JP2004130173A - 微生物除去用フィルターおよびこれを用いた微生物の除去方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた微生物除去用のフィルターを提供すること。具体的には、捕捉した微生物のフィルターにおける蓄積および増殖が防止されており、高い微生物除去能力を有するフィルターを提供すること。
【解決手段】耐熱性繊維からなる不織布(濾過手段)12が用いられている微生物除去用のフィルターの前記不織布12に金属網11を接触させ、当該金属網11に通電加熱用の導線13を接続する。また、金属網11の表面または不織布12の表面に貴金属触媒を担持させる。このフィルターでは、金属網11を通電加熱すると、フィルターに捕捉された微生物が有機性ガス化される。また、有機性ガスは貴金属触媒の作用で二酸化炭素、水、窒素へと熱分解される。このように、フィルター上の微生物を熱分解できれば、微生物の蓄積や増殖が防止され、微生物によるフィルターの目づまりが防止される。
【選択図】 図1
【解決手段】耐熱性繊維からなる不織布(濾過手段)12が用いられている微生物除去用のフィルターの前記不織布12に金属網11を接触させ、当該金属網11に通電加熱用の導線13を接続する。また、金属網11の表面または不織布12の表面に貴金属触媒を担持させる。このフィルターでは、金属網11を通電加熱すると、フィルターに捕捉された微生物が有機性ガス化される。また、有機性ガスは貴金属触媒の作用で二酸化炭素、水、窒素へと熱分解される。このように、フィルター上の微生物を熱分解できれば、微生物の蓄積や増殖が防止され、微生物によるフィルターの目づまりが防止される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体中に浮遊している微生物の除去に用いられるフィルターおよびこれを用いた微生物の除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
気体中の微生物を除去する手段としては、例えばミクロフィルターと称される多孔質膜を濾過手段として用いたフィルターがある。例えば0.3μm程度の微小な孔径のミクロフィルターを用いれば、透過させた処理対象気体中の微生物を捕捉(捕獲)でき、気体中から微生物を除去できる。ところが、このようなフィルターでは、捕捉した微生物がフィルター中に蓄積されて目づまり(膜閉塞)が生じやすく、微生物除去能力が低下するという問題や、捕捉した微生物がフィルター上で増殖して目づまりを促進するという問題がある。そして、蓄積され、増殖した微生物がフィルターを透過した空気に混ざって大気中に放出されるという問題がある。
【0003】
また、上記ミクロフィルター以外に、微生物を除去する方法としては、例えば、紫外線を照射する方法や、オゾンガスあるいはエチレンオキサイドガスを用いて殺菌することで微生物を除去する方法がある。ところが、紫外線は対象物の内部に到達しにくいので、大きな微生物など対象物が比較的大きい場合の殺菌能力が低いという問題がある。また、オゾンガス等の殺菌用ガスを用いる方法は、殺菌済み気体をユニット外に排出する前に、殺菌済気体の殺菌用ガス濃度を許容範囲まで低下させる必要があり、そのための処理手段が別途必要である。さらに、殺菌用ガスを生成するために薬剤を用いる場合は、当該薬剤を定期的に補充する手間がかかり、補充しなければ継続して微生物を除去できないという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、捕捉した微生物のフィルターにおける蓄積および増殖が防止されており、微生物の大きさに拘わらず高い微生物除去能力を有しており、しかも継続的に微生物を除去する場合に薬剤補充などの手間がかからない微生物除去用のフィルターを提供すること、および当該フィルターを用いた微生物の除去方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、発明者等は、微生物を捕捉する手段および捕捉した微生物の蓄積および増殖を防止する手段について検討した。その結果、微生物は有機物の一種であるので加熱により有機性ガス化でき、有機性ガスを触媒燃焼を利用して熱分解することで微生物の蓄積および増殖を防止できることを見出した。そして、微生物を捕捉する手段として耐熱性を有するものを用いれば、先に説明した熱分解を利用できることを見出し、本発明に想到するに至った。
【0006】
本発明は、耐熱性を有する繊維からなる濾過手段が用いられている微生物除去用のフィルターであって、前記濾過手段に接する金属網と、当該金属網を通電加熱する手段とを備えており、金属網の表面または濾過手段となる耐熱性繊維の表面の少なくともいずれか一方に貴金属触媒が担持されている微生物除去用のフィルターである。
【0007】
耐熱性を有する繊維としては、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維または炭素繊維などの繊維を挙げることができる。これらの繊維(あるいは、これらの繊維から選択される1種以上の繊維)は、例えば不織布、織布あるいはわた状の集合体などの形態で濾過手段として用いられている。繊維にはいわゆる短繊維および長繊維があるが、処理対象気体の送風圧力を受ける濾過手段用の繊維としては、より高い強度(耐久性)が得られる長繊維の方が好ましい。また、金属網としては、織布状(網状)のものをはじめとして、エクスパンドメタル状、多孔板状の部材が好ましい。濾過手段と金属網とを接触させたフィルター構成としては、例えば金属網に接する状態でその片面または両面に不織布等の濾過手段を配置する構成、金属網と濾過手段とを交互に配置する構成、金属網を濾過手段で覆って包み込みあるいは挟む構成など、種々の構成が考えられる。
