JP2004131864A - 三次元交絡構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】均染性に優れ、しかも、従来のアクリロニトリル系繊維Bのみを用いた三次元交絡構造体とは異なる新しい風合いを有すると共に、機能性、特に消臭機能と吸保湿機能に優れたアクリロニトリル系複合繊維Aを用いた三次元交絡構造物を提供することにある。
【解決手段】セルロースアセテート及び/またはセルロース20〜40重量%、アクリロニトリル系共重合ポリマー60〜80重量%からなるアクリロニトリル系複合繊維Aを主たる構成要素としてなる三次元交絡構造体することにより得られる。
【選択図】 なし
【解決手段】セルロースアセテート及び/またはセルロース20〜40重量%、アクリロニトリル系共重合ポリマー60〜80重量%からなるアクリロニトリル系複合繊維Aを主たる構成要素としてなる三次元交絡構造体することにより得られる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースアセテート及び/またはセルロースとアクリロニトリル系共重合ポリマーとからなるアクリロニトリル系複合繊維Aとアクリロニトリル系共重合ポリマーから構成されたアクリロニトリル系繊維Bを用いることにより、ドライな風合いと均染性優れ、さらにアクリロニトリル系複合繊維Aの持つ消臭、吸湿等の機能が付与された合成皮革や不織布として有用な三次元交絡構造体に関する。
【従来の技術】
合成皮革は、風合いを天然皮革に似せた製品で、その歴史は古く19世紀中頃にまで遡ることができるが、近年の合成皮革としては、編織布や、不織布等のシート地に多孔質被覆層や、非多孔質被覆層を形成させたものが知られており、その製造方法は数多く提案されている。その中でも特に0.6dtex以下の極細繊維を用いると天然皮革に類似した、優れた製品が得られるとされている。
しかしながら、従来の合成皮革が求めたものは高級感のあるスエード調のものが主体であり、嗜好や要求が非常に多様化している現在のニーズには対応しきれていないものがある。特に、汎用感のあるワイルドな風合いを持ったものについては不十分であり、新規な風合いを有する合成皮革の出現が求められている。
特開2000−248471号公報に、アクリル繊維および他の繊維を用いた合成皮革が開示されているが、風合いは改良されたものの繊維の混合斑に起因するために均染性を満足するに至らなかった。
また、機能面の付与、特に消臭機能、吸保湿機能を有する新素材開発の要求が強い。一般に不織布の機能付与は後加工に多く見られるが、耐久性が悪く、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等のバインダーが必要となり繊維そのものの風合いが損なわれると言った問題があった。
【先行技術文献】
特開2000−248471号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解消することを目的として、均染性に優れ、しかも、従来のアクリロニトリル系繊維Bのみを用いた三次元交絡構造体とは異なる新しい風合いを有すると共に、機能性、特に消臭機能と吸保湿機能に優れたアクリロニトリル系複合繊維Aを用いた三次元交絡構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、セルロースアセテート及び/またはセルロース20〜40重量%並びにアクリロニトリル系共重合ポリマー60〜80重量%からなるアクリロニトリル系複合繊維Aを30重量%以上含有してなる三次元交絡構造体にある。
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明者らは、上記問題点を解決する目的で、新規な風合い及び機能性付与のため鋭意検討した結果、アクリロニトリル系複合繊維を用いることにより、均染性を向上させ、かつ新規な風合い特にドライ感に優れる風合いと消臭機能及び吸保湿機能を兼ね備えた三次元交絡構造体を提供するに至った。
本発明に使用するアクリロニトリル系共重合ポリマーは、通常のアクリロニトリル系繊維を製造するのに使用されるものであれば特に限定されないが、モノマー構成としてアクリロニトリルを50〜95重量%含有していることが好ましい。アクリロニトリル系繊維を構成しているアクリロニトリル系共重合ポリマー中のアクリロニトリルの含有量が50重量%未満では、原綿が本来のアクリル繊維としての特性を失い、本発明の目的を達成することが困難である。また、95重量%を超えると繊維の風合いが硬くなる上に、染色性も低下し好ましくない。
本発明に用いられるアクリロニトリル系共重合ポリマーの共重合成分は、通常のアクリル繊維を構成する共重合モノマーであれば特に限定されないが、例えば以下のモノマーが挙げられる。すなわち、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル等に代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等に代表されるメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等の不飽和単量体等である。さらに、染色性改良等の目的で、p−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩等を共重合してもよい。これらの共重合モノマーは1種または1種以上が用いられ、その使用割合はアクリロニトリル系共重合ポリマー中8〜50重量%である。
本発明で使用するアクリロニトリル系複合繊維A及びアクリロニトリル系繊維Bを構成するアクリロニトリル系共重合ポリマーの分子量は特に限定されないが、分子量10万以上100万以下のものが望ましい。分子量が10万未満では紡糸性が低下すると同時に原綿の糸質も悪化する傾向にある。反対に、分子量100万を超えるものは紡糸原液の最適粘度を与えるポリマー濃度が低くなり、生産性が低下する傾向にある。
