JP2004128760A - 水中音源装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】パラメトリック効果による低周波音波を送波する水中音源装置を提供する。
【解決手段】パラメトリック送波器40と、パラメトリック送波器を駆動する駆動電源10と、パラメトリック送波器の開口長を変化させる可変手段50と、音響媒質の温度、吸収係数、非線形係数のうち、少なくとも1つの物理量を計測する手段31、32と、物理量を参照して、駆動電源の出力及び可変手段を制御する制御装置30とを備える。
【効果】周囲の状態に応じて、パラメトリックアレイのビーム幅が常にほぼ一定になるように制御でき、安定した高い方位分解能を維持できる。
【選択図】 図1
【解決手段】パラメトリック送波器40と、パラメトリック送波器を駆動する駆動電源10と、パラメトリック送波器の開口長を変化させる可変手段50と、音響媒質の温度、吸収係数、非線形係数のうち、少なくとも1つの物理量を計測する手段31、32と、物理量を参照して、駆動電源の出力及び可変手段を制御する制御装置30とを備える。
【効果】周囲の状態に応じて、パラメトリックアレイのビーム幅が常にほぼ一定になるように制御でき、安定した高い方位分解能を維持できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、音響非線形効果により、低周波数の音波を送波する小型な水中音源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
海底の堆積層に埋没している物体の探知あるいは識別などを行なうためには、堆積層内に音波を透過させる必要がある。しかし、高い分解能を得るために高周波数の音波を用いると、堆積層表面でほとんど反射してしまい、堆積層内には十分な音波が透過しない。さらに、透過した音波も高い周波数ほど減衰が大きいため、埋没物体からの反射波を検出することは非常に困難になる。
【0003】
このため、埋没物体の探知などには数kHzの低周波数の音波を使用するのが望ましい。一方、音源の寸法D及び音波の波長λと、音波のビーム幅γとの間には、γ=λ/Dの関係があり、送波する音波の周波数が低くした場合には、波長λが大きくなる。従って、高い方位分解能を得るためには、低周波数になるにつれて、音源の寸法を大きくし、ビーム幅を小さくすればよいが、航走体や曳航体に音源を搭載する場合には、音源の寸法や重量に制限をうける。
【0004】
そこで、小型な音源で低周波数の音波を送波するために、パラメトリックアレイを利用することが周知となっている。パラメトリックアレイは、周波数が高く、指向性に優れる一次波のエネルギーの一部が、海水の非線形音響伝播により二次波の成分である差周波数成分にエネルギーが移り、差周波数成分に関して仮想的なエンドファイアアレイが形成されたのと等価になる効果を利用するものである。低周波数でありながら、副極のない非常に鋭いビームを、小型な音源で実現できる。さらに、この低周波数成分は、一次波の差音として発生するため、一次波の周波数をわずかにずらすだけで、広帯域な低周波数音源が実現できる。
【0005】
このようなパラメトリックアレイを海底の堆積層内の物体探知などへ適用したものとして、例えば、特許文献1がある。
【0006】
【特許文献1】
特開昭59−147257号公報
特許文献1では、パラメトリックアレイによるサブボトムプロファイラを構成し、ヘドロ層の厚さを計測するヘドロ探査機が記載されている。これは、パラメトリック効果により、鋭い指向性を有する低周波数の音波をヘドロ層に入射し、各層からの反射信号を受信すると共に、高周波数の音波も併用して、両者のラウンドトリップ時間差からヘドロ層の厚さを計測するものである。
【0007】
さらに、特許文献2には、パラメトリックアレイよりなる送波器により、鋭いビームを形成し、そのビーム方向を電子的あるいは機械的に走査することにより、埋没物体の広い領域における探知を行なうことが述べられている。
【0008】
【特許文献2】
特開平5−223923号公報
非特許文献1には、パラメトリックアレイ解析に用いられる放物型非線形偏微分方程式が記載されている。
【0009】
【非特許文献1】
鎌倉友男、「非線形音響学の基礎」、愛智出版、1996年、9月、p.198−202
