JP2004134280A - 耐樹木絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
【課題】摩耗検知層の耐摩耗性を向上し、耐樹木絶縁電線の摩耗検知層の露出後の寿命を向上させることのできる耐樹木絶縁電線を提供する。
【解決手段】導体11に絶縁体12を被覆してなる絶縁電線の該絶縁体12の上に摩耗検知層13を形成し、該摩耗検知層13の上に耐摩耗保護層14を形成してなる耐樹木絶縁電線10において、
前記摩耗検知層13がオレフィン樹脂を基材とし、該オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを含有してなる。
【選択図】 図1
【解決手段】導体11に絶縁体12を被覆してなる絶縁電線の該絶縁体12の上に摩耗検知層13を形成し、該摩耗検知層13の上に耐摩耗保護層14を形成してなる耐樹木絶縁電線10において、
前記摩耗検知層13がオレフィン樹脂を基材とし、該オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを含有してなる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁電線に係り、特に電気設備技術基準法第86条に規定される耐樹木絶縁電線に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、低電圧架空電線と植物との離隔距離に関して電気設備技術基準法の第86条第1項において「低圧又は高圧の架空電線は、常時吹いている風等により、植物に接触しないように施設すること」が義務付けられている。そして、電気設備技術基準に関する省令の第29条においては、架空電線と植物とが接近する場合の植物への損傷と火災の防止を定めている。すなわち、架空電線と植物とが接触して、接地または断線事故が発生したり、また、植物を損傷させたり、場合によっては火災になる場合もあるので、最近まで、低電圧架空電線と植物は、20cmの隔離距離を確保することが規定されていたが、「常時吹いている風等」によって植物が低電圧架空電線に接触しなければよいことになった。しかし、低電圧架空電線を架線する場所は、「常時吹いている風等」によって植物が接触しないところばかりではなく、例えば、山間、僻地等に電気を供給する場合には、林や森の中を通さなければならないこともあり、低電圧架空電線と植物とが風等によって接触することが生じる。このような場合は、電気設備技術基準法の第86条第1項に規定する「低圧又は高圧の架空電線は、常時吹いている風等により、植物に接触しないように施設すること」ができない。そこで、電気設備技術基準法では、第86条第2項において、布設上、低圧又は高圧の架空電線を植物と風等によって接触するような場所に架設しなければならない場合について、「構造は、絶縁電線の上部に絶縁耐力及び耐摩耗性を有する摩耗検知層を施し、更にその上部に摩耗層を施した構造で、絶縁電線を一様な厚さに被覆したもの」であれば良いことを定めている。したがって、このような風等によって植物と接触する場所に布設する低圧又は高圧の架空電線には、電気設備技術基準法第86条第2項に規定された構造の耐樹木絶縁電線が用いられる。
【0003】
従来の耐樹木絶縁電線は、図2に示すように、銅線又は銅撚線からなる導体2の上にポリエチレン、架橋ポリエチレン等からなる絶縁体3が被覆され、この絶縁体3の上に高密度ポリエチレン、高密度架橋ポリエチレン等からなる摩耗検知層4が被覆され、この摩耗検知層4の上に高密度ポリエチレン、高密度架橋ポリエチレン等からなる摩耗層5が形成されている。この摩耗検知層4は、耐樹木絶縁電線1の植物との接触によって受ける損傷の程度を知るためのもので、摩耗層5と異なる着色が施されている。したがって、耐樹木絶縁電線1は、植物と接触することによって摩耗層5が摩耗し、摩耗層5の下層に設けられた摩耗検知層4が露出することになり、摩耗層5の露出状態によって耐樹木絶縁電線1の摩耗状態を知ることができる構成となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような耐樹木絶縁電線は、絶縁電線としての特性が要求され、この耐樹木絶縁電線が風等によって植物と接触して外層が摩耗すると絶縁電線としての特性が失われる虞があり、このような場合には、耐樹木絶縁電線を取り替える必要がある。このように耐樹木絶縁電線が風等によって植物と接触して外層が摩耗した場合には、耐樹木絶縁電線を張り替えることによって絶縁電線としての特性を保つことができる。
【0005】
このような耐樹木絶縁電線を使用する場所は、林や森の中に布設する場合で、しかも、山間や僻地等に布設することが多く、容易に取り替えられるものではない。したがって、耐樹木絶縁電線は、一旦布設すると、長期間に亘って取り替えなくて済むように耐摩耗性を有することが望まれている。
【0006】
【特許文献1】
特開平6―275140号公報(第2頁、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の耐樹木絶縁電線にあっては、耐樹木絶縁電線が風等によって植物と接触すると、最外層である摩耗層が容易に摩耗し、絶縁電線としての特性が失われることがあるため、短期間で耐樹木絶縁電線を取り替える必要があり、耐樹木絶縁電線の寿命が短いという問題点を有している。さらに、従来の耐樹木絶縁電線の損傷の検知は、目視によって行われているため定期的な点検を行っている際に、耐樹木絶縁電線の損傷(摩耗検知層の露出)が検知できない場合がある。このような場合、摩耗検知層が容易に摩耗し、短期間で絶縁電線としての特性が失われることがあるという問題点を有している。
【0008】
本発明の目的は、摩耗検知層の耐摩耗性を向上し、耐樹木絶縁電線の摩耗検知層の露出後の寿命を向上させることのできる耐樹木絶縁電線を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の耐樹木絶縁電線は、導体に絶縁体を被覆してなる絶縁電線の該絶縁体の上に摩耗検知層を形成し、該摩耗検知層の上に耐摩耗保護層を形成してなる耐樹木絶縁電線において、前記摩耗検知層がオレフィン樹脂を基材とし、該オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを含有して構成したものである。
