JP2004134490A - インクジェットヘッドを用いたパターニング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】液滴のサイズを小さくし、パターニング精度の高精細化を可能とする構成のインクジェットヘッドによるパターニング装置である。
【解決手段】インクジェットヘッド1を用いたパターニング装置は、インクジェットヘッド1により吐出したインク液滴2、11、12、14を着弾、付着することにより基板4にパターニングを行う。大気圧下に配置されたインクジェットヘッド1により吐出されたインクは、少なくとも大気圧よりも減圧された減圧領域3、21、20を通過させられた後、基板4に着弾させられて付着する。
【選択図】 図1
【解決手段】インクジェットヘッド1を用いたパターニング装置は、インクジェットヘッド1により吐出したインク液滴2、11、12、14を着弾、付着することにより基板4にパターニングを行う。大気圧下に配置されたインクジェットヘッド1により吐出されたインクは、少なくとも大気圧よりも減圧された減圧領域3、21、20を通過させられた後、基板4に着弾させられて付着する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットヘッドを用いたパターニング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、インクジェットヘッドは、少なくとも、インクに圧力を印加する圧力室とその圧力室に連通したノズルを持つオリフィスプレートとを有する構造を持っている。圧力発生方法としては、抵抗体に通電して熱エネルギーをインクに与えてインクに急激な体積変化(気泡の発生)を伴う状態変化を生じさせることによる作用力を利用するバブルジェット方式や、圧電セラミックに電圧を印加して機械的振動を発生させる圧電(ピエゾ)方式等が一般的である。
【0003】
近年、インクジェットによるパターニングの高精細化が望まれている。これに答えるには、インクジェットヘッドから吐出されるインク液滴の吐出量を低減させる必要がある。従来の一般的なオンデマンド方式のインクジェットヘッドでは、インク滴の吐出量が2〜4pl(ピコリットル)程度まで低減できるようになってきた。このように吐出量の低減が可能になったのは、ピエゾ方式のインクジェット方式では、駆動波形を制御することでノズル径よりも小径のインク滴を形成できるようになったからである。また、バブルジェット方式では、インク室の容積を小さくし、且つノズル径を小さくすることで小液滴化を実現できるようになったからである。これらの場合、飛翔中のインク液滴の直径はおよそ15〜20μm程度である。このインク滴が基板に着弾した場合、着弾径はおよそ30〜40μm程度になる。よって、これらの方式では、現在の技術水準では、30μm以下のパターニングは通常困難である。
【0004】
さらに、近年、インクジェットを利用した産業用のパターニングの応用が広く考えられている。その理由は、インクジェットヘッドを利用することで、直接、基板にパターニングが可能となるという大きな利点が生じるからである。通常、基板にパターニングする場合には、リソグラフィー工程が必要になってくる。他方、リソグラフィー工程を利用しない場合には、印刷等が考えられるが、印刷工程では一般に版が必要であり、またその版の洗浄等の工程も必要にとなってきてしまう。これらに対して、インクジェットによるパターニングは、リソグラフィー工程や版等が不要になり、工程が非常に簡単になる。こうした利点を有するインクジェットによるパターニングの利用範囲を広げるためにも、インクジェットによるパターニングの高精細化が必須の技術となってきている。
【0005】
当然、インクジェットヘッドによるパターニングの高精細化を実現するためには、更なるインク液滴径の低減が必要である。例えば、10μm程度のパターニングを実現するためには、液滴の直径を5μm程度にする必要がある。インク液滴のサイズを小さくするためには、ノズルの大きさを小さくし、且つインクの圧力印加時間をできるだけ短時間にする必要がある(インク速度の増大の為)。しかし、小径ノズルの作製やインクの圧力印加時間の短縮は、インク室の小型化等が必須であり、かなり困難である。
【0006】
また、小液滴サイズのインクジェットを形成する方法としては、超音波を利用しミストを形成する方法が広く考えられている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、液滴の大きさは3〜10μm程度となり、パターニングは6〜20μm程度が可能となる。しかし、超音波を利用したインクジェットは、一般に複数個のミスト(微小液滴)が形成されてしまい、複数個のミストの内の1つのみを抽出する手段が必要であり、それだけでは高精度のパターニングには不向きである。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−84908号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、液滴のサイズを小さくし、パターニング精度の高精細化を可能とする構成を有するインクジェットヘッドによるパターニング装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本発明のインクジェットヘッドを用いたパターニング装置は、インクジェットヘッドにより吐出したインクを着弾、付着することにより基板にパターニングを行う装置において、大気圧下に配置されたインクジェットヘッドにより吐出された前記インクが、少なくとも大気圧よりも減圧された減圧領域を通過させられた後、前記基板に着弾させられて付着する様に構成されたことを特徴とする。
【0010】
上記基本構成に基づいて、以下の様なより具体的な態様が可能である。
