処理試料としては、各試料ともXRD及びVSMにより、オーステナイト単相であることを確認したものを用いた。
実施例5:
 図7は、汎用の放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering、SPS)機(電源:DC3±1V、600±100A)によるメカニカルアロイング(MA)処理粉末の固化成形プロセスの説明図である。
 内径10mm×外径40mm×高さ40mmの黒鉛製ダイスに、直径10mm、厚さ約5mmの円板状成形体が得られるように、約3〜5gのメカニカルアロイング(MA)処理粉末試料を装填して、これに上下から49MPaの成形圧力(σ)をかけ、真空中でその固化成形を実施した。固化成形の温度(T)は650〜1000℃(923〜1273K)の間の温度とし、各成形温度での保持時間(t)は300s(5分)とした。
実施例6:
図8は、メカニカルアロイング(MA)処理粉末のシース圧延(Sheath Rolling、SR)による固化成形プロセスの説明図である。
 約10gのメカニカルアロイング(MA)処理粉末を内径約7mmのSUS316ステンレス鋼チューブ(Sheath)に真空封入し、これを圧延機を用いて、650〜1000℃の温度(T)にてその固化成形を実施した。
 なお、シース圧延温度:650〜1000℃、
 第1回目の圧延前の設定圧延温度保持時間:900S(15分)、
 第2回目の圧延前の設定圧延温度保持時間:300S(5分)とした。
実施例7:
図9は、Fe60.55Cr18Mn18Mo30.45(質量%)メカニカルアロイング(MA)処理試料の900℃でのSPS成形前と成形後のXRD( X線:コバルトKα線(λ =0.179021nm))図形である。これより同試料は、SPS成形後もオーステナイト(γ)単相のままであることが示される。なお、図において(as MAed)はSPS成形前のもの、(as SPSed)はSPS成形後のものを示す。
 図10は前記試料のSPSによる成形体断面の走査電顕による観察図(SEM図)である。
Fe60.55Cr18Mn18Mo30.45(質量%)メカニカルアロイング(MA)処理試料の900℃でのSPS成形前後の平均結晶粒経(D)については表1のとおりである。
(Dの値は、図9のX線図形からScherrerの式を用いて計算した)
 成形後の値は図10のSEM図から観察される粒径ともほぼ対応するものである。
 以上の実施例7、図9及び表1からみて、本発明によれば、SPS固化成形過程でかなりの結晶粒の成長はみられるが成形後もそのナノ組織は保持できることが解った。
実施例8:
 図11は、下記(a)〜(g)の種々のメカニカルアロイング(MA)処理粉末試料を900℃にてSPS成形したものの、成形後の窒素の残存率Re(%)を示したグラフ図である。
(a)Fe60.55Cr18Mn18Mo30.45(質量%)
(b)Fe60.6Cr18Mn17.5Mo30.9(質量%)
(c)Fe63.1Cr18Mn15Mo30.9(質量%)
(d)Fe72.1Cr19Ni80.9(質量%)
(e)Fe67.1Cr19Ni8Mn50.9(質量%)
(f)Fe68.1Cr23Ni80.9(質量%)
(g)Fe64.1Cr20Ni8Mn5Nb20.9(質量%)

Re(%):(Ns/Nm)×100
Nm:MA処理のままの試料中の窒素含有量(質量%)
Ns:SPS成形後の試料中の窒素含有量(質量%)

 同図よりクロム−マンガン系の試料(a)、(b)、(c)ではReが100%であるのに対して、クロム−ニッケル系の試料(d)(SUS304鋼相当組成の高窒素ステンレス鋼)ではReが約85%であり、メカニカルアロイング(MA)処理試料中に含まれている窒素の約15%がSPS成形過程で消失していることが示される。しかし、窒素の残存率Reは、試料(d)にマンガンを添加したもの(試料(e))又はそのクロムを増量したもの(試料(f))では大きく向上し、さらにまたReを増加させる元素マンガン、クロム、ニオブを複合添加すると、試料(g)のように、そのReは100%まで向上し、成形過程での脱窒は完全に抑制することができた。
 図12は、SPS成形した図11の試料(d)及び(g)のX線回折(X線:銅Kα線(λ=0.154051nm)結果を示している。これより試料(d)では、SPS成形によりオーステナイト(γ)相の地にフェライト(α)相,Cr2N相が析出した組織となっているのに対して、試料(g)ではSPS成形後もそのオーステナイト単相組織が保持されていることが解る。
実施例9:
 Fe64.1Cr20Ni8Mn5Nb20.9(質量%)メカニカルアロイング(MA)試料のSPS又はSR成形による固化成形体(固化成形温度:900℃)及び同SR成形後、焼なまし(1150℃×15分間)を施した試験片(SR+焼なまし片)の平均結晶粒径D、ビッカース硬さHv、耐力σ0.2、引張り強さσB、伸びδ及び酸素・窒素分析値は、表2のとおりである。
実施例10:
(a)Fe63.1Cr18Mn15Mo30.9(質量%)、及び(b)Fe65.55Cr25Ni5Mo40.45(質量%)のメカニカルアロイング(MA)試料のSR成形及びSR成形後焼なましした固化成形体の平均結晶粒径D、ビッカース硬さHv、耐力σ0.2、引張り強さσB、伸びδ及び酸素・窒素分析値(SR成形温度:900℃、焼なまし温度1150℃、焼なまし温度保持時間15分間)は表3のとおりである。(a)、(b)はそれぞれオーステナイト鋼試料及びオーステナイト・フェライト鋼試料である。
実施例11
 (a)Fe69.2Mn300.8(質量%)、(b)Fe64.1Mn30Cr50.80.1(質量%)及び(c)Fe64.2Mn30Al50.8(質量%)メカニカルアロイング(MA)試料のSR成形又はSR成形+焼なまし(1150℃×15分間)を施した各試験片(固化成形温度:900℃)の平均結晶粒径D、ビッカース硬さHv、耐力σ0.2、伸びδ、引張り強さσB及び酸素・窒素分析値は表4のとおりである。
  以上の実施例9及び表2からみて、本発明によれば、SUS304相当組成の高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼(窒素濃度:0.9質量%)では、シース圧延(SR)による固化成形によると、溶解法で製造したSUS304ステンレス鋼に比べ、硬さがその約4倍(高炭素鋼のマルテンサイト組織以上の硬さ)、耐力がその約6倍(超高張力鋼級の値)という極めて高い値を示し、その焼なましにより、伸びもかなり高いものが製造できることが解った。
 また、表2からみて、MAの際、窒素源としてN2ガスを用いても、窒化鉄を用いる場合とほとんど同様の引張特性を示す固化成形体を製造できることが解った。
 実施例10及び表3(試料aの結果)からみて、高窒素Cr−Mn系のFe63.1Cr18Mn15Mo30.9(質量%)材料においても、そのSR+焼なまし材は表2に示された高窒素Cr−Ni系材料の場合と同様、高強度で延性に富む材料が製造できることが判明した。
 また、表3(試料bの結果)からみて、オーステナイト・フェライト系材料(フェライト相:約40%)では、オーステナイト系材料(試料a)に比べてSR成形過程での結晶粒成長が著しく抑制され、その硬さ、強さ(σ0.2及びσB)などの機械的性質もオーステナイト系材料とほぼ同様のものが製造できることが解った。
 また、実施例11、表4からみて、高マンガン−炭素系のFe69.2Mn300.8(質量%)及びFe64.1Mn30Cr50.80.1(質量%)及びFe64.2 Mn30Al50.8(質量%)メカニカルアロイング(MA)オーステナイト鋼粉末の固化成形体でも、溶解法で製造された高マンガンオーステナイト鋼(例えばSCMnH3鋼、Mn:11〜14%(質量)、C:0.9〜1.2%(質量))(1000℃からの水焼入れ材)に比べて、硬さがその約4倍という極めて高い値を示す上、高強度で延性に富むものを容易に製造できることが解った。