本発明の三次元交絡構造物を構成するアクリロニトリル系複合繊維Aを構成するセルロースアセテートとしては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートを挙げることができる。本発明におけるセルロースジアセテートは、平均酢化度が48.8%以上56.2%未満であり、セルローストリアセテートは平均酢化度が56.2%以上62.5%未満である。なお、本発明で言うセルロースは、セルロースの分子構造C6H7O2(OH)3を含有する高分子であればよく、ヒドロキシル基の一部に化学修飾を加えたセルロース誘導体であってもよい。
本発明のアクリロニトリル系複合繊維Aを構成するセルロースアセテート及び/又はセルロースは、20〜40重量%であることがドライ感のある風合いを得るために必要であり、更に消臭能及び保湿能にも優れた機能も発揮することができ、好ましくは25〜30重量%である。20重量%未満では、得られる繊維の風合いはアクリロニトリル系繊維の風合いに似たものとなり、得られる三次元交絡構造体もアクリロニトリル系繊維から構成されるものと類似のものでありドライ感は消失する。セルロースアセテート及び/又はセルロースが40重量%を超えると、紡糸困難となるため、三次元交絡構造体を得ることが不可能となる。また、アクリロニトリル系複合繊維Aを構成するアクリロニトリル系共重合ポリマーは、60〜80重量%であることが必要であり、好ましくは70〜75重量%である。60重量%未満では、紡糸困難となるため、三次元交絡構造体を得ること不可能となる。80重量%を超えると、得られる繊維の風合いはアクリロニトリル系繊維の風合いに似たものとなり、得られる三次元交絡複合体もアクリロニトリル系繊維からなるものの風合いに似たものとなり、ドライ感が消失する。
本発明に用いるアクリロニトリル系複合繊維Aは、例えば以下のようにして製造できる。セルロースアセテート、アクリロニトリル系共重合ポリマー及び溶媒からなる紡糸原液を調製する。溶媒はセルロースアセテートとアクリロニトリル系共重合ポリマーとを同時に溶解する溶媒であれば特に限定されるものではなく、無機酸系、無機塩水溶液、有機溶剤のいずれでもよい。このような溶媒として、例えば、硝酸(水溶液)、塩化亜鉛水溶液、ロダン塩水溶液、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレンカーボネート、y−ブチロラクトン、アセトン等が挙げられる。
紡糸原液を調製する方法は、セルロースアセテートとアクリロニトリル系共重合ポリマーと溶媒とを室温または必要に応じて加温あるいは冷却して同時に攪拌混合して調製することが可能であるが、セルロースアセテートとアクリロニトリル系共重合ポリマーとを別々に溶媒に溶解した後、混合して調製することも可能である。
調製した紡糸原液は溶剤紡糸のうち湿式紡糸法が紡糸原液の凝固速度を制御しやすい点から好ましい。湿式紡糸法以外の乾湿式紡糸法、乾式紡糸法は凝固が緩慢であるため、制御が困難となる。紡糸原液は、通常の紡糸口金を用いて繊維形態に賦型された未延伸糸とし、これを延伸倍率3〜7倍に延伸する。延伸倍率が3倍未満では、得られる繊維の機械的強度が低下し、紡績性、製品の耐久性が低下する。延伸倍率が7倍を超えると、糸切れ等の工程トラブルが生じ易くなる。得られた延伸糸は、常法により油剤処理、乾燥緩和処理等を施す。なお、本製造方法においては、乾燥緻密化する前の糸条(凝固糸、洗浄糸、延伸糸)に対して、フッ素系化合物、アミン系化合物などの機能性、例えば防汚性物質、抗菌性物質やキチン、キトサンなどの天然系物質を繊維に付与してもよい。
こうして得られるセルロースアセテートとアクリロニトリル系共重合ポリマーとからなるアクリロニトリル系複合繊維Aは、従来のセルロースアセテート繊維やセルロース繊維、アクリロニトリル系繊維にはない全く新しい風合を有するとともに、消臭性及び吸保湿性に優れたアクリロニトリル系複合繊維を得る。
また、得られたアクリロニトリル系複合繊維のセルロースアセテート成分を鹸化しセルロースにし、吸水性能を向上させるためアルカリ処理を施しても良い。アルカリ処理条件は、アクリロニトリル系共重合体は反応せず、セルロースアセテートのみが容易に反応する条件を選択する必要がある。アルカリとしては、水酸化ナトリウムや炭酸カルシウム等が用いられる。処理条件としては、アクリロニトリル系共重合体まで反応させたり、セルロースアセテートの反応が不十分である条件は、避けるべきで、好ましい条件としては、水酸化ナトリウム濃度0.5〜10重量%水溶液、より好ましくは1〜5重量%水溶液、温度30〜90℃、より好ましくは30〜60℃、時間5〜25分、より好ましくは8〜15分が用いられる。得られたアクリロニトリル系複合繊維Aは、アクリロニトリル系重合体及びセルロースより構成される。なお、上記アルカリ処理を三次元交絡構造体の状態で行っても良い。
本発明でいう三次元交絡構造体とは、後述するように、構造体を構成する繊維が互いに絡まり合ってなる構造体である。三次元交絡構造体は、補強材を含んだものでもよいし、補強材を用いることなく形成されたものであっても良い。本発明の三次元交絡構造体は、アクリロニトリル系複合繊維Aを30重量%以上含有していることが、風合いの点から必要である。
また、本発明に使用するアクリロニトリル系繊維Bを製造する際の紡糸原液の溶剤としては、アクリロニトリル系共重合ポリマーの溶剤であればどのようなものでも用いることができる。このような溶剤としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤、及び硝酸、ロダン塩水溶液、塩化亜鉛水溶液等の無機溶剤が挙げられる。また、紡糸原液を調整する方法についても特に限定はないが、例えば溶剤にポリマーを投入しスラリーを調製した後に溶解する方法等が挙げられる。
