JP2004206794A - 磁気転写装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ホルダの押圧面間への塵埃の侵入を極力防止する。
【解決手段】一対のホルダ5、6の押圧面5b、6b間に、マスター担体3、4とスレーブ媒体2とを収容保持して互いに密着させ、その状態で転写用磁界を印加してマスター担体3、4からスレーブ媒体2へ磁気転写を行う磁気転写装置において、マスター担体3、4をホルダ5、6の押圧面に真空吸引により吸着保持する真空系統11〜13、及び、マスター担体3、4とスレーブ媒体2とを真空吸引により密着させる真空系統14に塵埃捕集用のフィルタ101〜104を設けた。
【選択図】 図1
【解決手段】一対のホルダ5、6の押圧面5b、6b間に、マスター担体3、4とスレーブ媒体2とを収容保持して互いに密着させ、その状態で転写用磁界を印加してマスター担体3、4からスレーブ媒体2へ磁気転写を行う磁気転写装置において、マスター担体3、4をホルダ5、6の押圧面に真空吸引により吸着保持する真空系統11〜13、及び、マスター担体3、4とスレーブ媒体2とを真空吸引により密着させる真空系統14に塵埃捕集用のフィルタ101〜104を設けた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報を担持したマスター担体からスレーブ媒体へ磁気転写する磁気転写装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気転写とは、マスター担体とスレーブ媒体を密着させた状態で、転写用磁界を印加してマスター担体に担持した情報(例えばサーボ信号)に対応する磁気パターンの転写を行うものである。磁気転写を開示した先行技術としては、次のようなものが挙げられる。
【0003】
【特許文献1】
特開昭63−183623号公報
【特許文献2】
特開平10−40544号公報
【特許文献3】
特開平10−269566号公報
【特許文献4】
特開2001−351235号公報
【特許文献5】
特開2001−351236号公報
【0004】
上記スレーブ媒体がハードディスクまたは高密度フレキシブルディスクのような円盤状媒体の場合は、このスレーブ媒体の片面または両面に円盤状のマスター担体を密着させた状態で、その片面または両面に電磁石装置、永久磁石装置による磁界印加装置を配設して転写用磁界を印加する。
【0005】
この磁気転写における転写品質を高めるためには、スレーブ媒体とマスター担体をいかに均一に密着させるかが重要となる。つまり密着不良があると、磁気転写が起こらない領域が生じ、磁気転写が起こらないと、スレーブ媒体に転写された磁気情報に信号抜けが発生して信号品位が低下し、記録した信号がサーボ信号の場合、トラッキング機能が十分に得られずに信頼性が低下するおそれがあるからである。
【0006】
そこで一般には、エアシリンダやサーボモータ等の機械的駆動手段によりホルダを介してマスター担体とスレーブ媒体とを外部から加圧密着させる以外に、真空吸引力を用いて、マスター担体とスレーブ媒体とを押圧密着させることが行われている。
【0007】
真空吸引手段を用いる場合は、例えば、マスター担体やスレーブ媒体をホルダの押圧面に真空吸引により吸着保持し、マスター担体とスレーブ媒体とを真空吸引により密着させた状態で磁気転写を行い、磁気転写工程後に、真空吸引経路を通しての減圧操作(真空解除装置)により密着を解除すると共に、マスター担体やスレーブ媒体の保持を解除するようにしているのが一般的である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した磁気転写装置では、稼働中にホルダの内部空間に塵埃が侵入して、マスター担体が塵埃の付着により汚染されることがあった。例えば、マスター担体に付着する塵埃のうちで無視できないものとして、吸着解除や密着解除の際の減圧操作(真空解除操作)に伴って侵入する塵埃が挙げられる。
【0009】
このような塵埃がマスター担体に付着した状態で磁気転写を行うと、塵埃付着部を中心として周辺に及ぶ範囲までマスター担体とスレーブ媒体の完全な密着が確保できなくなり、所定信号レベルのパターン転写ができずに磁気転写品質が低下する。記録した信号がサーボ信号の場合には、トラッキング機能が十分に得られずに信頼性が低下するという問題があった。
【0010】
また、上記付着塵埃はマスター担体とスレーブ媒体の密着が繰り返されることで、マスター担体表面への付着力が助長され、以降の磁気転写したスレーブ媒体のすべてに同様またはそれ以上のパターン転写不良が生じ、多数の不良品の発生原因となる。さらに、これら付着物により、マスター担体表面を変形させ、正常な機能を損なうという問題がある。
【0011】
本発明は、上記事情を考慮し、ホルダの押圧面間への塵埃の侵入を極力防止することで、塵埃の侵入に起因するマスター担体とスレーブ媒体との密着不良による転写品質の劣化を防止することのできる磁気転写装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、互いに接離移動する一対のホルダの押圧面間に、転写情報を担持したマスター担体と転写を受けるスレーブ媒体とを収容保持して互いに密着させ、その状態で転写用磁界を印加してマスター担体からスレーブ媒体へ磁気転写を行う磁気転写装置において、前記マスター担体をホルダの押圧面に真空吸引により吸着保持する真空吸引経路の途中に塵埃捕集用のフィルタを設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、互いに接離移動する一対のホルダの押圧面間に、転写情報を担持したマスター担体と転写を受けるスレーブ媒体とを収容保持して互いに密着させ、その状態で転写用磁界を印加してマスター担体からスレーブ媒体へ磁気転写を行う磁気転写装置において、前記スレーブ媒体をホルダの押圧面に真空吸引により吸着保持する真空吸引経路の途中に塵埃捕集用のフィルタを設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、互いに接離移動する一対のホルダの押圧面間に、転写情報を担持したマスター担体と転写を受けるスレーブ媒体とを収容保持して互いに密着させ、その状態で転写用磁界を印加してマスター担体からスレーブ媒体へ磁気転写を行う磁気転写装置において、前記マスター担体とスレーブ媒体とを真空吸引により密着させる真空吸引経路の途中に塵埃捕集用のフィルタを設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項1〜3の発明では、各真空吸引通路の途中にフィルタを設けたので、特に減圧操作の際に真空吸引経路を通して侵入する塵埃を有効に除去することができる。従って、マスター担体に付着する塵埃の量を低減することができ、転写品質の向上が図れる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記ホルダが固定ハウジングに対して回転可能に設けられ、前記真空吸引経路を構成するホルダ内の通路と固定ハウジング内の通路とが、前記固定ハウジングとホルダとの間の相対回転面間に確保されたシール空間を通して連通されており、前記フィルタが、前記シール空間よりもホルダの押圧面に近いホルダ内の通路の途中に配置されていることを特徴とする。
