JP2005026275A - 多孔質半導体デバイスとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】細菌や有機物分解を極めて効率よく行うことができるろ過フィルタを提供する。特に発光強度、発光効率が高く、半導体間のピッチよりも小さな粒子が捕捉できる発光する機能を有するろ過フィルタを提供する。
【解決手段】連通孔を有する多孔質基材の一面上に形成された半導体ウィスカー、上部電極、及び該多孔質基材の上部電極が形成された面の他の面に形成された下部電極からなる多孔質半導体デバイスであって、該半導体ウィスカーの隙間及び表面に絶縁性粒子からなる多孔質相が充填されデバイス全体が多孔質構造を有し、上部電極は絶縁性粒子とのみ接触し、エレクトロルミネッセンスによる発光機能を有することを特徴とする多孔質半導体デバイス、及び該半導体デバイスを用いたろ過フィルタ。
【選択図】 図1
【解決手段】連通孔を有する多孔質基材の一面上に形成された半導体ウィスカー、上部電極、及び該多孔質基材の上部電極が形成された面の他の面に形成された下部電極からなる多孔質半導体デバイスであって、該半導体ウィスカーの隙間及び表面に絶縁性粒子からなる多孔質相が充填されデバイス全体が多孔質構造を有し、上部電極は絶縁性粒子とのみ接触し、エレクトロルミネッセンスによる発光機能を有することを特徴とする多孔質半導体デバイス、及び該半導体デバイスを用いたろ過フィルタ。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレクトロルミネッセンスにより発光する機能を有する多孔質半導体デバイス、及びその製造方法、さらにはろ過フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体発光デバイスには、短波長を発光する半導体材料・素子が要求されている。特に、バンドギャップが大きい、すなわち大凡の波長が400nm以下の紫外線を発光する素子は、光触媒の光源や殺菌機能を付与できることから期待されている。
【0003】
紫外発光する半導体材料のバンドギャップとそれに対応する発光波長は、GaNが3.39eV、366nm、AlNが6.2eV、200nm、ZnOが3.35eV、370nm、ダイヤモンドが5.47eV、227nmであり、Al−Ga−N三元系半導体では、3.3eV〜6.2eV、200〜366nmまで可変の値をとる。近年は、これら半導体の発光ダイオードやレーザーダイオードへの応用研究、さらには、受光素子(フォトダイオード)への応用研究が盛んに行われている。
【0004】
一般的には、紫外線は約100〜400nm程度の波長を持つ電磁波を意味するが、その波長によって、UV−A(325〜400nm)、UV−B(280〜325nm)、UV−C(100〜280nm)に大別される。UV−Cの内、100〜200nmの波長は真空紫外線と呼ばれる。これらの内、254nm線はウイルス、細菌等のDNAを直接破壊することから、強力な殺菌作用を持つことが知られており、紫外線ランプに使用されている。180〜254nm線は下水の浄化などの水処理に有用である。このほか、光造形には333〜364nm線が、紫外線硬化樹脂の硬化用には200〜400nm線が広く用いられる。現在これらの紫外線は、主として水銀ランプにより発生させている。最近では、環境に有害な水銀を用いない方法として、水銀ランプの替わりに半導体発光ダイオードを利用することが検討され、一部実用化もされている。
【0005】
一方、TiO2などを主成分とする光触媒にも紫外線光源が必要である。光触媒は主としてTiO2微粒子からなり、紫外線を照射することで発生する酸素ラジカルが有機物や汚れを構成する分子に反応して、これを分解するものである。光触媒は、下水浄化、空気清浄機、有害ガスの分解装置などへ適用されている。光触媒作用を発現させるためには、TiO2(アナターゼ型)のバンドギャップである3.2eV以上のエネルギー(388nm以下の波長に相当する)を持つ紫外線を照射する必要があり、ここでもやはり、ブラックライトなどの水銀ランプが使用される他、半導体発光ダイオードも検討され、一部実用化もされている。
【0006】
ウイルスや細菌、さらには有機物を効率良く殺菌するためには、これらを一旦捕集して、その補集体に集中して紫外線を照射する必要がある。なぜなら、紫外線は空気中、又は液体中で減衰しやすいためである。特に、下水処理などにおける浮遊物が多く存在する液中では紫外線の到達距離が極めて小さく、原液中の浮遊物を一旦沈殿させたり、ろ過膜でろ過したりした後に、紫外線を照射している。また、気体中では、雰囲気を紫外線減衰率の小さい窒素雰囲気にするか、或いは、出力の大きな水銀ランプを使用して紫外線の到達距離を大きくすることによって対応している。しかし、これらの方法は大きなコストアップに通じるために実用化には大きな問題となっている。
【0007】
本発明者らは、殺菌や有機物分解を極めて効率良く行うことに関して鋭意検討した結果、紫外線発光するワイドバンドギャップ半導体材料を多孔質構造とすることにより、発光機能を有するろ過フィルタとすることを発明した。
この内、本発明に関連する先行技術として下記発明(特許文献1)が出願されている。すなわち、多孔質基板と、多孔質基板に対して垂直に成長した柱状体からなる多孔体であって、エレクトロルミネッセンス、カソードルミネッセンス又はフォトルミネッセンスにより、波長400nm以下の紫外線を発光する機能を有することを特徴とする多孔質半導体である。これをろ過フィルタとして用いると、多孔質基板と柱状体表面に電極を形成して電圧を印加しながらろ過することにより、ろ過時に捕捉された有機物や細菌等に紫外線を照射して、ろ過と同じに分解・殺菌できる新しい機能を持ったろ過フィルタとすることができる。