調整した紡糸原液は、湿式法、乾湿式法、乾式法等により紡糸されアクリロニトリル系繊維Bとされる。中でも湿式紡糸法が好ましく用いられ、本方法では紡糸ノズルより紡糸原液を凝固浴に吐出し凝固糸とする。凝固浴としては、一般に紡糸原液に用いた溶剤と水から成る混合液を用いる。凝固糸は引き続き、洗浄、延伸、乾燥、熱処理等の工程を経てアクリロニトリル系繊維となる。
次に、本発明の三次元交絡構造体の製造法について説明する。三次元交絡構造体の製造方法としては、従来から行われている湿式法または乾式法のどちらを用いてもよい。
例えば、アクリロニトリル系短繊維とアクリロニトリル系複合短繊維との抄造シートを作製する。シート化には、短繊維をカード機とウエッバーによりクロスウエブとしてもよいし、ランダムウエッバーでランダムウエブとしてもよく、この場合、25〜75mm程度の繊維長の繊維を用いることが一般的である。また、繊維長10mm以下のフロック状にカットし、通常の抄造プロセスにより抄造シートとしてもよい。また、フロック懸濁液を補強材上に流し、後述する高圧流体処理により補強材と交絡させても良い。補強材としては、編物、織物及び不織布であるが、その素材としては、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、セルロース系、セルロースアセテート系、木綿、羊毛、絹繊維等、各種の合成繊維、天然繊維が用いられる。編織布は通常は目の粗い低目付のものでよく、例えばラッセル編物等でもよい。不織布の場合、ポリオレフィンのスパンボンド、アクリル短繊維をニードルパンチングした不織布等も用いることができる。
抄造シートは、少量の接着剤あるいはポリビニルアルコール繊維のような繊維状接着剤を用いて抄造してもよい。
繊維シートの構成は、アクリロニトリル系複合繊維A及びアクリロニトリル系繊維Bの繊維直径は0.1μm以上20μm未満であり、A/Bの混率が100/0〜60/40であることが好ましい。アクリロニトリル系複合繊維A及びアクリロニトリル系繊維Bの繊維直径が0.1μmを下回ると三次元交絡構造体にした場合、毛羽の発生や耐摩耗性の低下を招き、アクリロニトリル系複合繊維A及びアクリロニトリル系繊維Bの繊維直径が20μm以上になると不織布シート中の繊維密度が下がり、風合いが低下する傾向にある。また、アクリロニトリル系複合繊維Aとアクリロニトリル系繊維Bの繊維直径は0.1μm以上20μm未満の範囲であれば、繊維直径が同じであっても異なっていても良い。好ましくは、異なった直径の繊維を用いた方が異繊度効果により風合いの優れる三次元交絡構造体が得られる。アクリロニトリル系複合繊維Aとアクリロニトリル系繊維Bの混率については、アクリロニトリル系繊維Bが40重量%を超えたり、アクリロニトリル系複合繊維Aが60重量%未満の場合は消臭能や保湿能といった機能性を低下させる。
得られた繊維シートを補強材に積層するが、好ましくは補強材が該繊維のシートに挟まれる様にするのがよい。補強材に繊維シートを積層した後、繊維シート側より、高圧液体噴射処理を行い補強材と繊維シートを形成している繊維とを交絡一体化する。
高圧液体噴射処理法は、次のごとき方法で行う。補強材と繊維のシートの積層体を実質的に表面平滑な支持部材上に、繊維シートを上にして載せ、10kg/cm2 以上の圧力で噴射される液体柱状流、液体扇形流、液体スリット流等を作用させることによって、補強材と繊維シートを形成している繊維との交絡一体化処理を行う。ここで、実質的に表面平滑な支持部材とは、支持部材の模様が得られる不織布シートに形成されることなく、しかも、噴射された液体が速やかに除かれるような物であれば、どのようなものでも用いることができる。その具体例としては30〜200メッシュの金網またはプラスチックネット、またはロール等を挙げることができる。
使用する液体は、処理される繊維の溶剤以外なら何でもよいが、通常は、水あるいは温水が適当である。噴射ノズルの孔径は、柱状流の場合0.06〜1.0mm、好ましくは0.1〜0.3mmの範囲である。噴射口と積層体の間の距離は0.5〜20cm程度の範囲が適当である。使用する液体の圧力は、10kg/cm2以上、好ましくは15kg/cm2以上で、交絡一体化処理は、通常数回行う。この場合、第1回処理よりも第2回処理以降の圧力を高めることが有効である。
繊維シートと補強材の積層及び高圧液体噴射による交絡一体化処理は、複数回繰り返してもよい。すなわち、繊維シートと補強材の積層、高圧液体噴射処理を行った後、先に繊維シートを積層した側にさらに繊維シートを積層し、高圧液体噴射処理を行ってもよいし、出来つつある三次元交絡複合体を裏返し、反対側に繊維シートを積層し、高圧液体噴射処理を行ってもよい。また、これらの操作を繰り返してもよい。
本発明のアクリロニトリル系複合繊維Aを主たる構成要素としてなる三次元交絡構造体は、従来のアクリル繊維および他の繊維を用いた三次元交絡構造体で風合いが改良されたものでは得られなかった均染性を解決したものである。さらに、後加工での機能面の付与を必要とせずに、消臭機能、吸保湿機能を持たせることが可能である。
かくして得られる三次元交絡構造体は、ポリウレタンのような弾性重合体を用いて、不織布シートあるいは人工皮革とすることができる。弾性重合体としては、ポリウレタン、合成ゴム、アクリル酸エステル重合体その他が用いられる。
本発明の三次元交絡構造体を用いて、割繊処理を施すことにより、ソフトな風合いかつ嵩高性に富んだ三次元交絡構造体にすることも可能である。
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(風合い評価)