実施例12:
 Fe64.1Cr20Ni8Mn5Nb20.9(質量%)のメカニカルアロイング(MA)粉末試料について、900℃でのSPS成形、押出成形、鍛造、熱間等方圧加圧焼結(HIP)、ホットプレス又は常温での冷間プレスを施した後、更に900℃にて熱間圧延加工を加え、これを焼なまし(1150℃×15分間)してから、急冷(水中)処理をして得られた固化成形体試料(a)〜(g)の平均結晶粒径D、ビッカース硬さHv、耐力σ0.2、引張り強さσB、伸びδ及びシャルピー衝撃値Eは、表5のとおりである。
 なお、前記の固化成形処理は試料bの圧延を除いて、すべて真空雰囲気中にて行われている。また、引張り試験には、JIS6号試験片(幅5mm、厚さ2mm)を用い、またシャルピー衝撃試験片にはVノッチ試験片(幅5mm、高さ5mm、長さ55mm)を用いた。
 実施例12、表5の試料aの結果を実施例9、表2の「SR+焼なまし」材のそれと比較すると、SPS成形加工したものに更に圧延処理を施すとその機械的特性がかなり大きく向上するうえ、高い靭性(高い衝撃値)を示し、圧延加工の効果は明らかである。
 表5の試料c,dのように圧延加工を加える前に、押出し、鍛造のような剪断変形を伴う成形過程が加わると、その効果は一層顕著なものになっている。
 以上の実施例12,表5からみて、本願発明によれば同表に示すような固化成形処理によっても、その固化成形体における結晶組織は90〜200nm程度のナノサイズのレベルにとどまり、特に試料c及びdで用いた固化成形処理法によると、高窒素濃度の高硬質・高強度で強靱なナノ結晶オーステナイト鋼バルク材を容易に製造できることが解った。
実施例13:
 図13は以下の遅れ破壊試験に用いられた中央部に環状の切欠き部を有する直径5mmの柱状の試験体の斜視図を示し、該試験はその両端側から持続的に引張荷重をかけることによって行われた。
 すなわち、前記試験体は、Fe64.1Cr20Ni8Mn5Nb20.9(質量%)のメカニカルアロイング(MA)試料を、900℃で押出加工した後、焼なまし処理(1150℃×15分間/水冷)して得た直径5mmの固化成形体(耐力σ0.2:1690MPa、引張り強さσB:2880MPa、伸びδ:34%)である。
 本試験では、同試験体に水中(23℃)にて1600MPaの引張り荷重を100h負荷し続けたが、その結果、遅れ破壊は見られなかった。
実施例14:
 高窒素オーステナイト鋼[Fe65-xCr20Ni8Mn5Nb2x(質量%、x=0.45,0.7,0.9]メカニカルアロイング(MA)試料のSR成形による固化成形体の窒素濃度(含有量)xとビッカース硬さHvの関係は表6のとおりである。
実施例15:
 オーステナイト鋼の窒素含有量とビッカース硬さHvの関係(窒素固溶の効果)は表7に示すとおりである。
実施例16:
 オーステナイト鋼の平均結晶粒径Dとビッカース硬さHvの関係(MAによる結晶粒微細化の効果)は表8に示すとおりである。
 実施例15(表7)及び16(表8)からみて、メカニカルアロイング(MA)処理したオーステナイト系材料では、窒素濃度を0.9質量%まで高めると、その硬さはSUS304溶製シートの約8倍程度まで増大しているが、これには
窒素固溶の効果に加えて、MAによる結晶粒微細化の効果も大きく寄与していることが解った。
 次に前記本発明で得られたオーステナイト鋼バルク材の用途例について紹介する。
−高窒素オーステナイト鋼について:
 高窒素オーステナイト鋼に共通した性質は、超強度で靱性かつ耐孔食性を示し非磁性であることに加え、マルテンサイト系又はフェライト系鉄鋼材料にみられるような昇温時の200〜300℃付近の温度から急激な軟化を示さず、室温付近以下の温度での低温脆性を起こしにくいことである。
 そしてまた注目すべき重要なことは、オーステナイト系ステンレス鋼SUS304鋼相当組成の0.9%(質量)程度の窒素を含む本願発明の一例の高窒素ナノ結晶ステンレス鋼では、硬さが同304ステンレス鋼の約4倍(高炭素鋼のマルテンサイト組織以上の硬さ)、耐力がその6倍(超高張力鋼級の値)という非常に高い値を示す(表2、表5参照)上、このような極端に高い耐力をもつものでも、マルテンサイト系又はフェライト系鉄鋼材料にみられるような遅れ破壊(delay failure)を起こさないことである。
 従って本発明による高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼材料は、以上のようなその特性から、高張力ボルトや防弾材料をはじめ、例えば次のような機械類の部品や熱間加工用の各種の超硬工具類などの材料として好適に広く用いることができる。
(1)高張力ボルト、ナット類(機械的締結材料)
 高張力ボルト、ナット類には通常、マルテンサイト系又はフェライト系の鉄鋼材料が多く用いられているが、このようなマルテンサイト系又はフェライト系材料ではその引張り強さが70〜80kg/mm2以上になると、降伏点(耐力)より低い静的引張り力のもとでも遅れ破壊を起こす性質をもっているので、現在70〜80kg/mm2以上の引張り強さをもつ鋼の高張力ボルト、ナット類への使用はなされていない。
 しかし、本発明による高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼は、極端に大きい強度を有している上、その組織がオーステナイト相から構成されているので、前記のような遅れ破壊を起こすことがない。従って、このようなナノ結晶オーステナイト鋼の特性からみて、本発明のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材は前記の高張力ボルト類の材料としてはもとより、ますますその軽量化が求められている航空機、自動車などの構成部材としてその需要は計り知れないものであると言える。
(2)防弾鋼板、防弾チョッキ類
 例えば、現在、軍用等に使われている防弾チョッキの重量は、有事のときに着用されるものは、1人分で40〜50kgにも及ぶと言われている。しかもその材料特性としては、引張り強さが250kg/mm2、伸びが5〜10%という極めて高性能のものが求められているが、現在これに対応できる材料は未だ開発されるまでに至っていない。
 本発明による高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼バルク材は、前記のような高いレベルの性能に十分応えられるだけでなく、本発明のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材をこれに用いると非常に大きな軽量化をはかることができる。
(3)ベアリング(軸受)類
 軸受材料に用いられている多くの鉄鋼材料では、その摩擦・摩耗部分のマトリックス(相組織)をマルテンサイト組織にしているため、そのマルテンサイトという不安定相の性質上、使用温度範囲が比較的せまい範囲に限定されるが、本発明による高窒素オーステナイト鋼は、例えば高温域においても約600℃付近の温度まで強さや硬さの急激な低下を起こさないので、より広い温度域で用いることができる。
 とくに、本発明による高窒素オーステナイト鋼を軸受の回転部に用いると、前記の強度特性から、その使用量を大幅に減らすことができるので、これにより、使用材料の節減になるばかりでなく、軸受転動体部の遠心力の大きな低下を通じて、軸受運転時の使用電力を大きく低減することができる。
(4)歯車類
