JP2004128331A - 多孔質半導体 - Google Patents

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Chihiro Kawai
河合 千尋
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Abstract

【課題】殺菌や有機物分解を極めて効率よく行うことができる濾過フィルターを提供する。特に発光効率が大きい多孔質半導体を用いた濾過フィルターを提供する。
【解決手段】多孔質基材とその上に形成された多孔質半導体膜からなる多孔質半導体であって、多孔質半導体膜が、多孔質基材に対して垂直に成長した第一の柱状体と、該第一の柱状体の表面を起点として任意の方向に成長した第二の柱状体、さらにはその第二の柱状体の表面を起点として任意の方向に成長した第三の柱状体、さらにはこれを繰り返して第n番目(nは2以上の整数)の柱状体からなる、フラクタル構造を持つことを特徴とする多孔質半導体。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔質半導体、特に紫外線発光機能を持ち、有機物、細菌、ウィルス、その他の有害物質の捕集並びに捕集物の殺菌及び分解を行うための濾過フィルターとして有用な多孔質半導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体発光デバイスには、短波長を発光する半導体材料・素子が要求されている。特に、バンドギャップが大きい、すなわち大凡の波長が400nm以下の紫外線を発光する素子は、光触媒の光源として使用できること、及び殺菌機能を付与できることから期待されている。
【0003】
紫外線を発光する半導体材料としてはGaNやAlN、ZnO、またはダイヤモンドなどが知られている。これらの材料のバンドギャップとそれに対応する発光波長は、GaNが3.39eV、366nm、AlNが6.2eV、200nm、ZnOが3.35eV、370nm、ダイヤモンドが5.47eV、227nmであり、Al−Ga−N三元系半導体では、3.3eV〜6.2eV、200〜366nmまで可変の値を取る。近年は、これら半導体の発光ダイオードやレーザーダイオードへの応用研究、さらには、受光素子(フォトダイオード)への応用研究が盛んに行われている。
【0004】
一般的には、紫外線は約100〜400nm程度の波長を持つ電磁波を意味するが、その波長によって、UV−A(325〜400nm)、UV−B(280〜325nm)、UV−C(100〜280nm)に大別される。UV−Cの内、100〜200nmの波長は真空紫外線と呼ばれる。これらの内、254nm線はウイルス、細菌等のDNAを直接破壊することから、強力な殺菌作用を持つことが知られており、紫外線ランプに使用されている。180〜254nm線は下水の浄化などの水処理に有用である。このほか、光造形には333〜364nm線が、紫外線硬化樹脂の硬化用には200〜400nm線が広く用いられる。現在これらの紫外線ほ、主として水銀ランプにより発生させている。最近では、環境に有害な水銀を用いない方法として、水銀ランプの替わりに半導体発光ダイオードを利用することが検討され、一部実用化もされている。
【0005】
一方、TiOなどを主成分とする光触媒にも紫外線光源が必要である。光触媒は主としてTiO微粒子からなり、紫外線を照射することで発生する酸素ラジカルが有機物や汚れを構成する分子に反応して、これを分解するものである。光触媒は、下水浄化、空気清浄機、有害ガスの分解装置などへ適用されている。光触媒作用を発現させるためには、TiO(アナターゼ型)のバンドギャップである3.2eV以上のエネルギー(388nm以下の波長に相当する)を持つ紫外線を照射する必要があり、ここでもやはり、ブラックライトなどの水銀ランプが使用されている他、半導体発光ダイオードも検討され、一部実用化もされている。TiOの酸素の一部を窒素で置換したTiON系化合物は、400nm以上の可視光でも励起できる可視光感応型光触媒となることが分かっている。
【0006】
ウイルスや細菌、さらには有機物を効率よく殺菌するためには、これらを一旦捕集して、その捕集体に集中して紫外線を照射する必要がある。なぜなら、紫外線は空気中、または液体中で減衰しやすいためである。特に、下水処理などの浮遊物が多く存在する液中では極めて到達距離が小さく、原液中の浮遊物を一旦沈殿させたり、濾過膜で濾過したりした後に、紫外線を照射している。また、気体中では、雰囲気を紫外線減衰率の小さい窒素雰囲気にする、あるいは、出力の大きな水銀ランプを使用して到達距離を大きくしたりして対応している。しかし、これらの方法は大きなコストアップにつながるために実用化には大きな問題となっている。
