JP2004134012A - 磁気転写装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】転写パターンを有するマスター担体3を転写ホルダー10に保持し、このマスター担体3に重ねて転写を受けるスレーブ媒体2を保持し、両者を密着させて磁気転写を行う際に、転写ホルダー10はホルダー面5bに開口部12を備え、この開口部12に吸引圧を導入してスレーブ媒体2を吸着保持する一方、開口部12に加圧気体を送給してスレーブ媒体2をマスター担体3から剥離するための吐出を行う。開口部12より加圧気体を吐出してスレーブ媒体2を剥離する際に、スレーブ媒体2をマスター担体3より引き剥がす外力を印加する外力印加手段をさらに備えるのが好ましい。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転写情報に対応したパターンが形成されたマスター担体からスレーブ媒体へ磁気転写する磁気転写装置に関し、特にホルダーにマスター担体およびスレーブ媒体を収容して密着および剥離させる機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明の対象とする磁気転写は、少なくとも表層に磁性層を有するサーボ信号等の転写パターンが凹凸形状あるいは埋め込み構造で形成されたマスター担体(パターンドマスター)を、磁気記録部を有するスレーブ媒体と密着させた状態で、転写用磁界を印加してマスター担体に担持した情報に対応する磁化パターンをスレーブ媒体に転写記録するものである。
【0003】
上記スレーブ媒体がハードディスクまたは高密度フレキシブルディスクのような円盤状媒体の場合には、このスレーブ媒体の片面または両面に円盤状のマスター担体を密着させた状態で、その片側または両側に電磁石装置、永久磁石装置による磁界印加装置を配設して転写用磁界を印加する。
【0004】
この磁気転写を行う際の重要な課題の一つに、マスター担体とスレーブ媒体との位置決めを精度良く行うことがある。特に、ハードディスク、高密度フレキシブルディスク等のスレーブ媒体では、磁気転写後にドライブ装置に取り付けられたときの回転中心と転写記録された磁化パターンの中心とが精度良く一致していなければならない。
【0005】
また、位置決めした状態のマスター担体およびスレーブ媒体をホルダーに保持する必要があり、しかも、スレーブ媒体の両面にマスター担体を密着させる両面同時磁気転写の場合には、ホルダーにはまずマスター担体を保持し、その上にスレーブ媒体を保持することになり、両者を保持する構造が複雑となる。
【0006】
さらに、スレーブ媒体とマスター担体とを密着させた場合に、両者は平坦面の密着で互いに吸着することになり、磁気転写後のマスター担体よりスレーブ媒体を剥離する際には、剥離手段を設置して引き剥がしを積極的に行う必要がある。
【0007】
上記点から、従来より、スレーブ媒体をマスター担体に保持するための吸引穴を設けるとともに、スレーブ媒体をマスター担体より剥離するための吐出穴を別途に設けて、スレーブ媒体の吸着保持と剥離とを行うようにした構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−25455号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ホルダーにスレーブ媒体を保持するための吸引穴とスレーブ媒体を剥離するための吐出穴をそれぞれ設けるものでは、スレーブ媒体の無記録エリアが狭いために、吸着用と剥離用との両方の穴を設置することが難しく、また設置しても穴の大きさや個数が十分でなく、吸着不良や剥離不良が発生していた。
【0010】
また、ホルダーの内部に吸着用の経路と吐出用の経路とをそれぞれ別途に設置するため、それらの構造が複雑となり、ホルダーの肉厚が部分的に薄くなることなどで剛性が低下する恐れがあり、コストが上昇する問題を有する。
【0011】