三次元交絡構造体の触手によりドライ感を官能試験により評価した。
(消臭率)
消臭評価の臭気成分として、イソ吉草酸、酢酸、アンモニア、ノネナール(C6H19O)を選定した。
気温20℃、湿度65%RH環境下に24時間静置した試料1gを、イソ吉草酸あるいは酢酸のガス濃度が50ppmになるように調製した370mlの三角フラスコ中に封入し、1時間放置後も検知管(北川式ガス検知器)にてフラスコ内のガス濃度を測定した。対象として、試料が未封入である以外は同様の測定を行い、1時間放置後のフラスコ内のガス濃度を測定した。
消臭率は、対象ガス濃度に対する試料封入のガス濃度の割合から算出した。消臭評価の臭気成分がアンモニアの場合、上記の評価方法においてアンモニアガス濃度が110ppmになるように調製する以外は同様に評価した。
臭気評価の臭気成分がノネナールの場合、気温20℃、湿度65%RH環境下に24時間静置した試料1gを、ノネナールのガス濃度が30ppmになるように調製した125mlのガラス製バイアル瓶に封入し、2時間放置後にガスクロマトグラフにてノネナールのガス濃度を測定した。対象として、試料が未封入である以外は同様の測定を行い、ガスクロマトグラフのピーク面積から相対消臭率を算出した。
(吸湿率)
試料約5gを、気温40℃、湿度90%RH環境下に24時間放置後、採取し、その質量及び絶乾質量を測定し、次式にて吸湿率Aa(%)を算出した。同様に、気温20℃、湿度65%RH環境下以外は評価方法が同じである吸湿率Abも次式にて算出した。
吸湿率(Aa又はAb)=(採取時の質量−絶乾質量)/絶乾質量×100
(アルカリ減量率)
アルカリ鹸化処理前の乾燥試料重量(Wb)、アルカリ鹸化処理後の乾燥試料重量(Wa)をそれぞれ測定し、次式で算出した。
減量率(%)=〔(Wb−Wa)/Wb〕×100
「実施例1〜8及び比較例1〜3」
平均酢化度55.2%のセルロースジアセテート(DA)と水系懸濁重合法によって得たアクリロニトリル/酢酸ビニル=92/8(重量比)の組成を有する分子量120,000のアクリロニトリル系共重合ポリマー(AN)の固形分比率を表1の割合として、DMACに溶解し重量比で(DA+AN)/DMAC=25/75の紡糸原液を調製し、単繊維繊度0.1dtex(繊維直径:3.2μm)〜3dtex(繊維直径:18.2μm)の表1のアクリロニトリル系複合繊維Aのトウを得、それぞれ3mmにカットした。
水系懸濁重合法によって得たアクリロニトリル/酢酸ビニル=92/8(重量比)の組成を有する分子量120,000のアクリロニトリル系共重合ポリマーを、ジメチルアセトアミド(以下、DMACと略記する。)に溶解し重量比でポリマー/DMAC=25/75の紡糸原液を調製し、単繊維繊度0.1dtex(繊維直径:3.4μm)〜3dtex(繊維直径:18.5μm)の表1のアクリロニトリル系繊維Bのトウを得、それぞれ3mmにカットした。
表1に示す重量比で混合し、目付20g/m2 の抄造シートを作製した。なお、シート作製に当たりバインダーとしてポリビニルアルコール系繊維を20重量%使用した。
沸水収縮率32%のポリエチレンテレフタレートフィラメントからなる目付40g/m2の編物(補強材)上に、上記抄造シートを載置し、これを80メッシュの金網上に載置して、繊維層側から、孔径0.125mmのノズルを用いて、20kg/cm2、30kg/cm2、50kg/cm2の圧力の順に3回高圧噴射水流処理を行った。その後このシートを反転し、更に上記抄造シートを載置し抄造シート計40g/m2とし、同様に20kg/cm2、30kg/cm2、50kg/cmの圧力の順に3回高圧噴射水流処理を行った。更に上記抄造シートを載置し抄造シート計60g/m2として、同じ高圧噴射水流処理を繰り返した。この段階でポリビニルアルコール系繊維が溶解した。
次いで、作製したシートを沸水中で2分間処理したところ、該シートは30%収縮し、乾燥させ三次元交絡構造体を得た。得られた三次元交絡構造体の風合いを表1に示す。なお、得られた三次元交絡構造体中のアクリロニトリル系複合繊維Aのセルロースジアセテート(DA)とアクリロニトリル系共重合ポリマー(AN)の比率は、繊維を製造する際の投入比率とほぼ同じであった。また、消臭性能、吸湿性能についてそれぞれ表2、表3に示した。
次いで得られた三次元交絡構造体を下記条件でアルカリ鹸化処理を施し、アルカリ減量率及び吸湿性能について表4に示した。
アルカリ水溶液:水酸化ナトリウム1重量%水溶液
処理温度 :60℃
処理時間 :10分
浴比 :1:100
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【発明の効果】
本発明の、セルロースアセテート及び/またはセルロース20〜40重量%、アクリロニトリル系共重合ポリマー60〜80重量%からなるアクリロニトリル系複合繊維Aとアクリロニトリル系共重合ポリマーから構成されたアクリロニトリル系繊維Bから構成される三次元交絡構造体は、アクリロニトリル系繊維をベースとしているので発色鮮明性に優れている上に、従来のアクリル繊維および他の繊維を用いた三次元交絡構造体で風合いが改良されたものでは得られなかった均染性を解決した。さらに、後加工での機能面の付与を必要とせずに、消臭機能、吸保湿機能を持たせることが可能である。また、適切な繊度の組み合わせや、適切な繊維混合比率の組み合わせにより獣毛調等様々な風合いニーズに対応できる。この三次元交絡構造体を用いた不織布及び人工皮革における用途の広がりに大きく貢献するものである。
本発明は、セルロースアセテート及び/またはセルロースとアクリロニトリル系共重合ポリマーとからなるアクリロニトリル系複合繊維Aとアクリロニトリル系共重合ポリマーから構成されたアクリロニトリル系繊維Bを用いることにより、ドライな風合いと均染性優れ、さらにアクリロニトリル系複合繊維Aの持つ消臭、吸湿等の機能が付与された合成皮革や不織布として有用な三次元交絡構造体に関する。