また、他の発明(特許文献2)では、多孔質基板上に電極を形成し、さらにその表面に、多孔質絶縁粒子層/多孔質半導体粒子層/多孔質絶縁粒子層を形成、さらにその表面に上部電極を形成して、上部電極と半導体粒子が接触しない構造としている。
【0008】
【特許文献1】
特願2002−292533
【特許文献2】
特願2002−321351
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1の技術では以下の課題がある。
イ.柱状の半導体の先端表面に直接電極を形成しているので、発光輝度を上げるため電圧を上げると絶縁破壊を起こして発光効率が低下する。
ロ.柱状の半導体の先端表面に直接電極を形成するのが困難であり、総ての柱状半導体が発光に寄与するとはいえず発光効率が良くない。
ハ.柱状の半導体間のピッチが大きいため、ピッチよりも小さな粒子が捕捉できない。
また、上記特許文献2の技術では下記の課題がある。
ニ.半導体として粉末粒子を用いているため、半導体粒子の結晶性が悪く、発光強度が低い。
したがって、本発明はこのような課題を解決しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、下記の構成とすることにより上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) 連通孔を有する多孔質基材の一面上に形成された半導体ウィスカー、上部電極、及び該多孔質基材の上部電極が形成された面の他の面に形成された下部電極からなる多孔質半導体デバイスであって、該半導体ウィスカーの隙間及び表面に絶縁性粒子からなる多孔質相が充填されデバイス全体が多孔質構造を有し、上部電極は絶縁性粒子とのみ接触し、エレクトロルミネッセンスによる発光機能を有することを特徴とする多孔質半導体デバイス。
【0011】
(2) 半導体ウィスカーが、バンドギャップが3.1eV以上の半導体材料からなることを特徴とする前記(1)記載の多孔質半導体デバイス。
(3) 半導体ウィスカーが、バンドギャップが4.0eV以上の半導体材料からなることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の多孔質半導体デバイス。
(4) 絶縁性粒子が、少なくとも光触媒機能を有する材料を含むことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の多孔質半導体デバイス。
(5) 半導体ウィスカーが、多孔質基板面に対して垂直に成長している構造を有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の多孔質半導体デバイス。
【0012】
(6) 電極が多孔質である、又は電極構造が多孔体構造を有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の多孔質半導体デバイス。
(7) 多孔質基材がSi3N4又はSiCからなることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の多孔質半導体デバイス。
(8) 前記(1)〜(7)のいずれかに記載の多孔質半導体デバイスを用いたろ過フィルタ。
【0013】
(9) (a)多孔質基材の一面に下部電極金属をコーティングする工程、
(b)多孔質基材の下部電極を形成した面の他の面に半導体ウィスカーを生成させる工程、
(c)絶縁体粒子の懸濁液を工程(b)で得られた多孔体でろ過して半導体ウィスカーの隙間及び表面に絶縁体粒子を充填する工程、及び
(d)絶縁体粒子の表面に上部電極を形成する工程
からなることを特徴とする多孔質半導体デバイスの製造方法。
【0014】
以下に本発明を詳細に説明する。
図1に本発明の多孔質半導体デバイスの構造概念の一例を示す。先ず、基材として連通孔を有する多孔質基板を用意する。平板状の基板では、これの一表面に電極(下部電極)を形成する。電極は導電性金属又は透明導電膜などが用いられる。この電極を形成した面と反対の表面には半導体ウィスカーが形成されている。半導体ウィスカーはランダムな方向に成長していてもよいし、基板面に対してほぼ垂直に成長していてもよい。
【0015】
このウィスカーはある間隔(ピッチ)で電極表面に密集して形成されている。ウィスカー間には絶縁性の粉末が充填される。
この粉末の粒径は当然ウィスカーのピッチよりも小さい必要がある。絶縁性粉末はウィスカーの隙間を埋め、ウィスカーの先端よりも高い位置まで充填されている。すなわち、絶縁性粉末の中にウィスカーが埋め込まれた構造になっており、基板面から最も離れた位置では絶縁性粉末の充填層のみからなる。さらに上部電極は絶縁性粉末の充填層の表面に形成されていることで、上部電極と半導体ウィスカーが接触しない構造となっている。上部電極と半導体ウィスカーとの距離は、絶縁がとれる距離であればよいが、好ましくは数μm〜数十μmである。
【0016】
上記デバイスは、電極間に交流電圧を印加することで、エレクトロルミネッセンスにより発光させることができる。基本的に印加する電圧が高いほど発光強度は高くなる。特許文献1の技術では、上部電極と半導体ウィスカーが直接接触しているために、印加電圧を高くすると絶縁破壊を生じ、発光強度が低下してしまうが、本発明では、上部電極が半導体ウィスカーと直接接触しない構造となっているため、印加電圧を高くしても絶縁破壊は生じず高輝度発光が可能となる。絶縁層の誘電率が大きいほど、発光層に導入される電子が多くなり高輝度発光が起こり易い。
【0017】
また、半導体ウィスカーの隙間に絶縁性粒子が充填されているために、細孔径が小さくなり、特許文献1の発明では捕捉できなかった小さな粒子や浮遊物も捕捉できるという特徴も発現する。
【0018】