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1、特許文献2に開示されているパラメトリックアレイは、理論上、低周波数で鋭いビームを小さな音源で送波することができる。このパラメトリックアレイのビーム幅は、音響媒質の物性値によって変化する。例えば、海中に気泡が存在するなどして、吸収定数が大きくなると、上記エンドファイアアレイの形成される領域が小さくなり、ビーム幅は大きくなる。また、気泡の存在は音響媒質の非線形数にも変化を与え、一般に非線形係数が大きくなるため、一次波は伝搬に伴い急激にひずみ、非線形吸収が生じることによって、やはり上記エンドファイアアレイの形成される領域が小さくなり、ビーム幅が大きくなる。さらに、海中の深度や場所に依存する音速の変化もビーム幅に影響を与え、例えば、音速が上昇すると、一次波の伝搬に伴う波形ひずみが顕著になって、上記非線形係数の場合と同じ理由により、ビーム幅が大きくなる。このように、海水の状態や海中の気泡の存在によっては、安定した方位分解能が得られないという課題があった。
【0011】
本発明の目的は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、海水の状態や海中の気泡の存在に対して、常に安定したビーム幅でパラメトリックアレイを送波できる水中音源装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明による水中音源装置は、パラメトリック送波器と、パラメトリック送波器を駆動する駆動電源と、パラメトリック送波器の開口長を変化させることのできる可変手段と、音響媒質の温度、吸収係数、非線形係数のうち、少なくとも1つの物理量を計測する手段と、この物理量を参照して、駆動電源の出力及び可変手段を制御する制御装置とを備えている。このような水中音源装置において、温度が上昇した場合に、開口長を短くし、駆動電源の出力を増加させ、温度が低下した場合に、開口長を長くし、駆動電源の出力を低下させる。また、吸収係数が大きくなった場合に、開口長を短くし、駆動電源の出力を増加させ、吸収係数が小さくなった場合に、開口長を長くし、駆動電源の出力を低下させる。また、非線形係数が大きくなった場合に、駆動電源の出力を低下させ、非線形係数が小さくなった場合に、駆動電源の出力を増加させる、という制御を行なう。
【0013】
本発明の水中音源装置では、上記の制御を行なうことによって、常に安定したビーム幅のパラメトリックアレイが送波できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による実施例の水中音源装置の構成例を示した図である。図1の水中音源装置は、電気音響変換素子41〜46を送波アレイとして具備するパラメトリック送波器40と、パラメトリック送波器40を駆動する駆動電源10と、パラメトリック送波器40と駆動電源10の間に挿入され、電気音響変換素子41〜46へのそれぞれの入力のオン・オフを、スイッチ51〜56で切替える切替装置50と、音響媒質の温度を計測する温度センサ31と、パラメトリック送波器40の前方(パラメトリック送波器40による超音波の送波方向)に配置された音響センサ32と、温度センサ31及び音響センサ32からの出力を参照し、駆動電源10の出力及びスイッチ51〜56のオン・オフを制御する制御装置30とから構成されている。
【0015】
スイッチ51〜56は、リード線21によって並列に駆動電源10に接続されている。また、温度センサ31の出力は、リード線22によって制御装置30に伝えられ、音響センサ32の出力は、リード線23によって制御装置30に伝えられる。制御装置30の制御信号は、リード線24によって、駆動電源10へ伝送される。制御装置30の制御信号は、リード線25によって、切替装置50へ伝送される。制御装置30からリード線25によって伝送される制御信号によって、スイッチ51〜56は制御され、例えば、全てのスイッチ51〜56をオンにすれば、パラメトリック送波器40の開口長は最大となり、スイッチ41と46をオフにし、他のスイッチ42〜45をオンにすれば、開口長は最大開口長の2/3の長さになる。
【0016】
上述のような構成の水中音源装置において、制御装置30における制御方法を述べるにあたり、まずパラメトリック送波器から送波される二次波の特性について説明する。
【0017】
非特許文献1に記載されているように、二次波として送波されるパラメトリック差音の角周波数をω、一次波の中心角周波数をωm=nm・ωとし、パラメトリックアレイ解析に用いられる放物型非線形偏微分方程式を無次元表示すると、(数1)となる。
【0018】
【数1】
ここで、αはパラメトリック差音の周波数における吸収係数、Rdは一次波中心周波数ωmにおけるレイリー長、σDmは非線形性の強弱を表わす無次元パラメータ、aは送波面の半開口長、p0は送波面における音圧振幅、ρ、c、βはそれぞれ音響媒質の密度、音速、非線形係数である。σDmの値が小さいほど非線形性が強い。また、σは超音波の送波方向の位置zをレイリー長によって正規化した無次元位置を、ξはzと垂直な方向の位置xを半開口長aで正規化した無次元位置を、τはパラメトリック差音の角周波数ωによる無次元時間を、p’は音圧pを送波面における音圧振幅で正規化した無次元音圧を、それぞれ表わしている。