このように構成することにより、請求項1に記載の発明によると、耐樹木絶縁電線の摩耗検知層がオレフィン樹脂を基材として、該オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを含有しているので、摩耗検知層の耐摩耗性が向上し、耐樹木絶縁電線が風等によって植物と接触しても、摩耗検知層の摩耗を抑制されるため、耐樹木絶縁電線の摩耗検知層の露出後の寿命を向上させることができる。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の耐樹木絶縁電線は、前記超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量が100万以上である構成となっている。
この超高分子量ポリエチレンは粘度平均分子量が100万以上であるものを使用する。この粘度平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンをポリプロピレンに含有させることで、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層の耐摩耗性を向上させることが可能となっている。この超高分子量ポリエチレンの平均分子量を100万以上とするのは、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層の基材に良好な耐摩耗性を付与させるためである。
【0011】
このように構成することにより、請求項2に記載の発明によると、オレフィン樹脂に含有させる超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量を100万以上としたので、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層の耐摩耗性を向上させることができる。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の耐樹木絶縁電線は、前記超高分子量ポリエチレンは、平均粒子径が50マイクロン以下である構成となっている。
この超高分子量ポリエチレンの平均粒子径は50マイクロン以下とする。この超高分子量ポリエチレンの平均粒子径を50マイクロン以下とするのは、平均粒子径が50マイクロンを超えると、本発明の目的である耐摩耗性が低下するからである。
【0013】
このように構成することにより、請求項3に記載の発明によると、オレフィン樹脂に含有させる超高分子量ポリエチレンの平均粒子径を50マイクロン以下としたので、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層の耐摩耗性を向上させることができる。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の耐樹木絶縁電線は、前記超高分子量ポリエチレンは、基材に対する含有量が5〜30重量%である構成となっている。
この超高分子量ポリエチレンを、摩耗検知層13の基材であるオレフィン樹脂に含有させる際の重量比は、オレフィン樹脂に対して5〜30重量%であることが好ましい。オレフィン樹脂に対して超高分子量ポリエチレンを5〜30重量%配合するのは、オレフィン樹脂に対する超高分子量ポリエチレンの配合量が5重量%未満であると、超高分子量ポリエチレンの配合量が少なく、摩耗検知層の耐摩耗性を向上させるに充分でないからである。また、オレフィン樹脂に対して超高分子量ポリエチレンを30重量%を超えて配合すると、超高分子量ポリエチレンの配合により増加する硬度が高くなりすぎて、成形加工性が悪くなってしまい、耐樹木絶縁電線を押出成形させることが難しくなってしまうからである。
【0015】
このように構成することにより、請求項4に記載の発明によると、オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを5〜30重量%含有させたので、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層に良好な耐摩耗性を付与させることができる。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の耐樹木絶縁電線は、前記オレフィン樹脂が、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、ポリブテン、エチレン―プロピレン共重合体、エチレン―ブテン共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―メチルアクリレート共重合体、エチレン―エチルアクリレート共重合体のいずれかである構成としたものである。
このように構成することにより、請求項5に記載の発明によると、オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを含有させた摩耗検知層を形成したので、該摩耗検知層の耐摩耗性を向上させて、耐摩耗性に優れた耐樹木絶縁電線を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る耐樹木絶縁電線の実施の形態について説明する。
図1には、本発明に係る耐樹木絶縁電線の一実施の形態が示されている。
図において、耐樹木絶縁電線10は、導体11と、絶縁体12と、摩耗検知層13と、耐摩耗保護層14とによって構成されている。
【0018】
導体11は、銅線又は銅撚線によって構成されている。
絶縁体12は、導体11の上に被覆されていて、通常の架空配電線と同様に高密度ポリエチレン(HDPE)等の材料で構成されている。この高密度ポリエチレンは、中圧法(酸化クロムをシリカ−アルミナに担持させた触媒を用いて100〜150℃、30〜40気圧で製造するフィリップス法)あるいは低圧法(トリエチルアルミニウムと塩化チタンを組み合わせて作った配位アニオン重合触媒を用い、希釈溶剤として低級脂肪族炭化水素を用い、反応器の圧力は、常圧〜7気圧、液温は60〜80℃で製造するチーグラー法)で得られる密度が0.941〜0.965のポリエチレンである。この高密度ポリエチレンのように、密度を増加させると、硬度、耐熱性、機械的性質が向上する。この絶縁体12を導体11に被覆して一般に絶縁電線が構成されている。この絶縁体12は、従来の絶縁体と同じ厚さに被覆されている。
【0019】
摩耗検知層13は、絶縁体12の上に被覆されている。この摩耗検知層13には彩色が施されており、耐摩耗保護層14が植物と接触することによって摩耗し、擦り切れたときに、目視によって摩耗状態を検知できるようにするためのものである。この摩耗検知層13の着色には、例えば硫化カドミウムを主成分としたカドミウム黄や、黄色酸化鉄等の黄色系の顔料が用いられる。また、この摩耗検知層13には、蛍光染料を混合させることが望ましい。摩耗検知層13に蛍光染料を混合させることで、耐摩耗保護層14が植物と接触して摩耗して擦り切れて摩耗検知層13が露出する状態となった場合にも、夜間における目視点検で損傷を発見しやすくさせることができる。
