JP2004131037A - 車両用フード跳ね上げ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エアバッグなどに比較して簡素な構造により優れた歩行者安全性を奏する車両用フード跳ね上げ装置をを提供すること。
【解決手段】フード跳ね上げ部2は、歩行者が車両前端に衝突する際に跳ね上げ時にフード2の前端部22をその後端部以上、跳ね上げられる。これにより、頭部速度を低減して頭部衝撃を大幅に低減することができる。
【選択図】図2
【解決手段】フード跳ね上げ部2は、歩行者が車両前端に衝突する際に跳ね上げ時にフード2の前端部22をその後端部以上、跳ね上げられる。これにより、頭部速度を低減して頭部衝撃を大幅に低減することができる。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝突時の歩行者保護が可能な車両用フード跳ね上げ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、歩行者との衝突時に車両のフードを跳ね上げることにより、このフードを歩行者の上半身との衝突により変形させて衝撃吸収を行う車両用フード跳ね上げ装置がたとえば下記の特許文献1、2に提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−119823号公報
【特許文献2】特開平10−119823号公報
【0004】
これらの特許文献1は、たとえば図5に示すように歩行者との衝突時にフードの前端部を支点としてフードの後端部を持ち上げるフード跳ね上げ構造を開示する。この構造によれば、フードの後端部が歩行者と衝突した際に跳ね上げられるために、歩行者の頭部の衝突によるフードの後端部の塑性変形量を大きく確保することができ、頭部衝撃を緩和することができる。つまり、上記した特許文献に記載される車両用フード跳ね上げ装置は、フードの後端部を跳ね上げない場合に比較して頭部衝突によるフードの後端部の塑性変形量を大きく確保することができ、その分だけ通常時のフードの後端部の高さを低くすることができ、車両走行抵抗低減、車両デザイン性の向上に有利である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した特許文献に記載されるフードの後端部跳ね上げ式の車両用フード跳ね上げ装置は、たとえば歩行者保護用のエアバッグに比較すれば、なお歩行者、特にその頭部に与える衝突衝撃が大きいという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、エアバッグなどに比較して簡素な構造により優れた歩行者安全性を奏する車両用フード跳ね上げ装置を提供することを、その目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の車両用フード跳ね上げ装置は、車両前部の上面に配置されて車両前部上面を覆うフードと、車両前端面が歩行者に衝突する際に前記フードを上方に跳ね上げるフード跳ね上げ部とを備える車両用フード跳ね上げ装置において、
前記フード跳ね上げ部は、前記跳ね上げ時に前記フードの前端部を少なくとも跳ね上げ、前記跳ね上げ時の前記フードの前端部のリフト量は、前記フードの後端部のリフト量よりも大きく設定されていることを特徴としている。これにより、従来のフード後端部跳ね上げ式の車両用フード跳ね上げ装置に比較して格段に歩行者保護性特にその頭部保護性を向上でき、かつ、たとえば歩行者保護用のエアバッグに比較して構造を簡素化することが可能な装置を実現することができる。
【0008】
以下、車両の前端が歩行者に衝突する場合を例として本発明の作用効果を更に詳しく説明する。
【0009】
車両、特に乗用車の場合、その前端の高さは通常600〜800mm程度に設定されている。このため、歩行者の上半身はこの車両の前端を中心(支点)として後方すなわちフードの後端部側に回動して倒れ込む。
【0010】
歩行者保護において最も重要であるその頭部は、回動する上半身のうち、この支点から最も遠い位置にあり、その回動時の周速は上半身のなかで最も大きい。
【0011】
更に詳しく説明すると、歩行者の上半身を所定位置の点状の質量にモデル化すると、上半身に作用する衝突衝撃力Fはこの点状質量Mと、この点状質量Mに作用する加速度aとの積と表すことができ、この加速度aに対応する角加速度xを積分してこの点状質量Mの角速度yが規定される。支点から点状質量までの距離をr1、支点から頭部までの距離をr2、両距離の比をzとすれば、頭部の角速度はy・zとみなすことができる。フードの後端部に衝突する際の歩行者の頭部衝撃は、この衝突直前における頭部角速度の自乗値に比例する。