前記基板は、大気圧下に配置されたり、大気圧よりも減圧された減圧下に配置されたりする。前記減圧領域中において飛翔中のインク液滴を加熱する手段を付加してもよい。また、前記インク液滴を帯電させ、且つ帯電インク液滴を電場により加速させる手段してもよい。
【0011】
前記減圧領域は、2つ以上の複数の領域部から構成されて、各々真空度が異なる様に(例えば、基板が設置された個所に向かって、真空度が高くなる複数の減圧領域部を配置する)構成されてもよい。また、前記インクジェットヘッドのノズルと前記減圧領域への開口部からのコンダクタンス(気体の流れ易さ)が、前記ノズル部以外のコンダクタンスよりも半分以下になるように、ノズルメニスカス(液面)部を奥側に引っ込む構成にするノズルスペーサをノズルに付加する構成にしてもよい。これによりインク液面の乾燥を防げて、減圧領域におけるインク液滴の微小化を促進できる。このノズルスペーサは、前記インクジェットヘッドの回復動作時にはノズルから外れる構成(すなわち、ノズルに着脱可能である)であるのがよい。
【0012】
例えば、前記インクの主成分は水、アルコール、エーテルであり、水、アルコールおよびエーテルのインク成分割合が80wt%以上であり、より好ましくは95wt%以上である。
【0013】
【作用】
上記のように構成された本発明のインクジェットヘッドによるパターニング装置においては、液滴吐出法は従来のインクジェット方法を採用し、液滴が形成された後に液滴を減圧雰囲気中に通過させることで、液滴中の揮発成分を蒸発することが可能となり、その結果、必要に応じて適当に小さくなった液滴を基板に着弾させて精細なパターニングを行うことが可能となる。
【0014】
この場合に、パターニングする基板は大気圧下に配置してもよい。但し、大気圧下に設置する場合には、気体の抵抗により微小液滴の速度は減速されてしまう恐れがある。速度が減速して小さくなってしまうと、外乱の気流の影響を受けて着弾位置の精度が悪くなってしまう可能性が大きくなる。これを防止するには、基板を減圧雰囲気中に配置することで着弾精度の向上が可能となる。
【0015】
インク液滴の蒸発成分を減圧雰囲気中で効率良く気化させるためには、蒸気圧の高い溶媒を利用するのが効果的である。インクの固形分を良く分散し蒸気圧の高い溶媒としては、水やアルコールやエーテルが有効である。また、水やアルコールやエーテルの成分割合が高い方が、減圧下での液滴の径の減少化には有利であるため、揮発成分の濃度は80wt%以上であることが望ましい。さらに効果を向上させるためには、インクの揮発成分濃度は95wt%以上とするのがよい。
【0016】
減圧雰囲気中でのインク揮発成分の揮発を促進する手段としては、インク液滴に熱エネルギーを付与し加熱する処理を施す手段があり、これにより更にインク液滴径の微小化が可能になる。
【0017】
一般に、インク液滴のサイズが小さくなると外乱の影響を受けやすくなってしまう。その為、吐出後にインク液滴に速度を付加する手段を設けることも好適である。インク液滴へ速度付与を行なう手段としては、インク液滴をイオン化させてこれを電気的に加速させる手段があり、これによりインク液滴の直進性を向上(着弾精度向上)させられる。
【0018】
インク液滴を減圧雰囲気中に通過させる場合に、減圧雰囲気の圧力が小さいほどインク液滴の揮発成分の蒸発が促進される。そのためには、真空領域中にインク液滴を通過させると非常に良い。しかし、例えば、複数のノズルを備えるインクジェットヘッドが配置されている大気圧領域から、ノズル(このノズルはインク吐出用には用いない)を介して減圧する場合には、急激な圧力の低減は困難であり、圧力を段階的に調整することが望ましい。したがって、本発明では、インク液滴が通過する減圧領域を複数個の領域部に分離することにより、各減圧領域の圧力の段階的制御が可能となっている構成にもできる。
【0019】
また、インクジェットヘッドから吐出されたインク液滴は、例えば、減圧領域に具備された微小ノズル(開口部)を通して、減圧領域に導入される構成をとっている。この微小ノズルの大きさは、インク液滴の1.5〜5倍程度に制御することにより、効率良く減圧領域の圧力を制御することができる。この開口部の大きさを大きくし過ぎると、ヘッドの近辺も減圧されてインクの揮発成分が蒸発し過ぎてしまうし、この開口部の大きさを小さくし過ぎると、インク液滴が減圧領域に良好に導入されなくなる恐れが生じる。すなわち、微小ノズルの大きさを適当に小さくすることで、インクジェットヘッドノズルのメニスカスのインクをより安定に制御することが可能となる。メニスカスのインクは大気圧下においても揮発成分が蒸発し、成分変動が生じてしまう。増してや、メニスカス近傍に減圧領域が存在すると、より一層蒸発が促進されてしまう。メニスカスでの揮発成分の蒸発が促進されてしまうと、インク液滴の微小化を実現するための減圧領域の通過による効果が減少してしまう。そのため、インクジェットヘッドのメニスカスは、出来るだけ大気圧にする(揮発成分の飽和蒸気圧に近づける)ことが望ましい。
【0020】
さらに、インクのメニスカスを奥側に引っ込むようにノズルスペーサをノズルに付加することにより、メニスカス領域を揮発成分の飽和蒸気圧状態に近づけることが可能となる。これにより、より一層のメニスカスのインク成分の安定化が実現できる。
【0021】
また、インクジェットヘッドを連続駆動するとノズル近傍にはインク液滴のミストが発生するので、そのインクミストの除去のためや、最初にインクをインクジェットヘッドに注入して吐出状態にするためには、ノズル近傍をワイピングする動作が必要である。これには、インクジェットヘッドの回復動作時にはノズルスペーサをノズルから外せる構成にすれば、回復動作が実現できる。
【0022】