【0017】
回転するホルダに真空吸引通路をつなぐ場合、相対回転部分に確保したシール空間を介して固定側と回転側の通路を連通する必要があり、このシール空間を確保するために通常は、固定側と回転側との間にOリング等のシール機構を配置している。このようなOリング等のシール機構は、摺動カス等の塵埃発生の元になる可能性がある。そこで、請求項4の発明では、フィルタを、シール空間よりもホルダの押圧面に近いホルダ内の通路の途中に配置している。こうすることで、Oリング等のシール機構から発生する塵埃を、確実にフィルタで捕集することができるようになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は実施形態の磁気転写装置のホルダ装置の開状態の概略断面図である。この図は模式図であり、各部の寸法は便宜上実際とは異なる比率で示してある。
【0019】
この磁気転写装置は、両面同時磁気転写を行うものであり、ホルダ装置1は、接離移動可能な左側の第1ホルダ5と右側の第2ホルダ6とを備え、両者の接近に伴い外周のシール部7により密閉形成される内部空間Aに、スレーブ媒体2、マスター担体3、4を配置して中心位置を合わせた状態で、スレーブ媒体2とマスター担体3、4とを対峙密着させる。
【0020】
第1のホルダ5及び第2のホルダ6は背面中心部にそれぞれ支持軸5a、6aを備えており、両支持軸5a、6aがそれぞれ固定ハウジング8、9に回転可能に支承されている。固定ハウジング8、9には軸受8a、9aが配置されると共に、それぞれOリングによる3つのシール材8b、9bが間隔をもって配置されている。
【0021】
第1のホルダ5は、一方のマスター担体3とスレーブ媒体2とを保持すると共に押圧する押圧面5bを備えており、この押圧面5bは第1の弾性材10によって構成されている。また、第2のホルダ6は、他方のマスター担体4を保持すると共に押圧する押圧面6bを備えており、この押圧面6bは第2の弾性材20によって構成されている。
【0022】
第1の弾性材10及び第2の弾性材20は、後述の押圧密着時に、第1のホルダ5の押圧面5bの圧縮変形量が第2のホルダ6の押圧面6bの圧縮変形量より大きくなるように形成されている。例えば、第1の弾性材10の弾性率が第2の弾性材20の弾性率より小さくなるようにそれぞれの材質を選定するか、第1の弾性材10の厚さが第2の弾性材20の厚さより大きくなるように形成するかすることにより、上記の圧縮変形量の関係が達成されている。また、両者の組み合わせにより、圧縮変形量が上記の関係となるように調整してもよい。
【0023】
第1のホルダ5は、スレーブ媒体2の片面にサーボ信号等の情報を転写する一方のマスター担体3を吸着保持する第1の真空系統(真空吸引経路)11と、スレーブ媒体2の内周部を吸着保持する第2の真空系統(真空吸引経路)12とを備えている。また、第2のホルダ6は、スレーブ媒体2の他面にサーボ信号等の情報を転写する他方のマスター担体4を吸着保持する第3の真空系統(真空吸引経路)13と、内部空間Aを減圧する第4の真空系統(真空吸引経路)14とを備えている。
【0024】
第1〜第4の真空系統11〜14は、それぞれの支持軸5a、6aを通して、第1のホルダ5及び第2のホルダ6の外部に導出されている。つまり、第1のホルダ5は円盤状で、マスター担体3の大きさに相当する内面部位に前記第1の弾性材10が設置され、この第1の弾性材10の押圧面5b及び第1のホルダ5に第1の真空系統11の吸引孔11aが開口され、この吸引孔11aに連通する第1エア通路11bが、第1のホルダ5の円盤部分から支持軸5a内の外周側部分に設置され、第1の弾性材10より外周部位においては、押圧面5bに相当する高さに環状に形成されている。また、マスター担体3の内径より内周側のホルダ面に第2の真空系統12の吸引孔12aが開口され、この吸引孔12aに連通する第2エア通路12bが、第1のホルダ5の円盤部分から支持軸5a内の中心部分に設置されている。
【0025】
第1エア通路11b及び第2通路12bは、支持軸5aの周面上の軸方向に互いに離れた位置に開口しており、開口部分を分離するように固定ハウジング8には3つのシール材8bが設置され、隣接するシール材8bの間にシール空間11e、12eが確保されている。これらシール空間11e、12eには、固定ハウジング8側に穿設した連通孔11c、12cが臨んでおり、シール空間11e、12eを介して、固定ハウジング8側の連通孔(通路)11c、12cと、ホルダ5側のエア通路11b、12bとがそれぞれ連通している。各連通孔11c、12cには、それぞれフィルタ101、102を介して、エアパイプ11d、12dが接続され、これにより、第1及び第2の真空系統11、12がホルダ装置1の外部に導出され、外部に設置された不図示の真空源(真空ポンプ)に接続されている。そして、吸引圧の導入により、マスター担体3の裏面及びスレーブ媒体2の内周部を吸着により保持できるようになっている。
【0026】
一方、第2のホルダ6も円盤状で、マスター担体4の大きさに相当する内面部位に前記第2の弾性材20が設置され、この第2の弾性材20の押圧面6b及び第2のホルダ6に第3の真空系統13の吸引孔13aが開口され、この吸引孔13aに連通する第3エア通路13bが第2のホルダ6の円盤部分から支持軸6aの内部に形成されている。
【0027】
また、マスター担体4の内径より内周側のホルダ面には凹部が形成され、この凹部の中心に第4の真空系統14の吸引孔14aが開口され、この吸引孔14aに連通する第4エア通路14bが第2のホルダ6の円盤部分から支持軸6aの内部に形成されている。
