JP2004126440A - 非共鳴2光子吸収化合物、非共鳴2光子発光化合物及びそれによる非共鳴2光子吸収誘起方法及び発光発生方法 - Google Patents
非共鳴2光子吸収化合物、非共鳴2光子発光化合物及びそれによる非共鳴2光子吸収誘起方法及び発光発生方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】効率良く2光子を吸収する有機材料、すなわち2光子吸収断面積の大きな有機材料を提供する。
【解決手段】非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて非共鳴2光子吸収を行う非共鳴2光子吸収化合物。
【選択図】 なし
【解決手段】非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて非共鳴2光子吸収を行う非共鳴2光子吸収化合物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非線形光学効果を発現する材料に関し、特に非共鳴2光子吸収断面積が大きく、非共鳴2光子吸収により生成した励起状態からの発光効率の大きな有機非線形光学材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、非線形光学効果とは、印加する光電場の2乗、3乗あるいはそれ以上に比例する非線型な光学応答のことであり、印加する光電場の2乗に比例する2次の非線形光学効果としては、第二高調波発生(SHG)、光整流、フォトリフラクティブ効果、ポッケルス効果、パラメトリック増幅、パラメトリック発振、光和周波混合、光差周波混合などが知られている。また印加する光電場の3乗に比例する3次の非線形光学効果としては第三高調波発生(THG)、光カー効果、自己誘起屈折率変化、2光子吸収などが挙げられる。
【0003】
これらの非線形光学効果を示す非線形光学材料としてはこれまでに多数の無機材料が見い出されてきた。ところが無機物においては、所望の非線形光学特性や、素子製造のために必要な諸物性を最適化するためのいわゆる分子設計が困難であることから実用するのは非常に困難であった。一方、有機化合物は分子設計により所望の非線形光学特性の最適化が可能であるのみならず、その他の諸物性のコントロールも可能であるため、実用の可能性が高く、有望な非線形光学材料として注目を集めている。
【0004】
近年、有機化合物の非線形光学特性の中でも3次の非線形光学効果が注目されており、その中でも特に、非共鳴2光子吸収および非共鳴2光子発光が注目を集めている。2光子吸収とは、化合物が2つの光子を同時に吸収して励起される現象であり、化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2光子の吸収が起こる場合を非共鳴2光子吸収という。また、非共鳴2光子発光とは、非共鳴2光子吸収により生成した励起分子が、その励起状態の輻射失活過程において発する発光をいう。なお、以下の記述において特に明記しなくても2光子吸収および2光子発光とは非共鳴2光子吸収および非共鳴2光子発光を指す。
【0005】
ところで、非共鳴2光子吸収の効率は印加する光電場の2乗に比例する(2光子吸収の2乗特性)。このため、2次元平面にレーザーを照射した場合においては、レーザースポットの中心部の電界強度の高い位置のみで2光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では2光子の吸収は全く起こらない。一方、3次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ2光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために2光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる線形吸収に比べて、非共鳴2光子吸収では、この2乗特性に由来して空間内部の1点のみで励起が起こるため、空間分解能が著しく向上する。通常、非共鳴2光子吸収を誘起する場合には、化合物の(線形)吸収帯が存在する波長領域よりも長波でかつ吸収の存在しない、近赤外領域の短パルスレーザーを用いることが多い。化合物の(線形)吸収帯が存在しない、いわゆる透明領域の近赤外光を用いるため、励起光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、非共鳴2光子吸収の2乗特性のために試料内部の1点を極めて高い空間分解能で励起できるため、非共鳴2光子吸収および非共鳴2光子発光は生体組織の2光子造影や2光子フォトダイナミックセラピー(PDT)などの応用面で期待されている。また、非共鳴2光子吸収、2光子発光を用いると、入射した光子のエネルギーよりも高いエネルギーの光子を取り出せるため、波長変換デバイスという観点からアップコンバージョンレージングに関する研究も報告されている。
【0006】
効率良く2光子発光やアップコンバージョンレージングを示す有機化合物として、いわゆるスチルバゾリウム誘導体が知られている(He,G.S.et al.,Appl.Phys.Lett.1995,67,3703[非特許文献1]、Zhou、G.et al.,Jpn.J.Appl.Phys.2001,40,1250[非特許文献2])。また、ある特定の構造を有するスチルバゾリウム化合物の2光子発光を用いた種々の応用例はWO9709043[特許文献1]に記載されている。
【0007】
非共鳴2光子発光を利用して生体組織の造影、フォトダイナミックセラピー、アップコンバージョンレージング等の応用を行う場合、用いる有機化合物の2光子吸収効率(2光子吸収断面積)および2光子吸収により生じた励起状態からの発光効率は高いことが必要である。同一の有機化合物を用いて2倍の2光子発光強度を得るためには、2光子吸収の2乗特性のために4倍の励起光強度が必要になる。ところが、過度に強いレーザー光を照射すると、例えば生体組織の光損傷を招いたり、また2光子発光色素そのものが光劣化を起こしてしまう可能性が高くなるため望ましくない。従って、弱い励起光強度で強い2光子発光を得るためには、効率よく2光子吸収を行い2光子発光を発する有機化合物の開発が必要である。スチルバゾリウム誘導体の2光子発光効率は、実際的な使用に対しては未だ充分な性能を満たしていない。
【0008】
【非特許文献1】
He,G.S.et al.,Appl.Phys.Lett.1995年,67巻,3703頁
【非特許文献2】
Zhou、G.et al.,Jpn.J.Appl.Phys.2001年,40巻,1250頁
【特許文献1】
国際公開9709043号パンフレット
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上に述べたように、非共鳴2光子吸収および非共鳴2光子発光を利用すると、極めて高い空間分解能を特徴とする種々の応用が可能であるが、現時点で利用可能な2光子発光化合物では、2光子吸収能が低く、また2光子発光効率も悪いため、2光子吸収および2光子発光を誘起する励起光源としては非常に高出力のレーザーが必要である。
【0010】
本発明の目的は、効率良く2光子を吸収する有機材料、すなわち2光子吸収断面積の大きな有機材料を提供すること、および発光強度の大きな2光子発光を示す有機材料を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らの鋭意検討の結果、高い2光子吸収断面積には2光子吸収部位同士の相互作用が有効なことを突き止め、その実現のためには分子内会合の利用が有効であることを見出した。
よって、本発明の上記目的は、下記の手段により達成された。
(1)非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて非共鳴2光子吸収を行うことを特徴とする化合物。
(2)(1)記載の化合物が下記一般式(1)にて表されることを特徴とする(1)記載の化合物
一般式(1)
【0012】
【化4】
【0013】
一般式(1)中、A1 、A2 はそれぞれ独立に非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを含む基を表し、L1 は単なる結合手または連結基を表し、a1は1〜5の整数を、a2は1〜5の整数を表す。a1が2以上の時、複数のL1 は同じでも異なっても良く、a2が2以上の時、複数のA2 は同じでも異なっても良い。なお、A1 、A2 は分子内会合状態を取っており、一般式(1)で表される化合物のA1、A2 部分の吸収は、A1 またはA2 を単独に含む化合物の吸収の和と異なる。
(3)一般式(1)で表される化合物において、A1 、A2 がそれぞれ独立に色素であることを特徴とする(2)記載の化合物
(4)一般式(1)で表される化合物において、a1、a2が共に1であることを特徴とする(2)または(3)記載の化合物。
(5)一般式(1)で表される化合物において、A1 、A2 がそれぞれ独立にシアニン色素、ストレプトシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素または下記一般式(2)にて表されることを特徴とする(2)〜(4)記載の化合物。
一般式(2)
【0014】
【化5】
【0015】
式中、R1 、R2 、R3 、R4 はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表し、R1 、R2 、R3 、R4 のうちのいくつかが互いに結合して環を形成してもよい。nおよびmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、nおよびmのそれぞれが2以上の場合、複数個のR1 、R2 、R3 およびR4 は同一でもそれぞれ異なってもよい。ただし、n、m同時に0となることはない。X1 およびX2 はそれぞれ独立に、アリール基、ヘテロ環基、または一般式(3)で表される基を表す。
一般式(3)
【0016】
【化6】
【0017】
式中、R5 は水素原子または置換基を表し、R6 は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、Z1 は5または6員環を形成する原子群を表す。
なお、一般式(2)にて、R1 、R2 、R3 、R4 、X1 またはX2 のうちいずれかの水素原子を取り除いた形で「基」とすることができる。
(6)一般式(2)で表される化合物において、X1 またはX2 のいずれかうちいずれかの水素原子を取り除いた形で「基」とすることを特徴とする(5)記載の化合物。
(7)一般式(1)で表される化合物において、A1 、A2 がそれぞれ独立にシアニン色素、メロシアニン色素、ストレプトシアニン色素または一般式(2)にて表されることを特徴とする(2)〜(6)記載の化合物。
(8)一般式(1)で表される化合物において、A1 、A2 がシアニン色素、メロシアニン色素またはストレプトシアニン色素であることを特徴とする(7)記載の化合物。
(9)一般式(1)で表される化合物において、A1 、A2 が一般式(2)にて表されることを特徴とする(7)記載の化合物。
(10)一般式(1)で表される化合物において、R1 とR3 が連結して環を形成することを特徴とする(2)〜(7)、(9)記載の化合物。
(11)一般式(1)で表される化合物において、R1 とR3 が連結して、カルボニル基と共にシクロペンタノン環を形成することを特徴とする(10)記載の化合物。
(12)一般式(1)で表される化合物において、X1 、X2 が置換または無置換のアリール基であることを特徴とする(2)〜(7)(9)〜(11)記載の化合物。
(13)一般式(1)で表される化合物において、X1 、X2 が4位にアミノ基が置換したアリール基であることを特徴とする(12)記載の化合物。
(14)一般式(1)で表される化合物において、X1 、X2 が一般式(3)で表され、R6 はアルキル基であり、Z1 で形成される環が、インドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環のいずれかで表されることを特徴とする(2)〜(7)(9)〜(11)記載の化合物。
(15)一般式(1)で表される化合物において、X1 、X2 が一般式(3)で表され、R6 はアルキル基であり、Z1 で形成される環が、インドレニン環、アザインドレニン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環のいずれかで表されることを特徴とする(14)記載の化合物。
(16)(1)〜(15)記載で表される化合物であり、2光子発光することを特徴とする非共鳴2光子発光化合物。
(17)(1)〜(15)記載の化合物に、該化合物の有する線形吸収帯よりも長波長のレーザー光を照射して非共鳴2光子吸収を誘起することを特徴とする2光子吸収の誘起方法。
(18)(1)〜(15)記載の化合物に、該化合物の有する線形吸収帯よりも長波長のレーザー光を照射して非共鳴2光子吸収を誘起し、生成した励起状態から発光を発生させることを特徴とする非共鳴2光子発光発生方法。
(19)(1)〜(15)記載の化合物を溶液状態にて使用することを特徴とする方法。
(20)(1)〜(15)記載の化合物を膜状態にて使用することを特徴とする方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の非共鳴2光子吸収を行う化合物について詳しく説明する。