特に、吐出圧の供給が不十分であると、マスター担体に密着しているスレーブ媒体を剥離することができず、磁気転写後におけるスレーブ媒体の排出不良が発生したり、外力を加えて無理に剥離させてスレーブ媒体へ傷などの損傷を与えたり、マスター担体も一緒にホルダーより外れて、高価なマスター担体に損傷を与える問題が生じる。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、スレーブ媒体の保持および剥離を簡易な構造で得るようにした磁気転写装置を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明による磁気転写装置は、転写情報に対応した転写パターンを有するマスター担体をホルダーに保持し、このマスター担体に重ねて転写を受けるスレーブ媒体を保持し、両者を密着させて転写用磁界を印加し磁気転写を行う磁気転写装置において、
前記ホルダーはホルダー面に開口部を備え、該開口部に吸引圧を導入して前記スレーブ媒体を吸着保持する一方、該開口部に加圧気体を送給して前記スレーブ媒体を前記マスター担体から剥離するための吐出を行うことを特徴とするものである。
【0014】
前記開口部は、マスター担体の内周側に設置し、スレーブ媒体の内周部を吸着保持するのが好適である。
【0015】
また、前記開口部より加圧気体を吐出して前記スレーブ媒体を剥離する際に、該スレーブ媒体をマスター担体より引き剥がす外力を印加する外力印加手段をさらに備えるのが好ましい。その際、外力印加手段による外力印加部位は、スレーブ媒体の内周部または外周部が好適である。この外力印加手段による印加外力の大きさは、0.1N〜2Nの範囲が好ましい。
【0016】
前記開口部より吐出する加圧気体に不活性ガスを使用するのが好適である。
【0017】
【発明の効果】
上記のような本発明によれば、ホルダー面に設けた開口部に吸引圧を導入してスレーブ媒体を吸着保持する一方、この開口部に加圧気体を送給してスレーブ媒体をマスター担体から剥離するための吐出を行うようにしたことにより、吸着用の穴と吐出用の穴とを分離形成するものに比べて開口部を大きくとることができ、スレーブ媒体の吸着保持が確実に行え、また、剥離も確実に行うことができるとともに、開口部構造が簡単になり、ホルダーの剛性向上とコストダウンが可能となる。
【0018】
また、前記開口部より加圧気体を吐出する際に、スレーブ媒体をマスター担体より引き剥がす外力を印加する外力印加手段をさらに備えると、確実にマスター担体よりスレーブ媒体を剥離でき、無理な剥離に伴うスレーブ媒体やマスター担体に損傷を与えることがなくなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は一実施形態にかかる磁気転写装置のホルダーの開状態をエア経路とともに示す概略断面図、図2は片側ホルダーにスレーブ媒体をセットする状態の分解斜視図、図3はスレーブ媒体を剥離する状態の斜視図である。なお、この図は模式図であり各部の寸法は実際とは異なる比率で示している。
【0020】
図示した磁気転写装置1は、スレーブ媒体2(磁気記録媒体)の両側記録面にサーボ信号等に対応する転写パターンを有するマスター担体3,4をそれぞれ密着させ転写用磁界を印加して両面同時磁気転写を行う。
【0021】
この磁気転写装置1は、スレーブ媒体2および2枚のマスター担体3,4を収容する転写ホルダー10を備える。この転写ホルダー10は、接離移動可能な左側の片側ホルダー5と右側の他側ホルダー6とを備え、両者の接近に伴い外周のシール部7により密閉形成される内部空間に、スレーブ媒体2、両側のマスター担体3,4を配置して中心位置を合わせた状態でそれぞれ密着させる。
【0022】
片側ホルダー5および他側ホルダー6の背面の中心位置には、それぞれ支持軸5a,6aが突設され、不図示の装置本体に支持されている。この片側ホルダー5および他側ホルダー6は図示しない回転機構に連係されて磁気転写時に支持軸5a,6aを中心に一体に回転駆動される。なお、図示していないが、磁気転写装置1は転写ホルダー10を回転させつつ転写用磁界を印加する磁界印加装置を備える。