【0028】
第3エア通路13b及び第4通路14bは、支持軸6aの周面上の軸方向に互いに離れた位置に開口しており、開口部分を分離するように固定ハウジング9には3つのシール材9bが設置され、隣接するシール材9bの間にシール空間13e、14eが確保されている。これらシール空間13e、14eには、固定ハウジング9側に穿設した連通孔13c、14cが臨んでおり、シール空間13e、14eを介して、固定ハウジング9側の連通孔(通路)13c、14cと、ホルダ6側のエア通路13b、14bとがそれぞれ連通している。各連通孔13c、14cには、それぞれフィルタ103、104を介して、エアパイプ13d、14dが接続され、これにより、第3及び第4の真空系統13、14がホルダ装置1の外部に導出され、外部に設置された不図示の真空源(真空ポンプ)に接続されている。そして、吸引圧の導入により、マスター担体4の裏面を真空吸着により保持すると共に、内部空間Aを減圧して密着力を得ると同時に、密着面のエア抜きを行って密着性を高めるようになっている。
【0029】
ここで、フィルタ101〜104は、外部から内部空間Aに流入するエアに含まれるゴミや粉塵等の塵埃を吸着除去し、内部空間への塵埃の流入を防止するものである。具体的にフィルタとしては、燒結金属フィルタ、PTFE(Polytetrafluoroethylen)フィルタ等を用いることができ、塵埃除去能としては粒径が数μm以上の粒子を100%除去できるものが良く、さらに0.01μm以上の粒子を100%除去できるものであることが好ましい。
【0030】
前記固定ハウジング8、9に設置するシール材8b、9bとしては、固定ハウジング8、9の内周または支持軸5a、6aの外周に装着するOリング、磁性流体シール、Oリングと磁性流体シールを併用した構成などを採用することができる。磁性流体シールは、摺動において発塵性がなく、シール部分からの発塵が抑えられるので、より好ましい。
【0031】
また、第2のホルダ6の外周に設置されたシール部7はリング状であり、第2のホルダ6の外周面に突設されたフランジ6cに装着されて、弾性部材7aを介して軸方向(接離方向)にその変形量だけ移動可能である。このシール部7の端面にはOリングによる端面シール材7bを備え、第1のホルダ5の押圧面5bに圧接して内部空間Aの開閉シールを行う。また、シール部7の内周面にはOリングによる周面シール材7cを備え、第2のホルダ6の外周面との間の摺動シールを行う。
【0032】
また、第1のホルダ5及び第2のホルダ6は図示しない回転機構に連係されて磁気転写時に支持軸5a、6aを中心に一体に回転駆動される。また、図示していないが、磁気転写装置は、ホルダ5、6を回転させつつ転写用磁界を印加する磁界印加装置を備えている。
【0033】
また、前記第1のホルダ5及び第2のホルダ6の少なくとも一方は、軸方向(図では左右方向)に移動可能に支持されており、両ホルダ5、6が互いに接離移動可能となっている。そして、図示の分離状態からの接近移動に伴い、まず、シール部7の端面シール材7bが、第1のホルダ5の外周部端面に圧接して内部空間Aを閉じる。この密閉後に、内部空間Aを第4の真空系統14により減圧すると共に、第2のホルダ6を閉方向へ移動させる。これに伴い、スレーブ媒体2の両面にマスター担体3、4を所定の加圧力で密着させるようになっている。
【0034】
なお、上記密着力の印加のために、第4の真空系統14に加えて、ホルダ5、6を外部から機械的に加圧する押圧手段を備えている。この押圧手段としては、例えば加圧シリンダで構成し、その押圧ロッドの先端で、第1のホルダ5の支持軸5aまたは第2のホルダ6の支持軸6aに所定の押圧荷重を印加できるようにすればよい。
【0035】
また、前記スレーブ媒体2としては、両面または片面に磁気記録部(磁性層)が形成されたハードディスク、高密度フレキシブルディスクなどの円盤状磁気記録媒体が使用される。その磁気記録部は、塗布型磁気記録層あるいは金属薄膜型磁気記録層で構成される。
【0036】
また、マスター担体3、4は、円盤状ディスクとして形成されている。このマスター担体3、4は、基板上に形成された微細凹凸パターンに磁性体が被覆されてなり、この面がスレーブ媒体2に密着される転写パターンが形成された転写情報担持面となる。そして、これと反対側の面が両ホルダ5、6に吸着保持される面となる。マスター担体3、4の基板としては、ニッケル、シリコン、石英板、ガラス、アルミニウム合金、セラミックス、合成樹脂等を使用する。また、凹凸パターンの形成は、スタンパ法等によって行われる。磁性体の形成は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティンング法等の真空成膜手段やメッキ法などによる成膜によって行われれる。面内記録と垂直記録とで、ほぼ同様のマスター担体3、4が使用される。
【0037】
転写用磁界及び必要に応じて初期磁界を印加する不図示の磁界印加装置は、面内記録の場合には、例えば、スレーブ媒体2の半径方向に延びるギャップを有するコアにコイルが巻き付けられたリング型ヘッド電磁石がホルダ装置1の両側に配設されてなり、両側で同じ方向にトラック方向と平行に発生させた転写用磁界を印加する。ホルダ1を回転させて、スレーブ媒体2とマスター担体3、4の前面に転写用磁界を印加する。磁界印加装置は、回転移動させるように設けてもよい。磁界印加装置は、片側にのみ配設するようにしてもよく、永久磁石装置を両側または片側に配設してもよい。また、垂直記録の場合の磁界印加装置は、極性の異なる電磁石または永久磁石をホルダ1の両側に配置し、垂直方向に停車用磁界を発生させて印加する。部分的に時間を印加するものでは、ホルダ1を移動させるか磁界を移動させて前面の磁気転写を行う。
【0038】
次に磁気転写工程を説明する。
上記の磁気転写装置では、同じマスター担体3、4により複数のスレーブ媒体2に対する磁気転写を行う。磁気転写を実行するに際しては、まず、第1のホルダ5に第1の真空系統11によってマスター担体3を、第2のホルダ6に第3に真空系統13によってマスター担体4を、それぞれ位置を合わせた状態で真空吸引作用により吸着保持させておく。
【0039】
この第2のホルダ6と第1のホルダ5とを離間した開状態で、予め面内方向または垂直方向の一方に初期磁化したスレーブ媒体2を中心位置を合わせてセットし、そのスレーブ媒体2を第2の真空系統12による真空吸引によって吸着保持した後、第2のホルダ6を第1のホルダ5に接近移動させる。