なお、本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、特に断りの無い限りは、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても、置換されていなくても良いことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本発明における化合物に使用できる置換基は、置換の有無にかかわらず、どのような置換基でも良い。
また、本発明において、特定の部分を「環」と称した場合、あるいは「基」に「環」が含まれる場合は、特に断りの無い限りは単環でも縮環でも良く、置換されていても置換されていなくても良い。
例えば、「アリール基」はフェニル基でもナフチル基でも良く、置換フェニル基でも良い。
【0019】
本発明の化合物は非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて非共鳴2光子吸収を行うことを特徴とする化合物である。
色素発色団同士が特定の空間配置に、共有結合又は配位結合、あるいは種々の分子間力(水素結合、ファン・デル・ワールス力、クーロン力等)などの結合力によって固定されている状態を、一般的に会合(又は凝集)状態と称している。本発明の化合物は分子内会合状態を取るので、共有結合または配位結合によって発色団同士が固定されている状態である。
【0020】
参考のため、以下に会合体の説明を行う。会合体については、例えばジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(The Theory of the Photographic Process)第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章、第218〜222頁、及び小林孝嘉著「J会合体(J−Aggregates)」ワールド・サイエンティフィック・パブリッシング社(World Scientific Publishing Co. Pte. Ltd.)、1996年刊)などに詳細な説明がなされている。
モノマーとは単量体を意味する。会合体の吸収波長の観点では、モノマー吸収に対して、吸収が短波長にシフトする会合体をH会合体(2量体は特別にダイマーと呼ぶ)、長波長にシフトする会合体をJ会合体と呼ぶ。
【0021】
会合体の構造の観点では、レンガ積み会合体において、会合体のずれ角が小さい場合はJ会合体と呼ばれるが、ずれ角が大きい場合はH会合体と呼ばれる。レンガ積み会合体については、ケミカル・フィジックス・レター(ChemicalPhysics Letters),第6巻、第183頁(1970年)に詳細な説明がある。また、レンガ積み会合体と同様な構造を持つ会合体として梯子または階段構造の会合体がある。梯子または階段構造の会合体については、Zeitschrift fur Physikalische Chemie,第49巻、第324頁、(1941年)に詳細な説明がある。
【0022】
また、レンガ積み会合体以外を形成するものとして、矢はず(Herringbone)構造をとる会合体(矢はず会合体と呼ぶことができる)などが知られている。
矢はず(Herringbone)会合体については、チャールズ・ライヒ(Charles Reich)著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photographic Science and Engineering)第18巻、第3号、第335頁(1974年)に記載されている。矢はず会合体は、会合体に由来する2つの吸収極大を持つ。
【0023】
なお、本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有する化合物が、分子内会合状態を取っているかどうかは、それぞれのクロモフォアを単独に含む化合物(モノマー)の吸収の和に対し、本発明の化合物の吸収(吸収λmax、ε、吸収形)が変化しているかどうかにより確認することができる。本発明の化合物は会合により短波長化(H会合)しても長波長化(J会合)してもその両方でもいずれでも良いが、J会合体を形成することがより好ましい。
【0024】
本発明の化合物は分子内会合状態を取るが、さらに分子間でも会合状態を取っても構わない。化合物の分子間会合状態は様々な方法に形成することができる。例えば溶液系では、ゼラチンのようなマトリックスを添加した水溶液(例えばゼラチン0.5wt%・化合物10−4M水溶液)、KClのような塩を添加した水溶液(例えばKCl5%・化合物2×10−3M水溶液)に化合物を溶かす方法、良溶媒に化合物を溶かしておいて後から貧溶媒を加える方法(例えばDMF−水系、クロロホルム−トルエン系等)等が挙げられる。
また膜系では、ポリマー分散系、アモルファス系、結晶系、LB膜系等の方法が挙げられる。
さらに、バルクまたは微粒子(μm〜nmサイズ)半導体(例えばハロゲン化銀、酸化チタン等)、バルクまたは微粒子金属(例えば金、銀、白金等)に吸着、化学結合または自己組織化させることにより分子間会合状態を形成させることもできる。カラー銀塩写真における、ハロゲン化銀結晶上のシアニン色素J会合吸着による分光増感はこの技術を利用したものである。
【0025】
本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて非共鳴2光子吸収を行うことを特徴とする化合物は、好ましくは一般式(1)で表される。
【0026】
一般式(1)中、L1 は単なる結合手または連結基を表す。連結基の場合、いかなる連結基でも良いが、好ましくはアルキレン基(好ましくは炭素原子数(以下C数という)1〜20、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、オクチレン)、アリーレン基(好ましくはC数6〜26、例えばフェニレン、ナフチレン)、アルケニレン基(好ましくはC数2〜20、例えばエテニレン、プロペニレン)、アルキニレン基(好ましくはC数2〜20、例えばエチニレン、プロピニレン)、アミド基、エステル基、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、エーテル基、カルボニル基、ヘテリレン基(好ましくはC数1〜26、例えば6−クロロ−1,3,5−トリアジル−2,4−ジイル基、ピリミジン−2,4−ジイル基、キノキサリン−2,3−ジイル基)を1つまたはそれ以上組み合わせて構成される炭素原子数0〜100以下、好ましくは1以上または20以下の連結基を表す。
a1は1〜5の整数を表し、a1が2以上の時、複数のL1は同じでも異なっても良い。
【0027】
A1 、A2 はそれぞれ独立に非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを含む基を表す。なお、A1 、A2 は分子内会合状態を取っており、一般式(1)で表される化合物のA1 、A2 部分の吸収は、A1 またはA2 を単独に含む化合物の吸収の和と異なる。
a2は1〜5の整数を表す。a2が2以上の時、複数のA2は同じでも異なっても良い。
【0028】
一般式(1)におけるA1 、A2 のような、本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォア(発色団)を含む基となる化合物(基を構成するための水素原子を取り除かない化合物であり、この明細書ではA1 が「シアニン色素」等と表示される場合は「シアニン色素から水素原子を取り除いた形の基」を意味するものとする)は好ましくは色素である。ここで色素とは、可視光領域(400〜700nm)に吸収の一部を有する化合物に対する総称である。
本発明における上記の色素としてはいかなるものでも良いが、例えば、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素が挙げられる。
【0029】
好ましくは、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、アリーリデン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、ポルフィリン色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素が挙げられ、より好ましくはシアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、アリーリデン色素等、メチン色素が挙げられ、さらに好ましくはシアニン色素、ストレプトシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素であり、最も好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素またはストレプトシアニン色素である。
【0030】
これらの色素の詳細については、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズーシアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社ーニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds−Special topics in heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第482から515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons) 社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds)」2nd.Ed.vol.IV,partB,1977刊、第15章、第369から422項、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、などに記載されている。
【0031】
本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアとしてシアニン色素を用いる時、好ましくは下記一般式(4)にて表わされる。
【0032】
【化7】
【0033】
式中、Za1及びZa2は各々5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし、これらはさらにベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環などで縮環されていてもよい。
Ra1及びRa2は各々、水素原子、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)を表し、好ましくは水素原子、アルキル基、スルホアルキル基を表し、より好ましくはアルキル基またはスルホアルキル基を表す。
Ma1〜Ma7は各々メチン基を表わし、置換基を有していてもよく、置換基として好ましくは例えばC数1〜20のアルキル基(例えば、メチル、エチル、i−プロピル)、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素)、ニトロ基、C数1〜20のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)、C数6〜26のアリール基(例えば、フェニル、2−ナフチル)、C数0〜20のヘテロ環基(例えば、2−ピリジル、3−ピリジル)、C数6〜20のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ、2−ナフトキシ)、C数1〜20のアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、C数1〜20のカルバモイル基(例えばN,N−ジメチルカルバモイル)、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、C数1〜20のアルキルチオ基(例えばメチルチオ)、シアノ基などが挙げられる。また、他のメチン基と環を形成してもよく、もしくは助色団と環を形成することもできる。好ましくは無置換、エチル基置換、メチル基置換のメチン基である。
na1及びna2は0または1であり、好ましくは0である。ka1は0から3までの整数を表わす。好ましくは0から2までの整数であり、より好ましくは0又は1である。ka1が2以上の時、Ma3、Ma4は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0034】
なお、一般式(4)にて、 Za1、 Za2、Ra1、Ra2、Ma1〜Ma7のうちいずれかの水素原子を取り除いた形で一般式(1)における「基」とすることができる。
【0035】
本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアとしてメロシアニン色素を用いる時、好ましくは下記一般式(5)で表わされる。
【0036】
【化8】
【0037】
式中、Za3は5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし、これらはさらにベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環などで縮環されていてもよい。Za4は酸性核を形成する原子群を表わす。Ra3は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基(以上好ましい例はRa1、Ra2に同じ)を表わす。Ma8〜Ma11は各々メチン基を表わす(好ましい例はMa1〜Ma7に同じ)。na3は0または1である。ka2は0から3までの整数を表わし、好ましくは0から2の整数を表し、より好ましくは1または2である。