【0012】
頭部角速度を低減すれば頭部衝撃を大幅に緩和することができ、頭部の速度vは上記角速度yと上記距離r2との積である。つまり、歩行者衝突時によりその上半身が回動する場合における頭部の速度は距離r2の低減により減少するが、頭部の運動エネルギーはこの速度の自乗に比例するため頭部の速度低減は大幅な頭部運動エネルギーの減少を実現することがわかる。
【0013】
つまり、上半身の角速度が等しくても、支点位置を高くして支点から頭部までの距離(頭部半径r2)を短縮すれば、頭部運動エネルギーを低減して頭部衝突衝撃を低減することができる。
【0014】
実験結果を図1に示す。図1は、平均的日本人成人男性に相当するモデル人形を用いた実験結果であって、実線はフードの前端部の跳ね上げを行わない場合におけるフード衝突時の頭部速度、破線はフードの前端部の跳ね上げを行う場合におけるフード衝突時の頭部速度を示す。白丸はフードの後端部のみ跳ね上げる場合(フードの後端部のリフト量100mm)、黒丸はフードの前端部及び後端部を跳ね上げない場合、黒角はフードの後端部も前端部も跳ね上げる場合(フードの前端部のリフト量100mm、フードの後端部のリフト量100mm)、白角はフードの後端部の跳ね上げ量をフードの前端部のそれよりも減らした場合(フードの前端部のリフト量100mm、フードの後端部のリフト量50mm)である。なお、フードの前端部の地上高さは跳ね上げ前に置いてすべて700mmとし、衝突速度を40km/hとした。
【0015】
図1から、フードの前端部の跳ね上げを行うことにより、頭部速度を大幅に低減すること、その結果、頭部速度の自乗に比例する頭部運動エネルギーは更に大幅に低減でき、この頭部運動エネルギーに比例する頭部衝撃を従来より格段に低減できることがわかった。
【0016】
図1において、横軸の時点0は歩行者が車両の前端に衝突した時点であり、その後、頭部速度(車両に対する相対速度)は増加し、その後、上半身の回動に対する抵抗により減少していく。フードの後端部を跳ね上げると、フード衝突時の頭部速度は高くなるが、フードの塑性変形による頭部速度の段階的減少効果が生じるため、フードの後端部を跳ね上げない場合より頭部衝撃は小さくなる。
【0017】
図1はフードの前端部の跳ね上げ量(リフト量)を100mm、跳ね上げ前の車両の前端(フードの前端)の高さを700mmとしたが、前者を20〜300mm、後者をー100〜+200の範囲で変更した場合でも同様の効果を確認した。ただし、跳ね上げ後のフードの前端部の地上高さは700〜1000mmの範囲とすることが好ましく、これより小さいと頭部速度の低下を望めず、これより大きいと歩行者を前にはねとばす効果が大きくなってしまう。また、車速は20〜80km/hの範囲で図1と同様の結果となることがわかった。
【0018】
請求項1記載の発明の好適態様1において、前記跳ね上げ後の前記フードの前端部の地上高さは、700〜1000mmに設定される。これにより、好適な頭部速度低減効果が得られる。
【0019】
請求項1記載の発明の好適態様2において、前記フード跳ね上げ部は、前記フードの後端部を回動中心として前記フードを回動させる。これにより、フードの前端部を跳ね上げるための機構を簡素化し、また同一の回動機構を利用してフード下のエンジンルームを点検するためにフードの前端部をリフトすることができる。
【0020】
請求項1記載の発明の好適態様3において、前記フード跳ね上げ部は、前記フード全体を上方へ持ち上げる。これにより、フードの前端部も後端部も跳ね上げることができるので、頭部速度低減効果とフードの後端部の変形による頭部運動エネルギー吸収効果とを同時に実現することができる。
【0021】
請求項1記載の発明の好適態様4において、前記フードの前端部は、前記車両前端部の上部角部に沿いつつ下方へ湾曲乃至屈曲している。これにより、フードの前端部を跳ね上げるにもかかわらず、フードの前端部が歩行者に食い込むのを良好に防止することができる。
【0022】
請求項1記載の発明の好適態様5において、前記歩行者の体格に関する情報を検出する歩行者体格検出要素と、前記情報に基づいて前記歩行者の体格が大きいとみなす場合に小さいとみなす場合よりも前記フードの前端部のリフト量を増大する。
【0023】
これにより、歩行者が子供であっても大人であっても、上記回動支点が低すぎることも、高すぎることもないようにすることができる。なお、歩行者の体格検出には、CCDエリアセンサ、レーザ光や電磁波を用いたレーダ装置、高周波静電容量センサなどの非接触式センサを用いることができる他、衝突時の衝撃力を検出し、この衝撃力を車速で割って対象質量を求め、この対象質量の大小により歩行者の体格を推定することもできる。