 歯車の材料に多く用いられている鉄鋼材料では、その表面部(歯面部)には耐摩耗性をもたせ、そして内部には強い靱性をもたせるという相矛盾する性質を一つの部品に与える必要があるため、この場合は、歯面部への浸炭などと焼入・焼もどしとを組み合わせたかなり高度な技術と熟練を要する表面硬化処理が必要となるが、本発明による、例えば押し出し加工で製造した超硬質で強靱な特性を有する高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼をこれに用いる場合は、そのような表面硬化などの処理は不要である。
 また、高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼を歯車類に用いる場合は歯面部がマンテンサイト(不安定相)組織をもった通常のものより、より広い温度域で使用することができる。
(5)熱間加工用工具、押出工具類
 例えば、高温切削工具材として多く用いられているモリブデン系の高速度鋼のような焼入れ・焼もどし材では、そのマトリックスが昇温域で不安定な焼もどしマルテンサイト相からなるために、400℃付近の温度以上では急激に軟化する性質をもっている。しかし本発明による高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼は、そのマトリックス自体が安定相からなるため、そのような温度域で急激な軟化を示すことはないので、より優れた熱間加工向けの工具材料として用いることができる。
 また、本発明による高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼は、上記のような熱的に比較的安定なマトリックスからなるため、使用時に熱的変化の激しい押出工具などにも、より効果的に用いることができる。
(6)医療器具類その他
 クロム−ニッケル系のSUS304鋼のようなオーステナイト系ステンレス鋼は、使用時にごく微量に溶出されるニッケルイオンが人体に皮膚炎をひき起こすなどの問題があるため、欧米では人体にかかわるものにはその使用が禁止される方向にある。こうした背景から、ニッケルを含まないオーステナイト系ステンレス鋼として注目されているのが、高窒素クロム−マンガン系のオーステナイトステンレス鋼である。
 本発明による非磁性な高窒素ナノ結晶クロム−マンガン系オーステナイト鋼は、超硬質かつ強靱で優れた耐食性(耐孔食性)を有している上、オーステナイト相の性質上、極低温でも脆化しない特長をもっている。
 高窒素クロム−マンガン系オーステナイト鋼の以上のような特性からみて、本発明による非磁性な高窒素ナノ結晶クロム−マンガン系オーステナイト鋼は、例えば、外科医が用いるメス、医療用低温器具類、その他一般用のナイフ、ハサミ等の利器、ドリル等の工具類の材料としても有望といえる。
実施例1’:
 図14は、鉄、コバルト、ニッケルの各元素の粉末に他元素(A)として炭素(C)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、リン(P)、ホウ素(B)など(図中、窒素Nのデータは鉄のみに関するもの)を15原子%加えたM85A15(原子%)(M=鉄、コバルト又はニッケル)組成の元素状混合粉末を50h(時間)メカニカルアロイング(MA)処理したときの鉄、コバルト、ニッケルの各元素の平均結晶粒径の変化を示すものである。
 ここでDFe、DCo、DNiはそれぞれ鉄、コバルト、ニッケルの平均結晶粒径(nm)である。本図より、鉄、コバルト、ニッケルの各元素の結晶粒微細化は、炭素、ニオブ、タンタル、チタンなどによって、より効果的に促進され、三元素とも数ナノオーダの粒径まで微細化されることが解る。
 また、銅、アルミニウム、チタンの場合も、他元素添加により、結晶粒の微細化が促進され、これらの元素においては、とくに炭素、リン、ホウ素の効果が大きかった。
実施例2’:
 図15は、メカニカルミリング(MM)処理した鉄、コバルトの平均結晶粒径D(nm)と保磁力Hc(kOe)との関係を示したものである。
 これより、鉄、コバルトいずれの場合も、20nm付近の粒径Dを境にして、Dが減少するとともに保磁力Hcが減少し、その軟磁性特性が向上することが解る。
実施例3’:
 図16は、TiC単体の粉末試料(a)、(b)について行った1000℃での押出成形加工(押出圧力:98MPa)の説明図である。
 ここで100hMM処理を施した試料(a)とMM処理を施していない試料(b)を比較すると、試料(a)の場合はダイス開孔口から成形試料が押出されている部分の長さは約12mmほどであるのに対して、試料(b)の場合のそれは1〜2mm程度である。このような両試料における成形挙動の違いは、MM処理によりその結晶粒が超微細化されている試料(a)にみられる超塑性によるものと解釈される。
実施例4’:
 図17は、元素状粉末とFe−N合金(5.85質量%N)粉末とから目標組成となるように調合したクロム−ニッケル系の粉末試料(a)Fe81-yCr19Niy(質量%)(ただしy=8〜17)及び(b)Fe80.1−yCr19Niy0.9(質量%)(ただしy=4〜11)を、アルゴン雰囲気中にて、硬質鋼製円筒状試料容器(内径75mm×高さ90mm)に充填して、汎用の遊星型ボールミル(試料容器4個取付け)を用いて室温にて720ks(200h)メカニカルアロイング(MA)処理し、これらのメカニカルアロイング(MA)処理粉末における生成相をX線回折(XRD)(X線:コバルトKα線(波長λ=0.179021nm))によって調べた結果を示している。ここで試料容器の回転速度は385rpm、試料の全質量は100g(1個の試料容器につき25g装填)、クロム鋼ボールの質量対粉末試料質量の比は11.27対1とした。
 図中○印は生成相がオーステナイト(γ)であることを示し、●印はMA処理過程での強加工によって誘起生成したマルテンサイト(α’)であることを示している。
 図17より窒素(N)を含まない場合(a)は、オーステナイト単相とするにはニッケルの含有量を14質量%以上であることが必要である(同図(a))が、窒素(N)を0.9質量%添加すると、ニッケルの含有量が6質量%以上ではほとんどオーステナイトとなって、そのオーステナイト化が著しく促進され(同図(b))、メカニカルアロイング(MA)生成物をオーステナイト単相にするための高価なニッケルの添加量を大きく低減できることが解る。
 図18は、クロム−マンガン系のFe63.1Cr18Mn15Mo30.9(質量%)試料について、クロム−ニッケル系試料(図14)の場合と同様のメカニカルアロイング(MA)実験(MA処理時間:200h、X線:コバルトKα線(λ=0.179021nm))を行い、メカニカルアロイング(MA)処理試料のオーストテナイトに対する窒素の効果を示したものである。
 X線回折(XRD)によってオーステナイト(図中、○印はオーステナイト(γ))であることが同定されたメカニカルアロイング(MA)処理粉末については、その磁気特性(オーステナイト相が示す非磁性)の面からも調べた。
 図19は、振動試料型磁気分析計(VSM)を用いて測定したFe69.1Cr19Ni110.9及びFe63.1Cr18Mn15Mo30.9(質量%)の両メカニカルアロイング(MA)試料の室温における磁化Mmax(emu/g)をメカニカルアロイング(MA)処理時間t(ks)の関数として示したものである(磁場:15kOe)。
 本図より両メカニカルアロイング(MA)試料とも、tが540ks(150h)付近でMmaxが急激に低下しオーステナイト(非磁性)となっていくことが示される。
 以上の実施例4’及び図17〜図18からみて、本発明によれば、N濃度0.9質量%程度の高Nオーステナイト鋼粉末は、鉄とクロム、ニッケル、マンガンなどとから元素状混合粉末を窒素源物質としてのFe−N合金粉末とともに150〜200hメカニカルアロイング(MA)処理すると、容易に製造することができることが解った。