【従来の技術】
合成皮革は、風合いを天然皮革に似せた製品で、その歴史は古く19世紀中頃にまで遡ることができるが、近年の合成皮革としては、編織布や、不織布等のシート地に多孔質被覆層や、非多孔質被覆層を形成させたものが知られており、その製造方法は数多く提案されている。その中でも特に0.6dtex以下の極細繊維を用いると天然皮革に類似した、優れた製品が得られるとされている。
しかしながら、従来の合成皮革が求めたものは高級感のあるスエード調のものが主体であり、嗜好や要求が非常に多様化している現在のニーズには対応しきれていないものがある。特に、汎用感のあるワイルドな風合いを持ったものについては不十分であり、新規な風合いを有する合成皮革の出現が求められている。
特開2000−248471号公報に、アクリル繊維および他の繊維を用いた合成皮革が開示されているが、風合いは改良されたものの繊維の混合斑に起因するために均染性を満足するに至らなかった。
また、機能面の付与、特に消臭機能、吸保湿機能を有する新素材開発の要求が強い。一般に不織布の機能付与は後加工に多く見られるが、耐久性が悪く、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等のバインダーが必要となり繊維そのものの風合いが損なわれると言った問題があった。
【先行技術文献】
特開2000−248471号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解消することを目的として、均染性に優れ、しかも、従来のアクリロニトリル系繊維Bのみを用いた三次元交絡構造体とは異なる新しい風合いを有すると共に、機能性、特に消臭機能と吸保湿機能に優れたアクリロニトリル系複合繊維Aを用いた三次元交絡構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、セルロースアセテート及び/またはセルロース20〜40重量%並びにアクリロニトリル系共重合ポリマー60〜80重量%からなるアクリロニトリル系複合繊維Aを30重量%以上含有してなる三次元交絡構造体にある。
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明者らは、上記問題点を解決する目的で、新規な風合い及び機能性付与のため鋭意検討した結果、アクリロニトリル系複合繊維を用いることにより、均染性を向上させ、かつ新規な風合い特にドライ感に優れる風合いと消臭機能及び吸保湿機能を兼ね備えた三次元交絡構造体を提供するに至った。
本発明に使用するアクリロニトリル系共重合ポリマーは、通常のアクリロニトリル系繊維を製造するのに使用されるものであれば特に限定されないが、モノマー構成としてアクリロニトリルを50〜95重量%含有していることが好ましい。アクリロニトリル系繊維を構成しているアクリロニトリル系共重合ポリマー中のアクリロニトリルの含有量が50重量%未満では、原綿が本来のアクリル繊維としての特性を失い、本発明の目的を達成することが困難である。また、95重量%を超えると繊維の風合いが硬くなる上に、染色性も低下し好ましくない。
本発明に用いられるアクリロニトリル系共重合ポリマーの共重合成分は、通常のアクリル繊維を構成する共重合モノマーであれば特に限定されないが、例えば以下のモノマーが挙げられる。すなわち、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル等に代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等に代表されるメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等の不飽和単量体等である。さらに、染色性改良等の目的で、p−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩等を共重合してもよい。これらの共重合モノマーは1種または1種以上が用いられ、その使用割合はアクリロニトリル系共重合ポリマー中8〜50重量%である。
本発明で使用するアクリロニトリル系複合繊維A及びアクリロニトリル系繊維Bを構成するアクリロニトリル系共重合ポリマーの分子量は特に限定されないが、分子量10万以上100万以下のものが望ましい。分子量が10万未満では紡糸性が低下すると同時に原綿の糸質も悪化する傾向にある。反対に、分子量100万を超えるものは紡糸原液の最適粘度を与えるポリマー濃度が低くなり、生産性が低下する傾向にある。
本発明の三次元交絡構造物を構成するアクリロニトリル系複合繊維Aを構成するセルロースアセテートとしては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートを挙げることができる。本発明におけるセルロースジアセテートは、平均酢化度が48.8%以上56.2%未満であり、セルローストリアセテートは平均酢化度が56.2%以上62.5%未満である。なお、本発明で言うセルロースは、セルロースの分子構造C6H7O2(OH)3を含有する高分子であればよく、ヒドロキシル基の一部に化学修飾を加えたセルロース誘導体であってもよい。