ka2が2以上の時、Ma10、Ma11は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
なお、一般式(5)にて、Za3、Za4、Ra3、Ma8〜Ma11のうちいずれかの水素原子を取り除いた形で一般式(1)における「基」とすることができる。
【0038】
本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアとしてオキソノール色素を用いる時、好ましくは下記一般式(6)で表わされる。
【0039】
【化9】
【0040】
式中、Za5及びZa6は各々酸性核を形成する原子群を表わす。Ma12〜Ma14は各々メチン基を表わす(以上好ましい例はMa1〜Ma7に同じ)。ka3は0から3までの整数を表わし、好ましくは0から2の整数を表す。ka3が2以上の時、Ma12、Ma13は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
なお、一般式(6)にて、Za5、Za6、Ma12〜Ma14のうちいずれかの水素原子を取り除いた形で一般式(1)における「基」とすることができる。
【0041】
本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアとしてストレプトシアニン色素を用いる時、好ましくは下記一般式(7)で表わされる。
【0042】
【化10】
【0043】
Ra4〜Ra7は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基(以上好ましい例はRa1、Ra2に同じ)を表わす。Ra4とRa5、Ra6とRa7 はそれぞれ連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくは5または6員環のへテロ環であり、好ましくは例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、チアジン環、ピペラジン環である。
Ma15〜Ma17は各々メチン基を表わす(好ましい例はMa1〜Ma7に同じ)。ka4は0から4までの整数を表わし、好ましくは1から3の整数を表し、より好ましくは2である。Ka2が2以上の時、Ma15、Ma16は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
なお、一般式(7)にて、Ra4〜Ra7、Ma15〜Ma17のうちいずれかの水素原子を取り除いた形で一般式(1)における「基」とすることができる。
【0044】
Za1、Za2及びZa3としては炭素数3〜25のオキサゾール核(例えば、2−3−メチルオキサゾリル、2−3−エチルオキサゾリル、2−3,4−ジエチルオキサゾリル、2−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−3−エチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホエチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−3−メチルチオエチルベンゾオキサゾリル、2−3−メトキシエチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホブチルベンゾオキサゾリル、2−3−メチル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−メチル−α−ナフトオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−(3−ナフトキシエチル)ベンゾオキサゾリル、2−3,5−ジメチルベンゾオキサゾリル、2−6−クロロ−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−5−ブロモ−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾオキサゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−5−(4−ブロモフェニル)−3−スルホブチルベンゾオキサゾリル、2−3−ジメチル−5,6−ジメチルチオベンゾオキサゾリル)、炭素数3〜25のチアゾール核(例えば、2−3−メチルチアゾリル、2−3−エチルチアゾリル、2−3−スルホプロピルチアゾリル、2−3−スルホブチルチアゾリル、2−3,4−ジメチルチアゾリル、2−3,4,4−トリメチルチアゾリル、2−3−カルボキシエチルチアゾリル、2−3−メチルベンゾチアゾリル、2−3−エチルベンゾチアゾリル、2−3−ブチルベンゾチアゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−3−スルホブチルベンゾチアゾリル、2−3−メチル−β−ナフトチアゾリル、2−3−スルホプロピル−γ−ナフトチアゾリル、2−3−(1−ナフトキシエチル)ベンゾチアゾリル、2−3,5−ジメチルベンゾチアゾリル、2−6−クロロ−3−メチルベンゾチアゾリル、2−6−ヨード−3−エチルベンゾチアゾリル、2−5−ブロモ−3−メチルベンゾチアゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾチアゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−5−(4−ブロモフェニル)−3−スルホブチルベンゾチアゾリル、2−3−ジメチル−5,6−ジメチルチオベンゾチアゾリルなどが挙げられる)、炭素数3〜25のイミダゾール核(例えば、2−1,3−ジエチルイミダゾリル、2−1,3−ジメチルイミダゾリル、2−1−メチルベンゾイミダゾリル、2−1,3,4−トリエチルイミダゾリル、2−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−1,3,5−トリメチルベンゾイミダゾリル、2−6−クロロ−1,3−ジメチルベンゾイミダゾリル、2−5,6−ジクロロ−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−1,3−ジスルホプロピル−5−シアノ−6−クロロベンゾイミダゾリルなどが挙げられる)、炭素数10〜30のインドレニン核(例えば、3,3−ジメチルインドレニン)、炭素数9〜25のキノリン核(例えば、2−1−メチルキノリル、2−1−エチルキノリル、2−1−メチル6−クロロキノリル、2−1,3−ジエチルキノリル、2−1−メチル−6−メチルチオキノリル、2−1−スルホプロピルキノリル、4−1−メチルキノリル、4−1−スルホエチルキノリル、4−1−メチル−7−クロロキノリル、4−1,8−ジエチルキノリル、4−1−メチル−6−メチルチオキノリル、4−1−スルホプロピルキノリルなどが挙げられる)、炭素数3〜25のセレナゾール核(例えば、2−3−メチルベンゾセレナゾリルなどが挙げられる)、炭素数5〜25のピリジン核(例えば、2−ピリジルなどが挙げられる)などが挙げられ、さらに他にチアゾリン核、オキサゾリン核、セレナゾリン核、テルラゾリン核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、イミダゾリン核、イミダゾ[4,5−キノキザリン]核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核を挙げることができる。
これらは置換されても良く、置換基として好ましくは例えばアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル)、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素)、ニトロ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)、アリール基(例えば、フェニル)、ヘテロ環基(例えば2−ピリジル、3−ピリジル、1−ピロリル、2−チエニル)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、カルバモイル基(例えばN,N−ジメチルカルバモイル)、スルホ基、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド)、スルファモイル基(例えばN−メチルスルファモイル)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、シアノ基などが挙げられる。
好ましくは、オキサゾール核、イミダゾール核、チアゾール核である。これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。縮環する環としてはベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環等が挙げられる。
【0045】
Za4、Za5、Za6は各々酸性核を形成するのに必要な原子群を表わし、James 編、The Theory of the Photographic Process、第4版、マクミラン社、1977年、第198頁により定義される。具体的には、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、イソローダニン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ〔3,2−a 〕ピリミジン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ〔1,5−b〕キナゾロン、ピラゾロピリドン、3−ジシアノメチリデニル−3−フェニルプロピオニトリルなどの核が挙げられる。
好ましくは、ヒダントイン、ローダニン、バルビツール酸、2−オキサゾリン−5−オン、3−ジシアノメチリデニル−3−フェニルプロピオニトリルである。
【0046】
シアニン発色団、メロシアニン発色団、オキソノール発色団及びストレプトシアニン発色団の具体例としては、F.M.Harmer著、Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds、John&Wiley&Sons、New York、London、1964年刊に記載のものが挙げられる。
【0047】
シアニン色素、メロシアニン色素の一般式は、米国特許第5,340,694号第21及び22頁の(XI)、(XII)に示されているもの(ただしn12、n15の数は限定せず、0以上の整数(好ましくは0〜4の整数)とする)が好ましい。
【0048】
また、本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアは下記一般式(2)にて表されることも好ましい。
【0049】
一般式(2)において、R1 、R2 、R3 、R4 はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、置換基として好ましくは、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)である。
R1 、R2 、R3 、R4 として好ましくは水素原子またはアルキル基である。R1 、R2 、R3 、R4 のうちのいくつか(好ましくは2つ)が互いに結合して環を形成してもよい。特に、R1 とR3 が結合して環を形成することが好ましく、その際カルボニル炭素原子と共に形成する環が6員環または5員環または4員環であることが好ましく、5員環または4員環であることがより好ましく、5員環であることが最も好ましい。
【0050】
一般式(1)において、nおよびmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは1〜4の整数を表す。ただし、n、m同時に0となることはない。
nおよびmが2以上の場合、複数個のR1 、R2 、R3 およびR4 は同一でもそれぞれ異なってもよい。
【0051】
X1 およびX2 は独立に、アリール基(好ましくはC数6〜20、好ましくは置換アリール基(例えば置換フェニル基、置換ナフチル基、置換基の例として好ましくはMa1〜Ma7の置換基と同じ)であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、さらに好ましくはアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、最も好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したフェニル基を表す。その際複数の置換基が連結して環を形成しても良く、形成する好ましい環としてジュロリジン環が挙げられる。)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、好ましくは3〜8員環、より好ましくは5または6員環、例えばピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、カルバゾリル、フェノチアジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、より好ましくはインドリル、カルバゾリル、ピロリル、フェノチアジノ。ヘテロ環は置換していても良く、好ましい置換基は前記アリール基の際の例と同じ)、または一般式(3)で表される基を表す。
【0052】
一般式(3)中、R5 は水素原子または置換基(好ましい例はR1 〜R4 と同じ)を表し、好ましくは水素原子またはアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