【0040】
そして、両ホルダ5、6間の内部空間Aを閉じた後、第4の真空系統14により内部空間Aのエア排出を行って減圧し、所定の真空度にすると共に、さらに第2のホルダ6を接近移動させる。やがて、スレーブ媒体2にマスター担体4が接触し、真空度に応じて作用する外力(大気圧)による圧力及び印加圧力で、第1のホルダ5に向けてスレーブ媒体2とマスター担体3とに第1の弾性材10及び第2の弾性材20を介して均一且つ平行に密着力を加え、所定の密着圧力で密着させる。
【0041】
その後、ホルダ装置1の両側に磁界印加装置を接近させ、第1、第2のホルダ5、6を回転させつつ、磁界印加装置によって初期磁化とほぼ反対方向に転写用磁界を印加し、マスター担体3、4の転写パターンに応じた磁化パターンをスレーブ媒体2の磁気記録部に転写記録する。
【0042】
上記磁気転写時に印加された転写用磁界は、マスター担体3、4の転写パターンにおけるスレーブ媒体2と密着した磁性体による凸部パターンに吸い込まれ、面内記録の場合にはこの部分の初期磁化は反転せずその他の部分の初期磁化が反転し、垂直記録の場合にはこの部分の初期磁化が反転しその他の部分の初期磁化が反転しない結果、スレーブ媒体2には、マスター担体3、4の転写パターンに応じた磁化パターンが転写記録される。
【0043】
磁気転写後に、スレーブ媒体2を取り出すために、ホルダ1を開作動する。その際、第4の真空系統14の真空吸引を停止し、外部からのエア(圧空の場合もある)の供給により、内部空間Aの圧力を上昇させると共に、第2のホルダ6を第1のホルダ5より離れる方向へ移動させる。ここで、スレーブ媒体2に対するマスター担体3、4の密着度は、第1のホルダ5側のマスター担体3の方が、第2のホルダ6側のマスター担体4よりも高いため、第2のホルダ6のマスター担体4がスレーブ媒体2から剥離し、スレーブ媒体2は常に第1のホルダ5に吸着保持されたまま、ホルダ装置1の開作動が行われる。
【0044】
その後、不図示の取り出し機構によって磁気転写後のスレーブ媒体2がホルダ装置1から取り出されて外部へ搬出され、次の新しいスレーブ媒体2がホルダ装置1に供給され、以下同様の磁気転写が繰り返し行われる。なお、スレーブ媒体2の取り出しの際には、第2の真空系統12の真空吸引を停止し、外部からのエア(圧空の場合もある)の供給により吸着保持を解除する。
【0045】
また、何回かの使用によりマスター担体3、4を交換する場合にも、各ホルダ5、6からのマスター担体3、4の取り外しの際には、第1、第3の真空系統11、13の真空吸引を停止し、外部からのエア(圧空の場合もある)の供給により吸着保持を解除する。
【0046】
上記のような繰り返しの磁気転写作業の際に、真空経路(第1〜第4の真空系統11〜14)を通して外部からエアがホルダ装置1の内部空間Aに導入されることになるが、そのエアは必ずフィルタ101〜104を通過してから両ホルダ5、6の内部空間Aに導入されるので、もし外部からのエアの中に塵埃が混入していても、それらの塵埃はフィルタ101〜104で除去され、きれいなエアのみが内部空間Aに導入される。従って、内部空間Aに侵入する塵埃量を低減することができ、塵埃付着に起因するマスター担体とスレーブ媒体との密着不良による転写品質の劣化を防止することができる。また、定期的に行うクリーニングの間隔を延ばすことができ、稼働率向上に貢献することができる。さらに、マスター担体への塵埃の付着を低減できることから、マスター担体の寿命を延ばすことができ、コストダウンが図れる。
【0047】
図2は本発明の他の実施形態の磁気転写装置のホルダ装置の断面図である。
このホルダ装置1Bでは、第2の真空系統12と第3の真空系統に介在させるフィルタ102、104を、各ホルダ5、6の支持軸5a、6aの軸中心に配した第2エア通路12bと第4エア通路14bに設置している。即ち、固定ハウジング8、9と支持軸5a、6aの相対回転面間に確保されたシール空間12e、14eよりも、ホルダ5、6の押圧面5b、6bに近い真空経路途中にフィルタ102、104を設置している。その他の構成は図1の実施形態と全く同様である。
【0048】
このような構成を採用することにより、Oリング等のシール部材8b、9bから発生する可能性のある塵埃を、確実にフィルタ102、104で捕集することができるようになるため、ホルダ5、6間の内部空間Aへの塵埃の侵入防止効果を一層高めることができる。
【0049】
なお、第1、第3の真空系統11、13に介在させるフィルタ101、103についても、設計上可能であれば、ホルダ5、6内に内蔵するのがよい。
【0050】
【発明の効果】
請求項1〜3の発明によれば、マスター担体やスレーブ媒体の吸着保持あるいはマスター担体とスレーブ媒体の密着のための真空吸引経路の途中にフィルタを設けているので、減圧操作の際に真空吸引経路を通して侵入する塵埃を有効に除去することができ、塵埃付着に起因するマスター担体とスレーブ媒体との密着不良による転写品質の劣化を防止することができる。また、定期的に行う必要のあるクリーニングの間隔を延ばすことができるため、稼働率向上に貢献することができる。また、マスター担体への塵埃の付着を低減することができるため、マスター担体の寿命を延ばすことができて、コストダウンが図れる。また、請求項4の発明によれば、フィルタをホルダ内の通路に配置しているので、Oリング等のシール機構から発生する塵埃を確実にフィルタで捕集することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の磁気転写装置のホルダ装置の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態の磁気転写装置のホルダ装置の断面図である。
【符号の説明】
2 スレーブ媒体
3,4 マスター担体
5,6 ホルダ
5b,6b 押圧面
11〜14 真空系統(真空吸引経路)
11b〜14b エア通路
11c〜14c 連通孔(通路)
11e〜14e シール空間
101〜104 フィルタ
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報を担持したマスター担体からスレーブ媒体へ磁気転写する磁気転写装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気転写とは、マスター担体とスレーブ媒体を密着させた状態で、転写用磁界を印加してマスター担体に担持した情報(例えばサーボ信号)に対応する磁気パターンの転写を行うものである。磁気転写を開示した先行技術としては、次のようなものが挙げられる。