【0007】
本発明者らは、殺菌や有機物分解を極めて効率よく行うことに関して鋭意検討した結果、紫外線発光するワイドバンドギャップ半導体材料を多孔質構造にすることにより、発光機能を持つ濾過フィルターとすることをすでに発明している。この内、本発明に関連する先行出願として下記発明が挙げられる。すなわち、多孔質基材と、多孔質基材に対して垂直に成長した柱状体からなる多孔体であって、エレクトロルミネッセンス、カソードルミネッセンスまたはフォトルミネッセンスにより、波長400nm以下の紫外線を発光する機能を持つことを特徴とする多孔質半導体である。これを濾過フィルターとして用いると、多孔質基材面と柱状体表面に電極を形成して電圧を印加しながら濾過することにより、濾過時に捕捉された有機物や細菌等に紫外線を照射して、濾過と同時に分解・殺菌できる新しい機能を持った濾過フィルターとすることができる。
【0008】
しかし、柱状体表面に電極を形成する際、柱状体の高さが揃っていない場合に、全ての柱状体先端と電極とを接触させることが困難であり、そのため全ての柱状体を発光させることができず、発光効率が小さいという課題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、流体中に含まれる有機物、細菌、ウイルス、その他の有害物質を捕集して、殺菌、分解するための濾過フィルターとして用いることができる発光機能を有する多孔質半導体であって、その発光効率が極めて高く、効率的に流体を処理することを可能にする多孔質半導体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、殺菌や有機物分解を極めて効率よく行うことに関して鋭意検討した結果、紫外線発光するワイドバンドギャップ半導体材料を多孔質構造にすることにより、発光機能を持つ濾過フィルターとすることができ、これにより上記課題を解決することができることを見い出した。
本発明はこの課題を解決すべくされたものであり、本発明の構成は以下の通りである。
【0011】
(1)多孔質基材とその上に形成されたエレクトロルミネッセンス、カソードルミネッセンスまたはフォトルミネッセンスによる発光機能を有する多孔質半導体膜からなる多孔質半導体であって、該多孔質半導体膜が、多孔質基材に対してほぼ垂直に成長した第一の柱状体と、該第一の柱状体の表面を起点として任意の方向に成長した第二の柱状体とからなるフラクタル構造を持つことを特徴とする多孔質半導体。
【0012】
(2)前記第二の柱状体の表面を起点として更に任意の方向への柱状体の成長を繰り返すことによって得られる、第1の柱状体、第2の柱状体、・・・及び第nの柱状体(nは3以上の整数)からなるフラクタル構造を持つことを特徴とする上記(1)記載の多孔質半導体。
【0013】
(3)第2番目以降の柱状体のその先端同士が結合していることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の多孔質半導体。
(4)多孔質半導体がZnO、GaN、AlNまたはダイヤモンドの少なくとも一種であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の多孔質半導体。
(5)多孔質半導体膜中にpn接合が形成されていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の多孔質半導体。
【0014】
(6)発光波長が400nm以下の紫外線を発光する機能を持つことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の多孔質半導体。
(7)発光波長が230〜270nmの紫外線を発光する機能を持つことを特徴とする上記(6)記載の多孔質半導体。
【0015】
(8)柱状体の先端部と多孔質基材の柱状体が形成された面の裏面とに導電性を持つ多孔質膜が電極として配置されていることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の多孔質半導体。