【0020】
この摩耗検知層13は、オレフィン樹脂を基材とし、該オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを含有して形成されている。この摩耗検知層13の基材となるオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、ポリブテン、エチレン―ポリプロピレン共重合体、エチレン―ブテン共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―メチルアクリレート共重合体、エチレン―エチルアクリレート共重合体が挙げられ、これらのいずれかを使用することができる。
【0021】
本実施の形態においては、この摩耗検知層13の基材として、特にポリプロピレンを用いた例を説明する。この摩耗検知層13の基材としてポリプロピレンを使用し、このポリプロピレンに超高分子量ポリエチレンを含有させることで、摩耗検知層13が特に良好な耐摩耗性を得ることができる。ここで、この摩耗検知層13を構成するポリプロピレンとしては、例えばホモポリマ、ランダムコポリマ、ブロックコポリマ、グラフトコポリマ等が挙げられる。
【0022】
そして、この摩耗検知層13は、このようなポリプロピレンからなる基材に超高分子量ポリエチレンが含有されている。
【0023】
この本実施の形態における摩耗検知層13に含有する超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量は100万以上であることが必要である。この超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量を100万以上とするのは、超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量が100万未満では、所望の耐摩耗性を得ることができないからである。すなわち、平均分子量を100万以上としているのは、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層13の基材に良好な耐摩耗性を付与させるためである。この超高分子量ポリエチレンは、本実施の形態においては、粘度平均分子量が100万のものから300万のものを使用している。本実施の形態において、超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量が100万のものから300万のものを使用しているのは、現在市販のもので入手できるものが粘度平均分子量が300万までであるからである。超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量が300万以上のものが製造できれば、それを用いても目的の効果は得られる。このような粘度平均分子量が100万〜300万の超高分子量ポリエチレンを摩耗検知層13の基材であるポリプロピレンに含有させることで、摩耗検知層13としての耐摩耗性を向上させることが可能となっている。
【0024】
また、この本実施の形態における摩耗検知層13に含有する超高分子量ポリエチレンの平均粒子径は50マイクロン以下であることが必要である。この超高分子量ポリエチレンの平均粒子径を50マイクロン以下とするのは、超高分子量ポリエチレンの平均粒子径が50マイクロン以上では、所望の耐摩耗性を得ることができないからである。すなわち、平均粒子径を50マイクロン以下としているのは、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層13の基材に良好な耐摩耗性を付与させるためである。この超高分子量ポリエチレンは、本実施の形態においては、平均粒子径が10マイクロンのものから50マイクロンのものを使用している。本実施の形態において、超高分子量ポリエチレンの平均粒子径が10マイクロンのものから50マイクロンのものを使用しているのは、現在市販のもので入手できるものが10マイクロンまでであるからである。超高分子量ポリエチレンの平均粒子径が10マイクロン以下のものが製造できれば、それを用いても目的の効果は得られる。このような平均粒子径が10マイクロン〜50マイクロンの超高分子量ポリエチレンを摩耗検知層13の基材であるポリプロピレンに含有させることで、摩耗検知層13としての耐摩耗性を向上させることが可能となっている。
【0025】
また、本実施の形態において、このような超高分子量ポリエチレンを、摩耗検知層13の基材であるオレフィン樹脂に含有させる際の重量比は、オレフィン樹脂に対して5〜30重量%であることが好ましい。オレフィン樹脂に対して超高分子量ポリエチレンを5〜30重量%配合するのは、オレフィン樹脂に対する超高分子量ポリエチレンの配合量が5重量%未満であると、超高分子量ポリエチレンの配合量が少なく、摩耗検知層の耐摩耗性を向上させるに充分でないからである。また、オレフィン樹脂に対して超高分子量ポリエチレンを30重量%を超えて配合すると、超高分子量ポリエチレンの配合により増加する硬度が高くなりすぎて、成形加工性が悪くなってしまい、耐樹木絶縁電線を押出成形させることが難しくなってしまうからである。
【0026】
本発明において使用するこのような超高分子量ポリエチレンとしては、たとえば、リュブマー(登録商標、三井化学株式会社製)L4000、ハイゼックスミリオン(登録商標、三井化学株式会社製)145M、ハイゼックスミリオン(登録商標、三井化学株式会社製)240Mを使用することができる。
【0027】
摩耗検知層13は、耐摩耗保護層14に被覆されているが、最外層である耐摩耗保護層14は、植物との接触によって擦り切れてしまい、摩耗検知層13が露出することがある。本実施の形態において、摩耗検知層13は基材であるポリプロピレンに超高分子量ポリエチレンが含有されているので、摩耗検知層13が露出して樹木と接触するような事態になっても、耐摩耗性によって摩耗検知層13が破損しづらくなっている。すなわち、規格上、その被覆厚が薄く形成されている摩耗検知層13においても、容易に擦り切れてしまうことがなくなり、絶縁体12にまで摩耗による損傷が進行してしまうのを防ぐことができる。
【0028】
耐摩耗保護層14は、最外層であって、高密度ポリエチレン(HDPE)や高密度架橋ポリエチレン(XLPE)等の材料で構成されている。
この高密度ポリエチレン(HDPE)は、前記絶縁体12を構成する材料と同様であるのでここでは省略する。