【0008】
このような構成のフィルターに処理対象気体を接触させ、あるいは透過させると、濾過手段によって気体中の微生物が捕捉され、気体中から微生物が除去される。そして、本発明に係るフィルターの金属網は、導電体であるので、金属網が備える導線などの通電手段によって当該金属網を通電加熱すると、フィルターに捕捉された有機物である微生物は有機性ガス化される。また、金属網の表面または濾過手段となる耐熱性繊維の表面の少なくともいずれか一方には貴金属触媒が担持されており、有機性ガスはこの貴金属触媒の作用によって二酸化炭素(CO2)、水(H2O)、窒素(N2)へと熱分解される。濾過手段は耐熱性を有する繊維から成るものであるので、加熱により変質するようなことはない。このようにしてフィルター上の細菌等の微生物が熱分解されれば、フィルターにおける微生物の蓄積や増殖が防止され、微生物によるフィルターの目づまりが防止される。なお、通電加熱によれば、微生物の大きさに拘わらず、捕捉した微生物を有機ガス化でき熱分解できる。また、本発明に係るフィルターでは薬剤等の消耗品を用いないので、これらを補充する手間がかからない。
【0009】
ところで、処理対象気体には、例えば活性汚泥装置からの排ガスや冷蔵室内の冷気などの高湿度の気体がある。通常、金属網の上にはアルミナのウォッシュコーティング層が被覆され、当該層の上に貴金属触媒が担持されている。つまり、金属網はウォッシュコート層で被覆されている。したがって、処理対象気体が高湿であっても腐食を生ずることはない。ところが、アルミナのウォッシュコーティング層は脆い素材であり亀裂を生じやすい。亀裂が生ずると、亀裂を介して金属網が処理対象気体に触れることとなり、金属網に腐食が生ずるおそれがある。また、捕捉した微生物を熱分解する際の加熱手段として用いられる金属網としては、比較的電気抵抗の高いものが好ましい。そこで、防食および電気抵抗の観点から金属網の材質について検討した。その結果、金属網としては、Ni−Cr合金、Fe−Cr合金またはステインレスからなる導電体が好ましいことが解った。
【0010】
さらに、アルミナのウォッシュコート層について、その亀裂の発生を防止する観点で検討した。その結果、亀裂の発生をできるだけ確実に防止するにはアルミナのウォッシュコート層の厚さは300μm以下が好ましいことが解った。なお、担持させる粉状の貴金属触媒の脱落を確実に防止するためには、ウォッシュコート層は10μm以上が好ましい。
【0011】
また、金属網としては、平均開孔率が50%〜75%であるものが好ましい。平均開孔率が75%を超えると、加熱効率が低下して有機性ガスを迅速かつ確実に熱分解できないことがあるからである。金属網は、また、有機物を熱分解する手段というだけでなく、フィルタの骨材(構造材)としても機能しており、先述したような繊維からなる濾過手段の形状を保持し、あるいは処理対象気体からの送風圧力を受けた濾過手段の変形を防止している。形状保持や変形防止のためには接着などによって濾過手段を金属網に連結させておくのが好ましいが、金属網の平均開孔率が75%を超えると、繊維からなる濾過手段の形状保持や変形防止を十分にできなくなるおそれがある。例えば、平均開孔率が75%を超えた金属網では、処理対象気体からの送風圧力を受けたときに、濾過手段全体を支えること(サポートすること)ができず、濾過手段を構成する繊維が吹き飛ばされるなど濾過手段の破損を防げないおそれがあることが解った。この点からも、金属網は平均開孔率が50%〜75%であるものが好ましい。他方、金属網の開孔率が50%より低くなると、送風される処理対象気体の圧力損失が大きくなり、送風量が低下してしまうおそれがある。なお、金属網の両端間の電気抵抗値は、特に限定されるものではないが、テストした結果、5.0Ω以上25Ω以下が好ましかった。
【0012】
金属網の表面に担持される貴金属触媒としては、白金族系金属であるPt,Pd,Rh,Irのうちから選択される金属、または選択される複数の金属からなる合金が好ましい。これらの貴金属触媒を用いることによって、捕捉した微生物を熱分解できるからである。
【0013】
そして、上述したアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、炭素繊維などの繊維からなる濾過手段としては、平均開孔径が0.01μm〜5.0μmであるものが好ましい。平均開孔径が5.0μmを超えると、微生物を効率良く捕捉できないからである。一方、平均開孔径が0.01μmより小さくなると、フィルターを通過する処理対象気体の圧力損失が極めて大きくなり、処理効率が極めて低下し、あるいは処理が不可能になるからである。
【0014】
これら本発明に係るフィルターを用いて気体中の微生物を除去する場合は、上述したようにフィルターに処理対象気体を接触させ、あるいは透過させる。すると、濾過手段によって気体中の微生物が捕捉され、気体中から微生物が除去される。そして、必要に応じて金属網を通電加熱すると、濾過手段に捕捉された微生物が有機ガス化され、かつ金属網に担持された触媒によって有機ガス化された微生物成分は、酸化分解(熱分解)され、主にCO2、H2Oになる。これにより、フィルター上における微生物の増殖、蓄積が防止される。
【0015】