(9)柱状体の先端部に導電性を持つ多孔質膜設が電極として配置され、前記多孔質基材が導電性材料からなるものであって、他方の電極を構成していることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の多孔質半導体。
(10)柱状体の表面及び/または柱状体先端部の電極の柱状体側の面が光触媒機能を持つ粒子でコーティングされていることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の多孔質半導体。
【0016】
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の多孔質半導体からなる濾過フィルター。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の多孔質半導体は、多孔質基材上に第一の柱状体が基材とほぼ垂直に成長しており、さらに、その柱状体の表面から第二の柱状体が任意の方向に成長している。さらに好ましくは、第二の柱状体表面から微細な第三の柱状体が任意の方向に成長している。これが繰り返され、最終的には第n番目の柱状体まで成長して一種のフラクタル組織が形成されている。このような組織にすることにより、単位体積あたりの柱状体の数が増加するため、発光強度が大きく増加して高輝度の発光が可能になる。通常は第二の柱状体まで成長させるが、n値は3〜4程度までが実用的である。n値が大きくなるほど柱状体のサイズは小さくすることができる。
【0018】
次に、このような組織でpn接合を形成することができる。例えば、第一の柱状体をn型半導体、第二をi型(活性層)、第三をp型にすればp−i−n接合を形成できる。第一の柱状体の途中までをn型、そこから先端までをi型、第二をp型にしてもいい。このようなpn接合を形成することにより、高効率の発光が可能になる。
【0019】
さらに本発明では、第n番目の柱状体の先端部が互いに接触していることが好ましい。接触させることにより、電極形成時に、電極が柱状体のどこか一箇所に接触するだけで、全ての柱状体に均一に電圧が付加されることが可能になる。
【0020】
本発明を構成する半導体材料としては、波長が400nm以下の紫外線を発光することができるバンドギャップが約3.1eV以上の全ての半導体材料が対象となるが、そのうち、ZnO、GaN、AlN、ダイヤモンド、ZnS、ZnSeが好ましい。しかし、候補となる半導体材料はこれらに限られない。なぜなら、半導体材料を数nm程度まで微細化すると、量子サイズ効果により、その材料が本来持つバンドギャップに相当する波長よりも、より短い波長での発光が可能となるからである。その意味では、GaAs+Siなども候補となり得る。しかし、殺菌に有効な254nm程度の発光を得るためには元々のバンドギャップが大きい材料を使うことが好ましい。
【0021】
半導体層が254nmの紫外線を発光する場合には強力な殺菌作用を持つ。従って殺菌に関しては半導体層が230〜270nmの紫外線を発光することが好ましい。また紫外線は、その波長が短いほど高いエネルギーを持ち、化学結合を直接切断する機能が向上するため、有機物分解に関しては、短波長ほど好ましい。とりわけ180〜260nmほどの深紫外線は有機物分解には最適である。一方、300〜400nmの紫外線は、化学結合を直接切断する機能は小さいが、この場合は、柱状体の表面及び/又は柱状体の先端部に配置されている電極の柱状体側の面を、光触媒機能を持つ粒子でコーティングすることにより有機物の分解が可能になる。すなわち、光触媒機能を持つ粒子がこの紫外線を吸収して励起されて活性酸素ラジカルを発生し、これが有機物と反応して有機物を分解する。もちろん、300nm以下の紫外線と光触媒とを組み合わせてもよい。
【0022】
多孔質基材としては、紫外線耐性があり、かつ半導体層を形成するためにある程度の耐熱性が必要であることから、セラミックス又は金属材料を用いることが好ましい。
【0023】
本発明の多孔質半導体には、柱状体の表面と多孔質基材の裏面(柱状体が形成されている面とは反対の面)に、導電性を持つ多孔質電極が形成されていることが好ましい。これにより、電流注入型の発光素子として機能させえる。この発光素子は濾過フィルターの役割も併せ持っているので、電極は多孔質である必要がある。この多孔質という意味は、▲1▼材質自体が多孔質であり、多孔質電極中の細孔を通って被濾過流体が濾過される場合と、▲2▼材質自体は多孔質ではないが、電極形状を工夫することにより、被濾過流体を通過せしめる働きをする場合とがある。▲1▼では、インジウム−スズ系酸化物(ITO)を多孔質化したもの等が候補となり、▲2▼では、メッシュ状の金属薄板や、櫛形形状の金属薄板等が候補となる。