R6 は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基(これらの置換基の好ましい例はR1 〜R4 と同じ)を表し、好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)である。
【0053】
Z1 は5または6員環を形成する原子群を表す。
形成されるヘテロ環として好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環、またはピリジン環であり、より好ましくはインドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、チアジアゾール環、またはキノリン環であり、最も好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、またはベンゾイミダゾール環である。
Z1 により形成されるヘテロ環は置換基を有しても良く、置換基として好ましくは、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)、アルキニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、エチニル、2−プロピニル、1,3−ブタジイニル、2−フェニルエチニル)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、アミノ基(好ましくはC数1〜20、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、アシル基(好ましくはC数1〜20、例えば、アセチル、ベンゾイル、サリチロイル、ピバロイル)、アルコキシ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メトキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくはC数6〜26、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、アルキルチオ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチルチオ、エチルチオ)、アリールチオ基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニルチオ、4−クロロフェニルチオ)、アルキルスルホニル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メタンスルホニル、ブタンスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくはC数6〜20、例えば、ベンゼンスルホニル、パラトルエンンスルホニル)、カルバモイル基(好ましくはC数1〜20、例えば、N、N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル)、アシルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、イミノ基(好ましくはC数2〜20、例えばフタルイミノ)、アシルオキシ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アルコキシカルボニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル)であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基である。
【0054】
X1 およびX2 として好ましくはアリール基または一般式(3)で表される基で表され、より好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したアリール基または一般式(3)で表される基で表される。
【0055】
なお、一般式(2)にて、R1 、R2 、R3 、R4 、X1 またはX2 のうちいずれかの水素原子を取り除いた形で、一般式(1)における「基」とすることができ、X1 またはX2 のうちいずれかの水素原子を取り除いた形で「基」とすることがより好ましい。
【0056】
本発明の分子内会合状態にて非共鳴2光子吸収を行うクロオフォアを含む基の化合物としては、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、ストレプトシアニン色素または一般式(2)にて表される化合物が好ましいが、より好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、ストレプトシアニン色素または一般式(2)で表される化合物である。
その際、非共鳴2光子吸収断面積(効率)の絶対値においては一般式(2)で表される化合物の方がより好ましく、非共鳴2光子吸収断面積の分子間会合形成によるエンハンスメントにおいてはシアニン色素、メロシアニン色素またはストレプトシアニン色素の方がより好ましい。
【0057】
以下に、本発明で用いられる、分子間会合状態にて非共鳴2光子吸収を行う化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
【化11】
【0059】
【化12】
【0060】
【化13】
【0061】
【化14】
【0062】
【化15】
【0063】
本発明の化合物は、分子内会合状態を取るのであれば、溶液状態で使用されても膜状態で使用されても良い。
【0064】
【実施例】
以下に、本発明の具体的な実施例について実験結果を基に説明する。勿論本発明はこれらの実施例限定されるものではない。
【0065】
[実施例1]
[D−11の合成]
【0066】
本発明の化合物D−11は以下の方法により合成することができる。
【0067】
【化16】
【0068】
ジヒドロキシジアミノビフェニル[1]25g(0.116mol)、無水酢酸400gを窒素雰囲気下5時間還流した。冷却後結晶をロ別しビスベンゾオキサゾール[2]の結晶30.2g(収率98.7%)を得た。
【0069】
ビスベンゾオキサゾール[2] 4.10g(15.5mmol)、プロパンサルトン[3]7.32g (60mmol)を150℃にて4時間加熱攪拌した。冷却後アセトンを加えて結晶をロ別し、アセトンで洗浄して4級塩[4]の結晶7.8g(収率99.0%)を得た。
【0070】
4級塩[4]7.62g(15mmol)、[5]19.6g(0.1mol)、無水酢酸100gを4時間還流した。冷却後アセトニトリルを加えて結晶をロ別し、アセトンで洗浄して、アニル体[6]の結晶6.0g(収率48.4%)を得た。
【0071】
EP887700A1号記載の方法により合成したバルビツール酸[7]2.54g(10.5mmol)、アニル体[6]3.2g(4mmol)、トリエチルアミン2.86g(28mmol)、エタノール100mlを10分環還流して均一とした後、室温に冷却した。無水酢酸1.84g(18mmol)を加え、室温から反応温度を上昇させ、2時間還流した。濃縮後セファデックスLH−20カラム(展開溶媒メタノール)で精製し、酢酸ナトリウム2.43g(30mmol)/メタノール50ml溶液を加えて生じた結晶をロ別し、さらにメタノールから再結晶して、目的のD−11 1.96g(収率53.0%)を得た。
なお構造はNMRスペクトル、MSスペクトル、元素分析にて確認した。
【0072】
また、他の本発明の化合物についてもD−11の合成法や、J.Am.Che.Soc.,121 巻,8146頁,(1999年)、Bull.Chem.Soc.Jpn.,70巻,2279 頁,(1997年) 、Tetrahedron.Lett.,42巻,6129 頁,(2001年) 、欧州特許887700A1号、F.M.Harmer著、Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds、John&Wiley&Sons、New York、London、1964年刊、D.M.Sturmer著、Heterocyclic Compounds− Special Topics in Heterocyclic Chemistry、第18章、第14節、第482から515頁、John&Wiley&Sons、New York、London等に記載の方法等に準じて合成することができる。
ただし、本発明の化合物の合成法はこれに限定されるわけではない。
【0073】
[実施例2]
[吸収スペクトルの測定]
【0074】
本発明の分子内会合性化合物D−1、D−5、D−11、D−16について、表1記載の溶媒により10−5M溶液を作成した。またそれぞれの比較モノマー化合物としてR−1、R−2、R−3、R−4についても表1記載の溶媒により10−5M溶液を作成した。これらについて吸収スペクトルを測定し、λmax、εについて表1にまとめた。
表1より、D−1はモノマー及びJ会合体吸収、D−5はJ会合体吸収、D−11はJ会合体及びH会合体吸収、D−16はH会合体及びモノマー吸収を示すことが、比較化合物R−1、R−2、R−3、R−4の吸収スペクトルとの比較からわかる。
なお、D−1、D−5、D−11、D−16については濃度10−3〜10−6Mの範囲で吸収スペクトルを測定しても吸収形及びモノマー/会合体ε比に変化が見られないため、この溶媒でのJまたはH会合体吸収は分子間ではなく分子内会合であることがわかる。
以上より、D−1、D−5、D−11、D−16については目的の分子内会合状態が形成できていることが明らかである。
【0075】
【表1】
【0076】
【化17】
【0077】
【化18】
【0078】
[実施例3]
[2光子吸収断面積の評価方法]
【0079】
本発明の化合物の2光子吸収断面積の評価は、M. A. Albota et al., Appl. Opt. 1998年, 37巻,7352頁.記載の方法を参考に行った。2光子吸収断面積測定用の光源には、Ti:sapphireパルスレーザー(パルス幅:100fs、繰り返し:80MHz、平均出力:1W、ピークパワー:100kW)を用い、700nmから1000nmの波長範囲で2光子吸収断面積を測定した。また、基準物質としてローダミンBおよびフルオレセインを測定し、得られた測定値をC. Xu et al., J. Opt. Soc. Am. B 1996年, 13巻, 481頁.に記載のローダミンBおよびフルオレセインの2光子吸収断面積の値を用いて補正することで、各化合物の2光子吸収断面積を得た。
2光子吸収測定用の試料には、本発明の分子内会合性化合物D−1、D−5、D−11、D−16及び比較モノマー化合物R−1、R−2、R−3、R−4の10−3M溶液を用いた(試料201〜208)。これは試料101〜108と濃度が異なるだけであり、吸収スペクトルの形状は同様であることを確認した。
【0080】
本発明の分子内会合性化合物及びその比較モノマー化合物の2光子吸収断面積を上記方法にて測定し、得られた結果をGM単位で表2に示した(1GM = 1×10−50 cm4s / photon )。なお、表中に示した値は測定波長範囲内での2光子吸収断面積の最大値である。
【0081】
【表2】
【0082】
表2より、分子内会合状態により比較モノマーに比べ格段に大きい2光子吸収断面積を有することが明らかである。特に分子内J会合状態にてエンハンスメントが大きいこともわかる。
【0083】
[実施例4]
[2光子発光強度の評価方法]
【0084】
実施例3の試料205に、Nd:YAGレーザーの1064nmのレーザーパルスを照射して得られる発光スペクトルを測定し、得られた発光スペクトルの面積から非共鳴2光子発光強度を求めた。
【0085】
比較試料1:強い2光子発光を発する化合物として特許(WO9709043)に記載の化合物(下記化合物)0.059gを100mLのアセトニトリルに溶解させて1×10−3Mの溶液を調製した。
【0086】
【化19】
【0087】
試料205および比較試料1に、それぞれNd:YAGレーザーの1064nmのレーザーパルスを同条件で照射し、非共鳴2光子発光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルの面積(非共鳴2光子発光強度)を、比較試料1の値を1としたときの相対比で表3に示した。
【0088】
【表3】
【0089】
表3に示したように、従来の材料を陵駕する良好な特性が得られた。
【0090】
【発明の効果】
本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて非共鳴2光子吸収を行うことを特徴とする化合物を用いることで、従来よりもはるかに強い非共鳴2光子吸収及び2光子発光を示す非共鳴2光子吸収発光材料を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、非線形光学効果を発現する材料に関し、特に非共鳴2光子吸収断面積が大きく、非共鳴2光子吸収により生成した励起状態からの発光効率の大きな有機非線形光学材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、非線形光学効果とは、印加する光電場の2乗、3乗あるいはそれ以上に比例する非線型な光学応答のことであり、印加する光電場の2乗に比例する2次の非線形光学効果としては、第二高調波発生(SHG)、光整流、フォトリフラクティブ効果、ポッケルス効果、パラメトリック増幅、パラメトリック発振、光和周波混合、光差周波混合などが知られている。また印加する光電場の3乗に比例する3次の非線形光学効果としては第三高調波発生(THG)、光カー効果、自己誘起屈折率変化、2光子吸収などが挙げられる。