実際には、フィルターを透過するように処理対象の気体を流通させる工程(通風工程)と、金属網を通電加熱して微生物を燃焼させる工程(熱分解工程)を同時に行わず、例えば、まず通風工程を60分行い、その後、通風を停止させて熱分解工程を5分行い、その後、加熱を停止させて再び通風工程を行うというように、交互に行う。
【0016】
なお、濾過手段によって微生物を捕捉する場合、処理対象気体の流速が速い方が処理効率が高いと考えられるが、流速を速くすると微生物を確実に除去できなくなるおそれがある。検討の結果、処理対象気体の流速は、1.5m/s以下が好ましいことが解った。また、処理効率の維持、そしてフィルターやフィルターが装着される濾過装置の大型化を防止する観点では、流速を0.1m/s以上にして微生物を除去するのが好ましい。そして、捕捉した微生物を有機ガス化して熱分解するための加熱温度としては200℃〜250℃程度の温度が好ましい。また、効率良く熱分解するためには、濾過手段を数十秒で200℃〜250℃程度の温度に加熱するのが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る微生物除去用のフィルターおよびこれを用いて行う微生物の除去方法の好適な実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
第1実施形態:図1に示されるように、フィルター10は、概略的には、貴金属触媒である白金(Pt)によって表面を被覆された金属網11と、当該金属網11をその両側から挟む状態で当該金属網11に固定される不織布(濾過手段)12と、金属網11に電気的に接続された通電加熱用の導線13(通電手段)とからなる。このうち金属網11は、Niが80重量%、Crが20重量%の金属線(φ0.32mm)を開口度合が24メッシュになるように平織されたものである。そして、金属網11は、その表面に形成されたアルミナのウォッシュコート層(不図示)を有しており、ウォッシュコート層の表面に白金粉(不図示)が担持されている。なお、金属網11は、開孔率が70%であった。そして、担持される白金粉の粒径は50Å〜100Åであり、その担持量は0.25g/m2であった。また、不織布12は、繊維径10μmのアルミナ長繊維からなものであり、平均開孔径は約0.12μmであった。そして、金属網11と不織布12とからなるフィルター10は、全体厚さTが約1.0mm、幅が300mm、長さが3m、両端間の電気抵抗値は8.3Ωであった。
【0019】
このフィルター10は、図2に示されるように、蛇行状態に折り曲げられた状態で箱体(400mm×550mm×300mm)14に収容されており、フィルターが収容された箱体をフィルターユニット(以下、単にユニットとも称する)20として用いている。図示されるように、箱体14は処理対象気体の吸入口14aと、微生物を除去した気体の排出口14bとを有する。また、箱体14の外側にフィルター10の導線13が引き出されている。なお、フィルター10の通電加熱に用いる電源との結線方法(構造)については図示および説明を省略した。
【0020】
このフィルターユニット20を用いて、空気(処理対象気体)から微生物を除去する処理を行った。その手順を説明する。まず、図示しないポンプを用いて吸入口14aからユニット20内に空気を60分間連続的に送り込んだ(通風工程)。送り込まれた空気はユニット20内のフィルター10を透過するので、このとき空気中の微生物がフィルター10の不織布12に捕捉され、空気中から微生物が除去される。微生物が除去された空気は、排出口14bからユニット20の外に排出される。その後、空気の送り込みを停止させて、金属網11を5分間通電加熱した(熱分解工程)。金属網11を加熱すると、フィルター10に捕捉された微生物などの有機物が有機性ガスとなり、有機性ガスが触媒燃焼によって熱分解する(熱分解工程)。これにより、微生物のフィルター上における増殖や蓄積が防止され、フィルター10の目づまりや、フィルターユニット20から排出される処理済み気体中への微生物の混入が防止される。その後、通電加熱を停止させて、フィルター10を約5分間自然放冷した(冷却工程)。放冷後、再び空気(処理対象気体)をユニット20内に送り込み、フィルターで空気中の微生物を捕捉し、微生物が除去された空気を空気中に戻す。このようにして一連の工程を繰り返すことにより、微生物の除去処理を連続的に行った。
【0021】
そして、このような微生物除去処理の途中で、ユニット20の入口14aおよび出口14bの空気を採取し、空気中の一般細菌数(コロニー数)を比較してフィルターの微生物捕捉性能を評価した。なお、空気の流速はアルミナ長繊維からなる不織布12を透過する位置(不織布表面)での流速であり、表1のとおりである。そして、表1中の「一般細菌数」は、採取した1リットルの大気を用いて標準寒天培地法で培養された落下細菌(コロニー)の数である。また、ユニット20の入口14aと出口14bとの間の圧力損失を測定した。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示されるように、空気の流速が2.0m/secを超えない条件であれば、高い捕捉率が得られた。そして、1.5m/secを超えない条件では、除去処理済みの空気中に細菌は検出されなかった。他方、流速が1.5m/sec以上の条件では、除去処理済みの空気中に細菌が検出され、微生物除去性能が低下することが解った。微生物除去性能が低下する理由は、フィルターのうち、アルミナ長繊維からなる不織布の一部の破損が原因であると考えられる。また、流速1.5m/sec以上で圧力損失が急増していることから、不織布の破損の原因はフィルターが大きな圧力を受けたことにあると考えられる。この結果、微生物除去能力を長期間安定して得るには、空気(処理対象気体)の流速はできるだけ遅い方がよく、具体的には2.0m/sec(圧力損失が850mmAq(mm水柱))を超えない範囲が好ましく、1.5m/sec(圧力損失が480mmAq)を超えない範囲がより好ましいことが解った。