 また本法によれば、Fe−N合金粉末の増量により5質量%N濃度程度の高窒素オーステナイト鋼粉末を製造することも容易であった。
 なお、後記の固化成形用メカニカルアロイング(MA)処理試料としては、各試料ともXRD及びVSMにより、オーステナイト単相であることを確認したものを用いた。
実施例5’:
 図20は、汎用のスパークプラズマ焼結(Spark Plasma Sintering、SPS)機(電源:DC3±1V、600±100A)によるメカニカルアロイング(MA)処理粉末の固化成形プロセスの模式図である。
 内径10mm×外径40mm×高さ40mmの黒鉛製ダイスに、直径10mm、厚さ約5mmの円板状成形体が得られるように、約3〜5gのメカニカルアロイング(MA)処理粉末試料を装填して、これに上下から49MPaの成形圧力(σ)をかけ、真空中でその固化成形を実施した。固化成形の温度(T)は650〜1000℃の間の温度とし、各成形温度での保持時間(t)は300s(5分)とした。
実施例6’:
図21は、シース圧延(Sheath Rolling、SR)によるメカニカルアロイング(MA)処理粉末の固化成形プロセスの模式図である。
 約10gのメカニカルアロイング(MA)処理粉末を内径約7mmのSUS316ステンレス鋼チューブ(Sheath)に真空封入し、これを圧延機を用いて、650〜1000℃の温度(T)にてその固化成形を実施した。
 なお、シース圧延温度:650〜1000℃、
 第1回目の圧延前の設定圧延温度保持時間:900S(15分)、
 第2回目の圧延前の設定圧延温度保持時間:300S(5分)とした。
実施例7’:
図22は、Fe60.55Cr18Mn18Mo30.45(質量%)メカニカルアロイング(MA)処理試料の900℃でのSPS成形前(as MAed)と後(as SPSed)のXRD( X線:コバルトKα線(λ =0.179021nm))図形であり、これより同試料は、SPS成形後もオーステナイト(γ)単相のままであることが示される。
 図23は前記試料の成形体断面の走査電顕による観察図(SEM図)である。
Fe60.55Cr18Mn18Mo30.45(質量%)メカニカルアロイング(MA)処理試料の900℃でのSPS成形前後の平均結晶粒経(D)については表1のとおりである。
(Dの値は、図22のX線図形からScherrerの式を用いて計算した)
 成形後の値は図23のSEM図から観察される粒径ともほぼ対応するものである。
以上の実施例7’、図22及び表9からみて、本発明によれば、SPS固化成形過程でかなりの結晶粒の成長はみられるが成形後もそのナノ組織は保持できることが解った。
実施例8’:
図24は、下記(a)〜(g)の種々のメカニカルアロイング(MA)処理粉末試料を900℃にてSPS成形したものの、成形後の窒素の残存率Re(%)を示したグラフ図である。
(a)Fe60.55Cr18Mn18Mo30.45(質量%)
(b)Fe60.6Cr18Mn17.5Mo30.9
(c)Fe63.1Cr18Mn15Mo30.9
(d)Fe72.1Cr19Ni80.9
(e)Fe67.1Cr19Ni8Mn50.9
(f)Fe68.1Cr23Ni80.9
(g)Fe64.1Cr20Ni8Mn5Nb20.9

Re(%):(Ns/Nm)×100
Nm:MA処理のままの試料中の窒素含有量(質量%)
Ns:SPS成形後の試料中の窒素含有量(質量%)

 同図よりクロム−マンガン系の試料(a)、(b)、(c)ではReが100%であるのに対して、クロム−ニッケル系の試料(d)(SUS304鋼相当組成の高窒素ステンレス鋼)ではReが約85%であり、メカニカルアロイング(MA)処理試料中に含まれている窒素の約15%がSPS成形過程で消失していることが示される。しかし、窒素の残存率Reは、試料(d)にマンガンを添加したもの(試料(e))又はそのクロムを増量したもの(試料(f))では大きく向上し、さらにまたReを増加させる元素マンガン、クロム、ニオブを複合添加すると、試料(g)のように、そのReは100%まで向上し、成形過程での脱窒は完全に抑制することができた。
 図25は、SPS成形した図24の試料(d)及び(g)のX線回折(X線:銅Kα線(λ=0.154051nm)結果を示している。これより試料(d)では、SPS成形によりオーステナイト(γ)相の地にフェライト(α)相,Cr2N相が析出した組織となっているのに対して、試料(g)ではSPS成形後もそのオーステナイト単相組織が保持されていることが解る。
実施例9’:
Fe64.1Cr20Ni8Mn5Nb20.9(質量%)メカニカルアロイング(MA)試料のSPS又はSR成形による固化成形体
(固化成形温度:900℃)の平均結晶粒径D、ビッカース硬さHv、耐力σ、伸びδ及び酸素・窒素分析値は、表2のとおりである。
実施例10’:
Fe69.2Mn300.8(質量%)、Fe64.1Mn30Cr50.80.1(質量%)及びFe64.2Mn30l50.8(質量%)メカニカルアロイング(MA)試料のSR成形による固化成形体の平均結晶粒径D、ビッカース硬さHv及び酸素・窒素分析値、(ただし固化成形温度:900℃)は表3のとおりである。
  以上の実施例9’及び表10からみて、本発明によれば、SUS304相当組成の高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼(窒素濃度:0.9質量%)では、シース圧延(SR)による固化成形によると、溶解法で製造したSUS304ステンレス鋼に比べ、硬さがその約3.5〜4倍(高炭素鋼のマルテンサイト組織以上の硬さ)、耐力がその約10倍(超高張力鋼級の値)という極めて高い値を示すものが製造できることが解った。
 また、実施例10’、表11からみて、高マンガン−炭素系のFe69.2Mn300.8(質量%)及びFe64.1Mn30Cr50.80.1(質量%)及びFe64.2 Mn30Al50.8(質量%)メカニカルアロイング(MA)オーステナイト鋼粉末の固化成形体でも、溶解法で製造された高マンガンオーステナイト鋼(SCMnH3鋼、Mn:11〜14質量%、C:0.9〜1.2質量%)(1000℃からの水焼入れ材)に比べて、硬さがその約4倍のものを容易に製造できることが解った。
実施例11’:
Fe64.1Cr20Ni8Mn5Nb20.9(質量%)メカニカルアロイング(MA)試料のSR成形シート(厚さ:1.3mm)の平均結晶粒径Dとビッカース硬さHvは、表12のとおりである。
実施例12’:
 オーステナイト鋼の平均結晶粒径Dとビッカース硬さHvの関係(MAによる結晶粒微細化の効果)は、表13のとおりである。
実施例13’:
オーステナイト鋼の窒素含有量とビッカース硬さHvの関係(窒素固溶の効果)は表6のとおりである。
 実施例12’(表13)及び13’(表14)から、オーステナイト系材料をメカニカルアロイング(MA)処理すれば、オーステナイト結晶粒はナノサイズのレベルにまで超微細化されて、硬さは2倍以上にも増大し(MAによる結晶粒微細化硬化)、その硬さの増加は窒素の添加によってさらに倍近く、大きなものになる(窒素による固溶硬化)ことが解った。
 その他、本発明で得られたオーステナイト鋼バルク材の用途例について紹介する。
−高窒素オーステナイト鋼について
 高窒素オーステナイト鋼に共通した性質は、超強度で靱性かつ耐孔食性を示し非磁性であることに加え、マルテンサイト系又はフェライト系鉄鋼材料にみられるような昇温時の200〜300℃付近の温度から急激な軟化や室温付近以下の温度での低温脆性を示さないことである。