【0003】
これらの非線形光学効果を示す非線形光学材料としてはこれまでに多数の無機材料が見い出されてきた。ところが無機物においては、所望の非線形光学特性や、素子製造のために必要な諸物性を最適化するためのいわゆる分子設計が困難であることから実用するのは非常に困難であった。一方、有機化合物は分子設計により所望の非線形光学特性の最適化が可能であるのみならず、その他の諸物性のコントロールも可能であるため、実用の可能性が高く、有望な非線形光学材料として注目を集めている。
【0004】
近年、有機化合物の非線形光学特性の中でも3次の非線形光学効果が注目されており、その中でも特に、非共鳴2光子吸収および非共鳴2光子発光が注目を集めている。2光子吸収とは、化合物が2つの光子を同時に吸収して励起される現象であり、化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2光子の吸収が起こる場合を非共鳴2光子吸収という。また、非共鳴2光子発光とは、非共鳴2光子吸収により生成した励起分子が、その励起状態の輻射失活過程において発する発光をいう。なお、以下の記述において特に明記しなくても2光子吸収および2光子発光とは非共鳴2光子吸収および非共鳴2光子発光を指す。
【0005】
ところで、非共鳴2光子吸収の効率は印加する光電場の2乗に比例する(2光子吸収の2乗特性)。このため、2次元平面にレーザーを照射した場合においては、レーザースポットの中心部の電界強度の高い位置のみで2光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では2光子の吸収は全く起こらない。一方、3次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ2光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために2光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる線形吸収に比べて、非共鳴2光子吸収では、この2乗特性に由来して空間内部の1点のみで励起が起こるため、空間分解能が著しく向上する。通常、非共鳴2光子吸収を誘起する場合には、化合物の(線形)吸収帯が存在する波長領域よりも長波でかつ吸収の存在しない、近赤外領域の短パルスレーザーを用いることが多い。化合物の(線形)吸収帯が存在しない、いわゆる透明領域の近赤外光を用いるため、励起光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、非共鳴2光子吸収の2乗特性のために試料内部の1点を極めて高い空間分解能で励起できるため、非共鳴2光子吸収および非共鳴2光子発光は生体組織の2光子造影や2光子フォトダイナミックセラピー(PDT)などの応用面で期待されている。また、非共鳴2光子吸収、2光子発光を用いると、入射した光子のエネルギーよりも高いエネルギーの光子を取り出せるため、波長変換デバイスという観点からアップコンバージョンレージングに関する研究も報告されている。
【0006】
効率良く2光子発光やアップコンバージョンレージングを示す有機化合物として、いわゆるスチルバゾリウム誘導体が知られている(He,G.S.et al.,Appl.Phys.Lett.1995,67,3703[非特許文献1]、Zhou、G.et al.,Jpn.J.Appl.Phys.2001,40,1250[非特許文献2])。また、ある特定の構造を有するスチルバゾリウム化合物の2光子発光を用いた種々の応用例はWO9709043[特許文献1]に記載されている。
【0007】
非共鳴2光子発光を利用して生体組織の造影、フォトダイナミックセラピー、アップコンバージョンレージング等の応用を行う場合、用いる有機化合物の2光子吸収効率(2光子吸収断面積)および2光子吸収により生じた励起状態からの発光効率は高いことが必要である。同一の有機化合物を用いて2倍の2光子発光強度を得るためには、2光子吸収の2乗特性のために4倍の励起光強度が必要になる。ところが、過度に強いレーザー光を照射すると、例えば生体組織の光損傷を招いたり、また2光子発光色素そのものが光劣化を起こしてしまう可能性が高くなるため望ましくない。従って、弱い励起光強度で強い2光子発光を得るためには、効率よく2光子吸収を行い2光子発光を発する有機化合物の開発が必要である。スチルバゾリウム誘導体の2光子発光効率は、実際的な使用に対しては未だ充分な性能を満たしていない。
【0008】
【非特許文献1】
He,G.S.et al.,Appl.Phys.Lett.1995年,67巻,3703頁
【非特許文献2】
Zhou、G.et al.,Jpn.J.Appl.Phys.2001年,40巻,1250頁
【特許文献1】
国際公開9709043号パンフレット
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上に述べたように、非共鳴2光子吸収および非共鳴2光子発光を利用すると、極めて高い空間分解能を特徴とする種々の応用が可能であるが、現時点で利用可能な2光子発光化合物では、2光子吸収能が低く、また2光子発光効率も悪いため、2光子吸収および2光子発光を誘起する励起光源としては非常に高出力のレーザーが必要である。
【0010】
本発明の目的は、効率良く2光子を吸収する有機材料、すなわち2光子吸収断面積の大きな有機材料を提供すること、および発光強度の大きな2光子発光を示す有機材料を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らの鋭意検討の結果、高い2光子吸収断面積には2光子吸収部位同士の相互作用が有効なことを突き止め、その実現のためには分子内会合の利用が有効であることを見出した。
よって、本発明の上記目的は、下記の手段により達成された。
(1)非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて非共鳴2光子吸収を行うことを特徴とする化合物。
(2)(1)記載の化合物が下記一般式(1)にて表されることを特徴とする(1)記載の化合物
一般式(1)
【0012】
【化4】
【0013】
一般式(1)中、A1 、A2 はそれぞれ独立に非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを含む基を表し、L1 は単なる結合手または連結基を表し、a1は1〜5の整数を、a2は1〜5の整数を表す。a1が2以上の時、複数のL1 は同じでも異なっても良く、a2が2以上の時、複数のA2 は同じでも異なっても良い。なお、A1 、A2 は分子内会合状態を取っており、一般式(1)で表される化合物のA1、A2 部分の吸収は、A1 またはA2 を単独に含む化合物の吸収の和と異なる。
(3)一般式(1)で表される化合物において、A1 、A2 がそれぞれ独立に色素であることを特徴とする(2)記載の化合物
(4)一般式(1)で表される化合物において、a1、a2が共に1であることを特徴とする(2)または(3)記載の化合物。
(5)一般式(1)で表される化合物において、A1 、A2 がそれぞれ独立にシアニン色素、ストレプトシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素または下記一般式(2)にて表されることを特徴とする(2)〜(4)記載の化合物。
一般式(2)
【0014】
【化5】
【0015】
式中、R1 、R2 、R3 、R4 はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表し、R1 、R2 、R3 、R4 のうちのいくつかが互いに結合して環を形成してもよい。nおよびmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、nおよびmのそれぞれが2以上の場合、複数個のR1 、R2 、R3 およびR4 は同一でもそれぞれ異なってもよい。ただし、n、m同時に0となることはない。X1 およびX2 はそれぞれ独立に、アリール基、ヘテロ環基、または一般式(3)で表される基を表す。
一般式(3)
【0016】
【化6】
【0017】
式中、R5 は水素原子または置換基を表し、R6 は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、Z1 は5または6員環を形成する原子群を表す。
なお、一般式(2)にて、R1 、R2 、R3 、R4 、X1 またはX2 のうちいずれかの水素原子を取り除いた形で「基」とすることができる。
(6)一般式(2)で表される化合物において、X1 またはX2 のいずれかうちいずれかの水素原子を取り除いた形で「基」とすることを特徴とする(5)記載の化合物。
(7)一般式(1)で表される化合物において、A1 、A2 がそれぞれ独立にシアニン色素、メロシアニン色素、ストレプトシアニン色素または一般式(2)にて表されることを特徴とする(2)〜(6)記載の化合物。
(8)一般式(1)で表される化合物において、A1 、A2 がシアニン色素、メロシアニン色素またはストレプトシアニン色素であることを特徴とする(7)記載の化合物。
(9)一般式(1)で表される化合物において、A1 、A2 が一般式(2)にて表されることを特徴とする(7)記載の化合物。
(10)一般式(1)で表される化合物において、R1 とR3 が連結して環を形成することを特徴とする(2)〜(7)、(9)記載の化合物。
(11)一般式(1)で表される化合物において、R1 とR3 が連結して、カルボニル基と共にシクロペンタノン環を形成することを特徴とする(10)記載の化合物。
(12)一般式(1)で表される化合物において、X1 、X2 が置換または無置換のアリール基であることを特徴とする(2)〜(7)(9)〜(11)記載の化合物。
(13)一般式(1)で表される化合物において、X1 、X2 が4位にアミノ基が置換したアリール基であることを特徴とする(12)記載の化合物。
(14)一般式(1)で表される化合物において、X1 、X2 が一般式(3)で表され、R6 はアルキル基であり、Z1 で形成される環が、インドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環のいずれかで表されることを特徴とする(2)〜(7)(9)〜(11)記載の化合物。
(15)一般式(1)で表される化合物において、X1 、X2 が一般式(3)で表され、R6 はアルキル基であり、Z1 で形成される環が、インドレニン環、アザインドレニン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環のいずれかで表されることを特徴とする(14)記載の化合物。
(16)(1)〜(15)記載で表される化合物であり、2光子発光することを特徴とする非共鳴2光子発光化合物。
(17)(1)〜(15)記載の化合物に、該化合物の有する線形吸収帯よりも長波長のレーザー光を照射して非共鳴2光子吸収を誘起することを特徴とする2光子吸収の誘起方法。
(18)(1)〜(15)記載の化合物に、該化合物の有する線形吸収帯よりも長波長のレーザー光を照射して非共鳴2光子吸収を誘起し、生成した励起状態から発光を発生させることを特徴とする非共鳴2光子発光発生方法。
(19)(1)〜(15)記載の化合物を溶液状態にて使用することを特徴とする方法。
(20)(1)〜(15)記載の化合物を膜状態にて使用することを特徴とする方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の非共鳴2光子吸収を行う化合物について詳しく説明する。
なお、本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、特に断りの無い限りは、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても、置換されていなくても良いことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本発明における化合物に使用できる置換基は、置換の有無にかかわらず、どのような置換基でも良い。
また、本発明において、特定の部分を「環」と称した場合、あるいは「基」に「環」が含まれる場合は、特に断りの無い限りは単環でも縮環でも良く、置換されていても置換されていなくても良い。
例えば、「アリール基」はフェニル基でもナフチル基でも良く、置換フェニル基でも良い。
【0019】
本発明の化合物は非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて非共鳴2光子吸収を行うことを特徴とする化合物である。
色素発色団同士が特定の空間配置に、共有結合又は配位結合、あるいは種々の分子間力(水素結合、ファン・デル・ワールス力、クーロン力等)などの結合力によって固定されている状態を、一般的に会合(又は凝集)状態と称している。本発明の化合物は分子内会合状態を取るので、共有結合または配位結合によって発色団同士が固定されている状態である。
【0020】
参考のため、以下に会合体の説明を行う。会合体については、例えばジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(The Theory of the Photographic Process)第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章、第218〜222頁、及び小林孝嘉著「J会合体(J−Aggregates)」ワールド・サイエンティフィック・パブリッシング社(World Scientific Publishing Co. Pte. Ltd.)、1996年刊)などに詳細な説明がなされている。