【0024】
第2実施形態:不織布12の平均開孔径が異なるフィルター10を用いて、空気中から微生物を除去する処理を行い、フィルター10の微生物捕捉性能を評価した。本実施形態では空気の流速を約1.0m/secに安定させた。これら以外の条件は第1実施形態と同様であった。結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2に示されるように、平均開孔径が5.3μmの不織布12を用いれば94%という高い捕捉率で一般細菌を捕捉できることから、平均開孔径が5.0μm以下のアルミナ長繊維からなる不織布12であれば、一般細菌を高い率で捕捉でき好ましいことが解った。そして、平均開孔径が1.2μm以下のものを用いると一般細菌を全て捕捉でき、より好ましいことが解った。なお、微生物のサイズは種類によって様々であるが、捕捉対象としているバクテリア類は約1μm前後の大きさであり、この点からも、アルミナ長繊維からなる不織布(濾過手段)12の平均開孔径は1.2μm以下が好ましいと考えられる。また、カビ類の一般的な大きさは0.1μmから1.0μmであり、ウィルス類の一般的な大きさは0.1μm以下であることから、これらを確実に捕捉できる不織布(濾過手段)が好ましい。つまり、平均開孔径が1.0μm以下(0.1μm以上)のものを用いるのが好ましく、平均開孔径が0.1μm以下(0.01μm以上)のものを用いるのがより好ましい。
【0027】
第3実施形態:金属網の開孔率が異なるフィルターを用いて、金属網を通電加熱することによる有機物の熱分解性能を評価した。本実施形態では、SUS304製の線材(φ0.32mm)からなる網を用意して網表面にウォッシュコート層を形成し、このウォッシュコート層上に、担持量が0.20g/m2になるように白金を担持させたものを金属網として用いた。なお、金属網には通電用の導線が接続されており、金属網の両端間の電気抵抗値は8.3Ωであった。また、金属網のメッシュ数を変えることで開孔率を変えた。これら以外のフィルターの条件は第1実施形態と同じであった。
【0028】
このようなフィルターを断面四角形状の筒状のフィルターユニット内に、通路を遮るように設置し、金属網を通電加熱した状態で、アンモニアガス(有機性ガス)の濃度が100ppmに調製された常温の大気を流速1.0m/secで送り込んだ。そして、フィルターユニット出口におけるアンモニア濃度を測定することで触媒燃焼性能を評価した。なお、本実施形態では、フィルター透過直後の気体温度が225℃になるように金属網を通電加熱した。また、金属網の開孔率との関係で、金属網による不織布のサポート力を評価した。具体的にはアルミナ長繊維からなる不織布の破損状況に基づいてサポート力を評価した。
【0029】
【表3】
【0030】
表3から解るように、金属網の開孔率が70%以下の場合、触媒燃焼によってアンモニアを完全に熱分解することができたが、開孔率がこれを超えると、アンモニアを完全には分解できなかった。開孔率が高いと通電加熱の熱が逃げやすく、微生物の熱分解効率が低くなるからであると考えられる。また、金属網の開孔率が70%を超えると、フィルターの骨材でもある金属網で不織布全体を十分に支えること(サポートすること)ができなくなり不織布の一部が破損した。金属網の開孔率が大きすぎて、空気(処理対象気体)から受ける送風圧力に不織布が耐えきれず破損したと考えられる。また、金属網の開孔率が40%以下になると、圧力損失が急増した。圧力損失が大きい構造はガスの流通量を大きく取ることが難しい構造であり、処理量を増やすにはより大型のフィルターを装着する必要があるなど、コスト面で好ましいものではない。また、大きさの異なるフィルターを装着できるように装着部の構造を工夫する必要があるといった煩雑さが生ずる。
【0031】
これらの結果、金属網としては、開孔率が40%より大きく、かつ80%より小さいものが好ましく、50%〜75%のものがより好ましいことが解った。本実施形態の金属網の骨材は金網状であるが、試験の結果、骨材が織布状、エクスパンドメタル状あるいは多孔板状のものであっても同様の結果が得られることが解った。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、本発明のフィルターを用いれば、処理対象気体中の微生物を迅速かつ確実に捕捉することで処理対象気体中の微生物を迅速かつ確実に除去でき、捕捉した微生物のフィルター上での増殖及び蓄積を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態のフィルターの構造を示す部分拡大断面図。
【図2】図1に示されるフィルターが設置されたフィルターユニットの構成を示す概略図。
【符号の説明】
10 フィルター
11 金属網
12 不織布(濾過手段)
13 導線(通電手段)
14 箱体
20 フィルターユニット
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体中に浮遊している微生物の除去に用いられるフィルターおよびこれを用いた微生物の除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