そしてまた注目すべきことは、オーステナイト系ステンレス鋼SUS304鋼相当組成の0.9質量%程度の窒素を含む高窒素ナノ結晶ステンレス鋼では、硬さが同304ステンレス鋼の約3.5〜4倍(高炭素鋼のマルテンサイト組織以上の硬さ)、耐力がその10倍(超高張力鋼級の値)という非常に高い値を示すことである。
 従って本発明による高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼材料は、以上のようなその特性から、例えば次のような機械類の部品や熱間加工用の各種の超硬工具類などの材料として広く用いることができる。
(1)ベアリング(軸受)類
 軸受材料に用いられている多くの鉄鋼材料では、その摩擦・摩耗部分のマトリックス(相組織)をマルテンサイト組織にしているため、そのマルテンサイトという不安定相の性質上、使用温度範囲が比較的せまい範囲に限定されるが、本発明による高窒素オーステナイト鋼は、例えば高温域においても約600℃付近の温度まで強さや硬さの急激な低下を起こさないので、より広い温度域で用いることができる。
 とくに、本発明による高窒素オーステナイト鋼を軸受の回転部に用いると、前記の強度特性から、その使用量を大幅に減らすことができるので、これにより、使用材料の節減になるばかりでなく、軸受転動体部の遠心力の大きな低下を通じて、軸受運転時の使用電力を大きく低減することができる。
(2)歯車類
歯車の材料に多く用いられている鉄鋼材料では、その表面部(歯面部)には耐摩耗性をもたせ、そして内部には強い靱性をもたせるという相矛盾する性質を一つの部品に与える必要があるため、この場合は、歯面部への浸炭などと焼入・焼きもどしとを組み合わせたかなり高度な技術と熟練を要する表面硬化処理が必要となるが、本発明による、例えば押し出し加工で製造した超硬質で強靱な特性を有する高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼をこれに用いる場合は、そのような表面硬化などの処理は不要である。
 また、高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼を歯車類に用いる場合は歯面部がマンテンサイト(不安定相)組織をもった通常のものより、より広い温度域で使用することができる。
(3)熱間加工用工具、押出工具類
 例えば、高温切削工具材として多く用いられているモリブデン系の高速度鋼のような焼入れ・焼きもどし材では、そのマトリックスが昇温域で不安定な焼きもどしマルテンサイト相からなるために、400℃付近の温度以上では急激に軟化する性質をもっている。しかし本発明による高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼は、そのマトリックス自体が安定相からなるため、そのような温度域で急激な軟化を示すことはないので、より優れた熱間加工向けの工具材料として用いることができる。
 また、本発明による高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼は、上記のような熱的に比較的安定なマトリックスからなるため、使用時に熱的変化の激しい押出工具などにも、より効果的に用いることができる。
(4)医療器具類その他
クロム−ニッケル系のSUS304鋼のようなオーステナイト系ステンレス鋼は、使用時にごく微量に溶出されるニッケルイオンが人体に皮膚炎をひき起こすなどの問題があるため、欧米では人体にかかわるものにはその使用が禁止される方向にある。こうした背景から、ニッケルを含まないオーステナイト系
ステンレス鋼として注目されているのが、高窒素クロム−マンガン系のオーステナイトステンレス鋼である。
 本発明による非磁性な高窒素ナノ結晶クロム−マンガン系オーステナイト鋼は、超硬質かつ強靱で優れた耐食性(耐孔食性)を有している上、オーステナイト相の性質上、極低温でも脆化しない特長をもっている。
 高窒素クロム−マンガン系オーステナイト鋼の以上のような特性からみて、本発明による非磁性な高窒素ナノ結晶クロム−マンガン系オーステナイト鋼は、例えば、外科医が用いるメス、医療用低温器具類、その他一般用のナイフ、工具類の材料としても有望といえる。
 以上述べたとおり、本発明によれば、金属単体の粉末材料をメカニカルミリング(MM)あるいはメカニカルアロイング(MA)処理すると、いずれも超微細結晶粒組織をもつ粉末となり、同粉末の900〜1000℃付近の温度での固化成形により、そのバルク材の製造をより容易に達成できる。
 鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウムなどの実用金属単体の粉末に炭素、ニオブ、チタンなどを添加した混合粉末をメカニカルアロイング(MA)処理すると、より超微細な結晶粒組織となり、前記のような固化成形により、容易にナノ結晶粒組織をもつバルク材となって、その強さ、硬さは溶解法よるものに比べ、はるかに高い値を示す。
 また、鉄、コバルトなどの磁性元素では、MM処理により、ナノオーダレベルの結晶粒径になると、粒径が小さくなるほどその軟磁性特性が向上する。
 また、本発明によれば、鉄とクロム、ニッケル、マンガン、炭素などとからなる例えば、クロム−ニッケル系又はクロム−マンガン系の元素状混合粉末を窒素源物質としてのFe−N合金粉末等とともにメカニカルアロイング(MA)処理すると、溶解過程を経ないで、原料粉末中の成分元素同士が機械的に合金化(オーステナイト化)して、溶解法のような従来の技術では達成できないナノサイズの結晶粒組織をもち、かつ窒素のオーステナイト相への固溶により極度に固溶強化されたオーステナイト鋼粉末となり、次のオーステナイト鋼粉末の固化成形過程においても、メカニカルアロイング(MA)処理粉末に存在する若干量の酸化鉄などのオーステナイト結晶粒界のピン止め効果により、ある程度の結晶粒の成長はあるもののナノ結晶組織が保持されることから、前記の窒素による固溶強化と結晶粒微細化強化の相乗効果に加え、オーステナイト相特有の強靱な特性によって超硬質・超強度で強靱かつすぐれた耐食性(耐孔食性)を有する非磁性の高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼(ナノ結晶オーステナイトステンレス鋼)材料を容易に製造することができる。
 さらにまた、高マンガンオーステナイト鋼についても、上記と同様のMA処理・固化成形処理技術の適用により、ナノ結晶粒組織を有する高マンガンオーステナイト鋼を容易に製造することができる。
本発明実施例で用いられる鉄、コバルト、ニッケル各元素の粉末に他元素(A)を15原子%添加して50hメカニカルアロイング(MA)処理したときの各元素の平均結晶粒径である。 本発明実施例で用いられるメカニカルミリング(MM)処理した鉄、コバルトの平均結晶粒径D(nm)による保磁力Hc(kOe)の変化を示す図である。 本発明実施例で用いられる粉末試料の押出成形加工の説明図である。 本発明実施例で用いられるメカニカルアロイング(MA)処理粉末のX線回折(XRD)図である。 本発明実施例で用いられるMA処理粉末のXRD図である。 本発明実施例で用いられるMA処理粉末試料のオーステナイト化(非磁性化)の状況をMA処理時間(t)による磁化Mmax(emu/g)の変化により示したものである。 本発明実施例で用いられる放電プラズマ焼結(SPS)による固化成形プロセスの説明図である。 本発明実施例で用いられるシース圧延(SR)による固化成形プロセスの説明図である。 本発明実施例で用いられる900℃でのSPS固化成形前後のMA試料のXRD図である。 本発明実施例で用いられる900℃にてSPS成形したMA試料成形体(約5mm厚さ)の断面の走査電顕写真である。 本発明実施例で用いられる900℃にてSPS成形したMA試料における窒素の残存率Re(%)を示すグラフ図である。 