【0023】
また、図2および図3に一部を示すように、上記転写ホルダー10にスレーブ媒体2を供給するとともに、磁気転写後にスレーブ媒体2をマスター担体3より引き剥がす外力を印加する外力印加手段としてのスレーブハンドリング用のチャック20(例えばロボットハンド)をさらに備える。
【0024】
図示のスレーブ媒体2は、円盤状で所定径の中心孔2aが開口されたハードディスクであり、ガラス板等からなる円盤状のベースの両面に磁性層が形成された記録面を有する。このスレーブ媒体2の中心孔2aの内径は、このスレーブ媒体2とともに片側ホルダー5に保持される一方のマスター担体3の中心孔3aの内径より小さく設定されている。そして、該スレーブ媒体2を、図2に示すように、前記チャック20によって記録面を鉛直方向に向けて上記中心孔2aの内径部(マスター担体3の中心孔3aとの内径差部位)を保持し、片側ホルダー5に保持されたマスター担体3に対して供給する。なお、前記スレーブ媒体2は、高密度フレキシブルディスであってもよい。
【0025】
前記マスター担体3,4はディスク状に形成され、中心部に中心孔3a,4aが開口されているとともに、その片面にスレーブ媒体2の記録面に密着される微細凹凸形状の磁性層による転写パターンを有し、これと反対側の面が片側ホルダー5および他側ホルダー6に保持される。
【0026】
前記片側ホルダー5は、そのホルダー面5bにスレーブ媒体2の片面にサーボ信号等の情報を転写する一方のマスター担体3を吸着保持するマスター吸引穴11を備え、また、このホルダー面5bの中心部にスレーブ媒体2を吸着保持するとともに磁気転写後に加圧気体を送給してマスター担体3より剥離する開口部12を備える。前記他側ホルダー6は、そのホルダー面6bにスレーブ媒体2の他面にサーボ信号等の情報を転写する他方のマスター担体4を吸着保持するマスター吸引穴13を備え、また、このホルダー面6bの中心部に内部空間を減圧する吸引穴14を備える。
【0027】
つまり、片側ホルダー5は円盤状でマスター担体3の外径より大きい円形状のホルダー面5bに、マスター担体3の大きさに対応する範囲に多数のマスター吸引穴11が開口され、このマスター吸引穴11に連通する通気路11aがホルダー内に設置されている。また、上記マスター担体3の内径より内周側のホルダー面5bに、図2のように円弧溝状のスレーブ用の開口部12が開口され、この開口部12に連通する通気路12aがホルダー内に設置されている。両通気路11a,12aは、例えば、支持軸5aを通してホルダー外に導出される。
【0028】
一方、前記他側ホルダー6も円盤状でマスター担体4の外径より大きい円形状のホルダー面6bに、マスター担体4の大きさに対応する範囲に多数のマスター吸引穴13が開口され、このマスター吸引穴13に連通する通気路13aがホルダー内に設置されている。また、上記マスター担体4の内径より内周側のホルダー面6bには凹部が形成され、この凹部の中心に内部空間吸引用の吸引穴14が開口され、この吸引穴14に連通する通気路14aがホルダー内に設置されている。両通気路13a,14aは、例えば、支持軸6aを通して外部に導出される。
【0029】
また、他側ホルダー6の外周に設置されたシール部7はリング状であり、他側ホルダー6の外周面に突設されたフランジ6cに装着されて、弾性部材7aを介して軸方向(接離方向)にその変形量だけ移動可能である。このシール部7の端面にはOリングによる端面シール材7bを備え、片側ホルダー5のホルダー面5bに圧接して内部空間の開閉シールを行う。また、シール部7の内周面にはOリングによる周面シール材7cを備え、他側ホルダー6の外周面との間の摺動シールを行う。
【0030】
そして、前記片側ホルダー5および他側ホルダー6の少なくとも一方が軸方向(図で左右方向)に移動可能に支持され、両ホルダー5,6が互いに接離移動可能であり、図1に示すような分離状態からの接近移動に伴い、シール部7の端面シール材7bが片側ホルダー5のホルダー面5bに圧接して内部空間を閉じる。この密閉後に、内部空間を減圧すると共に、他側ホルダー6を閉方向へ移動させる。これに伴い、スレーブ媒体2の両面にマスター担体3,4を所定の加圧力で密着させる。