【0019】
(数1)から、パラメトリックアレイの物理的特性は、nm、α・Rd、σDmの三つの無次元量よって特徴付けられ、これらの値が等しい時には、同様のビームが形成されることがわかる。一次波及びパラメトリック差音の周波数が等しければ、パラメトリックアレイの物理的特性はα・RdとσDmによって一意的に決まる。従って、α・RdとσDmの値が一定になるように制御すれば、常に一定したビーム幅のパラメトリックアレイが形成されることになる。
【0020】
制御装置30は、予め、温度と音響媒質の音速との関係を示した較正曲線Aと、駆動電源10の出力とパラメトリック送波器40の送波面における一次波音圧振幅p0との関係を示した較正曲線Bと、温度及び波形歪み量と音響媒質の非線形係数との関係を示した較正曲線Cとを持っており、上述の物理的特性をもとに、温度センサ31によって得られる音響媒質の温度と、音響センサ32によって得られる、パラメトリック送波器40の一次波の伝搬特性を参照し、音響媒質の吸収係数α、非線形パラメータβ及び音速cを求める。
【0021】
まず、温度センサ31より得られた温度と、較正曲線Aを用いて、音響媒質の音速cを求め、既知の状態との変化量を求める。例えば、音速cが増加した場合には、α・Rdの値が減少するため、制御装置30は、α・Rdの値が一定値になるような半開口長aを計算し、その半開口長aに最も近い開口長となるように、切替装置50を操作して、半開口長aを長くする。次に、半開口長aが長くなると、σDmの値が大きくなるため、制御装置30は、σDmの値が一定値になるような音圧振幅p0を計算し、較正曲線Bを参照して、p0の値が大きくなるように駆動電源10の出力を増加させる制御を行なう。同様に、音速cが減少した場合には、半開口長aを短くし、駆動電源の出力が小さくなるように、制御を行なう。
【0022】
次に、音響センサ32より得られた音圧と、較正曲線Bを用いて、音響媒質の吸収係数αを求め、既知の状態との変化量を求める。例えば、吸収係数αが増加した場合には、α・Rdの値が増加するため、制御装置30は、α・Rdの値が一定値になるような半開口長aを計算し、その半開口長aに最も近い開口長となるように、切替装置50を操作して、半開口長aを短くする。次に、半開口長aが短くなると、σDmの値が小さくなるため、制御装置30は、σDmの値が一定値になるような音圧振幅p0を計算し、較正曲線Bを参照して、p0の値が小さくなるように駆動電源10の出力を低下させる制御を行なう。同様に、吸収係数αが減少した場合には、半開口長aを長くし、駆動電源の出力が大きくなるように、制御を行なう。
【0023】
次に、音響センサ32より得られた波形歪みと、較正曲線Cを用いて、音響媒質の非線形係数を求め、既知の状態との変化量を求める。例えば、非線形係数βが増加した場合には、σDmの値が減少するため、制御装置30は、σDmの値が一定値になるような音圧振幅p0を計算し、較正曲線Aを参照して、p0の値が小さくなるように駆動電源10の出力を低下させる制御を行なう。同様に、非線形係数βが減少した場合には、駆動電源10の出力が大きくなるように、制御を行なう。
【0024】
このように、α・RdとσDmの値が常にほぼ一定となるように制御されるため、常に安定したビーム幅のパラメトリックアレイが得られる。
【0025】
なお、非線形係数や吸収係数は、別途、送受波器を用いて測定しても良いし、上記の物理量の他、静水圧など他の物理量を計測して、α・RdとσDmの値が常にほぼ一定となるような制御を行なっても良い。
【0026】
本発明の水中音源装置では上述のような制御を行なうことにより、パラメトリックアレイのビーム幅が常にほぼ一定になるように制御できるので、常に鋭いビーム幅のパラメトリックアレイを形成することができ、海中の状態や気泡の影響などに左右されず、安定した高い方位分解能が得られる。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、海水の状態や海中の気泡の存在に対して、常に安定したビーム幅でパラメトリックアレイを送波できる水中音源装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施例の水中音源装置の構成例を示した図。
【符号の説明】