本発明実施例で用いられる900℃にてSPS成形したMA試料のXRD図である。 遅れ破壊試験に用いられた中央部に環状の切り欠き部を有する柱状の試験体の斜視図である。 本発明実施例で用いられる鉄、コバルト、ニッケル各元素の粉末に他元素(A)を15原子%添加して50hメカニカルアロイング(MA)処理したときの各元素の平均結晶粒径である。 本発明実施例で用いられるメカニカルミリング(MM)処理した鉄、コバルトの平均結晶粒径D(nm)による保磁力Hc(kOe)の変化を示す図である。 本発明実施例で用いられる粉末試料の押出成形加工の説明図である。 本発明実施例で用いられるメカニカルアロイング(MA)処理粉末のX線回折(XRD)図である。 本発明実施例で用いられるMA処理粉末のXRD図である。 本発明実施例で用いられるMA処理粉末試料のオーステナイト化(非磁性化)の状況をMA処理時間(t)による磁化Mmax(emu/g)の変化により示したものである。 本発明実施例で用いられるスパークプラズマ焼結(SPS)による固化成形プロセスの説明図である。 本発明実施例で用いられるシース圧延(SR)による固化成形プロセスの説明図である。 本発明実施例で用いられる900℃でのSPS固化成形前後のMA試料のXRD図である。 本発明実施例で用いられる900℃にてSPS成形したMA試料成形体(約5mm厚さ)の断面の走査電顕写真である。 本発明実施例で用いられる900℃にてSPS成形したMA試料における窒素の残存率Re(%)を示すグラフ図である。 本発明実施例で用いられる900℃にてSPS成形したMA試料のXRD図である。
符号の説明
  1:押出ダイス
  2:試料
  3:ダミーブロック
  4:容器
  5:ラム
  T:成形温度
  t:成形時間

Claims (48)

  1.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるオーステナイト鋼バルク材であって、
    前記各ナノ結晶粒子の粒子間及び/又は同粒子の内部に、結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属の酸化物を存在させてなることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  2.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるオーステナイト鋼バルク材であって、
    前記各ナノ結晶粒子の粒子間及び/又は同粒子の内部に、結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属の窒化物を存在させてなることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  3.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるオーステナイト鋼バルク材であって、
    前記各ナノ結晶粒子の粒子間及び/又は同粒子の内部に、結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属の炭化物を存在させてなることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  4.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるオーステナイト鋼バルク材であって、
    前記各ナノ結晶粒子の粒子間及び/又は同粒子の内部に、結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属のケイ化物(シリサイド)を存在させてなることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  5.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるオーステナイト鋼バルク材であって、
    前記各ナノ結晶粒子の粒子間及び/又は同粒子の内部に、結晶粒成長抑制物質として金属又は半金属の硼化物(ボライド)を存在させてなることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  6.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるオーステナイト鋼バルク材であって、
    前記各ナノ結晶粒子の粒子間及び/又は同粒子の内部に、結晶粒成長抑制物質として、(1)金属又は半金属の酸化物、(2)金属又は半金属の窒化物、(3)金属又は半金属の炭化物、(4)金属又は半金属のケイ化物(シリサイド)又は(5)金属又は半金属の硼化物(ボライド)の(1)〜(5)から選ばれる2種以上を存在させてなることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  7.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるオーステナイト鋼バルク材が、その構成組織中にフェライトナノ結晶粒子を50%未満含有するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  8.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるバルク材が、窒素を0.1〜5.0%(質量)含有するものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  9.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子又はその集合体よりなるバルク材が、金属又は半金属の酸化物の形態で酸素を0.01〜1.0%(質量)含有したものであることを特徴とする請求項1、6又は7のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  10.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるバルク材が、窒素化合物を1〜30%(質量)含有したものであることを特徴とする請求項2,6、7又は8のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  11.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるバルク材が、その固化成形過程での脱窒を防ぐための、窒素との化学的親和力が鉄より大きいニオブ、タンタル、マンガン、クロムなどの窒素親和性金属元素を含有してなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  12.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるバルク材の鋼形成成分及び配合組成が、
    Cr:12〜30%(質量)、Ni:0〜20%(質量)、Mn:0〜30%(質量)、N:0.1〜5%(質量)、C:0.02〜1.0%(質量)、残部:Feであることを特微とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  13.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるバルク材の鋼形成成分及び配合組成が、