【0031】
なお、上記密着力の印加のために、内部空間の真空吸引に加えて、転写ホルダー10を外部から機械的に加圧する押圧手段を備えてもよい。この押圧手段は加圧シリンダを備え、その押圧ロッドの先端が転写ホルダー10の支持軸5aまたは6aに所定の押圧荷重を印加するように構成すればよい。
【0032】
前記片側ホルダー5のスレーブ用の開口部12に接続された通気路12aは、外部に導出されてエア経路8に接続され、第1バルブ17を介して真空源15(真空ポンプ)に接続され、この第1バルブ17の開閉に応じて真空圧を導入し、磁気転写のためにスレーブ媒体2を保持する際には開口部12を減圧し、スレーブ媒体2を吸着保持する。また、上記エア経路8は、第1バルブ17より転写ホルダー10側で分岐し、第2バルブ18を介して圧縮源16(圧縮ポンプ)に接続され、この第2バルブ18の開閉に応じて圧縮気体を送給し、磁気転写後にスレーブ媒体2を剥離する際に開口部12より圧縮気体を吐出する。さらに、真空源15と第1バルブ17の間のエア経路8より分岐して、第3バルブ19を介してマスター吸引穴11へ真空圧が導入され、マスター担体3の裏面を吸着保持する。
【0033】
なお、上記開口部12に送給する圧縮気体としては不活性ガスが、スレーブ媒体2およびマスター担体3,4への影響がない点で好ましいが、その際には、圧縮源16は不活性ガスを貯蔵したガスボンベで構成される。
【0034】
他側ホルダー6のマスター吸引穴13、内部空間用の吸引穴14についても同様に真空圧が導入され、マスター担体4の裏面を吸着により保持するとともに内部空間を減圧して密着力を得ると同時に、密着面のエア抜きを行って密着性を高める。
【0035】
前記スレーブハンドリング用のチャック20は、図2に示すように、開状態にある転写ホルダー10の片側ホルダー5に対し、スレーブ媒体2を供給し、また、図3に示すように、磁気転写後に開作動した転写ホルダー10の片側ホルダー5よりマスター担体3に密着しているスレーブ媒体2を剥離する外力を印加するものである。このチャック20は、不図示のアーム部の先端にスレーブ媒体2を把持し供給する1対のスレーブ把持爪21を備える。このスレーブ把持爪21は、不図示の駆動機構によって両側に拡縮移動し、この把持爪21をスレーブ媒体2の中心孔2aに挿入して、図3に示すように開いて内径部をチャックし、閉じて解放する。把持爪21にはスレーブ媒体2を保持する溝部21aを有し、保持位置を規制している。
【0036】
なお、上記チャック20により印加する剥離外力の大きさは、マスター担体3のホルダー面5bへの保持力等との関係より、0.1N〜2Nの範囲が好ましい。
【0037】
前記片側ホルダー5の開口部12は、上記のようなスレーブ把持爪21と干渉しないような構造に形成されている。つまり、図2のように、片側ホルダー5のホルダー面5bの中心部は、スレーブ媒体2の中心穴2aに相当する部位が凹部5cに形成され、この凹部5cとマスター担体3の中心孔3aの内径との間の部分におけるスレーブ把持爪21の移動範囲を除く部位に、円弧状の開口部12が形成されてなり、この把持爪21の移動部位は凹部5cに連続する切欠溝部5dとなっている。
【0038】
なお、磁気転写後のスレーブ媒体2の剥離時における開口部12からの圧縮気体の吐出と、剥離外力の印加とは同時または多少前後してもよいもので、例えば、チャック20によってスレーブ媒体2を保持した後に圧縮気体の吐出するように設定する。
【0039】
なお、ホルダー面5b,6bにはマスター担体3,4の背面を吸着保持する緩衝材を備えてもよい。この緩衝材は均等に圧力を加えるためのもので、弾性特性を有する材料により円盤シート状に形成される。
【0040】
片側ホルダー5および他側ホルダー6に対するマスター担体3,4およびスレーブ媒体2の位置決めは、例えば、測定顕微鏡またはCCDカメラ等の位置観察手段を使用し、位置決めマーク等を基準としてマスター担体3,4またはスレーブ媒体2をXY方向へ微調整することにより行うか、位置決め部材をホルダー5,6に設置して行う。