10…駆動電源、21〜25…リード線、30…制御装置、31…温度センサ、32…音響センサ、40…パラメトリック送波器、41〜46…電気音響変換素子、50…切替装置、51〜56…スイッチ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、音響非線形効果により、低周波数の音波を送波する小型な水中音源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
海底の堆積層に埋没している物体の探知あるいは識別などを行なうためには、堆積層内に音波を透過させる必要がある。しかし、高い分解能を得るために高周波数の音波を用いると、堆積層表面でほとんど反射してしまい、堆積層内には十分な音波が透過しない。さらに、透過した音波も高い周波数ほど減衰が大きいため、埋没物体からの反射波を検出することは非常に困難になる。
【0003】
このため、埋没物体の探知などには数kHzの低周波数の音波を使用するのが望ましい。一方、音源の寸法D及び音波の波長λと、音波のビーム幅γとの間には、γ=λ/Dの関係があり、送波する音波の周波数が低くした場合には、波長λが大きくなる。従って、高い方位分解能を得るためには、低周波数になるにつれて、音源の寸法を大きくし、ビーム幅を小さくすればよいが、航走体や曳航体に音源を搭載する場合には、音源の寸法や重量に制限をうける。
【0004】
そこで、小型な音源で低周波数の音波を送波するために、パラメトリックアレイを利用することが周知となっている。パラメトリックアレイは、周波数が高く、指向性に優れる一次波のエネルギーの一部が、海水の非線形音響伝播により二次波の成分である差周波数成分にエネルギーが移り、差周波数成分に関して仮想的なエンドファイアアレイが形成されたのと等価になる効果を利用するものである。低周波数でありながら、副極のない非常に鋭いビームを、小型な音源で実現できる。さらに、この低周波数成分は、一次波の差音として発生するため、一次波の周波数をわずかにずらすだけで、広帯域な低周波数音源が実現できる。
【0005】
このようなパラメトリックアレイを海底の堆積層内の物体探知などへ適用したものとして、例えば、特許文献1がある。
【0006】
【特許文献1】
特開昭59−147257号公報
特許文献1では、パラメトリックアレイによるサブボトムプロファイラを構成し、ヘドロ層の厚さを計測するヘドロ探査機が記載されている。これは、パラメトリック効果により、鋭い指向性を有する低周波数の音波をヘドロ層に入射し、各層からの反射信号を受信すると共に、高周波数の音波も併用して、両者のラウンドトリップ時間差からヘドロ層の厚さを計測するものである。
【0007】
さらに、特許文献2には、パラメトリックアレイよりなる送波器により、鋭いビームを形成し、そのビーム方向を電子的あるいは機械的に走査することにより、埋没物体の広い領域における探知を行なうことが述べられている。
【0008】
【特許文献2】
特開平5−223923号公報
非特許文献1には、パラメトリックアレイ解析に用いられる放物型非線形偏微分方程式が記載されている。
【0009】
【非特許文献1】
鎌倉友男、「非線形音響学の基礎」、愛智出版、1996年、9月、p.198−202
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1、特許文献2に開示されているパラメトリックアレイは、理論上、低周波数で鋭いビームを小さな音源で送波することができる。このパラメトリックアレイのビーム幅は、音響媒質の物性値によって変化する。例えば、海中に気泡が存在するなどして、吸収定数が大きくなると、上記エンドファイアアレイの形成される領域が小さくなり、ビーム幅は大きくなる。また、気泡の存在は音響媒質の非線形数にも変化を与え、一般に非線形係数が大きくなるため、一次波は伝搬に伴い急激にひずみ、非線形吸収が生じることによって、やはり上記エンドファイアアレイの形成される領域が小さくなり、ビーム幅が大きくなる。さらに、海中の深度や場所に依存する音速の変化もビーム幅に影響を与え、例えば、音速が上昇すると、一次波の伝搬に伴う波形ひずみが顕著になって、上記非線形係数の場合と同じ理由により、ビーム幅が大きくなる。このように、海水の状態や海中の気泡の存在によっては、安定した方位分解能が得られないという課題があった。
【0011】