気体中の微生物を除去する手段としては、例えばミクロフィルターと称される多孔質膜を濾過手段として用いたフィルターがある。例えば0.3μm程度の微小な孔径のミクロフィルターを用いれば、透過させた処理対象気体中の微生物を捕捉(捕獲)でき、気体中から微生物を除去できる。ところが、このようなフィルターでは、捕捉した微生物がフィルター中に蓄積されて目づまり(膜閉塞)が生じやすく、微生物除去能力が低下するという問題や、捕捉した微生物がフィルター上で増殖して目づまりを促進するという問題がある。そして、蓄積され、増殖した微生物がフィルターを透過した空気に混ざって大気中に放出されるという問題がある。
【0003】
また、上記ミクロフィルター以外に、微生物を除去する方法としては、例えば、紫外線を照射する方法や、オゾンガスあるいはエチレンオキサイドガスを用いて殺菌することで微生物を除去する方法がある。ところが、紫外線は対象物の内部に到達しにくいので、大きな微生物など対象物が比較的大きい場合の殺菌能力が低いという問題がある。また、オゾンガス等の殺菌用ガスを用いる方法は、殺菌済み気体をユニット外に排出する前に、殺菌済気体の殺菌用ガス濃度を許容範囲まで低下させる必要があり、そのための処理手段が別途必要である。さらに、殺菌用ガスを生成するために薬剤を用いる場合は、当該薬剤を定期的に補充する手間がかかり、補充しなければ継続して微生物を除去できないという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、捕捉した微生物のフィルターにおける蓄積および増殖が防止されており、微生物の大きさに拘わらず高い微生物除去能力を有しており、しかも継続的に微生物を除去する場合に薬剤補充などの手間がかからない微生物除去用のフィルターを提供すること、および当該フィルターを用いた微生物の除去方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、発明者等は、微生物を捕捉する手段および捕捉した微生物の蓄積および増殖を防止する手段について検討した。その結果、微生物は有機物の一種であるので加熱により有機性ガス化でき、有機性ガスを触媒燃焼を利用して熱分解することで微生物の蓄積および増殖を防止できることを見出した。そして、微生物を捕捉する手段として耐熱性を有するものを用いれば、先に説明した熱分解を利用できることを見出し、本発明に想到するに至った。
【0006】
本発明は、耐熱性を有する繊維からなる濾過手段が用いられている微生物除去用のフィルターであって、前記濾過手段に接する金属網と、当該金属網を通電加熱する手段とを備えており、金属網の表面または濾過手段となる耐熱性繊維の表面の少なくともいずれか一方に貴金属触媒が担持されている微生物除去用のフィルターである。
【0007】
耐熱性を有する繊維としては、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維または炭素繊維などの繊維を挙げることができる。これらの繊維(あるいは、これらの繊維から選択される1種以上の繊維)は、例えば不織布、織布あるいはわた状の集合体などの形態で濾過手段として用いられている。繊維にはいわゆる短繊維および長繊維があるが、処理対象気体の送風圧力を受ける濾過手段用の繊維としては、より高い強度(耐久性)が得られる長繊維の方が好ましい。また、金属網としては、織布状(網状)のものをはじめとして、エクスパンドメタル状、多孔板状の部材が好ましい。濾過手段と金属網とを接触させたフィルター構成としては、例えば金属網に接する状態でその片面または両面に不織布等の濾過手段を配置する構成、金属網と濾過手段とを交互に配置する構成、金属網を濾過手段で覆って包み込みあるいは挟む構成など、種々の構成が考えられる。
【0008】
このような構成のフィルターに処理対象気体を接触させ、あるいは透過させると、濾過手段によって気体中の微生物が捕捉され、気体中から微生物が除去される。そして、本発明に係るフィルターの金属網は、導電体であるので、金属網が備える導線などの通電手段によって当該金属網を通電加熱すると、フィルターに捕捉された有機物である微生物は有機性ガス化される。また、金属網の表面または濾過手段となる耐熱性繊維の表面の少なくともいずれか一方には貴金属触媒が担持されており、有機性ガスはこの貴金属触媒の作用によって二酸化炭素(CO2)、水(H2O)、窒素(N2)へと熱分解される。濾過手段は耐熱性を有する繊維から成るものであるので、加熱により変質するようなことはない。このようにしてフィルター上の細菌等の微生物が熱分解されれば、フィルターにおける微生物の蓄積や増殖が防止され、微生物によるフィルターの目づまりが防止される。なお、通電加熱によれば、微生物の大きさに拘わらず、捕捉した微生物を有機ガス化でき熱分解できる。また、本発明に係るフィルターでは薬剤等の消耗品を用いないので、これらを補充する手間がかからない。
【0009】
ところで、処理対象気体には、例えば活性汚泥装置からの排ガスや冷蔵室内の冷気などの高湿度の気体がある。通常、金属網の上にはアルミナのウォッシュコーティング層が被覆され、当該層の上に貴金属触媒が担持されている。つまり、金属網はウォッシュコート層で被覆されている。したがって、処理対象気体が高湿であっても腐食を生ずることはない。ところが、アルミナのウォッシュコーティング層は脆い素材であり亀裂を生じやすい。亀裂が生ずると、亀裂を介して金属網が処理対象気体に触れることとなり、金属網に腐食が生ずるおそれがある。また、捕捉した微生物を熱分解する際の加熱手段として用いられる金属網としては、比較的電気抵抗の高いものが好ましい。そこで、防食および電気抵抗の観点から金属網の材質について検討した。その結果、金属網としては、Ni−Cr合金、Fe−Cr合金またはステインレスからなる導電体が好ましいことが解った。