【0003】
【特許文献1】
特開昭63−183623号公報
【特許文献2】
特開平10−40544号公報
【特許文献3】
特開平10−269566号公報
【特許文献4】
特開2001−351235号公報
【特許文献5】
特開2001−351236号公報
【0004】
上記スレーブ媒体がハードディスクまたは高密度フレキシブルディスクのような円盤状媒体の場合は、このスレーブ媒体の片面または両面に円盤状のマスター担体を密着させた状態で、その片面または両面に電磁石装置、永久磁石装置による磁界印加装置を配設して転写用磁界を印加する。
【0005】
この磁気転写における転写品質を高めるためには、スレーブ媒体とマスター担体をいかに均一に密着させるかが重要となる。つまり密着不良があると、磁気転写が起こらない領域が生じ、磁気転写が起こらないと、スレーブ媒体に転写された磁気情報に信号抜けが発生して信号品位が低下し、記録した信号がサーボ信号の場合、トラッキング機能が十分に得られずに信頼性が低下するおそれがあるからである。
【0006】
そこで一般には、エアシリンダやサーボモータ等の機械的駆動手段によりホルダを介してマスター担体とスレーブ媒体とを外部から加圧密着させる以外に、真空吸引力を用いて、マスター担体とスレーブ媒体とを押圧密着させることが行われている。
【0007】
真空吸引手段を用いる場合は、例えば、マスター担体やスレーブ媒体をホルダの押圧面に真空吸引により吸着保持し、マスター担体とスレーブ媒体とを真空吸引により密着させた状態で磁気転写を行い、磁気転写工程後に、真空吸引経路を通しての減圧操作(真空解除装置)により密着を解除すると共に、マスター担体やスレーブ媒体の保持を解除するようにしているのが一般的である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した磁気転写装置では、稼働中にホルダの内部空間に塵埃が侵入して、マスター担体が塵埃の付着により汚染されることがあった。例えば、マスター担体に付着する塵埃のうちで無視できないものとして、吸着解除や密着解除の際の減圧操作(真空解除操作)に伴って侵入する塵埃が挙げられる。
【0009】
このような塵埃がマスター担体に付着した状態で磁気転写を行うと、塵埃付着部を中心として周辺に及ぶ範囲までマスター担体とスレーブ媒体の完全な密着が確保できなくなり、所定信号レベルのパターン転写ができずに磁気転写品質が低下する。記録した信号がサーボ信号の場合には、トラッキング機能が十分に得られずに信頼性が低下するという問題があった。
【0010】
また、上記付着塵埃はマスター担体とスレーブ媒体の密着が繰り返されることで、マスター担体表面への付着力が助長され、以降の磁気転写したスレーブ媒体のすべてに同様またはそれ以上のパターン転写不良が生じ、多数の不良品の発生原因となる。さらに、これら付着物により、マスター担体表面を変形させ、正常な機能を損なうという問題がある。
【0011】
本発明は、上記事情を考慮し、ホルダの押圧面間への塵埃の侵入を極力防止することで、塵埃の侵入に起因するマスター担体とスレーブ媒体との密着不良による転写品質の劣化を防止することのできる磁気転写装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、互いに接離移動する一対のホルダの押圧面間に、転写情報を担持したマスター担体と転写を受けるスレーブ媒体とを収容保持して互いに密着させ、その状態で転写用磁界を印加してマスター担体からスレーブ媒体へ磁気転写を行う磁気転写装置において、前記マスター担体をホルダの押圧面に真空吸引により吸着保持する真空吸引経路の途中に塵埃捕集用のフィルタを設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、互いに接離移動する一対のホルダの押圧面間に、転写情報を担持したマスター担体と転写を受けるスレーブ媒体とを収容保持して互いに密着させ、その状態で転写用磁界を印加してマスター担体からスレーブ媒体へ磁気転写を行う磁気転写装置において、前記スレーブ媒体をホルダの押圧面に真空吸引により吸着保持する真空吸引経路の途中に塵埃捕集用のフィルタを設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、互いに接離移動する一対のホルダの押圧面間に、転写情報を担持したマスター担体と転写を受けるスレーブ媒体とを収容保持して互いに密着させ、その状態で転写用磁界を印加してマスター担体からスレーブ媒体へ磁気転写を行う磁気転写装置において、前記マスター担体とスレーブ媒体とを真空吸引により密着させる真空吸引経路の途中に塵埃捕集用のフィルタを設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項1〜3の発明では、各真空吸引通路の途中にフィルタを設けたので、特に減圧操作の際に真空吸引経路を通して侵入する塵埃を有効に除去することができる。従って、マスター担体に付着する塵埃の量を低減することができ、転写品質の向上が図れる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記ホルダが固定ハウジングに対して回転可能に設けられ、前記真空吸引経路を構成するホルダ内の通路と固定ハウジング内の通路とが、前記固定ハウジングとホルダとの間の相対回転面間に確保されたシール空間を通して連通されており、前記フィルタが、前記シール空間よりもホルダの押圧面に近いホルダ内の通路の途中に配置されていることを特徴とする。
【0017】
回転するホルダに真空吸引通路をつなぐ場合、相対回転部分に確保したシール空間を介して固定側と回転側の通路を連通する必要があり、このシール空間を確保するために通常は、固定側と回転側との間にOリング等のシール機構を配置している。このようなOリング等のシール機構は、摺動カス等の塵埃発生の元になる可能性がある。そこで、請求項4の発明では、フィルタを、シール空間よりもホルダの押圧面に近いホルダ内の通路の途中に配置している。こうすることで、Oリング等のシール機構から発生する塵埃を、確実にフィルタで捕集することができるようになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は実施形態の磁気転写装置のホルダ装置の開状態の概略断面図である。この図は模式図であり、各部の寸法は便宜上実際とは異なる比率で示してある。