【0024】
フード跳ね上げ部としては、空気シリンダ、圧縮ばねの開放の他、火薬、などの種々の物理力を当然に利用することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両用フード跳ね上げ装置の好適な実施形態を具体的に説明する。
【0026】
【実施態様1】
1は車体、2は車体前部の上面に配置されてエンジンルームを覆う車両前部上面を覆うフード、3はフードを跳ね上げるエアシリンダ(フード跳ね上げ部)、4は歩行者衝突時にエアシリンダを駆動してフード2を跳ね上げる制御部、5は歩行者衝突を検出する歩行者衝突検出センサである。
【0027】
歩行者衝突検出センサ5が歩行者の衝突を検出すると、検出信号を制御部4に送り、制御部4はエアシリンダ3を駆動してフード2を跳ね上げる。
【0028】
21はフード2の支点であり、フード2は支点21を中心として上方に回動する。フード2の前端部22は下方に垂下しており、フード2の前端部22が跳ね上げられた後でも歩行者に食い込まないようになっている。このようにすれば、上述した歩行者の頭部速度低減によりその衝突衝撃を大幅に低減することができる。また、フードの後端部の変形による衝撃吸収効果を奏することができる。
【0029】
なお、変形態様として、衝突衝撃によりたとえば圧縮ばねの拘束がはずれるような純機械的な機構を採用してもよく、エアシリンダ3の代わりに同様の回動力発生機構を採用することができる。
【0030】
フード2の前端部22のリフト量は100mmに設定され、跳ね上げ前のフード2の前端部22の地上高さは900mmに設定されている。
【0031】
【実施態様2】
実施態様2を図3を参照して説明する。
【0032】
この実施態様は、上記した実施態様1で説明したフード回動機構の代わりにフード2を上方に跳ね上げる機構を採用したものである。31、32はエアシリンダのピストンであり、フード2を上方に跳ね上げる際には同時に作動する。ただし、この実施態様において、少なくともフード2の前端部22のリフト量H1はその後端部23のリフト量H2より大きく設定される必要がある。このようにすれば、上述した歩行者の頭部速度低減効果とフードの後端部の衝撃吸収効果とによりその衝突衝撃を大幅に低減することができる。
【0033】
(変形態様)
フード2を実施態様1のように回動させつつ実施態様2のように上方へリフトすることもできる。
【0034】
【実施態様3】
実施態様3を図4を参照して説明する。
【0035】
この実施態様では、歩行者衝突検出センサ5は衝突衝撃を検出する。検出した衝突衝撃の大きさに関するアナログ信号はデジタル信号に変換されて制御部4に送られ、制御部4はその大きさが所定のしきい値を超えた場合に歩行者衝突と判定するとともに、衝突衝撃の大きさを車速で割って衝突質量を求め、この衝突質量が所定しきい値以上の場合にフード2の前端部22のリフト量を大きく設定し、そうでない場合にこのリフト量を小さく設定する。そして、エアシリンダ3をこの情報に基づいて駆動制御する。
【0036】
このようにすれば、大人に対してはその上半身の回動支点を高く設定し、子供に対してはそれを低く設定することができるので、歩行者の体格変化にもかかわらず良好な回動支点調節を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フードの種々の形態における頭部速度の推移を示す実測図である。
【図2】実施態様1の車両用フード跳ね上げ装置を示す模式側面図である。
【図3】実施態様2の車両用フード跳ね上げ装置を示す模式側面図である。
【図4】実施態様3の車両用フード跳ね上げ装置のブロック回路図である。
【図5】従来の車両用フード跳ね上げ装置を示す模式側面図である。
【符号の説明】
1 車体
2 フード
3 エアシリンダ(フード跳ね上げ部)
4 制御部
5 センサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝突時の歩行者保護が可能な車両用フード跳ね上げ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、歩行者との衝突時に車両のフードを跳ね上げることにより、このフードを歩行者の上半身との衝突により変形させて衝撃吸収を行う車両用フード跳ね上げ装置がたとえば下記の特許文献1、2に提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−119823号公報
【特許文献2】特開平10−119823号公報
【0004】