この様に、インクジェットヘッドから吐出されたインク液滴を減圧領域で微小化し基板に安定的且つ効果的に着弾させるためには、減圧領域を如何に制御してインク液滴の揮発成分を素早く蒸発させるかが重要である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は本発明の第1の実施の形態であるパターニング装置の概略図である。本実施の形態のパターニング装置は、インク液滴を形成、吐出するインクジェットヘッド1と減圧領域3から構成されている。図中のインクジェットヘッド1の方式は、ピエゾ方式もしくはバブルジェット方式のどちらを使用してもよい。減圧領域3は大きく3つの領域から構成されており、一つ目はインク液滴2が最初に導入される第一減圧領域部21であり、次にインク液滴11が導入される真空領域20は外部の真空ポンプで排気され、その圧力が制御されている。さらに、減圧領域3は、基板4が配置されている減圧領域部22を含んでいる。減圧領域部22に配置されている基板4は、XYステージ7に固定、制御されている。XYステージ7の姿勢とインクジェットヘッド1の吐出タイミング(制御系は不図示)は制御されている。XYステージ7は、3次元的に位置制御されるXYZステージでもよい。
【0025】
次に、本実施の形態を用いてのパターニングの方法について述べる。
インクとしては、インクジェットヘッド1のインクの固形分としてAgの超微粒子を分散したインクを使用した。インク成分割合としては、水70wt%、IPA(イソプロピルアルコール)25wt%、EG(エーテルグリコール)3wt%、Ag超微粒子2wt%を用いた。基板4のXYステージ7の所望の位置を検出した段階で、インクジェットヘッド1に吐出信号を発生させ、インク液滴2を吐出する。このときのインク液滴2の直径はおよそ25μmであった。インクジェットヘッド1によりインク液滴を吐出する場合には、通常、主滴とサテライトが形成される。しかし、本実施の形態の場合には、主滴のみが形成されるようなインクジェットヘッド1および駆動方法を採用するのが好ましい。
【0026】
吐出されたインク液滴2は数mm程度の距離飛翔して第1の減圧領域部21の開口部6を通過し、第1の減圧領域部21に導入される。この距離は、近過ぎると、ヘッドノズル先端の周りの圧力が下がってそこのインクの揮発成分が蒸発し過ぎてしまう恐れが生じるし、遠過ぎると、インク液滴の飛翔速度が大気圧下で下がり過ぎてしまう恐れが生じる。開口部6の大きさは、インク液滴径の1.5〜5倍程度である。減圧領域部21に導入されたインク液滴2は、減圧領域部21を通過することでインク成分の一部の揮発成分(水及びIPA)が蒸発し、インク液滴は符号11で示すように初期の液滴2に比べて小さくなる。さらに、インク液滴11は真空領域20の開口部8(大きさはインク液滴径の1.5〜5倍程度)を通過し、真空領域20に導入される。真空領域20は真空ポンプで圧力を減圧制御されている。真空領域20の揮発成分の分圧は、インクの揮発成分の飽和蒸気圧の1/10以下にするのが望ましい。全圧は、1kPa以下が望ましい。この真空領域20を通過する段階で、インク液滴は符号12で示される液滴に減少され、インクジェットヘッド1から吐出直後の液滴2と比べておよそ直径で1/3程度まで減少することが可能となった。
【0027】
減圧ないし真空領域でのインク液滴の飛翔距離は数mm乃至数cm程度である。この領域では抵抗があまりないのでインク液滴の飛翔速度はさほど減速せず、したがってこの領域の長さの設定は場合に応じて適当に決めればよい。微小液滴化されたインク液滴12は、最後に、真空領域20の開口部9と基板4が配置されている減圧領域部22の開口部10を通過し、基板4に着弾して着弾スポット14となり、パターニングされる。ここでの開口部9、10の大きさは、減速して来たインク液滴12が低圧側から高圧側に出るのであるから、出易いように先の開口部6、8より多少大きくするとよい。以上の構成の実施の形態により、15μm程度のパターニングが可能となった。
【0028】
本実施の形態では、インク成分として、Agの超微粒子、水、IPAを採用したが、これらに限定されるものではない。揮発成分としては、水あるいはアルコール等の蒸気圧の高い溶媒であれば、それらでも特に問題はない。また、本実施の形態では、減圧領域は3つの部分から構成されているが、これに限定されるものではなく、またパターニングを施される基板は必ずしも減圧領域に配置する必要はない。
【0029】
液滴の直進性を向上させるために、図2に示す液滴加速装置を付加することも有用な手段である。図2図中、30はインク液滴のイオン化手段であり、31は電場による帯電インク液滴の加速手段である。図2中に記載されている液滴の加速装置を付加することにより、微小化されたインク液滴の基板4への着弾精度をさらに向上できる。
【0030】
また、本実施の形態では、インクジェットヘッド1のノズルが1つの場合を記載しているが、ノズルが複数個あっても同様の制御が可能である。また、インクジェットヘッド自体も複数個用い、同時に制御することも可能である。
【0031】
次に、第2の実施の形態について述べる。
図3は本発明の第2の実施の形態であるパターニング装置の概略図である。本実施の形態のパターニング装置は、インク液滴を形成、吐出するインクジェットヘッド50と減圧領域63から構成されている。図3中のインクジェットヘッド50の方式も、ピエゾ方式もしくはバブルジェット方式のどちらを使用してもよい。インクジェットヘッド50は、インクを吐出するための複数のインク加圧室51を有する。52はインク加圧室51と交互に並んだ圧力制御用溝であり、この圧力制御用溝52は、インク加圧室51の一部を利用することも可能である(この場合は、圧力制御用溝52として用いるインク加圧室51にはインクを入れない)。インクジェットヘッド50のノズルに接続されているノズルスペーサ61は、インクメニスカス部の乾燥を防ぐためにインクメニスカス部を減圧領域63から離す役割を担っている。減圧領域63は、圧力制御用溝52からの排気と共に、真空ポンプで排気され、その圧力が制御されている。基板65は、XYステージ66に固定、制御されている。ここでも、XYステージ66の姿勢とインクジェットヘッド50の吐出タイミング(制御系は不図示)は制御されている。また、XYステージ66はXYZステージでもよい。