本発明の半導体デバイスは、半導体ウィスカーが、バンドギャップが3.1eV以上の半導体材料からなることが好ましい。この時、発光波長は400nm以下の紫外線となる。特に、半導体ウィスカーがZnO、GaN、AlNの少なくとも一種以上からなることが好ましい。この場合、Ga−Al−N系の混晶を含む。また、Ga−Al−N系では、発光強度増大に寄与するInなどをドープすることも含む。
【0019】
半導体ウィスカーの材料としては、上記の材料単独でも発光するが、さらには、半導体ウィスカー中にGdを添加することが好ましい。この場合、半導体ウィスカーにはバンドギャップが4.0eV以上の半導体材料を選ぶことが好ましい。例えば、AlN、CaF2、ZnF2、Y2O3などがある。交流電圧印加により発生した電子は半導体ウィスカー中のGdイオンの電子を基底状態から励起状態まで励起し、再び基底状態に戻るときに波長約311nmの紫外線を放射する。半導体ウィスカーのバンドギャップが4.0eV未満の場合、Gdイオンから発生した紫外線の一部、あるいは多くが半導体ウィスカー自体で吸収されてしまうので好ましくない。
【0020】
基板層に成長する半導体ウィスカーは、Siウエハなどの単結晶基板を用いると、基板面に対して垂直に、一定の間隔(ピッチ)で成長する傾向がある。例えば、ZnOウィスカーはSiウエハ基板を用いると基板面に垂直に成長するが、多結晶SiC基板を用いるとZnOウィスカーはランダムな方向に成長する。一般には、基板面に垂直に成長する場合にウィスカーの結晶性が高くなり、バンド端での発光強度が高くなり好ましい。Siウエハを用いる場合は、予めSiウエハに機械加工やフォトリソグラフィーなどにより細孔を形成しておけばよい。
【0021】
半導体ウィスカーの隙間に充填する絶縁体粒子は絶縁性があれば種類を問わないが、樹脂のように紫外線に耐久性の低い材料よりもSiO2、Si3N4、Al2O3、TiO2、Ta2O5、BaTiO3などの誘電体セラミックスが好ましい。これらの中でTiO2は光触媒機能により紫外線を吸収して有機物の分解機能を発現するので好ましい。絶縁性粉末としては誘電率の高い材料が好ましいので、その観点からはBaTiO3やSrTiO3等でも良い。また光触媒機能を有するTiO2と高誘電率のTa2O5を混合してもかまわない。
【0022】
基材材料としては、Si3N4又はSiCの多孔体を用いることが好ましい。これらの材料は誘電率が7〜10程度あるので、半導体ウィスカーの隙間を埋める上部絶縁層と同じように、これ自体が下部絶縁層となる。すなわち、半導体ウィスカーは上下絶縁層で挟まれた二重絶縁構造となっていることになる。多孔質基材の厚さは厚くなると印加された電圧が半導体ウィスカー部に効果的に印加されないし、ろ過フィルタとして使用した場合に、液体の圧力損失が大きくなる。そのため、薄い方が好ましいが、一方、薄くなりすぎると電圧印加時に絶縁破壊を生じ易くなる。したがって、多孔質基材の厚さは、10μm〜1mm程度が好ましい。
【0023】
下部電極、及び上部電極は、電極自体が多孔質であるか、又は電極構造が多孔体構造を有することが必要である。電極が緻密質の場合、その形状を例えば櫛形にする、あるいはメッシュ状にするなどして、開気孔を持たせることが必要である。このような電極とすることにより、デバイス全体が多孔質構造となり、本発明の半導体デバイスは発光機能を有するろ過フィルタデバイスになる。
【0024】
次に本発明の半導体デバイスの製造方法について説明する。
本発明の半導体デバイスの製造方法は、
(a)多孔質基材の一面に下部電極金属をコーティングする工程、
(b)多孔質基材の下部電極を形成した面の他の面に半導体ウィスカーを生成させる工程、
(c)絶縁体粒子の懸濁液を工程(b)で得られた多孔体でろ過して半導体ウィスカーの隙間及び表面に絶縁体粒子を充填する工程、及び
(d)絶縁体粒子の表面に上部電極を形成する工程
からなる。
【0025】
例えば、まず、(a)多孔質基材の一面に下部電極としてAuをコーティングする。さらに(b)多孔質基材の下部電極を形成した面の反対の表面に半導体ウィスカーをコーティングする。半導体ウィスカーをコーティングする方法としては、前述の特許文献1に記載の大気開放型CVD法と呼ばれる方法がある。原料として亜鉛のアルコキシドであるZn(C5H7O2)2を130℃程度で昇華させて、Arガスにより搬送し、これをスリット状のノズルから電極金属をコーティングした多孔質基板に垂直に噴射することにより、配向性を持ったZnOウィスカーが得られる(図2参照)。基板温度を電極金属の融点近くに設定して金属が溶融する温度にすると、微細なウィスカーが形成される。この方法は大気圧でウィスカーが基板面に垂直に成長するため、多孔質半導体膜の低コストプロセスとして実用性が高い。半導体ウィスカーにGdを添加するには、Gdのアルコキシドを所定の温度で昇華させるなどの方法がある。
【0026】
次に、(c)絶縁体粒子をアルコール等に分散させて懸濁液を作製し、これを上記のウィスカーが形成された多孔体でろ過することにより、半導体の隙間に絶縁体粒子を充填することができる。絶縁体粒子はウィスカーの先端よりも高い位置まで充填する。絶縁体粒子を充填した後、適当な温度で焼成して絶縁体粒子を半焼結すると、絶縁体粒子が互いに、及び多孔質基板と強固に密着するので、ろ過時に剥離することがないので好ましい。最後に、(d)絶縁体粒子層の表面に上部電極を形成してデバイスとなる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下実施例によって本発明を具体的に説明する。
実施例1
デバイス作製
基材として、直径25mm、厚さ0.5mmのSiC多孔体(気孔率50%、平均細孔径0.2μm)を用いた。この一面にAuを1μmコーティングし、下部電極を形成した。
図2の大気開放型CVD装置を使用しウィスカーを形成した。気化器にアセチルアセトナト亜鉛(Zn(C5H7O2)2を装填し、115℃で気化させた。