また、高密度架橋ポリエチレン(XLPE)は、前記高密度ポリエチレン(HDPE)の架橋物であって、個々の分子鎖が、放射線照射架橋(r線または電子線を放射線源として使用し、これらをポリエチレン成形品に照射することにより分子中にラジカルが発生し、これらのラジカル同士がカップリングすることにより分子間の架橋結合を形成)、有機過酸化物架橋(ポリエチレンの可塑化温度で分解しない有機過酸化物を配合しておき、成形加工と同時または成形後に高温高圧下に晒すことにより有機過酸化物が分解しラジカルが発生し、このラジカルにより分子間が架橋反応)、シラン架橋(ビニルシラン化合物をポリエチレンにグラフト付加反応させた後、このグラフトマーにシラノール縮合触媒を添加し成形加工後、水分雰囲気下に晒すことによりグラフト末端のアルコキシシラン同士が加水分解後、脱アルコールし分子間の架橋結合が形成される)のいずれかによって三次元的に結合したポリエチレンである。この構造によってストレスクラッキングに対する耐性や耐化学薬品性に優れ、良好な硬度を有している。
【0029】
本実施の形態において、耐摩耗保護層14は、太陽光に含有される紫外線などからの耐候性を考慮して、カーボンブラックが添加されており、黒色に着色されている。また、耐摩耗保護層14の主材料を高密度ポリエチレン又は高密度架橋ポリエチレンとすることで、耐摩耗性を得ることができる。
【0030】
このように、ポリプロピレンを基材とし、該ポリプロピレンに超高分子量ポリエチレンを含有させて摩耗検知層13を形成することによって、摩耗検知層13に耐摩耗性を持たせ、耐摩耗保護層14が植物と接触して摩耗し、摩耗検知層13が露出するような事態になったとき、耐樹木絶縁電線10を張り替える前に、更に植物と接触しても絶縁体12を保護する役目を果たすことができる。また、摩耗検知層13の耐摩耗性が向上するので、耐摩耗保護層14の硬度を過度にあげるようなことがなく、耐樹木絶縁電線10としての耐久性および施工性を向上させることが可能となる。
【0031】
この絶縁体12と摩耗検知層13と耐摩耗保護層14は、三層同時押出し機を使用して同時に押出し成形する。三層同時押出し機を使用することによって、絶縁体12と摩耗検知層13が押出し時の温度に近い高温を有する状態で最外層の耐摩耗保護層14を押出し成形することができるので、耐摩耗保護層14の耐摩耗性を向上させることができる。
【0032】
なお、本実施の形態において、摩耗検知層13がポリプロピレンを基材とし、該ポリエチレンに超高分子量ポリエチレンを含有してなる耐樹木絶縁電線10について説明したが、耐樹木絶縁電線10の最外層である耐摩耗保護層14がポリプロピレンを基材とし、該ポリプロピレンに超高分子量ポリエチレンを含有させたものとすることも可能である。
【0033】
なお、本実施の形態においては、摩耗検知層の基材として、特にポリプロピレンを例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、摩耗検知層の基材として低密度ポリエチレンを用いても、摩耗検知層にポリプロピレンを用いた場合と同様の耐摩耗性を得ることができる。この場合、低密度ポリエチレンに含有させる超高分子量ポリエチレンの配合量は、前記ポリプロピレンの場合と同様である。
【0034】
また、摩耗検知層の基材として、ポリブテン、エチレン―プロピレン共重合体、エチレン―ブテン共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―メチルアクリレート共重合体、エチレン、エチルアクリレート共重合体等のオレフィン樹脂を用いても、摩耗検知層13に耐摩耗性を付与させることが可能となっている。この両材のいずれかを基材として超高分子量ポリエチレンを適量含有させることで、特に耐摩耗性に優れた摩耗検知層13を形成させることが可能となっている。
【0035】
特に、本実施の形態においては、摩耗検知層の基材がポリプロピレンまたは低密度ポリエチレンのいずれかであることが望ましい。この両材のいずれかを基材として、超高分子量ポリエチレンを適量含有させた摩耗検知層を形成することで、特に耐摩耗性に優れた摩耗検知層を形成させることができる。
【0036】
また、本実施の形態において、摩耗検知層13は、黄色の顔料によって着色されたものであったが、これに限るものではなく、最外層である耐摩耗保護層14と容易に識別が可能で、摩耗検知層13が露出した状態を発見しやすい色であれば他の色でもよいものとする。
【0037】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0038】
請求項1に係る発明によれば、オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを含有してなる摩耗検知層を形成することで、摩耗検知層の耐摩耗性を向上させ、耐樹木絶縁電線の摩耗検知層の露出後の寿命を向上させることができる。
【0039】
請求項2に係る発明によれば、オレフィン樹脂に含有される超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量を100万以上としたので、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層の耐摩耗性を向上させることが可能となっている。
【0040】
請求項3に係る発明によれば、超高分子量ポリエチレンの平均粒子径を50マイクロン以下としたので、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層の耐摩耗性を向上させることが可能となっている。
【0041】
請求項4に係る発明によれば、前記超高分子量ポリエチレンの基材に対する含有量が5〜30重量%である構成としたので、オレフィン樹脂からなる基材の耐摩耗性を向上させることが可能となっている。
【0042】
請求項5に係る発明によれば、オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを含有させた摩耗検知層を形成したので、該摩耗検知層の耐摩耗性を向上させることができ、耐摩耗性に優れた耐樹木絶縁電線を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る耐樹木絶縁電線の一実施の形態を示す全体構成斜視図である。
【図2】従来の耐樹木絶縁電線を示す断面図である。
【符号の説明】
10…………………………耐樹木絶縁電線
11…………………………導体
12…………………………絶縁体
13…………………………摩耗検知層
14…………………………耐摩耗保護層