しかし、多孔質基材として金属、又はSiC、GaNなどの導電性セラミックスを用いると、これらが同時に電極となるので、多孔質基材の裏面に電極を配置する必要がなく、発光素子を作製するときに都合がよい。
【0024】
本発明の多孔質半導体の柱状体表面及び/または柱状体先端部の電極の柱状体側の面に、光触媒機能を持つ材料をコーティングしておくとさらに好ましい。光触媒機能を持つ材料としては、TiO微粒子等がある。柱状体から発光した400nm以下の波長の紫外線は光触媒を励起して有機物を分解する機能を発現する。TiOに一部窒素を固溶することにより、400nm以上の波長の光にも感応する光触媒が得られており、この場合は、多孔質半導体層からの発光波長は、400nm以上でもかまわない。
【0025】
次に、本発明の多孔質半導体の製法について、ZnOを例とし、図1に基づいて説明する。
まず、多孔質基材上にZnOウィスカーを成長させる(図1(a)参照)。
この場合、ZnOウィスカーの製法としては、大気開放型CVD法(特開2002−105642号公報)が知られており、これを利用すればよい。
例えば、原料として亜鉛のアルコキシドであるZn(Cを130℃程度で昇華させて、Arガスにより搬送し、これをスリット状のノズルから多孔質基材に垂直に噴射することにより、配向性を持ったZnOウィスカーが得られる。基材温度を550〜600℃程度にすると、基材との密着力が向上する。本法は大気圧でウィスカーが成長するため、多孔質半導体膜の低コストプロセスとして実用性が高い。
【0026】
次に、ウィスカーの先端近傍部のみに、スパッタリング法等で金属薄膜(例えばAu薄膜)をコーティングする(図1(b)参照)。厚さは30Å以上あればよい。
次に、ZnOとグラファイトの混合粉末を用意し、これをアルミナボートに装填する。アルミナボートの横に前記の試料を設置し、両者をArガス中で加熱しながら、1000℃程度まで加熱するとZnOウィスカーのAuをコーティングした部分に微細なZnOウィスカーが析出し、それらの成長末端部ではウィスカーが結合する(図1(c)参照)。
【0027】
この理由は以下の通りである。すなわち、ZnOとグラファイトの反応によりZnガスとCOガスが生成する。ZnガスはAu(融点は1040℃)と反応してZn−Au系合金となるが、この合金はAuよりも融点が低下するため、加熱中に液相となる。この液相にCOガスも溶け込み、再びZnOとして析出する時にウィスカー形状となるのである。
【0028】
この微細ウィスカーの一部の表面にメッシュ状の電極を鑞付けにより接着させると、微細ウィスカー同士が互いに結合しているため、全ての微細ウィスカー、および第一のウィスカー全体に電圧が付加されることになるため、生成した全てのウィスカーが発光することができるのである(図1(d)参照)。
【0029】
次に、pn接合を形成する手法を図2に基づいて説明する。
まずAlをドープしながら第一のウィスカーを成長させる(図2(a)参照)。一定の長さに達した段階で、Alドープを中止してさらに成長させて第一のZnOウィスカーを得る(図2(b)参照)。次いで、図1と同様に第二の微細ウィスカーを、Pをドープしながら成長させる(図2(c)、(d)参照)。これに電極を形成すると、p−i−n接合が形成された発光デバイスとなる(図2(e)参照)。このタイプの発光デバイスは、i型ZnO部に励起子の閉じこめ効果が起こるために、p−i−n接合を形成しない時より、高輝度での発光が可能になる。尚、ZnOをn型にするにはAl以外にGa等が、p型にするには、P以外にN、Asなどの元素を添加すればよい。
【0030】
尚、上記の説明では、半導体材料としてZnOを用いる場合について述べたが、前述したように、本発明における半導体材料はZnOに限定されるものではなく、GaNやAlN、あるいはこれらの混晶、ZnS、ZnSe等でもよい。
【0031】
【実施例】
[実施例1]
基材として、直径25mm、厚さ0.5mmのSiC多孔体(気孔率50%、平均細孔径0.2μm)を用いた。
ウイスカー成長装置としては図3に示される大気開放型CVD装置を使用し、気化器1にアセチルアセトナト亜鉛(Zn(C)、気化器2にAl(OCを装填した。それぞれは、115℃、210℃で気化させた。