モノマーとは単量体を意味する。会合体の吸収波長の観点では、モノマー吸収に対して、吸収が短波長にシフトする会合体をH会合体(2量体は特別にダイマーと呼ぶ)、長波長にシフトする会合体をJ会合体と呼ぶ。
【0021】
会合体の構造の観点では、レンガ積み会合体において、会合体のずれ角が小さい場合はJ会合体と呼ばれるが、ずれ角が大きい場合はH会合体と呼ばれる。レンガ積み会合体については、ケミカル・フィジックス・レター(ChemicalPhysics Letters),第6巻、第183頁(1970年)に詳細な説明がある。また、レンガ積み会合体と同様な構造を持つ会合体として梯子または階段構造の会合体がある。梯子または階段構造の会合体については、Zeitschrift fur Physikalische Chemie,第49巻、第324頁、(1941年)に詳細な説明がある。
【0022】
また、レンガ積み会合体以外を形成するものとして、矢はず(Herringbone)構造をとる会合体(矢はず会合体と呼ぶことができる)などが知られている。
矢はず(Herringbone)会合体については、チャールズ・ライヒ(Charles Reich)著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photographic Science and Engineering)第18巻、第3号、第335頁(1974年)に記載されている。矢はず会合体は、会合体に由来する2つの吸収極大を持つ。
【0023】
なお、本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有する化合物が、分子内会合状態を取っているかどうかは、それぞれのクロモフォアを単独に含む化合物(モノマー)の吸収の和に対し、本発明の化合物の吸収(吸収λmax、ε、吸収形)が変化しているかどうかにより確認することができる。本発明の化合物は会合により短波長化(H会合)しても長波長化(J会合)してもその両方でもいずれでも良いが、J会合体を形成することがより好ましい。
【0024】
本発明の化合物は分子内会合状態を取るが、さらに分子間でも会合状態を取っても構わない。化合物の分子間会合状態は様々な方法に形成することができる。例えば溶液系では、ゼラチンのようなマトリックスを添加した水溶液(例えばゼラチン0.5wt%・化合物10−4M水溶液)、KClのような塩を添加した水溶液(例えばKCl5%・化合物2×10−3M水溶液)に化合物を溶かす方法、良溶媒に化合物を溶かしておいて後から貧溶媒を加える方法(例えばDMF−水系、クロロホルム−トルエン系等)等が挙げられる。
また膜系では、ポリマー分散系、アモルファス系、結晶系、LB膜系等の方法が挙げられる。
さらに、バルクまたは微粒子(μm〜nmサイズ)半導体(例えばハロゲン化銀、酸化チタン等)、バルクまたは微粒子金属(例えば金、銀、白金等)に吸着、化学結合または自己組織化させることにより分子間会合状態を形成させることもできる。カラー銀塩写真における、ハロゲン化銀結晶上のシアニン色素J会合吸着による分光増感はこの技術を利用したものである。
【0025】
本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて非共鳴2光子吸収を行うことを特徴とする化合物は、好ましくは一般式(1)で表される。
【0026】
一般式(1)中、L1 は単なる結合手または連結基を表す。連結基の場合、いかなる連結基でも良いが、好ましくはアルキレン基(好ましくは炭素原子数(以下C数という)1〜20、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、オクチレン)、アリーレン基(好ましくはC数6〜26、例えばフェニレン、ナフチレン)、アルケニレン基(好ましくはC数2〜20、例えばエテニレン、プロペニレン)、アルキニレン基(好ましくはC数2〜20、例えばエチニレン、プロピニレン)、アミド基、エステル基、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、エーテル基、カルボニル基、ヘテリレン基(好ましくはC数1〜26、例えば6−クロロ−1,3,5−トリアジル−2,4−ジイル基、ピリミジン−2,4−ジイル基、キノキサリン−2,3−ジイル基)を1つまたはそれ以上組み合わせて構成される炭素原子数0〜100以下、好ましくは1以上または20以下の連結基を表す。
a1は1〜5の整数を表し、a1が2以上の時、複数のL1は同じでも異なっても良い。
【0027】
A1 、A2 はそれぞれ独立に非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを含む基を表す。なお、A1 、A2 は分子内会合状態を取っており、一般式(1)で表される化合物のA1 、A2 部分の吸収は、A1 またはA2 を単独に含む化合物の吸収の和と異なる。
a2は1〜5の整数を表す。a2が2以上の時、複数のA2は同じでも異なっても良い。
【0028】
一般式(1)におけるA1 、A2 のような、本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォア(発色団)を含む基となる化合物(基を構成するための水素原子を取り除かない化合物であり、この明細書ではA1 が「シアニン色素」等と表示される場合は「シアニン色素から水素原子を取り除いた形の基」を意味するものとする)は好ましくは色素である。ここで色素とは、可視光領域(400〜700nm)に吸収の一部を有する化合物に対する総称である。
本発明における上記の色素としてはいかなるものでも良いが、例えば、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素が挙げられる。
【0029】
好ましくは、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、アリーリデン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、ポルフィリン色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素が挙げられ、より好ましくはシアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、アリーリデン色素等、メチン色素が挙げられ、さらに好ましくはシアニン色素、ストレプトシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素であり、最も好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素またはストレプトシアニン色素である。
【0030】
これらの色素の詳細については、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズーシアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社ーニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds−Special topics in heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第482から515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons) 社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds)」2nd.Ed.vol.IV,partB,1977刊、第15章、第369から422項、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、などに記載されている。
【0031】
本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアとしてシアニン色素を用いる時、好ましくは下記一般式(4)にて表わされる。
【0032】
【化7】
【0033】
式中、Za1及びZa2は各々5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし、これらはさらにベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環などで縮環されていてもよい。
Ra1及びRa2は各々、水素原子、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)を表し、好ましくは水素原子、アルキル基、スルホアルキル基を表し、より好ましくはアルキル基またはスルホアルキル基を表す。
Ma1〜Ma7は各々メチン基を表わし、置換基を有していてもよく、置換基として好ましくは例えばC数1〜20のアルキル基(例えば、メチル、エチル、i−プロピル)、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素)、ニトロ基、C数1〜20のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)、C数6〜26のアリール基(例えば、フェニル、2−ナフチル)、C数0〜20のヘテロ環基(例えば、2−ピリジル、3−ピリジル)、C数6〜20のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ、2−ナフトキシ)、C数1〜20のアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、C数1〜20のカルバモイル基(例えばN,N−ジメチルカルバモイル)、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、C数1〜20のアルキルチオ基(例えばメチルチオ)、シアノ基などが挙げられる。また、他のメチン基と環を形成してもよく、もしくは助色団と環を形成することもできる。好ましくは無置換、エチル基置換、メチル基置換のメチン基である。
na1及びna2は0または1であり、好ましくは0である。ka1は0から3までの整数を表わす。好ましくは0から2までの整数であり、より好ましくは0又は1である。ka1が2以上の時、Ma3、Ma4は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0034】
なお、一般式(4)にて、 Za1、 Za2、Ra1、Ra2、Ma1〜Ma7のうちいずれかの水素原子を取り除いた形で一般式(1)における「基」とすることができる。
【0035】
本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアとしてメロシアニン色素を用いる時、好ましくは下記一般式(5)で表わされる。
【0036】
【化8】
【0037】
式中、Za3は5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし、これらはさらにベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環などで縮環されていてもよい。Za4は酸性核を形成する原子群を表わす。Ra3は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基(以上好ましい例はRa1、Ra2に同じ)を表わす。Ma8〜Ma11は各々メチン基を表わす(好ましい例はMa1〜Ma7に同じ)。na3は0または1である。ka2は0から3までの整数を表わし、好ましくは0から2の整数を表し、より好ましくは1または2である。
ka2が2以上の時、Ma10、Ma11は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
なお、一般式(5)にて、Za3、Za4、Ra3、Ma8〜Ma11のうちいずれかの水素原子を取り除いた形で一般式(1)における「基」とすることができる。
【0038】
本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアとしてオキソノール色素を用いる時、好ましくは下記一般式(6)で表わされる。
【0039】
【化9】
【0040】
式中、Za5及びZa6は各々酸性核を形成する原子群を表わす。Ma12〜Ma14は各々メチン基を表わす(以上好ましい例はMa1〜Ma7に同じ)。ka3は0から3までの整数を表わし、好ましくは0から2の整数を表す。ka3が2以上の時、Ma12、Ma13は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
なお、一般式(6)にて、Za5、Za6、Ma12〜Ma14のうちいずれかの水素原子を取り除いた形で一般式(1)における「基」とすることができる。
【0041】
本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアとしてストレプトシアニン色素を用いる時、好ましくは下記一般式(7)で表わされる。
【0042】
【化10】
【0043】
Ra4〜Ra7は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基(以上好ましい例はRa1、Ra2に同じ)を表わす。Ra4とRa5、Ra6とRa7 はそれぞれ連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくは5または6員環のへテロ環であり、好ましくは例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、チアジン環、ピペラジン環である。