加熱台を600℃に加熱した。吹き出しスリットの下、20mmの位置にSiC基材を置いた。気化器に乾燥Arガスを流量1.5l/minで導入し、アセチルアセトナト亜鉛を大気圧雰囲気に放出し、基材のAu電極側と反対の面に所定の長さになるまで吹き付けた。アセチルアセトナト亜鉛は大気中で反応しZnOとなり、これが基材上に堆積し、ウィスカーを長さ20μmまで成長させた。ZnOウィスカーがランダムな方向に成長した膜が厚さ15μmで形成した。ZnOウィスカーは(0001)方位に成長していた。
平均粒径が0.8μmのSiO2粒子をエタノールに溶解させて懸濁液を調製した。ウィスカーを形成した多孔質基板のウィスカー側からこの懸濁液をろ過してウィスカーの隙間にSiO2粒子を、ウィスカーの先端面よりも厚くなるまで、基板面から約40μmの厚さまで充填した。該SiO2粒子層の表面にメッシュ状のAu電極を形成した。
【0028】
比較例1
デバイス作製
実施例1と同じ基材を用い、実施例1と同様に下部電極を形成した。
SiO2粒子(平均粒径0.1μm)の懸濁液をエタノールに分散させ、下部電極を形成した多孔質基材でろ過して、厚さ3μmの多孔質SiO2層を形成した。次に、平均粒径が1μmのZnO粒子をろ過してSiO2層の表面に厚さ40μmの多孔質ZnO層を、さらに同様に厚さ3μmのSiO2層を形成した。SiO2層の表面に、実施例1と同様に上部電極を形成した。
【0029】
<デバイス評価>
実施例1及び比較例1で作製したデバイスに電流注入してエレクトロルミネッセンス測定を行った。電流注入は、周波数2.1kHz、電圧270Vの交流を印加して行った。表1に結果を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
ZnOウィスカー系はZnO粉末系よりも高輝度で発光した。発光波長はピーク波長が約350nmと紫外線であった。発光波長がZnOのバンドギャップ相当の波長(370nm)よりも短波長側へシフトしたが、これは、270Vの高電圧で強励起したためと推測される。
【0032】
実施例2
デバイス作製
基材として、直径25mm、厚さ0.2mmのSiCウエハ(0001)面を用いた。レーザを用いて、ウエハに直径1μmの細孔をピッチ3μmで形成して貫通孔を有する多孔質基板とした。実施例1と同様に下部電極を形成し、ウィスカーを厚み1.5μmになるまで成長させた。生成したウィスカーは基板面にほぼ垂直に成長していた。絶縁粒子として実施例1記載のSiO2粒子のかわりにTiO2粒子(平均粒径0.8μm)を用いた以外は実施例1と同様にしてTiO2粒子層と上部電極を形成した。
【0033】
比較例2
デバイス作製
実施例2と同じ基材を用い、実施例2と同様に下部電極を形成した。
TiO2粒子(平均粒径0.1μm)の懸濁液をエタノールに分散させ、電極を形成した多孔質基材でろ過して、厚さ5μmの多孔質TiO2層を形成した。次に、平均粒径が1μmのZnO粒子をろ過してTiO2層の表面に厚さ40μmの多孔質ZnO層を、さらに同様に厚さ5μmのTiO2層を形成した。TiO2層上に実施例2と同様に、上部電極を形成した。
【0034】
<デバイス評価>
実施例1と同様に、実施例2及び比較例2で作製したデバイスに電流注入してエレクトロルミネッセンス測定を行った。電流注入は、周波数2.1kHz、電圧270Vの交流を印加して行った。表2に結果を示す。また、図3に実施例2で得られたデバイスの発光波長分布を示す。
【0035】
【表2】
【0036】
比較例との発光強度の比較から、基板面に垂直に成長したZnOウィスカーはランダムに成長したウィスカーよりも高輝度で発光することが分かる。比較例1と比較例2の発光強度はほぼ等しく、実施例2の半導体デバイスの強度比は実施例1よりも大きかった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の半導体デバイスは、多孔質構造のワイドギャップ半導体からなり、交流電圧印加等により、紫外線を発光させることができると共に、気体や液体中に存在する特定サイズの粒子を選択的に捕集する機能も兼ね備える。特に本発明の半導体デバイスは、発光強度、及び発光効率が高い。
【0038】
本発明の半導体デバイスをフィルタとして用いると、有機物や細菌、ウイルス等をフィルタ表面又は内部で捕捉し、さらに、捕捉したこれらの捕集物に対して、極めて近距離で紫外線を照射することができ、その結果、捕集物を分解・殺菌することができる極めてコンパクトサイズのフィルタとなる。
【0039】
本発明の半導体デバイスは、大気中の汚染物質となるNOx、SOx、COガス、ディーゼルパティキュレート、花粉、埃、ダニ等の分解除去、下水中に含まれる有機化合物の分解除去、一般の細菌、ウイルス等の殺菌光源、化学プラントで発生する有害ガスの分解、臭い成分の分解、照明用の紫外線光源、光触媒の光源、超純水製造装置における殺菌光源等、様々な分野に応用できる。
【0040】
また、製品種としては、上記分野のあらゆるフィルタに展開でき、自動車排ガス処理用ハニカム材、空気清浄機用フィルタ、下水ろ過フィルタ、各種浄水器、防虫剤、その他大面積発光板・壁などにも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体デバイスの構造概念の一例を示す。
【図2】デバイス作製に用いる大気開放型CVD装置の概念図である。
【図3】実施例2で得られた半導体デバイスの発光波長分布を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレクトロルミネッセンスにより発光する機能を有する多孔質半導体デバイス、及びその製造方法、さらにはろ過フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体発光デバイスには、短波長を発光する半導体材料・素子が要求されている。特に、バンドギャップが大きい、すなわち大凡の波長が400nm以下の紫外線を発光する素子は、光触媒の光源や殺菌機能を付与できることから期待されている。