【0010】
さらに、アルミナのウォッシュコート層について、その亀裂の発生を防止する観点で検討した。その結果、亀裂の発生をできるだけ確実に防止するにはアルミナのウォッシュコート層の厚さは300μm以下が好ましいことが解った。なお、担持させる粉状の貴金属触媒の脱落を確実に防止するためには、ウォッシュコート層は10μm以上が好ましい。
【0011】
また、金属網としては、平均開孔率が50%〜75%であるものが好ましい。平均開孔率が75%を超えると、加熱効率が低下して有機性ガスを迅速かつ確実に熱分解できないことがあるからである。金属網は、また、有機物を熱分解する手段というだけでなく、フィルタの骨材(構造材)としても機能しており、先述したような繊維からなる濾過手段の形状を保持し、あるいは処理対象気体からの送風圧力を受けた濾過手段の変形を防止している。形状保持や変形防止のためには接着などによって濾過手段を金属網に連結させておくのが好ましいが、金属網の平均開孔率が75%を超えると、繊維からなる濾過手段の形状保持や変形防止を十分にできなくなるおそれがある。例えば、平均開孔率が75%を超えた金属網では、処理対象気体からの送風圧力を受けたときに、濾過手段全体を支えること(サポートすること)ができず、濾過手段を構成する繊維が吹き飛ばされるなど濾過手段の破損を防げないおそれがあることが解った。この点からも、金属網は平均開孔率が50%〜75%であるものが好ましい。他方、金属網の開孔率が50%より低くなると、送風される処理対象気体の圧力損失が大きくなり、送風量が低下してしまうおそれがある。なお、金属網の両端間の電気抵抗値は、特に限定されるものではないが、テストした結果、5.0Ω以上25Ω以下が好ましかった。
【0012】
金属網の表面に担持される貴金属触媒としては、白金族系金属であるPt,Pd,Rh,Irのうちから選択される金属、または選択される複数の金属からなる合金が好ましい。これらの貴金属触媒を用いることによって、捕捉した微生物を熱分解できるからである。
【0013】
そして、上述したアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、炭素繊維などの繊維からなる濾過手段としては、平均開孔径が0.01μm〜5.0μmであるものが好ましい。平均開孔径が5.0μmを超えると、微生物を効率良く捕捉できないからである。一方、平均開孔径が0.01μmより小さくなると、フィルターを通過する処理対象気体の圧力損失が極めて大きくなり、処理効率が極めて低下し、あるいは処理が不可能になるからである。
【0014】
これら本発明に係るフィルターを用いて気体中の微生物を除去する場合は、上述したようにフィルターに処理対象気体を接触させ、あるいは透過させる。すると、濾過手段によって気体中の微生物が捕捉され、気体中から微生物が除去される。そして、必要に応じて金属網を通電加熱すると、濾過手段に捕捉された微生物が有機ガス化され、かつ金属網に担持された触媒によって有機ガス化された微生物成分は、酸化分解(熱分解)され、主にCO2、H2Oになる。これにより、フィルター上における微生物の増殖、蓄積が防止される。
【0015】
実際には、フィルターを透過するように処理対象の気体を流通させる工程(通風工程)と、金属網を通電加熱して微生物を燃焼させる工程(熱分解工程)を同時に行わず、例えば、まず通風工程を60分行い、その後、通風を停止させて熱分解工程を5分行い、その後、加熱を停止させて再び通風工程を行うというように、交互に行う。
【0016】
なお、濾過手段によって微生物を捕捉する場合、処理対象気体の流速が速い方が処理効率が高いと考えられるが、流速を速くすると微生物を確実に除去できなくなるおそれがある。検討の結果、処理対象気体の流速は、1.5m/s以下が好ましいことが解った。また、処理効率の維持、そしてフィルターやフィルターが装着される濾過装置の大型化を防止する観点では、流速を0.1m/s以上にして微生物を除去するのが好ましい。そして、捕捉した微生物を有機ガス化して熱分解するための加熱温度としては200℃〜250℃程度の温度が好ましい。また、効率良く熱分解するためには、濾過手段を数十秒で200℃〜250℃程度の温度に加熱するのが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る微生物除去用のフィルターおよびこれを用いて行う微生物の除去方法の好適な実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
第1実施形態:図1に示されるように、フィルター10は、概略的には、貴金属触媒である白金(Pt)によって表面を被覆された金属網11と、当該金属網11をその両側から挟む状態で当該金属網11に固定される不織布(濾過手段)12と、金属網11に電気的に接続された通電加熱用の導線13(通電手段)とからなる。このうち金属網11は、Niが80重量%、Crが20重量%の金属線(φ0.32mm)を開口度合が24メッシュになるように平織されたものである。そして、金属網11は、その表面に形成されたアルミナのウォッシュコート層(不図示)を有しており、ウォッシュコート層の表面に白金粉(不図示)が担持されている。なお、金属網11は、開孔率が70%であった。そして、担持される白金粉の粒径は50Å〜100Åであり、その担持量は0.25g/m2であった。また、不織布12は、繊維径10μmのアルミナ長繊維からなものであり、平均開孔径は約0.12μmであった。そして、金属網11と不織布12とからなるフィルター10は、全体厚さTが約1.0mm、幅が300mm、長さが3m、両端間の電気抵抗値は8.3Ωであった。