これらの特許文献1は、たとえば図5に示すように歩行者との衝突時にフードの前端部を支点としてフードの後端部を持ち上げるフード跳ね上げ構造を開示する。この構造によれば、フードの後端部が歩行者と衝突した際に跳ね上げられるために、歩行者の頭部の衝突によるフードの後端部の塑性変形量を大きく確保することができ、頭部衝撃を緩和することができる。つまり、上記した特許文献に記載される車両用フード跳ね上げ装置は、フードの後端部を跳ね上げない場合に比較して頭部衝突によるフードの後端部の塑性変形量を大きく確保することができ、その分だけ通常時のフードの後端部の高さを低くすることができ、車両走行抵抗低減、車両デザイン性の向上に有利である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した特許文献に記載されるフードの後端部跳ね上げ式の車両用フード跳ね上げ装置は、たとえば歩行者保護用のエアバッグに比較すれば、なお歩行者、特にその頭部に与える衝突衝撃が大きいという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、エアバッグなどに比較して簡素な構造により優れた歩行者安全性を奏する車両用フード跳ね上げ装置を提供することを、その目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の車両用フード跳ね上げ装置は、車両前部の上面に配置されて車両前部上面を覆うフードと、車両前端面が歩行者に衝突する際に前記フードを上方に跳ね上げるフード跳ね上げ部とを備える車両用フード跳ね上げ装置において、
前記フード跳ね上げ部は、前記跳ね上げ時に前記フードの前端部を少なくとも跳ね上げ、前記跳ね上げ時の前記フードの前端部のリフト量は、前記フードの後端部のリフト量よりも大きく設定されていることを特徴としている。これにより、従来のフード後端部跳ね上げ式の車両用フード跳ね上げ装置に比較して格段に歩行者保護性特にその頭部保護性を向上でき、かつ、たとえば歩行者保護用のエアバッグに比較して構造を簡素化することが可能な装置を実現することができる。
【0008】
以下、車両の前端が歩行者に衝突する場合を例として本発明の作用効果を更に詳しく説明する。
【0009】
車両、特に乗用車の場合、その前端の高さは通常600〜800mm程度に設定されている。このため、歩行者の上半身はこの車両の前端を中心(支点)として後方すなわちフードの後端部側に回動して倒れ込む。
【0010】
歩行者保護において最も重要であるその頭部は、回動する上半身のうち、この支点から最も遠い位置にあり、その回動時の周速は上半身のなかで最も大きい。
【0011】
更に詳しく説明すると、歩行者の上半身を所定位置の点状の質量にモデル化すると、上半身に作用する衝突衝撃力Fはこの点状質量Mと、この点状質量Mに作用する加速度aとの積と表すことができ、この加速度aに対応する角加速度xを積分してこの点状質量Mの角速度yが規定される。支点から点状質量までの距離をr1、支点から頭部までの距離をr2、両距離の比をzとすれば、頭部の角速度はy・zとみなすことができる。フードの後端部に衝突する際の歩行者の頭部衝撃は、この衝突直前における頭部角速度の自乗値に比例する。
【0012】
頭部角速度を低減すれば頭部衝撃を大幅に緩和することができ、頭部の速度vは上記角速度yと上記距離r2との積である。つまり、歩行者衝突時によりその上半身が回動する場合における頭部の速度は距離r2の低減により減少するが、頭部の運動エネルギーはこの速度の自乗に比例するため頭部の速度低減は大幅な頭部運動エネルギーの減少を実現することがわかる。
【0013】
つまり、上半身の角速度が等しくても、支点位置を高くして支点から頭部までの距離(頭部半径r2)を短縮すれば、頭部運動エネルギーを低減して頭部衝突衝撃を低減することができる。
【0014】
実験結果を図1に示す。図1は、平均的日本人成人男性に相当するモデル人形を用いた実験結果であって、実線はフードの前端部の跳ね上げを行わない場合におけるフード衝突時の頭部速度、破線はフードの前端部の跳ね上げを行う場合におけるフード衝突時の頭部速度を示す。白丸はフードの後端部のみ跳ね上げる場合(フードの後端部のリフト量100mm)、黒丸はフードの前端部及び後端部を跳ね上げない場合、黒角はフードの後端部も前端部も跳ね上げる場合(フードの前端部のリフト量100mm、フードの後端部のリフト量100mm)、白角はフードの後端部の跳ね上げ量をフードの前端部のそれよりも減らした場合(フードの前端部のリフト量100mm、フードの後端部のリフト量50mm)である。なお、フードの前端部の地上高さは跳ね上げ前に置いてすべて700mmとし、衝突速度を40km/hとした。
【0015】