本発明のアクリロニトリル系複合繊維Aを構成するセルロースアセテート及び/又はセルロースは、20〜40重量%であることがドライ感のある風合いを得るために必要であり、更に消臭能及び保湿能にも優れた機能も発揮することができ、好ましくは25〜30重量%である。20重量%未満では、得られる繊維の風合いはアクリロニトリル系繊維の風合いに似たものとなり、得られる三次元交絡構造体もアクリロニトリル系繊維から構成されるものと類似のものでありドライ感は消失する。セルロースアセテート及び/又はセルロースが40重量%を超えると、紡糸困難となるため、三次元交絡構造体を得ることが不可能となる。また、アクリロニトリル系複合繊維Aを構成するアクリロニトリル系共重合ポリマーは、60〜80重量%であることが必要であり、好ましくは70〜75重量%である。60重量%未満では、紡糸困難となるため、三次元交絡構造体を得ること不可能となる。80重量%を超えると、得られる繊維の風合いはアクリロニトリル系繊維の風合いに似たものとなり、得られる三次元交絡複合体もアクリロニトリル系繊維からなるものの風合いに似たものとなり、ドライ感が消失する。
本発明に用いるアクリロニトリル系複合繊維Aは、例えば以下のようにして製造できる。セルロースアセテート、アクリロニトリル系共重合ポリマー及び溶媒からなる紡糸原液を調製する。溶媒はセルロースアセテートとアクリロニトリル系共重合ポリマーとを同時に溶解する溶媒であれば特に限定されるものではなく、無機酸系、無機塩水溶液、有機溶剤のいずれでもよい。このような溶媒として、例えば、硝酸(水溶液)、塩化亜鉛水溶液、ロダン塩水溶液、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレンカーボネート、y−ブチロラクトン、アセトン等が挙げられる。
紡糸原液を調製する方法は、セルロースアセテートとアクリロニトリル系共重合ポリマーと溶媒とを室温または必要に応じて加温あるいは冷却して同時に攪拌混合して調製することが可能であるが、セルロースアセテートとアクリロニトリル系共重合ポリマーとを別々に溶媒に溶解した後、混合して調製することも可能である。
調製した紡糸原液は溶剤紡糸のうち湿式紡糸法が紡糸原液の凝固速度を制御しやすい点から好ましい。湿式紡糸法以外の乾湿式紡糸法、乾式紡糸法は凝固が緩慢であるため、制御が困難となる。紡糸原液は、通常の紡糸口金を用いて繊維形態に賦型された未延伸糸とし、これを延伸倍率3〜7倍に延伸する。延伸倍率が3倍未満では、得られる繊維の機械的強度が低下し、紡績性、製品の耐久性が低下する。延伸倍率が7倍を超えると、糸切れ等の工程トラブルが生じ易くなる。得られた延伸糸は、常法により油剤処理、乾燥緩和処理等を施す。なお、本製造方法においては、乾燥緻密化する前の糸条(凝固糸、洗浄糸、延伸糸)に対して、フッ素系化合物、アミン系化合物などの機能性、例えば防汚性物質、抗菌性物質やキチン、キトサンなどの天然系物質を繊維に付与してもよい。
こうして得られるセルロースアセテートとアクリロニトリル系共重合ポリマーとからなるアクリロニトリル系複合繊維Aは、従来のセルロースアセテート繊維やセルロース繊維、アクリロニトリル系繊維にはない全く新しい風合を有するとともに、消臭性及び吸保湿性に優れたアクリロニトリル系複合繊維を得る。
また、得られたアクリロニトリル系複合繊維のセルロースアセテート成分を鹸化しセルロースにし、吸水性能を向上させるためアルカリ処理を施しても良い。アルカリ処理条件は、アクリロニトリル系共重合体は反応せず、セルロースアセテートのみが容易に反応する条件を選択する必要がある。アルカリとしては、水酸化ナトリウムや炭酸カルシウム等が用いられる。処理条件としては、アクリロニトリル系共重合体まで反応させたり、セルロースアセテートの反応が不十分である条件は、避けるべきで、好ましい条件としては、水酸化ナトリウム濃度0.5〜10重量%水溶液、より好ましくは1〜5重量%水溶液、温度30〜90℃、より好ましくは30〜60℃、時間5〜25分、より好ましくは8〜15分が用いられる。得られたアクリロニトリル系複合繊維Aは、アクリロニトリル系重合体及びセルロースより構成される。なお、上記アルカリ処理を三次元交絡構造体の状態で行っても良い。
本発明でいう三次元交絡構造体とは、後述するように、構造体を構成する繊維が互いに絡まり合ってなる構造体である。三次元交絡構造体は、補強材を含んだものでもよいし、補強材を用いることなく形成されたものであっても良い。本発明の三次元交絡構造体は、アクリロニトリル系複合繊維Aを30重量%以上含有していることが、風合いの点から必要である。
また、本発明に使用するアクリロニトリル系繊維Bを製造する際の紡糸原液の溶剤としては、アクリロニトリル系共重合ポリマーの溶剤であればどのようなものでも用いることができる。このような溶剤としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤、及び硝酸、ロダン塩水溶液、塩化亜鉛水溶液等の無機溶剤が挙げられる。また、紡糸原液を調整する方法についても特に限定はないが、例えば溶剤にポリマーを投入しスラリーを調製した後に溶解する方法等が挙げられる。
調整した紡糸原液は、湿式法、乾湿式法、乾式法等により紡糸されアクリロニトリル系繊維Bとされる。中でも湿式紡糸法が好ましく用いられ、本方法では紡糸ノズルより紡糸原液を凝固浴に吐出し凝固糸とする。凝固浴としては、一般に紡糸原液に用いた溶剤と水から成る混合液を用いる。凝固糸は引き続き、洗浄、延伸、乾燥、熱処理等の工程を経てアクリロニトリル系繊維となる。
次に、本発明の三次元交絡構造体の製造法について説明する。三次元交絡構造体の製造方法としては、従来から行われている湿式法または乾式法のどちらを用いてもよい。
例えば、アクリロニトリル系短繊維とアクリロニトリル系複合短繊維との抄造シートを作製する。シート化には、短繊維をカード機とウエッバーによりクロスウエブとしてもよいし、ランダムウエッバーでランダムウエブとしてもよく、この場合、25〜75mm程度の繊維長の繊維を用いることが一般的である。また、繊維長10mm以下のフロック状にカットし、通常の抄造プロセスにより抄造シートとしてもよい。また、フロック懸濁液を補強材上に流し、後述する高圧流体処理により補強材と交絡させても良い。補強材としては、編物、織物及び不織布であるが、その素材としては、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、セルロース系、セルロースアセテート系、木綿、羊毛、絹繊維等、各種の合成繊維、天然繊維が用いられる。編織布は通常は目の粗い低目付のものでよく、例えばラッセル編物等でもよい。不織布の場合、ポリオレフィンのスパンボンド、アクリル短繊維をニードルパンチングした不織布等も用いることができる。