【0003】
紫外発光する半導体材料のバンドギャップとそれに対応する発光波長は、GaNが3.39eV、366nm、AlNが6.2eV、200nm、ZnOが3.35eV、370nm、ダイヤモンドが5.47eV、227nmであり、Al−Ga−N三元系半導体では、3.3eV〜6.2eV、200〜366nmまで可変の値をとる。近年は、これら半導体の発光ダイオードやレーザーダイオードへの応用研究、さらには、受光素子(フォトダイオード)への応用研究が盛んに行われている。
【0004】
一般的には、紫外線は約100〜400nm程度の波長を持つ電磁波を意味するが、その波長によって、UV−A(325〜400nm)、UV−B(280〜325nm)、UV−C(100〜280nm)に大別される。UV−Cの内、100〜200nmの波長は真空紫外線と呼ばれる。これらの内、254nm線はウイルス、細菌等のDNAを直接破壊することから、強力な殺菌作用を持つことが知られており、紫外線ランプに使用されている。180〜254nm線は下水の浄化などの水処理に有用である。このほか、光造形には333〜364nm線が、紫外線硬化樹脂の硬化用には200〜400nm線が広く用いられる。現在これらの紫外線は、主として水銀ランプにより発生させている。最近では、環境に有害な水銀を用いない方法として、水銀ランプの替わりに半導体発光ダイオードを利用することが検討され、一部実用化もされている。
【0005】
一方、TiO2などを主成分とする光触媒にも紫外線光源が必要である。光触媒は主としてTiO2微粒子からなり、紫外線を照射することで発生する酸素ラジカルが有機物や汚れを構成する分子に反応して、これを分解するものである。光触媒は、下水浄化、空気清浄機、有害ガスの分解装置などへ適用されている。光触媒作用を発現させるためには、TiO2(アナターゼ型)のバンドギャップである3.2eV以上のエネルギー(388nm以下の波長に相当する)を持つ紫外線を照射する必要があり、ここでもやはり、ブラックライトなどの水銀ランプが使用される他、半導体発光ダイオードも検討され、一部実用化もされている。
【0006】
ウイルスや細菌、さらには有機物を効率良く殺菌するためには、これらを一旦捕集して、その補集体に集中して紫外線を照射する必要がある。なぜなら、紫外線は空気中、又は液体中で減衰しやすいためである。特に、下水処理などにおける浮遊物が多く存在する液中では紫外線の到達距離が極めて小さく、原液中の浮遊物を一旦沈殿させたり、ろ過膜でろ過したりした後に、紫外線を照射している。また、気体中では、雰囲気を紫外線減衰率の小さい窒素雰囲気にするか、或いは、出力の大きな水銀ランプを使用して紫外線の到達距離を大きくすることによって対応している。しかし、これらの方法は大きなコストアップに通じるために実用化には大きな問題となっている。
【0007】
本発明者らは、殺菌や有機物分解を極めて効率良く行うことに関して鋭意検討した結果、紫外線発光するワイドバンドギャップ半導体材料を多孔質構造とすることにより、発光機能を有するろ過フィルタとすることを発明した。
この内、本発明に関連する先行技術として下記発明(特許文献1)が出願されている。すなわち、多孔質基板と、多孔質基板に対して垂直に成長した柱状体からなる多孔体であって、エレクトロルミネッセンス、カソードルミネッセンス又はフォトルミネッセンスにより、波長400nm以下の紫外線を発光する機能を有することを特徴とする多孔質半導体である。これをろ過フィルタとして用いると、多孔質基板と柱状体表面に電極を形成して電圧を印加しながらろ過することにより、ろ過時に捕捉された有機物や細菌等に紫外線を照射して、ろ過と同じに分解・殺菌できる新しい機能を持ったろ過フィルタとすることができる。
また、他の発明(特許文献2)では、多孔質基板上に電極を形成し、さらにその表面に、多孔質絶縁粒子層/多孔質半導体粒子層/多孔質絶縁粒子層を形成、さらにその表面に上部電極を形成して、上部電極と半導体粒子が接触しない構造としている。
【0008】
【特許文献1】
特願2002−292533
【特許文献2】
特願2002−321351
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1の技術では以下の課題がある。
イ.柱状の半導体の先端表面に直接電極を形成しているので、発光輝度を上げるため電圧を上げると絶縁破壊を起こして発光効率が低下する。
ロ.柱状の半導体の先端表面に直接電極を形成するのが困難であり、総ての柱状半導体が発光に寄与するとはいえず発光効率が良くない。
ハ.柱状の半導体間のピッチが大きいため、ピッチよりも小さな粒子が捕捉できない。
また、上記特許文献2の技術では下記の課題がある。
ニ.半導体として粉末粒子を用いているため、半導体粒子の結晶性が悪く、発光強度が低い。
したがって、本発明はこのような課題を解決しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、下記の構成とすることにより上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) 連通孔を有する多孔質基材の一面上に形成された半導体ウィスカー、上部電極、及び該多孔質基材の上部電極が形成された面の他の面に形成された下部電極からなる多孔質半導体デバイスであって、該半導体ウィスカーの隙間及び表面に絶縁性粒子からなる多孔質相が充填されデバイス全体が多孔質構造を有し、上部電極は絶縁性粒子とのみ接触し、エレクトロルミネッセンスによる発光機能を有することを特徴とする多孔質半導体デバイス。
【0011】
(2) 半導体ウィスカーが、バンドギャップが3.1eV以上の半導体材料からなることを特徴とする前記(1)記載の多孔質半導体デバイス。