【0032】
次に、本実施の形態を用いてのパターニングの方法について述べる。
インクとしては、インクジェットヘッド50のインクの固形分としてPtの超微粒子を分散したインクを使用した。インク成分割合としては、水74wt%、IPA25wt%、EG0.5wt%、Pt超微粒子0.5wt%を用いた。圧力制御用溝51は真空ポンプに接続され、減圧領域63の圧力及び圧力分布を制御している。さらに、上述したように減圧領域63は、外部の真空ポンプで減圧制御されている。インクジェットヘッド50のメニスカスは、ノズルスペーサ61により、インク揮発成分の蒸発が抑制制御される様になっている。メニスカス状態でのインクの揮発成分の蒸発を抑制しないと、減圧領域63でのインク液滴の微小化の効果が低減してしまうからである。
【0033】
本実施の形態でも、基板65のXYステージ66の所望の位置を検出した段階でインクジェットヘッド50に吐出信号を発生させ、インク液滴62を吐出する。このときのインク液滴62の直径はおよそ20μmであった。吐出されたインク液滴62はノズルスペーサ61を通過し、減圧領域63に導入される。導入されたインク液滴は、減圧領域63を通過することによりインク成分の一部の揮発成分(水及びIPA)が蒸発し、符号64で示すように初期の液滴62に比べて小さくなる。インクジェットヘッド50から吐出直後の液滴62と比べておよそ直径で1/2程度まで減少させることが可能となった。微小液滴化されたインク液滴64は最後に、基板65に着弾し、パターニングされる。本実施の形態では、20μm程度のパターニングが可能となった。
【0034】
本実施の形態では、インク成分として、Ptの超微粒子、水、IPAを採用したが、これに限定されるものではない。ここでも、揮発成分として、水あるいはアルコール等の蒸気圧の高い溶媒であれば、それらも特に問題はない。本実施の形態では、インクジェットヘッド50の圧力制御用溝52を利用し、減圧領域63を減圧状態に制御したが、本圧力制御溝52から乾燥空気を減圧領域63へ導入する方法でも、微小液滴化という同様の効果が確認された。また、パターニングを施される基板65は減圧領域63に配置してもよい。
【0035】
また、本実施の形態で用いたノズルスペーサ61は、インクジェットヘッド50の回復時等には、ノズルから外れる構成をとり、容易に回復動作が行えるような構造となっている。
【0036】
以上の如く、実施の形態で述べられているように、液滴が形成された後に、液滴を減圧雰囲気中に通過させて液滴中の揮発成分を蒸発させることが可能となり、その結果、小さくなった液滴を基板に着弾させ微小なパターニングを行うことが可能となる。液滴吐出法は従来の方法を採用することで、簡便に微小なパターニングが可能となる。以上、2つの実施の形態を詳細に説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0037】
【発明の効果】
上述したように、インクジェットヘッドから吐出されたインク液滴を、液滴が形成された後に、減圧雰囲気中に通過させることで、液滴中の揮発成分を蒸発させることが可能となり、その結果、小さくなった液滴を基板に着弾させ微小なパターニングを行うことが可能となる。
【0038】
さらに、液滴の基板への着弾精度を向上させることは、基板を減圧雰囲気中に配置したり、インク液滴に加速手段を作用させて速度を加速させたりして達成できる。
【0039】
液滴によるパターニングの高精細化を効率良く実施するためには、インク液滴の蒸発成分を減圧雰囲気中で素早く気化させる必要がある。そのためには、減圧雰囲気中のインクの揮発成分の分圧を出来るだけ小さくする必要があり、これは減圧雰囲気中の圧力を出来るだけ真空にすることで達成できる。また、インクの揮発成分の蒸気圧が出来るだけ高い溶媒(水、アルコール、エーテルなど)を用い、且つその割合を大きくすることにより同様の効果が得られる。
【0040】
さらに、減圧雰囲気中での揮発成分の揮発促進対策としては、インク液滴に熱エネルギーを付与して加熱する処理を施すことがあり、これにより更なるインク液滴の微小化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態のパターニング装置を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態で用いられる液滴加速装置の概略図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態のパターニング装置を示す図である。
【符号の説明】
1、50 インクジェットヘッド
2、11、12、14、62、64 インク液滴
3、21、22、63 減圧領域部
4、65 基板
6、8、9、10 開口部
7、66 XYステージ
20 真空領域部
51 インク加圧室
52 圧力制御用溝
61 ノズルスペーサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットヘッドを用いたパターニング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、インクジェットヘッドは、少なくとも、インクに圧力を印加する圧力室とその圧力室に連通したノズルを持つオリフィスプレートとを有する構造を持っている。圧力発生方法としては、抵抗体に通電して熱エネルギーをインクに与えてインクに急激な体積変化(気泡の発生)を伴う状態変化を生じさせることによる作用力を利用するバブルジェット方式や、圧電セラミックに電圧を印加して機械的振動を発生させる圧電(ピエゾ)方式等が一般的である。