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁電線に係り、特に電気設備技術基準法第86条に規定される耐樹木絶縁電線に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、低電圧架空電線と植物との離隔距離に関して電気設備技術基準法の第86条第1項において「低圧又は高圧の架空電線は、常時吹いている風等により、植物に接触しないように施設すること」が義務付けられている。そして、電気設備技術基準に関する省令の第29条においては、架空電線と植物とが接近する場合の植物への損傷と火災の防止を定めている。すなわち、架空電線と植物とが接触して、接地または断線事故が発生したり、また、植物を損傷させたり、場合によっては火災になる場合もあるので、最近まで、低電圧架空電線と植物は、20cmの隔離距離を確保することが規定されていたが、「常時吹いている風等」によって植物が低電圧架空電線に接触しなければよいことになった。しかし、低電圧架空電線を架線する場所は、「常時吹いている風等」によって植物が接触しないところばかりではなく、例えば、山間、僻地等に電気を供給する場合には、林や森の中を通さなければならないこともあり、低電圧架空電線と植物とが風等によって接触することが生じる。このような場合は、電気設備技術基準法の第86条第1項に規定する「低圧又は高圧の架空電線は、常時吹いている風等により、植物に接触しないように施設すること」ができない。そこで、電気設備技術基準法では、第86条第2項において、布設上、低圧又は高圧の架空電線を植物と風等によって接触するような場所に架設しなければならない場合について、「構造は、絶縁電線の上部に絶縁耐力及び耐摩耗性を有する摩耗検知層を施し、更にその上部に摩耗層を施した構造で、絶縁電線を一様な厚さに被覆したもの」であれば良いことを定めている。したがって、このような風等によって植物と接触する場所に布設する低圧又は高圧の架空電線には、電気設備技術基準法第86条第2項に規定された構造の耐樹木絶縁電線が用いられる。
【0003】
従来の耐樹木絶縁電線は、図2に示すように、銅線又は銅撚線からなる導体2の上にポリエチレン、架橋ポリエチレン等からなる絶縁体3が被覆され、この絶縁体3の上に高密度ポリエチレン、高密度架橋ポリエチレン等からなる摩耗検知層4が被覆され、この摩耗検知層4の上に高密度ポリエチレン、高密度架橋ポリエチレン等からなる摩耗層5が形成されている。この摩耗検知層4は、耐樹木絶縁電線1の植物との接触によって受ける損傷の程度を知るためのもので、摩耗層5と異なる着色が施されている。したがって、耐樹木絶縁電線1は、植物と接触することによって摩耗層5が摩耗し、摩耗層5の下層に設けられた摩耗検知層4が露出することになり、摩耗層5の露出状態によって耐樹木絶縁電線1の摩耗状態を知ることができる構成となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような耐樹木絶縁電線は、絶縁電線としての特性が要求され、この耐樹木絶縁電線が風等によって植物と接触して外層が摩耗すると絶縁電線としての特性が失われる虞があり、このような場合には、耐樹木絶縁電線を取り替える必要がある。このように耐樹木絶縁電線が風等によって植物と接触して外層が摩耗した場合には、耐樹木絶縁電線を張り替えることによって絶縁電線としての特性を保つことができる。
【0005】
このような耐樹木絶縁電線を使用する場所は、林や森の中に布設する場合で、しかも、山間や僻地等に布設することが多く、容易に取り替えられるものではない。したがって、耐樹木絶縁電線は、一旦布設すると、長期間に亘って取り替えなくて済むように耐摩耗性を有することが望まれている。
【0006】
【特許文献1】
特開平6―275140号公報(第2頁、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の耐樹木絶縁電線にあっては、耐樹木絶縁電線が風等によって植物と接触すると、最外層である摩耗層が容易に摩耗し、絶縁電線としての特性が失われることがあるため、短期間で耐樹木絶縁電線を取り替える必要があり、耐樹木絶縁電線の寿命が短いという問題点を有している。さらに、従来の耐樹木絶縁電線の損傷の検知は、目視によって行われているため定期的な点検を行っている際に、耐樹木絶縁電線の損傷(摩耗検知層の露出)が検知できない場合がある。このような場合、摩耗検知層が容易に摩耗し、短期間で絶縁電線としての特性が失われることがあるという問題点を有している。
【0008】
本発明の目的は、摩耗検知層の耐摩耗性を向上し、耐樹木絶縁電線の摩耗検知層の露出後の寿命を向上させることのできる耐樹木絶縁電線を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の耐樹木絶縁電線は、導体に絶縁体を被覆してなる絶縁電線の該絶縁体の上に摩耗検知層を形成し、該摩耗検知層の上に耐摩耗保護層を形成してなる耐樹木絶縁電線において、前記摩耗検知層がオレフィン樹脂を基材とし、該オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを含有して構成したものである。
このように構成することにより、請求項1に記載の発明によると、耐樹木絶縁電線の摩耗検知層がオレフィン樹脂を基材として、該オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを含有しているので、摩耗検知層の耐摩耗性が向上し、耐樹木絶縁電線が風等によって植物と接触しても、摩耗検知層の摩耗を抑制されるため、耐樹木絶縁電線の摩耗検知層の露出後の寿命を向上させることができる。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の耐樹木絶縁電線は、前記超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量が100万以上である構成となっている。
この超高分子量ポリエチレンは粘度平均分子量が100万以上であるものを使用する。この粘度平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンをポリプロピレンに含有させることで、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層の耐摩耗性を向上させることが可能となっている。この超高分子量ポリエチレンの平均分子量を100万以上とするのは、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層の基材に良好な耐摩耗性を付与させるためである。
【0011】
このように構成することにより、請求項2に記載の発明によると、オレフィン樹脂に含有させる超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量を100万以上としたので、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層の耐摩耗性を向上させることができる。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の耐樹木絶縁電線は、前記超高分子量ポリエチレンは、平均粒子径が50マイクロン以下である構成となっている。