【0032】
(試料1の作製)
気化器2は使用しなかった。
加熱台を550℃に加熱した。吹き出しスリットの下、20mmの位置にSiC基材を置いた。気化器に乾燥Arガスを流量1.5L/minで導入し、アセチルアセトナト亜鉛を大気圧雰囲気に放出し、基材上に100分間吹き付けた。アセチルアセトナト亜鉛は大気中で反応しZnOとなり、これが基材上に堆積し、長さ30μmのZnO配向ウィスカー集合体膜が生成した。生成したZnO配向ウィスカー膜の優先配向方向(0001)方位であった。
【0033】
(試料2の作製)
気化器2は使用しなかった。
最初は試料1と同様の条件でウィスカーを30μm高さで作製した。次に、成長させたウィスカーの先端近傍部のみに選択的にAuを0.01μmコーティングした。平均粒径1μmのZnO粉末と黒鉛粉末を100:100のモル比で混合し、混合粉末をアルミナボートに乗せ、これとAuをコーティングした試料を大気圧のAr気流中、温度925℃に保持した管状炉に挿入して30分加熱した。原料粉末は炉心管の中心に設置し、基材は中心よりやや低い温度域に保持された下流側に設置した。
加熱後、高さ30μmのZnOウィスカー表面には、第一のウィスカーよりも微細な直径0.2μm、長さ1.6μmのZnOウィスカーが生成していた。
【0034】
(試料3の作製)
気化器1、2を使用して試料3を作製した。
最初は試料1と同様の条件でウィスカーを作製した。噴射において、最初の85分はAl(OC成分を0.02L/minのAr流量で添加し、その後の15分は添加元素なしでウィスカーを成長させた結果、長さ30μmのZnO配向ウィスカー集合体膜が生成した。生成したZnO配向ウィスカー膜の優先配向方向(0001)方位であった。
次に、成長させたウィスカーの先端近傍部のみに選択的にAuを0.01μmコーティングした。
【0035】
平均粒径1μmのZnO粉末、PO(OC、及び黒鉛粉末を100:3:100のモル比で混合し、混合粉末をアルミナボートに乗せ、これとAuをコーティングした試料を大気圧のAr気流中、温度925℃に保持した管状炉に挿入して30分加熱した。原料粉末は炉心管の中心に設置し、基材は中心よりやや低い温度域に保持された下流側に設置した。
加熱後、高さ30μmのZnOウィスカー表面には、第一のウィスカーよりも微細な直径0.2μm、長さ1.6μmのZnOウィスカーが生成していた。
【0036】
[実施例2]
実施例1で作製したZnOウィスカー膜表面に、直径25mm、厚さ1μmのメッシュ状インジウム箔(細孔径5μmの貫通孔が空いた多孔体。気孔率50%)を設置し、真空中、温度180℃で加熱して、ZnOウィスカー膜表面に接着させた。これを用いて下記評価を行った。
【0037】
▲1▼電圧(5V)を印加して、発光波長と強度を測定した。
図4に発光強度の相対比較を示す。図(a)は試料1、(b)は試料2、(c)は試料3のスペクトルである。
約370nmに発光中心を持つスペクトルが得られたが、その発光強度は、試料1<試料2<試料3の順に強くなった。
この理由は、試料2は微細ウィスカーが生成し、ウィスカー生成密度が高くなったため、試料3では、微細ウィスカーが生成し、さらにp−i−n接合が形成されたためと考えられる。
【0038】
【発明の効果】
本発明品は、多孔質構造のワイドバンドギャップ半導体からなり、電圧印加等により、紫外線を発光させることができると共に、気体や液体中に存在する特定サイズの粒子を選択的に捕集する機能も兼ね備える。
本発明品をフィルターとして用いると、有機物や細菌、ウイルス等をフィルター表面または内部で捕捉し、さらに、捕捉したこれらの捕集物に対して、極めて近距離で紫外線を照射することができ、その結果、捕集物を分解・殺菌することができる極めてコンパクトサイズのフィルターとなる。
【0039】
本発明品は、大気中の汚染物質となるNOx、SOx.COガス、ディーゼルパテイキュレート、花粉、埃、ダニ等の分解除去、下水中に含まれる有機化合物の分解除去、一般の細菌、ウイルス等の殺菌光源、化学プラントで発生する有害ガスの分解、臭い成分の分解、照明用の紫外線光源、光触媒の光源、超純水製造装置における殺菌光源等、様々な分野に応用できる。
【0040】
本発明品は、有機物や細菌、ウイルス等をフィルターの表面又は内部で捕捉し、これに紫外線を当てて殺菌や分解をする機能を持つものである。ろ過フィルターとして考えると、細菌やウイルス等の被捕集物と多孔体の細孔径のサイズの関係によって物理的に100%捕集してしまうことが好ましいが、万一、フィルターの一部の構造が破壊されて被捕集物がフィルター中を透過してしまうことになっても、紫外線により分解や殺菌がなされるという利点がある。