(3) 半導体ウィスカーが、バンドギャップが4.0eV以上の半導体材料からなることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の多孔質半導体デバイス。
(4) 絶縁性粒子が、少なくとも光触媒機能を有する材料を含むことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の多孔質半導体デバイス。
(5) 半導体ウィスカーが、多孔質基板面に対して垂直に成長している構造を有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の多孔質半導体デバイス。
【0012】
(6) 電極が多孔質である、又は電極構造が多孔体構造を有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の多孔質半導体デバイス。
(7) 多孔質基材がSi3N4又はSiCからなることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の多孔質半導体デバイス。
(8) 前記(1)〜(7)のいずれかに記載の多孔質半導体デバイスを用いたろ過フィルタ。
【0013】
(9) (a)多孔質基材の一面に下部電極金属をコーティングする工程、
(b)多孔質基材の下部電極を形成した面の他の面に半導体ウィスカーを生成させる工程、
(c)絶縁体粒子の懸濁液を工程(b)で得られた多孔体でろ過して半導体ウィスカーの隙間及び表面に絶縁体粒子を充填する工程、及び
(d)絶縁体粒子の表面に上部電極を形成する工程
からなることを特徴とする多孔質半導体デバイスの製造方法。
【0014】
以下に本発明を詳細に説明する。
図1に本発明の多孔質半導体デバイスの構造概念の一例を示す。先ず、基材として連通孔を有する多孔質基板を用意する。平板状の基板では、これの一表面に電極(下部電極)を形成する。電極は導電性金属又は透明導電膜などが用いられる。この電極を形成した面と反対の表面には半導体ウィスカーが形成されている。半導体ウィスカーはランダムな方向に成長していてもよいし、基板面に対してほぼ垂直に成長していてもよい。
【0015】
このウィスカーはある間隔(ピッチ)で電極表面に密集して形成されている。ウィスカー間には絶縁性の粉末が充填される。
この粉末の粒径は当然ウィスカーのピッチよりも小さい必要がある。絶縁性粉末はウィスカーの隙間を埋め、ウィスカーの先端よりも高い位置まで充填されている。すなわち、絶縁性粉末の中にウィスカーが埋め込まれた構造になっており、基板面から最も離れた位置では絶縁性粉末の充填層のみからなる。さらに上部電極は絶縁性粉末の充填層の表面に形成されていることで、上部電極と半導体ウィスカーが接触しない構造となっている。上部電極と半導体ウィスカーとの距離は、絶縁がとれる距離であればよいが、好ましくは数μm〜数十μmである。
【0016】
上記デバイスは、電極間に交流電圧を印加することで、エレクトロルミネッセンスにより発光させることができる。基本的に印加する電圧が高いほど発光強度は高くなる。特許文献1の技術では、上部電極と半導体ウィスカーが直接接触しているために、印加電圧を高くすると絶縁破壊を生じ、発光強度が低下してしまうが、本発明では、上部電極が半導体ウィスカーと直接接触しない構造となっているため、印加電圧を高くしても絶縁破壊は生じず高輝度発光が可能となる。絶縁層の誘電率が大きいほど、発光層に導入される電子が多くなり高輝度発光が起こり易い。
【0017】
また、半導体ウィスカーの隙間に絶縁性粒子が充填されているために、細孔径が小さくなり、特許文献1の発明では捕捉できなかった小さな粒子や浮遊物も捕捉できるという特徴も発現する。
【0018】
本発明の半導体デバイスは、半導体ウィスカーが、バンドギャップが3.1eV以上の半導体材料からなることが好ましい。この時、発光波長は400nm以下の紫外線となる。特に、半導体ウィスカーがZnO、GaN、AlNの少なくとも一種以上からなることが好ましい。この場合、Ga−Al−N系の混晶を含む。また、Ga−Al−N系では、発光強度増大に寄与するInなどをドープすることも含む。
【0019】
半導体ウィスカーの材料としては、上記の材料単独でも発光するが、さらには、半導体ウィスカー中にGdを添加することが好ましい。この場合、半導体ウィスカーにはバンドギャップが4.0eV以上の半導体材料を選ぶことが好ましい。例えば、AlN、CaF2、ZnF2、Y2O3などがある。交流電圧印加により発生した電子は半導体ウィスカー中のGdイオンの電子を基底状態から励起状態まで励起し、再び基底状態に戻るときに波長約311nmの紫外線を放射する。半導体ウィスカーのバンドギャップが4.0eV未満の場合、Gdイオンから発生した紫外線の一部、あるいは多くが半導体ウィスカー自体で吸収されてしまうので好ましくない。
【0020】
基板層に成長する半導体ウィスカーは、Siウエハなどの単結晶基板を用いると、基板面に対して垂直に、一定の間隔(ピッチ)で成長する傾向がある。例えば、ZnOウィスカーはSiウエハ基板を用いると基板面に垂直に成長するが、多結晶SiC基板を用いるとZnOウィスカーはランダムな方向に成長する。一般には、基板面に垂直に成長する場合にウィスカーの結晶性が高くなり、バンド端での発光強度が高くなり好ましい。Siウエハを用いる場合は、予めSiウエハに機械加工やフォトリソグラフィーなどにより細孔を形成しておけばよい。
【0021】
半導体ウィスカーの隙間に充填する絶縁体粒子は絶縁性があれば種類を問わないが、樹脂のように紫外線に耐久性の低い材料よりもSiO2、Si3N4、Al2O3、TiO2、Ta2O5、BaTiO3などの誘電体セラミックスが好ましい。これらの中でTiO2は光触媒機能により紫外線を吸収して有機物の分解機能を発現するので好ましい。絶縁性粉末としては誘電率の高い材料が好ましいので、その観点からはBaTiO3やSrTiO3等でも良い。また光触媒機能を有するTiO2と高誘電率のTa2O5を混合してもかまわない。