抄造シートは、少量の接着剤あるいはポリビニルアルコール繊維のような繊維状接着剤を用いて抄造してもよい。
繊維シートの構成は、アクリロニトリル系複合繊維A及びアクリロニトリル系繊維Bの繊維直径は0.1μm以上20μm未満であり、A/Bの混率が100/0〜60/40であることが好ましい。アクリロニトリル系複合繊維A及びアクリロニトリル系繊維Bの繊維直径が0.1μmを下回ると三次元交絡構造体にした場合、毛羽の発生や耐摩耗性の低下を招き、アクリロニトリル系複合繊維A及びアクリロニトリル系繊維Bの繊維直径が20μm以上になると不織布シート中の繊維密度が下がり、風合いが低下する傾向にある。また、アクリロニトリル系複合繊維Aとアクリロニトリル系繊維Bの繊維直径は0.1μm以上20μm未満の範囲であれば、繊維直径が同じであっても異なっていても良い。好ましくは、異なった直径の繊維を用いた方が異繊度効果により風合いの優れる三次元交絡構造体が得られる。アクリロニトリル系複合繊維Aとアクリロニトリル系繊維Bの混率については、アクリロニトリル系繊維Bが40重量%を超えたり、アクリロニトリル系複合繊維Aが60重量%未満の場合は消臭能や保湿能といった機能性を低下させる。
得られた繊維シートを補強材に積層するが、好ましくは補強材が該繊維のシートに挟まれる様にするのがよい。補強材に繊維シートを積層した後、繊維シート側より、高圧液体噴射処理を行い補強材と繊維シートを形成している繊維とを交絡一体化する。
高圧液体噴射処理法は、次のごとき方法で行う。補強材と繊維のシートの積層体を実質的に表面平滑な支持部材上に、繊維シートを上にして載せ、10kg/cm2 以上の圧力で噴射される液体柱状流、液体扇形流、液体スリット流等を作用させることによって、補強材と繊維シートを形成している繊維との交絡一体化処理を行う。ここで、実質的に表面平滑な支持部材とは、支持部材の模様が得られる不織布シートに形成されることなく、しかも、噴射された液体が速やかに除かれるような物であれば、どのようなものでも用いることができる。その具体例としては30〜200メッシュの金網またはプラスチックネット、またはロール等を挙げることができる。
使用する液体は、処理される繊維の溶剤以外なら何でもよいが、通常は、水あるいは温水が適当である。噴射ノズルの孔径は、柱状流の場合0.06〜1.0mm、好ましくは0.1〜0.3mmの範囲である。噴射口と積層体の間の距離は0.5〜20cm程度の範囲が適当である。使用する液体の圧力は、10kg/cm2以上、好ましくは15kg/cm2以上で、交絡一体化処理は、通常数回行う。この場合、第1回処理よりも第2回処理以降の圧力を高めることが有効である。
繊維シートと補強材の積層及び高圧液体噴射による交絡一体化処理は、複数回繰り返してもよい。すなわち、繊維シートと補強材の積層、高圧液体噴射処理を行った後、先に繊維シートを積層した側にさらに繊維シートを積層し、高圧液体噴射処理を行ってもよいし、出来つつある三次元交絡複合体を裏返し、反対側に繊維シートを積層し、高圧液体噴射処理を行ってもよい。また、これらの操作を繰り返してもよい。
本発明のアクリロニトリル系複合繊維Aを主たる構成要素としてなる三次元交絡構造体は、従来のアクリル繊維および他の繊維を用いた三次元交絡構造体で風合いが改良されたものでは得られなかった均染性を解決したものである。さらに、後加工での機能面の付与を必要とせずに、消臭機能、吸保湿機能を持たせることが可能である。
かくして得られる三次元交絡構造体は、ポリウレタンのような弾性重合体を用いて、不織布シートあるいは人工皮革とすることができる。弾性重合体としては、ポリウレタン、合成ゴム、アクリル酸エステル重合体その他が用いられる。
本発明の三次元交絡構造体を用いて、割繊処理を施すことにより、ソフトな風合いかつ嵩高性に富んだ三次元交絡構造体にすることも可能である。
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(風合い評価)
三次元交絡構造体の触手によりドライ感を官能試験により評価した。
(消臭率)
消臭評価の臭気成分として、イソ吉草酸、酢酸、アンモニア、ノネナール(C6H19O)を選定した。
気温20℃、湿度65%RH環境下に24時間静置した試料1gを、イソ吉草酸あるいは酢酸のガス濃度が50ppmになるように調製した370mlの三角フラスコ中に封入し、1時間放置後も検知管(北川式ガス検知器)にてフラスコ内のガス濃度を測定した。対象として、試料が未封入である以外は同様の測定を行い、1時間放置後のフラスコ内のガス濃度を測定した。
消臭率は、対象ガス濃度に対する試料封入のガス濃度の割合から算出した。消臭評価の臭気成分がアンモニアの場合、上記の評価方法においてアンモニアガス濃度が110ppmになるように調製する以外は同様に評価した。
臭気評価の臭気成分がノネナールの場合、気温20℃、湿度65%RH環境下に24時間静置した試料1gを、ノネナールのガス濃度が30ppmになるように調製した125mlのガラス製バイアル瓶に封入し、2時間放置後にガスクロマトグラフにてノネナールのガス濃度を測定した。対象として、試料が未封入である以外は同様の測定を行い、ガスクロマトグラフのピーク面積から相対消臭率を算出した。
(吸湿率)