【0041】
一方、フィルターの細孔径がこれらの細菌やウイルス等よりも大きい場合でもかまわない。この場合には、被捕集物はフィルターによって捕集されることなく透過する際に、紫外線照射により分解又は殺菌されることになる。このタイプのフィルターの場合、細孔径を被捕集物よりも大きくすることができるので、気体や液体の透過性能に優れたフィルターとすることができるという特長がある。多孔質半導体層中の細孔径が大きいほど透過性能は高くなるが、大きすぎると被捕集物に対する紫外線の照射距離が長くなり、減衰する場合がある。
【0042】
以上のことから、本発明品は次のように使用することも可能である。すなわち、相対的にサイズが大きな浮遊物等はフィルターのろ過機能で捕集し、分解や殺菌の対象となる比較的小さなものは、多孔質半導体層を透過する間に紫外線照射により分解や殺菌を行うこともできる。
【0043】
また、製品種としては、上記分野のあらゆるフィルターに展開でき、自動車排ガス処理用ハニカム材、空気清浄機用フィルター、下水濾過フィルター、各種浄水器、防虫剤などにも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多孔質半導体の製法の一例のプロセスを示す工程図である。
【図2】本発明の多孔質半導体の製法の他の例のプロセスを示す工程図である。
【図3】実施例で用いた大気開放型CVD装置の概略図である。
【図4】実施例で得られた試料1、試料2、試料3の発光波長と強度を表わすグラフである。

Claims (11)

  1. 多孔質基材とその上に形成されたエレクトロルミネッセンス、カソードルミネッセンスまたはフォトルミネッセンスによる発光機能を有する多孔質半導体膜からなる多孔質半導体であって、該多孔質半導体膜が、多孔質基材に対してほぼ垂直に成長した第一の柱状体と、該第一の柱状体の表面を起点として任意の方向に成長した第二の柱状体とからなるフラクタル構造を持つことを特徴とする多孔質半導体。
  2. 前記第二の柱状体の表面を起点として更に任意の方向への柱状体の成長を繰り返すことによって得られる、第1の柱状体、第2の柱状体、・・・及び第nの柱状体(nは3以上の整数)からなるフラクタル構造を持つことを特徴とする請求項1記載の多孔質半導体。
  3. 少なくとも最後に成長した柱状体の先端同士が結合していることを特徴とする請求項1又は2記載の多孔質半導体。
  4. 多孔質半導体がZnO、GaN、AlNまたはダイヤモンドの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質半導体。
  5. 多孔質半導体膜中にpn接合が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質半導体。
  6. 発光波長が400nm以下の紫外線を発光する機能を持つことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質半導体。
  7. 発光波長が230〜270nmの紫外線を発光する機能を持つことを特徴とする請求項6記載の多孔質半導体。
  8. 柱状体の先端部と多孔質基材の柱状体が形成された面の裏面とに導電性を持つ多孔質膜が電極として配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の多孔質半導体。
  9. 柱状体の先端部に導電性を持つ多孔質膜設が電極として配置され、前記多孔質基材が導電性材料からなるものであって、他方の電極を構成していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の多孔質半導体。
  10. 柱状体の表面及び/または柱状体先端部の電極の柱状体側の面が光触媒機能を持つ粒子でコーティングされていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の多孔質半導体。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の多孔質半導体からなる濾過フィルター。
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