【0019】
この磁気転写装置は、両面同時磁気転写を行うものであり、ホルダ装置1は、接離移動可能な左側の第1ホルダ5と右側の第2ホルダ6とを備え、両者の接近に伴い外周のシール部7により密閉形成される内部空間Aに、スレーブ媒体2、マスター担体3、4を配置して中心位置を合わせた状態で、スレーブ媒体2とマスター担体3、4とを対峙密着させる。
【0020】
第1のホルダ5及び第2のホルダ6は背面中心部にそれぞれ支持軸5a、6aを備えており、両支持軸5a、6aがそれぞれ固定ハウジング8、9に回転可能に支承されている。固定ハウジング8、9には軸受8a、9aが配置されると共に、それぞれOリングによる3つのシール材8b、9bが間隔をもって配置されている。
【0021】
第1のホルダ5は、一方のマスター担体3とスレーブ媒体2とを保持すると共に押圧する押圧面5bを備えており、この押圧面5bは第1の弾性材10によって構成されている。また、第2のホルダ6は、他方のマスター担体4を保持すると共に押圧する押圧面6bを備えており、この押圧面6bは第2の弾性材20によって構成されている。
【0022】
第1の弾性材10及び第2の弾性材20は、後述の押圧密着時に、第1のホルダ5の押圧面5bの圧縮変形量が第2のホルダ6の押圧面6bの圧縮変形量より大きくなるように形成されている。例えば、第1の弾性材10の弾性率が第2の弾性材20の弾性率より小さくなるようにそれぞれの材質を選定するか、第1の弾性材10の厚さが第2の弾性材20の厚さより大きくなるように形成するかすることにより、上記の圧縮変形量の関係が達成されている。また、両者の組み合わせにより、圧縮変形量が上記の関係となるように調整してもよい。
【0023】
第1のホルダ5は、スレーブ媒体2の片面にサーボ信号等の情報を転写する一方のマスター担体3を吸着保持する第1の真空系統(真空吸引経路)11と、スレーブ媒体2の内周部を吸着保持する第2の真空系統(真空吸引経路)12とを備えている。また、第2のホルダ6は、スレーブ媒体2の他面にサーボ信号等の情報を転写する他方のマスター担体4を吸着保持する第3の真空系統(真空吸引経路)13と、内部空間Aを減圧する第4の真空系統(真空吸引経路)14とを備えている。
【0024】
第1〜第4の真空系統11〜14は、それぞれの支持軸5a、6aを通して、第1のホルダ5及び第2のホルダ6の外部に導出されている。つまり、第1のホルダ5は円盤状で、マスター担体3の大きさに相当する内面部位に前記第1の弾性材10が設置され、この第1の弾性材10の押圧面5b及び第1のホルダ5に第1の真空系統11の吸引孔11aが開口され、この吸引孔11aに連通する第1エア通路11bが、第1のホルダ5の円盤部分から支持軸5a内の外周側部分に設置され、第1の弾性材10より外周部位においては、押圧面5bに相当する高さに環状に形成されている。また、マスター担体3の内径より内周側のホルダ面に第2の真空系統12の吸引孔12aが開口され、この吸引孔12aに連通する第2エア通路12bが、第1のホルダ5の円盤部分から支持軸5a内の中心部分に設置されている。
【0025】
第1エア通路11b及び第2通路12bは、支持軸5aの周面上の軸方向に互いに離れた位置に開口しており、開口部分を分離するように固定ハウジング8には3つのシール材8bが設置され、隣接するシール材8bの間にシール空間11e、12eが確保されている。これらシール空間11e、12eには、固定ハウジング8側に穿設した連通孔11c、12cが臨んでおり、シール空間11e、12eを介して、固定ハウジング8側の連通孔(通路)11c、12cと、ホルダ5側のエア通路11b、12bとがそれぞれ連通している。各連通孔11c、12cには、それぞれフィルタ101、102を介して、エアパイプ11d、12dが接続され、これにより、第1及び第2の真空系統11、12がホルダ装置1の外部に導出され、外部に設置された不図示の真空源(真空ポンプ)に接続されている。そして、吸引圧の導入により、マスター担体3の裏面及びスレーブ媒体2の内周部を吸着により保持できるようになっている。
【0026】
一方、第2のホルダ6も円盤状で、マスター担体4の大きさに相当する内面部位に前記第2の弾性材20が設置され、この第2の弾性材20の押圧面6b及び第2のホルダ6に第3の真空系統13の吸引孔13aが開口され、この吸引孔13aに連通する第3エア通路13bが第2のホルダ6の円盤部分から支持軸6aの内部に形成されている。
【0027】
また、マスター担体4の内径より内周側のホルダ面には凹部が形成され、この凹部の中心に第4の真空系統14の吸引孔14aが開口され、この吸引孔14aに連通する第4エア通路14bが第2のホルダ6の円盤部分から支持軸6aの内部に形成されている。
【0028】
第3エア通路13b及び第4通路14bは、支持軸6aの周面上の軸方向に互いに離れた位置に開口しており、開口部分を分離するように固定ハウジング9には3つのシール材9bが設置され、隣接するシール材9bの間にシール空間13e、14eが確保されている。これらシール空間13e、14eには、固定ハウジング9側に穿設した連通孔13c、14cが臨んでおり、シール空間13e、14eを介して、固定ハウジング9側の連通孔(通路)13c、14cと、ホルダ6側のエア通路13b、14bとがそれぞれ連通している。各連通孔13c、14cには、それぞれフィルタ103、104を介して、エアパイプ13d、14dが接続され、これにより、第3及び第4の真空系統13、14がホルダ装置1の外部に導出され、外部に設置された不図示の真空源(真空ポンプ)に接続されている。そして、吸引圧の導入により、マスター担体4の裏面を真空吸着により保持すると共に、内部空間Aを減圧して密着力を得ると同時に、密着面のエア抜きを行って密着性を高めるようになっている。
【0029】
ここで、フィルタ101〜104は、外部から内部空間Aに流入するエアに含まれるゴミや粉塵等の塵埃を吸着除去し、内部空間への塵埃の流入を防止するものである。具体的にフィルタとしては、燒結金属フィルタ、PTFE(Polytetrafluoroethylen)フィルタ等を用いることができ、塵埃除去能としては粒径が数μm以上の粒子を100%除去できるものが良く、さらに0.01μm以上の粒子を100%除去できるものであることが好ましい。