【0019】
このフィルター10は、図2に示されるように、蛇行状態に折り曲げられた状態で箱体(400mm×550mm×300mm)14に収容されており、フィルターが収容された箱体をフィルターユニット(以下、単にユニットとも称する)20として用いている。図示されるように、箱体14は処理対象気体の吸入口14aと、微生物を除去した気体の排出口14bとを有する。また、箱体14の外側にフィルター10の導線13が引き出されている。なお、フィルター10の通電加熱に用いる電源との結線方法(構造)については図示および説明を省略した。
【0020】
このフィルターユニット20を用いて、空気(処理対象気体)から微生物を除去する処理を行った。その手順を説明する。まず、図示しないポンプを用いて吸入口14aからユニット20内に空気を60分間連続的に送り込んだ(通風工程)。送り込まれた空気はユニット20内のフィルター10を透過するので、このとき空気中の微生物がフィルター10の不織布12に捕捉され、空気中から微生物が除去される。微生物が除去された空気は、排出口14bからユニット20の外に排出される。その後、空気の送り込みを停止させて、金属網11を5分間通電加熱した(熱分解工程)。金属網11を加熱すると、フィルター10に捕捉された微生物などの有機物が有機性ガスとなり、有機性ガスが触媒燃焼によって熱分解する(熱分解工程)。これにより、微生物のフィルター上における増殖や蓄積が防止され、フィルター10の目づまりや、フィルターユニット20から排出される処理済み気体中への微生物の混入が防止される。その後、通電加熱を停止させて、フィルター10を約5分間自然放冷した(冷却工程)。放冷後、再び空気(処理対象気体)をユニット20内に送り込み、フィルターで空気中の微生物を捕捉し、微生物が除去された空気を空気中に戻す。このようにして一連の工程を繰り返すことにより、微生物の除去処理を連続的に行った。
【0021】
そして、このような微生物除去処理の途中で、ユニット20の入口14aおよび出口14bの空気を採取し、空気中の一般細菌数(コロニー数)を比較してフィルターの微生物捕捉性能を評価した。なお、空気の流速はアルミナ長繊維からなる不織布12を透過する位置(不織布表面)での流速であり、表1のとおりである。そして、表1中の「一般細菌数」は、採取した1リットルの大気を用いて標準寒天培地法で培養された落下細菌(コロニー)の数である。また、ユニット20の入口14aと出口14bとの間の圧力損失を測定した。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示されるように、空気の流速が2.0m/secを超えない条件であれば、高い捕捉率が得られた。そして、1.5m/secを超えない条件では、除去処理済みの空気中に細菌は検出されなかった。他方、流速が1.5m/sec以上の条件では、除去処理済みの空気中に細菌が検出され、微生物除去性能が低下することが解った。微生物除去性能が低下する理由は、フィルターのうち、アルミナ長繊維からなる不織布の一部の破損が原因であると考えられる。また、流速1.5m/sec以上で圧力損失が急増していることから、不織布の破損の原因はフィルターが大きな圧力を受けたことにあると考えられる。この結果、微生物除去能力を長期間安定して得るには、空気(処理対象気体)の流速はできるだけ遅い方がよく、具体的には2.0m/sec(圧力損失が850mmAq(mm水柱))を超えない範囲が好ましく、1.5m/sec(圧力損失が480mmAq)を超えない範囲がより好ましいことが解った。
【0024】
第2実施形態:不織布12の平均開孔径が異なるフィルター10を用いて、空気中から微生物を除去する処理を行い、フィルター10の微生物捕捉性能を評価した。本実施形態では空気の流速を約1.0m/secに安定させた。これら以外の条件は第1実施形態と同様であった。結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2に示されるように、平均開孔径が5.3μmの不織布12を用いれば94%という高い捕捉率で一般細菌を捕捉できることから、平均開孔径が5.0μm以下のアルミナ長繊維からなる不織布12であれば、一般細菌を高い率で捕捉でき好ましいことが解った。そして、平均開孔径が1.2μm以下のものを用いると一般細菌を全て捕捉でき、より好ましいことが解った。なお、微生物のサイズは種類によって様々であるが、捕捉対象としているバクテリア類は約1μm前後の大きさであり、この点からも、アルミナ長繊維からなる不織布(濾過手段)12の平均開孔径は1.2μm以下が好ましいと考えられる。また、カビ類の一般的な大きさは0.1μmから1.0μmであり、ウィルス類の一般的な大きさは0.1μm以下であることから、これらを確実に捕捉できる不織布(濾過手段)が好ましい。つまり、平均開孔径が1.0μm以下(0.1μm以上)のものを用いるのが好ましく、平均開孔径が0.1μm以下(0.01μm以上)のものを用いるのがより好ましい。
【0027】
第3実施形態:金属網の開孔率が異なるフィルターを用いて、金属網を通電加熱することによる有機物の熱分解性能を評価した。本実施形態では、SUS304製の線材(φ0.32mm)からなる網を用意して網表面にウォッシュコート層を形成し、このウォッシュコート層上に、担持量が0.20g/m2になるように白金を担持させたものを金属網として用いた。なお、金属網には通電用の導線が接続されており、金属網の両端間の電気抵抗値は8.3Ωであった。また、金属網のメッシュ数を変えることで開孔率を変えた。これら以外のフィルターの条件は第1実施形態と同じであった。