【0003】
近年、インクジェットによるパターニングの高精細化が望まれている。これに答えるには、インクジェットヘッドから吐出されるインク液滴の吐出量を低減させる必要がある。従来の一般的なオンデマンド方式のインクジェットヘッドでは、インク滴の吐出量が2〜4pl(ピコリットル)程度まで低減できるようになってきた。このように吐出量の低減が可能になったのは、ピエゾ方式のインクジェット方式では、駆動波形を制御することでノズル径よりも小径のインク滴を形成できるようになったからである。また、バブルジェット方式では、インク室の容積を小さくし、且つノズル径を小さくすることで小液滴化を実現できるようになったからである。これらの場合、飛翔中のインク液滴の直径はおよそ15〜20μm程度である。このインク滴が基板に着弾した場合、着弾径はおよそ30〜40μm程度になる。よって、これらの方式では、現在の技術水準では、30μm以下のパターニングは通常困難である。
【0004】
さらに、近年、インクジェットを利用した産業用のパターニングの応用が広く考えられている。その理由は、インクジェットヘッドを利用することで、直接、基板にパターニングが可能となるという大きな利点が生じるからである。通常、基板にパターニングする場合には、リソグラフィー工程が必要になってくる。他方、リソグラフィー工程を利用しない場合には、印刷等が考えられるが、印刷工程では一般に版が必要であり、またその版の洗浄等の工程も必要にとなってきてしまう。これらに対して、インクジェットによるパターニングは、リソグラフィー工程や版等が不要になり、工程が非常に簡単になる。こうした利点を有するインクジェットによるパターニングの利用範囲を広げるためにも、インクジェットによるパターニングの高精細化が必須の技術となってきている。
【0005】
当然、インクジェットヘッドによるパターニングの高精細化を実現するためには、更なるインク液滴径の低減が必要である。例えば、10μm程度のパターニングを実現するためには、液滴の直径を5μm程度にする必要がある。インク液滴のサイズを小さくするためには、ノズルの大きさを小さくし、且つインクの圧力印加時間をできるだけ短時間にする必要がある(インク速度の増大の為)。しかし、小径ノズルの作製やインクの圧力印加時間の短縮は、インク室の小型化等が必須であり、かなり困難である。
【0006】
また、小液滴サイズのインクジェットを形成する方法としては、超音波を利用しミストを形成する方法が広く考えられている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、液滴の大きさは3〜10μm程度となり、パターニングは6〜20μm程度が可能となる。しかし、超音波を利用したインクジェットは、一般に複数個のミスト(微小液滴)が形成されてしまい、複数個のミストの内の1つのみを抽出する手段が必要であり、それだけでは高精度のパターニングには不向きである。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−84908号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、液滴のサイズを小さくし、パターニング精度の高精細化を可能とする構成を有するインクジェットヘッドによるパターニング装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本発明のインクジェットヘッドを用いたパターニング装置は、インクジェットヘッドにより吐出したインクを着弾、付着することにより基板にパターニングを行う装置において、大気圧下に配置されたインクジェットヘッドにより吐出された前記インクが、少なくとも大気圧よりも減圧された減圧領域を通過させられた後、前記基板に着弾させられて付着する様に構成されたことを特徴とする。
【0010】
上記基本構成に基づいて、以下の様なより具体的な態様が可能である。
前記基板は、大気圧下に配置されたり、大気圧よりも減圧された減圧下に配置されたりする。前記減圧領域中において飛翔中のインク液滴を加熱する手段を付加してもよい。また、前記インク液滴を帯電させ、且つ帯電インク液滴を電場により加速させる手段してもよい。
【0011】
前記減圧領域は、2つ以上の複数の領域部から構成されて、各々真空度が異なる様に(例えば、基板が設置された個所に向かって、真空度が高くなる複数の減圧領域部を配置する)構成されてもよい。また、前記インクジェットヘッドのノズルと前記減圧領域への開口部からのコンダクタンス(気体の流れ易さ)が、前記ノズル部以外のコンダクタンスよりも半分以下になるように、ノズルメニスカス(液面)部を奥側に引っ込む構成にするノズルスペーサをノズルに付加する構成にしてもよい。これによりインク液面の乾燥を防げて、減圧領域におけるインク液滴の微小化を促進できる。このノズルスペーサは、前記インクジェットヘッドの回復動作時にはノズルから外れる構成(すなわち、ノズルに着脱可能である)であるのがよい。
【0012】
例えば、前記インクの主成分は水、アルコール、エーテルであり、水、アルコールおよびエーテルのインク成分割合が80wt%以上であり、より好ましくは95wt%以上である。
【0013】
【作用】
上記のように構成された本発明のインクジェットヘッドによるパターニング装置においては、液滴吐出法は従来のインクジェット方法を採用し、液滴が形成された後に液滴を減圧雰囲気中に通過させることで、液滴中の揮発成分を蒸発することが可能となり、その結果、必要に応じて適当に小さくなった液滴を基板に着弾させて精細なパターニングを行うことが可能となる。
【0014】