試料約5gを、気温40℃、湿度90%RH環境下に24時間放置後、採取し、その質量及び絶乾質量を測定し、次式にて吸湿率Aa(%)を算出した。同様に、気温20℃、湿度65%RH環境下以外は評価方法が同じである吸湿率Abも次式にて算出した。
吸湿率(Aa又はAb)=(採取時の質量−絶乾質量)/絶乾質量×100
(アルカリ減量率)
アルカリ鹸化処理前の乾燥試料重量(Wb)、アルカリ鹸化処理後の乾燥試料重量(Wa)をそれぞれ測定し、次式で算出した。
減量率(%)=〔(Wb−Wa)/Wb〕×100
「実施例1〜8及び比較例1〜3」
平均酢化度55.2%のセルロースジアセテート(DA)と水系懸濁重合法によって得たアクリロニトリル/酢酸ビニル=92/8(重量比)の組成を有する分子量120,000のアクリロニトリル系共重合ポリマー(AN)の固形分比率を表1の割合として、DMACに溶解し重量比で(DA+AN)/DMAC=25/75の紡糸原液を調製し、単繊維繊度0.1dtex(繊維直径:3.2μm)〜3dtex(繊維直径:18.2μm)の表1のアクリロニトリル系複合繊維Aのトウを得、それぞれ3mmにカットした。
水系懸濁重合法によって得たアクリロニトリル/酢酸ビニル=92/8(重量比)の組成を有する分子量120,000のアクリロニトリル系共重合ポリマーを、ジメチルアセトアミド(以下、DMACと略記する。)に溶解し重量比でポリマー/DMAC=25/75の紡糸原液を調製し、単繊維繊度0.1dtex(繊維直径:3.4μm)〜3dtex(繊維直径:18.5μm)の表1のアクリロニトリル系繊維Bのトウを得、それぞれ3mmにカットした。
表1に示す重量比で混合し、目付20g/m2 の抄造シートを作製した。なお、シート作製に当たりバインダーとしてポリビニルアルコール系繊維を20重量%使用した。
沸水収縮率32%のポリエチレンテレフタレートフィラメントからなる目付40g/m2の編物(補強材)上に、上記抄造シートを載置し、これを80メッシュの金網上に載置して、繊維層側から、孔径0.125mmのノズルを用いて、20kg/cm2、30kg/cm2、50kg/cm2の圧力の順に3回高圧噴射水流処理を行った。その後このシートを反転し、更に上記抄造シートを載置し抄造シート計40g/m2とし、同様に20kg/cm2、30kg/cm2、50kg/cmの圧力の順に3回高圧噴射水流処理を行った。更に上記抄造シートを載置し抄造シート計60g/m2として、同じ高圧噴射水流処理を繰り返した。この段階でポリビニルアルコール系繊維が溶解した。
次いで、作製したシートを沸水中で2分間処理したところ、該シートは30%収縮し、乾燥させ三次元交絡構造体を得た。得られた三次元交絡構造体の風合いを表1に示す。なお、得られた三次元交絡構造体中のアクリロニトリル系複合繊維Aのセルロースジアセテート(DA)とアクリロニトリル系共重合ポリマー(AN)の比率は、繊維を製造する際の投入比率とほぼ同じであった。また、消臭性能、吸湿性能についてそれぞれ表2、表3に示した。
次いで得られた三次元交絡構造体を下記条件でアルカリ鹸化処理を施し、アルカリ減量率及び吸湿性能について表4に示した。
アルカリ水溶液:水酸化ナトリウム1重量%水溶液
処理温度 :60℃
処理時間 :10分
浴比 :1:100
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【発明の効果】
本発明の、セルロースアセテート及び/またはセルロース20〜40重量%、アクリロニトリル系共重合ポリマー60〜80重量%からなるアクリロニトリル系複合繊維Aとアクリロニトリル系共重合ポリマーから構成されたアクリロニトリル系繊維Bから構成される三次元交絡構造体は、アクリロニトリル系繊維をベースとしているので発色鮮明性に優れている上に、従来のアクリル繊維および他の繊維を用いた三次元交絡構造体で風合いが改良されたものでは得られなかった均染性を解決した。さらに、後加工での機能面の付与を必要とせずに、消臭機能、吸保湿機能を持たせることが可能である。また、適切な繊度の組み合わせや、適切な繊維混合比率の組み合わせにより獣毛調等様々な風合いニーズに対応できる。この三次元交絡構造体を用いた不織布及び人工皮革における用途の広がりに大きく貢献するものである。
Claims (3)
- セルロースアセテート及び/またはセルロース20〜40重量%並びにアクリロニトリル系共重合ポリマー60〜80重量%からなるアクリロニトリル系複合繊維Aを30重量%以上含有してなる三次元交絡構造体。
- 前記アクリロニトリル系複合繊維Aとアクリロニトリル系共重合ポリマーから構成されたアクリロニトリル系繊維Bを含有して構成される請求項1記載の三次元交絡構造体。
- 前記アクリロニトリル系複合繊維A及びアクリロニトリル系繊維Bの繊維直径が、0.1μm以上20μm未満であり、前記アクリロニトリル系複合繊維A及び前記アクリロニトリル系繊維Bの混率が重量比でA/Bが100/0〜60/40であることを特徴とする請求項1又は2記載の三次元交絡構造体。
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JP2006087910A (ja) * | 2004-08-24 | 2006-04-06 | Mitsubishi Paper Mills Ltd | ワイパー用不織布 |
JP2012102454A (ja) * | 2011-11-28 | 2012-05-31 | Mitsubishi Rayon Co Ltd | アクリロニトリル系重合体とセルロース系重合体が均一に混合された繊維を含有する不織布。 |
-
2002
- 2002-10-09 JP JP2002296488A patent/JP2004131864A/ja active Pending
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