【0041】
マスター担体3,4は、基板上に形成された微細凹凸パターンに磁性体が被覆されてなる。その基板としては、ニッケル、シリコン、石英板、ガラス、アルミニウム、合金、セラミックス、合成樹脂等を使用する。凹凸パターンの形成は、スタンパー法等によって行われる。磁性体の形成は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、メッキ法などにより成膜する。面内記録と垂直記録とで、ほぼ同様のマスター担体3,4が使用される。
【0042】
転写用磁界および必要に応じて初期磁界を印加する不図示の磁界印加装置は、面内記録の場合には、例えば、スレーブ媒体2の半径方向に延びるギャップを有するコアにコイルが巻き付けられたリング型ヘッド電磁石が転写ホルダー10の両側に配設されてなり、両側で同じ方向にトラック方向と平行に発生させた転写用磁界を印加する。転写ホルダー10を回転させて、スレーブ媒体2とマスター担体3,4の全面に転写用磁界を印加する。磁界印加装置を回転移動させるように設けてもよい。磁界印加装置は、片側にのみ配設するようにしてもよく、永久磁石装置を両側または片側に配設してもよい。また、垂直記録の場合の磁界印加装置は、極性の異なる電磁石または永久磁石を転写ホルダー10の両側に配置し、垂直方向に転写用磁界を発生させて印加する。部分的に磁界を印加するものでは、転写ホルダー10を移動させるか磁界を移動させて全面の磁気転写を行う。
【0043】
次に、磁気転写工程を説明する。上記磁気転写装置の転写ホルダー10では、同じマスター担体3,4により複数のスレーブ媒体2に対する磁気転写を行うものであり、まず片側ホルダー5に一方のマスター担体3を、他側ホルダー6に他方のマスター担体4を、それぞれ位置を合わせて吸着保持させておく。
【0044】
この他側ホルダー6と片側ホルダー5とを離間した開状態で、予め面内方向または垂直方向の一方に初期磁化したスレーブ媒体2を中心位置を合わせてチャック20により供給し、第1バルブ17を開いて開口部12に真空圧を導入してその内周部を吸着保持した後、他側ホルダー6を片側ホルダー5に接近移動させる。
【0045】
そして、転写ホルダー10の内部空間を閉じた後に、内部空間のエア排出を行って減圧し、所定の真空度とすると共に、さらに他側ホルダー6を接近移動させる。スレーブ媒体2にマスター担体4が接触し、真空度に応じて作用する外力(大気圧)による圧力および印加圧力で、片側ホルダー5に向けてスレーブ媒体2とマスター担体3,4とに均一かつ平行に密着力を加え、所定の密着圧力で密着させる。
【0046】
その後、転写ホルダー10の両側に磁界印加装置を接近させ、転写ホルダー10を回転させつつ磁界印加装置によって初期磁化とほぼ反対方向に転写用磁界を印加し、マスター担体3,4の転写パターンに応じた磁化パターンをスレーブ媒体2の磁気記録部に転写記録する。
【0047】
上記磁気転写時に印加された転写用磁界は、マスター担体3,4の転写パターンにおけるスレーブ媒体2と密着した磁性体による凸部パターンに吸い込まれ、面内記録の場合にはこの部分の初期磁化は反転せずその他の部分の初期磁化が反転し、垂直記録の場合にはこの部分の初期磁化が反転しその他の部分の初期磁化は反転しない結果、スレーブ媒体2にはマスター担体3,4の転写パターンに応じた磁化パターンが転写記録される。
【0048】
磁気転写後に、スレーブ媒体2を取り出すために、転写ホルダー10を開作動する。その際、第1バルブ17を閉じた後、第2バルブ18を開いて圧縮気体を開口部12に送給し、この圧縮気体の吐出によりスレーブ媒体2の内周部を剥離方向に押圧するとともに、マスター担体3とスレーブ媒体2との密着面に圧縮気体が流入して剥離を行う。その際、チャック20の把持爪21によりスレーブ媒体2の内周部を保持して剥離外力を同時に加えて、確実な剥離を得る。その後、チャック20により磁気転写後のスレーブ媒体2を取り出して搬出し、次の新しいスレーブ媒体2を供給し、以下同様の磁気転写を繰り返し行う。