この場合に、パターニングする基板は大気圧下に配置してもよい。但し、大気圧下に設置する場合には、気体の抵抗により微小液滴の速度は減速されてしまう恐れがある。速度が減速して小さくなってしまうと、外乱の気流の影響を受けて着弾位置の精度が悪くなってしまう可能性が大きくなる。これを防止するには、基板を減圧雰囲気中に配置することで着弾精度の向上が可能となる。
【0015】
インク液滴の蒸発成分を減圧雰囲気中で効率良く気化させるためには、蒸気圧の高い溶媒を利用するのが効果的である。インクの固形分を良く分散し蒸気圧の高い溶媒としては、水やアルコールやエーテルが有効である。また、水やアルコールやエーテルの成分割合が高い方が、減圧下での液滴の径の減少化には有利であるため、揮発成分の濃度は80wt%以上であることが望ましい。さらに効果を向上させるためには、インクの揮発成分濃度は95wt%以上とするのがよい。
【0016】
減圧雰囲気中でのインク揮発成分の揮発を促進する手段としては、インク液滴に熱エネルギーを付与し加熱する処理を施す手段があり、これにより更にインク液滴径の微小化が可能になる。
【0017】
一般に、インク液滴のサイズが小さくなると外乱の影響を受けやすくなってしまう。その為、吐出後にインク液滴に速度を付加する手段を設けることも好適である。インク液滴へ速度付与を行なう手段としては、インク液滴をイオン化させてこれを電気的に加速させる手段があり、これによりインク液滴の直進性を向上(着弾精度向上)させられる。
【0018】
インク液滴を減圧雰囲気中に通過させる場合に、減圧雰囲気の圧力が小さいほどインク液滴の揮発成分の蒸発が促進される。そのためには、真空領域中にインク液滴を通過させると非常に良い。しかし、例えば、複数のノズルを備えるインクジェットヘッドが配置されている大気圧領域から、ノズル(このノズルはインク吐出用には用いない)を介して減圧する場合には、急激な圧力の低減は困難であり、圧力を段階的に調整することが望ましい。したがって、本発明では、インク液滴が通過する減圧領域を複数個の領域部に分離することにより、各減圧領域の圧力の段階的制御が可能となっている構成にもできる。
【0019】
また、インクジェットヘッドから吐出されたインク液滴は、例えば、減圧領域に具備された微小ノズル(開口部)を通して、減圧領域に導入される構成をとっている。この微小ノズルの大きさは、インク液滴の1.5〜5倍程度に制御することにより、効率良く減圧領域の圧力を制御することができる。この開口部の大きさを大きくし過ぎると、ヘッドの近辺も減圧されてインクの揮発成分が蒸発し過ぎてしまうし、この開口部の大きさを小さくし過ぎると、インク液滴が減圧領域に良好に導入されなくなる恐れが生じる。すなわち、微小ノズルの大きさを適当に小さくすることで、インクジェットヘッドノズルのメニスカスのインクをより安定に制御することが可能となる。メニスカスのインクは大気圧下においても揮発成分が蒸発し、成分変動が生じてしまう。増してや、メニスカス近傍に減圧領域が存在すると、より一層蒸発が促進されてしまう。メニスカスでの揮発成分の蒸発が促進されてしまうと、インク液滴の微小化を実現するための減圧領域の通過による効果が減少してしまう。そのため、インクジェットヘッドのメニスカスは、出来るだけ大気圧にする(揮発成分の飽和蒸気圧に近づける)ことが望ましい。
【0020】
さらに、インクのメニスカスを奥側に引っ込むようにノズルスペーサをノズルに付加することにより、メニスカス領域を揮発成分の飽和蒸気圧状態に近づけることが可能となる。これにより、より一層のメニスカスのインク成分の安定化が実現できる。
【0021】
また、インクジェットヘッドを連続駆動するとノズル近傍にはインク液滴のミストが発生するので、そのインクミストの除去のためや、最初にインクをインクジェットヘッドに注入して吐出状態にするためには、ノズル近傍をワイピングする動作が必要である。これには、インクジェットヘッドの回復動作時にはノズルスペーサをノズルから外せる構成にすれば、回復動作が実現できる。
【0022】
この様に、インクジェットヘッドから吐出されたインク液滴を減圧領域で微小化し基板に安定的且つ効果的に着弾させるためには、減圧領域を如何に制御してインク液滴の揮発成分を素早く蒸発させるかが重要である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は本発明の第1の実施の形態であるパターニング装置の概略図である。本実施の形態のパターニング装置は、インク液滴を形成、吐出するインクジェットヘッド1と減圧領域3から構成されている。図中のインクジェットヘッド1の方式は、ピエゾ方式もしくはバブルジェット方式のどちらを使用してもよい。減圧領域3は大きく3つの領域から構成されており、一つ目はインク液滴2が最初に導入される第一減圧領域部21であり、次にインク液滴11が導入される真空領域20は外部の真空ポンプで排気され、その圧力が制御されている。さらに、減圧領域3は、基板4が配置されている減圧領域部22を含んでいる。減圧領域部22に配置されている基板4は、XYステージ7に固定、制御されている。XYステージ7の姿勢とインクジェットヘッド1の吐出タイミング(制御系は不図示)は制御されている。XYステージ7は、3次元的に位置制御されるXYZステージでもよい。
【0025】
次に、本実施の形態を用いてのパターニングの方法について述べる。
インクとしては、インクジェットヘッド1のインクの固形分としてAgの超微粒子を分散したインクを使用した。インク成分割合としては、水70wt%、IPA(イソプロピルアルコール)25wt%、EG(エーテルグリコール)3wt%、Ag超微粒子2wt%を用いた。基板4のXYステージ7の所望の位置を検出した段階で、インクジェットヘッド1に吐出信号を発生させ、インク液滴2を吐出する。このときのインク液滴2の直径はおよそ25μmであった。インクジェットヘッド1によりインク液滴を吐出する場合には、通常、主滴とサテライトが形成される。しかし、本実施の形態の場合には、主滴のみが形成されるようなインクジェットヘッド1および駆動方法を採用するのが好ましい。