    Cr:12〜30%(質量)、Ni:0〜20%(質量)、Mn:0〜30%(質量)、N(化合物型):30%(質量)以下、C:0.01〜1.0%(質量)、残部:Feであることを特微とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  14.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるバルク材の鋼形成成分及び配合組成が、
    Mn:4〜40%(質量)、N:0.1〜5%(質量)、C:0.1〜2.0%(質量)、Cr:3〜10%(質量)、残部Feであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  15.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるバルク材の鋼形成成分及び配合組成が、
    Mn:4〜40%(質量)、N(化合物型):30%(質量)以下、C:0.1〜2.0%(質量)、Cr:3〜10%(質量)、残部Feであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  16.  固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子が、ボールミル等を用いるメカニカルアロイング(MA)によって得られたものであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  17.  請求項1〜16のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材が、固溶型窒素を0.3〜1.0%(質量)含有する結晶粒径50〜1000nmのオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるものであることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  18.  請求項1〜16のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材が、固溶型窒素を0.4〜0.9%(質量)含有する結晶粒径75〜500nmのオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるものであることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  19.  請求項1〜16のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材が、固溶型窒素を0.4〜0.9%(質量)含有する結晶粒径100〜300nmのオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなるものであることを特徴とする超硬質・強靱で優れた耐食性を有するナノ結晶オーステナイト鋼バルク材。
  20.  鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末を、窒素源となる物質とともに混合し、
    ボールミル等を用いてメカニカルアロイング(MA)することによって高窒素濃度ナノ結晶オーステナイト鋼微粉末を製造した後、
    同オーステナイト鋼微粉末を(1)圧延、(2)放電プラズマ焼結、(3)押出成形、(4)熱間等方加圧焼結(HIP)、(5)冷間等方加圧成形(CIP)、(6)冷間プレス成形、(7)ホットプレス、(8)鍛造、又は(9)スエージングの(1)〜(9)から選択される1又は2以上の組合せによる固化成形又は爆発成形などの固化成形処理することにより、固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなる超硬質・強靱で優れた耐食性を有するオーステナイト鋼バルク材となすことを特微とするナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  21.  鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末を、窒素源となる物質とともに混合し、
    ボールミル等を用いてメカニカルアロイング(MA)することによって、高窒素濃度ナノ結晶オーステナイト鋼微粉末を製造した後、
    同オーステナイト鋼微粉末を、空気中又は酸化抑制雰囲気中あるいは真空中で(1)圧延、(2)放電プラズマ焼結、(3)押出成形、(4)熱間等方加圧焼結(HIP)、(5)ホットプレス、(6)鍛造、又は(7)スエージングの(1)〜(7)から選択される1又は2以上の組合せによる熱間固化成形又は爆発成形などの固化成形処理し、その後急冷することにより、固溶型窒素を0.1〜2.0%(質量)含有するオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなる超硬質・強靱で優れた耐食性を有するオーステナイト鋼バルク材となすことを特微とするナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  22.  鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末を、窒素源とともに混合し、
    ボールミル等を用いてメカニカルアロイング(MA)することによって、
    高窒素濃度ナノ結晶オーステナイト鋼微粉末を製造した後、同オーステナイト鋼微粉末を真空中又は酸化抑制雰囲気中で放電プラズマ焼結して固化成形することにより、固溶型窒素を0.3〜1.0%(質量)含有する結晶粒径50〜1000nmのオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなる超硬質・強靱で優れた耐食性を有するオーステナイト鋼バルク材となすことを特微とするナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  23.  鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末を、窒素源とともに混合し、
    ボールミル等を用いてメカニカルアロイング(MA)することによって、
    高窒素濃度ナノ結晶オーステナイト鋼微粉末を製造した後、同オーステナイト鋼微粉末を真空中又は酸化抑制雰囲気中で放電プラズマ焼結して固化成形し、次いで圧延加工処理し、急冷することにより、固溶型窒素を0.3〜1.0%(質量)含有する結晶粒径50〜1000nmのオーステナイトナノ結晶粒子の集合体よりなる超硬質・強靱で優れた耐食性を有するオーステナイト鋼バルク材となすことを特微とするナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  24.  請求項20又は22に記載の固化成形体を800〜1250℃の温度にて60分間以内の時間で焼なました後、更に急冷することを特徴とするナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  25.  請求項21又は23に記載の急冷された成形体を800〜1250℃の温度にて60分間以内の時間焼なました後、更に急冷することを特徴とするナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  26.  窒素源となる物質が、N2ガス、NH3ガス、窒化鉄、窒化クロム又は窒化マンガンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項20〜25のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  27.  