【0049】
本実施形態によれば、ホルダー面5bに形成した開口部12はスレーブ媒体2を吸着保持する吸着穴とスレーブ媒体2をマスター担体3から剥離するための吐出穴とを兼用する構造としたために、広い開口面積となり確実な吸着保持と剥離とが行える。さらに、磁気転写後の剥離時にはチャック20の把持爪21によりスレーブ媒体2を保持して剥離外力を同時に印加するようにしたために、傷を付けることなくマスター担体3と密着状態のスレーブ媒体2を確実かつ容易に剥離でき、搬出が行える。
【0050】
なお、前記実施形態では、磁気転写後の剥離時にスレーブ媒体2に剥離外力を印加する外力印加手段としては、スレーブハンドリング用のチャック20と兼用しているが、これとは別途に独立に設けてもよい。独立に設ける場合、その機構は転写ホルダー10に内蔵しても、転写ホルダー10の外部に設置してもよい。内蔵式の場合は、出没する作動部材を設置し、スレーブ媒体2のマスター担体3と非密着部位を押圧する。外部設置の場合、開作動したホルダー空間内に進退移動し、スレーブ媒体2に係合して剥離外力を印加するように構成すればよい。その際、剥離外力印加部位は、スレーブ媒体2の内周部または外周部で行うことになる。
【0051】
また、開口部12よりの圧縮気体の吐出で、スレーブ媒体2の良好な剥離が確保できる場合には、外力印加手段は設置しなくてもよくなるが、剥離したスレーブ媒体2が落下した際に、損傷、異物付着の問題が生じないようにすることが必要となる。
【0052】
なお、上記実施形態は、スレーブ媒体2の両面にマスター担体3,4を密着させて両面同時に磁気転写を行う場合であるが、スレーブ媒体2の片面にマスター担体3または4を密着させて片面転写を行い、必要に応じて両面逐次転写を行う場合もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一つの実施形態にかかる磁気転写装置のホルダーの開状態をエア経路とともに示す概略断面図
【図2】開状態のホルダーに対するスレーブ媒体の供給状態を示す斜視図
【図3】開状態のホルダーからのスレーブ媒体の剥離状態を示す斜視図
【符号の説明】
1 磁気転写装置
2 スレーブ媒体
2a 中心孔
3,4 マスター担体
3a,4a 中心孔
5 片側ホルダー
6 他側ホルダー
10 転写ホルダー
11 マスター吸引穴
12 開口部
12a 通気路
15 真空源
16 圧縮源
20 チャック(外力印加手段)
21 スレーブ把持爪
Claims (6)
- 転写情報に対応した転写パターンを有するマスター担体をホルダーに保持し、このマスター担体に重ねて転写を受けるスレーブ媒体を保持し、両者を密着させて転写用磁界を印加し磁気転写を行う磁気転写装置において、前記ホルダーはホルダー面に開口部を備え、該開口部に吸引圧を導入して前記スレーブ媒体を吸着保持する一方、該開口部に加圧気体を送給して前記スレーブ媒体を前記マスター担体から剥離するための吐出を行うことを特徴とする磁気転写装置。
- 前記開口部は、マスター担体の内周側に設置し、スレーブ媒体の内周部を吸着保持することを特徴とする請求項1に記載の磁気転写装置。
- 前記開口部より加圧気体を吐出して前記スレーブ媒体を剥離する際に、該スレーブ媒体をマスター担体より引き剥がす外力を印加する外力印加手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の磁気転写装置。
- 前記外力印加手段による外力印加部位は、スレーブ媒体の内周部または外周部であることを特徴とする請求項3に記載の磁気転写装置。
- 前記外力印加手段による印加外力の大きさは、0.1N〜2Nの範囲であることを特徴とする請求項3に記載の磁気転写装置。
- 前記開口部より吐出する加圧気体に不活性ガスを使用することを特徴とする請求項1に記載の磁気転写装置。
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