【0026】
吐出されたインク液滴2は数mm程度の距離飛翔して第1の減圧領域部21の開口部6を通過し、第1の減圧領域部21に導入される。この距離は、近過ぎると、ヘッドノズル先端の周りの圧力が下がってそこのインクの揮発成分が蒸発し過ぎてしまう恐れが生じるし、遠過ぎると、インク液滴の飛翔速度が大気圧下で下がり過ぎてしまう恐れが生じる。開口部6の大きさは、インク液滴径の1.5〜5倍程度である。減圧領域部21に導入されたインク液滴2は、減圧領域部21を通過することでインク成分の一部の揮発成分(水及びIPA)が蒸発し、インク液滴は符号11で示すように初期の液滴2に比べて小さくなる。さらに、インク液滴11は真空領域20の開口部8(大きさはインク液滴径の1.5〜5倍程度)を通過し、真空領域20に導入される。真空領域20は真空ポンプで圧力を減圧制御されている。真空領域20の揮発成分の分圧は、インクの揮発成分の飽和蒸気圧の1/10以下にするのが望ましい。全圧は、1kPa以下が望ましい。この真空領域20を通過する段階で、インク液滴は符号12で示される液滴に減少され、インクジェットヘッド1から吐出直後の液滴2と比べておよそ直径で1/3程度まで減少することが可能となった。
【0027】
減圧ないし真空領域でのインク液滴の飛翔距離は数mm乃至数cm程度である。この領域では抵抗があまりないのでインク液滴の飛翔速度はさほど減速せず、したがってこの領域の長さの設定は場合に応じて適当に決めればよい。微小液滴化されたインク液滴12は、最後に、真空領域20の開口部9と基板4が配置されている減圧領域部22の開口部10を通過し、基板4に着弾して着弾スポット14となり、パターニングされる。ここでの開口部9、10の大きさは、減速して来たインク液滴12が低圧側から高圧側に出るのであるから、出易いように先の開口部6、8より多少大きくするとよい。以上の構成の実施の形態により、15μm程度のパターニングが可能となった。
【0028】
本実施の形態では、インク成分として、Agの超微粒子、水、IPAを採用したが、これらに限定されるものではない。揮発成分としては、水あるいはアルコール等の蒸気圧の高い溶媒であれば、それらでも特に問題はない。また、本実施の形態では、減圧領域は3つの部分から構成されているが、これに限定されるものではなく、またパターニングを施される基板は必ずしも減圧領域に配置する必要はない。
【0029】
液滴の直進性を向上させるために、図2に示す液滴加速装置を付加することも有用な手段である。図2図中、30はインク液滴のイオン化手段であり、31は電場による帯電インク液滴の加速手段である。図2中に記載されている液滴の加速装置を付加することにより、微小化されたインク液滴の基板4への着弾精度をさらに向上できる。
【0030】
また、本実施の形態では、インクジェットヘッド1のノズルが1つの場合を記載しているが、ノズルが複数個あっても同様の制御が可能である。また、インクジェットヘッド自体も複数個用い、同時に制御することも可能である。
【0031】
次に、第2の実施の形態について述べる。
図3は本発明の第2の実施の形態であるパターニング装置の概略図である。本実施の形態のパターニング装置は、インク液滴を形成、吐出するインクジェットヘッド50と減圧領域63から構成されている。図3中のインクジェットヘッド50の方式も、ピエゾ方式もしくはバブルジェット方式のどちらを使用してもよい。インクジェットヘッド50は、インクを吐出するための複数のインク加圧室51を有する。52はインク加圧室51と交互に並んだ圧力制御用溝であり、この圧力制御用溝52は、インク加圧室51の一部を利用することも可能である(この場合は、圧力制御用溝52として用いるインク加圧室51にはインクを入れない)。インクジェットヘッド50のノズルに接続されているノズルスペーサ61は、インクメニスカス部の乾燥を防ぐためにインクメニスカス部を減圧領域63から離す役割を担っている。減圧領域63は、圧力制御用溝52からの排気と共に、真空ポンプで排気され、その圧力が制御されている。基板65は、XYステージ66に固定、制御されている。ここでも、XYステージ66の姿勢とインクジェットヘッド50の吐出タイミング(制御系は不図示)は制御されている。また、XYステージ66はXYZステージでもよい。
【0032】
次に、本実施の形態を用いてのパターニングの方法について述べる。
インクとしては、インクジェットヘッド50のインクの固形分としてPtの超微粒子を分散したインクを使用した。インク成分割合としては、水74wt%、IPA25wt%、EG0.5wt%、Pt超微粒子0.5wt%を用いた。圧力制御用溝51は真空ポンプに接続され、減圧領域63の圧力及び圧力分布を制御している。さらに、上述したように減圧領域63は、外部の真空ポンプで減圧制御されている。インクジェットヘッド50のメニスカスは、ノズルスペーサ61により、インク揮発成分の蒸発が抑制制御される様になっている。メニスカス状態でのインクの揮発成分の蒸発を抑制しないと、減圧領域63でのインク液滴の微小化の効果が低減してしまうからである。
【0033】
本実施の形態でも、基板65のXYステージ66の所望の位置を検出した段階でインクジェットヘッド50に吐出信号を発生させ、インク液滴62を吐出する。このときのインク液滴62の直径はおよそ20μmであった。吐出されたインク液滴62はノズルスペーサ61を通過し、減圧領域63に導入される。導入されたインク液滴は、減圧領域63を通過することによりインク成分の一部の揮発成分(水及びIPA)が蒸発し、符号64で示すように初期の液滴62に比べて小さくなる。インクジェットヘッド50から吐出直後の液滴62と比べておよそ直径で1/2程度まで減少させることが可能となった。微小液滴化されたインク液滴64は最後に、基板65に着弾し、パターニングされる。本実施の形態では、20μm程度のパターニングが可能となった。