図1から、フードの前端部の跳ね上げを行うことにより、頭部速度を大幅に低減すること、その結果、頭部速度の自乗に比例する頭部運動エネルギーは更に大幅に低減でき、この頭部運動エネルギーに比例する頭部衝撃を従来より格段に低減できることがわかった。
【0016】
図1において、横軸の時点0は歩行者が車両の前端に衝突した時点であり、その後、頭部速度(車両に対する相対速度)は増加し、その後、上半身の回動に対する抵抗により減少していく。フードの後端部を跳ね上げると、フード衝突時の頭部速度は高くなるが、フードの塑性変形による頭部速度の段階的減少効果が生じるため、フードの後端部を跳ね上げない場合より頭部衝撃は小さくなる。
【0017】
図1はフードの前端部の跳ね上げ量(リフト量)を100mm、跳ね上げ前の車両の前端(フードの前端)の高さを700mmとしたが、前者を20〜300mm、後者をー100〜+200の範囲で変更した場合でも同様の効果を確認した。ただし、跳ね上げ後のフードの前端部の地上高さは700〜1000mmの範囲とすることが好ましく、これより小さいと頭部速度の低下を望めず、これより大きいと歩行者を前にはねとばす効果が大きくなってしまう。また、車速は20〜80km/hの範囲で図1と同様の結果となることがわかった。
【0018】
請求項1記載の発明の好適態様1において、前記跳ね上げ後の前記フードの前端部の地上高さは、700〜1000mmに設定される。これにより、好適な頭部速度低減効果が得られる。
【0019】
請求項1記載の発明の好適態様2において、前記フード跳ね上げ部は、前記フードの後端部を回動中心として前記フードを回動させる。これにより、フードの前端部を跳ね上げるための機構を簡素化し、また同一の回動機構を利用してフード下のエンジンルームを点検するためにフードの前端部をリフトすることができる。
【0020】
請求項1記載の発明の好適態様3において、前記フード跳ね上げ部は、前記フード全体を上方へ持ち上げる。これにより、フードの前端部も後端部も跳ね上げることができるので、頭部速度低減効果とフードの後端部の変形による頭部運動エネルギー吸収効果とを同時に実現することができる。
【0021】
請求項1記載の発明の好適態様4において、前記フードの前端部は、前記車両前端部の上部角部に沿いつつ下方へ湾曲乃至屈曲している。これにより、フードの前端部を跳ね上げるにもかかわらず、フードの前端部が歩行者に食い込むのを良好に防止することができる。
【0022】
請求項1記載の発明の好適態様5において、前記歩行者の体格に関する情報を検出する歩行者体格検出要素と、前記情報に基づいて前記歩行者の体格が大きいとみなす場合に小さいとみなす場合よりも前記フードの前端部のリフト量を増大する。
【0023】
これにより、歩行者が子供であっても大人であっても、上記回動支点が低すぎることも、高すぎることもないようにすることができる。なお、歩行者の体格検出には、CCDエリアセンサ、レーザ光や電磁波を用いたレーダ装置、高周波静電容量センサなどの非接触式センサを用いることができる他、衝突時の衝撃力を検出し、この衝撃力を車速で割って対象質量を求め、この対象質量の大小により歩行者の体格を推定することもできる。
【0024】
フード跳ね上げ部としては、空気シリンダ、圧縮ばねの開放の他、火薬、などの種々の物理力を当然に利用することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両用フード跳ね上げ装置の好適な実施形態を具体的に説明する。
【0026】
【実施態様1】
1は車体、2は車体前部の上面に配置されてエンジンルームを覆う車両前部上面を覆うフード、3はフードを跳ね上げるエアシリンダ(フード跳ね上げ部)、4は歩行者衝突時にエアシリンダを駆動してフード2を跳ね上げる制御部、5は歩行者衝突を検出する歩行者衝突検出センサである。
【0027】
歩行者衝突検出センサ5が歩行者の衝突を検出すると、検出信号を制御部4に送り、制御部4はエアシリンダ3を駆動してフード2を跳ね上げる。
【0028】
21はフード2の支点であり、フード2は支点21を中心として上方に回動する。フード2の前端部22は下方に垂下しており、フード2の前端部22が跳ね上げられた後でも歩行者に食い込まないようになっている。このようにすれば、上述した歩行者の頭部速度低減によりその衝突衝撃を大幅に低減することができる。また、フードの後端部の変形による衝撃吸収効果を奏することができる。
【0029】
なお、変形態様として、衝突衝撃によりたとえば圧縮ばねの拘束がはずれるような純機械的な機構を採用してもよく、エアシリンダ3の代わりに同様の回動力発生機構を採用することができる。
【0030】