【0022】
基材材料としては、Si3N4又はSiCの多孔体を用いることが好ましい。これらの材料は誘電率が7〜10程度あるので、半導体ウィスカーの隙間を埋める上部絶縁層と同じように、これ自体が下部絶縁層となる。すなわち、半導体ウィスカーは上下絶縁層で挟まれた二重絶縁構造となっていることになる。多孔質基材の厚さは厚くなると印加された電圧が半導体ウィスカー部に効果的に印加されないし、ろ過フィルタとして使用した場合に、液体の圧力損失が大きくなる。そのため、薄い方が好ましいが、一方、薄くなりすぎると電圧印加時に絶縁破壊を生じ易くなる。したがって、多孔質基材の厚さは、10μm〜1mm程度が好ましい。
【0023】
下部電極、及び上部電極は、電極自体が多孔質であるか、又は電極構造が多孔体構造を有することが必要である。電極が緻密質の場合、その形状を例えば櫛形にする、あるいはメッシュ状にするなどして、開気孔を持たせることが必要である。このような電極とすることにより、デバイス全体が多孔質構造となり、本発明の半導体デバイスは発光機能を有するろ過フィルタデバイスになる。
【0024】
次に本発明の半導体デバイスの製造方法について説明する。
本発明の半導体デバイスの製造方法は、
(a)多孔質基材の一面に下部電極金属をコーティングする工程、
(b)多孔質基材の下部電極を形成した面の他の面に半導体ウィスカーを生成させる工程、
(c)絶縁体粒子の懸濁液を工程(b)で得られた多孔体でろ過して半導体ウィスカーの隙間及び表面に絶縁体粒子を充填する工程、及び
(d)絶縁体粒子の表面に上部電極を形成する工程
からなる。
【0025】
例えば、まず、(a)多孔質基材の一面に下部電極としてAuをコーティングする。さらに(b)多孔質基材の下部電極を形成した面の反対の表面に半導体ウィスカーをコーティングする。半導体ウィスカーをコーティングする方法としては、前述の特許文献1に記載の大気開放型CVD法と呼ばれる方法がある。原料として亜鉛のアルコキシドであるZn(C5H7O2)2を130℃程度で昇華させて、Arガスにより搬送し、これをスリット状のノズルから電極金属をコーティングした多孔質基板に垂直に噴射することにより、配向性を持ったZnOウィスカーが得られる(図2参照)。基板温度を電極金属の融点近くに設定して金属が溶融する温度にすると、微細なウィスカーが形成される。この方法は大気圧でウィスカーが基板面に垂直に成長するため、多孔質半導体膜の低コストプロセスとして実用性が高い。半導体ウィスカーにGdを添加するには、Gdのアルコキシドを所定の温度で昇華させるなどの方法がある。
【0026】
次に、(c)絶縁体粒子をアルコール等に分散させて懸濁液を作製し、これを上記のウィスカーが形成された多孔体でろ過することにより、半導体の隙間に絶縁体粒子を充填することができる。絶縁体粒子はウィスカーの先端よりも高い位置まで充填する。絶縁体粒子を充填した後、適当な温度で焼成して絶縁体粒子を半焼結すると、絶縁体粒子が互いに、及び多孔質基板と強固に密着するので、ろ過時に剥離することがないので好ましい。最後に、(d)絶縁体粒子層の表面に上部電極を形成してデバイスとなる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下実施例によって本発明を具体的に説明する。
実施例1
デバイス作製
基材として、直径25mm、厚さ0.5mmのSiC多孔体(気孔率50%、平均細孔径0.2μm)を用いた。この一面にAuを1μmコーティングし、下部電極を形成した。
図2の大気開放型CVD装置を使用しウィスカーを形成した。気化器にアセチルアセトナト亜鉛(Zn(C5H7O2)2を装填し、115℃で気化させた。
加熱台を600℃に加熱した。吹き出しスリットの下、20mmの位置にSiC基材を置いた。気化器に乾燥Arガスを流量1.5l/minで導入し、アセチルアセトナト亜鉛を大気圧雰囲気に放出し、基材のAu電極側と反対の面に所定の長さになるまで吹き付けた。アセチルアセトナト亜鉛は大気中で反応しZnOとなり、これが基材上に堆積し、ウィスカーを長さ20μmまで成長させた。ZnOウィスカーがランダムな方向に成長した膜が厚さ15μmで形成した。ZnOウィスカーは(0001)方位に成長していた。
平均粒径が0.8μmのSiO2粒子をエタノールに溶解させて懸濁液を調製した。ウィスカーを形成した多孔質基板のウィスカー側からこの懸濁液をろ過してウィスカーの隙間にSiO2粒子を、ウィスカーの先端面よりも厚くなるまで、基板面から約40μmの厚さまで充填した。該SiO2粒子層の表面にメッシュ状のAu電極を形成した。
【0028】
比較例1
デバイス作製
実施例1と同じ基材を用い、実施例1と同様に下部電極を形成した。
SiO2粒子(平均粒径0.1μm)の懸濁液をエタノールに分散させ、下部電極を形成した多孔質基材でろ過して、厚さ3μmの多孔質SiO2層を形成した。次に、平均粒径が1μmのZnO粒子をろ過してSiO2層の表面に厚さ40μmの多孔質ZnO層を、さらに同様に厚さ3μmのSiO2層を形成した。SiO2層の表面に、実施例1と同様に上部電極を形成した。
【0029】
<デバイス評価>
実施例1及び比較例1で作製したデバイスに電流注入してエレクトロルミネッセンス測定を行った。電流注入は、周波数2.1kHz、電圧270Vの交流を印加して行った。表1に結果を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
ZnOウィスカー系はZnO粉末系よりも高輝度で発光した。発光波長はピーク波長が約350nmと紫外線であった。発光波長がZnOのバンドギャップ相当の波長(370nm)よりも短波長側へシフトしたが、これは、270Vの高電圧で強励起したためと推測される。