Ma15〜Ma17は各々メチン基を表わす(好ましい例はMa1〜Ma7に同じ)。ka4は0から4までの整数を表わし、好ましくは1から3の整数を表し、より好ましくは2である。Ka2が2以上の時、Ma15、Ma16は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
なお、一般式(7)にて、Ra4〜Ra7、Ma15〜Ma17のうちいずれかの水素原子を取り除いた形で一般式(1)における「基」とすることができる。
【0044】
Za1、Za2及びZa3としては炭素数3〜25のオキサゾール核(例えば、2−3−メチルオキサゾリル、2−3−エチルオキサゾリル、2−3,4−ジエチルオキサゾリル、2−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−3−エチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホエチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−3−メチルチオエチルベンゾオキサゾリル、2−3−メトキシエチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホブチルベンゾオキサゾリル、2−3−メチル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−メチル−α−ナフトオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−(3−ナフトキシエチル)ベンゾオキサゾリル、2−3,5−ジメチルベンゾオキサゾリル、2−6−クロロ−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−5−ブロモ−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾオキサゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−5−(4−ブロモフェニル)−3−スルホブチルベンゾオキサゾリル、2−3−ジメチル−5,6−ジメチルチオベンゾオキサゾリル)、炭素数3〜25のチアゾール核(例えば、2−3−メチルチアゾリル、2−3−エチルチアゾリル、2−3−スルホプロピルチアゾリル、2−3−スルホブチルチアゾリル、2−3,4−ジメチルチアゾリル、2−3,4,4−トリメチルチアゾリル、2−3−カルボキシエチルチアゾリル、2−3−メチルベンゾチアゾリル、2−3−エチルベンゾチアゾリル、2−3−ブチルベンゾチアゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−3−スルホブチルベンゾチアゾリル、2−3−メチル−β−ナフトチアゾリル、2−3−スルホプロピル−γ−ナフトチアゾリル、2−3−(1−ナフトキシエチル)ベンゾチアゾリル、2−3,5−ジメチルベンゾチアゾリル、2−6−クロロ−3−メチルベンゾチアゾリル、2−6−ヨード−3−エチルベンゾチアゾリル、2−5−ブロモ−3−メチルベンゾチアゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾチアゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−5−(4−ブロモフェニル)−3−スルホブチルベンゾチアゾリル、2−3−ジメチル−5,6−ジメチルチオベンゾチアゾリルなどが挙げられる)、炭素数3〜25のイミダゾール核(例えば、2−1,3−ジエチルイミダゾリル、2−1,3−ジメチルイミダゾリル、2−1−メチルベンゾイミダゾリル、2−1,3,4−トリエチルイミダゾリル、2−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−1,3,5−トリメチルベンゾイミダゾリル、2−6−クロロ−1,3−ジメチルベンゾイミダゾリル、2−5,6−ジクロロ−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−1,3−ジスルホプロピル−5−シアノ−6−クロロベンゾイミダゾリルなどが挙げられる)、炭素数10〜30のインドレニン核(例えば、3,3−ジメチルインドレニン)、炭素数9〜25のキノリン核(例えば、2−1−メチルキノリル、2−1−エチルキノリル、2−1−メチル6−クロロキノリル、2−1,3−ジエチルキノリル、2−1−メチル−6−メチルチオキノリル、2−1−スルホプロピルキノリル、4−1−メチルキノリル、4−1−スルホエチルキノリル、4−1−メチル−7−クロロキノリル、4−1,8−ジエチルキノリル、4−1−メチル−6−メチルチオキノリル、4−1−スルホプロピルキノリルなどが挙げられる)、炭素数3〜25のセレナゾール核(例えば、2−3−メチルベンゾセレナゾリルなどが挙げられる)、炭素数5〜25のピリジン核(例えば、2−ピリジルなどが挙げられる)などが挙げられ、さらに他にチアゾリン核、オキサゾリン核、セレナゾリン核、テルラゾリン核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、イミダゾリン核、イミダゾ[4,5−キノキザリン]核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核を挙げることができる。
これらは置換されても良く、置換基として好ましくは例えばアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル)、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素)、ニトロ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)、アリール基(例えば、フェニル)、ヘテロ環基(例えば2−ピリジル、3−ピリジル、1−ピロリル、2−チエニル)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、カルバモイル基(例えばN,N−ジメチルカルバモイル)、スルホ基、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド)、スルファモイル基(例えばN−メチルスルファモイル)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、シアノ基などが挙げられる。
好ましくは、オキサゾール核、イミダゾール核、チアゾール核である。これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。縮環する環としてはベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環等が挙げられる。
【0045】
Za4、Za5、Za6は各々酸性核を形成するのに必要な原子群を表わし、James 編、The Theory of the Photographic Process、第4版、マクミラン社、1977年、第198頁により定義される。具体的には、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、イソローダニン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ〔3,2−a 〕ピリミジン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ〔1,5−b〕キナゾロン、ピラゾロピリドン、3−ジシアノメチリデニル−3−フェニルプロピオニトリルなどの核が挙げられる。
好ましくは、ヒダントイン、ローダニン、バルビツール酸、2−オキサゾリン−5−オン、3−ジシアノメチリデニル−3−フェニルプロピオニトリルである。
【0046】
シアニン発色団、メロシアニン発色団、オキソノール発色団及びストレプトシアニン発色団の具体例としては、F.M.Harmer著、Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds、John&Wiley&Sons、New York、London、1964年刊に記載のものが挙げられる。
【0047】
シアニン色素、メロシアニン色素の一般式は、米国特許第5,340,694号第21及び22頁の(XI)、(XII)に示されているもの(ただしn12、n15の数は限定せず、0以上の整数(好ましくは0〜4の整数)とする)が好ましい。
【0048】
また、本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアは下記一般式(2)にて表されることも好ましい。
【0049】
一般式(2)において、R1 、R2 、R3 、R4 はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、置換基として好ましくは、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)である。
R1 、R2 、R3 、R4 として好ましくは水素原子またはアルキル基である。R1 、R2 、R3 、R4 のうちのいくつか(好ましくは2つ)が互いに結合して環を形成してもよい。特に、R1 とR3 が結合して環を形成することが好ましく、その際カルボニル炭素原子と共に形成する環が6員環または5員環または4員環であることが好ましく、5員環または4員環であることがより好ましく、5員環であることが最も好ましい。
【0050】
一般式(1)において、nおよびmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは1〜4の整数を表す。ただし、n、m同時に0となることはない。
nおよびmが2以上の場合、複数個のR1 、R2 、R3 およびR4 は同一でもそれぞれ異なってもよい。
【0051】
X1 およびX2 は独立に、アリール基(好ましくはC数6〜20、好ましくは置換アリール基(例えば置換フェニル基、置換ナフチル基、置換基の例として好ましくはMa1〜Ma7の置換基と同じ)であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、さらに好ましくはアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、最も好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したフェニル基を表す。その際複数の置換基が連結して環を形成しても良く、形成する好ましい環としてジュロリジン環が挙げられる。)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、好ましくは3〜8員環、より好ましくは5または6員環、例えばピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、カルバゾリル、フェノチアジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、より好ましくはインドリル、カルバゾリル、ピロリル、フェノチアジノ。ヘテロ環は置換していても良く、好ましい置換基は前記アリール基の際の例と同じ)、または一般式(3)で表される基を表す。
【0052】
一般式(3)中、R5 は水素原子または置換基(好ましい例はR1 〜R4 と同じ)を表し、好ましくは水素原子またはアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
R6 は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基(これらの置換基の好ましい例はR1 〜R4 と同じ)を表し、好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)である。
【0053】
Z1 は5または6員環を形成する原子群を表す。
形成されるヘテロ環として好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環、またはピリジン環であり、より好ましくはインドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、チアジアゾール環、またはキノリン環であり、最も好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、またはベンゾイミダゾール環である。