【0034】
本実施の形態では、インク成分として、Ptの超微粒子、水、IPAを採用したが、これに限定されるものではない。ここでも、揮発成分として、水あるいはアルコール等の蒸気圧の高い溶媒であれば、それらも特に問題はない。本実施の形態では、インクジェットヘッド50の圧力制御用溝52を利用し、減圧領域63を減圧状態に制御したが、本圧力制御溝52から乾燥空気を減圧領域63へ導入する方法でも、微小液滴化という同様の効果が確認された。また、パターニングを施される基板65は減圧領域63に配置してもよい。
【0035】
また、本実施の形態で用いたノズルスペーサ61は、インクジェットヘッド50の回復時等には、ノズルから外れる構成をとり、容易に回復動作が行えるような構造となっている。
【0036】
以上の如く、実施の形態で述べられているように、液滴が形成された後に、液滴を減圧雰囲気中に通過させて液滴中の揮発成分を蒸発させることが可能となり、その結果、小さくなった液滴を基板に着弾させ微小なパターニングを行うことが可能となる。液滴吐出法は従来の方法を採用することで、簡便に微小なパターニングが可能となる。以上、2つの実施の形態を詳細に説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0037】
【発明の効果】
上述したように、インクジェットヘッドから吐出されたインク液滴を、液滴が形成された後に、減圧雰囲気中に通過させることで、液滴中の揮発成分を蒸発させることが可能となり、その結果、小さくなった液滴を基板に着弾させ微小なパターニングを行うことが可能となる。
【0038】
さらに、液滴の基板への着弾精度を向上させることは、基板を減圧雰囲気中に配置したり、インク液滴に加速手段を作用させて速度を加速させたりして達成できる。
【0039】
液滴によるパターニングの高精細化を効率良く実施するためには、インク液滴の蒸発成分を減圧雰囲気中で素早く気化させる必要がある。そのためには、減圧雰囲気中のインクの揮発成分の分圧を出来るだけ小さくする必要があり、これは減圧雰囲気中の圧力を出来るだけ真空にすることで達成できる。また、インクの揮発成分の蒸気圧が出来るだけ高い溶媒(水、アルコール、エーテルなど)を用い、且つその割合を大きくすることにより同様の効果が得られる。
【0040】
さらに、減圧雰囲気中での揮発成分の揮発促進対策としては、インク液滴に熱エネルギーを付与して加熱する処理を施すことがあり、これにより更なるインク液滴の微小化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態のパターニング装置を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態で用いられる液滴加速装置の概略図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態のパターニング装置を示す図である。
【符号の説明】
1、50 インクジェットヘッド
2、11、12、14、62、64 インク液滴
3、21、22、63 減圧領域部
4、65 基板
6、8、9、10 開口部
7、66 XYステージ
20 真空領域部
51 インク加圧室
52 圧力制御用溝
61 ノズルスペーサ
Claims (10)
- インクジェットヘッドにより吐出したインクを着弾、付着することにより基板にパターニングを行う装置において、大気圧下に配置されたインクジェットヘッドにより吐出された前記インクが、少なくとも大気圧よりも減圧された減圧領域を通過させられた後、前記基板に着弾させられて付着する様に構成されたことを特徴とするパターニング装置。
- 前記基板を大気圧下に配置することを特徴とする請求項1記載のパターニング装置。
- 前記基板を、大気圧よりも減圧された減圧下に配置することを特徴とする請求項1記載のパターニング装置。
- 前記減圧領域中において飛翔中のインク液滴を加熱する手段を付加したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のパターニング装置。
- 前記インク液滴を帯電させ、且つ前記帯電インク液滴を電場により加速させる手段を付加したことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のパターニング装置。
- 前記減圧領域が、2つ以上の複数の減圧領域部から構成されており、各々真空度が異なることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のパターニング装置。
- 前記インクジェットヘッドのノズルと前記減圧領域への開口部からのコンダクタンスが、前記ノズル部以外のコンダクタンスよりも半分以下になるように、ノズルメニスカス部を奥側に引っ込む構成にするノズルスペーサをノズルに付加することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のパターニング装置。
- 前記ノズルスペーサは、前記インクジェットヘッドの回復動作時にはノズルから外れる構成であることを特徴とする請求項7記載のパターニング装置。
- 前記インクの主成分が水、アルコール、エーテルであり、水、アルコールおよびエーテルのインク成分割合が80wt%以上であることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のパターニング装置。
- 前記インクの主成分が水、アルコール、エーテルであり、水、アルコールおよびエーテルのインク成分割合が95wt%以上であることを特徴とする請求項9記載のパターニング装置。
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