この超高分子量ポリエチレンの平均粒子径は50マイクロン以下とする。この超高分子量ポリエチレンの平均粒子径を50マイクロン以下とするのは、平均粒子径が50マイクロンを超えると、本発明の目的である耐摩耗性が低下するからである。
【0013】
このように構成することにより、請求項3に記載の発明によると、オレフィン樹脂に含有させる超高分子量ポリエチレンの平均粒子径を50マイクロン以下としたので、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層の耐摩耗性を向上させることができる。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の耐樹木絶縁電線は、前記超高分子量ポリエチレンは、基材に対する含有量が5〜30重量%である構成となっている。
この超高分子量ポリエチレンを、摩耗検知層13の基材であるオレフィン樹脂に含有させる際の重量比は、オレフィン樹脂に対して5〜30重量%であることが好ましい。オレフィン樹脂に対して超高分子量ポリエチレンを5〜30重量%配合するのは、オレフィン樹脂に対する超高分子量ポリエチレンの配合量が5重量%未満であると、超高分子量ポリエチレンの配合量が少なく、摩耗検知層の耐摩耗性を向上させるに充分でないからである。また、オレフィン樹脂に対して超高分子量ポリエチレンを30重量%を超えて配合すると、超高分子量ポリエチレンの配合により増加する硬度が高くなりすぎて、成形加工性が悪くなってしまい、耐樹木絶縁電線を押出成形させることが難しくなってしまうからである。
【0015】
このように構成することにより、請求項4に記載の発明によると、オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを5〜30重量%含有させたので、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層に良好な耐摩耗性を付与させることができる。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の耐樹木絶縁電線は、前記オレフィン樹脂が、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、ポリブテン、エチレン―プロピレン共重合体、エチレン―ブテン共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―メチルアクリレート共重合体、エチレン―エチルアクリレート共重合体のいずれかである構成としたものである。
このように構成することにより、請求項5に記載の発明によると、オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを含有させた摩耗検知層を形成したので、該摩耗検知層の耐摩耗性を向上させて、耐摩耗性に優れた耐樹木絶縁電線を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る耐樹木絶縁電線の実施の形態について説明する。
図1には、本発明に係る耐樹木絶縁電線の一実施の形態が示されている。
図において、耐樹木絶縁電線10は、導体11と、絶縁体12と、摩耗検知層13と、耐摩耗保護層14とによって構成されている。
【0018】
導体11は、銅線又は銅撚線によって構成されている。
絶縁体12は、導体11の上に被覆されていて、通常の架空配電線と同様に高密度ポリエチレン(HDPE)等の材料で構成されている。この高密度ポリエチレンは、中圧法(酸化クロムをシリカ−アルミナに担持させた触媒を用いて100〜150℃、30〜40気圧で製造するフィリップス法)あるいは低圧法(トリエチルアルミニウムと塩化チタンを組み合わせて作った配位アニオン重合触媒を用い、希釈溶剤として低級脂肪族炭化水素を用い、反応器の圧力は、常圧〜7気圧、液温は60〜80℃で製造するチーグラー法)で得られる密度が0.941〜0.965のポリエチレンである。この高密度ポリエチレンのように、密度を増加させると、硬度、耐熱性、機械的性質が向上する。この絶縁体12を導体11に被覆して一般に絶縁電線が構成されている。この絶縁体12は、従来の絶縁体と同じ厚さに被覆されている。
【0019】
摩耗検知層13は、絶縁体12の上に被覆されている。この摩耗検知層13には彩色が施されており、耐摩耗保護層14が植物と接触することによって摩耗し、擦り切れたときに、目視によって摩耗状態を検知できるようにするためのものである。この摩耗検知層13の着色には、例えば硫化カドミウムを主成分としたカドミウム黄や、黄色酸化鉄等の黄色系の顔料が用いられる。また、この摩耗検知層13には、蛍光染料を混合させることが望ましい。摩耗検知層13に蛍光染料を混合させることで、耐摩耗保護層14が植物と接触して摩耗して擦り切れて摩耗検知層13が露出する状態となった場合にも、夜間における目視点検で損傷を発見しやすくさせることができる。
【0020】
この摩耗検知層13は、オレフィン樹脂を基材とし、該オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを含有して形成されている。この摩耗検知層13の基材となるオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、ポリブテン、エチレン―ポリプロピレン共重合体、エチレン―ブテン共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―メチルアクリレート共重合体、エチレン―エチルアクリレート共重合体が挙げられ、これらのいずれかを使用することができる。
【0021】
本実施の形態においては、この摩耗検知層13の基材として、特にポリプロピレンを用いた例を説明する。この摩耗検知層13の基材としてポリプロピレンを使用し、このポリプロピレンに超高分子量ポリエチレンを含有させることで、摩耗検知層13が特に良好な耐摩耗性を得ることができる。ここで、この摩耗検知層13を構成するポリプロピレンとしては、例えばホモポリマ、ランダムコポリマ、ブロックコポリマ、グラフトコポリマ等が挙げられる。
【0022】
そして、この摩耗検知層13は、このようなポリプロピレンからなる基材に超高分子量ポリエチレンが含有されている。
【0023】