本発明の目的は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、海水の状態や海中の気泡の存在に対して、常に安定したビーム幅でパラメトリックアレイを送波できる水中音源装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明による水中音源装置は、パラメトリック送波器と、パラメトリック送波器を駆動する駆動電源と、パラメトリック送波器の開口長を変化させることのできる可変手段と、音響媒質の温度、吸収係数、非線形係数のうち、少なくとも1つの物理量を計測する手段と、この物理量を参照して、駆動電源の出力及び可変手段を制御する制御装置とを備えている。このような水中音源装置において、温度が上昇した場合に、開口長を短くし、駆動電源の出力を増加させ、温度が低下した場合に、開口長を長くし、駆動電源の出力を低下させる。また、吸収係数が大きくなった場合に、開口長を短くし、駆動電源の出力を増加させ、吸収係数が小さくなった場合に、開口長を長くし、駆動電源の出力を低下させる。また、非線形係数が大きくなった場合に、駆動電源の出力を低下させ、非線形係数が小さくなった場合に、駆動電源の出力を増加させる、という制御を行なう。
【0013】
本発明の水中音源装置では、上記の制御を行なうことによって、常に安定したビーム幅のパラメトリックアレイが送波できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による実施例の水中音源装置の構成例を示した図である。図1の水中音源装置は、電気音響変換素子41〜46を送波アレイとして具備するパラメトリック送波器40と、パラメトリック送波器40を駆動する駆動電源10と、パラメトリック送波器40と駆動電源10の間に挿入され、電気音響変換素子41〜46へのそれぞれの入力のオン・オフを、スイッチ51〜56で切替える切替装置50と、音響媒質の温度を計測する温度センサ31と、パラメトリック送波器40の前方(パラメトリック送波器40による超音波の送波方向)に配置された音響センサ32と、温度センサ31及び音響センサ32からの出力を参照し、駆動電源10の出力及びスイッチ51〜56のオン・オフを制御する制御装置30とから構成されている。
【0015】
スイッチ51〜56は、リード線21によって並列に駆動電源10に接続されている。また、温度センサ31の出力は、リード線22によって制御装置30に伝えられ、音響センサ32の出力は、リード線23によって制御装置30に伝えられる。制御装置30の制御信号は、リード線24によって、駆動電源10へ伝送される。制御装置30の制御信号は、リード線25によって、切替装置50へ伝送される。制御装置30からリード線25によって伝送される制御信号によって、スイッチ51〜56は制御され、例えば、全てのスイッチ51〜56をオンにすれば、パラメトリック送波器40の開口長は最大となり、スイッチ41と46をオフにし、他のスイッチ42〜45をオンにすれば、開口長は最大開口長の2/3の長さになる。
【0016】
上述のような構成の水中音源装置において、制御装置30における制御方法を述べるにあたり、まずパラメトリック送波器から送波される二次波の特性について説明する。
【0017】
非特許文献1に記載されているように、二次波として送波されるパラメトリック差音の角周波数をω、一次波の中心角周波数をωm=nm・ωとし、パラメトリックアレイ解析に用いられる放物型非線形偏微分方程式を無次元表示すると、(数1)となる。
【0018】
【数1】
ここで、αはパラメトリック差音の周波数における吸収係数、Rdは一次波中心周波数ωmにおけるレイリー長、σDmは非線形性の強弱を表わす無次元パラメータ、aは送波面の半開口長、p0は送波面における音圧振幅、ρ、c、βはそれぞれ音響媒質の密度、音速、非線形係数である。σDmの値が小さいほど非線形性が強い。また、σは超音波の送波方向の位置zをレイリー長によって正規化した無次元位置を、ξはzと垂直な方向の位置xを半開口長aで正規化した無次元位置を、τはパラメトリック差音の角周波数ωによる無次元時間を、p’は音圧pを送波面における音圧振幅で正規化した無次元音圧を、それぞれ表わしている。
【0019】
(数1)から、パラメトリックアレイの物理的特性は、nm、α・Rd、σDmの三つの無次元量よって特徴付けられ、これらの値が等しい時には、同様のビームが形成されることがわかる。一次波及びパラメトリック差音の周波数が等しければ、パラメトリックアレイの物理的特性はα・RdとσDmによって一意的に決まる。従って、α・RdとσDmの値が一定になるように制御すれば、常に一定したビーム幅のパラメトリックアレイが形成されることになる。
【0020】
制御装置30は、予め、温度と音響媒質の音速との関係を示した較正曲線Aと、駆動電源10の出力とパラメトリック送波器40の送波面における一次波音圧振幅p0との関係を示した較正曲線Bと、温度及び波形歪み量と音響媒質の非線形係数との関係を示した較正曲線Cとを持っており、上述の物理的特性をもとに、温度センサ31によって得られる音響媒質の温度と、音響センサ32によって得られる、パラメトリック送波器40の一次波の伝搬特性を参照し、音響媒質の吸収係数α、非線形パラメータβ及び音速cを求める。