【0032】
実施例2
デバイス作製
基材として、直径25mm、厚さ0.2mmのSiCウエハ(0001)面を用いた。レーザを用いて、ウエハに直径1μmの細孔をピッチ3μmで形成して貫通孔を有する多孔質基板とした。実施例1と同様に下部電極を形成し、ウィスカーを厚み1.5μmになるまで成長させた。生成したウィスカーは基板面にほぼ垂直に成長していた。絶縁粒子として実施例1記載のSiO2粒子のかわりにTiO2粒子(平均粒径0.8μm)を用いた以外は実施例1と同様にしてTiO2粒子層と上部電極を形成した。
【0033】
比較例2
デバイス作製
実施例2と同じ基材を用い、実施例2と同様に下部電極を形成した。
TiO2粒子(平均粒径0.1μm)の懸濁液をエタノールに分散させ、電極を形成した多孔質基材でろ過して、厚さ5μmの多孔質TiO2層を形成した。次に、平均粒径が1μmのZnO粒子をろ過してTiO2層の表面に厚さ40μmの多孔質ZnO層を、さらに同様に厚さ5μmのTiO2層を形成した。TiO2層上に実施例2と同様に、上部電極を形成した。
【0034】
<デバイス評価>
実施例1と同様に、実施例2及び比較例2で作製したデバイスに電流注入してエレクトロルミネッセンス測定を行った。電流注入は、周波数2.1kHz、電圧270Vの交流を印加して行った。表2に結果を示す。また、図3に実施例2で得られたデバイスの発光波長分布を示す。
【0035】
【表2】
【0036】
比較例との発光強度の比較から、基板面に垂直に成長したZnOウィスカーはランダムに成長したウィスカーよりも高輝度で発光することが分かる。比較例1と比較例2の発光強度はほぼ等しく、実施例2の半導体デバイスの強度比は実施例1よりも大きかった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の半導体デバイスは、多孔質構造のワイドギャップ半導体からなり、交流電圧印加等により、紫外線を発光させることができると共に、気体や液体中に存在する特定サイズの粒子を選択的に捕集する機能も兼ね備える。特に本発明の半導体デバイスは、発光強度、及び発光効率が高い。
【0038】
本発明の半導体デバイスをフィルタとして用いると、有機物や細菌、ウイルス等をフィルタ表面又は内部で捕捉し、さらに、捕捉したこれらの捕集物に対して、極めて近距離で紫外線を照射することができ、その結果、捕集物を分解・殺菌することができる極めてコンパクトサイズのフィルタとなる。
【0039】
本発明の半導体デバイスは、大気中の汚染物質となるNOx、SOx、COガス、ディーゼルパティキュレート、花粉、埃、ダニ等の分解除去、下水中に含まれる有機化合物の分解除去、一般の細菌、ウイルス等の殺菌光源、化学プラントで発生する有害ガスの分解、臭い成分の分解、照明用の紫外線光源、光触媒の光源、超純水製造装置における殺菌光源等、様々な分野に応用できる。
【0040】
また、製品種としては、上記分野のあらゆるフィルタに展開でき、自動車排ガス処理用ハニカム材、空気清浄機用フィルタ、下水ろ過フィルタ、各種浄水器、防虫剤、その他大面積発光板・壁などにも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体デバイスの構造概念の一例を示す。
【図2】デバイス作製に用いる大気開放型CVD装置の概念図である。
【図3】実施例2で得られた半導体デバイスの発光波長分布を示す。
Claims (9)
- 連通孔を有する多孔質基材の一面上に形成された半導体ウィスカー、上部電極、及び該多孔質基材の上部電極が形成された面の他の面に形成された下部電極からなる多孔質半導体デバイスであって、該半導体ウィスカーの隙間及び表面に絶縁性粒子からなる多孔質相が充填されデバイス全体が多孔質構造を有し、上部電極は絶縁性粒子とのみ接触し、エレクトロルミネッセンスによる発光機能を有することを特徴とする多孔質半導体デバイス。
- 半導体ウィスカーが、バンドギャップが3.1eV以上の半導体材料からなることを特徴とする請求項1記載の多孔質半導体デバイス。
- 半導体ウィスカーが、バンドギャップが4.0eV以上の半導体材料からなることを特徴とする請求項1又は2記載の多孔質半導体デバイス。
- 絶縁性粒子が、少なくとも光触媒機能を有する材料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質半導体デバイス。
- 半導体ウィスカーが、多孔質基材面に対して垂直に成長している構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質半導体デバイス。
- 電極が多孔質である、又は電極構造が多孔体構造を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質半導体デバイス。
- 多孔質基材がSi3N4又はSiCからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多孔質半導体デバイス。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の多孔質半導体デバイスを用いたろ過フィルタ。
- (a)多孔質基材の一面に下部電極金属をコーティングする工程、
(b)多孔質基材の下部電極を形成した面の他の面に半導体ウィスカーを生成させる工程、
(c)絶縁体粒子の懸濁液を工程(b)で得られた多孔体でろ過して半導体ウィスカーの隙間及び表面に絶縁体粒子を充填する工程、及び
(d)絶縁体粒子の表面に上部電極を形成する工程
からなることを特徴とする多孔質半導体デバイスの製造方法。
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