この本実施の形態における摩耗検知層13に含有する超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量は100万以上であることが必要である。この超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量を100万以上とするのは、超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量が100万未満では、所望の耐摩耗性を得ることができないからである。すなわち、平均分子量を100万以上としているのは、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層13の基材に良好な耐摩耗性を付与させるためである。この超高分子量ポリエチレンは、本実施の形態においては、粘度平均分子量が100万のものから300万のものを使用している。本実施の形態において、超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量が100万のものから300万のものを使用しているのは、現在市販のもので入手できるものが粘度平均分子量が300万までであるからである。超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量が300万以上のものが製造できれば、それを用いても目的の効果は得られる。このような粘度平均分子量が100万〜300万の超高分子量ポリエチレンを摩耗検知層13の基材であるポリプロピレンに含有させることで、摩耗検知層13としての耐摩耗性を向上させることが可能となっている。
【0024】
また、この本実施の形態における摩耗検知層13に含有する超高分子量ポリエチレンの平均粒子径は50マイクロン以下であることが必要である。この超高分子量ポリエチレンの平均粒子径を50マイクロン以下とするのは、超高分子量ポリエチレンの平均粒子径が50マイクロン以上では、所望の耐摩耗性を得ることができないからである。すなわち、平均粒子径を50マイクロン以下としているのは、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層13の基材に良好な耐摩耗性を付与させるためである。この超高分子量ポリエチレンは、本実施の形態においては、平均粒子径が10マイクロンのものから50マイクロンのものを使用している。本実施の形態において、超高分子量ポリエチレンの平均粒子径が10マイクロンのものから50マイクロンのものを使用しているのは、現在市販のもので入手できるものが10マイクロンまでであるからである。超高分子量ポリエチレンの平均粒子径が10マイクロン以下のものが製造できれば、それを用いても目的の効果は得られる。このような平均粒子径が10マイクロン〜50マイクロンの超高分子量ポリエチレンを摩耗検知層13の基材であるポリプロピレンに含有させることで、摩耗検知層13としての耐摩耗性を向上させることが可能となっている。
【0025】
また、本実施の形態において、このような超高分子量ポリエチレンを、摩耗検知層13の基材であるオレフィン樹脂に含有させる際の重量比は、オレフィン樹脂に対して5〜30重量%であることが好ましい。オレフィン樹脂に対して超高分子量ポリエチレンを5〜30重量%配合するのは、オレフィン樹脂に対する超高分子量ポリエチレンの配合量が5重量%未満であると、超高分子量ポリエチレンの配合量が少なく、摩耗検知層の耐摩耗性を向上させるに充分でないからである。また、オレフィン樹脂に対して超高分子量ポリエチレンを30重量%を超えて配合すると、超高分子量ポリエチレンの配合により増加する硬度が高くなりすぎて、成形加工性が悪くなってしまい、耐樹木絶縁電線を押出成形させることが難しくなってしまうからである。
【0026】
本発明において使用するこのような超高分子量ポリエチレンとしては、たとえば、リュブマー(登録商標、三井化学株式会社製)L4000、ハイゼックスミリオン(登録商標、三井化学株式会社製)145M、ハイゼックスミリオン(登録商標、三井化学株式会社製)240Mを使用することができる。
【0027】
摩耗検知層13は、耐摩耗保護層14に被覆されているが、最外層である耐摩耗保護層14は、植物との接触によって擦り切れてしまい、摩耗検知層13が露出することがある。本実施の形態において、摩耗検知層13は基材であるポリプロピレンに超高分子量ポリエチレンが含有されているので、摩耗検知層13が露出して樹木と接触するような事態になっても、耐摩耗性によって摩耗検知層13が破損しづらくなっている。すなわち、規格上、その被覆厚が薄く形成されている摩耗検知層13においても、容易に擦り切れてしまうことがなくなり、絶縁体12にまで摩耗による損傷が進行してしまうのを防ぐことができる。
【0028】
耐摩耗保護層14は、最外層であって、高密度ポリエチレン(HDPE)や高密度架橋ポリエチレン(XLPE)等の材料で構成されている。
この高密度ポリエチレン(HDPE)は、前記絶縁体12を構成する材料と同様であるのでここでは省略する。
また、高密度架橋ポリエチレン(XLPE)は、前記高密度ポリエチレン(HDPE)の架橋物であって、個々の分子鎖が、放射線照射架橋(r線または電子線を放射線源として使用し、これらをポリエチレン成形品に照射することにより分子中にラジカルが発生し、これらのラジカル同士がカップリングすることにより分子間の架橋結合を形成)、有機過酸化物架橋(ポリエチレンの可塑化温度で分解しない有機過酸化物を配合しておき、成形加工と同時または成形後に高温高圧下に晒すことにより有機過酸化物が分解しラジカルが発生し、このラジカルにより分子間が架橋反応)、シラン架橋(ビニルシラン化合物をポリエチレンにグラフト付加反応させた後、このグラフトマーにシラノール縮合触媒を添加し成形加工後、水分雰囲気下に晒すことによりグラフト末端のアルコキシシラン同士が加水分解後、脱アルコールし分子間の架橋結合が形成される)のいずれかによって三次元的に結合したポリエチレンである。この構造によってストレスクラッキングに対する耐性や耐化学薬品性に優れ、良好な硬度を有している。
【0029】
本実施の形態において、耐摩耗保護層14は、太陽光に含有される紫外線などからの耐候性を考慮して、カーボンブラックが添加されており、黒色に着色されている。また、耐摩耗保護層14の主材料を高密度ポリエチレン又は高密度架橋ポリエチレンとすることで、耐摩耗性を得ることができる。
【0030】
このように、ポリプロピレンを基材とし、該ポリプロピレンに超高分子量ポリエチレンを含有させて摩耗検知層13を形成することによって、摩耗検知層13に耐摩耗性を持たせ、耐摩耗保護層14が植物と接触して摩耗し、摩耗検知層13が露出するような事態になったとき、耐樹木絶縁電線10を張り替える前に、更に植物と接触しても絶縁体12を保護する役目を果たすことができる。また、摩耗検知層13の耐摩耗性が向上するので、耐摩耗保護層14の硬度を過度にあげるようなことがなく、耐樹木絶縁電線10としての耐久性および施工性を向上させることが可能となる。