【0028】
このようなフィルターを断面四角形状の筒状のフィルターユニット内に、通路を遮るように設置し、金属網を通電加熱した状態で、アンモニアガス(有機性ガス)の濃度が100ppmに調製された常温の大気を流速1.0m/secで送り込んだ。そして、フィルターユニット出口におけるアンモニア濃度を測定することで触媒燃焼性能を評価した。なお、本実施形態では、フィルター透過直後の気体温度が225℃になるように金属網を通電加熱した。また、金属網の開孔率との関係で、金属網による不織布のサポート力を評価した。具体的にはアルミナ長繊維からなる不織布の破損状況に基づいてサポート力を評価した。
【0029】
【表3】
【0030】
表3から解るように、金属網の開孔率が70%以下の場合、触媒燃焼によってアンモニアを完全に熱分解することができたが、開孔率がこれを超えると、アンモニアを完全には分解できなかった。開孔率が高いと通電加熱の熱が逃げやすく、微生物の熱分解効率が低くなるからであると考えられる。また、金属網の開孔率が70%を超えると、フィルターの骨材でもある金属網で不織布全体を十分に支えること(サポートすること)ができなくなり不織布の一部が破損した。金属網の開孔率が大きすぎて、空気(処理対象気体)から受ける送風圧力に不織布が耐えきれず破損したと考えられる。また、金属網の開孔率が40%以下になると、圧力損失が急増した。圧力損失が大きい構造はガスの流通量を大きく取ることが難しい構造であり、処理量を増やすにはより大型のフィルターを装着する必要があるなど、コスト面で好ましいものではない。また、大きさの異なるフィルターを装着できるように装着部の構造を工夫する必要があるといった煩雑さが生ずる。
【0031】
これらの結果、金属網としては、開孔率が40%より大きく、かつ80%より小さいものが好ましく、50%〜75%のものがより好ましいことが解った。本実施形態の金属網の骨材は金網状であるが、試験の結果、骨材が織布状、エクスパンドメタル状あるいは多孔板状のものであっても同様の結果が得られることが解った。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、本発明のフィルターを用いれば、処理対象気体中の微生物を迅速かつ確実に捕捉することで処理対象気体中の微生物を迅速かつ確実に除去でき、捕捉した微生物のフィルター上での増殖及び蓄積を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態のフィルターの構造を示す部分拡大断面図。
【図2】図1に示されるフィルターが設置されたフィルターユニットの構成を示す概略図。
【符号の説明】
10 フィルター
11 金属網
12 不織布(濾過手段)
13 導線(通電手段)
14 箱体
20 フィルターユニット
Claims (8)
- 耐熱性を有する繊維からなる濾過手段が用いられている微生物除去用のフィルターであって、
前記濾過手段に接する金属網と、当該金属網を通電加熱する手段とを備えており、金属網の表面または濾過手段となる耐熱性繊維の表面の少なくともいずれか一方に貴金属触媒が担持されている微生物除去用のフィルター。 - 金属網は、Ni−Cr合金、Fe−Cr合金またはステインレス製の導電体である請求項1に記載の微生物除去用のフィルター。
- 金属網は、平均開孔率が50%〜75%である請求項1または請求項2に記載の微生物除去用のフィルター。
- 貴金属触媒は、金属網の上に被覆された厚さが300μm以下のアルミナウォッシュコーティング層の上に担持されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の微生物除去用のフィルター。
- 貴金属触媒は、Pt,Pd,Rh,Irのうちから選択される金属、または選択される複数の金属からなる合金である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の微生物除去用のフィルター。
- 濾過手段は、平均開孔径が0.01μm〜5μmである請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の微生物除去用のフィルター。
- 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のフィルターに接するように処理対象の気体を流通させる工程と、金属網を通電加熱してフィルターに捕捉された微生物を燃焼させる工程とを有する微生物の処理方法。
- フィルターに接する位置での処理対象気体の流速は、0.1m/s〜1.5m/s以下である請求項7に記載の微生物の処理方法。
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CN111467902A (zh) * | 2020-05-21 | 2020-07-31 | 珠海格力电器股份有限公司 | 过滤网组件及具有其的空气净化器 |
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-
2002
- 2002-10-09 JP JP2002295768A patent/JP2004130173A/ja active Pending
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