【0030】
前記固定ハウジング8、9に設置するシール材8b、9bとしては、固定ハウジング8、9の内周または支持軸5a、6aの外周に装着するOリング、磁性流体シール、Oリングと磁性流体シールを併用した構成などを採用することができる。磁性流体シールは、摺動において発塵性がなく、シール部分からの発塵が抑えられるので、より好ましい。
【0031】
また、第2のホルダ6の外周に設置されたシール部7はリング状であり、第2のホルダ6の外周面に突設されたフランジ6cに装着されて、弾性部材7aを介して軸方向(接離方向)にその変形量だけ移動可能である。このシール部7の端面にはOリングによる端面シール材7bを備え、第1のホルダ5の押圧面5bに圧接して内部空間Aの開閉シールを行う。また、シール部7の内周面にはOリングによる周面シール材7cを備え、第2のホルダ6の外周面との間の摺動シールを行う。
【0032】
また、第1のホルダ5及び第2のホルダ6は図示しない回転機構に連係されて磁気転写時に支持軸5a、6aを中心に一体に回転駆動される。また、図示していないが、磁気転写装置は、ホルダ5、6を回転させつつ転写用磁界を印加する磁界印加装置を備えている。
【0033】
また、前記第1のホルダ5及び第2のホルダ6の少なくとも一方は、軸方向(図では左右方向)に移動可能に支持されており、両ホルダ5、6が互いに接離移動可能となっている。そして、図示の分離状態からの接近移動に伴い、まず、シール部7の端面シール材7bが、第1のホルダ5の外周部端面に圧接して内部空間Aを閉じる。この密閉後に、内部空間Aを第4の真空系統14により減圧すると共に、第2のホルダ6を閉方向へ移動させる。これに伴い、スレーブ媒体2の両面にマスター担体3、4を所定の加圧力で密着させるようになっている。
【0034】
なお、上記密着力の印加のために、第4の真空系統14に加えて、ホルダ5、6を外部から機械的に加圧する押圧手段を備えている。この押圧手段としては、例えば加圧シリンダで構成し、その押圧ロッドの先端で、第1のホルダ5の支持軸5aまたは第2のホルダ6の支持軸6aに所定の押圧荷重を印加できるようにすればよい。
【0035】
また、前記スレーブ媒体2としては、両面または片面に磁気記録部(磁性層)が形成されたハードディスク、高密度フレキシブルディスクなどの円盤状磁気記録媒体が使用される。その磁気記録部は、塗布型磁気記録層あるいは金属薄膜型磁気記録層で構成される。
【0036】
また、マスター担体3、4は、円盤状ディスクとして形成されている。このマスター担体3、4は、基板上に形成された微細凹凸パターンに磁性体が被覆されてなり、この面がスレーブ媒体2に密着される転写パターンが形成された転写情報担持面となる。そして、これと反対側の面が両ホルダ5、6に吸着保持される面となる。マスター担体3、4の基板としては、ニッケル、シリコン、石英板、ガラス、アルミニウム合金、セラミックス、合成樹脂等を使用する。また、凹凸パターンの形成は、スタンパ法等によって行われる。磁性体の形成は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティンング法等の真空成膜手段やメッキ法などによる成膜によって行われれる。面内記録と垂直記録とで、ほぼ同様のマスター担体3、4が使用される。
【0037】
転写用磁界及び必要に応じて初期磁界を印加する不図示の磁界印加装置は、面内記録の場合には、例えば、スレーブ媒体2の半径方向に延びるギャップを有するコアにコイルが巻き付けられたリング型ヘッド電磁石がホルダ装置1の両側に配設されてなり、両側で同じ方向にトラック方向と平行に発生させた転写用磁界を印加する。ホルダ1を回転させて、スレーブ媒体2とマスター担体3、4の前面に転写用磁界を印加する。磁界印加装置は、回転移動させるように設けてもよい。磁界印加装置は、片側にのみ配設するようにしてもよく、永久磁石装置を両側または片側に配設してもよい。また、垂直記録の場合の磁界印加装置は、極性の異なる電磁石または永久磁石をホルダ1の両側に配置し、垂直方向に停車用磁界を発生させて印加する。部分的に時間を印加するものでは、ホルダ1を移動させるか磁界を移動させて前面の磁気転写を行う。
【0038】
次に磁気転写工程を説明する。
上記の磁気転写装置では、同じマスター担体3、4により複数のスレーブ媒体2に対する磁気転写を行う。磁気転写を実行するに際しては、まず、第1のホルダ5に第1の真空系統11によってマスター担体3を、第2のホルダ6に第3に真空系統13によってマスター担体4を、それぞれ位置を合わせた状態で真空吸引作用により吸着保持させておく。
【0039】
この第2のホルダ6と第1のホルダ5とを離間した開状態で、予め面内方向または垂直方向の一方に初期磁化したスレーブ媒体2を中心位置を合わせてセットし、そのスレーブ媒体2を第2の真空系統12による真空吸引によって吸着保持した後、第2のホルダ6を第1のホルダ5に接近移動させる。
【0040】
そして、両ホルダ5、6間の内部空間Aを閉じた後、第4の真空系統14により内部空間Aのエア排出を行って減圧し、所定の真空度にすると共に、さらに第2のホルダ6を接近移動させる。やがて、スレーブ媒体2にマスター担体4が接触し、真空度に応じて作用する外力(大気圧)による圧力及び印加圧力で、第1のホルダ5に向けてスレーブ媒体2とマスター担体3とに第1の弾性材10及び第2の弾性材20を介して均一且つ平行に密着力を加え、所定の密着圧力で密着させる。
【0041】
その後、ホルダ装置1の両側に磁界印加装置を接近させ、第1、第2のホルダ5、6を回転させつつ、磁界印加装置によって初期磁化とほぼ反対方向に転写用磁界を印加し、マスター担体3、4の転写パターンに応じた磁化パターンをスレーブ媒体2の磁気記録部に転写記録する。
【0042】
上記磁気転写時に印加された転写用磁界は、マスター担体3、4の転写パターンにおけるスレーブ媒体2と密着した磁性体による凸部パターンに吸い込まれ、面内記録の場合にはこの部分の初期磁化は反転せずその他の部分の初期磁化が反転し、垂直記録の場合にはこの部分の初期磁化が反転しその他の部分の初期磁化が反転しない結果、スレーブ媒体2には、マスター担体3、4の転写パターンに応じた磁化パターンが転写記録される。
【0043】