【0031】
この絶縁体12と摩耗検知層13と耐摩耗保護層14は、三層同時押出し機を使用して同時に押出し成形する。三層同時押出し機を使用することによって、絶縁体12と摩耗検知層13が押出し時の温度に近い高温を有する状態で最外層の耐摩耗保護層14を押出し成形することができるので、耐摩耗保護層14の耐摩耗性を向上させることができる。
【0032】
なお、本実施の形態において、摩耗検知層13がポリプロピレンを基材とし、該ポリエチレンに超高分子量ポリエチレンを含有してなる耐樹木絶縁電線10について説明したが、耐樹木絶縁電線10の最外層である耐摩耗保護層14がポリプロピレンを基材とし、該ポリプロピレンに超高分子量ポリエチレンを含有させたものとすることも可能である。
【0033】
なお、本実施の形態においては、摩耗検知層の基材として、特にポリプロピレンを例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、摩耗検知層の基材として低密度ポリエチレンを用いても、摩耗検知層にポリプロピレンを用いた場合と同様の耐摩耗性を得ることができる。この場合、低密度ポリエチレンに含有させる超高分子量ポリエチレンの配合量は、前記ポリプロピレンの場合と同様である。
【0034】
また、摩耗検知層の基材として、ポリブテン、エチレン―プロピレン共重合体、エチレン―ブテン共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―メチルアクリレート共重合体、エチレン、エチルアクリレート共重合体等のオレフィン樹脂を用いても、摩耗検知層13に耐摩耗性を付与させることが可能となっている。この両材のいずれかを基材として超高分子量ポリエチレンを適量含有させることで、特に耐摩耗性に優れた摩耗検知層13を形成させることが可能となっている。
【0035】
特に、本実施の形態においては、摩耗検知層の基材がポリプロピレンまたは低密度ポリエチレンのいずれかであることが望ましい。この両材のいずれかを基材として、超高分子量ポリエチレンを適量含有させた摩耗検知層を形成することで、特に耐摩耗性に優れた摩耗検知層を形成させることができる。
【0036】
また、本実施の形態において、摩耗検知層13は、黄色の顔料によって着色されたものであったが、これに限るものではなく、最外層である耐摩耗保護層14と容易に識別が可能で、摩耗検知層13が露出した状態を発見しやすい色であれば他の色でもよいものとする。
【0037】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0038】
請求項1に係る発明によれば、オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを含有してなる摩耗検知層を形成することで、摩耗検知層の耐摩耗性を向上させ、耐樹木絶縁電線の摩耗検知層の露出後の寿命を向上させることができる。
【0039】
請求項2に係る発明によれば、オレフィン樹脂に含有される超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量を100万以上としたので、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層の耐摩耗性を向上させることが可能となっている。
【0040】
請求項3に係る発明によれば、超高分子量ポリエチレンの平均粒子径を50マイクロン以下としたので、オレフィン樹脂からなる摩耗検知層の耐摩耗性を向上させることが可能となっている。
【0041】
請求項4に係る発明によれば、前記超高分子量ポリエチレンの基材に対する含有量が5〜30重量%である構成としたので、オレフィン樹脂からなる基材の耐摩耗性を向上させることが可能となっている。
【0042】
請求項5に係る発明によれば、オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを含有させた摩耗検知層を形成したので、該摩耗検知層の耐摩耗性を向上させることができ、耐摩耗性に優れた耐樹木絶縁電線を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る耐樹木絶縁電線の一実施の形態を示す全体構成斜視図である。
【図2】従来の耐樹木絶縁電線を示す断面図である。
【符号の説明】
10…………………………耐樹木絶縁電線
11…………………………導体
12…………………………絶縁体
13…………………………摩耗検知層
14…………………………耐摩耗保護層
Claims (5)
- 導体に絶縁体を被覆してなる絶縁電線の該絶縁体の上に摩耗検知層を形成し、該摩耗検知層の上に耐摩耗保護層を形成してなる耐樹木絶縁電線において、
前記摩耗検知層がオレフィン樹脂を基材とし、該オレフィン樹脂に超高分子量ポリエチレンを含有してなることを特徴とする耐樹木絶縁電線。 - 前記超高分子量ポリエチレンは、粘度平均分子量が100万以上である請求項1に記載の耐樹木絶縁電線。
- 前記超高分子量ポリエチレンは、平均粒子径が50マイクロン以下である請求項1または2に記載の耐樹木絶縁電線。
- 前記超高分子量ポリエチレンは、前記基材に対する含有量が5〜30重量%である請求項1,2または3に記載の耐樹木絶縁電線。
- 前記オレフィン樹脂は、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、ポリブテン、エチレン―プロピレン共重合体、エチレン―ブテン共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―メチルアクリレート共重合体、エチレン―エチルアクリレート共重合体のいずれかである請求項1,2,3または4に記載の耐樹木絶縁電線。
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Cited By (2)
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CN117316516A (zh) * | 2023-11-22 | 2023-12-29 | 北京中昊合金电缆有限公司 | 一种陶瓷化耐高温电缆及其制备方法 |
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2002
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