【0021】
まず、温度センサ31より得られた温度と、較正曲線Aを用いて、音響媒質の音速cを求め、既知の状態との変化量を求める。例えば、音速cが増加した場合には、α・Rdの値が減少するため、制御装置30は、α・Rdの値が一定値になるような半開口長aを計算し、その半開口長aに最も近い開口長となるように、切替装置50を操作して、半開口長aを長くする。次に、半開口長aが長くなると、σDmの値が大きくなるため、制御装置30は、σDmの値が一定値になるような音圧振幅p0を計算し、較正曲線Bを参照して、p0の値が大きくなるように駆動電源10の出力を増加させる制御を行なう。同様に、音速cが減少した場合には、半開口長aを短くし、駆動電源の出力が小さくなるように、制御を行なう。
【0022】
次に、音響センサ32より得られた音圧と、較正曲線Bを用いて、音響媒質の吸収係数αを求め、既知の状態との変化量を求める。例えば、吸収係数αが増加した場合には、α・Rdの値が増加するため、制御装置30は、α・Rdの値が一定値になるような半開口長aを計算し、その半開口長aに最も近い開口長となるように、切替装置50を操作して、半開口長aを短くする。次に、半開口長aが短くなると、σDmの値が小さくなるため、制御装置30は、σDmの値が一定値になるような音圧振幅p0を計算し、較正曲線Bを参照して、p0の値が小さくなるように駆動電源10の出力を低下させる制御を行なう。同様に、吸収係数αが減少した場合には、半開口長aを長くし、駆動電源の出力が大きくなるように、制御を行なう。
【0023】
次に、音響センサ32より得られた波形歪みと、較正曲線Cを用いて、音響媒質の非線形係数を求め、既知の状態との変化量を求める。例えば、非線形係数βが増加した場合には、σDmの値が減少するため、制御装置30は、σDmの値が一定値になるような音圧振幅p0を計算し、較正曲線Aを参照して、p0の値が小さくなるように駆動電源10の出力を低下させる制御を行なう。同様に、非線形係数βが減少した場合には、駆動電源10の出力が大きくなるように、制御を行なう。
【0024】
このように、α・RdとσDmの値が常にほぼ一定となるように制御されるため、常に安定したビーム幅のパラメトリックアレイが得られる。
【0025】
なお、非線形係数や吸収係数は、別途、送受波器を用いて測定しても良いし、上記の物理量の他、静水圧など他の物理量を計測して、α・RdとσDmの値が常にほぼ一定となるような制御を行なっても良い。
【0026】
本発明の水中音源装置では上述のような制御を行なうことにより、パラメトリックアレイのビーム幅が常にほぼ一定になるように制御できるので、常に鋭いビーム幅のパラメトリックアレイを形成することができ、海中の状態や気泡の影響などに左右されず、安定した高い方位分解能が得られる。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、海水の状態や海中の気泡の存在に対して、常に安定したビーム幅でパラメトリックアレイを送波できる水中音源装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施例の水中音源装置の構成例を示した図。
【符号の説明】
10…駆動電源、21〜25…リード線、30…制御装置、31…温度センサ、32…音響センサ、40…パラメトリック送波器、41〜46…電気音響変換素子、50…切替装置、51〜56…スイッチ。
Claims (4)
- パラメトリック送波器と、前記パラメトリック送波器を駆動する駆動電源と、前記パラメトリック送波器の開口長を変化させる可変手段と、音響媒質の温度、吸収係数、非線形係数のうち、少なくとも1つの物理量を計測する手段と、前記物理量を参照して、前記駆動電源の出力及び前記可変手段を制御する制御装置とを備えることを特徴とする水中音源装置。
- 請求項1に記載の水中音源装置において、前記温度が上昇した場合に、前記開口長を短くし、前記駆動電源の出力を増加させ、前記温度が低下した場合に、前記開口長を長くし、前記駆動電源の出力を低下させることを特徴とする水中音源装置。
- 請求項1に記載の水中音源装置において、前記吸収係数が大きくなった場合に、前記開口長を短くし、前記駆動電源の出力を増加させ、前記吸収係数が小さくなった場合に、前記開口長を長くし、前記駆動電源の出力を低下させることを特徴とする水中音源装置。
- 請求項1に記載の水中音源装置において、前記非線形係数が大きくなった場合に、前記駆動電源の出力を低下させ、前記非線形係数が小さくなった場合に、前記駆動電源の出力を増加させることを特徴とする水中音源装置。
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