磁気転写後に、スレーブ媒体2を取り出すために、ホルダ1を開作動する。その際、第4の真空系統14の真空吸引を停止し、外部からのエア(圧空の場合もある)の供給により、内部空間Aの圧力を上昇させると共に、第2のホルダ6を第1のホルダ5より離れる方向へ移動させる。ここで、スレーブ媒体2に対するマスター担体3、4の密着度は、第1のホルダ5側のマスター担体3の方が、第2のホルダ6側のマスター担体4よりも高いため、第2のホルダ6のマスター担体4がスレーブ媒体2から剥離し、スレーブ媒体2は常に第1のホルダ5に吸着保持されたまま、ホルダ装置1の開作動が行われる。
【0044】
その後、不図示の取り出し機構によって磁気転写後のスレーブ媒体2がホルダ装置1から取り出されて外部へ搬出され、次の新しいスレーブ媒体2がホルダ装置1に供給され、以下同様の磁気転写が繰り返し行われる。なお、スレーブ媒体2の取り出しの際には、第2の真空系統12の真空吸引を停止し、外部からのエア(圧空の場合もある)の供給により吸着保持を解除する。
【0045】
また、何回かの使用によりマスター担体3、4を交換する場合にも、各ホルダ5、6からのマスター担体3、4の取り外しの際には、第1、第3の真空系統11、13の真空吸引を停止し、外部からのエア(圧空の場合もある)の供給により吸着保持を解除する。
【0046】
上記のような繰り返しの磁気転写作業の際に、真空経路(第1〜第4の真空系統11〜14)を通して外部からエアがホルダ装置1の内部空間Aに導入されることになるが、そのエアは必ずフィルタ101〜104を通過してから両ホルダ5、6の内部空間Aに導入されるので、もし外部からのエアの中に塵埃が混入していても、それらの塵埃はフィルタ101〜104で除去され、きれいなエアのみが内部空間Aに導入される。従って、内部空間Aに侵入する塵埃量を低減することができ、塵埃付着に起因するマスター担体とスレーブ媒体との密着不良による転写品質の劣化を防止することができる。また、定期的に行うクリーニングの間隔を延ばすことができ、稼働率向上に貢献することができる。さらに、マスター担体への塵埃の付着を低減できることから、マスター担体の寿命を延ばすことができ、コストダウンが図れる。
【0047】
図2は本発明の他の実施形態の磁気転写装置のホルダ装置の断面図である。
このホルダ装置1Bでは、第2の真空系統12と第3の真空系統に介在させるフィルタ102、104を、各ホルダ5、6の支持軸5a、6aの軸中心に配した第2エア通路12bと第4エア通路14bに設置している。即ち、固定ハウジング8、9と支持軸5a、6aの相対回転面間に確保されたシール空間12e、14eよりも、ホルダ5、6の押圧面5b、6bに近い真空経路途中にフィルタ102、104を設置している。その他の構成は図1の実施形態と全く同様である。
【0048】
このような構成を採用することにより、Oリング等のシール部材8b、9bから発生する可能性のある塵埃を、確実にフィルタ102、104で捕集することができるようになるため、ホルダ5、6間の内部空間Aへの塵埃の侵入防止効果を一層高めることができる。
【0049】
なお、第1、第3の真空系統11、13に介在させるフィルタ101、103についても、設計上可能であれば、ホルダ5、6内に内蔵するのがよい。
【0050】
【発明の効果】
請求項1〜3の発明によれば、マスター担体やスレーブ媒体の吸着保持あるいはマスター担体とスレーブ媒体の密着のための真空吸引経路の途中にフィルタを設けているので、減圧操作の際に真空吸引経路を通して侵入する塵埃を有効に除去することができ、塵埃付着に起因するマスター担体とスレーブ媒体との密着不良による転写品質の劣化を防止することができる。また、定期的に行う必要のあるクリーニングの間隔を延ばすことができるため、稼働率向上に貢献することができる。また、マスター担体への塵埃の付着を低減することができるため、マスター担体の寿命を延ばすことができて、コストダウンが図れる。また、請求項4の発明によれば、フィルタをホルダ内の通路に配置しているので、Oリング等のシール機構から発生する塵埃を確実にフィルタで捕集することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の磁気転写装置のホルダ装置の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態の磁気転写装置のホルダ装置の断面図である。
【符号の説明】
2 スレーブ媒体
3,4 マスター担体
5,6 ホルダ
5b,6b 押圧面
11〜14 真空系統(真空吸引経路)
11b〜14b エア通路
11c〜14c 連通孔(通路)
11e〜14e シール空間
101〜104 フィルタ
Claims (4)
- 互いに接離移動する一対のホルダの押圧面間に、転写情報を担持したマスター担体と転写を受けるスレーブ媒体とを収容保持して互いに密着させ、転写用磁界を印加してマスター担体からスレーブ媒体へ前記転写情報を磁気転写する磁気転写装置において、
前記マスター担体をホルダの押圧面に真空吸引により吸着保持する真空吸引経路の途中に塵埃捕集用のフィルタを設けたことを特徴とする磁気転写装置。 - 互いに接離移動する一対のホルダの押圧面間に、転写情報を担持したマスター担体と転写を受けるスレーブ媒体とを収容保持して互いに密着させ、その状態で転写用磁界を印加してマスター担体からスレーブ媒体へ磁気転写を行う磁気転写装置において、
前記スレーブ媒体をホルダの押圧面に真空吸引により吸着保持する真空吸引経路の途中に塵埃捕集用のフィルタを設けたことを特徴とする磁気転写装置。 - 互いに接離移動する一対のホルダの押圧面間に、転写情報を担持したマスター担体と転写を受けるスレーブ媒体とを収容保持して互いに密着させ、その状態で転写用磁界を印加してマスター担体からスレーブ媒体へ磁気転写を行う磁気転写装置において、
前記マスター担体とスレーブ媒体とを真空吸引により密着させる真空吸引経路の途中に塵埃捕集用のフィルタを設けたことを特徴とする磁気転写装置。 - 前記ホルダが固定ハウジングに対して回転可能に設けられ、前記真空吸引経路を構成するホルダ内の通路と固定ハウジング内の通路とが、前記固定ハウジングとホルダとの間の相対回転面間に確保されたシール空間を通して連通されており、前記フィルタが、前記シール空間よりもホルダの押圧面に近いホルダ内の通路の途中に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁気転写装置。
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