メカニカルアロイングを施す雰囲気が、(1)アルゴンガスなどの不活性ガス、(2)N2ガス、又は(3)NH3ガスから選ばれるいずれか1種、又は(1)〜(3)から選ばれる2種以上の混合ガスの雰囲気であることを特徴とする請求項20〜26のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  28.  メカニカルアロイングを施す雰囲気が、若干のHガスなどの還元性物質を加えたガスの雰囲気であることを特徴とする請求項20〜27のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  29.  メカニカルアロイングを施す雰囲気が、真空又は真空中に若干のHガスなどの還元性物質を加えた真空又は還元雰囲気であることを特徴とする請求項20〜26のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  30.  鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末と、1〜10体積%のAlN、NbN、Cr2Nなどの金属窒化物又は0.5〜10%(質量)の鉄より窒素との化学的親和力の大きいニオブ、タンタル、マンガン、クロム、タングステン、モリブデンなどの窒素親和性金属あるいはコバルトを、窒素源となる物質とともに混合し、
    メカニカルアロイング(MA)過程及びメカニカルアロイング(MA)処理粉末の固化成形過程で前記添加窒化物を分散させるか、前記金属元素又はその窒化物、炭窒化物等を析出・分散させ、
    超硬質・強靱で優れた耐食性を有するオーステナイト鋼バルク材となすことを特微とする請求項20〜29のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  31.  鉄とクロム、ニッケル、マンガン又は炭素などのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末と、AlN、NbN、TaN、Si34、TiNなどの金属窒化物からなる粒子分散剤1〜10体積%を、窒素源となる物質とともに混合し、
    メカニカルアロイング(MA)過程におけるナノサイズレベルでの結晶粒の一層の微細化の促進とメカニカルアロイング(MA)処理粉末の固化成形過程での結晶粒粗大化を抑制し、
    超硬質・強靱で優れた耐食性を有するオーステナイト鋼バルク材となすことを特微とする請求項20〜30のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  32.  鉄とマンガン及び炭素を主体とする高マンガン−炭素鋼タイプのオーステナイト鋼形成成分の各微粉末を、窒素源としての窒化鉄等の金属窒化物微粉末とともに混合し、
    アルゴンガスなどの不活性ガスあるいは真空または真空中に若干のH2ガスなどの還元性物質を加えた真空又は還元雰囲気のもとで、
    メカニカルアロイング(MA)することによって、Mn:4〜40%(質量)、N:0.1〜5.0%(質量)、C:0.1〜2.0%(質量)、Cr:3.0〜10.0%(質量)、残部Feからなるナノ結晶オーステナイト鋼粉末を製造した後、同オーステナイト鋼粉末をシース圧延、放電プラズマ焼結、押出成形等の熱間固化成形又は爆発成形などの固化成形処理することにより超硬質・強靱で優れた耐食性を有するオーステナイト鋼バルク材となすことを特微とする請求項20〜29又は31のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  33.  オーステナイト鋼形成成分及び配合組成が、
    Cr:12〜30%(質量)、Ni:0〜20%(質量)、Mn:0〜30%(質量)、N:0.1〜5.0%(質量)、C:0.02〜1.0%(質量)、残部:Feであり、
    固化成形の温度が600〜1250℃であることを特微とする請求項20〜32のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  34.  メカニカルアロイング(MA)処理時に処理容器、硬質鋼ボール等から高窒素ナノ結晶オーステナイト鋼粉末に混入する酸素の量を0.01〜1.0%(質量)に調整し、その酸素の化合物である金属又は半金属の酸化物により、メカニカルアロイング(MA)過程におけるナノサイズレベルでの結晶粒の一層の微細化の促進とメカニカルアロイング(MA)処理粉末の固化成形過程での結晶粒粗大化を抑制することを特微とする請求項20〜31のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材の製造方法。
  35.  請求項1〜19のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材で製作された高力ボルト、ナット等の機械的締結材料。
  36.  請求項1〜19のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材で製作された防弾鋼板、防弾チョッキ等の耐弾材料。
  37.  請求項1〜19のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材で製作されたダイス、ドリル、スプリング、歯車、軸受け等の機械工具・機械部材。
  38.  請求項1〜19のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材で製作された人工骨、人工関節、人工歯根等の人工医科・歯科材料。
  39.  請求項1〜19のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材で製作された注射針、手術用メス等の医療用機械器具。
  40.  請求項1〜19のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材で製作された金型。
  41.  請求項1〜19のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材で製作された水素貯蔵タンク。
  42.  請求項1〜19のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材で製作された包丁、剃刀、鋏等の利器。
  43.  請求項1〜19のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材で製作されたタービンフィン、タービンブレード等のタービン部材。
  44.  請求項1〜19のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材で製作された防衛用兵器。
  45.  請求項1〜19のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材で製作されたスケート部材、そり部材等のスポーツ材料。
  46.  請求項1〜19のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材で製作された配管、タンク、バルブ等の化学プラント材料。
  47.  請求項1〜19のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材で製作されたロケット、ジェット機等の飛行物体部材。
  48.  請求項1〜19のいずれか1項に記載のナノ結晶オーステナイト鋼バルク材で製作された自動車、船舶、磁気浮上列車等の移送装置用部材。
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