フード2の前端部22のリフト量は100mmに設定され、跳ね上げ前のフード2の前端部22の地上高さは900mmに設定されている。
【0031】
【実施態様2】
実施態様2を図3を参照して説明する。
【0032】
この実施態様は、上記した実施態様1で説明したフード回動機構の代わりにフード2を上方に跳ね上げる機構を採用したものである。31、32はエアシリンダのピストンであり、フード2を上方に跳ね上げる際には同時に作動する。ただし、この実施態様において、少なくともフード2の前端部22のリフト量H1はその後端部23のリフト量H2より大きく設定される必要がある。このようにすれば、上述した歩行者の頭部速度低減効果とフードの後端部の衝撃吸収効果とによりその衝突衝撃を大幅に低減することができる。
【0033】
(変形態様)
フード2を実施態様1のように回動させつつ実施態様2のように上方へリフトすることもできる。
【0034】
【実施態様3】
実施態様3を図4を参照して説明する。
【0035】
この実施態様では、歩行者衝突検出センサ5は衝突衝撃を検出する。検出した衝突衝撃の大きさに関するアナログ信号はデジタル信号に変換されて制御部4に送られ、制御部4はその大きさが所定のしきい値を超えた場合に歩行者衝突と判定するとともに、衝突衝撃の大きさを車速で割って衝突質量を求め、この衝突質量が所定しきい値以上の場合にフード2の前端部22のリフト量を大きく設定し、そうでない場合にこのリフト量を小さく設定する。そして、エアシリンダ3をこの情報に基づいて駆動制御する。
【0036】
このようにすれば、大人に対してはその上半身の回動支点を高く設定し、子供に対してはそれを低く設定することができるので、歩行者の体格変化にもかかわらず良好な回動支点調節を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フードの種々の形態における頭部速度の推移を示す実測図である。
【図2】実施態様1の車両用フード跳ね上げ装置を示す模式側面図である。
【図3】実施態様2の車両用フード跳ね上げ装置を示す模式側面図である。
【図4】実施態様3の車両用フード跳ね上げ装置のブロック回路図である。
【図5】従来の車両用フード跳ね上げ装置を示す模式側面図である。
【符号の説明】
1 車体
2 フード
3 エアシリンダ(フード跳ね上げ部)
4 制御部
5 センサ
Claims (6)
- 車両前部の上面に配置されて車両前部上面を覆うフードと、
車両前端面が歩行者に衝突する際に前記フードを上方に跳ね上げるフード跳ね上げ部と、
を備える車両用フード跳ね上げ装置において、
前記フード跳ね上げ部は、前記跳ね上げ時に前記フードの前端部を少なくとも跳ね上げ、
前記跳ね上げ時の前記フードの前端部のリフト量は、前記フードの後端部のリフト量よりも大きく設定されていることを特徴とする車両用フード跳ね上げ装置。 - 請求項1記載の車両用フード跳ね上げ装置において、
前記跳ね上げ後の前記フードの前端部の地上高さは、700〜1000mmに設定されることを特徴とする車両用フード跳ね上げ装置。 - 請求項1記載の車両用フード跳ね上げ装置において、
前記フード跳ね上げ部は、
前記フードの後端部を回動中心として前記フードを回動させることを特徴とする車両用フード跳ね上げ装置。 - 請求項1記載の車両用フード跳ね上げ装置において、
前記フード跳ね上げ部は、
前記フードを上方へ持ち上げることを特徴とする車両用フード跳ね上げ装置。 - 請求項1記載の車両用フード跳ね上げ装置において、
前記フードの前端部は、
前記車両前端部の上部角部に沿いつつ下方へ湾曲乃至屈曲していることを特徴とする車両用フード跳ね上げ装置。 - 請求項1記載の車両用フード跳ね上げ装置において、
前記歩行者の体格に関する情報を検出する歩行者体格検出要素と、
前記情報に基づいて前記歩行者の体格が大きいとみなす場合に小さいとみなす場合よりも前記フードの前端部のリフト量を増大することを特徴とする車両用フード跳ね上げ装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002300292A JP2004131037A (ja) | 2002-10-15 | 2002-10-15 | 車両用フード跳ね上げ装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002300292A JP2004131037A (ja) | 2002-10-15 | 2002-10-15 | 車両用フード跳ね上げ装置 |
Publications (1)
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