Z1 により形成されるヘテロ環は置換基を有しても良く、置換基として好ましくは、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)、アルキニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、エチニル、2−プロピニル、1,3−ブタジイニル、2−フェニルエチニル)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、アミノ基(好ましくはC数1〜20、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、アシル基(好ましくはC数1〜20、例えば、アセチル、ベンゾイル、サリチロイル、ピバロイル)、アルコキシ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メトキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくはC数6〜26、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、アルキルチオ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチルチオ、エチルチオ)、アリールチオ基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニルチオ、4−クロロフェニルチオ)、アルキルスルホニル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メタンスルホニル、ブタンスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくはC数6〜20、例えば、ベンゼンスルホニル、パラトルエンンスルホニル)、カルバモイル基(好ましくはC数1〜20、例えば、N、N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル)、アシルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、イミノ基(好ましくはC数2〜20、例えばフタルイミノ)、アシルオキシ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アルコキシカルボニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル)であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基である。
【0054】
X1 およびX2 として好ましくはアリール基または一般式(3)で表される基で表され、より好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したアリール基または一般式(3)で表される基で表される。
【0055】
なお、一般式(2)にて、R1 、R2 、R3 、R4 、X1 またはX2 のうちいずれかの水素原子を取り除いた形で、一般式(1)における「基」とすることができ、X1 またはX2 のうちいずれかの水素原子を取り除いた形で「基」とすることがより好ましい。
【0056】
本発明の分子内会合状態にて非共鳴2光子吸収を行うクロオフォアを含む基の化合物としては、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、ストレプトシアニン色素または一般式(2)にて表される化合物が好ましいが、より好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、ストレプトシアニン色素または一般式(2)で表される化合物である。
その際、非共鳴2光子吸収断面積(効率)の絶対値においては一般式(2)で表される化合物の方がより好ましく、非共鳴2光子吸収断面積の分子間会合形成によるエンハンスメントにおいてはシアニン色素、メロシアニン色素またはストレプトシアニン色素の方がより好ましい。
【0057】
以下に、本発明で用いられる、分子間会合状態にて非共鳴2光子吸収を行う化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
【化11】
【0059】
【化12】
【0060】
【化13】
【0061】
【化14】
【0062】
【化15】
【0063】
本発明の化合物は、分子内会合状態を取るのであれば、溶液状態で使用されても膜状態で使用されても良い。
【0064】
【実施例】
以下に、本発明の具体的な実施例について実験結果を基に説明する。勿論本発明はこれらの実施例限定されるものではない。
【0065】
[実施例1]
[D−11の合成]
【0066】
本発明の化合物D−11は以下の方法により合成することができる。
【0067】
【化16】
【0068】
ジヒドロキシジアミノビフェニル[1]25g(0.116mol)、無水酢酸400gを窒素雰囲気下5時間還流した。冷却後結晶をロ別しビスベンゾオキサゾール[2]の結晶30.2g(収率98.7%)を得た。
【0069】
ビスベンゾオキサゾール[2] 4.10g(15.5mmol)、プロパンサルトン[3]7.32g (60mmol)を150℃にて4時間加熱攪拌した。冷却後アセトンを加えて結晶をロ別し、アセトンで洗浄して4級塩[4]の結晶7.8g(収率99.0%)を得た。
【0070】
4級塩[4]7.62g(15mmol)、[5]19.6g(0.1mol)、無水酢酸100gを4時間還流した。冷却後アセトニトリルを加えて結晶をロ別し、アセトンで洗浄して、アニル体[6]の結晶6.0g(収率48.4%)を得た。
【0071】
EP887700A1号記載の方法により合成したバルビツール酸[7]2.54g(10.5mmol)、アニル体[6]3.2g(4mmol)、トリエチルアミン2.86g(28mmol)、エタノール100mlを10分環還流して均一とした後、室温に冷却した。無水酢酸1.84g(18mmol)を加え、室温から反応温度を上昇させ、2時間還流した。濃縮後セファデックスLH−20カラム(展開溶媒メタノール)で精製し、酢酸ナトリウム2.43g(30mmol)/メタノール50ml溶液を加えて生じた結晶をロ別し、さらにメタノールから再結晶して、目的のD−11 1.96g(収率53.0%)を得た。
なお構造はNMRスペクトル、MSスペクトル、元素分析にて確認した。
【0072】
また、他の本発明の化合物についてもD−11の合成法や、J.Am.Che.Soc.,121 巻,8146頁,(1999年)、Bull.Chem.Soc.Jpn.,70巻,2279 頁,(1997年) 、Tetrahedron.Lett.,42巻,6129 頁,(2001年) 、欧州特許887700A1号、F.M.Harmer著、Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds、John&Wiley&Sons、New York、London、1964年刊、D.M.Sturmer著、Heterocyclic Compounds− Special Topics in Heterocyclic Chemistry、第18章、第14節、第482から515頁、John&Wiley&Sons、New York、London等に記載の方法等に準じて合成することができる。
ただし、本発明の化合物の合成法はこれに限定されるわけではない。
【0073】
[実施例2]
[吸収スペクトルの測定]
【0074】
本発明の分子内会合性化合物D−1、D−5、D−11、D−16について、表1記載の溶媒により10−5M溶液を作成した。またそれぞれの比較モノマー化合物としてR−1、R−2、R−3、R−4についても表1記載の溶媒により10−5M溶液を作成した。これらについて吸収スペクトルを測定し、λmax、εについて表1にまとめた。
表1より、D−1はモノマー及びJ会合体吸収、D−5はJ会合体吸収、D−11はJ会合体及びH会合体吸収、D−16はH会合体及びモノマー吸収を示すことが、比較化合物R−1、R−2、R−3、R−4の吸収スペクトルとの比較からわかる。
なお、D−1、D−5、D−11、D−16については濃度10−3〜10−6Mの範囲で吸収スペクトルを測定しても吸収形及びモノマー/会合体ε比に変化が見られないため、この溶媒でのJまたはH会合体吸収は分子間ではなく分子内会合であることがわかる。
以上より、D−1、D−5、D−11、D−16については目的の分子内会合状態が形成できていることが明らかである。
【0075】
【表1】
【0076】
【化17】
【0077】
【化18】
【0078】
[実施例3]
[2光子吸収断面積の評価方法]
【0079】
本発明の化合物の2光子吸収断面積の評価は、M. A. Albota et al., Appl. Opt. 1998年, 37巻,7352頁.記載の方法を参考に行った。2光子吸収断面積測定用の光源には、Ti:sapphireパルスレーザー(パルス幅:100fs、繰り返し:80MHz、平均出力:1W、ピークパワー:100kW)を用い、700nmから1000nmの波長範囲で2光子吸収断面積を測定した。また、基準物質としてローダミンBおよびフルオレセインを測定し、得られた測定値をC. Xu et al., J. Opt. Soc. Am. B 1996年, 13巻, 481頁.に記載のローダミンBおよびフルオレセインの2光子吸収断面積の値を用いて補正することで、各化合物の2光子吸収断面積を得た。
2光子吸収測定用の試料には、本発明の分子内会合性化合物D−1、D−5、D−11、D−16及び比較モノマー化合物R−1、R−2、R−3、R−4の10−3M溶液を用いた(試料201〜208)。これは試料101〜108と濃度が異なるだけであり、吸収スペクトルの形状は同様であることを確認した。
【0080】
本発明の分子内会合性化合物及びその比較モノマー化合物の2光子吸収断面積を上記方法にて測定し、得られた結果をGM単位で表2に示した(1GM = 1×10−50 cm4s / photon )。なお、表中に示した値は測定波長範囲内での2光子吸収断面積の最大値である。
【0081】
【表2】
【0082】
表2より、分子内会合状態により比較モノマーに比べ格段に大きい2光子吸収断面積を有することが明らかである。特に分子内J会合状態にてエンハンスメントが大きいこともわかる。
【0083】
[実施例4]
[2光子発光強度の評価方法]
【0084】
実施例3の試料205に、Nd:YAGレーザーの1064nmのレーザーパルスを照射して得られる発光スペクトルを測定し、得られた発光スペクトルの面積から非共鳴2光子発光強度を求めた。
【0085】
比較試料1:強い2光子発光を発する化合物として特許(WO9709043)に記載の化合物(下記化合物)0.059gを100mLのアセトニトリルに溶解させて1×10−3Mの溶液を調製した。
【0086】
【化19】
【0087】
試料205および比較試料1に、それぞれNd:YAGレーザーの1064nmのレーザーパルスを同条件で照射し、非共鳴2光子発光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルの面積(非共鳴2光子発光強度)を、比較試料1の値を1としたときの相対比で表3に示した。
【0088】
【表3】
【0089】
表3に示したように、従来の材料を陵駕する良好な特性が得られた。
【0090】
【発明の効果】
本発明の非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて非共鳴2光子吸収を行うことを特徴とする化合物を用いることで、従来よりもはるかに強い非共鳴2光子吸収及び2光子発光を示す非共鳴2光子吸収発光材料を得ることができる。
Claims (6)
- 非共鳴2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて非共鳴2光子吸収を行うことを特徴とする非共鳴2光子吸収化合物。
- 請求項2記載の一般式(1)で表される化合物において、A1 、A2 がそれぞれ独立にシアニン色素、ストレプトシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素または下記一般式(2)にて表されることを特徴とする請求項2記載の非共鳴2光子吸収化合物。
一般式(2)
一般式(3)
なお、一般式(2)は、R1 、R2 、R3 、R4 、X1 およびX2 のうちのいずれかの水素原子を取り除いた基である。 - 請求項1〜3のいずれかで表される化合物であり、2光子発光
することを特徴とする非共鳴2光子発光化合物。 - 請求項1〜3のいずれかで表される化合物に、該化合物の有する線形吸収帯よりも長波長のレーザー光を照射して2光子吸収を誘起することを特徴とする非共鳴2光子吸収誘起方法。
- 請求項4で表される化合物に、該化合物の有する線形吸収帯よりも長波長のレーザー光を照射して非共鳴2光子吸収を誘起し、発光を発生させることを特徴とする発光発生方法。
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JP2002293721A JP2004126440A (ja) | 2002-10-07 | 2002-10-07 | 非共鳴2光子吸収化合物、非共鳴2光子発光化合物及びそれによる非共鳴2光子吸収誘起方法及び発光発生方法 |
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JP2002293721A JP2004126440A (ja) | 2002-10-07 | 2002-10-07 | 非共鳴2光子吸収化合物、非共鳴2光子発光化合物及びそれによる非共鳴2光子吸収誘起方法及び発光発生方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010014958A (ja) * | 2008-07-03 | 2010-01-21 | Yamaguchi Univ | 無機化合物−有機化合物複合体よりなる二光子吸収膜 |
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2002
- 2002-10-07 JP JP2002293721A patent/JP2004126440A/ja active Pending
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